《悲嘆の先導者》フォー・トゥーナ Lv 41 女性 ヒューマン / 墓守


司令部は、国民から寄せられた依頼や、教団からの命令を、指令として発令してるよ。
基本的には、エクソシストの自由に指令を選んで問題無いから、好きな指令を受けると良いかな。
けど、選んだからには、戦闘はもちろん遊びでも真剣に。良い報告を待ってる。
時々、緊急指令が発令されることもあるから、教団の情報は見逃さないようにね。


夏の終わり 秋の始まり 柑橘まつり
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帰還 2018-09-23

参加人数 5/8人 浅倉季音 GM
 教皇国家アークソサエティ「ヴァン・ブリーズ」の西。  柑橘生産の盛んなこの村では、夏の終わりに「柑橘まつり」が開催される。  夏の終わりは、秋の始まり。  村人達は秋の始まりに、神に無事の収穫を祈るのだ。  過去を辿れば村人達だけでおこなっていた、このまつり。  だが、現在は誰でも参加できる。  しかもだ。  数年前、このまつりで出逢った者達が結ばれ、話が広まっていった。  出逢いを求める者は勿論、愛しい者とともに参加する姿も、見られるようになったのである。  貴方も、そんな参加者のひとりなのですね。  さぁどうぞ。  この通りでは家の前に、各家庭ごとの屋台が並びます。  村人達が柑橘を使ったお菓子やお料理をつくりますので、お楽しみに。  まっすぐ進んでいただくと、村人達が共同で使っている倉庫があります。  壁にどどーんと柑橘の絵を描きますので、よろしければご参加ください。  あぁそうでした。  お連れさまとの縁結びをご希望でしたら、倉庫の手前を南に。  ちょうどいま手を振ってくれている、あの女性のいるところが受付です。  お好きな色の紐におふたりのお名前を書いて、柑橘の木に結んでください。  おふたりの幸せを、お祈りしておりますね。
夜長の閑談
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帰還 2018-09-23

参加人数 8/8人 あいきとうか GM
 焼けるようだった夏が終わり、涼しい秋がやってきた。  長かった日は短くなり、ふと気がつけば夜が訪れている。この日もそんな調子だった。 「眠れない」  教団寮の自室で呟く。もう何度、ベッドの上で寝返りを打ったことだろう。安眠作用があるというハーブティも飲んでみたが、どうやら今夜は効かないらしい。  気が昂っているのだろうか。そうなるようなことがあっただろうか。緊張か、興奮か。  そんなことを他人事のように考えながら、ナイトウェアを脱いで教団の制服に着替える。ふらりと司令部を訪れ、掲示板をぼんやりと眺めた。 「……あ」  夜警募集。日付を確認してみれば、今夜だ。  慌てて受付を見ると、眠そう顔をした司令部教団員と目があった。 「三時間ほど適当に巡回してください~。たぶんなにも起こらないので~」  なんて、適当なことを言ってくる。とはいえ浄化師は二人一組で行動するもの、と思っていたところで。  以心伝心でもしたのか。ぬっと隣に現れた人物が、あまりにも見慣れたいわゆるパートナーが、片手を上げた。 「奇遇?」 「どうだろうねぇ」  肩をすくめ、夜警の依頼を受ける。どうやら教団本部周辺の夜警担当だった警備員が何名か、風邪で休んでいるらしい。代役として浄化師を立てようというわけだ。  白い満月が空に浮かぶ夜。気の抜けた夜警の指令。  さて、なにを話そうか。
メディコ・デッラ・ペステの泡沫の夢
普通|すべて

帰還 2018-09-22

参加人数 3/8人 北野東眞 GM
「お前たち、そろそろ、こういう仕事をまわそうかと思う」  エントランスにやってきた浄化師たちは、いつものように指令を受けようとすると、ロリクに呼ばれた。 「ちょっと精神的に危険なやつがいて、その対応をお願いしたいんだ。もしかしたらそいつは自分の行いに固執しすぎているのかもしれない」  自分の存在意義。  それにあまりにも固執しすぎるとそのことだけしか考えることができず、逆に蔑ろにすることで、どうしてこの世に存在するのかが見失い、精神が不安定となる。 「今回、気になっているのは今年の春に浄化師になったルイ・シュナイダーという男だ。  種族はヒューマン、もともと医者を目指していたそうだが……相棒はリリカ・ルルで、こっちはベリアルに村を滅ぼされたことから浄化師を目指してきた。  相性は悪くないんだが……リリカは無鉄砲でけっこう傷を作ることが多く、ルイはしょちゅう、彼女の治癒にあたっていたらしい。  その上、今年はタチの悪い夏風邪がはやってなぁ」  ああ、ロリクもかかっていたよなぁ。 「そう、それにリリカもかかったらしい。らしいと……曖昧なのは彼女は寮以外のところで暮らしていて、一週間ほど姿を見ていない。そして、ルイ・シュナイダーの姿も」  ふぅとロリクはため息をついた。 「ルイ・シュナイダーは病を治すことを志して浄化師となったんだ」  浄化師のなかでも人々の命を尊み、病を憎むことを行動概念、信念とする者が掲げるのが『病魔根絶』の精神だ。  自分の信念を蔑ろにすれば、その者は人を癒す意味を見出せず、己の命の尊さすら忘れて廃人となってしまう。  逆に人々を癒すことにのみ心を砕き、行動するといずれは正常をなくし、ささいな傷でもオペをはじめてしまうほどの狂気を出してしまう。 「先ほども言ったように、ルイは指令のたびにケガをするリリカや他の仲間たちの治癒に専念していた。  まぁもともと過去に起こったデス・ワルツを話で聞いて、二度と起こしたくないと思って医者志望となったそうだ。  医者志望だと、どうしてもあの事件のことを勉強するからな、人一倍病に対しては敏感になってしまうからなぁ。  しかし、今はペストにしろ、他の病気にもきちんと対処法があるんだが……彼はあまりにも命を守ることに固執しすぎて、常識を忘れ、  手段を択ばなくなっているのではないかと思われる。  ちょっと前から少し気にはなっていたんだが……お前たちにお願いしたいのは、リリカ・ルルの住まいへと訪れ、無事かの確認。  そしてルイがいれば、彼の状態を確認し、彼への説得を試みること。  リリカがいるなら彼女にも事情を説明し、一緒に説得にあたること。精神的に追い詰められて、精神が暴走状態にあるやつはベリアル化の可能性もあるが、  絆を結んだパートナーの声で戻ってこれる。ただリリカも突然のことでびっくりして説得もなにも考えつかない可能性は高いから、  お前たちがあれこれとアドバイスしたり、サポートしてやれ。  これは他人事じゃない。お前らだってある可能性があるんだ。今後のためにもきちんと対応してこい」 ●  光を嫌い、彼はカーテンをしっかりと閉めた。薄暗い部屋のなか。  彼はマスクをかぶる。自分が病にかかってはいけない。病から守らなくては。大切な人たちを。  強い香辛料の匂いが漂う、鳥のようなマスクをつけて彼は助けるべき患者を見る。 「だいじょうぶ、だいじょうぶ、だいじょうぶ、だいじょうぶ、たすける、たすける、たすけてみせる」  メスを握りしめ、彼は告げる。 「いのちをたすけてみせる。きみをすくってみせる。やまいよ、きえろ」  救うための、その指先は、黒く染まり、ひび割れていた。
スリーサイド・デスファイト
難しい|すべて

帰還 2018-09-22

参加人数 8/8人 黒浪 航 GM
 晩夏のある朝、霧深い森の中を、黒い外套に身を包んだ四人の男が音も無く駈け抜けてゆく。  一定の速度で、息も乱さず、木々の間を滑るように疾走していく彼らの姿は、さながら死神か、幽鬼のようだ。  全員が終焉の夜明け団の信者だが、巨大で異様な組織の中でも、彼らはひときわ異彩を放っている。  彼らは、組織の裏切り者や、敵対者の抹殺を主な任務として活動している信者たち――いわゆる処刑人、暗殺専門のスペシャリストなのだ。  当然ながら、その実力は折り紙つきで、彼らに狙われて命を落とさずに済んだ者は、数えるほどしかいないという。 (そろそろ、か……)  四人の先頭をゆくアインは、ターゲットが近いことを察して、後方の部下たち――ツヴァイ、ドライ、フィーアに注意を促すハンドサインを送った。  経験豊富で、普段は常に冷静沈着な三人の部下も、今回ばかりは内心の不安と緊張がはっきりと顔に表れてしまっている。 (まあ、無理もないな)  アインは、五感を研ぎ澄まして前方の気配を探りながら、乾いた唇を舐めた。    組織のアジトのひとつが、ひとりの女によって壊滅させられた――数日前、本部にその情報が届いた時には、アインも思わず自分の耳を疑った。  やられたのは、辺境にある小規模な拠点ではあったが、それでも常に十名以上の魔術師が所属し、防衛にあたっていたはずなのだ。それを、まさかたったひとりの女に潰されるとは――。  敵の正体は不明だが、相当な実力者であることだけは間違いない。  油断すれば、こちらがやられる――アインが額に浮いた汗を無意識に拭いながら、木々の間を抜け、小さな丘の上に出たとき――、 「待っていましたわ」  突然声がして、慌てて見上げると、丘の頂上にたっている若い女が、こちらを見つめて微笑んでいるのに気づいた。 「……っ!!!」  四人の男は驚愕し、不用意にもその場で硬直してしまう。 (ばかな……この俺が、まったく気配を察することができなかったというのか……)  アインは、信じられないような表情で女の柔和な顔を見つめる。  女の周囲には、キメラと思われる異形の怪物が、三体。  大きさは、大人の人間とほぼ同じ。爬虫類の顔と皮膚をもつ、二足歩行のモンスターだ。おそらくは、トカゲとサルを合成して生み出したキメラだろう。  あえて名付けるなら、リザードマン、といったところか――。  なるほど、キメラを引き連れていたのだとすれば、女ひとりにアジトが壊滅させられた、というのも納得がいく。 「……我々のアジトを襲ったのは、お前か」  アインの隣にたつツヴァイが、重たい声で訊くと、 「ええ、そうです」  着古した修道服に身を包んだ女は、金色の眼を細めて余裕たっぷりに答えた。 「なぜだ……なぜ、我々の敵となる?」  四人で一番若いドライが口を開くと、女は小さく肩をすくめた。 「ここで命を落とすあなた方が、それを知る必要はありません」 「なるほど……」  フィーアが殺気を放ちながら不気味な笑みを浮かべると、アインはしずかに腰のナイフに手をかけた。 「女……殺すまえに、お前の名を聞いておきたい」  アインの問いに、女は、軽く笑って、 「ルシア……それが、わたしの名です」  意外にも素直に答えた。 「そうか……。では、覚悟しろ。ルシア」  アインがそういって、ナイフを手に駈け出そうとした、まさにその時――、 「ま、待てっ!」  油断なく周囲に気を配っていたツヴァイが、緊迫した声をあげた。  アインがとっさに振り向くと、部下の視線の先に、今しがた森から出てきたばかりの一団の人間がいるのが目に入る。 「!? ……教団の浄化師が、なんでこんなところに……?」  アインが苛立たしそうにつぶやくと、 「わたしが呼んだのです」  ルシアが、金色の眼を細めて、嬉しそうににいった。 「なに……?」 「終焉の夜明け団のアジトを襲えば、あなたたちが追ってくることは、はじめからわかっていました。ですから、アジトを襲う前に、教団に情報を流しておいたのです」 「…………」 「わたしは、今まであなた方からただ逃げていたわけではありません。彼ら――教団の浄化師たちをずっと探していたのです。わたしに代わって、あなた方を倒してもらうために」 「なんだと……」 「あなたたちと、薔薇十字教団の浄化師……はたして、どちらが強いのでしょうね……」  ルシアは、頬に手をあてながら、不敵な笑みを浮かべる。  浄化師たちは、終焉の夜明け団の信者とおぼしき男たちと、キメラを従えている女を交互に見つめつつ、武器を構える。  数日前、「ソレイユ地区の北部にある廃村に終焉の夜明け団のアジトがある」という未確認の情報が教団の本部に入り、その真偽を確かめるために派遣されてきたのだが――どうやら、今回はあの女に利用され、上手く操られていたらしい。  まったく、不本意で癪に障ることこの上ないが、こうして終焉の夜明け団の信者と、禁忌魔術を使用する者を見つけた以上、浄化師としてやるべきことはひとつしかない――。 「面倒だが、両方やるしかないな……」  アインはナイフを構えつつ、部下たちに頷いて見せる。  ルシアと、教団の浄化師を同時に相手にするのは厳しいが、かといってここで尻尾を巻いて逃げ出すわけにもいかない。  見たところ、女と浄化師たちは、友好関係にあるわけでもなさそうだ。となれば、こちらにも十分つけ入る隙はある――。  朝霧の流れる草原の丘で、今、奇妙な三つ巴の戦いがはじまる――。
汝を守り、支えるもの
普通|すべて

帰還 2018-09-20

参加人数 6/8人 北野東眞 GM
「お前らは、自分の武器って大切にしているか?」  指令受付口でロリクが問うた。  浄化師たちの使う武器――魔喰器は、生け捕りにしたベリアルを武器へと変えたそれは魔術鍛冶職人ヴェルンド・ガロウなどの一部の腕のよい鍛冶職人によってつくられたものだ。 「魔術鍛冶職人はわりといるが、魔喰器を作れるのはとても少ない。それだけ大変難しい技術によってつくられている。  うん、たまに、ハリセーンとかよくわからないものがあるが、本当にたまによくわからないおたまとかあるが、あそこらへんはほんとよくわからないけど、ヴェルンドのおちゃめもたまに理解できないもんだ。疲れていたのか? いや、ほんと」  ロリクはこほんと咳を一つしたあと話を戻した。 「今回はその魔術鍛冶職人からの依頼だ。あ、といっても魔喰器を作れるやつじゃない。将来的にはなりたいとは口にしているが、将来的にどうなることやら」 「どうなることとはなんザマス! 僕は必ず魔喰器を作るザマス!」  いきなり声をあげたのは金髪に青い瞳、とがった耳の――エレメンツの青年だ。ほっそりとした肉体の青年は胸を反らした。 「はじめましてザマス! 僕はウィリ・ウィリカ・レイド・ノルト・ヴァ」 「長い、長い、長い! 気軽にウィリでいいだろう!」 「むぅ。自己紹介くらいはきちんとしようと思ったザマスが、まぁ、本気出してやったら一日かかっちゃうザマスからねぇ」  ウィリはロリクを睨みつつ、笑った。 「将来、世界一の魔術鍛冶職人になる僕のことをきちんと覚えておくザマス!」 「今は見習いだろう」  ロリクが冷たくつっこんだ。 「今回の依頼人はこいつだ。なんでもここから一日ほどかかる距離に森があって、そこを抜けたところにある崖にいい魔結晶があるそうなんだ。  ただこの崖はちょっと危険でな、実はソードラプターの巣があって、二羽ほど目撃されてる。  ちなみに巣はちょうど崖の中央部で、上から紐を吊るして降りるなんかは危険すぎるし、下からのぼるのも険しすぎて困難だ。デモンなんかで飛べるやつがいたらぎりぎり手が届く、ぐらいの高さの場所だ。  ソードラプターを退治しつつ、魔結晶を集めるのを手伝ってほしいというものだ」 「野宿の準備はばっちりするザマス! 調理用発火符なんかは僕が用意しておくザマス。  なんでついてくるかって……道具となる大本の素材はぴちぴちなときがいいザマス! それに素人が乱暴にやって傷がついても困るザマス! といっても僕は戦うなんて野暮なことはしないザマスからしっかりと僕のことを守るのはお願いザマス。  武器や道具を粗末に扱うやつは軽くおしおきしちゃうザマスよ?」
森の蠢き
難しい|すべて

帰還 2018-09-19

参加人数 4/8人 春川ミナ GM
「なぁなぁ! おもしれーもん見つけたんだ!」 「何よ? アンタが言う面白いものってどうせ熊のフンとか変な色のカエルでしょ? 早くお仕事して帰るわよ!」  年の頃は12、3歳くらいだろうか。活発そうな男の子と真面目そうな女の子が山道を歩いている。  背中には柴(しば)が入ったカゴ。恐らくは家の手伝いなのだろう。    ここはミズガルズ地方、ソレイユ地区の端。木々が生い茂る小高い山に隣接するように村があり、村人達はその恩恵を受けて生きている。主にここで採れるのは質の良いナッツで、その実を加工した工芸品や食料品で生計を立てているが、あまり裕福では無い為に成長したらこの村を出て行く若者が多く、過疎化に悩まされているのが実情だろうか。 「ほんとだって! 今度は変なものじゃねーよ! 白くてツヤツヤスベスベな岩なんだ! 姉ちゃんもきっと気に入るし、もしかしたらなんかの宝石かもしれねぇ。そしたら俺達お金持ちかもよ?」 「はぁ……。アンタねぇ。ここの山は土は良いけど鉱石の類いなんて出ないって昔に偉い学者先生が言ってたでしょ? ホラ、そんな事よりこのカゴいっぱいにしなきゃ、またお母さんに叱られるよ?」  姉と呼ばれた少女は溜息を吐いて柴を拾いながらカゴに入れていく。きょうだいの家はナッツの加工を主に請け負っており、ローストする為に大量の質の良い焚き木や柴が必要なのだ。なので他の村人達よりは比較的に山の中を歩くのは得意としている。弟が変な石だか岩だかを見つけたのは山を遊び場にしていた事もあるのだろう。 「姉ちゃん! こっちこっち! ……あれ?」  男の子が得意気に先導するが、次の瞬間、怪訝な表情になった。 「何よ、どうしたの? アラ、本当に綺麗な岩ね。石灰が混じっているのかしら。大理石の材料にはなりそうもないけれど、これはこれで良いわね」 「う、うん。……あんなところにあったっけ? 俺が見た時はあの大きな岩の影にあったんだけど」  首を捻る男の子だったが、少女はゆっくりと岩に近づく。大きさは今少女達が背負っているカゴにかろうじて入るくらいだろうか。 「丸いからちょっとした事で転がっちゃうのかもね。でもここは平坦になっているから大丈夫よ」  手に持った小枝で岩を軽くつついたり、叩いたりする少女。動いたりしないと解ると、直に手で触り始めた。 「わ、本当にツヤツヤしてスベスベ! これって削ったら美白の化粧品にならないかな?  うーん。……石灰だったら無理ね、かぶれちゃうから」 「姉ちゃんってホントに金の事しか興味無いんだな」 「当たり前よ。私はこんな村早く出て都会のお金持ちと結婚するんだから」 「出たよ出たよ。姉ちゃんの妄想が」  岩を撫でさする少女は何とか岩を持ち運べないか試行錯誤しているようだ。 「ねぇ、アンタ。私のカゴに入っている柴を全部そっちに移してくれない?」 「え、まさか」 「まさかよ。持って帰るの。ホラ、キリキリ働いて」 「うぇぇ……。マジかよ」  文句を言いつつも弟は姉のカゴから柴を全部自分のカゴに移した。おかげで姉のカゴは空。 「じゃ、この岩を私のカゴに入れるから手伝ってちょうだい。帰ったらナッツクッキー焼いてあげるから」 「ヘイヘイ、全く人使いの荒い姉ですこと」  そう言いつつも弟の顔は笑顔だ。お菓子に釣られたのかもしれない。 「ありがと。……ッ! 結構、重い、わね!」 「っとと! 姉ちゃん足元!」 「えっ!? うぐっ! カハッ!」  姉が木の根にひっかかり、転ぶのに釣られる形で弟も倒れる。 「ってて……。姉ちゃん、大丈夫か? ……姉ちゃん?」 「……」  しかし姉の顔は目を見開いたまま瞬き一つしない。腹部の上には先程二人で持ち上げようとした岩。 「オ、オイ……。冗談やめろよ、姉ちゃん、こ、これどかさなきゃ……」  弟は慌てて姉の腹の上に乗っている岩をどかそうと押すがびくともしない。 「なんでだよぉ……」  半泣きで岩を押す弟。しかし視界が歪んでいるために岩の変化には気が付かなかった。弟の死角になっている部分がピキリパキリと音を立てて罅割れて行く事に。 「ね、ねぇちゃあん。……ウオッ!?」  弟が岩の変化に気付いた時にはもう遅かった。 「ミイィィイイイイ!」 「ぎゃあああああ!」  緑色の何かが弟の視界を埋め尽くしたのだから……。  *** 「おーい! ったく、アイツラどこまで行ったんだ? 村の皆にまで迷惑かけやがって」 「まぁまぁ、もしかしたら怪我でもして動けないかもしれないし、父親なんだから理由も無く頭ごなしに叱ってやるんじゃねーぞ」 「チッ! 分かってるよ。……すまんな、手を貸してもらって。アイツらが怪我でもしてたら背中に担いで帰ってやるよ。……小さい時のようにな」  山火事防止の為だろう。柄の短い松明を掲げた大人達が総出で森の中を捜索している。  その中にはきょうだい達の父親も居た。  しかし、少し先から男の野太い悲鳴が聞こえて来た。その声に父親は駆け出した。 「見つかったか!?」 「オイッ! 待てッ!」  隣に居た友人であろう男の制止を振り切って。  ……しかし辿り着いた父親は絶句する。 「……なんだよ、これは」  そこにあったのは無残に食い散らかされた子供達の遺体。そして卵の殻のような白い破片。まるで遺体を白い花が飾るように、ばら撒かれていた。 「なんだよ、これはぁあああ!?」  父親は同じ言葉を繰り返すとその場にくずおれた。 「……獣にやられたか。この近くには凶暴な種は居なかったんだがな。巣を追われたクマかもしれん。人の味を覚えた獣は凶暴だぞ。悲しいかもしれんが、一旦村に……ってなんだこりゃ」  父親の肩にそっと手を置く友人だったが、自身の体に纏わり付くナニカを感じ、振り払おうと松明を振る。しかし何かに絡め取られるように、その腕は中空で止まった。  見回すと周りの男達も皆一様に妙な体勢のまま固まっている。複数の操り人形の糸を絡め合わせたらこんな感じに見えるだろうか。  ……糸!? まさか! 「おい! 皆! 気をつけろ! コイツは獣じゃない!」  友人が何かに気付いて警告を発した時にはもう遅かった。すでに全員が罠にかかっていたのだから。 「ミィイイイイ!」 「ぎゃあっ!?」  それは例えるならば大きな緑色の芋虫だった。ただただ巨大である以外は。  捜索に来た男の肩にじゃれつくように乗る姿は愛嬌があるかもしれない。……首筋に噛み付いていなければ。 「ぎゃあっあっッッァッ……!」  芋虫が口から白い糸を出し、男の顔に吹き付ける。悲鳴をあげていたが、頭全体を覆うように糸が巻きつけられ、やがてガクリと力無く首が垂れ下がった。  男から離れた芋虫は地面に落ちた松明を避けるように進み、次のターゲットを物色しにかかる。 「ッ!? オイ! いつまで放心してやがる! コイツは手に負えねえ! 背を低くしてるお前は糸にかかってねぇ! こいつはベリアルだ! そのまま伏せながら逃げて教団に応援を、ギャアッ!」  友人が父親に声をかけるが、生気に満ちたと判断されたのか友人の首に芋虫が噛り付く。そのまま糸を吐き、友人は物言わぬ屍になった。 「スマン……! すまない!」  泣きながら這い蹲り、逃げる父親をその場で縫いとめられた村人達は諦めと縋る様な感情が入り混じった視線で見送るのみだった。  誰も言葉を発しない。何故ならば声を出した瞬間に自分の死が確定するのだから……。
女装コンテストからは逃げられない。
とても簡単|すべて

帰還 2018-09-17

参加人数 5/8人 oz GM
 これは新人浄化師への洗礼という名の悪しき慣習の話だ。  真夏。それは人を開放的な気分にさせる季節。夜更けの寮で男たちは大盛り上がりでゲームに興じていた。  始まりは先輩浄化師の誘いからだった。 「お前ら、今暇か? ちょっとこっちでカードゲームやらねぇ」  いつもお世話になっている先輩達から新人達にゲームを持ちかけられた。  それは徐々に白熱していき、誰かが負けたら罰ゲームをしようと言い出す。 「安心しろ。お前らが勝ったら俺らが何でも奢ってやるよ。その代わり負けたら、……そうだなあ。指令を手伝ってもおうかな」  先輩の一人がそうフォローする  日頃頑張ってるからな、というお言葉と共になんか賭けた方が面白いだろとトランプをシャッフルし出す。 「今は夏だし祭りやイベントが多いからな。浄化師が駆り出されることも多くて人手が足んないんだよ」  人当たりのいい笑みでそう言われ、罰ゲームに身構えた者も肩の力を抜いた。ゲームは口実で人手が欲しいのだろう。  もし負けても指令を手伝ったら先輩が奢ってくれるかもしれないという打算が働いた者もいた。  その場の空気に流されて、賭事は始まったのだ。  10回勝負で新人と先輩に分かれて勝ち数が多い方が、先ほどの条件が叶うということに決まり、最初は新人達が勝っていた。これなら勝てるかもしれないと言う空気が漂う。だが、中盤になると勝ったり負けたり繰り返す。  夏の暑さにも負けずヒートアップしていくゲーム。負けた者は次こそ勝つべく勝負に乗る。そうしてゲームはさらなる泥仕合へと突き進んでいく。  賭事に勝者と敗者はつきものだ。今回のゲームもはっきりと勝者と敗者に分かたれた。 「いやー、負けちゃいましたね……せっかく先輩に奢ってもらえると思ったのに」  負けた新人浄化師が残念そうに頭を掻く。 「それで、何を手伝えばいいんですか、何でもやりますよ」 「なら、女装コンテスト頼むな!」 「え?」  どうにも耳に何か詰まっているらしい。よく聞き取れなかった。 「すみません、よく聞こえなかったんでもう一度言ってもらっていいですか?」 「お前らは女装コンテストに出場するんだ」  先輩は真顔。逃げようにも肩を強く掴まれ逃げられない。 「男に二言はない筈だ。負けたら指令を手伝ってくれると言ったよな」  先ほどの人当たりの良さは彼方に飛んでいき、いつの間にか用意されたエントリー用紙を目の前でひらひらさせる。まるで連帯保証人に借用書を突きつける高利貸しのようだ。 「ひでー、あんたら俺らのことハメたな!?」 「何言ってんだ。賭事に乗ったのはお前らだろ」 「そんな指令だって分かってたら絶対に乗らなかったのに!」 「事前確認が大事だと学べて良かったじゃないか」 「イヤだー、女装はイヤだー!」  それでも往生際悪く新人は足掻く。 「俺らも申し訳なく思ってるんだよ」 「申し訳なく思ってんなら参加しなくていいですよね」 「それは無理な話だ。毎年この指令は来るんだよな。でも、やりたがる者は中々いない」 「そりゃそうでしょうよ」  新人は荒んだ顔で吐き捨てる。そこに先輩への敬意は全くない。 「ってわけで、毎年新人から尊い犠牲、ゴホンッエントリーされるわけだ」 「犠牲!? あんた犠牲って言っただろ!?」  新人は不意にあることに気づく。 「それならあんたらも新人時代にしたってことか!?」  先輩方は無言の笑みを浮かべる。 「自分がされて嫌なことは人にしないで下さいよ!」 「ふざけんなっ! 俺らだけがあんな目に遭うなんて納得いかねー、逆に後輩ができたら絶対に参加させてやると決意したわ!」 「最悪だな! そこで止めろよ、俺らを巻き込むんじゃねえ!」 「だが、断る! さあ、とっととエントリー用紙に名前を書くんだ」  先輩と新人の醜い争いが深夜に響く。それは寮母であるロードピース・シンデレラが駆け付けるまで続けられた。  毎年夏になると、ピットーレ美術館で開催される同人即売会の運営から教団にある依頼が来る。  女装コンテストを盛り上げる為に浄化師に参加して欲しい、と。  市民にもっと親しみを持ってもらう名目で毎年新人は強制参加させられる。  そうこの為に、あらゆる手段を使って新人浄化師の中から生け贄を選出するのだ。いつから始まったかは分からないが、毎年密かに行われている選出の狂乱騒ぎは教団内では夏の風物詩であった。  新人時代に女装コンテストに出場させられた歴代の先輩方が、絶対に他にも道連れをつくってやるという決意の元、負の連鎖が毎年起こっているのだ。  結局、一悶着あって女装コンテストに出場することになったあなた。  ある者はハメられたと頭を抱えたり、未だに放心状態でいる者、パートナーに泣きつく者、嬉々として楽しむ者、自分でなくて良かったと内心安堵する者といった悲喜交々な人間模様が繰り広げられる。  賭事に負けて参加することになった者もいれば、先輩に公衆面前で土下座されて否とは言えず流された者、あるいは借りの清算を求められ嫌々参加することのなった者、パートナーが面白がって勝手に了承された者と参加理由は様々だ。  もちろん女性陣の方にも話は伝わっており、彼女達は彼らが着る服のコーディネート、化粧を施す手筈となっている。  パートナーにばれたくないと隠そうにもエントリーされた――指令を受けた時点でパートナーには知らされており、どこにも逃げ場はない。  夏のバカ騒ぎ。これもあなたたちにとっていろんな意味で忘れられない思い出となることだろう。  さあ、楽しい楽しい女装コンテストの始まりだ。
歌う骨の鯨
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帰還 2018-09-17

参加人数 3/8人 北野東眞 GM
 海洋に住む生物を元にしたベリアルが出現した、と報せが広まったのはつい先日。その情報から海辺の街は警戒を強めた。  むろん、浄化師たちの活躍もあるが、自衛も必要と海辺の街にある自警団たちは、昼間と夜と海辺の警戒を行っていた。  夜。自警団たちは警備のため海岸近くにテントを張り、松明を焚いて夜の海を警戒していた。  光のない暗闇に、めらめらと燃える炎。  何事もないようにと祈る、のだが。  くおおおおおおおおおおおおおおおおおん。  海から不気味な声が轟き、その場にいた者たちは驚いき視線を向け、それを見た。  暗い闇のなかに白くうごめく巨大なそれを。 「山? 違う、あれは……悪魔っ!」  一人が蒼白に顔で叫んだ。  白い骨の山だった。否、骨と骨が組み上げられ、なにかの力によって生き物の形をしている――20メートルほどのそれは炎に照らされるとわかるが、透明に近い。  骨以外はほぼすべて透明で、ぶよぶよとした水の塊。 骨と透明なぷよぷよとした塊の中心――人でいうところのあばら骨に守られた、心臓部分には青い石がきらきらと輝いていた。まるで魂のように。  それは目もなく、鼻もない。ただ口らしいものは存在し、そこから不協和音を漏らす。  くおおおおおおおおおおおおおおおおおん。  ただの大声なのだろうが、一定の音を越えたものは鼓膜にダメージを与える。たいした装備もしていなかったなら余計に。  音のせいで動きをとめた人間を殺すのに、それは動くだけでよかった。体をくねらせるだけで穏やかだった波は嵐のごとく大きくうねりあげ、その場にいた人間を、ものを無造作に襲う。  塩辛い大きな波の一撃は人々の体力をそぎ落とし、歌うように紡がれるその声は疲弊した肉体に恐怖という精神的ダメージを与えるには十分だった。  サミシイ。  サミシイ。  トテモ、  サミシイ。  何度も押し寄せる波によって蹂躙される人々には絶望が広がった。 「だめだ、一時撤退! おい、確か、調査にきている浄化師がいるって聞いたぞ! そいつに助けを求めてこい」 「はい!」  足の速いものが急いで街へと走り出す。その間も波は荒れ、一人、また一人と倒れて、ランプを持つ者が仲間を抱えて逃げようとしたとき、それが歌をやめた。  透明なそれは闇に溶け、姿が見え難い。  海は波打つ。  静寂。  ざばん、と海から顔を出したのは大きな穴だった。  穴が、迫る、迫る、迫る――。 「ひぃ!」  もうだめだ、と仲間を抱えて目を閉じた。  炎が飛び――ぐしゃりと血肉が砕けた。  ● ● ●  浄化師たちへ指令発行を行うロリクは少しばかり憂鬱そうな顔をして告げた。 「海辺の街がベリアルに襲われている。  今回、たまたま他の調査にこの街に立ち寄った浄化師のユギルが、自警団たちは守り切ったそうだが……」 「守り切ったとは優しい言い方じゃのぉ。ストレートに根負けして逃げかえってきたと言ってもいいぞ?」  ロリクが説明していると、奥から狐の面をつけたユギルが出てきた。その片腕は折れたのか、肩から吊るされている。 「ユギル! お前、安静にしろって」 「仕方なかろうが、あれを見たのは吾なのじゃから、かわいい子らへ説明せねばなるまいよ。  今回の討伐対象はただの鯨を元にしたベリアルではない、白い……骨の鯨を元にしているようじゃ。元は骨鯨という生き物じゃろう。  大きさとしては20メートル程度で、骨はむきだしじゃが、その骨を白い膜のようなもので覆われ、ぶよぶよしたクラゲのような見た目をしておる。  その中心部……人でいうところの心臓があるところじゃ、あばら骨に囲まれるようにして青く輝く石が存在した。  骨鯨は大きな声で、人の動きを止め、暴れまわり、疲労して疲れたところに大口を開けて、その場におった自警団らを食べようとしておった。  ふふ、片腕は犠牲となったが、その場にいた人間はみな無事じゃ。  しかし、いつ、あれが命を貪るために街へと入らんとも限らん。  あのベリアルはカタコトとはいえ言葉を語るゆえ、スケール2よ。お前たち、スケール2と戦ったことは?  あいつらは子供並みとはいえ知識を持っているから、きちんと討伐方法を考えて挑まねば、食い殺されるゆえ注意しておいき。  腹が立つことに鯨が出るのは、夜よ。今回、自警団が松明を灯した海岸へとやってきよったわ。  目も鼻もないが、皮膚でそうした温度を感じているようじゃな」  ユギルの説明を受けている浄化師たちに、ロリクが続けた。 「一応、こちらの用意している討伐方法としては、海岸際で焚火をして鯨を寄せての待ち伏せだ。  昼間のうちに罠や鯨の動きを止めるか考えるといいだろう。  鯨のでかさと強さは半端ないが、骨鯨を元にしているからには、水気の少ない海から遠く離れることはほぼないだろう。  なんとか海から引っ張りだして一斉攻撃できるようにもっていくんだな」 「かわいい子らよ、真正面からいけばみな無事ではすまんことになる。よぉく策を練っておいき。この周囲についてはすでに調べておるので、地図を持っておいき。  海じゃが、すでに時期なのかクラゲが多くての、こやつらは透明で照らせば輝く性質を持つが、毒を待つ。長居すれば刺されて動きが鈍くなるじゃろうから、気を付けるんじゃ。  岬には灯台がある。照らすことで攻撃をしやすくすることは出来るじゃろう。  この海岸の端には洞窟があっての、普通の人間なら四人くらいなら入れる。入り口は奥へと進めば進むほどに狭くなり、さらに海水がなくなる作りじゃ」
夏風邪にご用心
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帰還 2018-09-15

参加人数 7/8人 蛯沢真尋 GM
 教皇国家アークソサエティ。薔薇十字教団。司令部。 「おー、お前ら、今回は大活躍だったな」  与えられた指令を完遂し、パートナーとともに報告を済ませたあなたは、先輩の浄化師の男性からそんな労いの言葉をかけられていた。 「さすがに疲れただろ。今日はゆっくりと休んどけよ。最近は、気温が下がったり上がったりで、体調を崩し易い。浄化師といえども、人の子だからな。健康管理には充分に……」  と、まさにそのとき、あなたの隣でパートナーがゴホゴホと咳き込む音が聞こえた。  大丈夫?  あなたが訊ねると、パートナーは大丈夫と頷く。  しかし、その辛そうな顔や、さっきの苦しそうな咳のことを思うと、あまり大丈夫そうには見えない。 「あー、噂をすれば何とやら、だな……。とにかく今日は寮に帰ってゆっくり休んどけ」  くしゃくしゃと髪をかきまぜながら、先輩の浄化師が早く寮に戻って休むように促した。  あなたとパートナーは、一礼し、その場を辞そうとする。  と、そのとき。 「え……?」  あなたの隣で、ガクリとパートナーがその場に膝をついた。 「……って、おいおい。全然大丈夫じゃないじゃねーか……。自分やパートナーの体調の変化を察するのも浄化師の実力の内だぜ?」  少し呆れたように、どうしてもっと早く気づいてやらなかったと咎めるように、先輩の浄化師がぽつりと呟く。 (……私のせい?)  あなたはその言葉に、ズキリと胸の奥が痛むのを感じる。  パートナーは、そんなあなたを気遣うように、大丈夫ですからと立ち上がる。  けれども、その様子はやはりどう見ても大丈夫そうではない。  パートナーは、自分に余計な気を遣わせまいと必死で体調不良を押し隠しているのが見え見えだ。 「あー……。まあ、本人が大丈夫って言うなら野暮は言わねぇけどな。でも、一応、検査だけでもしてもらっとけ。  あと寮の部屋まではちゃんと連れていってやれよ? パートナーの看病ってことなら、許可も下りるだろ」  その先輩の言葉に、あなたは一も二もなく頷いた。  言われなくても、たとえロードピース・シンデレラにぶん殴られて部屋から追い出されそうになっても、徹夜で看病でも何でもするつもりだった。  かくして、あなたとパートナーの長い一夜が始まる。
毒花の森のコブリン
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帰還 2018-09-15

参加人数 4/8人 内山健太 GM
 教皇国家アークソサエティのブリテンで薬屋を営んでいるアルフは、傷口によく効くという薬を作り評判である。今回、彼は新しい薬を作るために、薬草や薬樹などを探していた。  調査してみると、ブリテンの奥地にある『毒花の森』に、新しい薬に使えそうな、薬草や薬樹などがあると判明する。ただし、毒花の森は危険地帯であるため、一般の人間は立ち入りが禁止されている。  新しい薬を作れば、今よりもたくさんの人々を救えるかもしれない。そのように考えたアルフは、薔薇十字教団の門を叩く。彼は、エクソシストたちを護衛として、毒花の森に立ち入ろうと考えたのである。  当初、毒花の森への立ち入りは、危険であるので門前払いされてしまった。しかし、アルフは熱心に薬の重要性を説いた。新薬の開発は、戦闘に赴くエクソシストたちにも有効に働くはずである。その結果、ようやく毒花の森への通行許可が下りたのだ。  毒花の森は、至る所に毒花が咲き、危険な地区として認知されている。基本的には、毒花が危険とされているが、それ以外にも問題がある。この森には、ゴブリンが棲みついているのだ。  ゴブリンは単体ではそれほど危険にはならないが、毒花の森のゴブリンは集団で冒険者を襲うと言われているのである。それを知ったアルフは、毒花の森へ行くために、教団のエクソシストたちに護衛を頼んだ。  エクソシストたちに護衛を頼み、いよいよ毒花の森に入る。  その日は、天気の良い日で、燦々とした陽射しが降り注いでいた。ここが毒花の森でなければ、気分良く散策ができるだろう。毒花の森の奥まで入っていき、アルフは長年の知識を基に、草花を採集する。毒の危険があるため、手袋をして細心の注意を払っている。毒花が咲き乱れる森であるが、治療に有効となる草花や樹木も多いのである。アルフはエクソシストたちの護衛をバックに、速やかに草花を採集していく。  途中まで、何の異常もなく事は進んだ。しかし、魔の手はすぐそこまで迫っていたのである。草花を採集し始めて数十分。突如、森の奥から足音が聞こえていた。  なんと、五体のゴブリンが襲い掛かってきたのである。  通常、ゴブリンは気が小さく、人を襲うことは滅多にない。しかし、毒花の森のコブリンは、敵を倒す行為に慣れており、それを快楽として楽しんでいた。手斧を持ち、集団で襲い掛かってくるゴブリンたち。  それを見たアルフは腰を抜かしてしまった。  ここで登場するのが、歴戦のエクソシストである。  アルフを守り、ゴブリンを倒し毒花の森から薬草を持ち帰れるのか? すべてはエクソシストたちにかかっている。辺りは騒然としたムードに包まれ、戦闘が始まろうとしている――。
二人の記念日
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帰還 2018-09-15

参加人数 3/8人 北野東眞 GM
 指令を受け取るためにエントランスホールを歩いていると。 「子ら、今から仕事か? 精進しているな」  声をかけてきたのは現在、メインが調査員であるユギルだ。  指令発行をメインに行っているロリクとは浄化師としてパートナーかつ、夫婦という二人だ。  狐面に口元だけ見えている、多少個性的な先輩はふふふと楽しそうに笑っている。 「ん? ようやく仕事を終えたところだ。今回はある結婚式やら誕生日をお祝いされなくて恨んでいる呪いがあっての」  あー。そういえば、お二人は結婚式とかしたんですか? 「……は?」  いや、だから、結婚式とか、確か、二人は結婚して一年くらいたってるって聞きましたよ? 「ん?」  お? 「……しもたぁ! 吾、プロポーズすら妻にしとらん!」  ふぁ! それでどうやって結婚したんですか! 「そ、それはノリと勢いとタイミングが合って……わ、吾が妻を押し切って勝手に結婚手続きやらその他いろいろを」  おっと! なんかわりとてきとーだった、この人たち! 「……誕生日……祝ったことないなぁ。出会ってからすでに六年目であるが」  やらかしてますよっ! それ! 「おー、お前たち、指令をよういって、ユ、ユギル、どうした!」 「ロリク、吾、やらかしたかぁ!」  飛びつく勢いで迫るユギルにロリクが驚き、浄化師たちに視線を向ける。  かくかくしかじか。 「あー……そんな今さらなぁ」  ロリクが呆れてため息をつく。 「浄化師として契約を交わしてからはや六年……今年で七年かぁ。誕生日やら結婚式やら結婚記念日やら……いっぺんもねぇなぁ」 「……ろ、ロリク」 「ふつーに愛想つかすレベルだよなぁ。はははは」  ああ! ユギルさんが倒れてる。倒れてます。ロリクさん! そ、そこまでショックを! いや、気持ちわかります。パートナーに、実は内心嫌われていたらとか、記念日を忘れていたとかなにげにやらかしたって結構ダメージに 「ユギル、おーい、ユギルって、はぁ、反応でかすぎだろう。俺はそんなの気にしないっての……ん? お前たちも仕事に忙しくて大切なパートナーの誕生日やら二人の記念やらお祝いしてないってことはないよなぁ? 運命としてつながっていても、そういうささいなことをしないと愛想つかされて捨てられるぞぉ」
青の音色
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帰還 2018-09-14

参加人数 8/8人 あいきとうか GM
 ソレイユ地区の一角。樹梢湖を囲う森林の、すぐ近く。 「なんだこれ?」 「洞窟?」  この付近のジェルモンスター相手に戦闘訓練を行おうとしていた浄化師が、それを見つけた。  一言で表すなら空洞だ。ちょっとした丘のように盛り上がった土地の脇腹に、ぽっかりと穴が開いている。浄化師はまだ見たことがなかったが、洞窟はこれに近い形をしているのだろうな、と思った。 「こんなところにあるって、報告されてたっけ?」 「いや、聞いてない」  周囲を見回す。このあたりはジェルモンスターやフシギノコの生息地から外れており、魔物の気配はない。だが、内部までそうなのだろうか。  そもそも、十歩も歩めば暗闇になりそうな洞窟は、どこまで続いているのか。 「ランタンあるけど……、調査……」 「もっと人数、集めた方がいいんじゃない? 魔物がいたら手に負えないかも」 「だよな」  うん、と頷きあった浄化師は踵を返そうとして。  ――きん。  と高い音を聞いた。 「なに!? 洞窟から聞こえた!?」 「待って待って怖い。逃げよう」  手をとりあって二人は逃げる。ぽっかりあいた洞窟の口からなにかが出てきそうで、ひたすらに怖かった。  とめていた薔薇十字教団の浄化師用の馬車に飛び乗り、本部に戻って。 「変な洞窟見つけた!」 「調査隊を派遣してください!」  半泣きでエントランスホールの司令部教団員に叫んだのだった。
嘆き
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帰還 2018-09-14

参加人数 5/8人 shui GM
●ある男の悲劇  自分の才能というものを、後悔した事があるだろうか。  古い埃を被った小屋の中、男は自分の両手を眺めていた。  黒ずんだ火薬の染み付いた掌。昔はそれが誇りに思えて、彼の自慢だった。  なのに、今は。  笑顔を作る為にあったはずの腕によって、悲劇が作られている。  それは男にとって、耐え難い苦痛に他ならなかった。  涙の代わりに止まらない震えを眺めながら、どうか惨劇が終わって欲しいと願っていた。 「おい、何時までボケっとしていやがる」 「ひっ」  野太い声をかけられて、男の肩が跳ねた。  振り向けば、細身の彼より2回りは筋肉がついた、図体の大きな男が苛立ちを隠さずに見下ろしている。 「よぉレガート。話が違うじゃねーか。今回の爆弾は不発だったって? 俺はお前に玩具を作れといっているんじゃねぇんだぜ?」  大男――特徴的な耳や尻尾からして、犬系のライカンロープだろう――は持っていた新聞を汚い机に叩きつける。  新聞の見出しは『サクリフェイスによる連続爆弾テロ』の文字が躍っていた。  今回は爆発する前に爆弾を回収できたとも。 「す、すまない。こんな予定では」 「謝罪なんかいらねぇんだよ! 俺は確かに『人を殺す為の爆弾を作れ』って言ったはずだぜ! それともお前の娘がどうなっても良いってのか?」  怒鳴り散らされて、細身のレガートはすくみあがる。  舌打ちをする大男。  大男が斧を片手に隣の部屋へ行こうとすれば、レガートが驚いたように縋りついた。 「やめてくれ! 娘には、娘にだけは手を出さない約束じゃないか!!」 「それはお前が俺の言う事を聞いたらの話だ!」 「お願いだ、本当に娘だけは……! 娘だけは! も、もう4つ目の爆弾も完成したんだ。今までよりも広範囲を吹き飛ばせる、とっておきのやつが……」  言葉を聞くなり、ニタリと口端をあげる大男。  同時にレガートの顔はどんどん青ざめていく。 「……ば、爆発すれば10人……いや、20人は吹き飛ばせる威力を持っている、んだ。だから……、だから娘にはこれ以上」 「ほう、そいつはいい。だったら早速、派手に使わせてもらおうじゃねぇの。明日の朝までに次の場所へセットしておけよ」 「わ、わかった」  斧を下ろす姿を見て、レガートはへたり込む。  もう、こんな日常は終わって欲しいと願いながらも、その糸口が見つからない。 「俺が人助けをしようなんて、コイツを助けちまったばっかりに――」  悔しさを嘆いても、彼の力では現状を打開する案が浮かばない。  呟きながら小屋から見上げた三日月は、何とも不気味な色で鈍く輝き始めていた。 ●薔薇十字教団  時間は少し巻き戻り、教団には1つの依頼が舞い込んでいた。 「至急、連続爆弾魔を捕まえて欲しく思います」  依頼の説明をする教団員は、険しい顔をして話す。  ここ数日で3件、エトワールのとある都市、リファンで爆弾が発見されていた。  うち2件は爆発し、建物などに被害が及んでいる。  昨日は幸いにも、爆弾が起爆するまえに発見され回収されたところだ。  そしてどの事件にも同じように、爆弾の傍にメッセージが添えられていたという。 『世界を救済するための生贄を』 「敵はサクリフェイスと思われます。幸い、今のところ被害者は出ておりませんが、事件が続けば時間の問題かと」  サクリフェイス――有名で狂信的な宗教組織だ。  ロスト・アモールの戦禍の中で発生したラグナロク。  その被害は、神が人間達に与えた罪であり、滅びることに抵抗することは神に背く行為だと考えている集団。  要するに、人の命を奪うことが善だと心酔する、危険な輩だ。  今までの爆弾は人の少ない場所や、人のいない時間帯で爆発していたが、次はどうなるかはわからない。  サクリフェイスに心当たりがないか、浄化師が問えば。教団員は頷いて見せた。 「実は数ヶ月ほど前に、この街に隠れていたサクリフェイスの集団を逮捕しているんです」  そのときに逃げた残党が恐らく主犯だろう、というのが教団の考えだ。 「取り逃がした残党の名前は、ザック。サクリフェイスのメンバーの1人で、大変逃げ足の速いことが判っています」  ザックが何らかの手を使って、爆弾を入手し、復讐とばかりに起爆させているのか。  それとも協力者が爆弾を爆発させているのだろうか。 「また、もう1つ。関係者と思われる人物がおります」  提示された資料写真に目を通せば、其処にはやせ男の顔。  花火師のレガート――娘のレティと一緒に行方不明になっていた人物だ。 「彼を爆発現場付近で見かけた、という目撃情報が寄せられています。もしかしたらサクリフェイスと関係あるかもしれません」  レガートが爆弾を提供している、と考えるなら可能性は高い。  幸いにも、レガートの居場所は大まかに見当が付けられている、とも団員は話す。 「皆さんには至急、レガートが隠れていると思われる現場へ向かっていただき、爆弾事件と関係するようであれば捕まえて欲しいのです」  最悪、生死は問わないそうだ。  教団を後にする浄化師達。  たどり着く頃には、既に日は傾きかけていた。  目的の現場は、リファンの街から離れた森の中にあった。  元は伐採などの森仕事で使われていた古い道具小屋だ。今は破棄され無人のはずだが、なぜか窓から光が漏れている。  野良犬とは思えない、番犬らしき犬の姿も見える。  浄化師達は目を合わせた。  さて、この依頼。どうやって乗り切ろうか――。
紅白輪舞
普通|すべて

帰還 2018-09-13

参加人数 6/8人 ぽた GM
 最近、教団内である噂が目立つようになってきていた。  教皇国家アークソサエティは郊外にある誰も近寄らない山奧に、廃れた小さな屋敷があって、何でもそこにヴァンピールと思しき肌の白い少女が目撃されたのだとか。  ただ確認された、というだけの話であれば、別段気にする必要もないのだが。  噂には、続きがあった。 『そこに行った奴の話じゃあよ、ちょっと奇妙なもんを目にしたらしいんだ』 『奇妙?』 『あぁ。全く同じ姿をしたもう一人の女の子が、同じ屋敷の敷地内にいたんだってよ』  双子か、あるいは、教団に所属する者であれば、それが恐らく”人形遣い”なのだろうと予想も出来るが、情報にあるその少女は、教団には所属していない。  加えて、まったく同じ姿であるということが問題でもある。  同じ背丈に同じ顔——全て、まるでその少女のコピーや分身であるかのように、その屋敷にいるのだ。  故に、その事象を表す為に皆が用い始めた言葉は。  —―—幽霊屋敷——―。 『逃げなさい、ミオ。逃げるのです。逃げて、せめて何も近付かない場所で生き長らえるのです』 『で、でも、それじゃあ先生が……』 『私なら大丈夫。きっと追い付いて、また貴女を護ると約束しますから。あるいは、別のエクソシストの誰かが——』    本当に人形遣いなのであれば、可能性とは言え、それには魔術的要因が絡んでいそうである為に、教団がそれをただの噂と放る筈もなく。  調査や保護目的で、正式な仕事として考えられていた。  そんな折。  時を同じくして、その屋敷付近で”ヨハネの使徒”が目撃されたという報告も入って来ていた。  今はまだ被害こそ出てはいないが、情報の少女が人間である以上、ヨハネの使徒と相対してしまえば状況は最悪だ。  魔術の才ある可能性の少女。そして、ヨハネの使徒。  教団は、任務の内容を《少女の保護・必要時教団への引き入れ、及びヨハネの使徒討伐》と決定し、エクソシストの作戦参加を募った。
スナック『マリアの夜』
とても簡単|すべて

帰還 2018-09-12

参加人数 8/8人 北野東眞 GM
 唸るように暑い日差しを受けて、指令をひとつ終えて報告を提出したのは夕方。  キャバレーにくりだすぞーとどこぞの浄化師が叫び、経費で落ちないとか叫んでいる人がいる。本部も大変だなぁ。  ようやく帰れる……と思った矢先のことだ。 「おや、かわいい子ら。日々鍛錬しておるか?」  声をかけてきたのは狐面で顔の半分を隠している調査員のユギルだ。  指令発行前の事前の調査などを行う彼は基本的に本部にいることはないのだが、本日は珍しくいたらしい。 「うむうむ。良い子、良い子。そうじゃ。よければこれからもう一つ指令に付き合ってくれぬか?」  え、これから指令ですか!  スナック『マリアの夜』。  リュミエールストリートの一角にちょこんと存在する、その小さな店のドアを開けると、むきむきのフリルエプロンの男……ママが出迎えてくれた。  おっと! 「あらぁん、ユギルちゃん、それに後輩まで連れてきてくれたのぉ? やぁん、かわいい人たちねぇ」  とっても濃ゆいが可愛らしい化粧をしたママが手をふってくる。二の腕もむきむきだ。 「うむ。マリアママ、人は多いほうがよいじゃろう? ああ、指令の内容は、この店を楽しむ、ことじゃ。  ここは好い酒場じゃが、いかんせん、マンネリ化しておってのぉ。  今宵楽しんだあと、レポートを提出しておくれ。  マリアママ、吾はニホン酒「大魔王」を一つ。あと、つまみは適当に頼む。  吾は店の端におるゆえ、すきに飲んで、食べよ、子らよ」 「やぁねぇ、ユギルちゃんたらほんとぉ酒豪なんだからぁ。あ、ほかの子たちは楽しんでねぇ。ママがなんでも用意してあげるわぁ~。いいのよ、日々の愚痴やらなんやらママが聞いてあ、げ、る」
忘却の森
普通|すべて

帰還 2018-09-11

参加人数 6/8人 北野東眞 GM
 指令を受けにエントランスへと訪れると、薔薇十字教団本部にて司令部受付を行っている教団員ロリクが、いつもの微笑みを浮かべて浄化師たちを出迎えてくれた。 「今回の依頼はちょっと精神的にタフなやつ向きかなぁだが、お前たち大切な相手はいるか?」  いきなりそんな問いかけのあと、指令の内容が口にされた。  ソレイユ地方の西の果てに存在する森には湖があるのだが、そこでその現状は起こっているそうだ。  見た目はただの森とかわらない。しかし、そこに足を踏み入れた者は必ず、【大切なもの】のことを忘れてしまう。  本人は必死になって思い出そうとしてもどうしても思い出せない。自分にとても大切なものが存在したことはわかるし、覚えている。だが、それがなんなのかがわからなくなってしまう。 「恐れることはない、この現象はニムファのせいだ」  ニムファは湖や泉に存在する睡蓮の見た目をし、近づかなくては害のないモンスターだ。しかし、水を汚す者や攻撃してくるものには容赦なく、根を鞭にして攻撃してくる。  ニムファは古来より薬にしたり、香水の原料として使われる。  またニムファは香りをかいだものに幻覚を見せる効果がある。 「この泉を調査してもらったところ、かなりの数のニムファが存在していてな。  その匂いに騙されて混乱した奴らが泉にはいって死にかけるといった事故が多発している。  このままじゃあ、死人が出ちまうかもしれない。  全部を討伐するのはさすがに難しい。数が多いせいで幻覚作用が強く出ているから、お前たちの手の届く範囲にあるニムファを刈り取ってほしいんだ」  それでな、とロリクはさらに注意してきた。 「今回出現しているニムファの匂い、恐らく生息域の影響なんだろうが、喰人と祓魔人で影響力が異なる。  どうやら喰人側がかかりやすく、祓魔人には効果が薄くかかりづらいようだ。  喰人は注意し、祓魔人はパートナーをいかに正気に戻すか、よく考えるんだな。  まぁ匂いでの軽い混乱だから多少乱暴でも殴ったり、小さな衝動があれば戻るだろうが注意しておくにこしたことはない」
轟雷、竜を穿つ
普通|すべて

帰還 2018-09-09

参加人数 8/8人 鳩子 GM
 果て無い蒼穹を純白の雲が千切れながら飛んで行く。茫漠たる草原は大海原の如く波打ち、木々は倒れんばかりにしなっている。 「嵐でもやってきそうだな……」  今はまだ雨の予感すら感じさせない空を見上げ、ワインド・リントヴルムは呟く。  不意に、その視界を黒点が横切った。  鳥の陰――否。それは前触れなく進行方向を転じたかと思うと、ワインド目掛けて急降下してくる。次第に見えてくる大きさは、鳥の比ではない。  両足を踏ん張り、その突風の塊とも言うべき存在を受け止める。 「ひとりで散歩か、幼き竜よ」  全身を覆う鱗に一対の翼、鋭い爪――太古より天に君臨する神聖なる生き物、竜である。  ロスト・アモールによって世界が混迷するよりも遥か昔、人と竜とは相争う関係だった。  強力な魔法を行使する竜は、魔術の貴重な材料となる。死後、その体は時間を掛け個々の魔力属性に応じて自然へと還るが、そうして変じた土や水、竜の遺骸を苗床とした植物にすら利用価値があった。  人間は竜を魔術の道具とみなし、竜は人間を害悪とみなし、多くの血が流れた。  だが、現代においては違う。  此処は、竜の渓谷。騒乱の時を越え安寧を望んだ彼らが選んだ、終の棲家。  そしてワインドは額に角を、背に翼を持つデモン――ドラゴンとヒューマンが愛を育んだことで生まれた種族であり、この渓谷の守護者たるリントヴルム家の当主だった。 「アソブ、イッショ」  成長すれば体長二十メートルほどの堂々たる体躯となるが、ワインドに擦り寄るのは未だ三メートルにも満たない仔竜だ。発話も幼子めいてたどたどしい。鱗と同じ深緑の瞳が瞬く。  ドラゴンは名づけの文化を持たないが、ワインドはこの仔竜をヴァージャと呼んでいた。草木の緑を意味する名だ。  ヴァージャはしきりに自身の角とワインドの角とを合わせて、コツコツと音を立てる。これが彼の親愛表現なのだった。 「すまんが、私は仕事中だ。だが、そうさな……共に見回ってくれるか」  ワインドの役割はいくつかあるが、もっとも重要なのは渓谷の警備である。暗黒の時代が過ぎ去ってなお、私欲から竜を害そうとする不埒者はいる。広大な土地を隈なく見回るため、ワインドの一日はほとんど移動に費やされるのだ。 「イッショ、イク!」  ヴァージャは喉を鳴らして翼を広げ、再び空へ舞いあがった。  至近距離で羽ばたきの衝撃を受けたワインドは、苦笑して乱れた赤毛を掻く。  これが大人の竜であれば羽ばたきは人間にとって攻撃に等しい。竜のいう『アソビ』が大抵の場合人間にとってみれば命懸けになってしまうことも、仔竜が理解するには時間がかかりそうだった。  仔竜の影を追い、ワインドは力強く地を蹴った。無論、ヴァージャの飛行速度の方が勝るため、あっという間に仔竜の姿は遠くなってしまう。 「しようのない……」  口ではぼやいても、幼い竜の無邪気な奔放さは微笑ましいものでしかない。ワインドは頬を緩めたが、次の瞬間、その笑みは凍りついた。 ――ドカンッ!  激烈な雷光が、小さな影を貫くように直撃する。 「ヴァージャ!」  仔竜の幼い翼は力なく風に煽られ、そうして、この土地の名の由来となった大地の裂け目、深い深い谷底へと落ちていく。 ――キィァァァァ!  悲痛な叫びが、渓谷に響き渡る。  全力疾走の勢いそのままに崖から身を躍らせる。黝い翼を広げて滑空するワインドの目に映ったのは、川辺に倒れ伏すヴァージャ、そして黒い帯状の魔力に拘束された深紅の竜と彼らを取り囲む黒衣の集団だった。  囚われの竜――ワインドがグラナトと呼んでいる成竜は、巨体を揺らし咆哮と共に火を吐くものの杖を掲げた複数の侵略者によっていなされてしまう。 「何者だ!」  着地と同時に一喝したワインドに、悪辣な女の笑い声が応じた。 「あっは、なんだなんだぁ? 丁度良い獲物を落としたと思ったら、余計な奴までついてきちまった」 「貴様らっ……終焉の夜明け団か!」  フード付きの黒衣、そして左手に埋め込まれた銀の十字架。魔術の開祖アレイスター・エリファスを狂信し、その蘇生を目的とする異常者集団だ。  痛みの記憶が蘇り、かっと血が頭に上る。 「水よ、穿て!」  ワインドの詠唱に応じ、無数の鋭い水の杭が女を襲う。だが閃光がその全てを撃ち落とした。  殺意を楽しむように、女は甲高く笑う。 「なに、お前! 遠慮の無ぇ攻撃! シビれる予感がするんですけど~!」  衝撃波でフードが外れ、その顔が露わになる。胸元までイエローの髪がうねり、同色の双眸が爛々と輝く。左の頬には稲妻型の刺青。  顔を見られることを、女はどうとも思っていないようだ。 「やけに上手くいっちまって、時間までまだあるなって退屈してたんだ。暇潰しに、アタシの愛、受け止めてくれよなぁ!」  雷光が降り注ぐ。  ワインドは咄嗟に跳躍して回避しながら、周囲を見廻した。  女が主犯格なのか、他の黒衣の者らは口出しせずに黙している。その多くが杖や魔導書を携える魔術師だ。川岸には舟が二艘。しかし、アークソサエティの国土を囲む隔壁の外にある竜の住処は、独自にバリケードを持っている。単純に上流から川を下れば侵入できるというわけではない。それに、竜を拉致する腹積もりらしいが舟では到底運搬できない。  須臾の間に思考を巡らせ、ワインドは息を呑んだ。 「口寄魔方陣か!」  特殊な魔方陣を用いて物質を転移させる禁忌魔術だ。教団が所有する転移方舟に似たものだが、方舟とは異なり人を移動させることはできない。しかし、人間以外の生き物や物質であれば使用可能だ。  刻限になればバリケードの外で奴らの仲間が魔方陣を発動させ、竜を転移させる算段なのだろう。 「ご名答~! お前、頭良いなぁ」 「させるかッ!」  無数に出現させた水の杭を炸裂させる。今度は女のみならず周囲の者も武器を構えたが、その半分は即座に薙ぎ倒された。幾重もの拘束を受けながら、グラナトがその長大な尾で打ち払ったのだ。戒めに抗った鱗から血が流れている。 「我らが同胞よ、こやつらを許してはならぬ」  重々しい竜の声が告げる。  その怒り、悲しみを、ワインドは余さず理解することが出来た。  痛み――悼みの記憶を抱えてきたのは、ワインドだけではないのだと思い知りながら、詠唱を繰り返す。  幼い頃、ワインドには特別仲の良い竜がいた。親愛を込めディアと呼んだその竜は、ある時、渓谷に侵入した終焉の夜明け団によって意図的にベリアル化された。幼かったワインドは、親しい竜の姿をした化け物に襲われて尚、救うことができると信じた。その結果、両親は自身を庇って目の前で死に、ベリアルは他の竜をも食い散らかして成長してしまった。  最終的にベリアルは駆けつけた浄化師によって拘束され、後に処分されたが、ワインドは多くを喪い、暗く重い悔恨を抱えることとなったのだった。 「天空に告ぐ!」  信号用の呪文を唱え、頭上へ魔力弾を打ち上げる。蒼い魔力は崖を超え、更に高く昇りつめると派手に爆ぜた。  いまやリントヴルム家はワインドただ一人だが、渓谷には志を同じくするデモンの仲間が複数おり、随所に設置された見張り台に待機している。有事の際は固定魔信を用いて教団本部に連絡する手はずだった。転移方舟であれば本部から渓谷までは一瞬だ。 「閉じよ、綴じよ、鎖じよ!」  水の杭を渓谷の四方に打ち込み、詠唱と同時に魔力を込める。 「へぇ、結界か。でも、お前を殺せば問題ないよなぁ?」  女は動揺するどころか愉快そうに言って、凶悪な笑みと共に雷光を迸らせた。
弔花
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帰還 2018-09-08

参加人数 8/8人 久木 士 GM
 久方ぶりの雨が降った翌日。白い造花を手にした教団員が一人、エントランスホールを歩いていた。彼はゆっくりとした足取りでホールの奥へ向かう。その先には、いつの間にか設置されていた小さな祭壇があった。首都内での任務を終えて本部へ戻ってきたあなたたちはそれを不思議に思い、その教団員の後を追う。彼は祭壇の前で足を止め、そして振り向く。どうやらあなたたちに気づいたらしい。軽く会釈をする彼に、あなたたちは造花や祭壇について尋ねる。彼は口を開いて、低く落ち着いた声で話し始めた。  彼は教団本部の病棟地下にある大聖堂で勤めている教団員で、普段は教団のために命を捧げた死者に祈りを捧げているのだという。そんな彼がエントランスホールまで赴いてきた理由は、どうやらこの祭壇にあるらしかった。  毎年8月頃になると、アークソサエティ各地では慰霊祭などが多く営まれる。それは『ロスト・アモール』に始まる一連の大災厄や、その後の混乱によって失われた人命を弔うためのもので、華々しい復興を遂げたここ首都エルドラドとてそれは例外ではない。首都では主に貴族階級・支配階級の者が、大戦で散った祖先や親族・友人などのため、合同で慰霊祭を開くケースが多い。薔薇十字教団に所属する軍事階級の者たちもそうした慰霊祭を執り行ってはいるが、彼らは長期の任務や緊急の出動などで本部に居ないこともままあり、数日ある慰霊祭に参加できない者も少なくない。そんな彼らのために設けられたのが、この小さな祭壇だという。 「これは本来ならば、病棟に設置すべきものであるかもしれません。ですが病院にお越しになる方々――特に入院中の方々は、『死』というものについて非常にデリケートになっておられます。それを強く想起させるものを置くべきではないという判断により、ここへ設置されたのです。例え、病棟地下に火葬場と霊安室が設置されていようとも、です」  彼の言葉に、あなたたちは病棟の構造を思い出す。地上は治療室や病室などばかりだが、病棟は地下へ行くにつれて死の気配が濃厚になる。解剖用の手術室の下には研究室があり、その下層には火葬場、霊安室と続く。そして彼が働いているのは、最下層付近にある大聖堂。薔薇十字教団本部で、最も冥界に近い場所だ。  浄化師は死した後も、自らの運命と教団に縛られ続ける。彼らの遺したものが、故郷や親しい者たちの手に渡ることはない。遺体の状況や遺品からは教団内部の情報が漏洩するおそれがあり、死者の家族構成を知られれば、遺された者たちが報復などの悪意に晒される危険性がある。そのため教団員の遺体や遺品は全て持ち帰ることが絶対となっており、遺体は病棟地下で火葬された後、霊安室に埋葬される。薔薇十字教団に入り、世界救済の為に命を捧げるとは、こういうことでもあった。  霊安室や礼拝堂には勿論、普段から祭壇が設置されている。だが、ここを訪れる者は少ない。そこがあまりにも、死を想起させる場所であるがために。 「ここへ仮の祭壇を設置すれば、多くの方の目に留まるでしょう。そしてこのエントランスホールは何よりも、地上1階にある。天国に近くもなければ、地獄に近くもない。花を捧げれば、すぐ太陽の下へと戻って行ける。魂が天上へ惹かれることも、地獄へ手招きされることも、ここでは無いのですから」  彼はあなたたちをちらと見、そしてまた祭壇へ目を落とした。 「かつて私はここへ赴任する際、浄化師に命を救われています。一人の『喰人』の命と引き換えに」  遠い過去を見遣るように、彼は僅かに顔を上げる。表情は変わっていないが、瞳だけは僅かに悲しそうな色をしていた。  彼は十年前、病棟地下聖堂の聖職者として教団に職を得、故郷からはるばるアークソサエティへと旅をしていた。当時は『ヴェルンド・ガロウ』の手により『魔喰器』が生み出されたばかりで、大半の浄化師たちの装備は今よりずっと悪いものだった。そんな状態で戦っていた当時の浄化師たちの死亡率は、やはりかなり高かったらしい。  交通の整備されていない片田舎の町から、彼は歩いて旅をしていた。最寄の駅までは山を一つ越え、それから歩いて数時間を要する旅程だ。そしてそんな山中で、彼はベリアルの群れと、それを討伐すべく派遣された浄化師に遭遇した。戦闘は激しく、彼は大木の傍で頭を抱えて震えることしかできなかった。そしてその戦闘で、一人の命が失われた。  そもそも通常の民間人は、ベリアルなどと戦う術を持っていないことがほとんどだ。彼がこれについて気に病む必要は無いのだが、生真面目で優しい彼はそうではなかった。彼を守って若い命を散らした喰人は、当時の彼より十歳も若い女性だったのだから。過去の出来事について淡々と語る教団員は、白百合の造花を手でくるりと回した。 「命からがら教団本部へ赴いた私が初めて行った仕事は、私を守って命を落とした浄化師の葬儀だったのです」  そう言って彼は、手にした造花を魔方陣の描かれた小さな台座の上へ置いた。透き通るように白い紙でできたその花は、しばらくすると花弁の先端に僅かに色をつけ、そして間もなく青い炎に包まれて消えた。灰のようなものは見当たらず、どうやら跡形もなく燃えてしまったらしい。 「彼女は白百合のブローチを左胸につけていました。それが彼女の好きな花であったのかどうか、私は知りません。それでも私は、毎年これを捧げているのです。彼女と引き換えに生き延びたことの意味や、彼女の犠牲に報いるために自分ができることについて、忘れないように」  言い終わると彼は瞑目する。祈りを捧げ、誓いを新たにするかのように。そして彼は胸につけられた団章を優しく撫で、あなたたちに向き直って頭を下げた。 「その、縁起でもない話をお聞かせしてしまいまして申し訳ありません。花はエントランスや司令部の受付にありますから、祈りを捧げる際はご自由にお持ちになってください。先に行ってしまった親しい人々や、ロスト・アモール以来の全ての犠牲者を悼むのでも結構です。ご自身の決意を新たにされるのも良いかもしれません。あなたがたのお持ちになっている祈りのかたちを、どうか捧げてください」  彼は説明を終えると、あなたたちに会釈してから去った。静かなエントランスホールを、規則正しい靴音が過ぎて行った。  祭壇に造花を燃やして捧げるのは、火葬された教団員たちに届くようにとの願いを込めて。それが紙製であるのは、今の命も仮初のものにすぎないからと再認識するためだという説があるが、その由来は不明だ。遠い昔に誰かが始め、いつの間にか習慣になっただけかもしれない。  大聖堂に勤めるあの教団員も、今このホールを行き交っている人々も、死後は皆灰となって病棟地下に埋葬される。彼らが故郷へ帰って安息を得る日は、二度と訪れない。それはあなたたちも同じだった。だがそれが明日なのか、来年なのか、あるいはもっと先の事なのか。それを知っている者は、誰一人として居ないのだから。  振り向くと、エントランス脇のテーブルに造花が置かれているのが見えた。あなたたちはそれを目指して歩き出す。白い弔いの花を誰に、あるいは何に捧げ、何を祈り、何を誓うのか。短く鮮烈な生の中で何を求め、避けられぬ終わりの時までに何を為すのか。死と隣り合わせの日々を生きる浄化師であれば、この機会にそれを見つめ直すのも、悪くないだろう。
酷暑の戦場デート
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帰還 2018-09-07

参加人数 5/8人 梅都鈴里 GM
「あれ、まだ寝てなかったんだ」  夜もとっぷり更けた頃、煌々と明るいデスクに向かうパートナーに気付いて、様子を見に声をかける。 「修羅場なんだよ……今夜中に仕上げないと落とす……」 「あ、新刊? 大変だな~俺一般枠でよかっ」  ――ガンッ!!!!!  先の尖ったペンを机にぶっ刺した相方の目は、ベリアルを相手にした時よりも狂気に満ちていた。  なんといっても明日は――もう日付は変わっているので今日だが――二人が待ちに待ったイベントの開催日なのである。 「いいよねぇ、締め切りのない人は……あー、字が書きたい……推しが書きたい……」 「今書いてるじゃん」 「文字を書いてるときは文字が書きたくなるものなの……」 「へ、へぇ……?」  なんだかよくわからないが、同人作家特有の発作みたいなものだから気にしないでと返されて納得した。  手伝おうかとも思うが、彼は言葉通り今回は買い専なので、してやれることは特別なさそうだ。 「買い物くらいは行ってやるから、無理すんなよー?」 「ありがと……壁は任せるからね……あたしもお昼になったら回るから……」  ひらひらと手を振るパートナーにおやすみと声をかけて、戦に備え早めに就寝した甲斐もあり、翌朝は良い目覚めだった。  パートナーも眠い目を擦りつつしっかり定刻に目覚めた。昨晩作業にふけっていたものはなんとか仕上がったようだ。  早朝、人でひしめく会場を前にして、二人の瞳は狩人へと色を変えた。 「途中で倒れるなよー? イベントで倒れてアライブスキル使うなんてごめんだぜ」 「そっくりそのまま返すわ。サークル入場分の働きは、しっかりして来てよね」  夏と冬の一大イベント。創作するもの、または性癖に従い薄い書籍を手に取るもの。  過酷な夏の戦が今年も始まる――! 
急募!グルメリポーター
普通|すべて

帰還 2018-09-06

参加人数 3/8人 海無鈴河 GM
 ――月刊誌の臨時記者を募集します。詳細はアークソサエティ出版まで。  そんなポスターを目にしたあなたとパートナーは、早速出版社へ詳細を聞きに行くことにします。 「やあ、待ってたよ。早速だけど、君たちにはグルメ記事を担当してもらうよ」  出版社の担当者は、『グルメフェスティバル』と書かれたパンフレットをあなたたちに渡しました。 「ブリテンで開催されているこのお祭りに行って、出店の取材をしてきてほしいんだ。といっても、難しく考えないで、観光気分で楽しんで来てくれて構わないよ」  担当者は軽い調子でそう言うと、あなた達に取材先のお店のリストも渡してくれました。  『出張カフェ・リリアス』  普段はルネサンス地方の海沿いで営業しているカフェが特別出張。オススメは海の幸をたっぷり使った、『ピリ辛海鮮スープ』。  更に『ある試練』をクリアすると特別メニューが食べられるようです。  『たいよう農園』  ソレイユ地区の農場で採れた、新鮮な野菜や乳製品を使用。目玉は『オンリーワン・ピザ』。なんと自分で好きな具材を選んでトッピングできます。美味しいピザになるかは、あなたの腕次第!?  『くらげ酒場フェスティバル支店』  庶民派酒場がフェスティバルのために特別営業。オススメは、女将が丹精込めて煮込んだ『ことことシチュー』。まさにおふくろの味。  また、元伝説の賭博師と名高い大将とカードゲーム勝負も楽しめます。  『カルディアスイーツショップ』  数量限定で販売される、『天使のチョコレート』はフェスティバル内でも一番の人気商品。食べると幸せになれる、との噂も。  他にもホットチョコレートや、チョコレートケーキを販売。 「この4つの店の中から、君たちの好きな1か所を選んで取材してほしい」  担当者はここでああ、と声を上げて手を叩きました。 「大事なことを忘れていた!『店主の名前』と『お店の出店番号』は必ずお店の人に聞いてね。記事にも載せるから。それと、良い記事を持ってきてくれたら巻頭の一番目立つところに載せるよ」  依頼主はそう言うと、あなた達を笑顔で送り出しました。  あなたとパートナーは再び取材先リストに目を落とします。  どのお店も個性的なサービスを行っています。どこを取材しても、パートナーと仲良くなれそうです。    さて、どこに行こう?
精霊流しを楽しもう
簡単|すべて

帰還 2018-09-04

参加人数 2/8人 春夏秋冬 GM
 8月。今の時期には「精霊流し」と呼ばれる風習がある。  それは多くの命が失われた世界大戦「ロスト・アモール」の死者を悼むために始まったものだ。  発祥の地は東方島国ニホン。  ロスト・アモールにより死に、呪いとして幽霊になってしまった者達を成仏させるために始まった。  呪いとなってしまった無数の幽霊たち。  彼ら、そして彼女達が解き放たれることを願って、紙で作った船を川に流して鎮魂の祈りを捧げたのだ。  船には火を灯した蝋燭を載せ、死者への思い出や鎮魂の思いを記した文と共に川に流す。  夜闇の中、川に浮かぶ船の灯りは、死者を導く道しるべのように見えたという。  この時、川に流した紙舟は、今では「精霊船」と呼ばれている。  それは死者を悼んだ皆の想いが幽霊に通じ、呪いから解き放たれた無数の魂が空に昇っていく様子が、精霊が舞っているかのように見えたことが理由のひとつだ。  もうひとつの理由は、紙船にピクシーが楽しげにちょこんと座っている様子から、今では「精霊船」と呼ばれている。  それらが合わさって、一連の紙船を流す風習は「精霊流し」と呼ばれているのだ。  ニホンが発祥の精霊流しが広まったのは、教皇国家アークソサエティでも、それだけ多くの命が失われたという事でもある。  それほどにロスト・アモールは、多くの悲劇が生まれていた。  その悲劇を忘れぬ為に。  そしてこの世を去った死者を想うためにも、今でも精霊流しの風習は続いている。  とはいえ、悲しむだけが人間ではない。  死者を悼み、そして生きる今を楽しむのも人間というものだ。  弔いとしてだけでなく、イベントとして今では楽しんでいる。  そのひとつが、精霊船の出来栄えを競うお祭り。  リュミエールストリートのお店が協賛し、出来あがったものをお店に飾り、お客さんに票を入れて貰うというものだ。  精霊船の謂れのひとつである、紙船にピクシーが楽しげにちょこんと座ったことにちなんで、実際にピクシーに協力して貰う所もある。  リュミエールストリートにある、冒険者ギルド「シエスタ」に居るピクシー達も、そのために集められていた。 「それで、楽しいことはいつ始まるの?」  テーブル席のひとつ。  そこには3人の冒険者達と何人ものピクシー達が居た。  冒険者に連れて来られたピクシーの1人が、自分を連れて来た冒険者の1人に問い掛ける。  これに20そこそこの見目良い美女といった姿をしたセパルが返す。 「これからだよ。浄化師の子たちにも協力して貰えるよう頼みに行ってるから、ちょっと待ってて」 「えー、まだなのー」  拗ねたように言うピクシーに、さくらんぼをひとつセパルは上げて機嫌を取る。 「あー、私も私もー」  セパルにさくらんぼを貰ったのを見て、他のピクシーたちが騒ぐ。  そこに冒険者のひとりである涼やかな美女セレナが、リンゴをうさぎさんの形に切り分けて振る舞う。 「他にも欲しい物があったら言って。切ってあげるから」 「は~い♪」  喜ぶピクシーたちに、目を細めるセレナとセパル。  そんな2人に冒険者の最後の1人、20代半ばの厳ついにぃちゃんといった見た目のウボーは、頭にうつ伏せで乗ったピクシーに髪を三つ編みにされながら言った。 「そろそろ、クロアさんが頼んだ浄化師達が来てくれる頃だな」 「うんうん、そろそろだね」 「状況説明とか、した方が良いかしらね?」  3人が浄化師達を待っているのは、精霊船の出来栄えを競うイベントに協力して貰うためだ。  浄化師も参加するイベントとして箔を付ける、ということで毎年協力を求めているのだ。   そんな、精霊船の出来栄えを競うイベント協力指令を、アナタ達は受けました。  精霊船の制作と、それに乗るピクシーに何かしてあげて欲しいとの事でした。  ピクシー達に何か服やアクセサリーを付けてあげて、船と共に見栄えを良くしてあげる。  船の見た目に凝ってみる。  他にも何かアイデアがあれば、してあげて欲しいとの事です。  必要なものは、リュミエールストリートのお店から依頼を受けた冒険者達が用意してくれます。    この指令に、アナタ達は――?
強き者の言葉
難しい|すべて

帰還 2018-09-04

参加人数 8/8人 黒浪 航 GM
 トラノの町に、ベリアルの大群が迫っている――。  森で暮らす狩人からその報せが届いた時、町の守備隊長を務めるグランは、頭を抱えた。  青霧の谷を抜けて、ぞろぞろと町へ向かってくるベリアルどもの数は、少なく見積もっても二十を下らないという。一体だけでも恐ろしいベリアルが、二十体だ。  かたや、グランが指揮する守備隊は、数日前に入隊したばかりのトムを入れても、たったの十二名。  戦力の差は歴然としており、まずまともな戦いにもなりはしないだろう。 「絶望的、だな……」  グランは自嘲気味に呟くと、オンボロ隊舎の端にある狭苦しい隊長室を出て、食堂と会議室を兼ねる薄汚れたホールへと向かった。  隊長がホールに姿を見せると、しばらく前にそこに集合して小声で何やら相談を始めていた隊員たちが、一斉に顔をあげる。 「グラン……今回ばかりは、相手が悪いぜ……」  グランに次ぐ年長者で、守備隊の副隊長も務めるベンが、開口一番あきらめ顔でいう。すると、 「そ、そうだ! ベリアルの群なんて、俺たちじゃ勝てっこねえよ!」 「こんなクソ田舎で、無駄死にするのはゴメンだぜ!」  若手の隊員たちが、怯えた顔で次々に叫ぶ。 「逃げよう! 町を捨てて、みんな一緒に逃げるんだ! そうすりゃ、全員生き残れる!」  ふとっちょのハモンが、ヒステリックな甲高い声でいうと、 「……いや、そう上手くはいかない」  グランは、疲れた顔でかぶりを振った。 「馬に乗る者や、脚に自信のある者なら、あるいはうまく逃げおおせるかもしれない。だが、年寄りや子供は、今から町を出てももう遅い。すぐにベリアルどもに追いつかれて、喰い殺されてしまうだろう」 「そ、そうだとしても、全員ここで死ぬよりマシだ!」 「そうだぜっ!」  隊員たちは、すでに自分が助かることしか頭に無いようだ。  まあ、無理もないか――。  グランは、臆病風に吹かれた彼らに同情する。  田舎町の守備隊勤めなど、給料はスズメの涙で、身分的にも町の道路清掃人と大差ない。町を守るために命を捨てろ、と言われても、迷わずに首を縦に振るのは容易なことではない。 「俺は、この仕事に誇りを持ってる。だから、戦って勝てる見込みが少しでもあるなら、俺は戦うよ……だが、今度ばかりはな……」  みじめそうにいうベンをみて、グランはため息をついたあと、口を開いた。 「町を捨てて逃げる、というのが、ここにいる全員の一致した意見なんだな?」 「………………」  無言で俯く隊員たちを睥睨した後、グランは深く頷いた。 「そうか、わかった……。お前たちには皆、故郷に愛する家族がいる。だから、この町を捨てて逃げるお前たちを、俺は責めたりはしない。トラノの守備隊は、ただ今をもって解散する! お前たちは、今すぐ好きなところへ逃げていい」 「……グラン、お前はどうする?」  ベンがぎこちなく訊くと、グランは片方の眉をあげて、ニヤリと笑った。 「幸か不幸か、俺には守るべき家族などいない。それに、俺はこれでもトラノ守備隊の隊長だからな。町にひとりでも守るべき住民が残っているなら、俺は最後まで戦うさ」 「……そうか……すまない」  ベンが俯いたまま足早にホールを出て行くと、残りの隊員たちも皆それに続き、グランひとりがそこに残された。  しばらくの後、トラノの町を囲む防壁の大きな門の前で、グランは町を去る仲間たちを見送った。  町民たちは、まだ家財道具などの整理に手間取っているらしく、なかなか町を出てこない。町を守るべき守備隊員が誰よりも早く町から逃げ出す、というのも皮肉な話だ。 「じゃあな、ベン」 「ああ……」  十年来の友をグランが笑顔で送りだした時――、街道の向こうからこちらへとやってくる一団の人影が目に入った。 「あれは……、教団の浄化師たちだ!」  グランは、近づいてくる者達の正体に気がつき、歓喜の声をあげた。  ベリアルが町に迫っているという一報を受けた時、ダメもとで町の危機を伝える狼煙をあげてみたのだが、どうやらそれが役に立ってくれたらしい。  時間的に考えても、首都から救援にやってきた者達ではないだろう。おそらくは、たまたまこの近くで調査活動でもしていた一隊にちがいない。 「浄化師たちがいれば、百人力だ」  グランが興奮気味にいうと、 「浄化師といったって、あれっぽっちの人数だ。ベリアルの大群相手に勝てるわけないぜ」  ベンも、そして他の元隊員たちも、力無く首を振る。  たしかに、いくら浄化師たちが強いといっても、彼らだけでベリアルの大群を相手にするのは厳しいだろう。  だが、もし……俺たち守備隊が彼らに力を貸せば――。  グランは、希望を捨て、守るべき町を捨てようとしている仲間達の前に、ゆっくりと立ち塞がった――。
初恋レモネード
とても簡単|すべて

帰還 2018-09-03

参加人数 2/8人 留菜マナ GM
「あ、あの、このお店のスイーツ、ずっと食べに来てもいいですかーー!!」  かって、アレックスは初恋の相手にそんな告白をしたことがある。  あれから一週間が過ぎた。  結論から言えば、まだ初恋の相手とは交際に至っていない。  そして、アレックスの恋路と、彼を振り撒く環境は、どちらも最悪の一言に尽きる。 「おわあああああっ!」  人力車から、スプラッタ映画さながらの悲鳴が轟き渡る。  アレックスのペットである、空を泳ぐふぐ――もとい、パフィーフィッシュが毒針を飛ばしてきたのだ。  ここは、教皇国家アークソサエティの南部に位置する大都市ルネサンス。  アレックスはその日、初恋相手との交際を始めようとして、相棒のサムが引く人力車に乗ってヴェネリアの街中を駆け回っていた。 「よお、お嬢ちゃん。誰に許可を得て、ここでままごと遊びをしているんだよ!」 「うわあああん、ママ!」  ままごと遊びをしていた少女が泣きながら立ち去ると、アレックスはパフィーフィッシュの毒針を必死に避けながら腕を組んで高笑いを始めた。 「おら! そこの猫ども、戯れているんじゃねぇ!」 「にゃー!?」  アレックスが噴射した水鉄砲を浴びて、路上に戯れていた猫達は一目散に逃げていく。 「やめろ!」 「何だ、貴様は?」  しかし、突如、人力車の行く手を阻む存在が現れたことに、アレックスは目を見開いた。  サムが怯えたようにアレックスに助言する。 「あ、兄貴。あいつら、どうやら浄化師のようですぜ」 「な、なにいーーーー!?」  衝撃度満開なフレーズに、アレックスは全身を震わせた。 「兄貴、さすがに浄化師相手はやばいんじゃ……」 「心配するな、サム。アレックス団はな、ベリアルやヨハネの使徒からも、ファンクラブが結成されるほどの人気ぶりなんだよ!」 「さすが、兄貴!」  慣れた小言を聞き流す体で、アレックスはサムに人差し指を突きつけると勝ち誇ったように言い切った。 「さあ、いつものように行くぜ!」 「はい、兄貴!」  アレックスの言葉に釣られて、サムは浄化師達へ視線を戻した。  そして二人、声を合わせて叫ぶ。 「「ごめんなさい!!」」 「はあ……?」  刹那、場の空気がシンと静まり返る。  土下座をして何度も請うように頼むアレックス達に、浄化師達は言葉を失って唖然とした。 「実は、初恋の相手に交際の申し込みをしに行く途中だったんです」  アレックスにそう告げられても、浄化師達はあまりの滑稽無稽さに正気を疑いたくなった。 「普通に会いにいくことはできなかったのか?」 「これが、俺達の普通です」  間一髪入れずに即答したアレックスは、真顔で浄化師達を見つめてくる。 「頭が痛くなってくる…‥…‥」  あまりにも突拍子がない話に、浄化師達が思わず頭を抱えた。 「で、初恋の相手というのはこの街にいるのか?」 「はい。この街の外れにあるスイーツショップにサニスさんという方がいます。その方が、俺の初恋の相手です」  突然の展開についていけず、浄化師達がなんとも言い難い渋い顔をしていると、アレックスは得意絶頂でこう続ける。 「前に、俺が『このお店のスイーツ、ずっと食べに来てもいいですかーー!!』と告白したら、食べに来てもいいと了承の返事を頂いたんです。それからは毎日、サニスさんのお店に通わせてもらっています」 「……いろいろと前途多難だな」  言葉の意味を一瞬にして悟ると、浄化師達は目を丸くし、驚きの表情を浮かべた。  どうみても、ただの店員と客の関係である。  アレックス達は、サニスと付き合う前提で話を進めているみたいだが、街中の騒動のことといい、このままでは彼女から敬遠されかねない。 「浄化師様、どうかお願いします。いろいろと問題があるかもしれませんが、兄貴の恋路、どうか手伝ってもらえませんか!」 「なっ――!?」  予想以上の前途多難な恋路ぶりを目の当たりにして、浄化師達は困ったように眉根を寄せたのだった。
トマティーナ・クッキング
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帰還 2018-09-01

参加人数 3/8人 あいきとうか GM
「困った」  教皇国家アークソサエティ、薔薇十字教団の教団寮の食堂、調理室。八月某日の真夜中、ただひとりそこに残った青年はペンを握り締めたまま頭を抱えた。 「トマト……。トマトってなんだ……?」  あまりにも悩みすぎて、眼前の食材がもうよく分からなくなっている。このままではだめだと、まだまだ見習いだという自負がある料理人は目を閉じた。 「頼るかぁ」  本当は自力でどうにかしたかったのだが、ことここに至っては仕方ない。自分ひとりではもうなにも浮かばないのだ。幸い、この職場には頼りになる者たちが揃っている。  もちろんそれは、ライバルになりうる料理人たちではなく。 「ってわけで、知恵を貸してほしい」  ぱん、と手をあわせて頼みこんだ先は、浄化師だった。教団本部のエントランスホールに新規の指令の確認にきていた浄化師を適当に捕まえては、若き料理人はこうしてお願いをし続けている。 「トマト祭りで出す新作料理のメニュー開発、手伝ってくれ!」  八月下旬に、ヴァン・ブリーズ地区を中心に開催されるトマト祭り。収穫したばかりのトマトを街中でぶつけあい、豊作を祈るという行事なのだが、もちろんこれだけの催しではない。  トマト合戦の他に、トマト料理を出す多種多様な屋台が出たり、トマトを模した雑貨が販売されたりと、とにかくトマト尽くしの賑わいを見せるのだ。  またの名を、トマティーナ。 「そこでトマトの新作料理の屋台を出して、料理長に振舞いたいんだよ。ほら俺、料理長のこと大好きじゃん? 新鮮ですごいトマトの料理、食べてもらいたいじゃん?」  その情報は知らなかったし、特に興味もなかった、と浄化師の顔にはかかれていたが、青年はまるで気にしない。 「レシピを考えてくれるだけでいいから! もう俺だけじゃアイデアの限界なんだよー!」  情けない声を上げる料理人は、どうしようもなく必死だった。
戦闘訓練だよ! ぶんぶん編
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帰還 2018-09-01

参加人数 3/8人 北野東眞 GM
「汝らに依頼じゃ。くくく、このように指令を言い渡す仕事は久々よ。  なぁに、妻が夏病にかかっておので、暇で暇で暇で死にそうで、仕事をかわっておるのよ。  ……はぁ、久々に調査から帰れば……はぁ」  指令を通達するのはユギル・霧崎である。  顔の半分を隠す狐面、唇しか見えないが、面白がるようににやにやと浄化師たちを見ている。  どうも新人が多くなった、というので、その品定め的な視線を感じる。 「今回の依頼は、ずいぶんと容易い依頼よ。新人の経験を積ます目的としては理にかなっておる。  むろん、手練れであっても油断すれば大けがの元、しっかりと精進するがよい」  都市部から数キロほど離れた森が近い村で、キラービーが現れたそうだ。森で遊んでいた子供が二人ほど刺され、毒による高熱に苦しんでいるそうだ。 「キラービーについては知っておるな? 魔力の影響を受けた蜂よ。  普通なら、毒よりナイフのような毒針に刺されて出血で死ぬのだが、幸いにも子らは急いで逃げたおかげで毒の苦しみだけのようじゃ。  調べてみるとキラービーが現れたところ、洞窟があってのう、長年森のなかでたまった魔結晶が見受けられた。  今回は、キラービー退治と魔結晶の回収よ。  キラービーは基本的に巣から離れん、巣のあるところは地図に描いて渡すゆえ、参考にするが良い。  ああ、ここの調査をした吾が言うのもなんじゃが、洞窟は二人の人間が並んではいればそれだけでいっぱいになる程度の広さしかない。  松明なんぞもっていけばかっこうの的となるだけゆえにすすめはせんよ。  外におびき出すか、それとも中で退治するかは自由じゃが、よく考えて行動することをすすめよう」  にこりとユギルは微笑んだ。
あなたへの想いを花に込めて
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帰還 2018-08-31

参加人数 2/8人 茸 GM
 『放浪王子と毒舌娘』――開演です。  ……――。 「ちょ、ちょっと待って。全然ロマンス感ないんだけど!」 「でも一応ロマンス劇場って……ほら」 「確かに書いてあるけど、大丈夫なの? このタイトルで」  ブリテンに存在する、民衆のための観劇場。  不定期に訪れる旅の劇団によって催される劇なのだが、今回の演目には驚く観客も少なくはない。  ――とある王国の放浪王子と、小さな村で暮らす毒舌娘の恋物語。  (劇は佳境に差し掛かり、再び幕が上がる。)  自由気ままな放浪王子は、旅先で出会った村の娘と仲良くなり、数年が経過しました。  再び訪れた娘の家で、王子は衝撃を受けます……。 「貴方とは一緒になれません」 「それは何故?」 「貴方と私では、あまりに違いが有り過ぎるからです」 「身分の差かい? 今時そんなことを気にするなんて、キミらしくない」 「王族としての責務を放棄して放浪の旅に出ている貴方が身分を語るんですか……、片腹痛いわ」  と言いつつも一切嘲笑すら浮かべていない彼女に放浪王子は焦ります。 「放浪しているのには訳があるんだ。こうして各地を視察して回ればいろんな物が見えて来る。きっとこの国の為に何か役に――」 「十年も帰らずにどう役に立っていると?」 「!? ……や、僕が城に帰らずとも書状で全て――」 「これでもですか?」 「な、何だい、それは!?」  娘が取り出したのは一枚の似顔絵入りのビラ。 「国王様が貴方をお探しの様ですが。書状を送られているのなら何故このような物が配られてくるのでしょうね」  王子はビラを手に、わなわなと震えます。 「ぼ、僕が……こんなっ、……こんなに老けているわけがない!!」 「……」 「一体何を見たらこんな不細工に描けるんだ!?」 「頭の中まで放浪していらっしゃるようで」 「酷い!」 「当然です。放浪の旅に出て十年も経っているんですよ? 今現在の貴方を想像して描くしかなかったのでしょう……御用絵師様もお気の毒に」 「気の毒なのは僕じゃない!? こんな風に描かれてさ。どうせ誇張して描くならもっとカッコイイ方向に誇張して欲しかったよ」 「いえ、案外特徴を捉えていると思いますよ? この辺の髭なんて旅人感満載で、あとはもう少しボサボサに髪を伸ばして……顔に傷なんかも入れておくとグッと悪人面に――」 「何を勝手に描き込んでるんだい! これじゃあお尋ね者の手配書になってしまう。未来の夫を犯罪者呼ばわりするなんて、なんて妻だっ」 「相手の同意も無く妻呼ばわりする男は犯罪者で充分かと」 「すまない、先走り過ぎたね。キミは可愛い僕の婚約者だった」 「頭の中ではスキップまでなさっているようで。恋人でもなく、ましてや三年も音信不通になるような方と一体いつどうやって婚約まで至ったのでしょうか」  王子が最後にこの村を訪れたのは三年前。――だというのに王子の発言はあまりにも自分勝手。  娘が怒っても無理はありません。 「僕たちが友達以上恋人未満だって言うのかいっ?」 「いえ、それも行き過ぎかと。百歩譲ってただのご友人、それ以上でも以下でもないですね」 「譲歩された友人なんて、最早以下ではっ? なんてことだ……僕は恋人のつもりでいたよ」 「とんだ妄想ですね。告白のコの字もない相手とどう恋人になれというのでしょうか」 「なら今告白したらキミは頷いてくれるということだね……?」 「……」  一瞬押し黙る娘は気恥しそうに視線を逸らします。  彼女も少なからず王子のことを想っていたのだが、彼の頭の中が解読不能でずっと戸惑っていたのでした。 「……それなら何故、一緒になれないなんて言うんだい?」 「放浪している貴方とは、流れる時間が違うからです。いつも置いていかれている気がして……」 「ハっ! ――だから『この僕』はこんな老け顔なのか!」  お尋ね者の手配書と化したビラをくしゃくしゃと丸める王子に、娘からは溜息が一つ零れます。 「……根に持ち過ぎです」  放浪の旅をしているだけあって、言動がふらふらと飛んで歩く王子。  ――しかし次の瞬間、娘は驚きに目を丸めます。  突然テーブルに置かれた見慣れない植物。緑色の葉の中に白い花が覗きます。 「ドラセナ。幸福の木とも言われている植物だよ」 「とても、甘い香りがします……」  ポンポンのように小さな花がいくつも集まって咲く可愛らしい姿は、彼女の心を魅了しました。 「数十年に一度しか咲かない花なんだ。これをどうしてもキミにプレゼントしたくてね」 「まさか、それで三年も?」 「見つけても持ち帰るまでに枯れてしまっては元も子もないからね。大好きなキミの為ならなんてことはないさ。――どうか、僕と恋仲になって欲しい」  自分のためにしてくれたことだと思うと、娘はこれ以上怒る気にはなれません。 「仕方のない人ですね。でも、嬉しいです。ありがとうございます」 「こちらこそ。それと、この花には素敵な花言葉があってね。『幸福』『永遠の愛』『幸せな恋』そして『隠し切れない幸せ』!! どれも僕たちにピッタリだと思わないかい?」 「ええ、確かに隠し切れていませんね。恥ずかしいので、出来ればその緩み切った不細工な顔だけでも隠して頂けたら助かるのですが」  告白を受けても毒舌は健在のようです。 「実物見て不細工ってあんまりじゃないかい!? 自分で言うより酷い衝撃が胸にっ。――それより、 良かったらキミも探しに行かない?」 「え……?」 「この植物は低木種だけでも五十種類以上あるとされているんだ。キミと幸せを探しに、是非行きたいね」  娘は暫し考えます。 「悪くない提案ですね」 「本当かい!? じゃあ……!」 「ただし、一度お城に戻られてからというのが条件です」 「あ……はい」  しゅんとする放浪王子に微笑む毒舌娘。  こうして、今度は愛しい恋人を連れて放浪の旅に出ることになったのでした……――。  ――コミカルなロマンス(?)劇場、閉演後。 「あの似顔絵は傑作だったわね!」 「ふふ、本当に良く描けていたわよね」 「ねえ、見て? 好きなお花を持って帰れるんですって!」 「ちゃんと花言葉も添えられているのね……素敵だわ」 「こんな花見た事無いよ。あいつにプレゼントしたらきっと喜ぶぞっ」  観劇の感想を交わしながらそれぞれ好きな花を選んで帰って行く人々。  そして明日は千秋楽。多くの来観者を見越して沢山の花が用意された――。
新人だってかっこよく戦いたい
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帰還 2018-08-31

参加人数 5/8人 あいきとうか GM
「戦闘がさぁ……。なーんかよく分かんないっていうか、うまくいかないっていうか」  教団寮の食堂で、新人浄化師の片割れ、祓魔人クラウジオ・エイツがテーブルに突っ伏した。 「アライブスキルとか立ち回りとかさぁ……。なんかいろいろ……」 「いろいろ、ですか」  テーブルを挟んで向かい側に座るクラウジオに上目遣いに見られ、司令部教団員はそうめんを飲みこむ。 「なんか教えて……。いろいろ……」 「漠然としすぎていて分からないんですけど。っていうかほら、浄化師になられたときに、一通りの戦闘マニュアルは目を通してますよね?」 「読んだけど、分かんないっていうか」 「困りましたねぇ」  トマトを口に入れて咀嚼し、嚥下。よし、と司令部教団員は頷いた。彼女もまた新人ではあるが、どうにかしたいという思いだけは一人前だ。 「まずは『装備』の話です。身につけてますか? 装備。武器、防具、その他の携帯品。指令に行く際には、装備は整えないと。これは戦闘指令以外にも言えることです」 「ふむふむ」  続けて、とクラウジオは視線で促す。 「あと『アライブスキル』。浄化師さんたちが使う、特別な魔術ですね。魔力が枯渇しない限り使えます。浄化師さんとして経験を積めばあれこれ習得できるものです」 「そういえばそういうのもあったな……」 「それと『魔術真名』なんかもありますね。これはパートナーの方と契約する際に決めていただいた、特別な合言葉のようなものです。発すればお互いの能力を最大限に解放できますが、パートナーと触れあうこと、が条件に入っていることをお忘れなく」 「手をつなぐとか、ハグするとか、だっけ?」 「そうです。ちょこっとでもいいので、触れあってくださいね」  お箸の使用に慣れていない司令部教団員は、フォークにそうめんを絡ませながらさらに考える。  これ以上、説明すべきことはあっただろうか。 「あとは、会敵したときどうするのかとか、どんな風に戦うのかとか、そんなことを考えておけばいいと思いますよ」 「ふぅむ……」  ごちそうさまです、と手をあわせた司令部教団員は、食器が乗ったお盆を持って立ち上がる。 「難しく考える必要はないのです。あとは経験って感じですから。ちょうど簡単そうな指令があるので、出しておきますね。参加してみてください。大切なのはー?」 「装備、アライブスキル、魔術真名、それとやる気?」 「そんな感じです。他の浄化師さんたちとも、作戦会議をしたり、協力したりして、勝利を掴んでください。戦いだって浄化師さんの本分ですから」 「だよねぇ」 「帰ってきたらレポート、よろしくお願いしますね。ご武運を」  会釈をして去っていく司令部教団員を見送って、クラウジオはようやく上体を起こした。 「あ、やっば。たぶん指令のタイミング、被るわ。参加できないな、これ」  心の中で司令部教団員に謝って、新人浄化師の祓魔人もそうめんを食べることにした。
パートナーには秘密のおはなし
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帰還 2018-08-29

参加人数 5/8人 北野東眞 GM
 今日も今日も指令を受け取りにエントランスへと向かうと……。 「はぁ? またお前、出張! てめぇいい加減にしろよ! ようやく帰ってきたと思ったらまたかよ! いい加減にしろ! 離婚するぞ! このイケメンがっ!」 「仕方なかろうが! 浄化師は万年人手不足ゆえ! 吾のような有能な者はもれなく社畜じゃあ! 離婚したらまた求婚するぞ、この愛い者め!」  うわぁ……いつも指令出してくれるロリクと、調査担当のユギルさんが、なんか喧嘩してる。あれって深刻な喧嘩? いや、痴話げんか?  そういえば、あの二人、浄化師としてパートナーで、夫婦だったけ? これは犬もくわぬなんとやらでは? 「あー、気にしないで、気にしないで。あの夫婦、二人とも仕事が忙しいせいで、しょっちゅう喧嘩してるんだ。すべて、仕事がいけないんだ。せめて、週七日休みの仕事なら」  などと通りすがりの他の職員は言うが――あ、この人も疲れてる。  そんななか、二人の言い合いがヒートアップしていく。 「結婚のとき寂しい思いはさせないとかぬかしやがったくせに仕事、仕事、仕事で、てめぇ本当にいい加減にしろよ。仕事と結婚しろぉ!」 「は! その言葉そのまま返すぞ! そのうえ汝、顔がいいと室長のことをほめておったな。浮気か!」  これは、出直しておいたほうが、あ、やべ。ロリクに見つかった。 「おー、ちょうどいいところにお前らきたなぁ~。今日の指令、きてるぞ~」  うわぁ。こわい。 「待て、まだ話は終わっておらんぞ!」  ひぇ。まだ喧嘩続行ですか? 「……今日の指令は俺が依頼主になる! 悪いが、喰人だけ、俺ときてくれ。ちょっと話にのってもらおうか」 「汝……ふん、では、祓魔人側は吾とこい。汝らに話がある」  あ、やばい。これ、断れないやつだ。  そんなこんなで依頼というわけで、いつもは一緒にいるパートナーと引き離されてしまった。  呼ばれたのは広い部屋で、紅茶とクッキーが用意されている。 「本当に、あの旦那は嫉妬深いし、束縛は強いし、しょっちゅう仕事でいない、結婚前は優しかったし、気が利いたっていうのに」  はぁ。 「お前らへの依頼は別に愚痴を聞いてほしいわけじゃない。今回はパートナーに思うところがあるだろう。ここでがっつり語れ! 同じ喰人同士だ。いろいろと思うところあるだろう」  パートナーについて語るかー……。 ● 「妻はこう、働き者なのだが、がんばりすぎて心配なのだ。はぁ仕事で忙しいことは悪いとは思っておるぞ? 料理はうまいし、配慮はある、ゆえに浮気せんか心配なのだ。忙しくてかまえんからなぁ……なに、のろけではないさ。妻のことだ、どうせ、喰人どもにパートナーのことを語らせておるだろう。汝らも日ごろ、いつも一緒のパートナーに対して思うことがあるのではないのか? ここでは鬱憤晴らしじゃ、語るがよい」  パートナーについて……。 「愚痴でも、心配でも、のろけでも。ここには同じ祓魔人しかおらん。初対面かもしれんし、依頼で何度か顔を合わせたものもおるじゃろう。こういうときこそ、好きに語るがいいし、聞きたいこともあるだろう? 内緒話というところじゃ」
戦闘訓練だよ! ヨハネの使徒!
普通|すべて

帰還 2018-08-23

参加人数 4/8人 北野東眞 GM
「今回は、実戦訓練だ。だいじょうぶ、だいじょうぶ、危険なことはないから、たぶん」  いつもは受付で指令を渡してくるロリクが珍しく、浄化師たちを率いて平野の道を進む。  今回は「新人も増えたことだから、そろそろ戦闘訓練の一つもするかなぁ」と言い出したのだ。  目が眩む晴天。  緑豊かな、平坦な道を進む。 「俺も一応浄化師のはしくれだから戦えるんだが、今はパートナーのユギルが別地方の調査に出ていてなぁ。  最低限のサポートと助言しかできんが、まぁ、お前たちならいけるだろう。  最悪、危険だと思ったらお前ら全員連れて逃げるくらいなら今の俺でもできるからな」  からからとロリクは笑って、ろくでもないことを口にする。  ふ、と彼は真顔になってここに集まった浄化師たちを横目で見る。 「浄化師っていうのは命をかけて正義と平和を守る。だからこそお前たちはある程度の自由と守るべきルールが存在する」  淡々とロリクは説明をする。  それは、たぶん、浄化師となったときにはいやでも習うことだ。  浄化師はベリアルやヨハネの使徒といった世界の脅威を討伐し、世界の救済を遂行する存在である。  いろんな理由でここに集まった者たちは浄化師となった。 「今回はいろんなパターンがあるがオーソドックスな敵にしようと思う。  ヨハネの使徒の討伐だ。なんでも今朝がた、平野にいるのを見かけたという。数は三体」  ロリクはそう告げるといきなり立ち止まり、振り返った。 「さて、ここでヨハネの使徒についてのおさらいだ。あいつらは3パターン存在するが、今回は地上稼動型だ。  スピードとしては最高で60キロは出る上、なかなかちょこまかと動く。今回の個体の大きさは3mのものらしい。  あいつらはだいたい500kg~2000kgほどの重さもあるから潰されないように気を付けろ。  あいつらはコアがある。それさえ破壊すれば停止する。  逆を言えばそれを破壊しない限りは動き続けるから注意がいる。  さて、俺からの助言は以上だ。もっと聞きたいことがあれば今の内にな。向こうもこちらに気が付いたようだ」  ロリクが腰からジャマダハルをとりだし、低く構えた。  戦いの前の高揚と緊張が走る。  風の唸る音を浄化師たちは聞いた。  見ると、5キロほど先でも、わかる。その白い光沢の化物――犬と馬が合体したような、どこか不格好な化け物。  3体のヨハネの使徒。  白と金色の神々しい化け物の顔といえばいいのだろうか、そこに青く輝く宝石――コアが浄化師たちを捕えている。  彼らは土煙をまいあがらせ、真っすぐに浄化師たちに突撃してくる。  すべての命を、刈り取るために。
クローネ鍾乳洞の救出作戦
普通|すべて

帰還 2018-08-23

参加人数 4/8人 内山健太 GM
 夏場のクローネ鍾乳洞にベリアルが棲みついたという連絡が薔薇十字教団に入る。  クローネ鍾乳洞は、夏場のリゾートとして人気の観光スポットであるが、今回ベリアルが棲みつき、かなり危険な場所と化してしまったとのことだ。    どうにかしてベリアルを討伐し、観光ができる状態を取り戻してほしい。それが今回薔薇十字教団に依頼された指令である。  エクソシストたちが討伐に乗り込もうとした時、更なる連絡が入る。物見遊山でやってきた若者がベリアルに襲撃されて、鍾乳洞の中に閉じ込められてしまった。    若者は二人。一人は鍾乳洞の奥の方に逃げ、ベリアルの魔の手から逃れている。もう一人は、一瞬の隙を突き、鍾乳洞の外に逃げ延びていた。  そして、仲間が一人閉じ込められていると連絡したのである。    鍾乳洞の奥は深く、人がギリギリ入れるくらいの地帯もある。ちょうど、そのスペースに若者は逃げ込んだため、ベリアルの攻撃から逃れられた。  しかし、ベリアルは鍾乳洞の壁に突進し、若者を食い殺そうと躍起になっている。現在のところはまだ壁は厚く、時間的な余裕はあるが、そう長い間逃げられないだろう。    壁が崩れてしまえば、若者の命はない。  そのため、早急に若者を救出し、ベリアルを討伐してほしい。ベリアルは一体であり、エクソシストたちが協力し合えば、攻略はそれほど難しくはないだろう。  ただ、鍾乳洞の中は若干薄暗い。日差しの角度により、鍾乳洞内は幻想的なムードに包まれるが、時間的な猶予はあまりない。早急に救出作戦を遂行してもらいたい。    ベリアルは基本的に不死であり、一般的な攻撃では攻略ができない。ベリアルが死に瀕すると、その身から鎖に捕らえられた魂が出現する。  この際に出現する鎖を魔喰器で喰うことで、魂は光となって天へ帰っていく。    ベリアルがいる一帯は、それほど、大きなスペースではなく、観光スポットでもあるので、あまり派手な魔術を使うのは推奨されない。  武器を使い、ベリアルを攻撃しつつ、鎖を喰うとよいだろう。但し、ベリアルは絶えず飢えているので、エクソシストを見ると、目の色を変えて攻撃してくるはずである。    今回のベリアルは、元が狼であり、それがアシッドの影響で魔物と化してしまっている。  鉤爪のようになった前足の攻撃は鋭く、触れてしまうと大きなダメージを負うだろう。  また、スピードも速く、一瞬の隙が命取りになる。基本的には四足歩行であり、爪による引っ掻きや、鋭い牙による噛みつきが主な攻撃になる。  鍾乳洞内はそれほど広くないので、ベリアルのスピードはそれほど発揮されないが、狼を元としているため、夜目が利き、薄暗い中でも活動するのに優れている。  まずはスピードを殺し、着実にダメージを与えていくとよいだろう。    鍾乳洞内を破壊しないのであれば、多少の魔術を使うのは可能である。  魔術を行う者、武器を使う者、それぞれが協力し合いベリアルの討伐をしてもらいたい。
流し……そうめん?
簡単|すべて

帰還 2018-08-22

参加人数 3/8人 茸 GM
 盛り上がりを見せた七夕祭りが終わり、七月も残すところ数日と迫った頃――。   「こんなに沢山余っちまって、どうしたもんか……」 「これは処分するしかないんじゃないか?」  場所はアークソサエティの中心街から離れたとある小さな村。  六十過ぎのしゃがれ声で話す村長とその息子が、庭先で頭を抱えていた。 「処分っつってもなぁ。こんな立派な『竹』、使わずに捨てちまうのは勿体ねえだろ」 「そうは言っても……、じゃあ何かいい案でもあるのか?」  息子に問われ、顔の皺を更に深く刻んで考え込みながら、十本近くある竹をジッと睨みつける。  村の七夕祭りの後、余った竹を庭に借り置きしたはいいが、使い道が思い浮かばないまま今に至ってしまった。 「……そうだ!」 「っ? 親父、何か思い付いたのか?」  ポンと手を打つと、驚いたようにこっちを見る息子にニヤリと笑む。 「流しそうめんだよ! 夏にはもってこいだろ」 「ナガシソーメン?」 「何だ? 知らねぇのか。この竹を縦に真っ二つに割ってそこに素麺を流して食うんだよ」  呆れ半分と、少し得意げに説明すると……、 「それってもしかして、麺を織姫の織り糸に、麺が竹の水路を流れて行く様を天の川に見立てたっていう七夕と一緒にニホンから伝わってきた夏の風物詩……!」 「……知ってんじゃねえか」  しかも思いの外詳し過ぎる解説に驚き半分、悔しさ半分。 「親父の話を聞くまで忘れてたんだよ。でも流しそうめんか、俺もまだやったことないし、いいんじゃないか?」 「そ、そうか」  息子の賛同を得て、打開策が見えてきたことに安堵する。 「そうと決まったら早速準備だな!」 「ハッハッハ、お前もやる気じゃねえか」  善は急げと作業に取り掛かる息子と一緒に、竹を切る音を庭に響かせたのだった。  ――数日後。 「これはまた立派なモンができましたねぇ」 「本当、凄いわ!」 「当然だろう。誰が作ったと思ってんだ」  真っ二つにした竹を繋ぎ合わせて長く伸びた竹水路が三本完成した。  それを取り囲む村人達。  村長自身、使い捨てにしてしまうには勿体ないほどの出来栄えだと自負している。 「俺も驚いたよ。しかも、余った竹を刻んで器にするなんて、親父もセンスあるじゃないか」 「ここまで来て余らせちまったら格好悪ィからな。少し作り過ぎちまったが、まあいいだろ」  息子に褒めちぎられ、自慢げに胸を張ると、周りから笑い声が上がる。  集まった二十人ほどの村人に対し、器が少し余ってしまっているのは確かだ。 「私達まで招待してくれて嬉しいわ」 「本当よね。流しそうめんなんて初めてだから、凄く楽しみにしていたのよ」  女性達の好感触の声が照れ臭くて、鼻の下を擦る。 「ありがとよ。じゃんじゃん食べてってくれ」 「親父、鼻の下伸びてるぞー」  すかさず息子に茶々を入れられ、「煩ぇ」と尻を叩く。 「ダラダラ喋ってねえで、お前はさっさと準備に取りかかれ!」 「わ、分かったよ。……まったく、直ぐ手が出るんだからなー」  そうこうしている内に着々と準備は進み、竹の水路に水を流し始めると歓喜の声が上がった。 「そうめんも瑞々しいわね」 「どうせ水流すなら、持ってきた野菜でも冷やしておくか」 「それは良い考えね!」  各々が持ち寄った食べ物や飲み物などでテーブルが溢れ返っている。  なかなかに豪勢な流しそうめんの会だ。 「見て! 私は六色そうめんを持ってきたの」 「六色そうめん?」  村娘の手元を覗き込むと、六つの色の素麺が木箱の中に綺麗に並んでいた。 「こりゃ凄いな。どうすりゃこんな色になるんだ?」 「緑は抹茶、赤は紅花、茶色はそば粉、青が高菜で黄色がクチナシ、そして紫は紫芋で色をつけたの。最近では果物で色付けすることもあるそうよ」 「なるほどなぁ、色が違うってだけで賑やかになるな」  顎を擦りながら感心していると――、 「六色そうめんって言ったら……」  と、息子が横から口を挟んできた。 「七夕さまの歌にもある『六色の短冊』だな。魔術六方陣思想と同じ六色にしたのは厄除けの意味が込められてるって話だ」 「お前はいつからウンチク野郎になったんだぁ?」 「親父……、せめて博識って言ってくれよ」 「でも本当、良く知ってるわよね」  六色そうめんを持ってきた娘が感心したように言う。 「まぁ、昔ばあちゃんから聞いた話だけどさ」  と、鼻の下を指で擦りながら呟く息子。――何処かで見た光景だ。 「あと、白を加えた七色を七夕の日に食べると更に縁起がいいとか、ばあちゃん勝手に言ってたな」 「それは素敵ね! 私も来年からそうしようかしら」  そんな中、話を聞いていた村人の一人が徐に手を挙げた。 「陰陽とか厄除けで思い付いたんだが、この流しそうめん、浄化師さんにも食べてもらわないか?」 「流しそうめんを?……それは、ここに招待するってことか?」 「ああっ。街や村の為に危険な仕事だって沢山請け負ってくれてるんだ。いつか恩返ししたいと思ってたんだよ」 「私も賛成よ! 六色そうめんなら任せて。まだ家に沢山あるから」 「俺も賛成だな。浄化師さん等の無事を祈って、盛大にやろう!」  集まった村人全員が頷き、多くの目が此方に集中する。  もちろん、反対する理由などあるはずがない。 「よぉし、分かった! 手伝える奴は前に出てきてくれ」  こうして村長の呼び掛けに応えた村人達により、この後準備が進められ、八月の初めに薔薇十字教団に一通の招待状が届けられた……――。
存在理由と向かい合おう
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帰還 2018-08-22

参加人数 8/8人 春夏秋冬 GM
 教団本部の一室で、1人の浄化師が助手の浄化師に声を掛けた。 「そろそろルーキーの中にも、慣れて来たのが出てくる頃だなぁ」  四十を過ぎたヒューマンの浄化師は、椅子にだらしなく座りながら続けて言った。 「良いことだぜぇ。浄化師として腕を磨いて、腕を上げてきたってことなんだからなぁ」 「ええ、良いことですね。そういう点では」  この場にいるもう1人、若いライカンスロープの浄化師は用意した書類に抜けがないか確認しながら返す。 「でも、良いことばかりじゃないですよね」 「ああ、まったくもってその通り。だから俺達に、ルーキー達に説明する仕事が回って来たってわけだ」  浄化師の男性は、女性から書類を一枚受け取り内容を確認する。  そこには『存在理由の偏りによる変調の対処法』と書かれていた。 「人間、存在理由は大事だけどねぇ。俺たち浄化師は、常に中庸を心がけなきゃならない。でなきゃ、最後の最期はべリアルになっちまう」  いま男性の浄化師が話していることは事実だ。  浄化師は、ある条件によりべリアルと化してしまうことがある。  ひとつは、べリアルを倒さずに魔喰器にべリアルを食わせない状況が長く続く場合。  これは教団に所属していれば定期的にべリアル駆除の指令が出されるので気にする必要はない。  しかし、もうひとつ。こちらが問題だ。  それは浄化師が自身に課した存在理由。  つまりはレゾンデートル。その偏りによる変調の行きつく先だ。  自身の存在理由に偏り過ぎる、あるいは掛け離れ過ぎることで、それは1つの症状となって現れる。  それが「アウェイクニング・ベリアル」だ。  これには2つの症状がある。   ひとつ目が「自身の存在理由」を見失ってしまったことで発症する「アムネシア・ベリアル」だ。  戦闘能力が低下し、『目的』に対する感情や意識が薄れていき、記憶が薄れるといった症状が起る。  例えば、パートナーを守ることを存在理由に持つ者が居れば、症状が進めばパートナーへの興味をすべて失ってしまう。  ふたつ目が「自身の存在理由に傾倒しすぎる」ことで発症する「ルナティック・ベリアル」だ。  戦闘能力が向上し、「すべての『目的』を同時に遂行しなければ、すべてを失うだろう」という強い焦燥感と絶望感に襲われ、発狂状態になってしまう。  例えば、パートナーを守ることを存在理由に持つ者が居れば、症状が進めばパートナーに拘り過ぎ、パートナーに近付く者全てを攻撃することさえある。  ひとつ目の「アムネシア・ベリアル」の行きつく先は、心の死だ。  最終的に廃人となり、戻ることはない。  ふたつ目の「ルナティック・ベリアル」の行きつく先は、べリアル化だ。  しかも戦闘経験などをそのまま保持した、低スケールのべリアルなど比べ物にならない凶悪なべリアルが発生することになる。 「べリアルを狩り獲る浄化師がべリアルになっちまったら洒落にならねぇ」 「だから、そうならないように指導するんですよね」  2人の言葉通り、存在理由の偏りによる変調は避けることができる。  方法は、難しい訳ではない。  常に中庸であることを心がけ、行動に移しさえすれば良い。 「とはいえ存在理由なんてのは、心の問題だ」 「ええ。だから分かっていても偏り続けてしまうこともありますね」 「ああ。特にパートナーを守りたい、なんてのは悪いことじゃないしな。それだけに譲れず、アウェイクニング・ベリアルを発症させちまうことがある」 「そうなっても、まだ諦める必要はないんですよね」 「おお。そのためのパートナーなんだからな」  2人の言葉は事実だ。  存在理由の偏りによりアウェイクニング・ベリアルを発症させたとしても、即座に廃人になったりベリアルと化してしまう訳ではない。  たとえ発症しても、パートナーとの絆次第で元に戻れる可能性は残っているのだ。  心からの呼び掛け。  あるいは行動。  パートナーを思う心をぶつけることで、中庸に引き戻すことができるようになるのだ。 「ま、チャンスは無限じゃないがな」  それもまた、事実だ。  パートナーとの絆による引き戻し。  それが立て続けに失敗すれば、もはや手遅れだ。 「今までの統計からすると、指令を4つこなし続ける間に引き戻せなければ、2度と機会は訪れません」  そうなれば、心の死が訪れ廃人となるか、べリアルになるしかない。 「決して少ないチャンスじゃない。だが、多い訳でもない」 「だから、そういうことにならないように、普段から気を付けてもらう必要があるんですよね」 「そういうこと。だからこその教習だ。せいぜいルーキー達には勉強して貰わないとな」 「そのためにも頑張りましょう」 「へいへい。分かってますよ」  そんなやり取りがあった数日後。  アナタ達は、教団の一室に集められ存在理由に関する話を聞くことになります。  その後に、それぞれパートナーごとに個室に分けられ話し合いをするよう求められました。  話し合いの内容は、次のようなものです。  もし存在理由の偏りにより「アウェイクニング・ベリアル」を発症させてしまった時にはどうするのか?  自分だけでなくパートナーを守るために、アナタ達は話し合うことが求められています。  この指令に、アナタ達は――?
かき氷パーティへようこそ!
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帰還 2018-08-21

参加人数 8/8人 oz GM
 連日、茹だるような暑さが続くこの夏。  地獄の釜に全身浸かっているような炎天下、疲労感が取れない浄化師も多いだろう。  この酷暑の中でも働く浄化師や教団員達を労う為、料理人達が教団寮の食堂で「かき氷パーティー」を開催することになった。  浄化師の息抜きになるだろうと司令部からもあっさりと許可が下りた。  この日の為に料理人達が研究してきたかき氷の発表の場でもある。かき氷と言っても侮る事なかれ。  お店で売っているような天然氷を使ったものは用意できないものの、負けず劣らず「美味しいもの」を食べさせたいのは料理人としての意地だ。多目的発氷符を使い発生した氷で、如何にふわふわとしたかき氷を作るかに腐心してきた。  濃厚でありながら雪のようにふわりと溶ける魅惑の口溶け。この触感を得る為、何度も味見してきた料理人達は頭をキーンッと痛めたり、お腹を壊したりしながらも完成させた。  もちろんかき氷に大事なシロップに加えて様々なトッピングも用意されている。  シロップにはまず王道であるイチゴ、ハワイアンブルー、メロン、マンゴー、オレンジ、レモン。  別の味が食べたい方の為に、グレープ、青リンゴ、パイナップル、アプリコット、蜂蜜レモン、パッションフルーツ、ライム、紅茶等もあるので、様々な味のシロップに迷ってしまうかもしれない。  さらにカルピスやラムネ等のジュースをかき氷にかけても美味しいだろう。忘れてはいけない練乳は標準装備だ。  かき氷には無限大の可能性がある。アイディア次第で様々な変化を遂げるデザートだといっていい。  では、食べたくなるように例を挙げていこうか。  まず、最初に紹介するのは旬の果物を使ったかき氷。  生の桃を加工し作った特製のシロップは果肉がごろりと残っているお得感。シロップを覆い貸すように生クリームがかけられている。上の飾りには、桃の果実で作られた花が美しく咲いている。  暑さで食欲が減退している人もこの桃の香しい匂いを一口食べてみたくなるのではないだろうか。旬の果物を味わいたい方におすすめの一品だ。  甘いものが苦手で大人な味をお求めの方は、コーヒーフロートのかき氷はいかがだろうか。コーヒーの苦みに加えてラム酒がほんの少し入っている。甘さが欲しい方にはバニラアイスを。生クリームを加えれば、まろやかさになるだろう。トッピングにはコーヒーゼリーを上にのせると、洒落たかき氷の出来上がりだ。  こんなときこそ、ニホンの味を楽しんでみてはどうだろうか。  宇治抹茶。東方島国ニホンからわざわざ取り寄せた抹茶をかけた一品。  トッピングには白玉と餡子がおすすめだ。練乳はお好みでかけるといい。  まずは、そのままの素材の味を試してほしい。するとひと味もふた味も味の変化を楽しめる。  最初の一口は抹茶のほの苦い甘さがじんわりと広がり、そこに練乳を絡めるとさらに美味しくなる。あんこは、こしあんかつぶあんか選ぶことができる。白玉以外にもあんみつ、まめかん、わらび餅、磯部餅、きなこ等があり、どこまでも味への追求ができる。  宇治抹茶以外にもきなこ&黒蜜はまた違ったニホンの味が楽しめる。醤油と黒蜜をブレンドしたソースの上から香ばしいきなこがどっさりとかけられている。上品な味わいはかき氷と言うより和菓子を食べている気分になれるだろう。  さらにこっそりと漬け物が用意されている。甘いものを食べた後にはしょっぱいものが食べたくなる心理を突いた心憎い気配りだ。  成人済みでお酒が大好きな方には、お酒をかき氷にかけるのはどうだろう。  リキュールにアイスワイン、ウィスキー、梅酒、日本酒、焼酎等選び放題だ。冷え切ったかき氷にお酒をかければ、冷たい風味が増す。大人だけが味わえるリッチなかき氷。きっとお酒好きにはたまらないはずだ。  みぞれ酒として飲んでみるなんて、今だけしかできない贅沢だ。  「昼間からお酒なんて……」なんて文句を付ける奴は今日ばかりはいやしない。息抜きという名の大義名分を掲げて存分に楽しんでほしい。  ところでかき氷のトッピングには何を思い浮かべるだろうか。  思いつくところで言えば、冷凍フルーツ、ジャム、ゼリー、チョコ菓子、タピオカ、ウェハース、シリアル等であるだろうか。安心してほしい。あなたたちの為に全部揃えてある  変わり種ではチーズクリーム、フロマージュ、綿菓子、マシュマロ、ヨーグルト、マシュマロ等もある。  冷凍フルーツにはイチゴやラズベリーを始めとしたベリー系に、角切りにしたマンゴー、スイカ、キウイ、蜂蜜付けしたレモンの輪切り等の各種用意させてもらっている。  さらに彩りを加える為に果肉を残したフルーツソースの準備もばっちりだ。  あなたが想像するかき氷が作れる準備は万端だ。  料理人達のやりすぎ――……こだわりによって用意された。料理人達も好奇心でやらかしたわけではない。全て善意によって用意された、筈である。  様々なカスタマイズができる分、あなたのセンスが問われるのでそこは注意して頂きたい。  「おすすめで」の一言を料理人に言えば嬉々として作ってくれる。だが、食べることが好きならば全く問題ないが、個性的なかき氷ができあがるだろう。ただし、味は保証できる。  それでは長々と話してしまったが、かき氷パーティーへようこそ!
真夏の夜の夢?
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帰還 2018-08-21

参加人数 3/8人 江戸崎竜胆 GM
 教皇国家アークソサエティ内ブリテンのエクリヴァン観劇場――。  其処で上演されると言う喜劇があると噂が立った。  なんでも、ヒューマンとエレメンツとピクシーとの風変わりな恋愛物語だとか。然も、格安での観劇が可能で、美味しい屋台も並ぶとも。  わいわいと噂を聞きつけて集まってくる人々の中にも、チラシを見て首を傾げる者もいる。 「ピクシーが関係してるって書いているけど、悪戯しないよな?」 「まさかー。ピクシーが関わっているからって疑ったら可哀想よ?」 「それもそうだなー」  チラシには大々的に『ヒューマンの描いた、エレメンツとピクシーによる、皆様への熱く楽しい一夜を提供致します! 是非、恋人同士でどうぞ!』と書かれている。  なんとなく引っ掛かる文面だが、エレメンツ達は兎も角、ピクシー達が悪戯をしないで済むだろうか? いや、無い。 「恋人同士をいちゃいちゃさせるのだー」 「そうなのだー」  小さな瓶に詰まった惚れ薬を持って、ピクシー達が演劇の準備をしている。  ピクシー達に悪意はない。純粋に恋人達が仲良くしてくれれば嬉しい、と言う内容の悪戯だった。  無邪気な悪戯だが、悪戯には変わりない。  この演目は喜劇となるか? ある程度はエレメンツが止めてくれるので、悲劇とはならないとは思うが――。  真夏の夜の夢は一夜で終わるのだろうか?
星に願うのは遠すぎる
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帰還 2018-08-20

参加人数 3/8人 北野東眞 GM
「今回は星祭りの警備だ!」  かっ! と目を見開いて、薔薇十字教団司令部受付担当の教団員ロリクが告げた。どうも最近、仕事が立て続けで、社畜のお疲れですオーラがぷんぷんしている。 「ここから数キロほど離れた山の上にある村で星を愛でる祭りがある。まぁ、ようは七夕のようなものだ。  で、今回、その祭りの警備を頼まれた。警備といってもそこまで緊張感のあるものじゃない。ただ酔っ払いが暴れたりとかしないように見張ってほしいってことだ。つまりは、お前らがいるだけで十分警備になるから、好きに観光してこいよ。ごほごほ」  え、ロリク、大丈夫? 「気にするな。最近、忙しくて……ちょっと夏風邪だ。  ごぼ、ごほ……えーとな、ここの祭りは星がきれいでなぁ、星の下、村の近くにある天の星という川に自分たちが紙で作った願いのかいた船を流す習慣があるそうだ。  ぜひともお前たちのお願いを流すといいぞ。俺? 俺は週七日休みの仕事につきたい。  または出張続きの旦那がさっさと帰ってくるように祈るに決まってるだろう!」
私に贈り物をくださいな
とても簡単|すべて

帰還 2018-08-20

参加人数 8/8人 あいきとうか GM
 薔薇十字教団に一通の手紙が届いた。 「親愛なる浄化師様方。手紙の書き方なんて知らないので、用件のみお伝えさせていただきます。ルネサンス地区ヴェネリアの水上マーケットはご存知ですか? とてもいいところですよ。いろんなものが売っています。なので買い物を手伝ってください」  差出人の名前はエキュム・ムース。丸みを帯びた稚拙な字体から、少女だろうと司令部は予想した。  待ちあわせの時刻も記載されている。某日昼頃、水上マーケットの北側の入り口近く。すぐ側に串焼きの屋台があるので分かるだろう、と手紙には書かれていた。当日、エキュムは白いワンピースを着て、川を眺めているらしい。  水上マーケットと言えば、水の都とも称されるヴェネリアでも一、二を争う観光名所だ。  大小さまざまな運河を、船頭が操る小舟で渡っていく。同じく小舟に商品を並べた店がところ狭しと並んでおり、世界各国の美味しい食べ物や海産物、珍しい骨董品、貴重な品々まで取引され、常に賑わいを見せていた。  一方で、そういった品々や観光客を狙う悪党も問題になっている。 「この女の子は、水上マーケットで買い物をしたいけれど、守ってくれる人がいないと怖いか、危ないから近づいてはならないと説得されているのでしょうね。それできっと、教団を頼ったのでしょう」  指令を張り出した教団員は、近くにいた浄化師にそんな言葉をつぶやいた。 「夏の暑い時期、川風が涼しい水上マーケットで、お買い物のお手伝いをしてあげてくれませんか?」  少女の無垢な願いを、叶えるために。
魔狂の城主
普通|すべて

帰還 2018-08-19

参加人数 8/8人 黒浪 航 GM
 教皇国家アークソサエティ、アールプリス山脈の東端に黒々とそびえる孤城――ベルハルト城。  ロスト・アモールの時代に落城して以降、すっかり朽ち果て廃墟と化してしまっていたその城は、じつは今より数カ月前にひっそりと新たな主を迎えていた。 「ついに……完成だ………」  城の最上階、ロウソクの灯が揺れる殺風景な部屋。  青白い肌をした痩身の青年は、狂気を宿した瞳で、みずからが手にした真紅の石をじっと見つめている。  トレードマークとなる黒い外套こそ纏ってはいないが、左手の甲に埋められた十字架をみれば、この青年が『終焉の夜明け団』の信者であることはまず間違いない。 「これが……これこそが、エリクサーだよ……ルシア」  青年は背後を振り返り、壁際に佇んでいる修道服姿の女に暗い笑みを向けた。  銀髪の女は、淡い金色の眼をやさしく細めて、頷く。 「ええ……ついにやったのね……ロナーク」 「ああ……。すべて君のおかげだよ、ルシア。僕は、もう何年もパラケルススを研究してきたけど、これまではエリクサーの紛い物すらつくりだすことができなかった……。ここで君が僕に力を貸してくれなければ、僕は永遠にこれを完成させることはできなかっただろう」 「そういってもらえると、うれしいわ」  女は、聖母のような微笑みを浮かべる。 「もともとは組織の人間に命じられて始めた研究だけど、こうして本物のエリクサーを手にした以上、もう組織に戻る理由はない……。もう誰かに命令されるばかりの人生なんてまっぴらだ。僕は……いや、僕と君は、このエリクサーの力を使って、これからこの世界の王になるんだよっ!」  ロナークはそう叫ぶと、真紅の魔石を手にしたまま女の方へ近づいていき、彼女の肉感的な肢体を強く抱きしめようと腕を伸ばした――、が、 「そう簡単には、いかないみたいよ」  女は醒めた口調で呟くと、さりげなく青年の腕から逃れて窓際へと歩いていき、眼下の闇を見つめた。 「あなたは、すこし派手に動き過ぎたみたい……。ほら、教団の浄化師たちが、あなたの研究を嗅ぎつけてやってきたわ」 「なんだって!?」  ロナークも慌ててそばにやってきて窓から下を覗くと、城壁の外で揺れているいくつもの松明の灯が目に入る。 「くそ、くそっ! アイツら、どうしてここがわかったんだ!?」 「あなたは、そのエリクサーを完成させるために、これまで無数の人間の命を犠牲にしてきた。そのほとんどは、ならず者や犯罪者で、本来ならあまり目立たないはずだったけど……さすがに数が多すぎたのね」  ロナークは俯き、怯えた表情で歯噛みしていたが、しばらくすると、ふたたび顔をあげ、見る者の背筋を凍らせるような恐ろしい笑みを浮かべた。 「ふ、ふふ……こんなこともあろうかと、中庭には僕が造ったゴーレムを配置してあるんだ。それに……たとえそのゴーレムを倒されたとしても、エリクサーを手にした今の僕には、教団の浄化師なんて敵じゃないよ……」  青年は震える声でそういうと、下へ降りる階段の方へふらふらと歩き出した。 「さあ、いこう、ルシア……。僕がこのエリクサーの力で、アイツらをあっさり全滅させるところを、君にみせてあげるよ……」  女は、感情の読めぬ薄い笑みを口の端に浮かべると、落ち着き払った足取りで青年の後について歩きだした。  城の中庭に侵入した途端、四体のゴーレムを目にして、浄化師たちは足を止める。  よく見ると、ゴーレムの背後には、エリクサーと思しき魔石を手にした青年と、修道服を身に纏った謎の女。  最近この地方で発生していた大量の失踪事件について調査している途中で、この古城に辿り着いたのだが――どうやら、見事にビンゴを引き当てたようだ。 「いけ、ゴーレムたち! 教団の浄化師どもを皆殺しにしろ!」  青年の命令に従って、ゴーレムたちがゆっくりと前進を開始する。  覚悟を決めた浄化師たちは、強大な敵を迎え討つ――。
夏色のプラージュ!
とても簡単|すべて

帰還 2018-08-19

参加人数 1/1人 oz GM
ベレニーチェ海岸に存在するホテル『プラージュ』は、貴族階級層の人間が利用するような、高級リゾートホテルです。 非日常を演出したホテルルームや、豪華な食事、地中海を一望できるオーシャンビューなどが魅力となっています。 ※【ダンジョンキャンペーン】『夏色のプラージュ!』対象エピソードです。
バイバイ、運命
とても簡単|すべて

帰還 2018-08-17

参加人数 8/8人 北野東眞 GM
「悪いな、今回は、ある……女性が里へと帰る。その道中の護衛だ」  ロリクは憂鬱な顔をし、言いづらそうに告げた。  その里というのは山を一つ越えた、一日でつく距離にある。それに目的地は特に危険と言われる場所でもないことに集まった浄化師たちは不思議な顔をする。 「その子は、エクソシストを辞めるんだ。  パートナーがベリアルに殺されて……いろいろとあってなんとか助かったんだが、彼女は新しいパートナーを得ることを拒絶した。  そのままエクソシストを辞めて、里に帰って死ぬまでの僅かな時間を過ごすと口にした」  それが、なにを意味するのかはわかるな、とロリクは視線で問うてきた。  浄化師は二人で一つの存在だ。  教団にとっては戦力となるものを欲して――しかし、当の喰人、祓魔人からしてみればもともとの性質である、魔力回路で必要以上に生産される魔力量を、正常に安定させるため――命にかかわる問題で契約を交わす。  ゆえに契約相手に恋人同士や気の置けない相手を選ぶことが多いのが常だ。  本来、浄化師になったものは死ぬまで、その任を解かれることはない。  理由としてはヨハネの使徒に狙われる性質を持つ危険性、教団の内部を知っていること――などの危険か挙げられる。 「今回護衛するアリラのパートナーも恋人だったんだ。その恋人はアリラをかばって死亡した……彼女は自分のせいだと悔いている。  そのとき彼女は精神的ショックで、教団を裏切ろうとした行動も見受けられ、危険と判断しているから本来は身柄を拘束し続けるんだが……。  ただもう彼女は……終わりを迎えようとしているんだ」  指令のために集まった浄化師たちは口を閉ざす。  そこへ。 「暗い雰囲気だが、どうした? 我が妻と、おお、かわいい子らか!」 「ユギル、お前調査の仕事は」  ロリクが驚いた顔をする。顔に狐面をつけて、口元だけ見えるユギルだ。  ――基本的に浄化師たちが赴く依頼の事前調査を引き受けている彼は、ロリクの浄化師としてのパートナーで、結婚相手だ。 「仕事は終えたので妻を迎えに来たんだが……ん、護衛の依頼か?  この娘はパートナーを失くした……ふむ。吾も、妻の前に契約を交わした相手を殺した過去がある。  浄化師は理想と平和のために、常に危険が付きまとう。いつ、なんどき、横にいる相手を失くすともわからん。  浄化師の運命とはかくも残酷よ。片割れがいなくては生きれない。まるで置いていかれることを嫌うように、な。  とはいえ、新たな未来も存在し、あがくことも出来る。……献身と依存は違う。愛にもさまざまな形がある、想う方法も。  浄化師とは二人で一つのように存在するが、所詮は自分の運命は自分でしか決められない。  この娘は自分で運命を決めたのだろうよ。哀れみも、同情もすべきではない」  淡々と語るユギルに、すぐにからからと笑い始めた。 「ふふふ、吾は今の妻と会えて幸福だ。愛することは実にすばらしい。  せっかくの指令、自分たちのことを改めて考えてみるといい。今のパートナーをどう思っているのかを、な。  この娘は決してお前たちではない、けれどお前たちかもしれない可能性もあるのだ。  妻よ、この娘の見届け役は吾がやろう。子らには護衛の任だけ与えておあげ」 「ユギル、いいのか」 「どうせ、仕事が一つ終わった。ここに集まった子らにはいい経験となるだろうが……見届け役は代わってやるくらいはしてやってもいいじゃろ。  なぁに、吾は何度かしたことがある。安心おし」 「お前がそれでいいなら、悪いが終わりの役は頼む……報酬は弾む。受けるか受けないかはお前たちが決めろ」  ロリクが静かに問いかける。  ここに集まった浄化師たちは傍らにいる相棒を見る。  迷うような、探るような、視線が合う。  ● ● ●  馬車の前に黒髪のほっそりとした女性が立っていた。  白いワンピース姿の彼女は麦藁帽子をかぶり、小さなトランクを手に浄化師たちに頭をさげた。 「今日は……護衛をありがとう。短い時間だけど、よろしく……お願いします」
愛を叶える花
普通|女x男

帰還 2018-08-17

参加人数 8/8人 黒浪 航 GM
「そ、それが……伝説にまで謳われた媚薬、マリスメアなのですねっ!?」  金髪碧眼の少女は、浄化師たちが手にしている紫色の花を見つめて、歓喜の声をあげた。  ここは、アークソサエティの主要都市のひとつであるルネサンスの中心地にたつ、とある大富豪の邸宅の一室だ。  まあ一室、といっても、中流家庭の住宅が三、四軒すっぽり入るほどの広さがあり、この巨大な部屋を自室の「ひとつ」にしている少女を前にして、浄化師たちは軽い眩暈をおぼえる。  金糸で美しい装飾を施した真紅のソファに腰掛けて目を輝かせている愛らしい少女の名は、アリス・バーランド。この宮殿と呼びたくなるような大豪邸の主、ドレモ・バーランドの一人娘だ。  浄化師たちは今回、このアリスの、「伝説の媚薬マリスメアが欲しい、絶対欲しい! 今すぐ!」という、純度100パーセントのワガママな依頼を受け、はるばるアールプリス山脈の険しい断崖まで出掛けて、件の花をせっせと採集してきたのだ。 「ああっ! なんとお礼をいったらいいのでしょう。本当に御苦労様でした。あなた方には、心より感謝いたします」  アリスは、長い旅から帰還した浄化師たちに、真摯な態度で礼を述べた。  なるほど、ワガママではあるが、案外、根はいい子なのかもしれない。  すっかりくたびれた浄化師たちは、マリスメアの花をアリスに渡したらすぐに帰るつもりでいたのだが、少女はこの時、まったく予想外のことを口にした。 「じつは……あなた方にもうひとつ、お願いがあるのです。その花、伝説の媚薬の効果を、ぜひとも今ここでわたくしに見せて欲しいのです」 「……………!」  浄化師たちは驚き、互いに顔を見合わせる。 「マリスメアの花を口に含むと、その瞬間、眼の前にたっている異性がどうしようもなく魅力的に見え、相手の全てが欲しくて欲しくてたまらなくなる、といわれています……。都合よく、あなた方は皆男女でペアになっていますし……ここで、わたしに、媚薬の効果を実演してみせてはくれませんか? もちろん、その分仕事の報酬はしっかり上乗せさせてもらいます」 「…………」  浄化師たちは、小さくため息をついたあと、頷く。  まあ、伝説の媚薬などといったところで、この手のモノの大部分はインチキで、効果など知れたもの、むしろまったく効果がない方が普通だ。依頼主がそれで満足するのなら、適当に余興に付き合ってやっても損はない。  この場にいる浄化師の半分が、多少気まずさを覚えつつパートナーの顔を見つめながら紫色の花弁を口に含む。 「………………」  ほら、やっぱり何も起こらない……。  浄化師たちが、醒めた表情で肩の力を抜いたとき――、 「………………!?」  突然、媚薬を口にした浄化師たちに異変が起こった。  頬を紅く染め、眼を見開き、パートナーを恍惚の表情で見つめて荒い息を吐きながら、ふらり、ふらりと近づいていく。  オイオイオイ……どうやら、この『伝説の媚薬』とやらの効果は、本物であったらしい。 「っ…………」  相棒の豹変ぶりに、残りの浄化師たちが戸惑いの表情を浮かべたとき、 「あら、たいへん……」  アリスが首を傾げて、困ったような声を出した。  彼女の手の中には、開かれた一冊の本。タイトルは『決定版 世界の秘薬』。 「どうしましょう。マリスメアはとても強い効果を持つので、媚薬として使用するときはその匂いを相手に嗅がせるだけで十分だとあります。間違っても、花弁を口に入れたりしてはならない、と……。もし、花そのものを口に入れてしまうと、効果が強すぎて、脈拍が激しく上昇し、その者はやがて死に至る、と書いてあります……」 「…………っ!?」  浄化師たちは驚愕し、絶望する――自分の相棒が、もうすぐ、死ぬ……。  しかし、その時、アリスが本のページをめくって、明るい声をあげた。 「……あ、でも、花を口に入れた人間をどうにかして正気に戻すことができたら、媚薬の効果も消えて、命が助かる、と書いてありますね!」  少女の言葉に、浄化師たちの瞳が希望の光に輝く。  なんとかしてパートナーを正気に戻し、その命を救わねばならない――。  浄化師たちの困難な挑戦がはじまった。
ふしぎなおくすり
簡単|すべて

帰還 2018-08-17

参加人数 2/8人 春川ミナ GM
「ふはははは! ついに、ついにできたぞ! ポルテ君!」 「フォルテです。何が出来たんですか?」  ここは教皇国家アークソサエティ、首都エルドラド。薔薇十字教団本部病棟地下2階第一研究室。  女性の哄笑が響き渡った時に周りの研究員達の注目を集めたが、それがいつもの人間であると分かるとすぐにそれぞれの研究に戻った。 「聞いてくれ、トルテ君! この薬は対象の精神に作用し、沈静させる効果と高揚させる効果、二つの側面を持っているんだ」 「フォルテです。それは凄いと思いますが……そんな事可能なんですか?」  助手のフォルテは彼女が手に持っている試験管に入ったいかにも毒々しい液体を胡散臭げに見つめた。 「あぁ、この薬はだね。生物が持つ精神の平均値を判断してくれるものなんだ。つまり、怒っている者には沈静させて、やる気が出ない者にはやる気を起こすという風にね」  得意気に試験管を振り回しながら歌うように語る。  この人物こそ奇才と呼ばれる薬学者であり、教団員でもあるクラレット・オリンズだ。最も悪評の方が多いが……。  曰く、楽しい薬を作る者。薬学狂い、略してヤクルイ。実験の墓標、教団の闇鍋などなど……。 「それって副作用がかなり多いのでは? その説明を聞く限り、民間で伝わっていた脳の手術を彷彿とさせますが」  フォルテはクラレットの手で踊る試験管の中の液体から机の上にある書類を守るように脇にどかしながら聞いた。 「良い所に目を付けたね、ソルテ君。確かに脳の手術は数百年前から存在している。それについては私は特に否定も肯定もしない。だが、凶暴性や無気力、両方の感情が劇的に高まる例もあるし、感情が全く平坦になった例もある。これらの実験結果から凡そ治療とは言えないのではないかと思ったんだ」 「……フォルテです。では開発された薬は治療が出来ると?」 「そうだね。まずは見た方が早いか。ここに二匹のモルモット、セサミとサラミが居る。この子達は恋人同士だが、わざと引き離して反応を見るとしよう。ん? 七夕? 私は天邪鬼でね、私が好きな物の名前を付けているんだ」  クククと笑いながらクラレットは檻に入っている一匹のモルモットを抱き上げると、隣の檻に入れて柵を閉めてしまった。  当然、離れ離れになったモルモット達は物悲しい声でキューキューと鳴き始める。 「そして一匹に興奮剤を与えると……」  クラレットは液体が入った針の無い小さな注射器を手に取ると、片方のモルモットの口に運んだ。最初警戒していたが、糖蜜が入っているのだろう。甘い香りに誘われる様に飲み始めた。 「モルモットは大切に扱ってください。食用にする地方もあるとは聞きますが、愛玩動物としての地位も確立しているので」 「解っているよ。何、無体な事はしないさ。マウスでの実験は成功だったんだから」  フォルテに苦言を呈されるが、特に気にした風も無く返すクラレット。  やがて直ぐに興奮剤を与えられたモルモットに変化が起こった。檻に自分の体を当てて何とか破ろうとし、ガシャリガシャリと耳障りな音が研究室に響き渡る。  その一方で引き離されたモルモットはキーキーと心配する様に鳴いている。 「……少し可哀想ですが」 「そうだね。じゃあこの薬を経口投与してみよう。本来なら皮下注射にした方が良いかもしれないが、安全の為だね」  フォルテの声に悪びれる様子も無く、クラレットは暴れるモルモットを押さえつけて怪しい液体の入った針の無い注射器を口に運ぶ。  すると先程まで暴れていたのが嘘のように大人しくなると、再び檻にすがって物悲しい声で鳴き始めた。 「とりあえず元の檻に戻しますね。……ほぉら、ごめんな。恋人と離れ離れにさせてしまって」  フォルテはモルモットをヒョイと抱き上げると元の檻に戻してやる。すぐに一匹が寄り添って薬を投与されたモルモットを心配するように、においを嗅いでいた。 「凄いですね。今のがこの薬の効果ですか?」 「あぁ、そうだね。ただ、一つだけ問題があるんだ」  感心するフォルテだったが、珍しく歯切れの悪いクラレットの言葉に何か裏があるのではないかと勘繰ってしまう。 「……実はまだ人間では試した事が無くてね。これから治験を募集しようかと思っているところなんだ。できれば健康体であり、色々な種族を集めたいね」 「そうなると、ある程度の報酬が必要ですね」  フォルテはポケットからメモを取り出すと、幾つか書き込む。 「流石はカルテ君。キミ、良いお嫁さんになるよ!」  クラレットにパシパシと肩を叩かれ、嫌そうな顔をするフォルテだったが、我慢のできない文言があったので訂正をする。 「……僕の名前はフォルテです。それから女顔ですが、男です」  その言葉に何かを閃いたクラレット。瞳の奥に輝きが見て取れる。こういう時は碌な事が無いのでフォルテは研究室から出て行こうとするが、肩を強い力で掴まれた。不機嫌さを隠す事も無く、振り向いて肩に置かれた手をそっと外す。 「何ですか」 「良いアイディアを思いついたんだ、ピアノ君。女の子の身体になれる薬って興味ないかな?」  ニイと笑みを深くしたクラレットにフォルテは溜息を一つ吐く。 「……わざとやっているでしょう。僕の名前間違えるの。それから僕はあなたの玩具じゃありませんよ」 「うむ、ばれていたか。だが、そういう事は私の家に借金を返してから言うべきだね」 「ハァ……」  フォルテ・スロウリッド、とある没落貴族の三男でクラレットの家にほぼ金で買われたと言っても過言では無い。が、彼女の近くに居られる事でその状況に満足している自分に今日何度目かの溜息を吐くのだった。
ジェルモンスター大量発生の原因を調査せよ
普通|すべて

帰還 2018-08-15

参加人数 5/8人 oz GM
 冒険者ギルド「シエスタ」は鑑定士や情報屋、酒場の店主が同業者組合として組織化されたことが始まりだ。今では冒険者が集う酒場兼情報交換の場として、冒険者に依頼書を出したり、発見した財宝の換金をしたりしている。  冒険者にとっては欠かせない場所。  ここの酒場もまた冒険者ギルドに加盟している店の一つだ。  リュミエールストリートの片隅にぽつんと佇む酒場。仕事に疲れた人々を暖かくも賑やかに迎えてくれる。酒場は濃密な夜の気配を含んだように適度に暗く、乱雑とした空気が漂う。  店長であるヨルンダ・ビュランは世の中の酸いも甘い噛み分けたといった気っ風のいい妙齢の女性である。酒とつまみ以外には拘らないあっさりとしたヨルンダの性格が店の雰囲気に投影されているように、どんな人間でも受け入れるような懐深さがあった。  ここの酒場は冒険者の常連客も多く、無事帰ってこられたことを喜び、酒で疲れを癒す人々で詰め合っていた。酔っぱらいの笑い声や徒労に終わった依頼の愚痴で今日も酒場は騒がしい。  今夜もヨルンダは忙しなくカウンター内で働きながら、客の話を快闊に受け止める。その日は珍しい顔がバーカウンターの止まり木に腰を下ろした。 「おや、ランス。アンタいつこっちに戻ったんだい?」 「ついさっきだ」  ランスと呼ばれた冒険者は憮然とした顔で返事する。この男は自分の名前が嫌いだ。自分のような凡庸な男にランスロットのような仰々しい名前は似合わないと常々愚痴っている程だ。 「どうせ用事を済ませたら出て行くつもりだろ?」 「……お生憎様、暫くここに滞在するつもりだ」  男は肩をすくめる。思わぬ返答にヨルンダが瞠目する。 「アンタはソレイユが根城だろう。何かあったのかい?」 「樹梢湖の件だよ。あのジェルモンスターが大量発生してるとこだ」 「ああ……そういえばアンタが発見者だったっけ。本当に巻き込まれやすい奴だねえ、アンタは」 「……今回は巻き込まれてねえ」  ヨルンダは腑に落ちたように頷く。男は言い訳するように呟くと、やけ酒を煽る。  冒険者ギルドは横の繋がりが強い。ソレイユにある樹梢湖での異常事態の情報は冒険者ギルドでも噂になっていた。  そう強いものもおらず、新人でも行ける樹梢湖は冒険者ギルドにとっても貴重なダンジョンだ。  さらに樹梢湖では水気の魔結晶が発見されやすい。元々水気の魔力が強く、蓄積しやすい土地の為、湖の底に魔結晶ができやすいのだ。  魔結晶が得られるというのは、冒険者ギルドにとっても得られる利益が大きい。それは冒険者にとってもだ。売れば金になる上に、魔術をかじっているなら魔術の威力を増幅できるため、いざというとき持っておく者も多い。  魔結晶は魔力が結晶化したもののことを指す。魔術に関するあらゆる分野で重宝される宝石の為、魔術師だけじゃなく様々な人間が買い取っていく。  魔結晶は六つの属性に分かれており、形状と魔力量から等級がつけられている。  等級が高ければ高いほど高値で取り引きされ、内包された魔力は濃縮されたものほど、形状も美しい宝石のような輝きを放つ。  慣れた者でないと湖の底に魔結晶を取りに行くのは無理だが、新人に場数を踏ませるのにはいいダンジョンだった。  ジェルモンスターを倒すのは簡単だが、消滅させるのは少々手こずる。  核である魔結晶を壊さない限り、消滅したように見えてまだ生きている。実にしぶとい。  核である魔結晶を破壊しないと、水気の魔力と水分を長い時間をかけ、吸収することで、水の塊となり、ジェルモンスターとして戻ってくる。  ジェルモンスターが消滅するには周辺の水が全てなくなってしまうか、核となる魔結晶を破壊されるかしかない。  だが、ジェルモンスターの核である魔結晶は水と同化していてエレメンツの「魔力探知」などでなければ、見つけるのは容易ではない。  だからこそ、水気の魔力で溢れる樹梢湖はジェルモンスターにとって生息しやすい場なのだ。それでも今回の復活の早さは異常といえた。 「魔結晶が手には入らないのはアンタとしても痛手ってことかい」 「……そうだな。新人はジェルモンスターからは屑結晶しか手には入らねえって言うけどな。俺にとってはいい穴場だ。運が良けりゃあシーズエレメントに出くわすこともあるしな」  ジェルモンスターからも魔結晶を得られるが、小さく質も悪いので流通されることはない。  逆にシーズエレメントからは等級の高い魔結晶が得られる。シーズエレメントは透き通った青色のクリスタルのような生物で、冒険者からは宝箱扱いされている。 「そういやあの時、いつもより湖に魔力が集まってた気が……いってっ! 何すんだ!?」  ヨルンダが冒険者の頭を叩く。 「そういう情報は早くお言い! だから、アンタはうだつが上がらないんだよ!」 「……そんなに重要なことか、これ?」 「勘は鋭いくせに、もう少し頭を働かせな。そうすりゃ、もっと上にいけるだろうにねえ……」  残念なものを見る視線から気まずげに顔を逸らし冒険者の男は頭を掻く。 「これ以上、上を目指す気はないんでね。俺は食い扶持が稼げりゃ、それでいい」 「……まっ、アンタはそれでいいんだろうさ。冒険者として慎重なのは悪いことでじゃあない。命あっての物種だ。慎重すぎるほど慎重でいい」 「俺が新人の時によく聞かせてたなあんた……懐かしい」 「アタシは、アンタの引き際を見抜く眼は信頼してるよ。だから、今樹梢湖はマズいことになってんだろうさ」  冒険者は利に敏い。目の前の男のように人助けをするお人好しもいないわけではないが、儲けのでない仕事はしたがらない。  上から指令を受けたらこなさなければならない浄化師とは違い、冒険者は誰の命令にも従わない。自由である反面、衣食住が保証されることはない。一旦怪我をしたら、再起するのにも金と時間がかかる。全ては運と己の実力次第。 「このことはアタシから報告しとくよ。教団にも情報が行くだろうねえ……」 「助かる。怒られんのは御免だからな。でも、あんた冒険者ギルドに情報を売るつもりだろ」 「何聞いてんだい、報告だよ。売るなんて真似はしないさ、信頼を買うだけだよ」 「ものは言いようだな」  ヨルンダがにやりと悪ガキのような笑みを浮かべると、冒険者は苦笑いする。 「それにしても全部、教団任せか?」 「そうだよ、治安維持は向こうの仕事だ。ダンジョンは誰のものでもないからねえ……」  含みのある笑みを浮かべるヨルンダに冒険者は呆れた顔をする。  浄化師のみしか行けない封印の魔宮などのダンジョンとは違い、樹梢湖はどこの所有のものではない。 「溢れ出したジェルモンスターで近隣の村からも被害が出てるって話だしな……」 「そっちは自警団が対処しているようだよ。近々原因を探るために教団の方から調査団が派遣されるそうさ」  冒険者が殆ど常連だけあってさすが耳聡いと男は感心する。 「……どんなに弱いやつだって徒党を組めば厄介なものさ」  独りごちるヨルンダに男は感じ入るものがあったのか深く相槌を打つ。  ヨルンダは他の客に呼ばれ話は中断し、男はピクルスをつまみながら酒を存分に味わい始める。酒場の夜はこれからなのだ。
正義
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帰還 2018-08-15

参加人数 7/8人 北野東眞 GM
 つい最近のことだ。  教皇国家アークソサエティ薔薇十字教団本部に身柄を拘束された、終焉の夜明け団に属しているジルド・タッツー・トリデカ、およびマダム・タッツーの極刑が決定した。  彼らはアールプリス山脈の根本にある小さな村に住んでいた村人――おおよそ20名を殺害。  浄化師により調査の末、捕えられた後、危険である報告のもと詰問を行い、すべてにおいて黙秘を貫いた。  マダム・タッツーの手がけたと思われる、すべてのマドールチェは速やかに討伐が行われた。  正義は遂行されなくてはいけない。  今回、マダム・タッツー、ジルド・タッツー・トリデカの極刑における、それを阻止しようとする魔術師の襲撃などの警戒をして、教団近辺を対象とした警備を行う指令が発令された。 ● ● ● 「マダム・タッツー……ごめんなさい。俺が我儘を口にしたから、俺が、アリラを……救いたいと思ったから……浄化師たちとの闘いを途中放棄してしまったから。けど、彼らのことを殺したくないとも俺は思ったから……本物になれなくて、弱いからあなたからこんな目に合わせてしまって……あなたは俺に涙もくれたんですね。……ごめんなさい。ごめんなさい、マダム……母さん」  ジルド・タッツー・トリデカは泣きながらそれだけ告げると、極刑を受けた。  彼の罪は裁かれるべきものだ。 ● ● ●  正義は遂行されなくてはいけない。  薔薇十字教団――浄化師たちと共に、世界の救済を遂行する存在だ。
向日葵は秘密を求める
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帰還 2018-08-14

参加人数 8/8人 あいきとうか GM
 それはひと夏の怪奇譚。  ソレイユ地区、チェルシー植物園から少し離れたところに、お化けヒマワリは咲いている。見た目は普通にヒマワリだ。だいたい百メートル四方くらいの範囲に、二メートル前後のヒマワリが密集して咲いている。その一画を、近隣の人々はお化けヒマワリと呼ぶ。  いつ咲き始めたのか。誰が管理しているのか。誰も知らない。  ただ、ひとつ。実に夏らしく、薄ら寒くなるような噂が広まっていた。  曰く。  お化けヒマワリに入ると、出てこられない。  おかしな話だ。ヒマワリは百メートル四方にしか咲いていない。確かに背は高いが、まっすぐ歩けばすぐに出られてしまうだろう。それなのに、出られない。  上から覗きこめばいい?  残念なことに、どれほど背伸びをしても、どれほど背の高い人でも、お化けヒマワリに入るとヒマワリより高い位置に顔を持ってくることはできない。  もっとも、お化けヒマワリに捕まるには条件がある。二人で入ること。ひとりだったら大丈夫。  二人で入ると、いつの間にかひとりきりになっている。これがお化けヒマワリに捕まった証。  すぐそばにいた人の声は聞こえず、姿は見えない。ヒマワリの中、ひとりでさ迷い歩くことになる。  脱出?  簡単だとも。二人で入って、どちらかが秘密を告白すればいい。どのような内容でも構わない。昨日のお菓子、こっそり食べたのは私です、とか。もちろんもっと重い内容でもいい。  相手が知らないことを口に出す、というのが大切なのだ。  以上がお化けヒマワリの噂であるわけだが。  さて、これが真実なのかどうか。ぜひ確かめてきてほしい。  夏が暮れて花が枯れれば自然と掻き消える怪奇譚の真相を、夏の最中に暴くことはきっとできないだろうけれど。
傷ついた日も
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帰還 2018-08-14

参加人数 8/8人 shui GM
 暑い夏。僕は阿鼻叫喚を聞いていた。  もう少し具体的に言うと、怪我をしたパートナーを迎えに病棟を訪れていた。  教団の医療機関――病棟は、様々な怪我人が運ばれてくる場所だ。  小さな怪我から、戦闘での重傷まで。対応できる治療は幅広い。  多くの医療スタッフがせわしなく、患者の対応に追われていのはいつものこと。  浄化師であれば遅かれ早かれ、一度は来る所と言えた。  その中の一角から、聞きなれた叫び声。 「いやぁああああ! やめてぇええ!」 「注射はいやだぁああああ!!」 「帰る、かえるぅ……ぎゃぁあああああ!」  僕のパートナーの声だ。  結構な怪我であったはずだけれど、思っていたよりは無事らしい。  治療室の壁越しにでも、彼女のいつも通りの声がはっきり聞こえる。ちょっと元気すぎるほどに。  ああ、無事ならよかった。指令で子供を庇って怪我をした時はどうなる事かと思ったけど。  ……とはいえ。医療機関ではお静かに。 「僕の連れが、すみません……」  待合室で彼女の治療処置を待つ僕は、冷たい目線をひやりと感じていた。  けど。それ以上に、君を待つ心は温かい。 「お待ちのパートナーさん。怪我の処置が終わりましたから、今日のうちに帰れますよ」  と、医療スタッフが教えてくれた。胸を撫で下ろすと周囲にも似たような人たちが居た事に気がついた。  恐らく新米の浄化師だろうか。  僕と同じで、パートナーの治療を待っているように見える。  最近は海でひと悶着あったらしいし、そうでなくても浄化師が怪我することは珍しくはない。  自ら来たのか、パートナーに連行されたのか……はたまた、僕のパートナーのようにナイチンゲール・アスクラピアに見つかって連行されたのかはわからないけど。  もうじき治療室の扉が開く。  大嫌いな注射を乗り越えたパートナーはどんな顔をしているだろうか。  幸い、今日は休暇をとっている。頑張った彼女をねぎらって、甘やかすのも良いかもしれない。  そういえば、街にオムライスとパフェが美味しいレストランが出来たと言っていたっけ。連れて行ったら喜んでくれるだろうか。  そして周りの浄化師達は、どう過ごすのだろうか。  パートナーの傍にいるのも、いないのも、きっと浄化師ごとに違うのだろう。  けど、出来る事ならば。  ただでさえパートナーが怪我するなんて不幸があったんだ。  これからの時間くらい、互いに良い日になったらいいな、とこっそり思っている。  
背後にご用心
簡単|すべて

帰還 2018-08-13

参加人数 4/8人 茸 GM
 ソレイユに流れる綺麗な小川。その源泉となる滝が、この深く生い茂る緑の先にある。 「さすがに夜は暗くて不気味ね……」 「普段は観光地として賑わっている分、余計そう感じるのかもしれないな」  男女のペアがぴったり寄り添い、ランプ一つの灯りだけを頼りに徐々に深くなる森の中をゆっくり進む……。 「――キャっ!」 「っ……大丈夫?」 「え、ええ……滑っただけみたい」 「そ、そうか……。この辺りは滑りやすくなっているから気をつけて」  不安げに腕を絡めて来る彼女の体をしっかり支えて歩くが、正直この状況は怖い。  辺りは真っ暗、自分達以外人っ子一人居ない所為か異様に静かで……。 「ねぇ……今、何か聞こえなかった?」 「!? な、何かって……?」  言葉を切れば、ザワザワと風に揺れる木の葉の音さえやたらと耳につき、要らぬ恐怖心を煽られる。 「………た、ただの風だろ……」 「そう、かなぁ? 後ろから何か聞こえた気がしたんだけど……」 「っ! 多分、次のペアが追いついてきたんだろ」  後ろを振り返ろうとする彼女の手を強引に掴み、少しペースを上げて先へ進む。 「もしかして、怖がってる?」 「俺が!?……まさかっ、肝試しなんて子供のお遊びだぞ」 「その割には……――ひゃ!」 「うわっ!? 今度は何だっ?」 「そこに白い影が……っ」 「はあ!? ――ど、どこだよ……ッ?」 「ほら! あそこに!」 「――ヒっ!」 「………あ、なぁんだ……ただの布切れじゃない」  ランプを近付けて確認すると、長く伸びた木の枝に、ゆらゆらと夜風に揺れる白い布。  仕掛け人がわざと括りつけたドッキリだ。 「こういう単純なのがやたら怖かったりするのよね。さっきの青白い火の玉だって、仕掛け人のおじさんが棒と紐で操っていただけだったし」 「…………」 「ちょっと、大丈夫?」  彼女に顔を覗き込まれ、漸く自分が尻餅をついていたことに気付いた。 「ハァ……恥ずかしいところを見られたな」  今更格好付けても仕方がない。  立ち上がってズボンについた土をぽんぽんと掃い苦笑いを零す。 「怖い事が恥ずかしいなんて思わないわよ。男でも女でも、怖いものは怖いもの」  気にしていないどころか受け入れてくれる彼女に安堵する。 「……そうだな。ありがとう」 「それじゃあ急ぎましょう? 滝の水を汲んだらゴールは直ぐよ!」  途中、幾度となく悲鳴を上げては「吃驚した~」と笑い合う二人。  そして漸く、高所から落ちる水の音が聞こえてきた。  ルール通りに水筒に滝の水を汲み、帰りは別の道を通って戻る――。 「っ!」  不意に彼女がピタッと立ち止まった。 「どうした?」 「今、何か聞こえたのよ。何かを引きずるような音が……」 「ま、まさかだろ……?」  恐る恐る振り返るが、視線の先は闇に閉ざされていて何も見えない。 「気のせいじゃないのか?」 「そんなことないわ。だって、来る時に聞こえた音と似てるもの」 「きっと仕掛け人が俺たちを怖がらせようとしてるだけだよ。ゴールは直ぐそこだ。急ごう」  また歩き出して数メートル進んだ時。  ――ザザ……ザザ……。 「な、何の音だっ?」 「ね! 聞こえたでしょう? この音よ、私が聞いたのは!」  兎に角急ごうと彼女の手を引いて走り出すが……。  ――ザザ……ザザザザ……。  明らかに背後の音も速度を上げたようだった。  そして、何かに肩をガシッと掴まれ、―――。 「っ!!!!??」 「きゃぁぁああああ!!」  ――翌日。  怖すぎる肝試しだという噂が村中に知れ渡り、それは教団にまで届けられたのだった――……。
あつい、だるい、だからすずみたい
とても簡単|すべて

帰還 2018-08-11

参加人数 3/8人 北野東眞 GM
「あっちーぃ」  指令受付口のロリクが顔をしかめた。汗がだらだらと流れている。  確かに、とても暑い。  だって、夏だもの。  あつい。  だるい。  やる気がでない。 「こんなのだとやる気にもならないな」  まったくです。 「ということで仕事だ」  ……言ってることと、やっていることがわりとズレてませんか。ロリクさん! 「話は最後まで聞け! 今回、お前たちに回す仕事はヴァン・ブリーズの巡回だ」  汗をだらだらかきながらロリクがにやりと笑った。 「ヴァン・ブリーズは中心部から北部にある部分で、市民階級が中心でわりと穏やかな土地だ。  ちなみに海に面しているから遊覧船や水族館などのレジャー施設、海産物が比較的多い。  まぁ、そのぶん、この季節には観光客も多いから注意はいるが、巡回中に観光の一つをしたり涼んだりしてもいいぞ~。  これは俺からのお前らのサービスだ。暑さでやる気もおきんだろう?  少し涼んで、リフレッシュしてこい。そしたらまたばりばり働け!」  にこりとロリクは笑って言ってくれた。
たとえば、君の見ている世界
簡単|すべて

帰還 2018-08-08

参加人数 6/8人 留菜マナ GM
 ピクシー。  それは、人間のように森に集落を作って暮らしている種族である。  人里に現れて、悪戯をしたり人間と遊んだりと人懐っこい個体が多い。 「ふわふわ~ひらひら~。今日は、誰と遊んでもらおうかな?」  カノンも、そんな悪戯好きなピクシーの一人だ。  鍾乳洞の奥で、今日も人間に悪戯をしようと企んでいた。 「……困ったな」 「……はい」  その日、教団である噂を聞いたあなたとパートナーは、鍾乳洞内で途方に暮れていた。  ここは、教皇国家アークソサエティの南部に位置する大都市ルネサンスに存在するクローネ鍾乳洞。  最近、クローネ鍾乳洞の奥で不思議な現象が起きている。  その話の真相を確かめるためにクローネ鍾乳洞を訪れたあなたとパートナーは、鍾乳洞の奥で蒼く光る鍾乳石を発見した。 「何かしら?」  パートナーがそうつぶやいて、鍾乳石に触れたその時である。  ポン、とクラッカーでも鳴らしたような、どこか可愛らしい爆発音が洞窟内に響いた。  同時に二人の周りが霧に包まれる。 (何が起こったんだ?)  緊張で研ぎ澄まされた耳を、唐突に弾ける声が打つ。 「えっ? 何これ?」  それは薄暗い洞窟には不釣り合いで、可愛らしさを感じさせる声だった。  聞き覚えのあるその声に、あなたは思わず、目を見開く。  そこには、パートナーが困り果てたようにおろおろしている。  しかも、パートナーには何故か、妖精のような羽が生えていた。  ――いや、パートナーだけではなかった。  自分にも、同じように羽が生えている。  しかも、まるでピクシーの大きさになってしまったように、先程までの鍾乳洞が広く感じた。  なんだ、なんだ。  何なんだ。  これは――。  驚きのあまり、悲鳴を上げることもできず、あなたは糸が切れた操り人形のようにその場に崩れ落ちるしかできなかった。 「浄化師さん達だ~」  そんな彼らの様子を、カノンが楽しそうに見つめていた。  こみ上げてくる喜びを抑えきれず、カノンはにんまりとほくそ笑む。 「浄化師さん達もまさか、これが私の仕業とは思わないわよね」 「君の仕業なのか?」  その時、やや冷めた声が上から聞こえてきた。  カノンが恐る恐る顔を上げると、カノンのいる場所まで飛んできたあなたとパートナーが目の前に降りてきた。 「あっ、ばれちゃった……」  決まりの悪さを堪えるように、カノンがおろおろとしながら口元に手を当てる。 「どうして、こんなことをしたんだ?」 「それは――」  痛いところを突かれて、カノンは言葉を詰まらせる。 「悪戯してごめんなさい! でもでも、私、友達がいなくて、誰かと一緒に遊んでほしかったの!」  あなた達が態度で疑問を表明していると、カノンは手を合わせて謝罪した。  そして、鍾乳洞内を指し示す。 「だから、その……浄化師さん達、お願いします! 私と一緒に遊んで下さい!」 「なっ!」 「ええっ!」  さらりと告げられたカノンの衝撃発言に、あなた達は輪をかけて動揺した。  どうやら、しばらくは、このままの状態が続くようだ。  しかもその間、カノンと一緒に遊ばないといけないらしい――。
いぶんかにふれる ニホンだよ!
とても簡単|すべて

帰還 2018-08-07

参加人数 5/8人 北野東眞 GM
「お前たちは東方島国ニホンの文化を知っているか?」  唐突に指令受付口でロリクが聞いてきた。 「ロスト・アモールが開戦直前から鎖国していたが、それを解いて浄化師がやってきたり、支部ができたりしたんで、まだ完全にわからないことも多いんだよ。  エド? キョウトとか、セップク? ハラキリ? テンプラはおいしいらしい。なんでも高熱でいろんなものをあげるとか……怖い文化だな」  ロリクはとりあえず、ニホンの知っている単語をぽんぽんとあげていく。彼自身は異文化に大変興味があるらしく、あれこれと手をつかって調べているらしい。 「ん、ああ、いきなり、その話題を出したのは……ヴァン・ブリーズにジンジャがあるそうなんだ!」  ヴァン・ブリーズは中心部から北部に位置し、海面よりも低い土地に存在する地区だ。  海に面しているため、海産物が比較的多く存在している。 「いや、なんでも旅好きの貴族どもがニホンの神事を執り行う社をたてようなんてほざいてたてたらしい。  現在はハツモウデ、擬似結婚式とか体験できる場所らしい。巫女服や十二単などの貸衣装もあるらしくてなぁ……。  ただこう、見様見真似のせいで間違っているところもわりとあるらしい」  ロリクは苦笑いをこぼした。 「で、お前たちにそのジンジャの一つに行ってきてほしいんだ、ジンジャらしいイベントを体験してきてほしいんだよ。  実は……今回の依頼のジンジャをたてた貴族っていうのが俺のダチでな。ニホンの文化をもっと広めたいとかのたまわってな。  確か、浄化師のなかにはニホンの者もいるだろうから、よろしくーとか言い始めて……とりあえずジンジャのイベントを楽しんでくるといい。  もしイベントでこういうのがあればいいと思えばまとめて出してくれ。あとテンプラ……油であげる拷問なのか本当に……お土産よろしく」
にゃんにゃんにゃあん!
普通|すべて

帰還 2018-08-05

参加人数 6/8人 北野東眞 GM
「お前ら、猫は好きか?」  指令書の発行を行うロリクはいつものいかめしい顔をでれでれに溶かしてそんなこと聞いてきた。  え、やだ、なに、これ、こわい。  そう思った浄化師たちの返事なんぞ、彼は聞かない。 「そうか、そうか、好きか? 俺も好きだ。仕事が忙しすぎてついうっかりネコカフェに通えなくて軽くストレスフル過ぎて暴れそうになるくらいに」  はい? 「ということで! 今回は! 猫だ!」  はい?  意味がわからない。そう言おうとした瞬間、  にゃあん!  猫である。  真っ黒い毛の猫がロリクの横に現れる。黒猫はにゃんと鳴いた。――しっかし、このネコ。でかい。だいたい二頭身くらいあるデブネコ。それがいきなり現れてびっくりした。 「にゃんこはにゃんこなのだー! えらいのだぞ! えっへん」  しゃべった。  ネコといわれる種族は九つの命を持っているといわれ、四つ目以降からはしゃべることができる……とは聞いた。聞いたが……。  でっぷりとした黒猫はえっへんとしゃべりだす。 「くろにゃんこといいますにゃあ。今回はおまえたちの力、にゃあん! ツルツルどもはじめまし」 「ああん、もふもふもふもふもふ」 「やめろにゃあ、わぁん、なんだなゃあ、このツルツル! おまえたち、助けるにゃあ!」  仕事に疲れたロリクがご乱心してる!  まぁ、そんなこんなで。 「実は……仲間を探してほしいにゃあ。にゃんこの仲間、何人かいるにゃあ。けど、最近、仲間の姿が見なくなったにゃあ」  くろにゃんこがめそめそと、ひげを震わせて、大きな目から涙をこぼして鳴いている。よほどに仲間のことが心配なのだろう。  そこに。 「許せないだろう! こんな人類の宝に対して! お前ら、全力で探して、この件にかかわっているだろう敵を特定、必ずや捕獲し、俺の前に引きずり出してこい。大丈夫だ。殺すようなことはしない。地獄は見せる。あ、もちろん、助けたにゃんこはもふるぞ! 連れてきてくれ」  あー、ロリクがご乱心してるー。  落ち着いて? 落ち着いて。ねぇ、落ち着こう? だめだ、こいつ、どうにかしないと。 「にゃんこたち、普段はリュミエールストリートにいるにゃん。夜のお店でごはんもらってるにゃん。そこを一緒に探してほしいにゃん。  うう、にゃんこの友達も、夜にいつも酒場にごはんをもらいにいったにゃん。いつもみたいにごはんをもらっていたのにゃ。  そしたら黒い服をきたツルツルと、お酒の匂いをさせたツルツルたちが三人いて路地から出てきて袋に仲間をつめたにゃあ! 今日までににゃんこの仲間、五匹ぐらいいなくなったにゃあ」  先ほどからツルツルといっているのは人間のことらしい。まぁ、ネコと違って毛がないもんなぁ、人間は。 「にゃんこの話を聞く限りだと、野良猫だけを狙った犯行のようだ。そのうえ、数匹ほどいなくなったという証言を信じるとしたらどこの建物のなかに捕えているんだろう」  もふもふもしながら、真面目な話をしないで、ロリク。あなた、疲れてるのよ。 「ああ、いやされるぅ~。……で、真面目な話、『四つ目以降の命』を持つネコは魔術道具の材料になる。話しから察して、終焉の夜明け団……または協力者もかかわっているみたいだな。  生物捕獲をするやつは、わりと戦闘能力が高い魔術師である可能性があるから、注意しろ。あー、もふもふもふもふ」 「もういいかげんにするにゃあ! こいつ、どうにかするにゃあ!」
受付嬢の夏休み
とても簡単|すべて

帰還 2018-08-04

参加人数 5/8人 久木 士 GM
 夏の大きな雲が、広い青空に浮かんでいる。手入れをされた冬服はクローゼットに仕舞い込まれて久しく、洗濯物は半日ですっかり乾くようになった。家々の窓からは物干し竿が突き出し、色とりどりのタオルやシャツをはためかせている。野山の緑は今を盛りと眩く輝き、強い日差しは石畳の白と影の黒との美しいコントラストをあちこちで生み出していた。  あなたたちが訪れたのは、ソレイユ地区アールプリス山脈のふもとにある小さな町。任務を終えたあなたたちは、久々の休暇を利用して遠出していた。町を歩いていると、街路樹で日差しを遮られたテラスのあるカフェを見つける。そこに空席があることを確認したあなたたちは、そのまま席に座って給仕を呼んだ。彼はライムを絞った水をあなたたちにサーブし、メニューを置いて店内へと戻る。穏やかな葉擦れと、近くの広場で演奏される音楽を聴きながら、あなたたちは注文を考える。穏やかな夏の一日だ。あなたたちはメニューから一旦顔を上げ、店の雰囲気を知るためにテラス席を眺めていると、この場所にあるはずのないものが視界に飛び込んできた。あなたたちは目をぱちくりさせ、互いに顔を見合わせてもう一度「それ」を見る。間違いなかった。はす向かいの席で一人座っているのは、普段司令部で受付をしている教団員だった。 「あー、浄化師さんですかあ。どうしてこんなところに……」  普段は溌剌としているはずの彼女が、今日は海岸に打ち上げられた海月のようにぐったりとしている。それはこちらの台詞だと言わんばかりに、あなたたちは同じ質問を返した。 「私は早めの夏休みです。司令部の人間が同じ時期に休暇に入ったら、皆さん困っちゃいますからね。でもそれが、どうしてこんなことに……」  彼女はすっかり温くなったレモネードのグラスを握って、遠くをぼんやりと眺めている。どうやら彼女には深刻な問題がありそうだった。しかし、彼女は何故休暇中に制服を着ているのだろう。彼女はそこまで仕事熱心なのだろうか。そう考えたあなたたちは、席を移動して彼女の話を聞くことにした。注文はとりあえず、シャーベットを二つにした。 「せっかくのお休み中にすいません。なんか邪魔しちゃったみたいですよね……」  休暇中の教団員は、追加のバニラアイスをスプーンの先でつつきながら話す。やはり今日の彼女は精彩を欠いている。少しずつ、しかし着実に溶けていく彼女のアイスを見ながら、あなたたちは考えた。給仕の男性がシャーベットを二皿運んでくると、あなたたちはそれを一口食べる。滑らかで程よく甘い氷が口から喉へするりと落ち、体を内側から冷やしてくれるようだった。 「先ほどもご説明しましたけど、私は休暇でここに来ていました。でも今、ちょっとした仕事に巻き込まれてまして……」  消え入るような声で彼女は言う。アイスクリームのてっぺんに乗ったチェリーが、皿の上にぼとりと落ちた。旅行先で仕事に巻き込まれるとは、これ以上ない災難と言っていい。休暇中と言った割には制服を着用していることについても、これで腑に落ちた。あなたたちは彼女に深く同情する。地元産の果物を使ったシャーベットは、後味がすっきりとしていておいしかった。次は店主こだわりのブレンドという触れ込みのアイスコーヒーでも頼むべきだろうか。あなたたちはメニューを開きつつ、彼女の話に耳を傾けた。 「実は今、町の周辺である生物が大量発生してるんです。カリュウモドキって言うんですけど」  彼女は鞄から一枚の紙を取り出し、あなたたちに見せる。そこには一般的に「ニセサラマンダー」と呼ばれる生物のスケッチと、その生物の特徴が印刷してあった。そういえばテラスの掲示板にも、同じ紙が貼られている。彼女の口にしたカリュウモドキというのは、正式な名前なのだろう。 「全ての生物には魔力回路があって、魔力(マナ)を生成する器官があることはもうご存知ですよね」  いつもの調子を少しだけ取り戻した彼女は、受付をしている時と変わらぬ口調で説明を続ける。  カリュウモドキはその名の通り、火気の魔力を多く持つ、トカゲのような姿の生物だ。体長は5~8センチほど、くすんだ赤煉瓦のような体色で、噴出孔と呼ばれる部分は燃えるような赤色をしている。カリュウモドキは一般的な生物で、日当たりの良く乾燥した場所に多く生息するが、数が多くなりすぎると山火事や森林火災の原因になることもある。そのためアークソサエティでは、カリュウモドキを見かけることが多くなった場合、教団へ連絡を入れるよう通達されていた。  町でカリュウモドキが増えたという連絡が入ったのは三日前。教団は捕獲班を編成して現地へ派遣し、彼らと共に現地や周辺に居る教団員が捕獲を行うことになっている。一週間前から休暇でここへ来ていた彼女も、それに巻き込まれたというわけだ。 「皆さんにお手伝いいただきたいのは、このカリュウモドキの捕獲です。道具はこちらで貸し出しますので……」  声の調子が次第に下がる彼女に、あなたたちはいくつか質問をする。 「これは休暇中の任務ということになりますので、教団から申し訳程度の手当てが支給されます。滞在中はデザートを一品増やせるくらいですね……。お手伝いいただける場合、書面での手続きは私のほうでしておきます」  彼女はすっかり溶けたアイスをスプーンに掬い、ぼんやりと口に運ぶ。長期休暇を邪魔された彼女の消沈ぶりは、見ているだけでも辛かった。あなたたちは注文したアイスコーヒーを飲む。夏にふさわしいすっきりとした味わいで、フルーティーな芳香が口の中に広がっていく。店主こだわりという触れ込みも頷ける。ところで、捕獲したカリュウモドキはどうなるのだろうか。あなたたちはそれを尋ねると、彼女はどこか遠くを眺めて言った。 「さあ……。そこまでは聞いてないですけど、調査した後は魔術道具とかの材料にでもなるんじゃないんですか……」  うわの空の彼女は、アイスのトッピングだったはずのチェリーをスプーンの先でころころと転がす。シロップ漬けのその果物は今や、かつて氷菓子だった乳白色の水たまりの中に沈んでいる。魔術道具は用途に合わせて様々な種類があるが、機密扱いのため製造方法は公表されていない。カリュウモドキは特殊なポーションの材料に使われているという噂もあり、彼女はその事を言っているのだろう。あるいは彼女は暑さと休暇を失ったショックでうわ言を口にしたのかもしれないが、今このことはどうでもいいはずだ。  あなたたちはコーヒーを飲み干すと、彼女に協力を申し出た。薔薇十字教団に所属する者は皆、世界救済のために昼夜を問わず連日働いている。だからこそ、教団員の休暇は守られなくてはならない。彼女は涙ぐみながら何度も感謝し、捕獲班本部が設置されている町役場に午後から来るようあなたたちに伝えた。行動開始は明日以降だが、手続きに自筆のサインが必要らしい。  あなたたちは彼女を励まし、決意を胸に再びメニューを開く。そうと決まれば腹ごしらえが必要だ。今日の昼は何を食べようか。ソレイユ地区での休暇は、まだ始まったばかりだった。
氷菓子は半分ずつ
とても簡単|すべて

帰還 2018-08-03

参加人数 8/8人 あいきとうか GM
 無事に指令を終え、報告のため教団に戻ったあなたとパートナーに声をかける男がいた。 「ごくろうさん。なぁ、小腹すいてないか?」  コック服に身を包んだその人物は、薔薇十字教団の教団寮で腕を振るう料理人だ。 「氷菓子、食わねぇ?」  よく見れば、彼は一般的に普及している魔術道具、多目的発氷符で作った氷をつめた、保冷効果の高い箱を両手で持っていた。中には氷の他に、氷菓子らしきものが入っている。 「暑い夏を乗り切るために、新作の氷菓子を考えろって料理長に言われてさ。今、試行錯誤の最中なんだ。これは失敗作。でも味の保証はするぜ?」  片手で保冷箱を持ち直し、見習いらしき料理人は無造作にひとつ、氷の中から引き抜いた。  横に少し長い長方形の、透明の氷菓子だ。ひと口大に切られた干した果物が、ただの氷にも見える冷たい菓子に彩を添えていた。  木の棒が二本刺さっており、半分に割れるよう真ん中に真っ直ぐ溝が作られている。涼やかでおいしそうな見た目だった。 「砂糖水の中に干した果物を混ぜて、凍らせてあるんだよ。面白いかなって思って、二人で分けられる形にしたんだけど、評価はイマイチって感じでさぁ」  よほど自信があったのか、まだ二十代半ばに見える料理人は肩を落とす。 「ってわけで、好きなの持ってけ」  時刻は夕暮れ、夏の最中。  パキンと二つに割れる氷菓子を、浄化師は押しつけられるような形で手にすることになった。
ちょっとしたお願い事を、君と
簡単|女x男

帰還 2018-08-01

参加人数 3/8人 ぽた GM
「そうか、もう七夕か」  ふと聞こえて来たのは、道行く人々の話し声。  そう。今日は――七夕。  織姫と彦星の二人のように願い事が叶うよう、短冊に各々の願い事を書いて、笹や竹の葉に飾り付ける行事だ。  広場や公園には沢山の人が集まっている。  老夫婦に新婚さん、幼い兄弟に姉妹、家族で、と。  皆それぞれの大切な人たちとのひと時を楽しもうと、普段は見られない程の人々で賑わっている。  そんな七夕祭りに訪れるのは、まだまだ恋愛には初々しい男女のパートナー。  折しも教団の仕事がないということで、「楽しそうだから、せっかくなら」と参加することを決めたのだ。  ただ。 『ずっと一緒にいられますように』 『どうかあの人と結ばれますように』 『世界平和!』  ちらと目をやった、もう既にくくりつけてある願い事の数々。  他の人たちのそれらを見た後だと、いざ自分たちのお願い事をしたためんとしても、具体的にどうとは、少しばかり恥ずかしくて書きにくい。  かと言って、それぞれが抱くことならあるにはある。  もう少しあれを――もう少しそれを――と思う程度のことなら、口に出したことはないけれども感じていた。    だから願うのは、あまり贅沢はしない、二人分の手で足りる願い事。  今すぐにでも叶うような『ちょっとしたお願い事』を考えるのだった。
【海蝕】海辺のヒーローショー
とても簡単|すべて

帰還 2018-08-01

参加人数 3/8人 ナオキ GM
 夏。  老若男女、種別も問わず、太陽の下で肌を輝かせて水と戯れる観光客たちの姿で、ベレニーチェ海岸は今日も盛況である。  しかし、 『きゃー! 誰か! 誰か助けてっ!』 『“ゲリアル”よ! ゲリアルが出たわっ』  人々の平和な時間を破壊しに、恐るべき“ゲリアル”たちが次々に現れたではないか。 『ふっふっふ、オレ様は大事に取っておいたアイスをおふくろに食われた恨みで魔物となったゲリアル! 今すぐ貴様らから全てのアイスクリームを奪ってやる』 『わたくしは夏だというのに恋人も出来ずに、目の前で暑苦しくイチャイチャイチャイチャしやがる不届き者を滅却する為に生まれし魔物! 覚悟しなさい、愚かな生き物たち。爆発しなさい!』  まるで花の蜜に吸い寄せられる虫のように。  人々が砂浜で放っていた幸福感たっぷりのオーラに釣られたのか、わらわらと出現し、そして卑怯にも人質をとるゲリアル。  恐怖から泣き出す子どもたち。  寄り添っていた恋人と引き離されるカップル。  海岸一帯に絶望が満ちようとしたそのとき―― 『待てぃ!』  観光客と同じく水着に身を包みつつも、精悍な目をした数人がゲリアルたちの前に躍り出た。  彼らからは、そのやや狭い布地の面積では覆い隠せないほどの正義感が迸っている。 『き、貴様らはまさか……』 『そうだ! こんなこともあろうかと完全に一般市民に擬態して海で遊びながら片時も油断することなく様子を窺っていたエクソシストだ!』 『く、くそ……まさかこんな場所も抜かりなく警護していたとは……! ええい! ここで決着をつけてやる!』 「――っつー感じでこのあとはちょっと派手めにアクションシーンやってもらってえ、なんなら水鉄砲とかでお客さんも濡らして盛り上がってえ、好きにアドリブもやってもらって無事に人質も解放して勝利してハッピーエンド! みたいなヒーローショーをやればさ、お客さんも安全性を再確認してまた例年通りに遊びに来てくれると思うわけよ。ど? ステージならほら、去年まで水着コンテストとかで使ってたやつをまた組み立てればいいじゃん? もちろんエクソシストの人たちには報酬も支払うしさ。まあマイクなんかはないし設備もほとんどないようなもんなんだけど」  水と戯れる観光客たちの姿がまばらにしか目視出来ない、現実のベレニーチェ海岸。  客寄せの為の案を仲間に披露して、海の家のオーナーである男性は満足げに胸を張る。  聞かされた従業員はやや困ったように眉を下げながらも、じゃあ一応教団のほうに頼んでみましょうか、と請け負った。 「来て下さるといいんですけど……」 「でももう告知しちまったからなあ」 「……、はい?」 「いやだから、もう日時も決めて告知しちまってるから。出演者にはほぼぶっつけ本番で頑張ってもらうことになっちまうんだよ」 「ええええぇぇえ?!」
【海蝕】その身を何に喩えよう
とても簡単|すべて

帰還 2018-07-31

参加人数 6/8人 北乃わかめ GM
 太陽の光が強くなり始めた季節。  額に滲む汗を拭いつつ、あなたは背すじを伸ばす。パートナーはとなりで恨めしく空を仰いだ。 「はー、あっつ……」 「ちょっと、だらけないでよ」 「そうは言ってもなあ」  うちわ代わりに、と手で扇いでみるものの焼け石に水だった。  今日、あなたとパートナーはベレニーチェ海岸に来ていた。と言っても、観光や海水浴目当てではない。  地中海に侵入したというベリアルの情報により、海水浴場として知られていたこの場所には人が寄り付かなくなってしまった。  そんなとき、ブリテンのエクリヴァン観劇場を中心に活動していたひとつの劇団が声を上げた。 『こんな時こそ、人には娯楽が必要なのだ!』  それは、同じく演劇や歌劇を嗜む者に深く突き刺さり。誰もが遠目で眺めるだけのこの海岸に、仮設ではあるが小さな劇場を造ったのだった。  規模は小さいが、しっかり幕もあれば観客席もそれなりに用意されている。  朝は役者や歌手を目指す学生を中心に、夜は有志で集まった劇団や急造のグループが、大粒の汗をかきながらも海辺の舞台に立った。  「ベレニーチェ海岸・夏の演劇祭」と名付けられたその噂を聞きつけ、やがて人の足も最初に比べれば増えるようになった。 「だけど、ベリアルに対する不安が無くなったわけじゃないし。だからわたしたちが、少しでも不安を取り除くために、小劇場近辺の警護にあたってるのよ?」 「わかってるってー。ただ、今日が異様に暑いなってさあ」 「いっつもギラギラの太陽みたいに元気なクセに」 「そう言うお前は――」  小劇場を背に、パートナーが口を開き、止まる。  何事かと顔を向ければ、パートナーは何か企むようにニヤリと笑った。 「……まるで水辺に佇む白鳥のように、涼やかな美しさがありますね」 「なっ……」 「あ、今グッときた?」 「バッカじゃないの、劇の受け売りだって丸わかりよ」  ちょうど聴こえてきたセリフを拝借したのだろう。それはあなたの耳にも届いていた。  だが、どうだろう。  パートナーから言われたというだけで、季節のせいとは言い難い熱を感じてしまうのは。  少しだけ背すじを伸ばしたのだって、しょうがないことなのかもしれない。
【海蝕】セイレーンの魅せる甘美
簡単|すべて

帰還 2018-07-30

参加人数 8/8人 北野東眞 GM
 ルネサンスのヴェネリア地区、ベレニーチェ海岸にセイレーンが現れる。  セイレーンの歌声は美しく、人々の心をとろけさせ、魅了し眠りへといざなうとされる。  指令斡旋をするロリクが渋い顔で告げたのは、セイレーンの伝説だ。  歌声で人々を惑わせ、魅了によって眠りにつかせ、海へといざなってしまう。 「まぁ、この海にいざなわれたら一巻の終わりなんだよなぁ。ここ最近、漁師が魚を捕えようとするタイミングで現れる。漁師たちは一同に幸せな顔をして眠り、そして……目覚めない」  憂鬱な顔で、ロリクはため息をついた。  ここ数日で漁師のほとんどは眠り、目覚めないそうだ。ごく一部――僅かな人数だけが目覚めた。 「目覚めた者には共通点があった。心から信頼する相手に起こされることだ。たとえば親友、恋人、相棒といった心をきつく結んだ相手の切実な言葉と物理的な……んまぁ、殴るわけだよ。それで目覚めているらしい。  まぁセイレーンは魅了持ちだからな。今回は魅了されている相手をそれ以上の魅力でたたき起こすってことだ。もちろん、殴らなくてもなにかしら衝撃があればいいわけだ」  そのあと、というようにセイレーンに対して説明がつけくわえられた。 「このセイレーンの歌、聞くとどうしても眠ってしまう。保有している魔力が多いほど効果が強く、祓魔人は眠りにつきやすいから注意が必要だ。  起きたものがいうには、過去の……なくしたものがなくなっていなかった、正したいと思っていた過去の過ちがなかったことになった未来の夢を、それはとても幸せな夢を見るそうだ。  つまり、今回はセイレーンと戦うが、まず、確実に祓魔人は眠る羽目になる。その間、喰人は海へと引きずり込もうとするセイレーンを制しながら、相棒である祓魔人を起こすんだ。  思わず起きちまうくらいに情熱的な告白をして、相手になにかしら衝撃を与えるんだ。殴ってもいいし、揺さぶるのもいいし、キスしてもいいんじゃないのか?  で、二人そろっていれば難なくセイレーンを倒せるだろう? そうすれば今眠っている人々は起きるだろう。浄化師らしい仕事だろう? がんばれ」 ● ● ●  ざ、ざ、ざ……ほの暗い闇の広がりを照らすのは満月。  海の満ち引きのなか、悲しく、美しい声が響く。  その声に誰もが眠りへといざなわれていく。  眠りのなかへ、そして、それは深い眠りへと。
【海蝕】老騎士と海
普通|すべて

帰還 2018-07-28

参加人数 8/8人 黒浪 航 GM
 夕方、海の見える丘にたつ丸太小屋で貧しい夕食をとった後、丘を下って、人影のない海岸をひとりのんびりと散歩するのが、その老人――ガレインの日課だった。  ガレインは孤独であり、また、その孤独を彼自身愛してもいたが、彼とて生涯ずっと寂しい独り身だったわけではない。   老人が、その人生でただ一度本気で愛し、永遠を誓い合った女――エメリアが、流行り病で亡くなって、もう五年になる。月日の流れるのは早いものだ。  ガレインは、エメリアが愛した海のそばに彼女の墓をたて、その墓のそばに小屋を建てて、それを終の棲家とした。  小屋に住み始めた頃、一度犬を飼おうかと思ったこともあるが、結局やめた。  相棒は、こいつだけで十分だ――老人は、腰に下げた長剣をじっと見下ろす。  それは、今より数十年前、老人がルネサンスのコロッセウムで剣闘士をしていた時からずっと使っている愛剣で、彼が剣闘士の身分から解放された時、新たな門出を祝う品として当時の主人から与えられたものだった。 『我が盟友にして、最高の男――騎士ガレインへ』  鞘に納まっている鋼鉄の刃には、そう刻まれている。  剣闘士時代の彼は、その洗練された剣技と、紳士的な戦いぶりから、彼を愛する観客たちから「騎士(ナイト)」の愛称を与えられていたのだ。  ガレインは、剣闘士をやめ、街で大工として働くようになってからも、その武骨で実用的な愛剣を自身の分身のように感じて、いつも肌身離さず持っていた。 「風が、重いな……明け方までに嵐になるか……」  湿った南風の吹きつける夕暮れの砂浜を歩きながら、ガレインが剣に語りかけた、その時――彼の視界の隅で突然黒い影が膨れ上がった。 「………っ!」  瞬時に身の危険を察知した老人は、影の正体を確かめる前にさっとその場から退き、腰の剣に手をやる。 「……コイツは……!?」  夕陽の残り火で紫色に染まった海からのっそりと姿を現したのは、巨大な怪物――紅い眼をもつ青黒いカニのような姿のベリアルだった。  ガレインは、咄嗟に腰から剣を引き抜き、身構えるが、カニ型ベリアルは老いて干からびたちっぽけな人間のことなど気にも留めず、砂浜をのそのそと横歩きしはじめる。 「まずいな……」  ガレインは、ベリアルが向かう先に、かつて彼がエメリアとともに暮らした町があることに気がつき、口元を歪めた。 「そちらに行かせるわけにはいかん……」  ガレインは、素早く剣を振るい、鋭い斬撃をベリアルの脚に打ち下ろす――、が、  ガキンッ……!  老人の必殺の一撃は、カニの恐ろしく硬い甲殻にあっさりと弾かれる。 「くっ……」  しかし、カニ型ベリアルは、ダメージこそ負わなかったものの、、町へ向かうのをやめて、ちっぽけな老人と向かい合った。 (よし……)  ガレインは、小さく笑みを浮かべる。 (ここ数日、このあたりの海岸は、教団の浄化師たちが警戒にあたっている……。ここでコイツをしばらく足止めしておけば、そのうち、彼らが駈けつけて来てくれるだろう……)  カニ型ベリアルの巨大なハサミによる攻撃を左右に躱しながら、ガレインがそう考えたとき――、彼の視界の中にさらなる悪夢のような光景が広がった。 「ばかな……っ!」  彼が相手にしているベリアルの背後に、もう一体、同じカニ型のベリアルが出現したのだ。  バシャバシャと飛沫をあげて海から上ってきたベリアルは、真っ直ぐに町へ向かって悠々と横歩きの前進を開始する。  ガレインは、目の前の敵の相手をするのに精一杯で、もう一体のベリアルはただ黙って見送ることしかできない。 「おのれっ……」  老人が、口惜しげなつぶやきを洩らした時、ふいに、砂浜を遠くからこちらに駈けて来る一団の人影が目に入った。  その瞬間、老人の瞳に希望の光が灯る。 「ようやく来たかっ!」  強力な武器を手に砂浜を一直線に疾走してくる教団の浄化師たちに向かって、老人は大声で叫ぶ。 「コイツの相手は、ワシひとりで十分だ! お前たちは、町に向かったヤツを止めろっ!」  その言葉に、浄化師たちは一瞬戸惑う。  老人の身のこなしからして、相当な剣の達人であることは一目でわかる。しかし、どれほどの達人であっても、魔喰器を持たない者がベリアルを倒すことは絶対にできない。  長期戦になれば、老人はいずれ力尽き、ベリアルに無残に殺されてしまうだろう。    この場で老人とともに戦うか、それとも、ただちに町へ向かったベリアルを追うか――浄化師たちは、苛酷な選択を迫られた。
七夕祭りを守れ
普通|すべて

帰還 2018-07-28

参加人数 6/8人 内山健太 GM
 七夕祭りが行われているセーヌ川にヨハネの使徒が一体出現。観光客や住民を襲っているという情報が薔薇十字教団に入る。ヨハネの使徒を殲滅せよ。 「ヨハネの使徒だぁー!」  穏やかな雰囲気が漂っていた七夕祭りのセーヌ川の畔に、人々の絶叫が轟く。  観光客や近隣の住民たちで賑わっているセーヌ川にヨハネの使徒が現れたのである。  男集が協力し合い、ヨハネの使徒と交戦するが、全く歯が立たない。ヨハネの使徒は、人々を襲うために、突進を武器にして攻撃を繰り出してくる。必死に交戦する住民たちであるが、徐々に追い詰められていく。やはり、戦闘経験がほとんどないため、このままでは敗北してしまうだろう。  事態を重く見た七夕祭りの運営委員長であるハンス老人は、薔薇十字教団に助けを求める。  このままでは祭りは、滅茶苦茶になってしまう。人々の安全を考えるのなら、ここはエクソシストたちに頼るのが一番効果的である。そのようにハンス老人は考えた。 「薔薇十字教団に助けを求めよう」  と、ハンス老人は提案する。  すると、近くにいた商人が声を大にして言った。 「私が薔薇十字教団に助けを求めに行きましょう。こう見ても足には自信があるんです」 「うむ。では我々は何とかこれ以上被害が出ないように、ヨハネの使徒を食い止めよう。なるべく早く頼む」 「わかりました。では行ってまいります」  そう言うと、商人は韋駄天走りで走り始めた。  商人の足は速く、すぐに薔薇十字教団の門を叩いた。 「助けてください! 大変なんです」  商人の苦しむ声に、教団にいたエクソシストたちが反応する。  すぐさま事情を聴き、対策が立てられる。至急、セーヌ川に向かわなければならない。  一方、エクソシストたちが駆け付けるまで、セーヌ川では有志による戦闘が行われていた。対するヨハネの使徒は一体であるが、やはり戦力差は否めない。じりじりと追い詰められていく。 「ぐぅ。もはやこれまでか……」  ハンス老人が諦めかけた時、とうとう、エクソシストたちがやってくる  ハンスは彼らに駆け寄り、助けを請うた。 「このままでは七夕祭りが滅茶苦茶になります。どうかヨハネの使徒を倒してください」  エクソシストたちは頷くと、ヨハネの使徒との交戦を開始した。  情報が早く伝えられたため、それほど人的被害はないものの、ヨハネの使徒を食い止める必要がある。  セーヌ川では、恒例の七夕祭りが行われており、人の数が多い。まずは、人々の安全を確保するために、ヨハネの使徒と交戦しながら、人々を避難させる必要がある。幸いなことに、ヨハネの使徒は一体のみなので、協力し合えば、人々を避難させ、戦闘を行うのは容易である。    勇気ある人間たちが戦っていたため、今のところ甚大な被害は出ていない。首尾よくヨハネの使徒を倒せれば、再び七夕祭りが催されるだろう。そのためにも、エクソシストたちが速やかにヨハネの使徒を倒す必要がある。  人々を安全な場所に避難させ、同時にヨハネの使徒を殲滅する。それがエクソシストたちに課せられた使命である。健闘を祈る。
【海蝕】鐘を鳴らそう
とても簡単|すべて

帰還 2018-07-27

参加人数 7/8人 北野東眞 GM
 ヴェネリアの青い海辺に面したベレニーチェ海岸。  地中海にベリアルが進入してしまっていると情報が入り、目撃情報からエクソシストたちにも警備の依頼が舞い込んできた。  白い砂浜に面しているだけあって、新鮮なフルーツ、色とりどりの花が咲き乱れている。  現在は警戒されているため、街はいつもよりもずっと人の数は少ないが、普段命がけの指令と向き合っているエクソシストたちには物珍しく、興味をそそられるものばかりだ。  そのなかでも、この地の観光名所として名高いのが【幸福の鐘】だ。  砂浜を進み丘に上がった所へ、恋人達が鳴らすと幸せが訪れるとされる『幸福の鐘』が存在する。  鐘を鳴らすのが別に同性であっても構わないし、友人同士で鐘を鳴らし、友情を深め合う目的で訪れる者も多いといわれているのだから。訪れるものがどんな気持ちで、そこへと赴き、どんなことを語り、どんな経験から、その鐘をとどろかせるのかも自由だ。  現在は警備中だが、その休み時間の合間を縫って、ささやかな観光と幸福の鐘へと向かうことは難しくはない。  どんな音を、どんな気持ちをこめて、鳴らすだろう。
【海蝕】空に福音は響いて
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帰還 2018-07-27

参加人数 5/8人 十六夜あやめ GM
 天高く昇った7月の太陽から燦々と降り注ぐ光を浴びてきらきら揺らぎ輝く、澄んだターコイズブルーの海。海底まで見える透明度の高い海水を無数の魚達が優雅に泳いでいる。真っ白な砂浜が広がるビーチに打ち寄せるさざ波は海水浴客を歓迎しているかのようだ。  ここは『教皇国家アークソサエティ』首都エルドラドより南部に位置するルネサンスの地中海に面した、世界でも有数の美しい海岸『ヴェネリア』のベレニーチェ海岸だ。その有名なはずのベレニーチェ海岸には何故か殆ど人がいない。まるでプライベートビーチのような空間が広がっていた。  その原因は、ここ最近海にベリアルが現れるようになったという報せがあったからだ。人々は不安がり、寄りつかなくなってしまった。現状を改善すべく、浄化師たちは薔薇十字教団より「人々の安全・海水浴場の管理」を命じられ派遣された。市民や海水浴客に安全をアピールすることが今回の狙いであるため、浄化師たちは海の安全を監視しつつ、率先して海で遊ぶこととなった。薔薇十字教団の指令というのは名ばかりで、実際のところは一つの休暇である。日頃より指令を頑張っている浄化師たちへのささやかなプレゼントというわけだ。  浄化師たちは「人々の安全・海水浴場の管理」という大義名分を掲げ、各々行動する。  水着に着替えて眼前に広がるターコイズブルーの海に飛び込む者、浮き輪を浮かべてゆらゆらと流れに身を任してくつろぐ者。砂浜では砂のお城を作ろうと頑張る者、日焼けしないようパラソルの下、椅子を並べて寝そべったり本を読んだりする者もいる。 そんな中、砂浜を進み丘に上がった所へ向かう者もいる。そこには恋人たちが鳴らすと幸せが訪れるとされる『幸福の鐘』がある。友人同士で鐘を鳴らし、友情を深め合う目的で訪れる者も多い有名なスポットだ。稀に隣にある教会で結婚式が行われていることがあるようだ。その光景を見た者は幸せになれるという噂がアークソサエティの若い女性たちの間でまことしやかに囁かれている。  あなたたちに与えられた夏のひと時。海に入ったり砂浜で遊んだりするのも良い気晴らしになるだろうし、パラソルの下でひと休みしつつ丘の上の『幸福の鐘』を鳴らしに行くのも良いだろう。2人の会話も弾むかもしれないし、距離が近付いたりするかもしれない。  素敵な1日になることを祈っています。  最高な夏の思い出を作ってください!
森の中の幸せ?
簡単|すべて

帰還 2018-07-26

参加人数 4/8人 あいきとうか GM
 ローレント・ディーレは夏のある日、森で幸せを探していた。  それは白くてふわふわ。たんぽぽの綿毛のようで、見ると幸せになるらしい。幸運を呼ぶ生き物の名前は、ケセランパセラン。 「いると思うんだよなぁ。だから入っちゃダメなんだろ、分かんないけど」  ソレイユ地区、ピストーラ狩猟場からいくばくか離れた森林の、立ち入り禁止区画だ。狩猟場は今日も盛況だが、その楽しげな声もここまでは響いてこない。  狩猟場の監視員という仕事をこっそりと放棄して、ローレントはケセランパセランを探しているのだった。 「あれが見つかればきっと今年こそ彼女ができて、一緒に海に行ったり、水族館に行ったりできるから……」  誰が保証したわけでもないが、綿毛のような生物の伝承を耳にして根拠もなく確信してしまった素晴らしい未来を胸に、男は意気揚々と邪魔な枝葉を掻き分けて進む。  仕事を放棄した報いだろうか。努力のひとつもせず、他力本願に恋人を欲しがってしまった罪へのさばきだろうか。それとも、ただの不運か。 「……え……?」  開けた場所に出たローレントの前に、化け物が現れた。 「えぇぇ!?」 「ゴゲエエエ!」  けたたましい叫び声を上げ、このあたりを根城としている四体のコカトリスがローレントに殺到する。男は反射的に近くの大樹にのぼった。  オス鳥の上半身に蛇とトカゲの下半身と尾をつけた、全体的に鶏に似た化け物は飛翔することができないらしく、大樹をくちばしでつついたり、ローレンスを威嚇したりしている。 「助けてー! 浄化師様ー!」  情けない悲鳴が森林にこだました。
【海蝕】落とし穴に落ちました
とても簡単|すべて

帰還 2018-07-26

参加人数 8/8人 瀬田一稀 GM
 ざあざあと、寄せては返す波の音を聞きながら、あなた達はベレニーチェ海岸を歩いていた。  吹く風は、昼の暑さを忘れたような、涼やかさ。  ベリアルが現れるどころか、人の気配もまったくなく。  見上げる空には、黄金色に輝く月。  しかし。 「綺麗だな」 「そうだね」  二人がそう口にした、直後。 「うおっ!」 「えっ!?」  なんと、あなた達は、海岸片隅に掘られていた落とし穴に、すっぽり落ちてしまった。 「くそ、誰がこんなところに……!」 「ちょっと! 今変なとこ触らなかった?」 「は? ちょ、お前こそ今俺の足、蹴っただろ!」 「あ、やめてよ、こんな狭いところで暴れたら……って揉まないで、それお腹だからっ!」 「えっ、胸かと思った……」 「まったく、デリカシーの欠片もないっ!」 「わ、悪い! 待て、落ち着け! 叫ぶな殴るな、暴れるなあああっ!」  狭い落とし穴に、どうやって落ちたのか。  団服を着た二人の体は、すっかり絡み合っている。  落ち着けばあっさり手足をほどいて起き上がれるだろう。  ただ薄闇と、手に触れるあれこれのせいで、なかなか冷静になるのは難しく――。 「あっ、ホントに待って、スカートがめくれっ……」 「おま、そいういうこと言うなよ、言わなきゃわかんねえんだからっ」  強制的に、狭い場所で二人きり。  さあ、どうなるでしょうか。
【海蝕】釣り場の怪
普通|すべて

帰還 2018-07-23

参加人数 5/8人 あさやま GM
 良く晴れた日のことだった。  波も穏やかで、風も弱い。深くまで見通せる澄んだ海の輝く地中海。ベレニーチェ海岸の岩場で、男は釣りを楽しんでいた。海水浴場と呼ばれる範囲からは若干外れた、浄化師の目が届きにくい場所で1人海に近づくというのは褒められたことではないだろうが、真昼間、地中海という場所、海水浴場のすぐ近くであれば大丈夫だろうと軽い気持ちで糸を垂らす。釣果が良いとは言えなかったが、男は久しぶりの趣味に興じた。  そして、太陽も傾きそろそろ空は赤くなるかといった時刻。暗くなる前に切り上げようと、男は片付けを始めた。投げていた竿を回収しようとした時。何かに引っかかったように、竿が引かれる。どこかに引っかかったのとも違うようだったが、どうにも回収できない。何とかならないものかと、男は海を覗き込みながら色々と試し、それから諦めて渋々糸を切ろうとした。  その時だ。深い海水の濁りの奥に、糸を掴む白が見えたのは。男によれば、それは「手」に見えたという。青白い、また黒く変色したような手。海の底からいくつか伸びた「手」は縋るように、招くように釣り糸を掴み、ゆらゆらと揺らぎ、ゆっくりと近づくようにも見えた。水底からは何か囁くようにこぽこぽと大小の気泡がのぼって来る。  ぐい、と強く糸が引かれ、竿がしなる。それを持つ男を手繰り寄せるように。彼は釣竿を放り出して逃げ、その足で浄化師へ依頼を持って来た。幸いにも、被害は持参していた釣り具だけだったようだが。  依頼に来た男は動揺しつつ「幽霊を見た」と述べた。良くある怪談話だ。美しいマリンブルーの底へ沈んだ誰かが、まだ「此方」にいる誰かを手招く話。浄化師諸君には、その白い「手」の正体を確かめ、ベリアルかそれに準ずる何かなら討伐してもらいたい。  健闘を祈る。
もしも、君じゃなかったら
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帰還 2018-07-23

参加人数 8/8人 shui GM
 可憐な星々が、夜空に踊る。  街は七夕で賑わっていた。  出歩けば家族からカップル、あるいはそんな仲を羨む人まで。様々な人がこのイベントを楽しんでいる。  七夕。ズラミスとサラミという仲睦まじい夫婦が亡くなって尚巡り合う為に、星屑を集めた物語。星で出来た橋によって、2人は再び出会い、結ばれるのだ。  その文化に、ニホンから笹と竹に短冊を飾る催しが入ってきたことにより、現在のスタイルが確立したといわれている。  ある公園では、七夕に合わせて願い事を書いた短冊を笹に飾る催しが行われていた。  参加はもちろん無料で、後日、笹を飾りごと川へ流すのだと言う。  屋台なども出ており、星にちなんだお菓子や料理が振舞われていた。  楽しい時間に、大勢の人の顔がほころぶ。  しかし、雑多な人並みの中に、浮かない顔をした少女の姿がまぎれていた。 「一緒に七夕のお祭り来ようって言うたやん……」  涼しい夜風に、彼女の髪がなびく。寂しげに呟く少女は、どうも彼氏に約束をすっぽかされたらしい。  折角お洒落してきた洋服も、頑張って結った髪も、彼がいないとなれば台無しに思えた。  いや、もしかしたら、約束を守らなかったのは今回だけではないのかもしれない。  悔しくて、寂しい。彼女の表情によく現われていた。  これなら友人と出かければよかったか。  いや、それともまた別の人と……?  じゅわり、と浮かぶ涙を拭うと、七夕用の短冊を配る列に加わる。  短冊を貰うと。彼女はとても悔しそうに、そして自棄を起したように短冊へ文字を書きなぐった。 『今のパートナーと違う人と結ばれたら、どうなるか知りたい』  名前を書き忘れた短冊を、彼女は笹の最上部近くへと何とか結びつける。  そして念押しするように両手を合わせお願いすると、少女は屋台の方へと消えていった。  その夜、彼女は違う恋人とデートする夢を見るのだが――――。  残念な事に。  その願い事に巻き込まれた人たちがいた。  君達、浄化師だ。  七夕の笹が飾られた公園を訪れたのが切欠で、何の因果か、あるいは偶然か、その夜に奇妙な夢を見てしまう。 「申し訳ありませんが、貴方より適性のあるパートナーが見つかりました」  と、唐突に告げられるパートナーの交代。それも強制的に。  其れは勿論、実際にはありえない話だ。  けれどもこれは夢。  君はパートナーと引き離されてしまう夢を見るわけだが……。  普段と違う人の隣を歩いて、何を思うだろう。  そして本来のパートナーは、それを見て何を思うのだろう。  一体、2人はどうなってしまうのだろうか。  全ては星のみぞ知る。
【海蝕】星合の宴
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帰還 2018-07-21

参加人数 8/8人 鳩子 GM
 麗しき水の都ヴェネリア、その中でも一際名を馳せるベレニーチェ海岸は、アークソサエティで安全に海水浴を楽しむことのできる場所として知られている。ルネサンス地区の代表的な観光地だ。  しかし先日、地中海に強大なベリアルが侵入したという知らせが広まって以降、客足は伸び悩んでいた。  ベリアルへの用心と対処が重要であるのは勿論だが、過剰な警戒によって経済活動が委縮しては、地域の、ひいては国力の衰退へと繋がってしまう。  現在も、ベレニーチェ海岸の安全性に揺らぎはない。そのことを広く喧伝する必要があった。 「ねえ、あなた。今年の宴には浄化師の方を招くのはどうかしら」  ベレニーチェ海岸に面する館のひとつ、通称『星彩館』では、主であるリベラトーレ・アンジェリーニとその妻アヤコ・アンジェリーニが憂い顔を向い合せていた。  リベラトーレはソレイユ地区出身で、小麦をはじめとする穀類の交易で資産を築いた男である。次第に事業を広げていく中で海産物を交易品に加えるために訪れたルネサンス――特にヴェネリアの美しさに魅了されて、十年前に妻を伴い移住してきた大商人だ。ヴェネリアを愛する気持ちは地元民に勝るとも劣らない。ヴェネリアに住む人々と、訪れる観光客へのもてなしを惜しまず、地域の活性化に貢献してきた。  その活動のひとつが、星彩館で行う『星合の宴』である。 「ふむ。そうだな、浄化師が来てくれるならば、皆にも安心してもらえるだろう」  妻の提案に、リベラトーレは顎鬚を撫でながら一考し、頷いた。 「浄化師の方にとっても、よい休養になると良いですわね」 「ああ、今年は一層、趣向を凝らさねばな」  アヤコの故郷である東方島国ニホンに伝わる彦星と織姫の伝説と、リベラトーレの故郷であるソレイユ地区に伝わるズラミスとサラミの逸話。その類似性に驚き大いに感銘を受けた二人は、ヴェネリアに移住してからも、星合、つまり七夕を祝う宴を開き、数多の客を招待して夏の一夜を楽しんできた。  宴は日没から始まる。  星彩館の広大な庭園にはニホン風の灯籠が多く設置されており、和紙を通して温かくゆらめく蝋燭の光が地上を照らす。足元では待宵草が月光を浴びて花開き、四阿の柱には朝顔の蔦が這う。  人工的に作られた小さな小川のせせらぎを聞きながら、親しく語り合うのも、静かに夜を味わうのも良い。  隅の一画には笹竹が伸び、短冊を掛けられるようになっているが、それを除けば庭の周囲に視界を遮るような背の高い木々や塀は無い。天候にさえ恵まれれば、天に輝く恋人たちを繋ぐ橋――天の川を頭上に仰ぐことが出来るだろう。  目の前にはベレニーチェ海岸が広がり、少し歩けば浜辺へ降りることが可能だ。遠くには恋人たちが鳴らすと幸せが訪れるという『幸福の鐘』の影が小さく見える。  館にほど近い一画では、リベラトーレが全国から取り寄せた食材をふんだんに使った祝いの食事が並び、特に、アヤコの生国の文化を取り入れた流しソウメンは毎年一番の注目の的だった。 「キモノも評判がよかったな。今年は種類を増やそう」 「ふふ……服の上から羽織るだけの、簡易なガウンのようなものですけれど。夜風を避けるのにも丁度よいですし、皆さま物珍しげに着てくださいますわね」  夜空を写し取ったような濃紺、凛とした桔梗柄、可愛らしい金魚柄や、涼しげな朝顔の花模様。絽や紗衣などといった夏の着物を参考にアヤコが考えたガウンは、透けるほどに薄く軽やかで、その異国情緒と品のある華やかさが殊更女性たちによく受けた。 「早速、教団へ手紙を書くとしよう」 「ええ。良い夜になりますように……」 「勿論、なるとも」  二人は見つめ合って、にっこりと笑みを交わした。
【海蝕】巨大オクトパス型ベリアルとの遭遇
普通|すべて

帰還 2018-07-20

参加人数 8/8人 oz GM
 白い砂浜が広がるビーチ。7月の海がエメラルドグリーンに輝いている。  海はつかの間の微睡みを終え、眩いばかりの陽光を浴びて、きらきらと磨き上げられている。  ここは地中海に面した浜辺。遠くから流れる風が潮の匂いを含んで肌にまとわりつき、海へと誘う。一定のリズムを刻むさざ波があなたたちを歓迎しているようだ。  海には殆ど人がいない。さながらプライベートビーチのようで独り占めしているみたいだ。  それには理由がある。普段ならば穴場スポットであるここにも近隣に住むものが遊びに来るのだが、ここ最近海にベリアルが現れるようになって人々は不安がり、寄りつかなくなった。  浄化師達は「人々の安全・海水浴場の管理」の為、ここに派遣された。浄化師達が率先して海で遊ぶことで市民に「安全ですよ」とアピールすることが今回の狙いなのだ。  要するに指令という名の息抜きだ。指令を頑張っている浄化師へのちょっとしたご褒美といってもいい。  「人々の安全・海水浴場の管理」という大義名分を掲げ、浄化師達は思う存分、羽を伸ばす。  開放的な海を前にしてビーチボールを持っていたり、浮き輪を腰にはめて泳ぐ準備万端な者もいる。透き通った海に目を輝かせて見ている者もいれば、海に興味を示さず、パラソルの下で椅子に寝そべっていたり、本を読んでいたりと、それぞれが海を前にして様々な反応をする。  どの浄化師も今日ばかりは教団の制服を着ておらず、私服だ。中にはもう水着姿の者もいる。  その日は楽しい海辺での思い出ができる筈だった。  誰かが待ちきれないとばかりに海へ飛び出そうとしたとき、それは起こった。  突如、海面から不自然なあぶくが浮き上がる。 「何だ?」  訝しげな声が聞こえたのか、他の浄化師達も異変に気づいた。  あぶくから海を引き裂き、小島が現れた。その衝撃で波飛沫が起きる。黒土で覆われた小島はぬうっと静かにこちらに近づいてくる。  よくよく見れば、あれは巨大タコだった。それもベリアル化した。  その証拠にベリアルは海中に根を張るように黒い触手を伸ばす。成人男性の二回りもある触腕からも触手が生えていた。  人の身長を優に超えた巨大タコは海中から全容を現す。  その奇怪な姿は、もはや別の生物に見えた。  タコの頭部に巨大な触手の塊。ぬらぬらとしたタールのような粘液が不気味に光る。  軟体動物特有の動きをする度に触腕にある吸盤がさざめく。吸盤のところだけ色が薄く、まるでいくつもの巨大な目があるようにも見えた。本物の目は上下左右に目玉をぎょろりと動かすと、ある一点で止まった。  その視線の先には浄化師達がいる。  ベリアルの無機質な目。ベリアルに見慣れている筈の浄化師でも思わず目を逸らしたくなる。  生理的に、としか言いようのない嫌悪感がわくのだ。  詳細が分かってくる内に何ともいえぬ恐怖心がわく。それほど禍々しく不気味な姿だった。  眼で見ていながら現実味がない。さながら悪夢を見ているようだった。  一人が我に返ると、次々と正気に戻る。  幸い教団から事前に警備が目的である為、条件付きで口寄魔術陣の使用許可が下りている。その条件とは、ベリアル及びヨハネの使徒に遭遇したなどの不測の事態に限り、現場の判断に任せるというものだ。  こうしてベリアルに遭遇した以上、戦うしかない。  このままいくと沖に上がってくるだろう。ここには船もなく、海中戦は向こうの独断場だ。都合のいいことに海の家から離れており、ベリアルを迎え撃つには絶好の場所だった。浄化師達は静かな脅威との激闘を予感していた。  こうしてあなたたちの楽しい休暇は終了した。
【海蝕】特製フルーツジュースを召し上がれ
とても簡単|すべて

帰還 2018-07-20

参加人数 7/8人 茸 GM
 ターコイズ色の美しい海の広がるベレニーチェ海岸。  ベリアルの姿もなく安全に海水浴を楽しむ事が出来る場所なのだが――……。 「真夏だっていうのに、地中海にベリアルが出現してからお客が減っちまった……。まったく、商売上がったりだ」  浜辺に開かれたとある小さな海の家で、こんがりと日焼けした男の店主が腰に手を当て溜息と共に嘆く。 「教団からの警備も増えたし、より安心して遊べると思うんだがなぁ。不安はそう簡単には拭い去れねぇってことか」 「――こんにちは。今日も調子悪いみたいね」 「ああ、あんたか」  話しかけてきたのは若い女性。何度も足を運んでくれている常連さんなのだが、服装からして今日も海に泳ぎに来たわけではないようだ。 「私も海で遊びたいところなんだけど、怖くて海に入る人なんてほとんどいないじゃない? だからどうしても遠慮しちゃうのよね」 「だがこの海岸では目撃すらされてないんだ。不安なのは分かるが、折角の夏を楽しまねぇなんざ勿体ねぇってもんだろ」 「仕方のない事だけど、確かに足が遠退いてしまうのは寂しいわね……。せっかくのフルーツも活躍できなくて可哀想だわ」  海の家のカウンターに置かれたまま使われずに鎮座している南国フルーツ。  白髪交じりの頭を掻きながら店主も「まったくだ」と肩を竦めた。 「朝一番に収穫してきたんだが、こうもお客が来なけりゃ無駄になっちまう」 「海の家特製フルーツジュースでしたっけ? そろそろ秘密のシロップとやらが何なのか教えては頂けないのかしら」  カウンターに寄りかかり、人の頭一つ分はある大きさのフルーツをツンと指でつつく彼女。  それを店主はカハハと笑う。 「駄目だ駄目だ! どこかで聞き耳を立ててる輩がいるかもしれん。真似されたらこの店は終わりだ」 「そんなこと………無いとも言い切れないわね。本当に美味しいもの」  前に飲んだ事のある彼女だからこそ、大袈裟な店主の台詞もすんなり納得できてしまう。 「甘酸っぱくてとろける様な舌触り……。何より見た目が綺麗よね。今日も頂いて帰ろうかしら」  外見は焦げ茶色でザラつきがありとても美味しそうには見えないが、中身が白くパールのような輝きがある。しかしそのまま食べようものなら酷過ぎる酸味に舌がやられてしまう。 「それがあなたの手に掛かればまるで魔法が掛けられたかのように甘みが生まれて信じられないくらいに美味しくなるのよね……」  うっとりと語る彼女に店主は呟く。 「シロップ掛けただけだがな」 「もう! 夢をブチ壊さないでよ! だけって言うならシロップの秘密教えてくれてもいいじゃない」  ぷりぷりと不満を漏らす彼女だが、不意に両手をパン!と打ち合わせた。 「そうだわ!」 「!? 吃驚したなぁ。どうしたよ、急に……?」  彼女の豹変ぶりに店主は目を丸める。 「お客さんが来ないなら、こっちから出向けばいいのよ!」 「はあ? ……出向くって、売り歩くってことかぁ?」  彼女は目を輝かせ大きく頷く。 「近頃エクソシスト様が増えたじゃない? もちろん遊びじゃなくて警備でいらしてるようだけど、彼等にこの特製ジュースを飲んで頂くの!」  拳を握って意気込む彼女に店主は腕組みをして片眉を上げた。 「良い考えだとは思うが、仕事の邪魔になり兼ねんだろう……」 「事情を話せばきっと大丈夫よ! お代を頂戴しないかわりに宣伝して頂くの、どうかしら?」 「お代を頂戴しない!? それはさすがに……」  売り上げが右肩下がりの今、彼女の考えにはすんなり頷けない。それでも彼女は食い下がる。 「想像してみて? エクソシスト様が海でこのジュースを飲んでいたら人々の目にはどう映るかしら」 「どうって………」  店主は頭に思い浮かべた。  ――フルーツを半分に割り、中身だけを潰し、頑丈な皮を器にして最後に秘密のシロップを混ぜ合わせれば完成する特製フルーツジュース……。 「ふむ……あれを抱えていたら、さすがのエクソシストさんも硬さがとれて雰囲気が緩む……か」 「その通りよ! 彼等が飲んでいたらきっといろんな人の目に留まるわ。エクソシスト様たちの楽しそうな姿に自分も飲んでみたいって足を運んでくれること間違いなしよ!」 「そう上手くいくかねえ……」 「やってみないと分からないわ! 題して『エクソシスト様おすすめフルーツジュース』よ! それに、こんな暑い中頑張ってくれてるんですもの、このとびっきり美味しいジュースを振る舞ってあげたくなるじゃない」  勝手なネーミングをつける彼女だが、この提案はそれほど悪くはない。  そう思った店主は、商売繁盛の為にもやれることは全てやろうと重い腰を上げた。 「よし、一丁やってみるか!」
星の海に願いを込めて
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帰還 2018-07-19

参加人数 6/8人 春川ミナ GM
「いらっしゃい! いらっしゃい! 安いよ! 美味いよ!」  とある屋台から威勢のいい声と美味しそうな匂いが漂ってきます。  ここは教皇国家アークソサエティ、ソレイユ地区。小さな村が主催した七夕祭。大人も子供もこぞってたくさんの屋台を見たり、会場の中央に立てられている笹に付ける短冊に願いを書いたりして賑わっています。 「ねぇ、あそこに人だかりができているよ」 「面白そうだね。ちょっと行ってみよっか」  あなたはパートナーの手を引きながら屋台に向かいます。そこには小さな池があり、何人かが笹船を浮かべています。その上には色とりどりの金平糖が乗っていました。 「いらっしゃいませ。ここでは占いをやっていますよ。お二人ともいかがですか?」  池の傍に建てられた屋台には占星術師の服装をした人物が座っていました。この人物が屋台の店主なのでしょう。この服装は占いに神秘性を求める為の余興なのか、それとも本当に占いを生業としているのかは判りません。 「占いかぁ。面白そうだしやってみたいかも」 「ははは、キミは本当にそういうものが好きだなぁ」 「ぶぅぶぅ。良いじゃない。こういうものは楽しんだものが勝ちなのよ」 「ゴメンゴメン。じゃあやりかたを教えてもらえるかな?」  パートナーを少しだけからかったあなたは店主に問います。 「ありがとうございます。では、やり方を説明いたしますね。まずはこちらの短冊に願いを書いて下さい。そして、書かれましたらこの様に船を折ります。そして金平糖を一粒、乗せて池に浮かべて下さい」  店主が鈴のような凛としながらも神秘的な声で語ります。その手には金平糖を乗せられた船があり、そっと池に浮かべられました。 「浮かべて、その後はどうするんだい? 遠くまで行った方が縁起が良いとか?」  あなたは店主が浮かべた船を見ながら聞きます。周りには先客が居て、浮かべた船の動向に一喜一憂しているようでした。 「いえいえ。逆で御座います。船が近くであればあるほど、早く星の中に届く事ができるほど、良いとされています」  店主が池をそっと指差すと天の星々が池に映りこんでいました。 「ふむふむ。何か意味があるのかい?」  あなたは澄んだ池の中に映りこんだ星々と底に留まっている空に輝く光と同じ形をした色とりどりの金平糖の美しさに見とれながら聞きます。 「はい。距離は願いの叶いやすさ、そして星の中に混じる早さで願いが叶う時間を示しております」  店主が浮かべた船はゆっくりと水に溶けて、上に乗っていた星も水底の仲間達に混じって行きました。 「どうする? やってみる?」 「勿論! 面白そう!」  あなたはパートナーに声をかけると、瞳をキラキラさせて返してきました。 「ふふ。あなた方の未来と願いに幸多からん事を……」    ここは七夕祭。今だけは二つの星が一つになる時。二つの願いが形になる夜。  さて、あなたは何を願いますか?
【海蝕】探偵マウロの事件簿~海水浴
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帰還 2018-07-19

参加人数 4/8人 弥也 GM
 ブリテンのジョンソン家。  Jマーク鍋で御馴染のジョンソン家だ。 「表向きはね」  そう言ってマウロに微笑むのは、ジョンソン家の一人娘ライリー。  つい先日誘拐され教団のエクソシスト達の働きで、無事救出されたが主犯はジョンソン家に長く務めるメイド長だった。  新聞でも大きく報道され、家出猫探しと看板を磨くしか仕事のなかった探偵マウロにも仕事が入るようになった。 「誰のおかげ?」  そう言ってライリーがマウロの事務所に入り浸る様になって数週間。 「こんなトコロで油を売ってないで、子供は勉強をしないといけないよ」  マウロがそう言っても、お目付け役のメイド長が居なくなったことを良い事に、糸の切れたタコである。 「だってパパがここなら遊びに行っても良いって言うんだもの」  16歳。大人と子供の境目。時々見せる亡き母メラニーに似た大人っぽい表情はマウロをドキリとさせる。  メラニーとマウロは、昔何かあったようだが、今となってはマウロと神のみぞ知る、である。 「おー! ライリーちゃん、来てたか! 今日のおやつはミートパイだ!」  大きな身体、大きな声、そしてその大きな手にミートパイを持って現れたのは、マウロの幼馴染精肉店店主テオだ。 「やったぁ!」  何がジョンソン氏を安心させたのか、誘拐事件以来すっかり信頼を得てしまった。 「で、ヴェネリア行きは、パパさんOKしてくれたのか?」  切り分けたパイをテオがライリーに手渡す。 「全然ダメ。ほらウチ使用人が1人減ったでしょ? 海何て危ない場所、御付きもなしに行ってはダメって」  母親代わりだったメイド長が居なくなった今、ライリーが自由に行き来できるのは事務所(ここ)だけか。見た目は成長しても、まだまだ遊びたい盛り好奇心旺盛の子供だ。 「一緒に行こうか?」  口の両端にパイを着けたライリーを見て、つい、マウロは言ってしまった。  ライリーの動きが一瞬止まったかと思うと、手にパイを持ったままマウロに抱き着いていた。 「ほんとに? 本当なの、マウロ!」  頬張ったパイを飛ばしながらライリーが叫ぶ。 「おい、俺は無理だぞ。七夕で店が忙しい時期だ」 「分かってるよ」  ライリーを引きはがしたマウロは、ライリーが口の中のパイを飲み込むのを待った。 「じゃぁ、ジョンソンさんに私と一緒なら良いか確認して、予定を決めよう。私も仕事があるしな」 「仕事ったって、どこぞの奥様の愚痴聞きだろう」  ガハハと笑うテオを、ライリーが軽く睨む。 「奥様の愚痴聞きだって、立派なお仕事です! だめよ、人のお仕事をそんな風に言っちゃ!」  ライリー、残りのパイを口に押し込むと父親の元へと飛び出して行った。  大人の男二人が思わず顔を見合わせて、吹き出す。 「育ちが良いんだか、悪いんだかわからないな、あの子は」  マウロは、床に散らばったパイの食べカスを見て苦笑いをした。   「じゃーん!」  浮かれた声と共に事務所に入って来たライリーは、一枚の紙をマウロに差し出した。  ジョンソン氏からヴェネリア行きの許可を貰ったライリーは、ここ数日冒険のスケジュール調整に没頭していたのか事務所に姿を見せていなかった。 「久しぶりに来たと思ったら、もう予定を決めてしまったのか」  受け取ったスケジュール表を見て、マウロの顔色が変わった。 「海は危ないよ、ライリー」 「大丈夫よ。マウロは海が怖いの?」  ライリーに顔を覗き込まれたマウロは、自分の顔が赤くなるのを感じた。 「ち、こ、怖いとかではなく、行った事がないだけだ」 「だったら、良い機会じゃない! じゃ、けってーい!」  無邪気で強引なライリーに逆らえないのは、やはりメラニーに似ているかだろうか……。 「し、しかし私は水着を持っていないぞ」 「大丈夫、向こうで貸してくれるんですって!」 「ベリアルが出るって話だよ」 「あら、それだって大丈夫よ。パパが教団にお願いをして一緒に来てもらうように手配したわ」  抵抗する材料が尽きたマウロは、人生初の海へと挑む事になってしまった。 <ジョンソン氏からの依頼書>  ブリテンのジョンソン家当主ジョンソンです。  先般は娘ライリーを救助いただきありがとうございました。  実は、娘が生まれて初めて旅行をします。  これまで、大変な思いをして来たライリーに是非楽しく・安全な旅をしてもらいと思っております。  目付け役に探偵マウロが同行いたします。  非常に信頼できる男なのですが、正直頭でっかちで面白みに欠けます。是非皆さまでフォローしていただければと思います。
一夜限りのキャンドルナイト
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帰還 2018-07-18

参加人数 4/8人 桜花 GM
 七月七日は七夕の日。  元々は東方島国ニホンの風習で、短冊に思い思いの願いを書いて笹や竹に飾るイベントだったらしいが、七夕という風習は形を変え、ここアークソサエティにも伝わっていた。 「ねー、ママ。このろうそくなぁに? なんでこんなにたくさんあるの?」 「これはね、キャンドルナイトっていうのよ。綺麗でしょう」  七月七日の前後にはアークソサエティの至る所でお祭りが開かれており、年に一度しか会えないズラミスとサラミの再会を祝う。  ニホンで行われている七夕のように笹と竹に願いを込めた短冊を飾ったり、その笹と竹を川に流したり、ズラミスとサラミの逸話にちなんで天の川に向かって大切な人を想ってお祈りをしたりと祝い方はいろいろだ。  街によれば七夕の日は一日中踊り明かすような街もあるらしいが、どうやらあなたが訪れたこの街では川沿いに並べられた蝋燭に火を灯し、キャンドルナイトとしてお祝いをしているらしかった。 「こんなに綺麗なんだから毎日お祭りしてたらいいのに。そしたらみんな楽しいよ」 「ふふっ、それもそうね。けど、特別な日だから楽しめることだってあるのよ」 「ふーん……」  と、少女は川沿いに並べられているキャンドルの一つに顔を近づけ、不規則に揺れるキャンドルの火をじっと見つめる。  目を凝らしてよく見てみると、キャンドルが置かれている器には黒い文字で『エクソシストになりたい!』と書かれていた。 「ねーー、器になんか書いてる!」 「きっとそれは願い事ね。キャンドルを置く器に自分の願い事を書いてそれが叶いますようにってお祈りするの。桜ちゃんはどんなお願いをするのかな?」 「私? うーん、えっとね……、私はね……」
【海蝕】波に身を任せて
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帰還 2018-07-18

参加人数 8/8人 しらぎく GM
 高く昇った太陽の日差しに熱される白い砂浜はキラキラとその光を反射して、透き通ったターコイズブルーの海は奥に行くほど濃いグラデーションを描いている。絶好の海水浴日和だが、ベレニーチェ海岸に見える人の姿はまばらだ。  実は今夏、地中海でベリアルが出現したとの報があり、それは人々の間に瞬く間に広まった。ベレニーチェ海岸は幸い平穏なものの、いつこの海岸にもベリアルが現れるかという人々の不安を、この海岸を訪れている人の少なさが物語っている。 「あんたたち、時間があるならサップってのをやって見ないか?」  そんな中、海水浴客に紛れて湾岸の警戒にあたっていたあなたたちに海の家の店員が声をかけた。 「サップ?」  首をかしげると、店員は側に立ててあるボードをコツコツと叩いた。 「このボードに乗って、パドルで操作するスポーツさ。波の上を散歩するように進めるんだ。サーフボードより安定感もあるから二人乗りもできるぞ」  そして店員は後ろに立つ店を指差してあれは俺の店だと言った。 「水着は店でレンタルできるから、試しにやって見ないかい?」  小麦色の肌と、それとは対照的な白い歯を見せてニカッと店員が笑った。  ベレニーチェ海岸の安全を人々に示すのも浄化師の役割でもある。浄化師二人の返答に店員は嬉しそうにまた白い歯を見せ頷くと、 自分の店へと案内するのだった。
【海蝕】波打ち際の宝物
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帰還 2018-07-16

参加人数 8/8人 あいきとうか GM
「たくさんの人たちの笑い声が響く、夏の海が好きなの」  べレニーチェ海岸の近くで服屋を営む女主人は、そう言って寂しそうに肩を落とした。 「でも、今年はこの通り。もうすっかり暑くなっているのに」  海洋に住む生物を元にしたベリアルが地中海に侵入した、という報せは瞬く間に国中を駆け巡った。  地中海の一部であり、薔薇十字教団の管轄下、さらに教皇国家アークソサエティ唯一の安全な遊泳が保証されたこの海岸は、夏も盛りを迎えようという今、かつてないほど寂れてしまっている。  ベリアルが地中海に現れたとはいえ、べレニーチェ海岸から離れた位置でのことだ。この美しい場所は変わらず平和が保たれていた。しかし、人々の胸に一度でも根差した不安と恐怖の芽は、そうやすやすとは消えてくれない。 「だからね、考えたのよ」  服屋の女主人は目を輝かせる。 「小さなころ、絵本で読んだの。『宝探し』っていう海の遊び。とても素敵なのよ。それを、浄化師様主催という形で執り行うのはどうかしら」 『宝探し』とは、浅瀬や砂浜に子どもの手のひらほどの大きさのゴムボールを埋め、見つけるという簡単な遊びだ。ゴムボールを宝、あるいは宝石に見立てることから、『宝石探し』ともいう。  それを浄化師――薔薇十字教団が主催することで、べレニーチェ海岸の安全性をアピールし、例年通り人々に楽しんでもらおうというのだ。 「水着はうちがお貸しするわ。ね? お願いよ、いつもの楽しい海岸にしてちょうだい?」  かくして、夏のべレニーチェ海岸を盛り上げるための指令が下された。
【海蝕】アイの海
難しい|すべて

帰還 2018-07-13

参加人数 8/8人 春川ミナ GM
「ふふっ。ねぇ知ってる?」 「何がだい?」 「この海岸の名前に関する事」  ここはルネサンスのヴェネリア地区、ベレニーチェ海岸。二人の仲睦まじそうな男女がオレンジ色に染まった砂浜を歩いている。 「興味あるな。聞かせてもらえるかい? ベーチェ」 「ええ。アレン、あなたは人魚って知っているかしら?」  ベーチェと呼ばれた女性は何がおかしいのかクスクスと笑う。アレンはそれを不思議に思いながらも答えた。 「……確か、下半身が魚で上半身が人の形をした生物だっけ。セイラーンだったかな? 歌で人間を誘惑して海に溺れさせたり船を海に沈めたり、あまり良い話は聞かないけれど」  2人の足跡と足音を波がゆっくりと消していく。 「セイレーン、よ。ただ、悪い噂ばかりじゃないわ、聞いてみたい?」 「ああ、良ければ」  ベーチェの顔は麦藁帽子に隠されてしまい、半月状に開いた口元しか見えなかった。しかしアレンは彼女が楽しそうな声だったので笑っているのだと判断し、促した。 「……セイレーンは恋をするととてもとても弱くなってしまうの。それに陸で生きていく為に魚の下半身を捨てて、人間の脚を手に入れる事はナイフで両脚を刺し貫かれる痛みを常時感じる事になるわ。だから恋をした相手に愛情を注ぎ続けて貰わないと耐え切れずに海の泡になってしまうの」 「詳しいね。でもセイレーンは想いを伝えると声を失ってしまうんだろう? 愛を伝えられなくなるし、歌も歌えなくなる。……それはとても悲しい事だと思うんだ」  アレンはベーチェの澄んだ声を聞きながら、御伽噺程度に聞いた自分の知識を掘り起こす。つがいの鳥が夕焼けに向かう姿を見送りながら。 「愛が在るならば、言葉が無くても伝わるわ。藍の海の深さよりもずっと深い愛。哀を覆い隠してしまうくらい」  歌うような言い回しをするベーチェの声がアレンの脳を満たす。それはとても心地よく、温かい海に浮かんでいるような錯覚さえ覚えた。 「ベーチェは……セイレ……。いや、何でもない……」  セイレーンなのかと冗談交じりに聞こうとしたアレンだったが、冗談にするにはあまりにも真実味を帯びているし、もし口にすればそれだけで目の前の彼女が海の泡になってしまいそうな危うい錯覚さえ覚えて出かけた言葉を飲み込んだ。 「ふふっ。冗談よ、アレン。もしかして私がセイレーンだと思った? 残念でした」  白いワンピースを翻してアレンの前に立つと顔を覗き込むベーチェ。その顔はしてやったりといった悪戯好きの子供を彷彿とさせて、アレンも毒気を抜かれてしまった。 「だ、騙したな~!」 「きゃあ! ふふっ」  アレンはまんまと一杯食わされたという風体でベーチェの手を取り、そのまま胸の中に体ごと抱き寄せる。後ろから抱きしめる形になり、太陽の光を吸った麦藁帽子の香りとベーチェの香りがアレンの胸を満たした。 「……ねぇアレン」 「ん?」  ベーチェが一段、声のトーンを落として語りかける。それは水平線の向こうに沈みかける光と今の空と同じ、どこか憂いと藍を含んだ声音だった。 「セイレーンはね。その涙が輝石になるの。だから過去には高値で取引されていたわ。一日二日で溶けて消えてしまうような物だけれど、過去にはそれで乱獲の憂き目にあったらしいわ。人間って馬鹿よね。見た目だけに惑わされて物事の本質を見抜けないなんて」 「……」  ベーチェのポツリポツリと独白じみた言葉にアレンは沈黙で返す。 「本当のセイレーンの涙はね、真実の愛情を受けた時にしか流せないの。それは永久に残るとも言われているわ。どんな苦難が降りかかろうが決して砕けない。愛する者達がそうであるように」 「この海はセイレーンの涙で出来ているのかも知れないね。けれど僕はセイレーン達に悲しい想いも哀しみの唄も味わってほしくない。目に入るのが哀の海だなんて辛過ぎるだろう?」 「ふふっ……。アレンったらいつ詩人になったの? でも、そうね。アレンの様な人が沢山居たらセイレーンの住む場所は愛の海になるかもしれないわね」 「ははは。詩人って、僕はそんなものには向いてないよ。でも、そうだね。詩人ならこう言うかな? ベーチェ、僕と一緒に幸せの音色をセイレーンの居る海に響かせてくれませんかってね」  アレンは丘の上を指差す、そこには恋人達や友人同士が鳴らす幸福の鐘と呼ばれるものがあった。 「ええ、喜んで。行きましょう?」  ベーチェはアレンの手を引き、嬉しそうに一歩踏み出す……が、その足が急に止まる。 「ベーチェ? どうし……」 「居たぞ! 魔女だ!」 「こっちだ! 歌に気をつけろ! 口を開く前にしとめるんだ!」  アレンの訝しがる言葉は降りかかる怒声にかき消された。 「何だ、お前ら!」  ベーチェを男達の視線から自分の背に隠す様に立つアレン。震えるベーチェの手を心配ないと安心させる為に強く握った。 「そいつは魔女だ! 俺達の船を何隻も沈めたセイレーンがノコノコと陸に上がってきやがって! 爺さんの仇だ! 覚悟しやがれ!」 「待ってくれ! ベーチェがセイレーン!? そんな筈は無い!」  銛や斧で武装した漁師風の男達に負けじと声を張り上げるアレン。 「うるせぇ! コイツが証拠だ!」  何かの薬だろうか、男が液体の入った小瓶をベーチェの足元に投げると白い煙が発生した。 「キャア!?」 「そ、そんな!」  ベーチェの悲鳴と驚愕したアレンの声が響く。そこには下半身が魚の人魚、いや……セイレーンが居た。 「これで分かっただろう! そこをどけ!」 「……断る! セイレーンでもベーチェはベーチェだ! 僕が真実の愛を注ぎたいただ一人の存在だ!」  男達の前に立ちふさがるアレン。少し驚いたが何となく予感はしていた。それに自分の言葉に嘘は無い。 「ベーチェ、僕が担ぐから一緒に逃げ、グアガッ……!」  後ろの彼女に優しく語り掛けるが、それは悪手だった。男の一人が放った投石が側頭部に当たったのだ。脳を激しく揺さぶられ、倒れこむアレン。 「良いの、アレン。理由はどうあれ船を沈めたのは私。だけれど、セイレーンの姿を見ても庇ってくれて嬉しかった」 「ぐぅっ! ベ、ベーチェ!」  ベーチェがアレンの側頭部に真っ白いハンカチを当てるが、それは見る見るうちに赤く黒く染まっていった。まるで今の空と海のように。 「そういえばずっと言って無かったわね。愛しているわ、アレン」  アレンの唇に柔らかい感触が落とされた。そしてベーチェの瞳から涙が零れる。それはすぐに透き通る青さの石へと変わり、アレンの額に落ちた。 「――――」  口を4回ほど開くベーチェ。それは声にしなくても判る別れの合図だった。 「ベーチェェェェ……」  押し寄せる潮騒は無慈悲に男の嗚咽を掻き消して行った……。  *** 「こんな事があったんじゃよ」  総白髪の男性は竪琴を置くと、杖を手に取った。 「毎日探しておったが、もう儂は足が悪くて上手くは歩けん。誰かに拾われておるならそれはそれで諦めもつくんじゃが……。未練じゃの。見つかった場合はコレを渡そう。金貨が入っとる。見つからなかった場合でも報酬は出す」  ドサリと音を立てて目の前に置かれた皮袋の重さにどよめき立つ酒場。 「……余生少ないジジイの戯言だと思って聞いてくれんか」  ここはベレニーチェ海岸近くにある、とある酒場。  老いた吟遊詩人の詩は今もアイの海に響いている。
七夕浴衣を宣伝しよう
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帰還 2018-07-12

参加人数 8/8人 春夏秋冬 GM
 七夕。  元々は東方の島国ニホンの風習なのだが、今では教皇国家アークソサエティにも広まっている。  それは教皇国家アークソサエティに属する「ソレイユ地区」にも類似した逸話があったからだ。  その逸話は、今でも語り継がれている。  むかしむかし、ある所にズラミスとサラミという仲睦まじい夫婦がおりました。  夫婦は死んだ後、別々の場所で星になりました。  ですが星になっても2人は、逢いたいという想いが募ります。  どうしても逢いたいと思った二人は、妙案を思いつきました。  星屑を集めて橋にしようと思ったのです。  二人は来る日も来る日も星屑で橋を作り、ついに二人は出会うことができました。  そうして、橋は天の川として、夜空を照らすようになったということです。  語り継がれたその逸話に、ニホンの笹と竹に短冊を飾る文化が入ってきてからは混同され、今では教皇国家アークソサエティでもニホンの風習に準じるものとして広まっている。  七夕の時に行われる風習は、大きくは三つ。  ひとつめは、ニホンで行われるもののように笹と竹に願いを込めた短冊を飾ること。  ふたつめは、短冊を飾った笹と竹を川や海に流す禊の行事を行うこと。  みっつめは、ズラミスとサラミの逸話にちなみ、天の川に向って大切な人を想って祈ること。  そうした風習が、七月七日の前後に行われていた。  その時期には、ソレイユ地区だけでなく他の地区でも七夕は行われている。  もちろんその中には、商売としても盛り上げようとしている所も。  リュミエールストリートの中にある大手ファッションショップ「パリの風」も例外ではない。  七夕にちなんだ浴衣を売り出そうとしていた。  その一環として、浄化師に浴衣のデザインを頼んでみよう、という話が持ち上がった。  浄化師にデザインを頼み、出来上がった物をリュミエールストリートで着て貰い、宣伝しようというものだ。  そうした依頼が教団に舞い込んできました。  内容は、次のようなものです。  浴衣のデザインをして欲しい。  出来上がった浴衣を着て、リュミエールストリートを宣伝を兼ねて回って欲しい。  とのことでした。  教団員は早速、その要望に沿って指令書を出しました。  その指令を受けて、アナタ達は――?
マダム・タッツーの呪いの遊戯盤
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帰還 2018-07-10

参加人数 5/8人 北野東眞 GM
 ざ、ざ、ざ……濃厚な血の匂いと生臭さが鼻につく。  納屋に隠れ、生き残っていた村人はそっと外へと出ると、その有様に息を飲んだ。 「ひぃ」  一人だけ立ち尽くした男が笑って剣を振るい、山となった死者たちを崩していく地獄が広がっていた。  誰も彼もが死んだことに唯一生き残った村人は絶望し、茫然としていた。その前に男が近づいてきた。 「アリラ、きみのため、きみのため、きみが悲しまないため……必ず取り戻す」  剣が、落ちてきた。  教皇国家アークソサエティの東南に位置したアールプリス山脈の根本にある小さな村に狼型のベリアルが出現し、浄化師へと指令がなされた。  が。村は静寂に包まれる。  そのなかでただ一人だけ動いているその男は血に汚れた剣と重いそれをずるずると引きずり村にある教会へとやってくるとドアを開けた。 「ああ、アリラ、アリラ、君のために、君のために殺してきたよ。これだけの死体ではまだ足りない? この村人たちだけでは足りない?」  教会の奥の椅子に腰かけた黒髪の少女に男は問いかける。少女は微動だにせず、その瞳から涙が零れている。 「アリラ……アリラ……君を手にするにはまだ命が足りない? 完璧ではないのかい? だったら、ここにくるやつらを殺し尽くす。大丈夫、ベリアルに貫かれたあいつはもういない。俺が……マドールチェだから? それともベリアルに食い殺された、役立たずのあいつではないから? だから契約もできないのか?」 「この子を喜ばせるにはまだ命も死体も足りないようですわねぇ」  狂ったような問いかけのなか、品のよい声が落ちてくる。  男が顔をあげると、黒髪の少女の座る椅子の横に黒いドレスの女。  黒い外套に、左手の甲には十字架が輝いている。 「ほら、もうすぐここにちゃんとした浄化師がくるわ。その人たちを殺して、その命を捧げれば、きっとあなたは本物となって契約もできるはずよ」 「マダム・タッツー……本当ですね? 本当に、本当ですね? 嗚呼、まったく信じられません。大切な人がいるのに。本当にどうしてベリアルなんかに食い殺されたのか……マダム・タッツー。我が母、あの役立たずに似せて作ってくれたこと感謝しています。俺は嘆き悲しむアリラのために生まれた。彼女を見て俺は生まれた意味がわかりません……けれど契約が出来ない、どうしてアリラは俺を見ないのですか? マダム・タッツー、我が神、あなたなら俺の問いに応えられるはずだ」  大切なパートナーを思う切実な声に彼女は――マダム・タッツーは口元に笑みを浮かべた。 「私はただの魔術師ですわ。ただバットエンドが嫌いなの。せっかく、浄化師は二人で想いあう素敵な人たちなんですもの。だったら、大切なパートナーを亡くしても、また同じもの与えてあげたくなるじゃない? ただねぇ、見た目だけが同じで、記憶も魂も違う。  さぁ、急いで、急いで! この地のかわいそうな魂を増やして、呪いを生み出して食らいつくして、本物になるの!」  甘い毒を滴らせたような言葉に彼は嬉しそうに頷いた。 「待っていて。アリラ、アリラ、すぐに……殺し尽くしてあげる。ここにくる浄化師たちを、そいつら君に捧げて、そうして契約をしよう。今度こそ、守り抜いてみせるから」  アリラと呼ばれた少女は虚空を見つめ、涙を流し続ける。その唇からこぼれるのは罪悪に染まった言葉。 「ジルド、ジルド、ごめん、ごめんなさい、私のせいで、私をかばったから、あなたは……ジルド、ごめんなさい……」  マダム・タッツーは泣き続ける少女の頭をひとつ撫でると、くるりっと背を向ける。 「私はなくしたものに悲しむ人に、なくしたものと同じ顔をした人形をあげるだけ。それがどうしようが、どうなろうが、幸せな結末にかわりはありませんわ  あなたたちがそうやって想いあって、悲しんで、ないものをねだって、純粋に求め合うために……ほぉらすてき、すてき、あなたがなくしたものに悲しんでなにも見ないから、愛しいと呪いがあなたをおもうから  いっぱい死んだ嘆きも、悲鳴も、憎悪も、絶望も……この地を満たしている。次に誰かが死んだら、他の呪いを食らい続けて大きく染まった呪いは今度こそ暴走して、この地を不毛の地にすることでしょう。  正義感強く、悪を倒した浄化師がすべての引き金になるなんてすばらしいわ」  マダム・タッツーは少し、考えるようにして少女の耳元に囁いた。 「ほぉら、また、あなたの大切なジルドを殺す人がくるわ。命をかけて守らないと、また失うわよ」  その言葉にアリラの目がカッと大きく見開いた。 「ごめんなさい、私のせいで……彼を殺すやつから彼を今度こそ守らないと、守らないと、私は死んでもいいから、彼を殺さないで、また殺すなんてしないで。守るわ、こんどこそ、彼を、私の命に賭けて、誰からも、どんなことからも、私が犠牲になっても構わない」 ●  少し厄介な依頼なんだ、と受付口の男は口にした。 「数頭の狼らしいベリアルに困っていた村にアリラとジルドと二組の浄化師が指令で向かったんだが、予想よりもベリアルが強く、一旦退こうとしたとき……アリラがベリアルに襲われ、パートナーのジルドが止める声も聞かず、アリラを救おうとして戦ったそうだ。他の二組はそのまま一旦森のなかに退いて態勢を立て直したそうだ。ベリアルは討伐されていたが、アリラとジルドはいなかった」  ここからが問題なんだよ、とつけくわえる。 「依頼した村から連絡がはいらない。調査すると村人は全員がジルドらしい男によって殺害されていたそうだ。ただし、アンデッドやゾンビというかんじもしない、あいつはアリラのためにと口にしているそうだ。強い魂と力を捧げれば、アリラを手に入れると……原因はわからないが、ジルドの討伐と、事件の原因を探ってくれ。いくらジルドの腕がたつといっても大勢で囲めば問題はないと思うが……気を付けてくれよ? それにアリラについても生きているか死んでいるのか不明だ。もし、この事件の犯人が本当にジルドならば、アリラの言葉であれば届く可能性があるかもな」  あと、と険しい顔で続けられた。 「なんでも終焉の夜明け団に属している魔術師であるマダム・タッツーの姿が目撃された。  こちらでわかっている限り、彼女自身戦闘能力は皆無だが、口八丁や魔術で人を誑かして操ることから【人形師】マダム・タッツーと呼ばれている。  噂ではマダム・タッツーが作るのは死んだ者の人形だけだそうだ。なんでもその死者を模した人形は呪いのようなもので、他の呪いを食らうことで完璧な、生者の記憶と魂を宿すともいわれているそうだが噂はただの噂だ。……もしかして、ジルドもマダム・タッツーの言葉に惑わされてアリラを蘇らせようとしているのか?  マダム・タッツーの行く先では大きな呪いが生み出され、それが暴走して、災いをふりまいている……呪いを浄化しようにもただ闇雲にその地を祓うだけじゃ意味がない、その呪いを食らう大本をどうにかして、きちんと正し、浄化すること。でなければ多くの血を吸ったこの地は不毛の地となるだろう」
【海蝕】名前を呼んで
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帰還 2018-07-10

参加人数 8/8人 瀬田一稀 GM
 ベリアルの出現は確認されていないが、万が一のときに備えて、エクソシストの警備が必要。  そう言われ、あなた達は、ベレニーチェ海岸を訪れた。  ――と。  話しかけてきたのは、一人の女性。 「やあ、エクソシストさん! フェアリーブを飲まないかい?」 「フェアリーブ?」  首を傾げたあなたに、女性は液体が入ったコップを差し出してくる。 「ミルーチェっていう果実から作られたカクテルだよ。これを飲むと、素敵なことが起こるのさ」  とろりとした琥珀色の液体は、甘いのに爽やかで、いくらでも飲めてしまいそう。 「おい、そんなにごくごく飲んで大丈夫か?」 「平気よ。だってこんなに美味しいんだもの」  あなたは答え――目の前にいる女性の顔が、ぼやけて見えることに気がついた。 (なに、これ……)  頭と体がふわふわする。 「おいっ!」  パートナーが支えてくれたおかげで、なんとか倒れることはなかった、けれど。 (なんか変な感じ……)  あなたは、「ねえ」と呼びかけようとして、自身の声に驚いた。 (えっ、なんで……彼の名前しか呼べないの!?)  ※ 「大事な人の名前しか、呼べなくなる……?」  女性から果実の説明を聞き、パートナーが目を丸くした。 「なんだそれは……」 「ミルーチェっていうのが、不思議な効果がある果実なんだよ。まあ、今飲んだのはコップ一杯程度だし、一時間もすれば元に戻るから、心配はないさ」
指令を終えた帰り道
とても簡単|すべて

帰還 2018-07-10

参加人数 8/8人 oz GM
 夜を含んだ茜色の残映。一日の終わりを告げるように日が暮れていく。夜の帳が二人を覆おうとしていた。  あなたたちは、ようやく指令から解放され、教団へと帰ろうとしていた。  教団へと帰る際に通り過ぎる道は、まだ人も多く賑わっている。行きかう人々を横目に外灯に照らされた路地を進む。それとは正反対に、あなたたちは互いに会話もないまま気まずい空気が漂っていた。  あなたは今回の指令の際に失敗してしまい、パートナーに迷惑をかけてしまった。自分がやってしまった失敗に落ち込み、パートナーまで巻き込んでしまったことを思うと心が重い。  隣を歩くパートナーを横目に見ると、いつもより精彩に掛け、疲れた表情を浮かべている。そんなパートナーにあなたは罪悪感が募るばかりだ。  パートナーは早く教団に戻りたがっているように見える。心なしかいつもよりも歩くのが速い気がする。  しかもタイミングが悪いことに未だにパートナーに謝ることができていなかった。指令時はそれどころではなく、パートナーは自分の失敗のカバーに追われていて、謝ることもお礼を言う機会も逃してしまっていた。  今のうちにパートナーに謝るかお礼を言わなければ。時間が経てば経つほど言う機会を逃してしまうだろう。  あなたはパートナーに素直に謝ることができるだろうか。パートナーはどんな反応をするだろうか。迷惑をかけた自分を許してくれるだろうか。こんな自分がパートナーでいいのか。  そんな様々な不安が喉の奥からこみ上げそうになるのを押さえ込みながら、意を決して、パートナーに話しかけるのだった。
ルネサンスの光と影
普通|すべて

帰還 2018-07-08

参加人数 8/8人 久木 士 GM
 1718年6月某日、ルネサンス地区ヴェネリア。密命を受けてこの地を訪れていた薔薇十字教団の要人が1名、何者かによって誘拐された。  幸か不幸か、その時ルネサンス地区に滞在していたあなたたちは教団からの招集を受け、事件翌日にヴェネリアのとある宿を訪れた。そこは表向きは普通の宿だが、従業員は全員が教団の関係者。教団員にとってはこの上もなく安全な場所だった。あなたたちが案内された一室は厚手のカーテンで窓を遮られ、簡素な壁掛けランプの薄明かりがあるのみだった。薄暗い室内では、一人の男があなたたちを待っていた。 「あんたたちが、迷子探しを手伝ってくれる浄化師さんか」  目深に被った帽子と影のせいで顔はよく見えなかったが、男はいくらか年を食っているような声をしていた。服装はヴェネリアのどこにでもいるような観光客そのものだが、彼こそがこの指令に関係する人物なのだろう。あなたたちが自己紹介をしようとすると、男はそれを遮る。 「お互いの名など知らんほうがいい。それがお互いの為でもある。どうしても呼び名が必要なら、クヴァレと呼んでくれ。素性は明かせんが、教団の協力者とだけ言っておこう」  クヴァレと名乗った男は、あなたたちに事件やルネサンス地区についての説明を始めた。  ヴェネリアは100以上の島々が、およそ400の橋と150を超える大小の運河で結ばれて成り立っている水上都市だ。水面に浮かぶマーケットや満潮時に水で満たされる広場など、非日常的な街並みを見るために多くの観光客が訪れる。  ルネサンスは美しい土地だが、地区の南北で貧富の差が著しく、その経済格差はアークソサエティ国内でも類を見ない程だ。北部は国内随一のエネルギー資源埋蔵量を誇り、その採掘を中心として経済が潤っている一方、地区の南部に目立った産業は無い。農業を主産業としてはいるものの、貧しい南部はほぼ全域がスラムと化している。そこに住むのは、そのほとんどが奴隷階級層。観光で賑わう北部と違って、ここへ近寄る者はそう居ない。ヴェネリアには裕福な観光客を狙うならず者が少なからず存在するが、そのほとんどがルネサンス南部の出身だった。  誘拐された要人が連れていたのは、護衛の浄化師1組と補佐役の教団員1人という必要最小限の人数。一行が路地に入ると、突如として魔術「ノワールバインド」が行使された。護衛は即座に抵抗を試みたが、続けざまに放たれた攻撃魔術によって倒れる。そして補佐役の教団員と要人だけが残されると、何者かが補佐役の後頭部を殴打して気絶させた。彼が目覚めると、瀕死の重傷を負った浄化師の近くに1枚の紙が置かれていたという。その紙には、こう書かれていた。  ――奴隷制を容認する教皇と、国家の走狗たる薔薇十字教団に、我々は鉄槌を加える。  我々は『リバティ戦線』。奴隷を解放し、遍く人類の平和と平等のために戦う者である。 「戦線のろくでなしどもはルネサンスにも多く居る。中には学のある奴も居るだろうが、連中の大半は貧困層か元奴隷だ。こんな手の込んだ代物を作れるのは、戦線のごろつき共よりもっと性質の悪い連中――『終焉の夜明け団』とか『サクリファイス』とかの、正真正銘の屑どもだ」  声明文を読み終えたクヴァレは、二つの組織の名を口にした。それを聞いたあなたたちは思わず身構える。終焉の夜明け団といえば、魔術の開祖たる『アレイスター・エリファス』を崇拝し、彼の復活を目的とする狂信者の集団だ。もう一方のサクリファイスは「人間は滅びを受け入れ、世界救済のための生贄になるべきである」という思想を持っていて、人類の作り出したありとあらゆるものを破壊するため、世界各地でテロ行為を画策・実行している。そんな集団が関わっているとなると、穏便に事を済ませることはできないだろう。 「迷子の要人だが、ヴェネリアで『魔導書』が発見されたとの情報を受けて調査にあたっていたそうだ」  魔導書。アレイスター・エリファスが遺した『法の書』から派生した魔術について記され、高名な魔術師によって手がけられたもの。現在浄化師が使っているアライブスキルは、ここに記された魔術を改良して生み出されたものだ。教団と終焉の夜明け団は、魔導書を巡って今も多くの血を流している。 「魔導書捜索の一行は、誰一人として制服を着ていなかった。そんな連中が襲われたとなると、事情については察しが付くはずだ」  あなたたちは頷く。普段着の一行が襲撃されたのならば、彼らは後をつけられていたか、もしくは魔導書の情報自体が偽物だった可能性が高い。であればこの襲撃も、事前に計画されたものと考えてよさそうだ。  クヴァレは背広の内ポケットから小瓶を取り出し、それを左右に小さく振る。どうやら魔術道具の一種らしく、しばらくすると中に冷たい明かりがぼんやりと浮かび上がった。その青白い光に照らされて、机に置かれたヴェネリア市街地の地図が見えた。地図には数本のピンが刺してあり、一番大きなものは倉庫の場所に立っていた。 「連中のねぐらは粗方見当がついている。浄化師さんには、そこで隠れている首謀者の確保を頼みたい」  彼の説明によれば、あなたたちの行うべきことは、まず第一に首謀者の身柄の確保だ。敵はリバティ戦線を名乗っており、戦線に所属する者たちが現れる可能性がある。首謀者たちが潜伏していると思われるのは、入り組んだ路地の奥にある古い倉庫。天井が高く、一部は二階建てになっているため、首謀者はほぼ間違いなく倉庫上部に陣取っているはずだ。下層には空の木箱が積まれている場所もあるが、魔術による攻撃を防いでくれるのは一度きりだろう。  倉庫上層に行くための階段は、倉庫左右に1つずつ。何段あるかは分からないが、上る際は攻撃の集中が予測される。囮を用意するか防御系の魔術を用いるかなどして、極力被弾を避けるべきだろう。上層に辿り着いた後は首謀者と戦うだけだが、襲撃の際に行使された「ノワールバインド」を含む魔術や定式陣など、罠が仕掛けられていないか注意する必要がありそうだ。  要人の救出を成功させるためには、何にも増して迅速な行動が必要になる。首謀者がサクリファイスに所属していた場合、その人物はあなたたちが倉庫に突入した瞬間、要人を生贄にするための行動を開始するはずだ。倉庫下層にリバティ戦線の兵士が居る場合は、彼らを無視するか最短の時間で片づけてしまうべきだが、その場合は上層での戦闘がより厳しいものとなるだろう。ともあれ、要人救出を実行するかどうかも含め、全てはあなたたち次第だ。 「倉庫には俺も同行させてもらうが、生憎と魔術が使えなくてね。下層で下っ端どもを片付ける手伝いをするか、攻撃魔術の囮になるかがせいぜいだろう。足には自信があるからな、多少はあてにしてくれても構わんよ」  クヴァレはにやりと笑い、倉庫内ではあなたたちの指示に従うことを約束する。首謀者との戦いに本当に参加しなくていいのか尋ねると、彼は声の調子を落として答えた。 「俺達の目的は、連中を挙げることだけだ。それができるんなら、手順や道筋はどうだって構わん」  帽子の下から覗いた彼の瞳は、狼のように鋭かった。クヴァレは帽子を被り直すと、あなたたちに地図の写しを渡す。決行は翌日の深夜。あなたたちはそれに備え、宿に集まった仲間たちと計画を立て始めた。
破戒の聖女
普通|すべて

帰還 2018-07-06

参加人数 8/8人 黒浪 航 GM
 ある満月の夜、人里離れた森の中にある苔むした廃墟の中に、その女はいた。  年の頃は、おそらく二十代前半。艶やかな銀髪に、透きとおるような白い肌、月光を思わせる淡い金色の瞳には、思考の窺い知れぬ深遠な光が宿っている。  着古した修道服でも隠すことのできぬ、類まれなる美貌と煽情的な肢体。しかし、その美しさは、目にする者の心にかすかな不安と狂気を植え付ける、ある種の『魔性』を感じさせた。 「うつくしきこと……つよきこと……」  冷たい石壁に囲まれた部屋にひとり立つ女は、緋色の光を放つ両手を掲げながら、低いつぶやきを洩らしている。  女の眼前の床には、二匹の大きな獣――若い雌のオオカミと雄のタカが横たわっている。どちらも、いまは魔術か、あるいはクスリの力で眠らされているようだ。 「正しきこと……罪深きこと……」  女は、目を細め口の端をかすかに動かした。しかし、そのとき彼女が一瞬みせた表情が、悲しみなのか、それとも喜びなのか、容易に判断することはできない。 「……………………」    やがて――、女は呪文を唱えはじめた。  しかし、ただの呪文ではない。  その忌まわしく、恐ろしい呪文は、異なる二匹以上の生物を無理やり合成させてキメラを生み出す禁忌魔術――ゴエティア。 「………………」    まもなく女が呪文を唱え終えると、床に横たわっていたタカとオオカミは、音も無く地面より湧き出てきた血の色の煙に包まれた。  そして、次の瞬間、その煙の向こうから、無数の骨が砕け、肉が裂けるおぞましい音が聞こえてきた。  断末魔の絶叫は、ない。  犠牲となる獣を前もって眠らせていたのは、女が与えたせめてもの慈悲だろう。    数分後――、あたりがふたたび夜の静寂に包まれ、魔力が部屋から溶け消えたあと、己の魔術によって誕生させたあらたな『生命』を目にして、女は、はっきりと笑みを浮かべた。  しかし、そのとき女が蠱惑的な微笑の裏に隠していた感情は、けして読み取ることはできなかっただろう。    一般的に、ゴエティアによって生み出されたキメラは、そのほとんどが術者も手が付けられないほど凶暴化する。  しかし、この、仔馬ほどの大きさの漆黒のオオカミに、赤黒いタカの翼と羽毛をつけたような外見のキメラは、女を自分の主人、あるいは母親だと認識しているのか、彼女の前では忠実な猟犬のように大人しくしている。  おそらくは、女の操る魔術の完成度が非常に高く、また、彼女自身が生まれ持つ魔力がおそろしく強大であるためだろう。 「さあ、いきましょう……」  女は、キメラを連れてしずかに部屋を後にした。  だが、廃墟を出た瞬間、女は意外なモノを目にした。 「あら……?」  木々の間に並んで、女を見つめているのは、紛れもなく教団の浄化師たちだ。 「見つかってしまいましたわね」  女は、たいして驚いた様子もなく、他人事のようにいった。    女がこの廃墟でキメラを生み出したのは、じつは今夜がはじめてではない。  これまでにも森の獣たちを使って何体ものキメラを合成し、そして、それらすべてを野に放ってきた。  彼女が生み出したキメラが、近隣の村や町で家畜などを襲っているのは知っていた。だから、キメラ討伐の依頼を受けた浄化師たちが、そのうちこの廃墟へたどり着くこともわかっていたのだ。 「……いきなさい」  女は、浄化師たちを睨んで歯を剥き出し、唸り声をあげているキメラを見あげて、やさしい声でいった。  キメラは、女を一瞥したあと、浄化師たち目掛けて勢いよく跳躍した――。 
オルヴワルの読書大会
簡単|すべて

帰還 2018-07-04

参加人数 8/8人 内山健太 GM
 エトワールの中心街には、リュミエールストリートというメインストリートが存在している。  主に歓楽街として有名なのだが、今、本好きに熱い支持を集めているイベントが存在している。  エクソシストの中には、魔術を研究する関係上、書物を読み込む人間が多い。当然、読書量は増え、本の虫となっているエクソシストも多いようだ。教団の図書館を利用するケースが多いが、実際に自分で本を購入する場合もあるだろう。そんな本好きのためのイベントが、リュミエールストリート内のフリーマーケット「オルヴワル」に存在している。  オルヴワルは主に蚤の市を行っており、多様な物品を販売しているのだ。  そんな中、貸し出した本を中心に、読書を行う「読書大会」が、最近になって行われるようになったのだ。世界各国のさまざまな古書を中心に、魔術関連の書物なども貸し出して、多数読めるようになっているようである。  そのため、今密かに本好きのエクソシストたちや、読書家の間で、この読書大会はブームになっている。読んだ本の感想を言い合うなど、楽しめるのだ。  そんな読書大会が今回もまた開かれようとしている。あらゆる国々の商人が、自慢の古書を持ち寄っているだけあって、規模も大きいようである。きっと、珍しい本や、楽しい本などが読めるだろう。  読書大会は、主に早朝から開かれている。読める本も多岐にわたり、民話を集めた民話集や、伝奇や伝承物語、魔術関連の書物、個人が制作した文芸誌、技術の粋を凝らした豆本など幅広くある。もちろん、人気の小説なども読めるようになっているので、読書が趣味という人間にはうってつけのイベントである。人気の本や希少な本などは、早くに貸し出されてしまうので、楽しむのであれば早朝から向かうとよいだろう。  オルヴワルの近隣には繁華街も多く、読書以外にもカフェやレストランなどで楽しむのもアリだろう。主に本好きのためのイベントと思われているが、本が好きな人間以外にも楽しめるようになっている。商人は、自分の知識を武器に本の魅力を伝えてくれるし、おすすめの本や話題になっている本、読んでおいて損のない本など、幅広い視点で教えてくれるので、本の知識がない人たちでも楽しめるのである。  本が好きなエクソシストならば、より一層楽しめるであろう。一日中、読書大会を楽しんでもいいし、少しだけ商品を見て、読書大会の雰囲気を楽しむのも一興である。  束の間の休日を、読書大会で楽しんでみてはいかがだろうか?
ダンジョンに挑戦しようLv1
普通|すべて

帰還 2018-07-04

参加人数 8/8人 春夏秋冬 GM
 教皇国家アークソサエティの中でも、ひときわ人口が多い場所のひとつであるエトワール。  その中心街であるリュミエールストリートに、冒険者ギルド「シエスタ」はあった。  ギルドとは言っても、そこは酒場を兼ねた情報交流の店といった風体である。  なにしろシエスタの始まりは鑑定士や情報屋、そして酒場の店主が同業者組合として組織化したものなのだ。  杓子定規に整然と、なんてものはない。  猥雑に乱雑に、明日の成り上がりを夢見てエールを一杯ひっかける。  そんな逞しくも胡散臭く、賑やかな空気をみなぎらせた場所である。  周囲を見渡せば、テーブルを囲んで雑談をする者達が見て取れた。  冒険者だ。  仲間と冒険で得た報酬を肴に酒盛りをする者が居れば、とんだ骨折り損のくたびれもうけだと愚痴をこぼすものも居る。  成功と挫折が入り混じり、高揚した気配が漂っていた。  その一角、4人掛けのテーブルで、冒険者とギルドの紹介業者が商談を始めていた。 「浄化師と一緒に、虚栄の孤島に行けってこと?」  耳に聞こえの良い朗らかな声で、自称冒険者であるセパルは聞き返す。  相手は冒険者ギルドの情報屋であり紹介屋でもあるクロアだ。  50そこそこの漂々とした気配を漂わせているクロアはセパルに返す。  「悪い話じゃないでしょ? 人手が欲しいって言ってたじゃあないですか」 「言ったっけ?」 「言いましたとも」  にぃっと笑みを浮かべクロアは返す。  油断ならないタヌキおやじといった風体のクロアの笑みは、どう見ても何か企んでいるようにしか見えない。  これにセパルは、肩をすくめるように息をつく。  見た目は20そこそこの見目良い美女といった姿をしているセパルだが、そこは百戦錬磨の冒険者。  なによりクロアとは長い付き合いだ。  クロアが話を持ちかけて来る時は何かを企んでいると、よく知っているし慣れている。 「今回は何の悪だくみ?」 「おや、これは心外ですな。騙そうとしているとでも?」 「違ったの?」 「もちろんですよ」 「ふ~ん。じゃあ、ボク達に話してないことは?」 「ありますよ」 「あるんじゃん」  呆れたようにため息をつくセパルに、クロアは目を笑みで細めながら返す。 「依頼内容を確かめるかどうかは冒険者の勝手ですよ。聞かれれば話しますとも」 「確かめもせずに食いついたのが、どうなろうと知った事じゃないってことね。まぁ、いいけど」 「ふふ、そこは自業自得ってことで」 「あいにくと契約書はしっかりと目を通す主義だから、ボクたちは」  セパルの言葉に、同じテーブルについていた2人の自称冒険者な仲間が静かに頷く。  1人はセパルと変わらない年頃に見える涼やかな美女であるセレナ。  もう1人は、20代半ばの厳ついにぃちゃんといった見た目のウボーという男性だ。 「どういう依頼なのか、ちゃんと話してね、クロさん」 「ええ、聞かれれば話しますよ」  漂々と笑みを浮かべながらクロアは応える。 「最近、教団の方でダンジョンが解放されたのは知ってるでしょう」 「ああ、封印の魔宮ってヤツ?」 「ええ、そうですよ。大分賑わっているようで」 「そうなんだ。でもアレってさ、浄化師じゃないと荒らしに行けないでしょ?」 「まったくもってその通り。こっちにも、おこぼれのひとつも欲しい所です」 「だから、こっちはこっちで他所のダンジョンを探ろうってこと?」 「ええ。だから虚栄の孤島なんてのは、適当だと思いませんか?」  いまクロアとセパルが話題にしている虚栄の孤島はダンジョンのひとつだ。  かつては孤島ながらも小さな国として栄えていたが、今では人口が減り滅んでいる。  人の手付かずでいたせいか自然豊かな場所だ。  場所によっては、魔法使いにより作られたというゴーレムやトラップが今も生きており、荒らす者を撃退するという。 「貴女達は、何度も訪れて詳しいでしょう?」 「それなりにはね。だから浄化師を案内しろってこと?」 「ええ。ゴーレムやトラップのある危ない場所にお願いしますよ」 「……ああ、そういうこと」  クロアの言葉にセパルは納得する。 「浄化師に危ない物は掃除して貰って、残りの美味しい所は頂いちゃおうってわけだ」 「人聞きの悪い。仕事に見合った報酬は教団の方に支払ってありますよ」 「でもさ、目の前にお宝があったら、つい手に取っちゃう浄化師も居るんじゃない?」 「ええ、まさにそこで。そうならないようお目付け役が要る訳ですよ」 「……つまり、案内犬と番犬の両方をしろってことね」 「その通りです」  にこにこと笑みを浮かべるクロアに、セパルは小さく息をついて返す。 「分かったよ。ボク達のやることは、ひとつは浄化師を案内して危ない物を掃除して貰うこと。ふたつ目はそこで手に入りそうなお宝を浄化師に持ち逃げされないようにするって事で良い?」 「ついでに2つして下さいな。道中のマッピングと、持ち帰れそうなお宝があれば持って帰って下さいな。私の方で高く買わせて貰いますよ」 「……マッピングした地図を売ってもうけようとしてない?」 「もちろんですよ」 「……まぁ、いいけどね。じゃ、折角だから試練の塔に連れて行こうかな」 「試練の塔?」  初めて聞く単語にクロアが聞き返すとセパルは応えた。 「虚栄の孤島の西にあるんだよ。森に囲まれた塔なんだけどさ、5人以上いないと中に入れないんだ」 「それはまた、面倒な場所ですね」 「作った魔法使いが面倒臭いヤツだったから。仲間みんなで協力プレイ、とか言ってたらしいし」 「見てきたように言いますねぇ」 「それだけ調べてるってこと、こっちは。探すの大変だったんだよ、その魔法使いが残した日記探すの。それよりも、他に話してないことはない?」 「ありませんよ。あとはせいぜい、貴女達が手に入れた情報を売りさばいて儲けさせて貰うくらいですよ」 「それは好きにして。じゃ、商談成立ってことで」  そんな話し合いがあった数日後、教団に依頼が舞い込んできました。  ダンジョンのひとつである虚栄の孤島。  そこにある試練の塔に冒険者を同行して探索して欲しいとの事です。  探索して得られた物は冒険者が持ち帰るとの事ですが、その分報酬には上乗せられているとの事でした。  この依頼にアナタ達は――?
夜空に星河、傍らに君
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帰還 2018-07-02

参加人数 8/8人 あいきとうか GM
 七夕。  もともとは東方島国ニホンの禊の行事だったそれが、教皇国家アークソサエティに入ってきたのはいつのことだったか。  教皇国家アークソサエティのソレイユ地区に伝わっていた類似の伝承と混じりあい、今では東方島国ニホンの風習に準じる形をとり、各地区で祭りが催されるようになった。  すっかり夏の風物詩となったこの行事は、ソレイユ地区ほど盛り上がってはいないにせよ、中心部から北に位置するヴァン・ブリーズでも開催されている。  あなたとはパートナーは七夕のこの夜、ヴァン・ブリーズ有数のデートスポットであるシェネフラウ灯台の警備を任されていた。  顔を上げれば、夜空に無数の星がきらめいている。中でも目立つのは真っ白な星群、天の川だ。ズラミスとサラミという仲睦まじい夫婦が、死後に別々の場所で星となり、どうしても会いたいからと星屑を集めて作ったのが天の川だ、といわれている。  海岸に建つ灯台の近くには、星を模した砂糖菓子や氷菓子を売る露店がぽつぽつと開いていた。日ごろはにぎわう場所ではあるが、今夜ばかりは祭りの中心地であるソレイユ地区から離れているため、人気も店も少ない。  だが、その分だけ静かに満天の星を眺めることができる。  警備といっても、喧嘩は起こらず敵襲の気配もない。  これってもしかして、デート?
雨の日は、きみと
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帰還 2018-07-02

参加人数 8/8人 北野東眞 GM
 連日の指令漬けで、疲れ果てた肉体を呼び覚ます音がする。  見慣れた自室の天井。  目が覚めて、鼓膜に響くのは、しと、しと……雨音。  なんだろうと怪訝に思ってカーテンをひけば、外はあいにくの曇り空。そこから糸のような雨が零れ落ちている。  一つの指令を終えて教皇国家アークソサエティにもどってきたのだが……新しい指令をと思ったのだが 「ほぉ、ここ連日、働きづめじゃないか~。うむうむ。二人して疲れた顔をしちゃいかんなぁ。もちろん、君たちに頼みたいことはいっぱいある。が、しかし、今回はこれだ。ずばり! 自分たちの肉体をしっかりと休めなさい!」  びしっと受付口の男は微笑んだ。 「今日の指令はひとつ! 自分たちを大切にして、そしてちゃんと指令にあたること。ささいなミスが命とりになる可能性もあるんだから~。そうそう、こんなチラシをもらったから、どーぞ。では、今日一日、しっかりリフレッシュしてちゃんとした顔でここにくるように!」  差し出されたチラシは、「雨の日限定ショップ【レイン】」。  なんでも雨の日が楽しくなる雨具を売っている店だそうだ。  傘や長靴に合羽……小物のアクセサリーも取り扱っているそこは奥側がカフェになっていて、お買い物で疲れたらおいしい飲み物とケーキを食べることもできる。  雨の日だったら家でゆっくり過ごすのもいいし、たまりにたまっている家の掃除を片付けようか、最近忙しく読めなかった本を読むのもいいかもしれない。  それに教皇国家アークソサエティにはさまざまな観光名所が存在する。  植物園、水族館……あげたらキリがない。  指令にいそしむばかりで、そんな近場へと足を向けてもいなかったかもしれない。あいにくの雨でも、いいや、雨の日だからこそ静かに、満喫できる可能性はとても高い。こんな日だからこそ出かけるというのもひとつの手だ。  今日は雨。  自分もパートナーも一日――【疲れた自分たちを癒すこと】と指令をもらっている。  雨に濡れることも厭わず好きに出歩くのもいいかもしれない。家のなかでまったりと過ごすのだって構わない。  今日はどうしよう。  早速相談しよう。
アジサイが彩るカティンカの夏至祭
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帰還 2018-06-30

参加人数 8/8人 鳩子 GM
●黄昏の世界を生きる  本来、祭とは神を祀り、神に祈り、神に捧げるものである。  この世界は、神に見捨てられ、裁きを受ける身だ。およそ百年あまり前に世界各地で勃発した大戦、そしてラグナロクと呼ばれる、世界の終わりの始まり――もはや、神は我々人類を祝福するものではない。  だが、それでも人々は祭を捨てることが出来なかった。  街の中央に立つ教会が今なお祈りと憩いの場であるように、祭もまた、人々の笑顔を繋ぐ行事として変わらずに愛されているのである。 ●花と水路と風車の街、カティンカ  教団本部の北部に位置するヴァン・ブリーズは、長い年月をかけて浅瀬を干拓し、土地を広げてきた地区である。そのため、海面よりも海抜が低い土地が多いことで有名だ。干拓地を利用した農地や花畑、排水用の風車の立ち並ぶ光景が名物となっている。  海辺の街カティンカは、典型的なヴァン・ブリーズの一都市だった。その名は、かつてこの街の開発を主導した女実業家カティンカ・メイエルに由来する。  街には広い水路が張り巡らされ、人や荷を運ぶために利用されている。ひっきりなしに強い潮風が吹く一帯には風車が立ち並び、排水の他、麦や豆を挽く動力となっていた。アシッドレインが降り注ぐようになって以来、海洋にはしばしば強大なベリアルが出現するため波打ち際に降りることは禁じられているが、遠目には依然として美しい水平線を背景に無数の風車が回る景色は、一見の価値があった。  花卉園芸と造園業が盛んであり、干拓地の花畑のみならず街全体が可憐な草花に彩られている。その景観の良さを目当てに訪れる観光客も少なくない。  中でも街の象徴となっているのは、メイエル水路公園である。  街と共に歴史を刻んできた公園は、名の通り水路が縦横に通り、のびのびと枝葉を伸ばす木々の木陰とも相まって、真夏でも涼のある場所だ。整備された遊歩道の左右には種々様々な植物が植えこまれ、季節ごとに異なった趣で来園者の目を楽しませる。  公園では軽食やおやつの類も提供されているが、特に評判なのは広場に面する露店群『メイエル・トゥリプ』で販売されているストロープワッフルだ。  さくさくとした食感の薄い生地にたっぷりのキャラメルシロップを挟んだこのお菓子は、パン屋がケーキ生地の余りで作ったものを端に発するありふれた庶民のおやつであるが、メイエル・トゥリプのそれは人の顔が隠れるほどの大きさで有名なのだった。シナモンがよく効いた風味は、老若男女に人気である。  現在メイエル水路公園では、毎年恒例の夏至祭に向けて準備が進められていた。 ●アジサイが彩るカティンカの夏至祭  日の出から日没までの時間が一年で最も長くなる夏至の日は、多くの地域で特色豊かな祝祭が催される。  カティンカでは、太陽の恵みに感謝し、一日中音楽を奏で、日が沈むまで踊り、陽光をめいっぱい楽しむのが恒例だった。  日頃は少額の入園料をとっているメイエル水路公園もこの日ばかりは無料で、普段の閉園時間よりも遅い日没まで開放される。 「今年も順調ね。ちょうど夏至祭の頃に満開になりそうだわ」  街の基礎を築いたカティンカ・メイエルの子孫、アニタ・メイエルは、自身が経営する公園をひととおり見回って満足げに呟いた。  初夏の今、園内では東方島国ニホンから持ち込まれて以来アークソサエティでも人気を博すアジサイが瑞々しく繁っている。中旬の夏至祭のころには、より大きく、より華やかに改良されたガクが鮮やかな赤や青に色づき、人々の目を楽しませてくれることだろう。 「アニタさま~!」  呼び声が近づいてくるのに、アニタは振り返った。  遊歩道を駆け足でやってくるのは、秘書のロビン・コーレインだ。まだ年若いライカンスロープの少年で、秘書といっても実際には身の回りの細々としたことをこなす雑用係というところだが、何事にも一生懸命な仕事ぶりが気に入っていた。  ロビンはふっさりとしたリスの尻尾を揺らしながら、一通の封書を掲げている。 「教団からお返事が届きました!」 「ありがとう。今ここで確認するわ」  アニタはロビンを手招きし、数段の階段を上がった先にあるガゼボへ入った。石の椅子に腰かけ、手紙の封を開く。  人が集まり賑わいが大きくなればなるだけ、喧嘩やスリといったトラブルも付き物になる。メイエル水路公園では、警備員を配すのはもちろんとして、浄化師を招待することにしていた。特殊な戦闘力を持つ彼らは、存在するだけで抑止力になる。それに、日頃世話になっている浄化師に祭を楽しんでもらいたいという気持ちもあった。 「ああ、良かった。依頼を受けてくださるそうよ」 「それなら安心ですね。年々来場者が増えていますから。……今年もハートのアジサイは見つかるでしょうか」  群生するアジサイを見回して不安げに呟くロビンに、アニタは小さく微笑んだ。 「それは天の思し召し次第ね」  ガクを持つ花が多数集合して半球状に咲くアジサイは、雨や花自体の重み、生育の状況などによって形がいびつになることがある。近年、その中でも『ハート型に似たアジサイを見つけると幸運が舞い込む』と噂されているのだった。恋愛関係が長続きする、片想いが実る、そんな風に言う者もいる。  今年も、多くの若者たちが幸運のハートを探しにやってくることだろう。  もともと、夏至祭には縁結びの役割もある。  午後五時を過ぎた頃から広場では篝火が焚かれ、思い思いに踊る人々で一杯になる。その場に居合わせた者同士で気ままに踊ることも珍しくないが、日没間近を告げるラッパが鳴り響いた後の、最後のダンスだけは話が別だ。日が沈みきるその瞬間に誰かと手を取り合っていることは、すなわち、相手に好意がある意思表示になるのだ。  だから、その気のない者は日暮れ前に帰ってしまうし、恋を成就させるべく意気込む者は夕暮れに合わせて想い人を誘う。言うまでもなく、すでに恋人同士の二人は、他人からダンスに誘われたりしないよう、しっかり手を繋がなければならない。  メイエル水路公園の夏至祭は、まさに恋する者たちの宴と言ってよかった。 「沢山の人に楽しんでもらえると良いですね」 「そうね。そのためにも、準備を万全にしなくてはね」 「はい!」  夏至祭当日に向けて、まだまだやることが沢山ある。二人はすっくと立ち上がって、ガゼボを後にした。
光に背を向けた子
簡単|すべて

帰還 2018-06-30

参加人数 8/8人 月村真優 GM
 飛び交う金切り声。ガラスの割れる音。甘ったるい酒の臭いを身にまとった知らない男。それをお父さんと呼べという母親。  いつの間にか運び込まれていた、煙草の臭いの染みついた家具たち。  あの場所は元々自分のもので、そこにはずっと自分のぬいぐるみがあった。今はない。もうそんな年ではないでしょうと取り除かれてしまった。  僕を受け入れてくれるものなど、ここにありはしないのだ。何一つとして。  背に突き刺さる騒音に一人耐え続けることにも飽きて、少年はこっそりと家を抜け出した。誰にも気づかれることはなかった。気づいた上で気に止められなかっただけかもしれないが。でも、自由だ。  隠していた文庫本を抱きしめて夜道を歩く。飛び出したのはいいけれど、一体どこに行けばいいだろう。道に並ぶ家にはそれぞれ灯りが点っていて、それぞれの家庭がそれぞれの時間を過ごしている。越してきたばかりで友達のいない少年には決して手に入れることが出来ない光だ。星と似たようなものだ。一切の温もりもくれないくせに、輝きと切望だけを投げて寄越すのだ。  嘲笑う光から逃れるように、少年は街の外れへと向かっていく。  そこには仲間外れであるかのように一本だけ街灯が佇んでいるのだ。  少年は知っている。その灯は彼を拒まない。そして、そこなら誰も邪魔しない。  お気に入りの街灯のもとに座り込み、彼は文庫本を開いた。自らの魂を守るように、空想の中に解き放つように、彼は手の中の本に没頭していく。吹き付ける夜風を遮るものは何もなかったが、不思議と寒さは感じなかった。  街の灯りから背を向けていた少年は気づかなかった。  夜といえども人影がまるで見当たらないということに。  皆、アシッド確認の報告に避難を急いでいたのだ。  星の光から目を背けていた少年は気づけなかった。  星々の輝きがいつの間にか遮られて届かなくなっていたということに。  忍び寄るアシッドに覆い隠されてしまったのだ。  かくして、諸君のもとには市街地の片隅で暴れる少年型ベリアルの討伐依頼が舞い込むことだろう。  怪物がかつて少年だった頃の家はとうに破壊された。光が標的となる事を知った市民たちは窓を固く閉ざしそれぞれの砦に立て籠もっている。  頑なに周囲に命を近づけまいとする姿は、どこまでかつての面影を残したものだったのだろうか。  取り残された街灯が寂しげにその背中を照らしていた。  その身を世界に囚われ続け、遂には魂までも繋がれてしまった少年が解放される日は訪れるのだろうか。それは諸君にかかっている。
心の内を知りたい?
とても簡単|すべて

帰還 2018-06-29

参加人数 8/8人 リリベル GM
「アークソサエティの裏路地に、不思議なキャンドル屋があるっていう噂があるから、それを調べに行って欲しいの」  教団員が眼鏡をクイとあげながら、目の前のあなたとパートナーに言う。 「不思議なキャンドル屋……ですか?」  あなたが聞くと、教団員の人が強く頷いた。 「まあ、正確に言うと、キャンドル作り屋なんだけどね。見に行ってくれるかしら?」 「わかりました」  教団員に、どこにあるかを聞くと、あなたとパートナーはそのキャンドル屋に向かった。 ●アークソサエティの裏路地にあるキャンドル屋 「ここね……」  教団員に言われた通りのところに、怪しげなキャンドル屋があり、あなたとパートナーは扉をくぐり、中に入っていく。  中は、様々なアロマオイルと染料、ドライフラワーやドライフルーツなどが棚にズラリと並べられている。その奥には、作業台のようなものが並んで置かれており、そこにせっせと何やら作業している妖艶な雰囲気の女性がいた。 「あのぅ」  あなたが声をかけると、女性はこちらを振り向き、目を細めて綺麗に笑う。 「あらぁ、いらっしゃい。キャンドルを作りに来たのかしら」 「はい。ここが、普通のキャンドル作り屋ではないと聞いて、体験してみたくて」 「うふふ。そうね、正しいわね。あなたと……そちらにいるのはパートナーの方かしら?」 「はい。二人でも出来ますか?」 「ええ。二人でもっていうか、このお店は二人一緒のキャンドル作りしか提供していないのよぉ」 「そ、そうなんですね! それには、何か理由が?」 「あらぁ、あなた何にも聞かずに来たのねぇ」 「あ、はい。本当に噂だけで……すいません」 「いいのよぉ。嬉しいわぁ。それじゃあ説明するわね」  女性はニコニコしながら、こちらに近寄ってくる。 「ここは、キャンドルをカスタム出来るのよ。色、デザイン、形、香り、ドライフルーツやドライフラワーも入れられるわ。それをパートナーと二人で選んで欲しいのぉ。最後仕上げに私が手を加えて完成。そうして出来たキャンドルに火を灯して、お互いに一つずつ知りたい質問をすると、正直な答えが聞けるのよぉ。質問は何でもいいの。相手や自分の答えたくない・言いたくないっていう意思は関係なく、絶対に答えが聞けるのよぉ」  ニコニコしている女性の前で、あなたとパートナーはお互い顔を見合わせた。  普段、聞きたくても聞けない質問。はぐらかされていること。あなたとパートナーは、普段気になっていることのために、キャンドル作りを開始することにした。
ハミングバード
とても簡単|すべて

帰還 2018-06-29

参加人数 5/8人 おじやしげき GM
 その少女は、今日も一人、この路地裏でその歌声を披露していた。  澄み切った歌声は、その路地裏に響いていた。  しかし、その歌声は誰の耳にも届くことは無く。  ただの雑音として、人々の耳に届くのみで、その歌声に関心を持つ者は誰もいなかった。 「あぁ。いつかわたしも、あの舞台で、歌えるときが来るのかしら」  その脳裏に浮かんでいるのは、かの有名なミュージックホール、「フィルハーモニー・ディ・ミラノ」。  由緒正しいこのホールに、一人立って歌いたい。彼女には、そのような夢がありました。 「……まぁ、無理よね、こんな身なりのわたしには」  あのような、素晴らしいステージに立てるのは、貴族のような上流階級の人間が多い。自分のような庶民には夢のまた夢。  自分はそのような想像をするだけで、十分だった。  そう、彼に出会うまでは。 「やぁ、小さなレディ。その歌声、私に預けてくれないか?」 「……さぁ。自己紹介をしてごらん?」  所変わって、教団。  一人の貴族と一人の少女が訪れていた。 「こんにちは、わたしはユミール・ベルナールド。声楽が得意です。好きなことはダンスと歌。宜しくお願い致します」  少々ぎこちないが、恭しく礼をするユミール。 「彼女をな、一流のアイドルにしたいんだ。その手始めに、1週間後に広場でやるという歌のコンクールに出場させたいのだ。そのために、彼女のプロデュースを頼みたい。用意してほしいものは何でも用意する。頼んだぞ」 「よ、宜しくお願いします!」  ユミールは、君たちに向けて元気に挨拶をするのだった。
繰り返す一日、だけど、そこに君はいない
簡単|すべて

帰還 2018-06-29

参加人数 5/8人 留菜マナ GM
 幼い頃のサニスは、毎日が楽しくて仕方がなかった。  日々、大好きな家族と一緒にカフェを経営して、二階にある住居に戻れば優しい笑顔で家族が迎え入れてくれる。  そんな当たり前の幸せな日々。 「今日もいつもと変わらない一日だったね」 「うん」  何気ない口調で言うサニスの言葉を聞いて、テーブルを拭いていた妹のノアは噛みしめるようにそっと微笑む。 「明日も明後日も変わることはない」 「どうしてー?」  そう言ってふて腐れたように唇を尖らせるノアの頭を、サニスは優しく撫でてやった。 「私達がそう望んでいるから。だから、サニス、これからもこの一日を望んでくれる?」 「うん」  いつものやり取りの中、店を閉じると二階にある住居に行くため、二人は仲睦ましげに階段を上がっていく。  それは二人にとって、どれだけ幸せな光景だったんだろう。  時が廻り、季節が廻っても、この一日だけはいつまでも色褪せることはない。  変わるのは――。  それは良く晴れた、穏やかな日だった。  辺りは優しく甘い水の香りで満ちていた。  初夏の日差しが差す運河を、遊覧船がのんびり進んでいる。  やがて、その遊覧船は二階建てのカフェの前に止まった。  遊覧船から降りてきたのは、教団からある指令を受けてやってきた浄化師達だった。  浄化師達は地面に降り立つと、きょろきょろと周りを見回した。  彼らを乗せていた船はゆったりと遠ざかっていく。  ここは、教皇国家アークソサエティの南部に位置する大都市ルネサンス。  ヴェネリアの外れにある『スイーツショップ』は、様々なケーキやお菓子を取り扱っているお店である。  一目で見渡せるこざっぱりとした店内には、まだ、お昼過ぎだというのに客は一人も入っていなかった。  ヴェネリアの外れにあるものの、自警団もよくこの店の近くに足を運んでいるため、べリアルやヨハネの使徒達などの脅威も少ないというのに、だ。 「ずっと前から、このお店で不思議な現象が起こっています」 「私のせいなの―」  対応した浄化師達にそう告げると、依頼者である少女と幼い少女は淡々とここに来てもらった理由を語り始める。 「君は――」  そう言いかけて、浄化師達は絶句した。  幼い少女は半透明に透けていた。  少女の身体を通して、お店の向こう側の景色が見える。 「幽霊なのか?」 「うん。私、ノア。お姉ちゃんはサニスだよ」  不似合いに明るく、可愛らしささえ感じさせるようなノアの声に、浄化師達は苦り切った顔をして額に手を当てた。  幽霊の魂は、浄化師などの魔力が高い者は比較的視ることができる。  だが稀に、サニスのように霊魂を視やすい体質の者も存在していた。 「このスイーツショップでは、以前から不可思議な現象が起きています。この店を一緒に訪れた二人は、お店を出る際に必ず、同じ一日を繰り返しています」 「同じ一日?」  サニスから思いもよらない言葉を告げられて、浄化師達はただただぽかんと口を開けるよりほかなかった。 「以前、体験したことがある現象が、全て同じように目の前で起こるんだよ。でも、その一日さえ終われば、このお店の前に戻ってくることができるの」 「一時的に、同じ日常がまた、繰り返されるのか?」 「うん。きっと、私が前と同じ日が戻ってくることを望んでいるから、お店自体に怪奇現象が起こっているんだと思う……」  静かに――そして、どこか悲しそうにつぶやいたノアの言葉に、浄化師達はわずかに目を見開いた。  幼い頃、サニスの家族はサニス以外、ベリアルによって殺されてしまった。  サニスに残されたのは、幽霊として現世に留まっている妹と父親が経営していた小さなお店だけ。  しかし、その日以来、お店では不可思議な現象が起こるようになってしまった。  お店から出る度に、お店を訪れた二人にとって幸せだった日常が繰り返されてしまうという現象。  サニス達の場合は、家族がベリアルに襲われる前――幸せだった過去の日常を繰り返すという甘い夢のような一日だった。  それはきっと、サニスとノアが望んだ日々なのだろう。  その夢のような一日を終わらせる方法を、サニスは知っている。  ノアが前と同じ一日を望んでいるのなら、実際の過去とは違う一日にしてしまえば、お店で発生している『繰り返す時間のループ』は止まるはず。  だけど、それをしてしまったら、もう二度と両親に会うことができなくなってしまう。  でも、このままでは、いずれこの現象はお店以外にも広がってしまうかもしれない――。  そうしてようやく、何度目かの躊躇いの後、サニスは居住まいを正して、真剣な表情で続けた。 「私は、今のままでもいいと思っていました。ベリアルによって殺された両親に、これからも会いたいから。だけど、同じ一日を繰り返した後、このお店を訪れる人は誰もいなくなりました」  サニスの脳裏の中には今もずっと、家族の顔と声がぐるぐると巡り続けていて、いつもいつの間にか、同じ一日を繰り返してしまっている。  これからも、時が廻り、季節が廻っても、サニスは家族のことを忘れることができないだろう。  両親が残してくれたカフェで、いなくなった家族の幻影を見ながら、今日も二人で戻ってくることのない両親の帰りを待っている。  いつか――。  いつかきっと、また前のような家族の日常が訪れることを願ったまま――。 「私は、これからも両親に会いたいです。ですが、そのせいでお父さんが築いた、このお店がなくなってしまうのは辛いんです」  サニスは最後にこう言って、自分の話を締めくくった。 「お願いします。お店を出て、あなた方が望む『同じ一日』を繰り返して頂けませんか。そして、この現象が二度と起こらないように、その日とは違う言動を起こして下さい」 「……分かった」  サニスの懇願に、浄化師達は戸惑いながらも頷いてみせた。
空に虹がかかるまで
とても簡単|すべて

帰還 2018-06-26

参加人数 8/8人 あいきとうか GM
 教皇国家アークソサエティの首都、エルドラド――まであと少し、というところ。  ぽつりと一滴、空からしずくが降ってきて地面を濡らした。 「雨だ!」  叫んだのは道を歩いていた子どもだった。露店で買い物をしていた人々、どこかに向かって歩いていた人々、として馬車の御者らはほとんど反射的に顔を上げる。  間もなく、雨は音を立てて街を濡らし始めた。  露天商らは大急ぎで商品を片づけたり、雨除けの布をかけたりする。のんびりと歩いていた人々の足は速くなり、御者は帽子を目深に被りなおした。  予報されていなかった雨に、穏やかだった往来は蜂の巣をつついたような騒ぎになる。  あなたとパートナーもまた、薔薇十字教団本部に戻る道中でこのにわか雨に襲われていた。  すぐに雨はやんでしまうだろうが、濡れて帰って風邪を引くわけにもいかない。さいわいなことに近くにガゼボがあったため、そこで雨宿りをすることになった。  ガゼボの周囲に咲くアジサイは、嬉しそうに雨粒を受けている。早々に避難したのが幸いし、あなたもパートナーもあまり濡れていない。  ガゼボからは往来の様子が見えるが、人々は自分たちのことに必死らしく、こちらを気にする様子はない。  雨の中、二人きり。他の誰かの視線はなく、雨音は囁き声程度なら掻き消してくれるだろう。  しばしの休息を、楽しんでほしい。
雨の日だってデートがしたい!
普通|女x男

帰還 2018-06-23

参加人数 8/8人 桜花 GM
 最近、なんでか知らないけど二人のタイミングが悪い。  普段は浄化師として活動しているのでほとんど毎日顔を合わせているのだが、休日に限って二人の予定がなかなか合わないのである。  先週もダメ、先々週もダメ、その前の週もダメ。せっかくの休日でもこれでは休んでいる気にならない。  そんな中、今日は久しぶりにどちらとも予定が入っていなかったのでいつも以上に早起きして、朝から一日中デートをするつもりだったのだが……。 「なんで……、なんで今日に限って雨が降ってるんですか!? 昨日は晴れてましたよね!!?」 「仕方ないだろ、梅雨なんだから。むしろ最近は晴れの日の方が少ないじゃないか」 「だからって今日ぐらい晴れてくれたってもいいじゃないですか。せっかくの休日が台無しですよ」  生憎にも、今日は朝からずっと雨が降っていて、本来行くはずだったトラファルパーク・セメタリーへはいけそうにない。  今日のためにとずっと前からコツコツと予定を立てていたのに、これではせっかくのデートが台無しである。 「あーー、もうこんな時に雨なんて降るからこんなことに……」  私はソファにうつぶせに寝っ転がり、愚痴り始める。  外の天気はさっきと変わらず雨模様だろうが、私の心の中もそれと負けず劣らずの雨模様だった。 「だからってそこまで落ち込むこともないだろ。たかが雨なんだから」 「そのたかが雨に私の予定は一気に狂わされたんですよ~~。……雨なんて滅べばいいのに」 「そんな物騒な。ほら、さっさとどこ行くか決めるぞ」 「…………ふぇ?」  私は彼が何を言っているのか分からず、不思議な顔をする。  遠目からでも雨が降っているのが分かるほど外の天気は最悪だし、今から頑張ってトラファルパーク・セメタリーに行ったところでびしょ濡れになって帰ってくるだけである。  翌週は二人とも予定が入っていなかったはずだし、デートはその日までお預けになるものだと思っていた。 「実は午後から雨が弱くなるんだとよ。雨が降ってることには変わりないけど、傘があれば大丈夫だろ。それともあれか? せっかくの休みなのにずっと部屋でゴロゴロするつもりか?」  私はものすごい勢いで首を横に振り、ソファから跳ね起きる。  さっきまでの私は全てに投げやりで起き上がる気力さえ起きないほど落ち込んでいたのに、彼のたった一言で一気に私のやる気が回復した。 「分かりました、じゃあ30分だけ待ってください。その間に行きたいところ決めますから!!」  そういって私は紙とペンを取り出し、一緒に行きたいところややりたいことを箇条書きにしていく。  雨が止むことはあまり期待できないので屋根のあるところでゆっくりとしようかとも考えたが、傘を差しながらの散歩というのも悪くない。そういえば一緒に料理をする機会はこれまでにほとんどなかったし、この際お菓子とかを作るのも楽しそうだ。  ただ紙にやりたいことを書いていくだけなのに、不思議と私の顔はずっとにやけていた。
探偵マウロの事件簿~令嬢誘拐事件
普通|すべて

帰還 2018-06-22

参加人数 5/8人 弥也 GM
●ジョンソン家の令嬢 「おはようございますライリー様」  メイド長ジュリアの声にライリー・ジョンソンが目を覚ますと、その整った顔をほころばせる。  ライリーがベッドから起き上がると、ジュリアは朝の支度を手伝う。 (お顔立ちだけではなく、お姿までお母様そっくり……)  16歳になったライリーは、少女から女性へと成長しようとしていた。 (ご主人様は、奥様を思い出して、きっとお辛いのだわ……)  ジュリアは、ここ最近ジョンソン氏が娘とあまり顔を合わせないようにしているのは、娘に亡き妻の面影を見るからだと感じていた。 「今日は暑くなりそうですから、髪は編み上げておきましょうね」  ライリーの絹の様にしなやかで美しい髪を編み上げ、最後にリボンを結べば朝の支度は終わりである。  髪を編んだライリーは、大人っぽく見えるが、鏡を覗き込みリボンを指先でちょっと摘まむ仕草は幼さを垣間見せていた。 「ジュリア、今日こそは教えてくれるんでしょ?」  ライリーは鏡越しにジュリアを見つめた。 ●マウロとテオ  教皇国家アークソサエティのブリテン。技術革新の為の特区で、その技術力で栄え得た富は文化を育て、観光客も多く訪れる。  その華やかな街の、うっかり見逃してしまいそうな裏路地の奥にぴかぴかに磨き上げられた看板――探偵マウロ どんな仕事も断りません――が裏路地の隙間に差し込む夕日に照らされている。  看板がピカピカなのは、店主が暇すぎて看板を磨くしか仕事がない、ただそれだけである。  店主の祖父が大層な発明家で、彼の残した技術でこの一族は生き延びてきた。しかし、それも限界。年老いた母を養うためにこの家の息子マウロが突然この看板を掲げ店主となったのは1年前の事である。  そして今日も店主は椅子に上り看板を磨いている。 「やぁ、マウロ。今日も看板磨きか」  精肉店を営む幼馴染テオが、ガシっとその大きな手で椅子を掴んだ。  テオは怪力かつ豪快な男なのだが、マウロは物静かで小柄な男で、二人ともヒューマンである。 「おい、危ないじゃないか」  マウロは慌てて看板にしがみついた。 「なんだよ、転ばないよう持ってやってるんだろ」 「大丈夫だから、その手を放せ」  子供のようなやり取りだが、どちらもいい大人だ。 「この前みたい怪我でもしたら、俺がお前のお袋さんにどやされるんだよ」  手を離さないテオに根負けしたマウロは、椅子からしぶしぶ下りた。 「あれは、探していた猫を捕獲する時に噛まれただけだ」 「探偵さんのお仕事は、家出猫の捜索でしたか」  くく、っとテオが笑うとマウロは大きくため息をついた。 「それでも仕事がないよりはマシだ」  テオの大きな手から椅子を奪還し、扉の中へ入ろうとした。 「あの探偵マウロさんの事務所は、こちらでございますか」  声の主は、ジョンソン家のメイド長ジュリアである。 「はい! 迷子の猫ちゃんを探すのなら、是非この探偵マウロにお任せください! イテッ!」  間髪入れずに応えたテオの足を、マウロが思い切り踏みつけた。 ●誘拐 「で、ご依頼というのは?」  自宅一階を改装した事務所にジュリアを案内し、母特製の焼き菓子とお茶を出すとマウロもテオから奪い返した椅子に腰かけた。テオはマウロの抵抗空しく、事務所の隅に鎮座している。 「わたくし、ジョンソン家でメイド長をしておりますジュリアと申します」  このブリテンには、市民階級でありながら貴族階級よりも豊かな生活を送る者もいるが、メイド長が居る家はその中でもなかなか裕福な家である。報酬は期待できるし、上手く行けば富裕層の顧客を紹介してもらう事だってありえる。マウロは何としても、この仕事は成功させなければならないのだ。  ジュリアが静かに続ける。 「ジョンソン家の一人娘ライリー様が誘拐されました」  そう言って差し出した便箋には、  ――再び世界が救われる――。  ただ一言が書きなぐられている。 「教団に連絡は!?」  誘拐と聞いて流石にマウロの声も大きくなる。 「それが、その……。わたくし共の方からは……。以前、少し色々ありまして……」  ジュリアの視線が床へと落ちた。 ●過去の事件 「誘拐事件なんて受けて、どうするんだよ。お前、今まで猫の捜索くらいしかした事ないだろう」  ジュリアが帰ると、それまで一言も口を開かなかったテオが、頭を抱えた。 「猫より人の方が大きくて探しやすいさ。とは言え、誘拐だと必要な人手が違い過ぎるな……。彼らに頼むか」  マウロはジュリアからの情報を、紙に整理し始めている。 「彼ら?」  令嬢が誘拐されたと言うのに、ジュリアの落ち着いた様子。それに、こんな裏路地のにわか探偵に依頼すると言う事は裏がある。 「一度彼らと仕事をしてみたかったんだ」 「彼らって、もしかしてエクソシストか? 教団には頼めないって言ってたじゃないか」 「ああ、言ってた。わたくし共の方からは、ってな」  そう言って、引き出しから新聞の切れ端の大きな束を取り出した。 「何だよ、それ」  マウロは束の中から一枚引き抜き、テオに渡した。  ――メラニー事件・サクリファイス数名確保――。  メラニー・ジョンソンを殺害した罪で、サクリファイス数名確保……。 「このメラニー・ジョンソンって」 「ライリーの母親だ」  テオは慌てて記事に目を通すと、メラニー事件の日付で目が留まった。 「おい、この事件、明日でピッタリ10年じゃないか?」  マウロが頷く。 「きっと今回もサクリファイスの仕業だ。よし、できた」  マウロは情報がびっしり書き込まれた紙をテオに渡した。 ・ライリー・ジョンソン、女16歳、ヒューマン。 ・ジョンソン家はジョンソン氏とライリーの二人家族。 ・ジュリアは15歳からジョンソン家でメイドをしている。未婚。 ・今朝出かけるライリーの後ろ姿をジュリアが見ている。 ・昼食時間になっても戻らないため、部屋を確認。 ・ベッドの上に便箋が置かれていた ・ライリーの母は10年前にサクリファイスに殺された。亡骸は損傷が酷く、指輪でメラニーと確認された。 ・使用人は  執事フランツ  メイド長ジュリア  料理長グレン、キッチンメイドのサラ。二人は夫婦で、20年ジョンソン家に仕えている。  メイドはアンとメグの2名。メグは半年前に雇用された。  奴隷なし。 ・ジョンソン氏は昨日から仕事で遠方に出ており連絡がつかない。 ・サクリファイスの仕業。10年前取り逃がした主犯が? ・ジョンソン家の中にサクリファイス? ・ライリーを母のメラニー同様殺害するつもりか? ・ライリーはどこに?  候補A:10年前の事件現場  候補B:長く使われていないジョンソン家の別荘  候補C:メラニー事件で破壊された工場の代わりに建てられた別の工場  候補D:ジョンソン家が持つ稼働中の工場  候補E:ジョンソン家の隠し部屋(存在するのなら)  マウロが、部屋の中をぐるぐると歩き回り、自分に言い聞かせるように語り始めた。 「10年前、メラニーが屋敷から忽然と姿を消した直後、サクリファイスからジョンソン家へ破壊予告。  ジョンソン氏は教団に助けを求めたが一歩及ばず、ジョンソン氏は2棟ある工場のうち1棟と共に妻を失った。  後に数名確保されたが、あいつらに誘拐は無理だ。駒に違いない。とすれば、……。明日で10年……、再び世界は救われる……急ぐぞ!」  祖父から譲り受けたボーラーハットを被り家を飛び出すと、テオも後に続いた。
アフタヌーン・ティータイムをあなたと
とても簡単|すべて

帰還 2018-06-21

参加人数 7/8人 しらぎく GM
 陽の暖かさもようやく安定してきたそんな初夏の頃。  ブリテンにある、かつては栄華を極めた王族が暮らし、今では一般開放もされているポーポロ宮殿へあなた方はやってきた。  今日はこちらの庭園で、紅茶のファーストフラッシュの時期を迎えたことを祝してローズガーデンパーティが催されているのだ。 「いらっしゃいませ、何名様ですか?」  ガーデンの入り口に着いたあなた方に気付き、黒の燕尾服を身にまとい、執事の格好をしたスタッフに尋ねられ頷くと「こちらへ」と先導されあなた方はガーデンの中へと足を踏み入れた。  木々の間には大きな花瓶が置かれ、色鮮やかな薔薇が生けられている。落ち着いた深い緑と色鮮やかな薔薇の様子はとても華やかで思わず笑みがこぼれた。ガーデンの中でもひときわ目を惹く薔薇のアーチ前ではバイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバスの弦楽器カルテットがクラシカルなハーモニーを奏で、ロイヤルな雰囲気づくりに一役買っている。  このガーデンパーティーでは、かつての貴族たちが楽しんだティーパーティを疑似体験できるという趣旨で貸し衣裳も用意されており、すでにティータイムを楽しんでいる人々の中には昔の貴族たちが着ていたドレスやガウンを羽織っている姿もみえた。  そして案内されたテーブルの上には、光沢のある真紅のテーブルクロスがかけられており、縁を飾る金のフリンジがシンプルながらも豪奢である。すでに食事を始めている他のテーブルの上にはティースタンドにフィンガーフードやプチスイーツなどが並んでおり、みているだけでも楽しい。 「メニューをどうぞ」  席に着いたあなた方に執事の格好をしたスタッフがえんじ色のメニューを手渡した。 「お決まりになりましたら、こちらのベルでお呼びください。また、ご衣裳はあちらのコーナーでご自由にお召し替えすることができますのでよろしければご利用ください」  そう伝えるとニッコリと微笑み、深くお辞儀をして、彼は他のテーブルのベルの音に「はい、ただいま参ります」と返答をして去っていった。  さて、あなた方はどんなカフェタイムを過ごしますか?甘いお菓子を楽しむもよし、がっつりと食事を楽しむもよし。それから普段とは違う装いで楽しむもよし。マナーがわからないなんて気にする必要ありません。美味しいお茶とお菓子、それから会話など、楽しむことが一番大切なのです。さあ、二人で優雅で素敵なアフタヌーン・ティータイムを!
最後にキスをしたのは……
とても簡単|すべて

帰還 2018-06-19

参加人数 6/8人 檸檬 GM
●  ケンカのきっかけは何だったのか。思い出せないほどささいなことだ。  つい言ってしまった一言が引き金になって相手を怒らせてしまったり、失敗を責められてカッとなって言い返したりして始まったのではなかったか。たぶん、そんなことだったと思う。  2人の間でとどまり続けるぎくしゃくとした雰囲気に耐え切れず、ついと視線を空へ逃がして背を向けた。  新緑が影を作る枝の先で、二羽の小鳥が仲睦まじく身を寄せ合い、時々、くちばしの先と先でつつきあっている。  可愛らしいキスに強張った頬が少しだけ緩んだ。  ――そういえば、最後にキスをしたのはいつだったっけ?  最後にしたその時、なにを感じていたのだろう。  喜び?  幸せ?  それともそれは日々のルーチンに組み込まれた単なる挨拶で、この胸がときめくことはなかったのかもしれない。  では誰と、記憶の底に沈みかけた時、声がかかった。 「そろそろ……時間だから……」  耳に届く声が遠く感じられる。相手もこちらに背を向けて喋っているのだろう。 「行かないと」  あ、うん。気まずさを間に挟んだまま、生返事して歩き出した。  本日の依頼は「ケンカの仲裁」。  50年連れ添った仲良し夫婦の、珍しく長引いているケンカを仲裁してほしい、と彼らの孫たちから頼まれたのだ。  なんという皮肉!  ともあれ、指令を受けた以上、頑張らなくては。 ●  大きな木に寄り添うように建てられた、赤い屋根の小さな家で老夫婦は暮らしていた。  腕を伸ばせば互いの体に届くほどの小さなちいさな家の中には、緊張でパンパンに膨らんだ透明な風船がいっぱい詰め込まれているようだった。1つ割れれば次々と連鎖して割れてゆき、最後の最後に老夫婦の仲を割ってしまいかねない。  そんな雰囲気の中、なんとかふたりに仲直りしてもらおうと、一つ一つ言葉を選び、顔の表情と体の動きにも気を使いながら説得を続ける。だけど、相変わらず緊張の風船は家の中いっぱいに詰まったままだ。むしろ、自分たちが訪れたことによって緊張の密度が高まってしまったような気がする。  ふと、ここに来るまでの自分たちの姿と、目の前で互いに背中を向け合って座っている老夫婦の姿が重なり合う。このままケンカ別れしてしまうのか、老夫婦も自分たちも……。  小鳥たちのさえずりが聞こえたような気がしたときにはもう、言葉が口をついて飛び出していた。 「お二人が最後にキスをしたのはいつですか?」  老夫婦はまるで示し合わせたかのように体の向きを変えて、同じタイミングで目をぱちくりさせた。 「そういうお前たちは――」 「そういう貴方たちは――」  互いに顔を見合わせ、それからこちらへ顔を向ける。 「「最後にキスをしたのはいつ?」」  私たちは覚えているわよ、ちゃんと。と老婆は連れ合いに顔を見て微笑んだ。  なんならみせてやろう、と老祖は椅子から腰を上げると、少しあごをあげて待つ愛妻にキスをした。  そして、次はお前たちの番じゃないか、と二人そろっていたずらっ子のような顔をまたこちらへ向ける。 「貴方たちも仲直りしなさい。ケンカしているでしょ? 雰囲気でわかるのよ。ねえ、おじいさん?」 「うむ。人に仲直りを勧める前に、まず、お前たちが仲直りせんとな」 「どうしてケンカしたの? じいさんとばあさんが聞いてあげるわよ。それと……さっきの質問にもちゃーんと答えてちょうだいね」    さあ、困った。  指令中ですから、と言いわけにならない言いわけをして床に視線を落とす。  隣に並んだパートナーの靴が、先で小さく「の」の字を書いていた。    ……だいたい、どうしてケンカになったんだったっけ?
夏の思い出
簡単|すべて

帰還 2018-06-19

参加人数 8/8人 リリベル GM
 教皇国家アークソサエティのルネサンスに夜が訪れる。  少し前の肌寒い空気から、今はもう草の香りとじめっとした生暖かい風が頬を撫でるようになる。夜になれば、昼間よりかは幾分か過ごしやすくなるこの季節だが、やはりまだ暑いらしく、夜道を歩いている二人の少女のうちの一人が汗を拭いながら文句を言う。 「あー、あっつい! もう! 汗がしたたるわ」  もう一人の少女は、季節に怒る彼女の友達を見て、楽しそうに笑うと、 「まあまあ。水も滴るっていうじゃない」 と、こちらは涼しげに言う。 「あんたは、あんまり汗かかないからいいのよ。あたし、汗っかきだから、夏は汗かくわ、蚊に刺されるわで大変!」 「でも、夏も良いことあるわよ? ほら、こうやって夜の風に当たると、なんだか花火大会とかお祭りの夜思い出さない?」 「あたしは、あんたみたいな良い思い出ないからなー。なんだか切なくなる」 「ふふふ。恋人同士でも、友達同士でも、感情に触れる思い出が作れるから。夏はいいと思うわ。それに、夏には夏の魔法があるっていうじゃない?」 「なあに? それ。ロマンチストみたい」 「あら。ロマンチストで何が悪いのかしら」  笑いながら歩く彼女達の目に、一枚のチラシが目に入る。 「ねえねえ、このチラシ……」  パタパタと汗を乾かす少女が涼しげなもう一人に向かって、指を差しながら言う。  そこには、 『◯月×日 ヴェネリア「ベレニーチェ海岸」花火大会 19:00~』 と、華やかなイラストと共に、打ち出されていた。 「へえ! 花火大会! ねえ、これ行こうよ!」  友達のはしゃぐ声に、もう一人は凛とした声で、 「あら、あなた、私にお供してくれる殿方がいらっしゃらないと思ってるのかしら」 「げ、まさか。いるの?」 「……いないわよ」 「何で、嘘つくのよ」 「いいわね。花火大会……そうだわ。確か、教団から花火大会に対して指令が出ていた気がするわね」 「え、そうだっけ?」 「ええ。確認してみたほうがいいわね」 「そしたら、教団に向かってみますかね」 「そうね」 ◯教団にて  教団の司令部、指令掲示板の前に立ち、二人は目をはりめぐらせる。 「あ、ほら、ありましたわよ」  涼しげな一人が指をさし、もう一人を促した。 『◯月×日 ヴェネリア「ベレニーチェ海岸」花火大会 19:00~ 花火大会を盛り上げる目的として、エクソシスト派遣要請 ※教団より浴衣貸出あり』  それを見て、今まで凛としていた彼女が不敵な笑みを浮かべた。 「花火大会……。うふふ」 「な、何笑ってるの?」 「いいえ。花火があがるロマンチックな夜空の下……暗い中にお祭りのような灯、生暖かい空気。よく知っている人のいつもと違う姿。何か特別なことが起こりそうでドキドキするわね」 「なんか、あんた怖いよ?」 「あら、それを陰ながら見るのも楽しみの一つなのよ?」  綺麗に笑った彼女に若干引きながらも、相変わらず汗が止まらない彼女の友達は固い笑顔を浮かべた。
銀波館の惨劇
普通|すべて

帰還 2018-06-17

参加人数 8/8人 狸穴醒 GM
●午前7時 浜辺  水平線の彼方から、湿り気と潮の匂いを含んだ風が吹きつけてくる。  初夏の太陽が、波頭を銀色にきらめかせる。  ラグナロク以来、ベリアルの跳梁する海は人間の領域ではなくなった。  それでも徐々に気温が上がる季節になれば、やはり人々は海に惹きつけられるものらしい。  穏やかな波が砂浜を洗い、波打ち際を散歩する人の姿もちらほら見られる、そんな朝――。 「きゃあぁぁっ!!」  浜辺にしゃがんで貝殻を拾っていた子供が弾かれたように立ち上がった。  散歩中の街娘が眉をひそめる。 「……いまの、悲鳴?」 「銀波館の方から聞こえたぞ」  中年の男が言い、集まってきた数人の視線がいっせいに同じ方向へ集中した。  半月型の浜を囲む湾のはずれ。海に張り出した崖の上に、2階建ての瀟洒な館がたたずんでいる。  アスコリ男爵の居館、銀波館である。  教皇国家アークソサエティの貴族は首都エルドラド周辺に住むことが多い。  しかしアスコリ男爵一家は風光明媚な海辺の街が気に入り、別荘として購入した銀波館で暮らしていた。 「確かに悲鳴だと思ったんだが……」  そのあと、銀波館からは何も聞こえてこない。  静けさがやけに不気味に感じられる。人々は館を見上げ、不安そうに言葉をかわした。 ●午前7時 銀波館前  崖の上の館では、使用人たちが囁きあっていた。  浜辺の人々より表情は深刻だ。隅で若いメイドがうずくまり、別のメイドに背をさすられている。 「ううっ……どうしてこんなことに……」 「自警団が来るまでそのままにしておけと、旦那様はおっしゃったが」 「でも、こんなもの奥様やフィオレお嬢様にお見せできないわ」  彼らのある者は恐怖を、ある者は嫌悪を顔に浮かべ、一様に青ざめて、遠巻きに「それ」を囲んでいた。  館の前庭、刈り込まれた芝生に横たわる「それ」。  人、なのは間違いない。  うつぶせに倒れた、おそらくは男性。周囲の使用人と同様の質素な服装だ。  両脚と左腕を投げ出し、右腕を曲げている。何かを握り込んでいるように見えた。  年齢や種族、人相は不明。なぜならその男には――、  首がなかった。 ●午後3時 銀波館書斎  樫材のドアが外からノックされた。 「入れ」 「失礼いたします、男爵閣下」  立派な装丁の名著が整然と詰め込まれた書斎である。  室内に滑り込んできたのは、お仕着せをまとった初老の執事だ。 「今朝死んだ馬丁の件で、少しお話が」  執事が言うと、針金のように痩せた中年紳士――アスコリ男爵が、不機嫌そうにため息をついた。 「まったく、恒例の夜会を控えた時期に迷惑極まりない! 自警団の連中は帰したんだろうな?」 「もっと調査をさせろと申しておりましたが、どうにか」 「それでいい、死体の処理以上のことを頼んだ覚えはない。また何か言ってきたらいくらか握らせて黙らせろ」 「かしこまりました」  執事はうやうやしく頭を下げた。 「あの馬丁に身内がなかったのは不幸中の幸いだな。騒がれてはたまらん」 「さようでございますね」  同意しながらも、執事は立ち去ろうとしない。  男爵は眉根を寄せる。 「まだ何かあるのか?」 「実は、ご確認いただきたいものが……」  男爵の前のデスクに、執事が一通の封筒を置いた。男爵は片目だけを封筒に向ける。 「死んだ馬丁が、この封筒を握りしめていたのでございます」 「中身は見たのか?」 「はい。それが……」  そのとき、半開きのドアから肉づきのよい貴婦人が顔をのぞかせた。 「あなた、お茶の時間でしてよ」 「すぐ行く。――構わん、ここで読め」  男爵に促された執事は夫人にちらりと目を向けて逡巡するも、すぐ観念した表情を浮かべた。  白手袋をはめた手で封筒を開け、何の変哲もない便箋を取り出して読み上げる。  それは、こんな内容だった。  ――世界の救済のため、夜会を犠牲に捧げる――。 「……何だそれは」  男爵が内容を理解する前に、夫人がひっと息を呑んだ。 「脅迫状じゃありませんの!? 夜会を襲うという予告ですわ!」  男爵は首をかしげた。 「脅迫? そう読めなくもないが、心配せずともこれを持っていた男は死んだのだぞ」 「いいえ、いいえ! あの馬丁は字が読めなかったではありませんか。彼を殺した者が握らせたんですわ!」  切羽詰まった夫人の言葉に、執事がすっと視線を逸らす。実は執事もその可能性を考えていたのだった。  夫人は化粧の濃い頬に恐怖の色を浮かべてさらに仮説を口にする。 「もしかして――馬丁は脅迫状を届けさせるために殺されたんじゃありませんの!?」 「何を馬鹿な」  そんなことのために人ひとり殺す者がいるだろうか。  しかし夫人はヒステリックに言い募った。 「2週間前には書斎が荒らされて、夜会の招待状が盗まれましたし……おかしなことばっかりですわ!」 「それは関係ないだろう」  面倒くさそうに話を終わらせようとする男爵を、夫人はキッと睨む。 「夜会は取りやめにすべきですわ!」 「冗談じゃない!」  男爵はデスクを叩いた。 「夜会までもう一週間もない。こんな手紙一通を恐れて中止したら、どんな噂を立てられるかわからん!」 「フィオレだって怖がりますわ。近頃すっかり塞ぎ込んでいますのよ」 「おまえはフィオレを甘やかしすぎだ。あれはもう15歳、婿を探すにも夜会に出さねばならん」 「わたくしどもだけの問題ではありませんわ。お客様を危険に晒したら……」 「うるさい! とにかく夜会は決行する! これは我がアスコリ男爵家の名誉の問題だ!」  夫妻の言い合いは平行線で、終わる気配がない。  そこへ、執事がそっと割り込んだ。 「――でしたら、夜会に特別な警備をつけたらいかがでしょうか」  夫妻の視線が執事に集中する。男爵が太い眉をしかめた。 「番兵以外にか? しかし、信用できる者を今さら雇うのは難しいだろう」  執事は胸に手を当てて頭を下げた。 「ですので、薔薇十字教団に依頼するのはいかがかと。浄化師なら素性は確かです。不測の事態にも対処できましょう」 「薔薇十字教団……」  男爵夫妻はそれぞれ考え込む。結論が出るまでには、さほどかからなかった。 ●3日後 薔薇十字教団本部 「新たな指令です。場所はルネサンス地区、ヴェネリア近郊の街」  集まった浄化師たちに、薔薇十字教団の団員が説明する。 「アスコリ男爵家の使用人が殺害され、脅迫状と思われる文書が届きました。文面からしてサクリファイスかもしれません」  浄化師たちがざわめく。  サクリファイスとは『罪を犯した人間は滅び、世界救済の生贄になるべき』という考えをもつ狂信者集団である。  その教義からたびたび破壊活動におよび、人々に恐れられているのだ。 「とはいえ今回皆さんにお願いするのは、男爵の所有する『銀波館』で行われる夜会の警備です」  教団員は指令書に目を落としたまま言った。 「会場内で警備するなら服を貸してもらえるそうですし、ご馳走も出ますよ。夜会が何事もなく終われば、指令は完了です」  それほど困難な仕事ではなさそうだが、さて。
シュレディンガーキメラ
簡単|すべて

帰還 2018-06-17

参加人数 8/8人 井口創丁 GM
「今までお世話になりました」  力なくそう言う男性の声に反応するものはいなかった。  彼の両脇には屈強な男が二人鋭い目を光らせながら立っている。  周囲の人間は彼をなるべく視界に入れないように作業を続けていた。  ここは市民の生活に欠かせない食料を管理する施設。日々増え続ける人類を飢えから救うべく家畜の品種改良や魔術を使った栄養価の高い土地の作り方などが研究されている。  ここに勤めるには高度な生物と魔術の知識が必要であるため研究員の数は極めて少ない。  そんな希少な研究員が一人去ろうとしていた。  それは定年退職などと言ったものではなく強制撤退といったものであった。  彼は理想を追い求めるが故にとある禁忌に手を出してしまったのだ。  研究所の人たちは皆それを知っていた為に彼の言葉に答える事ができない。  答えると言う事は彼と友好関係にあると言う事、それはつまり自身も禁忌に加担した可能性があると言う事となってしまう。  そうなればたった今、教団に連行されている彼と一緒に罰せられる。  その恐怖から逃げる為その場にいた人は皆口を噤む。  それはついさっきまで彼の友人であったルードルフも例外ではなかった。  ルードルフは研究所から立ち去る友人、エルヴィンを横目に捉えながら歯を食いしばった。  そして誰にも聞こえないほどの小声でこう呟く。 「どうして相談してくれなかったんだ……」    ルードルフの無念な思いがルールを破壊できるわけもなくエルヴィンはそのまま連れ去られた。  後日彼が処刑された事は、掲示板の端に小さく書かれていた。  天涯孤独の身であったエルヴィンが格安貸家の自宅に残したものは一つの資料と二匹のネコ。  そしてそれを受け取ったのは自ら家宅整理をしたいと名乗り出たルードルフであった。  これから数ヶ月間ルードルフは職場の人間から少し距離を置かれる事になるだろうが、そんな事は彼にとってどちらでも良い事であった。  何故なら彼の脳内は友に秘密を明かしてもらえなかった悔しさと、死を恐れた自分への嫌悪で埋め尽くされていたからだ。  そして彼の手元にはエルヴィンが残した禁忌魔術に関するレポートがあった。  最早、冷静を失った彼がすることは一つしかなかった。  次の日からルードルフは行方をくらませた。  ルードルフが失踪してから三ヶ月後、アークソサエティ内にある共同墓地『カタコンベ』はいつもと変わらない陰鬱な空気を垂れ流していた。  その瘴気にあてられてかため息をつく屈強な男が一人、周囲を見張っている。 「なんだあいつは」  見張りが前方から来る大きな荷物を背負った痩せこけた男性を見て呟いた。  その男はボロボロになった白衣を揺らしながら幽鬼の様に近づいていた。 「おい! そこの男! 止まれ! ここが何をする場所か分かっているのか!」  場所が場所だけに幽霊かと思い、少し恐怖した見張りが声を張り上げる。  しかし、その男は見張りの声を無視し依然ふらふらとしながら迫ってくる。 「止まれといってるだろうが!」  見張りはそう言うと、手に持っていた長槍を男に向けて威嚇する。 「うるさいなぁ」  男は岩を避ける水流のようにひらりと身を動かせながら見張りの横を進む。 「おい! 待て、んッなんだこれはッ」  男を追いかけようとした見張りであったがその行動は出来なかった。 「僕は友達に会いに来ただけだよ」  男はそう言い残しカタコンベの奥へと入っていった。  倒れた見張りの胸にはナイフが突き刺さり、周囲には深紅の水溜りが出来ていた。 「あ、いたぁ。久しぶりエルヴィン」  カタコンベの中でも重罪を犯し無縁仏となった人物が埋葬されているエリアに、童のような無邪気な声が響く。  生首を持ち上げるその男性、ルードルフは笑顔を浮かべていた。  過去に蓄えた知識は消え、人としての倫理も滅び、精神が幼児退行を起こした彼の中に残った思い。  それはエルヴィンへの償いだけであった。 「エルヴィン? 体どこに行っちゃったの? まあいっか!」  どす黒い湿った土に塗れながらルードルフは言う。  そして背負っていた荷物を地面に降ろす。  その中には二匹のネコと魔方陣が書かれた大きな紙が入っていた。 「この前はごめんね、すぐに楽にしてあげるから」  そう言ってルードルフは二匹のネコとエルヴィンの生首を魔方陣の中央に置き魔術を編み始める。  それは仕様を禁じられた禁忌魔術。    名をゴエティア。    至ってシンプルなその効果は、キメラの練成。 「さあ、蘇れ! 僕の友達!」 『栄養価の高い生物と繁殖力の高い生物を掛け合わして最高の食料が作りたかったんだ』  過去にこの魔術を用いたことにより処刑された悲しき人物の犯行理由が何処かから聞こえてきたような気がした。  可視化された呪文の網が弾ける。  その中央、魔方陣の上には三つ首の獣がいた。  二つのネコの首に挟まれた中央には生気を失ったエルヴィンの首が舌を垂らした状態で引っ付いていた。  その生物の胴体は一メートルほどの大きさをしたネコの体であり、そこからはネコの手足が八本伸びていた。 「ねぇ知ってるエルヴィン! ネコって命を九個持ってるんだって! すごいよねそれって何回死んでも生き返れるってことでしょ! だからもうエルヴィンは死ななくていいんだよ! やったね!」 「ニャァアアアアアアアアアアアア!!」  ルードルフの意気揚々とした呼びかけにキメラは叫び声をあげるだけであった。 『指令発令! 指令発令! カタコンベにてキメラ出現。繰り返す……』  薔薇十字教団内に声が響き渡る。   『尚今回出現した個体は人間の死体とネコを掛け合わせたとの情報あり。これより排除目標をシュレディンガーキメラと称する。出撃可能な団員は直ちに駆除活動に取り掛かれ。繰り返す……』
早すぎる海!
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帰還 2018-06-14

参加人数 6/8人 Narvi GM
 桜も散り、気温もだんだんと高くなってきたころ。  日照時間も伸びてきて、最近ではたくさんの虫を見かけることもあり、誰もが少しずつ夏の訪れを感じていることだろう。  そんな時期に、こんな指令が司令部に流れ込んできた。  なんでも、『春も終盤に差し掛かり、夏が近づいてきた。そこで、浄化師各位にはベレニーチェ海岸とその周辺の安全を確認してきてほしい』とのことらしい。  見た感じでは普通の指令なのだが、実のところ言うとこれは【超優良指令】なのである。  それを語るには、指令の目的地である【ベレニーチェ海岸】とそのほかの海について少し話さなければならない。  現在、ほとんどの海はアシッドレインによって汚染され、まともな海洋生物はほぼおらず、そこにはベリアルと化した生き物たちが大量に蔓延っている。  そんな海にいるベリアルは多種多様で、その上どれもが凶暴で、凶悪だ。  地上のベリアルとはもはや比べるのがおこがましいくらいの差であり、その絶望的な光景はもはや魔境というのが相応しいくらいである。  そんな中でなぜベレニーチェ海岸が一般に開放されているのかといえば、それはひとえに教団のお陰なのである。  教皇国家アークソサエティのヴェネリアにある海水浴場、ベレニーチェ海岸は地中海に面していて、その地中海は教団の管理下にある。  もちろん危険な生物もあまり存在しておらず、安全も確保されている。  そんなベレニーチェ海岸は、世界でも有数の美しい海岸だ。  さて、今回はそんなベレニーチェ海岸へ行って、海岸とその周辺の安全を確認する指令となっている。  恐らくこの指令の意味としては、いくら比較的安全な海とはいえ、すぐに開放するのは流石に不安だから、完全に夏になってこの海岸を開放する前にあらかじめ安全の確認をしておこう、ということだろう。  とはいえ、そもそもこの海岸がある地中海は教団によって管理されているのである。  要するに、だ。  ぶっちゃけてしまうと、この指令は【お金を支給するから海に行ってきてほしい】ということなのである。  なんて羽振りのいい教団なのだろう。  もちろん仕事として海周辺の記録を取ることは忘れてはいけない。だが、そのあとのことは何一つ書かれていないのだ。  それさえ終わってしまえばもちろん自由。  海に入るのもよし、砂浜で遊ぶのもよし、景色を眺めるのもよし、だ。  唯一問題があるとすれば、まだ時期が少し早いのもあって海水が冷たいということだろうか。  とはいえ、最近は結構温かくなってきているので入れないほどではない。  海開きはまだまだ先なので、言ってしまえばこれはもう【事実上の貸し切り状態】である。  指令として海を満喫して、その上お金ももらえる。なんてすばらしい指令なのだろう。  この機会に、少し早めの海を満喫してはいかがだろうか。
その一枝に祈りを込めて
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帰還 2018-06-13

参加人数 8/8人 久木 士 GM
 晩春の風は日毎に暖かさを増し、今では初夏とも呼べるほどの気候が続く日もあった。そんな、5月末のよく晴れた日。薔薇十字教団に一つの依頼が持ち込まれた。指令掲示板でそれを見つけ興味を持ったあなたたちは、詳細を聞くために受付へと向かった。 「依頼人はブリテン地区に住む老夫婦で、ルネサンス地区ニッキオ地方からの移住者です」  指令掲示板からほど近い受付カウンターでは、二十歳前後と思しき教団員が職務に当たっていた。彼女はあなたたちの話を聞くと、慣れた手つきで分厚いファイルを捲る。彼女は制服を少し早めに夏服に変えたようで、長めの半袖が涼やかだった。  ニッキオ地方は、ルネサンス地区北東にある海沿いの小さな地方だ。ここには良い漁場があることが古くから知られており、中心都市のニッキオも古代の貝塚が多く発見されていることからその名が付けられたのだという。今回依頼を持ち込んだ老夫婦は、ブリテン地区在住のニッキオ地方出身者で構成された互助会で代表を務めている。 「ブリテンでは蒸気機関や魔術人形を中心とする工業技術が発達しているのは、もうご存知のことかと思います。蒸気機関は大型のものから小型のものまで、工業製品として大量生産されるものが大半ですけれど、そうではないものも存在するんですよ」  彼女の話によると、後者にあたる特注品は主に貴族や大商人から制作を依頼されるもので、その機械に装飾を施す作業は短くても数週間、長い場合には数年を要する仕事なのだという。そのため装飾技術を持った者を探している工房は、ブリテン地区には常に存在している。彼らは芸術の盛んなエトワール地区を中心として集められていて、デザイナーや多種多様な工芸技術を持つ職人が、安定した仕事と収入を得るためにブリテンへ来ることも珍しくはなかった。今回の依頼も、そのような経緯で移住してきた若い職人に関連するものだ。  その職人は今から5年ほど前、金属細工職人として独立するためにニッキオ地方からブリテンへ移住してきた。下積み期間を終え、工房を構えられるまでに腕を上げた彼は、故郷から愛する女性を呼んで結婚することになったのだという。  二人の故郷の村では、婚約の際に男性が色とりどりのブーケを相手の女性に渡し、自らの愛情の深さを示す風習がある。これは二人に関係のある者が一輪、あるいは一枝ずつ植物を持ち寄って作られるもので、ブーケは地域の共同体から二人に贈られる親愛の情の深さと、変わらぬ相互援助の誓いを示すものでもあるのだそうだ。そのブーケに使う植物を集めるのが、今掲示している指令での任務だった。 「で、ここまで話を聞いて、疑問に思われている事がありますよね?」  受付の女性に促され、あなたたちは頷く。その職人がニッキオ地方からの移住者で構成される互助会に入っているのならば、そこの会員たちがブーケに使う材料を集めればいいだけの話だ。薔薇十字教団に依頼を持ち込んだ場合、そう多くはないにせよ費用も時間も掛かってしまう。互助会に教団員やその協力者が居るのであれば話は別だが、市民から多種多様の依頼が教団に持ち込まれることを差し引いても、この指令はいくらか奇妙に思える。 「実はこのブーケ、様々な場所から、色んな立場の人が花を持ち寄るほど良いものになると考えられているんです。今回教団にこの話が持ち込まれたのも、そのためなんですよ」  話が一区切りついたところで、彼女はカウンターの中から一枚の紙を取り出す。紙にはそれを作成した職員の署名とメモが入っており、それが学院で作られた資料であることを示していた。  今回この依頼が持ち込まれたのは、ブリテン地区外に派遣されて仕事をしていた互助会の会員が一人、ヨハネの使徒に襲われ命を落としたことが原因だった。使徒は浄化師たちによって既に討伐されたが、互助会の代表である老夫妻や会員たちは、この事件に酷く心を痛めていた。  ブーケに使われる植物が多くの立場の者から持ち寄られるのは、古くはその身分や立場にある者たちから庇護や援助を受けられることを示すものでもあり、現在ではあらゆる凶事を払いのける祈りの形として捉えられている。そして今回は、あなたたち浄化師たちに植物の採集が依頼されていた。つまりこの指令には、新たに夫婦となる二人がヨハネの使徒やベリアルに襲われて命を落とすことが無いようにと願う、互助会会員たちの祈りが込められているのだ。 「――というわけでして、皆さんには首都エルドラドやその郊外で、ブーケの材料集めをお願いしたいんです。1人につき1つですから、浄化師1組につき2つの植物ということになりますね。街角で見つけたお花、草原で見つけた綺麗な植物、何でも構いません。郊外には今の季節の花があるでしょうし、お店は色んな季節や土地の植物を置いてるかもしれませんね。  種類や色が被るのもよくある事だそうですので、そこらへんはあんまり気にしないで下さい!」  たどたどしい説明を終えると、彼女は資料をぱたんと閉じてあなたたちに笑いかける。初夏の陽気に誘われて、植物採集に行くのも悪くないかもしれない。そう思い始めたあなたたちに、受付の女性が思い出したように告げる。 「あっ、当然のことなんですけど、良くない意味のある植物とかは持ってこないでくださいね。誰かのお庭とかから勝手に持って来たりするのも駄目です。郊外ならだいたいどこでも平気ですけれど、立ち入り禁止区域には入らないでくださいね」  そう言って彼女は、エルドラド周辺の大まかな地図をカウンターから取り出す。立ち入り禁止区域と聞いて身構えるあなたたちだったが、この地図を見る限りではどこで植物を採取しても問題なさそうだ。 「この指令を受けた方は、後日ブリテンで開催される結婚式に出席可能です。皆さんお忙しいでしょうから、希望者だけで構わないと依頼人ご夫妻から伺っています。式ではブーケトスなんかもあるらしいですから、お時間があるなら参加されてみてはいかがでしょう。  ――あ、それと! お店で植物を買う時は、必ず領収書、切ってくださいね!」  受付の教団員は申請書類を取り出し、カウンタの上に置いてあった羽ペンごとあなたたちに差し出す。あなたたちはそれにサインをしながら、彼女の詳しい説明に耳を傾けた。誰かの幸せを願う真摯な気持ちは、いつかきっとあなたたちにも返ってくるだろう。二人の人生を祝う、優しい願いを込めた植物。それを探しに、二人でエルドラドをあちこち歩いてみるのも悪くないかもしれない。
湖でフィッシィング
簡単|すべて

帰還 2018-06-13

参加人数 3/8人 内山健太 GM
 農業地区ソレイユ。自然豊かな一帯で、憩いを求めて数多くの観光客が訪れる。ソレイユは山や川、湖などが有名である。そんなソレイユには綺麗な湖がある。この湖は現在、密かな人気スポットとなっている。季節外れに暑い日々が続いたことも関係し、湖に生息するニジマスが繁殖し、格好の釣り場となっているのである。  釣り好きにはもちろんだが、家族連れやカップルなどにも人気があり、アークソサエティでは話題になっているのだ。湖は主にニジマスやブラウントラウトなどを棲んでいるのだが、中には、その湖に棲みついた主と呼ばれる巨大魚がいることも明らかになった。  湖を支配している巨大魚の存在がエクソシストたちにも伝わってくる。決して、危険な生物ではないので、早急に処置をする必要はないのであるが、釣り人の中にはこの巨大魚を釣りたいと考えている人間も多いようだ。  湖は穏やかな自然が溢れており、格好の憩いの場となっている。普段、戦闘に明け暮れているエクソシストたちとって、束の間の癒しの時間となってくれるだろう。  基本的な楽しみ方はいくつかある。湖のそばには貸しボート屋や釣り具を貸し出している場所がある。そのボートに乗って湖に繰り出し、釣りをしてみるのだ。湖には数多くの魚が生息しているため、釣りを楽しめるだろう。最近は特にニジマスがよく繁殖している。湖に棲むニジマスやブラウントラウトなどは一年を通してよく釣れるのだ。多く繁殖しているため、比較的初心者であって釣りやすい。湖の近くには、釣った魚を実際に調理してくれる場所があり、そこで塩焼きなどを楽しむとよいだろう。  別の楽しみ方もある。それは巨大魚を釣ってみることだろう。湖の主と呼ばれる巨大魚は、釣り人の興味を引く存在だ。噂によると、巨大魚には伝説があって、その姿を見ると絆が深まるというものがある。それ故に、家族連れや恋人たちの中には、絆を深めるためにも、巨大魚を一目見たいと考える人たちも多いようだ。  これまでに巨大魚を釣った人間は一人もいない。そのため、釣り上げるのは難しいだろう。しかし、巨大魚を目指してパートナー同士で協力し合えば、きっと絆も深まるはずだ。但し、巨大魚は神聖な湖の生物である。そのため、仮に釣り上げたとしても、勲章として持ち帰るのではなくリリースするのがいいだろう。それでこそ、絆が深まるという伝説が広がるのだ。  もちろん、釣りだけが楽しみ方ではない。ボートを借りて、湖を遊覧するもの楽しみ方の一つである。湖自体が大変透明度が高く、春終盤から初夏にかけては心地よい風が吹き、ちょうどよい気温であるため疲れた体を休めるのにはうってつけなのだ。  幅広い楽しみ方がある湖で、束の間の休日を満喫してみてはいかがだろうか? 癒しにも繋がるし、気分もリフレッシュするだろう。
恋人たちの樹の下で
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帰還 2018-06-10

参加人数 5/8人 北野東眞 GM
 その古びた大きな木の下で愛を誓えば、必ず、叶う――。  教皇国家アークソサエティ「ソレイユ」から、さらに北に位置する、平和な農牧が盛んな村で、唯一人々の口にあがる伝説があった。  そこには昔、永遠を誓った恋人たちがいて、彼らが幸せになったということから【恋人たちの樹】と噂されている。  すでに数百年と経った、その樹はずいぶんと年取って、すでに枯れ樹といっても過言ではないが、村人はもちろん、他のところから噂を聞いた魔術師、エクソシストたちが調査や観光がてらに訪れては愛を誓う若者たちも多い。  その日も、また 「す、すきなんだ。ヨハンナ」 「ヨルン……そ、そんなこと言われても、ご、ごめんなさい」 「ヨハンナ、今はいいよ。けど、そのうち、答えをくれよ?」  農家のヨルンが告白したのは、パン屋のヨハンナだった。二人は木の下で互いの気持ちを確信していたが、照れもあり、言葉を紡ぐ。  ――にくらしい、あいが。  ――うらやましい、あいが。  ――あいされたい、あいされたい、あいされたい、こいつがいなくなればあいされる、あいされる、あいされる。  木々が囁くように揺れる。二人の若者はうれし気に微笑みあい、木の下から去っていくので気が付かなかった。  樹の下からしゅるりと音をたてて木の蔦が伸びる。それは愛されて幸せそうなヨハンナに狙いを定めていた。 ◇◇◇  平和な村で、若者がいなくなる、という事件が起きた。  それも条件となるのは村の愛を誓う木の下で告白をした、互いに想いあう者同士……とくに恋人、親友といったものだという。  どこかに連れ去られているのかわからないが、告白した翌日、まだその返事すらしてくれてないヨハンナという大切な女性が失踪し、心配したヨルンという青年から、助けてくれ、という依頼があった。  ヨハンナのベッドにはいくつもの木々の枝と葉が落とされていたそうだ。  たぶん、夜に寝ている隙に連れ去られたのだろうことは安易に予想がつく。しかし、目的は不明だ。一体、この犯人は何を求めているのだろうか。
イースターエッグの作り方
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帰還 2018-06-09

参加人数 3/8人 oz GM
 イースターはアンデットが新たな種族として認められた記念日として花冷えする季節から、5月終わりまである復活祭だ。  イースターの語源は、アンデットを新たな人種として認める運動が始まった事に由来している。  アンデットには体のどこかに穴が開いているので、それを象徴するものとして卵が使われる。そのため、墓から復活するアンデッドを殻から破って孵る雛に喩えられる。よって卵は「復活する命」の象徴でもある。  「アンデッドとして蘇ったあなたがまた死者に戻ったりしませんように、第二の生を末永く謳歌できますように」との意味を込めて「実に復活!」と挨拶を交わすのが風習になっている。  また、ここ近年では種族問わず「寒い冬を乗り越えて春が来た。瑞々しい生命が復活し、一年の幕開けが健やかに過ごせますように」とのような意味でも使われるようになった。  この時期になると、町はイースターでどこのお店も盛り上がり、飾り付けした家で少し豪華なご馳走を家族と食べて休日を過ごす。  イースターは、アンデッド人権運動の指導者がウサギのライカンスロープだったことが由来して「ウサギ」とアンデッドを象徴する「卵」が主なモチーフとされている。特に卵にデコレーションを施すイースターエッグが有名だ。  イースターエッグを公園などに隠してみんなで探す「エッグハント」や、イースターエッグを割らないようにスプーンで転がしながらゴールを目指す「エッグロールレース」などの遊びがある。  今では商業的な意味でイベント化しており、色々な謂れはあるが、それはそれとしてみんなで騒ぐお祭り扱いされている。  そんなイースターの真っ直中である日、司令部に貼られた1枚ポスターが、あなたの目に留まる。ポスターにはイーストエッグの可愛らしい絵と共に「イースターエッグ講座」とポップな字体で大きく書かれていた。その内容はというと。 * 「イースターエッグの作り方」 1.準備する道具は卵、ボウル、ピンや画鋲、接着剤、絵の具などの色を付ける道具、つまようじ、接着剤、ピンの刺さったボード。ビーズやスパンコール、リボン、生地などはお好みで。 (材料や道具はこちらで準備しておきますので、手ぶらで来て下さって大丈夫です) 2.ピンで卵に小さな穴を開けます。無理をせず、少しずつ開けましょう。 3.卵の中身を取り出します。まず、つまようじで黄身をつぶしてから、開けた穴から中身を取り出します。 (出した中身は食堂に持ち込むと美味しく調理できますので、捨てないでください) 4.水で殻をすすぎ、こちらで用意したピンを刺したボードで乾かします。 5.お好みに飾り付けてください。 6.細長い紙にメッセージを書きます。書き終わった紙をくるくると巻き、くり抜いた穴から紙を入れてフォーチュン・イースターエッグの完成です。  完成したイーストエッグは学校のイベントで使わせていただきます。  子供たちもエッグハントを楽しみにしているので、イースターエッグ講座に参加してくださると大変助かります。  事前に1から4までの作業工程はこちらで終えております。もちろん最初から手伝っていただけるなら大歓迎です。是非、実行委員にお声かけ下さい。  主な作業は、卵の殻に飾り付けをしていただき、最後にメッセージを書いて入れることとなります。  開催場所は教団寮の2階にあるアトリエです。ご都合のつく方は是非ともご参加下さい。 *  あなたはイースターエッグ講座の開催日に、アトリエにやって来た。テーブルの上には見本なのか色とりどりのエッグが飾られている。  シンプルに赤やピンク、青、黄色など様々な色で染め上げられたものもあれば、ドット模様にマーブル、ストライプ、EASTERの文字が入っているエッグもある。  さらに凝ったものでは、花柄や立体的にデコされていたり、可愛らしいウサギやひよこの絵が描かれているものあり、見るものの目を楽しませる。  できのいいものは家のインテリアに飾ったり、お店に置かれていたりしそうな洒落たものもある。逆に手作り感満載なものは、これはこれで味があっていい。  今回はイースターエッグを無料で作れる代わりにボランティアになるが、アトリエにある材料を使って自由に工作していい。あなたのアイデア次第でいくらでもアレンジできる。  あなただけのイースターエッグをパートナーと共に作ってみよう。きっと二人だけの思い出になるだろう。
DAYBREAK HORIZON
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帰還 2018-06-08

参加人数 8/8人 十六夜あやめ GM
 時計の針が天辺を越えた頃。遥か遠くまで続く藍の空は地上との境界線を隠している。一体化した空間は宇宙のように神秘的だ。  月の薄明かりに照らされる巻雲はゆっくりと形を変えて流れていく。満天の空を泳ぐよう瞬く鮮やかな星々は、結び紡がれ星座の記憶を綴っているようだ。  『教皇国家アークソサエティ』首都エルドラドより東南に位置するソレイユ地区。アールプリス山脈と呼ばれる雪に覆われた山々を中心に、農業が特に栄えている地区だ。豊かな自然から、山・川・湖でのレジャーが人気で、観光客も多く存在する。  そんなソレイユの街は灯りがすっかり消え、静寂に包まれていた。茹るような昼間と変わって、夜間は羽織物が必要なほど冷え込む。大小様々な山々に囲われている地域特有の現象かもしれない。  街の中心部から離れた場所にある小高い丘の上。そこで佇む浄化師の二人。闇と混ざり合った風が藍の空を通り過ぎた。  寂寞の音は波紋に、耳元で揺らぐ声は小さく響く。この丘の上には浄化師の二人しか存在しない。  星を眺めたり、話したり、感傷に浸ったり、パートナーと知り合って間もない浄化師にとって、お互いをより深く知るいい機会かもしれません。  また、普段周りに人がいて話せないことや不安に思う気持ちを打ち明けてみてもいいかもしれません。  薔薇十字教団より浄化師たちの交流を深めることを目的に発令された今回の指令。  夜が明けるまでの少しだけ特別な時間。あなたはこの空の下で何を想いますか?
デッキブラシで空は飛べるか?
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帰還 2018-06-07

参加人数 8/8人 ナオキ GM
 平和と秩序を守る為、害なす存在と直接戦うだけが、エクソシストたちに課せられた任務ではない。  例えば、戦いに巻き込まれた民の心身へのケア。  例えば、犠牲となった者への心からの弔い。  例えば、破壊された街の後片付け。 「みなさん精が出ますね。ですがそろそろ休憩してはいかがです?」  冷酷無比に人里にやってきたヨハネの使徒と繰り広げた先の戦闘では、幸運なことに死人こそ出なかったものの、負傷者の数や瓦礫と化してしまった建物は多くもないがゼロでもなかった。  教団員と住民が入り交じり、協力しながらの清掃活動の中、この地域出身でもあるひとりの女性祓魔人が顔見知りである一般市民にそっと労いの言葉をかける。  声をかけられた男性は額の汗を拭き、そうするか、と破顔した。  だが、その表情には、ヨハネの使徒の襲撃を受けた不安とはまた異なる類の翳りがあった。 「どうかしました? どこか怪我でも……?」 「いや、そうじゃねえんだ。ほら、ウチは夏の間は毎年プールで稼いでるだろ? 今年は馬鹿に暑いからいつもより早めにオープンするつもりだったんだが、街がこんなんじゃあどこの清掃会社にも頼みづらくてな」  なるほど、と祓魔人は頷く。  確かにこの男性は、自分がまだ幼い頃から子どもたち向けの安価なプールを開放してくれていた。  流れるプールだの滑り台だのもない分だけ安く、ガラの悪い大人もいちゃつくだけの大人も来ない場所の為、まだまだお小遣いが少ない年代の子どもたちからは絶大な人気があるのだ。  その証拠に、今も親を手伝って箒で土を集めていた少女が、プールまだなのー? と唇を尖らせている。  謝る男性に頭を撫でられ頬を膨らませる少女の顔に己の幼少時代を思わず重ねてから、祓魔人は思考を巡らす。 「ちなみに、プール自体は無事なんですか?」 「ああ、中心街から離れてたからな。だから例年通りの清掃だけ、なんだが……ま、今年は地道にひとりでどうにかするさ。プール内に溜まったゴミを出してプールサイドも綺麗にして、水を流して次はデッキで擦って……なんとかなる。心配すんな」 「あの! それでしたら、我々に任せていただけませんか?!」  目を瞠る男性の隣で、もうすぐプール入れるのー? と少女は小さな両手を上げて喜ぶ。  からん、と箒の落ちる音が、快晴の空に良く響いた。  今日も暑い。  こんなにも暑いと、水辺が恋しくなるのが生き物の性だ。  プールが開放されれば、きっと子どもたちは喜んでくれるだろう。  街の活気も、いち早く戻ってくれるはずだ。  これも、エクソシストの立派な任務のひとつ。
イースターバニー警備隊!
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帰還 2018-06-04

参加人数 8/8人 碓井シャツ GM
 春になるとイースターが始まる。  イースターはアンデッドが種族として認められたことを記念した大祭で、一般に復活祭とも呼ばれている。慕わしい人間が新たな生を受けたことに対する喜びが感じられて、いい風習だと、アンデッドの妻がいる教団員セス・アトリーは口元をほころばせた。 「イースターバニーのぬいぐるみでもお土産に買って帰ろうかな……」  祭りでは「アンデッドの種族特徴である孔」「新たに生まれ出る命」を象徴するものとして卵がメインモチーフとして用いられるが、アンデッド人権運動の指導者がウサギのライカンスロープだったことに由来して、ウサギもイベントの顔だ。  うきうきした気持ちでイースターエッグとイースターバニーに彩られたエトワールの中心街を歩いていると、後ろから声を掛けられた。 「あ、アトリーさん、実に復活! 教団に依頼に行こうかと思ってたんですよ。丁度よかった」 「実に復活! 貴方は確か商店街の……僕は今日は休みなのですが、休み明けであれば受理致しますよ。何でしょう」  イースター特有の挨拶を交わして、用件を伺う。相手はエトワールのメインストリートに店を構えている婦人だった。 「ほら、リュミエールストリートが復活祭で賑わってますでしょ。スリだとかが出るんじゃないかって心配で。教団の方に巡回を手伝ってもらえないかって話になりまして」 「ああ、なるほど。それは大変ですね……人手を回せばよろしいんですね?」 「でもあんまり厳めしいのは困るんですのよ? 警備員がぞろぞろ見回ってたら、お祭りの雰囲気に水を差してしまいますし」  それは確かにそうかもしれない。だが、ではどうしろと言うのだろう。アトリーは眼鏡の位置を直しながら、婦人の顔を見た。 「こちらで貸し出しますので、『これ』をつけてお祭りの雰囲気を壊さないように巡回してほしいんですの。お願いできますかしら」  婦人がアトリーに握らせたのはカチューシャだった。  ウサギの耳がついたやつ。 「……お願いできるかは、聞いてみないと分かりませんねえ」  アトリーは苦笑いした。
焼肉を食べたい!!
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帰還 2018-06-04

参加人数 5/8人 如月修羅 GM
 新米浄化師の貴方達は先輩浄化師に連れられて、慣れない実戦を繰り広げ……とても疲れていた。  流石に連日連夜の戦いだ。  まだまだ慣れてない現状であれば、疲れた、と思っても可笑しくはないだろう。  それは自分も通った道……とばかりに見ていた先輩浄化師が、そんな貴方達にひらりと取り出した物があった。 「さてと、先輩から貴方たちにご褒美よ」  そう言って微笑んだ先輩から渡されたのは、2時間焼肉食べ放題のチケットだった。  お高いお肉ではないけれど、種類は豊富だという。  デザートもお野菜もあるというから、まんべんなく食べれられるだろう。 「と、言っても勿論ただってわけにはいかないわ」  まぁそうですよねと眉を下げる貴方たちに、そこまで難しいことは頼まないわよと豪快に笑う。  だってこれは頑張った貴方たちにご褒美ですもの、と。 「倉庫にある魔導書をね、片付けて欲しいのよ」  そう言って微笑んだ先輩の言葉に貴方は頬をひきつらせる。  それはもう、これでもかという程の量の魔導書の山だったからだ。  本棚からおろされたその魔導書の山は、皆で手分けすれば大体1人100冊程を本棚にいれれば完了するだろう。  たかが100冊、されど100冊だ。  背表紙をみれば、シリーズものや背の色によって、ジャンル自体をわけることは可能だろう。  残念ながら、その魔導書は既に貴方がたには見たことがあるものばかり。  新しく魔術などを覚えることはできないだろう、というか、本の中身なんてみていたらいつまでたっても焼肉にありつけない!  さっさと終わらせて、このご褒美を堪能しなくては……。  貴方がたは心を一つにすると、さっそく本の山へと挑むのだった。  漸く終わった本の整理。  さてさて焼肉だー! とばかりに向かった焼肉屋は自分たちでとる形式だった。  とりどりの肉に、はしやすめだろうか、サラダやカレーも取り放題だ。  勿論、飲み物も自由……お酒は飲み放題についていないけれど!  脇をみればコンソメスープも飲めるようで。  ケーキは、チョコにチーズ、それにシュークリームや水ようかんもある。  果物はどうやらメロンとパイナップルのようだ。  あぁ、何から食べよう……貴方たちはさっそく取りに向かうのだった。
大量発生したジェルモンスターを倒せ!
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帰還 2018-06-03

参加人数 8/8人 oz GM
 地面から天に向かって伸びる背の高い木々の合間から、陽光が降り注ぎ地面にまばらに揺らめく影を描く。木の葉は朝露に濡れて雫が光っている。  小さな動物が草木の中を駆け抜けていく音が冒険者の耳に伝わる。  踏みしめた柔らかな苔の弾力が足下に伝わる。遠くには苔が倒木を覆っているのが見えた。  樹梢湖と呼ばれる湖まで曲がりくねった小道が伸びている。樹梢湖の由来は湖が木々を反射して水面が緑色に見えることから、周辺に住む者に何時しかそう呼ばれるようになった。  湖の手前には目印となる奇妙な形をしたうろの大木がある。そろそろ目的地が近いと男は足を速めた。  湖までたどり着くと冒険者は注意深く周辺を窺った。  湖の水面は太陽の光を反射してちらちらと光る。風に吹かれて水面がさざめいていた。湖の形は楕円を描いていて、その周辺を木々の枝葉がこうべを垂れるように湖を覆っている。  この周辺ではよくジェルモンスターが出現するのだ。冒険者の目的はジェルモンスターだった。  ジェルモンスターは別名スライムとも呼ばれる、水の塊である。弱いものは冒険者や魔術師の訓練用として扱われている。  冒険者である男は少し魔術をかじっていた。ジェルモンスターを凍らせて生きたまま捕獲することが冒険者ギルドからの依頼だった。  凍った後もジェルモンスターは生きている。訓練用のジェルモンスターはそうやって捕獲された後、訓練の前に解凍されて初心者相手になってもらうのだ。  冒険者にとってジェルモンスターは決して強敵ではない。だが、弱いからといって侮っては痛い目を見る。新人の冒険者が慢心してジェルモンスターに挑んだ結果、一匹倒して油断したところをたくさんのジェルモンスターに集られた末に、毒にやられて動けなくなったところをボコボコにされたという笑い話もあるくらいだ。  ジェルモンスターは陽気な存在で、人や動物を見ると無邪気に飛びかかってくる習性を持つ。先ほどの話のように冒険者にとって油断しなければ、ぼこられるだけで命の危険性は少ない。  だが、肥大化した個体は違う。滅多に見かけることはないが、素手で触れたものを同化させ、そのまま取り込み喰らうので注意が必要だ。  逆に通常個体が食事している光景は見られたことがないので、研究者たちの間でも謎の多き生物として研究されている。  どうして巨大化した場合のみ生き物を喰らうようになるのか、もっぱら不思議がられているようだ。  暫く茂みに隠れて男が待っていると、どこからか跳ねるような音が聞こえてきた。  ぽよんぽよん。 (ついてるな。早々に帰れるぞ)  男がジェルモンスターを捕獲しようと魔術を唱えようとした瞬間。  ぽよんぽよんぽよよ~ん。  どんどんとジェルモンスターが姿を現していく。まるで湖を囲うように増えていく。男が呆気にとられて見ている間にも、まるで分裂しているのではないかと疑う勢いで増していく。  ぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよよん。  押しくら饅頭のようにひしめきあっているジェルモンスター。ある意味狂気的な光景が広がる。 (こりゃヤバいぜ……)  我に返った男は即座にこの場から引き上げることにした。長年冒険者として生きてきた男の勘が「危険だ」と告げる。忍び足でジェルモンスター達に気づかれないように立ち去ると、その足で冒険者ギルドに異常事態を報告した。  この大量発生したジェルモンスターに困った冒険者ギルドは薔薇十字教団に依頼を出すことを決定した。町にある小さな冒険者ギルドだけでは人手が足りないと判断したのだ。  教団側もこの依頼を承認した。ちょうど新人浄化師を鍛えるにはいい指令になると判断したからだ。  かくして司令部の思惑はともかく新人達に新たな指令が下った。  諸君等に告ぐ。大量発生したジェルモンスターを討伐せよ!
君はナンバーパン!
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帰還 2018-06-02

参加人数 3/8人 春川ミナ GM
「何々? パン屋さん主催の運動会?」  ここは教皇国家アークソサエティ。ソレイユ地区の市場。ふと覗いた店先の窓ガラスにこんな張り紙がしてあった。  日差しは柔らかく降り注いでいるが、それでも動くと少し汗ばむような陽気。 「え~。運動苦手」 「そんな事言ってるから、この間も防具を買い換える羽目になったんじゃないの? 体型が丸くなったから」 「ち、違うよ! 古くなったし、あちこち傷んでいたからだよ!」  パートナーをからかうとムキになって返してきます。その姿にクスクスと笑いながらも、あなたはその下の一文に心を惹かれました。 「優勝賞品は……エトワールの超有名パン屋から派遣された新進気鋭のパン職人が作る新作スィーツパンの試食権?」  その言葉にパートナーも驚いた様子で張り紙を覗き込みます。 「エトワールの超有名パン屋って言ったら確かお金持ち御用達のお店だよね。一度食べたことあるけれど、クロワッサンひとつとっても外側はサクッとパリッとしていて噛むとバターの甘い香りと舌の上で溶けるような柔らかさなんだよ。あれはまるで天使が神様の為に作ったパンだよ……」 「ずいぶん詳しいね。いつの間にそんなもの食べたのか知らないけれど」  ウットリしているパートナーにジットリとした視線と言葉を送ると慌てて弁解をし始めましたが、あなたはすでに別の事を考えています。  この新作スィーツパンを食べた人の笑顔を。 「えーっと、開催地はソレイユ地区の牧草地を利用するんだ? これなら転んでも怪我をする心配は無いね。種目は卵運びと宝探し競争、最後に二人三脚かぁ。運動苦手な人も参加できる様に配慮されているんだね」 「一般の人も観戦するので種族特有の能力や特別に秀でた技能を持っている人は要事前申告って書いてあるね。もしかしてそれに応じてハンデがあるのかな。相手選手の妨害を行った場合も即失格って書いてあるよ。でも、この種目なら皆平和的に楽しめると思う。参加賞もあるみたいだし面白そう、かも」 「よっし! んじゃエントリーしてみますか!」  あなたは気合を入れてパートナーを振り返りますが、周りにも何人かのエクソシスト達が参加を検討しているようでした。  それはとてもうららかな陽気の午後。  空は青く高く、人はキラキラしていて、穏やかに通り抜けて行った風はとても気持ちよかった、とある日のお話。
瘴気の沼の主
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帰還 2018-05-30

参加人数 6/8人 鳩子 GM
 カーン、カーン  バチバチバチ  熱した金属を打つ高い音や、溶接する火花の音が響いている。  ここはブリテン地区アルバトゥルスにある鉄道修理工場である。アルバトゥルスは蒸気機関をはじめとする工業で栄える都市であり、鉄道組合ビッグ・トーマスの作業場も数多く存在していた。  鉄骨組みの素っ気ない作業場には、調整中の車両や修理中のレールなどが設置され、複数の作業員が立ち働いている。 「うん? なんだ、こりゃあ……」  若手作業員のビル・カーニーは、用足しの帰り、外の資材置き場を通り抜けようとしてその異変に気が付いた。  泥、泥である。  大仰に言えば、通路に沼が出現していた。水の腐った匂いと、カビのような匂いとが漂っている。 「ひでぇな、肥溜めでもぶちまけたみてえだ」  今朝になってようやく晴れたが、昨日まで季節外れの大雨が降り続けていた。その影響で、下水が溢れでもしたのだろうか。  鉄はともかく、木材が汚れれば使い物にならなくなってしまう。早く親方に報告しなければなるまい。  ビルは泥をまたいで通路を抜けようとし、そして、腰を抜かした。 「う、うわッ……!?」  泥が動いている――否、ミミズだ。一メートルはあろうかという巨大ミミズだ。それが、数匹もつれ合うようにしながら地面を這っていた。泥はミミズにまとわりついていたものらしく、辺りはべっとりと汚れている。  こんなのは見たことがない。 「うわあああッ」 「こ、この野郎、ボブを離しやがれっ!」  咄嗟に目を遣ると、作業場の入り口で、仲間のボブ・パークが大ミミズに巻きつかれていた。その手には鉄の棒が握られている。すぐそばには、鉄板やバーナーを構えた者たちもいた。どうやら追い払おうとして逆襲にあったらしい。巻きつかれた仲間を助けたいが、動くに動けずにいる。 「ぎゃっ……」  ごき、と鈍い音がやけに大きく響き、喚き声が途絶えた。 「馬鹿野郎! そいつはドレインワームだ、刺激するんじゃねえ!」  奥の方から親方が怒鳴っている。  ビルは生唾を飲み込んだ。へたりこんだ靴先から五十センチと離れていない場所を、大ミミズが這っている。目らしい目が無いので、ビルに気が付いているのかどうかも分からない。 「畜生めがッ! 増水した川を流れてきやがったな。近寄るんじゃねえ、腑抜けども! 早く扉を閉めろ!」  お、俺はここにいます、と訴えたいのに、ビルの口ははくはくと無意味に震えただけだった。叫んだ途端、目の前の大ミミズが飛びかかってくるような気がした。  ごぉん、と重い音を立てて鉄の扉が閉まる。  まだ、半分開いている。 「お、おれは……お、おや、親方……」  今駆けこめばまだ間に合う。そう頭では思うのに、膝はがくがくと震えるばかりで一向に立ちあがれない。  ごぉん。  扉は閉ざされた。  閂の通される音を聞きながら、ビルは呆けた顔で蠢く大ミミズを眺めていた。
イースター特別列車、出発進行!
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帰還 2018-05-30

参加人数 8/8人 鳩子 GM
●アルバトゥルス駅舎にて 「復活!」 「実に復活!」  ブリテン地区の中心部アルバトゥルスで、賑々しい男女の声が響き渡った。  ここは大小の荷物を抱えた人々が行き交う駅舎である。奥の方から、蒸気機関車のあげる汽笛の音がしている。 「復活!」 「実に復活!」  イースター定番の挨拶であるが、ことさらに朗々と交わされるので、いったい何事かと視線が集まる。  声高に喋りたてるのは、汽車を運行する鉄道組合ビッグ・トーマスの制服を着た男女だった。 「みなさん、本日も当駅のご利用、誠にありがとうございます。イースター特別列車のご案内です!」 「列車の中でエッグハントを楽しんでみませんか?」 「食堂車では今だけ! 季節限定の特別メニューをお出しします!」  詳しくはこちらをご覧ください、とビラが配られ始めると、あれよあれよと言う間に人が集まった。 「気になる人と座れば恋が叶う!? そんなムード満点のお席も用意しておりますので、ぜひ特別乗車券をお求めください!」  福々しい、華やかな空気が広がった。 ●教団司令部にて 「イースター特別列車?」  司令部に配属されたばかりの新人教団員リネット・ピジョンは、アトリエ勤務の実姉アマリエ・ピジョンが差し出すビラを受け取った。 「ええ。アルバトゥルスから出発して二時間くらい、ぐるっと走るらしいわ。面白そうでしょう?」 「へぇ……って、姉さん、究極の出不精の癖に」  アマリエは、アトリエに籠って絵筆を握っているのが一番の幸せと言って憚らない人種だった。 「ふふ、まあね。わたくしは乗らないけれど、楽しそうでしょう? 浄化師のみなさんの、息抜き……? 慰安? ええと、どう言ったら良いのかしら。そういうお話が、あると聞いたのよ」  おっとりとした姉の話に、リネットは根気よく耳を傾け、どうにかこうにか本題を把握した。  作業待ちの書類が入ったトレーを漁ると、確かに鉄道組合ビッグ・トーマスからの依頼書が見つかった。  ビッグ・トーマスは民間の組合であるが、その長トーマス・ワットは教団に所属しており、また、国家の安全保障に関わる事業であることから、実質的には教団の管理下に置かれていた。  そういう事情もあって、今回、イースター特別列車の試乗が浄化師たちに依頼されたということらしい。アマリエが言った通り、日頃危険を伴う任務に就いている浄化師たちを労う意味もあるのだろう。 「食堂車では特別メニューが出るのよ。アスパラガスのキッシュなんて素敵じゃなあい?」 「……それを買って来いって言いに来たわけね、姉さん」 「この街にも美味しいキッシュを出すお店はあるでしょう?」  うふふふふと笑って、アマリエはさっさと部屋を出て行ってしまった。つまりは、ビラを見てキッシュが食べたくなったので、リネットにお遣いを頼みに来ただけか。端から自分で買いに行くつもりは無いらしかった。  まあ、アスパラガスは春の風物詩のひとつである。リネットも食べたくないと言ったら嘘になる。 「姉さんのお遣いはひとまず脇に置くとして。……内勤の私たちはともかく、確かに浄化師の人たちには息抜きが必要かも」  司令部に勤めていると、日々あまたの事件が起こり、そのひとつひとつへ浄化師たちが如何に懸命に対処しているか、よくわかるのだ。  手の空いている者ばかりではないだろうが、少しでも楽しんでもらえればいい。  リネットは張り切って指令書の作成に取りかかった。
誇りを傷つけられた者の選択
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帰還 2018-05-28

参加人数 8/8人 三叉槍 GM
●燻る炎  ダニエル・ジンガーは正義感の強い少年だ。  今年で10歳になる彼は、聡明で気高い母を持ち、そして街の衛兵として殉職した父を心から尊敬していた。  彼は仕事に出かける母の代わりに身の回りの家事を行い、そして昼に差し掛かるころ尊敬する父の墓を訪れその手入れをするのが日課だった。  その日も変わらずいつものように家事をこなし、父の墓へと足を運んだ。  母に似て聡明なダニエルは近所でも評判で、彼の歩く姿には様々な大人が声をかけ、またダニエルもその声に律儀に挨拶を返していく。  それはいつもと変わらぬ日常の風景である。  しかし、意気揚々と墓地に着いたダニエルはそこで思いもよらぬものを目にして愕然とする。 「えっ! これは……なに?」  目を疑う光景に言葉を失い辺りを見渡す。  一言でいうと、それは『荒らされていた』。  建てられていた墓標の多くは倒れ、地面には多くの穴。そして墓地を囲うように作られた柵は何か所も破られている。 「お父さん!」  居ても立っても居られずダニエルは父の墓の元へと駆け出す。  願ったのは無事な父の墓の姿。  荒らされているとはいえ決してすべての墓が壊されているわけではない。全体で見るなら無事な墓の方が圧倒的に多い。  それなら、父の墓が無事である可能性だってきっと――。 「そんな……」  しかし、その期待は儚く裏切られる。  彼の目の前に現れたのは地面に大きな穴が空き、無残にも倒れ打ち捨てられた父の墓だった。 「なんで、こんな事……。誰が……」  歯を食いしばり拳を握るダニエル。 「絶対、許さないからな……!」  しかし、彼の目に浮かぶのは悲しみでも絶望でもなく、ただならぬ正義の怒りだった。 ●死者の種類 「墓荒らしだって?」  その報告を聞いて教団付きのマドールチェの男は眉を潜めた。 「そうよー。全部で10人分のお墓が荒らされてたって」  執務の机を挟んで正面に立つ長身の女性が、言いながら事件の概要が書かれた資料を男に渡す。  二人の慎重差は男の方が見上げるほどあり、ほぼ大人と子供という様相であるが、これは種族上低身長が多いマドールチェの種族ゆえである。 「墓穴が掘り起こされていて、複数の足跡があり、柵も乱暴に破壊されている……。素直に考えればゾンビ、か」 「ゾンビねー。アシッドが地下まで浸透しちゃったって事?」 「いや、それはない」 「え?」  女性が何気なく口にした推察をマドールチェの男はあっさり否定した。 「ベリアルになるには魂が必要だ。埋められた死体がアシッドでゾンビになることは無い」 「あれ? でもアンデッドさんとかもいるでしょ?」 「彼らは意志の力で魂の乖離を拒んだ者たちだ。それにしたって通常二日程度が限界で、その間に蘇生する事が条件だ。墓に埋められて時間が経った時点でアンデッドとして復活はしない」 「へぇー、そうなんだ」  男の解説にうんうんと首を振る。と、そこで何か思いついたのか、動きが一旦止まり視線が右上にズレる。 「ん? ちょっと待って? じゃあゾンビってなんなわけ?」 「ゾンビは禁忌魔術によって人工的に作られた存在だ。……俺達と同じようにな」  男はよく見えるように自身の肘を掲げて見せた。そこには魔術人形の成れ果てであるマドールチェの特徴、球体関節が備わっていた。 「えっと……ということはもしかして……」 「犯人がいる、ということだ。わざわざ夜の墓場に忍び込んで禁忌魔術を実行した奴がな」 「ワオ……」  少し大げさな手ぶりで驚いてみる女性。その女性にマドールチェはささっと書類にペンを走らせ、最後にハンコを押してそれを差し出した。 「犯人を捕まえられればベストだが、今は安全の確保が優先だな。これを頼む」 「了解」  笑顔でその書類を受け取り、女性は浄化師への指令掲示板へと向かって行った。
触れる手のひら、伝わる気持ち
とても簡単|すべて

帰還 2018-05-28

参加人数 8/8人 瀬田一稀 GM
「なんでそんなこと言うの!」 「そっちこそ、なんでわかってくれないんだ!」  最初は、ちょっとした、意見の行き違いだったはず。  それがいつのまにやら、声を荒げてのケンカになった。 「ああ、もうっ」  相手の考えも、わからないではない。  でも、自分の考えを、覆すことはできなくて。  八つ当たりなのは重々承知で、あなたは力強く、床を踏む。  その衝撃で。 「あっ……」  近くの棚の上から、花瓶が落ちた。  がしゃん!  高く響いた音に、慌てて近付いてくるパートナー。  しかし「大丈夫か」と言いかけて。  パートナーはすぐに、そっぽを向いた。  仲直りをしたいけれど、意固地になっているのは、相手も同じなのだ。 「ああ、もう、まどろっこしいわね!」  そのやり取りを見ていた教団員が、声を上げた。 「ちょっと二人共! こちらに来なさい!」  普段、世話になっている人の言葉である。  あなたとパートナーは渋々、彼女の前に足を進め。 「手を出しなさい」  言われたとおりに従うと、なんと二人の手首を、赤いリボンで結ばれてしまった。 「もういっそ、夜までそうして過ごしなさいよ。そうすれば仲直りせざるを得ないでしょう?」  さて、手首を結ばれてしまったあなたとパートナーは、この後どう過ごすのでしょうか。  仲直りはできるでしょうか。  
ゆるてん
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帰還 2018-05-26

参加人数 8/8人 星色銀 GM
「天に輝くスピカがきれいね」 「うん、ただし、君にはかなわないけど」 「ぷー。なに、それ?」  パートナーのわざとらしいキザなセリフに思わず笑ってしまった。 「あたしたち、ゆるく天体を見るはずよね?」 「冗談だし。楽しければなんでもありということで」  目に見えるのは、満天の星空と、白い雪に覆われたアールプリス山脈。  ここは、「教皇国家アークソサエティ」内、農業に栄えるソレイユ地区。  山脈の麓にて。浄化師たちは芝生に寝っ転がり、春の夜空を楽しんでいる。  眼下の町では、祭りが行われていた。人々の声は届かないが、夜店の明かりや広場で燃える薪から熱狂が伝わってくる。  浄化師たちは観光客として休日を満喫していた。  きっかけは、初春のある日。山脈の麓にある町の観光協会が薔薇十字教団に連絡を取ってきたことだった。 「浄化師さんには日頃からお世話になってます。そこで、我が町で開かれる春の祭りにご招待したいのですが。ゆるゆるに天体観測でもお楽しみいただければ」  薔薇十字教団が参加希望者を募り、今に至る。  天に輝く星を見ながら、パートナーと語らう浄化師たち。のどかな休日を送っていた。
ソレイユの小川で親睦を深めよう
とても簡単|すべて

帰還 2018-05-24

参加人数 8/8人 内山健太 GM
 アークソサエティの中心部から東南に位置する農業地区「ソレイユ」。農業地区らしく、自然豊かな特徴がある。この自然あふれる一帯に、綺麗な小川が流れているのであるが、そこは恋人や家族を中心に人気があると話題になっている。  季節は春本番。暖かくなり、涼しい場所で憩いを求める人間も増えてきた。  エクソシストになりたてである、あなたとパートナーは、これからの仕事を円滑にしたいと考えていた。そんな中、ソレイユの小川が季節的に訪れるのにちょうどいいという話を聞き、親睦を深めるためにも、小川に赴いていた。幸い、天気の良い日で、水は冷たくて気持ちがいい。小川の近くには農家があって、そこでチーズやビールが売られていた。どれも自然豊かな場所で作られた製品であるため、味は良いと評判である。あなたとパートナーは、ここで農産物を楽しみながら、小川で束の間の休日を満喫する。  小川を上流に上っていくと、小さな滝がある一帯があり、そこは「力の滝」と呼ばれている。その滝の水を飲むと、不思議と力が湧いてくる伝説があるのだ。あなたとパートナーは、これからの仕事が上手くいくようにと、力の滝へ行き、水を汲み飲んでみようという話になる。  小川は自然が豊かなため、大変滑りやすい。そのため、二人で協力しながら滝へ向かうといいだろう。小川を上流に上っていくほど、自然が濃く、木々の緑が深くなり、水の透明度も増していく。小川の自然を満喫するためにも、上流に上り、滝を見てみよう。滝を見るころには、二人の仲もそれなりに進展するだろう。  あなたとパートナーはエクソシストになってから、まだ時間が経っていない。ベリアルを討伐するためにも、二人の仲を高め、絆を深めるのは、今後の戦闘を進める上でも優位になるはずだ。親睦を深めるためには、やはり、一緒にいる時間を増やすのがいいだろう。そのために、ソレイユの小川を利用してもらいたい。二人の親睦が深まることを祈る。
イースターを盛り上げよう
とても簡単|すべて

帰還 2018-05-23

参加人数 8/8人 春夏秋冬 GM
 イースター。  それは4月1日から5月31日まで行われる大祭の1つ。  アンデッドが種族として認められたことを記念して始まったものだ。  このお祭りでは、アンデッドのことを想い2つのことが願われる。 「アンデッドとして蘇った君がまた死者に戻ったりしませんように。そして第二の生を末永く謳歌しますように」  死んだ筈の誰かがアンデッドとして復活したことの喜びを込めて、復活祭とも呼ばれていたりする。  それと同時に、春の訪れを祝うお祭りでもあった。 「寒い冬を乗り越えて春が来た。瑞々しい生命力が復活し、健やかにありますように」  そんな意味も込めて「実に復活!」と、まじないをかけるが如く挨拶を交わすのが風習になっていたりもする。  このお祭りは各地で行われいるのだが、そこでよく扱われるのが「卵」と「ウサギ」だ。  卵は、アンデッドの種族特徴である孔や新たに生まれ出る命を象徴するものとして使われる。  卵の殻を使った工芸品や料理など様々だ。  ウサギは、ぬいぐるみなどが扱われ、時には仮装をしたりする者も。  これはアンデッド人権運動の指導者が、ウサギのライカンスロープだったことに由来してのものだ。  そんなイースターが、リュミエールストリートでも行われていた。  教皇国家アークソサエティの中心部から、西に位置する大都市エトワール。  そのメインストリートであるリュミエールストリートには、さまざまなお店が立ち並び、それぞれイースターにちなんで催し物が。    早い! 安い! そこそこ! を売りにした大衆食堂「ボ・ナ・ベティ」では、イースター料理を食べ放題。  隠れ家的な雰囲気のカフェテリア「アモール」では、大人気のラテアートを、イースター仕様のウサギ模様に。  大手ファッションショップ「パリの風」では、ウサギの仮装衣装を大売り出し。  フリーマーケット「オルヴワル」では、イースターエッグやウサギのぬいぐるみといったイースターにちなんだ商品を、商人だけでなく市民も参加して売り買いに大賑わい。  飲み屋街「ボヌスワレ・ストリート」では、ブランデーをベースに卵黄を使用したエッグリキュールとチョコレートリキュールを組み合わせたカクテル「イースターエッグ」が振る舞われている。  そして子供はお断りなキャバレーが連なる「スターダスト・ルージュ」では、バニー姿になった女性と男性がもてなしてくれる。  とにもかくにも賑やかだ。  そんなリュミエールストリートで行われているイースターの催し物に、貴方達は参加することにしました。  大事なことはただ一つ、イースターを楽しむことです。  皆さんは、どう楽しまれますか?
新人諸君、実戦演習を行う!
難しい|すべて

帰還 2018-05-22

参加人数 8/8人 oz GM
「お前ら今回の実戦演習は終焉の夜明け団を想定して行うからな。今回は自警団に所属する魔術師に頼んで来てもらった……って、おっかしいなー、もうマヌエルさん来てる筈なんだけど」 「まあまあ、少し準備が遅れているのかもしれません。今のうちに新人たちに心構えについて話しておかないと」  赤髪の青年浄化師が頭を掻きながら、ぼやく。それを優しげな風貌のパートナーである女性が宥める。  本日は新人浄化師の実戦演習が行われる日だった。  ベテランである喰人と祓魔人が同行し、新人達を教導することになっていた。  演習場所は、世界大戦「ロスト・アモール」時に放棄された防御拠点だ。薄暗い建物の内部は老朽化が進んでおり、澱んだ空気が肌にまとわりつく。かつての生活拠点として利用されていた広間には人がいた名残が亡霊のように残っている。  薔薇十字教団は成り立ての浄化師を戦いの場に駆り出すほど、万年人手不足なのだ。浄化師の才能は先天的なもので、むざむざ失うのは惜しい。  今年は例年よりも新人の数が多い。司令部の方でも使える人材を育てたいという意向もあり、今回の演習が行われることが決定した。  索敵の訓練も兼ねて敵役となる魔術師を新人達に倒させる予定だった。もちろんベテラン浄化師が教導する為にいるのだが、この訓練結果を上に報告するためにこの場に待機していた。  厳しい訓練ではあるが、本来リスクの少ない指令の筈だった。 「私たち浄化師が一定の身分と衣食住が保証されているのは、命を懸けて戦っているからです。悲しいことですが、浄化師である以上、戦いから逃れられません」  女性浄化師は新人達に語りかけるように声音で厳しい現実を叩きつける。  声が反響しやすい構造なのか、さほど大声を出していないのに、少し離れた場所で待機していたあなたたちにも声が届いた。 「それぞれ戦う理由があるのでしょう。私もかつてのパートナーは大切な幼なじみでした。彼は浄化師として生き、戦いの中で死にました」  悲しげに瞼を伏せる女性はしばらく沈黙した後、 「浄化師として生きる以上、時には大切なものを守るために重要な選択をしなければならない局面も来るでしょう」  それには覚悟が必要だ、と女性は告げる。  アブソリュートスペルに誓ったときに捧げた覚悟が。  誰もが女性の話を遮ることなく、パートナーである赤髪の青年も沈痛な面持ちで聞いている。 「浄化師はどんなときでも冷静な判断を下さなければなりません。その判断を間違えたときに失われるのは、自分の命か。他者の命です。……私は彼が死んだとき、冷静な判断などできませんでした。みなさんにはそういった後悔をしてほしくありません」  女性の穏やかで悲しみに満ちた口調に誰もが黙って話を聞いていた。  沈黙の満ちた広間。突如、別の男性の声が響く。 「今回はそのための実戦ですよ。きっと神の意志に触れることができる有意義な時間になるでしょうね」 「……マヌエルさん? 準備が終わったのか、なら――」  にこやかに笑いながら近づいてくるマヌエルに赤髪の青年が声をかける。マヌエルと呼ばれた男性はそのまま腰の剣の柄に手をかける。  視界が赤く染まる。 「あっ?」  剣に貫かれた青年浄化師が不思議そうな顔で自分の腹を見る。足下は彼の体から流れた血溜まりができていた。  青年浄化師の腹を貫いたまま、こちらにむかって優しく微笑みかける。 「これが実戦です。身を持って覚えなさい」  剣を持っていない方の手で眼鏡を元の位置に直すと、先ほどと変わらない表情で語りかける。  一瞬にして怒号と誰ともしれぬ悲鳴が響きわたり、突然起こった惨劇に誰もが冷静さを失う。 「冷静な判断が大事だと先輩が教えていたでしょう?」  先生が教え子を窘めるような口調に誰もが背筋に氷塊を落とされたような怖気が迸る。  そのまま貫いた剣を引き抜き、青年浄化師は地面に倒れ込んだ。  倒れた青年は虫の息だが、まだ生きている。  だが、誰も動けない。目の前には得体の知れない人間の形をした化け物がいる。未知への恐怖が一気に溢れ出し、全身が強張っていた。  その中で真っ先に動いたのは、女性浄化師だった。 「マヌエルさん、どうしてっ!?」 「『プリズン・ソーン』」  女性の足下に浮かんだ魔方陣から、茨が幾重にも生えるとあっという間に頑丈な檻に閉じこめられてしまう。女性は何とか出ようと両手杖で殴りつけるが、びくともしない。 「何をする気なの!?」 「すみませんね、あなた邪魔なんですよ。少し大人しくしていただけませんか。……『フォール・ディアブロリィ』」  炎のような魔力の光が発生すると、女性が重力に押しつぶされるように地面に叩きつけられる。  そのまま動かなくなった女性をマヌエルは何の感慨もなく見つめると、新人達の方を向き話しかけた。 「私もね、彼女のように大切な人を亡くしているんですよ。さあ、私たちは兄のように人生を精一杯生き抜き、最期の瞬間まで抗いながら安寧の死を受け入れなさい。私たちは罪を贖わなければなりません」  敬虔な神父のように優しく言い含めるその異様な姿は、完全に常軌を逸していた。どこにでもいる男性なのに、精神はここではない別の世界に棲んでいる住人だった。直感的に「あぶない」と思わせる尋常ではない目の色に誰もが気圧されていた。 「戦いこそが、私たちの生が充実している瞬間。そのときこそ神に与えられた命を返すのに最もふさわしい」  優美な風貌は血に濡れ、穏やかに語りかける内容は明らかにおかしい。 「神よ、罪深い我らにどうか救いを。神の思し召しのままに!」  天に召します父への賛美を高らかに謡う。  裏切りの魔術師は血に濡れた剣を構え、神父のように慈悲深く微笑んだ。 「その身を持って神に殉じなさい」
悲劇の復讐
普通|すべて

帰還 2018-05-20

参加人数 8/8人 リリベル GM
「母さん……」  床一面に広がる鮮烈な赤。むせ返るような臭いに、僕はリビングから一歩も動けないでいた。  なんでこんなことになったのか。脳は必死に答えを探すが、辿りつかない。目の前の認識したくない現実が、腹の底に落ちて鉛のように重くなっていく。 「母さん、起きてよ」  言葉ではそう言っていても、実際に肩を揺らす勇気なんてない。だって、分かっている。母さんだった肉体は、きっともう冷たくなっているから。  自分に危機は起きていないはずなのに、僕の意識は勝手に自分の記憶を遡っていった。  僕の家族は決して裕福ではなかったけれど、確かに一生懸命に生きていたはず。父さんが家を出て行ってから、母さんが一人で僕を必死に育ててくれた。僕が一人で寂しくないようにって、母さんがある日子犬を連れてきてくれた。母さんが僕らのために一生懸命働いてくれているから、僕はその愛犬のベスと、母さんの支えになっていこうって意気込んで……。少なくとも、僕らは大切に毎日を生きていたのに、なんで。  ほんの一瞬だった。僕が買い物をしようと母さんを残して家を留守にしたほんの一瞬。出かける前の母さんの「行ってらっしゃい」が、まだ耳に生々しく残っている。まさか、帰ってきたら母さんの姿がこんなに無残に変わり果てているとは、思いもしなかった。 「そうだ、助けを呼ばなきゃ」  ようやく冷静になった脳が、正常な判断を僕に下す。 「た、助け……誰か、助けを呼ばなきゃ……」  外に助けを求めようとして、ハッとした。  微かにだが、家の奥の方から、ガタンッと物音がしたのだ。  もしかして、ベス?  ベスはまだ小さいし、臆病だから、母さんを襲ったやつから身を隠していたのかもしれない。 「ベス? いるの?」  おそるおそる声を出してみる。  どうか、ベスであって欲しい。お願いだから、ベスは、生きていて欲しい。  脳裏に元気に走り回るベスの姿と、それと同時に甲高い鳴き声をあげながら無残に引き裂かれるベスの姿が浮かんで、僕は急いで頭を振ってその想像を消した。 「ベス?」  その僕の声に反応するように、ガタガタンッとまた物音がした。 「ベス!? もう、誰もいないから出てきてよ! 母さんが……」  僕は、耐えきれずに大きな声を出すと、影がゆらりと揺れてこちらに近づいてきた。  そして、 「ベス……」  そこには確かにべスがいた。  体から触手を沢山生やして、ベリアルになったベスがいた。 「ヴヴヴヴヴヴ」  ベスが、僕がよく知っている声で、僕の知らない唸り声を出す。体から出ている触手と、ベスの口には真っ赤な血がこびりついていた。 「う、ああ、うああああああ!!」  僕は訳も分からないまま、必死にその場から逃げ出して。  そこに、母さんとベスを残して。 「あれから、もう10年以上経ちますが、まだあの時のことを夢に見ます。それに、最近になってベスの姿を、このアークソサエティの外れにある森の中の洞窟で見たという話も聞くんです」  男は静かにため息をついて、視線を遠くにやった。  その男の様子を見て、その男の担当をしていた教団員も思わずため息をつきそうになってしまう。  教皇国家アークソサエティの住宅街でも、こうした事件は珍しくない。ベリアルやヨハネの使徒に襲われて、心が痛むような残虐な事件は、後が絶えないのだ。そして、その度に被害者は薔薇十字教団を訪れ、その悲痛な叫びを唱えていくのだ。 「どうか僕の代わりに、母とベスの仇を取って欲しいのです。ベスの肉体と魂を、解放させてあげてください。どうか、お願いします。仇を取ってくださった暁には、お礼もしたいと思っております。どうか、お願いします!」  男はそう言うと、深々と頭を下げた。その拍子に、ポタポタと数滴の滴が落ちたのを、教団員は見逃さなかった。彼の中では、未だ事件は終わっておらず、彼の心を過去に縛り付けている。 「事情は分かりました。しかし、ご存知か分からないですが、ベス様がベリアルになってしまったということは、その……」 「分かっています。構いません。どうか、仇を」  力強く言った彼の「仇」という言葉が全てを物語っていた。一度ベリアルになってしまえば、その魂を解放すると同時に肉体は砂となって消えてしまう。つまり、彼のベスの姿形をしたベリアルは、もう二度と彼の知っているベスに戻ることはないのだ。  そのことを、男は分かっていた。そして、悔しさを胸に溜めて、拳を震わしていた。  そして、教団員もその男の覚悟をしかと受け取った。 「分かりました。それでは、こちらで、浄化師を募って、ベリアル討伐に向かいたいと思います」
白ネコと一緒にハーモニー
とても簡単|すべて

帰還 2018-05-19

参加人数 6/8人 留菜マナ GM
 ここは、教皇国家アークソサエティの西部に位置する、巨大都市エトワール。  エトワールの中心街にあるリュミエールストリートでは、この日も『蚤の市』とも呼ばれている、フリーマーケット、オルヴワルが賑わっていた。  フリーマーケットには、商人が持ちよった野菜、海産物類、そして珍しい骨董品の数々が並んでいた。あらゆる国々から集められたさまざまな品物が、ここでは手に入る。  だが、フリーマーケットを訪れた一組の浄化師達は、そこで商人達の悲鳴を耳にした。 「俺の商品がない!」 「私の商品もないわ!」 「俺のところもなくなっている!」  商人達の話を聞いてみると、フリーマーケットで売っていた商品が次々と姿を消しているというのだ。  しかもすべて、珍しい骨董品の数々だという。  消えた商品は、誰かに盗まれてしまったのだろうか?  だが、誰も商品が盗まれるところを見ていないと言う。  不可解な現象に、浄化師達が悩んでいると、足元から不思議な歌声のような鳴き声が聞こえてきた。 「にゃにゃー、にゃーにゃー」  浄化師達が視線を落とすと、そこには何やら綺麗な石をくわえた白猫がそそくさとその場から立ち去ろうとしていた。  浄化師達と同じように、白猫に気づいた商人の一人が叫んだ。 「あれは、俺の商品だ!」 「何だって……あっ!」 「にゃん」  すかさず、捕まえようと手を伸ばした商人達だったが、白猫は商人達の隙をついて身を翻し、フリーマーケットから立ち去ろうとしてしまう。 「待て!」 「待ちなさい!」 「――にゃ!? にゃあ、にゃあ!」  しかし、行く手を拒むようにして立ち塞がった浄化師達によって、白猫は呆気なく捕まってしまった。  女性の商人は、白猫を捕まえた浄化師達に視線を向けると顔を曇らせて言った。 「この猫が盗んだの?」  女性商人の疑問を受けて、別の商人が感情を抑えた声で淡々と続ける。 「誰かが、この猫に手引きして盗ませていたかもしれないな」 「すべては、この猫が鍵を握っているのか」  これ見よがしにその商人が言うのを聞いて、浄化師の一人、祓魔人の男性は静かにそう告げると、顎に手を当てて真剣な表情で思案し始める。 「とにかく、このまま野放しにはできないな。盗んだ商品の在り処を突き止めるためにも、しばらく、この猫を預からせてもらおう」  後日、教団本部に、白猫を手引きした男が捕まったという連絡が入った。  だが、盗まれた商品は見つかっておらず、男も盗んだ商品に関しては一切、話そうとしない。 「盗んだ商品はどこにあるんだ?」 「にゃー」  祓魔人の男性が聞いても、白猫は知らんぷり。 「どうしたら教えてくれるんだ?」 「にゃ~ん」  白猫は悩むように視線を泳がせ、やがて部屋の机に飛び乗った。そして、置いてある羽ペンを取ると、浄化師達の方へと向ける。 「もしかして、一緒に歌ってほしいのか?」 「にゃーにゃーにゃー」  そういえば、白猫と初めて出会った時、歌のようなものを歌っていたような気がする。  マイクのように差し出されたペンの先端をじっと見つめながら、祓魔人の男性とパートナーの喰人の女性は少し照れくさそうに歌を歌ってあげた。  だが、白猫はまだ歌いたいとねだるように、両手を広げて喰人の女性の顔を見上げる。 「えっ? まだ、歌いたいの?」 「にゃー」 「ねえ、さすがにずっと付き合うわけにもいかないし、他のみんなにも声をかけてみましょう」  白猫と一緒に歌ってあげたら、盗んだ商品の在り処が分かるかもしれない。
嘘かほんとか、あなたの過去・未来
とても簡単|すべて

帰還 2018-05-18

参加人数 8/8人 瀬田一稀 GM
 教皇国家アークソサエティの中心部から、西に位置する大都市エトワール。  そのメインストリートであるリュミエールストリートは、いつも多くの人でにぎわっていた。  しかし笑い声に満ちたカフェの一角に、ため息をつく女性が一人。 「つまらないわ……毎日、同じことの繰り返しばかり!」  彼女はドン! と机を叩いた。 「昨日はお財布を落としたし、今日は靴のかかとが壊れたし! ああ、楽しいことはないのかしら」  そこで彼女は顔を上げ――ちょうどその場にいた、あなたをじいと見る。 「あなた、ひょっとしてエクソシスト?」 「えっ……? は、はい」  見知らぬ相手からの突然の問いかけに、緊張しながら答えるあなた。  女性はひらひらと手を振って、あなたとパートナーを招き寄せた。 「だったら、きっといろいろな体験してきてるわよね。ねえ、見せてくれない? あなたの過去……。ああ、未来でもいいわ」 「過去と未来? どういうことだ?」  あなたのパートナーが問いかける。  女性はうふふ、と真っ赤な唇で微笑み、言った。 「わたし、人の過去や未来が見えるのよ。ああ、やり方は簡単だから、大丈夫。あなたの手に触れるだけでいいの……」  この女性が、本当のことを言っているのか。  それとも単に、からかわれているのか。  さて、答えはいかに?
職業見学会を成功させよ!
とても簡単|すべて

帰還 2018-05-18

参加人数 2/8人 姫井珪素 GM
 ある日の早朝の出来事。アークソサエティ本部の一室に、貴方(達)は、司令部に配属されている先輩の浄化師に呼び出されました。 「君たちに重要な任務を与えよう」  薔薇十字教団に入団して間もない貴方(達)は『重要らしき』指令の発令に緊張感を隠せないでいます。  意識を集中させ、理解に努めていきます。  ――極めて重要。  ――要人も様子を見に来る。  ――期間は一週間後に迫っている。  ――将来を担う仲間がそこから生まれるかもしれない。 「――と言う訳だ」  先輩浄化師の話が終わり、貴方(達)は呆気に取られます。  どうやら首都エルドラド内の学校で行われる「職業見学」の係を任せられることとなったのです。  てっきり死地に向かうものと思っていた貴方(達)は、安堵したのか落胆したのかわかりませんが納得のいかない感じではありました。勿論、薔薇十字教団の団員として、指令には全力で挑む所存ではあるはずです。  そんな貴方(達)に釘を刺すように先輩浄化師は続けます。 「これも歴とした指令だ。パートナーや他の係のものと協力して挑むこと。エルドラドに住む貴族も我が子を見るついでに見学なさるそうだ。しっかりとした内容で挑むように。気分を害して寄付が減るのは、痛手だ」  ……戦闘とは別に、苦戦を強いられることになるのでした。
正義とは、自由とは
難しい|すべて

帰還 2018-05-17

参加人数 7/8人 北織 翼 GM
 教団員セゴール・ジュノーは、貴族ザメオヴァ男爵邸の応接室にいた。 「やぁ、セゴール。今回わざわざ足を運んでもらったのは他でもない、『リバティ戦線』の件だ」  男爵は口髭を弄りながらそう切り出す。 「奴等め、この儂に脅迫状なぞ送りつけてきおった」  セゴールの前のテーブルに、1通の手紙が男爵の手によって投げ捨てられるように置かれた。 「……」  セゴールは黙ってその封書を取り、内容を確認する。 「差出人は奴隷反対団体の『リバティ戦線』ですね。『ザメオヴァ男爵の管理する農地で労働を強いられている奴隷30人を解放せよ。さもなくば男爵に鉄槌を』……解放期限は明日いっぱい、『明後日午前0時の時点で1人でも解放されない者がいれば相応の代償を求める』ですか」 「フンッ! 綺麗事ばかりを並べる道徳団体め、儂のお陰で奴隷たちが餓死せずに済んどるというのに、まるで現実が分かってない!」  男爵は絨毯に唾を吐き捨て、テーブルを蹴った。  そして、その太い首をゆっくり左右に振ると、ソファの背もたれに身を沈める。 「……いいかねセゴール、この国では奴隷に対して賃金の支払い義務は無い、それは君も分かっているだろう? だが、儂は奴等に衣食住を提供している、それがどれ程良心的で人道的か、少し考えれば理解出来る事だと思わないか? だというのに、リバティ戦線は儂を悪の権化とでも言わんばかりの勢いだ。解放された奴隷に行き場はあるのかね? 儂の所以上に生命維持の出来る生活環境はあるのかね? そんな事も考えず自由だの平等だの……実に腹立たしい」 「……ですが、今回の一件に何故私が呼ばれたのかが分かりかねます」  セゴールの冷静な一言に、男爵は表情を曇らせた。 「分からない、だと? ならば単刀直入に言おう、儂を守れ」 「……教団も浄化師もボディーガードではありません。ベリアルやヨハネの使徒、そうした脅威から人々を守るのが……」  そこまで言いかけたセゴールの声を、男爵はピシャリと遮る。 「終焉の夜明け団」 「……はい?」 「いいかセゴール、儂はリバティ戦線の裏には終焉の夜明け団が潜んでいる、そう考えておる」  男爵の突飛過ぎる主張に、今度はセゴールの表情が淀んだ。 「そう断言されるからには、何か根拠がおありなのでしょうね?」  男爵はソファから立ち上がり窓辺に立つと、ソーセージの様に丸々と太った指で窓の外を指す。 「昨晩、見たのだよ……あの木陰で、黒い外套を羽織った薄気味悪い者共が奴隷と何かやり取りしているのをな。顔までは確認出来なかったが、恐らくその奴隷がリバティ戦線と通じていて、終焉の夜明け団と何らかの交渉をしているのかもしれん」  セゴールは怪訝そうな視線を窓辺に向ける。  客間は2階、木陰の周囲に外灯は無い。  男爵が嘘を吐いているとは思えないが、目撃した時間帯を考えると男爵の見た人影を終焉の夜明け団信者と決めつけるのは些か安直と言えよう。  だが、セゴールの持つ情報と知識がこの一件に終焉の夜明け団が関与している可能性を示唆していた。 (奴隷反対団体『リバティ戦線』は奴隷を使役している貴族を狙い過激な手法で金品を強奪している。だが、リバティ戦線は奴隷たちの生活を援助するでもなく、新たな稼ぎ先を紹介するでもなく、ただ自由と解放を求めているだけだ。そんな活動自体にそこまで多額の資金が必要とは思えない。逆に、終焉の夜明け団はその活動が多岐に渡りコストもかさむせいで常に資金を必要としている。名を売り正義の味方面をしたいために戦力が欲しいリバティ戦線と、キメラの開発など魔術に詳しく戦力はあるが資金が足りない終焉の夜明け団……両者の利害は一致している。リバティ戦線から終焉の夜明け団には資金が提供され、終焉の夜明け団からリバティ戦線にはキメラや魔術を使える者が戦力として提供されているとすれば……) 「……分かりました。男爵、明日のご予定は?」  一転して男爵の護衛を引き受けるという内容のセゴールの発言に、男爵は刮目し声を上ずらせる。 「さすがセゴール、話の分かる男だな! 儂は明日農地の視察に出る予定だったが、脅迫状の事もあるのでここから離れた宿に身を潜ませようかと考えておる」  セゴールは冷めた目で男爵を見上げた。 「それはお控え下さい。終焉の夜明け団には魔術の心得もあります、潜伏したところで捜し出されて身ぐるみ剥がされるのがおちです。それに、他の宿泊客も巻き添えになりかねません。男爵は事が収束するまでの間、このお邸から一歩たりとも出ないで下さい」 「何だと? 儂のこの邸で賊を迎え撃つと言うのか! あんな下賤な連中をこの邸にみすみす入れろというのかっ!」  セゴールの慇懃無礼とも言える口調に男爵は眉を吊り上げ声を荒げるが、セゴールはなおも畳み掛ける。 「いいですか、この一件に終焉の夜明け団が絡んでいるという確固たる証拠は何一つ無いのですよ。男爵がご覧になった黒外套が只のぼろきれで奴隷が世間話をしていただけだとしたら、男爵には『不確かな情報で教団を振り回した傲慢な阿呆』という不名誉なレッテルが貼られるのですよ? 男爵は果たしてそれに耐えられますか? しかし、相手が敷地内に乱入し破壊行為に及ぶという暴挙に出れば、終焉の夜明け団が絡んでいようといまいと、阿呆とまでは言われますまい。この先死ぬまで阿呆呼ばわりされる屈辱に比べれば、敷地内が戦場になるくらい大した事ではないでしょう?」 「き、貴様……っ」 「それとも、終焉の夜明け団の関与が明らかでないわけですから、護衛はお断りしましょうか? 我々も暇ではありませんのでね」 「くっ……」  男爵は遂に返す言葉を失うが、セゴールは男爵に『分かった』の一言を言わせるまで引かない。 「どうなさいますか? 宿で辱めを受けるか、阿呆男爵に成り下がるか、甘んじて我々の作戦に従い身の安全と名誉と財産を守るか」 「……分かった、分かったわい」  セゴールは立ち上がると、絞り出すような調子で了承の返事をした男爵に恭しく一礼し、退室する。 「ああ、そういえば男爵……」  退室する間際、セゴールは男爵を振り返った。 「敵の戦力が如何程か判然としないので、今回の任務は浄化師たちにとってかなりの負担と危険を強いる恐れがあります。彼らにはそれ相応の報酬をご用意下さいますね?」 「ああもう勝手にせい! 請求書でも何でも持ってこい!」  忌々しげに吐き出す男爵を尻目に、セゴールは秘かに口元を歪ませながら男爵邸を後にするのだった……。
局員さんの頼み
とても簡単|すべて

帰還 2018-05-13

参加人数 8/8人 oz GM
 春とはいえ、まだまだ肌寒い日。  教団内にある図書館に立ち寄った君たちは受付にいた女性から、ある頼みごとをされた。 「今月は人手が足りなくて資料集めまで手が回らないの。報酬も出すから、手伝ってくれないかしら」  図書館の5階にある「事件データ室」で教皇国家アークソサエティの国境付近でここ半年間に起こったベリアルとヨハネの使徒の襲撃事件について資料を集めて欲しいそうだ。  頼み込む女性局員の目には、はっきりと隈ができており、どのくらい徹夜しているのか聞くのも怖いぐらいに顔色も悪い。疲れ切った女性局員を見ると断るのも気が引ける。  引き受けることを告げると、局員は安堵した表情で、 「本当に助かります。後日、司令部にあなたたちが指令を受けたという形で報告しておきますね」  と頭を下げて、受付に戻る。  5階の扉の前まで来ると、正門を通る際にも使う通行証をセキュリティーシステムにかざす。すると、ロックが解除されていき、室内にいた局員が顔を出す。  通行証を見せながら、「事件データの資料を集めるよう頼まれた」と短く用件を告げると、本棚のホールへと案内される。  人気がないせいか自身の吐息が聞こえるほど静かだった。  閲覧スペースは窓に囲まれた場所にあり、奥の書架のスペースは天井まで届く高さだ。本棚には年月日が記されたファイルボックスが隙間なく入れられている。  さらにファイルボックスの中に納められた事件データのその量の多さに圧倒されるかもしれない。あるいは教団が請け負う事件の多さに浄化師として気が引き締まる思いに駆られるだろう。  疲れている局員のためにも、浄化師同士で協力して事件データを集めよう。
春を裂く災厄の爪
普通|すべて

帰還 2018-05-13

参加人数 5/8人 鳩子 GM
「あなた、ちょっと遅くなっちゃったけど、今日も来たわ」  若草色のボンネットを被り、バスケットを手にして微笑む女の出で立ちは、いかにも若奥様風であった。だがその笑みを受け止めるのは彼女の伴侶でも、恋人でもない。  『ダミアン・バロー、此処に眠る』  まだ角の取れぬ墓石が、夕刻の赤い光を反射している。  若き未亡人、アンナ・バローの微笑みを覗く者があれば、底無しの悲しみと虚しさを見てとっただろう。  ここは豊かな自然を風物とするソレイユ地区でも特に静かな、観光客の訪れない農村の小さな墓苑だった。害獣避けの木柵が張り巡らされた内側には、掘り返された土の跡が残る新しい墓が並び、摘まれたばかりの花や瑞々しい果物などが供えられていた。  惨劇が起きたのは、ついひと月ほど前のことである。  近隣の大きな街へ作物を売りに行った一団が、その帰途、ベリアルに襲われた。村では連日弔いの鐘が鳴りやまず、人々は深い嘆きの淵に落とされた。大きな街道沿いのことであったため、すぐさま教団から浄化師が派遣され件のベリアルは討伐されたというが、失われた命が戻ってくることは無い。また別のベリアルが現れないとも限らず、憂いを拭い去ることは出来なかった。  しかし、いつまでも悲嘆に暮れてはいられないのが現実だ。うつむいている間にも季節は移ろい、春の盛りを迎えた農村ではやるべきことが山のようにある。多忙さは、ある面では、精神の救いであった。ほんのわずかな兆しではあるが、暗い地中から若葉が芽を出すように、村は悲しみから立ち直ろうとしている。 「また来るわ。今度は、あなたの好きなマグノリアの枝を貰ってきましょう」  しゃがみこんで亡き夫と対話していたアンナは、感傷を振り切るように言って立ち上がった。  この頃は日が伸びたのに油断して、家を出るのが遅くなってしまった。おかげで、普段なら他にも何人かの姿があるのに、今日は一人きりだ。日暮れがすぐそこまで迫っている。住居の立ち並ぶ区画からそう離れてないとはいえ、墓地は林の中にあり、暗くなってからでは不安があった。  その不安が恐れを招くのだろうか。林道を急ぎ帰るアンナは木々の陰から何かがこちらを伺っているような気配を感じた。冬眠から覚めた熊か、飢えた野犬か、それとも――。悪い想像はとどまるところを知らない。きっと気のせいだと自分に言い聞かせ、足早に土を踏む。  木々が途切れた先に、村の明かりが見えてくる。ほっとしたのも束の間、がさりと葉擦れの音がたった。  思わず振り返ったアンナの目に、巨大な黒い影が映った。  のどかな夕飯時を迎えていた農村は、俄かに騒然となった。  娘の帰りが遅いことを心配して迎えに出た父親が、林道の入り口で倒れるアンナを発見したのである。肩口をざっくりと引き裂かれていた他、背にも複数の爪痕が残っていた。アンナが村の灯が届くところまで逃げたので、襲撃者は途中で引き揚げたらしい。かろうじてまだ息があった。 「先生、アンナを、アンナを助けてください……!」  弔いの記憶が、アンナの父親のみならず村中の人々を震わせる。  医者がアンナの治療に全力を尽くす一方、外の広場では村の男たちが松明と武器を手にして集合していた。観光地でもない農村に軍属が駐在する由もなく、日頃から警備を担うのは有志の村民によって結成された自警団である。 「先生の見立てでは、アンナを襲ったのは熊だろうということだ。猟銃は持ったな」  おう、と張りのある声が返る。男たちは村を再び襲った悲劇への憤りをみなぎらせている。 「どうやら、ここから飛び出してきたらしい」  隊列を成して墓地へ向かった一行は、林道脇の梢が不自然に折れているのを発見した。  さらに周囲を警戒しながら進んで行くと、墓苑を取り囲む木柵が破壊されているのが見えた。 「隊長、墓が荒らされています!」  火を掲げて中へ入った隊員が悲痛な声を上げる。  供えられた花は踏み荒らされ、果物は砕け散り、酷いものでは墓石がひっくり返されていた。  死者の安寧を妨げること、これほど非道な行いは無い。 「まだ近くにいるかもしれん、二人一組で林を探れ!」 「おう!」  墓地を中心にして、徐々に輪を広げるかたちで林の中へ分け入っていく。  だが、脅威は彼らの背後から襲いかかった。 「うわあああああ!!!!」  無防備な背に痛烈な一撃を受けた団員が、どっと前のめりに倒れる。  隣にいた団員が慌てて銃を構えるが、引き金を引く前に横から薙ぎ払われる。 「ぐぁ……っ!」  間を置かずに反対側からもう一薙ぎされ、手首が鮮血に染まった。 「大丈夫か!」 「おい、出たぞ、こっちだ!」  駆けつけた団員の前に、松明に照らされてなお黒々とした影が立ちはだかった。その顔のあたりだけが、ぼんやりと白い。 「撃て、撃て!!」  林間に銃声が響く。その鋭い音をかき消すように獣は咆哮し、地表から前肢を離して立ち上がった。  ヒグマにしては胴が狭い。 「アナグマか。随分でかいな」  そう隊長は断じたが、直後、蠢く影を見てとって呻いた。 「ベ、ベリアルだ……!」  毛皮を突き破って逆立つ触手は、災厄そのものである。  ベリアルが事実上不死身であることは、子どもでも知っている。その活動を止められるのは、浄化師が扱う特殊な武器だけだ。  戦意に満ちていたはずの自警団は、一瞬で恐慌状態に陥った。 「撃て―――ッ!!!」 「ただの銃じゃ効かねえ、逃げろっ!」 「ぎゃあああ」 「一頭じゃねえ、複数いるぞ!」 「いやだ、死にたくない……っ!」  銃声と悲鳴が交錯する。禍々しい獣は松明さえも噛み砕き、林に夜の暗さが取り戻されるに従って、恐怖と脅威は倍増していく。 「引け、引け―――っ!!」  撤退を命じる隊長の声が、虚しく響いた。  自力で村に戻ることが出来たのは、なんと、ただ一人であった。  身も世もなく泣きわめきながら村人の待つ集会所に飛び込んだその男は、名をドニ・リファールと言い、村中で評判になるほど気が弱く、臆病なたちだった。根性を叩きなおすべく自警団に入れられたが、今回も最初から逃げ出したくてたまらず、獣が出たと聞いて銃を構えもせずに真っ先に身を隠した。仲間たちの怒声と悲鳴を耳にしながら、もつれる足を急かして逃げ帰ってきたのである。  卑怯者とそしられても仕方がない。だが、ドニの激しい恐怖に彩られた声で事情を告げられた村人たちは、その臆病を罵る余裕もなく顔を蒼褪めさせた。  また、弔いの鐘が鳴る――その絶望は筆舌に尽くしがたい。  朝を待たず、教団に救援を求める使者が立った。  ドニのおかげで、ベリアルの原形がアナグマであること、少なくとも三頭はいること、内一頭が異様な大きさであることが判明していた。  窮状を訴え、どうにかして浄化師を派遣してもらわなければならない。  村に待機していた僅かな若い男たちは、夜を徹し、決死の面持ちで林道を見張った。まだ息があるかもしれない仲間を助けに行けぬ己が憎くてたまらないが、ベリアルに対抗する術はないのだ。いざとなれば林を焼き払ってでも村への侵入を阻む覚悟だが、それが功を成すかさえ分からなかった。  老人と女子供は教会に集まり、怯える身を寄せ合って朝を待った。赤子の泣き声が、高い天井にこだまする。 「助けてください、浄化師様……! お願いです!!」  農村の悲痛な声が教団に届く頃、白々と夜が明けようとしていた。
桜、さくら
とても簡単|すべて

帰還 2018-05-11

参加人数 8/8人 あさやま GM
「私はどうしても、あの桜が見たいのです」  その指令の依頼主は、ある老年の女性だった。 「あの人が、村の近くよりここの方が育つに決まってる、なんて言ってあんなところに植えるから、見に行くのも一苦労で」  愚痴っぽく言う彼女は、懐かし気に目を細めて柔らかく笑う。 「でも、美しい花を咲かせるんです。今頃きっと満開だと思います」  決して面倒だという様子はなく、どころかそれさえ愛おしいと言うように、老婆は語った。胸元のペンダントを、大事そうに撫でながら。 「あの人が植えた桜を、見に行きたいのです。危険があるのは十分承知していますし、そのつもりで依頼を出したんです。浄化師の方々には相応の報酬をお支払いします」  依頼主の住む村は教皇国家アークソサエティの片田舎にあったが、付近に危険な野生生物や山賊、ベリアルなどが出たという報告は今のところない。依頼主を護衛して、村からほど近い場所に植えられた桜を見に行き、また彼女を村まで送り届けるだけの単純な指令である。ちょっと真面目なお花見をするつもりで彼女に同行するのも一興かもしれない。  せっかくだからお弁当でも作って行こうか? それとも、ちょっとしたレジャーグッズでも仕入れてみる? 桜以外にも、道中の山には春らしいものが溢れている。同行者みんなで、百花花開くこの季節を楽しんだって良いのだ。  だが、油断はしない方がいいだろう。これは確かに「お花見」だが、道中何が起こるかは分からないのだから。 「私の我儘なお花見に、付き合ってはいただけませんか?」
ヨハネの使徒を打ち倒せ!
普通|すべて

帰還 2018-05-11

参加人数 8/8人 春夏秋冬 GM
 人類を脅かす脅威。  その一つが、ヨハネの使徒だ。  魔力を持つ人間であれば、誰であれ死ぬまで機械的に攻撃する。  特に魔力を多く持つ者を積極的に見つけ出して攻撃するため、常人よりも魔力を多く持つ喰人や祓魔人は狙われ易い。  とはいえ薔薇十字教団に属する浄化師であれば、戦う術は持っているので対抗は出来るだろう。  しかし、ヨハネの使徒が狙うのは浄化師だけではない。  喰人や祓魔人の才能を持って生まれてはいるが、まだ自覚のない子供なども多く狙われる。  今、ヨハネの使徒に襲われている兄妹も、例外ではなかった。 「怖いよぉ……にぃちゃん」  周囲を岩盤に囲まれた小さな穴の奥で、ミィは兄であるガウにしがみつく。 「だ、大丈夫だ……あ、あんな奴なんか怖くないんだからな」  涙を滲ませながら、必死にガウはミィを慰める。  その瞬間、周囲を震わせる轟音が。  声すら出せず、ミィとガウの2人は身体を硬直させる。  音の主はヨハネの使徒。  ミィとガウが逃げ込んだ岩穴を塞ぐ形で陣取っている。  ヨハネの使徒は身体が大きいため2人を追って中には入れないが、絶対に逃がさないとでも言うように、その場から動くことはない。  時折、脅すように岩壁に体当たりし、轟音を響かせていた。 「ぅ……うぅ、ひっく……」  恐怖で我慢できずミィは泣き出す。 「な、泣くな!」  ぎゅっとミィを抱きしめながらガウは言った。 「だ、大丈夫だ! 父ちゃんたちが、きっと助けてくれる!」 「ほん……とう……?」  恐る恐るミィはガウに尋ねる。  それにガウは、零れ落ちそうになる涙を必死に我慢し、精一杯の空元気を口にする。 「あ、あったり前だ! 父ちゃんたちは強いんだからな! それに、浄化師だって、きっと来てくれる!」 「……じょうか、し?」  初めて聞く言葉に、ミィは不思議そうに聞き返す。  それにガウは、力強く答えた。 「父ちゃんが言ってた。悪い奴らをやっつけてくれるって。それにすごく強いんだぞ!」 「……すごい、の?」 「あったり前だ! 父ちゃんが言ってたんだぞ。すぐに来て、アイツをやっつけてくれる。それまで我慢だ」 「がまん……?」 「我慢だ! それに泣くのもダメだかんな! 助けられた時に恥ずかしいだろ? だから泣くな。兄ちゃんが付いてる」  自分を抱きしめてくれるガウの力強さに、ミィは安堵し抱きしめ返す。  震えそうになる自分を必死に我慢しながら。  だが、それは一時の慰め。  ヨハネの使徒は決して離れることなく、幼い兄妹たちが岩穴の中で死に絶えるまで待ち続けるだろう。   それを分かっているからこそ、兄妹たちの父親は猟銃を手に戦おうとしていた。 「止めろ! 怪我してるのに何する気だ!」 「止めないでくれ! このままじゃミィとガウが!」  猟銃を持ってヨハネの使徒に戦いを挑もうとする、ミィとガウの父親であるボルフを仲間の猟師達が必死に止める。  彼らは危険な獣を狩り獲り、生計を立てている一団だ。  その腕っぷしを買われ、村々を巡ることがある。  ある村を訪れた彼らは、突如現れたヨハネの使徒に襲われ善戦するも、抵抗しきれずに怪我をしていた。  特にボルフは、かなり無茶をしたせいで肋骨まで折っている。  それはヨハネの使徒の目的が、自分の子供達の抹殺にあると戦いの途中で気付いたからだ。  執拗にミィとガウを追い立てるヨハネの使徒に戦いを挑んでいる間に、子供達は村の外れにある岩山へと辿り着き、そこに空いていた穴の奥に逃げ込んだのだ。  村人が食料の貯蔵庫として使うために掘っている最中だった事もあり、穴の大きさは子供が通れる程度しかない。  そのお蔭で、ヨハネの使徒は追い付くことが出来なかったのだが、代わりに子供達は逃げることが出来ないでいる。  このままでは子供達はいずれ衰弱死し、それを確認したヨハネの使徒は他の人間を殺すために動き出すだろう。  この状況で呼ばれたのが貴方達です。  猟師達がヨハネの使徒に戦いを挑んでいる間に、村人が浄化師の助けを求め、たまたま近くの他の村に居た貴方達を見つけ事情を話したのです。  貴方達がその村に居たのは、その村の近隣でヨハネの使徒の目撃情報があったからです。  調査と、場合によってはヨハネの使徒の破壊を教団から依頼されていました。  村人から話を聞いた貴方達は、早速ヨハネの使徒破壊に動きます。  ヨハネの使徒を倒すことが出来るのか?  そして子供達を助けることが出来るかは、貴方達の活躍に掛かっています。  ぜひ、ヨハネの使徒を打ち倒し、子供達を助けてあげて下さい。
あなたと蒸し風呂
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帰還 2018-05-09

参加人数 8/8人 瀬田一稀 GM
 教皇国家アークソサエティ、ソレイユ地区の山間で。  沼に落ちた子供を助けたら、その祖母という人が、感謝を述べた後に、こう言った。 「あんた達! うちの蒸し風呂に入っていきなよ!」 「えっ、でも……」  ためらったのは、そんな準備はしていないから。  でも女性は豪快に、ははは、と笑う。 「なんだい、恥ずかしいのかい? 大丈夫、あんたたちが入っている間は、貸し切りにしてあげるから」  困惑しつつも好意には逆らえず。  あなたとパートナーは、蒸し風呂に入らせてもらうことにした……のだが。 「ええええっ、貸し切りってこういうことなの?」 「ははは、これは参ったね……」  なんと、更衣室の入口は男女別れていたにもかかわらず。  あなたは、蒸し風呂の中でパートナーに出会ってしまった。  しかも二人は、生まれたままの姿である。 「都市の温泉は男女別になってるのに、ここの蒸し風呂は違うんだ……」 「しかたないよ。ここは近所の人が集まって作ったって言ってたじゃないか」  パートナーが、苦笑しつつ、あなたに背を向ける。 「君が先に入りなよ。僕は後から入るから」  気を遣ったのだろう。  しかし。  パートナーが出て行こうとするのを、あなたは「待って」と引き止めた。 「あんまり長く貸し切りにしてもらうのも悪いし……一緒に入っちゃおう、よ?」 「でも……」 「あ、あなたが! こっち見なければいいだけだから!」  あなたは顔を真っ赤にして言うと、パートナーから目をそらした。
出会いはemotional
とても簡単|すべて

帰還 2018-05-08

参加人数 8/8人 木口アキノ GM
 ここは、薔薇十字教団本部談話室。  夕食後のひと時、親睦を深めるためにパートナーとこの部屋で過ごす浄化師も多数いる。  あなたたちも、そんな浄化師のひと組であった。  ほとんどが椅子にゆったりと腰掛け会話を楽しんでいる中、椅子やテーブルの間をちょこまかと駆け回る子ウサギのような少女の姿があった。 「こんばんは、はじめまして! あたしはついこの間浄化師の仲間入りをしたロップといいます!」  少女ははきはきとした声で挨拶をして。 「突然ですが、お2人の出会いについて聞かせてくださいっ」  と、手にした羽ペンをマイクのように相手に向ける。  突然そんなことを言われた方は困惑気味だ。  ロップは怯むことなく、言葉を続ける。 「あたし、将来はルポライターになりたいんです! そして、後世に残る、浄化師のルポタージュを書くのが夢なんです!」  きらきらと瞳を輝かせ、未来の夢を語るロップ。 「その第1段階として、浄化師たちの出会い、そこから記録していきたいと思いまして。浄化師の数だけ出会いの物語があるんです。それを、文字に残していきたいんです!!」  熱のこもったロップの言葉に、聞かれた相手は仕方がないなぁ、と苦笑いで語り出す。 「ありがとうございますっ!」  ロップは大急ぎでインクの蓋を開けると、手にしていた紙の束に羽ペンを走らせ、耳にした内容を書き記していく。  ひととおり話を聞き終えると、「ありがとうございましたっ」と勢いよく頭を下げ、他にも話を聞けそうな人はいないかとキョロキョロし始めた。  そして、ロップの瞳はあなたたちを見つけた。  とととっ、と、ロップが駆け寄ってくる。そして、あなたの目の前に立つと。 「こんばんは、はじめまして! あなたたちの出会いの物語を、聞かせていただけませんか?」  さて、少女の夢のために、少し昔話をしてあげることにしようか……。
ゼヴィ夫人のタロット夢枕
普通|すべて

帰還 2018-05-07

参加人数 8/8人 北織 翼 GM
「オホホホホホ、あたくしの召喚したこの強敵、あなたに倒せるかしらねぇ?」  魔女を彷彿とさせる濃紺のロングドレスから色白の肌を覗かせ、紅のマニキュアと口紅で彩られた老夫人が、森に囲まれた雄大な草原で高笑いを上げながら珍妙な魔物を何体も召喚します。  夫人が召喚した魔物は……  え?  ピーマン?  はぁ?! 「おのれピーマンベリアル! 成敗っ!!」  教団の制服を翻し、女性の祓魔人は得物を振り回し次々と巨大ピーマンを薙ぎ払います。 「うっ、青臭いっ! ピーマン臭いっ! いやぁっ、汁が飛んできた! うげぇっ、苦い! でも、負けない……負けないんだから!」  祓魔人は頬を目一杯に膨らませ息を止めて最後のピーマンベリアルを叩き潰しました。  ピーマン汁にまみれながら、祓魔人は微笑みます。 「これで全部倒したわ……!」 「フフ、あなたやるじゃない」  夫人はニヤリと笑いながら、祓魔人の前から姿を消しました……。  ……  ………… 「……ていう夢だったのよ! ピーマンベリアルなんて、あり得ないでしょ!? でもきっと、夢の中だから何でもアリなのかもね」  翌日、教団本部のカフェテリアで軽食を摂るあなたとパートナーは、夢の中でピーマンベリアルを倒したという女性祓魔人の話を聞いていました。  偶然にも隣り合うテーブルに腰掛けた縁であなたたちは彼女と言葉を交わす事になったわけですが、ピーマン炒めを嬉々として頬張りながら話す女性祓魔人は、したり顔で続けます。 「ねぇ、このピーマン、私の好物だと思う?」  あなたは頷きます。  だってそうじゃないですか、こんなに美味しそうにピーマンを口に運んでるなら……。  ところが。 「実はね、私ピーマン大嫌いだったの。こんな青臭くて苦い野菜のどこが美味しいのか分かんないわよね? ……だけど、喰人の彼は野菜が大好き。私がピーマンを残すといつもどこか寂しそうな顔して……彼と楽しく食事がしたくて、ゼヴィ夫人に相談したの」  ゼヴィ夫人……?  あなたは初めて聞く名に首を傾げました。  どうにも気になってしまい、あなたはそのゼヴィ夫人について女性祓魔人に尋ねます。 「あら、あなたも興味があるの? それなら、この辺りの路地裏とか捜してみたらどうかしら。私は昨日、偶然本部の近くの通りを歩く夫人を見つけてね……! 今日もきっと近くにいるはずよ。夫人は神出鬼没だから、早く行った方がいいわ! そして、ゼヴィ夫人に『逆位置夢枕タロット』を貰いなさいな」  早く行けと言っておきながら、この後お喋り大好きな女性祓魔人はあなたたちを小一時間拘束したわけですが……。  ようやく女性祓魔人から解放され、あなたは疲労感満載のまま彼女の話の要点をまとめてみます。 ●ゼヴィ夫人とは、一部の浄化師や教団員に熱烈なファンのいる凄腕タロット占い師である。 ●夫人は神出鬼没、そしてタロット占い師のくせに何故かその日の気分次第で日替わりで3枚のタロットカードしか持ち歩かない。 ●夫人に遭遇すると、裏返しのタロットカード3枚の中からを1枚引くよう言われる。 ●どんな方向から引いてもどうひっくり返しても、何故か夫人のタロットカードは逆位置の絵しか示さない。 ●引いた1枚は夫人からプレゼントされるが、必ずその晩寝る時に枕の下に置かなければならない。 ●そして、その晩は置いたタロットカードにまつわる夢を必ず見る。 ●夫人に貰ったタロットカードは、夢から覚めて起きるといつの間にか消えている……そう、カードは人知れず夫人の元に戻り、こちらの手元に残る事は無い。 ●夢の内容は……けっこうドぎつい。  あなたは半信半疑ながらもパートナーと一緒にゼヴィ夫人を捜しに本部を出ました。  すると……  何ということでしょう!  あなたたちもまた、例の祓魔人のようにゼヴィ夫人に遭遇したのです。 「あぁら、あなたたち、背負ってらっしゃるわねぇ」  ゼヴィ夫人はあなたたちを見るなり意味深にそう言うと、前情報のとおり3枚のカードを差し出してきました。 「さぁ、ここから1枚お引きなさいな」  あなたは恐る恐る1枚のカードをつまみ、そっと引きます。  表を返すと、逆さまの絵柄が目に飛び込んできました。 「そのカード、今晩必ず枕の下に置きなさぁい。それじゃ、夢で会いましょう」  ゼヴィ夫人は優雅に手を振りながら去っていきます。  どこか恐ろしげにも見える笑みを浮かべながら……。  あなたは『逆位置夢枕タロット』を手にしたまま、パートナーと顔を見合わせました。  さて、今宵ゼヴィ夫人はあなたの夢の中でどう暴れ回るのでしょうね……?
対ベリアル戦闘訓練
簡単|すべて

帰還 2018-05-06

参加人数 8/8人 久木 士 GM
「どうしたどうした新人ども! そんなんじゃ『イレイス』にベリアル食わせる前に、てめえらの魂が喰われちまうぞ!」  春のうららかな昼下がり。教団本部の広場に、若い教団員の怒声と浄化師たちの叫びが響く。彼らは初の戦闘任務を直前に控えた新米浄化師たちで、ペアの戦術や魔喰器の最終調整を兼ねた訓練に参加していた。ここには魔術鍛冶屋に所属する鍛冶師たちも同席しており、参加者が装備や感覚に不調を感じた際は即座に調整を行えるようになっている。  浄化師たちの命を繋ぐものにして、世界の救済に不可欠の存在。それが『魔喰器(まぐいき)』や『イレイス』と呼ばれる武器だ。  ベリアルは自らの元となった生物や、怪物に変化してから喰った生物の魂を鎖で縛っている。魔喰器はその鎖を喰うことで囚われた魂を解放し、ベリアルを滅ぼす武器だ。使用には並々ならぬ魔術への理解か、常人を凌駕する強大な魔力が必要とされるが、浄化師ならばその問題は既にクリアしている。  だがその一方で、武器は使用者の精神状態に浅からぬ影響を及ぼす。これが、滅びに抗うために得た力の代償だとでも言わんばかりに。  『アウェイクニング・ベリアル』や『覚醒』と呼ばれる重篤な精神疾患は、「存在理由を見失う」ことや「存在理由に傾倒しすぎる」ことで発症するケースがほとんどだが、魔喰器の捕食欲求が満たされないために発症したという例も稀にある。後者については祓魔人や喰人が教団に所属している限り、ベリアル討伐指令を避けることはできないためほとんど見られない。しかし何らかの理由で武器がベリアルを喰えなくなったとき、覚醒に陥ることが多い。  また魔喰器の力を完全に解放するには、使用者の血を武器に喰わせる必要がある。しかし魔術の知識を持たない一般人や、魔力の安定していない祓魔人・喰人がこれを使用した場合には、必要以上の血を喰われて死に至る。喰われた者は干からびるように体が朽ち、最後には砂となって消えてしまうのだという。  そのため薔薇十字教団では、教団員の安全と魔喰器の保全のため、契約を済ませて魔力を安定させる術を身に着けた浄化師にしかこれらの使用を許可していない。そして魔喰器との接触を必要最低限に留めるため、『口寄魔方陣』による装備の展開システムを完成・実用化させていた。  さて、ここまで説明を聞いた者は「何故この武器には、こんな致命的な欠点が存在しているのか」と考えることだろう。だがその問いについての答えは、驚くほど単純だ。なぜならば『魔喰器』は、生け捕りにしたベリアルから作られているのだから。  魔喰器はベリアルの形状を変化させ、再生能力と殺戮衝動を抑え込んだうえで作られる。この武器がベリアルの鎖を断ち切ることができるのも、捕食欲求を持っているのも、武器になる前は「ベリアルそのもの」だったことが原因だ。激しい戦闘で魔喰器が損傷あるいは破壊された場合、一日程度で完全に復元されて再使用可能になることの理由も、元となった「素材」の驚異的な再生能力を利用しているためだ。  ベリアルを魔喰器へ完全に作り替えることが可能になったのは、今からほんの十年前のこと。人間がベリアルを滅ぼせるようになったのも、教団に所属する『ヴェルンド・ガロウ』という名の魔術鍛冶職人が、1708年にこの技術を確立してからだ。  彼は捕らえたベリアルの形を変化させると、そこで記憶させた武器形状の維持と復元にのみ再生能力を行使できるよう「加工」を施す。魔喰器の形状自体も、オーソドックスな剣や銃から大鎌や盾まで実に多くの種類が存在し、種族やアライブの戦闘スタイルに合ったものを選択することができるという高い柔軟性を持っている。  浄化師の生命に関わる重大なデメリットと、それを受け入れても余りあるほどのメリットを併せ持つ魔喰器。  魔喰器という毒でベリアルという毒を制するのが、教団の、そして自力での救済を余儀なくされた人間の戦い方だ。  再び、教団本部訓練場。小休止を入れた指導役の教団員の元に、一人の教団員が真新しい書類の束を渡す。指導役の男は古傷だらけの腕や顔をタオルで拭うと、クリップで纏められた用紙を一枚ずつ捲っていった。 「対ベリアル戦闘訓練……もうそんな頃か」  男は遠くを見遣ってから、手元の書類に魔術でサインを入れていく。  対ベリアル戦闘訓練では、「ファントムトレース」と呼ばれる訓練用の軍事魔術によってベリアルの幻影を生み出す。それを相手に実戦形式の訓練を行う点が、通常訓練との最大の違いだ。  この魔術は幻影の戦闘能力や数を自由に調整できるため、参加人数に応じて最も効果的な条件下で訓練を行うことが可能だ。実体を持たない幻影の攻撃は、当たった箇所に魔力でマーキングを施すもの。この色の濃淡と着色部位から戦闘不能と判定された者や、装備に重大な異常があると判断された者は、即座にフィールドから強制離脱させられる。この際魔喰器に不具合があった場合は、訓練に同行する魔術鍛冶師が簡易調査と応急手当てを行うことになる。 「調整は俺も手伝うと伝えておいてくれ。新人を一人でも多く長生きさせたいのは、俺も同じだ」  指導役の男は確認を終えた紙束を教団員に渡すと、訓練の再開を宣言した。 「浄化師は教団にいる限り――いや、生きている限り、戦いから逃げることはできない。それなら戦う術を叩き込んでから、戦場に送り出してやりたいんだ。あいつらを最初のパートナーみたいな目に遭わせるのは、御免だからな」  男はベンチにタオルを放り投げ、口寄魔方陣で魔喰器と防具を再展開する。その顔には、大きな傷が走っていた。  指導役の男は、最初のベリアル討伐任務で最初のパートナーと右目を失った。原因は口寄魔方陣の展開ミスと戦術の調整不足。それを後悔し続けた彼はひたすら修練に励み、二人目の適合者に出会ってからは以前よりも慎重に、そして熱心にベリアル討伐任務に当たった。今ではその経験を買われ、新人浄化師たちの最終調整に臨時の指導役として呼ばれるまでになっている。  新人たちを自分と同じ目に遭わせたくない。その一心で彼は新人たちの訓練を引き受ける。そして今では、ある噂が教団内で囁かれるまでになった。「あの先輩教団員の訓練に参加すれば、どうも長生きできるらしい」と。  教団司令部1階、指令掲示板前。多くの浄化師が集うこの場所に、新たな指令が貼り出された。 「対ベリアル戦闘訓練 参加者募集中  詳細は司令部1階受付まで」  本格的な討伐任務を受ける前に、あなたとパートナーの命を預ける戦術や魔喰器の調整をしてみるのも悪くないかもしれない。
仲間と楽しむバーベキュー
とても簡単|すべて

帰還 2018-05-01

参加人数 8/8人 瀬田一稀 GM
「こんなにぽかぽかしてて、お腹がいっぱいだと、眠くなってくるねえ……」 「は? もう腹いっぱいなの? まだソーセージもビールもたっくさんあるのに」 「食欲魔人のあなたと一緒にしないでよ」  あなたとパートナーのやりとりに、周囲にいる仲間達が、くすくすと笑った。 「もう、恥ずかしいっ」  あなたはパートナーの肩をパシリと叩き、湖近くに移動する。  パートナーはまだここで、食事を楽しむようだ。  それにしてもと、あなたは芝生に寝転がった。  今日はなんていい日なんだろう。  見上げる空は、見事な青。  見渡す景色は、木々の緑。  そして向こうでは、鉄板の上に野菜や肉、ソーセージが焼けている。 (そういえば、さっき食べたチーズも美味しかったな……)  この地に戦いがあるなんて、嘘のようだ。  身体を起こし、みんなを見れば、エクソシストの仲間達は、にこにこと笑っていた。  初対面のメンバーも多いが、これからともに戦っていく身、親しくなっておいたほうが良いだろう。 (そう、いつどんな任務に赴くかわからないんだから……。いつか、背中を任せることだってあるかもしれないし)  あなたは、また一同の輪に戻ることにした。  教皇国家アークソサエティの東南に位置するソレイユ地区、某所。  湖畔でのバーベキューは、のどかにのんびり、時間が過ぎていく。
ケルベレオン愛好家の失敗
普通|すべて

帰還 2018-04-30

参加人数 8/8人 oz GM
「浄化師の諸君! いいか、司令部教団員であるヤコブ・フェーンが君たちに命ずる」  なりたての浄化師たちは目の前にいる司令部の男性教団員に召集をかけられ、この場に佇んでいた。 「貴族の飼っていたペット――『ケルベレオン』が逃げ出し、憩いの広場をうろついている。住民に被害が出る前に生きたまま捕獲せよ!」  ヤコブ・フェーンは仰々しい言い方で浄化師に話しかける。 「以上だ! それでは諸君、頑張ってくれたまえ」  どこの広場にケルベレオンが現れたのか、住民に被害が出た場合はどうするのかといった情報もなく、さっさと退出するヤコブを慌てて引き留める。  あまりにも説明不足すぎた。  引き留められ、不機嫌そうに「……何だ?」とねめつける。 「逃げ出したケルベレオンはどこをうろついているんですか?」と尋ねると、 「そんなことも分からんのか。エトワールの東部にある貴族街に近い広場だ」  鼻を鳴らしながら答える。  浄化師たちは不満をこらえながら、住民に危害が出た場合、教団としてはどうするかを聞き出そうとすると、 「いかん! 住民に危害がでる前になんとしても捕まえるのだ! ルベッタちゃんに何かあったら私の責任になってしまうじゃないか!?」  ヤコブは泡を食ったように怒鳴り始めた。 「ルベッタちゃんを飼っている貴族はケルベレオン愛好家なのだ! 『かわいいルベッタちゃんを早く家に戻してちょうだい』と言われ、『私がやり遂げて見せましょう!』と大見得を切ったからには、なんとしてでもやらなければならんのだ」  どうやら貴族のわがままとヤコブの面目を守るために巻き込まれた浄化師たちはうんざりとしながら話を聞いていた。 「そもそもケルベレオンは爬虫類のような皮膚をした三頭の狂犬だ。主に館の門番や番犬として貴族や魔術師に飼われることが多いのは知っているな?」  知らないと答えれば、司令部の男性は得意げに「勉強不足だぞ」とにやにや笑いながら言うのが分かり切っていたので、黙って頷く。少し不満げな顔をしたもののヤコブは話を続ける。 「ルベッタちゃんが逃げ出したのは3日前だ。貴族さまが住んでいた屋敷からそう離れていない憩いの広場で目撃情報が多数上がっている。今のところ住民の被害も出ていない。元々ケルベレオンは怒らせなければ温厚な気質だ。それに認めたものにしか懐かない性質上、飼い主には忠実だからな」 「それなら何故逃げ出したんですか?」と何気ない問いに、ヤコブはあからさまに目を逸らしながら、ごほんとわざとらしく咳払いする。 「……鍵を閉め忘れていたそうだ」  その言葉に浄化師が絶句していると、ヤコブは視線を合わせることなく話を進める。 「その貴族は他にもケルベレオンを何匹か飼っていてな。ルベッタちゃんは最近飼い始めたばかりで、環境に慣らすために檻に入れていたらしいんだが、……不注意で鍵を閉め忘れていたらしい。最悪なことにまだ調教前で誰のことも主人として認めていないみたいでな。案の定、檻の中はもぬけの殻だ」  浄化師たちの物言いたげな視線に我慢ができなくなったのか、ヤコブは大きく咳払いし、早口でこう告げた。 「というわけで、貴族様からわざわざいらん恨みを買うわけには教団としてもいかん! 諸君らに、かかっているのだ。無事にルベッタちゃんを捕獲して送り届けるように、分かったな!」  それだけ言うと足早に司令部から立ち去ってしまった。  面倒事を押しつけられた君たちだが、指令を出された以上、浄化師として働かなければいけない。住民の安全を守るためにもケルベレオン捕獲任務を遂行しよう。
白と黒の妖精
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帰還 2018-04-30

参加人数 5/8人 井口創丁 GM
 ワタシがまた心から笑える日は来るのだろうか。  体長20cm、重さ1kgに過ぎない『ピクシー』と人間に呼ばれるワタシ達。  人間とは友好関係を築いていると言ってもそれは一面に過ぎない。  少なくともワタシは種族の壁を越えることなんて出来ないと思う。  例えば、ピクシーがアシッドに侵されベリアルと化してしまった場合人間は迷うことなくソレを排除するだろう。  そして人間は小柄なワタシ達を容易く屠った後、笑顔でこういうに決まっている。   「もう危険はありませんよ」  それは仕方の無いことだと言うことは、百も承知している。  なぜならベリアル化してしまった時点で助からないことが確定してしまっているのだから。  なぜならそれは人間にとってもワタシ達にとってもしなくてはならないことだから。  それでも、それでも心は人間を拒絶せずにはいられない。  なんで事前にアシッドに気付き対処できなかったのか。  なんで未だにベリアル化した生物を殺さずに元に戻すことが出来ないのか。  無理難題を言っているのは分かっている。  そんなものが出来たら苦労なんてしていないし、なんならワタシがやってのければいいだけの話だ。    分かっている。分かっているんだ、そんな簡単なことくらい。  それでも、ワタシの脳に焼きついた浄化師と呼ばれる人間を忘れることが出来ない。    奴らは迷うことなく父さんを灰に変えた。  いけない。自分を客観視するための例え話がいつのまにか自分を追い詰める暗い話になってしまっていた。  ワタシはそんな苦悩を何とか断とうと頭を左右に振り、藁を引き詰めたベッドに頭をうずめる。  こんなことをしても何も解決しないことは分かっている。  それでもせずにはいられない。  そんな中、聞きなれた声で呼びかけられた。 「ミレ、行くわよ」  藁から顔を離すと、そこには母さんがいた。  しかし、それは最早母さんではなかった。  見開かれた焦点の合わない目、皺で歪んだ顔の輪郭、そして何より三日月のように無茶な角度まで釣り上がった口角。  それは人間から『ヤレリー』と称される害獣の姿であった。  ワタシの両親は自他共に認める仲睦まじい夫婦だった。  それゆえに、父さんの死は母さんを狂わせるには十分な引き金となってしまった。  ヤレリーとなった母さんは毎日ワタシを連れて、同じくヤレリーとなってしまった同志の元へ行くようになった。  普段誰も近寄らないであろう森の端にある崖の近くの茂み。  そこで日々、ヤレリーたちは自身に降りかかった不幸を言い合い人間を憎む不毛な話し合いが行われている。  ワタシは集団から離れ、崖の真横にある木の上でひっそり座っていることしか出来なかった。    周囲の視線が突き刺さる。無理も無い。ワタシはまだ『ピクシー』なのだから。  どうしてワタシはヤレリーになれないのだろうか。  人間が好きだから? 仕方の無いことだと理解してしまっているから?  ……父さんを愛していなかったから?  その考えが出てしまってからワタシは自分自身に糾弾され続ける。 『心の無い悪魔』『愛を捨てた抜け殻』『不浄の怪物』『父殺し』  早朝から夕暮れまで続く不平不満の声の中、ワタシは更にワタシを苦しめ続ける。  気が付いたときにはワタシは木から落ちていた。真下には深い谷と川が見えた。  ピクシーを第一に想っていた筈のヤレリーたちはワタシが落ちていることになど気付く様子すらなかった。      全身がズキズキと痛む。  周囲は石と草木に囲まれていた。どうやら川辺に打ち上げられたようだ。  見える空と森からそんなに遠くまで流されてはいないことが分かる。  死ねなかった。  最初に脳裏をよぎったのはそんな感想だった。  次に全身を動かそうと力を込める。身体は痛みを伴ったが普段どおりの活動をしている。 「はぁ」  ため息が零れる。  きっとこれは幸運だったのだろうが、ワタシにとっては不幸でしかない。  まだ世界はワタシに苦しめと言うのだろうか。  空を睨みながら上体を起こす。 「ん!?」  思わず声が漏れる。  太陽の光を反射する川の水は、同時にワタシも映し出している。  そこに映ったワタシは母さん程ではないにしろ口角が邪悪に釣り上がっていた。 「やった! やった! やったぁ!」  これでワタシも認めて貰える。ワタシがピクシーを家族を父さんを愛しているって証明できる。  つい先程までの体の痛みはどこかへ消え、もう既にワタシはヤレリーの集会場へと飛び立っていた。    こんなに体が軽いのはいつ振りだろう。  羽が風を心地よく切り裂く。  体に残った水気が飛沫となって背後に飛び散り、小さな虹を作る。  崖の真下まで来たワタシは速度を上げ、垂直に飛び上がる。  ワタシはもう木の上で震えなくていいんだ。  気持ちはそのまま天まで昇ってしまいそうだった。  そして崖を越え、そのまま母さんのいる茂みの中へと突入……することは出来なかった。  茂みには紫色の靄がかかっていた。  その紫色は見たもの全てを拒絶する不快感の塊のようなものだった。  何より、ワタシはその紫色に見覚えがあった。  それは、死ぬ間際の父さんが纏っていたもの。  それは、全てをベリアルへと変えるもの。  それは、アシッドと呼ばれる史上最悪の瘴気。    茂みの内側から聞きなれた声がする。  しかし、その声が言葉を紡ぐことは無くひたすらに叫びをあげるだけだった。 「ギャァアアアァァァァアアアアァァァァ!!!」  それが母さんの断末魔なのかベリアルの産声なのかは分からない。  ただ、ワタシをその場から逃走させる合図としては申し分ないものであった。   「これが運命なのかな」  我武者羅に空を飛び、たどり着いた場所を眺めながらワタシは呟く。  狂い始めた元凶があるなら、狂いを終わらせるのもその元凶の仕事に違いない。  ワタシは理解できないほど堅く大きな建物の正門を潜りこう告げる。 「ヤレリー型のベリアル討伐を依頼します。それと――」  その建物には『薔薇十字教団』と言う文字が刻まれていた。   「――ワタシを殺して下さい」
思い出ラストノート
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帰還 2018-04-29

参加人数 8/8人 十六夜あやめ GM
 教皇国家アークソサエティの中心地、首都エルドラドから見て西部に位置する巨大都市エトワール。各地域の生産品を元に様々なお店が展開され、美術品や美しい建築様式などの芸術に富んでいる。市民階級から軍事階級、稀に貴族階級の者が好んで住んでいる中枢地区で、常に観光客で賑わっている街だ。  そんなエトワールの街を歩いていた浄化師の喰人と祓魔人。ふと、どこからか運ばれてきたのか、甘い香りが漂ってきた。嗅いだことのあるような匂いの元を辿っていく。すると、路地裏にひっそりと建つ、ガラス張りの建築物の前に着いた。どうやら香りの発生源はここのようだった。吸い寄せられるようにふらふらと建物の中へ足を進める。 ステンドグラスの扉を開けると、そこにはキラキラした空間が広がっていた。まず目に飛び込んできたのは天井からぶら下がるシャンデリア。多くの光源と光を複雑に散乱させるためのカットされた硝子が多数配列された、非常に繊細な装飾が施されている。次に、棚に丁寧に置かれたガラス瓶。赤や青、黄色や緑といった色とりどりの液体が入っている。大理石でできたカウンターには小瓶がずらっと並んでいる。そしてカウンターの奥にラベルの付いた無数のガラス瓶があった。天秤やすり鉢、スポイトやビーカーも置かれた工房のようだった。 「いらっしゃいませ。ようこそ『ラストノート』へ」  カウンターの奥の部屋から一人の女性が姿を現した。レース使いの花柄の服を着た柔らかい雰囲気を醸し出す女性は続けて言う。 「ここは香水を作る工房です。もしよろしければ香水を作ってみませんか? 現在体験教室を無料で開いているので。きっと素敵な思い出になると思いますよ」  店員が言うに制作時間はそんなに掛からず、作業も簡単らしい。  調香の手順としてはじめにイメージを描く。次に香料の種類を決定する。香料の配合を決定し、最後に調合・調香作業を行いイメージ通りに微調整して完成。  香りのタイプによって相手の好みやタイプを知ることができるらしい。  フローラル・ブーケなら花束のようないくつかの花の香りを混ぜ合わせた豪華絢爛な香りで女性に親しまれる。  オリエンタルなら甘味が強く、持続性のあるエキゾチックな動物性香料が効いた神秘的でセクシーな香りを身に纏える。  種類は11種類。ひとり一人の個性が出るそうだ。  まだパートナーと知り合って間もない浄化師にとってお互いをより深く知るいい機会かもしれません。  匂いや香りは記憶や思い出に深く関係していると言われています。忘れることのない、世界で一つの素敵な香水を作ってください。  あなたはどんな香りがお好きですか?
ヴァン・ブリーズの灯台守
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帰還 2018-04-29

参加人数 8/8人 久木 士 GM
 闇夜には光が、旅路には道標が。  そして船路を行く者には、光であり道標でもある灯台が必要だ。  ヴァン・ブリーズ地区は教皇国家アークソサエティ北部に位置する、海抜の低い土地が多い地域だ。この地区では国の南東部に位置するソレイユ地区と並んで農業が盛んだが、ブリテンで大量に消費される石炭を中心としたエネルギー資源の輸出によっても繁栄している。地区の住人は市民階級の者が大半で、彼らは中程度の生活水準で日々の暮らしを営んでいる。  ヴァン・ブリーズは海に面していることから、地区内には水に関連したレジャー施設が数多く存在する。そして海産物も豊富であることから、観光目的で地区を訪れる者も多い。  また、この地区では海運が盛んなため港が多く、航行する船舶の数も膨大だ。そのため灯台の数も他の地区に比べて遥かに多く、中でもとりわけ有名なものが『シェネフラウ灯台』だ。地区内の灯台は市街地から少し離れた場所にあり、周囲には人工的な灯りが全くない。そのため灯台周辺では、昼はどこまでも続く海、夜は満天の星空を眺めることが可能だった。  現在アークソサエティにある灯台の半数は、設置式の大型魔術道具によって光を生み出している。この「魔力化」とも言うべき革新は1700年に起こった『技術革新』によってもたらされた恩恵の一つで、アークソサエティの国力はこれによって飛躍的に増大、それに伴って人々の生活水準も国内各地で大幅に引き上げられた。  かつて国内の灯台では灯台守が火を焚き、それを一晩中燃やし続けていたが、現在の彼らの仕事は定刻の光源装置のチェックが主だ。薔薇十字教団で開発された技術を基にしたこの装置は、簡素な作りながらも信頼性は抜群で、エネルギー効率もかなり良い。装置に問題があればそれに対応したランプが灯って、その組み合わせによってトラブルの原因や種類の特定が可能だった。  光源装置は魔力を動力源としているものの、稼働によって生じる魔力や周辺環境への影響はごく僅かだ。そのため灯台がヨハネの使徒の誘蛾灯となることもなく、仮に魔力の暴走が起こったとしても被害はせいぜい装置が動かなくなる程度。そしてこの高い効率と安全性の代償として、灯台の1フロアを占有するほどの設備と定式陣が必要になっていた。  装置のメイン灯が動かなくなった場合はサブ灯が自動点灯する仕組みだが、それも使用できない場合は小型の補助動力源を用いた非常用光源への切り替えが行われ、後日教団本部に装置の修理を要請することになる。これは国内にある大型魔術道具を薔薇十字教団が管理しているためで、魔術道具の悪用・濫用を防ぐために必要な措置だった。  そして、場所は移って薔薇十字教団本部、司令部1階。指令掲示板前を眺めていたあなたたちは、ヴァン・ブリーズの灯台群に関する指令を見つけ、詳細を聞きにフロア内にある受付へ向かった。 「今月ヴァン・ブリーズ地区の灯台の一つで、光源装置の設置工事が予定されています。皆さんにはそこで、装置の試運転に協力していただきたいんです」  受付の女性教団員が、指令書の綴じられた分厚いファイルを読みながら答える。あなたたちが「どうして試運転に浄化師が必要なのか」と尋ねると、彼女は一人で何事か頷いたあと、あなたたちに笑いかけながら説明した。 「それもそうですね。では疑問にお答えしましょう。  灯台の光源装置が大型の魔術道具で、我が教団の管理下にあることはもうご存知ですよね。装置は大気中の魔力(マナ)を取り入れることで動力を得ていますが、この動力部が最大効率で安定して稼働するには起動から数日が必要です。装置には使い捨ての補助動力源も組み込まれていますけれど、魔力効率が悪くなった時はそれを使うより、直接魔力を送り込んだほうが早くて効率も良いんですよ。  ……それに、ここだけの話ですけど、この使い捨ての補助動力源が結構高くて。だから本当に『緊急用』なんです。それを何日も使ったら、教団の経理担当者が卒倒しちゃいますよ」  ということは、今回の任務では「相対的に安価な補助動力源」として務めを果たせばいいのだろうか。そう理解したあなたたちが受付の教団員に再び尋ねると、彼女はあなたたちの理解の速さを褒めて指令の概要を説明した。  指令に参加する浄化師は交代で夜間任務にあたり、灯台の光源装置の試運転に協力する。装置の魔力効率が落ちてきた場合は一定時間継続的に装置へ魔力を送り込むが、この際必要になる魔力はごく僅かなもの。浄化師の消耗は簡易的な魔術を使用する際よりも更に少ない。この「放出魔力量の調整」や「継続的な魔力の放出」という行動は新人浄化師たちにとって良い訓練になるので、優先して指令を掲示している。  装置の出力が低下する可能性があるのは、一晩に数度ほど。それまでは灯台の周囲の散策が可能で、問題があった場合は灯台守があなたたちに向けてランタンを振って教えてくれる。そして任務が終わった日とその翌日は、ヴァン・ブリーズでの観光が許可されている。 「もっとも当日は夜通し任務にあたった後ですから、宿に帰った後は昼過ぎまでぐっすり、でしょうけどね」  受付の女性は苦笑しながら答え、もう一日観光に充てられる日があれば良かったのですが、と申し添えた。 「ちなみに皆さまがどの魔力属性をお持ちであったとしても、この指令には参加可能です。光の色は装置で自動的に調整してくれますから」  それにしても彼女は、何故こんなにも灯台に詳しいのだろう。疑問に感じたあなたたちがそれを聞くと、彼女はやはり笑ってその質問に答えた。 「実家の父も灯台守で、小さい頃は私もよく手伝ったりしてたんですよ。今は兄が跡を継ぐため、故郷ブリテンで父に学んでいます。現在あちらでは蒸気式が主流ですけど、魔力と蒸気の複合式装置も出始めています。去年帰省した時は新品の複合式装置が来てたんですけど、うっかり魔力を注ぎすぎたら壊れて……あっ」  彼女は恥ずかしそうな表情をしてあなたたちから視線を逸らすと、慌てて手続き用の書類をカウンターに並べる。 「とっ、とにかくっ。これは難しい指令とか危険な指令じゃありませんから、安心して引き受けてくださいね。装置が壊れちゃっても、修理代は全部教団持ちですから大丈夫です。後でみっちり怒られますけど……。  それじゃあ、よろしくお願いしますね、浄化師さんっ!」  あなたたちは苦笑しながら書類を受け取り、必要事項を記入していく。少し大人びて見えた受付の女性の顔も、今では歳相応の眩しい笑顔で輝いていた。  休暇でもなければ戦闘でもないこの指令は、本当に地味なものだ。しかしこのような指令の解決も、人々の生活を維持・向上させるうえでは欠かせないもの。派手で分かりやすいものだけが浄化師の仕事ではないと、あなたたちは知っている。今は他の指令に備えて、力や経験を蓄えるときだ。あなたたちはそう考えて、この指令に参加する。  首都エルドラドからヴァン・ブリーズへ足を延ばし、都市の喧騒を離れてさざ波の音色に耳を澄ませば、日頃の疲れを忘れることができるだろう。そこでならあなたたちの心の距離も、また少し縮まるかもしれない。
お好み料理を作りましょう
簡単|すべて

帰還 2018-04-27

参加人数 8/8人 春夏秋冬 GM
 薔薇十字教団。  言わずと知れた、世界最大の魔術組織だ。  浄化師たちが所属している組織でもある。  教皇国家アークソサエティに本部を置き、各地に支部を持っている。  浄化師たちは、こうした薔薇十字教団の施設で普段は暮しているのだ。  例外的に、教皇国家アークソサエティの周辺であれば、教団施設内にある寮以外での生活も認められてはいたが。  とはいえ往々にして、大半の浄化師たちは教団施設での生活を送っている。  なにしろ、寮は男女別々ではあるが、全室個室。  衣食住が揃った生活ができ、指令もすぐに取りに行くことができる利便性まである。  生活するにも仕事をするにも、楽なのだ。  もっとも男女別々の寮は、パートナーの浄化師だろうと異性が訪れることは原則禁止されているので、一部の浄化師には不評であったが。  それはそれとして、教団施設は生活の場として十二分な場所なのだ。  そうした教団内施設のひとつに、食堂がある。  教団寮の一階にある食堂では、様々な民族料理を楽しむことが出来る。  たとえば、エスニック料理。  エビを使った酸味と辛味が特徴の『トムヤンクン』に、挽肉にエビや卵を加えて作る辛味のある焼き飯『ナシゴレン』や、茹でたエビや春雨に野菜など様々な物を米で作ったバインチャンと呼ばれる薄い皮で包んだ『ゴイクン』などなど、様々な料理が用意されている。  他にもさまざまな料理が用意されているが、問題がない訳でもない。  教団は、浄化師の才能がある人間を各地から本部や支部に集めているのだが、それは様々な出身地からのものだ。  当然、それぞれ親しんだ味がある。  そうでなくても、味の好みは千差万別。  偶には自分の故郷の料理が食べたい。  あるいは、用意されている物ではなく、自分の好みのものが食べてみたい。  なんて意見が出て来るのだ。  それは仕方がないことではあるが、だからといって食堂の職員としては困りものだ。  一体どんな料理を作れば良いのやら?  そうして思い悩んだ上で、一つの考えが。  いっそのこと、食べたいものを浄化師に作って貰えば?  それぞれの故郷の味や、あるいは自分の得意料理。  そうしたものを作って貰い、それを参考に食堂のメニューを考えていこう。  ある食堂職員の意見に皆は賛同し、浄化師に依頼が出されることになりました。  内容は、食堂の新メニューの参考にするために、何か料理を作ってみて欲しいとの事です。  材料や調理の場は提供してくれるので、腕を披露するのみです。  この依頼に、アナタ達はどうしますか?  依頼なので、普段は作れない絢爛豪華な料理にチャレンジしてみますか?  それとも故郷の味や、自分の得意料理をパートナーの浄化師に振る舞ってみても良いでしょう。  パートナーと料理を通じて交流するのも一興です。  場合によっては、他の浄化師と一緒に料理を作ってみるのもアリでしょう。  皆さんの料理の腕を、振るってみて下さい。
噂の幽霊屋敷
普通|すべて

帰還 2018-04-27

参加人数 8/8人 狸穴醒 GM
●ある労働者の話  広場に面した酒場は、仕事を終えた労働者たちで賑わっていた。  高級な店ではない。料理の匂いと煙草の煙がたちこめる中を、ジョッキを携えた娘たちが行き交う。  客同士が語り合う声は大きく、時折けたたましい笑い声が響いた。 「聞いたかよ、隣町の先週の事件!」  大ジョッキのビールを飲み干して、商店で働く男が言う。  答えるのは宿屋の下働きの若者だ。 「知ってますよ、あれでしょう?」 「何の話だ?」  同じテーブルの客は事情を知らないらしい。  商店員と宿屋の下働きは顔を見合わせてから、わざとらしく声をひそめた。 「終焉の夜明け団ですよ」 「そうそう。薔薇十字教団がアジトを摘発したんだとさ!」 「身体に十字架を埋め込んだ連中が、10人以上も捕まったらしいですよ」 「その話なら俺も聞いたぜ」  別の客が話に加わった。 「まだ何人か信者が逃げてるんじゃなかったか?」 「そうらしいな。案外、まだそのへんに信者がいるかもしれないぜ」 「やだぁ、怖いわねぇ」  酒場の娘が客に同調しながらジョッキを並べていく。  男たちはひとしきり終焉の夜明け団の悪口を言ったあと、別のニュースへと話題を移した。  その賑やかなテーブルを背にして、カウンター席にひとりで座る男がいた。  他の客同様に服装は質素だが、この店で一番上等の料理をつまみにビールを飲んでいる。 「今夜はずいぶんご機嫌だねぇ。いいことでもあったのかい?」  店主がカウンターの中から男に声をかけた。 「おお、わかるか! 仕事がうまくいったんで給金を弾んでもらったんだよ」 「それは何よりだな」 「頑固者の親方に褒められてなぁ。いやぁ、生きてるとこういうこともあるもんだ」  嬉しげに言って男は酒を追加する。ジョッキにビールをつぎながら、店主が釘を差した。 「飲みすぎるなよ。あんたの家、不気味なお屋敷の前を通るだろ。帰り道には気をつけな」 「なんの、まだまだ!」  結局、男が店を出たのは夜半近くだった。鼻歌混じりに帰路につく。 「ふんふんふふーん……なべて世はこともなし、とねぇ」  彼の家は路地の奥である。  あたりは古い住宅地で、ガス灯も少なく暗い。男のほかに通行人はいなかった。  男は路地に入った。  生い茂った木々が路地にはみ出し、視界を遮っている。  木々の奥には、長いこと放置された屋敷があるはずだった。  千鳥足で歩きながらふと視線を上げたことに、特に理由はない。  荒れ放題の屋敷は暗闇の中で黒い塊と化し、建物と庭木の区別もはっきりしなかった。 「……ん?」  そのとき、男は見た――ぼんやりした光が、屋敷の庭木の間に揺れるのを。  男は魅入られたように光を見つめた。  そのうち光は何かに導かれるようにふわふわと動き、円を描く。  そうして、かき消すように見えなくなった。  どこかで野良犬が遠吠えをしている。  男はしばらくそこに立ち尽くし、光が消えた方向を眺めていた。 「……幽霊?」  やがて彼は我に返ると、一目散に逃げ出した。 ●指令 「今度の指令はブリテンのさる地主からの依頼で、妙な噂のある空き家を調べてほしいというものです」  指令書を見て集まった浄化師たちに、薔薇十字教団の団員が説明をする。 「空き家の敷地内で、人魂のようなものが何度も目撃されているとか」  目撃者の階級はバラバラだが、皆ごく真っ当な市民のようである。 「皆さんは問題の空き家内部を調査し、市民に危険が及ぶ可能性があるようなら排除してください」  要するにこの指令は、幽霊屋敷の調査ということらしい。  生物が死ねば、魂は天国または地獄へゆくと言われている。  しかし何らかの理由で魂が地上に留まり、幽霊となって怪奇現象を引き起こすこともあるというが―― 「幽霊はもちろんですが、街中とはいえベリアルが入り込んでいる可能性もあります。くれぐれも油断は禁物ですよ」  真面目くさって団員は言った。 「それと、依頼人は屋敷の安全が確認できたら清掃して貸し出したいようです。むやみに家を傷める行為は避けてくださいね」
地に潜む
普通|すべて

帰還 2018-04-25

参加人数 8/8人 三叉槍 GM
・慣れという名の恐怖  人は未知をこそ恐怖する。  昔、とある賢者はそう言った。  目の前に現れた狼の群れよりも、むしろ暗闇に響く無数の遠吠えの方が怖ろしいのだと。  それは言いえて妙であろう。確かに人は未知なるものを恐怖する。  しかし、つまりそれは、人は見知ったものであれば、それが例え命の危険を及ぼすものであったとしても少し見くびってしまうということでもある。  ここは教皇国家アークソサエティの一角。  集落と集落をつなぐ道の中ほどにある茂みである。  その森の入り口で二人の若者が口論をしていた。 「いや、これ以上はやばいって。ここ、あれだろ? ミミズ沼が近いところだろ?」 「大丈夫だって。今時期はまだミミズは動き出してないから心配すんな」  不安げな様子で帰宅を促す男と、それをたしなめながらきょろきょろと地面を見渡し何かを探す男。  二人とも腰に木製のかごを装着しており、その中には相当な量の草が入っている。  どうやら森で食料となる植物を採取しているらしい。  自分で食べるつもりなのか、それとも売り払ってお金にするつもりなのかは窺い知れないが。 「大体、怖がり過ぎなんだよ。ここはいつも俺が使ってる庭みたいなもんだから」  怖がる相棒をさておいてずんずんと先に進む男。 「本当に大丈夫なんだろうな……」  不満を漏らしながらも結局しぶしぶ後ろに従うもう一人の男。  ここで一人だけ帰るとなると、まるで自分だけがビビって帰ったみたいで気に食わない。  一種の意地ともいえるが、実際には場の空気に流されて逆らえない性格というだけである。 「大丈夫、大丈夫。ここ数年はこの辺で被害者はでてないし」  相棒の不安を和らげようと意識して明るい声を男が出す。  ミミズ沼というのはこの森に存在する沼の異名である。  正式な名称はアシッド湿地帯。  名前の通りアシッドに汚染されてしまった沼地であり、ベリアルの発生率が非常に高く、普通の人は近寄らない危険地帯である。  特に出現率が高いのがドレインワームと呼ばれる巨大ミミズであり、その為現地民からは『ミミズ沼』という異名で呼ばれていた。  とはいえ、ここはまだその湿地帯からは距離があり、アシッド汚染の影響も薄い。  ベリアルとの遭遇率はそれほど高くなく、故に男が言うように数年被害らしい被害は聞かれていない。  その意味では確かに安全だと思うのも無理はない。  ガサッ! 「ん? 何か落としたか?」 「……いや、なにも」  しかし、それは致命的な勘違いである。  今まで被害が出ていなかったのは『そこが危険だと誰しもが理解していた』からだ。  決して『安全な場所だから』ではない。  それを男は理解していなかった。 「おい、足元に……」 「えっ?」  後ろの男の警告が届くよりも早く、足元の地面からドレインワームが飛び出し男の首筋に食らいつく。 「あっ……が――」 「う、うわぁぁぁぁ!」  悲鳴も上げられず倒れた男の代わりと言わんばかりに後ろの男が大声を上げる。 「た、たす……」 「ひっ、ひぃ!」  助けを求め伸ばされた手を避けるように足を引っ込め、男は一目散に駆け出す。  一切の躊躇いなく、非情とも言える判断。  だが、結果的にそれは正しかった。  ガサッ! ガサガサッ!  今まで男が立っていた場所も含め、周りの地面から次々と新しいワームが顔を出す。  もしも男が友人を助けようとしていれば、あるいは少しでも逃げるのをためらっていれば彼もまたワームの餌と化していただろう。 「あ……ぎ……」  倒れた男がかすかにうめき声をあげる。  ワームの牙には麻痺性の毒があり、もはや体を動かすことはおろか、悲鳴を上げることすらできない状態だった。 「あが……」  故に、数体のワームが群がり、貪りつくしても、茂みに男の悲鳴が響くことは無かった。 ・苦言 「まったく……いい大人が行っていい場所と悪い場所も分からんのか」  一枚の紙をペラペラと翻しながら小さな子供が呟く。  いや、正確には彼は子供ではない。確かに外見は10歳かそこらの少年だが、彼はれっきとした教団付きの職員である。  子供に見えるのはマドールチェであるが故で、生まれてからの年数でいえばそこらの大人よりもよほどの高齢だ。 「その山菜とやらが命と引き換えにしても惜しくない代物だったとは思えんがな」  寄せられてきた報告書に目を通し、一人毒づく。  彼の仕事は教団に寄せられた様々な依頼を教団に所属する浄化師達に依頼として卸す事である。 「地元の人間であるが故か。慣れというのは怖いものだな」  さらさらと慣れた様子で書類にペンを走らせる。 「確かに今年は例年よりも『ミミズ沼』の周辺地域でのベリアルの目撃情報が多い……。対処しておくべきだろうな」  そう言って、彼は机の上の『依頼行き』と書かれた箱に紙を放り込んだ。
そんなところ見ちゃだめっ!
とても簡単|すべて

帰還 2018-04-23

参加人数 8/8人 瀬田一稀 GM
 薔薇十字教団に属するエクソシストたちは、教団から制服を与えられている。  しかしそのアレンジは自由だ。  あなたもまた、エクソシストとして指令を受けるにあたり、戦いやすいよう、ちょっとした好みも加味して、制服のアレンジを依頼していた。  その仮縫いが今朝、完成したらしい。  連絡を受け、あなたはパートナーとともに、制服の試着に訪れた。 「不都合があったら、気軽におっしゃってくださいね。今ならまだ十分直せますから」  担当メンバーに案内された試着室に一人で入り、制服に着替える。 「これを着ると、背筋が伸びるなあ……」  腕を上げ、腰をひねって、着用感を確認。 「なんかちょっときつい気がするけど……まあいいか」  あなたは、試着室を出、待ち受けていたパートナーに笑顔を向けた。 「おまたせ!」  ところが、だ。 「わっ!」  パートナーに、早くこの姿を見てほしいと思っていたからだろう。  足元の段差に気付かず、思い切りつまづいてしまった。 「危ないっ!」  パートナーが手を差し出してくれるも、間に合わず、気づけばあなたは床の上。 「いった……腰打っちゃった。あーあ、せっかくの新しい制服も汚れ……」 「ってお前っ!」  手を伸ばしてくれていたパートナーが、大きな声をだす。 「え? なにか不具合でも……」  あなたは自身を見下ろし――。 「あああっ!」  思いきり叫んだ。  これでは、パートナーが驚くのも無理はない。  この制服を着たとき、きついと思っていたあの場所が、それはもうぱっくり破れていたのだから。 「見た? 見たよね? その反応は見たよね?」 「いやいやいや、気のせいだ。心配するな。見てない。なにも見てない」 「嘘、絶対見たよね! っていうか忘れて、今見たもの瞬時に忘れて!」 「そんな無理……って、いたっ! 頭を掴むな、揺するな、そんなことしても、見たものがそう簡単に忘れられるかっ!」 「あああ、やっぱり見たんだあああ」  これから長い付き合いになるのに、こんな失敗をやらかすなんて!  ああ、もういったいどうしたらいいの!?
アブソリュートスペル
とても簡単|すべて

帰還 2018-04-21

参加人数 8/8人 oz GM
 さあ、高らかに吼えろ。  ここに自分はいると。  喉が張り裂けるまで謳え。  存在を証明するために。  声を上げろ。  そうでなければ、誰にも届かない。  お前たちの信念を見せつけろ。  叫べ、アブソリュートスペルを。  これは神へと反逆する物語。  かつて人間は様々な種族と生物と共に生きていた。  それは懐かしき幸せの日々。  今は失われてしまった愛おしくも泡沫の時代。  人間が世界の禁忌に触れた瞬間、その優しい時間は呆気なく終わりを迎えた。  神は、神罰を下す。  禁忌に触れたものたちを滅ぼすために「ヨハネの使徒」を放ち、世界中に降り注いだ「アシッドレイン」により、生きとし生けるものは異形の化け物「ベリアル」へと変貌してしまった。  剣や銃などの通常の手段ではベリアルを完全に消滅させることができない。  唯一それを可能とする者のことを「浄化師(エクソシスト)」と呼んだ。  浄化師は「魔喰器(イレイス)」を振るい、ベリアルに喰われた魂を解放し、ヨハネの使徒を葬る。  そのため、魔術組織「薔薇十字教団」は浄化師の素質を持つ者を強制的に集うようになる。  あなたは教団によって集められた浄化師の一人だ。  いや、まだ浄化師の素質を持つ人間に過ぎない。  浄化師は一人ではなれない。喰人と祓魔人の両名がいなければ、成り立たないのだ。  あなたは浄化師になるため適合者と契約することになる。その契約の際に、「アブソリュートスペル」が必要となる。  別名「魔術真名(まじゅつまな)」。喰人と祓魔人が契約の際に決める「絶対の信念を込めた言葉」だ。  アブソリュートスペルを発することで、浄化師は魔力を解放し、互いの能力を最大限に引き出すことができる。  だが、この言葉はそれだけではないのだ。  アブソリュートスペルは決して祈りの言葉ではない。  何に変えてもやり通すという強い信念がこもった魔術誓約。  自分自身への誓いであり、譲れない願いであり、何者にも侵されぬ強い意志でもある。  互いのつながりを示す言葉であるアブソリュートスペルは双方で決める。  二人では話し合って決めることもあれば、契約の際に自然と頭に思い浮かぶことさえある。浄化師の数だけ千差万別の経緯で決まる。どんなにアブソリュートスペルが決まらなくとも最終的には自然と見いだすのだ。  まるで必然だというように。  これは二人が「信念の言葉」を見つける話。  さあ、二人で高らかに叫べ。  それがあなたたちの歩みを示す言葉となるだろう。
First impression
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帰還 2018-04-20

参加人数 8/8人 森静流 GM
 ある寒い日の事です。  浄化師である喰人と祓魔人は、教団の本部に出かけた帰り、あまりに寒いので近くのカフェに寄っていく事にしました。  清潔で明るい店内でストーブの近くに案内され、コートを脱いで一息つきます。 いくらか暖かくなってきたところで頼んだホットドリンクが運ばれてきました。  喰人はカフェオレ。祓魔人はブラックコーヒーです。  それぞれ、マグカップの熱さを指先で、飲み物の熱さを口で味わいながらしばらく黙っていましたが、やがて喰人の彼女が言いました。 「ね、あれ見て」  壁に大きくかけられている花の絵画の事です。  祓魔人は怪訝そうな顔をします。 「よくある花だろ、どうした?」 「あれ、あなたと初めて出会った時も咲いていたわよね。私、よく覚えているわ」 「ああ……そういえば」  祓魔人は頷きました。 「初めて会った時、私の事、どう思った?」  喰人はからかうような表情で祓魔人をのぞき込んでいます。 「お前こそどう思っていたんだよ」  祓魔人はちょっと怒ったような顔になりつつも、話し始めました。それに、喰人も答えるのでした。
魂の還る先
普通|すべて

帰還 2018-04-20

参加人数 5/8人 pnkjynp GM
 冬の夕暮れ。  低く位置する紅い太陽は、まもなくその役目を月へと引き継ごうとしていた。  人々もまた一日の勤めを終え、各々が安らぎを得られる場所へと帰っていく……。  それは、この人気のない墓地を訪れる彼女も同様であった。 「お待たせ致しました……御主人様」  黒のメイド服に身を包んだ女性は、とある墓の前にユリの花を手向けると、墓石に積もった雪を白い手で少しずつ払っていく。 「本日のご子息様も健康で明るいご様子でありました。少しだけお話する機会を得られたのですが、どうやら学校の魔術試験にて優秀な成績を修められたとの事……。貴方様に似て、文武両道の才に恵まれているようですね」  冷たい雪がその手に染みる。  だがその冷たさなど意にも介さぬ様子で楽しそうに語り続ける彼女。  雪を払い終えると白いハンカチを取り出し、愛しい人の身体を洗うように、丁寧に磨き上げる。 「こうしておりますと、お屋敷でお世話させて頂いていた頃を思い出します。今にして思えば、まるで夢のような……楽しくて明るい日々。奥様に対して負い目が無かった訳ではありませんでしたが……私は、例え愛されることはなくとも……貴方様と一緒に居られるだけで、至上の喜びを感じておりました」  しゃがみこむ彼女の瞳から涙が伝う。  まるでそれを慰めるように、彼女が連れ添っていた大型犬はその悲しみを舐め取っていく。 「……あら、こんな私を許してくれるの……【ボッシュ】? あなたの大事な主人を奪ってしまった私を」  ボッシュと呼ばれたその老犬は、生まれた時から彼女とその主人の共通のペットであった。  それは10年以上前。彼等の関係が主従ではなく幼馴染であった頃からの。 「あなたはいつも優しいのね……そして……とっても温かいわ」  彼女は目の前の犬を抱きしめる。  最初の内は大人しくされるがままのボッシュであったが、突如彼女の腕からすり抜けると、彼女が背中を向ける森の方を向きうなり始める。 「ヴゥゥゥ……!」 「ボッ……シュ?」  ボッシュが威嚇する先。  その先にはボッシュより一回り小さな小型サイズの犬が3匹姿を現した。  この墓地は鉄柱で作られた柵を境に、辺りを森に囲まれた小さな墓地だ。  柵に空いた穴を通ってこのような生物が迷い込んでくること自体は少なくないのだが…… 「い、いやぁぁ!!?!」  3匹の犬からは、その身体を突き破るように飛び出た無数の触手がうねる。  それはかつて、彼女の目の前で最愛の人を奪った悪魔の象徴……【ベリアル】の証であった。 「ヴォゥ! ヴォゥヴォゥ!!」 「ああぁ……ダメ、ダメよボッシュ! は、早く逃げなさいっ!」  彼女は必死に声をあげる。  だが、それが限界でもあった。  恐怖と後悔に飲まれたその体はすくんでしまい、座り込んだ状態から動けない。  それを悟っているとでも言うのだろうか。ボッシュは彼女を守るようにして離れようとはしなかった。 ~~~  それから時間が経ち、ベリアルの反応を検知した薔薇十字教団から指令を受けた浄化師達は墓地へ訪れる。  既に本来の命を【アシッド】によって奪われ、ベリアルと化したもの。  本来の命が終わりを迎える前に、残された誰かを守ろうとするもの。  貴方の行動は、このもの達に何をもたらすのであろうか。
魔の羽音
普通|すべて

帰還 2018-04-19

参加人数 2/8人 革酎 GM
 ある森の中でのこと。  狩猟と材木業で生計を立てていた老人が、遺体で発見された。  全身至る所に巨大な蜂に刺されたような跡が残されていたのだが、近隣の村の長老が念の為にと薔薇十字教団の調査員に死因調査を依頼したところ、微かながら残留するアシッドが検出されたのだという。  つまりこの老人は、ベリアル化した巨大な蜂──キラービーの群れに襲われたということが推測される。  教団の調査員で自身も浄化師であるジルド・ハンゼは、渋い表情を浮かべた。 「これはウシクイバチ種のキラービーでしょうね。この辺に棲息する種で、内臓まで貫通する毒針を持っているのは他に居ませんから」 「随分とお詳しいですね」  長老が幾分驚いた様子で訊くと、ジルドはオールバックの黒髪をがしがしと掻きながら、大したことじゃありませんが、と低い声で応じた。 「疫病学を専攻してた頃、病原菌を媒介する種の研究で節足動物学や昆虫学も学んだことがありまして」  だから、キラービーの種についても知見があるのだという。  それにしても、獣や家畜がベリアル化したというのであれば話は簡単だったろう。  しかし相手が群れを成す昆虫となると、少々厄介だ。  それも、老人の遺体を調査したところでは十数匹のキラービーがベリアル化していると思われる。  普通のキラービーでも集団ともなれば、恐るべき脅威となる。それがベリアル化しているのだから、これは自分とそのパートナーだけではどうにもならない。 「ハンゼさん。村は、大丈夫ですかねぇ」 「絶対に安全です、とはいえないでしょうね」  ジルドの渋面に、村の長老は盛大な溜息を洩らした。  だが下手な嘘をついて村人を安心させたところで、ベリアル化したキラービーの群れという脅威が去ってくれる訳ではない。 「全村民には戸締りを厳重にして、家から一歩も出ないようにと指示を出して下さい。私はこれから教団に浄化師の追加派遣を要請します」  それだけいい残すと、ジルドは遺体発見現場から足早に立ち去っていった。
ドキドキ劇の代役
とても簡単|女x男

帰還 2018-04-18

参加人数 3/8人 星色銀 GM
 ここは、「教皇国家アークソサエティ」芸術と音楽の街オートアリス。  劇場にほど近い広場にて、野外ステージの上で学生たちが劇の稽古をしている。数人の少女が憧れのまなざしを向けていた。  学生たちは裕福な学校の生徒。貴族の子息であり、誇りにあふれている。  二週間後に開かれる子供たち向けのチャリティイベントで、学生たちは劇を披露することになっていた。  演じるのは、『ロメオとギュレッタ』。年頃の少女に人気な悲恋の物語である。  準備は順調に進んでいたのだが――。  準備中に事故が起こる。稽古中、セットが崩れ、ベニヤ板がヒロイン役の女優に向かって倒れていく。  真っ先に気づいた主役の少年が少女の上に覆いかぶさるが――。少年は背中を怪我し、少女も足を捻挫させる。  激しい剣と剣による決闘シーンもある舞台だ。役を続けるのは不可能と医師にストップされる。  学生たちは緊急の会議を開いた。  辞退するか、代役を立てるか。  辞退。子供たちの期待を裏切ることはしたくない。  代役を検討したが、あいにく寄せ集めの劇団はギリギリの人数である。削れる役はない。一人二役が可能な脚本でもない。  そこで、学生たちは薔薇十字教団を頼ることに。  主役とヒロインを演じ、劇の成功に力を貸してほしい、と。
風を斬る脅威
普通|すべて

帰還 2018-04-15

参加人数 3/8人 terusan GM
 教皇国家アークソサエティ内ブリテンにある毒花の森。  その名の通り森の中には一部のエリアで毒花が群生し、危険な動物が生息している上、ベリアル化した動物の目撃情報もある。その危険性は周辺に住む者のみならず知られており、今や毒花の森の一部地域は危険な場所とされ、寄りつく者も少ない。  ただ、森に群生する毒花は様々な病気に効く貴重な薬の原料となるため、今なお一部の命しらずな冒険者は危険なこの森に分け入ることを続けている。また毒花製の薬が貴重であることを理由に、周辺地区の自警団も森への立ち入りを完全に禁止にはできないでいた。  そんな中、薔薇十字教団司令部に一団の冒険者パーティーが一様に顔を青くして駆け込んできた。  報告を聞くと彼らは毒花の森で毒花を集める冒険者の一団で、昨日も7名パーティーで果敢にも毒花の森に毒花採取に向かったのだった。  司令部に駆け込んできた冒険者のうちの一人が息せき切って報告を始めた。  花の毒への対策も万全だったし熟練した冒険者が7人もいるということで、彼らは危険な森とは言え、恐れることはなかった。戦闘経験もそれなりにあり、ちょっとした猛獣や危険生物ならなんとかなるという自信もあった。 「最近じゃ、毒だけじゃなくベリアルがいるんじゃないかっていうんで、森に立ち入る人間が俺たち熟練の冒険者ぐらいになっちまってな。森の一部の地域じゃ毒花の数も増えちまって、並の量の毒消し薬じゃ間に合わねぇぐらい、毒の瘴気が立ち込めてるんだ」  どうやらベリアルの目撃が噂されてから薬用に毒花を採取にくる者も少なくなり、森の一部地域では毒花の毒素はもはや空気を穢すほどの濃度に達しているらしかった。 「もう普通の毒消し薬の数じゃ、まともに歩き回ることもできねぇぐらいで、ここに立ち入るんならよほど多くの毒消し薬を持っていくか、強力な治療の魔術が必要だ」  そんな毒の瘴気が立ち込める危険な森の中には、やはり噂通りベリアルの気配も感じられたという。 「この世のものとも思えねぇ鋭く高い声が聞こえたかと思ったら、大きな黒い塊が空から猛スピードで俺たちの方に向かってきた。俺はとっさに頭を抱えて毒花の茂みに伏せたんだ。すると、毒気を吸わないように息を止めてじっとしている俺の頭上で、大きな鳥の羽ばたき音と一陣の風が吹き抜けたんだ」  すると今まで黙っていた他の冒険者の一人が付け加えるように話し出した。 「俺も地面に伏せてたんだが仲間の叫び声を聞いて、とっさに顔をあげたんだ。すると、真っ黒な身体から触手が突き出た、今までに見たことがないような怪物に、二人の仲間が激しく襲われてるのを見たんだ。憶測だが、あれはソードラプターに似ていたよ」  さらに別の冒険者がさらに続ける。 「あいつらは絶対、ベリアルだよ! 森のソードラプターがアシッドに取り込まれてベリアルになっちまったんだ。奴らは木気の属性を持ってて襲ってくる前は、完全に森の木と同化するように溶け込んで、姿が見えないんだ」 「襲われた二人には本当に申し訳ないが、このままじっとしてりゃ俺たちは全滅だ。俺は他の四人に大声で逃げるように言って、残ったみんなで転がるように森から脱出したのさ」  最初に話しはじめた冒険者が再び口を開く。 「あの二人は恐らくもう、この世にはいないだろう……」  その顔は苦渋に満ち、それに疲労の表情が加えられ悲愴感が漂っていた。 「なぁ、あんたらはベリアルを倒すのが仕事だろ? 」 「頼む、あそこのベリアルを討伐しに行くんなら襲われた二人の形見の品を見つけて持ち帰ってやってくれ。襲われた二人にはそれぞれ妻と子供がいるんだ」  ベリアルの目撃情報がもたらされた以上、いかなる場所であっても教団の浄化師なら討伐に赴く必要がある。  早速、正式に指令として「ブリテン地区の毒花の森のベリアル探査と討伐」が発令された。
マニキュアフラワーで花束を
とても簡単|すべて

帰還 2018-04-15

参加人数 6/8人 草壁 楓 GM
●彩りに想いを込めて  教皇国家アークソサエティ。  様々な種族が住むこの国家の西部にある巨大都市エトワール。  美しい建造物や美術品などが好まれ多くの観光客が訪れ、そして市民階級の者などがこの都市に住んでいる。  そのエトワールにある中心街にあるのがリュミエールストリート。  ここには洋服店や食堂などがひしめき合い、夜にはネオン煌く繁華街となる賑やかな通り。  そのストリートの一角にあるハンドメイドショップ『ロシューヌフローラ』。  老若男女通う人気のお店で、とびきり人気があるのが体験型の制作講座である。  現在開催されているのはマニキュアを使用した花の製作である。  それは有難いことに盛況でその評判は浄化師になりたてのあなたとパートナーである祓魔人の耳にも入っていた。  その評判とはマニキュアフラワーの色で相手に想いを伝えるというもの。  作業は簡単。  柔らかい素材のワイヤーで花の形を作り、幕を張るようにマニキュアを塗り、花びらを作って乾かせば制作は終了である。  最後に出来上がった花を数本束ねて花束のようにして、店員がラッピングをしてくれるのだ。  そのマニキュアの色は多彩に用意されており、色の組み合わせにより自分オリジナルの花束を作ることができる。  そして色にはいろいろな意味がある。  赤ならば情熱や勇気。  青ならば信頼に誠実、冷静。  などなど。  これらを組み合わせてオリジナルのメッセージを込めることができるということである。  まだパートナーと知り合って間もない浄化師にとっては制作中に会話もでき、そして花の色で今の心にある想いを伝えることができるという評判だ。  これから「よろしく」でも自分の目標を相手に伝えるでも良い。  そしてその制作したマニキュアフラワーは枯れることがないため、思い出としてもそして自身の相手への気持ちの初心の記念ともなるだろう。  さて、あなたはどんな思いを相手に伝えてみようか。
浄化師を始めよう
普通|すべて

帰還 2018-04-14

参加人数 6/8人 春夏秋冬 GM
「ガアアアアアアッ!」  獣の咆哮が、響いた。  それは断末魔であり、解放への雄たけび。  禁忌に触れた人間に神が放ったといわれる、魂を縛り肉体を変容させるウィルス『アシッド』。  その戒めの鎖から、解き放たれた声だった。  それを成したのは、浄化師(エクソシスト)。  アシッドに対して強い抵抗力を持った喰人(グール)と、喰人と契約を成すことでアシッドからの感染を防ぐことができるようになった祓魔人(ソーサラー)。  2人1組のパートナーが、アシッドに感染した『べリアル』を倒したのだ。 「これで、残りは幾つだ?」  すでに熟練の域に達した喰人の男性が、パートナーである祓魔人の女性に尋ねる。 「強力なのは、いま貴方が倒したので終わり。残りの低級の1体は、ちょうど今から倒される所よ」  そう言って視線で示した先に居るのは、新人の浄化師のパートナー1組と、彼らによって今まさに倒されようとしているべリアルだった。  べリアルは、中型犬の体中から触手を生やした姿をしていた。  魂を縛り肉体を変容させるウイルスであるアシッドは、生き物であれば何であれ感染し得る。  そうして感染し変容したものがべリアルだ。  いま目の前に居るべリアルは、元々は普通の犬だったのだろう。  だが、アシッドに感染した今となっては、見る影もない。  生き物であれば何であれ殺し、その魂を食らい縛り付ける怪物と化している。  絶対に、倒さなければならない。  だがべリアルは、通常の武器で傷付けても際限なく再生するため、倒すための特殊な武器を使用する必要がある。  それを、犬型の低級ベリアルと対峙した新人の浄化師が、口寄魔方陣を展開し出現させる。  魔方陣の色彩が緑色なのは、展開している浄化師の得意属性が木気なのだろう。  展開された魔方陣は、一瞬にして離れた場所に保管してあった武器を、浄化師の手元に届けた。  それは魔喰器。べリアルを倒し得る武器だ。  魔喰器は様々な形状をしているが、いま新人の浄化師が手にしているのは巨大な木刀の形をしている。  それを手に取りベリアルと対峙しながら、浄化師はパートナーの浄化師と手を繋ぎ、高らかに魔術真名(アブソリュートスペル)を口にする。  それは浄化師である喰人と祓魔人が、パートナーとして契約の際に決めた「絶対の信念を込めた言葉」。  発することで、安定させている魔力(マナ)の生産量を解放し、互いの能力を最大限に解放することが出来るのだ。  そのためには、魔術真名を口にする際に身体の一部を触れ合せている必要がある。  新人の2人は、浄化師となるまでは会った事もない間柄だったせいか、どこかぎこちなく手を繋いでいる。  けれどその眼差しは強く、絶対に目の前のべリアルを倒すのだという信念が込められていた。  それを証明するように、新人の浄化師達はべリアルに挑みかかる。  魔喰器を振るい、あるいは魔術を使い、べリアルに傷を負わせていった。  息を切らすほど全力で戦い、べリアルを瀕死の状態にまで追い込む。  それが、べリアルに囚われた魂を露わにさせた。  べリアルの身体から立ち上るようにして現れたのは、鎖に拘束された犬。  それは、アシッドに感染した犬の魂だ。  べリアルは、殺せば殺すほど強くなっていく。  殺した生き物の魂を取り込み捕え、自らの存在を強化するからだ。  いま目の前にいるべリアルは、べリアルになったばかりなのだろう。  最初に犠牲となった犬の魂のみが囚われていた。  それを開放するべく、露わになった囚われの魂を縛る鎖を、魔喰器で破壊し喰らわせる。  解放された犬の魂は伸びやかに体を震わせると、礼を言うように新人の浄化師達に触れるようにして、ふっと消え失せた。  同時に、べリアルの肉体が崩れ去る。  捕えていた魂が無くなり、存在を保てなくなったのだ。 「お疲れさん。今日の所は、これで良いぞ。ゆっくり休みな」  熟練の浄化師に労われ、新人2人は力を抜く。  それを苦笑するように見詰めた後、熟練の浄化師である男性は、パートナーの女性に問い掛けた。 「ここは、これで終わりだな。残りの場所は、どうなってる?」 「準備は終わってる筈よ。強力なのは、私達みたいな慣れた浄化師が倒して、残りの低級は新人の子達に任せる手はずが整っているわ」  いま2人が話しているのは、新人の浄化師を訓練することも兼ねた依頼の話だ。  浄化師は常に求められているため、才能があれば見つけ次第、半ば強制的に契約をさせられている。  そうしなければ、魔力を過剰生産する性質を持つ喰人も祓魔人も、長くは生きられないという理由もあるが、だからといって全員が浄化師となるべく訓練して来た訳ではない。  中には、戦闘とは関わり合いの無い生活をしてきた者もいる。  そうした新人を戦いに慣らせるために、ベテランがいざとなれば助けられる状況で、下級のベリアルとの戦闘をしているのだ。  それが、今のアナタ達の状況です。  ベテランの浄化師達が、いざとなったら助けられるよう準備しながら、犬型の下級べリアル達との戦闘を求められています。  ベテランの浄化師達に追い立てられたべリアル達は、殺気立った唸り声をあげ、今にも襲い掛かって来そうです。  戦いの場となる場所は、平地の草原。  移動をするのに、邪魔になる障害物はありません。  それは、敵であるべリアルに取ってもそうです。  この状況で、アナタ達は他の浄化師達と協力して、べリアルを全て倒さなくてはいけません。  どうしようもなく追いつめられれば、ベテランの浄化師達が助けてくれるでしょうが、そうなれば依頼は失敗。  報酬も、残念なことになるでしょう。  この状況、アナタ達なら、どう動きますか?
ぴかぴかの、
普通|すべて

帰還 2018-04-14

参加人数 8/8人 ナオキ GM
 世界の秩序と平和を守るエクソシストは、天賦の才を持つ限られた存在だけが成り得る立場である。  よって、純粋な羨望だけでなく、嫉妬や畏怖の目を向けられることも少なくない。  それでも彼らは文字通り己の魔力と命を賭して戦う。  闇色の教団制服の裾を翻して。 「今期から正式に配属される者たちの採寸はどうですか。恙なく進んでいますか」  教皇国家アークソサエティ薔薇十字教団に籍を置き、幾度も修羅場をかいくぐってきた妙齢の女性喰人にそう問いかけられ、バインダーに挟んだ資料とにらめっこをしていた年若い部下は暗い顔で首を横に振った。 「いえ……、今期も大型新人が多いですね。採寸から脱走する者もいれば、異性の採寸を覗きに行く者、手合わせをやたらと乞う者。選り取り見取りです」  部下の回答に、女性は思わず額に手を遣って深々と溜息をつく。  まだ制服を持たない新人エクソシストと、日々の連戦で傷んだ制服を持つ中堅たち。  今日は、そんな彼らを教団寮に集めての採寸日である。  教団側としては全員纏めて招集して一度に済ませてしまいたいのだが、エクソシストにはどうも癖の強い者が多く、戦闘でもないのにむやみに大人数を集めれば手の付けられないことになる、としっかりと学んでいた。  この日集められたのも、十組にも満たないエクソシストだ。  しかし既に採寸に飽きたのか、脱走を試みてアークソサエティ中心街の観光を企てる強者もいるようで、採寸係として働く者は大いに手を焼いていた。  制服を改造したり着崩したりして個性を出すなんてのは、まだまだ可愛いほうなのだ。  懐中時計を確認すると、女性が出席しなければならぬ定例会議まで、あと二時間と少々。  速やかに採寸を終え、血の気と魔力の多い奴らをそれぞれの巣へと放り出す必要がある、と。  眉間にしわを刻んだ女性は、脇に控えていた部下に短く命じた。 「手段は問いません。――終わらせろ」  あくまでもこれは、制服採寸に対しての命令だ。  断じて新人共の命を奪おうとしているわけではない。  幸いにも本部には、お抱えの採寸のプロがいる。  まるで鞭のようにメジャーを扱うプロが。  毎回何人もの“ひよっこ諸君”をメジャーで縛り、時には天井から吊るし、羞恥で頬を染めた彼らのあんなところやそんなところを測ってきた。  緊縛のプロではなく、もちろん、クリーンな採寸のプロ。  市民たちから憧れを抱かれている制服が、毎度毎度どのような騒動を経てエクソシストの元に届いているのかを、市民たちが知るよしはない。  何事もイメージというものがあるからだ。  ――エクソシストよ、常に気高くあるべし。
夜明けのキメラ
普通|すべて

帰還 2018-04-09

参加人数 4/8人 じょーしゃ GM
 季節は、冬。  そうは言っても寒さは落ち着いていて、道端には春の足音が聞こえ始める、そんな季節だ。  そんな中、教団の本部が存在する中心部から南方にある都市『ルネサンス』に喰人の目撃情報がないか調査しに来ていた浄化師は、全身を黒の外套で覆った男に声をかけられる。 「おい、知ってるか? あの洞窟、落ちてるって噂だぜ」  急なことだったので少し戸惑いながらもその言葉について追及する。 「何が……落ちているんだ?」 「決まってるだろ……あれだよあれ、『魔結晶』だよ」  魔結晶とは魔力が結晶化してできる石である。  通常は高い魔力を持つ動物が絶命した時に生成されたりするものだが、魔力が十分に満ちている場所でも生成されることがあるという。  この情報が本当なら魔結晶を回収する拠点が増えるということで、教団にとってもプラスな話のはずだ。 「どうするよ浄化師さん、放っちゃおけねぇ話だろ?」  喰人の調査もあるがこちらも捨ててはおけない話だ、すぐにその黒ずくめの男に場所を案内させる。  途中何人かの街の住人とすれ違ったが、皆が不思議なものを見る目をしていた。  ついた場所は石炭などを採掘していたであろう洞窟で、炭鉱員の影がないことから、だいぶ昔に石炭を掘りつくしてしまった廃鉱だということはすぐに分かった。 「こんな場所に魔結晶が落ちているのか……おい……?」  振り向くと案内してきた男の姿はなく、途端、強烈な眠気に誘われる。  どれだけ眠っていただろうか、まだ視界がぼやける中で立ち上がると洞窟の奥から何やら音が聞こえた。  生き物の声だろうか、その声は昆虫が発する断末魔の悲鳴のような声で、同時に何本もの足を動かす歩行音が聞こえた。  音のするほうに歩み取るとそこに見えたのは巨大な蜘蛛の生物。  しかし目の前にいるのはどう考えても蜘蛛ではない、『蜘蛛』であって、『蜘蛛』でないのだ。  その体にはサソリの尻尾が雑なコラージュ作品のように付いていて、生物の進化の過程で絶対に生まれることがないものだということは容易に想像がつく。  そしてその傍らにいた男が声を発する。 「目が覚めたか浄化師の兄ちゃん、この生物をみて驚いてるだろう? そりゃそうだ、こうなることを知っていた俺でさえ驚いてるんだからな!」  そして嘲笑うかのようにこちらを見ながら言葉を続ける。 「魔結晶があるなんて簡単に信じちゃってさ、浄化師ってのはこんなもんなのかねぇ?」  外套の袖から覗いた左手の甲には埋め込まれているような十字架の形が現れており、それを見た瞬間に事のすべてを察した。  黒い外套と埋め込まれた十字架、そしてこの不気味な生物。  ここにいるのは『終焉の夜明け団』の信者だ。  終焉の夜明け団は禁忌とされている魔術を使い、『キメラ』と呼ばれる合成生物を生み出そうとしていると聞いたことがある。  そして完成したのであろうその実験を、この廃鉱で試そうとしているのだ。  一人で闘っても勝ち目はない、そう思った浄化師は洞窟の中を逃げながら出口を探すことに決めたが一歩遅かった。  キメラに噛みつかれ、直後体が痺れるような感覚に陥る。  身動きが取れないまま浄化師は再び目を閉じるのであった。  ――そしてその頃、薔薇十字教団本部はルネサンスの住人から怪しげな情報を入手していた。  曰く、街はずれの炭鉱に浄化師が連れていかれるところを見た、と。  そしてその洞窟の内部から奇妙な生物らしき声がした、と。  ルネサンスには教団が喰人捜索のために派遣した浄化師がいるはずだ、もしその情報が本当なら……と臨時で指令が発令された。  教団から指令を受けた浄化師達は、ルネサンスの洞窟へと急ぐのであった。
子を思う親の愛ゆえに
普通|すべて

帰還 2018-04-09

参加人数 4/8人 檸檬 GM
●  今度こそ、と願いを込めて、木から石に変えた。  山で切りだした石を背負って冷たい流れに足を入れ、一つ一つ丹念に積み上げて太い橋げたを作った。  川向うの学校へ通う子供たちのために、春までに橋を完成させてやりたい。  思いを胸に、村の男も女も、時間が許す限り手伝いに出た。  あと少し。  あと少しで完成する。  なのに全てはあっさり崩される。  「ベリアルだ! また、熊のベリアルが出た!」  村人たちが指さす先に、アシッドの影響によって生まれた熊の魔物がいた。  体に張りついた艶のない毛を割って、赤黒い触手が何本もうねり伸びている。  早すぎる目覚めに体はやせ細ってはいるが、それでも大人ほどの背丈があった。  肩を揺らして歩きくるベリアルの後ろから、人間の両手にすっぽり入るほどの大きさの生き物がよちよちとついてきていた。  目も耳も開いたばかりのその生き物は、冬眠中に生まれた熊の子たち――。    熊のベリアルは灰色の毛に埋もれた目を赤く燃え立たせると、逃げる村人たちには目もくれず、我が子を岸辺に残し川へ駆け入った。  水しぶきを上げて進み、橋げたに巨体をぶつける。  橋が川底に沈むまでは、あっという間の出来事だった。  もう自分たちだけの力では橋を完成させられない。  それに、いまは橋の破壊だけで満足して森へ帰っていくが、魔物はそう遠くない日に村を破壊し、人を襲うだろう。  ついに村人たちは重い腰をあげて、薔薇十字教団に熊のベリアル退治を依頼しに行った。
行商隊を救出せよ
簡単|すべて

帰還 2018-04-09

参加人数 4/8人 梅都鈴里 GM
「キャアアッ! で、出たわ! 悪魔よ!」 「一般人を避難させろ! 積荷は置いていっていい! 命が最優先だ!」  平和であった現場は一瞬にして騒然となった。  とある行商隊が出会った異形のモンスター。どす黒い触手を体中から生やした野犬は、見た目からしても通常のそれではない。 『アシッド』と呼ばれる瘴気を吸い込み、魂を捕われた生き物が変化した禍々しい姿。  口の端からダラダラと涎を垂れ零し、視界に認めた人間達を食らおうと牙をむいていた。 「きゃあっ!」  人々の急流に押された小さな子供が、石に躓いて転んでしまった。  混乱の中でようやっと大人が気付いた時にはしかし、悪魔――『ベリアル』は、必死に立ち上がろうとする小さな命――格好の獲物に、赤く光る眼光を向けている。 「あの子は私の、私の娘なの! 誰か助けて!」 「行ってはならん! 食われてしまうぞ!」  助けを請う母親を大人達は取り押さえる。  きっとこの非力な母親が出て行っても、出て行かなくても、あの子供は食べられてしまうだろう――。  誰もが、命の終わりを覚悟した。 「だれか、たすけて……!」  ――浄化師、エクソシストさまっ……!  子供が、祈るようにその言葉を口にしたまさにその時――飛び掛ったベリアルを、一陣の風が弾き飛ばした! 「ギャイィンッ!!」 「っ! 誰だ!?」  人々が一様に、救世主を振り返る。  彼らは神の意思に反旗を翻す、選ばれし存在。 「――怪我はないか、お嬢ちゃん。今、助けてやるからな!」  少女が呼んだヒーローは呼びかけに応え、にっと歯を見せ頼もしい笑顔で笑いかけた。
エンケの魔猪
普通|すべて

帰還 2018-04-09

参加人数 4/8人 碓井シャツ GM
 狩猟は上流階級の楽しみとして流行している。  競技としてのハンティングの台頭とは関係なく、教皇国家アークソサエティの中心部より離れた山間の小さな村であるエンケでは、生活としての狩猟がさかんだった。  猟師は訓練された猟犬と共に山へ分け入り、日々の糧として動物を狩る。  その日も村の猟師が三人、山へ入っていた。ベテランの猟師が一人、身を屈めて地面を検分する。 「この足跡は、イノシシだな……まだ新しいぞ」  獲物の形跡を確認し頷き合うと隣を歩いていた猟犬が、キャウウウウ、と悲壮な声をあげた。  続けて前方に向かって、キャンキャンと吠え続ける。 「どうしたんだ、臆病風に吹かれたか。お前らしくもない!」  常にない猟犬の様子に猟師は胴を叩いて落ち着かせようとするが、半狂乱の犬はおさまるようすがない。  犬の視線を追って前方を見れば、霧の中に獣の大きなシルエットが浮かび上がる。 「イノシシだ……!」  一番年若い猟師が引き攣った声を出して、猟銃を構えた。 「いや、あれは……」  霧の合間から、其れは異容を現した。  身体の至る所から獣皮を突き破って、赤黒い触手が伸びている。  ベリアル化していることは明らかだった。 「逃げろ、あれは銃で死なねえぞ……ッ!」  悪魔に成り果てたイノシシが力を溜めるように、ぐっと身を低くする。 「来るぞ、左右に散開しろ!」  猟師が声を張り上げた。  爆発のような突進だった。イノシシがぶち当たった巨木がメリメリと音を立てて倒れる。  避けそこなったら、ひとたまりもなかっただろう。  這う這うの体で村に逃げ帰った猟師たちは、こう叫んだ。 「薔薇十字教団へ……! 浄化師を呼んでくれ!」
新たな目覚め
簡単|すべて

帰還 2018-04-08

参加人数 3/8人 Narvi GM
 巨大な壁に囲まれた国、教皇国家アークソサエティ。  その中心部にある首都エルドラドから南部に位置する巨大都市ルネサンスは、たくさんの市民や国外から来た者が住んでおり、いつも賑わっている。  しかし、現在ルネサンスは大混乱に陥っていた。  いつもなら人気の多い通路を必死に走り抜ける少女と、それを追うヨハネの使徒。周りの人には一切見向きもせず、ヨハネの使徒は一直線に少女を殺さんと移動していた。  一生懸命に逃げる少女。その瞳に涙を浮かべ、絶望に足を止めたくなるのをどうにか振り払って、少女は逃げる。  その後ろに続く三体のヨハネの使徒。額のコアを輝かせながら、少女に向かってかなりの速度で地上を移動していた。  少女は自分の才能を呪った。この才能さえなければ今こうやってヨハネの使徒に追われることはなかったのに、と。  魔力を多く持つ者はヨハネの使徒に狙われやすい。  生まれつきのものなんてどうしようもない――――そんな当たり前のことはまだ幼い少女でもわかっている。それでも、謝罪の言葉が際限なく溢れ出すのだ。  こんな才能さえなければ、お母さんもお父さんも自分を庇って死ぬことなんてなかったのだから。  涙が止まらない。それでも、ここで死ぬわけには行かなかった。 『ライラ、あなたは……あなただけは生きて……』  両親は最後にそう言い残して、冷たくなった。  悲しむ暇なんてなかった。少女の目の前にはヨハネの使徒がいる。両親の生きた印を拾う時間も、落とした愛用のペンダントを気にする暇すら残されていない。  密かにその胸に復讐の闘志を燃やしながら、少女は立ち上がり後ろを向いた。  きっと浄化師があなたを見つけて、助けてくれるから。その言葉を信じて、ただひたすらに少女は逃げ続ける。
闇夜に蠢くもの
普通|すべて

帰還 2018-04-08

参加人数 4/8人 terusan GM
 周囲を堅牢な城壁で囲み外部からのあらゆる危険を排除している教皇国家アークソサエティ。しかし、その外角にあたる一部の地区は犯罪者やならず者、かすかなスキをつき不法に侵入してきた者たちの吹き溜まりとなり、治安は悪化の一途を辿っている。  そのような外角近くの貧民窟の一角で、残虐な殺人事件が起きたのが一昨日の深夜。夏に降るにしては冷たい雨が街路を激しく叩く月のない暗い夜だった。  一夜明け、近所に住む老婆が、普段から大酒喰らいで評判だった男の無残な遺体を発見した。老婆は驚いて地区の自警団に通報し、3名の自警団員が早速遺体の元に駆けつけた。工員の男のようで作業着を身につけているが、上半身を中心に無残にもビリビリに破られ原型をとどめていない。  そのボロボロの衣服に変色してどす黒くなった血が大量に染み込んでいた。 「こいつはここいらでも有名な酔っ払いでしてなぁ。まぁ、こんなにされた日も酔ってウロウロとしていたんでしょうな」  老婆が自警団員の一人に話しかけた。  老婆の言葉には全く反応せず、その自警団員は遺体につかつかと歩みよりしばらく遺体を調べていたが、急に顔色を変え周囲で遺留品や手がかりを探していた他の2名にここに来るようにと声をかけた。 「おい、こいつの傷を見てみろ。刃物で切られたのでも刺されたのでも殴られたのとも違うぞ! 」 「何かで激しく抉られたり、まるで食いちぎられたりした跡のようだな」 「おい、ここらあたりで最近おかしなことを見たり聞いたりした者はいないか? 」  まじまじと遺体を見つめていた三人目の自警団員が、顔をあげて周囲に集まってきた野次馬の群衆に声をかけた。 「そこの先の袋小路にある古井戸から、ここんとこ気味の悪い声やら音やらが聞こえてきて、ここらの人間は夜だけじゃなく昼間も井戸には近づかなくなったんだよ」  若い工員が自警団員の問いかけに応えた。 「それとよ、1週間ほど前の晩に薄気味悪リぃ生き物の影を何人もが見てるんだ」  杖をつき長くヒゲを伸ばした老人が付け加えた。 「ワシも見たんだ。最初でっけえ野良犬かと思ったんだが、どうもそいつの背中からは蝙蝠の羽みてえなのが生えてるんだ。それで眼なんだろうが暗闇で真っ赤に光ってて、少し開いた口からは火ィでも吐くんじゃねえかってくらい赤い舌が見えたんだ」  老人と同じモノを見た者が一斉に頷いた。 「俺も奇妙な奴を見たよ! 」  二十代ぐらいの若い男が口を開いた。道具屋の店番をしている者だという。 「店にさ、全身黒ずくめの外套を羽織った全く一言もしゃべんねぇ男の客が薬をいくつか買いにきたんだ。で、そいつが金を払うときに見えたんだ。左の手の甲に埋め込んである、十字架をよ」  道具屋はあまりの怪しい雰囲気に思わず男を尾行し、例の古井戸の中にするっと消えるのを見たと言う。 「おい、誰かその井戸に案内してくれ! 」  自警団員の一人が声をかけると、先ほどの道具屋が先頭を歩いて自警団員を井戸に案内した。  井戸を覗き込んだ一人の自警団員が井戸に密かに取り付けてあるハシゴを見つけた。  三人の自警団員は勇敢にもハシゴを使って井戸の下に降り、井戸の底から横に果てしなく続く横穴を発見した。 「これは、臭うな。『終焉の夜明け団』の狂信者の奴らかもしれないぞ! 」 「ああ、しかも、その見立てが正しけりゃ、爺さんが見たのは奴らが作ったキメラだ。よりによってキメラがこのアークソサエティ内にいる可能性があるなんて! 」 「早いとこ、薔薇十字教団の教団本部に報告に行った方がいいぜ」  自警団員たちは浄化師たちが集まる薔薇十字教団に赴き、事の次第を余す事なく伝えた。  アレイスター・エリファスを狂信し、その復活のためならば禁忌魔術の行使をも厭わない「終焉の夜明け団」は、教団からも、発見し次第即刻捕縛もしくは処刑の命令が通達されているほどの危険な集団だ。  特に本件は、禁忌魔術「ゴエティア」が行使され、凶暴な合成生物「キメラ」が生み出されている可能性が高い。  直ちに教団に所属する浄化師たちに狂信者捕縛とキメラ殲滅の指令が発令された。  君の志願を待つ!
薔薇十字教団クリーン週間
とても簡単|すべて

帰還 2018-04-08

参加人数 8/8人 北乃わかめ GM
 とある昼下がり。教団本部の廊下をずんずんと足音を立てて歩く女性職員がいた。  かなり憤慨している様子で、たまらず顔見知りである女性清掃員が声をかける。 「ちょっとあんた、どうしたんだい?」 「あ、聞いてくださいよ! 彼ったらひどいんです!」  話したくて仕方なかったとでも言うように、清掃員に詰め寄る職員。  ああこれは貧乏くじを引いたなと思うも、後悔先に立たず。職員の口からは、付き合っている彼氏がいかにだらしないかが止めどなく語られた。 「洗濯物はいつまでも干しっぱなしだし、食べた物は片づけないし! 昨日なんて先週飲み終わったビール瓶を置きっぱなしにしてて……!」  おそらく大げさに言っている部分もあるのだろうが、確かに並べられる彼氏の特徴は「だらしない」の一言だ。  職員曰く、片づけられない系男子なのだとか。  清掃員として、そりゃ酷いねえと一応相槌を打っておくが、正直どうでもいいとも思っていた。 「少なくともゴミは片づけてほしいっていうか!」 「うんうん、そうだねえ」 「でも全然言っても聞いてくれないし……。あ、そうだわ!」  ひらめいた! と明るい表情になる職員。  嫌な予感がしたが、清掃員は彼女を止める術を持ち合わせてはいなかった。 「本日より、薔薇十字教団クリーン週間としましょう!」 「……それはどういう内容なんだい?」 「きれいにするんです!」 「……そうかい」  別に教団を巻き込む必要はないんじゃないか? という疑問を口にすることはできず。勝手にやってくれ、なんて野暮なことも言えず。  相談してきますね! と意気揚々と走っていく女性職員の背中を、ただ見送るしかできなかった。
迷い猫探し
簡単|すべて

帰還 2018-04-07

参加人数 3/8人 oz GM
「浄化師さん、ココがいなくなっちゃったの。おねがいです、ココを見つけてください」  10歳ぐらいの女の子が泣くのをこらえながら、浄化師に必死に頼み込む。  ここは教皇国家アークソサエティから西部に向かってある大都市エトワール。  エトワールの中心街にあるリュミエールストリートから少し外れた市民街。  君たちは市民からの願いで「迷い猫探し」のために教団から派遣された。  愛猫がいなくなり、依頼者の女の子はずいぶんと落ち込んでいるようだ。女の子の気持ちを代弁するようにその日は小雨が降り続けていた。  女の子の着ているワンピースは一般市民が着ている服よりも上等なものなので、両親は裕福な商人なのかもしれない。  落ち込む女の子を優しく宥めながら詳しい話を聞くと、女の子は愛猫のために覚束ない説明ながら現状を話してくれた。  話をまとめてみると、飼い猫は二週間ほど前にいなくなったそうで、家の周辺を両親と一緒に探してみたが、見つからなかったそうだ。  近所の住民にも話を聞いてみると、ほとんどの人が「見かけていない」と答える中で、三軒隣のおばさんから、買い物帰りにリュミエールストリートの方角に歩いていたのを見た、との目撃情報を得る。  すぐさま女の子は探しに行こうとするが、両親に一人では行かせられないと反対される。両親も仕事が忙しく、これ以上猫探しに時間を割いている暇はない。  エトワールの治安は悪くはないが、女の子一人で出歩かせるのは両親にとっても不安だったのだろう。  困った女の子の両親は、最後の手段として教団に依頼した、というのがこれまでの経緯だった。 「ココは黒い猫さんで、目の色はグリーンなの。とても人懐っこくて、チーズが大好物なんだよ。さわるとね、ふわふわした毛並みで幸せな気持ちになれるんだ」  飼い猫のことが大好きなのだろう。自慢するように一生懸命に猫について話す女の子。 「わたしがあげた赤い首輪をしているの・・・ココ、どこいっちゃたんだろう。わたしのこと嫌いになっちゃったのかな・・・?」  だんだんと女の子の声が消え入りそうになる。 「わたしも色んなところ見て回ったんだけど、全然見つからなくて・・・」  スカートの裾をぎゅっと握りしめると、聞き取れるか取れないかぐらいの小さな声で「ココに会いたい」と呟く。  君たちは女の子に必ず見つけると約束し、猫探しに向かった。  危険性はほとんどない任務だが、市民の一人である女の子を笑顔にするのも浄化師の仕事だ。健闘を祈る!
冬森に潰えた絆
普通|すべて

帰還 2018-04-06

参加人数 4/8人 狸穴醒 GM
●ある少年の死  走る。走る。  針葉樹の森の中を、少女は走る。  雪だまりで足がもつれる。息が苦しい。心臓が破裂しそうだ。それでも走り続ける。  枝から雪の塊が落下し、少女のすぐ後ろを塞ぐ。  厚手のコートはあちこちに鉤裂きができている。冬枯れの小枝が頬をかすり、切り傷をつくった。  柊の茂みを突き抜けると、曲がりくねった山道に出た。この先に、村がある。  転がるように山道を駆け下りながら、少女は振り向いた。 (――お兄ちゃん)  本当は今からでも戻りたかった。だけど。  ついさっきの出来事が、少女の脳裏に蘇る。 『アンネ、先に行け!』  恐怖にすくんだ少女を背にかばい、少年が叫ぶ。  凍った池の向こう、針葉樹の陰に覗くのは――異形の、獣。自然の生物にはあり得ない触手が、揺れる。  すぐに悟った。ソレが、決して相容れない存在であることを。  少女に背を向けたまま、少年が言う。 『村の人たちにベリアルが出たことを伝えて、浄化師を呼んでもらえ! こいつらは普通の人間じゃ太刀打ちできない』 『お兄ちゃんは、っ、どうするの?』  震えながらも問い返すと、少年はきっぱりと答えた。 『俺はここに残る』 『そんな、だめだよ!』  普通の人間では対抗できないと自分で言ったくせに。けれど少年は首を横に振る。 『俺もこいつらを足止めしたら追いかけるから』 『でも!』 『いいから行け! 早く!』  ちっぽけな狩猟用のナイフを手にして少年は――少女のたったひとりの兄は、一瞬だけこちらを見て、微笑んだ。 『転ぶなよ』  溢れそうな涙を堪え、少女は走る。絶望が胸を侵食していく。 (あたしのせいだ。あたしが、凍った池を見たいなんて言ったから)  森が途切れ、村外れの小屋と雪をかぶった畑が見えてきた。村にたどりついた、けれど少女の胸中は安堵からは程遠い。  (ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……!)  走る。走る。  ベリアルが出たことを村へ伝えてほしいという、兄の最後の頼みを果たすため。  折れたナイフを取り落とし、少年は針葉樹に背を預けた。 (あー……もう駄目だな、こりゃ)  雪に赤が散っていた。  脇腹と左脚、右腕。それ以外にも数え切れない箇所。全身の傷から、血と生命とが流れ出ている。  コートを着ているのに、さっきからおそろしく寒かった。  短い人生の終わりに瀕して、それでも少年は、かすかに笑った。 (父さん、母さん。俺、ちゃんとアンネのこと、護ったぜ)  ――こんなに早く、そっちに行くとは思ってなかったけど。  両親を流行り病で失って、妹とふたりで生きてきた。妹には人並みに食事をして、まともな服を着て、笑っていてほしかったから、村の雑用でも何でもこなした。  自分がいなくなれば、妹はひとりだ。それが気がかりだけれど、アンネは年齢のわりにしっかりしている。村の人たちだって親切だ。きっと大丈夫だろう。  血に半ば塞がれた視界の中、獣の影が近づいてくる。  狼に似ているが、その輪郭は無茶苦茶に生えた触手のせいで元の姿を失っている。  ベリアル――アシッドに侵されて異形と化した、生き物の成れの果て。  まさかこんな村の近くで遭遇するとは思っていなかった。運が悪かったのだろう。  だけど少年は満足だった。できる限りのことはやったと、そう思う。 (元気でな、アンネ)  目を閉じる。  もう寒くは、なかった。  それを待っていたかのように、少年の身体を、幾本もの触手が刺し貫いた。 ●指令 「よく来てくださいました、浄化師の皆さん」  ソレイユ地区にある、雪深い小さな村。  指令に応じてやってきた浄化師たちを、老いた村長が出迎えた。 「皆さんにお願いしたいのは、東の森に出現したベリアルの討伐です。薪取りに森へ入った村人がひとり、すでに犠牲になっておりまして……」  浄化師たちは居間に招き入れられ、村長から詳しい内容を聞くこととなった。村長夫人が温かいお茶を淹れてくれる。  その、部屋の隅。  暖炉の脇に、12、3歳くらいの少女がじっと座っていた。少女の表情は、ひどく暗い。  不思議に思って浄化師のひとりが尋ねると、村長は沈痛な面持ちをした。 「あの子はベリアルの犠牲になった村人の妹で、アンネといいます。仲の良い兄妹だったんですが……一緒に森へ入って、兄のカイだけが」  村長夫人が言い添える。 「誰もいない家に帰すのはしのびなくてねぇ。うちへ連れてきたんですけれど、ずっとあの様子で」  アンネはほとんど無表情で虚空を見つめているだけだが、ときおり痛みに耐えるように唇を噛む。抱えた膝に、小さな爪が食い込んでいた。 「浄化師の皆さんはご存知でしょうが、ベリアルに喰われた者は、魂を囚えられてしまうのだとか」  村長は深く頭を下げた。 「――どうか、カイの魂を解放してやってください」
魔術学院の一日
とても簡単|すべて

帰還 2018-04-06

参加人数 6/8人 oz GM
 教皇国家アークソサエティに本部を置く薔薇十字教団。  教団本部には時計塔を中心に浄化師たちの生活拠点である寮をはじめとし、病棟や魔術学院などの重要な設備が設けられている。  時計塔から西部に向かってある魔術学院――通称「カレッジ」は魔術知識と読み書きを習う学校であると同時に図書館としての役目も担っている。  教団に存在する魔術について記された魔導書から一般書籍まで保管されている。浄化師はフリーパスで入館でき、そこで魔術や一般教養を学んだり、読書をしたりするために利用されている。  浄化師になりたての喰人と祓魔人が、魔術学院を訪れた。  目的は人によって様々だろう。  これから教団で活動していく上で必要な知識を得るために来たものもいれば、暇をつぶしにここにやって来たものもいる筈だ。  魔術学院で貪欲に魔術の知識を得ようと行動するのもいいし、これを機に一般的な教養と知識を学ぶのもいいだろう。  過去の事件データを読み解くことで、先人の知恵を学び、敵の情報を得たりもできるだろう。あるいは過去に巻き込まれた事件の記憶を振り返ることもあるかもしれない。  息抜きに娯楽小説を読書してゆっくりと過ごすのもいい。あるいはパートナーとの仲を深めるために1階にあるカフェテラスで談笑してみるのもよい。  どのように過ごすかは君たちの自由だ。有意義な一日になることを祈る。
今宵、エクリヴァン観劇場で
とても簡単|女x男

帰還 2018-04-06

参加人数 5/8人 terusan GM
草木もゆる春。世界を股にかけ若者に大人気の旅の劇団「梟の眼(まなこ)団」が四年振りに教皇国家アークソサエティ「ブリテン」のエクリヴァン観劇場に帰ってくる。 この春の一大イベントで、国中のファンが注目する待ちに待った公演だ。 もちろん公演初日のチケットはプラチナチケットとなった。 エクリヴァン観劇場の魅力は、何といっても本格的な劇場にはない、屋外劇場であるがゆえの気軽さと公演を盛り上げる劇場周囲のフェスティバルさながらの賑やかさだ。 公演中、劇場の周囲はたくさんの屋台が並び、花火や幻燈など梟の眼団の舞台以外のお楽しみもたくさん催される予定で、カップルのデートプランとしてはこの上ないイベントになるだろう。 それに今度の公演の演目は「幻のラブロマンス」と言われる「ポーポロの紅い薔薇」。数々の苦難と周囲の妨害を乗り越え、ブリテンの貴族と城下町の針子が身分を超えた真実の愛を貫く物語。 あなたたちは、このプラチナチケットをペアで入手する幸運を得た。 絆をさらに深めるのにもってこいのこのデートプランを、あなたたちは互いにより充実したものにしたいと思っている。 屋台に、数々の余興に、そして感動的な舞台。劇場周辺のお祭りムードは否応無しに盛り上がる。 そんなシチュエーションの中、あなたたちは楽しい思い出を作り、観劇の感動を共有します。 あなたたちの絆はどこまで深まり、恋はどこまで進展するのか? 二人に恋の女神のご加護を! 健闘を祈ります。
機嫌、直してよ
普通|女x男

帰還 2018-04-06

参加人数 4/8人 北織 翼 GM
 教皇国家アークソサエティ南部の大都市・ルネサンス。  賑やかな商店街の一角に佇むカフェで、あなたはパートナーと向かい合って座っています。  黙々とカップを口元に運ぶパートナーはだんまりを決め込み、対するあなたはパートナーとは対照的で注文した飲み物が全く喉を通らない、そんな状況です。 「なぁチャコちゃん、頼むから機嫌直してくれよぉ……」 「あぁ? テメェが明日の朝食用に取っておいた卵を全部食ったのが悪ぃんだろーが! 朝から晩まで筋肉の事しか考えねぇこの筋肉バカがっ! 機嫌直して欲しけりゃ食った卵全部吐き出しやがれっ!」  ついたてで仕切られた隣のテーブルからは、どこかしゅんとした様子の男性の声とドスの聞いた女性(たぶん、きっと)の声が聞こえます。 (ああ……何か次元は違うみたいだけれど、似たような状況だ……)  反対隣からも…… 「マヤ! ワタシがいるのにあんな女と馴れ馴れしくして、許せないワヨ!」 「違うんだカイヨ、彼女とは何もないって!」  と、修羅場感満載の口論が。 (ああ……反対側も、事情は違えど状況は近いかも……)  あなたは溜め息を吐きました。  そう、あなたも今まさに、不機嫌なパートナーを前にして「機嫌を直してくれ」と言いたい、そんな状況なのです。 「まあまあアキラン、そんなに怒らないで? ケンスッケだって、悪気があった訳じゃないんでしょ? 二人とも、晴れて浄化師になれたんだから、明日の卵より今日の夕飯をいかに美味しく食べるかを考えなさいな」  どうやら、隣のテーブルには見るに見かねた教団員の女性が仲裁役としてついてきていたようです。  ていうか……こいつらも自分たちと同じ浄化師なのか、マジかっ! 「カイヨ、君が見た女性は教団に助けを求めてきた村の村長さんの娘だよ。ベリアルを倒した礼を言いに来てくれただけで、君にもよろしくって言ってたよ。嘘だと思うなら、教団員に確認すればいいさ」  反対側も反対側で……浄化師かっ!!  って、そんな事より面前のパートナーの機嫌をどうするかが問題なのですが……。  ……  ………… 「……分かった。こっちもつい腹を立ててごめん。もう行こう? 今日は美味しい夕飯を食べよう」  どうやらあなたのパートナーは、機嫌を直してくれたようです。  あなたもようやく安堵の笑みを浮かべ、パートナーと手を繋ぎカフェを出ました。  空はすっかり橙に染まり、もうすぐ夜の帳も降りるでしょう。  パートナーとの楽しく美味しい夕飯の時は、すぐそこです……。  さて、あなたのパートナーは一体何が原因で不機嫌になっていたのでしょうね?  そして、何をきっかけに機嫌を直してくれたのでしょう?  こうした些細な日常も、浄化師として歩み出したあなたたちの軌跡を彩る素敵な思い出の一部になる筈です……。
水上マーケットのデート
簡単|すべて

帰還 2018-04-06

参加人数 3/8人 昂祈 GM
 「教皇国家アークソサエティ」ルネサンス内のヴェネリアに水上マーケットがあるのはご存知だろうか?  そこは船で巡っていく市場であり、それ自体が珍しいというのもあるが時に珍しい品が置いてある事でも知られている。  世界各地から隊商が運んでくる品の中には、骨董品のような物もあるし、希少な物もある。  一つの国の色に染まらない水上の市場は、船で巡るという性質上、賑やかでありながら緩やかな空気を持っている。  デートを兼ねて訪ねてみたら、何か珍しい物があったり、相手の琴線に触れるプレゼントに向く物が見つかるかもしれない。  ちなみに水上マーケットなだけあって、内部には海産物を食べられる食堂が沢山あるが、それと同時に世界各地の美味しい物も楽しめる。  歩き疲れたりしたら、それらの食堂で何か食べて休憩するのも良いのではないだろうか。
あなたを描く
とても簡単|女x男

帰還 2018-04-05

参加人数 4/8人 木口アキノ GM
 ある日の昼下がり、とある浄化師の2人が教皇国家アークソサエティのエトワール地区にあるピットーレ美術館を訪れていた。  喰人が最近気になっている新人画家の絵が期間限定で展示されていると知ったからだ。  心地良い静寂に包まれた館内を、目当ての絵画だけではなくひと通り鑑賞した2人は、出入口付近に設けられた特別催事場に、「絵画講座」という小さな看板が立てられているのに気が付いた。看板の端には、ご自由にご参加ください、と小さく書かれている。  木製パネルが架けられたイーゼルが並んでおり、一般参加者とみられる人々が数人、絵画用木炭を手にパネルに向かっていた。  イーゼルの間を歩き参加者にアドバイスをしている青年は……例の、最近気になっている新人画家その人だった。  講座の様子を見ていた喰人の視線に気づいた新人画家は、顔をあげるとにっこり微笑み、 「あなたたちもいかがですか。今日は人物の顔の描き方について教えています。お互いをモデルに、絵を描きあってみませんか」  と声をかけてくれる。  お互いの顔を描く。  喰人と祓魔人は思わず顔を見合わせた。 「面白そう」 「やってみようか」  お互いにイーゼル越しに向き合って、木炭を手に握る。  相手の顔をこんなにじっくり観察するのは初めてかもしれない。  綺麗な二重。長い睫毛。  よく見たら、この人前髪の一部が少しくせ毛だ。思わずくすっと笑みがこぼれる。  新人画家から時折アドバイスを受けて、2人はそれぞれ木製パネルに描いた木炭画を完成させる。  出来上がった絵を、お互いに見て。 「あなた、意外と器用なのね」 「君って……ええと、独特のセンスがあるね」 「……いいのよ、無理に褒めてくれなくっても……」  そんなやりとりに新人画家が笑う。  どちらも、相手をよく見て描いた素敵な絵だと言って。  そして2人は画家にお礼を言って、美術館を後にした。  彼の目が好きだとか。  彼女の唇の形が魅力的だとか。  彼の真剣な表情が少しカッコ良かったりとか。  彼女が実は絵が苦手だったりとか。  今日は、初めて知ったことがたくさん。  お互いのことを、昨日よりよく知ることができた、そんな一日だった。
契約の日
とても簡単|すべて

帰還 2018-04-05

参加人数 8/8人 久木 士 GM
 ――これは、世界のはじまりの物語。  そして、ふたりの紡ぐ物語に捧げる、はじまりの歌。  あなたの生きる世界、アースガルズ。その世界はいま、大いなる脅威に晒されている。  だがその発端となる事件は、ほんの小さな出来事だった。  はじめに神は、世界を創り給うた。  ヒューマンは他の生物や種族と絆を深め、愛を育み、それによってライカンスロープやエレメンツ、デモンなどの種族が誕生した。  しかしヒューマンの持つ強い正の感情は、同時に強い負の感情――憎しみや悲しみをも生み出していた。  あるとき、ヴァンピール達を「悪魔の使いである」とする一部の者達が、ヴァンピールに対する迫害を開始した。 これにより彼らは多くの同胞の命を失ったが、彼らは迫害から逃れるために常闇の国『シャドウ・ガルテン』を作り上げると、他種族の暮らす住処から去った。 当初ヴァンピールにのみ向けられていた差別意識は、被差別種族の消失によって矛先を失い、徐々に「異質な存在」を攻撃する事に目的が変化していくこととなる。こうして小さな火種は瞬く間に燃え広がり、各地で燻っていた炎は遂にアースガルズ全土を焼く戦争へと発展した。これがのちに『ロスト・アモール』と呼ばれることとなる、全てのはじまりの事件だ。  ロスト・アモールによる戦火の拡大は、世界の大きさに比べるとあまりにも速かった。大戦はヒューマンが他種族との間に築き上げた絆と愛とを失わせ、神の創造し給うた美しきアースガルズは死と憎しみで満たされた。  こうして人間はいつ終わるとも知れぬ戦乱に明け暮れていたが、その血と炎の日々は唐突に崩れ去った。突如として世界に出現した『希望の塔』から『ヨハネの使徒』が、そして『アシッド』から『ベリアル』が生み出されることによって。  ヨハネの使徒は、人間のみを狩るために存在する異形の怪物だ。この怪物は人間の所業に怒った神が、それらを滅ぼすために希望の塔より遣わしたと考えられている。ヨハネの使徒が天使を連想させるような白い姿をしていることが多いのも、この説の信憑性を高めている一因だろう。この怪物が行動する理由は、たった一つ。それらは生ある人間を、種族を問わず殺戮することのみを目的としている。  いっぽうベリアルは、生きとし生けるものを殺し、その魂を喰らうことを目的としている魔物だ。それらは怒れる神が地上に降らせた雨『アシッドレイン』によって生み出された瘴気、アシッドの影響で発生している。この霧状の瘴気を少しでも吸い込むと、魂は拘束されてこの世に留まり続け、肉体はベリアルそのものへと変化する。そうして生み出される怪物は、他の魂を喰らうことによって、天に還れぬ哀れな魂を生み出し続けるのだ。  ヨハネの使徒とベリアルが引き起こした世界的な大混乱は、終末の日の意味を込めて『ラグナロク』と呼ばれ、世界に大戦を招いた人間に与えられた神の裁きとして畏れられた。  このラグナロクを受け、「戦いを続ければ全ての種族や生物が滅びる」と気付いたヒューマンは和平を強く主張。それに同意した各国は和解し、ロスト・アモールはようやく終結を見た。それまで各国が軍事費に注ぎ込んでいた巨額の資金は全て大戦からの復興等に回されるようになり、これまで争っていた者たちの多くも、手を取り合って世界の脅威へ立ち向かうようになった。  そして大戦終結後まもなく、魔術の開祖アレイスター・エリファスによって、教皇国家アークソサエティに薔薇十字教団が設立される。この組織の最大の存在理由は、ラグナロクを引き起こしたヨハネの使徒とベリアルの根絶を主軸とすること。  ――そう、この薔薇十字教団こそが、あなたたち『浄化師』の所属する『教団』なのだ。  あなたたち浄化師は、神が人間に与え給うた滅びの運命に抗うため、教団から出される指令を受けて様々な事件を解決する存在だ。ベリアルに囚われた魂を開放し、天へ還すことができるのはあなたたちだけであり、ヨハネの使徒をより安全に討伐することができるのもまた、あなたたちだけなのだ。  さて、『浄化師(じょうかし)』または『エクソシスト』という呼称が、『喰人(くいびと)』と『祓魔人(ふつまびと)』のペアを指すものだということは、この世界の人々には広く知られている。しかしここでは念のため、重ねて説明をしなくてはいけないだろう。  喰人はグールとも呼ばれる、アシッドによる感染に高い抵抗力を持つ者だ。彼らは類稀な魔術の才能と魔力を持つが、その膨大な魔力ゆえにヨハネの使徒やベリアルから狙われることが多い。また魔力の生産が消費に追い付かなかった結果、脅威に晒されなくとも短命に終わることが多い存在だ。だから彼らは周囲の人々や自分自身を守るため、薔薇十字教団に所属する。  いっぽう祓魔人は、ソーサラーとも呼ばれている。これは常人以上の魔力を生成・蓄積できる特異体質の者を指して呼ぶための言葉で、彼らも喰人と同じく、魔力の消費が生産に追いつかなかったために短命で終わることの多い存在だ。そのため彼らもまた、自分自身を守るために教団に所属する。  だが祓魔人には、浄化師として戦うために重要なものが一つだけ欠けている。  それがアシッドへの抵抗力だ。彼らはそれを補うために、喰人と契約を行う必要がある。  また、契約をすることで、喰人と祓魔人の魔力生産力も安定し、寿命が一般的な種族に順ずることになる。  ――そして、教皇国家アークソサエティ、薔薇十字教団本部前。あなたたち二人は、浄化師となるためにこの場所を訪れた。  あなたたちが浄化師となるのは、ふたりが生きていくうえで必要だからだ。しかし戦いに身を投じる決意や、契約に至るまでの過程は、浄化師によって異なるだろう。契約は定められた手順に従って行われるが、ふたりが浄化師となるためには、二つの適性判断に合格しなければならない。  一つ目の判断は、喰人の血液から抗体を作成するにあたり、祓魔人の体質が適合するかどうか。二つ目は、魔力量と魔力の性質が、互いに悪影響を及ぼさないかどうか。そしてこれらの数値を総合して算出される『同調率』が、規定以上になるかどうか。この同調率が一定以上でなければ、あなたたち二人のペアが浄化師となることはできない。  今、あなたたち二人は、どんな想いを胸に抱いているだろうか。それは契約への不安か、絶対的な自信か、あるいはその他の様々な感情だろうか。  そして二人が今日この場所に至るまでの道のりや理由は、どのようなものだったのだろうか。それは世界に生きる人々への限りない愛情か、世界を滅ぼすものへの強い怒りや憎しみか、あるいは言葉に尽くせない想いの数々があるのだろうか。  ふたりの周りを、風が吹き抜けた。あなたたちはそれを合図に、どちらからともなく歩き始める。    ――これは、あなたたちが浄化師になるための大切な儀式。ふたりを繋ぐ血の契約だ。  あなたたちの歩む道の先に、どうか光がありますように。
春待ちの雪景色
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帰還 2018-04-04

参加人数 2/8人 七橋あずま GM
 春の目覚めが感じられる季節。  しかし、冬の名残も至る所に。  ――教皇国家アークソサエティ、ソレイユ地区。  観光名所としても有名なアールプリス山脈は常に白い雪に覆われているが、この時期にはより色濃い白が残る。山の麓では春の到来を前にして冬を楽しむ人々がいた。 「ちくしょー!当てやがったなー!」 「へへっ、悔しかったらやり返してみろよっ」  無邪気に雪合戦を楽しむ子供たち。あらかじめ低い雪の壁が作られており、壁に隠れてやり過ごす子もいれば、壁などお構いなしの子もいる。雪玉を当てたり当てられたり、一喜一憂しながらはしゃいでいた。  別の場所では、もう少し年上の子供の姿や、大人の姿も混じっている。実は、休日にはチーム対抗の雪合戦が行われる。勝ち抜いたチームには賞品が出るというのだから、その練習かもしれない。 「これでいいかなあ?」 「もう少し大きい方が良いかもしれないわね」 「そうだな。もう一度、パパと転がそうか」 「うん!」  賑やかな場所から少し離れると、今度は雪だるまを作る家族の姿が。体はすでに出来上がっているようで、頭のほうを作っている最中だ。  周囲には完成した雪だるまがいくつも並んでおり、なかには雪だるまと言うには些か手の込んだものもある。何故かというと、ここでは雪だるまコンテストが開催されているからだ。  定められた期間中に作られたモノの中から、いくつか受賞作が選出される。そして、こちらも賞品が用意されているようだ。  このように、冬に雪を楽しみたいという人もいれば、やはり冬は暖かい場所が一番だという人もいるだろう。 「んー美味しい!」 「幸せって、こういうことを言うのかも~!」  現に、コテージの中で若い女性の2人組が料理に舌鼓をうっていた。この地区の特産といえば、乳製品。そして寒いときに食べたくなるといえば――そう、チーズフォンデュだ。  ここのコテージではソレイユ産のチーズを使ってフォンデュを楽しむことができる。パンやソーセージ、基本的な野菜といった定番の具材は用意されているが、それ以外は持ち込みも可能だ。  暖かい室内での美味しいチーズフォンデュ。観光と共に、これを目当てに訪れる人も多いという。みな一様に、ひと口頬張れば、その顔は美味しさに緩んでいた。  これら以外にも、冬の雪原の楽しみ方は様々だ。  幸いにも、あなた方が訪れるその日はイベントの開催日。  春が来る前にいま一度、冬を満喫してみるのはいかがだろうか。
幸せの綿毛を探して
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帰還 2018-04-04

参加人数 3/8人 しらぎく GM
 アークソサエティの東南にあるソレイユ地区にはチェルシー植物園がある。  ここでは春を迎えタンポポやクロッカス、スノードロップなどが可憐に咲き、それらの黄色や白、紫などが緑の大地に可憐な色を添え、訪れた人を出迎えてくれており、暖かく柔らかな風が運ぶ春の花の甘やかな香りでいっぱいだ。  胸いっぱいに息を吸い込むと、体の中まで花が咲いたようにウキウキしてくる。 「本当にいるのかなぁ」  だがそんなウキウキも飛んでいきそうな声でパートナーが呟いた。振り返ると、渋い顔で入り口でもらったパンフレットを見ているパートナーの姿が見えた。 「さっきすれ違ったカップル、いない~ってぼやいていたよ」 「う……そうなの?でもさ、火のないところには煙は立たないっていうじゃん?」 た。  実は今、アークソサエティではこの植物園にまつわるある噂が広まっていた。それは、見ると幸運が訪れるという生物ケセランパセランが目撃されたというものだ。契約したばかりの浄化師二人は日々の訓練の息抜きにこの噂を確かめようとやってきたのだ。  チェルシー植物園には珍しい植物がたくさんあり、普段から研究者や愛好家が訪れている。そこにいまはケセランパセランを探しに来た観光客も加わってたいへん賑やかであり、さらに今日は薬学の学会もちょうど開かれる日であったようでたいへん混雑している。その人混み具合にもう疲れたと言わんばかりにパートナーはため息をついた。 「それに、こんなに人がいたらはぐれちゃいそう」 「そうだね。はぐれないようにしないとね」  ここには美しい花のみを集めた美花の園、毒を持っていたり怪しげな見た目の植物を集めたミステリアスな毒花の園、薬草を集めた薬草の園の三つの花園がある。その中のどれかにケセランパセランがいるのではないかと、咲き誇る花を愛でつつ、白い綿毛のような幸運の生物をここを訪れた人々は探しているのである。 「とにかくさ、せっかく来たんだし色々見ながら回ってみようよ。宝探しみたいな感じでさ!」 「宝探し……か」  そういうと、パートナーは気持ちを切り替えるようにうんと伸びをした。 「そうだね。せっかくだし。じゃあどこから回ろうか」  浄化師二人はパンフレットを一緒に覗き、計画を立て始めた。  さあ、幸運をもたらす白い綿毛の生物ケセランパセランを探しに行こう。