《悲嘆の先導者》フォー・トゥーナ Lv 41 女性 ヒューマン / 墓守


司令部は、国民から寄せられた依頼や、教団からの命令を、指令として発令してるよ。
基本的には、エクソシストの自由に指令を選んで問題無いから、好きな指令を受けると良いかな。
けど、選んだからには、戦闘はもちろん遊びでも真剣に。良い報告を待ってる。
時々、緊急指令が発令されることもあるから、教団の情報は見逃さないようにね。


悲劇の復讐
普通|すべて

帰還 2018-05-20

参加人数 8/8人 リリベル GM
「母さん……」  床一面に広がる鮮烈な赤。むせ返るような臭いに、僕はリビングから一歩も動けないでいた。  なんでこんなことになったのか。脳は必死に答えを探すが、辿りつかない。目の前の認識したくない現実が、腹の底に落ちて鉛のように重くなっていく。 「母さん、起きてよ」  言葉ではそう言っていても、実際に肩を揺らす勇気なんてない。だって、分かっている。母さんだった肉体は、きっともう冷たくなっているから。  自分に危機は起きていないはずなのに、僕の意識は勝手に自分の記憶を遡っていった。  僕の家族は決して裕福ではなかったけれど、確かに一生懸命に生きていたはず。父さんが家を出て行ってから、母さんが一人で僕を必死に育ててくれた。僕が一人で寂しくないようにって、母さんがある日子犬を連れてきてくれた。母さんが僕らのために一生懸命働いてくれているから、僕はその愛犬のベスと、母さんの支えになっていこうって意気込んで……。少なくとも、僕らは大切に毎日を生きていたのに、なんで。  ほんの一瞬だった。僕が買い物をしようと母さんを残して家を留守にしたほんの一瞬。出かける前の母さんの「行ってらっしゃい」が、まだ耳に生々しく残っている。まさか、帰ってきたら母さんの姿がこんなに無残に変わり果てているとは、思いもしなかった。 「そうだ、助けを呼ばなきゃ」  ようやく冷静になった脳が、正常な判断を僕に下す。 「た、助け……誰か、助けを呼ばなきゃ……」  外に助けを求めようとして、ハッとした。  微かにだが、家の奥の方から、ガタンッと物音がしたのだ。  もしかして、ベス?  ベスはまだ小さいし、臆病だから、母さんを襲ったやつから身を隠していたのかもしれない。 「ベス? いるの?」  おそるおそる声を出してみる。  どうか、ベスであって欲しい。お願いだから、ベスは、生きていて欲しい。  脳裏に元気に走り回るベスの姿と、それと同時に甲高い鳴き声をあげながら無残に引き裂かれるベスの姿が浮かんで、僕は急いで頭を振ってその想像を消した。 「ベス?」  その僕の声に反応するように、ガタガタンッとまた物音がした。 「ベス!? もう、誰もいないから出てきてよ! 母さんが……」  僕は、耐えきれずに大きな声を出すと、影がゆらりと揺れてこちらに近づいてきた。  そして、 「ベス……」  そこには確かにべスがいた。  体から触手を沢山生やして、ベリアルになったベスがいた。 「ヴヴヴヴヴヴ」  ベスが、僕がよく知っている声で、僕の知らない唸り声を出す。体から出ている触手と、ベスの口には真っ赤な血がこびりついていた。 「う、ああ、うああああああ!!」  僕は訳も分からないまま、必死にその場から逃げ出して。  そこに、母さんとベスを残して。 「あれから、もう10年以上経ちますが、まだあの時のことを夢に見ます。それに、最近になってベスの姿を、このアークソサエティの外れにある森の中の洞窟で見たという話も聞くんです」  男は静かにため息をついて、視線を遠くにやった。  その男の様子を見て、その男の担当をしていた教団員も思わずため息をつきそうになってしまう。  教皇国家アークソサエティの住宅街でも、こうした事件は珍しくない。ベリアルやヨハネの使徒に襲われて、心が痛むような残虐な事件は、後が絶えないのだ。そして、その度に被害者は薔薇十字教団を訪れ、その悲痛な叫びを唱えていくのだ。 「どうか僕の代わりに、母とベスの仇を取って欲しいのです。ベスの肉体と魂を、解放させてあげてください。どうか、お願いします。仇を取ってくださった暁には、お礼もしたいと思っております。どうか、お願いします!」  男はそう言うと、深々と頭を下げた。その拍子に、ポタポタと数滴の滴が落ちたのを、教団員は見逃さなかった。彼の中では、未だ事件は終わっておらず、彼の心を過去に縛り付けている。 「事情は分かりました。しかし、ご存知か分からないですが、ベス様がベリアルになってしまったということは、その……」 「分かっています。構いません。どうか、仇を」  力強く言った彼の「仇」という言葉が全てを物語っていた。一度ベリアルになってしまえば、その魂を解放すると同時に肉体は砂となって消えてしまう。つまり、彼のベスの姿形をしたベリアルは、もう二度と彼の知っているベスに戻ることはないのだ。  そのことを、男は分かっていた。そして、悔しさを胸に溜めて、拳を震わしていた。  そして、教団員もその男の覚悟をしかと受け取った。 「分かりました。それでは、こちらで、浄化師を募って、ベリアル討伐に向かいたいと思います」
白ネコと一緒にハーモニー
とても簡単|すべて

帰還 2018-05-19

参加人数 6/8人 留菜マナ GM
 ここは、教皇国家アークソサエティの西部に位置する、巨大都市エトワール。  エトワールの中心街にあるリュミエールストリートでは、この日も『蚤の市』とも呼ばれている、フリーマーケット、オルヴワルが賑わっていた。  フリーマーケットには、商人が持ちよった野菜、海産物類、そして珍しい骨董品の数々が並んでいた。あらゆる国々から集められたさまざまな品物が、ここでは手に入る。  だが、フリーマーケットを訪れた一組の浄化師達は、そこで商人達の悲鳴を耳にした。 「俺の商品がない!」 「私の商品もないわ!」 「俺のところもなくなっている!」  商人達の話を聞いてみると、フリーマーケットで売っていた商品が次々と姿を消しているというのだ。  しかもすべて、珍しい骨董品の数々だという。  消えた商品は、誰かに盗まれてしまったのだろうか?  だが、誰も商品が盗まれるところを見ていないと言う。  不可解な現象に、浄化師達が悩んでいると、足元から不思議な歌声のような鳴き声が聞こえてきた。 「にゃにゃー、にゃーにゃー」  浄化師達が視線を落とすと、そこには何やら綺麗な石をくわえた白猫がそそくさとその場から立ち去ろうとしていた。  浄化師達と同じように、白猫に気づいた商人の一人が叫んだ。 「あれは、俺の商品だ!」 「何だって……あっ!」 「にゃん」  すかさず、捕まえようと手を伸ばした商人達だったが、白猫は商人達の隙をついて身を翻し、フリーマーケットから立ち去ろうとしてしまう。 「待て!」 「待ちなさい!」 「――にゃ!? にゃあ、にゃあ!」  しかし、行く手を拒むようにして立ち塞がった浄化師達によって、白猫は呆気なく捕まってしまった。  女性の商人は、白猫を捕まえた浄化師達に視線を向けると顔を曇らせて言った。 「この猫が盗んだの?」  女性商人の疑問を受けて、別の商人が感情を抑えた声で淡々と続ける。 「誰かが、この猫に手引きして盗ませていたかもしれないな」 「すべては、この猫が鍵を握っているのか」  これ見よがしにその商人が言うのを聞いて、浄化師の一人、祓魔人の男性は静かにそう告げると、顎に手を当てて真剣な表情で思案し始める。 「とにかく、このまま野放しにはできないな。盗んだ商品の在り処を突き止めるためにも、しばらく、この猫を預からせてもらおう」  後日、教団本部に、白猫を手引きした男が捕まったという連絡が入った。  だが、盗まれた商品は見つかっておらず、男も盗んだ商品に関しては一切、話そうとしない。 「盗んだ商品はどこにあるんだ?」 「にゃー」  祓魔人の男性が聞いても、白猫は知らんぷり。 「どうしたら教えてくれるんだ?」 「にゃ~ん」  白猫は悩むように視線を泳がせ、やがて部屋の机に飛び乗った。そして、置いてある羽ペンを取ると、浄化師達の方へと向ける。 「もしかして、一緒に歌ってほしいのか?」 「にゃーにゃーにゃー」  そういえば、白猫と初めて出会った時、歌のようなものを歌っていたような気がする。  マイクのように差し出されたペンの先端をじっと見つめながら、祓魔人の男性とパートナーの喰人の女性は少し照れくさそうに歌を歌ってあげた。  だが、白猫はまだ歌いたいとねだるように、両手を広げて喰人の女性の顔を見上げる。 「えっ? まだ、歌いたいの?」 「にゃー」 「ねえ、さすがにずっと付き合うわけにもいかないし、他のみんなにも声をかけてみましょう」  白猫と一緒に歌ってあげたら、盗んだ商品の在り処が分かるかもしれない。
嘘かほんとか、あなたの過去・未来
とても簡単|すべて

帰還 2018-05-18

参加人数 8/8人 瀬田一稀 GM
 教皇国家アークソサエティの中心部から、西に位置する大都市エトワール。  そのメインストリートであるリュミエールストリートは、いつも多くの人でにぎわっていた。  しかし笑い声に満ちたカフェの一角に、ため息をつく女性が一人。 「つまらないわ……毎日、同じことの繰り返しばかり!」  彼女はドン! と机を叩いた。 「昨日はお財布を落としたし、今日は靴のかかとが壊れたし! ああ、楽しいことはないのかしら」  そこで彼女は顔を上げ――ちょうどその場にいた、あなたをじいと見る。 「あなた、ひょっとしてエクソシスト?」 「えっ……? は、はい」  見知らぬ相手からの突然の問いかけに、緊張しながら答えるあなた。  女性はひらひらと手を振って、あなたとパートナーを招き寄せた。 「だったら、きっといろいろな体験してきてるわよね。ねえ、見せてくれない? あなたの過去……。ああ、未来でもいいわ」 「過去と未来? どういうことだ?」  あなたのパートナーが問いかける。  女性はうふふ、と真っ赤な唇で微笑み、言った。 「わたし、人の過去や未来が見えるのよ。ああ、やり方は簡単だから、大丈夫。あなたの手に触れるだけでいいの……」  この女性が、本当のことを言っているのか。  それとも単に、からかわれているのか。  さて、答えはいかに?
職業見学会を成功させよ!
とても簡単|すべて

帰還 2018-05-18

参加人数 2/8人 姫井珪素 GM
 ある日の早朝の出来事。アークソサエティ本部の一室に、貴方(達)は、司令部に配属されている先輩の浄化師に呼び出されました。 「君たちに重要な任務を与えよう」  薔薇十字教団に入団して間もない貴方(達)は『重要らしき』指令の発令に緊張感を隠せないでいます。  意識を集中させ、理解に努めていきます。  ――極めて重要。  ――要人も様子を見に来る。  ――期間は一週間後に迫っている。  ――将来を担う仲間がそこから生まれるかもしれない。 「――と言う訳だ」  先輩浄化師の話が終わり、貴方(達)は呆気に取られます。  どうやら首都エルドラド内の学校で行われる「職業見学」の係を任せられることとなったのです。  てっきり死地に向かうものと思っていた貴方(達)は、安堵したのか落胆したのかわかりませんが納得のいかない感じではありました。勿論、薔薇十字教団の団員として、指令には全力で挑む所存ではあるはずです。  そんな貴方(達)に釘を刺すように先輩浄化師は続けます。 「これも歴とした指令だ。パートナーや他の係のものと協力して挑むこと。エルドラドに住む貴族も我が子を見るついでに見学なさるそうだ。しっかりとした内容で挑むように。気分を害して寄付が減るのは、痛手だ」  ……戦闘とは別に、苦戦を強いられることになるのでした。
正義とは、自由とは
難しい|すべて

帰還 2018-05-17

参加人数 7/8人 北織 翼 GM
 教団員セゴール・ジュノーは、貴族ザメオヴァ男爵邸の応接室にいた。 「やぁ、セゴール。今回わざわざ足を運んでもらったのは他でもない、『リバティ戦線』の件だ」  男爵は口髭を弄りながらそう切り出す。 「奴等め、この儂に脅迫状なぞ送りつけてきおった」  セゴールの前のテーブルに、1通の手紙が男爵の手によって投げ捨てられるように置かれた。 「……」  セゴールは黙ってその封書を取り、内容を確認する。 「差出人は奴隷反対団体の『リバティ戦線』ですね。『ザメオヴァ男爵の管理する農地で労働を強いられている奴隷30人を解放せよ。さもなくば男爵に鉄槌を』……解放期限は明日いっぱい、『明後日午前0時の時点で1人でも解放されない者がいれば相応の代償を求める』ですか」 「フンッ! 綺麗事ばかりを並べる道徳団体め、儂のお陰で奴隷たちが餓死せずに済んどるというのに、まるで現実が分かってない!」  男爵は絨毯に唾を吐き捨て、テーブルを蹴った。  そして、その太い首をゆっくり左右に振ると、ソファの背もたれに身を沈める。 「……いいかねセゴール、この国では奴隷に対して賃金の支払い義務は無い、それは君も分かっているだろう? だが、儂は奴等に衣食住を提供している、それがどれ程良心的で人道的か、少し考えれば理解出来る事だと思わないか? だというのに、リバティ戦線は儂を悪の権化とでも言わんばかりの勢いだ。解放された奴隷に行き場はあるのかね? 儂の所以上に生命維持の出来る生活環境はあるのかね? そんな事も考えず自由だの平等だの……実に腹立たしい」 「……ですが、今回の一件に何故私が呼ばれたのかが分かりかねます」  セゴールの冷静な一言に、男爵は表情を曇らせた。 「分からない、だと? ならば単刀直入に言おう、儂を守れ」 「……教団も浄化師もボディーガードではありません。ベリアルやヨハネの使徒、そうした脅威から人々を守るのが……」  そこまで言いかけたセゴールの声を、男爵はピシャリと遮る。 「終焉の夜明け団」 「……はい?」 「いいかセゴール、儂はリバティ戦線の裏には終焉の夜明け団が潜んでいる、そう考えておる」  男爵の突飛過ぎる主張に、今度はセゴールの表情が淀んだ。 「そう断言されるからには、何か根拠がおありなのでしょうね?」  男爵はソファから立ち上がり窓辺に立つと、ソーセージの様に丸々と太った指で窓の外を指す。 「昨晩、見たのだよ……あの木陰で、黒い外套を羽織った薄気味悪い者共が奴隷と何かやり取りしているのをな。顔までは確認出来なかったが、恐らくその奴隷がリバティ戦線と通じていて、終焉の夜明け団と何らかの交渉をしているのかもしれん」  セゴールは怪訝そうな視線を窓辺に向ける。  客間は2階、木陰の周囲に外灯は無い。  男爵が嘘を吐いているとは思えないが、目撃した時間帯を考えると男爵の見た人影を終焉の夜明け団信者と決めつけるのは些か安直と言えよう。  だが、セゴールの持つ情報と知識がこの一件に終焉の夜明け団が関与している可能性を示唆していた。 (奴隷反対団体『リバティ戦線』は奴隷を使役している貴族を狙い過激な手法で金品を強奪している。だが、リバティ戦線は奴隷たちの生活を援助するでもなく、新たな稼ぎ先を紹介するでもなく、ただ自由と解放を求めているだけだ。そんな活動自体にそこまで多額の資金が必要とは思えない。逆に、終焉の夜明け団はその活動が多岐に渡りコストもかさむせいで常に資金を必要としている。名を売り正義の味方面をしたいために戦力が欲しいリバティ戦線と、キメラの開発など魔術に詳しく戦力はあるが資金が足りない終焉の夜明け団……両者の利害は一致している。リバティ戦線から終焉の夜明け団には資金が提供され、終焉の夜明け団からリバティ戦線にはキメラや魔術を使える者が戦力として提供されているとすれば……) 「……分かりました。男爵、明日のご予定は?」  一転して男爵の護衛を引き受けるという内容のセゴールの発言に、男爵は刮目し声を上ずらせる。 「さすがセゴール、話の分かる男だな! 儂は明日農地の視察に出る予定だったが、脅迫状の事もあるのでここから離れた宿に身を潜ませようかと考えておる」  セゴールは冷めた目で男爵を見上げた。 「それはお控え下さい。終焉の夜明け団には魔術の心得もあります、潜伏したところで捜し出されて身ぐるみ剥がされるのがおちです。それに、他の宿泊客も巻き添えになりかねません。男爵は事が収束するまでの間、このお邸から一歩たりとも出ないで下さい」 「何だと? 儂のこの邸で賊を迎え撃つと言うのか! あんな下賤な連中をこの邸にみすみす入れろというのかっ!」  セゴールの慇懃無礼とも言える口調に男爵は眉を吊り上げ声を荒げるが、セゴールはなおも畳み掛ける。 「いいですか、この一件に終焉の夜明け団が絡んでいるという確固たる証拠は何一つ無いのですよ。男爵がご覧になった黒外套が只のぼろきれで奴隷が世間話をしていただけだとしたら、男爵には『不確かな情報で教団を振り回した傲慢な阿呆』という不名誉なレッテルが貼られるのですよ? 男爵は果たしてそれに耐えられますか? しかし、相手が敷地内に乱入し破壊行為に及ぶという暴挙に出れば、終焉の夜明け団が絡んでいようといまいと、阿呆とまでは言われますまい。この先死ぬまで阿呆呼ばわりされる屈辱に比べれば、敷地内が戦場になるくらい大した事ではないでしょう?」 「き、貴様……っ」 「それとも、終焉の夜明け団の関与が明らかでないわけですから、護衛はお断りしましょうか? 我々も暇ではありませんのでね」 「くっ……」  男爵は遂に返す言葉を失うが、セゴールは男爵に『分かった』の一言を言わせるまで引かない。 「どうなさいますか? 宿で辱めを受けるか、阿呆男爵に成り下がるか、甘んじて我々の作戦に従い身の安全と名誉と財産を守るか」 「……分かった、分かったわい」  セゴールは立ち上がると、絞り出すような調子で了承の返事をした男爵に恭しく一礼し、退室する。 「ああ、そういえば男爵……」  退室する間際、セゴールは男爵を振り返った。 「敵の戦力が如何程か判然としないので、今回の任務は浄化師たちにとってかなりの負担と危険を強いる恐れがあります。彼らにはそれ相応の報酬をご用意下さいますね?」 「ああもう勝手にせい! 請求書でも何でも持ってこい!」  忌々しげに吐き出す男爵を尻目に、セゴールは秘かに口元を歪ませながら男爵邸を後にするのだった……。
局員さんの頼み
とても簡単|すべて

帰還 2018-05-13

参加人数 8/8人 oz GM
 春とはいえ、まだまだ肌寒い日。  教団内にある図書館に立ち寄った君たちは受付にいた女性から、ある頼みごとをされた。 「今月は人手が足りなくて資料集めまで手が回らないの。報酬も出すから、手伝ってくれないかしら」  図書館の5階にある「事件データ室」で教皇国家アークソサエティの国境付近でここ半年間に起こったベリアルとヨハネの使徒の襲撃事件について資料を集めて欲しいそうだ。  頼み込む女性局員の目には、はっきりと隈ができており、どのくらい徹夜しているのか聞くのも怖いぐらいに顔色も悪い。疲れ切った女性局員を見ると断るのも気が引ける。  引き受けることを告げると、局員は安堵した表情で、 「本当に助かります。後日、司令部にあなたたちが指令を受けたという形で報告しておきますね」  と頭を下げて、受付に戻る。  5階の扉の前まで来ると、正門を通る際にも使う通行証をセキュリティーシステムにかざす。すると、ロックが解除されていき、室内にいた局員が顔を出す。  通行証を見せながら、「事件データの資料を集めるよう頼まれた」と短く用件を告げると、本棚のホールへと案内される。  人気がないせいか自身の吐息が聞こえるほど静かだった。  閲覧スペースは窓に囲まれた場所にあり、奥の書架のスペースは天井まで届く高さだ。本棚には年月日が記されたファイルボックスが隙間なく入れられている。  さらにファイルボックスの中に納められた事件データのその量の多さに圧倒されるかもしれない。あるいは教団が請け負う事件の多さに浄化師として気が引き締まる思いに駆られるだろう。  疲れている局員のためにも、浄化師同士で協力して事件データを集めよう。
春を裂く災厄の爪
普通|すべて

帰還 2018-05-13

参加人数 5/8人 鳩子 GM
「あなた、ちょっと遅くなっちゃったけど、今日も来たわ」  若草色のボンネットを被り、バスケットを手にして微笑む女の出で立ちは、いかにも若奥様風であった。だがその笑みを受け止めるのは彼女の伴侶でも、恋人でもない。  『ダミアン・バロー、此処に眠る』  まだ角の取れぬ墓石が、夕刻の赤い光を反射している。  若き未亡人、アンナ・バローの微笑みを覗く者があれば、底無しの悲しみと虚しさを見てとっただろう。  ここは豊かな自然を風物とするソレイユ地区でも特に静かな、観光客の訪れない農村の小さな墓苑だった。害獣避けの木柵が張り巡らされた内側には、掘り返された土の跡が残る新しい墓が並び、摘まれたばかりの花や瑞々しい果物などが供えられていた。  惨劇が起きたのは、ついひと月ほど前のことである。  近隣の大きな街へ作物を売りに行った一団が、その帰途、ベリアルに襲われた。村では連日弔いの鐘が鳴りやまず、人々は深い嘆きの淵に落とされた。大きな街道沿いのことであったため、すぐさま教団から浄化師が派遣され件のベリアルは討伐されたというが、失われた命が戻ってくることは無い。また別のベリアルが現れないとも限らず、憂いを拭い去ることは出来なかった。  しかし、いつまでも悲嘆に暮れてはいられないのが現実だ。うつむいている間にも季節は移ろい、春の盛りを迎えた農村ではやるべきことが山のようにある。多忙さは、ある面では、精神の救いであった。ほんのわずかな兆しではあるが、暗い地中から若葉が芽を出すように、村は悲しみから立ち直ろうとしている。 「また来るわ。今度は、あなたの好きなマグノリアの枝を貰ってきましょう」  しゃがみこんで亡き夫と対話していたアンナは、感傷を振り切るように言って立ち上がった。  この頃は日が伸びたのに油断して、家を出るのが遅くなってしまった。おかげで、普段なら他にも何人かの姿があるのに、今日は一人きりだ。日暮れがすぐそこまで迫っている。住居の立ち並ぶ区画からそう離れてないとはいえ、墓地は林の中にあり、暗くなってからでは不安があった。  その不安が恐れを招くのだろうか。林道を急ぎ帰るアンナは木々の陰から何かがこちらを伺っているような気配を感じた。冬眠から覚めた熊か、飢えた野犬か、それとも――。悪い想像はとどまるところを知らない。きっと気のせいだと自分に言い聞かせ、足早に土を踏む。  木々が途切れた先に、村の明かりが見えてくる。ほっとしたのも束の間、がさりと葉擦れの音がたった。  思わず振り返ったアンナの目に、巨大な黒い影が映った。  のどかな夕飯時を迎えていた農村は、俄かに騒然となった。  娘の帰りが遅いことを心配して迎えに出た父親が、林道の入り口で倒れるアンナを発見したのである。肩口をざっくりと引き裂かれていた他、背にも複数の爪痕が残っていた。アンナが村の灯が届くところまで逃げたので、襲撃者は途中で引き揚げたらしい。かろうじてまだ息があった。 「先生、アンナを、アンナを助けてください……!」  弔いの記憶が、アンナの父親のみならず村中の人々を震わせる。  医者がアンナの治療に全力を尽くす一方、外の広場では村の男たちが松明と武器を手にして集合していた。観光地でもない農村に軍属が駐在する由もなく、日頃から警備を担うのは有志の村民によって結成された自警団である。 「先生の見立てでは、アンナを襲ったのは熊だろうということだ。猟銃は持ったな」  おう、と張りのある声が返る。男たちは村を再び襲った悲劇への憤りをみなぎらせている。 「どうやら、ここから飛び出してきたらしい」  隊列を成して墓地へ向かった一行は、林道脇の梢が不自然に折れているのを発見した。  さらに周囲を警戒しながら進んで行くと、墓苑を取り囲む木柵が破壊されているのが見えた。 「隊長、墓が荒らされています!」  火を掲げて中へ入った隊員が悲痛な声を上げる。  供えられた花は踏み荒らされ、果物は砕け散り、酷いものでは墓石がひっくり返されていた。  死者の安寧を妨げること、これほど非道な行いは無い。 「まだ近くにいるかもしれん、二人一組で林を探れ!」 「おう!」  墓地を中心にして、徐々に輪を広げるかたちで林の中へ分け入っていく。  だが、脅威は彼らの背後から襲いかかった。 「うわあああああ!!!!」  無防備な背に痛烈な一撃を受けた団員が、どっと前のめりに倒れる。  隣にいた団員が慌てて銃を構えるが、引き金を引く前に横から薙ぎ払われる。 「ぐぁ……っ!」  間を置かずに反対側からもう一薙ぎされ、手首が鮮血に染まった。 「大丈夫か!」 「おい、出たぞ、こっちだ!」  駆けつけた団員の前に、松明に照らされてなお黒々とした影が立ちはだかった。その顔のあたりだけが、ぼんやりと白い。 「撃て、撃て!!」  林間に銃声が響く。その鋭い音をかき消すように獣は咆哮し、地表から前肢を離して立ち上がった。  ヒグマにしては胴が狭い。 「アナグマか。随分でかいな」  そう隊長は断じたが、直後、蠢く影を見てとって呻いた。 「ベ、ベリアルだ……!」  毛皮を突き破って逆立つ触手は、災厄そのものである。  ベリアルが事実上不死身であることは、子どもでも知っている。その活動を止められるのは、浄化師が扱う特殊な武器だけだ。  戦意に満ちていたはずの自警団は、一瞬で恐慌状態に陥った。 「撃て―――ッ!!!」 「ただの銃じゃ効かねえ、逃げろっ!」 「ぎゃあああ」 「一頭じゃねえ、複数いるぞ!」 「いやだ、死にたくない……っ!」  銃声と悲鳴が交錯する。禍々しい獣は松明さえも噛み砕き、林に夜の暗さが取り戻されるに従って、恐怖と脅威は倍増していく。 「引け、引け―――っ!!」  撤退を命じる隊長の声が、虚しく響いた。  自力で村に戻ることが出来たのは、なんと、ただ一人であった。  身も世もなく泣きわめきながら村人の待つ集会所に飛び込んだその男は、名をドニ・リファールと言い、村中で評判になるほど気が弱く、臆病なたちだった。根性を叩きなおすべく自警団に入れられたが、今回も最初から逃げ出したくてたまらず、獣が出たと聞いて銃を構えもせずに真っ先に身を隠した。仲間たちの怒声と悲鳴を耳にしながら、もつれる足を急かして逃げ帰ってきたのである。  卑怯者とそしられても仕方がない。だが、ドニの激しい恐怖に彩られた声で事情を告げられた村人たちは、その臆病を罵る余裕もなく顔を蒼褪めさせた。  また、弔いの鐘が鳴る――その絶望は筆舌に尽くしがたい。  朝を待たず、教団に救援を求める使者が立った。  ドニのおかげで、ベリアルの原形がアナグマであること、少なくとも三頭はいること、内一頭が異様な大きさであることが判明していた。  窮状を訴え、どうにかして浄化師を派遣してもらわなければならない。  村に待機していた僅かな若い男たちは、夜を徹し、決死の面持ちで林道を見張った。まだ息があるかもしれない仲間を助けに行けぬ己が憎くてたまらないが、ベリアルに対抗する術はないのだ。いざとなれば林を焼き払ってでも村への侵入を阻む覚悟だが、それが功を成すかさえ分からなかった。  老人と女子供は教会に集まり、怯える身を寄せ合って朝を待った。赤子の泣き声が、高い天井にこだまする。 「助けてください、浄化師様……! お願いです!!」  農村の悲痛な声が教団に届く頃、白々と夜が明けようとしていた。
桜、さくら
とても簡単|すべて

帰還 2018-05-11

参加人数 8/8人 あさやま GM
「私はどうしても、あの桜が見たいのです」  その指令の依頼主は、ある老年の女性だった。 「あの人が、村の近くよりここの方が育つに決まってる、なんて言ってあんなところに植えるから、見に行くのも一苦労で」  愚痴っぽく言う彼女は、懐かし気に目を細めて柔らかく笑う。 「でも、美しい花を咲かせるんです。今頃きっと満開だと思います」  決して面倒だという様子はなく、どころかそれさえ愛おしいと言うように、老婆は語った。胸元のペンダントを、大事そうに撫でながら。 「あの人が植えた桜を、見に行きたいのです。危険があるのは十分承知していますし、そのつもりで依頼を出したんです。浄化師の方々には相応の報酬をお支払いします」  依頼主の住む村は教皇国家アークソサエティの片田舎にあったが、付近に危険な野生生物や山賊、ベリアルなどが出たという報告は今のところない。依頼主を護衛して、村からほど近い場所に植えられた桜を見に行き、また彼女を村まで送り届けるだけの単純な指令である。ちょっと真面目なお花見をするつもりで彼女に同行するのも一興かもしれない。  せっかくだからお弁当でも作って行こうか? それとも、ちょっとしたレジャーグッズでも仕入れてみる? 桜以外にも、道中の山には春らしいものが溢れている。同行者みんなで、百花花開くこの季節を楽しんだって良いのだ。  だが、油断はしない方がいいだろう。これは確かに「お花見」だが、道中何が起こるかは分からないのだから。 「私の我儘なお花見に、付き合ってはいただけませんか?」
ヨハネの使徒を打ち倒せ!
普通|すべて

帰還 2018-05-11

参加人数 8/8人 春夏秋冬 GM
 人類を脅かす脅威。  その一つが、ヨハネの使徒だ。  魔力を持つ人間であれば、誰であれ死ぬまで機械的に攻撃する。  特に魔力を多く持つ者を積極的に見つけ出して攻撃するため、常人よりも魔力を多く持つ喰人や祓魔人は狙われ易い。  とはいえ薔薇十字教団に属する浄化師であれば、戦う術は持っているので対抗は出来るだろう。  しかし、ヨハネの使徒が狙うのは浄化師だけではない。  喰人や祓魔人の才能を持って生まれてはいるが、まだ自覚のない子供なども多く狙われる。  今、ヨハネの使徒に襲われている兄妹も、例外ではなかった。 「怖いよぉ……にぃちゃん」  周囲を岩盤に囲まれた小さな穴の奥で、ミィは兄であるガウにしがみつく。 「だ、大丈夫だ……あ、あんな奴なんか怖くないんだからな」  涙を滲ませながら、必死にガウはミィを慰める。  その瞬間、周囲を震わせる轟音が。  声すら出せず、ミィとガウの2人は身体を硬直させる。  音の主はヨハネの使徒。  ミィとガウが逃げ込んだ岩穴を塞ぐ形で陣取っている。  ヨハネの使徒は身体が大きいため2人を追って中には入れないが、絶対に逃がさないとでも言うように、その場から動くことはない。  時折、脅すように岩壁に体当たりし、轟音を響かせていた。 「ぅ……うぅ、ひっく……」  恐怖で我慢できずミィは泣き出す。 「な、泣くな!」  ぎゅっとミィを抱きしめながらガウは言った。 「だ、大丈夫だ! 父ちゃんたちが、きっと助けてくれる!」 「ほん……とう……?」  恐る恐るミィはガウに尋ねる。  それにガウは、零れ落ちそうになる涙を必死に我慢し、精一杯の空元気を口にする。 「あ、あったり前だ! 父ちゃんたちは強いんだからな! それに、浄化師だって、きっと来てくれる!」 「……じょうか、し?」  初めて聞く言葉に、ミィは不思議そうに聞き返す。  それにガウは、力強く答えた。 「父ちゃんが言ってた。悪い奴らをやっつけてくれるって。それにすごく強いんだぞ!」 「……すごい、の?」 「あったり前だ! 父ちゃんが言ってたんだぞ。すぐに来て、アイツをやっつけてくれる。それまで我慢だ」 「がまん……?」 「我慢だ! それに泣くのもダメだかんな! 助けられた時に恥ずかしいだろ? だから泣くな。兄ちゃんが付いてる」  自分を抱きしめてくれるガウの力強さに、ミィは安堵し抱きしめ返す。  震えそうになる自分を必死に我慢しながら。  だが、それは一時の慰め。  ヨハネの使徒は決して離れることなく、幼い兄妹たちが岩穴の中で死に絶えるまで待ち続けるだろう。   それを分かっているからこそ、兄妹たちの父親は猟銃を手に戦おうとしていた。 「止めろ! 怪我してるのに何する気だ!」 「止めないでくれ! このままじゃミィとガウが!」  猟銃を持ってヨハネの使徒に戦いを挑もうとする、ミィとガウの父親であるボルフを仲間の猟師達が必死に止める。  彼らは危険な獣を狩り獲り、生計を立てている一団だ。  その腕っぷしを買われ、村々を巡ることがある。  ある村を訪れた彼らは、突如現れたヨハネの使徒に襲われ善戦するも、抵抗しきれずに怪我をしていた。  特にボルフは、かなり無茶をしたせいで肋骨まで折っている。  それはヨハネの使徒の目的が、自分の子供達の抹殺にあると戦いの途中で気付いたからだ。  執拗にミィとガウを追い立てるヨハネの使徒に戦いを挑んでいる間に、子供達は村の外れにある岩山へと辿り着き、そこに空いていた穴の奥に逃げ込んだのだ。  村人が食料の貯蔵庫として使うために掘っている最中だった事もあり、穴の大きさは子供が通れる程度しかない。  そのお蔭で、ヨハネの使徒は追い付くことが出来なかったのだが、代わりに子供達は逃げることが出来ないでいる。  このままでは子供達はいずれ衰弱死し、それを確認したヨハネの使徒は他の人間を殺すために動き出すだろう。  この状況で呼ばれたのが貴方達です。  猟師達がヨハネの使徒に戦いを挑んでいる間に、村人が浄化師の助けを求め、たまたま近くの他の村に居た貴方達を見つけ事情を話したのです。  貴方達がその村に居たのは、その村の近隣でヨハネの使徒の目撃情報があったからです。  調査と、場合によってはヨハネの使徒の破壊を教団から依頼されていました。  村人から話を聞いた貴方達は、早速ヨハネの使徒破壊に動きます。  ヨハネの使徒を倒すことが出来るのか?  そして子供達を助けることが出来るかは、貴方達の活躍に掛かっています。  ぜひ、ヨハネの使徒を打ち倒し、子供達を助けてあげて下さい。
あなたと蒸し風呂
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帰還 2018-05-09

参加人数 8/8人 瀬田一稀 GM
 教皇国家アークソサエティ、ソレイユ地区の山間で。  沼に落ちた子供を助けたら、その祖母という人が、感謝を述べた後に、こう言った。 「あんた達! うちの蒸し風呂に入っていきなよ!」 「えっ、でも……」  ためらったのは、そんな準備はしていないから。  でも女性は豪快に、ははは、と笑う。 「なんだい、恥ずかしいのかい? 大丈夫、あんたたちが入っている間は、貸し切りにしてあげるから」  困惑しつつも好意には逆らえず。  あなたとパートナーは、蒸し風呂に入らせてもらうことにした……のだが。 「ええええっ、貸し切りってこういうことなの?」 「ははは、これは参ったね……」  なんと、更衣室の入口は男女別れていたにもかかわらず。  あなたは、蒸し風呂の中でパートナーに出会ってしまった。  しかも二人は、生まれたままの姿である。 「都市の温泉は男女別になってるのに、ここの蒸し風呂は違うんだ……」 「しかたないよ。ここは近所の人が集まって作ったって言ってたじゃないか」  パートナーが、苦笑しつつ、あなたに背を向ける。 「君が先に入りなよ。僕は後から入るから」  気を遣ったのだろう。  しかし。  パートナーが出て行こうとするのを、あなたは「待って」と引き止めた。 「あんまり長く貸し切りにしてもらうのも悪いし……一緒に入っちゃおう、よ?」 「でも……」 「あ、あなたが! こっち見なければいいだけだから!」  あなたは顔を真っ赤にして言うと、パートナーから目をそらした。
出会いはemotional
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帰還 2018-05-08

参加人数 8/8人 木口アキノ GM
 ここは、薔薇十字教団本部談話室。  夕食後のひと時、親睦を深めるためにパートナーとこの部屋で過ごす浄化師も多数いる。  あなたたちも、そんな浄化師のひと組であった。  ほとんどが椅子にゆったりと腰掛け会話を楽しんでいる中、椅子やテーブルの間をちょこまかと駆け回る子ウサギのような少女の姿があった。 「こんばんは、はじめまして! あたしはついこの間浄化師の仲間入りをしたロップといいます!」  少女ははきはきとした声で挨拶をして。 「突然ですが、お2人の出会いについて聞かせてくださいっ」  と、手にした羽ペンをマイクのように相手に向ける。  突然そんなことを言われた方は困惑気味だ。  ロップは怯むことなく、言葉を続ける。 「あたし、将来はルポライターになりたいんです! そして、後世に残る、浄化師のルポタージュを書くのが夢なんです!」  きらきらと瞳を輝かせ、未来の夢を語るロップ。 「その第1段階として、浄化師たちの出会い、そこから記録していきたいと思いまして。浄化師の数だけ出会いの物語があるんです。それを、文字に残していきたいんです!!」  熱のこもったロップの言葉に、聞かれた相手は仕方がないなぁ、と苦笑いで語り出す。 「ありがとうございますっ!」  ロップは大急ぎでインクの蓋を開けると、手にしていた紙の束に羽ペンを走らせ、耳にした内容を書き記していく。  ひととおり話を聞き終えると、「ありがとうございましたっ」と勢いよく頭を下げ、他にも話を聞けそうな人はいないかとキョロキョロし始めた。  そして、ロップの瞳はあなたたちを見つけた。  とととっ、と、ロップが駆け寄ってくる。そして、あなたの目の前に立つと。 「こんばんは、はじめまして! あなたたちの出会いの物語を、聞かせていただけませんか?」  さて、少女の夢のために、少し昔話をしてあげることにしようか……。
ゼヴィ夫人のタロット夢枕
普通|すべて

帰還 2018-05-07

参加人数 8/8人 北織 翼 GM
「オホホホホホ、あたくしの召喚したこの強敵、あなたに倒せるかしらねぇ?」  魔女を彷彿とさせる濃紺のロングドレスから色白の肌を覗かせ、紅のマニキュアと口紅で彩られた老夫人が、森に囲まれた雄大な草原で高笑いを上げながら珍妙な魔物を何体も召喚します。  夫人が召喚した魔物は……  え?  ピーマン?  はぁ?! 「おのれピーマンベリアル! 成敗っ!!」  教団の制服を翻し、女性の祓魔人は得物を振り回し次々と巨大ピーマンを薙ぎ払います。 「うっ、青臭いっ! ピーマン臭いっ! いやぁっ、汁が飛んできた! うげぇっ、苦い! でも、負けない……負けないんだから!」  祓魔人は頬を目一杯に膨らませ息を止めて最後のピーマンベリアルを叩き潰しました。  ピーマン汁にまみれながら、祓魔人は微笑みます。 「これで全部倒したわ……!」 「フフ、あなたやるじゃない」  夫人はニヤリと笑いながら、祓魔人の前から姿を消しました……。  ……  ………… 「……ていう夢だったのよ! ピーマンベリアルなんて、あり得ないでしょ!? でもきっと、夢の中だから何でもアリなのかもね」  翌日、教団本部のカフェテリアで軽食を摂るあなたとパートナーは、夢の中でピーマンベリアルを倒したという女性祓魔人の話を聞いていました。  偶然にも隣り合うテーブルに腰掛けた縁であなたたちは彼女と言葉を交わす事になったわけですが、ピーマン炒めを嬉々として頬張りながら話す女性祓魔人は、したり顔で続けます。 「ねぇ、このピーマン、私の好物だと思う?」  あなたは頷きます。  だってそうじゃないですか、こんなに美味しそうにピーマンを口に運んでるなら……。  ところが。 「実はね、私ピーマン大嫌いだったの。こんな青臭くて苦い野菜のどこが美味しいのか分かんないわよね? ……だけど、喰人の彼は野菜が大好き。私がピーマンを残すといつもどこか寂しそうな顔して……彼と楽しく食事がしたくて、ゼヴィ夫人に相談したの」  ゼヴィ夫人……?  あなたは初めて聞く名に首を傾げました。  どうにも気になってしまい、あなたはそのゼヴィ夫人について女性祓魔人に尋ねます。 「あら、あなたも興味があるの? それなら、この辺りの路地裏とか捜してみたらどうかしら。私は昨日、偶然本部の近くの通りを歩く夫人を見つけてね……! 今日もきっと近くにいるはずよ。夫人は神出鬼没だから、早く行った方がいいわ! そして、ゼヴィ夫人に『逆位置夢枕タロット』を貰いなさいな」  早く行けと言っておきながら、この後お喋り大好きな女性祓魔人はあなたたちを小一時間拘束したわけですが……。  ようやく女性祓魔人から解放され、あなたは疲労感満載のまま彼女の話の要点をまとめてみます。 ●ゼヴィ夫人とは、一部の浄化師や教団員に熱烈なファンのいる凄腕タロット占い師である。 ●夫人は神出鬼没、そしてタロット占い師のくせに何故かその日の気分次第で日替わりで3枚のタロットカードしか持ち歩かない。 ●夫人に遭遇すると、裏返しのタロットカード3枚の中からを1枚引くよう言われる。 ●どんな方向から引いてもどうひっくり返しても、何故か夫人のタロットカードは逆位置の絵しか示さない。 ●引いた1枚は夫人からプレゼントされるが、必ずその晩寝る時に枕の下に置かなければならない。 ●そして、その晩は置いたタロットカードにまつわる夢を必ず見る。 ●夫人に貰ったタロットカードは、夢から覚めて起きるといつの間にか消えている……そう、カードは人知れず夫人の元に戻り、こちらの手元に残る事は無い。 ●夢の内容は……けっこうドぎつい。  あなたは半信半疑ながらもパートナーと一緒にゼヴィ夫人を捜しに本部を出ました。  すると……  何ということでしょう!  あなたたちもまた、例の祓魔人のようにゼヴィ夫人に遭遇したのです。 「あぁら、あなたたち、背負ってらっしゃるわねぇ」  ゼヴィ夫人はあなたたちを見るなり意味深にそう言うと、前情報のとおり3枚のカードを差し出してきました。 「さぁ、ここから1枚お引きなさいな」  あなたは恐る恐る1枚のカードをつまみ、そっと引きます。  表を返すと、逆さまの絵柄が目に飛び込んできました。 「そのカード、今晩必ず枕の下に置きなさぁい。それじゃ、夢で会いましょう」  ゼヴィ夫人は優雅に手を振りながら去っていきます。  どこか恐ろしげにも見える笑みを浮かべながら……。  あなたは『逆位置夢枕タロット』を手にしたまま、パートナーと顔を見合わせました。  さて、今宵ゼヴィ夫人はあなたの夢の中でどう暴れ回るのでしょうね……?
対ベリアル戦闘訓練
簡単|すべて

帰還 2018-05-06

参加人数 8/8人 久木 士 GM
「どうしたどうした新人ども! そんなんじゃ『イレイス』にベリアル食わせる前に、てめえらの魂が喰われちまうぞ!」  春のうららかな昼下がり。教団本部の広場に、若い教団員の怒声と浄化師たちの叫びが響く。彼らは初の戦闘任務を直前に控えた新米浄化師たちで、ペアの戦術や魔喰器の最終調整を兼ねた訓練に参加していた。ここには魔術鍛冶屋に所属する鍛冶師たちも同席しており、参加者が装備や感覚に不調を感じた際は即座に調整を行えるようになっている。  浄化師たちの命を繋ぐものにして、世界の救済に不可欠の存在。それが『魔喰器(まぐいき)』や『イレイス』と呼ばれる武器だ。  ベリアルは自らの元となった生物や、怪物に変化してから喰った生物の魂を鎖で縛っている。魔喰器はその鎖を喰うことで囚われた魂を解放し、ベリアルを滅ぼす武器だ。使用には並々ならぬ魔術への理解か、常人を凌駕する強大な魔力が必要とされるが、浄化師ならばその問題は既にクリアしている。  だがその一方で、武器は使用者の精神状態に浅からぬ影響を及ぼす。これが、滅びに抗うために得た力の代償だとでも言わんばかりに。  『アウェイクニング・ベリアル』や『覚醒』と呼ばれる重篤な精神疾患は、「存在理由を見失う」ことや「存在理由に傾倒しすぎる」ことで発症するケースがほとんどだが、魔喰器の捕食欲求が満たされないために発症したという例も稀にある。後者については祓魔人や喰人が教団に所属している限り、ベリアル討伐指令を避けることはできないためほとんど見られない。しかし何らかの理由で武器がベリアルを喰えなくなったとき、覚醒に陥ることが多い。  また魔喰器の力を完全に解放するには、使用者の血を武器に喰わせる必要がある。しかし魔術の知識を持たない一般人や、魔力の安定していない祓魔人・喰人がこれを使用した場合には、必要以上の血を喰われて死に至る。喰われた者は干からびるように体が朽ち、最後には砂となって消えてしまうのだという。  そのため薔薇十字教団では、教団員の安全と魔喰器の保全のため、契約を済ませて魔力を安定させる術を身に着けた浄化師にしかこれらの使用を許可していない。そして魔喰器との接触を必要最低限に留めるため、『口寄魔方陣』による装備の展開システムを完成・実用化させていた。  さて、ここまで説明を聞いた者は「何故この武器には、こんな致命的な欠点が存在しているのか」と考えることだろう。だがその問いについての答えは、驚くほど単純だ。なぜならば『魔喰器』は、生け捕りにしたベリアルから作られているのだから。  魔喰器はベリアルの形状を変化させ、再生能力と殺戮衝動を抑え込んだうえで作られる。この武器がベリアルの鎖を断ち切ることができるのも、捕食欲求を持っているのも、武器になる前は「ベリアルそのもの」だったことが原因だ。激しい戦闘で魔喰器が損傷あるいは破壊された場合、一日程度で完全に復元されて再使用可能になることの理由も、元となった「素材」の驚異的な再生能力を利用しているためだ。  ベリアルを魔喰器へ完全に作り替えることが可能になったのは、今からほんの十年前のこと。人間がベリアルを滅ぼせるようになったのも、教団に所属する『ヴェルンド・ガロウ』という名の魔術鍛冶職人が、1708年にこの技術を確立してからだ。  彼は捕らえたベリアルの形を変化させると、そこで記憶させた武器形状の維持と復元にのみ再生能力を行使できるよう「加工」を施す。魔喰器の形状自体も、オーソドックスな剣や銃から大鎌や盾まで実に多くの種類が存在し、種族やアライブの戦闘スタイルに合ったものを選択することができるという高い柔軟性を持っている。  浄化師の生命に関わる重大なデメリットと、それを受け入れても余りあるほどのメリットを併せ持つ魔喰器。  魔喰器という毒でベリアルという毒を制するのが、教団の、そして自力での救済を余儀なくされた人間の戦い方だ。  再び、教団本部訓練場。小休止を入れた指導役の教団員の元に、一人の教団員が真新しい書類の束を渡す。指導役の男は古傷だらけの腕や顔をタオルで拭うと、クリップで纏められた用紙を一枚ずつ捲っていった。 「対ベリアル戦闘訓練……もうそんな頃か」  男は遠くを見遣ってから、手元の書類に魔術でサインを入れていく。  対ベリアル戦闘訓練では、「ファントムトレース」と呼ばれる訓練用の軍事魔術によってベリアルの幻影を生み出す。それを相手に実戦形式の訓練を行う点が、通常訓練との最大の違いだ。  この魔術は幻影の戦闘能力や数を自由に調整できるため、参加人数に応じて最も効果的な条件下で訓練を行うことが可能だ。実体を持たない幻影の攻撃は、当たった箇所に魔力でマーキングを施すもの。この色の濃淡と着色部位から戦闘不能と判定された者や、装備に重大な異常があると判断された者は、即座にフィールドから強制離脱させられる。この際魔喰器に不具合があった場合は、訓練に同行する魔術鍛冶師が簡易調査と応急手当てを行うことになる。 「調整は俺も手伝うと伝えておいてくれ。新人を一人でも多く長生きさせたいのは、俺も同じだ」  指導役の男は確認を終えた紙束を教団員に渡すと、訓練の再開を宣言した。 「浄化師は教団にいる限り――いや、生きている限り、戦いから逃げることはできない。それなら戦う術を叩き込んでから、戦場に送り出してやりたいんだ。あいつらを最初のパートナーみたいな目に遭わせるのは、御免だからな」  男はベンチにタオルを放り投げ、口寄魔方陣で魔喰器と防具を再展開する。その顔には、大きな傷が走っていた。  指導役の男は、最初のベリアル討伐任務で最初のパートナーと右目を失った。原因は口寄魔方陣の展開ミスと戦術の調整不足。それを後悔し続けた彼はひたすら修練に励み、二人目の適合者に出会ってからは以前よりも慎重に、そして熱心にベリアル討伐任務に当たった。今ではその経験を買われ、新人浄化師たちの最終調整に臨時の指導役として呼ばれるまでになっている。  新人たちを自分と同じ目に遭わせたくない。その一心で彼は新人たちの訓練を引き受ける。そして今では、ある噂が教団内で囁かれるまでになった。「あの先輩教団員の訓練に参加すれば、どうも長生きできるらしい」と。  教団司令部1階、指令掲示板前。多くの浄化師が集うこの場所に、新たな指令が貼り出された。 「対ベリアル戦闘訓練 参加者募集中  詳細は司令部1階受付まで」  本格的な討伐任務を受ける前に、あなたとパートナーの命を預ける戦術や魔喰器の調整をしてみるのも悪くないかもしれない。
仲間と楽しむバーベキュー
とても簡単|すべて

帰還 2018-05-01

参加人数 8/8人 瀬田一稀 GM
「こんなにぽかぽかしてて、お腹がいっぱいだと、眠くなってくるねえ……」 「は? もう腹いっぱいなの? まだソーセージもビールもたっくさんあるのに」 「食欲魔人のあなたと一緒にしないでよ」  あなたとパートナーのやりとりに、周囲にいる仲間達が、くすくすと笑った。 「もう、恥ずかしいっ」  あなたはパートナーの肩をパシリと叩き、湖近くに移動する。  パートナーはまだここで、食事を楽しむようだ。  それにしてもと、あなたは芝生に寝転がった。  今日はなんていい日なんだろう。  見上げる空は、見事な青。  見渡す景色は、木々の緑。  そして向こうでは、鉄板の上に野菜や肉、ソーセージが焼けている。 (そういえば、さっき食べたチーズも美味しかったな……)  この地に戦いがあるなんて、嘘のようだ。  身体を起こし、みんなを見れば、エクソシストの仲間達は、にこにこと笑っていた。  初対面のメンバーも多いが、これからともに戦っていく身、親しくなっておいたほうが良いだろう。 (そう、いつどんな任務に赴くかわからないんだから……。いつか、背中を任せることだってあるかもしれないし)  あなたは、また一同の輪に戻ることにした。  教皇国家アークソサエティの東南に位置するソレイユ地区、某所。  湖畔でのバーベキューは、のどかにのんびり、時間が過ぎていく。
ケルベレオン愛好家の失敗
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帰還 2018-04-30

参加人数 8/8人 oz GM
「浄化師の諸君! いいか、司令部教団員であるヤコブ・フェーンが君たちに命ずる」  なりたての浄化師たちは目の前にいる司令部の男性教団員に召集をかけられ、この場に佇んでいた。 「貴族の飼っていたペット――『ケルベレオン』が逃げ出し、憩いの広場をうろついている。住民に被害が出る前に生きたまま捕獲せよ!」  ヤコブ・フェーンは仰々しい言い方で浄化師に話しかける。 「以上だ! それでは諸君、頑張ってくれたまえ」  どこの広場にケルベレオンが現れたのか、住民に被害が出た場合はどうするのかといった情報もなく、さっさと退出するヤコブを慌てて引き留める。  あまりにも説明不足すぎた。  引き留められ、不機嫌そうに「……何だ?」とねめつける。 「逃げ出したケルベレオンはどこをうろついているんですか?」と尋ねると、 「そんなことも分からんのか。エトワールの東部にある貴族街に近い広場だ」  鼻を鳴らしながら答える。  浄化師たちは不満をこらえながら、住民に危害が出た場合、教団としてはどうするかを聞き出そうとすると、 「いかん! 住民に危害がでる前になんとしても捕まえるのだ! ルベッタちゃんに何かあったら私の責任になってしまうじゃないか!?」  ヤコブは泡を食ったように怒鳴り始めた。 「ルベッタちゃんを飼っている貴族はケルベレオン愛好家なのだ! 『かわいいルベッタちゃんを早く家に戻してちょうだい』と言われ、『私がやり遂げて見せましょう!』と大見得を切ったからには、なんとしてでもやらなければならんのだ」  どうやら貴族のわがままとヤコブの面目を守るために巻き込まれた浄化師たちはうんざりとしながら話を聞いていた。 「そもそもケルベレオンは爬虫類のような皮膚をした三頭の狂犬だ。主に館の門番や番犬として貴族や魔術師に飼われることが多いのは知っているな?」  知らないと答えれば、司令部の男性は得意げに「勉強不足だぞ」とにやにや笑いながら言うのが分かり切っていたので、黙って頷く。少し不満げな顔をしたもののヤコブは話を続ける。 「ルベッタちゃんが逃げ出したのは3日前だ。貴族さまが住んでいた屋敷からそう離れていない憩いの広場で目撃情報が多数上がっている。今のところ住民の被害も出ていない。元々ケルベレオンは怒らせなければ温厚な気質だ。それに認めたものにしか懐かない性質上、飼い主には忠実だからな」 「それなら何故逃げ出したんですか?」と何気ない問いに、ヤコブはあからさまに目を逸らしながら、ごほんとわざとらしく咳払いする。 「……鍵を閉め忘れていたそうだ」  その言葉に浄化師が絶句していると、ヤコブは視線を合わせることなく話を進める。 「その貴族は他にもケルベレオンを何匹か飼っていてな。ルベッタちゃんは最近飼い始めたばかりで、環境に慣らすために檻に入れていたらしいんだが、……不注意で鍵を閉め忘れていたらしい。最悪なことにまだ調教前で誰のことも主人として認めていないみたいでな。案の定、檻の中はもぬけの殻だ」  浄化師たちの物言いたげな視線に我慢ができなくなったのか、ヤコブは大きく咳払いし、早口でこう告げた。 「というわけで、貴族様からわざわざいらん恨みを買うわけには教団としてもいかん! 諸君らに、かかっているのだ。無事にルベッタちゃんを捕獲して送り届けるように、分かったな!」  それだけ言うと足早に司令部から立ち去ってしまった。  面倒事を押しつけられた君たちだが、指令を出された以上、浄化師として働かなければいけない。住民の安全を守るためにもケルベレオン捕獲任務を遂行しよう。
白と黒の妖精
とても簡単|すべて

帰還 2018-04-30

参加人数 5/8人 井口創丁 GM
 ワタシがまた心から笑える日は来るのだろうか。  体長20cm、重さ1kgに過ぎない『ピクシー』と人間に呼ばれるワタシ達。  人間とは友好関係を築いていると言ってもそれは一面に過ぎない。  少なくともワタシは種族の壁を越えることなんて出来ないと思う。  例えば、ピクシーがアシッドに侵されベリアルと化してしまった場合人間は迷うことなくソレを排除するだろう。  そして人間は小柄なワタシ達を容易く屠った後、笑顔でこういうに決まっている。   「もう危険はありませんよ」  それは仕方の無いことだと言うことは、百も承知している。  なぜならベリアル化してしまった時点で助からないことが確定してしまっているのだから。  なぜならそれは人間にとってもワタシ達にとってもしなくてはならないことだから。  それでも、それでも心は人間を拒絶せずにはいられない。  なんで事前にアシッドに気付き対処できなかったのか。  なんで未だにベリアル化した生物を殺さずに元に戻すことが出来ないのか。  無理難題を言っているのは分かっている。  そんなものが出来たら苦労なんてしていないし、なんならワタシがやってのければいいだけの話だ。    分かっている。分かっているんだ、そんな簡単なことくらい。  それでも、ワタシの脳に焼きついた浄化師と呼ばれる人間を忘れることが出来ない。    奴らは迷うことなく父さんを灰に変えた。  いけない。自分を客観視するための例え話がいつのまにか自分を追い詰める暗い話になってしまっていた。  ワタシはそんな苦悩を何とか断とうと頭を左右に振り、藁を引き詰めたベッドに頭をうずめる。  こんなことをしても何も解決しないことは分かっている。  それでもせずにはいられない。  そんな中、聞きなれた声で呼びかけられた。 「ミレ、行くわよ」  藁から顔を離すと、そこには母さんがいた。  しかし、それは最早母さんではなかった。  見開かれた焦点の合わない目、皺で歪んだ顔の輪郭、そして何より三日月のように無茶な角度まで釣り上がった口角。  それは人間から『ヤレリー』と称される害獣の姿であった。  ワタシの両親は自他共に認める仲睦まじい夫婦だった。  それゆえに、父さんの死は母さんを狂わせるには十分な引き金となってしまった。  ヤレリーとなった母さんは毎日ワタシを連れて、同じくヤレリーとなってしまった同志の元へ行くようになった。  普段誰も近寄らないであろう森の端にある崖の近くの茂み。  そこで日々、ヤレリーたちは自身に降りかかった不幸を言い合い人間を憎む不毛な話し合いが行われている。  ワタシは集団から離れ、崖の真横にある木の上でひっそり座っていることしか出来なかった。    周囲の視線が突き刺さる。無理も無い。ワタシはまだ『ピクシー』なのだから。  どうしてワタシはヤレリーになれないのだろうか。  人間が好きだから? 仕方の無いことだと理解してしまっているから?  ……父さんを愛していなかったから?  その考えが出てしまってからワタシは自分自身に糾弾され続ける。 『心の無い悪魔』『愛を捨てた抜け殻』『不浄の怪物』『父殺し』  早朝から夕暮れまで続く不平不満の声の中、ワタシは更にワタシを苦しめ続ける。  気が付いたときにはワタシは木から落ちていた。真下には深い谷と川が見えた。  ピクシーを第一に想っていた筈のヤレリーたちはワタシが落ちていることになど気付く様子すらなかった。      全身がズキズキと痛む。  周囲は石と草木に囲まれていた。どうやら川辺に打ち上げられたようだ。  見える空と森からそんなに遠くまで流されてはいないことが分かる。  死ねなかった。  最初に脳裏をよぎったのはそんな感想だった。  次に全身を動かそうと力を込める。身体は痛みを伴ったが普段どおりの活動をしている。 「はぁ」  ため息が零れる。  きっとこれは幸運だったのだろうが、ワタシにとっては不幸でしかない。  まだ世界はワタシに苦しめと言うのだろうか。  空を睨みながら上体を起こす。 「ん!?」  思わず声が漏れる。  太陽の光を反射する川の水は、同時にワタシも映し出している。  そこに映ったワタシは母さん程ではないにしろ口角が邪悪に釣り上がっていた。 「やった! やった! やったぁ!」  これでワタシも認めて貰える。ワタシがピクシーを家族を父さんを愛しているって証明できる。  つい先程までの体の痛みはどこかへ消え、もう既にワタシはヤレリーの集会場へと飛び立っていた。    こんなに体が軽いのはいつ振りだろう。  羽が風を心地よく切り裂く。  体に残った水気が飛沫となって背後に飛び散り、小さな虹を作る。  崖の真下まで来たワタシは速度を上げ、垂直に飛び上がる。  ワタシはもう木の上で震えなくていいんだ。  気持ちはそのまま天まで昇ってしまいそうだった。  そして崖を越え、そのまま母さんのいる茂みの中へと突入……することは出来なかった。  茂みには紫色の靄がかかっていた。  その紫色は見たもの全てを拒絶する不快感の塊のようなものだった。  何より、ワタシはその紫色に見覚えがあった。  それは、死ぬ間際の父さんが纏っていたもの。  それは、全てをベリアルへと変えるもの。  それは、アシッドと呼ばれる史上最悪の瘴気。    茂みの内側から聞きなれた声がする。  しかし、その声が言葉を紡ぐことは無くひたすらに叫びをあげるだけだった。 「ギャァアアアァァァァアアアアァァァァ!!!」  それが母さんの断末魔なのかベリアルの産声なのかは分からない。  ただ、ワタシをその場から逃走させる合図としては申し分ないものであった。   「これが運命なのかな」  我武者羅に空を飛び、たどり着いた場所を眺めながらワタシは呟く。  狂い始めた元凶があるなら、狂いを終わらせるのもその元凶の仕事に違いない。  ワタシは理解できないほど堅く大きな建物の正門を潜りこう告げる。 「ヤレリー型のベリアル討伐を依頼します。それと――」  その建物には『薔薇十字教団』と言う文字が刻まれていた。   「――ワタシを殺して下さい」
思い出ラストノート
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帰還 2018-04-29

参加人数 8/8人 十六夜あやめ GM
 教皇国家アークソサエティの中心地、首都エルドラドから見て西部に位置する巨大都市エトワール。各地域の生産品を元に様々なお店が展開され、美術品や美しい建築様式などの芸術に富んでいる。市民階級から軍事階級、稀に貴族階級の者が好んで住んでいる中枢地区で、常に観光客で賑わっている街だ。  そんなエトワールの街を歩いていた浄化師の喰人と祓魔人。ふと、どこからか運ばれてきたのか、甘い香りが漂ってきた。嗅いだことのあるような匂いの元を辿っていく。すると、路地裏にひっそりと建つ、ガラス張りの建築物の前に着いた。どうやら香りの発生源はここのようだった。吸い寄せられるようにふらふらと建物の中へ足を進める。 ステンドグラスの扉を開けると、そこにはキラキラした空間が広がっていた。まず目に飛び込んできたのは天井からぶら下がるシャンデリア。多くの光源と光を複雑に散乱させるためのカットされた硝子が多数配列された、非常に繊細な装飾が施されている。次に、棚に丁寧に置かれたガラス瓶。赤や青、黄色や緑といった色とりどりの液体が入っている。大理石でできたカウンターには小瓶がずらっと並んでいる。そしてカウンターの奥にラベルの付いた無数のガラス瓶があった。天秤やすり鉢、スポイトやビーカーも置かれた工房のようだった。 「いらっしゃいませ。ようこそ『ラストノート』へ」  カウンターの奥の部屋から一人の女性が姿を現した。レース使いの花柄の服を着た柔らかい雰囲気を醸し出す女性は続けて言う。 「ここは香水を作る工房です。もしよろしければ香水を作ってみませんか? 現在体験教室を無料で開いているので。きっと素敵な思い出になると思いますよ」  店員が言うに制作時間はそんなに掛からず、作業も簡単らしい。  調香の手順としてはじめにイメージを描く。次に香料の種類を決定する。香料の配合を決定し、最後に調合・調香作業を行いイメージ通りに微調整して完成。  香りのタイプによって相手の好みやタイプを知ることができるらしい。  フローラル・ブーケなら花束のようないくつかの花の香りを混ぜ合わせた豪華絢爛な香りで女性に親しまれる。  オリエンタルなら甘味が強く、持続性のあるエキゾチックな動物性香料が効いた神秘的でセクシーな香りを身に纏える。  種類は11種類。ひとり一人の個性が出るそうだ。  まだパートナーと知り合って間もない浄化師にとってお互いをより深く知るいい機会かもしれません。  匂いや香りは記憶や思い出に深く関係していると言われています。忘れることのない、世界で一つの素敵な香水を作ってください。  あなたはどんな香りがお好きですか?
ヴァン・ブリーズの灯台守
簡単|すべて

帰還 2018-04-29

参加人数 8/8人 久木 士 GM
 闇夜には光が、旅路には道標が。  そして船路を行く者には、光であり道標でもある灯台が必要だ。  ヴァン・ブリーズ地区は教皇国家アークソサエティ北部に位置する、海抜の低い土地が多い地域だ。この地区では国の南東部に位置するソレイユ地区と並んで農業が盛んだが、ブリテンで大量に消費される石炭を中心としたエネルギー資源の輸出によっても繁栄している。地区の住人は市民階級の者が大半で、彼らは中程度の生活水準で日々の暮らしを営んでいる。  ヴァン・ブリーズは海に面していることから、地区内には水に関連したレジャー施設が数多く存在する。そして海産物も豊富であることから、観光目的で地区を訪れる者も多い。  また、この地区では海運が盛んなため港が多く、航行する船舶の数も膨大だ。そのため灯台の数も他の地区に比べて遥かに多く、中でもとりわけ有名なものが『シェネフラウ灯台』だ。地区内の灯台は市街地から少し離れた場所にあり、周囲には人工的な灯りが全くない。そのため灯台周辺では、昼はどこまでも続く海、夜は満天の星空を眺めることが可能だった。  現在アークソサエティにある灯台の半数は、設置式の大型魔術道具によって光を生み出している。この「魔力化」とも言うべき革新は1700年に起こった『技術革新』によってもたらされた恩恵の一つで、アークソサエティの国力はこれによって飛躍的に増大、それに伴って人々の生活水準も国内各地で大幅に引き上げられた。  かつて国内の灯台では灯台守が火を焚き、それを一晩中燃やし続けていたが、現在の彼らの仕事は定刻の光源装置のチェックが主だ。薔薇十字教団で開発された技術を基にしたこの装置は、簡素な作りながらも信頼性は抜群で、エネルギー効率もかなり良い。装置に問題があればそれに対応したランプが灯って、その組み合わせによってトラブルの原因や種類の特定が可能だった。  光源装置は魔力を動力源としているものの、稼働によって生じる魔力や周辺環境への影響はごく僅かだ。そのため灯台がヨハネの使徒の誘蛾灯となることもなく、仮に魔力の暴走が起こったとしても被害はせいぜい装置が動かなくなる程度。そしてこの高い効率と安全性の代償として、灯台の1フロアを占有するほどの設備と定式陣が必要になっていた。  装置のメイン灯が動かなくなった場合はサブ灯が自動点灯する仕組みだが、それも使用できない場合は小型の補助動力源を用いた非常用光源への切り替えが行われ、後日教団本部に装置の修理を要請することになる。これは国内にある大型魔術道具を薔薇十字教団が管理しているためで、魔術道具の悪用・濫用を防ぐために必要な措置だった。  そして、場所は移って薔薇十字教団本部、司令部1階。指令掲示板前を眺めていたあなたたちは、ヴァン・ブリーズの灯台群に関する指令を見つけ、詳細を聞きにフロア内にある受付へ向かった。 「今月ヴァン・ブリーズ地区の灯台の一つで、光源装置の設置工事が予定されています。皆さんにはそこで、装置の試運転に協力していただきたいんです」  受付の女性教団員が、指令書の綴じられた分厚いファイルを読みながら答える。あなたたちが「どうして試運転に浄化師が必要なのか」と尋ねると、彼女は一人で何事か頷いたあと、あなたたちに笑いかけながら説明した。 「それもそうですね。では疑問にお答えしましょう。  灯台の光源装置が大型の魔術道具で、我が教団の管理下にあることはもうご存知ですよね。装置は大気中の魔力(マナ)を取り入れることで動力を得ていますが、この動力部が最大効率で安定して稼働するには起動から数日が必要です。装置には使い捨ての補助動力源も組み込まれていますけれど、魔力効率が悪くなった時はそれを使うより、直接魔力を送り込んだほうが早くて効率も良いんですよ。  ……それに、ここだけの話ですけど、この使い捨ての補助動力源が結構高くて。だから本当に『緊急用』なんです。それを何日も使ったら、教団の経理担当者が卒倒しちゃいますよ」  ということは、今回の任務では「相対的に安価な補助動力源」として務めを果たせばいいのだろうか。そう理解したあなたたちが受付の教団員に再び尋ねると、彼女はあなたたちの理解の速さを褒めて指令の概要を説明した。  指令に参加する浄化師は交代で夜間任務にあたり、灯台の光源装置の試運転に協力する。装置の魔力効率が落ちてきた場合は一定時間継続的に装置へ魔力を送り込むが、この際必要になる魔力はごく僅かなもの。浄化師の消耗は簡易的な魔術を使用する際よりも更に少ない。この「放出魔力量の調整」や「継続的な魔力の放出」という行動は新人浄化師たちにとって良い訓練になるので、優先して指令を掲示している。  装置の出力が低下する可能性があるのは、一晩に数度ほど。それまでは灯台の周囲の散策が可能で、問題があった場合は灯台守があなたたちに向けてランタンを振って教えてくれる。そして任務が終わった日とその翌日は、ヴァン・ブリーズでの観光が許可されている。 「もっとも当日は夜通し任務にあたった後ですから、宿に帰った後は昼過ぎまでぐっすり、でしょうけどね」  受付の女性は苦笑しながら答え、もう一日観光に充てられる日があれば良かったのですが、と申し添えた。 「ちなみに皆さまがどの魔力属性をお持ちであったとしても、この指令には参加可能です。光の色は装置で自動的に調整してくれますから」  それにしても彼女は、何故こんなにも灯台に詳しいのだろう。疑問に感じたあなたたちがそれを聞くと、彼女はやはり笑ってその質問に答えた。 「実家の父も灯台守で、小さい頃は私もよく手伝ったりしてたんですよ。今は兄が跡を継ぐため、故郷ブリテンで父に学んでいます。現在あちらでは蒸気式が主流ですけど、魔力と蒸気の複合式装置も出始めています。去年帰省した時は新品の複合式装置が来てたんですけど、うっかり魔力を注ぎすぎたら壊れて……あっ」  彼女は恥ずかしそうな表情をしてあなたたちから視線を逸らすと、慌てて手続き用の書類をカウンターに並べる。 「とっ、とにかくっ。これは難しい指令とか危険な指令じゃありませんから、安心して引き受けてくださいね。装置が壊れちゃっても、修理代は全部教団持ちですから大丈夫です。後でみっちり怒られますけど……。  それじゃあ、よろしくお願いしますね、浄化師さんっ!」  あなたたちは苦笑しながら書類を受け取り、必要事項を記入していく。少し大人びて見えた受付の女性の顔も、今では歳相応の眩しい笑顔で輝いていた。  休暇でもなければ戦闘でもないこの指令は、本当に地味なものだ。しかしこのような指令の解決も、人々の生活を維持・向上させるうえでは欠かせないもの。派手で分かりやすいものだけが浄化師の仕事ではないと、あなたたちは知っている。今は他の指令に備えて、力や経験を蓄えるときだ。あなたたちはそう考えて、この指令に参加する。  首都エルドラドからヴァン・ブリーズへ足を延ばし、都市の喧騒を離れてさざ波の音色に耳を澄ませば、日頃の疲れを忘れることができるだろう。そこでならあなたたちの心の距離も、また少し縮まるかもしれない。
お好み料理を作りましょう
簡単|すべて

帰還 2018-04-27

参加人数 8/8人 春夏秋冬 GM
 薔薇十字教団。  言わずと知れた、世界最大の魔術組織だ。  浄化師たちが所属している組織でもある。  教皇国家アークソサエティに本部を置き、各地に支部を持っている。  浄化師たちは、こうした薔薇十字教団の施設で普段は暮しているのだ。  例外的に、教皇国家アークソサエティの周辺であれば、教団施設内にある寮以外での生活も認められてはいたが。  とはいえ往々にして、大半の浄化師たちは教団施設での生活を送っている。  なにしろ、寮は男女別々ではあるが、全室個室。  衣食住が揃った生活ができ、指令もすぐに取りに行くことができる利便性まである。  生活するにも仕事をするにも、楽なのだ。  もっとも男女別々の寮は、パートナーの浄化師だろうと異性が訪れることは原則禁止されているので、一部の浄化師には不評であったが。  それはそれとして、教団施設は生活の場として十二分な場所なのだ。  そうした教団内施設のひとつに、食堂がある。  教団寮の一階にある食堂では、様々な民族料理を楽しむことが出来る。  たとえば、エスニック料理。  エビを使った酸味と辛味が特徴の『トムヤンクン』に、挽肉にエビや卵を加えて作る辛味のある焼き飯『ナシゴレン』や、茹でたエビや春雨に野菜など様々な物を米で作ったバインチャンと呼ばれる薄い皮で包んだ『ゴイクン』などなど、様々な料理が用意されている。  他にもさまざまな料理が用意されているが、問題がない訳でもない。  教団は、浄化師の才能がある人間を各地から本部や支部に集めているのだが、それは様々な出身地からのものだ。  当然、それぞれ親しんだ味がある。  そうでなくても、味の好みは千差万別。  偶には自分の故郷の料理が食べたい。  あるいは、用意されている物ではなく、自分の好みのものが食べてみたい。  なんて意見が出て来るのだ。  それは仕方がないことではあるが、だからといって食堂の職員としては困りものだ。  一体どんな料理を作れば良いのやら?  そうして思い悩んだ上で、一つの考えが。  いっそのこと、食べたいものを浄化師に作って貰えば?  それぞれの故郷の味や、あるいは自分の得意料理。  そうしたものを作って貰い、それを参考に食堂のメニューを考えていこう。  ある食堂職員の意見に皆は賛同し、浄化師に依頼が出されることになりました。  内容は、食堂の新メニューの参考にするために、何か料理を作ってみて欲しいとの事です。  材料や調理の場は提供してくれるので、腕を披露するのみです。  この依頼に、アナタ達はどうしますか?  依頼なので、普段は作れない絢爛豪華な料理にチャレンジしてみますか?  それとも故郷の味や、自分の得意料理をパートナーの浄化師に振る舞ってみても良いでしょう。  パートナーと料理を通じて交流するのも一興です。  場合によっては、他の浄化師と一緒に料理を作ってみるのもアリでしょう。  皆さんの料理の腕を、振るってみて下さい。
噂の幽霊屋敷
普通|すべて

帰還 2018-04-27

参加人数 8/8人 狸穴醒 GM
●ある労働者の話  広場に面した酒場は、仕事を終えた労働者たちで賑わっていた。  高級な店ではない。料理の匂いと煙草の煙がたちこめる中を、ジョッキを携えた娘たちが行き交う。  客同士が語り合う声は大きく、時折けたたましい笑い声が響いた。 「聞いたかよ、隣町の先週の事件!」  大ジョッキのビールを飲み干して、商店で働く男が言う。  答えるのは宿屋の下働きの若者だ。 「知ってますよ、あれでしょう?」 「何の話だ?」  同じテーブルの客は事情を知らないらしい。  商店員と宿屋の下働きは顔を見合わせてから、わざとらしく声をひそめた。 「終焉の夜明け団ですよ」 「そうそう。薔薇十字教団がアジトを摘発したんだとさ!」 「身体に十字架を埋め込んだ連中が、10人以上も捕まったらしいですよ」 「その話なら俺も聞いたぜ」  別の客が話に加わった。 「まだ何人か信者が逃げてるんじゃなかったか?」 「そうらしいな。案外、まだそのへんに信者がいるかもしれないぜ」 「やだぁ、怖いわねぇ」  酒場の娘が客に同調しながらジョッキを並べていく。  男たちはひとしきり終焉の夜明け団の悪口を言ったあと、別のニュースへと話題を移した。  その賑やかなテーブルを背にして、カウンター席にひとりで座る男がいた。  他の客同様に服装は質素だが、この店で一番上等の料理をつまみにビールを飲んでいる。 「今夜はずいぶんご機嫌だねぇ。いいことでもあったのかい?」  店主がカウンターの中から男に声をかけた。 「おお、わかるか! 仕事がうまくいったんで給金を弾んでもらったんだよ」 「それは何よりだな」 「頑固者の親方に褒められてなぁ。いやぁ、生きてるとこういうこともあるもんだ」  嬉しげに言って男は酒を追加する。ジョッキにビールをつぎながら、店主が釘を差した。 「飲みすぎるなよ。あんたの家、不気味なお屋敷の前を通るだろ。帰り道には気をつけな」 「なんの、まだまだ!」  結局、男が店を出たのは夜半近くだった。鼻歌混じりに帰路につく。 「ふんふんふふーん……なべて世はこともなし、とねぇ」  彼の家は路地の奥である。  あたりは古い住宅地で、ガス灯も少なく暗い。男のほかに通行人はいなかった。  男は路地に入った。  生い茂った木々が路地にはみ出し、視界を遮っている。  木々の奥には、長いこと放置された屋敷があるはずだった。  千鳥足で歩きながらふと視線を上げたことに、特に理由はない。  荒れ放題の屋敷は暗闇の中で黒い塊と化し、建物と庭木の区別もはっきりしなかった。 「……ん?」  そのとき、男は見た――ぼんやりした光が、屋敷の庭木の間に揺れるのを。  男は魅入られたように光を見つめた。  そのうち光は何かに導かれるようにふわふわと動き、円を描く。  そうして、かき消すように見えなくなった。  どこかで野良犬が遠吠えをしている。  男はしばらくそこに立ち尽くし、光が消えた方向を眺めていた。 「……幽霊?」  やがて彼は我に返ると、一目散に逃げ出した。 ●指令 「今度の指令はブリテンのさる地主からの依頼で、妙な噂のある空き家を調べてほしいというものです」  指令書を見て集まった浄化師たちに、薔薇十字教団の団員が説明をする。 「空き家の敷地内で、人魂のようなものが何度も目撃されているとか」  目撃者の階級はバラバラだが、皆ごく真っ当な市民のようである。 「皆さんは問題の空き家内部を調査し、市民に危険が及ぶ可能性があるようなら排除してください」  要するにこの指令は、幽霊屋敷の調査ということらしい。  生物が死ねば、魂は天国または地獄へゆくと言われている。  しかし何らかの理由で魂が地上に留まり、幽霊となって怪奇現象を引き起こすこともあるというが―― 「幽霊はもちろんですが、街中とはいえベリアルが入り込んでいる可能性もあります。くれぐれも油断は禁物ですよ」  真面目くさって団員は言った。 「それと、依頼人は屋敷の安全が確認できたら清掃して貸し出したいようです。むやみに家を傷める行為は避けてくださいね」
地に潜む
普通|すべて

帰還 2018-04-25

参加人数 8/8人 三叉槍 GM
・慣れという名の恐怖  人は未知をこそ恐怖する。  昔、とある賢者はそう言った。  目の前に現れた狼の群れよりも、むしろ暗闇に響く無数の遠吠えの方が怖ろしいのだと。  それは言いえて妙であろう。確かに人は未知なるものを恐怖する。  しかし、つまりそれは、人は見知ったものであれば、それが例え命の危険を及ぼすものであったとしても少し見くびってしまうということでもある。  ここは教皇国家アークソサエティの一角。  集落と集落をつなぐ道の中ほどにある茂みである。  その森の入り口で二人の若者が口論をしていた。 「いや、これ以上はやばいって。ここ、あれだろ? ミミズ沼が近いところだろ?」 「大丈夫だって。今時期はまだミミズは動き出してないから心配すんな」  不安げな様子で帰宅を促す男と、それをたしなめながらきょろきょろと地面を見渡し何かを探す男。  二人とも腰に木製のかごを装着しており、その中には相当な量の草が入っている。  どうやら森で食料となる植物を採取しているらしい。  自分で食べるつもりなのか、それとも売り払ってお金にするつもりなのかは窺い知れないが。 「大体、怖がり過ぎなんだよ。ここはいつも俺が使ってる庭みたいなもんだから」  怖がる相棒をさておいてずんずんと先に進む男。 「本当に大丈夫なんだろうな……」  不満を漏らしながらも結局しぶしぶ後ろに従うもう一人の男。  ここで一人だけ帰るとなると、まるで自分だけがビビって帰ったみたいで気に食わない。  一種の意地ともいえるが、実際には場の空気に流されて逆らえない性格というだけである。 「大丈夫、大丈夫。ここ数年はこの辺で被害者はでてないし」  相棒の不安を和らげようと意識して明るい声を男が出す。  ミミズ沼というのはこの森に存在する沼の異名である。  正式な名称はアシッド湿地帯。  名前の通りアシッドに汚染されてしまった沼地であり、ベリアルの発生率が非常に高く、普通の人は近寄らない危険地帯である。  特に出現率が高いのがドレインワームと呼ばれる巨大ミミズであり、その為現地民からは『ミミズ沼』という異名で呼ばれていた。  とはいえ、ここはまだその湿地帯からは距離があり、アシッド汚染の影響も薄い。  ベリアルとの遭遇率はそれほど高くなく、故に男が言うように数年被害らしい被害は聞かれていない。  その意味では確かに安全だと思うのも無理はない。  ガサッ! 「ん? 何か落としたか?」 「……いや、なにも」  しかし、それは致命的な勘違いである。  今まで被害が出ていなかったのは『そこが危険だと誰しもが理解していた』からだ。  決して『安全な場所だから』ではない。  それを男は理解していなかった。 「おい、足元に……」 「えっ?」  後ろの男の警告が届くよりも早く、足元の地面からドレインワームが飛び出し男の首筋に食らいつく。 「あっ……が――」 「う、うわぁぁぁぁ!」  悲鳴も上げられず倒れた男の代わりと言わんばかりに後ろの男が大声を上げる。 「た、たす……」 「ひっ、ひぃ!」  助けを求め伸ばされた手を避けるように足を引っ込め、男は一目散に駆け出す。  一切の躊躇いなく、非情とも言える判断。  だが、結果的にそれは正しかった。  ガサッ! ガサガサッ!  今まで男が立っていた場所も含め、周りの地面から次々と新しいワームが顔を出す。  もしも男が友人を助けようとしていれば、あるいは少しでも逃げるのをためらっていれば彼もまたワームの餌と化していただろう。 「あ……ぎ……」  倒れた男がかすかにうめき声をあげる。  ワームの牙には麻痺性の毒があり、もはや体を動かすことはおろか、悲鳴を上げることすらできない状態だった。 「あが……」  故に、数体のワームが群がり、貪りつくしても、茂みに男の悲鳴が響くことは無かった。 ・苦言 「まったく……いい大人が行っていい場所と悪い場所も分からんのか」  一枚の紙をペラペラと翻しながら小さな子供が呟く。  いや、正確には彼は子供ではない。確かに外見は10歳かそこらの少年だが、彼はれっきとした教団付きの職員である。  子供に見えるのはマドールチェであるが故で、生まれてからの年数でいえばそこらの大人よりもよほどの高齢だ。 「その山菜とやらが命と引き換えにしても惜しくない代物だったとは思えんがな」  寄せられてきた報告書に目を通し、一人毒づく。  彼の仕事は教団に寄せられた様々な依頼を教団に所属する浄化師達に依頼として卸す事である。 「地元の人間であるが故か。慣れというのは怖いものだな」  さらさらと慣れた様子で書類にペンを走らせる。 「確かに今年は例年よりも『ミミズ沼』の周辺地域でのベリアルの目撃情報が多い……。対処しておくべきだろうな」  そう言って、彼は机の上の『依頼行き』と書かれた箱に紙を放り込んだ。
そんなところ見ちゃだめっ!
とても簡単|すべて

帰還 2018-04-23

参加人数 8/8人 瀬田一稀 GM
 薔薇十字教団に属するエクソシストたちは、教団から制服を与えられている。  しかしそのアレンジは自由だ。  あなたもまた、エクソシストとして指令を受けるにあたり、戦いやすいよう、ちょっとした好みも加味して、制服のアレンジを依頼していた。  その仮縫いが今朝、完成したらしい。  連絡を受け、あなたはパートナーとともに、制服の試着に訪れた。 「不都合があったら、気軽におっしゃってくださいね。今ならまだ十分直せますから」  担当メンバーに案内された試着室に一人で入り、制服に着替える。 「これを着ると、背筋が伸びるなあ……」  腕を上げ、腰をひねって、着用感を確認。 「なんかちょっときつい気がするけど……まあいいか」  あなたは、試着室を出、待ち受けていたパートナーに笑顔を向けた。 「おまたせ!」  ところが、だ。 「わっ!」  パートナーに、早くこの姿を見てほしいと思っていたからだろう。  足元の段差に気付かず、思い切りつまづいてしまった。 「危ないっ!」  パートナーが手を差し出してくれるも、間に合わず、気づけばあなたは床の上。 「いった……腰打っちゃった。あーあ、せっかくの新しい制服も汚れ……」 「ってお前っ!」  手を伸ばしてくれていたパートナーが、大きな声をだす。 「え? なにか不具合でも……」  あなたは自身を見下ろし――。 「あああっ!」  思いきり叫んだ。  これでは、パートナーが驚くのも無理はない。  この制服を着たとき、きついと思っていたあの場所が、それはもうぱっくり破れていたのだから。 「見た? 見たよね? その反応は見たよね?」 「いやいやいや、気のせいだ。心配するな。見てない。なにも見てない」 「嘘、絶対見たよね! っていうか忘れて、今見たもの瞬時に忘れて!」 「そんな無理……って、いたっ! 頭を掴むな、揺するな、そんなことしても、見たものがそう簡単に忘れられるかっ!」 「あああ、やっぱり見たんだあああ」  これから長い付き合いになるのに、こんな失敗をやらかすなんて!  ああ、もういったいどうしたらいいの!?
アブソリュートスペル
とても簡単|すべて

帰還 2018-04-21

参加人数 8/8人 oz GM
 さあ、高らかに吼えろ。  ここに自分はいると。  喉が張り裂けるまで謳え。  存在を証明するために。  声を上げろ。  そうでなければ、誰にも届かない。  お前たちの信念を見せつけろ。  叫べ、アブソリュートスペルを。  これは神へと反逆する物語。  かつて人間は様々な種族と生物と共に生きていた。  それは懐かしき幸せの日々。  今は失われてしまった愛おしくも泡沫の時代。  人間が世界の禁忌に触れた瞬間、その優しい時間は呆気なく終わりを迎えた。  神は、神罰を下す。  禁忌に触れたものたちを滅ぼすために「ヨハネの使徒」を放ち、世界中に降り注いだ「アシッドレイン」により、生きとし生けるものは異形の化け物「ベリアル」へと変貌してしまった。  剣や銃などの通常の手段ではベリアルを完全に消滅させることができない。  唯一それを可能とする者のことを「浄化師(エクソシスト)」と呼んだ。  浄化師は「魔喰器(イレイス)」を振るい、ベリアルに喰われた魂を解放し、ヨハネの使徒を葬る。  そのため、魔術組織「薔薇十字教団」は浄化師の素質を持つ者を強制的に集うようになる。  あなたは教団によって集められた浄化師の一人だ。  いや、まだ浄化師の素質を持つ人間に過ぎない。  浄化師は一人ではなれない。喰人と祓魔人の両名がいなければ、成り立たないのだ。  あなたは浄化師になるため適合者と契約することになる。その契約の際に、「アブソリュートスペル」が必要となる。  別名「魔術真名(まじゅつまな)」。喰人と祓魔人が契約の際に決める「絶対の信念を込めた言葉」だ。  アブソリュートスペルを発することで、浄化師は魔力を解放し、互いの能力を最大限に引き出すことができる。  だが、この言葉はそれだけではないのだ。  アブソリュートスペルは決して祈りの言葉ではない。  何に変えてもやり通すという強い信念がこもった魔術誓約。  自分自身への誓いであり、譲れない願いであり、何者にも侵されぬ強い意志でもある。  互いのつながりを示す言葉であるアブソリュートスペルは双方で決める。  二人では話し合って決めることもあれば、契約の際に自然と頭に思い浮かぶことさえある。浄化師の数だけ千差万別の経緯で決まる。どんなにアブソリュートスペルが決まらなくとも最終的には自然と見いだすのだ。  まるで必然だというように。  これは二人が「信念の言葉」を見つける話。  さあ、二人で高らかに叫べ。  それがあなたたちの歩みを示す言葉となるだろう。
First impression
とても簡単|すべて

帰還 2018-04-20

参加人数 8/8人 森静流 GM
 ある寒い日の事です。  浄化師である喰人と祓魔人は、教団の本部に出かけた帰り、あまりに寒いので近くのカフェに寄っていく事にしました。  清潔で明るい店内でストーブの近くに案内され、コートを脱いで一息つきます。 いくらか暖かくなってきたところで頼んだホットドリンクが運ばれてきました。  喰人はカフェオレ。祓魔人はブラックコーヒーです。  それぞれ、マグカップの熱さを指先で、飲み物の熱さを口で味わいながらしばらく黙っていましたが、やがて喰人の彼女が言いました。 「ね、あれ見て」  壁に大きくかけられている花の絵画の事です。  祓魔人は怪訝そうな顔をします。 「よくある花だろ、どうした?」 「あれ、あなたと初めて出会った時も咲いていたわよね。私、よく覚えているわ」 「ああ……そういえば」  祓魔人は頷きました。 「初めて会った時、私の事、どう思った?」  喰人はからかうような表情で祓魔人をのぞき込んでいます。 「お前こそどう思っていたんだよ」  祓魔人はちょっと怒ったような顔になりつつも、話し始めました。それに、喰人も答えるのでした。
魂の還る先
普通|すべて

帰還 2018-04-20

参加人数 5/8人 pnkjynp GM
 冬の夕暮れ。  低く位置する紅い太陽は、まもなくその役目を月へと引き継ごうとしていた。  人々もまた一日の勤めを終え、各々が安らぎを得られる場所へと帰っていく……。  それは、この人気のない墓地を訪れる彼女も同様であった。 「お待たせ致しました……御主人様」  黒のメイド服に身を包んだ女性は、とある墓の前にユリの花を手向けると、墓石に積もった雪を白い手で少しずつ払っていく。 「本日のご子息様も健康で明るいご様子でありました。少しだけお話する機会を得られたのですが、どうやら学校の魔術試験にて優秀な成績を修められたとの事……。貴方様に似て、文武両道の才に恵まれているようですね」  冷たい雪がその手に染みる。  だがその冷たさなど意にも介さぬ様子で楽しそうに語り続ける彼女。  雪を払い終えると白いハンカチを取り出し、愛しい人の身体を洗うように、丁寧に磨き上げる。 「こうしておりますと、お屋敷でお世話させて頂いていた頃を思い出します。今にして思えば、まるで夢のような……楽しくて明るい日々。奥様に対して負い目が無かった訳ではありませんでしたが……私は、例え愛されることはなくとも……貴方様と一緒に居られるだけで、至上の喜びを感じておりました」  しゃがみこむ彼女の瞳から涙が伝う。  まるでそれを慰めるように、彼女が連れ添っていた大型犬はその悲しみを舐め取っていく。 「……あら、こんな私を許してくれるの……【ボッシュ】? あなたの大事な主人を奪ってしまった私を」  ボッシュと呼ばれたその老犬は、生まれた時から彼女とその主人の共通のペットであった。  それは10年以上前。彼等の関係が主従ではなく幼馴染であった頃からの。 「あなたはいつも優しいのね……そして……とっても温かいわ」  彼女は目の前の犬を抱きしめる。  最初の内は大人しくされるがままのボッシュであったが、突如彼女の腕からすり抜けると、彼女が背中を向ける森の方を向きうなり始める。 「ヴゥゥゥ……!」 「ボッ……シュ?」  ボッシュが威嚇する先。  その先にはボッシュより一回り小さな小型サイズの犬が3匹姿を現した。  この墓地は鉄柱で作られた柵を境に、辺りを森に囲まれた小さな墓地だ。  柵に空いた穴を通ってこのような生物が迷い込んでくること自体は少なくないのだが…… 「い、いやぁぁ!!?!」  3匹の犬からは、その身体を突き破るように飛び出た無数の触手がうねる。  それはかつて、彼女の目の前で最愛の人を奪った悪魔の象徴……【ベリアル】の証であった。 「ヴォゥ! ヴォゥヴォゥ!!」 「ああぁ……ダメ、ダメよボッシュ! は、早く逃げなさいっ!」  彼女は必死に声をあげる。  だが、それが限界でもあった。  恐怖と後悔に飲まれたその体はすくんでしまい、座り込んだ状態から動けない。  それを悟っているとでも言うのだろうか。ボッシュは彼女を守るようにして離れようとはしなかった。 ~~~  それから時間が経ち、ベリアルの反応を検知した薔薇十字教団から指令を受けた浄化師達は墓地へ訪れる。  既に本来の命を【アシッド】によって奪われ、ベリアルと化したもの。  本来の命が終わりを迎える前に、残された誰かを守ろうとするもの。  貴方の行動は、このもの達に何をもたらすのであろうか。
魔の羽音
普通|すべて

帰還 2018-04-19

参加人数 2/8人 革酎 GM
 ある森の中でのこと。  狩猟と材木業で生計を立てていた老人が、遺体で発見された。  全身至る所に巨大な蜂に刺されたような跡が残されていたのだが、近隣の村の長老が念の為にと薔薇十字教団の調査員に死因調査を依頼したところ、微かながら残留するアシッドが検出されたのだという。  つまりこの老人は、ベリアル化した巨大な蜂──キラービーの群れに襲われたということが推測される。  教団の調査員で自身も浄化師であるジルド・ハンゼは、渋い表情を浮かべた。 「これはウシクイバチ種のキラービーでしょうね。この辺に棲息する種で、内臓まで貫通する毒針を持っているのは他に居ませんから」 「随分とお詳しいですね」  長老が幾分驚いた様子で訊くと、ジルドはオールバックの黒髪をがしがしと掻きながら、大したことじゃありませんが、と低い声で応じた。 「疫病学を専攻してた頃、病原菌を媒介する種の研究で節足動物学や昆虫学も学んだことがありまして」  だから、キラービーの種についても知見があるのだという。  それにしても、獣や家畜がベリアル化したというのであれば話は簡単だったろう。  しかし相手が群れを成す昆虫となると、少々厄介だ。  それも、老人の遺体を調査したところでは十数匹のキラービーがベリアル化していると思われる。  普通のキラービーでも集団ともなれば、恐るべき脅威となる。それがベリアル化しているのだから、これは自分とそのパートナーだけではどうにもならない。 「ハンゼさん。村は、大丈夫ですかねぇ」 「絶対に安全です、とはいえないでしょうね」  ジルドの渋面に、村の長老は盛大な溜息を洩らした。  だが下手な嘘をついて村人を安心させたところで、ベリアル化したキラービーの群れという脅威が去ってくれる訳ではない。 「全村民には戸締りを厳重にして、家から一歩も出ないようにと指示を出して下さい。私はこれから教団に浄化師の追加派遣を要請します」  それだけいい残すと、ジルドは遺体発見現場から足早に立ち去っていった。
ドキドキ劇の代役
とても簡単|女x男

帰還 2018-04-18

参加人数 3/8人 星色銀 GM
 ここは、「教皇国家アークソサエティ」芸術と音楽の街オートアリス。  劇場にほど近い広場にて、野外ステージの上で学生たちが劇の稽古をしている。数人の少女が憧れのまなざしを向けていた。  学生たちは裕福な学校の生徒。貴族の子息であり、誇りにあふれている。  二週間後に開かれる子供たち向けのチャリティイベントで、学生たちは劇を披露することになっていた。  演じるのは、『ロメオとギュレッタ』。年頃の少女に人気な悲恋の物語である。  準備は順調に進んでいたのだが――。  準備中に事故が起こる。稽古中、セットが崩れ、ベニヤ板がヒロイン役の女優に向かって倒れていく。  真っ先に気づいた主役の少年が少女の上に覆いかぶさるが――。少年は背中を怪我し、少女も足を捻挫させる。  激しい剣と剣による決闘シーンもある舞台だ。役を続けるのは不可能と医師にストップされる。  学生たちは緊急の会議を開いた。  辞退するか、代役を立てるか。  辞退。子供たちの期待を裏切ることはしたくない。  代役を検討したが、あいにく寄せ集めの劇団はギリギリの人数である。削れる役はない。一人二役が可能な脚本でもない。  そこで、学生たちは薔薇十字教団を頼ることに。  主役とヒロインを演じ、劇の成功に力を貸してほしい、と。
風を斬る脅威
普通|すべて

帰還 2018-04-15

参加人数 3/8人 terusan GM
 教皇国家アークソサエティ内ブリテンにある毒花の森。  その名の通り森の中には一部のエリアで毒花が群生し、危険な動物が生息している上、ベリアル化した動物の目撃情報もある。その危険性は周辺に住む者のみならず知られており、今や毒花の森の一部地域は危険な場所とされ、寄りつく者も少ない。  ただ、森に群生する毒花は様々な病気に効く貴重な薬の原料となるため、今なお一部の命しらずな冒険者は危険なこの森に分け入ることを続けている。また毒花製の薬が貴重であることを理由に、周辺地区の自警団も森への立ち入りを完全に禁止にはできないでいた。  そんな中、薔薇十字教団司令部に一団の冒険者パーティーが一様に顔を青くして駆け込んできた。  報告を聞くと彼らは毒花の森で毒花を集める冒険者の一団で、昨日も7名パーティーで果敢にも毒花の森に毒花採取に向かったのだった。  司令部に駆け込んできた冒険者のうちの一人が息せき切って報告を始めた。  花の毒への対策も万全だったし熟練した冒険者が7人もいるということで、彼らは危険な森とは言え、恐れることはなかった。戦闘経験もそれなりにあり、ちょっとした猛獣や危険生物ならなんとかなるという自信もあった。 「最近じゃ、毒だけじゃなくベリアルがいるんじゃないかっていうんで、森に立ち入る人間が俺たち熟練の冒険者ぐらいになっちまってな。森の一部の地域じゃ毒花の数も増えちまって、並の量の毒消し薬じゃ間に合わねぇぐらい、毒の瘴気が立ち込めてるんだ」  どうやらベリアルの目撃が噂されてから薬用に毒花を採取にくる者も少なくなり、森の一部地域では毒花の毒素はもはや空気を穢すほどの濃度に達しているらしかった。 「もう普通の毒消し薬の数じゃ、まともに歩き回ることもできねぇぐらいで、ここに立ち入るんならよほど多くの毒消し薬を持っていくか、強力な治療の魔術が必要だ」  そんな毒の瘴気が立ち込める危険な森の中には、やはり噂通りベリアルの気配も感じられたという。 「この世のものとも思えねぇ鋭く高い声が聞こえたかと思ったら、大きな黒い塊が空から猛スピードで俺たちの方に向かってきた。俺はとっさに頭を抱えて毒花の茂みに伏せたんだ。すると、毒気を吸わないように息を止めてじっとしている俺の頭上で、大きな鳥の羽ばたき音と一陣の風が吹き抜けたんだ」  すると今まで黙っていた他の冒険者の一人が付け加えるように話し出した。 「俺も地面に伏せてたんだが仲間の叫び声を聞いて、とっさに顔をあげたんだ。すると、真っ黒な身体から触手が突き出た、今までに見たことがないような怪物に、二人の仲間が激しく襲われてるのを見たんだ。憶測だが、あれはソードラプターに似ていたよ」  さらに別の冒険者がさらに続ける。 「あいつらは絶対、ベリアルだよ! 森のソードラプターがアシッドに取り込まれてベリアルになっちまったんだ。奴らは木気の属性を持ってて襲ってくる前は、完全に森の木と同化するように溶け込んで、姿が見えないんだ」 「襲われた二人には本当に申し訳ないが、このままじっとしてりゃ俺たちは全滅だ。俺は他の四人に大声で逃げるように言って、残ったみんなで転がるように森から脱出したのさ」  最初に話しはじめた冒険者が再び口を開く。 「あの二人は恐らくもう、この世にはいないだろう……」  その顔は苦渋に満ち、それに疲労の表情が加えられ悲愴感が漂っていた。 「なぁ、あんたらはベリアルを倒すのが仕事だろ? 」 「頼む、あそこのベリアルを討伐しに行くんなら襲われた二人の形見の品を見つけて持ち帰ってやってくれ。襲われた二人にはそれぞれ妻と子供がいるんだ」  ベリアルの目撃情報がもたらされた以上、いかなる場所であっても教団の浄化師なら討伐に赴く必要がある。  早速、正式に指令として「ブリテン地区の毒花の森のベリアル探査と討伐」が発令された。
マニキュアフラワーで花束を
とても簡単|すべて

帰還 2018-04-15

参加人数 6/8人 草壁 楓 GM
●彩りに想いを込めて  教皇国家アークソサエティ。  様々な種族が住むこの国家の西部にある巨大都市エトワール。  美しい建造物や美術品などが好まれ多くの観光客が訪れ、そして市民階級の者などがこの都市に住んでいる。  そのエトワールにある中心街にあるのがリュミエールストリート。  ここには洋服店や食堂などがひしめき合い、夜にはネオン煌く繁華街となる賑やかな通り。  そのストリートの一角にあるハンドメイドショップ『ロシューヌフローラ』。  老若男女通う人気のお店で、とびきり人気があるのが体験型の制作講座である。  現在開催されているのはマニキュアを使用した花の製作である。  それは有難いことに盛況でその評判は浄化師になりたてのあなたとパートナーである祓魔人の耳にも入っていた。  その評判とはマニキュアフラワーの色で相手に想いを伝えるというもの。  作業は簡単。  柔らかい素材のワイヤーで花の形を作り、幕を張るようにマニキュアを塗り、花びらを作って乾かせば制作は終了である。  最後に出来上がった花を数本束ねて花束のようにして、店員がラッピングをしてくれるのだ。  そのマニキュアの色は多彩に用意されており、色の組み合わせにより自分オリジナルの花束を作ることができる。  そして色にはいろいろな意味がある。  赤ならば情熱や勇気。  青ならば信頼に誠実、冷静。  などなど。  これらを組み合わせてオリジナルのメッセージを込めることができるということである。  まだパートナーと知り合って間もない浄化師にとっては制作中に会話もでき、そして花の色で今の心にある想いを伝えることができるという評判だ。  これから「よろしく」でも自分の目標を相手に伝えるでも良い。  そしてその制作したマニキュアフラワーは枯れることがないため、思い出としてもそして自身の相手への気持ちの初心の記念ともなるだろう。  さて、あなたはどんな思いを相手に伝えてみようか。
浄化師を始めよう
普通|すべて

帰還 2018-04-14

参加人数 6/8人 春夏秋冬 GM
「ガアアアアアアッ!」  獣の咆哮が、響いた。  それは断末魔であり、解放への雄たけび。  禁忌に触れた人間に神が放ったといわれる、魂を縛り肉体を変容させるウィルス『アシッド』。  その戒めの鎖から、解き放たれた声だった。  それを成したのは、浄化師(エクソシスト)。  アシッドに対して強い抵抗力を持った喰人(グール)と、喰人と契約を成すことでアシッドからの感染を防ぐことができるようになった祓魔人(ソーサラー)。  2人1組のパートナーが、アシッドに感染した『べリアル』を倒したのだ。 「これで、残りは幾つだ?」  すでに熟練の域に達した喰人の男性が、パートナーである祓魔人の女性に尋ねる。 「強力なのは、いま貴方が倒したので終わり。残りの低級の1体は、ちょうど今から倒される所よ」  そう言って視線で示した先に居るのは、新人の浄化師のパートナー1組と、彼らによって今まさに倒されようとしているべリアルだった。  べリアルは、中型犬の体中から触手を生やした姿をしていた。  魂を縛り肉体を変容させるウイルスであるアシッドは、生き物であれば何であれ感染し得る。  そうして感染し変容したものがべリアルだ。  いま目の前に居るべリアルは、元々は普通の犬だったのだろう。  だが、アシッドに感染した今となっては、見る影もない。  生き物であれば何であれ殺し、その魂を食らい縛り付ける怪物と化している。  絶対に、倒さなければならない。  だがべリアルは、通常の武器で傷付けても際限なく再生するため、倒すための特殊な武器を使用する必要がある。  それを、犬型の低級ベリアルと対峙した新人の浄化師が、口寄魔方陣を展開し出現させる。  魔方陣の色彩が緑色なのは、展開している浄化師の得意属性が木気なのだろう。  展開された魔方陣は、一瞬にして離れた場所に保管してあった武器を、浄化師の手元に届けた。  それは魔喰器。べリアルを倒し得る武器だ。  魔喰器は様々な形状をしているが、いま新人の浄化師が手にしているのは巨大な木刀の形をしている。  それを手に取りベリアルと対峙しながら、浄化師はパートナーの浄化師と手を繋ぎ、高らかに魔術真名(アブソリュートスペル)を口にする。  それは浄化師である喰人と祓魔人が、パートナーとして契約の際に決めた「絶対の信念を込めた言葉」。  発することで、安定させている魔力(マナ)の生産量を解放し、互いの能力を最大限に解放することが出来るのだ。  そのためには、魔術真名を口にする際に身体の一部を触れ合せている必要がある。  新人の2人は、浄化師となるまでは会った事もない間柄だったせいか、どこかぎこちなく手を繋いでいる。  けれどその眼差しは強く、絶対に目の前のべリアルを倒すのだという信念が込められていた。  それを証明するように、新人の浄化師達はべリアルに挑みかかる。  魔喰器を振るい、あるいは魔術を使い、べリアルに傷を負わせていった。  息を切らすほど全力で戦い、べリアルを瀕死の状態にまで追い込む。  それが、べリアルに囚われた魂を露わにさせた。  べリアルの身体から立ち上るようにして現れたのは、鎖に拘束された犬。  それは、アシッドに感染した犬の魂だ。  べリアルは、殺せば殺すほど強くなっていく。  殺した生き物の魂を取り込み捕え、自らの存在を強化するからだ。  いま目の前にいるべリアルは、べリアルになったばかりなのだろう。  最初に犠牲となった犬の魂のみが囚われていた。  それを開放するべく、露わになった囚われの魂を縛る鎖を、魔喰器で破壊し喰らわせる。  解放された犬の魂は伸びやかに体を震わせると、礼を言うように新人の浄化師達に触れるようにして、ふっと消え失せた。  同時に、べリアルの肉体が崩れ去る。  捕えていた魂が無くなり、存在を保てなくなったのだ。 「お疲れさん。今日の所は、これで良いぞ。ゆっくり休みな」  熟練の浄化師に労われ、新人2人は力を抜く。  それを苦笑するように見詰めた後、熟練の浄化師である男性は、パートナーの女性に問い掛けた。 「ここは、これで終わりだな。残りの場所は、どうなってる?」 「準備は終わってる筈よ。強力なのは、私達みたいな慣れた浄化師が倒して、残りの低級は新人の子達に任せる手はずが整っているわ」  いま2人が話しているのは、新人の浄化師を訓練することも兼ねた依頼の話だ。  浄化師は常に求められているため、才能があれば見つけ次第、半ば強制的に契約をさせられている。  そうしなければ、魔力を過剰生産する性質を持つ喰人も祓魔人も、長くは生きられないという理由もあるが、だからといって全員が浄化師となるべく訓練して来た訳ではない。  中には、戦闘とは関わり合いの無い生活をしてきた者もいる。  そうした新人を戦いに慣らせるために、ベテランがいざとなれば助けられる状況で、下級のベリアルとの戦闘をしているのだ。  それが、今のアナタ達の状況です。  ベテランの浄化師達が、いざとなったら助けられるよう準備しながら、犬型の下級べリアル達との戦闘を求められています。  ベテランの浄化師達に追い立てられたべリアル達は、殺気立った唸り声をあげ、今にも襲い掛かって来そうです。  戦いの場となる場所は、平地の草原。  移動をするのに、邪魔になる障害物はありません。  それは、敵であるべリアルに取ってもそうです。  この状況で、アナタ達は他の浄化師達と協力して、べリアルを全て倒さなくてはいけません。  どうしようもなく追いつめられれば、ベテランの浄化師達が助けてくれるでしょうが、そうなれば依頼は失敗。  報酬も、残念なことになるでしょう。  この状況、アナタ達なら、どう動きますか?
ぴかぴかの、
普通|すべて

帰還 2018-04-14

参加人数 8/8人 ナオキ GM
 世界の秩序と平和を守るエクソシストは、天賦の才を持つ限られた存在だけが成り得る立場である。  よって、純粋な羨望だけでなく、嫉妬や畏怖の目を向けられることも少なくない。  それでも彼らは文字通り己の魔力と命を賭して戦う。  闇色の教団制服の裾を翻して。 「今期から正式に配属される者たちの採寸はどうですか。恙なく進んでいますか」  教皇国家アークソサエティ薔薇十字教団に籍を置き、幾度も修羅場をかいくぐってきた妙齢の女性喰人にそう問いかけられ、バインダーに挟んだ資料とにらめっこをしていた年若い部下は暗い顔で首を横に振った。 「いえ……、今期も大型新人が多いですね。採寸から脱走する者もいれば、異性の採寸を覗きに行く者、手合わせをやたらと乞う者。選り取り見取りです」  部下の回答に、女性は思わず額に手を遣って深々と溜息をつく。  まだ制服を持たない新人エクソシストと、日々の連戦で傷んだ制服を持つ中堅たち。  今日は、そんな彼らを教団寮に集めての採寸日である。  教団側としては全員纏めて招集して一度に済ませてしまいたいのだが、エクソシストにはどうも癖の強い者が多く、戦闘でもないのにむやみに大人数を集めれば手の付けられないことになる、としっかりと学んでいた。  この日集められたのも、十組にも満たないエクソシストだ。  しかし既に採寸に飽きたのか、脱走を試みてアークソサエティ中心街の観光を企てる強者もいるようで、採寸係として働く者は大いに手を焼いていた。  制服を改造したり着崩したりして個性を出すなんてのは、まだまだ可愛いほうなのだ。  懐中時計を確認すると、女性が出席しなければならぬ定例会議まで、あと二時間と少々。  速やかに採寸を終え、血の気と魔力の多い奴らをそれぞれの巣へと放り出す必要がある、と。  眉間にしわを刻んだ女性は、脇に控えていた部下に短く命じた。 「手段は問いません。――終わらせろ」  あくまでもこれは、制服採寸に対しての命令だ。  断じて新人共の命を奪おうとしているわけではない。  幸いにも本部には、お抱えの採寸のプロがいる。  まるで鞭のようにメジャーを扱うプロが。  毎回何人もの“ひよっこ諸君”をメジャーで縛り、時には天井から吊るし、羞恥で頬を染めた彼らのあんなところやそんなところを測ってきた。  緊縛のプロではなく、もちろん、クリーンな採寸のプロ。  市民たちから憧れを抱かれている制服が、毎度毎度どのような騒動を経てエクソシストの元に届いているのかを、市民たちが知るよしはない。  何事もイメージというものがあるからだ。  ――エクソシストよ、常に気高くあるべし。
夜明けのキメラ
普通|すべて

帰還 2018-04-09

参加人数 4/8人 じょーしゃ GM
 季節は、冬。  そうは言っても寒さは落ち着いていて、道端には春の足音が聞こえ始める、そんな季節だ。  そんな中、教団の本部が存在する中心部から南方にある都市『ルネサンス』に喰人の目撃情報がないか調査しに来ていた浄化師は、全身を黒の外套で覆った男に声をかけられる。 「おい、知ってるか? あの洞窟、落ちてるって噂だぜ」  急なことだったので少し戸惑いながらもその言葉について追及する。 「何が……落ちているんだ?」 「決まってるだろ……あれだよあれ、『魔結晶』だよ」  魔結晶とは魔力が結晶化してできる石である。  通常は高い魔力を持つ動物が絶命した時に生成されたりするものだが、魔力が十分に満ちている場所でも生成されることがあるという。  この情報が本当なら魔結晶を回収する拠点が増えるということで、教団にとってもプラスな話のはずだ。 「どうするよ浄化師さん、放っちゃおけねぇ話だろ?」  喰人の調査もあるがこちらも捨ててはおけない話だ、すぐにその黒ずくめの男に場所を案内させる。  途中何人かの街の住人とすれ違ったが、皆が不思議なものを見る目をしていた。  ついた場所は石炭などを採掘していたであろう洞窟で、炭鉱員の影がないことから、だいぶ昔に石炭を掘りつくしてしまった廃鉱だということはすぐに分かった。 「こんな場所に魔結晶が落ちているのか……おい……?」  振り向くと案内してきた男の姿はなく、途端、強烈な眠気に誘われる。  どれだけ眠っていただろうか、まだ視界がぼやける中で立ち上がると洞窟の奥から何やら音が聞こえた。  生き物の声だろうか、その声は昆虫が発する断末魔の悲鳴のような声で、同時に何本もの足を動かす歩行音が聞こえた。  音のするほうに歩み取るとそこに見えたのは巨大な蜘蛛の生物。  しかし目の前にいるのはどう考えても蜘蛛ではない、『蜘蛛』であって、『蜘蛛』でないのだ。  その体にはサソリの尻尾が雑なコラージュ作品のように付いていて、生物の進化の過程で絶対に生まれることがないものだということは容易に想像がつく。  そしてその傍らにいた男が声を発する。 「目が覚めたか浄化師の兄ちゃん、この生物をみて驚いてるだろう? そりゃそうだ、こうなることを知っていた俺でさえ驚いてるんだからな!」  そして嘲笑うかのようにこちらを見ながら言葉を続ける。 「魔結晶があるなんて簡単に信じちゃってさ、浄化師ってのはこんなもんなのかねぇ?」  外套の袖から覗いた左手の甲には埋め込まれているような十字架の形が現れており、それを見た瞬間に事のすべてを察した。  黒い外套と埋め込まれた十字架、そしてこの不気味な生物。  ここにいるのは『終焉の夜明け団』の信者だ。  終焉の夜明け団は禁忌とされている魔術を使い、『キメラ』と呼ばれる合成生物を生み出そうとしていると聞いたことがある。  そして完成したのであろうその実験を、この廃鉱で試そうとしているのだ。  一人で闘っても勝ち目はない、そう思った浄化師は洞窟の中を逃げながら出口を探すことに決めたが一歩遅かった。  キメラに噛みつかれ、直後体が痺れるような感覚に陥る。  身動きが取れないまま浄化師は再び目を閉じるのであった。  ――そしてその頃、薔薇十字教団本部はルネサンスの住人から怪しげな情報を入手していた。  曰く、街はずれの炭鉱に浄化師が連れていかれるところを見た、と。  そしてその洞窟の内部から奇妙な生物らしき声がした、と。  ルネサンスには教団が喰人捜索のために派遣した浄化師がいるはずだ、もしその情報が本当なら……と臨時で指令が発令された。  教団から指令を受けた浄化師達は、ルネサンスの洞窟へと急ぐのであった。
子を思う親の愛ゆえに
普通|すべて

帰還 2018-04-09

参加人数 4/8人 檸檬 GM
●  今度こそ、と願いを込めて、木から石に変えた。  山で切りだした石を背負って冷たい流れに足を入れ、一つ一つ丹念に積み上げて太い橋げたを作った。  川向うの学校へ通う子供たちのために、春までに橋を完成させてやりたい。  思いを胸に、村の男も女も、時間が許す限り手伝いに出た。  あと少し。  あと少しで完成する。  なのに全てはあっさり崩される。  「ベリアルだ! また、熊のベリアルが出た!」  村人たちが指さす先に、アシッドの影響によって生まれた熊の魔物がいた。  体に張りついた艶のない毛を割って、赤黒い触手が何本もうねり伸びている。  早すぎる目覚めに体はやせ細ってはいるが、それでも大人ほどの背丈があった。  肩を揺らして歩きくるベリアルの後ろから、人間の両手にすっぽり入るほどの大きさの生き物がよちよちとついてきていた。  目も耳も開いたばかりのその生き物は、冬眠中に生まれた熊の子たち――。    熊のベリアルは灰色の毛に埋もれた目を赤く燃え立たせると、逃げる村人たちには目もくれず、我が子を岸辺に残し川へ駆け入った。  水しぶきを上げて進み、橋げたに巨体をぶつける。  橋が川底に沈むまでは、あっという間の出来事だった。  もう自分たちだけの力では橋を完成させられない。  それに、いまは橋の破壊だけで満足して森へ帰っていくが、魔物はそう遠くない日に村を破壊し、人を襲うだろう。  ついに村人たちは重い腰をあげて、薔薇十字教団に熊のベリアル退治を依頼しに行った。
行商隊を救出せよ
簡単|すべて

帰還 2018-04-09

参加人数 4/8人 梅都鈴里 GM
「キャアアッ! で、出たわ! 悪魔よ!」 「一般人を避難させろ! 積荷は置いていっていい! 命が最優先だ!」  平和であった現場は一瞬にして騒然となった。  とある行商隊が出会った異形のモンスター。どす黒い触手を体中から生やした野犬は、見た目からしても通常のそれではない。 『アシッド』と呼ばれる瘴気を吸い込み、魂を捕われた生き物が変化した禍々しい姿。  口の端からダラダラと涎を垂れ零し、視界に認めた人間達を食らおうと牙をむいていた。 「きゃあっ!」  人々の急流に押された小さな子供が、石に躓いて転んでしまった。  混乱の中でようやっと大人が気付いた時にはしかし、悪魔――『ベリアル』は、必死に立ち上がろうとする小さな命――格好の獲物に、赤く光る眼光を向けている。 「あの子は私の、私の娘なの! 誰か助けて!」 「行ってはならん! 食われてしまうぞ!」  助けを請う母親を大人達は取り押さえる。  きっとこの非力な母親が出て行っても、出て行かなくても、あの子供は食べられてしまうだろう――。  誰もが、命の終わりを覚悟した。 「だれか、たすけて……!」  ――浄化師、エクソシストさまっ……!  子供が、祈るようにその言葉を口にしたまさにその時――飛び掛ったベリアルを、一陣の風が弾き飛ばした! 「ギャイィンッ!!」 「っ! 誰だ!?」  人々が一様に、救世主を振り返る。  彼らは神の意思に反旗を翻す、選ばれし存在。 「――怪我はないか、お嬢ちゃん。今、助けてやるからな!」  少女が呼んだヒーローは呼びかけに応え、にっと歯を見せ頼もしい笑顔で笑いかけた。
エンケの魔猪
普通|すべて

帰還 2018-04-09

参加人数 4/8人 碓井シャツ GM
 狩猟は上流階級の楽しみとして流行している。  競技としてのハンティングの台頭とは関係なく、教皇国家アークソサエティの中心部より離れた山間の小さな村であるエンケでは、生活としての狩猟がさかんだった。  猟師は訓練された猟犬と共に山へ分け入り、日々の糧として動物を狩る。  その日も村の猟師が三人、山へ入っていた。ベテランの猟師が一人、身を屈めて地面を検分する。 「この足跡は、イノシシだな……まだ新しいぞ」  獲物の形跡を確認し頷き合うと隣を歩いていた猟犬が、キャウウウウ、と悲壮な声をあげた。  続けて前方に向かって、キャンキャンと吠え続ける。 「どうしたんだ、臆病風に吹かれたか。お前らしくもない!」  常にない猟犬の様子に猟師は胴を叩いて落ち着かせようとするが、半狂乱の犬はおさまるようすがない。  犬の視線を追って前方を見れば、霧の中に獣の大きなシルエットが浮かび上がる。 「イノシシだ……!」  一番年若い猟師が引き攣った声を出して、猟銃を構えた。 「いや、あれは……」  霧の合間から、其れは異容を現した。  身体の至る所から獣皮を突き破って、赤黒い触手が伸びている。  ベリアル化していることは明らかだった。 「逃げろ、あれは銃で死なねえぞ……ッ!」  悪魔に成り果てたイノシシが力を溜めるように、ぐっと身を低くする。 「来るぞ、左右に散開しろ!」  猟師が声を張り上げた。  爆発のような突進だった。イノシシがぶち当たった巨木がメリメリと音を立てて倒れる。  避けそこなったら、ひとたまりもなかっただろう。  這う這うの体で村に逃げ帰った猟師たちは、こう叫んだ。 「薔薇十字教団へ……! 浄化師を呼んでくれ!」
新たな目覚め
簡単|すべて

帰還 2018-04-08

参加人数 3/8人 Narvi GM
 巨大な壁に囲まれた国、教皇国家アークソサエティ。  その中心部にある首都エルドラドから南部に位置する巨大都市ルネサンスは、たくさんの市民や国外から来た者が住んでおり、いつも賑わっている。  しかし、現在ルネサンスは大混乱に陥っていた。  いつもなら人気の多い通路を必死に走り抜ける少女と、それを追うヨハネの使徒。周りの人には一切見向きもせず、ヨハネの使徒は一直線に少女を殺さんと移動していた。  一生懸命に逃げる少女。その瞳に涙を浮かべ、絶望に足を止めたくなるのをどうにか振り払って、少女は逃げる。  その後ろに続く三体のヨハネの使徒。額のコアを輝かせながら、少女に向かってかなりの速度で地上を移動していた。  少女は自分の才能を呪った。この才能さえなければ今こうやってヨハネの使徒に追われることはなかったのに、と。  魔力を多く持つ者はヨハネの使徒に狙われやすい。  生まれつきのものなんてどうしようもない――――そんな当たり前のことはまだ幼い少女でもわかっている。それでも、謝罪の言葉が際限なく溢れ出すのだ。  こんな才能さえなければ、お母さんもお父さんも自分を庇って死ぬことなんてなかったのだから。  涙が止まらない。それでも、ここで死ぬわけには行かなかった。 『ライラ、あなたは……あなただけは生きて……』  両親は最後にそう言い残して、冷たくなった。  悲しむ暇なんてなかった。少女の目の前にはヨハネの使徒がいる。両親の生きた印を拾う時間も、落とした愛用のペンダントを気にする暇すら残されていない。  密かにその胸に復讐の闘志を燃やしながら、少女は立ち上がり後ろを向いた。  きっと浄化師があなたを見つけて、助けてくれるから。その言葉を信じて、ただひたすらに少女は逃げ続ける。
闇夜に蠢くもの
普通|すべて

帰還 2018-04-08

参加人数 4/8人 terusan GM
 周囲を堅牢な城壁で囲み外部からのあらゆる危険を排除している教皇国家アークソサエティ。しかし、その外角にあたる一部の地区は犯罪者やならず者、かすかなスキをつき不法に侵入してきた者たちの吹き溜まりとなり、治安は悪化の一途を辿っている。  そのような外角近くの貧民窟の一角で、残虐な殺人事件が起きたのが一昨日の深夜。夏に降るにしては冷たい雨が街路を激しく叩く月のない暗い夜だった。  一夜明け、近所に住む老婆が、普段から大酒喰らいで評判だった男の無残な遺体を発見した。老婆は驚いて地区の自警団に通報し、3名の自警団員が早速遺体の元に駆けつけた。工員の男のようで作業着を身につけているが、上半身を中心に無残にもビリビリに破られ原型をとどめていない。  そのボロボロの衣服に変色してどす黒くなった血が大量に染み込んでいた。 「こいつはここいらでも有名な酔っ払いでしてなぁ。まぁ、こんなにされた日も酔ってウロウロとしていたんでしょうな」  老婆が自警団員の一人に話しかけた。  老婆の言葉には全く反応せず、その自警団員は遺体につかつかと歩みよりしばらく遺体を調べていたが、急に顔色を変え周囲で遺留品や手がかりを探していた他の2名にここに来るようにと声をかけた。 「おい、こいつの傷を見てみろ。刃物で切られたのでも刺されたのでも殴られたのとも違うぞ! 」 「何かで激しく抉られたり、まるで食いちぎられたりした跡のようだな」 「おい、ここらあたりで最近おかしなことを見たり聞いたりした者はいないか? 」  まじまじと遺体を見つめていた三人目の自警団員が、顔をあげて周囲に集まってきた野次馬の群衆に声をかけた。 「そこの先の袋小路にある古井戸から、ここんとこ気味の悪い声やら音やらが聞こえてきて、ここらの人間は夜だけじゃなく昼間も井戸には近づかなくなったんだよ」  若い工員が自警団員の問いかけに応えた。 「それとよ、1週間ほど前の晩に薄気味悪リぃ生き物の影を何人もが見てるんだ」  杖をつき長くヒゲを伸ばした老人が付け加えた。 「ワシも見たんだ。最初でっけえ野良犬かと思ったんだが、どうもそいつの背中からは蝙蝠の羽みてえなのが生えてるんだ。それで眼なんだろうが暗闇で真っ赤に光ってて、少し開いた口からは火ィでも吐くんじゃねえかってくらい赤い舌が見えたんだ」  老人と同じモノを見た者が一斉に頷いた。 「俺も奇妙な奴を見たよ! 」  二十代ぐらいの若い男が口を開いた。道具屋の店番をしている者だという。 「店にさ、全身黒ずくめの外套を羽織った全く一言もしゃべんねぇ男の客が薬をいくつか買いにきたんだ。で、そいつが金を払うときに見えたんだ。左の手の甲に埋め込んである、十字架をよ」  道具屋はあまりの怪しい雰囲気に思わず男を尾行し、例の古井戸の中にするっと消えるのを見たと言う。 「おい、誰かその井戸に案内してくれ! 」  自警団員の一人が声をかけると、先ほどの道具屋が先頭を歩いて自警団員を井戸に案内した。  井戸を覗き込んだ一人の自警団員が井戸に密かに取り付けてあるハシゴを見つけた。  三人の自警団員は勇敢にもハシゴを使って井戸の下に降り、井戸の底から横に果てしなく続く横穴を発見した。 「これは、臭うな。『終焉の夜明け団』の狂信者の奴らかもしれないぞ! 」 「ああ、しかも、その見立てが正しけりゃ、爺さんが見たのは奴らが作ったキメラだ。よりによってキメラがこのアークソサエティ内にいる可能性があるなんて! 」 「早いとこ、薔薇十字教団の教団本部に報告に行った方がいいぜ」  自警団員たちは浄化師たちが集まる薔薇十字教団に赴き、事の次第を余す事なく伝えた。  アレイスター・エリファスを狂信し、その復活のためならば禁忌魔術の行使をも厭わない「終焉の夜明け団」は、教団からも、発見し次第即刻捕縛もしくは処刑の命令が通達されているほどの危険な集団だ。  特に本件は、禁忌魔術「ゴエティア」が行使され、凶暴な合成生物「キメラ」が生み出されている可能性が高い。  直ちに教団に所属する浄化師たちに狂信者捕縛とキメラ殲滅の指令が発令された。  君の志願を待つ!
薔薇十字教団クリーン週間
とても簡単|すべて

帰還 2018-04-08

参加人数 8/8人 北乃わかめ GM
 とある昼下がり。教団本部の廊下をずんずんと足音を立てて歩く女性職員がいた。  かなり憤慨している様子で、たまらず顔見知りである女性清掃員が声をかける。 「ちょっとあんた、どうしたんだい?」 「あ、聞いてくださいよ! 彼ったらひどいんです!」  話したくて仕方なかったとでも言うように、清掃員に詰め寄る職員。  ああこれは貧乏くじを引いたなと思うも、後悔先に立たず。職員の口からは、付き合っている彼氏がいかにだらしないかが止めどなく語られた。 「洗濯物はいつまでも干しっぱなしだし、食べた物は片づけないし! 昨日なんて先週飲み終わったビール瓶を置きっぱなしにしてて……!」  おそらく大げさに言っている部分もあるのだろうが、確かに並べられる彼氏の特徴は「だらしない」の一言だ。  職員曰く、片づけられない系男子なのだとか。  清掃員として、そりゃ酷いねえと一応相槌を打っておくが、正直どうでもいいとも思っていた。 「少なくともゴミは片づけてほしいっていうか!」 「うんうん、そうだねえ」 「でも全然言っても聞いてくれないし……。あ、そうだわ!」  ひらめいた! と明るい表情になる職員。  嫌な予感がしたが、清掃員は彼女を止める術を持ち合わせてはいなかった。 「本日より、薔薇十字教団クリーン週間としましょう!」 「……それはどういう内容なんだい?」 「きれいにするんです!」 「……そうかい」  別に教団を巻き込む必要はないんじゃないか? という疑問を口にすることはできず。勝手にやってくれ、なんて野暮なことも言えず。  相談してきますね! と意気揚々と走っていく女性職員の背中を、ただ見送るしかできなかった。
迷い猫探し
簡単|すべて

帰還 2018-04-07

参加人数 3/8人 oz GM
「浄化師さん、ココがいなくなっちゃったの。おねがいです、ココを見つけてください」  10歳ぐらいの女の子が泣くのをこらえながら、浄化師に必死に頼み込む。  ここは教皇国家アークソサエティから西部に向かってある大都市エトワール。  エトワールの中心街にあるリュミエールストリートから少し外れた市民街。  君たちは市民からの願いで「迷い猫探し」のために教団から派遣された。  愛猫がいなくなり、依頼者の女の子はずいぶんと落ち込んでいるようだ。女の子の気持ちを代弁するようにその日は小雨が降り続けていた。  女の子の着ているワンピースは一般市民が着ている服よりも上等なものなので、両親は裕福な商人なのかもしれない。  落ち込む女の子を優しく宥めながら詳しい話を聞くと、女の子は愛猫のために覚束ない説明ながら現状を話してくれた。  話をまとめてみると、飼い猫は二週間ほど前にいなくなったそうで、家の周辺を両親と一緒に探してみたが、見つからなかったそうだ。  近所の住民にも話を聞いてみると、ほとんどの人が「見かけていない」と答える中で、三軒隣のおばさんから、買い物帰りにリュミエールストリートの方角に歩いていたのを見た、との目撃情報を得る。  すぐさま女の子は探しに行こうとするが、両親に一人では行かせられないと反対される。両親も仕事が忙しく、これ以上猫探しに時間を割いている暇はない。  エトワールの治安は悪くはないが、女の子一人で出歩かせるのは両親にとっても不安だったのだろう。  困った女の子の両親は、最後の手段として教団に依頼した、というのがこれまでの経緯だった。 「ココは黒い猫さんで、目の色はグリーンなの。とても人懐っこくて、チーズが大好物なんだよ。さわるとね、ふわふわした毛並みで幸せな気持ちになれるんだ」  飼い猫のことが大好きなのだろう。自慢するように一生懸命に猫について話す女の子。 「わたしがあげた赤い首輪をしているの・・・ココ、どこいっちゃたんだろう。わたしのこと嫌いになっちゃったのかな・・・?」  だんだんと女の子の声が消え入りそうになる。 「わたしも色んなところ見て回ったんだけど、全然見つからなくて・・・」  スカートの裾をぎゅっと握りしめると、聞き取れるか取れないかぐらいの小さな声で「ココに会いたい」と呟く。  君たちは女の子に必ず見つけると約束し、猫探しに向かった。  危険性はほとんどない任務だが、市民の一人である女の子を笑顔にするのも浄化師の仕事だ。健闘を祈る!
冬森に潰えた絆
普通|すべて

帰還 2018-04-06

参加人数 4/8人 狸穴醒 GM
●ある少年の死  走る。走る。  針葉樹の森の中を、少女は走る。  雪だまりで足がもつれる。息が苦しい。心臓が破裂しそうだ。それでも走り続ける。  枝から雪の塊が落下し、少女のすぐ後ろを塞ぐ。  厚手のコートはあちこちに鉤裂きができている。冬枯れの小枝が頬をかすり、切り傷をつくった。  柊の茂みを突き抜けると、曲がりくねった山道に出た。この先に、村がある。  転がるように山道を駆け下りながら、少女は振り向いた。 (――お兄ちゃん)  本当は今からでも戻りたかった。だけど。  ついさっきの出来事が、少女の脳裏に蘇る。 『アンネ、先に行け!』  恐怖にすくんだ少女を背にかばい、少年が叫ぶ。  凍った池の向こう、針葉樹の陰に覗くのは――異形の、獣。自然の生物にはあり得ない触手が、揺れる。  すぐに悟った。ソレが、決して相容れない存在であることを。  少女に背を向けたまま、少年が言う。 『村の人たちにベリアルが出たことを伝えて、浄化師を呼んでもらえ! こいつらは普通の人間じゃ太刀打ちできない』 『お兄ちゃんは、っ、どうするの?』  震えながらも問い返すと、少年はきっぱりと答えた。 『俺はここに残る』 『そんな、だめだよ!』  普通の人間では対抗できないと自分で言ったくせに。けれど少年は首を横に振る。 『俺もこいつらを足止めしたら追いかけるから』 『でも!』 『いいから行け! 早く!』  ちっぽけな狩猟用のナイフを手にして少年は――少女のたったひとりの兄は、一瞬だけこちらを見て、微笑んだ。 『転ぶなよ』  溢れそうな涙を堪え、少女は走る。絶望が胸を侵食していく。 (あたしのせいだ。あたしが、凍った池を見たいなんて言ったから)  森が途切れ、村外れの小屋と雪をかぶった畑が見えてきた。村にたどりついた、けれど少女の胸中は安堵からは程遠い。  (ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……!)  走る。走る。  ベリアルが出たことを村へ伝えてほしいという、兄の最後の頼みを果たすため。  折れたナイフを取り落とし、少年は針葉樹に背を預けた。 (あー……もう駄目だな、こりゃ)  雪に赤が散っていた。  脇腹と左脚、右腕。それ以外にも数え切れない箇所。全身の傷から、血と生命とが流れ出ている。  コートを着ているのに、さっきからおそろしく寒かった。  短い人生の終わりに瀕して、それでも少年は、かすかに笑った。 (父さん、母さん。俺、ちゃんとアンネのこと、護ったぜ)  ――こんなに早く、そっちに行くとは思ってなかったけど。  両親を流行り病で失って、妹とふたりで生きてきた。妹には人並みに食事をして、まともな服を着て、笑っていてほしかったから、村の雑用でも何でもこなした。  自分がいなくなれば、妹はひとりだ。それが気がかりだけれど、アンネは年齢のわりにしっかりしている。村の人たちだって親切だ。きっと大丈夫だろう。  血に半ば塞がれた視界の中、獣の影が近づいてくる。  狼に似ているが、その輪郭は無茶苦茶に生えた触手のせいで元の姿を失っている。  ベリアル――アシッドに侵されて異形と化した、生き物の成れの果て。  まさかこんな村の近くで遭遇するとは思っていなかった。運が悪かったのだろう。  だけど少年は満足だった。できる限りのことはやったと、そう思う。 (元気でな、アンネ)  目を閉じる。  もう寒くは、なかった。  それを待っていたかのように、少年の身体を、幾本もの触手が刺し貫いた。 ●指令 「よく来てくださいました、浄化師の皆さん」  ソレイユ地区にある、雪深い小さな村。  指令に応じてやってきた浄化師たちを、老いた村長が出迎えた。 「皆さんにお願いしたいのは、東の森に出現したベリアルの討伐です。薪取りに森へ入った村人がひとり、すでに犠牲になっておりまして……」  浄化師たちは居間に招き入れられ、村長から詳しい内容を聞くこととなった。村長夫人が温かいお茶を淹れてくれる。  その、部屋の隅。  暖炉の脇に、12、3歳くらいの少女がじっと座っていた。少女の表情は、ひどく暗い。  不思議に思って浄化師のひとりが尋ねると、村長は沈痛な面持ちをした。 「あの子はベリアルの犠牲になった村人の妹で、アンネといいます。仲の良い兄妹だったんですが……一緒に森へ入って、兄のカイだけが」  村長夫人が言い添える。 「誰もいない家に帰すのはしのびなくてねぇ。うちへ連れてきたんですけれど、ずっとあの様子で」  アンネはほとんど無表情で虚空を見つめているだけだが、ときおり痛みに耐えるように唇を噛む。抱えた膝に、小さな爪が食い込んでいた。 「浄化師の皆さんはご存知でしょうが、ベリアルに喰われた者は、魂を囚えられてしまうのだとか」  村長は深く頭を下げた。 「――どうか、カイの魂を解放してやってください」
魔術学院の一日
とても簡単|すべて

帰還 2018-04-06

参加人数 6/8人 oz GM
 教皇国家アークソサエティに本部を置く薔薇十字教団。  教団本部には時計塔を中心に浄化師たちの生活拠点である寮をはじめとし、病棟や魔術学院などの重要な設備が設けられている。  時計塔から西部に向かってある魔術学院――通称「カレッジ」は魔術知識と読み書きを習う学校であると同時に図書館としての役目も担っている。  教団に存在する魔術について記された魔導書から一般書籍まで保管されている。浄化師はフリーパスで入館でき、そこで魔術や一般教養を学んだり、読書をしたりするために利用されている。  浄化師になりたての喰人と祓魔人が、魔術学院を訪れた。  目的は人によって様々だろう。  これから教団で活動していく上で必要な知識を得るために来たものもいれば、暇をつぶしにここにやって来たものもいる筈だ。  魔術学院で貪欲に魔術の知識を得ようと行動するのもいいし、これを機に一般的な教養と知識を学ぶのもいいだろう。  過去の事件データを読み解くことで、先人の知恵を学び、敵の情報を得たりもできるだろう。あるいは過去に巻き込まれた事件の記憶を振り返ることもあるかもしれない。  息抜きに娯楽小説を読書してゆっくりと過ごすのもいい。あるいはパートナーとの仲を深めるために1階にあるカフェテラスで談笑してみるのもよい。  どのように過ごすかは君たちの自由だ。有意義な一日になることを祈る。
今宵、エクリヴァン観劇場で
とても簡単|女x男

帰還 2018-04-06

参加人数 5/8人 terusan GM
草木もゆる春。世界を股にかけ若者に大人気の旅の劇団「梟の眼(まなこ)団」が四年振りに教皇国家アークソサエティ「ブリテン」のエクリヴァン観劇場に帰ってくる。 この春の一大イベントで、国中のファンが注目する待ちに待った公演だ。 もちろん公演初日のチケットはプラチナチケットとなった。 エクリヴァン観劇場の魅力は、何といっても本格的な劇場にはない、屋外劇場であるがゆえの気軽さと公演を盛り上げる劇場周囲のフェスティバルさながらの賑やかさだ。 公演中、劇場の周囲はたくさんの屋台が並び、花火や幻燈など梟の眼団の舞台以外のお楽しみもたくさん催される予定で、カップルのデートプランとしてはこの上ないイベントになるだろう。 それに今度の公演の演目は「幻のラブロマンス」と言われる「ポーポロの紅い薔薇」。数々の苦難と周囲の妨害を乗り越え、ブリテンの貴族と城下町の針子が身分を超えた真実の愛を貫く物語。 あなたたちは、このプラチナチケットをペアで入手する幸運を得た。 絆をさらに深めるのにもってこいのこのデートプランを、あなたたちは互いにより充実したものにしたいと思っている。 屋台に、数々の余興に、そして感動的な舞台。劇場周辺のお祭りムードは否応無しに盛り上がる。 そんなシチュエーションの中、あなたたちは楽しい思い出を作り、観劇の感動を共有します。 あなたたちの絆はどこまで深まり、恋はどこまで進展するのか? 二人に恋の女神のご加護を! 健闘を祈ります。
機嫌、直してよ
普通|女x男

帰還 2018-04-06

参加人数 4/8人 北織 翼 GM
 教皇国家アークソサエティ南部の大都市・ルネサンス。  賑やかな商店街の一角に佇むカフェで、あなたはパートナーと向かい合って座っています。  黙々とカップを口元に運ぶパートナーはだんまりを決め込み、対するあなたはパートナーとは対照的で注文した飲み物が全く喉を通らない、そんな状況です。 「なぁチャコちゃん、頼むから機嫌直してくれよぉ……」 「あぁ? テメェが明日の朝食用に取っておいた卵を全部食ったのが悪ぃんだろーが! 朝から晩まで筋肉の事しか考えねぇこの筋肉バカがっ! 機嫌直して欲しけりゃ食った卵全部吐き出しやがれっ!」  ついたてで仕切られた隣のテーブルからは、どこかしゅんとした様子の男性の声とドスの聞いた女性(たぶん、きっと)の声が聞こえます。 (ああ……何か次元は違うみたいだけれど、似たような状況だ……)  反対隣からも…… 「マヤ! ワタシがいるのにあんな女と馴れ馴れしくして、許せないワヨ!」 「違うんだカイヨ、彼女とは何もないって!」  と、修羅場感満載の口論が。 (ああ……反対側も、事情は違えど状況は近いかも……)  あなたは溜め息を吐きました。  そう、あなたも今まさに、不機嫌なパートナーを前にして「機嫌を直してくれ」と言いたい、そんな状況なのです。 「まあまあアキラン、そんなに怒らないで? ケンスッケだって、悪気があった訳じゃないんでしょ? 二人とも、晴れて浄化師になれたんだから、明日の卵より今日の夕飯をいかに美味しく食べるかを考えなさいな」  どうやら、隣のテーブルには見るに見かねた教団員の女性が仲裁役としてついてきていたようです。  ていうか……こいつらも自分たちと同じ浄化師なのか、マジかっ! 「カイヨ、君が見た女性は教団に助けを求めてきた村の村長さんの娘だよ。ベリアルを倒した礼を言いに来てくれただけで、君にもよろしくって言ってたよ。嘘だと思うなら、教団員に確認すればいいさ」  反対側も反対側で……浄化師かっ!!  って、そんな事より面前のパートナーの機嫌をどうするかが問題なのですが……。  ……  ………… 「……分かった。こっちもつい腹を立ててごめん。もう行こう? 今日は美味しい夕飯を食べよう」  どうやらあなたのパートナーは、機嫌を直してくれたようです。  あなたもようやく安堵の笑みを浮かべ、パートナーと手を繋ぎカフェを出ました。  空はすっかり橙に染まり、もうすぐ夜の帳も降りるでしょう。  パートナーとの楽しく美味しい夕飯の時は、すぐそこです……。  さて、あなたのパートナーは一体何が原因で不機嫌になっていたのでしょうね?  そして、何をきっかけに機嫌を直してくれたのでしょう?  こうした些細な日常も、浄化師として歩み出したあなたたちの軌跡を彩る素敵な思い出の一部になる筈です……。
水上マーケットのデート
簡単|すべて

帰還 2018-04-06

参加人数 3/8人 昂祈 GM
 「教皇国家アークソサエティ」ルネサンス内のヴェネリアに水上マーケットがあるのはご存知だろうか?  そこは船で巡っていく市場であり、それ自体が珍しいというのもあるが時に珍しい品が置いてある事でも知られている。  世界各地から隊商が運んでくる品の中には、骨董品のような物もあるし、希少な物もある。  一つの国の色に染まらない水上の市場は、船で巡るという性質上、賑やかでありながら緩やかな空気を持っている。  デートを兼ねて訪ねてみたら、何か珍しい物があったり、相手の琴線に触れるプレゼントに向く物が見つかるかもしれない。  ちなみに水上マーケットなだけあって、内部には海産物を食べられる食堂が沢山あるが、それと同時に世界各地の美味しい物も楽しめる。  歩き疲れたりしたら、それらの食堂で何か食べて休憩するのも良いのではないだろうか。
あなたを描く
とても簡単|女x男

帰還 2018-04-05

参加人数 4/8人 木口アキノ GM
 ある日の昼下がり、とある浄化師の2人が教皇国家アークソサエティのエトワール地区にあるピットーレ美術館を訪れていた。  喰人が最近気になっている新人画家の絵が期間限定で展示されていると知ったからだ。  心地良い静寂に包まれた館内を、目当ての絵画だけではなくひと通り鑑賞した2人は、出入口付近に設けられた特別催事場に、「絵画講座」という小さな看板が立てられているのに気が付いた。看板の端には、ご自由にご参加ください、と小さく書かれている。  木製パネルが架けられたイーゼルが並んでおり、一般参加者とみられる人々が数人、絵画用木炭を手にパネルに向かっていた。  イーゼルの間を歩き参加者にアドバイスをしている青年は……例の、最近気になっている新人画家その人だった。  講座の様子を見ていた喰人の視線に気づいた新人画家は、顔をあげるとにっこり微笑み、 「あなたたちもいかがですか。今日は人物の顔の描き方について教えています。お互いをモデルに、絵を描きあってみませんか」  と声をかけてくれる。  お互いの顔を描く。  喰人と祓魔人は思わず顔を見合わせた。 「面白そう」 「やってみようか」  お互いにイーゼル越しに向き合って、木炭を手に握る。  相手の顔をこんなにじっくり観察するのは初めてかもしれない。  綺麗な二重。長い睫毛。  よく見たら、この人前髪の一部が少しくせ毛だ。思わずくすっと笑みがこぼれる。  新人画家から時折アドバイスを受けて、2人はそれぞれ木製パネルに描いた木炭画を完成させる。  出来上がった絵を、お互いに見て。 「あなた、意外と器用なのね」 「君って……ええと、独特のセンスがあるね」 「……いいのよ、無理に褒めてくれなくっても……」  そんなやりとりに新人画家が笑う。  どちらも、相手をよく見て描いた素敵な絵だと言って。  そして2人は画家にお礼を言って、美術館を後にした。  彼の目が好きだとか。  彼女の唇の形が魅力的だとか。  彼の真剣な表情が少しカッコ良かったりとか。  彼女が実は絵が苦手だったりとか。  今日は、初めて知ったことがたくさん。  お互いのことを、昨日よりよく知ることができた、そんな一日だった。
契約の日
とても簡単|すべて

帰還 2018-04-05

参加人数 8/8人 久木 士 GM
 ――これは、世界のはじまりの物語。  そして、ふたりの紡ぐ物語に捧げる、はじまりの歌。  あなたの生きる世界、アースガルズ。その世界はいま、大いなる脅威に晒されている。  だがその発端となる事件は、ほんの小さな出来事だった。  はじめに神は、世界を創り給うた。  ヒューマンは他の生物や種族と絆を深め、愛を育み、それによってライカンスロープやエレメンツ、デモンなどの種族が誕生した。  しかしヒューマンの持つ強い正の感情は、同時に強い負の感情――憎しみや悲しみをも生み出していた。  あるとき、ヴァンピール達を「悪魔の使いである」とする一部の者達が、ヴァンピールに対する迫害を開始した。 これにより彼らは多くの同胞の命を失ったが、彼らは迫害から逃れるために常闇の国『シャドウ・ガルテン』を作り上げると、他種族の暮らす住処から去った。 当初ヴァンピールにのみ向けられていた差別意識は、被差別種族の消失によって矛先を失い、徐々に「異質な存在」を攻撃する事に目的が変化していくこととなる。こうして小さな火種は瞬く間に燃え広がり、各地で燻っていた炎は遂にアースガルズ全土を焼く戦争へと発展した。これがのちに『ロスト・アモール』と呼ばれることとなる、全てのはじまりの事件だ。  ロスト・アモールによる戦火の拡大は、世界の大きさに比べるとあまりにも速かった。大戦はヒューマンが他種族との間に築き上げた絆と愛とを失わせ、神の創造し給うた美しきアースガルズは死と憎しみで満たされた。  こうして人間はいつ終わるとも知れぬ戦乱に明け暮れていたが、その血と炎の日々は唐突に崩れ去った。突如として世界に出現した『希望の塔』から『ヨハネの使徒』が、そして『アシッド』から『ベリアル』が生み出されることによって。  ヨハネの使徒は、人間のみを狩るために存在する異形の怪物だ。この怪物は人間の所業に怒った神が、それらを滅ぼすために希望の塔より遣わしたと考えられている。ヨハネの使徒が天使を連想させるような白い姿をしていることが多いのも、この説の信憑性を高めている一因だろう。この怪物が行動する理由は、たった一つ。それらは生ある人間を、種族を問わず殺戮することのみを目的としている。  いっぽうベリアルは、生きとし生けるものを殺し、その魂を喰らうことを目的としている魔物だ。それらは怒れる神が地上に降らせた雨『アシッドレイン』によって生み出された瘴気、アシッドの影響で発生している。この霧状の瘴気を少しでも吸い込むと、魂は拘束されてこの世に留まり続け、肉体はベリアルそのものへと変化する。そうして生み出される怪物は、他の魂を喰らうことによって、天に還れぬ哀れな魂を生み出し続けるのだ。  ヨハネの使徒とベリアルが引き起こした世界的な大混乱は、終末の日の意味を込めて『ラグナロク』と呼ばれ、世界に大戦を招いた人間に与えられた神の裁きとして畏れられた。  このラグナロクを受け、「戦いを続ければ全ての種族や生物が滅びる」と気付いたヒューマンは和平を強く主張。それに同意した各国は和解し、ロスト・アモールはようやく終結を見た。それまで各国が軍事費に注ぎ込んでいた巨額の資金は全て大戦からの復興等に回されるようになり、これまで争っていた者たちの多くも、手を取り合って世界の脅威へ立ち向かうようになった。  そして大戦終結後まもなく、魔術の開祖アレイスター・エリファスによって、教皇国家アークソサエティに薔薇十字教団が設立される。この組織の最大の存在理由は、ラグナロクを引き起こしたヨハネの使徒とベリアルの根絶を主軸とすること。  ――そう、この薔薇十字教団こそが、あなたたち『浄化師』の所属する『教団』なのだ。  あなたたち浄化師は、神が人間に与え給うた滅びの運命に抗うため、教団から出される指令を受けて様々な事件を解決する存在だ。ベリアルに囚われた魂を開放し、天へ還すことができるのはあなたたちだけであり、ヨハネの使徒をより安全に討伐することができるのもまた、あなたたちだけなのだ。  さて、『浄化師(じょうかし)』または『エクソシスト』という呼称が、『喰人(くいびと)』と『祓魔人(ふつまびと)』のペアを指すものだということは、この世界の人々には広く知られている。しかしここでは念のため、重ねて説明をしなくてはいけないだろう。  喰人はグールとも呼ばれる、アシッドによる感染に高い抵抗力を持つ者だ。彼らは類稀な魔術の才能と魔力を持つが、その膨大な魔力ゆえにヨハネの使徒やベリアルから狙われることが多い。また魔力の生産が消費に追い付かなかった結果、脅威に晒されなくとも短命に終わることが多い存在だ。だから彼らは周囲の人々や自分自身を守るため、薔薇十字教団に所属する。  いっぽう祓魔人は、ソーサラーとも呼ばれている。これは常人以上の魔力を生成・蓄積できる特異体質の者を指して呼ぶための言葉で、彼らも喰人と同じく、魔力の消費が生産に追いつかなかったために短命で終わることの多い存在だ。そのため彼らもまた、自分自身を守るために教団に所属する。  だが祓魔人には、浄化師として戦うために重要なものが一つだけ欠けている。  それがアシッドへの抵抗力だ。彼らはそれを補うために、喰人と契約を行う必要がある。  また、契約をすることで、喰人と祓魔人の魔力生産力も安定し、寿命が一般的な種族に順ずることになる。  ――そして、教皇国家アークソサエティ、薔薇十字教団本部前。あなたたち二人は、浄化師となるためにこの場所を訪れた。  あなたたちが浄化師となるのは、ふたりが生きていくうえで必要だからだ。しかし戦いに身を投じる決意や、契約に至るまでの過程は、浄化師によって異なるだろう。契約は定められた手順に従って行われるが、ふたりが浄化師となるためには、二つの適性判断に合格しなければならない。  一つ目の判断は、喰人の血液から抗体を作成するにあたり、祓魔人の体質が適合するかどうか。二つ目は、魔力量と魔力の性質が、互いに悪影響を及ぼさないかどうか。そしてこれらの数値を総合して算出される『同調率』が、規定以上になるかどうか。この同調率が一定以上でなければ、あなたたち二人のペアが浄化師となることはできない。  今、あなたたち二人は、どんな想いを胸に抱いているだろうか。それは契約への不安か、絶対的な自信か、あるいはその他の様々な感情だろうか。  そして二人が今日この場所に至るまでの道のりや理由は、どのようなものだったのだろうか。それは世界に生きる人々への限りない愛情か、世界を滅ぼすものへの強い怒りや憎しみか、あるいは言葉に尽くせない想いの数々があるのだろうか。  ふたりの周りを、風が吹き抜けた。あなたたちはそれを合図に、どちらからともなく歩き始める。    ――これは、あなたたちが浄化師になるための大切な儀式。ふたりを繋ぐ血の契約だ。  あなたたちの歩む道の先に、どうか光がありますように。
春待ちの雪景色
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帰還 2018-04-04

参加人数 2/8人 七橋あずま GM
 春の目覚めが感じられる季節。  しかし、冬の名残も至る所に。  ――教皇国家アークソサエティ、ソレイユ地区。  観光名所としても有名なアールプリス山脈は常に白い雪に覆われているが、この時期にはより色濃い白が残る。山の麓では春の到来を前にして冬を楽しむ人々がいた。 「ちくしょー!当てやがったなー!」 「へへっ、悔しかったらやり返してみろよっ」  無邪気に雪合戦を楽しむ子供たち。あらかじめ低い雪の壁が作られており、壁に隠れてやり過ごす子もいれば、壁などお構いなしの子もいる。雪玉を当てたり当てられたり、一喜一憂しながらはしゃいでいた。  別の場所では、もう少し年上の子供の姿や、大人の姿も混じっている。実は、休日にはチーム対抗の雪合戦が行われる。勝ち抜いたチームには賞品が出るというのだから、その練習かもしれない。 「これでいいかなあ?」 「もう少し大きい方が良いかもしれないわね」 「そうだな。もう一度、パパと転がそうか」 「うん!」  賑やかな場所から少し離れると、今度は雪だるまを作る家族の姿が。体はすでに出来上がっているようで、頭のほうを作っている最中だ。  周囲には完成した雪だるまがいくつも並んでおり、なかには雪だるまと言うには些か手の込んだものもある。何故かというと、ここでは雪だるまコンテストが開催されているからだ。  定められた期間中に作られたモノの中から、いくつか受賞作が選出される。そして、こちらも賞品が用意されているようだ。  このように、冬に雪を楽しみたいという人もいれば、やはり冬は暖かい場所が一番だという人もいるだろう。 「んー美味しい!」 「幸せって、こういうことを言うのかも~!」  現に、コテージの中で若い女性の2人組が料理に舌鼓をうっていた。この地区の特産といえば、乳製品。そして寒いときに食べたくなるといえば――そう、チーズフォンデュだ。  ここのコテージではソレイユ産のチーズを使ってフォンデュを楽しむことができる。パンやソーセージ、基本的な野菜といった定番の具材は用意されているが、それ以外は持ち込みも可能だ。  暖かい室内での美味しいチーズフォンデュ。観光と共に、これを目当てに訪れる人も多いという。みな一様に、ひと口頬張れば、その顔は美味しさに緩んでいた。  これら以外にも、冬の雪原の楽しみ方は様々だ。  幸いにも、あなた方が訪れるその日はイベントの開催日。  春が来る前にいま一度、冬を満喫してみるのはいかがだろうか。
幸せの綿毛を探して
とても簡単|すべて

帰還 2018-04-04

参加人数 3/8人 しらぎく GM
 アークソサエティの東南にあるソレイユ地区にはチェルシー植物園がある。  ここでは春を迎えタンポポやクロッカス、スノードロップなどが可憐に咲き、それらの黄色や白、紫などが緑の大地に可憐な色を添え、訪れた人を出迎えてくれており、暖かく柔らかな風が運ぶ春の花の甘やかな香りでいっぱいだ。  胸いっぱいに息を吸い込むと、体の中まで花が咲いたようにウキウキしてくる。 「本当にいるのかなぁ」  だがそんなウキウキも飛んでいきそうな声でパートナーが呟いた。振り返ると、渋い顔で入り口でもらったパンフレットを見ているパートナーの姿が見えた。 「さっきすれ違ったカップル、いない~ってぼやいていたよ」 「う……そうなの?でもさ、火のないところには煙は立たないっていうじゃん?」 た。  実は今、アークソサエティではこの植物園にまつわるある噂が広まっていた。それは、見ると幸運が訪れるという生物ケセランパセランが目撃されたというものだ。契約したばかりの浄化師二人は日々の訓練の息抜きにこの噂を確かめようとやってきたのだ。  チェルシー植物園には珍しい植物がたくさんあり、普段から研究者や愛好家が訪れている。そこにいまはケセランパセランを探しに来た観光客も加わってたいへん賑やかであり、さらに今日は薬学の学会もちょうど開かれる日であったようでたいへん混雑している。その人混み具合にもう疲れたと言わんばかりにパートナーはため息をついた。 「それに、こんなに人がいたらはぐれちゃいそう」 「そうだね。はぐれないようにしないとね」  ここには美しい花のみを集めた美花の園、毒を持っていたり怪しげな見た目の植物を集めたミステリアスな毒花の園、薬草を集めた薬草の園の三つの花園がある。その中のどれかにケセランパセランがいるのではないかと、咲き誇る花を愛でつつ、白い綿毛のような幸運の生物をここを訪れた人々は探しているのである。 「とにかくさ、せっかく来たんだし色々見ながら回ってみようよ。宝探しみたいな感じでさ!」 「宝探し……か」  そういうと、パートナーは気持ちを切り替えるようにうんと伸びをした。 「そうだね。せっかくだし。じゃあどこから回ろうか」  浄化師二人はパンフレットを一緒に覗き、計画を立て始めた。  さあ、幸運をもたらす白い綿毛の生物ケセランパセランを探しに行こう。