《悲嘆の先導者》フォー・トゥーナ Lv 41 女性 ヒューマン / 墓守


司令部は、国民から寄せられた依頼や、教団からの命令を、指令として発令してるよ。
基本的には、エクソシストの自由に指令を選んで問題無いから、好きな指令を受けると良いかな。
けど、選んだからには、戦闘はもちろん遊びでも真剣に。良い報告を待ってる。
時々、緊急指令が発令されることもあるから、教団の情報は見逃さないようにね。


【友好】鏡の中に映るのは
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帰還 2019-06-14

参加人数 4/8人 あいきとうか GM
 東方島国ニホンの北東部。  イズミ藩の氏神ビャクレンを祭る神社の長い石段を、小柄な少年が息を切らして上っていた。 「ひぃ……、はぁ……、な、ながい……」  頬を赤く染め、少年は視線を上げる。朱塗りの鳥居まであと半分といったところだ。  呼吸を整える間も惜しんで、彼はまた足を動かす。  その細い両腕は、白い風呂敷に包まれた荷物を抱えていた。横幅は少年の小柄な体より広く、縦も長い。ずっしりとした重さが、近ごろこもりがちだった少年の体力を余計に奪う。  だが置いていくわけにもいかない。 「ようやく、ビャクレン様にお返しできるの、だから」  この島国でも八百万の神々がお隠れになられて、どれほどが過ぎただろう。  無力な妖怪でしかなかったクモトは、ビャクレンが姿を消す前にこの荷物を預けられていた。  ――いずれそれが必要となる。そのときまで、クモトカガミを守ってくれないか?  八百万の神の一柱は、少し疲れた顔でクモトにそう言った。  突然のことに理解が追いつかず、呆然としたまま頷いた幼い妖怪に美しき神は微笑んで、道具と、名を与えてくれたのだ。  イズミ藩の氏神、ビャクレンの宝であるクモトカガミを守る妖怪。ゆえにクモト。  今朝、クモトは夢の中でビャクレンに会った。  鏡を持ってきてほしい、と言う神に力いっぱい頷いて、起きてすぐにクモトカガミを持って走ってきたのだ。  時はきた。  具体的にどういうことなのか、なにが起こっているのか、クモトはよく知らないが、とにかくビャクレンが再び現れ、鏡を欲している。 「つい、たぁ!」  倒れそうになりながら鳥居をくぐる。すぐ目の前に、小さいながらも立派な拝殿があった。  目指すのはその奥、しめ縄で囲まれた白蘞だ。ビャクレンと同じ、独特の匂いがする。 「あっ」  不意に石畳のわずかな隙間に足をとられた。素足であるため、とても痛い。  だが、痛覚が働くより先にクモトの体が前のめりになっていた。腕に抱えていたものが飛び出していく。視界が急に変わり、顔から倒れる。 「ひぅっ!?」  ごん、と額を打った。痛い。  がしゃん、と嫌な音がした。血の気が引く。 「な、あ、あ……」  慌てて体を起こしたクモトが見たのは、風呂敷から飛び出して割れたクモトカガミだった。  絶句して震えるクモトの背後から、足音が聞こえてくる。  ぎこちない動きで振り返った妖怪が見たのは、見慣れない衣装に身を包んだ人々だった。  ふと、思い出す。  そういえば彼らは浄化師といって、最近、よく見かけるようになった。どうやら人助けをしているらしい。 「だず……っ、だずげで、ぐだざ……っ」  荒れ狂う感情に涙が出てきた。心の中で何度もビャクレンに謝りながら、妖怪は震える手を人間たちに伸ばす。  クモトカガミの破片は石畳の上だけでなく、その左右の玉砂利や、拝殿の段の前、猫の額ほどの草むらにまで散ったらしい。  クモトカガミは神宝。たとえ粉微塵になっても破片が揃っていれば元に戻るようだが――果たして。
終焉の蠢動
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帰還 2019-06-13

参加人数 4/8人 春夏秋冬 GM
 教皇国家アークソサエティの、とある郊外。  そこで終焉の夜明け団が暗躍していた。 「陣の構築を急げ」  リーダー格の男の命に従い、魔方陣を起動していた終焉の夜明け団信者達は行動を早める。  四方を囲むようにして起動させている魔方陣は、直径10mほど。  魔方陣の中には、呪いと化した幽霊たちが10人ほどいた。  薄らと身体を透けさせている幽霊たちは、輪郭がとろけたようにおぼろげだ。  辛うじて分かる輪郭からすれば、大人だけでなく子供もいる。  恐らく男女や種族もバラバラで、見ただけでは統一感は無い。  だが、唯一ひとつ。  共通しているのは怨念だった。 「憎……ぃぃぃ……み……ぃ……」  途切れることなく、幽霊たちは呪詛の言葉を吐き出していた。  それを耳にしながら、淡々と終焉の夜明け団信者達は作業を続けている。  今、彼らが居るのは廃墟の前。  ロスト・アモールの時に建てられたという石造りの屋敷は、当時の面影など見る影もなく崩れ去っている。  崩れた屋敷の前には広場があり、そこで終焉の夜明け団信者達は魔方陣を起動していた。  しばし時が過ぎ、魔方陣が安定した頃、リーダー格の男に副官役の男が声を掛ける。 「あとは自動的に、魔方陣は効果を発動する筈です」 「そうか」  言葉少なに返すリーダー格の男に、副官役の男は少し迷うような間を空けて問い掛けた。 「……ひとつ、質問をしても構いませんか?」 「なんだ」 「この魔方陣は、なんなんです? 指示された通りに作業を行いましたが、これで何が起こるんです?」 「知らん」 「……それは、一体……」 「そのままの意味だ。この場に訪れ、ここに居た幽霊を魔方陣の中に入れて発動させろ。それが上から受けた命令だ。それ以外は聞いていない」 「……」 「不満か? 自分達が何をしているのか知らされていないことが」  リーダー格の問い掛けに、副官の男は返す。 「不満、というより、不安です。何をしているのかが分からないのは」 「そうか……なら、その気持ちは心の中で飲み込んでおけ。殺されるぞ」 「……」  淡々としたリーダー格の言葉に、それが真実なのだと理解させられ、副官の男は黙る。  そこにリーダー格の男は、静かに返した。 「ここだけでなく、ニホンやサンディスタムでも、我らが同士の活動は活発になるそうだ。それら以外の国でも、動きを進めるらしい。おそらく、噂にある『計画』の段階が進んだのだろう」 「それは、今ここで我らが行っていることも関係していると?」 「……分からん。だが、無関係とも思えん。重要視されている気配もないから、取るに足らん枝葉の部分かもしれん。それでも、我らは命じられたことを遂行するのみだ。不満か?」 「いえ……私が不安だったのは、自分のしていることに意味がないことです。どのような意味があるのかが分からなくとも、意味があるのなら構いません」 「そうか……なら、早く終わらせるぞ」 「はい」  副官の男が静かに頷いた時だった。  能天気な声が響いたのは。 「そこまでですよー!」  唐突に頭上から聞こえてきた声に、その場に居た者達は視線を向ける。  視線の先には、半ば崩れた屋敷の屋根に乗る、1人の男が。  なんというか、胡散臭い。  黒のマントを羽織った、タキシード姿の男。  口元は、ほっそりとしたカイゼル髭をしている。  そして頭にはシルクハットといった出で立ち。  サーカスの司会か手品師を思わせる。 「何者だ! 貴様!」 「ははははははっ!」  終焉の夜明け団の誰何の声に、カイゼル髭の男は高笑いしたあと返した。 「笑止でーす! このメフィスト! 貴方達のような輩に答える名など持ちませーん!」  答えてんじゃねぇか。  そんな突っ込みを入れるよりも早く、メフィストと名乗った男は屋根から跳んだ。 「トウっ! でーす!」  屋根から跳び出すと、空中で回転しながら――  ごめしゃっ!  思いっきり地面に激突した。 「ああああああっ! 足っ、あしがああああっ! いたいでーす!」  痛みのせいか、ごろんごろん転がるメフィスト。  あまりのことに固まる終焉の夜明け団。  その状況で、いち早く反応したのは、リーダー格の男だった。 「伏兵だ!」  即座に戦闘態勢を取るリーダー格の男。  しかしその時には既に、2人ほど背後から背中を刺され地面に倒れていた。 「ちっ!」  リーダー格の男は舌打ちをしながら、炎弾の魔術を発動。  高速で撃ち出す。  狙いは、部下を背後から刺した仮面の男。  連続して炎弾を撃ち出すが、その全てを避けられる。 (俺1人では仕留めきれんか)  炎弾を避けられたリーダー格の男は、素早く判断すると部下に指示を飛ばす。 「魔方陣は一時放棄! 隊列を組め!」  リーダー格の男の声に従い、部下の終焉の夜明け団は周囲に集まると隊列を組む。  その間に、仮面の男はメフィストの傍に移動し、声を掛けた。 「とっとと起きろ。あと援護しろ」 「オッケーでーす!」  転げまわっていたメフィストは、仮面の男の言葉にすくっと立ち上がる。  そんなメフィストに、仮面の男はげんなりした声で言った。 「……とりあえず、足を治せ。変な方向に曲がってるぞ」 「おう、これはソーリーね!」  魔法で回復するメフィスト。 「完全回復でーす!」 「なら、奴らを仕留めるぞ」 「オッケーでーす。でも、どうせなら助っ人が欲しい所ですねー。間に合わなかったのですか?」  メフィストの問い掛けに仮面の男は、終焉の夜明け団達の背後に視線を向け返した。 「指令が出るように手配はした。こちらの身元がバレないよう、複数の経路を経由したから、どうなるかと思ったが……引き寄せるのは成功したようだ」  仮面の男の言葉に促されるようにして、メフィストは視線を向ける。  視線の先には、終焉の夜明け団達の背後から現れた浄化師達の姿が見えました。  この浄化師がアナタ達です。  アナタ達は、廃墟に現れる幽霊を開放して欲しい、という依頼を受けた教団から指令を受け、この場に訪れています。  この場に訪れる少し前に、戦闘音に気付いたアナタ達は走って訪れると、終焉の夜明け団とメフィスト達が対峙している状況に出くわしたのです。  この状況でアナタ達は、どう動きますか?
(黒々)舞踏会に参加しよう
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帰還 2019-06-06

参加人数 4/8人 春夏秋冬 GM
 枢機卿。  それは教皇を補佐する大貴族達により構成される。  教皇国家アークソサエティの政治の中枢を牛耳る集まりだ。  そんな彼らが、いま集まっていた。 「いささか、軽率だったのでは?」  円卓に座する者達の内、初老の男が嗜めるように言った。  これに赤毛の男が返す。 「馬鹿なことを。奴の勢力は日に日に増している。今の内に抑えておくべきだ」 「大げさですよ。あのような小僧に、何も出来はしませんよ」  呆れたような声で初老の男が返した。  いま、この場で枢機卿たちが話しているのは、浄化師達がニホンへの航海中に、スケール4べリアルに襲われた件についてだ。 「ナハトの人員を使い潰してまで、することではありませんでしたね。べリアルに、浄化師達を襲わせるなど」  初老の男が口にしたナハトとは、国の暗部に属する者達のことだ。  教皇ならびに枢機卿の命令があれば、暗殺に誘拐、人体実験や情報操作など、平然と行う。  それが出来るよう「教育」された部隊である。  だからこそ殺されることが分かりきっていても、スケール4べリアルに浄化師達を殺させるべく情報提供を行ったのだ。 「ナハトの育成には、時間も金もかかる。軽々しく使い潰されては困ります」  初老の男の言葉に、赤毛の男が苛立たしげに返す。 「だから! それはヨセフの小僧を、これ以上つけあがらせないために――」 「良いではないですか。このまま好きにさせておけば」  激昂する赤毛の男に、初老の男は言った。 「いずれ、我々の物になるんですから。家畜は、肥え太らせてから潰すものです」  部下の手柄を横取りする上司よりも悪辣なことを、初老の男は続けて言った。 「ヨセフの小僧と浄化師達のお蔭で、来たるべき時に必要なものは揃いつつある。強力な魔法を使うことの出来るドラゴンや魔女だけでなく、八百万共すら接触しているのです。集められるだけ集めさせ、あとは収穫すれば良い」 「そこまで巧くいくと――」 「いきますよ。その時が来れば」  確信を持って、初老の男は続ける。 「ヨセフの小僧は殺し、浄化師達は新たな室長を置き管理すれば良い。逆らう者も居るかもしれませんが、なに、その時は罪人として処刑すれば良いだけです」 「……そんなことが可能だと――」 「出来ますとも。あの御方なら。疑うのは、不敬ですよ」  狂信者の眼差しを向けながら、初老の男は言った。 「あの御方なら、出来ますとも。全てを従え、傲慢なる神すら下し。あの御方自身が神として世界を支配することが」  迷いなどみじんもなく、初老の男は歌うような晴れやかさで続ける。 「そして我々は、その世界で、あの御方の元で永遠を手に入れる。何か間違っていますか?」 「……いや」  初老の男の言葉に、赤毛の男は否定の言葉を飲み込む。  なぜなら、それを口にすれば殺されることは分かっていたからだ。  今この場に居る枢機卿たちは、一枚岩ではない。  むしろ何かあれば積極的に、地位や権力を食い潰し取り込もうと狙っている。  枢機卿。いやそれどころか、教皇国家アークソサエティの支配者である『あの御方』を疑うような事を口にすれば、口実を与えることになりかねない。  事実、それを口にしたために事故死に見せかけて殺された者さえいるのだ。  そうして父親と、家督の継承権を持つ兄達を次々に殺された人物が、口を開いた。 「パーティをしましょう!」  能天気な声を上げたのは、1人の青年だった。 「……なにを言っている? ファウスト殿」  げんなりとした声を上げる赤毛の男に、ファウストと呼ばれた青年は返した。 「パーティですよ、パーティ。楽しいんですよ、パーティ。女の子一杯呼んで、みんなで大騒ぎです! 知りません? パーティ?」 「……知っている。そんなことを聞いているのではなく、何故そんなことをするのかを聞いているのだ」 「やだな、そんなの簡単ですよ。今の室長の勢力が伸びるのが拙いんですよね? だから、パーティをして、今の室長の手足になってる浄化師達をこっちに引き抜けば良いんです!」 「……」  無言になる赤毛の男。  もちろんこの無言は、こいつ馬鹿だ、と絶句しているからだ。  それは、この場に居る他の枢機卿たちも同じである。  皆に、かわいそうな者を見る目線を向けられながら、ファウストは続けて言った。 「だから、お金ください!」  清々しい勢いで言うファウストに赤毛の男は、めまいを抑えるような間を空けて返した。 「……なぜ、金が要る」 「だって、お金ないとパーティ開けないじゃないですか! ひどいんですよ! 私が当主になったってのに、好きに使えるお金ないんですから! 家令の爺が、使っちゃダメって言うんですから!」  子供が拗ねるように言うファウストに、枢機卿たちは呆れて言葉を無くす。  そして胸中で、こう思っていた。 (こいつの家を乗っ取るためとはいえ、まだ生かしておかねばならんのは頭が痛いな)  いずれ血縁の誰かを嫁がせて、家を乗っ取る。  そのために、この場に居る枢機卿の大半が画策して、ファウストの父や兄を殺したのだ。  だからこそ、ファウストの便宜を図ろうとする者も出て来る。 「金は出せませんが、浄化師共を取り込もうとしている輩の舞踏会に参加できるよう、取り計らいましょう」 「そんなことしようとしてる所があるんですか!?」  興味津々といった風に尋ねるファウストに、初老の男は返した。 「バレンタイン家が開くそうですよ。次期当主になる筈だった長男が魔女と相討ちし、その後継を長女の息子に継がせるためのお披露目の舞踏会に、浄化師達を招くそうです」 「そうなんですか? あ、でもバレンタイン家って、アレですよね? 現体制に批判的なとこですよね?」 「ええ。だからこそ、警告の意味で、誰かが行く必要がある。それを、お任せしますよ」  敵陣に宣戦布告代わりに突っ込んで来い。  初老の男の言葉の真意は、そんな容赦のない物だったが、能天気にファウストは返す。 「分かりました! ふふっ、バレンタイン家って、色んな種族の血が入ってるせいか、可愛い子とか美人が身内に多いから楽しみですよ!」  好色めいたことを言うファウストに、軽蔑しきった声で赤毛の男は言った。 「亜人や獣人どもを貴族の血に入れる汚れた輩です。戯れもほどほどに」 「ははっ、分かってます!」  明らかに分かってそうにない声でファウストは返し、件の舞踏会に参加することにした。  そんな、色々と背景が黒々した舞踏会に、アナタ達は参加するよう指令を受けました。  服装や装飾品は、アナタ達を招くバレンタイン家が全て用意するとの事ですので、好きなものを頼むことが出来ます。  アナタ達を舞踏会に招いた目的は、そうすることで敵対する貴族などがどういう反応をするのか見極めるためとの事です。  ですのでアナタ達は、普通に舞踏会に参加してくれれば良いとの事です。  この指令に、アナタ達は――?
主を待ち続ける人形
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帰還 2019-06-04

参加人数 2/8人 虚像一心 GM
 人がいなくなってから長い年月が経った屋敷にて、一つの人影が動いていた。  よく見るとそれは、メイド服を着ている。  なるほど、彼女は今仕事をしているのだろう。  仕える主のために、せっせと仕事をしているのか。  ……だが、今その屋敷には彼女が仕えるべき主はいないらしく、その屋敷にいるのは彼女一人のようだ。  屋敷の中をたった一人で掃除するのは大変だろうに……しかし彼女は疲れる素振りを見せずに、文句の一つも呟かずに働いている。  ――ふと、彼女がポツリと呟いた。 「主様……我ガ主様……『シェラ』ハ、イツマデモ待ッテオリマス」  ……彼女が話す言葉はカタコトだ。  言葉を発するのが不慣れなのだろうか……否、そうでない。  彼女が何かをするたびに、彼女の体からはギシギシと音が聴こえる。  テーブルの上を拭く時も、窓を拭く時も、廊下を掃除する時も……何か動くたびに、何かが軋むような音が。  それは一体、何の音なのだろうか。  太陽の光に照らされた彼女の顔を見ると、とても整った顔……だがどこか、無機質にも感じられる。  まるで――『生きていない』かのように。  カタコトの言葉、体から軋むような音、無機質な顔……ここから導き出される答えとは――。   ■■■  本日、新しい指令が入った。  その指令の目的は、古びた屋敷の調査らしい。  話を聞くと、その指令の主は屋敷を購入したお金持ちらしい。  ということは、その屋敷の中を綺麗にすればいいのだろう。  ……だが、そんな単純なものではないらしい。  曰く、その屋敷には長いこと誰も住んでいないのに、何故か中はとても綺麗になっているとのこと。  もしかしたら勝手に誰かが住み着いていて、そこで暮らしているのかもしれない。  万が一のことに備えて、浄化師に頼んだ――ということのようだ。  誰も住んでいないのに、何故綺麗な状態のままなのだろうか、興味が尽きない。  好奇心半分でその指令を受けた浄化師はすぐさま目的の場所に向かった。   ■■■  ――主様、主様。  朝日が昇り、夕日が沈み、また朝日が昇る――それを一体どれほど繰り返しただろうか。  時の概念は既に彼女の中には無く、また彼女も時間のことなど気にしない。  彼女の中にあるのは、ただ主を待つことと――あと一つ。 「……我ガマスター、我ガ主様。ワタクシハ、タダ貴方様ニ尽クスノミデゴザイマス。ソレコソガ、ワタクシの使命――『願イ』ナノデスカラ」  ダカラドウカ、マタアノ笑顔ヲオ見セクダサイ――と、彼女は願う。  ……彼女は知らないのだ、仕えるべき主は既にこの世にいないということを。  主がいなくなってから誰も彼女の『手入れ』をしていないのか、彼女の姿はボロボロだった。  服装が……ではない、身体的な意味でだ。  頬はところどころに穴が開いており、そこからは黒い空間が見えている。  指を見ると、小指と中指が欠けている。  そこからは血が流れず、あるのはただ内部の空洞のみ。  痛みという感覚を持たない『人形』は、たった一つの願いをその胸に抱きながら、ただひたすらに主の帰宅を待ちわびているのだ。  だが――今日。 「――ヨウヤク、オ戻リニナラレマシタカ」  彼女はようやく、一休みができるようだ。  久方ぶりに開かれた屋敷の扉――そこから入ってきた浄化師達に、彼女は頭を下げて迎える。 「オカエリナサイマセ、我が主様。サア、『シェラ』ニナンナリトオモウシツケクダサイマセ」  無機質なその顔には、心なしか嬉しそうな笑みが。  ああ、ようやくまたあの笑顔が見られるのだ。  しかしそれは、どうやら今回で最後かもしれない、と。  命を、意思を、心を持った人形は、けれども全力で、いつも通りに尽くすのみだ。
暗闇の哄笑
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帰還 2019-05-31

参加人数 6/8人 土斑猫 GM
 奇妙な事が起こっていた。  世界の何処にも。時代の何時(いつ)にも、夜の時間を遊び歩く輩はいる。酒を飲み歩いたり、一夜を共にする異性を求めたり。その目的は他者多様。とにかく、如何に夜の闇が深かろうとその闇の向こうに好奇を求めるのは、人の性なのだろう。  ここ、教皇国家アークソサエティでもそれは例外ではない。  ただ、最近それに奇妙な事象が絡み始めていた。快楽を求めて夜に繰り出した者達。その中に朝日が登ってもなお帰らない者がいた。  こういった嗜好を持つ者は、得てして近所の鼻つまみである事が多い。最初は、付近の者達もさして気にはしなかった。むしろ、厄介者がいなくなってくれて幸いだとすら思う者も少なくはなかった。行方をくらましたのは、酔って歩いて沼にでも落ちたか。それとも、同様に夜に遊ぶ異性に迷って駆け落ちたか。その程度の事にしか、思ってはいなかった。けれど、事態は日に日に悪化する。行方を眩ませる者は増えていく。流石に異常なのでは? そんな意識が、街の中に満ち始めたある夜。事態は動いた。  『アルベルト・スクレィニー』は、街でも有名なチンピラだった。毎晩不良仲間と飲み歩き、博打で小銭を稼いでは女性と遊ぶ。そんな日々を送っていた。  その日の深夜も、彼は仲間とつるんで夜の街を徘徊していた。 「何だぁ。最近は女もろくにいねぇなぁ」 「みんな、例の話でビビってんだろうよ」 「けっ!! どいつもこいつも、腰抜けばかりだぜ!!」  仲間とそんな事を言い合いながら、アルベルトは持っていたバーボンの小瓶をあおった。と、その時。 「うん?」  彼は、気づいた。何やら鼻をくすぐる、甘い香りに。 「おい? 何だ? この匂い」 「そうだな……。何だか、花の匂いの様な……」 「おい! あれ見ろよ!」  仲間の声に前を見ると、道の向こうに人影が見えた。  女性だった。歳は10代後半から20歳前半ほどだろうか。薄手のドレスを纏い、長い白銀の髪を夜風に流している。その下から覗く顔は、ゾッとするほど美しい。 「おい、女だぞ!」 「こんな時間に、同好の士ってやつか?」 「ちょうどいい。一丁、相手してもらおうぜ!」  そんな彼らに答える様に、女性が手招きをする。蠱惑的な笑みを男達の目に焼き付けると、女性は踵を返して道の向こうへと走り出す。 「あ、おい! 待てよ!」 「逃げるなよ! 遊ぼうぜ!」  口々にそんな事を言いながら、女性の後を追う。足が、速いのだろうか。四人の男の足が、一向に追いつかない。とは言っても、女性の姿が見えなくなる事はない。付かず離れずの距離を保ちながら、彼女は走る。時折こちらを振り向いては、クスクスと笑うその様に、男達は確信する。誘われている、と。女性の色香と、甘い花の香りが思考を鈍らせる。半ば、夢うつつの様な心持ちでアルベルト達は走った。何処までも。何時(いつ)までも。  その後、何程走っただろう。いつしか、先頭を走る男と女性との距離は、腕一本ほどにまで縮まっていた。男が、舌舐りしながら腕を伸ばす。 「さあ、捕まえたぜ」  男がそう言おうとした瞬間――。  鈍い音と共に、赤い飛沫が散った。  首を握り潰された男の頭が、ゴロリと地面に転がる。突然の事に、立ち尽くすアルベルト達。その視界の向こう。吹き上がる鮮血の向こうで、ユラリと動く影がある。  現れたのは、上半身は猿、頭部と下半身は山羊の怪物。『キメラパーン』と呼ばれる生物だった。常時でも人を襲う事がある危険な存在だが、真の驚異はそこではなかった。アルベルトは見る。キメラパーンの身体に走る、朱い文様と魔方陣。それを見た、誰かが叫んだ。 「ベ……ベリアルだー!!」  その悲鳴を楽しむ様に、山羊の口が笑みの形に歪む。そして、キメラパーンのベリアルは手に付いた血糊をベロリと舐めた。恐怖に狂乱したアルベルト達は、蜘蛛の子を散らす様に逃げ出した。その後を追ってくる、複数の足音。仲間の悲鳴が、次々と聞こえる。チラリと見た視界の端に、倒れた仲間を貪る数体の影が見えた。1匹じゃない。いるのだ。あの化け物が、何匹も。走る。走る。夢中で、走る。耳朶に聞こえるのは、鈴を転がす様な女性の声。あの女が、笑っているのだ。何なんだ。アレは。人がベリアルを繰るなんて、聞いた事もない。訳が、分からない。逃げる。ただ、逃げる。この、悪夢の晩餐から抜け出すために。満ちていた花の香りは、いつしか濃い血臭に変わっていた。  気づけば、アルベルトは朝焼けの中をボロボロの身体を引きずりながら、一人で歩いていた。振り向くと遠くにそれが見えた。とうの昔に打ち捨てられ、今は訪れる者もいない古墓地だった。  何とか街にたどり着いた、アルベルト。彼の話を聞いた人々は、震え上がった。墓地は街から離れているとは言え、歩いて半日ほどの距離しかない。そんな場所にベリアルが。それも、複数体。しかも、話から察するに内一体はスケール3。一般人にどうこう出来る話ではない。ただちに、教団に対して連絡が取られた。  何人かが、街外れまで行ってみた。  地面に点々と付いた血痕。恐らくは、アルベルトのものだろう。それが続く先に、かの墓地がある筈だった。吹き渡る空風の中に、何かを感じる。  甘い花の香りと、鈴音の様な女性の笑い声。  彼らに出来る事は、迫る夜闇に怯える事。そして、浄化師達の救いを待つ以外にある筈もなかった。
ニーベルンゲンに忍び寄る影
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帰還 2019-05-25

参加人数 2/8人 鞠りん GM
 『竜の渓谷に、ヨハネの使徒が出現した!』  薔薇十字教団の指令部に緊張が走る。  この情報を持って来たのは、『サリウス・ブラント』と名乗る遊牧草原を管理するデモン・半竜の一人。  話によれば、ヨハネの使徒は、どこからともなく現れ、遅い動きながら遊牧草原を歩き進め、ニーベルンゲン草原の方向を目指しているという。 「ということは地上稼働型のヨハネの使徒。だがなぜだ?基本的にヨハネの使徒は魔力(マナ)の高い者を狙う」 「……それは」  情報を持って来たデモンは表情を曇らせ、仕方がないといった感じで話をし出した。 「一人……一人我々の中で、マナが高い者がいる、俺の息子『トシュデン・ブラント』だ。多分ヨハネの使徒は息子を狙っている。そして息子が今居る場所は……ニーベルンゲン草原の集落だ」  話を聞いた指令部の教団員は、なるほどと納得する。  ヨハネの使徒に狙われるほどのマナの持ち主は、当然浄化師候補として教団に保護される。  だが、このサリウスという男は、息子を教団に取られたくなかったのだろうと。 「ヨハネの使徒の討伐および軍事的支援は教団の義務。すぐに浄化師を向かわせることになるが、あなたの息子の保護も視野に入る」 「……やはり」  予想通りの答えに、男は肩を落とすが、こればかりは世界のためにも、トシュデンのためにも、致し方ないことだと教団員は話を続けることにした。 「結論から言えば危険。息子さんも、あなたも、そしてドラゴンたちも。そう考えると、息子さんの保護が一番の対処法になってしまう」 「そうですか……。ヨハネの使徒の討伐と……トシュデンをよろしくお願いします」 「全力をつくすと約束しか出来ませんが」  肩を落として部屋から出ていく男を、いたたまれなく見つめつつも、教団員は男が置いて行った情報を報告するために、集約を開始した。  待つこと一日。  すぐに竜の渓谷に待機しているレヴェナントに連絡を取り、情報収集した結果がこの司令部に集められた。 「ヨハネの使徒は地上稼働型一体、推定体長は三メートルほど。低速で移動をしているので、移動速度は10㎞から20㎞。ただ今まで見た中でも巨大な部類に入るそうです」  次々と読み上げられる報告の数々。 「これは見た目からの判断でしょうが、四脚の足の右方向、その付根に魔方陣が見えたと報告にあります。おそらくこれがコアでしょう」 「付根とあるが、それは地面に接している場所なのか、それとも地面に近い場所なのか、それにより対処も大きく変わる」  確かに教団員の言う通り。  もし、地面に接している場所ならば、ヨハネの使徒が足を上げない限り、魔方陣を狙うのが難しい。  達人ならば、四脚の一本ごと斬り落としてしまうだろうが。 「草原という障害物がない場所というのが辛いが、浄化師を向かわせれば、少なくともヨハネの使徒はターゲットを、サリウスの息子トシュデンから浄化師離すことが出来る」  それにはこの会議に出席している司令部の教団員全員が同意。 「対象の保護と、ヨハネの使徒の討伐そしてパーツの回収。やることは多い」  天使の姿をした悪魔のような生物から、貴重な素質を持った子供を助けつつ、討伐しなければならない。  そして浄化師に指令が下る。  ――ヨハネの使徒が子供に手をかける前に討伐しろ!!
その露草のように
簡単|すべて

帰還 2019-05-19

参加人数 2/8人 鞠りん GM
 樹氷群ノルウェンデイでの指令の帰り道、トナカイに引かれたソリ馬車に乗りながら、『ジャネット・マイヤー』はゴクスタの街を通過している時、見えた店の中の『ある物』が気になった。 「あれって、トロール・ブルーよね?」  トロール・ブルーまたはアイスブルーと呼ばれる、ノルウェンディを代表する工芸品で、水気の魔結晶を魔術で水に溶かし、それを凍らせて象った物。  よりアイスブルーの色合いを増した、陶器のような質感と強度を持った固定氷塊と言われればそれまでだが、その見た目の綺麗さと儚さから、観光客には大人気の一品。  勿論ノルウェンディでも、トロール・ブルーを保護し、その手法は極秘扱いなのだから需要も高い。 「私も一つくらいトロール・ブルーが欲しいな」  そういうジャネットを、パートナーである『ユリアーン・ファン』は、向かい側に座りながら見詰めている。 「どんな形のトロール・ブルーが欲しいんだい?」  そう優しく声をかければ、ジャネットは真剣にユリアーンを見つめ返した。 「私たちの証、アブソリュートスペルに因んだ形がいいわ」 「魔術真名……『死の舞台を君に』をかい?」 「そう、死の舞台……ダンス・マカブル。それをモチーフとしたトロール・ブルー。二人の記念になると思って……だめ?」  それにユリアーンは、ゆっくりと首を横に振る。 「いいや、僕たちを繋ぐものを形に……。いいよジャネットのために」 「ありがとうユリアーン」  ユリアーンは御者を呼びソリ馬車を止めさせ、少し街を歩いてから気になった店へ、ジャネットと一緒に入ってみた。  店の中には色とりどりのトロール・ブルーが置いてあり飾られているが、ジャネットが気に入る物はなに1つない。 「あの店主さん、トロール・ブルーはオリジナルを作れないのでしょうか?」  思い切ってジャネットが店主にたずねてみれば。 「いいえ、絵か何かで形を決めることは出来ます。ただし魔結晶を溶かす技術は秘密ですがね」  後、オーダーメイドの一点物になりますので、少々お値段は張りますが……などと言い、店主はにこやかに笑っている。 「それは当たり前だと思います。でも、あれを絵に出来るかしら?」 「やってみようジャネット。君なら出来るから」  店主に用意して貰った白いキャンパスに、ジャネットとユリアーンは、二人を繋ぐダンス・マカブルを、少しずつだけど絵にしていく。 「今すぐ出来なくても、絵が完成して『こうしたい』という説明つきで送って下さっても構いませんよ、浄化師のお嬢さん」  確かに絵を1枚描き上げるのには時間がかかる。更にジャネットたちが作ろうとしているのは、形のないアプソリュートスペルなのだから、それを表現するのは殊更難しい。 「ではこうしませんか店主。僕たちは教団本部に戻ってから絵を完成させて、こちらに送ります。ただしオマケが沢山つきそうですがね」 「オマケ……ですか??」  ユリアーンの言葉に、店主はなぜという感じの不思議顔。 「教団は寮での集団生活なので……。こんなことをやっていると知ると、みんなやりたがるのです。沢山の注文……大丈夫ですか?」  それには『店の儲けになるから』と、店主は大喜び。  確認を取ったジャネットとユリアーンは、絵を送りトロール・ブルーを作ってもらうという楽しみ半分で、教団に戻ることになった。  教団寮に戻ってからは、絵心のあるジャネットが主に絵を描き、ユリアーンはそのアドバイスというのを、教団寮の共有スペースでよく見るようになり、その噂は教団内に広まっていく。  絵が出来上がり、ゴクスタの店に送った後に届いた、二人のトロール・ブルー。  その形は、数人の女性が輪になって踊るという、青く綺麗な置物。 「思った通りの形になったわ」 「輪になって死の舞を踊る蒼き女性たち。僕たちのアブソリュートスペル『死の舞踏を君に』に、ぴったりだね」 「店主さんの技術も上手いです」  出来上がったトロール・ブルーを、一目見ようと沢山の浄化師たちがジャネットの部屋に押し寄せ、そして自分たちも欲しいと、二人に店の名前をたずねるのが恒例になったよう。  勿論みんなに真摯に対応し答えるジャネットとユリアーン。  だって店主との約束だから。沢山注文して、店主を喜ばせたい気持ちでいっぱい。  こんなに綺麗なのだから……欲しいでしょう?  アイスブルーの色をした二人だけの置物。あなたたちも欲しくはありませんか?
悪夢はいつか覚めるもの
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帰還 2019-05-16

参加人数 5/8人 虚像一心 GM
 この世界を生きるモノが眠りに就く時――それは必ず現れる。  それは夢だ。  疲れた体を、疲労した脳を休めるために眠りに就けば、不思議と夢を見ることがある。  何がきっかけで、何が引き金をなるのかわからない。  ある日突然視てしまうそれは――個人によって内容はバラバラだ。  例えば――楽しい夢。  例えば――面白い夢。  たった一夜限りの幻想であるそれは、決して記憶に残らないものではあるが。  けれども、それは生きている証拠に他ならないものだ。  ――しかし。  その夢は、常に楽しい夢であるとは限らない。  時には夢であるのにも関わらず、現実と何ら変わらないモノを見てしまう時がある。  それは所謂『悪夢』と呼ばれるモノ――わかっているのに、理解しているのに。  でも何故か、それが現実だと認識してしまう、質の悪いモノだ。  その悪夢を見てしまうのは、浄化師とて例外ではない。   ■■■  辺り一面が静まり返った時間帯。  窓の外を見てみれば、空の色は真っ黒に染まっており。  小さな灯りが所々に見える――完全に夜の真っ只中だ。  その夜の中で、浄化師は疲れた体を癒すべく、寝床に就いていた。  ――今日も浄化師は受けた指令を解決し、感謝された。  感謝されることに対して不満はなく、むしろ心地よいと思った浄化師は。  今日も良い一日だったと思えるように、思うために。  寝床に就いて、明日を――パートナーを待ちわびながら寝ている。  だが。  寝床に就いてしばらくすると、浄化師は額に汗を浮かべていた。  完全に寝ている……そう見えるその姿に。  だが何やらブツブツ、と寝言らしきものを言っていた。  ――なるほど、寝床に就いた浄化師は今、夢を見ているようだ。  それもとびっきり嫌な――『悪夢』を。  一体どのような夢を見ているのか、それはわからない。  うなされている浄化師を起こそうとする者は、誰もいない。 「――――」  と、突然浄化師がパートナーの名前を呼んだ。  夢の内容は、どうやら自身のパートナーに関してのことらしい。   ■■■  ――気が付くと、そこは暗闇だ。  周りを見れば、ここにいるのは自分一人。  だからわかった――ああ、これは夢なのだと。  珍しい夢を見ることもあるのだな、と呑気にそう思っている浄化師の前に。 「――っ」  突然、ソレは現れた。  目の前の暗闇の中で現れたモノ――それは己のパートナーの姿だ。  夢の中でも思ってしまうのか、と若干嬉しい気持ちになったのは束の間。  そのパートナーの姿は、いつも見ているパートナーとは違っていた。  何が違うのか――それは目だ、表情だ。  目の前のパートナーは自分に向かって『嫌悪感』を放っていたのだ。  己に向かって嫌そうな表情、視線を放つパートナーの姿。  いつ何時も共に行動し、時には笑い、時には涙を流し合ったはずのパートナーが何故、自分にそのような顔を、視線を向けるのかがわからない。  これが夢であることは十分理解している。  これが現実なわけがない。  ……なのに。  どうしても、夢の中のパートナーを見てしまえば、心が痛んで仕方がない。  何故? ――と。  どうして? ――と。  疑問を口にするが、それでも夢の中のパートナーは答えてはくれない。  このまま、夢が覚めるまで待ち続ければ良いのか? ――不可能だ。  ほんの一瞬、嫌そうな顔を、視線を向けられただけでこの様なのだ。このままいつ終わるかもわからない夢に耐えるだけの力は既にない。  ならば、どうすれば良いのか……と浄化師は膝を崩しながら考える。  すると、浄化師の口から、 「――――」  己のパートナーに向けて、今までの出来事を思い出すかのように、パートナーとの過去を語られた。  それは贖罪か、または別の何かか、それはわからない。  過去の出来事を語られている間、パートナーは常に無言で。  だがその顔は、どこかしら嬉しそうに微笑んでいるように見えた。
祝花は婚礼と誓いに咲く
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帰還 2019-05-15

参加人数 5/8人 あいきとうか GM
「……なにを企んでいるのかと思っていたけど」  魔法により作り出された花咲き乱れる空間で、アリバは苦笑する。  その隣に座っていたグラースがテーブルを叩いて立ち上がった。丸い机上に置かれていた四人分のカップが衝撃で揺れる。 「正気の沙汰じゃないだろ!」 「正気だし本気だぞ」  アリバが持ってきたクッキーを咀嚼し、飲みこんだオベロンは不敵に笑った。 「我とティターニアの婚儀に、人間たちを招く」  はい、とオベロンの隣でティターニアは拗ねたような、照れたような表情で頷く。  彼女に反対の気がないと知り、グラースはぐっと言葉につまった。  それでも引き下がることはできず、外見だけはこの中で最年少の氷精はオベロンを見据え、絞り出すような声で言う。 「僕たちはあくまで中立だよ。そりゃあ、こっそり人間の手助けをしてるけど、それでも、表向きは神の味方でも人間の味方でもない。そうだよね?」 「そうだねぇ」  肩を竦めたアリバが、妹であるティターニアを見て目を細くした。 「そうすることで、ぼくたち――妖精種は生き延びてきた。でも、人間を妖精の結婚式に呼ぶって言うのは、つまりそういうことだねぇ」  ラグナロク以後、永く妖精たちが守ってきた立場を、崩す。  人間側に立つ、ということ。  すなわち神に対する宣戦布告であり、中立を望む他の妖精種に対する反旗にも相当する行いだ。  それをオベロンは、得意げに笑いながら実行するという。最近まで森の奥深くにこもっていたティターニアも、なにがあったのか、異議を示さない。 「馬鹿じゃないの……」  疲れたようにグラースは座り、頭を抱えた。ティターニアが気遣うような視線を向ける。 「人間たちは日々、自らより強大な神の裁きに抗して生きている」  カップケーキをつまんで、オベロンは遠い目をした。  これを作ったのは、人間だ。 「人の子らはベリアルと呼んでいたか。あれもまた、日ごとに強力なものがあちらこちらで誕生し、さらにはヨハネの使徒まで闊歩している」 「……知ってるよ」 「表向きの中立を保つために、ぼくたちはあれらに殺される人間たちを、見て見ぬふりしてきたからねぇ」  なんでもないようなアリバの言葉に、グラースは叫びかけて、どうにか堪えた。噛み締めた奥歯が軋む。 「このままでよいのか?」  オベロンの問いは矢のように、グラースの胸に突き立った。 「……だって僕たちは、妖精だから……」 「保身のための古い掟に縛られて、なにもできないと諦めて。そのくせ無力感に打ちひしがれる。そのまま幸も不幸も判別できずに生きるのが、妖精種か?」  緊張を瞳に宿し、ティターニアは沈黙する。アリバはもう結論を出していた。  グラースはテーブルクロスごと、こぶしを握る。 「我は人の子らが好きだ。花のように咲き、美しく散る。長命な種族もあるが、我らにしてみればいずれも短い命だ。しかし、それゆえに――進む」  傷も癒しも、罪も許しも、悲しみも喜びも抱えて、前へ。  それは、妖精種が放棄してしまった、尊い命の輝きだ。 「妖精たちはいずれ、原初の羨望を思い出す。かつて数多の妖精の心を焦がしたその感情は、中立という建前を破壊するだろう。だが、そのためには誰かが動かなくてはならない。誰かが内側に風穴をあけねばならない」 「だからこそ、人間たちを招くと。……ティターニア。きみはそれでいいんだね? 怒った妖精たちが裏切り者だと叫びながら殺しにくるかもしれないけれど、それでいいんだね?」  ええ、とティターニアは力強く頷く。アリバが笑った。 「料理の手配は任せてよ。ぼくのファラステロで、今各国で一番おいしいものを運んでくるから」 「うむ。頼りにしているぞ、アリバ。グラースはどうする?」  三体の妖精から見つめられ、グラースはうつむいた。  人間の側で生き、妖精種の中立の掟に寸でのところで反しない程度に力を貸し、助けられない自分に憤り――なにより、細工をしなくては高い魔力を持つ者にしか見られないと分かっていながら、こうして人間の形をとっている。  それが答えだった。 「……僕だって、人間のことが好きだ」 「うむ」 「……人間たちは、ずっと前に戦う覚悟を決めたんだよね」 「そうだね」 「あんなにも弱いのに。どうせすぐに死んじゃうのに。それでも、戦うって決めた」  口許に微かな笑みを宿し、ティターニアは首を縦に振る。 「じゃあ、人間より高位の魔法生物である僕たちが、戦えない理由なんて、ない」  顔を上げたグラースの目に、迷いはなかった。  少年の姿をした氷精は、いつものように、悪戯っぽく笑う。 「招待状は僕が配ってきてあげるよ。浄化師がいいよね。人間たちの王様に一番近いのは、あの子たちだから」 「うむ。頼んだぞ」 「浄化師たちなら、ぼくたちの姿を普通に見られるしねぇ」  人間でありながら彼らは高い魔力を有している。妖精自らが魔力を消費し、顕現する必要はない。 「では改めて――。我、春精オベロンはここに、妖精種と人間による同盟を望むと宣言する」
遊園地でイースター!
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帰還 2019-05-12

参加人数 2/8人 水樹らな GM
 少しずつ春めいていく首都エルドラドでは、イースターで盛り上がっていた。  ウサギやエッグモチーフの飾りをつけたり、イースターにまつわる物品の販売を行っていたりと、いつもとは違う賑わいを見せている。  町中だけではない。  その首都エルドラドにある遊園地トラオムパルクでも、イースターで盛り上がりを見せていた。  数多くの人々が訪れ、園内で販売されているうさぎのカチューシャやエッグモチーフのイースターグッズを片手に楽しんでいる様子。  その上、魔結晶を中心とした魔力の供給と蒸気機関によって動くメリーゴーラウンド、回転ブランコ、観覧車、コーヒーカップ、バイキング、ジェットコースターにホラーハウスなどなど、様々なアトラクションが、イースターの飾り付けをされ、いつもとは違う華やかな雰囲気に包まれている。 「そこに居る浄化師のお兄さん、お姉さん!! せっかく、ここに来たんなら、このイースターエッグ探しをしないかい?」  トラオムパルクの陽気なスタッフが、浄化師達に向かって声をかけてきた。  スタッフの話によると、今日からイースターイベントということで、園内に隠された絵付きの卵を見つけると、好きなアトラクションをひとつ、または好きなランチを一つサービスしてくれるらしい。  また、一番卵を多く見つけた者には、特別なステージで表彰される他、一日乗り放題の無料チケットも貰えるらしい。  もちろん、いつものように普通に遊ぶことだって出来る。  花に囲まれたピクニックエリアで、お弁当や園内で売られている軽食を買って食べるのもいいだろう。  イースター色に染まった、賑やかな遊園地トラオムパルク。  大切な人と、楽しい仲間とで、大いに羽を伸ばしてみては?
子ども達の想いに応えて
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帰還 2019-05-07

参加人数 2/8人 虚像一心 GM
 雲一つない快晴の空、輝く太陽の光。  気持ちの良い世界の下で、浄化師達は椅子に座りながら平和に疲れを癒していた。  先日の指令――非常に困難を極めた内容であったため、その疲れはいつもよりも何倍もある。  それ故か、エントランスホールに行っても周りから『今日は大丈夫だから、たまにはゆっくりしろ』と言われる始末。  だが、まあ……それはそれで構わない。  疲れているのは事実だし、それになによりこうして和やかに過ごせるのは願ったり叶ったりだ。  ――何もないのならばそれで良い。  ――休めと言われれば、喜んで休もう。  これも働き者の特権……ということで、これは有難く受け取るべきで。  更に―― 「よっしゃぁ! 命中っ!」 「やったなぁ、このぉ!」  こうして公園内で子ども達が無邪気に遊んでいる光景さえも、自分達を癒そうとしてくれている……ように思えるのだ。  視線の先にいる子ども達――彼等は泥団子を作って、それを投げて遊んでいるようだ。  泥で作ったそれは他人に投げていいモノではないのだが、まあ子どもだから大丈夫だろう。  それに、そんなことをしていれば―― 「こらぁあんた達ぃ! 泥を投げて遊ぶなって何度言えばわかるのッ!」  年長者が止めに来るのだから。  泥を投げて遊ぶ子ども達に気付いたのか、彼等よりも少しだけ大人びた少女がやって来た。  彼女は所謂『お姉さん』的な立場の存在なのだろう。  遊ぶのは構わないが、危険なこと、やってはダメなことを教えているようだが、しかし。  遊ぶことに夢中になっている彼等がそんなことを素直に聞くはずがない。  そう、このように―― 「あーあー、きこえませーん!」 「仲間外れが嫌なんだろ? ほら、一緒にやってやるからさ」 「誰がそんなこと言った! 誰が!」 「遊ぶこともできないのぉ?」 「うっわぁ、かわいそー!」 「うっさい! 良いからもう少し大人しく遊びなさい! 周りに迷惑でしょうがッ!」 「いーやーだーねっ!」  少女をイラつかせるような言葉で煽っている。  彼女からしてみれば、投げた泥が目に入ったり、見知らぬ人に怪我をさせてしまうことを恐れているから止めろ、と言っているのだろう。  しかし、一度火が着いた子ども達にとっては、そんなことはどうでも良い。  純粋に、面白ければいいのだから。  まあ少女の怒りがあるのだ、いずれ止めるだろう。  だから、自分達はその光景を暖かい目で見守るのだ……が。 「――って、今泥投げたの誰よ!? 止めろって言ってんでしょうが!」 「へっへーん、知りませーん!」 「注意した傍からあんた達は……ッ!」 「それもういっぱーつっ!」 「だから投げるなって――あ」  一人の子どもが投げた泥団子――それは少女の横を通り抜けて。  その先にいた……喰人の顔面に当たった――かのように見えたが。  喰人は紙一重でそれを避けて、難を逃れた。 「ご、ごめんなさいッ! 大丈夫ですか!?」  平和ボケしているとはいえ、仮にも浄化師の身――子どもに後れを取ることはない。  しかしながら、自分だからよかったものの、これがもし他の人だった場合は大変なことになりかねない、と。 「それは重々わかってるんですが……あいつ等、そう言っても無視してしまうので……」  ――でしょうね、と。  会話をしている間でも、子ども達は先ほどの事などなかったかのように、泥で遊んでいる。  注意しても無視される――少女は味合わなくても良い苦労をしているのだ。  ならば、ここは一つ大人として。  常識ある浄化師として。  その苦労を取り除いてやらなければいけない。  そう思った喰人は祓魔人を見ると、祓魔人はただ頷く。  それは、ご自由にどうぞ、という無言の合図だ。  許可をもらったので、喰人は少女の肩を軽く叩いて子ども達の元に向かう。  さて――一体どうやって教育しようか。
力を借りて幸せになろう?
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帰還 2019-05-05

参加人数 2/8人 鞠りん GM
● 「――あれは!!」 「ま、まさか。もうバレンタインは過ぎただろう!」  遅れてやって来た『アイツ』に、ブリテンの街中が凍りつく。  そう、今年はなにもなかったと安心していたのに、なぜ今頃やって来た!? 「ま……魔法少女ステッキが……来たぁー!!!」  魔法少女ステッキと呼ばれる、この杖は、バレンタインの乙女が使ったと言われる物で、しかも自我まで持っているという厄介な代物。  更に言えば、このステッキを作った魔女『道化の魔女メフィスト』は、この光景を見て面白がり、魔法少女ステッキを量産して世界中に放してしまった  ――なにが面白いかって?  自我のある魔法少女ステッキは、『魔法少女になって、みんなを幸せにしようよ』と言い、好き勝手に人に言い寄っては、自分を持たせて半ば強制的に魔法少女に変身させてしまうから。  ――そう、魔法少女!!  男女性別など関係なく、持った人間を、フリフリのミニスカートと、ヒラヒラのレースがついた衣装に変えてしまい、ステッキの魔法で『好きな人のこと』しか話せなくなるという特技を持っている面倒くさいヤツ。 「なんで、今なんだ?」  そう言ったエレメンツの男性に、魔法少女ステッキの『1本』が、こう答える。 「だってー。バレンタインに、この街に来れなかったんだもん。だから、これからバレンタインをしようよ。さあ、みんなを幸せにしようよ!」  なんて言い分だ、と思っている街の人たちに、待っていましたと、魔法少女ステッキが襲い掛かる! 「うわわわわわー!!」  自分の意志で浮き行動する魔法少女ステッキは、話しかけたエレメンツの男性の手に飛び込み、男性は一瞬でフリフリの魔法少女にへんしーん!  しかも、魔法少女ステッキは『複数』で来ているものだから、次々とブリテンの街の人々が、魔法少女ステッキたちの餌食になってゆく。  ――変身すると、好きな人のことしか言えない。 「俺はアンナのことが好きだー!」 「そんな恰好で言われても嬉しくないわよっ!!」  確かに、フリフリスカートの男性に告白されても嬉しくない。 「あなたのことが忘れられないの」 「僕ですか?あなたとは初対面のはずですよね?」  男性には初対面でも、彼女のほうは……ストーカー!?  こんな調子で、街中のいたるところに魔法少女ステッキの魔法がさく裂し、ブリテンの街は大混乱におちいってしまった ●  この悲惨な光景を見て慌てた街の人たちが、自分も被害には遭いたくないがために、集団で教団本部へと押し寄せて来てしまう。 「あの魔法少女ステッキだけはムリです!助けて下さい!」  そうは言われてもとは思うが、依頼があった以上、引き受けなければならないという、薔薇十字教団のつとめの1つなのが猛烈に痛い。  泣く泣くだが、司令部は浄化師たちに指令を出したが……。 「今年はないと思っていたのにー!」 「俺は去年、散々な目にあった」 「あんの……。あの凶悪ステッキに向かって行くの?それだったら、ベリアルを相手にしていたほうが、まだマシよー!」  歴戦の浄化師たちですらも、魔法少女ステッキには手を焼くことを『知っている』ので、この指令を受けたくない気持ちはよく分かる。  だが、やらなければブリテンの街の人たちが困り果てるのだから、指令を受けるしか道はないのが浄化師たち。  いつも以上の覚悟を決めて、ブリテンの街へと向かう、あなたたちに待ち受けるものは? 「ふふー。浄化師さんたちが来たよぉー」 「浄化師さんも幸せになろうよ」  喜ぶ魔法少女ステッキの声に、浄化師一同そろって冷や汗をかくのを隠しきれない。  さあ、真っ向勝負を挑むのか、説得してお帰り願うのか、はたまた全く違う方法を使うのか。  今こそ浄化師の腕が問われることになる……のだろうか??
キャッスルラヴ&ミステリー
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帰還 2019-04-30

参加人数 5/8人 鞠りん GM
●  ブリテン内の南端、町はずれの丘をずっと登っていった先に、綺麗なお城があるのを知っているでしょうか?  そのお城は『カルテス・モンテ・デル城』と言い、かつてこの地域を治めていた領主が住んでいたお城で、今は領主の子孫が管理し、観光客に城を開放したりもしています。  その中は豪華で華麗。  一番は『色の道』と呼ばれる、城の西棟と南棟を繋ぐ廊下が挙げられ、両側の壁の高い位置に小さな四角い窓が連なり、そこから差し込む光が、昼から夕方になると、金色から茜色に変化する見事さは圧巻の一言。  更には夜は紺碧に染まり、窓の下についたランプの橙色の小さな灯がともる中を歩くのが、恋人たちや街の人たちの、一番のお気に入り。   ――ロマンチックでしょう?  そんな人気の高さから、毎日沢山の恋人たちや観光客が、ため息まじりにこの色の変化を楽しんでいます。    そして『大広間』も語らずにはいられません。  石造りの床は葉を象った幾何学模様が広がり、見る角度によって浮き上がるように見える模様が違い、更には光の加減や季節によっても違って見えるのですよ。  ですが中央の広場には、誰が描いたか分からない、誰も理由すら知らない、円形の魔方陣が、日差しの角度によって姿を現します。  古くからの噂によれば、かつての領主様お抱えの、錬金術師たちの研究所だったのではないか?  事実が分からないがゆえの憶測だけが、この『カルテス・モンテ・デル城』のミステリーとして、ひそかに街の人々の中で飛び交っています。 ●  そんな『カルテス・モンテ・デル城』を、薔薇十字教団は1日借り受けました。  そう、日頃の疲れを癒すために、教団主催で、この城で貸し切りパーティーをするのです。   非番の浄化師の参加希望は殺到しまくっています。勿論あなたたちも参加で提出しましたよね?  パーティーは立食形式のフレンドリーなもの。そして夕方の『色の道』を楽しむもよし、夜の窓の下に灯されたランプの橙色に彩られた『色の道』を楽しむもよし。  城の中で、2人だけのロマンチックな雰囲気を楽しむことだって出来ちゃいます。  だって、お城をまるまる借り受けているのです。どの部屋に入るのも自由でしょう、違いますか?  もしその気があるのならば、魔方陣の謎解きなどもいかがですか?  本当に錬金術師の研究所だったのか、はたまた全く違うものだったのか、興味はありませんか。貸し切りなのです、城の中をくまなく捜索してみるのも悪くはありません。  ただし新発見が出るかは別問題。この城は安全な観光場所と謳っていますので。  さあ、優美と不思議が入り混じった『カルテス・モンテ・デル城』でのパーティーの始まりです。  パートナーと一緒に、この城を存分に楽しんでください。
それは夢か、現か
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帰還 2019-04-22

参加人数 5/8人 留菜マナ GM
「遅いな」  夏が近づく晩春の気候の中、屋敷の壁にもたれてあなたは一人で立っていた。  見据える先には、氷の彫刻や人形細工が置かれている。  ここは、ミズガルズ地方の北に位置する樹氷群ノルウェンディ。  樹氷と霧氷が美しく、一年を通して国土に雪氷が覆う国だ。  あなた達は指令を受けて、『終焉の夜明け団』が魔術研究の際に使っていたとされる屋敷の調査に赴いていた。  だが、一通りの調査を終えた後、パートナーが展示されている人形細工に興味を持ち、人形細工などが置かれている部屋の中へと入ってしまったのだ。 「そろそろ戻ってくるはずなんだけど……」  あなたは待ちくたびれたように、窓から雪が舞う空を見上げる。  それでも待ち人が、戻ってくる気配はない。  あなたは深く大きなため息をつくと、こうなってしまった原因の出来事をふと頭の片隅に思い浮かべていた。 「これ、可愛いね」  調査を終えた帰り際、エントランスホールに展示されている人形細工をじっと凝視していたパートナーの声が震えた。  それは、ノルウェンディの名産品である『トロール・ブルー』の人形細工だった。 「確か、部屋の中にもあったよね。ねえ、ちょっと、見て来てもいい?」 「駄目だと言っても行くんだろう。とりあえず、ここで待っているから、早めに戻ってこいよ」  有無を言わさぬパートナーの問いかけに、あなたは呆れたように答えた。 「うん、ありがとう。行ってくるね」  パートナーは甘く涼やかな声で告げると、ドアを開けて部屋へと入っていた。  しかし、それからいつまで経っても、パートナーは戻ってこない。 (もしかしたら、夢中になって、人形細工を見ているのかもしれないな) あなたは、室内に籠ってしまったパートナーに想いを馳せる。 「お待たせ」  そろそろ、呼びに行こうか――。  そう考えていたところに、聞き覚えのある声がした。 「遅いぞ」 「ごめんね」  あなたが振り返ると、部屋から出てきたパートナーは悪戯っぽく目を細める。  そこで、あなたはパートナーが持っている人形細工へと視線を落とした。 「その人形細工は持って帰らないからな」  あなたの指摘に、パートナーは物言いたげな眼差しでじっと見つめる。 「やっぱり、ダメかな?」 「ああ」  再度、確認するかのように尋ねてくるパートナーに、あなたはしっかりと頷いてみせる。  パートナーは持っている人形細工を先程、見かけた人形細工の隣に置くと肩を落とした。 「じゃあ、帰ろうか」 「そ、そうだな」  いつの間にか、あなたの腕を絡めていたパートナーは屋敷の外へと歩き始めようとする。  ――その時だった。 「お待たせ」  不意に背後からかけられた声。 「なっ――」  聞き覚えのある声に、あなたは目を見開く。  ――あり得ない。  あり得ない。  あり得ない。  あり得るわけがない。  何故なら、パートナーは、自分のすぐ隣にいるはずだからだ。  あなたは、隣で驚いているパートナーを確認してから、背後へと一息に振り返る。  そこには、部屋から出てきたパートナーが驚愕の表情を浮かべて立っていた。 「えっ? 私がもう一人いる?」 「どうなっているの?」 (――パートナーが二人? なんだ? 何なんだ、これは?)  衝撃的な出来事は、その場の空気ごと、全てをさらっていった。
運命のアストラガルス
普通|すべて

帰還 2019-04-22

参加人数 4/8人 鞠りん GM
●  シャドウ・ガルデン、カーミラ郊外にある、とある古く小さな洋館。  その中で、終焉の夜明け団の元信者『セリオ・アロ』は、長年追い求めていた『あるもの』の入手の為に、禁忌魔術である口寄魔方陣を発動した。 「これで、これが――」  黒く輝きを放つ魔方陣に身を乗り出して、その中心から現れるものを、不気味に口角を上げながら今か今かと待ち続ける。  この研究は終焉の夜明け団でも異質であり、その危険性を指摘され追放処分を受けながらも好奇心を止めることが出来ず、身を隠しつつ入手法を模索し現在に至る異端の男。 「とうとう……とうとう手に入れた。運命の『アストラガルス』を!!」  口寄魔方陣は成功し、魔方陣から出てきたのは、手のひらに簡単に乗ってしまうほど小さい四角形の塊。  それを見つめセリオ・アロは、声を高々にして笑う。 「運命だ、俺は運命を手に入れたのだ。これで俺を見下した世界に復讐できるぞ」  『アストラガルス』とは、遠くニホンの国に存在する宝の1つ。終焉の夜明け団が奪取したが、その性質上ゆえに危険な物として、信者にも悟られないよう地下深くに保管を決めた。  だがセリオ・アロは諦めず、終焉の夜明け団を追放される直前に、信者たちを騙して保管庫に忍び込み、誰にも分らないように口寄魔方陣を設置した。  すぐに奪わなかったのは、終焉の夜明け団に追われないため。  それから数年が経ち、1人になりながらも多大な手間と時間をかけ、こちら側の口寄魔方陣を準備した結果、今こうして『アストラガルス』はセリオ・アロの手の内に収まった。  『アストラガルス』を転がし出た面によって運命が変わる。その運命を左右する危険性が、終焉の夜明け団でも問題とされたわけだ。  そしてもう一つの特徴は、持ち主に強大な力をもたらすとも言われており、セリオ・アロは口寄魔方陣を使い、何重にもなる厳重な管理下にあった『アストラガルス』を召喚し、運命と力を得たことになる。 ●  それを外から偵察していたのは、レヴェナントの構成員である『エイス』と呼ばれている男である。  エイスとは、レヴェナントで活動するうえでのコードネームであり、その意味は第8の男という。  エイスは長年にわたりセリオ・アロを追い続けて来た。  彼が終焉の夜明け団を追放になった後も。シャドウ・ガルデンに流れ着いた後も。  そして協力者を見つけ出し、資材調達をしながら、この小さな洋館に籠り研究に執念を燃やす姿を遠目で監視しつつ、セリオ・アロが禁忌に触れるのを、ただひたすらに待った。  元々危険視されていたセリオ・アロが本格的に動き出す。それだけを信じて。 (これで決定的な証拠にはなるが……。だがなんだ?まだ動きがある)  遠眼鏡で室内を確認すれば、セリオ・アロが発動させた口寄魔方陣はまだ起動したままの状態であり、あの小さな物体以外にもなにかを呼び寄せるつもりなのだろう。 「――もの……じゃない、あれはスケルトン。生物を口寄魔方陣で召喚しているのか!?」  複数のスケルトンを確認。でも生物を召喚するとは……。やはりセリオ・アロが入手したものは本物なのだろうか? 「ここからでも高い魔力は感じられる。しかし、あの男にこんな魔力は……ない」  終焉の夜明け団に認められる程度の魔力とエイスは認識していた。  だが、こんな高魔力をセリオ・アロから一度として感じたことはないというのに、今のセリオ・アロに感じるのは異質なる魔力。 「早急にセリオ・アロの拘束と、あの物体……『アストラガルス』の奪還をしなければならない」  偽物にしろ、本物にしろ、力があるものなのは確からしい。  それにセリオ・アロがいまだに終焉の夜明け団のローブを身に着け、左手の甲に十字架を埋め込んだままというのが気になる。  ――あの男は諦めていないのではないか?『アストラガルス』を持ち、その力をもって終焉の夜明け団信者に返り咲こうとしているのではないかと。  エイスは少しでも多くの情報を得ようと、洋館周りをくまなく捜索する。  それで得たのは、スケルトンは6体存在し、内2体は洋館の中。残り4体は外に配置し、多分ノワールバインドで動きを拘束して、侵入者が近づけば拘束は解かれ動き出す。  これはエイス自身が試しに近づいた結果論。倒せはしないが逃げるように一定の距離を取ったら止まったので分かったことだ。 「これ以上は俺には出来ない。後は司令部に連絡し浄化師たちの到着を待つしかあるまい」  長年追いかけたセリオ・アロをこの手でしとめたい意思は確かにあるが、自分では力不足なのも重々承知しているエイスは、今一度洋館を見上げ、思いを振り切るかのごとく足早にその場から立ち去ることにした。 ●  エイスからの報告を受けた教団本部は、この一件を重要案件とみなし、ただちに浄化師派遣の指令を下す。  セリオ・アロの捕縛。それが不可能であれば確実な抹殺。ならびに、いわくつきの品である『アストラガルス』の回収か破壊。そして召喚されたスケルトンの処分と、課せられた指令は重い。  あなたたちは指令を受け、転移方舟でシャドウ・ガルデンへ。そして馬車に乗り換え、セリオ・アロとスケルトンが待ち受けるカーミラ郊外の古く小さな洋館へと向かう。  スケルトンを退治し、狂信者セリオ・アロを拘束して『アストラガルス』を見事に回収出来るのか? 
自主訓練をしよう!
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帰還 2019-04-18

参加人数 5/8人 oz GM
 武術とは突き詰めてしまえば、どんな手段であれ殺せればいいと言う技術だ。  身を守る術と言えば聞こえがいいが、実際は卑怯万歳。生き残った方が勝者というシンプルな理念がある。  教団寮にある修練場は魔術学院にある魔術修練場のような大規模な戦闘訓練はできない。  教官が常駐し、魔術の使用が許可されている魔術学院の方が本格的に訓練できると圧倒的人気だ。  教団寮の修練場にも人気が少ない分、空いている。基本出入り自由で、時間が空いたときや夜や早朝に自主訓練したり、イレイスを振るったり、体術や基礎を鍛えるのに向いている為、こちらを利用する者もいる。  本来ならあなたたちも指令に出かけている筈が、司令部の不手際で半日ほど中途半端に時間が空いてしまった。  今から魔術修練場に行こうにも予約しておらず、定員オーバーだ。  あなたはパートナーと教団寮2階にある修練場で手合わせを行っている。  幾度かの指令をこなし、実戦の中で力不足を感じたあなたたちは指令の合間に自主的な訓練を行うようになった。  大抵新人の時に、教官から魔喰器(イレイス)を手放すことは死とイコールだと浄化師は徹底的に叩き込まれる。  初めから対武器のような高度な訓練ではなく、構えやステップと言った教官に習った基礎的な動きを反復する。  特に魔喰器を用いた型稽古は決められた動作を反復することでいざという時に反応できるようになるまで体に一連の動作を教え込む。  万が一イレイスが弾き飛ばされたり、何らかの理由で使えない時、対処できるように体術の基礎を学ぶ。それは基礎体力を付ける為でもある。さらに堅い地面に叩きつけられても受け身が出来るようになれば、戦闘で気を失わずに済む。  浄化師はベリアルやヨハネの使徒だけでなく、時には人である終焉の夜明け団やサクリファイスの残党を相手取ること求められる。  ベリアルやヨハネの使徒の時のようにただ倒すだけではなく、情報を得る為に生かして捕らえなければならない。  基本的な体術を身につけることで、次の攻撃を予測し、相手より先んじ制圧。できなければ防御及び逃走できるようになることが重視される。  浄化師は人々を守ることも大事だが、時には誰かが生き延びて敵の情報を司令部に持ち帰ることが優先されるときもある。  力なき正義は無力である。  それはあなたたち浄化師が一番知っているだろう。  力がなければ生かせる命を助けることもできず、己の身を守ることすら危うい。あなたが犠牲者の一人になるか、さらなる犠牲者を増やすだけ――それが現実だ。  あなたは何の為に強くなるのか、強くなって何を成したいのか、その力で何を手にするのか。  あなたはこれから先、浄化師としてではなく一人の人間としてどこを目指すのだろう。  その答えを見つけた者もいれば、未だ迷いの中にいる者もいる。だが、今はただひたすら何かを掴む為に足掻くしかない。
我が儘お嬢様とお茶会を
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帰還 2019-04-16

参加人数 2/8人 虚像一心 GM
 教皇国家アークソサエティのブリテンにて。 「つまらない……つまらないわぁ――ッ!」  とある屋敷の中で大声で叫んでいるのはアナという名前の少女。  一体何故大声で『つまらない』と叫んでいるのか、それはとても簡単な理由だ。 「なんで誰もわたしの相手をしてくれないの!? これじゃあちっとも楽しくないわ!」  アナ――彼女はとある資産家の一人娘だ。  彼女は貴族ではないものの、だが立場的には『お嬢様』である。  この屋敷のお嬢様である彼女は、子どもながらに毎日を楽しんで生きていて。  楽しんで、笑って、喜んで――それこそ本物のお嬢様らしく、自由気ままに過ごしたいのだ。  だが当然ながら、そんな願いはいつまでも叶うわけがなく、 「お父さまもお母さまも……お仕事ばっかでつまらない!」  アナの父と母は仕事のために、彼女の相手をしていられないのだ。  大人には大人の事情があるのだが、しかし子どものアナにしては、それは理解し難いもの。  何故? ――と。  どうして? ――と。  だが無論、いつも父と母がアナの相手をしているわけではない。  両親が相手出来ない場合は、この屋敷の使用人――『執事』や『メイド』達が相手をしているのだ。  だから今日も、我が儘を言うアナの相手は彼等がするのだが……今回はそうではないらしい。 「みんなみんな……みぃんなお仕事ばっかで、わたしは全然楽しくないわ! つまらない……つまらないのぉッ!」  そう、悲しいことに。  今日この日は、アナを除いたこの屋敷全員が仕事に追われているのだ。  全てが急ぎの用であるため、どうしても仕事に専念してしまう。  それにより、アナの相手をしてくれる者は誰もいないため、彼女は不満をまき散らしているのだ。 「――こうなったら」  ふと、アナはとある考えを思いついた。  一体どうすれば自分は満足出来るのか。  この退屈な時間をどうすれば楽しい時間に変えることが出来るのか。  その解決策は―― 「お外に行けばいいのだわ! お外に行けば、わたしと遊んでくれる人がいるはずだもの!」  外――つまりは屋敷の外。  少女が一人で出歩くのは危険な行為なのだが……しかし。  不運なことに、それを止める者は今現在、全員が仕事に追われているのだ。  つまり、誰も彼女が屋敷の外に出たのかは知らないわけで。 「さあ、お外にはどんな人がいるのかしら!」  アナは屋敷の正門から堂々と外に出て行ってしまった。   ■■■ 「さて――お外に出たはいいけど、一体なにをすればいいのかしら?」  外に出ることは出来た――だが何をすればいいのかを決めていなかったアナ。  誰彼構わず声をかけて、一緒に遊ぶ……というのは。 「……よくわからない人に声をかけるのは、怖いわ……」  『人見知り』にとっては、とてつもなくハードルが高いのだッ!  外を歩いている様々な通行人――しかしアナにしてみれば全く知らない、わからない存在だ。  ――もしかしたら怖い人かもしれない。  ――もしかしたら危険な人かもしれない。  そのような恐怖が頭の中を埋め尽くしているために、アナは怯えてしまう。 「うぅう……せっかくお外に出たのに、こんなに怖いなんて知らなかったぁ……」  外に出たのに、周りは全然知らないモノばかり。  知らない――それは未知だ。  未知はわからないからこそ恐怖であり、恐怖は怖いモノだ。  周りが怖いからこそ、アナは何も出来ずにその場で固まってしまう。  ――こんなことなら、もうお屋敷に帰った方が……と。  そう考えるアナに、だが。 「君、大丈夫?」 「ッ!?」  声をかける者が現れた。 「ぁ……わたしは、その――――あれ?」  声をかけられたことで無意識にその方向を向いたアナ。  知らない人に声をかけられて、驚いて声が震える彼女だが。  声をかけたのは――そう、無論ながら。 「あなた達――浄化師ね! その服には見覚えがあるわ!」  アナに声をかけたのは偶然傍を通りかかった浄化師達だ。  小さな女の子が道の真ん中で立ち尽くしていることを不思議に思った浄化師達は彼女に声をかけたのだ。  知らない人ではなく『浄化師』という立場は知っているアナ。  面識はないが、全然知らない存在ではないために、少しは安心出来るもの。  それにより、アナの沈んでいた心は一気に浮上した! 「ねえ、あなた達――わたしと遊んでくれないかしら!?」  …………はい? と。  突然のお誘いに、浄化師達は疑問の声をあげた。 「わたしね、退屈してたの。だからわたしと遊んでくださらないかしら?」  遊ぶ……遊ぶとな?  そう誘われた浄化師達は互いの顔を見る。  彼等はアナが着ている服がその辺で手に入れることが出来るようなモノではない――上等なものであることはわかっている。  そう、アナがどこかのお嬢様であることは何となく察しているのだ。  だからこそ、彼女と遊んでしまえば、怪我をさせてしまうのではないかと。  お嬢様に怪我をさせてしまえば、一体どうやって謝罪をすればいいのかがわからない、と。  ゆえに、素直に頷くことが出来ないのだ。 「でもただ遊ぶだけじゃつまらないわ……どうしましょう」  普段とは違う相手と遊ぶ――それを楽しむためには一体どうすれば良いのか、と。  アナは真剣に、だが子どもながらに考えて……そして。 「そうだわ! お茶会――お茶会をしましょう!」  …………、  ……………………お茶会? 「そう、お茶会だわ! わたし、浄化師のことは詳しく知らないの。  だけど目の前に浄化師がいるのだから、お話が聞きたいの。せっかくお外に出たんだもの、知らないことが知りたいわ!  ねぇ、良いでしょう?」  ……まあ、お茶会程度は問題ないだろう。  怪我をする危険はない。  目の届く範囲にいる。  更には――今日はアナと同じく、退屈をしていたのだ。  暇を潰し、尚且つ少女の願いを叶えることが出来る――まさに一石二鳥で。  そのことに、浄化師達は笑みを浮かべて頷いた。 「やったわ! 浄化師とお茶会だわ! 楽しみだわ楽しみだわッ!」  無邪気に喜ぶアナの姿を見て、浄化師達の顔は和らいでいく。  ああ、やはり子どもが喜ぶ姿は見ていて飽きない、と。  ――だが、お嬢様がただのお茶会に満足するわけないだろう。  せっかくのことだ、少し本格的にやってみるか。  そう――貴族が嗜むような喫茶をッ!
梅花迷宮は絆を試す
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帰還 2019-04-11

参加人数 8/8人 あいきとうか GM
 深い森の奥深く。年老いた巨木のうろが、わたくしの住まいです。  わたくしはそこで膝を抱え、眠っているとも目覚めているともつかないまま、朝と夜を繰り返します。  ここには動物たちさえ寄りつきません。  ときおり吹く風が奏でる枝葉がこすれる音。それだけが、息をひそめて生きるわたくしの世界の音色のすべて。  ええ、これでいいのです。  ロスト・アモールが起こるまで、わたくしは他の妖精たちと同じく、人に紛れて生活をすることもありました。  ですが、あの事件で知ってしまったのです。  人は、人類は、もはや愛も絆も喪ってしまったのだと。  あれほど眩く尊かった心のすべては、砂糖菓子のようにもろく崩れたのだと。  人の世を見守っていた妖精たちは、あの事件以後――正確にはその後のラグナロク以後、完全に中立の立場となりました。  人類の味方ではなく。  さりとて神の味方でもない。  そうすることで自分たちを守ろうとしたのです。  わたくしは、もうどうでもよかった。  人類も妖精も神も、お好きに生きてくださればいいのです。  わたくしはここで誰に知られることもなく、誰に会うこともなく、漫然と日々を過ごし、消滅の日を待ちますから。  自死さえできない妖精の身の、なんと嘆かわしいことでしょう。 「おはようティターニア! 朝だぞ!」  言うが早いか、木のうろに上半身を入れたオベロンがわたくしの手を引きました。  抵抗する暇などありません。  わたくしはつまずきながら外に引きずり出されます。  ああ、朝日が眩しい。 「もうすぐ我らの婚儀だというのに、相変わらず暗い顔でこんなところにこもっているのだな! 不健康だぞ!」  オベロン、声が大きいです。うるさいです。  ですがあなたが元気だということは、もう春がきていたのですね。 「ここにいては分かるまい。なにせ年中、草と木と葉しかないからな。なにゆえ花のひとつも咲かせないのだ?」  不思議そうに首を傾けたオベロンが指を鳴らすと、周囲に花々が咲き乱れました。  色とりどりの光景に、わたくしは目を細めます。 「まだ人類に失望しているのか?」  絶望、とは、オベロンは言いませんでした。  わたくしは顎を上げ、彼の整った顔を見つめます。  薄紅の瞳はひどく優しく、静かに、わたくしを見下ろしていました。  ここに引きこもったわたくしを、決して孤独にはしてくれなかった春精オベロン。  声を封じられたわたくしを、妻にしようと言う物好きな殿方。視線を交わらせるだけで、わたくしの考えをたいてい読みとってしまう、愉快で恐ろしい変わり者。 「ティターニアは諦めが早すぎるのだ」  わたくしはうつむいて沈黙します。  早くなどありません。わたくしはしっかりとこの目で、争いの数々を見ました。 「いいや、早い。なにせ人類はすでに愛と絆をとり戻している。あの宝石のような感情は今、確かにあの者たちの心にあるというのに」  ……。 「顔を背けるな。目を見開け。森の奥深くにこもっていてはなにも分かるまい。認めよ、ティターニア。人類の歴史はまだ終わっておらん」  オベロンは、人類が好きです。  彼だけではありません。表向きは中立でありながら、裏で人の生活に手を貸す妖精がいることくらい、わたくしも知っています。  たとえばオベロンの旧友、氷精グラース。わたくしの兄である空精アリバ。  他にも複数の妖精たち。 「竜の渓谷が今一度、人とともに歩むと誓った。魔女と称され迫害されていた者たちの一派が和解を求め、互いに歩み寄った。常夜の国は長く閉ざしていた門を開き、人類は今、手をとりあって、己たちよりはるかに強い神に牙を剥いておる」  オベロンがもたらした嘘のような情報に、わたくしは動揺しました。  ええ、ですがよく分かっています。彼はわたくしに嘘をつかない。本当に――人の世は、変わっているのです。 「場所は我が設ける。ティターニア。今一度、汝自身で見極めよ」  春風が森を吹き抜けました。  厚く重なった枝葉が揺れ、明るい日差しが一瞬だけ、地表までなににも遮られずに届きます。  その眩しいこと。空の青いこと。花の香り。  人の側にあったときには、意識せずとも感じていた春の気配。  かつて人類の心から失われた陽だまりのような感情を、わたくしは想わずにはいられませんでした。 『教団司令部より、浄化師の皆様に発令します。  本日未明、教団本部の片隅で梅の花の異常な開花を確認しました。  近くで研究用に植えられていた【おばけヒマワリ】が関係していると思われますが、そこは専門家たちに任せるとして。  皆様には梅の木を媒介として生じた魔法空間の攻略をお願いいたします。』
エイプリルフールとトゥルーエイプリルフール
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帰還 2019-04-03

参加人数 2/8人 鞠りん GM
●  4月1日はエイプリルフール。  4月2日はトゥルーエイプリルフール。  この違いを分かりますか?  エイプリルフールは「嘘をついても良い日」です。  ですが、教皇国家アークソサエティでは、嘘をつける期限は正午までという風習があります。  まあ……今は多国籍化したために、終日嘘をついても問題視はされませんが。  そしてトゥルーエイプリルフールは「真実の日」です。  前日とは反対に、真実しか話してはいけないとされています。  そのため、嘘偽りのない愛の告白……プロポーズをする者が多いとも言われています。 ● 「嘘をついて真実を語る?」  この話を聞いて『ジャン・クリストフ』は、疑問に思う。  さんざん嘘をついた次の日に真実を語れとは、まるで前日の懺悔だろうと。 「そんなものだと思えばいいのよ。エイプリルフールもトゥルーエイプリルフールも風習なんだから」  考えるジャンに声をかけたのは『神代マユカ(コウシロ・マユカ)』、ジャンのパートナーである。 「風習でも誰かが嘘をつくわけなんだし」 「でも、つかないかも知れない。絶対にやらなくちゃダメという風習でもないもの。……でもトゥルーエイプリルフールは、ちょっと気になるかしら?」  真実の日だもの、なにかを語ってくれるわよねジャン?などと言って、ジャンにモーションをかけてみるマユカ。  本音を言えば、マユカはジャンのことが好きなのだけど、当のジャンはのらりくらりと、マユカの気持ちをはぐらかし中。  積極的なマユカに、ジャンはなかなか応えられないだけなのだが、はっきりと返答をしていないのは確か。 (もう!ここまで言っても……。ジャンの真面目で堅物っ!)  相変わらずのジャンに、少々イライラがつのるマユカだった。 ● 「――というわけなのよー!」  恒例の体当たりも玉砕し、教団寮の食堂で仲間に愚痴をこぼすマユカだが。  いつもと言えば、いつもの光景なので、仲間たちは苦笑い。 「今年のトゥルーエイプリルフールはと思ったのに残念」  そんなマユカを見かねて、仲間の1人が口を開いた。 「じゃエイプリルフールに、嘘をつかせればいいのではないか?」  そしてまた1人。 「なるほど。嫌いは好きの裏返し、そんな手もあるわね」  マユカを囲んでいた仲間たちは、悩めるマユカを助けるべく、色々な提案をしていきます。 「素直にトゥルーエイプリルフールに言わせるのもアリじゃん」 「あの堅物ジャンが素直に言うか?」  みんなは知っているんです。ジャンの性格は、真面目で堅物で……そして不器用だと。  本当はマユカのことが好きなのに、告白のしかたすら分からない不器用さん。……それをジャンとマユカと仲がいい人たちは、みんな知っている話とはマユカに言えず、毎日こうして付きあっている。 「言わないなら、言うようにしむけようか?」 「え!?」  仲間の1人が言った言葉に、ビクッと驚くマユカ。しむけると言っても、ここにいる仲間たちでは、ジャンは耳を貸さない。  マユカがこうして愚痴を言っているのを、ジャンは知っているから。 「……無理よ。ジャンに知られてしまっているもの」  それもそうかと思う気持ちと、まだ手段はある気持ちが、仲間たちの中で交錯する。 「私たちじゃなければ?教団にどれだけの浄化師がいると思っているの?手を借りたっていいじゃん」  確かにこの薔薇十字教団本部には、浄化師、教団員など合わせれば、星の数ほどいるのではないか。そう思うほど人は沢山いるわけで……。  仲間を頼れば、ジャンが知らない浄化師から手伝って貰えるかも知れない。そう思ったマユカは、この話に賭けてみることにした。  マユカと仲良くしている仲間たちは、四方八方に手を伸ばし、あなたたちもマユカの手伝いに参加することにはなったけど。  自分たちだって、エイプリルフールやトゥルーエイプリルフールは楽しみたい。  だから、2人を手伝いながらも、この2日間をパートナーと一緒に楽しんでみることにした。
影なき少女は何を想う
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帰還 2019-03-30

参加人数 3/8人 虚像一心 GM
 ――さて、今日は何をしようか。  最近はこれと言った指令もなく、平和な時間が続いている。  浄化師がこんな平和ボケをしていても構わないのか、と職業病特有の悩みに襲われるが、そもそもの話。  いくら浄化師とは言え、働き過ぎては疲れてしまうものだ。  それが時には命がけのことであるのならば尚更のこと。  その現実を、疲れを――忘れる為には平和な時間は必要なものだ。  こう、なにもせずにただただ時間が過ぎていくだけの日があっても罰は当たらないだろう。  それに、今日は珍しく天気が快晴だ。雲一つない青い空が一面に広がっている。  遮るものがなく、太陽の光はここぞとばかりにその暖かい光を世界に照らしてくれている。  ――うむ、まさに『平和』と言う文字しか見当たらない。  ではその平和な一時を時間が流れるだけで過ごす――否だ。  せっかくの一時なのだ、たまには目的もなくぶらぶらしても構わないだろう。  そう思い、外の世界で、さあ素晴らしき時間を満喫しようではないかッ!  と、外に出てしばらくした後に、 「お母さ~ん!」  遠くから少女の声らしき声が聴こえた。  ――ふむ、少女が自分の母親の元に行こうとしているのか。  想像すると、何とも微笑ましい光景が浮かぶ。  それに、声から察するに特に事件性は無さそうなので、そのまま平和を満喫しようとする……が。 「ねえねえ、お母さん?」  その声は……先ほどよりも近いところから聴こえた。  だがまあ、少女とその母親が向かっている方向が、自分達と同じなだけだろう。  そう思い、気を取り直して――さあ! と。 「……お母さん? お母さん!」  ……明らかに、間違いなく。  その声は遠くに行くことも、距離を維持することもなく。  徐々に、しかし確実に――自分達の方に近づいている!  まさか……そんなことがあるわけない。  そうだ、これはただの勘違いだ。きっと疲れすぎているからだろう。  だから、声が聴こえた方向に、それはないはずで―― 「――あ、ようやくこっち見てくれた! ねえ、お母さんッ!」  …………、  ……………………勘違い、ではなかった……  声が聴こえた方向に視線を向けると、そこには見知らぬ少女が。 「ねえねえお母さん、あそぼ? いい天気だから、あそぼ?」  その少女は『祓魔人』を「お母さん」と言いながら、その袖を引っ張って。  その光景を、パートナーである『喰人』は不審そうな目で睨んでいる。  ……いやいや、知りませんよ? これっぽっちも記憶にないんですが?  そう訴える祓魔人に、だが喰人の視線は先ほどよりも鋭く、痛いものに変わる。  ああ……あらぬ誤解が深まりつつある……!  自分とこの少女には何の接点もないと言うのに――ッ!  そう絶望する祓魔人に、しかしその少女は喰人の方を見て。 「――そっちのお母さんもあそぼ?」  ――ッ!?  と、第二のお母さん発言を投下した。  ……待て待て、一旦状況を整理しよう、と浄化師の二人は急遽、会議を開く。  まず最初に、見知らぬ少女がいきなり自分達のことを『お母さん』と呼んできた。  ――うむ、全くわからない。 「ねえねえ、あそぼ? わたし、お母さん達とあそべなくてずっとたいくつだったの」  二人で会議をしていることに、少女は不満を持ったのか、二人の間に入って来た。  ……まあ、とりあえずは名前を訊くことから始めるか。  何事も名前を知ることが大切だ。  それに、もしかしたら名前を知ることで、少女の事情を知ることが出来るかもしれない。  そうと決まれば、少女の名前を訊こうと、膝を曲げて目線を合わして、名を問う。 「わたし? ――エリーゼだよ」  ふむ……エリーゼ、とな。  今の発言からするに、この少女の認識では、自分達とは『初対面』であることがわかった。  となれば、見知らぬ少女エリーゼは迷子なのかもしれない。 「でねでね、なにしてあそぶ!?」  ……とりあえず、先ほどから不審な視線をぶつけてくる周りが非常に気になって仕方がない。  もし浄化師という立場でなければ、間違いなく世間的に危ない人種として見られていただろう。  抱かれたその不審を解く為に、ここはエリーゼと遊ぶことが適切だ。  だが……しかしながら、先ほどから奇妙な違和感がある。  今日の天気は快晴だ、太陽の光がこれでもかと世界を照らしている。  にも関わらず、エリーゼの足……足元に在るべきはずのモノがない。  ――そう、『影』が。  エリーゼには影がないのだ。  この世界の全ての物質には影がなければいけない。  影がないということは、それはつまり――物質ではないということ。  生き物も物質に当てはまる……となれば。  影がないということは、物質ではない――生き物でもなく、この世のモノではないということだ。  なら……この少女『エリーゼ』は――――…… 「ねえねえ、なにしてあそぶ!?」  ……とりあえずは、遊ぶことにしよう。  遊んでいる内に、何かわかるかもしれない。
木漏れる光の子守歌
普通|すべて

帰還 2019-03-26

参加人数 6/8人 土斑猫 GM
 ……春に桜が香る夜は……雲雀が恋歌歌うまで……父の背に乗り眠りましょう……  ……夏に蛍の灯火燃ゆる夜は……椎に空蝉止まるまで……婆の歌にて眠りましょう……  歌が聞こえる。  優しく。悲しく。  切なく。愛しく。  延々と。  絶える事なく。  歌が、聞こえる。 「……聞こえるな……」 「ああ……。気味の悪い事だ……」  茂みの中から顔を出した数人の男は、そう言い合って顔を見合わせた。  そこは、とある街の郊外にある森。その中にポツンと立った、古びた館の前。  話は、少し前に遡る。  この館には、三人の家族が住んでいた。初老の男と、その妻。そして、まだ幼い娘が一人。主の男は、とんだ偏屈者で人嫌い。人が近づき難いからと言って、獣のうろつく森の奥深くに館を建て、家族もろともに世捨て人の様な暮らしをしていた。  そんな男に、若い妻は誠心誠意尽くしていた。書斎に篭りきりの夫に代わり、館の周りに畑を作り、森に出ては狩りをして一家の生活を支えていた。  時折街に出てきては日常品を買い求めたりしていたが、夫の言いつけなのだろう。街の人々と深く関わろうとはせずに、用を済ませるとそそくさと森に帰っていくのが常だった。  そんな彼らを街の人々は気味悪がり、迫害こそしないまでも、遠く距離をおいて接していた。  そんな毎日に、異変が起こった。  件の妻が、姿を現さなくなったのだ。それまでは週に一回は街に出て来ていたものが、パッタリと絶えた。街の人々は、最初のうちこそ気にも止めなかった。しかし、それが一ヶ月二ヶ月と続くと、流石におかしいと思う様になった。興味を持った街人がコッソリと見に行った所、そこにはひっそりと静まり返った館だけが立っていた。  畑は荒れ果て、子供の玩具が散らばり、半開きになった館のドアだけがキィキィと寂しげな音を立てて揺れていた。  あまりにも不気味な雰囲気に、訪れた街人は館の中を確認する事も出来ずに逃げ帰った。  話を聞いた街の人々は、かの家族は死に絶えたのだろうと噂した。獣に襲われたか。それとも疫病でも得たか。とにかく、あの館に生きる者はもういないのだろうと。  そう結論づけたものの、それではかの家族を弔おうとする者は現れなかった。憐憫の思いよりも、得体の知れない場所への恐怖が勝ったのだ。そもそも、自分達との関わりは薄い存在。そこまでしてやる、義理もない。いずれ、自然が全てを土に返すだろう。  そして、人々はだんまりを決め込む事にした。  けれど、世の中は甘くなかった。  今度は、街の住民達に異変が起こったのだ。  標的は、子供だった。街の子供が一人。また一人と姿を消し始めた。行方を捜す街人達は、森へ迷い込んだのではないかと山狩りを始めた。  子供達の姿を探して森の中を歩いていた街人の一人が、かの館の前へと出た。前にも増して、荒れ果てた館。けれど、それとは違うモノが街人の背筋を怖気させた。  『歌』だった。  誰もいなくなった筈の館の中から、誰のものともしれない歌が流れてきていた。  優しく。悲しく。  切なく。愛しく。  か細い女性の声で紡がれるそれは、子守歌。  呆然と立ち尽くす街人。その前で、更なる異変が起こる。  彼が立っていた茂みから離れた木々の中から、一人の子供がさ迷い出て来た。  見間違える筈もない。昨日、行方をくらませた少年だった。  名を呼ぶ。  けれど、反応はない。虚ろな瞳で前を見据えながら、少年はフラフラと館に近づいていく。駆け寄って、連れ戻そうとしたその瞬間――  バン!  館の扉が、大きく開いた。中から伸びてくる、白いモノ。それが、不気味に蠢くレースのカーテンだと知れると同時に、少年に巻きつく。そのまま、蛙が虫を喰らう様に少年を館の中に引き入れる。  バタン!  一人でに閉まる、館の扉。  全ては一瞬。  そして、館は何事もなかった様に再び歌を奏で始めた。  逃げ帰った街人の話を聞いた人々は、確信した。  原因は、あの館。  行方を晦ました子供達は、何者かによってあの館に囚われているのだ。  直ちに、街の男達によって捜索隊が組織された。掻き集めた得物で武装し、彼らは館に向かった。  しばし後、館の前に着いた彼らは様子を伺いながら、先の会話を交わしていた。 「……ここでこうしていても、仕方がない……」 「そうだな……。行くか……」  恐怖に震える足を叱咤し、男達が立ち上がろうとしたその瞬間――  バキバキッ!  少し離れた場所の木々が、大きな音を立てて倒れた。 「な、何だ!?」 「お、おい!! 見ろ!!」  幾人かが指さした先で、何かが蠢いた。  キリキリキリキリ……。  不気味に響く、機械音。それと共に現れたのは、白い攻殻と、その内に赤い光を内包する巨体。  認めた男達が、悲鳴を上げる。 「ヨ……ヨハネの使徒だー!!」  そう。現れたのは、忌むべき神託の具現者。『ヨハネの使徒』。その数、4体。昆虫の節足の様な脚を回しながら、館に向かって移動していく。 「あ、あいつら、館を狙っているのか!?」 「いかん!! あの中には、子供達が!!」  駆け出そうとした若者を、別の男が止める。 「駄目だ!! ヨハネの使徒(あれ)は、俺達でどうにか出来る代物じゃない!!」 「しかし……」 「浄化師だ!! 誰か、教団に連絡しろ!! 浄化師を呼ぶんだ!!」  その声に弾かれる様に、幾人かが森の外に向かって走り出す。 「頼む……。間に合ってくれ……」  祈る男達の前で、ヨハネの使徒が館の外壁に脚をかける。  ……秋に雁が渡る夜は……サルナシの実が熟れるまで……爺の語りで眠りましょう……。  ……冬に雪虫舞う夜は……雪が星に変わるまで……母に抱かれて眠りましょう……。  歌は、途絶えない。  まるで、何かを守る様に。  歌はいつまでも流れ続けていた。
ミニマム・ノスタルジア
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帰還 2019-03-25

参加人数 8/8人 鞠りん GM
●  教皇国家アークソサエティ、その中に存在する薔薇十字教団本部。更に東部にある教団寮の共有部分で、1人の浄化師が飲み物が入ったコップを持ち、頭を抱えながら歩いていた。 「参ったなぁ、こんな物を貰っても、使えないだろう」  コップをユラユラと揺らし、中身の液体をため息混じりに見つめるのは、ライカンスロープの祓魔人【シモン・ルベ】である。  事の始まりは、シモンが偶々食堂を通りかかった時に、偶々一緒になった教団員から、この飲み物を少々強引に押し付けられて、断り切れずに貰ってしまったため。  どう考えても、あれはカレッジの研究員さんだ。そんな人が渡す飲み物と言えば魔術絡みと相場は決まっている。だからこそと困っているシモン。  下手に捨てれば二次被害ということも考えられ、捨てるに捨てられず、こうして当てもなく寮内を歩いているんだが、どうすれば良いんだと悩みまくり中。 (思いっきり爆弾を持たされた気分だ)  見た目はレモネードと言ったか?そんな飲み物に見えるが、どう考えても中身は別物だと判断出来る。  いっそのこと本部から飛び出し、差し障りの無い場所に捨てる。そうだそれが良い!  心が決まったシモンは、密かに教団寮から抜け出そうとしたが、それは突然現れたシモンのパートナーによって、あっさりと失敗に終ってしまった。 「シモン?そんなに慌ててどうしたのよ」 「いや、別に慌ててなどいないが、いきなりだなリリー?」 「なに言っているのよ、次の指令の話がしたくてシモンを探してたのよ。それなのにシモンったらどこにも居なくって、漸く見つけたんですからね!」  彼女はシモンのパートナーで、ヴァンピールの【リリー・ロゼ】、勝ち気な性格で、毎回振り回されるのはシモンの方になる。  だからリリーに見つかる前に処分したかったとは、シモンでもリリーには言えない……反論が怖い為に。 「??その手に持っている飲み物はなあに?シモンあなた甘い飲み物は苦手でしょう」 「これはだな……そう貰ったんだ、俺は要らんから捨てようとしていた」 「氷も入っていて、美味しそうなレモネードなのに、捨てるなんて勿体ないじゃない!」 「あっおいっリリー!?」  シモンが持っていたコップをリリーは奪い取り、中身が分からない飲み物を、美味しそうに飲んでしまった!? 「リ……リリー?」 「んー美味しい、レモネードは清涼感があって良いわよね…………あ、あれ?」 「!?」  あれ?とリリーが言った後、リリーの体がみるみると小さくなっていく。  シモンは幻でも見るかのように、縮むリリーを茫然と見ていることしか出来ず、最後には子供の姿になってしまったリリーを、穴が開くほど見つめてしまっていた。 ● 「……おじさんは誰?ここはどこ??ママ?パパ?あたし、こんな場所知らないよぉ」 「……はぁ!?」  小さな子供の姿になってしまったリリー。しかもシモンのことを、知らないおじさんと言うところを見れば、記憶も子供にまで戻ってしまっているじゃないか! (なんで服まで縮むんだ? いやいや、問題はそれじゃないだろ!) 「リ……じゃない、お嬢ちゃんは俺が分からないのか。とりあえず幾つなんだ?」 「私?5才よ。これからね、パパとママと一緒に馬車に乗って、ラミアーの農場を見学にいくの。そのあとに、おいしいお料理も出してくれるって。リリーは、パパとママと一緒に食事するのが楽しみなのに、変な場所に連れてこられちゃった!あーん!パパー!ママー!リリーを1人にしないでぇー!!」 「……リリー」  リリーの家族はべリアルに襲われ、両親も兄妹も全員亡くなっている。  そう、もう居ないはずの肉親が、まだ生きていたころの記憶なんだこれは。 (俺の知らないリリー。そして一番幸せだったころのリリー。あの飲み物のせいだと分かってはいるが……今すぐ治せとも言いにくい)  先ほどの教団員を探して捕まえ、解毒薬を無理やりでも貰おうと思ったシモンだったが、リリーの行動や仕草を見ているうちに、そんな気も消えてしまった。  ただ今は、不安がるリリーの側にいてやりたい。薬が抜ける間でもいいから、幸せな時を見守ってやりたいと思うシモン。 「パパとママが見つかるまで、俺が一緒にいてやる。ここで待っていれば来るかも知れないからな」 「ほんとう?おじさんと一緒にいるよ」 (嘘だが、悪い嘘じゃ無い)  まだ浄化師になる前の、幸せそうなリリーに、己の5歳だったころを重ねるシモン。幸せだったころの思い出は捨てがたいものと、少しの間でいいから、普通の子供をあやすように、側に座ってリリーを見守ることにした。 ●  シモンが子供になってしまったリリーをあやして1時間ほど経ったころ、偶然通りかかったのは、よく組む仲間の【モリー】、事情を説明すれば、モリーはこの飲み物を知っていたよう。 「そりゃ初恋レモネードだ」 「初恋レモネード?」 「ああ、確か魔力を帯びた四葉のクローバーが、幼児逆行の効果を発揮する……だったか。心配するな、2時間もすれば元に戻る」 「……2時間か」  少しの間だけ、幼いリリーと接して、シモンの方が儚い幸せにほだされてしまったのは確か。自分を知らなくてもいいから、幸せな夢を見ていて欲しい。そんな考えがシモンの中にはあったが、2時間で効果が切れてしまうと聞いて、シモンの心は心境複雑になる。 「おじさん、どうしたの?」 「いや、なんでもないんだ。ほら、まだお菓子も飲み物も沢山あるぞ」 「うん、食べる!」  子供の純真な心は、日々戦いばかりの浄化師の心を癒してくれるよう。  そしてシモンとリリーの話を聞いた、あなたたちも、2人が居る場所に来てしまった。 「見せ物じゃないぞ!」 「まあまあシモン、幼児逆行なんて中々見れるもんじゃないからな」 「こんなに集まった原因はオマエかモリー!」 「……みんな癒されたいのさ」 「…………」  モリーの言葉にシモンは口を閉じる。  ここに居る全員かは知らんが、確かに癒されたい心は存在する。それを止める権利などシモンには無いと思った。 「初恋レモネードだったよな、教団員さんから貰って来るか」 「あ、私の分もお願い」 (はっ!ちょっと待て!?)  シモンは仲間たちが自分を見に来た理由が、シモンが考えていたことと違うのに気がついた。  そう、あなたたちは「もしパートナーが5歳になってしまったら」と考えて、覗きに来ていたのだ。  もしもの可能性に、あなたたちは、素知らぬ顔でパートナーに初恋レモネードをのませ、子供の姿に戻ってしまったパートナーに話かけてみた。  2時間の間、5歳程度の子供になってしまったパートナーを、あなたはどうするのか。  ――それは、あなた方次第。
青に魅せられて
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帰還 2019-03-20

参加人数 3/8人 十六夜あやめ GM
 休暇兼環境調査の指令を与えられた浄化師の喰人と祓魔人は蒸気機関車や馬車を使い『教皇国家アークソサエティ』から続く街道を進んで行く。目的地に近づくうちに土を踏む感触が変わる。足元の土の上にはうっすらと雪が覆っていた。先程まで木々が生い茂っていたが、気が付けば樹氷と霧氷がちらほらと見受けられる。青藍の空から舞う粉雪は緩やかに落ち、ほんのりと青色を帯びているようだった。進むに連れて徐々に厚みを増していく雪の上を歩いていくと青に染められた美しい神秘的な街が姿を現した。  一年中氷張りで雪が降っている国『ノルウェンディ』。温泉や雪と氷を扱ったレジャー施設などが栄えている国だ。  浄化師達は観光客向けのお店が多く立ち並ぶオーセベリ地区へ向かった。雪が積もっていない箇所の地面に敷かれたタイルやお店の外壁、街灯やベンチといった全てが氷でできているような青い街並みをしている。そこにはレストランや土産物店や温泉プールなどのレジャー施設といった様々なお店が営まれていた。 「休暇でノルウェンディへ行くならついでに環境調査をお願いします」と薔薇十字教団から指令はあったが、指令内容は至って容易なものだった。  気候の変化はないか。または変化による影響はないか。  観光地としての収入で経済が回っているため、温泉や雪と氷を扱ったレジャー施設などの視察。  名産品である「トロール・ブルー」の製造や、トナカイの畜産、林業の視察。  国内での食料供給が安定しているか。などだ。  指令書には全ての確認は必要ないと書かれており、休暇のついで程度に調査してほしいとの内容だった。  ノルウェンディでの休暇に心が躍る浄化師達。行きたいところ、食べたいもの、やってみたいこと、アークソサエティにはないものがたくさんある!  パートナーと知り合って間もない浄化師も仲が深まってきた浄化師もお互いをより深く知るいい機会かもしれません!  神秘的な空間で過ごす休暇はきっと癒しを与えてくれるはずです!  思いっきり冬のノルウェンディを楽しんでください!
祓魔人は楽しみたい
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帰還 2019-03-17

参加人数 3/8人 虚像一心 GM
「…………」 『祓魔人』と『喰人』のペアで構成されている浄化師――その『祓魔人』が何もせずに、ただボウっと空を見上げている。  何か自分の知らないところで悩みでもできたのかと。  そう思う『喰人』は、その傍でパートナーの顔を見る。  いつ何時も共に行動するパートナーだが、自分の知らないところで悩みを作ることは当然あるだろう。  それが一つか二つ、またはそれ以上か。まあそれはどうでもいい。  それを共に行動している自分に相談するか否か、それを決めるのは本人次第――だが。  もはや『一心同体』と言っても過言ではないパートナーの自分が傍にいるのだ。  どのような悩みであれ、相談してくれればいいではないか。  些細なことでも、話してくれればいいではないか。  そう訴える視線をぶつけても、パートナーは相変わらず空を見上げている。  話そうとしない、相談しないのは――それが、取るに足らない悩みなのか。  それとも他人には話しにくい内容なのか、と。  そう思うが、しかし――そんなものは知ったことではない。  何か悩んでいることは明白で、悩んでいるそれをパートナーの自分に相談しないのは信用してくれていないのか、と。  空を見上げているパートナーにそう言うと。 「――――」  視線を変えずに、無言で手を差し出してきた。  差し出したその手に一体何の意味があるのかはわからない、が。  握られているその手の中には、何か重要なものがあるのではないかと。  そう思い、握られている手の下に、自身の手を置く。  視線を変えないパートナーはそれを察したのか、その手を開いて握っていた――一つの小瓶を渡した。  ……はて、この小瓶は一体なんだろうか?  ラベルは貼られておらず、中にはほのかに淡いピンク色をした液体が八分目まで入っている。  これは何かの薬かと――そう訊ねると。  返って来た言葉は、  ――――『性別変換薬』と。  …………、  ……………………。  たっぷりと、長い間を置いて。  必死に理解しようと試みたものの、それでも理解できなかった為にもう一度訊き返す――だがそれでも。  返って来た言葉は、やはり『性別変換薬』と。  ああ、これは夢なのか。  疲れが溜まり過ぎて、現実ではあり得ない妄想を見ているのかと。  それとも、自分では気づいていないだけで、実は物凄く体調が悪いので幻聴が聴こえているのではないかと。  そう思う中で、だがしかし――ようやくパートナーの『祓魔人』はこちらに視線を向けて。 「使って良い?」……と。  聞き違えか、何やら不審な言葉が聞こえた気がするが、恐らく聞き違えでも何でもないだろう。  だから、誰に使うのかと――そう訊くと。  目の前のパートナーは人差し指をこちらに指して。  ……その最悪な展開に、未来に、絶望した。  つまりは、その……あれだ。  一体どこで手に入れたのかわからない『性別変換薬』とやらを、パートナーである自分に使おうとしているのだ。  どういう原理で性別が変換するのかわからないそれを、一体いつ使おうとかと悩んでいたのだ、自分のパートナーさまは。  まあ無論ながら――全力で、丁重に断るッ!  丁寧に、しかし鋭い切れ味を持った、まさに刃物の如き返答に、だが目の前のパートナーさまは。  親指をグッと立てて、何も問題ない。勝手に使う、と。  真顔でそう言った我がパートナーさまのその思考に、猛烈に頭が痛くなった。  要するに――そちらに拒否権はない。例え全力で拒否しようが、無理矢理呑ませる、と言うことらしい。  ならばそう……残された選択肢は一つだけ。  自分の手の上にある小瓶を、硬い地面にたたきつけて使い物にならなくすれば良いだけのことッ!  そう決断し、忌まわしい薬をこの世界から消し去る勢いで手に力を入れる……だが。  力を入れて握った手に、小瓶の感触はなかった。  慌てて手の中を見てみると、そこには先ほどまであった忌まわしい薬が入った小瓶がなかった。  もしかして落としてしまったのかと、周りを探してみると、 「…………」  その忌まわしい薬が入っている小瓶は、今この瞬間だけ自分の敵になったのではないかと思えてしまう――我がパートナーさまの手の中にあった。  どうやら割られることをいち早く察知して、即座に、一瞬で回収したようだ。  一体何が我がパートナーさまをそこまでさせるのか、それを訊くと。 「単に面白そう」――と。  物凄くわかりやすい願望を答えた。  もはや目的……『薬を自分に呑ませる』ことを成し遂げるまで絶対に止まらない機械と化したパートナーさまは何があろうとも決して諦める気はないようで。  自分がその『性別変換薬』を呑むことは決定事項らしい。  ならば……もう観念して、諦めるしかあるまい。  だがせめて――できれば、誰にも知られずに終わりたい。
梅の子供神さんと遊んであげよう
普通|すべて

帰還 2019-03-14

参加人数 3/8人 春夏秋冬 GM
 2月。吹く風は冷たく、けれど春の気配を滲ませる。  そんな、新たな季節の移ろいを感じさせる頃に行われるのが、梅花祭りだ。  由来は比較的新しい。  東方島国ニホンと教皇国家アークソサエティが、国交を正式に樹立した際に遡る。  友好の印として送られた無数の梅の木が根付き、花咲いたことを祝って行われるようになったのだ。  各地に梅の木は贈られたので、それぞれの土地で梅花祭りは行われている。  花見をして楽しんだり、梅の実を使った料理のコンテストをしてみたり。  それまでアークソサエティには無かった梅を、皆は親しむようになったのだ。  そんな梅の木の中で、その木は特別だった。  高さは3m。良く手入れのされた梅の木だ。  白い花を咲かせ、心地よい風に枝を揺らしている。  風は、その梅の木が吹かせているものだ。  なぜ、そんなことができるかと言えば、『彼女』は八百万の神であるからだ。  八百万の神とは、人々の信仰心が力となり『神』と呼ばれるほどの存在になったモノのことを言う。  信仰の規模は各地域に納まるモノもあれば、国単位で信仰されるほどのモノも。  今ここで、ニホンの神社を模して作られた場所に祭られている梅の木は、それほど強力な八百万の神ではない。  けれど、大元と言えるモノは、違う。  ニホンにおいて、学業成就のご利益があるという御神木、それが親なのだ。  ニホンという一つの国全体に知られるほどの八百万の神の御神木。  その御神木が実らせた種を、アークソサエティとの友好の印として送られ芽吹いたのが、今この場で咲いている梅なのだ。  彼女は今、じっと好奇心いっぱいの眼差しで、自分を祭っている神社にやって来る人々を見詰めている。  見詰めているのは、5、6才くらいの女の子。  女の子は、梅の木である風華が作り出した分身だ。  風華は、自分自身である梅の木に隠れるようにして、顔だけ覗かせ人々を見詰めている。  そわそわと、今すぐにでも近付いて行こうとするように。  けれど、邪魔をしてはいけないと、我慢していた。  いま風華の祭られている神社では、梅花祭りの準備がされている。  風華に奉納する踊りや歌だけでなく、屋台の用意がされていた。  (あそぼうって言ったら、おこられるかな?)  うずうずと、忙しそうな人々を見て風華は思う。  八百万の神である風華ではあるが、精神的にはまだまだ子供。  人の姿を取れるようになったのも、つい最近なので、なにかあれば遊ぼうと余念がない。  のではあるが、早々相手がいるかと言うと難しい。  八百万の神ということで、一歩引いた態度を取られることが多いのだ。  とはいえ、皆が皆、そういう訳でもない。  例外と言える相手は、何人か居る。  その内の一人が、風華に声を掛けた。 「風華さま」  知った声に、風華の表情がパッと明るくなる。 「あーっ、ウボーだー!」  とててててっ。  勢い良く、長身の青年にぶつかる勢いで風華は駈け寄る。  身長差があるので、足にギュッとしがみつくようにして、満面の笑顔を浮かべ見上げながら風華は言った。 「あそぶー? あそぶのー? あそんでくれるのー?」  期待感一杯な風華の眼差しに、ウボーは笑顔で返しながら抱き上げる。 「ええ、遊びましょう」 「ほんとに!」  よほど嬉しいのか、ぎゅうっと抱き着く風華。  そんな彼女に、魔女が声を掛ける。 「楽しそうだね。ボクも仲間に入れて欲しいな」 「? おねぇちゃん、だれ?」 「ウボーの友達だよ。セパルって言うんだ」  魔女セパルは名乗ると、風華のちっちゃい手を取り言った。 「風華は、ウボーの友達なんでしょ?」 「うん! ウボーね、ふうかのともだちなのー! あとねあとね、セレナも、ともだちなんだよ!」  そこまで言うと、風華は周囲をきょろきょろと見たあと、ウボーに尋ねた。 「セレナは? 今日は、きてないの?」  寂しそうな風華に、ウボーは返す。 「あとで来ますよ。今は、教団に指令の依頼をして貰いに行ってますから」 「きょーだん? しれい?」  小首を傾げ、不思議そうに聞き返す風華にウボーは返す。 「風華さまと、遊んで貰えるよう頼んでいるんです」 「あそぶの!」  嬉しそうな声を上げる風華に、ウボーは続けて言った。 「浄化師と八百万の神とのコネクション作りの一環として、風華さまと少し関わって貰おうと思っているんです」 「こねくしょん? えっと、えっと、おもち? つくるの?」 「こねこねしてお餅作ると美味しいよねー。って、そうじゃなくて」  セパルは苦笑しながら言った。 「風華達、八百万の神々と、浄化師達には仲良くなって欲しいんだ。そのために、まずは風華と一緒に遊んで貰おうってわけ」 「えっと、えっと……あそべばいいの?」  一生懸命考えて尋ねる風華に、セパルは言った。 「そうだよ。一緒に楽しく遊ぼうね」 「うん!」  嬉しそうに笑顔を浮かべ、力いっぱい応える風華だった。  そうして一つの指令が出されました。  内容は、梅の木の八百万の神である風華。彼女を祭っている神社で行われるお祭りに、風華と一緒に参加して欲しいというものです。  祭りでは、奉納の踊りや舞い。あるいは歌が披露されるとのことなので、それに参加してみても良いでしょう。  他にも、梅の実を使った料理を出す屋台をしてみても構いません。  風華は一緒に踊ったり歌ったり、あるいは屋台を手伝ったりしたがるでしょうから、一緒に参加させてあげてください。  他にも、風華が喜びそうなことであれば、何をして貰っても構いません。  この指令に、アナタ達は――?
バレンタインデーの過ごし方
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帰還 2019-03-13

参加人数 4/8人 oz GM
 バレンタインデー。恋人や好意を寄せる相手、あるいは親しい友人や同僚などにチョコレートと共に手紙を渡す行事が今年もやってきた。  今では愛を伝える日だと思われがちなバレンタインだが、その起源をなんとなく知っていても、詳細を知っている者はそう多くはないだろう。  ロスト・アモール戦の終盤、異なる種族で愛を誓い合った恋人がいたが、時代の波に引き裂かれた。  当時は異なる種族で愛を誓うことなど許されない風潮だった。  そこに異を唱えたのが「バレンタインの乙女」であり、恋人達を守護したことから、愛する者に思いを伝える為にチョコと手紙を渡すことが復興以降、徐々に広がり始めた。  このことから「バレンタインの乙女」と呼ばれる、チョコや思いをしたためた手紙を本人の代わりに渡す伝統行事から現代の形へと変わっていった。  現在では多様化しており、恋人だけの行事ではなく、家族や友人とチョコを楽しんだり、同僚に日頃の感謝を込めてチョコを配ったりする。  さらには自分のご褒美として食べたことのないチョコを買ったり、普段以上に豊富な種類の出回る日でもあるのだ。  2月14日を中心としてアークソサエティではその前後の一週間はバレンタインデーなのだ。  良くも悪くも賑やかなバレンタインは、独り身だったり甘いものが苦手なものにとっては悪夢の期間と呼ばれることもある。  バレンタインデーが近づくと街のお店は活気づき、チョコレート一色に染まる。  この世の中には様々なチョコレートが存在する。  この時期だけにしか食べられないチョコレートは最早芸術品と言ってもいい。チョコレート好きならば、この時期だからこそ食べたいチョコが溢れかえっていると言ってもいい。  お店で買っても手作りでも美味しいガトーショコラ。  ちょっと高めだけれど、老舗チョコレート専門の生チョコ。  食べ応えのあるショコラバーム。  ニホン風の生チョコ大福に宇治抹茶を使用した生チョコも人気だ。  風味がぎゅっと詰まったセミドライのフルーツチョコ。特にオレンジとチョコの相性が抜群のオランジェット。  有名ショコラティエが監修した11種のセレクトチョコ。  高級品チョコレートの生チョコはいつもよりリッチに。洋酒の入った大人なショコラにウィスキーボンボン  魅惑のザットハルテ。雪解けのようなふわとろ食感のフォンダンショコラ。  この時期のチョコレートは味も美味しいが、見た目も洗練されたものが多くてうっとりとしてしまう。  その代表格とも言える鉱石チョコは名前の通り美しい宝石を食べているようだ。  もちろんパッケージにもお店独自の拘りのあるお洒落な者が多い。  今年はダーク、ミルク、ホワイトに続くルビーチョコがトレンドだ。  このチョコレートは見た目はイチゴチョコのような色合いをしており、甘酸っぱい味わいが特徴だ。甘ったるさはなく苺とラズベリーを組み合わせた酸味と程良いフルーツ感がある。  リュミエールストリートでも売られている店は限られているが、試しに食べてみてはどうだろうか。  君達がお店でチョコを見ようものならプレミアムや限定品と名のつくおすすめのチョコの数々に目移りをし、どれを買おうか迷うことになるだろう。  休暇中である君達はバレンタインをどのように過ごすだろうか。  本来のイベントの目的である恋人に渡したり、パートナーに想いを伝えたりすることもあるだろう。  あるいはパートナーに日頃の感謝の気持ちを伝えてもいいだろうし、お世話になっている教団員や同僚に義理チョコを配って回る者もいるだろう。強かな者だと男性から3倍返しを狙っていたりするかもしれない。  時には友人同士で手作りチョコを交換して盛り上がるのも楽しいかもしれないし、バレンタインデー限定のチョコを買い占めて自分のご褒美としてもいいだろう。  もちろんバレンタインデーに興味を持たない者もいるだろう。煩わしさを感じ、そういった者は図書館で読書をして過ごしたり、自主訓練や指令に励んでいるかもしれない。  チョコを買う者もいれば、手作りする者もいる。どんなチョコを選び、どんな風に過ごすかは君達次第だ。
感謝の気持ちを言葉に
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帰還 2019-03-08

参加人数 3/8人 虚像一心 GM
「ちょっとそこの浄化師さま達ぃ、素敵なお薬はいかがですかぁ?」  教皇国家アークソサエティ「ソレイユ」を歩いていると、ふと、ある女性が呼び止めた。  声をかけてきた女性は――ああ、なるほど、と。  ソレイユでは『薬屋』として名高い――カーリンという名の女性だ。  いつもは店の中で薬を売っている彼女が、何故店の中ではなく外で薬を売っているのだろうかと。  そう疑問を投げかけると、 「そうですねぇ。強いて言えば『宣伝』でしょうかぁ」  ふむ……宣伝と。 「ほらぁ、お店って何かしらの品を買いたい、欲しいと思う方しか来ないじゃないですかぁ。  目的の品物を買ったらサッサと帰ります、っていうの、お店側としてはちょっと悲しんですよねぇ。  まあ、『薬屋』自体がそういうお店なんですけどねぇ」  確かに薬屋といえば、怪我をした、体調が悪くなった場合だけ店に向かうのが普通だ。  そもそもが『薬』を売る店なのだから。  欲しい薬以外は求めないのが当たり前だ。  だがしかし、カーリンにしてはそれが嫌なようで。 「そこでわたし、考えました! こうやって宣伝することでお店に興味を持って来てくれるお客さんを作れば良いじゃないかとッ!」  力説している彼女の行為は、所謂『呼び込み』のようなもので。  目的の品が無くても、ちょっとだけでも店に寄って行ってください――と。 「そして、その為の宣伝用のお薬をわたし、作って来たんです!  その記念すべき第一号が、偶然わたしの視界に入ったアナタ方、浄化師さま達なのです!  なにより、このお薬を一番有効活用してもらえる価値があると、わたし思うんですよねぇ」  ……有効活用? 価値がある?  一体どういう意味だろうか。 「ほらぁ、浄化師さま達って、普段は『祓魔人』と『喰人』の二人一組で行動しているじゃないですかぁ。  色んな所に行って、時には危険なこともして。お互い助けたり、助けられたり。  そういうことをしていると、やっぱりパートナーの方に感謝の気持ちがあると思うんですぅ。  でもでもぉ、そういうのって言おうと思っても中々言いにくいじゃないですかぁ。ですので、ここでこのお薬の出番なのです!」  コロコロと、まるで役者のように表情を変えるカーリン。  クルっと一回転した彼女の手の中にあったのは、小さな瓶で。  その小瓶の中には、薄い青色の液体が入っていた。 「いつもお世話になっているパートナーに感謝の気持ちが言いにくいと思うその悩み! このお薬を飲むことで無事に解決です!  このお薬を飲んだ人は何の抵抗もなく、感謝の気持ちを素直に口に出せるというわけなのですッ!」  なるほど――言いにくい感謝の気持ちを、その薬を飲むことによって無理矢理口に出させているというわけか。  しかしながら、それは言い換えてしまえば。 「――あ、気付いちゃいましたぁ? そうなんですぅ、実はこれ、自白剤を改良したものなんですぅ。  でもでもぉ、それは言い換えれば『正直者になる』ってことですよねぇ? 日頃の感謝の気持ちはやっぱり言葉にするべきだと思うんですぅ。  ただの言葉でも、効果は抜群! 言葉こそ最大級の感謝の証なのですッ!」  確かにカーリンの言う通りだ。  感謝の気持ちを伝えるのには態度や贈り物などがあるが、やはり一番心に響き、尚且つわかりやすいのは『言葉』だろう。  なるほど、これはとても良い機会だ。  是非ともその薬を飲んでパートナーに感謝の気持ちを言おう。 「おお、話がわかりますねぇ。ではでは、このお薬をお渡ししますのでぇ、お試しにずずいっと!  そして是非是非、日頃の感謝の気持ちを存分にお伝えください!」
梅の花一輪・あなたの花一輪
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帰還 2019-03-06

参加人数 3/8人 鞠りん GM
●  教皇国家アークソサエティにも、梅の木ってあるんですよ?  遠くニホンから贈られた梅の木は、今年もアークソサエティ中で綺麗に咲きました。  梅の木の中でのお祭りも開催されていて、あなたたちも梅花祭りを楽しみたく会場へとやって来ました。 ●  会場内は、梅にちなんだ飲み物や食べ物が沢山売られていて、どれにしようかと悩むのは、一般人も浄化師も同じですよね? 「私、これが良いわ」 「じゃあ私はこれ」  美味しそうな食べ物を見て、気分ウキウキな女性浄化師たち。それを見ながら次々と露店から飲み物や食べ物を買う男性浄化師たち。  今日ばかりは任務を忘れ、純粋に梅花祭りを楽しみたいのです。  沢山の美味しそうな物を両手いっぱいに抱えながら、あなたたちが来たのは、ひときわ大きな梅の木の下。そう、あなたたちは梅の花を見ながら宴会を始めることにしました。  花より団子とは言わないでほしいです。みんな梅の花が咲くのを楽しみにしてたのですし、梅を使った珍しい料理も待ち焦がれていました。 「んー! 美味しいー!!」 「こっちも美味しいわ、オニギリというのでしたよね? ニホンの料理はシンプルですが素敵ですわ」 「これは梅が入ったピザか、意外だが旨い!」  梅のオニギリ、梅サラダ、梅ソースピザに梅巻き寿司。和洋折衷ですが、それはニホンの梅が、アークソサエティに受け入れられているという証です。  持ちきれないほど沢山買ったのに、直ぐに無くなっていく梅料理の数々に、「これじゃ全然足りない」と、また露店へと走る数人の浄化師たち。こんな時は、男性浄化師が使い走りにされるのも世の常です。 「いやぁ、売り切ればかりで、買うのに苦労したぜ」 「全くだ、どれだけ並んだことか……やっと買えたんだぞ?」 「?? それは何?」 「梅ゼリーと書いていた」  淡い琥珀色のゼリーと、同じ色の飲み物を見て、やはり美味しそうと、みんなで分けて食べ出したあなたたち。冷たいゼリーに、ほんのりと甘い飲み物は、みんなが大好きなものですよね? ●  しかし5分10分と時間が経つにつれて、少々様子が変わって来ました。 「へっ? あたしぃー? いま、すごくいいきぶんよぉ」 「!?!?」  顔が真っ赤で舌ったらずの言葉使い、普段と違う感じに慌てたパートナーが、彼女の飲んでいる物を少しだけ飲んでみれば…… 「これ酒が入っているぞ! こいつは酒が弱いんだ、しかも……」 「なぁに、取らないでよぉ、それとも飲みたいの? こんなに沢山あるのですから、みんなものもうよぉぉ」  パートナーが「絡み酒なんだ」と言う前に、あなたたちにも梅のお酒を勧める彼女。  実は『ウメシュ』と呼ばれる、梅を漬け込んだ果樹酒なのですが、買ったほうも、飲んだほうも『ウメシュ』ということを知らなかったらしいです。 「ゼリーと侮っていたが、これにも酒が入っている」 「ああ、飲み物と同じ味だ。つまり、この梅の酒に漬け込んだ梅を使ったゼリーということだな。みんな大丈夫か?」  彼女が勧める『ウメシュ』を見て、考え込むあなたたち。既に飲んだり食べたりしてしまっている者も居ますが、これから飲むのは考えてしまいます。 「こうなれば飲むしかないでしょう!」 「いやいやいや! 全員で飲んでしまうのは不味いだろ!?」 「飲んだもの勝ちよ、あなたは飲まないの?」 潔く飲んでしまうか、我慢して介抱役に回るか、これは運命の別れ道。酔っぱらいとは時に予想外の行動をするものです。  さあ、あなたは『ウメシュ』を前にして、どんなお酒の飲み方をするのでしょう?
バレンタイン・ショコラティエ
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帰還 2019-03-06

参加人数 5/8人 狸穴醒 GM
●チョコレート職人の災難  早朝のルネサンス地区、商業地域。  しゃれた店舗が立ち並ぶエリアだ。優美な、あるいはシックな建物が、朝焼けに映えて美しい。  しかし。 「いででででででででででででででっ!!」  まったくもって相応しくない絶叫が、通りに響き渡ったのだった。 「パパ!? どうしたのよ!」  若い女性が階段を駆け下りてきて、作業場へ駆け込んだ。  独特の甘い香りが濃密に漂う。  作業台の上には、ずらりと並んだチョコレート。丸や四角、白に茶に黒。どれも繊細な飾りつけが施されている。 「パパ!」  そこで彼女が見たものは。 「シ、シモーナ……助けてくれ、立ち上がれん」  つぶれたカエル――もとい、白い調理服姿の中年男性が、腰を押さえて苦しむ姿であった。 「もうっ! だから人を雇おうって言ったじゃない!」  シモーナ・ヴァッレは怒っていた。  父親のマリオ、少々体重オーバー気味の彼を助け起こすのが大変だったから――ではない。 「無理しすぎなのよ! 全部の商品を自分で作るなんて、無茶を通り越してただのワガママだわ!」 「す、すまん……だけど、今日の分の商品は作りきったんだよ」  シモーナは眉を吊り上げる。 「それで!? 営業はどうするつもり!? 今日は1年で一番混む日なのよ、わかってるわよね!?  いつもの人数じゃ足りないってさんざん言ってたのに、パパまで動けないなんて冗談じゃないわ!」 「ううっ……」  マリオ・ヴァッレは娘の剣幕に頭を抱える。  それに構わず、シモーナは両手を自分の腰に当てて胸をそびやかした。 「とにかく、手伝ってくれる人を増やさなくちゃならないわ。どうにかして探すから、パパは休んでて」 「だけど、まだホットチョコレートの仕込みが」 「休・ん・で・て!!」 「……はい」 ●バレンタイン・デイ  ――アルバイト急募!! 本日1日のみ 資格・経験不問  詳しくはショコラティエ『ルチアーノ』まで――  あなたとパートナーは、必死さが伺えるその張り紙を見たのかもしれない。  もしくはたまたま、店の前を通りかかったのかもしれない。  そうでなければ店の評判を聞いて、わざわざやってきたのかも。  ルネサンス地区にあるショコラティエ『ルチアーノ』は、煉瓦造りの小さな店だ。  表通りから少し入った場所にあるため超人気店というわけではないが、古くからの住人に好まれている。  売りは多彩なボンボンショコラ。クリームやナッツ、果物、お酒が入っているものもある。どれも味は折り紙付き。  落ち着いた内装のカフェスペースもあるから、チョコレートをお茶請けにのんびりするのもいい。  だが今日は、この小さなショコラティエも混雑すること間違いなしだ。  なにしろバレンタイン・デイなのだ。  バレンタインといえば、親しい友達や好意を寄せる人、そして恋人に、思いを込めてチョコレートと手紙を贈るのが習わし。  復興の進んだ近頃では商業的にも盛り上がりを見せ、チョコレート以外の贈り物を売り込む傾向もあるようだが……  今日はバレンタイン・デイ。  あなたは、どう過ごしますか?
ファラステロは夜を往く
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帰還 2019-03-01

参加人数 6/8人 あいきとうか GM
「ああ、やっと見つけた。やぁアリバ。元気かい?」 「グラース。久しぶりだねぇ」  片手を挙げて近づいてきた、氷のように色素が薄い少年をアリバは笑顔で出迎える。  小柄なグラースはアリバの隣に並び、青年が磨いていた蒸気機関車を見上げた。 「今年も走るんだね」 「もちろん。『ファラステロ』はバレンタインデーの夜の象徴だからね」 「知名度は物凄く低いよ」  それなのに象徴だなんて、とグラースに笑われたが、アリバは穏やかな表情のまま肩を竦めただけだった。  バレンタインデー。  二月十四日を中心に、その前後一週間程度にわたって行われる風習だ。恋人や好意を寄せる相手、親しい友人、家族などにチョコレートと手紙を渡す、というのが主な内容だった。  近年では男女関わらずチョコレートと手紙を贈る日として定着しており、商機を見出した商人たちがチョコレート以外で周りと差をつけよう、と煽り出している。  妖精アリバの特別夜行蒸気機関車『ファラステロ』はロスト・アモール以後、なんらかの理由で二月十四日の夜に傷心を抱えて街を行く者や、招待状を持つ特別な者を楽しませるため、運行されてきた。 「今年はどのあたりの予定だい?」 「ノルウェンディかなぁ。去年はアークソサエティだったから」  夜空を走る『ファラステロ』は毎年、異なる国を走り人を拾う。  チョコレート色の蒸気機関車を眩しそうに見上げるアリバに、グラースは口ごもってから、言いづらそうに提案した。 「今年もアークソサエティじゃ、だめかい?」 「どうして?」 「……オベロンが、浄化師を拾えって」 「オベロン? なんだ、彼、生きてるのか」 「物騒だね。元気だよ」 「だって夏ごろから一度も会ってないし」  唇を尖らせ、アリバは音信不通になっている旧知の仲である妖精の顔を思い浮かべる。  もっとも、本当に死んだとは思っていなかった。人々よりはるかに長い寿命と頑丈な肉体を持つのが妖精だ。  特に春精オベロンはどのような困難の最中にいようと、のらりくらりと生き延びる。 「それで? 彼、今どこに?」 「……薔薇十字教団の本部」 「えぇ? どうして? 前に会ったときはエトワールに住んでたよね?」  自由奔放な友人だとは思っていたが、どうして前回会ったときから全く違うところに居を移しているのか。なぜ『ファラステロ』の運行先を決めたがるのか。  全く分からず、アリバはこめかみに指を添えた。 「うん。分かる分かる。もう謎すぎるよね。僕のときもわざわざ浄化師がくるように手配したりしたんだよ、オベロン」 「氷精迎えに? どうしてもぼくたちと浄化師を接触させたがってるってこと?」 「たぶんね。いや、実際いい人たちだったんだけど」  その話は脇に置いて、と氷精グラースは片手をひらひらと振る。 「夏の終わりだったかな。オベロンがソレイユでおばけヒマワリっていう騒動を起こしたんだよ。知ってる?」 「知らない」 「二人組の人間がひまわり畑に入ると出られなくなって、相手が秘密を告白したら出られるっていう、彼らしい悪戯なんだけど」 「うわぁ……」 「そこで調査にきた浄化師たちに会って、興味を持っちゃったらしくて」 「住んじゃったんだ……」 「住んじゃったんだよ。教団本部に。まだ人間たちにはバレてないだろうけど」  深くため息をつき、アリバは両手で顔を覆う。グラースは背伸びをして、アリバの肩を労わるように叩いた。 「次はきみの蒸気機関車に乗せたいんだって」 「そう……。いや、それ自体はいいんだけど。ごめんね人間たち……。ぼくの友だちが妙なことに巻きこんじゃって……」 「とりあえず招待状、ちょうだい。僕が配ってくるから」 「オベロンは!?」 「冬は眠くてダメだって」 「春の妖精だもんねぇ!」  自棄気味に叫んだアリバが指を鳴らすと、グラースの頭上から白い封筒が降り注いだ。小柄な氷精はすべて落とさずに受けとる。 「ありがと。じゃ、今年も頑張って」 「うん。グラースは氷精迎えお疲れ様。人間たちのこと守ってあげてね。あとオベロンにひと段落したら会いにきてって言っておいて」 「はーい」  とん、とグラースが軽く地を蹴る。氷雪を含んだ風が少年の細い体を天高く舞い上げ、どこかに運んで行った。  友を見送った車掌は大切な蒸気機関車を見つめ、小さく笑う。 「さて。オベロンはなにを企んでいるんだろうねぇ」  二月十四日。  いつも通り自室で目を覚ました数名の浄化師の枕元に、一通の招待状が置かれていたことが、該当者たちからの報告により判明した。  教団からの指示は――特別夜行蒸気機関車『ファラステロ』に乗車。十分な危機管理を行った上でこれを楽しみ、車内で発生した報告すべきことは書類にまとめ、後日提出せよ、とのことだった。
チョコを作るの~バレンタインの想い
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帰還 2019-02-27

参加人数 2/8人 鞠りん GM
● 「お願い!チョコレートを作るのを手伝って!!」  此処はアークソサエティの教団本部内。  あなたたちは教団寮に向かって歩いていたところに、急によく組む浄化師に捕まってしまい、こんなお願い事をされてしまいました。  いきなり言われたあなたたちは面食らってしまいますが、よく考えみればバレンタインデーまで後わずか。  彼女がどうしてこんなお願いなのか、漸く理解出来ました。 「手伝ってくれるの? ありがとう!」  心よく手伝う事を了承したあなたたちですが、彼女のほうは、まだなにかありそうな雰囲気が気になります。  話の続きを促してみると…… 「あのね、あのね、手紙をどうしようかなって。素直に好きって書くほうがいい? それとも別のほうがいいのかな?」  風習とも言いますが、バレンタインデーにチョコレートと手紙を一緒に渡すのが普通の渡し方なのです。  ですが、聞かれたあなたたちも困ってしまいました。だって、パートナーに自分の思いを手紙に書いて渡すのは凄く恥ずかしいから。  素直に好きと書いてパートナーに引かれないだろうか、普通にありがとうと書いたほうがお互いの為なのか、本当に迷ってしまいますよね。 「ま、まずは手作りチョコレートを渡すの、あの人喜んでくれるかな?」  それには喜ぶよと頷きましたが、手紙は困ってしまいます。  彼女が言うように、別の方法で渡すのはダメなのでしょうか?  此処でずっと悩んでいても仕方ないと、彼女のほうが率先して行動開始しました。 「じゃ手作りチョコレートの材料を買いに行きましょう」  チョコレートを作る場所は教団寮内にありますが、肝心の材料は教団にはありません。  彼女とあなたたちは、一番始めにチョコレートの材料を街に買いに行く事にしました。 ●  シーズンですから、街にはバレンタインデー用のチョコレートの材料や、手紙を渡すためのレターセット、メッセージカードなどを扱う店が沢山あります。 「いっぱいあるね、どれにしよう?」  良さそうな店に入り見回せば、色とりどりのチョコレートに、豊富な種類のレターセットたち。  その中には少々レターセットとは違う物もありますが、これはこれでアリだと思えてしまうのですから不思議です。 「私のパートナーは、あまり甘いものが好きではないの、だからビターのチョコレートにして、手紙はどうしよう。あ!これなんて面白くない?」  彼女が手に取ったのは、ビターの板チョコレートに、書いた文字が食べられるペン。でも何故ペンなのです? 「あのね、直接手の甲に気持ちを書こうかなって。ほ、ほら! 恥ずかしかったら食べちゃえばいいしね」  それを聞いて、あなたたちもなるほどと思ってしまいます。そんな渡し方もアリかなって。  店の品物を見ても、他にも色々な手紙の方法がありそうです。  手作りチョコレートと手紙を、あなたたちはなにを選び、どう渡すのでしょう。  そしてパートナーは、あなたたちの行動で喜んでくれるのでしょうか?  そんな期待と不安が入り混じる中で、あなたたちもチョコレート選びを始めました。
占い?観光?束の間の気分転換
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帰還 2019-02-27

参加人数 3/8人 鞠りん GM
●  彼女は自分たちの腕首に触れ、そっと瞳を閉じた。 「――平穏とはいきませんが、お2人の未来は明いものが見えます」 「こんな俺たちでもか?」 「たとえ浄化師様であっても感情はあるはずです。あるでしょう彼女に? そして彼に?」  瞳を開いた占い師は、俺のパートナーの顔を見て、にっこりと微笑み、その先……俺の隣に居る彼女は、顔を真っ赤にして俯いてしまった。これは本当に期待していいのかと、俺は心踊ってしまう。  噂で聞いた占い師だったが、俺はパートナーと来れて良かったと思う。少しだけ彼女との距離が近付いた、今はそれで十分だ。 「あれで良かったの?」  占いを終えた【椿 志穂(ツバキ シホ)】は、同じ占い師仲間に話し掛けた。 「いくらマインド・ビジョンの持ち主だって、今は恋愛を得意とする占い師なんだよ。浄化師相手に最悪の結果なんて言えるかい?」  志望は教皇国家アークソサエティが認めた精神系魔術師なのだが、精神医療に準じるには少々勉強不足で、今はこうして占い師の仕事をしている。  彼女は過去を視ない、そして過ぎる未来も視ない。それは占い師としての必要要素の1つ。  誰でも嫌な占い結果は聞きたくない、占い師に求めるのは幸せな結果だけ。そう思うからこそ志望は、恋愛だけを軸にして占いという少し先を見る。 「もし違えば、思い込みと言えば良いさ。真実よりも思い込みが勝つ時がある、違うかい?」 「そうね、思い込みは視せる未来をも変えてしまう事があるから」 「そう思っておきな、ヴェネリアで有名な恋愛占い師様」  そんな仲間入りたちの話を聞きながら、志穂はすっかり白銀に覆われたヴェネリアの街を見詰める。少しでも心の安らぎになれば、そう願って。 ●  その日、教団では巡回任務の浄化師たちが交代の為に帰還していた。  その中にヴェネリア巡回だった、あの2人の姿があり、帰還早々待機中だった仲間たちに話を持ち掛けた。 「夏のヴェネリアも良いが、冬のヴェネリアも良かったぜ、泳げないがな」 「それはそうだろう、冬の海に飛び込む馬鹿も居ない」 「まあな、でも水上マーケットは賑やかだった。特に今話題の占い師! これが当たると大評判で、俺たちも占ってもらったさ」 「それで結果は?」 「明るいものが見える、ってな、なぁ!」 「……………」  彼女は無言でまた顔を真っ赤にしてしまったが、俺としてはあの占い結果にかなり満足している。そうだろ? 先が分からない俺たちに、明るい未来が見えたんだ、これを仲間に言わずになんとする?  へーとか、はぁーとか、気があるのか無いのか分からない返事だが、この話自体には興味があるような雰囲気がある。  だから俺は仲間に向かって捲し立てる。今のヴェネリアがどんなに楽しいのかを。 「降る雪を見ながら船に揺られるのもよし、シーズンオフだから露店や店は人が少なくて見放題、ついでに有名な占い師ときた、次の巡回任務にヴェネリアを選ぶのも悪くないぜ?」  巡回任務とは言うが、教団本部があるこのアークソサエティ、そして程近いヴェネリアでは任務というよりも、少しだけの余暇が半分といったところ。  ヴェネリアの様子を見ながら有事に備える、そんな意味合いを込めながらも時間的自由は存在する。だから占いに行ったり、少しばかりの観光も出来るわけだ。  冬のヴェネリアに行ったことがない浄化師たちは、この話に興味津々。  件の占い師に一緒に占ってもらいたい。冬の水上マーケットをパートナーと一緒に歩いてみたい。  そんな興味と思惑がマッチして、あなたたちもヴェネリア巡回任務を希望した。  上手く指令部からの許可が下り、あなたたちを含む巡回任務の浄化師たちは、心待ちにしていたヴェネリアへと出発した。  占いか、散策か、あなたはどちらをパートナーと一緒に楽しむのだろう? そして占い師は自分たちにどんな占い結果を示してくれるのか?  期待と僅かながらの不安を胸に、あなたたちはヴェネリアに到着する。
故郷を想う
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帰還 2019-02-24

参加人数 5/8人 shui GM
 浄化師の集うエントランス。行きかう人々に混じって、明るい足音が響いた。 「仕事を頑張ったかいがあったぁ! 連休貰っちゃった」  新人の女性浄化師が、軽い足取りでパートナーの元へと向かう。  早速どこへ行こうか。  何なら彼をデートに誘おうか。  鼻歌交じりに頬を緩ませ、ツインテールを可愛く揺らす。  彼女の頭の中は休日のスケジュールで、すでにいっぱいだった。  新年や冬のイベントで賑わう時でも、浄化師はいつも忙しい。  そこで日ごろの仕事への労いもあり。2、3日の貴重な連休を貰ったのだ。  たかが数日。されど数日。  やりたい事も行きたい所も、山のようにあるのだから。 「あ! こんなところにいた!」  探してたんだよ、と笑う彼女。  肩を叩かれた彼は、眺めていた地図からパートナーへと視線を移した。 「ねぇねぇ、今度のおやすみ、どこに行くか決まった?」 「うん。それなんだけどさ」  再び視線を地図に落とす彼。  指で紙の地図を撫でるように指差すと、此処に行こうと思う、と呟いた。 「そこには何があるの? スキー場? 遊園地? おいしいレストラン?」  彼女の眼が輝く。もちろんデートを期待して。  しかし――。 「ううん。俺の故郷(ふるさと)」  彼は、平然と言ってのけた。豆鉄砲を食らったように、彼女の目が点になる。 「ふる、さと? ……帰れるの?」 「うん。俺の故郷。もちろん条件付だけどさ。此処に俺の妹たちが住んでいて……浄化師になってから会いに行ってなかったなぁーって」  語る彼に、彼女はしょんぼりと頭を下げた。  里帰り。つまり彼とは離れ離れだ。  しかも彼女の方には家族がいない。いくら兄妹について語られても、ちょっとピンと来ていなかった。  そして、何より。 「そっかぁ……里帰り……。心配だよ……」  彼女の脳裏に思い浮かんだ事は。浄化師になる時に教わったことだった。 (家族の存在がサクリフェイスや夜明け団に知られたら、大変な事になるんだっけ……)  敵の尾行に気づかず、気づけば大事な人が敵の人質に――というのは、過去にあった話だと聴いている。  一言に故郷と言っても、気軽に会いに行ける存在ではないのだ。危険が伴うし配慮も要る。 (もし、彼に万が一の事があったら、私はどうすれば?)  かといって。彼女はアドバイスをする自信もなく、潤んだ瞳を下へ向けた。  私はどうしよう。呟けば、彼が顔を覗き込む。 「それなんだけど。お前も一緒に来ないか?」  ガバッと顔を上げる彼女。 「いいの?!」 「もちろんだ。妹に会いに行くって約束しちゃってて――あ、もちろんお前の都合が合えばだけど!」  慌てて取り繕う彼の頬は少し赤い。  彼女にとって、パートナーの故郷へいくなんて考えもしなかったけど。 「好きな人の家にご挨拶……これはひょっとして、ひょっとするのでは?!」 「いや、そーゆーのじゃないからな?! あと妹には俺達が浄化師って秘密にしてくれよ!」  驚く彼と違い、彼女は満面の笑み。 「うん、まかせて! 私も一緒に行く!」  こうして2人は、仲良く里帰りすることとなった。  そして。  休暇をとっていたのは、彼らだけではない。  やり取りを見ていた浄化師の1人が、故郷かぁ、と呟いた。  君もその1人かもしれない。  もし、一緒に行こうといったら、自分のパートナーはどんな顔をするのだろう。  驚くのか? 笑うのか? それとも――。  たまには懐かしい場所へ、足を運ぶのもよいかもしれない。  こんな機会は、滅多にないのだから。
探偵マウロの事件簿~もふもふをもふもふ
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帰還 2019-02-21

参加人数 2/8人 弥也 GM
 教皇国家アークソサエティのブリテン。技術革新の為の特区で、その技術力で栄え得た富は文化を育て、観光客も多く訪れる街。  そんな街の住宅街にある、大きな屋敷の立ち並ぶ一角。  お手入れ簡単長持ちJ印の鍋、で有名なジョンソン家の別荘の玄関扉が長らくぶりに大きく開かれた。 「まったく、せめて冬が終わってからにしていただきたいものだ」  いたく不満げに別荘の中を歩き回っているのはジョンソン家の執事フランツ。  数日前ジョンソン家の一人娘ライリーが突然 「私、別荘でお友達とパジャマパーティーをするわ」  と言い出したのだ。  ライリーの母が亡くなって以来使われる事がなく、最近では少し前にライリーが誘拐された際にエクソシストが捜索に来ただけで、メンテナンスが行き届いていない空き家の状況になっていた。  そんな場所に友人を呼ぶと言うので、慌てて状執事が態の確認に来たのだ。  玄関ホールの壁にはライリーの父リンク・ジョンソン氏と亡き母メラニー・ジョンソンの大きな肖像画が掛けられている。 「旦那様、奥様、失礼いたします」  肖像画であってもつい声をかけてしまうのは執事の職業病なのか、それとも感じてしまっている何かを気配に語り掛けたのか。  別荘はそれほど広くはない。リンクとメラニーの若い夫婦の新居として建てられ、当時ジョンソン家で副執事だったフランツが執事に昇進しジョンソン家の若い跡継ぎ夫妻と共にこの屋敷へと移って来た。しかし、小さな天使ライリーが生まれて間もなくリンク氏は相次いで両親を亡くし、ジョンソン家の当主となり生まれ育った屋敷へと戻った。  以降、この屋敷はジョンソン家の別荘という扱いになっている。 「なつかしいな」  小さなメラニーが手に絵具を塗り、屋敷中を歩き回った後がまだ少し残っている。 「大きくなったら、どんなにいたずら天使だったかを教えてあげるのよ」  ライリーを愛おしそうに抱きしめたメラニーはそう言って微笑んでいた。  そのメラニーも今は居ない。十年前サクリファイスによって殺されてしまった。 「奥様……」  歳のせいか、最近は直ぐに感傷的になってしまう。  にゃぁぁん……  フランツが声に驚いて振り返ると、白い猫が長い尻尾をピンと上に立て一目散にフランツの方へと向かってきている。  すっかり忘れていたが、以前この別荘を捜索したエクソシストから猫が居ると聞いていたのだ。  ――何たる失態! しかし、今更思い出しても手遅れだ。  子供の頃、大きな猫に襲われ大泣きして以来フランツは猫が苦手なのだ。今思えばあの猫はフランツと遊びたかっただけなのだが、やはりあの時の恐怖が蘇る。  他に使用人が居れば、何とかしてもらえるが今この屋敷にいるのはフランツただ一人。  歩みよる猫と、距離を保とうと後退るフランツ。 「た、頼む。こちらへ来ないでくれ」  なんとか距離を保ち、一度玄関を出て誰かを連れてくれば、と思ったのだが……。 「にゃ!」  どこから現れたのか、いつの間にか3匹の白い仔猫がフランツの足元でじゃれていた。  しかも、その中の一匹が 「ねぇ、おじちゃん、遊ぼうよ」  と、フランツに話かけてきた。 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」  ジョンソン家の別荘に、フランツの悲鳴が響き渡った。  昼下がりの裏路地に掲げられた看板。  ――探偵マウロ どんな仕事も断りません――  その看板を見ているフランツ。よく見ると、その頬には少し血がにじんでいる。  扉に手をかけようとするも、思いとどまり背を向け立ち去ろうとした瞬間  ドンッ! 「きゃぁ、ごめんなさいっ!」  扉が開き、中から飛び出して来たライリーがフランツの背中に激突した。 「お嬢様っ!」 「やだ、フランツ。こんなところでどうしたの? 別荘に行ったんじゃなかった?」 「いえ、その……」 「その顔の傷どうしたの? 血が出てるわ! こちらへ来て!」  そう言って、今出てきたばかりの扉を開け、フランツを中へと促した。 「喋るねこ……ですか」  この探偵事務所の主マウロが、小さく身震いをしながら言った。  そんなマウロを見て「ガハハハ」と大きな声で笑うのは、声同様大きな身体のテオ。彼はマウロの幼馴染で、近くの肉屋の店主だ。 「笑うな」  マウロがテオを睨みつけたが、テオは一向に気にしている様子がない。 「執事さん、この探偵も猫が苦手なんですよ」  テオの言う通りなのだ。しかも、苦手にもかかわらず、依頼案件の2割ほどが迷子猫の捜索である。多少扱いに慣れたとはいえ「苦手」と言う気持ちが相手にも伝わるのか「こっちも苦手だ!」と言わんばかりに毎回爪をお見舞いされているのだ。  しかも、今回はその猫が喋ると言うのだ。 「そうなんですか。では、お願いするのは難しいですね……」  そう言って肩を落とすフランツの頬には、大きな傷テープが貼られており、その隣にはライリーが満足気に救急箱を手に座っている。 「あら、猫ちゃん、可愛いのにどうして苦手なのかしら。大丈夫よ、フランツ。別荘の猫ちゃんは私が何とかするわ」 「それはいけませんお嬢様」  フランツがきっぱりと言い放った。 「そうだよ。猫ならネズミ対策にウチにもいるけど、知らない猫は気を付けないと危ないな。その猫を狙ってる奴らもいるしな」  珍しくテオまでか慎重な態度を見せるため、ライリーが残念そうな顔をした。 「猫ちゃん、可愛いのに」 「可愛いかどうかは主観の問題だが、中には危険な猫もいるし、それを狙って危ない連中も寄って来るからな」  マウロの真剣な声に、流石にライリーも異議を唱える事を諦めた。 「あの人達に頼むしかねぇのかもなぁ」  テオの言葉に、一瞬フランツの眉間にシワがより厳しい顔になった。 「ダメよフランツ。もう、エクソシストは信用できない、なんて言わせないわよ」  ライリーにそう言われて、フランツが笑顔になった。 「そうですね、お嬢様の誘拐事件以降短い期間に何度も助けていただいておりますからね」 「では、私の方から教団にお願いしておきましょう」  安堵顔のマウロがポンと膝を打った。
上弦の夢
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帰還 2019-02-17

参加人数 4/8人 土斑猫 GM
「はいはい。よくよく、おいでなさいました。さてはて、お望みは如何? 人生? 未来? それとも恋? いえいえ、皆までおっしゃらなくても結構なれば。全ては、承知の上でございます。やつがれは『道繰り(みちくり)の魔女』。変えられぬ道、教えられぬ道はございません。 お望みのモノは、何物でも。如何様にでも。お教えしましょう。変えましょう。やつがれは『道繰り』。アナタ様の思うままに求めるままに。無論勿論、対価代価はいただきますが。いえいえ、憂慮、ご心配はいりませぬ。決して断じて、支払いに困る事ではありませぬ故。万事は承知。よろしいですか。ご承知ですか。それではそれでは、読み解くといたしましょう。アナタ様の行く道辿る道。希望願望望むモノ。全て全てお教えしましょう。変えましょう。やつがれは『道繰り』。全て全ての道行きは、この手の上の戯言なれば」  教皇国家・アークソサエティは南のルネサンス。その街中で、奇妙な噂が立っていた。  月の赤い上弦の夜。街の何処かに小さな見世物小屋が立つと言う。見た事もない動物・植物が飾られたその奥に、一人の女性が座っている。  光と闇が絡み合う衣装に、長い黒髪を流した彼女。訪れた者に、こう告げる。  「自分は『道繰りの魔女』。あなたの望む道を教えよう」と。  そこで、訪れた者は告げられる。自分の運命を。進む道を。その先にある未来を。それは希望・夢・恋。人の持つ想い全てに及ぶ。その果てに、彼女は言う。その道行きを、変える事も出来るのだと。望みさえすれば、出来るのだと。  望む者もいれば、望まぬものもいる。  問題となるのは、その後。  件の魔女に会ったという者が、度々不幸になるのだという。  ある者は家族を失い。  ある者は恋人と破局し。  そしてある者は、夜の闇の中で消息を絶った。  そんな事が続くうち、街の人々の間には不吉な噂が立ち始める。  かの女性は本物の魔女。道を示す代価に、その人間の大切なものを奪っていくのだと。  噂は拡大し、やがて行方をくらました者達は魂を抜かれ、ベリアルの餌にされたのだと言う話まで流布される様になった。  ここに至って。教団に複数の依頼が届く様になった。  依頼者の年齢は文字を書ける様になったばかりの少女から、達筆極まる年配男性まで様々。内容は一様に件の噂の真相を解明し、その通りであれば問題の魔女を討伐して欲しいとの事。  教団も最初はただの噂と無視していたが、依頼の封書は日々山を高くしていく。その内、とうとうベリアルの話まで絡み始め、ここに至って教団も腰を上げざるを得なくなった。  指令を受けたのは、数組の浄化師達。  彼らは事の真相を身を持って確かめるため、妖しい赤月の下、寝静まる夜街の中へと踏み出した。
仲間が死んだ日
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帰還 2019-02-13

参加人数 5/8人 oz GM
 今日、浄化師が一人死んだ。  冬は待っている。朽ちていくものもあれば、新たな生命の息吹が芽吹くのを待つように冬は静かに佇む。何もかもが寒さで身動きできず、眠りについたような季節だ。まるでモノクロで書かれた絵画のような乾いた景色が広がる。  その日はいつもとどこか違う空気が混じっていた。静かで緩慢な、見覚えのある気配。棘のような冷やかな風が肌を刺していく。  その死を知ったのは、サクリファイスの事件が収束に向かう最中のことだった。  亡くなった浄化師の名前はエリノア・ツェベライ。  その名前には聞き覚えがあった。話したことはなかったが、同期だったので互いに顔見知りだった。親しい仲でもなく、廊下で会えば挨拶をする程度の関係だったが、よく笑う少女だったと記憶に残っている。  エントランスホールで彼女のパートナーだった男性が人目をはばからず泣き崩れているのを見た。その男性は仲間の浄化師に支えられながらその場から引き剥がすように立ち去っていく。  後から、その浄化師の女性は市民を庇い、ベリアルに殺されたという話を耳にする。亡くなった浄化師を惜しむ声が聞こえる。  あなたは同期が死んだことを知り、言いようのない複雑な感情が過ぎる。  それでも悲しむには彼女のことを知らなすぎた。  彼女の遺体は故郷に帰ることも家族の元にも引き渡されることはない。遺品についてもだ。それはパートナーであっても何一つ渡されることはない。パートナーに残るのは、記憶と死亡書類だけ。  教団に入った以上、その身は教団のモノというわけだ。  密やかに病棟の地下で火葬され、霊安室に埋葬される。そして、死んだ浄化師の身内には死亡したことすら知らせない。  それでも教団に入れば、一定の身分と衣食住が保証される。それを求めて浄化師になる者も少なくないだろう。  浄化師は目には見えない首輪を填められながら、生きるのだ。  こんな仕事だ。浄化師として戦っている以上、命の保証など誰もしてくれない。  次は自分かもしれない。そんな考えが頭の隅のどこかにある。死ぬことを考えると、誰だって気が滅入るだろう。  浄化師でなくとも神が滅びを望んだこの世界に安息はない。誰もがそれを知っていて見て見ぬふりをしながら過ごすか、いつの日か誰かが救ってくれることを祈りながら日々を過ごすのだ。  浄化師は教団に繋がれている以上、否が応にも神という巨大な壁に抗いながら進む者もいれば、道半ばで倒れる者もいる。それが今回彼女だった。  この世界にエリノア・ツェベライという人間はもはや存在しない。その実感はまだない。  彼女の死はあなたも気づいていない内に小さなしこりを残すかもしれない。隣で同じものを見聞きしたパートナーを横目で見る。  彼女の死はあなたたちに何かしらの影響を与えるだろうか。それともただの日常として過ぎ去ってしまうのか。それは誰にも分からない。  けれども、あなたたちは契約の際に二人で決めた「アブソリュートスペル」を無意識に思い浮かべた。  彼女の紡ぐ物語は終わってしまったが、あなたたちの物語はいまだ終わっていない。  あなたたちは彼女の死に何を思い、何を決意するのか。  今は、今だけは彼女の冥福を祈ろう。  祈りは生きている者だけの特権なのだから。
氷精迎えとかまくらと
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帰還 2019-02-11

参加人数 4/8人 あいきとうか GM
「雪祭りって知ってる?」  冬の盛りのある日、食堂でそう声をかけられ、司令部教団員のライカンスロープは手をとめて瞬く。  昼時を少し過ぎた食堂は空席が目立っていた。そうであるにもかかわらず、口を開いたまま固まる彼女の正面の席に座った女性は、最初から用があったのだろう。  挨拶もなにもなかったが。 「ノルウェンディの、冬のお祭り、ですか?」 「そう。じゃあその一種で、氷精迎えっていうお祭りのことは?」  飲み物だけを持ってきた彼女の名を、司令部教団員はようやく思い出した。  エイバ。世俗派の魔女だ。  教団本部を気に入っているのか、単に暇なのか、敷地内で見かける機会は多い。 「ヒョーセームカエ?」 「ノルウェンディのトゥーネあたりで行われてる、小さなお祭りよ。雪と氷を司る妖精をお迎えして、おもてなしするの。きちんとできたらその一年は雪害に悩まされないといわれてるわ」 「へぇ……」 「でもねぇ!」  急に大きな声を出され、司令部教団員は驚く。右手からスプーンが落ちそうになって、慌てて持ち直した。 「人手が足りないのよぉ」 「あー……」  話が読めてきた。  なるほど、人手不足を補うために浄化師を動員したいなら、司令部教団員という身分の自分に話しかけるのは実に理にかなっている。  指令として張り出せ、ということだ。 「もう少し詳しく教えていただいてもよろしいですか?」 「もちろんよ」  にこりとエイバは微笑み、穏やかな口調で氷精祭りについて話し始めた。  曰く。  樹氷群ノルウェンディ、トゥーネの片隅で行われている、国内でも知る人ぞ知る本当に小さな祭りである。  参加者はまず、雪を集めてかまくらを作る。形はなんでもいいが、中に椅子と丸いテーブルを置ける大きさでなくてはならない。  日が暮れると、かまくらに妖精に扮した子どもたちがやってくる。参加者たちはかまくらの中で子どもたちを待ち、やってきた彼ら彼女らに雪餅と呼ばれるお菓子をひとつずつ渡す。  それを、二十一時まで繰り返すだけだ。 「子どもたちの中にひとりだけ、本物の雪と氷の妖精――氷精が紛れこんでいるのよ。氷精は、まぁ、ピクシーの亜種みたいなものだと思ってちょうだい」  カップを両手で包むように持ったエイバは、一口飲んでから続ける。 「依頼したいのはかまくら作り。そのあとのおもてなしもお願いしたいの」 「承りました。でもどうして人手が足りなくなったのでしょう?」 「食あたりだそうだわ……。明後日の氷精迎えまでに万全の体調になってるか分からない、って主催者に相談されたのよ。あ、主催ね、私の知りあい」 「それは……。お大事に」 「ほんとね。ってわけだから頼んだわよ」  用はすんだとばかりに、一息で残りを飲み干したエイバが席を立つ。  出て行こうとした彼女は、思い出したように振り返った。 「そうそう。今年はモーンガータがランプを提供してくれるの」 「え!? 本当ですか!?」  シャドウ・ガルデンの有名な照明専門店、モーンガータ。  本来なら他国の小さな祭りに明かりを提供するほど暇がある店ではないはずだが、かまくら作りに浄化師がかかわると聞き、声をかけてくれたらしい。 「浄化師さんたちの功績よ。お礼言っといて」 「はい!」  ひらりと手を振ったエイバは食器を返却し、今度こそ食堂から出て行く。 「モーンガータ協力ですか。いいなぁ」  かまくらの中、美しいランプを見ながらおしゃべりしつつ、子どもたちをもてなす。  穏やかな夜に思いをはせて、司令部教団員は天井を仰ぎ見た。
きっかけは贈り物
普通|すべて

帰還 2019-02-05

参加人数 2/8人 海無鈴河 GM
「申し訳ありません。お嬢様は今日もお会いにならないそうです」  とある屋敷の門前で、メイドが頭を下げた。  それを受けた男はがっくりと肩を落とした。 「そうですか……」  男の名前はユリウス・ワーナー。彼がこうやってメイドに頭を下げられるのは今日で10回目になる。 「では、せめてこれをマリアさんに」  ユリウスは小さなブーケをメイドに差し出した。メイドは申し訳なさそうな表情を浮かべ、それを受け取った。 「ええ。必ず、マリアお嬢様にお渡しいたします」  この屋敷の一人娘マリア・アリスティンはユリウスの婚約者だ。年はまだ16歳。ユリウスから見ると7つも年下になる。  二人の婚約は親が勝手に決めた、いわゆる政略結婚だった。そのため、ユリウスもマリアの顔を一度しか見たことがなかった。  しかし、ユリウスはそのたった一度でマリアのことが好きになってしまったのである。 「マリアさん……婚約にあまり乗り気じゃないんだろうな」  ユリウスはせめて顔だけでも見れれば、という一心でたびたび屋敷を訪ねている。  しかし、当のマリアは彼の前に姿を決して見せない。 「少しだけでも話ができればいいんだけどな……」  また数日後に訪ねてみよう、とユリウスは考え屋敷に背を向けた。  屋敷の前の長い坂を下りきり、ユリウスが夕暮れの大通りを歩いていたその時。 「お待ちください!」  女の声が背後から彼を呼び止めた。  ユリウスが振り返ると、先ほどのメイドが息を切らして走ってくる。 「どうしましたか?」  彼女の息が整うのを待ってからユリウスが尋ねると、メイドは手に持っていた封筒を彼に差し出した。 「お嬢様からのお手紙です!」 「!?」  驚いたユリウスは人目もはばからず手紙の封を切った。封筒の中には白い簡素な便せんが1枚だけ入っていた。  二つ折りになっているそれを開くと、女性らしい柔らかな文字が躍っている。  ユリウスは急いでそれに目を通した。    ユリウス・ワーナー様。  手紙越しでのご挨拶をお許しください。  あなたからの贈り物の数々、とてもうれしく思います。  私は幼い頃から屋敷の外にはあまり出たことがなかったので、あなたからの贈り物がとても新鮮に感じます。街の空気を感じられるようで、私も外に出かけているような気分です。  こんな素晴らしい贈り物をしていただいているうえに、このようなことを申し上げるのは図々しいとは思いますが、あなたにひとつお願いがございます。  私のもとに『プロレマのアロマ』『森のハーブティー』この2つの品物を持ってきていただきたいのです。  あなたが2つの品物をもってこの屋敷を訪れた際には、私は必ずあなたの前に姿を現します。  どうか、お願いいたします。  マリア・アリスティン    ユリウスは手紙を読み終えると、メイドに思わず尋ねた。 「これ、本当にマリアさんが……?」 「正真正銘、お嬢様の筆跡ですよ!」 「いや、だって……急に会ってくれるだなんて、まだ信じられなくて……。でも、これはチャンスだよな」 (マリアさんの願いをかなえて、俺の誠意を見せるチャンスだ……!失敗するわけにはいかない!)  ユリウスはもう一度手紙に書かれた品物を確認した。 (これだけじゃ味気ないな。せっかく直接会える機会なんだ。俺からも何か贈り物を贈ろう。……渡すときも、怖がられないように立ち振る舞いやセリフも工夫したいな)  ユリウスはそんな風に頭の中で考え、メイドに向き直った。 「マリアさんに伝えてください。必ず俺はあなたの元に向かいます、待っていてください、と」  そう意気込んだものの。 「これは……。一筋縄ではいかないな……」  マリアが示した2つの品物はどちらも入手が難しく、ユリウス一人ではとても手が回らなかった。  ユリウスは悩みながらもいつものように屋敷を訪ねた。もちろん、マリアは姿を現さない。 「はあ……これじゃあ、品物がそろうのはいつになるのか……」  思わずユリウスが愚痴をこぼすと、見かねたメイドが彼にひとつアドバイスをした。 「ユリウス様が無理をして倒れでもしたら、それこそお嬢様は気に病まれてしまいます。誰かの手を借りてください」 「でも、お使いも一人でこなせないのかと呆れてしまうのでは……」  ユリウスがそう言うと、メイドは首を横に振った。 「お嬢様はそのようなこと思われる方ではありません。……ただきっかけが欲しいだけなのです。ユリウス様の人柄とやさしさを知るためのきっかけが。……大切なのは、あなた様が誠心誠意にお嬢様に向き合ってくださることです」  ユリウスはその言葉に甘えることにした。本当は全部自分で用意したかったけれど……。  家に帰りユリウスはすぐに筆を取った。依頼書を書くために。
小さな雪まつりと、君の願いごと
とても簡単|すべて

帰還 2019-02-04

参加人数 4/8人 真朱 メグル GM
 ちらちらと雪が降っている。  星が美しく見えると評判のノルウェンディであったが、月明りさえ届かぬ今宵の闇はどこか不気味で、一抹の心細さが胸の奥で燻るようだった。  樹氷群ノルウェンディでの任務を終え、あなたたちエクソシストは帰路に着こうとした。  しかし、アークソサエティまでの道中、先で猛吹雪が発生しているとの連絡が入る。  交通手段であるトナカイぞりも、視界が悪く道に迷う可能性があり、危険であると停止。  あなたたちはノルウェンディの端の、のどかで小さな集落で足止めを食らうこととなってしまった。  トナカイぞりの中継地となっている集落とのことで、十軒にも満たない家々がぽつぽつと散見できる。 「あんたら疲れてるだろう。なんにも無い田舎だが、まあゆっくりしてってくれや」  帰還がかなわず宿もない。困り果てたあなたたちに快く一晩の宿を貸してくれた家の主人が、にかっと笑って言う。  暖かいスープに、柔らかく燃える暖炉の炎。  慣れない常冬の気候に、冷え切っていた指先が、胸が、ぬくもりを取り戻していくのを感じるだろう。  穏やかな時間を過ごしていたその時、表からこの家の奥方の声がかかる。 「ちょっとあんた、そろそろ準備が出来たよ! ああ、エクソシストのお二人もどうだい?」 「おおそうだった! あんたら運がいいなあ!良かったら外に出てきてくれ。今日はこの集落の雪祭りの日なんだ。まあ、規模は小さいし来づらいし、町の雪像作ったりなんだのするでっかいのじゃあねえんだけどな!」  外に出てみると、赤、青、白、黄色――と、地面にいくつもの色鮮やかな光が落ちている。  その光はちらちらと揺らめいて、まるで地上で波打つ、オーロラのカーテンのような景色を描き出している。 「これはな、この村で作った特製のキャンドルホルダーだ。氷でできてて、中に小さなキャンドルを入れるんだ。その火の熱で真ん中からちょっとずつ溶けてく。なんで色がついてるのかって? いや、俺ぁ作ってねえから難しいことは分からねえが、魔力を込めて作っただか、魔結晶を真似ただかで、綺麗に見えるようにしてあるんだとよ。昔はこんな色じゃなくてよ、最近は魔女がきまぐれにおいてってくれんだ」  辺りに立ち込めていた全てを飲み込みそうな闇が晴れて、色を反射した白い雪が光り、視界を美しく照らし出している。 「見るだけでもいいがな~、これだけじゃねえんだ。この紙に願い事を書いて、キャンドルの火で燃やすんだ。最後まで燃えきったら、願い事が叶うって言い伝えだそうでな!」  そう言って、主人は小さな紙を1枚ずつ、あなたたちに手渡してきた。  幻想的な雰囲気に、あなたたちは息を呑むかもしれないし、目を瞠るかもしれない。  向こうでは、甘そうなココアと、フルーツが豪快に入ったグロッグワインを振る舞う住民の姿が見える。  人は少なく、雪があらゆる音を吸収して、まったりとした空気が流れていた。  飲み物を片手に談笑する住民に、お願い事をひねりだそうと唸る子供たち。  皆それぞれにこの空間を楽しんでいて、あなたたちを歓迎しているものの、このひと時の邪魔する者はいないだろう。  サクリファイスとの戦いを越えたり、日々の任務を真摯にこなしたり、その中で葛藤が生まれたりしたこともあった。  少し足を止めて、二人で語らうにはもってこいの場ではないだろうか。 『――少し、話をしませんか』  穏やかな雰囲気にのまれて、つい、そんな言葉が口をついて出てしまうかもしれない。  いつも通りの二人の、ちょっとだけ特別な夜が始まる――そんな予感がする。
【神捧】名を刻まぬ戦士たち
難しい|すべて

帰還 2019-02-03

参加人数 6/8人 木口アキノ GM
●教会にて  陽光は彩を橙黄色へと変えていく。まるでこの世界が黄昏に向かっていく未来を象徴するかのようだ。  そう思えば自然とカタリナ・ヴァルプルギスの口元に笑みが浮かぶ。  力を増してゆく魔方陣を前に、カタリナは讃美歌を歌い出した。  斜陽が礼拝堂の床にステンドグラス越しの光を落とす。魔方陣に光で描かれた神が重なる。  カタリナの歌声は一層高らかに。歌いながらも、魔方陣に魔力を注ぎ続ける。  左右に並ぶようにして膝をつきこうべを垂れて控えていたサクリファイスの信者たちは、その奇跡のような魔力と魔術の才能に心酔し、崇め敬う。彼らの背後にも、それぞれ魔方陣が描かれていた。  この場所にだけ、特別ゆったりとした時間が流れているような錯覚すら覚えるが、それを外から届く多数の足音と話し声が搔き消した。  カタリナは雑音に歌を止めるが、その表情は無粋者たちに怒るでもなく苛立つでもなく、むしろ笑みが深まったようにすら見えた。 「あちらから来てくださるなんて、好都合というものですわ。きっとこれも、主の思し召し……」  けたたましい音を立て、反動で蝶番が外れるほど荒々しく礼拝堂の扉が開かれ武装した人々が堂内に雪崩れ込む。 「カタリナ・ヴァルプルギス! これ以上お前の好きにはさせない!」  先頭に立つ男が叫ぶ。  だがカタリナは動じず、憐憫に満ちた目で彼らを見る。 「レヴェナント……」  レヴェナントとは、薔薇十字教団司令部の管轄下で世界各地でサクリファイスを追っている組織である。  彼らは日常生活では偽名を使用し書類上では死亡している扱いであるため、時に死神や亡霊と揶揄される。 「可哀想な人たち。間違った観念を植え付けられ、名を奪われ過去を消され生を弄ばれ……。けれど喜ぶと良いわ。あなたたちの魂はベリアルに分け与えられ、主が世界を救済するための礎となるのですから」  カタリナがすっと手を挙げるとレヴェナントたちの目前に魔方陣が光りはじめる。  予め床下に描いていたのだろう、そこにカタリナが魔力を注いだため光りを増し、視認できるようになったのだ。 「ヘルヘイム・ボマーか」  レヴェナントのうち魔術の心得のある者がそこに土気の魔力を注ぎ無力化しようとするが、それより早く控えていたサクリファイスの1人が自らヘルヘイム・ボマーの魔方陣へと飛び込んだ。 「っ!!」  避ける間もなく、魔術は発動し爆炎が発動する。 「うぁぁぁ……っ」  身を投げたサクリファイスは虫の息で横たわり、巻き込まれたレヴェナントたちは重傷を負いのたうち回る。  礼拝堂への延焼は免れたが出入り口付近の壁が崩れる。  しかし残ったサクリファイスたちは冷静に、自分たちの背後に描いた口寄魔方陣からベリアルを出現させると、カタリナが高笑いしながらサクリファイス・タナトスを発動させた。  その場にいたレヴェナント数名の魂が抜き取られ、ベリアルを進化させた。  さすがに疲弊したのか、カタリナはふらつき背を壁につけ呼吸を乱している。  この隙に一気に攻め込みたかったが、レヴェナントにはサクリファイスと進化したベリアルとが襲いかかる。  カタリナの魔力が回復すれば、再度魔術が発動されてしまうだろう。  このままでは、礼拝堂に踏み込んだレヴェナント全員がサクリファイス・タナトスの餌食となってしまうーー。  が、レヴェナントとて無策で押し入ったわけではない。  非常時の通信役を担うレヴェナントはすでに薔薇十字教団に向かい走り出していた。 ●本部 「緊急事態だ」  そう言うヨセフ・アークライトは両脇にエノク・アゼルとフォー・トゥーナを従えていた。  聞かずとも、この三人が司令室に揃っているというだけで尋常じゃない事態だとわかる。 「カタリナの魔力があれほどとは……」  レヴェナントの男性が唇を噛む。  しかし、サクリファイス・タナトスの魔方陣に魔力を注ぎつつもヘルヘイム・ボマーも保ち、さらにはサクリファイス・タナトスを連続発動させることが出来るとは誰が想像しただろう。 「我々の突入は時期尚早だったのだろうか」 「そんなことはない。遅らせれば遅らせるほど住民への被害も拡大していただろう」  ヨセフはレヴェナントの男性を宥める。  しかし、その表情は強張ったままだ。 「聞いての通り、カタリナ、そして出現したベリアルは強力だ。自信のない者、体調に不安のある者は無理に行けとは言わない」  ヨセフが浄化師たちを見回す。パートナーと互いに顔を見合わせ、申し訳なさそうに部屋を出る者もいた。  だが……あなたたちはその場に残る。  これまで、存在を隠しサクリファイス殲滅のため全てを捧げた、歴史に名を残すことのない戦士たち、レヴェナント。教団員として、彼らに報いたい。 「行ってくれるか」  ヨセフの言葉に、あなたたちは頷く。 「ありがとう……!」  レヴェナントの男性は深く頭を下げた。それから、彼は言う。 「第一の目的はカタリナの殺害だ。そのためならば、我々レヴェナントは見捨ててもらって構わない」  きっぱりと言い放たれた言葉に、浄化師たちは動揺を隠せなかった。  レヴェナントの多くはサクリファイスに深い恨みを持ち志願した者だという。サクリファイス撲滅のためには命すら惜しくないのだろう。  その気持ちはわかるが、やはり彼らを捨て駒にするようなことはしたくない。  浄化師たちは窺うようにヨセフに視線を向ける。 「彼の言う通りだ。サクリファイス殲滅に徹するんだ」  しかしヨセフの表情は言葉とは裏腹に苦々しいものであった。立場上そう言わざるを得ないが本心は違っている。浄化師たちもそれが分からぬわけではなかった。  重い空気を背負い、あなたたちは任務に就いた。
【神捧】琥珀色の闇
普通|すべて

帰還 2019-01-26

参加人数 4/8人 土斑猫 GM
「久々の来客だね。さて、お手なみ拝見といこうか」  淡く輝く琥珀の中で、彼女は楽しそうに。酷く楽しそうにそう言った。  場所は、教皇国家・アークソサエティはルネサンスの南。その一角に広がる、スラム街。奴隷も混じる貧困層が暮らす場所。事件は、そこで起こった。  それは、月のない夜の事。人気(ひとけ)が失せた街の外れに佇む一つの人影があった。見れば、それは黒いローブを羽織った痩身の男。彼は街を見回しながら、くぐもった声で言う。 「……哀れだな」  闇色のローブが、夜風に揺れる。 「同じ人でありながら、かくも虐げられ、辛酸を強いられるか……」  そんな言葉と共に、男の手がスルリとローブの中から滑り出る。その手に握られていたのは、一本の小瓶。 「だが、それも今宵まで。これで、全ての苦しみは終わる」  すると、男は小瓶の蓋を開けると逆さに返した。開け放たれた口からサラサラとこぼれ落ちるのは、青白く光る粉。それは夜風に乗り、スラム中に広がっていく。  それを見届けると、男は囁く様に言った。 「全ては我が主と、カタリナ様の御名の元に……」  男の名は、『アラン・アビー』。人の世の滅びを願う宗教組織、『サクリファイス』の幹部の一人だった。  次の日、いつもの朝はスラムに来なかった。  昨夜眠りに着いたスラムの住人達が、目覚める事はなかった。日が高く登っても、彼らは、昏々と眠り続けた。寝返りも打たず、寝息さえも立てず。その様はまるで、生き物として、大切な何かが抜け落ちている様にも見えた。  元より、治安の悪い地域。他所から訪れる者もおらず、事が発覚するのに丸一日を要した。  クリスマスが近づいた深夜、アランの姿はスラム街の一角にあった。 「あと、一つ」  彼はそう言うと、手にしていたナイフで自分の手首を切り裂く。飛び散った朱い雫が、彼の顔を濡らす。アランはそれを気にする様子もなく、その身を屈める。伸びる血染めの指。それが、地面の上に複雑な紋様を刻む。ブツブツと紡がれる、言の葉。すると、描かれた紋様が朱い光を放ち、地面に染み込む様に消え去った。  それを見届けると、アランはゆっくりと立ち上がり、背後へ向き直った。 「来たか。邪教の使徒よ」  いつの間に現れたのだろう。4人の人物が、彼を取り囲んでいた。身にまとう礼装。手にした魔喰器。浄化師だった。  無言で自分に刃を向ける浄化師達に向き直ると、アランは全てを受け入れる様に両手を広げる。 「来るがいい。私の役目は終わった」  次の瞬間、真っ赤な血飛沫が彼のローブを染めた。 「もう……遅いのだよ……」  言い遺す事はないかと訊かれ、アランは血溜りの中で薄笑みを浮かべた。 「術式の設置は、すでに終わった……。後は、時が来れば『サクリファイス・タナトス』は自動的に発動する……。贄は、このスラムの住人全てだ……。避難させる事は……かなうまい……。これだけの数……。さぞや多くのベリアルの、糧となろう……」  青ざめた浄化師が、止める方法を問い詰める。しかし、返るのは勝ち誇った嘲りの言葉。 「無駄だ……。術式は、止まらない……。スラム(ここ)の者達は、目覚めぬ……。為す術はない……。お前達は、ただその時を待てば良い……」  響く笑いが、溢れる鮮血で濡れる。 「主よ……。今、お側に……」  最期にそう呟いて、アランは息絶えた。  その後の調査で判明したのは、驚くべき事実だった。  昏睡するスラムの住人達全ての魂が、抜けていたのだ。  おそらくは、かのサクリファイスの男が何らかの魔術的手段を持って、住人達の魂を抜き出したのだろう。  教団の上層部は、頭を抱えた。  抜き出された魂は擬似的に幽霊と化しており、離れた肉体との関係を断ち切れないままスラム街を漂っている。もし、このままサクリファイス・タナトスが発動すれば、幽霊状態となっている住民全てが生贄となる。そうなれば、大量の高スケールベリアルが発生し、街の中心部に雪崩込む事が予想された。  彷徨っている幽霊達をサクリファイス・タナトスが発動する前に肉体に戻し、住民を避難させれば、件の魔術は不発に終わる。けれど、肝心の方法が見つからない。  スラム街の住人の数は数百人。それだけの数の魂を操作するのは、容易ではない。  浄化師の中には悪霊を浄化する術を持った者もいる。しかし、幽霊とは言え、擬似的なもの。肉体は生きている。浄化してしまえば、間接的に全ての住民達を殺害する事になってしまう。そんな事が、認められる筈もない。  サクリファイス・タナトス自体を解除する案も上がったが、時限設置された術式は発動するまでその所在地はおろか、数すらも看過する事が不可能だった。  想定されるタイムリミットは、クリスマスの夜。  教団内に、手詰まり感が漂い始めたその時――  『レヴェナント』の捜査員から、一つの報告が飛び込んできた。  彼曰く、アークソサエティの東南に位置するアールプリス山脈の奥に、『琥珀の墓』と呼ばれる化石木の森がある。そこに、『琥珀姫』と呼ばれる魔女が住んでいるらしい。かの者は世界最古の魔女の一人で、特に霊魂の扱いに精通しているという。  彼女ならば、乖離した大量の魂を元に戻す術を知っているかもしれないと言うのだ。  しかし、件の魔女の元に行くのは容易くはない。彼女は多くの悪霊を使役しており、それを利用して琥珀の墓全体に呪いをかけている。それは、『魂縛り』と言う呪い。目標とした者の魂を束縛し、術者の手駒としてしまうと言うもの。極めて強力な呪いで、あらゆる生物をその支配下に置いてしまう。そして、その存在が殺されると呪いは殺した者に乗り移り、新たな手駒にしてしまう。琥珀の墓にはそうやって琥珀姫の手駒にされた生物が、番犬代わりにうろついている。彼女は、そんな森の奥でひっそりと暮らしているのだ。  彼女に会うには、そんな番犬達を打ち倒した上、その後に襲い来る呪いに打ち勝たねばならない。  悩む時間はなかった。時が来れば、時限設置されたサクリファイス・タナトスが発動する。阻まねばならない。どうあっても。  数に任せれば、幾ばくかの犠牲の上でかの魔女の元にたどり着く事は出来るだろう。しかし、届いているテロの情報は一つだけではなかった。手勢を無駄に分ける事は出来ない。  選ばれたのは、数組の浄化師達。  得体の知れない魔女に対する恐怖はある。けれど、それを振り切って彼らは歩み出す。  その肩に数多の人々の、命を背負って。
【神捧】朱染の聖夜
普通|すべて

帰還 2019-01-25

参加人数 3/8人 土斑猫 GM
 世界が、朱に染まろうとしていた。  現人類世界の始祖の誕生祭たる、クリスマス。祝福と歓喜が世界に満ちる日。そして、今宵は歴史に残る聖夜になる事を、この地の全ての人々が確信した。ただし、その歴史を象るのは清き星の光ではない。それは、禍しくぬめる血の香り。  人類の滅びを望みとする、『サクリファイス』。其が企てしは、死の祭典。アークソサエティ各地で起こる大規模テロ。  『口寄魔方陣』、『ヘルヘイム・ボマー』、そして、『サクリファイス・タナトス』。次々と開く、禁忌の華。響き渡るベリアルの咆哮。夜闇を震わす爆音。贄として喰われゆく人々の悲鳴。  それらが奏でる狂躁曲の中、浄化師達は戦いに身を投じていく。湧き上がる絶望と、心を蝕まれる恐怖に耐えながら。  その地獄の様な光景を眼前に、そびえる建物が一棟。  薔薇十字教団本部。いつもは、大勢で賑わっている場所。けれど今は、ひっそりと静まり返っている。本来、守りについている筈の浄化師の姿もない。ひょっとしたら、その殆どが外での戦いに駆り出されているのかもしれない。  そんな本部建物の前に、幾つかの人影があった。  黒衣を纏い、目深にフードを被ったその数、6人。彼らは無言で頷き合うと、洗練された動きで本部の敷地内に入っていく。それぞれが素早く庭木の間に身を潜め、様子を伺う。やはり、誰かが咎めに来る様子はない。そのまま、入口へと走り込もうとしたその時、  甲高い音を立てて、門が閉じた。6人の内5人が足を止め、振り返る。残る1人はその場で立ち止まり、正面の入口を見据える。時を置かず、その中から飛び出してくる数人の人影。  浄化師。  理解する前に、6人は完全に包囲されていた。  同胞の舌打ちを耳にしながら、中心に立つ人物が声を上げる。まだ若い、女性の声。 「これはこれは。浄化師の皆様方、御手も薄い時でしょうに。ご歓迎、感謝いたします」  言いながら、被っていたフードを脱ぐ。現れたのは、肩まで伸ばした銀髪を揺らす少女の顔。けれど、それを前にしても浄化師達に安堵の様子は浮かばない。それを見て、少女は困った様に笑う。 「そんなに、怖い顔をしないでくださいな。これでは、お話も出来ません」  小首を傾げる彼女に、浄化師の1人が誰かと問う。少女は「これは、失礼しました」と言うと、スカートの両端を摘んで優雅にお辞儀をした。 「わたしは、サクリファイスが幹部の1人、『アルマ・アクロイド』と申します。どうぞ、よしなに」  唱えられた名に、浄化師達は頷き合う。伝えられた情報の中にあった名だった。  その様を見たアルマが、可憐に笑う。 「そのご様子ですと、わたし達の計画は既に掌握済みだった様ですね。その上で、本部そのものを囮として誘うとは。『ヨセフ・アークライト』ですか? この様な愚策とスレスレの奇策を用意したのは?」  返事は、ない。肯定と受け取ったアルマはやれやれと溜息をつく。 「噂通り、食えない方の様ですね。この機に乗じて、邪教徒の巣を滅茶苦茶にしてやろうと思ったのですが」  そう言うアルマ達に向かって、浄化師達は無言で武器を向ける。その目に、命を屠る痛みの色はあっても、慈悲の色はない。けれど、それを見てもアルマの顔に焦燥や絶望の色が浮かぶ事はなかった。 「問答は無用ですか? 邪教徒らしい事です。ですが、わたし達がただ辱めを受けるとは思わない事です」  その言葉を合図に、他の5人が一斉に短剣を取り出した。  浄化師達は言う。抵抗は無駄だと。大人しく贖罪を受け入れれば、苦痛は与えないと。しかし、それを聞いたアルマは嘲る様に破顔する。 「贖罪? 何を償えと? 人の滅びは主の御意志! それを阻むあなた達こそ、裁かれるべき存在!」  途端、彼女の眼前に展開する蛍緑の魔方陣。 「!」  口寄魔方陣。物体や生物の遠距離移動を瞬時に行う、禁忌魔術。 「この事態、わたし達が予想していないとでも?」  叫びにも似た嬌声。  事態を察した浄化師達が身構える。答える様に、魔方陣からまろび出る大きなモノ。床に落ちたそれが、ゆっくりと身を起こす。サララと流れ落ちる、黒く長い髪。中から現れるのは、可愛らしい少女の顔と一糸纏わぬ肢体。細い手が床を掴み、華奢な身体が艶かしい曲を描く。けれど、晒された彼女の全貌を見て劣情を抱く者はそうはいないだろう。何故なら、美しい少女であるのは上半身だけ。その下で蠢くのは、無数の緑鱗に被われた長大な蛇の身体そのもの。  見た浄化師達は、瞬時にその正体を把握する。  『メデューサ』。  長き刻を経た蛇性が集まり、変化した生物。人を魅了し、思考力を奪い、餌食とする危険な存在。  しかし、場の浄化師達を警戒させしはそんな事ではない。  彼らの目の前で身を揺らす、メデューサ。その身体を覆うのは、血の色に明滅する無数のひび割れ。淡い胸のふくらみの間で鼓動するのは、地獄の様に朱い魔方陣。  意味する事は、ただ一つ。そう、このメデューサは『ベリアル』。外見から察するに、スケールは2。  紅く濁った双眼を揺らし、ベリアルが身を屈める。喉の奥から響く、威嚇音。攻撃態勢。囲む浄化師達が、迎撃態勢をとる。見つめる彼らの目に、警戒はあれど恐怖はない。スケール2は、確かに危険。けれど、経験を積んだ浄化師であれば倒せるレベル。まして、相手は一体。こちらは複数。後れを取る理由は、なかった。迎え撃つべく、武器を構えたその時―― 「お待ちを」  凛とした声が、夜闇を揺らす。  声の主は、アルマ。話しかける相手。仲間でもなければ、浄化師達でもない。見つめるのは、ただ一体。 「ベリアルよ。気高くも猛々しき、主の御子よ」  まるで、想い人に囁く様に声がけながら、アルマはベリアルに近づいていく。 「貴女は強い。けれど、世の汚れを祓うには。主の勅を果たすには。足りない。まだ、足りない。だから」  その声に応じる様に、ベリアルが振り向く。その目に宿る光は親愛のものではない。殺戮の衝動だけに輝く、邪悪な光。けれど、アルマは構わず近づく。恋する、少女の様に。ベリアルが、血臭のする呼気を吐く。事態を察した誰かが、叫んだ。それに応じて、躍りかかる一人の喰人。けれど、その身をアルマが放った不可視の力が弾く。迫るベリアル。彼女は、受け止める様に両手を広げる。広げて、歌う。 「貴女に、力を捧げます。世界の汚れを。歪みを。偽りを。全て消し去るための力を」  瞬間、真っ赤な飛沫が弾ける。呆然と見守る浄化師達の視線の先で、ベリアルがアルマの肩に喰らいついていた。長い蛇の身体がうねり、華奢な身体に巻きつく。その苦痛の全てを受け止めながら、アルマは例えなき恍惚の中でベリアルの身を抱きしめる。血に塗れた顔に凄絶な笑みを浮かべ、その言葉を紡ぐ。 「さあ、受け入れたまへ!」  瞬間、他の5人が持っていた短剣を一閃させる。朱く飛沫を上げるのは、各々自身の手首。  ボタボタと落ちる、血の雫。描く、真円。魔方陣。輝く。真っ赤に。夜空を、染めて。同時に倒れ伏す、5人。  ――禁忌魔術・『サクリファイス・タナトス』――  光の中、絡み合う影。その様は、睦み合う恋人同士の様に美しく、気高く見えた。  空へと昇る光。その中から、ゆっくりと現れる。  其を前にした浄化師の1人が、十字を切った。それは、これから起こる惨劇に身を投じる同胞の無事を祈るものか。はたまた、教示に殉じた彼女達に捧ぐものか。  そんな彼らを睥睨し、『ベリアル・スケール3』はおぞましい咆哮を上げた。
牧場主は心配性?
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帰還 2019-01-21

参加人数 3/8人 真朱 メグル GM
 ミズガルズ地方の北に位置し、一年を通して、国土全体に雪氷が覆う国、樹氷群ノルウェンディ。  海賊王ヴァイキングの血を引くという王の治めるこの国。  元を辿れば海賊に行きつくためか、一般市民に至るまで豪快な豪傑揃いだというが――。  この地には豊かな自然がありのままの姿で残されていることで有名な、トゥーネという地域がある。『竜の渓谷』の成立以前は、ドラゴンたちの住処でもあったという。 「ここトゥーネじゃ、林業やトナカイの放牧が行われてるってのは教団の人なら知ってんだろ?」 「ええ、もちろん。観光に次いで、大切な産業の一つでらっしゃると存じていますが」 「そうだ、それから星だな! この辺は強い灯りもないしな、綺麗だぞ!  空気が乾いてるからだか何だかで、そらあキラキラ光ってよお、どこの国、どこの土地にも負ける気がしねえな!」  主人は上機嫌に、歌うように続ける。 「オーロラもいいぞ、これぐらい寒いとこじゃねえと見られねえから、暇があったらいい場所教えてやるぜ」 「そうですね、機会があれば――それで、今回はどのようなご用件だったか、お聞きしても?」 依頼者である、とあるトナカイ牧場の主人は、教団員を見て口をまごつかせる。 「それがさあ、まあこの辺の産業であるとおり、うちもトナカイを飼ってるわけだが……」 「トナカイに何か、異変が?」  司令部教団員に緊張が走る。  ベリアルの魔の手がすぐそこに伸びているというのならば、早急に対処しなくてはならない。 「いや、そうでなくてな。立派だってのが認められて、今度王族の方々に献上することになっててよ」 「それはそれは、素晴らしいことではありませんか」  司令部教団員は安どのため息を漏らした。めでたい報告だというのに、何が問題なのか、主人はちらちらと様子を伺うように教団員を見ている。 「ああ、もちろん誇りに思ってらあ! でも最近、テロだのベリアルが出ただのって騒いでるだろう? 大事なトナカイに何かあったらと思うとそわそわしちまう」  なるほど、と司令部教団員は合点がいった。この男性は思いのほか心配性らしい。まあ敬愛する王に献上する品なのだから、気にかかってしまうのも仕方のないことなのだろう。 「我々に、トナカイの警備をしてほしいというご依頼なのですね」 「ああ、そういうこった! いやすまねえ! 自分でも小心者で情けねえってのは自覚してるんだが、俺も献上品になるなんて思ってもみなくて緊張しちまってな」  主人は苦笑を浮かべながらがしがしと頭を掻いた。 「いえ、忠誠心に厚いノルウェンディの方らしいかと」 「忠誠……ってのとは違うかもしれねえが、そうだなあ! 王族の皆さんには先祖から世話になってるからよ、いいものを差し上げたいし、がっかりさせたくねえわけだ」  安堵したような表情で言った主人に、司令部教団員は力強く頷いて見せた。  特に危険な任務というわけではないようだが、おそらく警備する範囲が広い。多くの教団員を配置した方がいいかもしれない。 「いてくれるだけで心強いんだ! よろしく頼んだ! まあ、近くに居てくれさえしたら、何してくれても構わねえしな。  近所の食堂の女将がトナカイ料理教室なんてのもやってるから、夕飯の時間に寄ってみるといいんじゃねえかな。  あとは運が良けりゃあ綺麗なオーロラが見えるし、星でも見て暇をつぶしてくれ。  どっかの小屋でゲーム大会があるかもしれねえしな。あいつら身内ばっかでやってるからよ、刺激が足りなくて調子乗ってやがる。  お灸を据えてやってくれ。……それから、悪ガキどもが遊べ遊べって騒ぐかもしれねえが、教団の方々が珍しいんだろうな、許してやってくれ」  ドアの隙間からじいっとこちらを見つめている子供たちの姿を見つけて、主人がため息をついた。司令部教団員は思わず頬を緩ませて「なるほど、色々とありがとうございます」と頷きを返す。  そして思案する。今回の任務は、任務というより――浄化師たちの息抜きと成り得る案件のようだ。  難しい顔をした司令部教団員に、主人が右手を差し出して「まああれだ」と豪快に笑う。 「トゥーネはいいとこだ、せっかくだしな、満喫していってくれよな! 今後ともよろしく頼むぜ!」
【神捧】星空の下、君の声だけを抱きしめる
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帰還 2019-01-19

参加人数 2/8人 留菜マナ GM
 少女は泣いていた。  終焉の夜明け団の信者の青年は、魔導書の調査に赴いた廃墟の片隅で、薄汚れた銀色の髪の少女がしょんぼりとうなだれている姿を見かけた。  青年は少し警戒するように言った。 「…‥…‥こんな場所で何をしている?」 「お父様とお母様が、わ……私を神様の生贄にするって言うの」  言葉に詰まった少女は顔を真っ赤に染めてぽつりと俯いた。  少女の瞳からは、涙がぽろぽろとこぼれ落ちる。  話を聞いてみると、少女はサクリファイスに属する貴族の者だったが、両親の手によって神の生贄として捧げられたという。 (なるほどな。この屋敷が何者かに爆破されたと聞いていたが、サクリファイスの仕業だったか。だが、爆発に巻き込まれたのにも関わらず、生贄として差し出されていたこいつは生きている)  青年は無言のまま、しばし逡巡する。 (無意識に、魔力障壁で爆発から身を守ったのか? 確かに、魔力蓄積量が尋常じゃないな)  青年は五感を研ぎ澄まして、前方の少女へと視線を向ける。 (サクリファイスが屋敷を爆破したことで、魔導書の調査にも行き詰まってしまっている。こいつには戦力、そして情報源としても利用価値があるかもしれないな)  青年はアジトまでの方角を見定めると、少女の手を強引に引っ張った。 「ついて来い!」 「……っ」  立ち上がった少女はよろめきながらも、空を仰ぎ見る。  何もかも現実味が欠けた世界で、黒い外套に身を包んだ青年の笑顔だけが確かだった。  廃墟を背景に、雪が真っ暗な空を白く染めていたーー。 ● 「お願いします! 浄化師さん、この村を救って下さい!」  それは、一人の少女のそんな言葉から始まった。  シャドウ・ガルテン。  常に深い霧に国の周囲が覆われており、国内はいつも真っ暗な夜の世界が広がっている。  だが、閉鎖的な国であるため、娯楽がかなり少なく、特に若者は暇を持て余していた。  そんな中、ルナリス村では、娯楽の一環として観覧車がアトラクションとして機能している。  のどかな村の奥では、魔結晶を中心にした魔力の供給を施された観覧車がゆっくりと動いていた。  村起こしのために教皇国家アークソサエティの技術を元にして作られた観覧車は、またたく間にヴァンピールの若者達から大いに歓迎された。  また、観覧車のイルミネーションを見ることができるため、それを目当てに訪れる来訪者達も多く見受けられる。  だが、ルナリス村の何処かに、サクリファイスの信者と終焉の夜明け団の信者が隠れ潜んでいる。  その噂は否応もなく、村人達を震撼させた。  最近のサクリファイスの過激な動向は、この平穏だった村の中でも目に余るものがあったからだ。  それに浄化師達が、サクリファイスの信者と終焉の夜明け団の信者を捜索することで、『彼ら』のことが教団にバレる可能性がある。 「この村に入り込んだサクリファイスの信者は、観覧車の方に逃げ込んだようだ。しかし、浄化師達もすぐにこの村を訪れるだろう」  村人達からの報告を聞いたルナリス村の村長が目を細め、更なる思考に耽る。 「このままでは、私達が終焉の夜明け団の信者の関係者であることが教団にバレてしまう可能性がある。こうなったら仕方ない」  そう吐露する村長の表情は、どこか苦しげで悲しげだった。  『ルナリス村の何処かに、サクリファイスの信者と終焉の夜明け団の信者が隠れ潜んでいる』  『レヴェナント』がもたらした情報を頼りに、ルナリス村を訪れたあなた達はそこで意外な人物と対面した。 「君は?」 「申し遅れました。私、リーファと言います」  あなた達の目の前で丁重に一礼してきたのは、鞄一つを手に持った銀色の髪の少女だった。  少女は両手に手袋をはめて、髪に赤い大きなリボンをつけていた。  艶やかな銀髪は肩を過ぎ、腰のあたりまで伸びている。  着ているのはレースとフリルをこれでもかと多用したドレスで、桜色のその布地に銀糸のような髪が零れるさまは、眩しいくらい鮮烈なインパクトがあった。  どこかの貴族の令嬢だろうか――。  あなた達が思い悩んでいると、リーファは居住まいを正してさらに言い募った。 「少し前に、村の観覧車を訪れた人が言っていたんです。神の生贄とするために、この村を爆破するって」 「爆破!?」  その言葉を聞いて、あなた達は驚愕する。 「この村は、私達にとって大切な思い出の場所なんです。お願いします! 浄化師さん、この村を救って下さい!」 「分かった」  リーファの懇願に、あなた達はため息を吐いて、了承の言葉を口にした。 「漆黒の闇、現実と夢を分け隔てる世界」  灯りに照らされた村で、ドレスに身を包んだリーファが想いを奏でる。 「現実は夢へと変わり、夢は現実になり得るかもしれない」  リーファは手袋をはめた左手の甲をかざすと、一重咲の白いクリスマスローズの花畑に彩られた村の一画を見据えた。 「ルークスお兄様はそう思わない?」 「リーファは相変わらず、言葉遊びが好きなようだな」  かって自分を救ってくれた終焉の夜明け団の信者の青年――ルークスの言葉に、リーファは寂しげに微笑んだ。
あなただけの月灯り
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帰還 2019-01-15

参加人数 3/8人 oz GM
 シャドウ・ガルテンは歴史的なヴァンピールの迫害もあり閉鎖的な国家であったが、ある事件をきっかけに徐々に国交が開きつつある。  その為、観光の一つとなるものがないか調査していたところだった。 「照明専門店?」 「そうです。シャドウ・ガルテンは常に夜が明けませんから、光源の確保は大事なことなんです。だから、どの町にもそういったお店があるんですよ」  ヴァンピールの教団員女性が頷きながら、「こっちに来てそういったお店が少ないことにびっくりしたんですよ」と穏やかに笑う。  常夜の国。そう呼ばれるだけあって、シャドウ・ガルテンは常に深い霧に国の周囲が覆われており、国内は真っ暗な夜の世界が広がっている。  だからか『モーンガータ』のような照明専門店はシャドウ・ガルテンではよく見かけられる。  人口の多いメインストリートでは街灯があるが、わき道に入れば街灯の光が届かない場所も当然存在する。シャドウ・ガルテンに住む者ならば外出の際には、常にランタンを身につけているのは当たり前だった。 「そのお店には様々な照明はもちろん照明に関するものなら何でも売ってあるんですよ」  そう言ってヴァンピールの後輩が先輩に説明する。  『モーンガータ』の店内は照明専門店というだけあって、ランタンやランプ、シャンデリア、デスクランプなどの様々な照明を取り扱っている。  それだけでなく、蜜蝋の蝋燭やオイル、高価ではあるが火気や陽気の魔結晶なども売られている。  ランプシェードやシャンデリアの飾りになるドロップやビーズの飾りなども個別に売られており、古くなった照明の手入れや修繕などもしてくれるのだ。  シャドウ・ガルテンに住む者たちにとって照明は光る彫刻であり、インテリアでもあり、時には美術品でもあった。 「そのお店ではランプシェードやアロマキャンドルの体験教室が開かれてて私も小さい頃、よく遊びに行ったんです」  どこか郷愁を滲ませ思い出すように言葉を紡ぐ。 「ランプシェードの作り方は、子供でもできる簡単なもので風船で作るんです。風船にぐるぐると麻紐を巻き付けるだけなんですけど、なんだか楽しくって。風船の形にも色々あって丸いのから、星形に、ピラミッドの形をしたものやツリーの形、ウサギの形をしたものもあったなあ……」 「ああ、なるほど。風船でランプシェードの型を取るのね」  子供の頃の楽しかった思い出を笑顔で後輩は話す。 「巻き付け終わったら、刷毛で糊を塗りつけるんです。そこで乾かしたら、さらにファイアプルーフって耐火用液剤を塗るんです」 「ファイアプルーフって?」 「こっちには売ってないですよね。シャドウ・ガルテンだと光源を使う際に、どうしても火を取り扱うじゃないですか。その火災防止に家具やランプシェードにはそれをコーティングしたものが殆どなんです」 「便利ねえ……こっちでも作れないかしら?」 「それは無理そうですね。ファイアプルーフの原材料の一つにシャドウ・ガルテン固有種の植物が使われているんです。……確かアイアンローズの実だったかしら?」 「それは残念……それなら国交が開かれたら輸出品の一つになりそうね」  にやりと笑う先輩教団員にそうなるといいですねと後輩であるヴァンピールの女性も頷いた。 「それにしてもアイアンローズってヘマタイトって宝石の別名でしょ。でも、ローズってつくんだからバラの品種なのかしら?」 「バラに似た小さな花を咲かせますが、実もなるので違った筈ですよ。実が真っ黒で宝石みたいなんですよ」 「ああ、なるほど。そこから名前がきてるのね」 「花は不思議なことに、白とか赤とか色々な色の花が咲くんですけどね。私の家庭でも母さんが好きだったのでよく育ててました」  ミニチュアみたいなバラが可愛くて私も好きなんですと後輩は紅茶を飲みながら微笑む。 「でも、体験教室ってのがいいわよね。そこのお店のオーナーはやり手ね……大人相手に商売するだけじゃなく、子供も巻き込むなんて」 「先輩ったら、そういう夢のないこと言うの止めて下さい」 「ごめんごめん、それで体験教室ってどうなの?」 「そうですね。出来上がったランプシェードを親に見せると喜んでくれて子供ながらに嬉しかったですね。その後、暫く家でもランプシェード作りにハマってた記憶があります」  気を取り直したように後輩は話し出した。  麻紐のランプシェードはエスニック風に仕上がるが、レースや和紙でも同じ手順で作ることができるらしい。和紙を張り付ければ、繭のような光が美しいニホン風のランプシェードが、レースのものはロマンティックな仕上がりになるそうだ。 「体験教室であんたみたいにハマった人には自作できるように材料も売ってるなんて、さすがだわ」 「……先輩って商売人みたいですよね」 「実家がそうだったから、つい考えちゃうのよねー、ところでアロマキャンドルの方はやらなかったの?」  呆れた視線を向ける後輩に先輩は肩を竦め、話の矛先を変える。 「もちろんアロマキャンドルも楽しいですよ。特にボタニカルキャンドルがおすすめです!」  先輩に誘導されたことに気づかず餌に食い付いた魚のように後輩は語り出す。  ボタニカルキャンドルはドライフラワーやドライフルーツなどを容れたキャンドルのことを指す。  最初に用意した型に小さなキャンドルの芯が真ん中になるようにセットし、お好みのドライフラワーやドライフルーツを詰めていく。見せたいドライフラワーが蝋で隠れてしまわないように外側に向けて入れるのがコツだ。  そこに溶かした蝋をゆっくり流し込む。勢いよく流し込んでしまうと泡が出来てしまうので注意が必要だ。  最後に蝋が固まってしまう前に好きなアロマオイルをお好みで適量加えて、固まるのを待つだけだ。 「私はバラの花びらをたっぷり入れてローズとオレンジを組み合わせたアロマが好きなんです」  バラの花びらが蝋から透けて非常に贅沢で美しいキャンドルができるそうだ。  さて、あなたはどんなドライフラワーを選ぶだろう。王道のバラか、高貴な紫色の花が美しいニゲラやコーンフラワー。ドライフラワーの中でも人気なミモザ。脇役だが控えめで愛らしいかすみ草。アロマオイルとあわせてもいいラベンダー。オレンジやリンゴの輪切りもお洒落だ。  アロマオイルを選ぶならば、ドライフラワーと合わせてみてはどうだろうか。  柑橘系だと瑞々しくさわやかな甘い香りは性別年代問わずに楽しむことができる。フローラル系ならばローズやジャスミンなどの花の香りから抽出されているので、その華やかな香りが楽しめる。  ハーブ系だとさわやかですっきりとした香りが特徴的だ。スパイス系になるとジンジャーやシナモンなどの料理のスパイスとしておなじみの香辛料の香りがする。ウッディー系だと、まるで森の中にいるような落ち着く香りが漂うだろう。  どの香りを選んでも素敵なあなただけのキャンドルができるだろう。  ランプシェードやアロマキャンドル作りに挑戦するなら、初心者コースがおすすめだ。  もちろん買い物をしても構わない。店内に並べられている様々な美しい照明を見て回るのも楽しいだろうし、修繕や手入れをしている作業を見学させてもらうことも可能だ。これを機に日頃お世話になっているランタンの手入れを頼むのもいいかもしれない。  今回浄化師にはこの専門店が観光の目玉の一つになるのか実際に体験してレポートにまとめて欲しい。
【神捧】サクリファイスをぶっ飛ばせ!
普通|すべて

帰還 2019-01-15

参加人数 4/8人 春夏秋冬 GM
 シャドウ・ガルテン。  ヴァンピールが住む、常闇の国。  しかし、住んでいるのはヴァンピールだけとは限らない。  ヒューマンも、国の端にひっそりと暮らしていた。  ヴァンピールが迫害を逃れて作ったシャドウ・ガルテンに、ヒューマンが住んでいるのは理由がある。  ある理由で、住んでいた場所を追い立てられたのだ。  理由が理由なので、自業自得とも言えたが。  それはアンデッドの殺害が原因だ。  まだアンデッドが迫害を受けていた頃。  死者が蘇る恐怖から、アンデッドとして蘇った者を殺した歴史があるのだ。  心臓に杭を打ち、2度と蘇らないように身体を引き裂く。  それは、その村の住人だけが行ったことではない。  けれどアンデッドの権利が確立され、その時流に乗り遅れたことで、その村の住人は追い立てられるようになったのだ。  ある者は、アンデッドを殺された恨みを晴らすために。  ある者は、自分達が迫害した歴史を隠すための生贄として。  一言で言えば、運が悪かったのだ。  それが自業自得から招いたことだったとしても。  なにしろ当時は、多かれ少なかれ、皆がそうだっのだから。  そして今、その村に彼らは居る。  先に住んでいたのは彼らだったため、あとから来たヴァンピール達は彼らを居ないものとして扱い。  村の住人も、シャドウ・ガルテンの住人と関わらないようにしてきた。  しかし、そんな関係に変化の兆しが。  全ては、浄化師達がシャドウ・ガルテンのテロを防いだことが切っ掛けだ。  これにより、それまで内向きだったシャドウ・ガルテンの住人は、外に目を向けようと動き出す。  その最初の一歩として、国内に居るヴァンピール以外の住人とも関わろうとしたのだ。  それが最悪を食い止める境界線となった。  ヴァンピールの住人が訪れた、その時。村には異様な気配が広がっていたからだ。  かつて行っていたアンデッドへの迫害。  それを肯定し実行するべきだという雰囲気が、出来つつあったのだ。  明らかに異様な雰囲気の中、村に訪れたヴァンピールの住人は、秘密裏に相談を受ける。  助けを求めたのは、1人の青年。 「アンデッドになった妹が殺されるかもしれないんです」  話を聞けば、事故で死に、アンデッドとして蘇った妹を、村人達が殺そうとしているというのだ。  詳しく話を聞けば、奇妙な点に気付く。  アンデッドとして妹が蘇ったのは、2年前。  その時には、むしろ村人達は喜んだのだ。  かつての因縁から自分達を解き放つように、アンデッドの少女を受け入れていた。  それが変わったのはひと月ほど前。  村を出ていった一組の男女が、戻ってからだ。  その頃から、少しずつ少しずつ、村の雰囲気は変わっていき。  いつの間にか、アンデッドは殺すべきだという風潮が広がっていた。 「神の摂理に反するアンデッドは許されません」 「神の摂理に従うことこそ、幸せなのです」  村に戻ってきた一組の男女の話を、いつの間にか真実だと思い始めていたのだ。  どう考えても、その一組の男女が怪しい。  しかし青年にそのことを話しても、不思議そうに聞き返すのだ。 「なにか、おかしなことがありますか?」  青年だけでなく、他の村人達も、一組の男女を怪しいと思っていないのだ。  だというのに、違和感だけは感じているらしい。  このことから、なんらかの精神に作用する魔術が使われている可能性が考えられた。  現在、怪しい一組の男女は村には居ない。  村の外で出会った『素晴らしい集団』の会合に出るために、一時的に離れているらしい。  しかし、数日の内に戻ってくることが分かっている。  戻って来た時に何が起こるのか?  相談を受けたシャドウ・ガルテンの住人は危機感を抱き、薔薇十字教団に助けを求めた。  この時、教団に訪れていた魔女セパルが協力を申し出、教団は承認。    これらを受け、指令が発令される。  内容は、シャドウ・ガルテン内にあるヒューマンの村で起っている異常事態の解決。  アンデッドの女性の、私刑による処刑を防ぎ、怪しい一組の男女を調べること。  場合によっては、怪しい一組の男女の処刑も許可されています。  この指令をアナタ達は受けることにしました。  怪しい一組の男女が戻ってくる日の、数時間前に村に訪れることになります。   村人達から話を聞くことができますが、彼らは今の状況に違和感を感じているのに、それを正そうという意志は希薄です。  村人を調べたシャドウ・ガルテンの住人からの報告では、魔力抵抗が高い者ほど、違和感を感じ何かをしようという意志をみせるようです。  このことから、常人よりも魔力抵抗力が高い浄化師であれば、村の異常の影響を受けることはないと推測されています。  この指令に、アナタ達は――?
朝日に溶ける
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帰還 2019-01-14

参加人数 5/8人 あいきとうか GM
 教団本部の食堂で、女はワイングラスをゆらりと回す。  香りを楽しみ、ひと口。物憂く細められていた双眸がわずかに緩む。 「エイバ!」 「騒々しいわねぇ」  ばん、と扉が勢い良く開かれた。  面倒くさそうな口調とともに女が振り返る。その表情は、声に反して実に楽しそうだ。  見つけてほしかった仕掛けを、ようやく発見してもらえた子どものよう、ともいえるだろう。 「よーし分かった。まさかとは思ってたけどやーっぱりお前が犯人だな!」 「なんのことかしら?」 「お前、浄化師たちになにを飲ませた!」  つかつかと歩み寄ってきた教団寮食堂の見習い料理人に、ついに堪えきれなくなってエイバは声を立てて笑った。  世俗派の魔女、エイバ。ハロウィンの一件以来、たびたび教団を訪れてはくつろいだり、稀に手を貸したりしている気まぐれな女だ。 「夕飯にちょっと薬を混ぜただけよ。大丈夫、死んだりしないから」 「友人が声をかけても起きないと、浄化師たちが騒ぎ出してるぞ」  エイバの隣の席に腰を下ろし、見習い料理人の青年はため息をつく。  ハロウィンでは、食べると相手のことをどれくらい好きか確認できる、という奇怪なかぼちゃのプリンを作り出した彼女は、今日この日まで実におとなしくしていた。  考えてみれば、エイバは恩讐派から逃げてきた子どもを養子として迎え入れたり、事後処理をしたり、クリスマスの一件にも教団側の戦力として一枚噛んでいたりと、忙しい日々を送っていたのだ。  年末年始はゆっくりするだろう、と気づけば彼女と接する機会が多くなっていた青年は、思っていたのだが。 「年始早々、事件を起こすな!」 「年始早々だからよ。ねぇ、初夢って知ってる?」 「は? 一月一日から一月二日にかけて見る夢か?」 「そう。一月二日から一月三日にかけて、という説もあるけど、どっちも正しいわよ」 「それがどうした」 「今日は何月何日でしょう」 「一月一日の真夜中だが? ……ってまさか」  察した青年の頬が引きつる。エイバは実に嬉しそうに笑った。 「初夢を見る薬を夕飯に混ぜたの」 「お前なぁ……」 「それもとびっきりの夢よ。自分と一番、つながりの深い人の夢を見るの。これは夢だ、って自覚しながらね」  浄化師にとって、つながりの深い人物。  すなわち、契約で結ばれたパートナーだ。  現在、揺すっても真横で叫んでも目を覚まさない彼ら彼女らは、魔女の薬を土台として築かれた明晰夢の中で、パートナーと話したり、なにかしたりしている。 「どんな初夢を見るのも自由だろ。なんでわざわざ登場人物を固定するような真似、したんだよ」 「一年の最初に、一番深くつながってる人の夢を見るって、素敵じゃない」  冗談めかすように肩をすくめ、魔女はワインを一息で飲み干す。 「それにね、夢だって分かってるからこそ、言えることもできることもあるでしょ。そういうことをしたあとの一年って、なにかが変わるかもしれないじゃない」 「そういうもんかね」 「ところでね」  すっとエイバはからになったワイングラスを青年に近づける。彼は反射的にそれを受けとった。 「このワインの中にも、同じ薬が入っていたの」  瞬く彼に、エイバは微笑みながら立ち上がった。 「私は誰とどうする夢を見るのかしらね」  朝日に溶けるうたかたの一瞬を見るため、魔女は踊るような足どりで食堂から出ていく。
鈴理あおいのクリスマス!
普通|すべて

帰還 2019-01-14

参加人数 1/1人 柚烏 GM
1718年12月――教皇国家アークソサエティは、「クリスマス(ユール)」ムードに包まれています。 12月24日の「アレイスター・エリファス」の生誕祭として、教皇国家アークソサエティを中心に普及したイベントでしたが、 今では、恋人や家族が食事や団欒を楽しむ、一大イベントと変化していました。 子ども達にとっては、アレイスター・エリファスよりも知名度の高い「伝説の魔術師:サンタクロース・ニコライ」が、 プレゼントを届けてくれるという、希望溢れる日です。 そんなクリスマスに、エクソシスト達にも息抜きが必要だとして、 ヨセフ・アークライトから、束の間の休息が指令として与えられました。 「シャドウ・ガルテンの事件」から、サクリファイスが動くことは目に見えているため、 エクソシストはそちらの対処をする必要もあります。 しかし、だからこそ。生死を賭ける戦いに望むためには、パートナーとの仲を縮める必要があるでしょう。 あなたのクリスマスは、どのような1日になるのでしょうか!
新年のうりぼう捕獲大作戦!
簡単|すべて

帰還 2019-01-13

参加人数 4/8人 鳩子 GM
●トラブルメーカー卿の来訪  新年と言えど、教団に休みは無い。ヨハネの使徒やベリアルといった脅威はカレンダーに従って休んではくれないし、年末からのお祭りムードでトラブルはかえって増加する。  新人教団員であるリネット・ピジョンは諸先輩を差し置いて休むことは出来ず、年明け早々業務に励んでいた。 「あけましておめでとう! 諸君!」  突拍子もなく響き渡った朗らかな声に、目を白黒させながら顔をあげる。先ほど、同じく勤務中の団員が差し入れを持ってきてくれたので、またその手の来訪者かと思ったが、立っていたのは見慣れた団服ではなく、きらびやかな装飾の施されたインバネスコート姿の男性だった。 「あ、あけましておめでとうございます……?」 「おや、君は初めて見る顔だな。吾輩はフィルマン・ラクロワ。爵位は無いので、気楽にラクロワ卿と呼んでくれたまえ」  リネットよりも頭二つ分ほど高い長身に、服の上からもわかる軍人のような逞しい体つき。年のころは四十代前半といったところか。麦色の髪を赤いリボンで一つに結び、彫の深い眼窩にモノクルをはめている。レンズの奥で、淡い水色の瞳が好奇心を湛えて煌めいた。 「畏まりました、ラクロワ卿。私はリネット・ピジョンと申します」  直接まみえるのは初めてだったが、その名前には聞き覚えがあった。  貴族でありながら国政に興味を示さず魔術師の道を選び、年がら年中研究に没頭している変わり者――司令部詰めの団員からは密かに『トラブルメーカー卿』という綽名を奉られており、彼が持ち込んだ指令に関する資料を見たリネットは出来ることなら関わりたくないと心底思ったものだった。祈りが通じたのかどうかこれまで顔を合わせることは無かったのだが、とうとうこの日が来てしまったか――。  覚悟を決め、リネットはいっそう背筋を伸ばすと口を開いた。 「それで、……本日はどのようなご用件でしょうか」 「いやぁ、はっはっは、やってしまったよね!」  参った参った、と言いながら、ちっとも悪びれずにラクロワは頭を掻いた。この男、黙っていれば重厚な貴族然とした雰囲気があるのに、口を開くと途端に軽くなる。ひとしきり笑った後、ラクロワはその軽いノリのまま話を続けた。 「近頃は、東方島国ニホンの魔術が気になっていてね。やれ式神だ、呪符だ、九字だとあれこれ研究してみているんだが……君は知っているかな、干支というものを? 十二種類の動物がねえ、年ごとにぐるぐる回るのだよ。その年の守護動物というのかね、あれは。まあ、下々の者どもは特に意味も考えずにその年ごとの動物の絵だの置物だのを有難がって飾ったりしているようなのだが……十干十二支といって、十二の動物と、十の五行の兄弟たちが六十年周期で回るのだ。これがとても興味深いものでねえ……」  はた迷惑なのはさておき魔術師としては優秀だ、という評判だったはずだが、説明はお世辞にも分かりやすいとは言えない。ただでさえ、ニホンの魔術などリネットは門外漢である。幸いにも、リネットが単純な相槌さえ打ちかねているのに気が付いたラクロワはひとつ咳払いをして、説明を打ち切った。 「ともかく今年は己亥といってね、猪がラッキーアニマルなのだよ。吾輩は普段から屋敷のまわりをゴーレムに守らせているのだが、折角だから式神とゴーレムの技術を掛け合わせて見張り番をしてくれる猪を作ろうと思いたった。そうして機能性、耐久性、それに見目の愛くるしさに拘って、とうとう吾輩は作り上げたのだよ!」  だが、と、ラクロワは突如悲哀に顔を歪めた。 「その猪たちは皆、逃げ出してしまったのだ」 「え」 「あまりに可愛らしく出来たので興奮しているうちに、術式をひとつ組みこみ損ねてしまったようなのだ。本来なら吾輩の命令に従って動くのだが、いやあ、なんだ、そのつまり野生のゴーレムになってしまったのだ。正確には、ゴーレムではないな。あのような無骨なものではなく、毛並みや手触りまで再現された最先端の式神というべきだが」 「ラクロワ卿……」 「安心したまえ! 幸いにも彼らは皆、我が屋敷の地下迷路に逃げ込んだ。外へ出て一般市民を害するようなことは無いと誓う! それに、例え外に出たとしても、うりぼうは可愛いからな! 市民たちは恐れおののくどころか歓喜の声を上げるであろう!」 「外見の良し悪しは関係御座いません」  ぴしゃりと言い捨てたリネットに、ラクロワは悄然と肩を落とした。案外に打たれ弱い。だが、立ち直りも早かった。 「う、うむ……まあ、ともかく! あの子たちを捕まえてほしいのだ。用意した呪符を貼り付けてもらえば、ただの置物に戻るはずだ。地下迷路とは言ったが、もちろん屋敷の主である吾輩は地図を持っている。情報の開示は惜しまないと約束しよう。無論、報酬もはずむとも! 大いなる報酬は人を寛容にする効果があるからな!」  この御仁、自身がトラブルメーカーであるという自覚はあるらしい。そこで態度を改善するのではなく、開き直って札束をちらつかせるのは性質が悪いとしか言いようがない。  なにはともあれ、新年の晴れやかな街中にうりぼう――まだ子どもとはいえ無数の猪が解き放たれるようなことがあってはいけない。  リネットは溜息を飲み込み、粛々と依頼を受諾した。
ラウル・イーストのクリスマス!
普通|すべて

帰還 2019-01-11

参加人数 1/1人 oz GM
1718年12月――教皇国家アークソサエティは、「クリスマス(ユール)」ムードに包まれています。 12月24日の「アレイスター・エリファス」の生誕祭として、教皇国家アークソサエティを中心に普及したイベントでしたが、 今では、恋人や家族が食事や団欒を楽しむ、一大イベントと変化していました。 子ども達にとっては、アレイスター・エリファスよりも知名度の高い「伝説の魔術師:サンタクロース・ニコライ」が、 プレゼントを届けてくれるという、希望溢れる日です。 そんなクリスマスに、エクソシスト達にも息抜きが必要だとして、 ヨセフ・アークライトから、束の間の休息が指令として与えられました。 「シャドウ・ガルテンの事件」から、サクリファイスが動くことは目に見えているため、 エクソシストはそちらの対処をする必要もあります。 しかし、だからこそ。生死を賭ける戦いに望むためには、パートナーとの仲を縮める必要があるでしょう。 あなたのクリスマスは、どのような1日になるのでしょうか!
ルーノ・クロードのクリスマス!
普通|すべて

帰還 2019-01-11

参加人数 1/1人 oz GM
1718年12月――教皇国家アークソサエティは、「クリスマス(ユール)」ムードに包まれています。 12月24日の「アレイスター・エリファス」の生誕祭として、教皇国家アークソサエティを中心に普及したイベントでしたが、 今では、恋人や家族が食事や団欒を楽しむ、一大イベントと変化していました。 子ども達にとっては、アレイスター・エリファスよりも知名度の高い「伝説の魔術師:サンタクロース・ニコライ」が、 プレゼントを届けてくれるという、希望溢れる日です。 そんなクリスマスに、エクソシスト達にも息抜きが必要だとして、 ヨセフ・アークライトから、束の間の休息が指令として与えられました。 「シャドウ・ガルテンの事件」から、サクリファイスが動くことは目に見えているため、 エクソシストはそちらの対処をする必要もあります。 しかし、だからこそ。生死を賭ける戦いに望むためには、パートナーとの仲を縮める必要があるでしょう。 あなたのクリスマスは、どのような1日になるのでしょうか!
リチェルカーレ・リモージュのクリスマス!
普通|すべて

帰還 2019-01-11

参加人数 1/1人 柚烏 GM
1718年12月――教皇国家アークソサエティは、「クリスマス(ユール)」ムードに包まれています。 12月24日の「アレイスター・エリファス」の生誕祭として、教皇国家アークソサエティを中心に普及したイベントでしたが、 今では、恋人や家族が食事や団欒を楽しむ、一大イベントと変化していました。 子ども達にとっては、アレイスター・エリファスよりも知名度の高い「伝説の魔術師:サンタクロース・ニコライ」が、 プレゼントを届けてくれるという、希望溢れる日です。 そんなクリスマスに、エクソシスト達にも息抜きが必要だとして、 ヨセフ・アークライトから、束の間の休息が指令として与えられました。 「シャドウ・ガルテンの事件」から、サクリファイスが動くことは目に見えているため、 エクソシストはそちらの対処をする必要もあります。 しかし、だからこそ。生死を賭ける戦いに望むためには、パートナーとの仲を縮める必要があるでしょう。 あなたのクリスマスは、どのような1日になるのでしょうか!
【神捧】 生きる意味を問う
普通|すべて

帰還 2019-01-10

参加人数 4/8人 梅都鈴里 GM
 技術革新特区として、商業に栄える街、ブリテン――。 「サクリファイスのテロだ! 至急、エクソシストに救助要請を!」  いち早いレヴェナントの報告から、有志のエクソシストらへと速やかに指令が発令される。  幸いまだ『サクリファイス・タナトス』は発動していない。魔方陣は完成し、生贄となる信者は揃っているのに、だ。  強化するべきベリアルの確保に手こずっているだけだろうか……? 監視に配備された構成員は、信者らの動きに眉をひそめる。  何にせよ、術が発動されてしまえば厄介だ。そうこうしているうちに、指令を受けた浄化師らが現場へと到着した。 「待っていたよ、浄化師たち。さあ、神へ捧げる浄化の儀式の始まりだ……!」  浄化師らが現場へ到着したタイミングで、集まった信者らを生贄に『サクリファイス・タナトス』が発動する。  核となる生物が『口寄魔方陣』で呼び込まれる――皮膚を突き破る触手、確認されたのは強化によりスケール2へと進化した猪型ベリアルだ。  固体数も多くない。この程度なら戦闘は長引かないだろう――。  一瞬の油断のあと、口角を吊り上げた術者を見て、構成員はハッとして浄化師らを振り返った。 「う、っぐ、あああっ!」  苦しみ始めた一人を見て、しまった、と気付いた。  術者の狙いは最初からこちらだったのだ。 「ククッ、知っているよ。この術が、君たちの持つその厄介な武器に強く作用することを……生きる為の理由が強くなる程、死が迫るのは苦しいことだろう? 抗い難い衝動に身を任せてしまえばいい。大丈夫さ、神もそれを望んでおられる――」  一度発動した『サクリファイス・タナトス』は止まらない。  苦しむ傍らのパートナーの瞳には、混濁した闇が渦巻いていた。
ラニ・シェルロワのクリスマス!
普通|すべて

帰還 2019-01-07

参加人数 1/1人 oz GM
1718年12月――教皇国家アークソサエティは、「クリスマス(ユール)」ムードに包まれています。 12月24日の「アレイスター・エリファス」の生誕祭として、教皇国家アークソサエティを中心に普及したイベントでしたが、 今では、恋人や家族が食事や団欒を楽しむ、一大イベントと変化していました。 子ども達にとっては、アレイスター・エリファスよりも知名度の高い「伝説の魔術師:サンタクロース・ニコライ」が、 プレゼントを届けてくれるという、希望溢れる日です。 そんなクリスマスに、エクソシスト達にも息抜きが必要だとして、 ヨセフ・アークライトから、束の間の休息が指令として与えられました。 「シャドウ・ガルテンの事件」から、サクリファイスが動くことは目に見えているため、 エクソシストはそちらの対処をする必要もあります。 しかし、だからこそ。生死を賭ける戦いに望むためには、パートナーとの仲を縮める必要があるでしょう。 あなたのクリスマスは、どのような1日になるのでしょうか!
ヨナ・ミューエのクリスマス!
普通|すべて

帰還 2019-01-07

参加人数 1/1人 oz GM
1718年12月――教皇国家アークソサエティは、「クリスマス(ユール)」ムードに包まれています。 12月24日の「アレイスター・エリファス」の生誕祭として、教皇国家アークソサエティを中心に普及したイベントでしたが、 今では、恋人や家族が食事や団欒を楽しむ、一大イベントと変化していました。 子ども達にとっては、アレイスター・エリファスよりも知名度の高い「伝説の魔術師:サンタクロース・ニコライ」が、 プレゼントを届けてくれるという、希望溢れる日です。 そんなクリスマスに、エクソシスト達にも息抜きが必要だとして、 ヨセフ・アークライトから、束の間の休息が指令として与えられました。 「シャドウ・ガルテンの事件」から、サクリファイスが動くことは目に見えているため、 エクソシストはそちらの対処をする必要もあります。 しかし、だからこそ。生死を賭ける戦いに望むためには、パートナーとの仲を縮める必要があるでしょう。 あなたのクリスマスは、どのような1日になるのでしょうか!
【神捧】盲目の鼠
普通|すべて

帰還 2019-01-06

参加人数 4/8人 駒米たも GM
 教皇国家アークソサエティ、薔薇十字教団司令部。 手を貸してくれとフォー・トゥーナへと報告する男の言葉には、隠しきれない焦りが滲んでいた。  市井の服装と街の至る所で見かける髭面の平凡さが、教団内部に居る事で異質に浮かび上がる。  『レヴェナント』は薔薇十字教団司令部の下で独自に過激派宗教団体サクリファイスを追う組織だ。「創造神が人間を滅ぼすと決めた。人間は滅びを受け入れるべきである」と語るサクリファイスのトップ『カタリナ・ヴァルプルギス』に心酔する者は多く、流行病のように一般市民の中にも浸透している。  男はそういった一般市民の中でも特に危険な人物を監視する役目にあったのだが。 「昨晩、対象が姿をくらませた。一刻も早く見つけ出さねば大惨事になりかねん。今はどこもかしこも手が足りん。その上……」  舌打ちと共に続けられた言葉は苦い。 「昨晩、その女の家から魔術の痕跡らしきものを見つけたと仲間から連絡があった。それを最後に、彼とは連絡が取れていない」  『サクリファイス』に存在する魔術師。他者の魂を糧にベリアルを強化する『サクリファイス・タナトス』なる魔術が明らかになった今、その存在は大量殺人の可能性を示唆している。  男は目を閉じ、眉間にしわを寄せる。 「心当たりといえば、最近気になることがあった。普段は近寄りもしない近所の公園に出かけ、熱心に中央広場のツリーを見ていたんだ。住民たちが持ち寄りのプレゼントを置くだけで、他に面白みもない場所だというのにな」  その公園は柔らかい温かさで満ちていた。  木製のおもちゃ。温かいグリューワイン。木皿に乗った焼き林檎。親に手を引かれ、耳当てをした子供たちが嬉しそうに笑いあう。  テントの並ぶ公園の遊歩道は賑わい、俯いて歩く女を誰も見ていない。  女はまっすぐに中央広場へと向かっていた。  楽し気な回転木馬の横を通り過ぎ、道化の差し出した風船を無視し、飾りつけられた巨大なクリスマスツリーの前で立ち止まると顔をあげた。  喜びに満ちた眼差しはツリーの根本に積まれたプレゼントの山へと注がれる。  生誕祭の日に近隣の住民へと配られるそれは、愛らしいリボンや飾り紙で祭り景色をいっそう華やかに彩っていた。  独り言を呟きながらつり上がっていく女の唇を、飴をくわえた子供が隣で不思議そうに見上げる。  女は片手を天へと伸ばした。ツリーの天頂に飾りつけられた星を求めているのだと、そばに立っていた子供は思った。  プレゼントの山ががらりと崩れ落ちる。  中から現れた仔馬ほどの大きさのソレが、元は飢えた鼠であったと誰が分かるだろう。  背骨だった部分を、眼球だった部分を、尾であった部分を突き破り、幾つもの触手が蠢いている。  沼のように淀んだ黒い毛皮を見て、女は満足そうに笑った。
温泉施設アイスラグーンで楽しもう
簡単|すべて

帰還 2019-01-06

参加人数 4/8人 春夏秋冬 GM
 樹氷群ノルウェンディ。  観光業が盛んな雪国だ。  数多くの温泉が湧くので、それを目当てにした観光客に事欠かない。  観光名所は他にも多く、ツアーガイドの案内でオーロラを見ることの出来る場所もある。  トナカイの畜産も盛んなので、トナカイがひくソリ馬車や、肉を柔らかくする甘辛いタレに漬けた焼肉料理も好評だ。  他にも、固定氷塊と呼ばれる『溶けない氷』で作った食器や人形細工が人気がある。  人気のある観光国家。それがノルウェンディだ。  とはいえ人気があるからと怠けていれば、いつのまにやら寂れるなんてのはよくあること。  それを避けるため、普段から新しい呼び物を探すのに余念がない。  そこで目を付けたのが、魔女の魔法を使った新しい催し物。  魔女の魔法で流れる温泉プールにウォータースライダー。  他にも何かアイデアはないかと、頭をひねっている。  このアイデアを成功させるため、浄化師に協力が求められた。  浄化師が居ることで、魔女が関わる催し物も安全だと、アピールしたいのだ。  かくしてアナタ達は、ノルウェンディの観光名所、温泉施設『アイスラグーン』を訪れることに。  のんびり楽しむも良し。  新しいアトラクションを企画して、それを実行しても良し。  息抜きがてらの指令を、アナタ達はこなすことになりました。  そうした段取りの全ては、ノルウェンディの王ロロ・ヴァイキングが鎮座する王城にて話し合われた。  ◆  ◆  ◆ 「よう来たの。ウボー」  ロロは親しげに、親戚筋に当たる青年、ウボーに声を掛けた。 「お久しぶりです、オジキ」  気安い口調でウボーはロロに返す。  今この場に居るのは4人。  玉座に座るロロと、それに向かい合うウボー。  そしてウボーのパートナーであるセレナと、魔女セパルである。 「話は猛虎の牙から聞いちょる」  ロロは各地の情報収集のため、冒険者として動かしている身内から聞いた話を口にする。 「ワシに手を貸して欲しいことがあるそうじゃのう」 「はい。虚栄の孤島の国家復活に手を貸して欲しいんです」  ウボーが口にした虚栄の孤島とは、かつて小さな国家として栄えた島であり、今では滅びすたれている場所だ。  人が住んでいないことから、魔女の自治領として使えないかと、魔女の権利獲得に動く者達は考えている。  そのために必要なことを、いま話し合っているのだ。 「国家復活っちゅうことは、あそこの王族を見つけたっちゅうことか?」 「いえ、まだ。そのための手助けも頼みたいんです」  虚栄の孤島を治めていた王族は、今では行方が分からなくなっている。  国を復活させるためには、そこを治める王族は必要なのだ。 「王族を見つけることの他に、王族が見つかったなら、オジキに後見を頼みたいんです」 「後見のう……ワシも一応は王じゃけぇ。他の国、それに教団に認めさせる相手としちゃ、権威付けにはなるじゃろうが」 「ダメですか?」  ウボーの問い掛けに、ギタリと笑みを浮かべロロは返す。 「いけん言う訳ないじゃろが。可愛い甥っ子と、別嬪な魔女さんの願いじゃ、それぐらい安いもんじゃ。じゃけどなぁ――」  獰猛な笑みを深め、ロロは言った。 「それだけで済ます気ぃは無いんじゃろ。ワシら相手に気ぃ使わんでもええ。全部、話せぇ、ウボー」  王というよりは、ゴッドファーザーとでも言うべき雰囲気を漂わせるロロに、ウボーは同じような笑みを浮かべ返した。 「教皇の首をすげ替えます。最終的な目的のためにも、虚栄の孤島の国家復活は必要なんです」  ウボーの応えに、ロロは大きく笑う。 「ガハハハハッ! 大きく出たのぅ。教皇の交代には、関連国の王族か代表者の一定数の発議が必要じゃけぇ、その数合わせに虚栄の孤島の王族を使おうっちゅうことか」 「はい。この方法を取らなければ、恐らく多くの血が流れます。穏便に教皇の首をすげ替えるためには、この方法が必要です」  ウボーの言葉にロロは同意する。 「じゃろうのぅ。じゃが、教皇交代の発議が出来ても、それを実行するためにはアークソサエティの貴族連中の承認が要るじゃろ。そっちは大丈夫なんか?」 「すでに貴族筋の幾つかは、話を進めています。問題は現教皇のシンパとなる貴族ですが、そちらの切り崩しも水面下で進めています」 「腹は括っちょるっちゅうわけじゃな。ええじゃろ、協力しちゃる。じゃが、条件がある」  セパルに視線を向け、ロロは言った。 「魔女さんらに、ウチの観光名所の手伝いをして欲しいんじゃ。これから魔女さんらは、表に出て来て一緒に暮らすんじゃろ?」 「うん、そのつもりだよ」  笑顔で返すセパルに、ロロも笑顔で返す。 「ええことじゃ。ウチとしても魔法の使える魔女さんは、のどから手が出るほど欲しいからの。ぜひ、協力していきたいんじゃ。その手始めに、アイスラグーンで何かしてくれんか」 「アイスラグーンって、すっごく大きい温泉だよね? ウチの子達も、一度行ってみたいって言ってる子も多いから、願ったり叶ったりだよ」 「だったら、水着探さなきゃダメよね。あとで行ってみる?」 「うんうん、好いね好いね。楽しみ~」  女性陣のセレナとセパルは、笑顔でお喋りを。  2人を微笑ましげに見ているウボーに、ロロは傍に寄ってボソリと。 「あと一つ、頼みがあるんじゃが、ええか?」 「俺たちで出来ることなら」  ウボーの応えにロロは返す。 「竜の渓谷を襲った、終焉の夜明け団っちゅう奴らが居るじゃろ。アイツらが関わりそうな事件があったら知らせぇ。ぶちのめすのに手ぇ貸しちゃる」 「ドラゴン達のためですか?」 「おう、そうじゃ」  迷いなくロロは返す。 「密猟者共のせぇで、今じゃ離れて暮らしちょるが、ドラゴンはワシらの家族じゃ」  ノルウェンディは、元々は竜の生息地である。  当時のドラゴンのリーダー『ファフニール』との話し合い(物理的なものも含む)により、奴隷や難民も抱え込んだ海賊であったヴァイキング達が住むことを許された場所でもある。  文明や魔術が発達する前は、ドラゴン達の協力により身の安全を確保していたノルウェンディの民は、今でもドラゴンに対する親愛の情は強いのだ。  だからドラゴンが襲撃されたと聞いて、ノルウェンディの民は激怒しているのである。 「分かりました。恐らく、浄化師が一番アレらと関わることが多い筈です。その時に協力を頼めるかもしれません」 「話をつけてくれるか? そん時は、頼むぞ」  ◆  ◆  ◆  などという話し合いにより、巨大温泉施設「アイスラグーン」での魔法を使ったアトラクション企画が持ち上がり、浄化師に協力が求められたのです。  裏では色々と複雑に話が絡み合っているようですが、今回浄化師であるアナタ達が頼まれたのは、ふたつ。  アトラクションのアイデア出しと、実際に楽しんでみることです。  お客さんが大勢きてくれるよう、皆さんのアイデアをお待ちしております。
【神捧】名も無き友よ、安らかに
難しい|すべて

帰還 2019-01-04

参加人数 3/8人 北織 翼 GM
●激闘の予兆 「緊急事態だ! ソレイユでスケール3ベリアルの目撃情報だ!」  本部エントランスに鬼気迫る声が響く。  声の主は教団員セゴール・ジュノーだった。 「現場までの馬車は既に用意してある、支度と覚悟の出来ている浄化師は乗車してくれ!」  セゴールは計算高く冷静で、警戒心の強い男だ。  過去には浄化師に対する任務成功報酬を貴族の男爵から予定額以上にふんだくった事もあるくらいだ。  しかし、そんな彼とは思えない程切羽詰まった様子と、セゴールが叫んだ「スケール3ベリアル」という言葉に、あなたたち浄化師は只事では無いと感じ馬車に乗り込む。 ●動揺の根源  馬車の中には、商人風の格好をした青年が既に1人乗っていた。  彼を訝しむ浄化師たちに、セゴールが紹介する。 「彼は本件現場付近の別の町でサクリファイス信者の動向を探っていたレヴェナント構成員だ。便宜上、今はロイとでも呼んでやってくれ」  レヴェナントは本名を明かさない。  名を変え身なりを変え敵の内情や動きを探る、それが彼らの任務だからだ。 「ロイだ……よろしく頼む」  ロイと名乗った構成員は、ぽつりとそう零しただけですぐに黙り込んだ。  間を空けず、セゴールは激しく揺れる馬車の中で今回の任務について説明に入る。 「スケール3ベリアルの目撃情報が出たのは、ソレイユの片田舎にある『クレイン・ブルメン』という小さな村だ。村民の多くは生花の栽培で生計を立てる園芸農家だが……つい数時間程前、村民の殆どが意識を失い倒れているのが発見された。倒れていた者は皆……死んでいた」  いくら田舎の小さな村とはいえ、村民の殆どが死体で発見されるのは尋常ならざる事態だ。  息を呑む浄化師たちに、セゴールは続ける。 「偶然にも任務中に通りかかったロイがその現場を目撃し、急ぎ本部に知らせてきた。ロイ、君の見た状況について浄化師たちに報告してくれないか」  セゴールに促され、ロイは口を開いた。 「ベリアルは1体しかおらず、獰猛な猫のような鳴き声を発しながら、『皆殺しだ』と繰り返していた。容姿は二足歩行する獣のようで、何やら奇妙で……恐ろしい技を用いていた。偶々そのベリアルの手で組み敷かれた野良犬が、数秒後にまるでベリアルの掌で押し潰されたかのように粉砕したんだ」  そこまで聞いたセゴールは、軽く唇を噛んだ後告げる。 「これは私の推測でしかないのだが……そのベリアルは『デストルクシオン』を行使している可能性がある」  『デストルクシオン』とは、掌で3秒間触れた物体や生物を崩壊させる能力を言う。 「鳴き声、人獣のような容姿、デストルクシオン……これらを総合して考えると、山猫のような獣が元の生物だった可能性が高く、接近戦には十分警戒する必要があると言える。少なくとも奴に触れられるのは絶対に避けたい」  皆これまでの敵とは勝手が違う相手を想像し、車内の空気はひどく重苦しくなった。  ガラガラと忙しなく車輪を回らせる馬車の音だけが、やけにうるさく響く。 ●回想  浄化師たちが沈黙する馬車の中、セゴールは『名も無き友』の姿を思い出していた……。  セゴールには、友と呼べる男が1人いた。  彼とは同じ任務を担当した事がきっかけで、多少の会話を交わすうちに意気投合した。  彼は「リューズ」と名乗っていたが、それが本名とはセゴールには疑わしかった。  何故なら、彼は会うたびに商人の格好をしていたり奴隷の格好をしていたり、まるで様々な人間を「演じて」いるようだったからだ。  それでも、セゴールはリューズを詮索はしなかった。  不思議と、彼がセゴールの『警戒心』を煽るような事は無かったのだ。  『馬が合う』とは、こういう事を言うのだろう。  そんなセゴールに、リューズは一度だけ故郷の話をした事がある。  あの時は互いに酒が入っていたので、酔った勢いもあったのだろう。  何処とは明かさなかったが、銀のチューリップの飾りを付けた首飾りを見せながら『チューリップばかり植えられているひなびた田舎だ』と言っていたのをセゴールは覚えている。  そして、『過去にサクリファイスが信者獲得の為に村人を何人も連れ去った』とリューズの双眸が一瞬殺気を帯びたのも……。  そして今日、彼は偶然その首飾りを目撃した。  それは火葬された者の遺品で、返却はされず本部で人知れず処分されるという。  教団で火葬されるのは浄化師など『関係者や血縁者への報復が予想される者』だ。  その時、頭の良く働くセゴールは悟った。  リューズが浄化師の制服を着ていたのを見た事は無く、更にこれまでの彼の様子から、リューズはレヴェナントの構成員だったのだ、と。  それから殆ど時を待たずして、クレイン・ブルメンの惨劇を目撃したロイが本部に駆け込んできたのだった。 ●臨場  どれほど走り続けたか、馬車はいよいよクレイン・ブルメンに到着した。  武装を整え馬車を降りる浄化師たちに、セゴールは警告する。 「この辺りはちょうどチューリップの球根を植え終えたばかりで土が柔らかくなっている。足場が悪い事を念頭に入れ、相手との間合いに細心の注意を払ってくれ。それと……」  セゴールの目は、どこか浄化師たちに縋るような切なげな色を宿していた。 「私の友の魂も、あのベリアルに内蔵されているのかもしれない……。頼む、友の……リューズの魂を、そして、彼が守りたかった村の者たちの魂を、君たちの手で解放してやってくれ」
アリス・スプラウトのクリスマス!
普通|すべて

帰還 2019-01-04

参加人数 1/1人 弥也 GM
1718年12月――教皇国家アークソサエティは、「クリスマス(ユール)」ムードに包まれています。 12月24日の「アレイスター・エリファス」の生誕祭として、教皇国家アークソサエティを中心に普及したイベントでしたが、 今では、恋人や家族が食事や団欒を楽しむ、一大イベントと変化していました。 子ども達にとっては、アレイスター・エリファスよりも知名度の高い「伝説の魔術師:サンタクロース・ニコライ」が、 プレゼントを届けてくれるという、希望溢れる日です。 そんなクリスマスに、エクソシスト達にも息抜きが必要だとして、 ヨセフ・アークライトから、束の間の休息が指令として与えられました。 「シャドウ・ガルテンの事件」から、サクリファイスが動くことは目に見えているため、 エクソシストはそちらの対処をする必要もあります。 しかし、だからこそ。生死を賭ける戦いに望むためには、パートナーとの仲を縮める必要があるでしょう。 あなたのクリスマスは、どのような1日になるのでしょうか!
幸せの行方
普通|すべて

帰還 2019-01-02

参加人数 3/8人 春川ミナ GM
「おやまぁ。お爺さん? こんな夜遅い時間まで何処に行ってたんだい?」 「いや、そこで子供が迷子になっててな。どうやら親とはぐれたらしい。自警団の屯所に連れて行ったんだが、まだ親からは連絡が無いみたいでな。屯所の連中も男ばっかりで子供の面倒もようく見切らんと泣いてせがまれたんで連れて帰って来た。何、親が屯所に来たらすぐにウチに来るような手筈になっとる。この村は誰も知り合いだでな」    ここはミズガルズ地方「樹氷群ノルウェンディ」の端にある小さな村。  氷に閉ざされた大地だが、その反面村人の心はとても温かく、笑顔を忘れずに生きている。例えるなら冬の部屋に灯った小さなランプ。そんな村だった。 「エリヤ、この間獲ってきた鹿肉があったろう。あれを細かく刻んで香草と一緒にスープにしてくれるか?」 「はいはい。まったく、お爺さんは何でもいきなりですねぇ」  エリヤと呼ばれた老婆は、口ではそう言いながらもいそいそと給仕の支度を始めた。娘や息子も手が離れ、とうにこの地からは出て行ってしまったのだ。孫を連れて来る事もあるが、特に名産も無いこの村では長く滞在する事も無い。だから久しぶりに触れ合える子供という存在が嬉しいのだ。 「ほら、お嬢ちゃん。おまえさんの名前はなんじゃったかな? 最近歳のせいか物忘れが酷くてな、ハッハッハ。そう言えばまだ名乗っておらんだったな。儂はアントン。しがない罠猟師じゃよ」  アントンは口を覆う白いヒゲを撫でながら、後ろに居た子供に声をかけた。その子供は年の頃が10歳くらいだろうか。ゆったりとしたドレス調の黒いワンピースに白いコート。瞳は澄んだ青。肌はとても白く、同じように白く長い髪の毛をひとつに纏めてマジェステと言う棒状の髪留めで留めてある。それはまるでノルウェンディの樹氷が人間になったと言われたら信じてしまいそうで、太陽に当たれば消え行く儚さを感じさせた。  勿論アントンの物忘れと言うのは方便である。エリヤにこの子の口から自己紹介をさせたかったのだ。 「……マゴット。本当にお父さんとお母さんが見つかるの? 私、ずっとお父さんとお母さんを探しているの」 「ああ、大丈夫だ。ここは狭い村だでな。多分おまえさんのパパとママはすぐに見つかるさ。ほれ、いつまでもドアを開けていると寒いじゃろ。中にお入り」  マゴットが会釈をし、するりと家の中に入るのを見届けてからアントンはドアをゆっくりと閉めた。 「マゴットと言ったかい? 暖炉の前にある椅子に座ると良いよ。お爺さん、多分この子はアークソサエティからの観光客かねぇ。身なりも小奇麗だし、この村から出てったモンの子供かねぇ」  エリヤは暖炉にかけた鍋をかき混ぜると、その脇に串に刺した大きめの芋を立てた。椅子に座ったマゴットがエリヤの動作を不思議そうに見つめるのに気がついたのか、アントンが口を開いた。 「この村では小麦が取れんのでな。芋を使った料理が主だ。何、パンのように柔らかくは無いが食べ応えはある。マゴットは甘いのとしょっぱいのどっちが好きなんじゃ?」 「……甘いの、好き。お母さんいつもお菓子作ってくれてた」 「そうかそうか。婆さん、蜂蜜とバターがあったじゃろ。あれを用意しておやり」  鈴が鳴るようなか細い声で語るマゴット。  アントンは親とはぐれ、迷子になったマゴットが不安に思ったのだろうと察して、精一杯もてなしをする事に決めた。せっかくの旅行だ。寂しい思い出は最小限に留めて美味しい物で上書きしてやろうと。 「まったく、お爺さんは私ばっかり働かせて。私もマゴットちゃんと話したいのにねぇ」  エリヤは苦笑すると少し曲がった自分の腰を片手で叩きながら椅子を引いてマゴットの隣に腰掛けた。 「マゴットちゃんの好きなものはなんだい? 食べ物でもおもちゃでも何でも教えてくれるとお婆ちゃんは嬉しいねぇ」  ニコリと皺が寄った顔を更に皺くちゃにしながら、優しい声色でエリヤが話しかける。それは見るものを安心させる笑顔だった。 「……お人形。ずっと話し相手になってくれるの」 「おや、そうだったのかい。それなら良い物があるよ。ちょっと待っていておくれ」  マゴットの言葉にエリヤはポンと拳で手の平を打つと、おそらく寝室があるであろう奥の部屋に入っていった。 「おやおや、婆さんは火の番を忘れているな。もう少しで出来るからな、マゴット」 「ありがとう。……少ないけれど、これ……」  席を離れたエリヤの代わりに鍋をかき混ぜるアントンに向かってマゴットはポケットから小さな硬貨を取り出し、差し出した。それは暖かい暖炉の光に当たっても尚寒々しい銀貨だった。 「子供はそんな事気にせんでも良いんじゃよ。そんな気の使いかたは大人になってからするもんじゃ。それに儂はおまえさんからそんなもんを受け取っても嬉しくはないのぅ」  咎めるつもりのアントンだったが、所在なさげに下ろされたマゴットの硬貨を握った手が視界に入り、それは苦笑に変わった。 「そうじゃなぁ……。おまえさんがお礼をしたいって言うのなら、いつか大人になった時にこの村にまた遊びに来てくれると嬉しいのぅ」 「うん。わかった。また戻ってくる」  マゴットが短く答えた時、エリヤが一体の人形を抱いて戻ってきた。 「これは私の娘が置いていった物だけれどね。一緒に連れて行ってくれると嬉しいねぇ」 「……連れていって、良いの?」 「勿論じゃ。お前さんと一緒だと嬉しいじゃろうな」  エリヤの言葉にマゴットが返し、アントンが肯定する。 「……あり、がとう」  たどたどしく礼を言い、人形を受け取り、キュッと抱きしめるマゴット。 「さて、ご飯にしようかね。マゴット、沢山食べてくれると嬉しいねぇ」  老夫婦の食卓は小さな珍客のおかげでいつもより暖かく、そして少しだけ明るい時間となった。  *** 「捨て子かもしれんの」  時刻は深夜。暖炉の火も落ち、外はひょうひょうと風の泣く声が聞こえるのみ。アントンは唐突にボソリと呟いた。 「そうですねぇ……。おや? マゴット? どうしたんだい?」  エリヤがアントンの方を向いて返事をした時、開いたドアの影から片手に人形を抱いたマゴットが視界に入る。髪の毛は下ろされ、月明かりに照らされたそれは外の雪と同じようにわずかな光を反射している。 「お父さんとお母さんを……探してるの」  マゴットはどこか遠くを見るような瞳をしたまま呟き、ゆっくりとアントンとエリヤが居るベッドに近づいてきた。  アントンはマゴットが寂しさから起きてきたのだろうと思い、抱き上げてあやそうと体を起こす。エリヤの目にはアントンの首に抱きつくマゴットの姿が見えた。だが……。 「ああ、明日には会えるから心配せずとも寝た方が良いぞ。……カッグッ!?」 「お爺さん!? ゲグッ……!」  アントンがベッドに倒れこんだのを不審に思い、近寄るエリヤにもマゴットが抱きつく。 「お父さんとお母さんを探しているの」  マゴットの手には魔術の光か血だろうか。白い髪を留めていた、どす黒く濡れたマジェステ。老夫婦は首を一突きにされ絶命した……。 「……連れて行って良いって言った。お父さん、お母さんを探して?」  ゆっくりと老夫婦の死体に近づき、自身の手をゆっくりと傷つけるマゴット。そして二人の口に赤い雫を垂らす。 「オオォォォオ……」  村で一番優しいと評判の老夫婦だったモノは人の姿をとどめたまま、人では無いモノとしてゆっくりと起き上がった……。
シャルローザ・マリアージュのクリスマス!
普通|すべて

帰還 2018-12-30

参加人数 1/1人 梅都鈴里 GM
1718年12月――教皇国家アークソサエティは、「クリスマス(ユール)」ムードに包まれています。 12月24日の「アレイスター・エリファス」の生誕祭として、教皇国家アークソサエティを中心に普及したイベントでしたが、 今では、恋人や家族が食事や団欒を楽しむ、一大イベントと変化していました。 子ども達にとっては、アレイスター・エリファスよりも知名度の高い「伝説の魔術師:サンタクロース・ニコライ」が、 プレゼントを届けてくれるという、希望溢れる日です。 そんなクリスマスに、エクソシスト達にも息抜きが必要だとして、 ヨセフ・アークライトから、束の間の休息が指令として与えられました。 「シャドウ・ガルテンの事件」から、サクリファイスが動くことは目に見えているため、 エクソシストはそちらの対処をする必要もあります。 しかし、だからこそ。生死を賭ける戦いに望むためには、パートナーとの仲を縮める必要があるでしょう。 あなたのクリスマスは、どのような1日になるのでしょうか!
トロール・ブルーと雪遊び
とても簡単|すべて

帰還 2018-12-28

参加人数 4/8人 あいきとうか GM
 樹氷群ノルウェンディ。  教皇国家アークソサエティから程近く、かつては竜の渓谷でドラゴンとともに生活していた人々が住んでいた地域でもあるその王国は、現在では高名な観光地として栄えている。 「スキーや温泉も有名なんだけど、最近はトロール・ブルーね。伝統工芸品なんだけど、特に注目され始めてるの」 「トロール・ブルー……。固定氷塊を用いて作る、食器や人形細工でしたか」 「そう。冷たくなくて、絶対に溶けない氷」  水気の魔結晶を特殊な魔術で水に溶かし、凍らせて作る固定氷塊は、陶器のような質感と強度を有しており、不思議と冷たくなく、永遠に溶けない。ノルウェンディの伝統産業だ。  それを材料として作られる品々は、最初に固定氷塊を用いて工芸品を作る工房を開いたトロール一家と、その透き通るような青さから名前をとり、トロール・ブルーの名で親しまれている。 「冷たくならない、溶けない、っていうのが、若い子たちの心を掴んでね? トロール・ブルーのペアリングが特に人気なの」  教団本部の司令部の会議室で、ノルウェンディからやってきた女性が写真を出す。  テーブルを挟んだ対面に座る司令部教団員は、丁寧な手つきでそれをとった。不鮮明な写真には、同じデザインの指輪が二つ、並べられている。 「二人の仲は永遠に冷めず、二人を結ぶ糸は永遠に切れないってね」 「溶けない、ではなくて、ですか」 「糸は溶けないでしょ。いいのよ、なんとなく意味は通じるじゃない」 「そうですね」  つまり、トロール・ブルーのペアリングを身に着けた二人は、永遠に愛しあえるというわけだ。  若い恋人たちの間で、近ごろ浮上した伝説らしい。 「これね、雪遊びの景品なの」 「雪遊び?」 「ノルウェンディの、オーセベリのスキー場の催し。テニスコート二面分の雪の中に宝物が隠れてて、見つけたら景品がもらえるのよ」  オーセベリは温泉プールなどのレジャー施設が集中している地区だ。土産物店なども多く、観光客が特に集まる。 「つまり、教団へのご依頼とは」 「人海戦術よ。雪遊びで宝物を見つけて、ペアリングを私に頂戴」  依頼主は真剣な目で体を乗り出した。司令部教団員は、気迫に圧されるように背をそらす。 「どうっしてもほしいの。彼にあげるの!」 「はぁ……」 「もうすぐ彼の誕生日なのよ。だから、トロール・ブルーのペアリングをあげて、驚かせて、プロポーズしてやるわ!」  目の奥に炎を宿らせる女性を、両手を上下に振って落ち着かせ、司令部教団員はメモ用紙をとり出した。 「ええと、とりあえずご依頼、承りますね……」 「お願いね! あ、参加賞もあるのよ。温泉一日入りたい放題券!」  だからお願い、と女性は両手をあわせ、司令部教団員を拝んだ。
暖炉の薪亭にて
とても簡単|すべて

帰還 2018-12-28

参加人数 2/8人 駒米たも GM
 日が傾くにつれ街はライラック色へと染まっていく。  ぽつぽつと窓からのぞきはじめたオレンジ色の光が、柔らかく積った三角屋根の雪を照らしていた。  並んだ民家の煙突からは、夕餉の匂いを詰めこんだ煙が空へとのぼっている。  花弁のように舞っていた雪の華はいつの間にか牡丹の大きさへと変わっていた。  『ゴクスタ』は樹氷群ノルウェンディの中でも民家が多く連なる地区である。  近隣にノルウェンディの名産品、『トロール・ブルー』の生産施設が多く並ぶため、 夕方にもなれば職人たちの集まる酒場にも活気が出る。  酷くなる風雪から逃げるように滑り込んだ扉の先が、まさにそれだった。  強い酒精と水蒸気を含んだ熱気が来客を歓迎する。  天井の梁に吊られた洋灯が入店と共に風に揺れ、金赤の灯りが店内を照らした。  外観は石造りだったが内装は素朴な雰囲気を残す丸太が多い。  いかにも職人街らしく、店内の至る所にアイスブルー色の氷が溶けることなく飾られている。  飲み代を賭けて腕相撲で勝負をする職人たち。  カードゲームに興じる老人たち。  鍋太鼓と手拍子を伴奏にトナカイと森の歌を奏でる酔っ払い。  住民にとって窓の外の猛吹雪など慣れたものなのか。  入ってきた雪まみれの来客に動じることはない。しかし観光客が珍しいのか、向けられる視線の中には隠し切れない好奇が混じっていた。 「そんなに見て、客が逃げたらどないするつもりじゃ!」  視線は皿を運んでいた恰幅のよい女性が目の前に来ることで遮られる。  店内の視線全てをシャットアウトするほどの横幅。服や三角巾には焼いた肉汁と獣の油が飛び散り、クリスマスビールと野菜の匂いが深く染みている。 豪胆な赤ら顔が皺だらけの笑顔を見せる。そこに浮かぶのは歓迎の情だ。 「おう、おう。あんたら、外は寒かったじゃろ! 暖炉近くのテーブルが空いとるけ、早う行って温まり」  強い訛りで奥のテーブル席へと通された。  ぱちりと空気を含んで爆ぜた赤い薪の音。テーブルの上に立つ青いトナカイの人形が透き通った身体に暖炉の炎をうつしこんでいる。  卓上の置物。棚に並んだ皿やマグカップ、雪の打ちつける窓枠には十字架の台座、暖炉横のクリスマスツリーを彩る輝くオーナメント。  これらは陶器のような質感と強度をもつ「『固定氷塊』と呼ばれる特殊な氷を加工したものであり、トロール・ブルーと呼ばれるノルウェンディの名産品でもある。   「お待ちどうさん。見ての通りの酒飲み食堂じゃ。食器はともかく貴族様が食べるような大層な飯は出せん。まずはあったかい飲み物で体を温めるとええじゃろ」  配膳の途中なのか。両手いっぱいのトナカイ肉料理を抱え、先程の女性がやってくる。  ウィンナーのような指がメニュー表と共に名刺大の紙を二枚差し出した。 「ウチの店じゃあ、クリスマス前にはメッセージカードを客に渡しとるんよ」  樹氷のクリスマスツリーを思わせる飾り枠の中には雪原のような白紙が広がっている。  一番下には金色でメリークリスマスの文字。 「良かったらあんたらも書いて、日頃世話になっとる人に渡してあげんさい」
スターリー・ナイトで踊りましょう
とても簡単|すべて

帰還 2018-12-28

参加人数 3/8人 oz GM
 今日は「スターリー・ナイト」の日。あるいは「星の祝祭」と呼ばれる年に一度だけの特別な日。  シャドウ・ガルテンのある町では冬至が近くなると、この祝祭が行われる。この祝祭は別の国から流れ込んだ祝祭がこの町に定着したものだが、年に一度のお祭りを誰もが楽しみにしている。  大人も子供もこの日は関係なく、飲んで食べて踊る楽しい一日。こっそりと妖精も参加し、月夜の下で舞い踊る。  この日にふさわしい服装は星月夜をモチーフにしたもの。女性は星が散りばめたようなドレスを着て星月夜をモチーフにしたネックレスやピアスしていれば、男性は月や星のカフリンクスやネクタイピンをしているものも多い。総じて夜空を連想させる紺色や黒の生地を使った服を着ている。  夜になり表通りを歩いていると、どこの店や家も星形の手作りランプシェードに明かりを灯している。  星形や月形のランプシェードとはいっても様々なものがあり、美術品のような金細工でできたものからから可愛らしいレースをカバーにしているものすらある。  きらめく星々が町を照らすと、見慣れた場所がまるで知らない場所のように見える。  ランタンの他に星や月をモチーフにしたオーナメントが店や家の内外に飾られたり、星の形をしたリースが扉にかけられたりしている。  この日のシンボルともいえるポムドールという果実がある。その果実は暗闇の中でもほんのり輝いて見えることから黄金の果実とも呼ばれている。  ポムドールは滋養も良いことから「長寿」の意味も込められている。滅多に食べられないこの果実は子供達に大人気だ。  ポムドールを使った菓子や果実酒が振る舞われ、たくさんの料理と共に人々は楽しげに飲み食いし、歌ったり踊ったりする。  冬至になる前に行われるこの祝祭の夜には、先祖の霊が帰ってくると同時に悪霊や魔女もそれらに紛れて現れると考えられていた。  星は光の象徴でもあり、悪しきものを寄せ付けないことから「魔除け」として用いられてきた。そして、月は満ち欠けの周期で姿を変えるため、「成長」の象徴でもある。  元々の起源を遡ると、太陽の再生を祈るための儀式だった。この祭りは今年も無事に冬を越せますようにと祈りが込められているのだ。かつては火を焚き、大いなる存在に生け贄を捧げた。人が自然の恵みを受け取ることを感謝し、この日になると大いなる循環の一部であることに畏敬の念を示したとされる。  しかし、近年になると大人も子供も関係なくお祭り騒ぎするイベントになっている。  先祖の霊が迷うことがないように星を道標とし、悪霊から身を守るために魔除けとして焚き火の代わりに今では星のランタンを飾る。  「スターリー・ナイト」の夜には魔神が率いるワイルドハントが訪れる。ワイルドハントは目に見えない狩猟団である。その側には常に多くの黒い犬が連れ添っている。彼らを見たものはワイルドハントの一員に引き込まれると言い伝えられている。この時期になると大人は「悪い子はワイルドハントに浚われるよ」とヴァンピールの子供にそう言って聞かせる。  「スターリー・ナイト」の本番は夜である。大抵は町の広場にあるガゼボに巨大な振り香炉を吊す。それを振り子のように人力で押し、徐々に香炉の振り幅が大きくなっていくと香が人々に行き届くようになる。  古来から強い匂いはケガレを退け、ワイルドハントから身を守ると信じられていた。  香炉には火気の魔結晶と乳香にレモンやサンダルウッド、ラベンダー、ネロリ、ゼラニウムなどから精油を選び、町ごとに違った調合がされている。その特殊な香は周囲に香りを充満させるだけでなく、香の匂いがするところはまるで焚き火に当たっているように暖かい。  太陽の再生を祈る儀式から星の祝祭へと変わった経緯は不明だが、その名残は今でも残っている。  振り香炉は大抵金色であり、金色は暗闇や寒さと戦う太陽の象徴である。香炉から立ち上る煙は祈りが届くようにという意味が込められているのだ。  煙が立ちこめる中で踊るダンスは冬の霧のベールに包まれて、その夜だけ別世界にいるように感じられるだろう。煙がくゆる中、星のランプの明かりが幻想的に揺れる。暗闇の中では星のランプに照らされていても薄暗くて周囲は見えづらい。ダンス相手だけを感じて踊っていられる。だからこそ、若者達はこの日のためにとっておきの衣装を準備して、ダンスの時間の訪れを心待ちにしている。  あなたは指令によって星の祝祭が行われる日にこの町にやってきた。  指令の名目はシャドウ・ガルテンと教団の協力関係を深めるためだが、実質は浄化師達への息抜きだ。  星を散りばめた町の光景を堪能するのもいいし、屋台を見て回るのもいいかもしれない。他にもポムドールで作られたお菓子やジュースも売られている。この日だけしか食べられない一品だ。  もしあなたが成人済みだとしたら、一部の好事家にしか知られていない黄金の果実酒を探してみるのも面白いだろう。  たくさんの星空のようなランプの灯りが揺れる中、散歩をしてみるといい。それはとても幻想的な光景で忘れられない記憶になるだろう。広場にいくと星月夜の下でワルツを踊り出す。パートナーと参加するのもいいし、見ているだけでも楽しめるだろう。  さあ、あなたはどんな一夜を過ごすだろうか。
シュリ・スチュアートのクリスマス!
普通|すべて

帰還 2018-12-28

参加人数 1/1人 春夏秋冬 GM
1718年12月――教皇国家アークソサエティは、「クリスマス(ユール)」ムードに包まれています。 12月24日の「アレイスター・エリファス」の生誕祭として、教皇国家アークソサエティを中心に普及したイベントでしたが、 今では、恋人や家族が食事や団欒を楽しむ、一大イベントと変化していました。 子ども達にとっては、アレイスター・エリファスよりも知名度の高い「伝説の魔術師:サンタクロース・ニコライ」が、 プレゼントを届けてくれるという、希望溢れる日です。 そんなクリスマスに、エクソシスト達にも息抜きが必要だとして、 ヨセフ・アークライトから、束の間の休息が指令として与えられました。 「シャドウ・ガルテンの事件」から、サクリファイスが動くことは目に見えているため、 エクソシストはそちらの対処をする必要もあります。 しかし、だからこそ。生死を賭ける戦いに望むためには、パートナーとの仲を縮める必要があるでしょう。 あなたのクリスマスは、どのような1日になるのでしょうか!
リコリス・ラディアータのクリスマス!
普通|すべて

帰還 2018-12-28

参加人数 1/1人 あいきとうか GM
1718年12月――教皇国家アークソサエティは、「クリスマス(ユール)」ムードに包まれています。 12月24日の「アレイスター・エリファス」の生誕祭として、教皇国家アークソサエティを中心に普及したイベントでしたが、 今では、恋人や家族が食事や団欒を楽しむ、一大イベントと変化していました。 子ども達にとっては、アレイスター・エリファスよりも知名度の高い「伝説の魔術師:サンタクロース・ニコライ」が、 プレゼントを届けてくれるという、希望溢れる日です。 そんなクリスマスに、エクソシスト達にも息抜きが必要だとして、 ヨセフ・アークライトから、束の間の休息が指令として与えられました。 「シャドウ・ガルテンの事件」から、サクリファイスが動くことは目に見えているため、 エクソシストはそちらの対処をする必要もあります。 しかし、だからこそ。生死を賭ける戦いに望むためには、パートナーとの仲を縮める必要があるでしょう。 あなたのクリスマスは、どのような1日になるのでしょうか!
アユカ・セイロウのクリスマス!
普通|すべて

帰還 2018-12-26

参加人数 1/1人 あいきとうか GM
1718年12月――教皇国家アークソサエティは、「クリスマス(ユール)」ムードに包まれています。 12月24日の「アレイスター・エリファス」の生誕祭として、教皇国家アークソサエティを中心に普及したイベントでしたが、 今では、恋人や家族が食事や団欒を楽しむ、一大イベントと変化していました。 子ども達にとっては、アレイスター・エリファスよりも知名度の高い「伝説の魔術師:サンタクロース・ニコライ」が、 プレゼントを届けてくれるという、希望溢れる日です。 そんなクリスマスに、エクソシスト達にも息抜きが必要だとして、 ヨセフ・アークライトから、束の間の休息が指令として与えられました。 「シャドウ・ガルテンの事件」から、サクリファイスが動くことは目に見えているため、 エクソシストはそちらの対処をする必要もあります。 しかし、だからこそ。生死を賭ける戦いに望むためには、パートナーとの仲を縮める必要があるでしょう。 あなたのクリスマスは、どのような1日になるのでしょうか!
ベルロック・シックザールのクリスマス!
普通|すべて

帰還 2018-12-26

参加人数 1/1人 鳩子 GM
1718年12月――教皇国家アークソサエティは、「クリスマス(ユール)」ムードに包まれています。 12月24日の「アレイスター・エリファス」の生誕祭として、教皇国家アークソサエティを中心に普及したイベントでしたが、 今では、恋人や家族が食事や団欒を楽しむ、一大イベントと変化していました。 子ども達にとっては、アレイスター・エリファスよりも知名度の高い「伝説の魔術師:サンタクロース・ニコライ」が、 プレゼントを届けてくれるという、希望溢れる日です。 そんなクリスマスに、エクソシスト達にも息抜きが必要だとして、 ヨセフ・アークライトから、束の間の休息が指令として与えられました。 「シャドウ・ガルテンの事件」から、サクリファイスが動くことは目に見えているため、 エクソシストはそちらの対処をする必要もあります。 しかし、だからこそ。生死を賭ける戦いに望むためには、パートナーとの仲を縮める必要があるでしょう。 あなたのクリスマスは、どのような1日になるのでしょうか!
アシエト・ラヴのクリスマス!
普通|すべて

帰還 2018-12-26

参加人数 1/1人 鳩子 GM
1718年12月――教皇国家アークソサエティは、「クリスマス(ユール)」ムードに包まれています。 12月24日の「アレイスター・エリファス」の生誕祭として、教皇国家アークソサエティを中心に普及したイベントでしたが、 今では、恋人や家族が食事や団欒を楽しむ、一大イベントと変化していました。 子ども達にとっては、アレイスター・エリファスよりも知名度の高い「伝説の魔術師:サンタクロース・ニコライ」が、 プレゼントを届けてくれるという、希望溢れる日です。 そんなクリスマスに、エクソシスト達にも息抜きが必要だとして、 ヨセフ・アークライトから、束の間の休息が指令として与えられました。 「シャドウ・ガルテンの事件」から、サクリファイスが動くことは目に見えているため、 エクソシストはそちらの対処をする必要もあります。 しかし、だからこそ。生死を賭ける戦いに望むためには、パートナーとの仲を縮める必要があるでしょう。 あなたのクリスマスは、どのような1日になるのでしょうか!
無邪気という名の悪夢
簡単|すべて

帰還 2018-12-25

参加人数 2/8人 土斑猫 GM
 雨が、続いていた。  ここ、「竜の渓谷」を、この季節には珍しい長雨が見舞っていた。  厚い雨雲に覆われた空から滝の様に降り落ちる雨は強く大地を打ち、あちこちに小川の様に流れる水の道を穿っている。  渓谷の至る所は浸水し、辺り一面は湿地の様に様子を一変させていた。  渓谷の底にある深川、「清澄の渓流」もまた、例外ではない。  常時でさえ湖並の水深がある川はさらに水量を増し、本来は穏やかな流れも今や滝の様な激流となって轟々と流れ下っていた。  そんな渓谷を眼下に望む場所に、広い丘がある。低い木と下草に覆われたそこに、巨大な何かが横たわっていた――。  一見すると、それは地肌が剥き出しの小山の様にも見える。しかし、近づいた者は、すぐにその認識が間違いである事に気づくだろう。  『それ』は、山の様な土塊(つちくれ)の塊ではない。その表面を覆うのは、土ではなく黄土色の鱗。一枚一枚が大人の手のひら程もあるそれの山は、ゆっくりとリズムを刻む様に波打っては、コフー、コフーという呼気の音を漏らす。  そう。それは生き物だった。全身を鱗で覆った巨大なワニの様な生き物。  この世で最も美しく、そして強靭な存在。  ――ドラゴン――だった。  眠っているのだろう。彼女はその目を閉じ、静かに寝息を立てている。もっとも、静かと言うのはものの例えであって、実際にはその肺が息を絞り出す度に辺りには台風の様な大風が巻き起こっているのだが。  滝の様な雨も、その巨体には何の疼痛にもならないのだろう。全身をしとどに濡らしながらも、彼女はこんこんと眠り続ける。  と、その巨体がゴロリと蠢いた。寝返りをうったらしいが、この図体。辺りが、地震でも来たかの様にグラグラと揺れる。  異変が起こったのは、その時だった。  横になった彼女の腹の下から、白くて丸いものがコロコロと飛び出したのだ。その数3つ。どうやら腹の下に抱いていたものが、彼女自身が起こした揺れに押されて転がり出たらしい。さらに、状況が悪かった。散々降りしきった雨で、下草は濡れそぼってツヤツヤ。地面は泥濘んでヌルヌル。まろび出た球体は、草の上を滑り、泥の上をぬめって、傾らかな坂をコロコロと競う様に転がっていく。  彼女は起きない。気づかない。雨の音と深い眠りが、彼女の五感を完全に遮断していた。  コロコロ コロコロ  転がる先は、崖の淵。その勢いのまま、スポーンと飛び出て……。  3つの球体は、激流逆巻く川へと真っ逆さまに落ちていった。  次の日、昨日までの雨が嘘の様に晴れ渡った空の下、渓谷の管理者「ワインド・リントヴルム」は険しい顔で谷底を流れる川を見下ろしていた。  彼の眼下に広がるのは、今だ勢い衰えない激流。  ワインドは、周りにいた協力者であるデモン達に指示を出す。  特技である「天空天駆(スカイワード)」を使い、渓流に沿って飛び立つ彼らを見送ると、ワインドは背後を振り返る。  そこにいたのは、黄土色に輝く巨竜。彼女は天を突く程に長い首を傾げると、悲しげな眼差しで谷底を見つめる。  ワインドは手を伸ばして彼女の顎を撫で、なだめる。  それに答える様に、喉を鳴らす巨竜。  その心の痛みを察しながらもう一度谷底を見つめると、ワインドは静かに何事かを呟いた。  それから数刻後、ワインドの姿は「教皇国家アークソサエティ」の薔薇十字教団本部にあった。  竜の渓谷から「転移方舟」によって移動してきた彼は、訴える。  『大雨によって、「ティアマト」の巣から卵が流された。回収するために、力を貸してほしい』と。  流された卵は3つ。流れ着いた場所はそれぞれワインドと他のデモンによって確認されていたが、ティアマトはドラゴンの中でも最大種。当然、卵も大きい。回収には、人手が必要なのだという。  渓谷にいるドラゴン達の手を借りれれば一番いいのだが、卵は全て激流で削られ、入り組んだ渓流の岸辺に流れ着いていて、身体の大きなドラゴン達では近づけない。どうあっても、人間の手で回収するしか方法がない。加えて、ワインドの手元にいる人数では、全ての卵を同時に回収する事は出来ない。かといって、他の卵の回収に人手を回して目を離せば、その間に密猟者や「終焉の夜明け団」の毒牙にかからないとも限らない。  そのため、どうしても3つ同時に回収する必要がある。  ワインドの手勢でカバー出来るのは2個まで。残り1個を回収する為の手勢を貸してほしいとの事だった。  教団側に断る理由はない。任務は動かない卵の回収だけ。今のところ、密猟者や信者の姿も確認されていない。  比較的容易な仕事と判断した教団は、ちょうど手の空いていた浄化師数組を現場に向かわせた。  容易な仕事。  そう。容易な仕事の筈だったのだ。  『その時』までは。  しばしの後、現場に到着した浄化師達。その中の一人が、呆然と呟いた。 「……孵ってるじゃないか……」  そう。彼らの目の前にあったのは、割れた卵の殻と、そこから半身を放り出して眠る巨大な幼竜の姿だった……。
ポルヴェレ・ディ・ステッレは歌う
とても簡単|すべて

帰還 2018-12-24

参加人数 2/8人 GM
 今回は現地調査、とロリクが告げた。 「危険なことはないと思うから、しっかりと調査してきてもらえたらと思う。この指令は現地に行っての調査なんだが、時間帯によって調べられるものが違うので注意するように」  とのこと。  調べにいくのは、教皇国家アークソサエティ内の、とある港町だそうだ。  この街の近くには小さな山があり、そこでは蒲萄や梨も作っているそうだ。この時期になると冬の保存食として蒲萄はワインへ、梨のタルト作り、干したニシン作りとお祭りみたいに楽しく調理するそうだ。  ちょうど浄化師たちが訪れる日はワイン作りをする日で昼間は陽気な音楽に合わせて蒲萄を足で踏んで果汁作りをしたり、山でとれた梨などでタルトを作っていて味見として一部は振る舞われるそうだ。 「ま、それ以外でも海のうまいものなんかがわりと多く出ているそうだから屋台なんかによって食べたり、見たりして楽しむといいかもな。昼間はまだ温かいが夜は寒いから、風邪をひくなよ?」  夏から冬へと変わる季節になると渡り鳥が飛ぶその場所では、渡り鳥たちがまるでしばしの別れを告げるように花を海へといくつも落として飛ぶそうだ。  昼間に見ると、いくつもの花が海を満たして甘い匂いがするという。  夕方にはその花を食べようとトビウオなどの魚が出てきて、啄む様子が見えるのだ。 「なんでも、この季節になると温度とかその他いろいろな関係で、海が淡く輝くそうだ。その上、宵の口になるとオーロラが見えるそうだ。実際、オーロラではないそうだが……深夜は星が踊るという現象があるそうだ。まぁ、どの時間帯の調査をして、どんな風景だったのかなどは任せる。楽しんでこい」
スターリー・ナイトの前日譚
普通|すべて

帰還 2018-12-22

参加人数 3/8人 oz GM
 シャドウ・ガルテンの片隅にある町。この町を歩くと至る箇所に星と月をモチーフにしたオーナメントが飾られている。表通りには作り手の個性が見える星のランプが並べられており、祝祭になれば圧巻の光景が見られるだろう。  町ではお祭り前の浮きだった空気が漂っていた。  浄化師たちはこの町の名士に依頼されてやってきた。田舎町にしては立派な館に通されると、メイドに客間まで案内され、「しばらくお待ちください」とソファへと案内された。  少し遅れてやってきた名士は40代頃の男性のヴァンピールで、仕立てのいいスーツを着こなし、青いストライプのネクタイには星のネクタイピンが刺されていた。顔には深く皺が刻み込まれているものの、よく見れば服の上からでもしっかりと鍛えられているのが分かった。  メイドがテーブルに紅茶を置いていく中、名士が浄化師を歓迎する。 「この度は遙々ここまでやってきていただき、ありがとうございます。この町自慢の特産品の紅茶はいかがですか?」  名士に勧められ、浄化師たちは紅茶に口づける。ふわりと甘酸っぱいリンゴの香りが鼻孔を通り抜ける。自慢のというだけあって香りのよいリンゴの果肉をブレンドした柔らかな風味が舌に広がる。  ストレートで飲むのが一番美味しいというだけあって、休日の朝食時や三時のおやつ時に楽しみたいアップルティーだ。 「さて、本題ですが。あなた方浄化師には西のくらがりの森にある果実を採ってきて欲しいのです」  カップをテーブルに起き、そう真剣な表情で切り出した。 「町を見ていらっしゃれば分かるでしょうが、今日から一週間後に伝統行事『スターリー・ナイト』が行われます。『スターリー・ナイト』とは、無事にまた今年も冬が越せますように祈る古くから伝わる風習で、この日にポムドールと呼ばれる果実を食べると災難から身を守り、よりよい一年が送れると言われています」  今では大人も子供も関係なく祝う日になっていますが、と苦笑しながら説明してくれた。 「元々この祝祭はシャドウ・ガルデンで行われていたものではないんですよ。かつて私が住んでいた町で行われていた行事を元に始めたものなんです」  男性はどこか遠い場所を見つめながら、懐かしむような口調で話す。 「閉鎖的な国でしたから、少しでも娯楽をと考えて始めた祝祭ですが、今では毎年住民たちは楽しんでくれていることが私も嬉しいんです。……ですが、この日だけに食べることのできるポムドールが今年は採れそうにないのです」  心底困っている名士に、何故なのかと尋ねると、 「西にある森にはピクシーの集落があります。我々はピクシーと共存しながらやってきました。ポムドールの生る大樹は、くらがりの森のピクシーが世話をしており、スターリー・ナイトが近づいた時だけはこの果実を持って帰ることが許されるのです」  そこで名士は一旦言葉を切り、ため息を吐き出した。 「ですが、最近この大樹にキラービーの巣ができてしまい、ピクシーたちも困っているのです。どうか、我々の為にもキラービーを討伐し、巣の撤去をお願いします」  名士は浄化師たちに向かって深々と頭を下げる。  スターリー・ナイトを楽しみにしている子供たちの為にも、キラービーを討伐してあげよう。大樹への案内はピクシーがしてくれるそうだ。  キラービーの巣はまだ完全にできあがってはいないとはいえ、キラービーの大群を相手取らなければならない。  諸君等の健闘を祈る!
灰色空の道
とても簡単|女x男

帰還 2018-12-21

参加人数 2/8人 土斑猫 GM
 秋が終わろうとしていた。  木々を飾っていた紅葉も散り果て、もう雪が天を飾るまで幾ばくかという日の事。  場所は、教皇国家アークソサエティ。そこに建てられた、薔薇十字教団本部。  その庭園で鍛錬をしていたあなたは、一人敷地外に出ていくパートナーの姿を見とめる。  今日は、自分たちは休日の筈。不思議に思ったあなたは、パートナーを呼び止める。  訊けば、これから今は亡い家族の墓へ花を手向けにいくのだと言う。  場所を聞くと、どうにもはぐらかされる。  このパートナーとはそれなりの場数を踏んできたが、何せ戦いや任務に明け暮れる毎日。それにかまけて、互いに知らない事も多い。  気になったあなたは、パートナーにくっついていく事にした。どうせ、暇な身である。  墓参りとは些か辛気臭い用事ではあるが、せっかくの休日を鍛錬と昼寝だけで潰してしまうよりはマシだろう。  露骨に嫌そうな顔をするパートナーを無理矢理説き伏せ、あなた達は鎮魂のための小さな旅へと歩き出す。  前に広がる町並みは、ゆっくりと冬支度を進めている。  行き交う人々は、温もりを感じさせる服装に身を包み、この間まで氷菓を売っていた筈の甘味屋は、いつしか香ばしい焼き菓子の香りを漂わせている。  街の花屋の店先を飾るのは、赤や黄色の鮮やかな花ではなく、遠くアールプリス山脈で咲くという、『氷華』の澄み渡る青。  やがて、途切れた街並みの向こうに続くのは、冬枯れた野原の向こうへ続く一本道。  そんな透明な空気の中、向かうのは遠く灰色の雲が覆う空の下にあると言う、小さな墓地。  そこであなた達は、どんな想いに出会うのだろう。
仕立て屋マリー・アルガェヴのお店へようこそ
とても簡単|すべて

帰還 2018-12-20

参加人数 3/8人 GM
 その仕立て屋の名前はマリー・アルガェヴ。  女主人が寸法からデザイン、生地の選択、ドレス作りのすべてをするということで評判のお店だ。  個人でしているためあまり大量に発注しておらず、来店したお客様のお話をきき、その方にほしいもの、気持ちを形にすることをモットーにしているそうだ。  このお店の服を身に着けて告白すると恋人になれた。  仕事で成功したいと思う者が着ると成功した……嘘か真かそんな噂が流れている。  今回、指令発行を行ったロリク曰く。 「マリーが季節の変わり目に、浄化師たちのために服を仕立てたいと口にしてな。  今回、モデルになるのはどっちか片方で、あいているやつは手伝いだな。  マリーが言うにはその人がほしいものを作るからタキシードでも、普段着でも、教団の制服を改良する形でもいいそうだ」  ということだ。  ドアを叩く。  からんとベルの音がした。 「まぁ、いらっしゃい。あなたたちがロリクの紹介してくれた浄化師さんたちね? こちらにいるのはソカル。あなたたちはよく知っているんじゃないかしら?」 「やぁ。今日も強そうなのを作るよ。うん、強そう、強そう」  教団で定期的に浄化師たちの服を用意してくれるソカルはにこにこと笑っている。 「彼は今回、手伝いできてくれたの。浄化師さんの制服の構造は彼のほうがよく知っているから。さぁ、こちらにきて。紅茶とケーキを用意したわ。どっちの衣装を作りましょう。そして、その人のことをパートナーはよく考えてお話をしてちょうだい。あなたのお話から私がデザインをするわ。  服はその人の見た目の武器よ。なにかをはじめたい、ふっきりたい、進みたい、気持ちを後押ししたいそんなもののためにあると思うわ。  すばらしい一着を提供するわ」
ダンジョンに挑戦しようLv3
普通|すべて

帰還 2018-12-15

参加人数 3/8人 春夏秋冬 GM
 冒険者ギルド「シエスタ」。  冒険者の集まる、酒場と情報提供が合わさったこの場所には、他人に聞かれてはマズイ話をするための個室がある。  ギルドの紹介業者であるクロアは、そこで魔女セパル達と話をしていた。 「ということは、浄化師の方達と、本格的に協力体制になったという訳ですねぇ」 「うん。だから、ボクが魔女だってことは、向こうには連絡済みだよ」  セパルの言葉に、同席しているウボーとセレナも頷いた。  この場に居るのは4人。  魔女の権利獲得などに動いている魔女セパルと、死亡を偽装し手伝っている浄化師ウボーとセレナ。  そして、その事を最初から知っているクロアである。 「では、私の方は、今までと同じで。  皆さんの素性も、皆さんが魔女に関わってるってことも知らずにいる、ということで良いんですねぇ?」  クロアの問い掛けにセパルは返す。 「うん、その方が面倒がないと思うから」 「分かりました。では今まで通り、人の目がある所では、すっとぼけるとしましょう」 「ありがとう、クロさん」 「いえいえ。命を助けて貰った恩を返しているだけですよ。それに――」  にぃっと笑みを浮かべクロアは続ける。 「好い銭儲けになりますからねぇ」 「うんうん。クロさんの、そういうところ好きだよ」  ひとしきり談笑し、クロアは続ける。 「今日、私に会いに来たってことは、試練の塔の話ですか?」 「うん。色々あって、ここしばらくは、どうなってるか知らないからね。状況を教えて貰おうと思って」  クロアとセパルの2人が話している試練の塔とは、魔法使いが作ったとされる塔のこと。  湧いてくるゴーレムを倒すと、魔結晶が手に入るダンジョンだ。  そして、セパルの知り合いである魔女が作った塔でもある。 「2階にフロアボスが湧いたらしいですよ」 「……フロアボス?」  頭痛を堪えるように眉を寄せるセパルに、クロアは尋ねる。 「おや、そういう仕組みだってのは、知らなかったんですか?」 「うん……あの塔を作ったの、隠遁派の魔女だけど、完全に趣味に生きてるヤツでさ。  教えたらつまらないって理由で、何一つ他人に仕組みを教えてないんだよね」  魔女の派閥もいくつかあるが、その中で隠遁派は、色々とズレた魔女が多い。  一言で言うと、趣味人のマッドサイエンティスト、みたいなのも居たりする。 「人間が好きなヤツだから、塔に挑戦する人間が、跡が残るような怪我はしないように作ってあるけど、それ以外は好き勝手やってるから……」  軽くため息一つして、セパルは続ける。 「塔に挑戦する気にさせるために魔結晶を生成する仕組みを作ってるのは良いけど、そのためには塔の中で戦闘をしないとダメだしね」 「だから塔で戦ったあとに魔結晶が手に入るって訳ですか。  仕組みはともかく、魔結晶が手に入るのはありがたいですねぇ。  何しろここ最近、魔結晶の需要が高まってますから」 「教団が蒸気船を作っていますからね」  クロアの言葉に、ウボーが返す。 「魔結晶を使うことで、高性能を発揮する仕組みなんでしょう。だから、魔結晶を必要としている」 「ふふ、みたいですねぇ」  どこから情報を集めているのか、クロアは平然と返す。 「どうも、教団本部の方で何かがあったらしく、蒸気船団を作ってるみたいですねぇ。  お蔭で、魔結晶の相場で儲けさせて貰いました」 「さすがクロさん、抜け目がないね。ボクらも、見習わないと」 「おや、どうかしたんですか?」  表情は変わらず、僅かに心配するような響きを込めクロアは問い掛ける。  これにセパルは、何でもないというように笑顔で返した。 「魔女のゴタゴタを助けてもらうのに、教団の室長くん達の力を借りてね。  その見返りに、魔結晶を提供する約束をしてるんだ。  だから魔結晶が確実に手に入る、試練の塔のことを聞きに来たってわけ」 「そういう訳ですか。なら、新しく湧いたフロアボスの情報は、必要でしょう?」 「うん、もちろん。って、挑戦した人いるの?」 「ええ。猛虎の牙が」  セパル達もよく知っている冒険者パーティの名前をクロアは出す。 「そうなの? だったら倒したんじゃない?」 「いえ、失敗したらしいです」 「マジなの!?」  猛虎の牙の実力を知っているセパルが驚いた声を上げると、クロアはのんびりとした声で返した。 「そんなに驚くことでもないですよ。猛虎の牙の団長さん、試練の塔が大怪我をしない仕組みなのを肌で感じ取ったらしくて、新人の訓練に使ってるだけですから」 「なるほど。失敗しても経験にはなるもんね。  でも、猛虎の子達なら、失敗しても情報は取ってるでしょ? フロアボスの情報ある?」 「ええ、ありますよ」  クロアは説明してくれる。  まずフロアボスに挑戦するためには、1階に出現するようになった案内ゴーレムに、挑戦することを申請する必要があるらしい。  案内ゴーレムは、手提げの黒板に次のようなことを書いて訊いてくるのだ。  2階フロアボスに挑戦しますか?  倒すと、3階へと向かう階段が解放されます。  これに応じると、1階での戦闘はせずに、2階へと進める。  そこで2階フロアボスと戦うことになるのだ。  フロアボスは律儀なことに、挑戦者達の用意ができるまでは出てこない。  用意ができると、挑戦者達からは離れた場所に出現する。  フロアボスは3mほどの、ずんぐりとしたゴーレム。  額に『2階フロアボス』と書かれている。  やたらと頑丈。  フロアボスは、塔に入った人数の2倍の小型ゴーレムを、出現と同時に出してくる。  小型ゴーレムの特徴は次の通り。  1 属性はバラバラ。それほど強くない。  2 フロアボスが受けるダメージを肩代わりする性質があるようだ。  3 倒すと、倒した人物の能力が微妙に落ちる。効果は、最大で1分程度。重ね掛けもあり。  4 全部倒しても、一定時間が過ぎるとおかわりが出現する。 「こんな感じらしいですよ」 「なるほどね。となると、また浄化師の子達に協力して貰った方が良さそうだね」 「おや、自力で倒さないのですか?」 「アイツの、試練の塔を作った魔女なら、ボクが主力で戦ったら、絶対何かしてくる仕掛けを組んでる筈だから」 「面倒臭い人ですねぇ」 「うん。というか、イイ性格したヤツなんだよね」  ため息をつくように言ったセパルに、クロアは笑みを浮かべ返した。 「では、私の方から教団の方に依頼を出しましょう。  フロアボスを倒して、上の階に行けるようになれば、もっと多くの魔結晶が取れるようになるでしょうしねぇ。  相場で儲けさせて貰うためにも、依頼料は弾みますよ」  そんなやり取りがあった数日後、教団に依頼がされました。  ダンジョン試練の塔、2階フロアボスを倒して欲しいとのことです。  この依頼にアナタたちは――?
お芋の美味しい季節ですね
簡単|すべて

帰還 2018-12-15

参加人数 2/8人 浅倉季音 GM
 ヴァン・ブリーズの南の端の村から、芋掘りを手伝ってほしいとの依頼が届いた。  その村では今月末、今年の収穫に感謝するまつりが開催される予定らしい。  まつりまでに、村の畑に植えているすべてのさつま芋を掘り、選別してしまわなければならないのだとか。  ・軍手、くわ、長靴のご用意を推奨いたします。  ・上下とも長袖の汚れてもよい服装と、履き慣れた運動靴がおすすめです。  ・首にタオルを巻いておかれますと、汗を拭けますし防寒対策にもなります。  ・昼食と夕食には、特製のさつま芋料理をご馳走いたします。  仕事は、以下の3つを同時並行的に進めていく。  ・芋掘り‥‥芋を傷つけないように、そーっと掘ってください。  ・運搬‥‥‥掘った芋をコンテナに集めて、倉庫へ運んでください。  ・選別‥‥‥傷の有無を確認しつつ、30センチ以上と未満の芋を分けてください。  当日の天気予報は晴れ。  気温も朝こそ低いが、段々と上昇するとの予報がでている。  秋の陽光のもと、村人達に手を貸してほしい。
トーマスの哀哭
普通|すべて

帰還 2018-12-15

参加人数 4/8人 oz GM
 ヨハネの使徒の襲撃により損害を受けた村から「復興を手伝って欲しい」と嘆願を受けた教団は、浄化師を派遣した。  そこは教皇アークソサエティの砦付近にある小さな村。牧羊で成り立っている小さい村だった――今はその面影もなく、一週間前に起こった襲撃による傷跡を深く残している。  ヨハネの使徒との熾烈な戦いの跡が垣間見えるように民家は崩れ落ちている。村人の顔はどこか暗く、村全体に深い陰を落としていた。  ヨハネの使徒は北側から村へと進入してきたようで、そこにあった民家や牧舎の被害は特に酷く半壊状態だ。幸いと言うべきなのか分からないが、ヨハネの使徒は人間のみを殺戮することだけを目的としていた為、家畜への被害はそれほどでもなかった。  だが、人々の受けた被害は大きかった。  村人からも多数の死者が出た上に、大切な人を亡くした者も多いが、砦に近い以上こうした襲撃はよくあることのようだ。村人の間には諦観の色が浮かんでいる。  だが、今回は想定した以上に被害が酷く不安と動揺が広がっている。  かろうじて残った建物を開放したり、それでも入りきれない者はテントを作ってそこで協力しながら暮らしているようだ。  報告で聞いていた以上に酷い現状に、少しでも力になれればと浄化師たちは村人たちに教団から運んできた支援物資を手渡し、村長に何か手伝えることはあるかと尋ねた矢先のことだった。 「とっととここから出て行け、浄化師!」  少年の鋭い叫びが響きわたる。激しい憎悪をくすぶらせた目で浄化師を睨みつける。 「どうせなんにもできねえ癖に、余所者がこの村に入ってくんじゃねえ!」  そう吐き捨てた少年の年齢に見合わない一際暗い目に浄化師は言葉を失う。  杖を突いた村長が慌ててトーマスの失礼な物言いに怒るが、 「これ、トーマス! せっかく来てくださった浄化師様にお前は何を言っとるんじゃ!」  何も言わずに走り去ってしまった。 「待たんか、トーマス!」  杖を上に振り上げ呼びかけるが、トーマスは振り返ることなく、あっという間に姿が見えなくなってしまった。 「申し訳ありませぬ、村の子供が……」  心底申し訳なさそうに謝る村長に「気にしていない」と答えると、村長は浄化師たちに無言で深く頭を下げた。どうもここでは浄化師に守ってもらわなければ生きていけないとでも言うように村人の腰が低い。様付けで呼ぶのも浄化師の不興を買うのを恐れての事だろう。  村長との話し合いを終え、被害がひどかった北側の瓦礫の撤去に向かって歩いていると、背後から呼び止められた。 「……あの、浄化師様。お忙しいところ申し訳ありません、少しだけお時間をいただけないでしょうか?」  声をかけてきたのは病人のように青白い顔をした女性だった。今にも倒れそうな女性を放って置くわけにも行かず、話を聞くことにした。  女性は人目を気にするように「ここでは少し……」と言葉を濁す。どうやら人に聞かれたくない話のようだ。そのまま人気のない場所まで来ると、女性は周囲を気にしながらも浄化師と向き合った。 「申し訳ありません!」  突然女性は浄化師に向かって頭を下げる。驚いた浄化師たちは「とりあえず頭を上げてくれ」と女性を宥める。 「私はトーマスの叔母です。あの子のしたことは私の責任ですから……浄化師様にはトーマスについてお話ししたいことがあるのです」  儚げな見た目とは裏腹にしっかりと芯を持った女性だった。 「トーマスあの子は……ヨハネの使徒の襲撃によって母親を亡くしているんです。あの襲撃時、あの子は母親といたんです。間一髪あの子は浄化師様によって救われましたが、……一緒にいた姉は助かりませんでした」  一瞬、「姉」と言ったとき、悲しげな表情をしたが、すぐに気丈な表情を取り戻す。 「母親を目の前で亡くしたことがショックだったようで、ずっと塞ぎこんでいました。私が何を言ってもあの子には届かなかった……あの子も浄化師様のせいじゃないと分かっていると思います。ですが、まだ幼いからに割り切れていないんです」  そこまで話して女性は一呼吸をつく。 「あの子の暴言には本当に申し訳なく思っています。ですが、浄化師様に話しておきたいのは、これとは別の件なんです」  トーマスの事情は分かったものの、謝罪を終えた女性がまだ他にも苦悩を抱えているのが伺えた。 「あの子は浄化師としての素質を持っているかもしれません。今回の襲撃もあの子を狙ったものだと思います」  なぜ前回浄化師に助けられたときに言わなかったのだと問いつめると、 「……姉さんが何か隠し事をしているのは分かっていました。でも、つらそうな姉さんを問いつめることができず、薄々気づいていたのに黙っていた私も同罪です……もっと早く問いつめておけば、こんなことにならなかったのに……」  トーマスと同じ暗い瞳で自嘲的な表情を浮かべる。 「……本当に責められるべき人間は私なんです。ですが、もし村の人に知られれば、あの子は責められるでしょう。もしかしたら危害を加えられる可能性もあります。……あの子自身も自分を責めると思います。身勝手なことを言っているのは分かっています! 他の誰かに知られる前に教団に連れて行ってやってくれないでしょうか!」  すがりつくように頼むトーマスの叔母になんと言葉を返せばいいのか迷ったが、浄化師たちは了承した。  浄化師の素質を持つ者の保護も教団の仕事だ。村人に事情を説明しないのは納得できたわけではないが、村人を動揺させる事実を広げるのは現状、酷だろうと判断した。 「……本当にありがとうございます」  浄化師から約束してもらえたことに安堵したのか、わずかに笑みを浮かべながらお礼を言う。  その時、背後で何か物が倒れる音が聞こえ、先ほどと一転してトーマスの叔母の表情がこわばる。  叔母の視線の先には、目を見開いたトーマスが呆然と立ち尽くしていた。 「トーマス、あなた……聞いていたの!?」 「何だよ、全部おれのせいだったんじゃないか……」  俯いたトーマスの表情は分からない。そんなトーマスに叔母が駆け寄る。 「おれが母さんを殺したんだ! おれなんて死んじまえばいいんだ」  そう叫んだトーマスの頬を叔母が思わず叩く。叩いてしまったトーマスの赤くなった頬を見て、叔母は苦しげに唇を噛んだ。 「叔母さんだって、おれがいなくなればいいと思ってるんだろ! だから、村から追い出そうとするんだ!」 「違うわ! 待って、トーマス!」  叔母が止めるのも振り切って、トーマスは走り去ってしまった。 「お願いです、浄化師様! まだトーマスはヨハネの使徒に狙われているかもしれません。私は村を探します! もし村の外へと出ていたら、あの子を守ってやってください」  そう言ってトーマスの後を追おうとする叔母に落ち着くように諭すが、トーマスが心配でたまらない様子だ。  トーマスが帰ってきた時に誰もいなければ行き違いになると説得し、今にも倒れそうな程青ざめている叔母を休ませた。  もしトーマスの叔母の話が本当ならば、浄化師としての素質を持つトーマスを狙って再びヨハネの使徒が集まってくる可能性がある。  これ以上、村に被害を与えない為にも早急にトーマスの身柄を保護する必要がある。
ただいま、おかえり
とても簡単|すべて

帰還 2018-12-13

参加人数 7/8人 GM
 エントランスで、つい視線を巡らせる。  まだかな。まだかな。  受付口のロリクがどうも落ち着かない。  それは今ここにいる自分たちも同じだ。  実は今回、「急ぎの仕事じゃあ、悪いが、パートナーを借りるぞ!」と言われて調査員であるユギルにパートナーを奪われ……連れていかれてしまったのだ。  基本的に浄化師の仕事は二人ペアで行うのだが、指令発行前の事前調査なので最低限の人数でいいといわれて自分は待機することになったのだ。それもこれも指令発行を行う事務がてんやわんやだったせいもあるのだけど……。  そんなわけでパートナーと引き離された数日が経過した。  今日あたり戻ってくるはずなのだが……。 「え、あ、ああ、そうだな。そろそろ、帰ってくるころ合いだよなぁー」  ロリクが声をかけてきたあと、すぐに何かに気が付いて立ち上がった。 「ユギル!」 「今帰ったぞ、嫁!」  門をくぐってユギルが駆け寄ってくる。 「ふふ、今回はいろいろと立て込んで、帰りが遅くなってしまった。すまんのお、土産があるぞ。酒じゃ」 「お、おう」 「なんじゃ、吾の顔になんぞついておるか」 「いや、そうじゃないが……おかえり」 「うむ、ただいま。ただいま。我が妻、恋しかったぞ」  いつも喧嘩ぽいやりとりをしているのに、やっぱり、この二人は夫婦らしい。  互いに見つめあって、嬉しそうに出迎えている。  自分だって、パートナーを……。
ヘスティアの火
とても簡単|すべて

帰還 2018-12-12

参加人数 5/8人 あいきとうか GM
 その日、薔薇十字教団本部を訪れた老人は、温かい珈琲をひと口飲んでから話し始めた。 「ヘスティアの火をご存知ですかな?」  テーブルを挟んだ対面に座り、対応する司令部教団員はわずかに目を伏せて記憶を探る。 「確か、ヘーティア村のクリスマスの祭事で……。国章の形に並べた蜜蝋に、人々がトーチで火を灯していく、というものでした、か?」 「そうです」  老人――エトワール地区最西部の小さな村、ヘーティア村の村長が鷹揚に頷く。 「今年はぜひ、浄化師様にご助力願いたいのです」 「警備を兼ねて、毎年、数組は派遣しているはずですが?」  ゆるゆると村長は首を左右に振った。 「警備ではなく、点火を。ヘスティアの火は人々の平和を願う心。そこに国境も身分もございません」 「そうですけれど」 「なにより、今年は多くのことが起こりすぎました」  困り顔だった司令部教団員は、その一言ですべてをさとる。  一番記憶に新しいのはハロウィンのシャドウ・ガルデンと魔女の一件。その前に竜の渓谷でも事件が起こった。  その他にも、細かな騒動は毎日毎時のように起こっている。  善良な一般市民である村長が、どこまで知っているのかは定かではない。しかし、思いあたる節は山のようにあるのだ。 「浄化とは邪悪を祓い清めること。ヘスティアの火は、一年の穢れを燃やし、願いを天へと昇らせる行事でございます」 「……はい」 「どうか、浄化師様のご助力を」  村長が深く頭を下げる。司令部教団員はそっと息をついた。 「顔を上げてください。今年は警備と点火の任務として、発令させていただきます」 「ありがとうございます」  安堵したように老人が微笑む。司令部教団員も笑みを浮かべて頷き、ふと窓の外に目をやった。  雪でも降りそうな、灰色の重い空が見える。 「今年ももう終わりますね」  ヘスティアの火はクリスマスの一週間前に行われ、クリスマス当日まで蜜蝋の火は燃え続ける。  ずっと晴れていればいいなと、珈琲を飲みながら司令部教団員は思った。
寒い日は二人でホットなひとときを
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帰還 2018-12-10

参加人数 4/8人 しらぎく GM
 日ごとに気温が下がり、冬の足音がさらに近づいてきたと実感する今日。リュミエールストリートを歩く人々は厚手のコートを着たりマフラーをかけたりと、手を擦り合わせながら冷たい空気から身を守っている。 「さあ、いらっしゃいいらっしゃい!」  そんなリュミエールストリートに、寒さに身を縮めた人が驚いて思わず体を伸ばしてしまいそうになるような明るい青年の声が響いた。  ワインレッドのバンダナを頭に巻き、同じ色のジャケットを羽織った青年の後ろにある屋台の看板には「ヴィンツァー」の文字と、湯気の立っている赤ワインの絵。そう、これはホットワイン屋だ。屋台の内側ではワインレッドのバンダナを頭に巻いた女性が鍋をかき混ぜている。 「ホットワインはいかが? シナモン、クローブと体を温めるスパイスたっぷり! そしてオレンジと蜂蜜、リンゴで甘くしたホットワインだよ! アルコールが苦手な人やお子さんにはブドウジュースで作ったものもあるよ! ワイナリー直送のホットワインだよ! さあ、いらっしゃい、いらっしゃい!」  パンパンと売り子の青年のハキハキした呼び声と軽快に手を叩く音に足を止め、屋台へと向かう人の姿も見え始めた。 「はい、お待ち。熱いから気をつけておくれよ。そうそう、カップはこっちの棚に返しとくれ」  売り子の青年に負けず、明るく大きな声で女性が葡萄の絵が描かれた陶器のカップにホットワインを注ぎ、手渡しながら客に言う。  そんな二人の明るくエネルギッシュな呼び込みの甲斐があってか、屋台にはあっという間に人だかりができた。 「はい押さないで! 順番、順番にご注文をお受けしますからね~!」  詰め寄る客を青年が手際よくさばいていく。ホットワインを受け取った客たちは街灯の下やベンチなど、思い思いの場所でカップに口をつけている。  さあ、あなたもパートナーと一緒に、冷えた体をホットワインでほっと一息ついて温めませんか?
悲嘆の魔女
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帰還 2018-12-07

参加人数 3/8人 GM
 ユーリ、シグマ、ハンナ、……シグルド。  あなたたちのことを私は決して忘れないわ。  そう、たとえ、私が死んでも、忘れない、忘れない。忘れない。  心が壊れてしまう、深い悲しみと共に。あなたたちを誰ひとりとして忘れない……。 ●  受付口に指令をとりにくると言いあいに出くわした。 「えー、えー、えー! 浄化師さんってめっちゃ働き者って聞いたんっーけどぉ、この依頼、受けともらえるのいっつすかー?」 「指令として発行しても、すぐには……あ、こら」 「えーえーえー! こまりっすー! 俺ぇ、マスターにお願いされたんでぇ、こう、スピーディーに!」 「ちょ、こら、引き出しあけるなぁ~。あ、いいところにきた!」  ロリクさんと、えーと、知らない人が受付でやりあってる……?  改めて、ロリクに紹介された青年は今回の指令の依頼者、だそうだ。  金髪の髪に青い目をして、にこにこと笑っている。 「ハーイ、ピースピースっ! 自分、スクートゥムっていいまぁす。よろしく! えへへ。かっこいい名前っしょ? マスター……ああ、先生からもらったんすぅ! あ、で、指令、よろしくー?」  うるさ……いえ、大変明るい人ですね。 「あー、ごほん。こいつの持ってきた指令っていうのが、魔女の……かかわっている事件なんだ」 「あ、自分が説明するとぉ」 「長くなるから俺が説明する」  お願いします、ロリクさん。  少し東にいった森に――トゥレーン。古い言葉で嘆きを意味する森がある。  そこの森には魔女の一族が住んでいたそうだが、勇気ある浄化師たちによってすべて退治された。  たった一人を除いて。  その魔女の名は――忘れられて久しいが、大変強力な魔女だったそうだ。幾人の勇敢な浄化師によっても捕えることが出来ず、森の奥深くに隠れてしまったそうだ。  森の名をもじり、悲嘆の魔女と言われた彼女はたった一人で、森に存在し続けた。誰も彼もから忘れ去られても、なお。  今年。  トゥレーンの森は急速に枯れ始め、動物たちが死に、川は黒く濁り、魚が腹を見せて浮かぶようになった。  森へと足を踏み入れたヒューマンは、誰も戻ってこなかった。 「森の奥で魔女が嘆いているっすよー。ああ、つまりっすねー、悲嘆の魔女は死んだっすよー。けど、めっちゃ強くてー、自分に魔法をかけたんすよー。  『決して悲しみを忘れない』という呪いっすー。森にいる生き物は全て彼女の悲しみの唄で、自分の最も悲しい思い出に囚われて、動けなくなって死んじゃってるんすよー。そのうえ、魔女の魔法って基本、協力者がいるんっすよー? 浄化師みたいっしょー? この魔女の魔法に手を貸しているのは、この森自身みたいっねー? 魔女と森、なにか共感したのかわかんねーすっけどぉ」  困った困ったとスクートゥムがため息をつく。 「まぁ、ほっといてもぉ森は枯れて終わり、魔法も使えなくて自滅しちゃうんだと思うっすけどー。  それってさすがにまじやばくない? マスターにそれを浄化師さんたちに依頼して止めるようにって言われて、俺っちが、今回みなさんに依頼にきたわけっすー?  魔女のいる場所までは俺っち、案内できるんでぇ。みなさんついてきて、魔女をぶっころーしちゃってください。そういうの得意っすよねぇ?  今、悲嘆の魔女は樹になっちゃってるんですよねぇー。死ぬ前に自分を樹にかえちゃったんっすよー? なんでそこまでここから動きたがらないっしょねー? まぁ燃やしやすくてめっちゃよくない? ふふふ」  そうそう。と付け足して彼は口にした。 「俺っちは悲しい思い出がないんでぇ、大丈夫っすけど、浄化師さん達は、悲しみに囚われないように注意しちゃってくださいねー?  最悪、戻れなくなっちゃいますよー? まぁ、お手並み拝見、拝見。  みなさんのやり方、ばっちり見てますねぇ!」 ●  森の奥で、大樹が歌う。  地上に根をおろし、上半身だけは女の姿――彼女は眠るように目を閉じて、泣きながら歌う。  優しい子守歌。    ユーリ、シグマ、ハンナ、……シグルド。  大切な私の……決して忘れないわ。  たとえ、どれだけ悲しくても。  忘れてしまうより、ああ、ずっといい。
雪混じりの雨は冷たく
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帰還 2018-12-07

参加人数 4/8人 木口アキノ GM
 俗に、そのことに触れると人を怒らせる話題のことを「地雷」と言う。  大きな事件のない時でも、薔薇十字教団には街の巡回の依頼が定期的に届く。  浄化師が巡回するだけで、全てとは言えぬものの事件を未然に防ぐことができるし、ベリアル出現などの異変を早期に発見できるのだ。  今日も1組の浄化師が巡回の仕事を終える。  少し前から雲行きが怪しくなっていたところ、しとしとと雨が降り出した。  この時期の雨はことのほか冷たい。ともすれば、雪混じりになることもある。  少し休んで体を温めてから帰ろうか。  ちょうど目の前に喫茶店があるのに気付き、どちらからともなくそんな言葉が出る。  喫茶店で出されたコーヒーはほわりと良い香りの湯気を立て、疲れを癒してくれる。  仕事の緊張が解けたのもあり、2人はリラックスして会話に花が咲く。  リラックスしすぎたのがいけなかったのだろうか。  ついつい、余計な一言が喰人の口から出てしまう。 「でもさ、本当は俺じゃない奴と契約したかったんじゃない?」  本人としては、軽い冗談のつもりだったのだ。だがその一言は、祓魔人にとっては所謂地雷というやつだったらしい。 「なによ、それ……!」  彼女は血相を変えて席を立つと、駆け出すように店を出る。 「え……おい、待てよ」  一瞬呆気に取られた喰人だが、すぐに自分が拙いことを言ったのだと理解し、遅れて立ち上がる。  窓の外は雨。日も暮れかけて気温も下がってきている。  冷たい雨の中駆けていく祓魔人の後ろ姿。 「待てってば!」  喰人は祓魔人を追いかける。  やっとのことで追いつくと、自分が濡れるのも構わずに、上着を脱いで祓魔人の濡れた肩に掛けた。 「ごめん、無神経だった」  喰人は掛けた上着の上から、祓魔人の肩を優しく抱きしめた。  それを遠くから見ていた喫茶店のマスターが、 「言ってくれれば傘くらい貸すのに……」  と呟いた。
アチェーロ渓谷の紅葉狩り
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帰還 2018-12-03

参加人数 3/8人 あいきとうか GM
 その日、薔薇十字教団司令部に届いた一通の手紙には、短いながらも心がこもった文字がつづられていた。  要約すればこうだ。  一週間前、坂道を転げ落ちて足に怪我を負い、うずくまっていたところを浄化師様に助けていただきました。  その浄化師様はお名前も名乗らず、当然のことをしただけだからと微笑んでくださり、大変、感銘を受けました。  なにかお礼を。日ごろ、陰になり日向になり私たちを助けてくださっている浄化師様方に、なにかできることを、と考えさせていただき、この度、アチェーロ渓谷の紅葉狩りにご招待しようと思いついた次第です。  現在、アチェーロ渓谷は紅葉が見ごろを迎えています。  日夜お忙しく働かれておられる浄化師様方のお心が、少しでも休まることを願って。  これを機に、ぜひいらしてください。  アチェーロ渓谷の近くで菓子屋を営んでいる者より。 「確か、メイプルシロップの産地でしたよね。この時期はキノコや山菜もとれたはずです。秋の草花も美しく、危険な野生動物も少ない場所です」  手紙を横目に指令をしたためながら、司令部教団員は頬を緩める。 「メイプルミルク、甘くておいしいんですよねぇ……。大きなキノコの石突をとって、傘の内側にバターをたっぷり塗って焼いた、キノコバターもいいですね……。どれも今が食べごろのはずです」  あの絶品を思い出した彼女は、口の端から垂れそうになったよだれを慌てて拭った。 「危ない危ない。なによりも紅葉ですね。セーヌ川の支流の小川は、きっと落ちた葉で真っ赤に染まっています。暖かい格好で、木陰で読書をするのもよさそうですね。絵に描くのも楽しいでしょう」  過去に一度だけ、つり橋からアチェーロ渓谷の紅葉を見たことがある。  視界一面に広がる、燃えるような赤。息をのむほど強い生命力を感じられる光景に、しばらく見入っていたのが懐かしい。 「私もまた行きたいですねぇ。温かいメイプルミルクを片手に、紅葉を見るのです。ああ、確かメイプルシロップ入りのお酒も売ってましたっけ」  次々と浮かんでくる記憶の数々に、司令部教団員は小さな声で笑った。
365日の歌
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帰還 2018-12-03

参加人数 6/8人 鳩子 GM
「リネット、お願いなのだワ~!!」  大きな声で懇願されながら両肩を揺さぶられ、教団司令部に勤務する教団員リネット・ピジョンは、この店に来たことを後悔しはじめていた。  尻尾でハートを作る二匹の猫の看板が目印の『カフェ・ルピナス』は、サンドイッチとコーヒーが美味しいと評判で、以前から気になっていた一軒だった。抱えていた案件が一段落したので、ちょっと息抜きをしたかっただけなのに、どうしてこんな面倒なことになったのか。  リネットは深々と嘆息し、兎にも角にも揺さぶるのを止めてもらうために相手の手を押さえた。 「落ち着いてよ、サリー。話は聞くから、ゆっくり説明して頂戴」 「ああ、ありがとうネ! 流石リネット、あなたは最高の友達ヨ!」 「はいはい。私の中であなたの評価は最高に厄介な友達になりつつあるけど、まあ、とにかく座って」  サリーもといサンドラ・フォレスターはサーバルキャットの耳と尻尾を持つライカンスロープで、リネットの学生時代の同級生だ。商家の出だが、両親ともにまだ溌剌としているので卒業後は実家の店を継がずに「人生経験値を積んできます!」と旅に出て数年戻らなかった。ようやく帰ってきて自らの店を開いたのが、去年のことだ。幼いころから親の商売につきあって各地を転々としていた影響か、言葉のところどころに不思議なイントネーションがある。 「今日この時間にルピナスに来たのは、天のお導きかしらネ!」  職業柄、サリーは世間の流行には敏感で、今日も近頃評判の良いカフェ・ルピナスをチェックするためにやってきて、そしてランチを食べに訪れたリネットの姿を見つけたというわけだった。 「お店、うまくいってないの?」 「そう! あ、ううん、ピンチってほどじゃないのだケド、予想したほどは上手くいってないのネ。ちょっとマンネリっていうか……それで、打開策を考えてるのだケド、是非! 是非! リネットの力を借りたいのヨ~!!」  この友人、声が大きい。  リネットはテラス席を選んだ自分の選択を褒めた。 「お店の名前は……『365日の歌』だったかしら」 「ええ、そう! 前に話したかどうか、忘れちゃったケド、誕生日のお祝いをコンセプトにしたセレクトショップなの。プレゼントに丁度良いものを集めてあるだけじゃなくって、誕生日パーティーのプロデュースやサプライズイベントの手配もしてるワ」  あたし、誕生日ってものが大好きなの、とサリーは胸の前で両手を組み、うっとりと呟く。 「うちのパパとママが誕生日パーティーに命かけてるタイプだからかしら。誕生日の、今日の主役はあたし! って感じがたまらないのよネ。で、まあ、必ずしも盛大でなくちゃいけないってわけでもないのだケド、一年に一度しか無い大切な日、いつもとは違う特別な時間を過ごすのって素敵デショ?」  リネット自身はそこまで誕生日を大仰に祝うタイプではないが、異論はないので頷く。 「それで、私に頼みたい協力って?」 「リネットは教団で働いてるのよネ。ほら、浄化師のひとって、二人一組なんデショ? 特殊な契約を結んだ、病めるときも健やかなる時も一緒のパートナーなのよネ!」 「ええ……?」  話の流れがわからず首を傾げるリネットをよそに、サリーは饒舌に続ける。 「その二人が、お互いの誕生日をどんなふうに祝ってるのか、知りたいの! 普通には無い繋がりがあって、命に関わる危険な仕事も一緒に乗り越える二人なんだもの、きっと特別な絆があるのよネ。そういう人たちが相手のためにどんなことを考えて、どんなお祝いをするのか、きっと参考になると思うのだワ~!」 「ええと……つまり、浄化師の皆さんから、誕生日祝いに関するエピソードを募集したいってことね」  リネットは話をまとめながら、思案を巡らせた。 「過去の誕生日エピソードももちろんだケド、もし近々誕生日の人がいるなら、そのお祝いのお手伝いもさせてもらいたいワ! 物より思い出って感じのお手伝いが出来たら理想ネ。必要があれば、アルバトゥルスのブルーベルの丘にだって、ベレニーチェ海岸にだって、テーブルセットでもなんでも運ぶワ!」 「今の季節ブルーベルは咲いてないし、海岸は寒いんじゃないかしら。まあ、それはいいとして、ええと……もし話を募集するとしたら、正式に指令として扱うことになると思うわ。でもそれには……」 「報酬がいるってことデショ! 何事もまず投資しなければ得るものも得られないものネ。そこをケチるようじゃあ、一流の商人とは言えないのだワ」  うんうんとサリーは頷く。  リネットは迷ったが、ここ最近、戦闘を伴う指令ばかりを処理していたこともあって、この平和的な依頼を受けたくなった。  シャドウ・ガルテンでの騒動、本部への襲撃、怨讐派の魔女たちの企みと、今年の秋は物騒な多忙さであったから、浄化師たちにとっても良い息抜きになるかもしれない。サリーは『金は天下のまわりもの』を家訓とするフォレスター家の才女であり、骨の髄まで気風の良い商人気質であるから本人が言った通り報酬をケチるようなこともないだろう。  こほん、と咳払いをして姿勢を正す。 「その依頼、お引き受けいたします」  せっかく仕事っぽく繕ったのに、サリーは気付いた様子もなく、がばりと身を乗り出してリネットの手を握った。ぎゅうぎゅうと両手で握られて、正直痛い。 「ありがとう~っ!! リネット、あなたは最高の親友ヨ! 恩に着るワ! サンドイッチ奢っちゃうのだワ!」  一番高いメニューを頼もう、と思うリネットであった。
秘密の場所でお話を
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帰還 2018-12-01

参加人数 6/8人 GM
 エントランスは賑わっている。  指令を受けるために掲示板を眺める浄化師たち。書類を運ぶ事務員、カフェーに向かう者、購買へと……。  自分たちもそろそろ目的を持って動かなくては、と思った矢先、書類の山とぶつかりそうになった。 「お、おっと、悪い悪い。あたってないか?」  間一髪で書類とぶつからなかった。  山のような書類を持つのはロリクだ。よく受付で指令を発行し、説明を行ってくれる。たまーに現地訓練だーと戦闘にもイキイキとした顔で向かっているが。  今日は大量の書類を両腕にもって仕事に奮闘しているようだ。肩に乗っているひよこが、ぴよぉと鳴いている。 「……。よかったらこの書類、運ぶの手伝ってくれないか? ちょっとした場所があってな」  と書類を半分持たされた。  書類を持って通路を進む。  訪れたのは緑の多く、いろんな植物の鉢植えがある。本もあるし、机とソファも。なんだか贅沢な部屋だ。  ほかほかとあたたかくて、眠気すら押し寄せてくる。 「いいところだろう? ここの鉢植えはハーブが多くてな、紅茶なんかによく使うんだ。ほら、書類を置いて座るといい。今、今日焼いたアップルケーキと紅茶を出してやる」  書類を机に置いて、ソファに腰かける。 「ここは俺の隠れ家でな。仕事がたてこむとここにこもって仕事してるんだ。まぁ秘密の場所なんだから、ここのことは秘密な? さてと、ここは俺の客人以外は来ないから安心するといい。  今日はお前たち以外の客人はいないから好きに振る舞ってくれて構わない。  いや、お前たちを呼んだのはせっかくだし話をしようと思ってな」  ロリクが肩から卵のついたひよこを床に降ろす。ひよこはころころと転がり、ぴよぴよと鳴いている。 「最近、いろいろとあっただろう? 教団について思うことがあるなら、俺でよかったら話を聞こう。ばかやろーとかくそやろーとかいってもいいぜ?  自分たちの浄化師としてどうしたいのかやこういう指令がほしいとかの要望も大歓迎だ。そういうのがあれば探して指令発行をしよう。こういう冒険をして大変だったとかいう話もいい」  ふふっとロリクは笑った。 「まぁ、仕事が詰め込んでいて俺の気晴らしに付き合ってくれると思えばいい。そうだな、もし悩みがあるなら聞くだけは聞こう。俺はお前たちに前から言っているように……どんなときもお前たちの味方だ。一緒に悩んで考え、その問題に答えを出すようにアドバイスすることは出来る。むろん、すべてがお前たちの求めるものではないかもしれないけれど……。  さぁ、紅茶一杯とケーキ一つ分、お前たちの話、聞かせてくれ」  差し出された紅茶とアップルケーキ。  ぴよぉ。  ひよこの声がした。
目覚めた世界でみたものは
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帰還 2018-11-28

参加人数 5/8人 GM
 目覚めた世界は白、白、白……途方もなく真っ白だった。  天井の白さ、横を見れば真っ白いカーテン、ベッドも真っ白だ。  不思議に思っていると、薬品の匂いが鼻につく。  すると、カーテンをひく音とともに現れたのは医療班の濃い緑の制服のスタッフだ。  無表情で彼はキミを見て。 「失礼」  額に触れ、手首をとり、さらには腕に器具をまきつけている。  それをただ見ていると。 「体温、脈拍、血圧ともに正常ですね。おはようございます。……どうしてここにいるのか覚えてますか?」  冷静な声で尋ねられた。  ああ、そうだ。  ここにいるのは――。
占い師の導き
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帰還 2018-11-28

参加人数 2/8人 oz GM
「え? 知らないの? 最近教団内でも噂になってるんだよ、その占い師! それがさあ、よく当たるんだって!」  噂好きで知られている教団女子がそう周囲に話しているのが自然と目に入る。盗み聞きしようとは思っていないが、その女子の話し声が大きく嫌でも耳に入るのだ。 「フェイスベールで顔が隠れているんだけどさ、あれはとびっきりの美人で間違いないよ! 目元で分かる! 伏し目がちな目が色っぽいんだもん。それに自己判断してもらったら、明るい性格ですけど、頭で考える前に行動しがちでしょうって指摘されてさ。その後に、一息おいてから行動するともっと良くなりますよって助言されたんだよね、あ~当たってるなあって思ったよね」  喋っている内にだんだんとテンションが上がってきたのか、声のボリュームが大きくなっていく。 「それに悩み相談までしちゃった! ――え? お前に悩みなんてあるのかって? ありますー! こう見えてもわたし色々とあんの!」  周囲に突っ込まれながらも、すぐさま反論する赤髪の教団女子は拗ねたようにそっぽを向いた。 「こう前向きになれるアドバイスをしてもらえるしさ。行ってみて良かったよ。機会があれば行ってみるといいよ! 私が並んだときには行列ができてたけどさ、占ってもらえる上に神秘的な美人さんが見れて眼福だから!」  占いがよく当たると言いたいのか占い師が美人だと言いたのか、それともどちらもなのか分からないが、彼女の熱意はこちらまで伝わってきた。  そんな噂を耳にしたタイミングで、司令部から「ボヌスワレ・ストリートにいる占い師カルメンに占ってもらうように」という指令が出ていた。  いつもの浄化師への息抜き的な指令かと首を傾げつつ、祓魔人と喰人はその指令を引き受けた。  さっそくボヌスワレ・ストリートに向かうと、あっさりと占い師は見つかった。よほど人気なのか占い師の周囲は人々で賑わっている。  路上の片隅に風変りだが洗練された天幕があった。こぢんまりとしているが、相談者が話を聞かれることのないようにと配慮されているのか厚い天鵞絨で覆われている。天鵞絨は秋らしい銀杏の落ち葉を連想させる深みのある落ち着いた色合いをしていた。  占い師カルメンを目当てに男女関係なく行列ができており、浄化師達は仕方なく最後尾に並ぶ。  天幕の中に入ってみると、思っていたよりも広く薄月夜のシフォン生地が幾重にも重なり揺れる。薄暗い中をライラックの灯りが神秘的な空間を作り上げていた。  占い師カルメンは簡易テーブルの前に静かに座っており、厚手の黒いテーブルクロスの上にはタロットカードが置かれてある。  噂好きの教団女子が言う通り、その占い師は黒いローブに顔半分を覆う紫のフェイスベールェイスに隠されていても匂い立つ美貌は隠せていなかった。  いかにも大抵の人間が想像する怪しげな占い師といった態なのに、彼女の持つ蠱惑的な雰囲気がそれすらも魅力に変えている。  まるで動物や虫が必要に応じてフェロモンを放つように、彼女も人を引き寄せる性質を持っているように感じられた。  カルメンは目だけで微笑むとあなた達に椅子に座るように促した。  君たちはこれから占い師カルメンに直接会って占ってもらう。  今後のことについて聞いてみるのもいいだろうし、パートナー同士これからも上手くやっていけるかを尋ねてみるのも面白いかもしれない。  もしあなたが迷いを抱えているなら今のままの自分でいいのか、この先どうしたらいいのか、聞いてみるといいだろう。何か気がかりなことがあれば、占い師に話してみるだけでもスッキリするかもしれない。  あるいは失せものについて尋ねたら、何かしらのメッセージをもらえるかもしれない。  あなた自身のことを占ってもらうのも楽しい筈だ。パートナーに言えずに悩んでいることをこっそりと相談してみるのもいい。何か解決の糸口が見つかるかもしれない。  もしかしたら占いなんて信じないという者もいるかもしれない。それもいいだろう。占いを信じるも信じないも人それぞれだ。  例えどんな結果が出たとしても、未来を決めるのは今を生きる君たち次第なのだから。
お願いがあります!!
簡単|すべて

帰還 2018-11-26

参加人数 2/8人 伊吹猫 GM
 チクタク、チクタク、チクタク……チクタク。  ボーン、ボーン、ボーン。  壁に立てかけている古く大きな時計が午後三時を告げた。  ここは『エトワール』の中心街にあるリュミエールストリート。  この場所は、繁華街として多くの娯楽施設がひしめき合っているが、その一つにカフェ『チェーロ・ロッソ・デル・トラモント(夕焼け空)』がある。  名前の通り、夕焼け空の下にいるような物寂しさと懐かしさを覚えるシックな茜色を基調としており、バーカウンターのような個人席は、店主と談笑を楽しむことや些細な愚痴をこぼすことが目的で来る客がいたりもする。もちろん、恋人や仲間内でゆっくりと楽しい時間が過ごせるようなテーブル席も完備しており、リピート率は高く、ここの常連客は、親しみを込めて『茜喫茶』と呼んでいた。    この茜喫茶の店主は、店内を広く見渡した。  ダンッ!! と穏やかに過ぎる時間に間を指すようにカウンターテーブルを激しく叩く音が店内に響き渡る。 「なぜ、こんなに少ないんだっ!!!」  店の店主がそう言って、干上がった頭を掻きむしった。 「マスター!! そんなに怒ってはいけません。さらに少なくなってしまいます!」 「そ、そうなのか!? レティくん!」  ここで働くウエイトレスであるレティこと『レティシア=バンクス』は、器用で、心だてがよく、愛くるしい見た目から店の看板娘である。  この時間は、在庫整理のために食材のチェックに勤しんでいたが、店主の大きな声に反応して、一時仕事の手を休め、店主の元に来ていた。  そのレティシアは、店主の顔をまじまじと見て言った。 「はい。私の家系はそういう家系でした。でも、特に怒りっぽい人は、ストレスでさらに少なくなっていって、もう目も当てられない状況の方もいました」 「?? そうか、バンクス家は確かにそう言った家系だな。しかし、裏でないのに、この少なさはあんまりだろう」  バンクス家は、代々小料理店を営んでおり、一族揃ってそういった飲食店に着手している家系でもあった。 「そんなことはありません。表だからこそ、少ないんです! 私のおじいさまのことで申し訳ないですが、裏の方が多かったですよ?」  レティシアの言葉に今度は頭を抱えてしまった。そして、喉に物が詰まったような声をあげて言った。 「大金を払ったのに、実は、表の方が少ないなんて……。そんなことが起こるのか……。まさに悪夢だ」  レティシアは、うな垂れた店主をみて、その肩に手を置いた。 「お金は、あまり関係ありません。マスター……、何か策を講じなければ、さらに少なくなってしまいます」 「おお! レティくんもそう思うか!」 「はい! あまりにも寂しいですからね」 「はあ、そう言ってくれるな。こんな中年でも、この有様には危機感を覚えてしまう」 「す、すみません。あまりにもセンシティブな問題でしたね。配慮が足りませんでした」 「いや、気にしないでくれ。レティくんの言う通りだ。他人から言ってもらった方がやる気が起きるってものだ。尻を叩かれた気持ちになる」  店主がそう言うと、レティの顔が華やかになり、胸の前で手をパンと合わせた。 「だったら、言いますけど、マスターのその頭……、亡くなったおじいさまみたいで、私は、とってもチャーミングだと思います。お気にやむことはないと思いますよ」 「?? ん?」  店主が首を傾げた。それを見て、鏡のようにレティシアも首を傾げた。 「?? え?」    瞬間、二人の時間が停止した。そして、息を吹き返すように店主が言葉を発した。 「レティくんは、もしかして、これまで僕の頭のことを言っていたのかい?」 「え? そうですけど……、マスターは……、何のことをおっしゃっていたのですか?」  と言ったレティシアだったが、すぐに吐いた息を飲み込むように瞬発的に息を吸って、言葉を区切りながら言った。 「え、あっ……、もしかして、お店のことでしたか?」  店主は、しばらく口を開けたまま呆気らとした後に笑い声をあげた。 「うあっはっはっは。レティシアくんは、僕の頭のことを言っていたのか。そうかそうか。しかし、まあ、それは、いいとしよう」  店主は、先ほどの愉快そうな表情をパッと真剣な顔に変えると、咳払いを一つした。 「ごほん! ところでレティシアくん。頼みがあるんだが?」  レティシアは、額に汗を滲ませて背筋を伸ばした。 「は、はい!」 「この店が繁盛していないのは、僕が考えるに宣伝が少ないともう一つの理由からだと思うんだ。というのも、この場所に店を構えるのに、大金を使ったから、当時は宣伝にお金をあまり回せなかった。でも、今は事情が少し好転したんだ。だから、レティシアくんには、宣伝に関してと……それと僕のカツラのことを頼みたい」 「え? カツラですか?」  店主は、レティシアに右手の人差し指を立てて言った。 「そうカツラ。最近の子は、ウィッグというのかな? 僕は、毛が少ないから、人気(ひとけ)が少ないとわかったよ。だから、ウィッグさ! “人の毛”を増やそうってね」  と店主は得意げな顔で言った。それを聞いて、レティシアは、一瞬硬直したが、視点を遠くの方に向けて、どこか焦点が合わせずに言った。 「oh~毛~。……はあぁ」  とっさに項垂れた。 (っあ、レティくんもそういうこと言っちゃうのか)  と、レティシアはどことなく安請け合いするのだった。
【魔女決闘】未来の兆しはこの一戦に
難しい|すべて

帰還 2018-11-25

参加人数 7/8人 春夏秋冬 GM
 とある廃村。  打ち捨てられたそこに、魔女達が集まっていた。  魔女決闘(フェーデ)を行うためだ。  フェーデとは、元々は自力救済を意味する言葉だ。  法がまともに機能しない時代。  何か揉め事があった際に、実力行使で問題の解決を図ることをフェーデと呼んでいた。  実力行使といっても、ルールがない訳ではない。  お互いの自滅を避けるために、時間と場所を示し、あらかじめ約束事をする。  それが決闘の作法として洗練され、魔女達の間では残っているのだ。   これから、この廃村で行われるのは、そうした決闘であった。  ◆  ◆  ◆ 「約束の刻限までには、まだ時間があるな」  廃村の入り口に1人の男性が立っている。  ウボーという人物だ。  彼の傍には女性が2人。  ウボーの相棒であるセレナと、魔女セパルだ。  この3人は、ハロウィンに合わせテロを行おうとした魔女の過激派である怨讐派を防ぐために奔走していた。  薔薇十字教団室長ヨセフ・アークライトとの密会を行い、彼の協力により浄化師達が抑止力として動いてくれたお蔭もあり、当初考えていた被害は出ていない。  怨讐派としても、今の状況で下手に動けば、ただでは済まないことは理解しているのだ。  しかも、今回の騒動で教団に保護を求める魔女が出ていることが怨讐派の動揺にも繋がっている。  中には、自分達の子供が友達を求めて出奔するなど、怨讐派の中でも心が揺らいでいる者も少なくない。  教団が、保護を求めた魔女を危害を加えることなく扱っているのも理由としては大きい。  怨讐派から逃げ出した子供を浄化師達が保護するなど、そうした結果も大きく影響していた。  だが一度振り上げた拳は、早々簡単に下ろすことはできない。  怨讐派の魔女達としても、落としどころもなく止まることはできなかった。  だからこそ、落としどころとして提案されたのが、魔女決闘だ。  廃村を舞台に、世俗派と怨讐派の魔女達が戦い、勝者の要求を聞くことになっている。  怨讐派の戦力は、魔女が30人。  その上で、悪霊達を従えて戦いを挑むことになっていた。  対する世俗派は、魔女は同じく30人。  悪霊を使役しない代わりに、魔女以外の助っ人を得ることを承諾させていた。  つまりは、浄化師達の協力である。 「来てくれると良いんだけど」  廃村の入り口で、浄化師達を待っているセレナは言った。  これにウボーが返す。 「戦力としてもだが、大義名分のためにも来て貰えないと困るな。  浄化師が、戦いの見届け人としている。  それなら対外的には教団のコントロール下にあると言い訳ができるからな」 「最悪、私たちが見届け人として動くしかないんじゃない?」  セレナの言葉に、ウボーは返す。 「最悪そうするしかないが、その時は室長に動いて貰わないといけなくなる。  それだと、今までのように隠れて動くことはできなくなるのが問題だ」  セレナとウボーの2人は、魔女であるセパルに協力するため、死亡を装って秘密裏に動いている浄化師だ。  それが生きていることになれば、教団の命令を無視する訳にはいかなくなる。  無視すれば、抹殺指令すら出かねない。  悩むウボーとセレナに、セパルは言った。 「その辺りは、室長くんに何とかして貰うしかないんじゃない?」 「……室長に借りが出来るぞ」  ウボーの言葉に、セパルは肩をすくめるようにして返す。 「それは覚悟の上だよ。どのみち浄化師の子達には、いずれボクは魔女として知らせた上で関わるつもりだったし。  だからこそ、今まで浄化師の子達と関われそうな時は、幻惑系の魔法使わずにいたんだから」  これまでセパルは、ウボー達と一緒に冒険者として浄化師達と関わることが何度かあった。  それは浄化師達と協力できるかどうかの見極めも兼ねていた。 「ま、とにかく。最悪になったら、その時はその時で考えよう。  それよりも今は、決闘に勝つことを考えなきゃ」  セパルの言葉に、ウボーは気持ちを切り替え返す。 「勝つためには、まずは相手の戦力を知らないとな。  細かい戦力は分かるか?」  ウボーの問い掛けに、セパルは返す。  その内容は、次のようなものだった。  決闘の相手となる魔女30人の内、リーダーは爆炎の魔女アルケー。  ただし、今回の怨讐派の動きには賛同していないので、本気で来ることはない。  よほど致命的に怒らせるなどしない限りは、自らが魔法を使って攻撃してくることはないだろう。  10体程度の悪霊を使役するぐらいしかしてこない。  悪霊を全て倒せば、負けを認めるだろう。  残りの魔女も、半数近くは戦意が低い。  1人当たり1体から数体の悪霊を従えており、悪霊が倒されれば戦意を喪失するだろう。  残りの10数名の魔女は戦意が高いので、使役している悪霊を倒しても戦う可能性は高い。  それぞれ悪霊達とは別に、遠距離系の攻撃魔法を使う可能性もある。  ただし、悪霊を操りながらでは、攻撃魔法の狙いは著しく落ちるだろう。  悪霊を倒せば倒すほど体力を消耗するので、拘束する場合は、最初に悪霊を倒してからが良い。  これに対してセパル達、世俗派の魔女の戦力は次の通りだった。  リーダーは幻惑の魔女セパル。  決闘の勝利による事態の鎮静化が目的なので、戦う相手となる魔女の抹殺は積極的には行わない。  どうしても止むを得ない限り、抹殺では動かない。  近接戦闘と幻惑系の魔法を使う。  幻惑系の魔法の効果範囲は、最大で数10m。セパルから離れれば離れるほど効果は薄くなる。  効果が及ぶ範囲では、相手は幻惑をみせられ命中力が落ちる。  残りの魔女達は、指示次第で様々な行動がとれる。  味方の防御や回復、あるいは動きを速くするなどの援護もできるし、直接戦うこともできる。  遠距離攻撃の魔法を使う者が多いが、数名は接近戦もできる。  全員、直接触れた相手の体力を奪い、気絶させる魔法が使える。  ただし、気絶させるほど体力を奪うには時間がかかるので、相手が弱ってからでないと使えない。  残りのウボーとセレナは近接戦闘系である。 「戦う場になる廃村の地形は、相手は詳しいのか?」  ウボーは背後の廃村を見ながら問い掛ける。  これにセパルは返した。 「怨讐派の子達を率いているアルケーが、旦那さんと娘さんと一緒に暮らしていた村だからね。  彼女が伝えてる筈だから、ある程度は分かってる筈だよ」 「住んでたの? ここに?」  人気のない廃村を見詰めながら、悲しそうにセレナは言った。  これにセパルが返す。 「林業で栄えた活気のある村だったよ。それを商売敵の他所の奴らが妬んでね。  魔女を匿ってる村だって決めつけた挙句に、アルケーの旦那さんと娘さんを人質に取ってね。  逆らえないアルケーを動けなくなるまで乱暴した挙句に、石を投げながら旦那さんと娘さんを殺したことを笑ったそうだよ。  そのあとに、村人の財産を奪っていったみたいだ」  淡々とセパルは言う。  抑揚のないその声は、感情を奥底に隠しているようだった。   けれど、セパルは今までと変わらぬ明るい表情を見せながら言った。 「ま、昔話はこれぐらいにして。今は、やるべき事をしなきゃね。  浄化師の子達が来てくれたら状況を話して、指示を仰ごう。  うちの魔女の子達にもそう説明してるし、それでやっていこう」  かくしてセパル達は、アナタ達を廃村の入り口で待っています。  決闘の勝敗と、その先の結果は、アナタ達次第です。  この指令に、アナタ達は――?
常夜の国のセレナーデ
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帰還 2018-11-23

参加人数 8/8人 あいきとうか GM
「観光地?」  きょとんとする少年の言葉に、司令部教団員は真剣な表情で頷いた。 「はい。先の一件でシャドウ・ガルデンとの国交が生じましたでしょう? 一度行ってみたい、という声を多くいただいているのですが。私を含め、多くの人々がかの国について、ほとんどなにも知らないのです」 「鎖国してたもんなぁ」  オレンジジュースを飲む少年の耳は、蝙蝠の翼に似た形をしている。  彼もまたヴァンピールであり、三年前までシャドウ・ガルデンで生活していたのだ。  浄化師としての素質を見出されなければ、今もそこで生きていただろう。 「って言ってもな」  うーん、と少年は唸る。  閉ざされていた国を出て三年。思い出せることは年々少なくなっているし、そもそも住んでいたからこそ、観光地になるような場所に心あたりがない。  どこもかしこも、彼にとってはあって当然の場所でしかなかった。 「どこでもいいんです。観光資源があれば、それをきっかけにシャドウ・ガルデンに多くの方を導けると思うんです」 「まぁ、なにがあるか分かんないけど、とりあえず興味があるなら行ってみて、って言うよりはいいかなぁ」  見知らぬ国で迷子にさせるのは、得策ではない。  一か所でも、ここ、と言える場所があれば、観光客たちの足は自然とそこに向かうだろう。 「……あ」 「なにか思い出しましたか?」 「月輝花の花畑、とか」 「ゲッキカ?」 「うん。百合っぽい白い花なんだけど、あれ、確かシャドウ・ガルデンの固有種なんだよね」 「詳しくお願いします!」  目を輝かせて食いついてきた司令部教団員に、少年は上体をそらせる。小声で謝りながら、彼女は椅子に座りなおして咳払いをした。  落ち着いたところで、少年は眉間にしわを寄せる。 「うーん、でも、あるか分かんないんだよね。なにせ三年前はあったってだけだから」 「では、浄化師様たちに見てきていただきましょう」 「そうだね。僕は……いいかな。たぶん日程、あわないし。場所だけ教えるよ」 「ありがとうございます」  懐からメモとペンをとり出した司令部教団員に、少年は月輝花の特徴と、だいたいの位置を教えた。 「でも、名前もない花畑があったとして、観光地になるのかなぁ」 「大切なのはきっかけですから」  そうかな、と少年は疑問が残る表情でオレンジジュースを飲みほした。
お茶会の魔女
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帰還 2018-11-23

参加人数 2/8人 GM
 気が付いたとき、浄化師たちはテーブルについていた。  唖然としていると、にこにこと笑っている可愛らしい女の子がいる。 「こんにちは。さぁ、推理をはじめましょう? さ、今回の物語を話すわね?」  誰ですか、と問いかけたり、何事かと聞く前に女の子は続けた。 「ああ、忘れないで。愛しい人。これは楽しく推理するお茶会よ? 恥ずかしがらず、自分の推理を披露してね。楽しんでいるうちはあなたを食べたりはしないわ。ただ楽しませてちょうだい。さぁ、魔女と推理のお茶会をはじめましょう」  魔女は語る。  とある小さな国がありました。  そこに大変勇敢で、聡明な、家族思いの青年がおりました。  青年は、人を食らうと噂される魔女を退治しようと森へと赴きました。  しかし、なんてことでしょうか。  青年はひと目で魔女に恋をしてしまったのです。  魔女はそれほどに美しかったのです。  また森に住まう、無垢な魔女も青年に恋をしてしまったのです。  魔女は力こそありますが、森で長く生きていたため浮世離れして世間知らずな者が多いのですが、この魔女も例外なく、世間知らずでした。青年の美貌と優しさに魅了されてしまったのです。  それから魔女は青年にいろんな知恵や魔法を授けました。青年はそれによってますます素晴らしい働きをしました。  国に害のある化け物を退治したり、困っている人の病を治したり……。  国は発展し、豊かになりました。誰もが青年を国の王様にしようと人々は言いました。  ただ一人、賛成しない者がおりました。  それは青年の幼馴染です。国一番の腕のよいパンを焼く娘は、生まれたときからずっと青年に恋をしておりました。  青年のことを強く思う彼女はなかなかに激情家でありました。  彼女は彼が森に通い続けることを不審に思い、後を付けて、森で魔女と青年の逢引を見てしまったのです。  青年は魔女に魅入られたんだ。  二人の仲睦まじい抱擁に嫉妬にかられた娘はそう思い、人々に告げました。  彼は魔女にそそのかされている!  さて、国に青年が戻ると家へと押し掛けたのは勇敢な強い兵士たち。  お前は魔女にたぶらかされたんだ。今魔女の居場所を教えれば救える。  しかし魔女の居場所を教えなくてはお前たちを処刑しなくてはいけない、と。  青年は選びました。 「さぁ、この青年はどうしたと思う? 魔女を売り渡したのかしら? それとも家族もろとも死んでしまったのでしょうか? それとは別? どんな結末かしら? この物語だけを使って、あなたたちは考え、答えを聞かせて」
寝過ごしちゃった! アルバトゥルス駅舎にて
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帰還 2018-11-22

参加人数 7/8人 宇美 GM
 まぶた越しにまぶしい光を感じながらうつらうつらとしていた。 「ねえ、ここどこだろう? まずいんじゃない?」  とパートナーが指で私の肩をつついた。  はっと目を開く。  私は臙脂色の対面式の列車のシートに座っていた。  狭い直角の固い座席だった。  よくもさっきまでこんな寝づらいところで眠りこけていたものだ、とあきれる。  仲間の浄化師たちはまだ夢の中だった。  ある女性は肘掛けに顔をのせている。ロングヘアーと両手をだらりとたれていた。細い指先が床にくっついている。  ある男性はふたりがけのシートに、ひとりで横たわっていた。はみだした長い足を肘掛けの上で組んでいる。雷のような大いびきだ。  窓の外を見ると、空は明るい。朝の空の下、ずらずらとまるで黒い大蛇のような蒸気機関車が、30台近く並んでいる。その下は入り組んだ線路だった。随分と大きな駅だ。  地面にじかに立っている駅名表らしき白い看板が目に入った。  順に字を読む。 「ア・ル・バ・トゥ・ル・ス」  まさか! うそだろう!?  ここはブリテンのアルバトゥルス駅舎だというのか?  それなら下りるはずだった教団の最寄り駅は、はるか昔に過ぎてしまっている。  並ぶ線路と列車の向こうのグリーンがかった白い巨大な建物に目をやる。確かにいつか絵はがきで見たアルバトゥルス駅と同じ形をしている。 「起きろ! 大変だ」  それにしても通常なら誰かが途中で目を覚ましそうなものだ。同行していた浄化師達が、皆、揃って終点まで寝過ごすなんてどうしてしまったのだろう?  昨日の指令で、皆、疲れ果てていたのだろうか?  仲間たちを叩き起こす。  目を覚ました浄化師達が身支度を始めるころになって大騒ぎになった。仲間のうちの数人の鞄がなくなっていたのだ。  寝ている間に盗まれたのだろうか?  眠りにつく前に楽しく会話をした老婆の姿が目に浮かんだ。  しわくちゃの顔で目を細めて微笑む、いかにも素朴そうな老婆だった。  同じ車両だった大荷物の老婆は、自分はノルウェンディのまだ観光化されていない自給自足の村から来たと言っていた。  夫の出稼ぎにともなって若い頃アークソサエティに移住した娘時代の親友に会いに来たそうだ。  雪のような銀髪に、色とりどりの刺繍がされたエプロンを身にまとった老婆が、片言の言葉で、 「ワタシ、ウマレタムラカラ、デルノハジメテデス」  とか言っていたから、ついつい手作りクッキーを、ごちそうになってしまった。  けれども、どの浄化師の記憶も老婆にもらったクッキーを口にしたところでとぎれているのだった。  あの身の上話は、まるっきりウソで、クッキーには睡眠薬でも、入っていたのかもしれない。  車内を端から端まで歩き回ったが、老婆は当然のようにいない。  ダメもとで、がらんとした車内に、ぽつりぽつりと残る乗客に、聞いて回った。しかし老婆について知る人は見つからなかった。  仲間の何人かの鞄は無事だから教団に帰る旅費には困らない。教団に渡さなければいけない魔結晶は身に付けていたのが不幸中の幸いだけど、盗まれた鞄には決して少なくない現金が入っていた。しばらくは落ち込んでしまいそうである。 「お客さん、終点ですよ!」  駅員に、促されて列車を降りた。  駅にはホームがなく、地面に直接降りる。  黒光りする列車が並ぶ線路の合間を、駅舎に向かって歩く。こちらに背中を向けて貨車と貨車の隙間に消えていく駅員の姿が目に入った。  慌てて追いかけて呼び止める。  事情を話し、これからどうやって帰ったらよいか、駅員に相談する。  幸いなことに駅員は親切な男だった。  持っていた時刻表と路線図を、真剣な面持ちで繰ったりじっと見つめたりした後、こう教えてくれた。  駅員によると、目的地の教団の最寄り駅に向かう特急列車は1日に1便のみだという。発車時刻は夕方らしい。  それに乗れば明日の朝には目的地の駅にたどり着くことができるそうだ。  鈍行なら午前10時頃に、出発するのもあるが、乗り継ぎに乗り継ぎを重ねなければならない。しかも、目的の駅につくのは3日がかりだという。  それなら夕方出発の特急列車に乗るしかない。  まだ、朝の8時半である。それまで、どうやって、時間をつぶそう?  隣には、『鉄道修理工場』があるらしい。駅員が、面白いですよ、ここまで、せっかくいらしたのなら見学しないのは損ですよ、と勧める。  パートナーの目が輝く。自分はとてもそんな気分になれないのだけれど。  駅前は人が多い。  大道芸人や、人形遣い。踊っている者もいる。  自分もあれぐらいならできそうな気がする。  道端に、小さな机を置いて占いの店を出している人もいる。  みなそれぞれ人々の注目を浴びている。  拍手喝采が響き、金属のぶつかり合う音がした。人形遣いの前に置かれた、シルクハットの中には次々ときらきらと輝くコインが、投げ入れられる。  私も、ここで、特技を発揮すれば、盗まれた分を少しは取り戻せるだろうか?  駅舎のまわりには、小さな店が、たくさんある。飲食店や、マッサージ、お土産屋さん。ぶらぶらするだけでも、十分時間がつぶせそうだ。
【魔女】今日は一日いたずら三昧!!
とても簡単|女x男

帰還 2018-11-21

参加人数 2/8人 桜花 GM
『Trick or treat。お菓子をくれないといたずらしちゃうぞ!!』  それはハロウィン開催時のみに通じる魔法の言葉。これを言われた人は『Happy Halloween!!』と返し、子供たちにお菓子をあげなければならない。  元々は秋の収穫を祝い、悪霊を追い出す宗教的な意味合いの強い行事だったらしいが、今では仮装をした子供たちがお菓子を求めて街を練り歩く楽しいイベントとなっていた。  この時期になると街はハロウィンムードへと包まれ、至る所でハロウィン気分が楽しめるイベントが開かれる。  薔薇十字教団でもハロウィンイベントの一貫ということで、教団寮の食堂を使ってハロウィンパーティを開催する計画を立てていた。 「ハロウィンって言ったらやっぱりかぼちゃ料理よね。今からパンプキンパイでも焼いてみようかしら」 「なぁ、せっかくだから俺たちもなんか仮装してみね? おれ吸血鬼とかやってみたい」 「私は絶対に嫌だからね。やるならあんた一人でやってれば」 「パーティー用のお菓子ってもう準備したー? 誰かテーブル運ぶの手伝ってほしいんだけど」  普段使っている食堂が会場になるということもあり、ハロウィンパーティーの準備には多くの浄化師たちが参加している。  厨房に入ってハロウィン料理を作ってくれている人や、折り紙で作った南瓜やコウモリを部屋中に貼ってハロウィン感を出している人がいたりとみんな楽しそうに準備をしている。  これまでにも何度か教団内でイベントのようなものをやってきたが、なんだかんだでお祭りごとが好きな私たちは張りきって準備をしていた。 「あの、アリサ先輩は一体何を……」  そんな中、一人だけ他の人とは一風変わった行動をしている人がいた。  装飾用にと用意されていた折り紙や布には目もくれず、ただ無心に大きな白い紙を壁に貼り付けている。  一見してハロウィンとは全く関係のないような彼女の行動に、周りにいる浄化師たちも何をしているのかと首を傾げながらその様子を見守っていた。 「ん? あぁ、私? たまたま近所の文房具屋さんに模造紙が売ってあったからついでに買ってきたの。これを壁に貼ってそこにお絵描きをしてみたら面白そうかなって」  彼女が壁に貼り付けているのは筒状に丸められた大きな模造紙。袋には業務用と書かれていて、これ一つで足長テーブルを覆えるほどの大きさがある。  すでに壁には模造紙がびっしりと貼られているが、それでも物足りなかったのか彼女の足元には未だに貼り終えていない模造紙の筒が何本も置かれていた。 「確かに面白そうではありますけど……、だからって大きすぎません? そもそもこれってハロウィンになんの関係が……」 「なに言ってんの、大いに関係ありだよ。だって今日はハロウィンなんだよ、ハロウィンパーティーなんだよ? むしろ私たちのいたずら心を満たすにはこれぐらいの模造紙では足らないと思うのだよ」  なんだかアリサ先輩にとってハロウィンはお菓子をもらうイベントじゃなくていたずらをしても怒られない日のようになっているような気もするが、そこはあまり気にしないことにする。  アリサ先輩と知り合ってもうずいぶんと経つが、こんなことにいちいち驚いていたらむしろ私の方が疲れてしまう。  どうせ私が何を言ったってアリサ先輩が止まるはずなんてないのなら、止めるのを諦めてさっさとサポートの方に回るのが一番楽だった。 「ほら、貼った貼った。模造紙はまだまだ残ってるんだし、さっさと貼りまくるよ」 「えぇ……、私もやるんですか……」  そうして私は半強制的に模造紙を壁に貼り付ける係へとまわされ、ほくほくのハロウィン料理がテーブルの上へと置かれる頃には色鉛筆やペンなどの準備を終わり、模造紙で作ったとは思えないほどの立派なキャンバスが出来上がっていたのだった。
【魔女】残響の町
普通|すべて

帰還 2018-11-19

参加人数 4/8人 oz GM
●ガエタン・ジラルド『魔女狩り』42-43頁  現在、魔法使いは魔女と呼ばれ、一般的には得体の知れない術を使う人喰いだと忌み嫌われている。  かつて魔女は人々の良き隣人であり、奇蹟の代行者として崇めたてられていた時代もあったのだ。  人々は困ったことがあれば魔女の知恵や力に頼りにしていた。医療魔術がまだなく、医術が民間療法の域を出なかった時代、魔女達が医者の代わりに怪我や病気を治すことさえあった。  魔女とは、生まれたときから特殊な才能を持ち、自然に漂う魔力を行使する選ばれた存在でもあったのだ。  だが、アレイスター・エリファスの台頭により状況は一変する。  彼が開発した「魔術」は魔法とは違い、才覚の差はあれど誰にでも使える技術だった。人間の体内には魔力を内包する「魔力回路」の発見は当時驚くべき事だったのである。  新たな技術の誕生は、人々にとって福音であり、悲劇の始まりであった。  人は異質を嫌う。  敬いは畏れへと反転し、尊敬は嫉妬へとたやすく変わる。  魔術が広まれば広まるほどに、魔女は特別な者から一転し、異端者へと凋落した。  民衆が冷遇する理由は他にもあり、魔法は基本的にドラゴンやピクシーなどの生物しか行使できないことから、魔法を使う彼等は「人間ではない」という風潮が根強かったためだ。  魔女狩りが始まった経緯はいくつもの諸説があり、正確には定かではない。  魔女狩りが行われる以前に「ロスト・アモール」による差別と戦争、貧困、飢え、さらには「ラグナロク」によるヨハネの使徒とベリアルの発生。この世界的災厄によって止めを刺された。これらによって一般大衆のやり場のない苦しみや怒りの矛先が向けるスケープゴートの土壌が育っていたのかもしれない。  その人の業に薔薇十字教団も悲劇を後押しした。  教団は魔女を弾圧する世間の風潮を利用し、魔女狩りを推奨することで魔女を突き出させる意識を一般大衆に根付かせることに成功した。  昨日共に笑い会っていた隣人が次の日には裏切り、「魔女め!」と罵りの言葉を吐く。時には助けた者が金と引き替えに教団へ密告することさえあった。  教団にとって魔女を捕らえることは自らの権威を固めるのに役立てるだけではなく、研究材料としても魅力的な存在であった。魔女とは魔法を行使できる人間であると知っていた上で、何百年も生きる存在を研究し魔術の発展の礎にしようと考える一派も存在していたのだ。  教団は表向きは魔女をきちんと処刑を執り行っているパフォーマンスを見せる一方で、密かに重罪人を替え玉にしたり、研究体としては不必要になった個体を代わりに処刑していた。  魔女狩りが過激化していく一方で、魔女の報復を恐れていた人々の不安と教団の思惑は見事に一致した。  人々は魔女が起こした「人喰い事件」を切っ掛けに、実体とは異なる影に恐怖心を増大させていたのだ。  こうして魔女は「人喰いの化け物」として世間に認識されるようになった。  魔女狩りが収まった今でもお伽噺には悪いものとして登場し、親が子供に「悪い子は魔女に食べられちゃうぞ」と脅かしつけられる存在となっている。  あの異様な魔女狩りの熱狂は収まったのは、皮肉なことに魔女が世間から姿を消したおかげだった。教団の方でもヨセフ・アークライトが室長となってからはほぼ行われることはなく、現在あまりに人道を無視した研究は凍結状態となっている。  魔女達が行ったカニバリズムは、確かに人としての罪だが、彼らをそこまで追いつめたのも我々だということを忘れてはならない。 ●悲劇の町 カンジョンリア  まるで古代都市遺跡のような魔女狩りの町カンジョンリアはルネサンスの外れにある最も有名なゴーストタウンだ。  今では残響の町とも魔女狩りの町とも呼ばれている。  昔は町の中央にある教会の鐘が鳴り響く、美しい町だった。  現在では町は放棄されている。老朽化し崩れた家屋は植物に覆われ、誰も訪れることはない。  ここは魔女に呪われた土地である。  滅びた原因は定かではないのは、生き証人が殆どいない為だ。  どれも推測の範囲に過ぎない。確かなのは、町で大規模な魔女狩りが行われていた最中、大きな地震と火災が起こったこと。  逃げ出そうとした人々もいたが、町全体を囲む高い防壁が徒となって逃げられず殆どの住人が亡くなった。  その際、唯一の出入り口である門は堅く閉ざされ開くことはなかったそうだ。それらは死んだ魔女の呪いだと囁かれている。  この場所は魔女達がかつて住んだ場所であり、怨讐派の魔女にとって魔女狩りを象徴する場所でもある。  大勢の魔女が亡くなり死が染み着いた町は、惨劇の日を今でも繰り返す――この町の悪夢は未だ終わっていないというように。  教団にとってこの地は負の遺産であり、怨讐派の魔女にとっては奪還すべき地なのだ。  ここには魔女の遺産があるとされ、怨讐派の手に渡れば火種になりかねない。  だからこそ、ここを利用されることがないように教団が管理している。ここに入れるのは許可を得た浄化師だけで、普段は立ち入り出来ないように町ごと封印されている。  怨讐派の動きが活発したこともあり、封印を強化する事が司令部で決定された。  新たに封印の核となる楔を町の四方に打ち込むことで封印を強化する指令が諸君等に下された。  悲劇の町で君達が何を見るのか神ではない身では分からない――ただ悪夢に呑まれないように気をつけて欲しい。
【魔女】あなたの心のMonster
普通|すべて

帰還 2018-11-17

参加人数 8/8人 木口アキノ GM
 ここは一代で財をなした豪商レイモンズ・ガネスの邸宅である。  今宵はアークソサエティ及び近郊の縁のある商人たちを集め賑やかなダンスパーティを開催していた。招待された者たちはそれぞれ自分のパートナーを連れこのパーティーに参加していた。  談笑のざわめきに包まれた広間だが、ガネスの一人息子ザムが登場するにあたりしぃんと静まり返り、音楽だけが心細げに続けられていた。  人々の注目を集めているのはザムの隣に立つ彼の伴侶、ティリカだった。  態とらしく顔をしかめ扇で鼻を覆う婦人や、侮蔑の笑いを浮かべる者すらいた。  だが、それも数秒。人々は皆余所行きの仮面を被り、何もなかったようなふりをする。  当のザムは若干人心の機微に疎いところもあり皆の様子には気付いておらず、ティリカはティリカでだからどうしたと言わんばかりにむしろ挑発的に胸を張り顎を上げ笑顔で睥睨する。 「よく平気な顔をしてパーティーに出て来られるわよね。……使用人上がりが」 「し、聞こえるわよ」 「でも事実でしょ」  ひそひそ声が交わされる。 「だって仕方ないでしょう」  そこへ声がかかり、密談中の婦人たちは肩を跳ね上げる。  そこには仁王立ちのティリカ。 「主人が、どうしてもあたしを迎え入れたいって言うんですもの」  そしてティリカは妖艶に笑ってその場を去る。 「まあ気持ちはわかるよなぁ」 「あれだけ美人でスタイルも良けりゃ、出自なんて気にならないな」  と言う男たちを、婦人たちはぎろりと睨んだ。 「ふん、男どもったら鼻の下伸ばしてさ。あんな女、金目当てに決まってるってのに」  そうよそうよ、と周りの女性陣は同調する。  若く美しい使用人に骨抜きにされた情けない2代目。それがザムにくだされた評価であった。  いずれあの女も財産を持ち逃げして、その時に泣きを見ることだろう。いや、そうなる前にレイモンズが適当な手切れ金でティリカを追い出すだろう。  それまでせいぜい、仲間のフリをしておいてやろう。  婦人たちは、男性たちに混じって話し大口を開けて笑っているティリカを白い目で見つつも、そんなことを考えていた。  パーティーは恙無く進行していたと思われた。  音楽が途切れると、レイモンズが声をあげる。 「ここで、皆さんにお聞かせしたい音楽がある。先日素晴らしい楽師に出会ってね。彼らは諸国を旅しているらしい。彼らに出会えたのは、神の導きとすら思えるよ」  熱に浮かされたように語るレイモンズの後ろに、旅人らしき出で立ちの男女2人組が控えていた。  男性は手に弦楽器を持っている。 「それでは皆も、しばし彼らの音楽を楽しんでおくれ」  旅人2人は恭しくお辞儀をすると、男は楽器を構え、女は組んだ手を腹に当て大きく息を吸い込んだ。  物悲しい旋律は初めは緩やかに、徐々に速く。響く歌声が紡ぐのは不思議な物語。 愛しい人への募りすぎた想いは怪物となりこの身を支配する。 さあ唇を裂き牙を剥け。 愛しい人を私の血肉に。私を愛しい人の血肉に。 そして魂は溶け合う。ひとつになる。 「すごい迫力のある歌声だね」  ザムが傍のティリカに話しかける。 「そうね」  ザムに顔を向けたティリカの瞳は……爬虫類のように生気がなく、その異変にザムが驚いている間にもティリカの顔は中心からぶわりと鱗が生え口は真横に広がり赤く細い舌がちろりとザムの鼻先を突く。 「うわぁっ!?」  ザムは悲鳴を上げ、助けを求めようと周囲を見回せば、同じように怪物の姿になった者が大勢いた。  広間に旅の楽師の高笑いが反響する。 「ほうら、それがあんたたちの愛しい人の本当の姿だよ。醜い心に見合った姿になったのさ」  大蛇の怪物に変化したティリカはしゅうしゅうと不気味な呼吸とともにザムに這い寄る。 「な、なんで……ティリカ……?」  ザムは震える脚で後退する。  大蛇のティリカから不気味な笑い声が漏れた。 「そうよ、あたしよ。あたしはね、あんたみたいなお坊ちゃん本気で愛してなんかいないわ。あんたが受け継ぐだろう財産が欲しいだけ」 「嘘だ」  ザムは逃げる脚を止め大蛇を見据える。 「嘘じゃないわ」 「だって僕は、本当に愛されていると感じていた」  大蛇とザムは見つめ合う。沈黙が、ザムの自信を揺らいだ。  愛されてると思ったのは、驕りだったのか。 「バカね、どうして信じるの……」  大蛇がずるりと距離を詰める。ザムは反射的に飛び退いた。  どん、と背中に何かがぶつかる。振り返れば、そこには少し前までティリカと同様人の姿であっただろう怪物がいた。  毛むくじゃらの怪物は、ザムの姿を見とめると獲物を見つけたと言わんばかりに腕を振り上げ……。  ザムの体は宙を舞い床に叩きつけられた。  それは毛むくじゃらの怪物によるものではなく、大蛇の尻尾によるものだった。  そして大蛇は、ザムの代わりに毛むくじゃらの怪物の牙の餌食となっていた。 「ティリカーーーっ!」  ザムは叫んだ。大蛇は徐々にティリカの姿に戻り、力なく笑う。 「バカはあたし。財産だけ愛してりゃこんなことにならなかったのに。いつの間にか、あなたのこと……」 「わぁあああっ」  ザムは毛むくじゃらの怪物に立ち向かおうと立ち上がる。  が、何者かに羽交い締めにされるように止められた。 「この状況で勝ち目はありません。一旦逃げましょう。教団本部まで」  喰人としての素質を持ちながらも契約者に恵まれず、薔薇十字教団に属してはいるが未だ浄化師としての活躍をしていないユディアス・アリトニウスは母の知人が開催したパーティーに、亡き父の代わりに母のパートナーとして参加していた。  その矢先、旅の楽師が起こした騒動に巻き込まれ、母を安全な場所に避難させた後、なんとか近くにいた1名だけを助け出し教団本部へと馬を急がせた。  その1名が、ザム・ガネスである。  ザムはすぐに医務室へと送られて手当を受けている。 「ぼくの見たところ、旅の楽師2人は魔女だと思う」  と、ユディアスは司令部に報告した。 「あれは変化系の魔法で、その人の心にある負の感情を怪物の姿にしているようだ」  急ぎ現場へ向かい魔女を討伐しなければならないが、任務に当たる浄化師もその魔法にかかる可能性は大きい。 「己の、そしてパートナーの心にある負の部分を知り、それをどうにかして打ち破ることができなければ、討伐は難しい」  ザムは、自分があの時一瞬でもティリカを疑わなければ、あのような事態になる前に彼女を元の姿に戻せたかもしれない、と後悔しているそうだ。 「魔女本体は、さほど強くなさそうだった。あの変化系の魔法以外は使えないんじゃないかな。魔法さえ打ち破ればなんとかなるのでは。といってももちろん、油断は禁物だけどね」  病床のザムからは、正式に討伐依頼がなされたらしい。ユディアスは言った。 「ぼくはこのとおり、浄化師としては役に立たない歯がゆい身分だ。申し訳ないが、この件の解決は皆にお願いしたい」
【魔女】宵夜の魔女と朝焼けの魔女
とても簡単|すべて

帰還 2018-11-16

参加人数 5/8人 GM
「この指令は、ようは巡回だ。ただ、普通の巡回はと少し違うから、注意してほしい」  ロリクが渋面を作った。  それは魔女からカードが送られてきたそうだ。  【今宵、私は歌います。どうか、誰も邪魔しないで。ただ夢を見たければいらっしゃい】    カードには「宵夜の魔女」と名前が記されている。調べによるとこの魔女は隠遁派で、歌に乗せて魔力を放出し、幻惑を見せることを得意とするという。  ただ過去に魔女狩りで最愛の「朝焼けの魔女」を失い、ずっと隠れ続けていたそうだが今回怨讐派たちの計画に隠れて自分の魔法を使用することを決意した。  一晩中歌い続け、怨霊たちを使役し、朝を迎える、そのとき――失った彼の魔女が死ぬまえに残した魔法を完成させ、発動させる。  朝焼けの魔女が残したのは――大量の悪霊のエネルギーを消費して完成させる幻影だそうだ。  決して攻撃的なものではないが、その魔法がどんな風に作用するのかは魔法を施した、彼の魔女しかわからない。  さらに宵夜の魔女の魔法は幻惑であり、多くのハロウィンを楽しむ人々が被害にあう可能性がある。  浄化師たちにはその被害をとどめるために魔女の歌う地区を巡回するのだ。  魔女はブリテン地区のエクリヴァン観劇場の奥――既に捨てられた石作りの舞台の上で歌うという。  演目  第一幕 「歌しか知らず、けれど愛に生きた」  第二幕 「報復は煉獄の炎、我が心に宿るは奈落」  第三幕 「選びとりし命、選ばぬ道の果て」  第四幕 「貴方のいない朝と夜を、私は進む」  終幕  「沈黙。或いは踊り手は誘う」 「この魔女は、人を食らうつもりはないようだが……これによって人が惑わされて死のうが、他の魔女がそれで悪さしても知らんと思っているんだろう」  迷惑な話だとロリクはため息をついた。 「これらの演目をたった一人で歌い上げるそうだ。この歌が終われば、宵夜の魔女は朝日を浴びて死ぬと決めているそうだからお前たちが手を汚す必要はない。なんでも、朝日を浴びることができないそうだ……ただなぁ。これ、お前らも問答無用でその歌の影響を受けるってことだから、注意しろよ? つまり夢を見るのさ。どんな夢を見るんだろうな。じゃあ、がんばれよ?」
秋風注意報!!
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帰還 2018-11-15

参加人数 5/8人 阿部 ひづめ GM
「ぶえっくしょい!」  すれ違いざまに、派手なくしゃみの音が聞こえました。つづけて今にも呼吸困難になってしまうのではないか、と心配になるほどのせきこむ音。  だんだん肌寒くなってきた今日この頃、薔薇十字教団本部のあちこちからは、こんな風に鼻をすする音やせきこむ声が聞こえてきます。  そうです、秋は風邪の季節なのです。いくら浄化師たちといえども、病ばかりは防ぎようがありません。今週は特にみんなが風邪をひいてしまっていて、本部としても頭をかかえているような状況です。  聞くところによると、なんとあなたのパートナーも、秋のいたずらにすっかりやられてしまったそうです。  たんなる風邪だとは思いますが、少し心配ですね。  こんなことではベリアル退治もままなりませんし、パートナーの部屋まで様子を見に行ってみましょう。  普段お世話になっているお礼に、懇切丁寧な看病をする、はたまた弱っている姿を観察するだけでも構わないでしょう。  せっかくお見舞いに行くので、パートナーが喜びそうな料理やお土産を持っていくのもいいかもしれません。  いずれにせよ、風邪をもらわないように注意しながら行動しましょう。  あんまり接近してしまうと……あなたも秋風のとりこになってしまうかもしれません。  
【魔女】アクイの魔女
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帰還 2018-11-12

参加人数 4/8人 GM
 浄化師たちがその屋敷に訪れると、無数の死人が折り重なりあい、呪いとなって怨嗟をこだましていた。 「1011ページ、魔法における基本式による世界の真理へ」  朗々と読み上げる声が聞こえてくる。  床に書かれた魔方陣と輝く魔結晶。  灯される蝋燭が揺れる。  いくつもの薬品の匂い。 「996ページ、魔法における基本的創造における、すなわち……やぁ、待っていたよ。君が生贄だね。彼を呼ぶにはまだ命が足りないんだ。  もうハロウィンなのにね。ちょうど頭の足りない子供たちがいたずらをはじめる、それにボクも参加するつもりだよ。  とびっきりの悪戯さ。ようやく彼の器になるものを見つけたから、ハッピーハロウィン」  アイボリー色の髪を揺らして、十にも満たない少女は微笑んだ。 ● 「今回は完全に討伐だ。捕えるのは難しいから、とりあえず見つけた瞬間に殺すつもりでいけ。じゃないと死ぬぞ」  受付口で物騒なことを口にされて浄化師たちは困惑する。 「相手は魔女だ」  ここ最近魔女たちがきな臭い動きをしているのはすでに浄化師たちの耳にはいっていた。  魔女の動きの牽制や計画を潰すことをやってきた。  その魔女の名前はアクイの魔女。  アイボリー色の髪に、真っ白いドレス、赤い頭巾を頭からすっぽりとかぶった十歳くらいの娘だそうだ。  彼女はハロウィンになると小さな村を一つ、必ず潰す。一人残らず殺し、その近隣の山に住む生き物も殺し尽くしてしまう。 「なんでも儀式なんだそうだ。この魔女は、毎年、ハロウィンの季節に儀式を行う。本人が言うには異界の門を開くための儀式だそうだ」  彼女の痕跡を辿れば、彼の魔女の研究は――異界へと至る門を開くこと。  その魔女曰く、ハロウィンの時期は死者と生者境目が曖昧となるらしい。  この時期に膨大なる死人を作り出し、呪いと悪霊を使役し、さらには動物の骨を媒介になにかを召喚としているそうだ。  しかし、それが成功したためしは今のところない。  そもそも、異界などというのは子供の信じる夢物語ともいえる。なぜ魔女がその妄執に囚われ、毎年、毎年、繰り返すのかは不明だが。  事前にアクイの魔女の目撃情報を元に数名の浄化師がその屋敷を訪れ――殺害された――体の一部だけが残されていた。  そのあと調査を行いに数名で屋敷に訪れ、いくつかの資料を見つけ出した。 「今年はこの魔女は教団の料理長を狙っている」  彼女の残したいくつもの研究資料にはギヨーム・フエールの写真やどこからどこからか採取したらしい毛があった。  狼の牙 999個  魔結晶 68個  アシッド 浄化師16体分  人間の半分 ×××個  ――ギヨーム・フエール  器を使い、異界×××を×××。        待っていて、待っていて、待っていて、銀狼、銀狼×××、ボクが必ず。          君を×××!      魔法における基本的創造概念における。        すなわち。アーク。演算a??a-?a???。  君の名をボクが。 「この魔女は自分の妄執に囚われ、そのためだけにしか動けない。  ……ギヨーム氏には、その日は安全なところにいてもらう。そしてかわりにギヨーム氏がその日、どこにいるのかの嘘の情報を流す。お前たちはそれを迎え撃つ。  一晩時間を稼げばいい。そうしたら魔女は来年までは大人しくなるはずだ」 ● 「鉄よりも、強くしてあげよう」  口笛のような、潰れたウタを口にする。  それが彼女の魔力の具現化。  そして歌うように告げる。 「羽よりも早く」  ぶち、ぶちぶち。アイボリーをひきちぎり。 「アドレナリンの増幅による戦闘能力の向上を! 魔法とは幻想? 違うよ。科学だよ。何かを行えば必ず変化し、すべては決められてかえってくる反応。  そしてそれにおける結果。だから今度こそ成功するんだ。……ボクの愛しい銀狼、君のための器を用意しよう。  さぁ、グラディウス、スクートゥム、ウンブラ。ハッピーハロウィン。ギヨーム・フエールを殺してボクの元へと持ってきておくれ。  ボクはね、悪意の魔女。浄化師は僕のことをこう言い変えた、愛食いの魔女、と。  ギヨーム・フエール、君は銀狼となって僕のことを食べるんだ。ああ、はやく、はやくボクのことを食べておくれ、愛しい銀狼……!」
飛べ!新型気球!
とても簡単|すべて

帰還 2018-11-12

参加人数 2/8人 春川ミナ GM
「親方! ついにできました!」 「おおお! これでオレの夢が叶う!」  ここは教皇国家アークソサエティ・ソレイユ地区、見通しの良い麦畑が広がるのどかな地。その一介にある小さな工場。  そこに二人の人間が感極まったように肩を叩きあっている。 「これは大ニュースになるぞ! 今までの気球は蒸気機関で空気やガスを温めなければいけなかったが、火を扱う以上事故も多かった。だが、これなら……」  親方と呼ばれた男性は大きな布の塊と人が三人は優に乗ることができそうなゴンドラを見やる。 「はい、この材質には苦労しました。ニホンからワシと呼ばれる丈夫な紙、そしてカキという果物から取れた果汁と糊を組み合わせたものを布の内部に貼りあわせて……」 「ああ、ニホンから来たって言う刀鍛冶師が教えてくれたんだったな。だが、まずは試験飛行が必要だ。だが……オレとお前ではいかんせん人手が足りん。なので教団を巻き込もうと思う」  刈り込んだヒゲを撫でながら親方は教団本部がある首都エルドラドの方向に顔を向ける。その顔と腕は小さな工場を自分一人で育て、守ってきた貫禄が感じられた。 「……そうですね。飛行型ベリアルの危険性が無いとは言い切れません。オレもベリアルに家族を殺されて……。親方がオレを庇って逃げてくれなかったら今頃……イデッ!」 「バーカ。めでてえ時に湿っぽい話すんな! お前の父には借りがあるんだ。それにお前が来てからオレの仕事場がしっちゃかめっちゃかで気の休まる暇も無かったんだからな!」  ガハハと笑いながら弟子の頭を軽く小突く親方。その拍子に弟子の帽子がずれ、まだ少年と言っても過言では無いあどけなさを残した顔が露になった。 「……ありがとうございます。オレ頑張ります!」 「おうよ! んで、中に入れるガスは用意してあるな? 水素でも良かったんだが、あれは爆発するととんでもないからな」 「はい! 親方に言われた全く新しい気体です。……でも良かったんですか? これ、まだ市場にも出回っていないものですが。その為に親方は奥さんの形見を……」  そう言うと弟子の少年は横に置いてある鉄製の大きなボンベを見る。厳重に封がされており、蓋も溶接されている。 「……良いんだ。アイツも気球の完成を心待ちにしていたからな。それにこれでニュースになれば簡単に買い戻せる! 失敗はできねえから気合入れろや!」  親方もどこか遠い目で萎んでいる気球と物々しいボンベを交互に見た。 「はい! じゃあ教団に護衛を頼むんですか?」 「いや、どうせならお祭り騒ぎにしてしまおうと思ってな。希望する奴らを乗せてやれば皆も笑顔になるんじゃねえか?」 「……と、言うと?」 「コイツには三人乗れるがエクソシストをパートナーと二人で乗せれば楽しんで貰えるんじゃねえかなと思ってな。幸いここは見通しの良い麦畑だ。危険は少ないと思うし、ベリアルが来ればすぐに迎撃できる。地面は比較的柔らかいし、もし落ちても怪我は少ないだろう。んで、教団の人員で見張りを頼んで俺達は気球に結んだロープが外れないように、いや、事故が起きない様に万全の体制で当たる。どうだ?」  ゴンドラの様子を確かめながら親方が話す。 「良いですね! 空の旅……とまではいきませんが、普段と違う景色で風や景色を楽しんで貰えればオレも楽しいです!」 「ああ! オレ達二人で新しい時代と忘れられない思い出を作ってやろうじゃねえか!」  少年と親方は拳をトンと打ちつけ合うと、笑いあった。  ここは小さな村の小さな工場。厳しい男だがとても温かく愛情に溢れている親方と、よく学び、よく働く少年が暮らす家。  二人の期待を一身に受けた気球と共に夜は更けていく。
【魔女】災厄の双子
普通|すべて

帰還 2018-11-11

参加人数 5/8人 鳩子 GM
 肥沃な農業地帯ソレイユ、その片隅にある小さな農村モワソンでは一年で最も晴れがましい祝祭がはじまろうとしていた。  小さな噴水のある広場には、橙や紫のガーラントで飾り付けられた屋台が賑々しく立ち並ぶ。葡萄に梨、真っ赤な林檎。よく肥えた鹿や野兎の肉。秋の実りをふんだんに使った料理の数々――そして忘れてはならないこの時季の定番、かぼちゃのおばけがそこかしこで笑っている。  日頃は知った顔ばかりの静かな村ではあるけれど、収穫祭で華やぐこの季節だけは観光客の姿もある。  それだから、今年で十二歳になる果樹園の娘ポレット・トーは、屋台を順繰りに眺めている見慣れぬ二人組を見ても、何の警戒心も抱かなかった。ひときわ艶の良い林檎を選び取って、声を掛ける。 「こんにちは、お姉さんたち。モワソンへ、ようこそ! わたしのお父さんが育てた林檎はいかが? 甘酸っぱくてとってもおいしいの」 「あら」 「可愛い売り子さんね」  幼い客引きに、二人の女性は愛想よく微笑んだ。  向き合って初めてはっきりと見て取れたその顔がそっくり同じなので、ポレットは心の中で密かにびっくりした。  癖のない、長く伸ばされたプラチナブロンド。一人はゆるく三つ編みにしてリボンを結び、もう一人は顔のサイドに雫型の赤い石が揺れる髪飾りをつけてあとは背中に流している。長い睫毛に縁どられた双眸は切れ長で、プラムみたいな淡紫色の瞳。よく見れば着ている服もそっくり同じ、お揃いだった。黒葡萄色のマーメイドドレスはところどころに銀の糸で刺繍が施されて、きらきらと輝いている。つんと尖った耳からすると、エレメンツなのだろう。 (きれいな人たち……夜の女王さまみたい)  こんな農村ではお伽噺の中でしか見ることのない煌めいた雰囲気に、ポレットは思わず見惚れて顔を赤くした。 「美味しそうね」 「ええ、とっても。あなたの好きな梨もあるかしら」  女性たちは林檎を受け取って、楽しそうに笑う。子供であるポレットが相手では無視されてしまうことも多いが、これなら買ってもらえそうだ。 「あ、あのっ、梨もあります。今年は、すごく甘い実がなって……」  ポレットが言うと、双子は揃って目を輝かせた。 「素敵!」 「収穫しなくちゃ!」 「え?」  ポレットが訝しく首を傾げた矢先――どごんっ、と凄まじい衝撃音がした。動揺した男女の怒声と悲鳴が交錯する。不意に足元が不確かになった。 「な、何が起きたの?!」 「隕石でも降ってきやがったのか」 「お、おい、地震だッ」 「違う……うそだろ、地面が……浮いて……!」  呆然とするポレットの目の前で、双子は少女のような仕種で口元に手を当て、くすくすと笑っている。 「さあ、収穫しましょう」 「お仕事の時間よ、可愛いゴーストたち!」  その声を契機に、地面が唸った。  石畳がひび割れ、裂け目から暗紫色の靄が毒ガスのように噴出して渦巻く。靄は錯綜する人々の間をびゅんびゅんと飛び回ると、あっという間に広場にいた村人たちを幾つかの塊に拘束してしまった。  靄には触れないのに、逃げられない。怖気がぶるぶると背筋を震わせる。  おぉぉぉおおおぉおぉぉ……。  瞬く間に、広場はゴーストの慟哭に包まれていた。剥がれた大地がさながら巨人のお盆の如く、料理や果物の屋台を乗せたまま空中に浮かび上がっている。 「ま、魔女だ……!」  叫んだ声は、この村の教会を管理する司祭のものだ。  魔女――本来、竜やピクシーといった存在のみが扱えるはずの魔法を使う突然変異の種。かつては魔法使いと呼ばれ敬われていたが、アレイスター・エリファスが考案した魔術の普及と入れ替わるようにしてその存在は次第に貶められ、最終的には魔女狩りなる大迫害にまで至った。非難、困窮、飢え。追い詰められた魔法使いたちは、当初は大半が謂れなき風評であった悪い噂を裏づけるように行状を悪化させ、弾劾に拍車をかける。  一度はじまった負の連鎖は、そうそう止まらない。  そうしてある時、ひとつの村が魔法使いによって滅ぼされ、住人たちはただ殺されたのではなく魔法使いによって『食べられた』のだということが判明する――その瞬間に、人々の畏敬を集めていた魔法使い像は完全に消滅し、人を喰らう邪悪なる魔女像が確立したのだった。  まじょ、と繰り返したポレットの目の前で、どこからともなく降ってきたオレンジ色のもの――南瓜が司祭の脳天に直撃した。司祭の頭部ががくりと落ち、こめかみを赤いものが伝う。 「そう呼ばれるのは好きじゃあないの。ごめんなさいね」 「わたしはジゼル」 「あたしはクロエ」 「ちゃんと名前があるのよ」  双子の魔女は同じ声で交互に喋る。 「わ、わたしたち、食べられちゃうの……?」  悪い子は魔女に食べられちゃうわよ――この村では誰しもが皆、一度は言われたことのある言葉だ。  ゴーストに拘束され顔を真っ青にしたポレットの呟きを、意外にも双子は否定した。ポレットの父が育てた林檎にキスをする。 「うん、良い香り……安心して、お嬢ちゃん。わたしたち、人間なんて食べたことないわ」 「あたしたち、美味しいものや綺麗なものが好きなの」 「他のみんなは、どうして人間を食べようなんて思ったのかしら」 「人間なんて食べなくたって、食べ物はこんなに沢山あるじゃない」 「それを奪えばいいのよ!」  最後はふたつの声がぴったり重なった。 「わたしたちだって、魔法が使えると言うだけで沢山奪われてきたんだもの」 「だから、今度はあたしたちが奪う番」 「これでおあいこね!」 「おあいこよ!」  そこらじゅうを埋め尽くす禍々しい悪霊とは裏腹に、双子はどこまでも無邪気で、それがかえって恐ろしい。  しらずしらず、ポレットは懇願していた。 「ころさないで、おねがい」  楽しいお祭りのはずだった。みんなで美味しいものを食べて、歌って、踊って、そして一日が終わってしまうのを惜しみながらベッドで暖かな眠りにつくはずだった。そんな幸福な日々はもう永遠に戻ってこないのかもしれない。悲しみがひたひたと押し寄せてくる。  泣きはじめたポレットの頭を、ジゼルは尖った爪の先でさらりと撫でた。 「泣くことは無いのよ、可愛いりんご娘ちゃん」 「あたしたち、壊すのは得意でも作るのは苦手なのよね」 「だから、素敵なものを作ってくれるあなたたちが必要だし、あなたたちのことが大好きよ!」 「今ここにあるものは全部あたしたちが貰っていくけど、またがんばって作ってね」  離れたところから、何か大きなものが倒れたり壊れたりする音が聞こえてくる。広場から四方八方に飛んで行った悪霊が、他の村人たちをも拘束しようと襲っているらしい。教団に救援を、と誰かの叫ぶ声が聞こえ、そして途切れた。 「教団は怨讐派の相手で忙しいと思うけど……」 「もし来られたら、ちょっぴり厄介ね」  急いで収穫しましょう、と魔女は頷き合う。 「ジゼル、あたし、ドレスを見繕ってくるわ」 「クロエ、わたしの分もお願いね。新しい髪飾りが欲しいの」  魔女の一人が、悪霊の波に乗ってふわりと宙を移動する。それを見送ってポレットたちの前に残った魔女ジゼルは、真っ赤な林檎をひとくち齧った。 「ふふ……可愛い小さなお嬢ちゃん、あなたのお父さまが作った林檎、とってもおいしいわ!」
【魔女】秋のファッションショー
普通|すべて

帰還 2018-11-11

参加人数 3/8人 留菜マナ GM
 ここは、教皇国家アークソサエティの西部に位置する、巨大都市エトワール。  エトワールの中心街にあるリュミエールストリートから少し外れた場所にある公園では、一つのイベントが開催されようとしていた。  多くの人々で賑わうその場所のあちらこちらに、一際目を引く『秋のファッションショー』のチラシが踊っている。  しかし、大手ファッションショップ「パリの風」の近くにある貸衣装店では、想像を絶する噂が語られていた。  『ファッションショー』に出演依頼を頼んでいたモデル達の中に、魔女がいるという噂が流れたからだ。  魔女はエレメンツと変わらない容姿を持ち、人では使うことができない魔法を行使し、また、人を喰らう存在として人々から恐れられている。  だが、モデル達はエレメンツが多く、魔女であるのかは判別することが難しかった。  秋の結婚式をテーマしたファッションショーの開催の一報は、結婚式に憧れている、これから結婚式を迎える貴族や市民達から大いに歓迎された。  また、ファッションモデルが、観客に向けて投げる秋の花のブーケを目当てに訪れる来訪者達も多く見受けられる。  既に、エトワール以外の各方面にも宣伝しており、予約チケットは完売していた。 「これだけ盛り上がっているのに、中止にするわけには……」  悲壮感を漂わせてつぶやくのは、イベントの運営責任者だ。 「教団に、ファッションモデルについて相談してみませんか?」  進退極まった店内で、イベントの進行スタッフが運営責任者に提案したのは、なりふり構わない直接的な手段だった。 「浄化師にお願いするのか?」 「はい。浄化師が出演していると聞けば、魔女も迂闊に行動を起こさないはずです」  運営責任者の疑問に対して、スタッフが冷静に分析する。 「来てもらえるといいのだが……」  運営責任者は最近、人々から語られていた浄化師達の活躍と人気を思い返しながら深刻そうにつぶやいた。  ――以下は、ファッションショーに出演する女性モデル達の間でひそかに交わされた会話である。 「魔女、本当にいるのかしら?」 「さあ、ただの噂じゃない?」 「でも、これってお客様からの情報でしょう?」 「私、プリムが怪しいと思う」  女性モデル達は興味津々で、モデルの中でも目立つ女子の名前が次々と挙がる。  女性モデル達が騒いでいる中、最初に発言した女性モデル――ローズは人差し指を立てると、きょとんとした表情で首を傾げてみせた。 「あの、そう言えば、どうしてそのお客様は、私達の中に魔女がいるって思ったのかしら?」 「――っ」  その言葉を聞いて、嫌な予感が女性モデル達の胸をよぎった。 『ファッションショーに出演するモデルの中に、魔女がいる』  その情報は、やっぱりおかしいのではないかーーと。  もしかしたら、そのお客様が魔女なのかもしれない。  ファッションショーのチラシを見つめながら、女性モデル達は漠然と消しようもない不安を感じていたのだった。
【魔女】街は橙(だいだい)、夜は黑
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帰還 2018-11-11

参加人数 8/8人 桂木京介 GM
 オレンジと黒、ふたつの色に街が埋まる夜がある。  ハロウィンだ。  日没とともに喧噪がみるみる失せて、ひやりと冷たい秋風が吹く、そんなこの時期だというのに、今夜だけはそんな寒さ静けさとは無縁といえよう。  カボチャランタンのオレンジ色、コウモリと夜の黒、ふたつの色が街を惑わせる。  そんな幻惑のこの夜を、あえて惑うもいいものだ。おっかなびっくりあるいは堂々と、物見遊山しようじゃないか。  舞台はエトワールの中心、憧れのリュミエールストリート!  通行人は思い思いの仮装に身を包む。あなたとパートナーも今日は特別、一夜限りの変身を楽しんでみるのはどうだろう。  ハロウィンは無礼講、ボヌスワレ・ストリートで朝が白むまで、飲み明かし踊り明かすのだって自由だ。  裏通りスターダスト・ルージュに、アダルトな出逢いを求めてもいいだろう。きっと今夜ばかりは、恋の神もずいぶんとガードが緩くなっているにちがいない。  大衆食堂『ボ・ナ・ベティ』だって、今夜ばかりはハロウィン仕様、パンプキンパイをつつくも良し。  猫カフェ『ミネ・アンジェ』? なんとここですらハロウィンなのだ。ニャンたちの仮装が見られるかもしれない。  エクソシストだからってためらうことはない。幻惑の夜の参加には、資格も制限もないのだから。  さあ、楽しもう!
【魔女】お味はいかが?
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帰還 2018-11-09

参加人数 4/8人 あいきとうか GM
 台車にカボチャプリンをつめた小瓶を並べ、調理室から搬出しようとしていた教団寮食堂の料理人見習いは、後ろから声をかけられて振り返った。 「はぁい。それ、なに?」 「カボチャプリン。やっと納得できるものができたからな、浄化師たちに配ろうと思って。ハロウィンっぽいだろ?」  制服ではなく、ローブに身を包む彼女は果たして誰だったか。  しばらく考え、料理人見習いは思い出す。世俗派の魔女のひとりだ。よく食堂で本を読んだり、くつろいでいたりする。  確か、エイバと呼ばれていた。 「ハロウィンねぇ。これ、普通のカボチャプリン?」 「いや、厳選したカボチャ農家から仕入れた……」 「要は普通のカボチャプリンね」 「……まぁ」  手間暇かけて作った料理なのだが、言ってみればそれだけの、驚嘆するような細工もないシンプルなカボチャプリンだ。不承不承ながら青年は頷く。 「匙。ちょうだい」 「食うのか? うまいぞ?」 「私じゃなくて。ポモナ、サウィン!」  ちょうど食堂に入っていこうとした二人の少年を、エイバが呼びとめた。  つんのめるように立ちどまった二人がそれぞれ返事をしながら、小走りで駆けてくる。 「こんにちは、エイバさん。料理人さん」 「よっ」 「二人とも、このプリンを食べてみなさい。ただし、天井を見ながらね」 「は?」 「え?」 「天井?」 「いいから食べる。天井を見ながら」  蓋をとったカボチャプリン入りの小瓶と、菓子と一緒に配るために用意してあった小さな木匙を少年たちに渡し、魔女は促す。  青年と少年たちは首を傾けた。  やがて、ポモナとサウィンはおずおずとカボチャプリンを口に入れて、 「まずい!」  声をそろえる。  料理人見習いが凍りついた。 「なんか……あじがしない……」 「口のなか、すっごいきもちわるい!」 「そんなはず!」 「黙って。落ち着いて。じゃあ今度は、互いの顔を見ながら食べなさい」  少年たちは思い切り嫌そうな顔をしたが、エイバの無言の圧力に屈し、渋々と二口目を食べた。  今度は、互いをしっかりと見て。  ぱくり、と。  ぱぁっと音が聞こえてきそうなほど、ポモナとサウィンの表情が輝く。 「おいしい!」 「でしょう?」 「あまい! カボチャのあじだ!」 「おいしい~!」  大はしゃぎする子どもたちを横目に、若き料理人見習いは眉を寄せた。 「……どういうことだ?」 「魔法をかけたの」  なんでもないことのように魔女は言う。いつの間に、と料理人見習いは頬を引きつらせた。 「別に悪い魔法じゃないわ。相手の顔を見ながら食べたら、自分が相手のことをどれくらい好きか分かるってだけよ」 「……んん?」 「つまりね」  天井を指さして、魔女は得意げに説明する。 「ポモナとサウィンは天井に対して愛情なんて抱いてないでしょう。だから味がしなかったの。でも、互いのことは大好きでしょう? だから、相手の顔を見ながら食べたら、とっても甘くておいしかったの」  エイバの白くて細い手が、カボチャプリンと木匙をとった。  蓋をとり、ぽかんとしている料理人見習いの顔を見ながら、食べる。 「少しだけど、甘いわ。私、あなたのこと嫌いじゃないみたい」
【魔女】見習いくんのささやかな悪戯
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帰還 2018-11-09

参加人数 4/8人 あいきとうか GM
 朝食時を過ぎたころ。  薔薇十字教団本部は、ちょっとした騒ぎに包まれていた。 「……それで、どういうことです?」  司令部棟の会議室の一室。  ライカンスロープの司令部教団員は、困り切った顔で椅子に座る少年を見下ろしている。  ずいぶん長くうつむいていた彼は、やがて腹をくくったように顔を上げた。大きな目には涙がたまり、唇は震えていたが、それでもしっかりと説明する。 「ポモナがよなかに、おりょうりつくるところに、はいって、カボチャに魔法をかけました」 「はい」  ポモナというのは魔女見習いの少年の名前だ。説明をしている彼もまた、魔女見習いである。  二人の差異といえば、片や元は怨讐派だったがわけあって逃走、教団に保護を求めたこと。片や世俗派の魔女の血を引く者として、教団に保護されていたこと、だろう。 「その……魔法は、犬の耳としっぽをつける、というもので」 「どうしてそんな魔法を……。というか、犬じゃなくて狼なんですけど……」 「じょーかしのみなさんは、ハロウィンなのにあそびもしないで、はたらいてるからって……」  身を縮める少年が、ちらりと視線を逃す。  病棟の方を見たのだと、司令部教団員は気づいた。まだうまく魔法を扱えないポモナは、カボチャに悪戯をして、その反動で熱を出して朝から寝こんでいる。 「まぁ、確かに。街はお祭りムードですが、浄化師の皆様は忙しくされておられますね」  怨讐派の魔女が悪事を働こうとしているからなのだが、それを少年に告げるのは酷だろう。  自分たちが浄化師の仕事を増やしている、と罪悪感でますます落ちこみかねないし、たったひとりで友の罪の告白をしにきた少年は、もうそのことに気づいているかもしれない。 「いぬになったら……やすめるんじゃないかって……」 「私は猫になっているのですが?」  ふらりと司令部教団員の細長い尾が揺れる。  黒狐のライカンスロープであるはずの彼女は、三角の猫耳と長い猫の尾を獲得し、代わりに寝起きの際にはあった耳と尾を失っていた。 「あ、おおかみやキツネは、ねこになるらしいです」 「うーん……」 「ポモナ、ほかの魔法はぜんぜんつかえないのに、すがたを変えさせる魔法だけはとくいで……」 「そうですか……」 「たぶん、ゆうがたにはもどるんですけど……」 「夕方……」  頭を抱えた彼女は、でも、と疑問に眉を寄せた。 「どうして魔法にかかった方と、かかっていない方がいるのでしょう?」 「その件についてだが」  扉が開く。妙に楽な格好をした男の姿を視認し、司令部教団員はとっさに少年を背にかばった。 「あーはいはい警戒しないで。俺です。教団寮の料理人見習いさんです」 「……あ」 「思い出したか? あの服着てないと分からんよな。ごめんな。あれで動き回ると怒られるんだわ。あと、もうひとつ謝らせて」  きょとんとする二人に、彼は勢いよく頭を下げた。 「この事件、俺にも責任があります。ごめんなさい」 「どういうことです?」 「あんた、朝食のデザートのカボチャプリン、食べたか?」 「え? ええ、甘くておいしかったですよ。カボチャの味もしっかりしてて」 「そうか。あれ、俺が作ったんだよ。ところでプリンが入ってた容器に蓋がついてただろ? 何色だった?」 「……赤、だったような」 「あたり。もしくははずれ」  視線で詳細を求める彼女に、料理人見習いは後悔いっぱいのため息を吐き出した。 「実は今、カボチャプリンの試作してて。今朝出したのは試作品。で、実は三種類あった。カボチャを三軒の農家から仕入れてたんだ。どのカボチャが一番、プリンにあうか知りたくて」 「はぁ」 「そのうち二軒は昨日の昼間にカボチャを届けてくれたんだけど、一軒だけ、馬の調子が悪かったとかで、教団に届いたのは夜中だった」  見習いであるからこそ、料理人の朝は早い。  夜中まで待たされた彼は、涼しくなってきたし一晩くらいなら大丈夫だろう、とカボチャを調理室の隅に放置して退室した。  その直後、ポモナが侵入。目についたカボチャの山に魔法をかけ、部屋に戻って発熱。  早朝になり、料理人見習いはそれに気づかないまま、カボチャプリンを作った。 「最初に届いたカボチャで作ったプリンには青。次は緑。夜中に届いた分には赤の蓋をつけて、どれが一番おいしそうに食べられてるか、こっそり見るつもりだったんだ」  ところが。  赤い蓋がついた――変身の魔法がかかったカボチャで作られたプリンを食べた人々が、三十分ほどで姿を変えてしまった。 「俺がカボチャをきちんと仕舞うか、しっかり戸締りしてたらこんなことには」 「ちがいます! ぼくがもっとポモナを気にしてたら……!」 「……言い争っても仕方ありません。事情は分かりました。サウィンさんはポモナさんについていてあげてください。料理人さんは持ち場へ。私は、このことを上に報告してきます。被害にあわれた皆様には、念のため、教団内で待機していただきましょう」  苦笑した司令部教団員は、まぁ夕方に戻るらしいし、ちょっと黒猫になっただけだし、たまにはいいかと、事態を受け入れることにした。
【魔女】スナック『マリアの夜』 酒の魔女
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帰還 2018-11-09

参加人数 4/8人 GM
 指令を終えた夕暮れ。  ようやくレポートを出して帰れる、と思ったその矢先に、ぐいっと襟首をつかまれた。 「では、ゆくぞ、可愛い子らよ」  ユギルさん!  なんですか、いきなり! も、問答無用だ。これ! 「なに、新しい指令じゃ。働け社畜」  な、なんだと!  連れてこられたのはリュミエールの通りの端っこにちょこんと位置するスナック【マリアの夜】。季節感のためか、かわいらしいかぼちゃがついている。  ドアを開ければ、そこはお面と仮装をつけた人、人、人……! 「今月まで仮装と仮面つきのお祭りでのう。客は多ければ多いといいそうじゃ。吾も仮装をして楽しむつもりじゃ」  なんと。  すると奥からむきむきの二の腕がいつも素敵なマリアママが――真っ赤なドレスに尖がり帽子のお姿で、あ。エプロンしてる。 「やだぁん、きてくれたのね。ありがとう。今月はお店でお祭りなのよん。新作のかぼちゃ関係の食べ物もあるから試食よろしくね。あ、そうそう、はい」  渡されたのはお面とカード? 「お客様はみんなお面をつけて正体を隠して遊ぶっていうのがお祭りのテーマなの。仮装衣装もあるわよぉ。かっこいいのから色気むんむんまで。素性を隠していろんな人と遊びなさい。あ、そのカードはね、最後にダンスするのよ。そのカードの相手とよ~」 「ほれ、魔女のことであれこれとある。これはその一環。指令は指令、金も出る。仕方成し、仕方なし」  そうか、魔女対応としては仕方ない。このパーティを全力で楽しむしかないのか! 「そうよぉ。そのためにママ、がんばってお料理してイベントを用意したのよぉん。ほらぁ、楽しみなさい? そうしたらおブスの魔女を牽制できるんでしょ? がんばりなさい~」  ママがわざわざ用意してくれたんだし! 「さて、酒じゃ、酒。ママ、とりあえず、ニホン酒の【大魔王】と狐の衣装を頼む。む。狐では芸がない? むむ。では……少し遊ぶか。なにに化けるか? 内緒に決まっておろう?」  さて、夜もお祭りもはじまったばかりだ。  どうしよう。
真夜中の配達人
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帰還 2018-11-06

参加人数 4/8人 海無鈴河 GM
 とある民家。  その窓辺に置かれたベッドの上に、少女が座っていた。  彼女の名前はエリサ。病気がちで、あまり外に出られない少女だった。  エリサは窓越しに、星の煌めく夜空を見つめ、ため息をついた。 「今日も……あの人は頑張っているのかしら」  彼女には恋人がいる。今年になってとある新聞社に勤め始めた、新米の記者だった。  新聞社に入る前は、具合の悪いエリサを心配して毎日のように顔を出してくれていた。  しかし、今は毎晩遅くまで仕事に追われているという。  エリサの元に姿を見せるのも、週に一度あるか無いかという具合だった。  エリサは枕元に置いてあった新聞を手に取る。  今日の新聞にも、彼の書いた記事がしっかりと載っていた。 「ずっとやりたい仕事だ、って言ってたものね」  エリサにとっては、彼の夢がかなった事や彼の記事が人の目に触れることが自分の事のように誇らしく思えていた。  それでも。 「……少し、寂しいわ。それに」  寂しさもそうだが、こうも連日連夜働き続けていては、彼の体調も心配だった。  具合が悪くなっていないか、ちゃんとご飯は食べているのか。そんなことを考え、エリサは不安に駆られた。  そこで、エリサは思いついた。あの人にプレゼントを作ろうと。  エリサは何か良い物が無いか、と考え『星のランプ』と呼ばれるお守りを作ることを考えた。  贈りたい人のことを思いながら、一針一針縫った小袋に、何種類かの花やハーブを詰めたお守りで、彼女が母から教わった物だった。  夜になると中に入れた花が発光することから、『星のランプ』と名前をつけた。 「意味は……『貴方の健康を祈っています』。これなら意味もぴったりだし、私にも作れるわ。……でも」  彼女には懸念点があった。  ひとつは、材料が集められないこと。  『星のランプ』を作るには、『彼の好みそうな色合い』の布と、『スターフラワー』という花が必要だった。  しかし、彼女の体ではそれらを全て集めることは難しかった。  もうひとつは、彼に届けることができないこと。  忙しい彼は、今度いつ自分の元を訪れるのか分からない。  しかし、彼の職場である新聞社に行くことも、彼女には困難だった。  困った彼女は、教団に依頼を出し、プレゼント作りを手伝ってもらうことにしたのだった。
ワスレモノの湖
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帰還 2018-11-05

参加人数 8/8人 GM
「今回の依頼はアークソサエティに住むエレメンツが比較的多く住んでいる森の集落に行ってのまぁ現地調査といったところだ」  指令発行を行うロリクは顎を撫でながら説明を続けた。  人間、他種族と関わることを好むエレメンツやピクシーが住むその集落には、多くの魔術に関わる者が訪れる。  そのためだろうか。いつからか不思議な現象が起こるようになったのだという。 「ここにワスレモノの湖というところがある。お前たち、会いたいのに、もう会えない相手っていうのはいるか? 浄化師だものな、いるだろう。一人や二人」  会いたい相手は死者でもいい、まだ生きている相手でもいい、もう顔から忘れてしまった相手でもいい。  ただ一つの条件は「会いたいけれど、もう会うことが叶わぬ相手」。  多くのエレメンツやピクシー、さらには魔術師や浄化師たちが訪れ続けた結果、魔力を宿らせた湖は年に一度、  月の美しく、大きく見える夜の間だけ、自分の会いたい人に会うことが出来るとされている。  それゆえ訪れる者はこの湖をこう呼ぶ――ワスレモノの湖。 「長い年月をかけて魔力をためた湖が見える幻ともいえるんだが」  心の底から望んだ相手――たとえもう顔すら忘れていても、湖は訪れた者の記憶や想いを読み取って、完璧に相手を再現してくれる。  たった一晩だけ。  君たちの切実な気持ちに応えて現れる、たった一人、忘れることのできない、会いたい相手。 「ただし、その現れた相手は言葉を口にしたりすることはないし、動くこともない。ただ会うことが出来るだけだ。  ああ、それに魔力の作用なのかカメラや絵で記録として残すことも出来ないそうだ……その土地に住むエレメンツが言うには、これは湖の慈悲なんだという。  生者は変わっていくが、どうしても心残りや吐き出したい気持ちを抱えているならば、せめて一晩、それを吐き出すチャンスを作るっていう。  今回はその湖でお前たちは会いたい相手に会う、そしてどう過ごすのも自由だ。まぁ体験レポートだな」  ふふっとロリクは笑ったあと。 「まぁ……こういう指令だ。いろいろと思うところはあるだし、どうしても、報告したくないことは報告しなくてもいいぜ」
【魔女】お菓子をくれなきゃ
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帰還 2018-11-05

参加人数 4/8人 十六夜あやめ GM
 薄花色の秋空の下。『教皇国家アークソサエティ』全域は、ハロウィンムードに彩られていた。『エトワール』の中心街にあるメインストリート、リュミエールストリートでは街路樹が赤や黄色に衣替えし、街の至る所にかぼちゃの中身を切り抜いた顔の置物やコウモリを模った紙や金属の看板を掲げていた。露店ではハロウィン仕様のカボチャ料理やスイーツがたくさん売り出されている。オバケや十字架の貴金属も売られていたり、頬や腕や足などに様々な要望に応えて絵を描く変わったお店もあった。それが意外と人気らしく、若者を中心に長い行列になっている。  外を歩く人の服装は夏に比べて落ち着いた色が増えた一方、仮装をして楽しんでいる姿もあちこちに見受けられた。年齢層は幅広く、皆がこのハロウィンというイベントを楽しんでいた。エクソシスト達も異常がないか巡回しつつ、ハロウィンムードを楽しんでいた。  陽が落ち、空が夜色に染まっていく。街中にロウソクやランタンの灯りが燈り、ハロウィンムードはさらに盛り上げを増していた。そんな人々が集まる中心街に突如現れた一人の幼女。体にそぐわない大きめの黒衣を纏い引きずり、右手に仄暗いランタンを灯し持ち、逆の手には何も入っていないバスケットを持っている。サイズの合わない帽子を深々と被って歩く姿はとても可愛らしく『魔女』のようだった。だが、あまりにも幼い容姿に誰も本物の魔女だとは思ってもいなかった。 「トリック・オア・トリート!」  幼女に話し掛けられた一人の女性。女性は「なあに?」としゃがみ込んで幼女と目線を合わせる。 「お菓子をくれなきゃイタズラするよ!」  きらきらと輝くまん丸い瞳にふわふわと靡く繊細な長い銀髪。袖から手が出ないのか、黒衣と一緒にバスケットを差し出している。全てが可愛らしい幼女に女性はポケットから飴玉を取り出した。 「んーあなたの様な可愛らしい女の子にイタズラされるのも楽しそうだけれど、やっぱりイタズラは勘弁してね」  バスケットに飴玉を入れた。すると幼女は嬉しそうに笑顔で頭を下げた。その時、被っていた帽子が落ちてしまった。咄嗟に幼女は帽子を拾い上げて走り去っていく。 「……いまの尖った耳、もしかして本物の魔女!?」  女性は怖くなり、急いで巡回中のエクソシストに先程あった話を説明した。  エクソシスト達に緊急の招集が掛かり指令が発令された。  指令内容は、容姿は幼くまだ危険対象にならない可能性が高いが、念のために見つけ出して混乱を避けたい狙いがある。見つけ次第、一時的に教団で保護し『世俗派』か『怨讐派』を聞き出す。手荒な行動は控えつつ、交戦状態になった場合のみ捕縛を許可する。というものだ。  盛り上がりを見せるハロウィンイベント。混乱を避けるためにもエクソシストの方々お願いします!
【魔女】かぼちゃづくし!
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帰還 2018-11-04

参加人数 3/8人 茉莉 GM
「えーと、何だったけ、トリックオアトリート、って言うんだったかな」  扉の向こうで、浄化師達を出迎えたのは、南瓜人間でした。 「今月より司令部配属となったトウヤだ、よろしくお願いするよ」  突然の南瓜人間の出現に、怪訝な表情を浮かべる浄化師達。  そんな浄化師達の鈍い反応に、トウヤと名乗った青年は渋々といった様子で頭に被った南瓜を外した。 「貴様、まさかその被り物気に入っておったのか……」  トウヤの後ろで顔を引きつらせるデモンの男に「可愛いだろう?」と、トウヤは笑顔を返す。 「ハロウィンといえば南瓜だそうだね、何でも南瓜をくり抜いて祭事用の灯篭を作るそうじゃないか」  トウヤの目は輝いている。  よく見ればトウヤの抱えている本には「わくわくはじめてのハロウィンパーティ」なる題名が見えたような気がする。 「こやつ、つい先日ハロウィンなるものの存在を知ったらしくてな」  エンジュ、と短く名乗った鬼人はどこか疲れた表情を浮かべた。 「そやつが浮かれ気分のまま、その場の勢いだけでハロウィンの用意した結果があの様よ」  エンジュが顎で指した先を見ると、そこには南瓜があった。  そしてその南瓜の横には南瓜。  上には更に南瓜が積まれており、すぐ隣の机の上には大小様々な南瓜が所狭しと並べられ── 「これ、目を逸らすでない」  司令部の一角を占拠している南瓜達の姿に、浄化師達は思わず踵を返そうとする。 「いやー、気合い入れすぎちゃって」  参ったねと、然程困った様子もなく笑みを浮かべるトウヤに、エンジュは深い溜息をつきながらこめかみを押さえる。  何となくエンジュの日頃の苦労が垣間見えたような気がして、浄化師達はほんのちょっとだけ同情した。 「ハロウィンに南瓜は欠かせん、それは分かる。しかしいくら何でもこの量はまずい」  エンジュの言葉に浄化師達は頷く。  現に司令部の皆さんも、司令部の一角を占拠する南瓜達に行く手を阻まれ些か居心地が悪そうにしている。 「……という訳でだ、この南瓜をお前達の手でらんたんとやらに加工するなり、調理するなりして減らして貰いたい」  浄化師達は互いに顔を見合わせる。  そして南瓜の山に視線を向ける。  この南瓜達、結構な数ありますけど本当に減らせるんですかね?  南瓜の山を前に、浄化師達の顔には不安が浮かぶ。  これでも頑張って減らした方だとエンジュは言うのだから驚きだ。 「作業場として食堂の一部の使用許可は取っておいた、加工や調理したものは我々が責任を持って近隣の祭り会場に届けよう」 「まあせっかく用意したんだ、好きなだけくり抜いて行ってくれ」  トウヤは再び南瓜を頭に被り、微笑んだ。  南瓜で全く顔は見えないが、微笑んだ。
【魔女】幻惑に咲く魔女
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帰還 2018-11-01

参加人数 7/8人 留菜マナ GM
 流れ出る血は止まらない。  その日、魔女リアンは、魔女メイカをかばって死んだ。  雨に打たれ、灰色に濡れた体はついに動くことを諦める。  それは、世界の端っこで起きた小さな悲劇。  だけど、リアンの友人であるメイカにとっては何よりも堪えがたい事実だった。  大切な人を失ったメイカは、苦しそうに顔を歪める。  浄化師達による捕縛から辛くも逃げ出した後、息も絶え絶えのメイカは地べたに這いつくばった。 「リアン! リアン!」  メイカはリアンの頬に手を触れると、もう二度と目覚めることのない彼女の意識に何度も呼びかけた。  魔女はエレメンツと変わらない容姿を持ち、人では使うことができない魔法を行使し、また、人を喰らう存在として人々から恐れられている。  魔女リアンは数多くの人々を喰らい、あまたの村を焼き払った。  そのため、浄化師に捕縛の指令が下されたのだった。 「絶対に、リアンを死なせたことを後悔させるんだから!」  メイカは復讐を誓った。  しかし、リアンとは違い、メイカが使える魔法はただ一つだ。  そして、それは呪いにも等しい魔法だった。 「絶対に許さないんだから!!」  悲鳴にも近い慟哭を上げた後、メイカはそのまま力尽きて地面に崩れ落ちる。  メイカによって放たれた魔法は、彼女が死んでもなお、教団で発現した。 「おい、そろそろ部屋から出てこいよ。寮母さんが困っていたぞ」  その日、いつまで経っても部屋から出てこないパートナーに業を煮やして、あなたは寮母の許可を得て、パートナーの部屋へと赴いていた。  残酷なほどに穏やかな空気が流れる部屋には、あなたとパートナーしかいない。  ベッドに横たわるパートナーは、体調が悪いのか酷い顔色だった。  パートナーの様子を見て、あなたは不安そうにつぶやいた。 「具合、悪そうだな。今日は休んだ方がいいんじゃないのか」 「なんで」  泣き出しそうに歪んだパートナーの顔には、はっきりと非難の色が浮かんでいた。 「なんで私、浄化師になったんだろう?」 「突然、どうしたんだよ?」  悲しみのこもった涙が頬に流れる中、パートナーは躊躇うようにこう続ける。 「私、魔女を――リアンを死なせた浄化師なんて嫌い! 出て行って!」 「おい、なに言って……?」 「出て行ってよ!!」  まるで追い詰められた獣のような剣幕だった。  あまりに強く激しいパートナーの拒絶に面食らい、あなたは心底困惑した。  パートナーの身に、何か異変が起きている。  それだけをかろうじて察したあなたは、身体を震わせるパートナーに手を伸ばす。 「本当にどうしたんだよ……」  あなたの疑問に、パートナーは答えない。  ただ、怯えたように、パートナーの表情は硬く強張るだけだ。  あなたが仕方なく、パートナーの部屋から出ると、他の部屋でも同じような現象が起こっていた。 「確か、魔女リアンって、司令部で捕縛の指令が出されていた魔女の一人だよな……」  別の浄化師達が指令を受けて、魔女二人の拘束に赴いた。  しかし、その際の戦闘で、魔女は二人とも死亡したという報告を聞いている。 「魔女リアンについて調べてみるか」  そのとらえどころのない意味深な言葉が、取り乱したパートナーの行動とともに、妙にあなたの頭に残ったのだった。
【魔女】ハロウィンに街で合コン
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帰還 2018-11-01

参加人数 8/8人 春夏秋冬 GM
 ハロウィン。  それは仮装とお菓子の祭典だ。  正式ないわれはあるのだが、今ではお祭り騒ぎのひとつとして、様々な催し物が開催されていたりする。  いまリュミエールストリートで行われている物もそのひとつ。  それがリュミエールストリートを使っての合コンだ。  リュミエールストリートに仮装姿で赴いて、同じく仮装姿の相手に声を掛け。  相手がその気になれば、お喋りやちょっとしたお買いもの。  気が乗れば、食事にお酒。  その先は、お互い合意でひとつよろしく。  言ってみれば、気軽なナンパとデートの場を提供するということだ。  もっとも、あくまでも同意の上の話。  リュミエールストリートに店を構える商店としても、野暮でつまらぬ輩はお断りと、冒険者達を雇って周囲を警護して貰っている。  なので安全が保障される中で、ちょいと浮かれた気持ちで訪れる者も多い。    カフェテリア「アモール」では、カボチャのラテアートを楽しむカップルが。  大手ファッションショップ「パリの風」では、様々な仮装姿を楽しみ、時にねだられる光景も。  フリーマーケット「オルヴワル」では、お菓子の屋台や魔女やカボチャの人形など、ハロウィンにまつわる物が売られている。  飲み屋街「ボヌスワレ・ストリート」に目を向ければ、明るく楽しく飲んで騒ぐ者達も。  そんなリュミエールストリートで行われている、ハロウィンにかこつけた合コンに浄化師達は参加することに。  もちろん指令である。  理由は一つ。魔女のテロを防ぐための抑止力としてだ。  魔女の過激派である怨讐派が、ハロウィンに人食いをするべく動き出した。  それを防ぐために参加するよう指令を受けたのだ。  もっとも、警護が厳しいリュミエールストリートに魔女が来る可能性は低いので、盛り上げも兼ねて楽しんでくるようにとのお達しが。  そうしてアナタ達はリュミエールストリートでの合コンに参加している。  魔女が居ることに、気付けぬまま。 「貴女が生きて帰って来れて、本当に好かったわ」  魔女アルケーの言葉に、魔女セパルは返す。 「ありがとう」  2人が居るのは、臨時で設置されたオープンカフェ。  合コンで立ち話というのも味気ないので用意された物のひとつに、ウボーとセレナという名前の男女2人と共に居る。  合計4人。  穏やかにお茶をしながら、その場に居た。  燃えるような赤毛をしたアルケーは、友であるセパルに言った。 「それにしても、相変わらず無茶をするわ。教団に直談判しに行くなんて」  いま彼女が口にしたのは、セパルが教団に赴き、教団「室長」であるヨセフ・アークライトに会いに行ったことだ。  これにより、魔女の過激派である怨讐派のテロ行為が事前に伝わり、現在は浄化師による抑止が行われている。 「ごめんね、心配させちゃって。でも、必要な事だったから」  セパルの言葉に、変わらぬ穏やかな笑みを浮かべたままアルケーは返した。 「気を付けてね。貴女が殺されでもしたら、私は怒りで爆発しちゃう」  爆炎の魔女とも呼ばれるアルケーに、セパルは変わらぬ笑顔で返す。 「気を付けるよ。それにしてもアルケー、キミは他の怨讐派の子達と一緒には行動しないんだね」 「ええ。だって、子供を食べるって言うんですもの。ダメでしょ、そんなの」  どろりとした濁りを瞳に宿し、アルケーは続ける。 「子供を殺すだなんて。そんなの、アイツらと一緒だわ」  夫と子供を魔女狩りで殺されたアルケーは、断言するように言う。 「私たちは魔女だもの。魔女狩りをした人間なんかとは違うわ。だから、参加しないことにしたの」 「これからも?」  セパルの問い掛けに、アルケーは笑顔で返す。 「心配しないで。少なくともここで、私は何も出来ないわ。この距離なら、私が何かするよりも早く、首を刎ねるぐらいは出来るでしょう?」 「嫌だよ」  セパルは即座に返す。 「君を死なせたくないし、殺したくない。そんなことのために、教団に連れて行かれそうになったキミを助けた訳じゃないよ」  これにアルケーは、これまでとは違う、泣きそうな表情を一瞬だけ浮かべ返した。 「冗談よ。私も貴女に殺されたくないわ。それに、私の復讐は終わってるもの」  お腹に手を当てながら、アルケーは続けて言った。 「でも、復讐できずにいる子達や、心の整理がつかない子達は違うわ。殺そうとするでしょうね」 「だから止めたいんだ、アルケー。キミなら、他の怨讐派の子達の動きを知っているんじゃないかな?」  これにアルケーは、微笑みを浮かべながら応えた。 「居るわよ、ここに。若い子達を、ここに連れて来てるの」 「それは知ってる。だからこっちも、世俗派の若い子達を連れて来てるんだ」  多くの人々でごった返すリュミエールストリート。  ここに何人もの魔女が訪れていると、セパルとアルケーの2人は言っている。  だが、それは問題ではなかった。 「大丈夫よ。怨讐派に居ると言っても、あの子達は人間を傷付けられないわ」 「だろうね。でも、止めてくれる誰かがいなきゃ、どうなるか分からない」 「だから、世俗派の若い子達を連れて来たの?」 「そうだよ。それに――」  セパルは信じるような笑顔を浮かべ言った。 「浄化師の子達も、ここには来てるんだ」 「……浄化師が、助けてくれるというの?」 「違うよ。ここに魔女が来てることは伝えてないから。でも、間近で浄化師を見ることが出来るチャンスだよ」 「それで何かが変わるかしら?」 「分からない。でも、切っ掛けにはなるよ」  セパルは、リュミエールストリートを歩いている魔女達と、浄化師達に視線を向け言った。 「知らなきゃ、何も変わらないよ。魔女の中には、浄化師を殺し屋みたいに思ってる子もいるからね。身近で見れば、自分達と同じだって、思えるかもしれない」 「……そうね。そうなれるなら、良いわ」  静かにアルケーは返し、セパルと同じように若い魔女達と、そして浄化師達に視線を向けた。  そうした中、アナタ達はリュミエールストリートでの合コンに参加しています。  魔女が居ることも、魔女に見られていることも知りません。  ですがアナタ達が、アナタ達にとっての日常を過ごしている所を見ることで、若い魔女たちの意識が変わる切っ掛けになるかもしれません。  そのためにも、リュミエールストリートでのハロウィン合コンを楽しんでください!
くっついちゃったの!
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帰還 2018-10-30

参加人数 8/8人 GM
 これは、どういうことなんですか。ウィリさん! 「えーと」  ちゃんとした説明求めますよ?  「五徹キメて作業するのはよくないと思うザマスよ」  ごもっとも! あんたなぁ! これどうするんだ!  現在、浄化師たちの手と手はがっつりとくっついていた。  指が絡み合い、しっかりとつながっている状態。恋人繋ぎである。  ことの発端は、さまざまな道具を作ることを生業としている魔術鍛冶職人ウィリが「ちょっとめんどくさい液体作ったザマス、悪いザマスが、瓶にいれるの手伝うザマス」といったので、彼の作業室に訪れて仕方なく手伝った。手伝ったはいいのだが……。 「あっ」  ウィリがそう呟いた瞬間、思いっきりこけた。それを助けようとしたのが運のツキ。  ウィリの手にもっていた液体がかかったのだ。  そうして、現在に至る。 「怒らないでほしいザマス。一時間もしたら自然と外れるザマス」  え、まって。一時間はこのまま? 「そうザマス」  きりっとした顔で言い切られた。 「ちなみに、そのくっついちゃーうの液にはいろいろなものがはいっているザマス」  ネーミングセンスないなぁ。ウィリ。 「うるさいザマス! 聞くザマス。それには惚れ薬の成分もはいってるザマス! 惚れ薬の成分っていうのは、つまりは脳の誤作動を起こすもの。手を繋いでいるだけでどきどきしてしまう、相手を意識してしまうそういう成分ザマスっ」  お、おう。 「一時間も手を繋いでいたら、もうキスしたくなるほどに相手が愛しくなるザマスよ」  ……ちょっとぉおおお! 「えへザマス」  こ、こいつ、悪いと思ってない。絶対に悪いと思ってない! 「実際、キスしたくなるかとか思わず告白しちゃうのかは個人差があるザマス。  薬の効果が本当にきくのかもぶっちゃけ試作品なのでわからないザマス。全然作用しない可能性もあるザマスし、効果抜群の場合もあるザマス」  え、えー。 「まぁ、これ、最近嫁に構われないから強制的にくっつきたいとか泣きついてきた狐面の浄化師の依頼ザマスが」  なんだろう、誰が依頼者か、すげー想像ができる。え、薬の効果っていうのは。 「今回、薬をつくるのに使用したニムファの幻覚作用を持つ成分が惚れ薬的なアレとして使用できるかの実験も兼ねているザマス。  ようは、幻覚作用でくっついている相手がすごく素敵に見えるザマス。相手に一ミリ単位も関心がなければ、まぁかっこよく見えてどきどきするなぁ程度ザマスが、実は好意を無意識にも持っていたらもう世界はきらきらするし、一つ一つの動作にときめいて胸が苦しくなるザマス。だから恋愛要素なんてないと本人同士が思えばたいした効果はないザマス」  は、はぁ。 「一時間後にはなんでときめいていたのかと思う程度ザマス」  もし、好意を持っていたら? 「どきどきし続けるザマスね。無意識でも持っていたならもう大変かもしれないザマス、きっと」  ひぇ。 「なーんて、嘘ザマス。手が離れたあと、じわじわと薬の成分が抜けて落ち着くザマスよ。そんなわけでたいして害はないから安心するザマス。僕は眠いので寝るザマス。おやすみザマス」  え、えええ! 「一時間、どう過ごすかは好きにするザマス。あ、結果はレポートをまとめておくザマス。研究の足しにするざま……すやぁ」  言うだけ言って毛布にくるまって寝やがったよ、こいつ!
【魔女】甘いのとイタズラどっちがお好み?
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帰還 2018-10-30

参加人数 6/8人 せあら GM
 エントランスの前に二人の男女の姿があった。  一人は茶色の柔らかい髪を編み込みした小柄な少女で、もう一人は銀色の髪の真面目そうな青年だった。  少女の名はきらら。  青年の名はジオニード。  この二人は先日とある事件がきっかけで浄化師になったばかりの新人の浄化師だった。  きららはエントランスに貼られている依頼を凝視していた。  依頼の内容は首都エルドラドにある一つの大きなホテルでハロウィンパーティが行われると言うものだった。  このホテルはエルドラドの中でも有名なホテルらしく、毎年この時期になるとホテル内の会場でハロウィンパーティが開催されていた。  ホテルの経営者がいつも教団側にお世話になっているので日頃の感謝の意味も込めて、今年は浄化師達もハロウィンパーティに招待するとの事だった。  ハロウィンパーティには豪華なお菓子とご馳走が出るらしく、パーティに必要な衣装からメイク、髪のセットまでホテルのスタッフに申し出れば全て用意して貰えると記載されていた。  ハロウィンパーティは貸し切りでは無い為他の貴族の客達も来るようで、その子供達に向けたちょっとしたイベントが行われているようだった。  仮装した子供達から「トリックオアトリート」と言われたらお菓子を渡すと子供達は喜び、渡さないと顔にラクガキをされると言う悪戯をされてしまうのだ。  それはハロウィンパーティに参加する為には例え子供達に悪戯をされても怒ってはいけない事が参加条件として依頼内容に記載されていた。  きっと子供に向けたイベントだからなのだろう……。  悪戯をされて怒ってしまっては子供達が可哀想だし、何よりハロウィンパーティのイベントの一貫だ。  そしてパーティの夜にはホテル内で部屋に宿泊出来るらしかった。  出される料理の他に酒も出るらしく、いくら飲んでも大丈夫なように、もしくはパートナーと特別な一日を過ごせるようにとホテル側が配慮をしてくれたものだった。 「ジオニードさん、わたし……」 「分かってる。これに参加したいのだろう」 「凄いですね! どうしてわかったのですか!?」  ジオニードの顔を見て驚くきららにジオニードは小さく苦笑した。 「そんなにガン見していたら誰だって分かるだろう。お前はとくに分かりやすいからな」 「むぅ。わたしそんなに分かりやすいですかねぇ」  少しだけ唇を尖らせるきららにジオニードは 「ああ。分かりやすいよ」  と、そう答える。 「わたしこれに参加して他の浄化師さん達と仲良くなりたいんです。わたしまだ同じ浄化師の友達がいないから……」  少しだけ寂しそうに小さな声できららは言う。 「なら参加しょう」 「え?」 「参加して他の浄化師さん達と仲良くなりたいんだろう? これに参加して友達を作ったらいいんじゃないだろうか。それに私達は契約をしたばかりだ。ここで……その二人の思い出を作るのは悪くはないかと思うのだが……」  ジオニードは何処か少しだけ気恥しそうに言った。  だが彼の僅かに別の意味を含めた言葉に、鈍感なきららは気づきもしないで馬鹿正直に彼の優しさだと受け取ってしまった。 「ジオニードさん、有難うございます。では早速申し込みにいきましょう!」  そう言いながらきららはジオニードの手を引き、その場から離れて行ってしまった。  その数分後。  エントラスト内に貼られたハロウィンパーティの依頼を見て、あなた達は内容を確認した。  そして申し込みをする為にその場から動いたのだった─────。
【魔女】eat! eat! eat!
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帰還 2018-10-29

参加人数 3/8人 ナオキ GM
 人々から愛され続け、今なお大いに盛り上がる行事が年に数回、存在する。  とはいえ、それらの行事が始められた頃と比べれば、その意味合いは多少変動したり忘れ去られたりしていくものだ。  元々は悪しき者たちを祓う宗教的要素の強かったおどろおどろしい夜も、今ではすっかり仮装を楽しむ祭りとなってしまった。  確かに非日常な催しを心から堪能する生き物のエネルギーは、悪霊だなんだを退散させるに相応しい眩しさを持ってはいるのだろう。  そんなハロウィンには、もうひとつ、大切な要素があった。  即ち秋の収穫祭である。  今年の作物の無事の収穫を祝う為、というよりは、無事に収穫出来たことを祝う祭りという意味合いが大きくなり、こちらもまた在り方そのものは変わってはいるものの、兎に角食に感謝する祭りとしてその姿を残していた。 「今年もいろんなお店が参加してくれてるみたいねー」 「ね! 本当に楽しみ!」 「まあ、この夜のせいで確実に体重は増えるんだけどね……」  来るハロウィンの夜に向け着々と準備を進める市街地を、ヒューマンとエレメンツの少女たちが胸を躍らせて歩いて行く。  彼女らが行くメインストリートの左右。  色とりどり――だが定番カラーの紫とオレンジと黒が目立つ――の屋台やイベントテントが精力的に設置され始めていた。  モンスターのようなメイクを体験出来る会場もあれば、通例通りにお菓子と悪戯が横行する会場もある中、ここでは当日の正午から夜中の12時ぴったりまで、秋の味覚がそれこそ腹一杯無料で楽しめるイベントが開催される。  参加条件は、仮装していること。  少女の一団もその仮装の為の布地や化粧類を買いに向かうところだった。  りんご、ぶどう、梨、柿、栗、さつまいも、カボチャにキノコなどなど。  それらを普段はレストランやケーキ屋を切り盛りしている顔見知りのシェフたちが、腕を揮って調理する。  例えば、肉に垂らすソースやパイやスープやプリンやケーキなんかに。  そうして舌鼓をうった参加者たちは、これだと思った店に一票だけ投じるのだ。  日付が変わったあとに開票され、見事一位になった店とそこに食材を卸した農家は今年の『ハロウィン・マスター』として表彰される。  料理を供する側はもちろん一位を獲る為に本気になり、そして食する側も全身全霊で料理と向き合う白熱した時間になるのが毎年の光景だった。  好き嫌いのある子どもも、この一夜を境にして苦手だった野菜を食べられるように、なんてことも珍しくはない。  折角だからたくさんの味を楽しみたいと欲張ってしまうのが生き物の性であり、それ故に体重を気にする女性は板挟みとなってしまう罪作りなイベントでもあるのだが。 「でもやっぱりさ、普段おまけしてくれるパン屋さんとかにちょーっと贔屓しちゃうじゃん?」 「あー、一昨年だっけ? 自分の家が大家族だからっていーっぱい他から親戚呼んでズルして失格になった店もあったねー」 「うん。だからあれでしょ。今年からは公平な立場の票として薔薇十字教団の人たちも呼ぶんだって」 「わあ、エクソシストってこと? 確かになんか、あの人たちって食べても太らなさそう!」 「ていうかたくさん食べられそうじゃない?」 「いいな~」  羨ましい、と盛り上がりながらとある手芸屋に入って行った少女たちの背中を眺め、哨戒中だった歳若い祓魔人と喰人は無言で顔を見合わせた。  種族にもよるが、別にエクソシストは必ずしも食べても食べても太らない体質、ということもなければ、胃袋のサイズも個人差がある。  収穫祭に招待されている至って普通のふたりは、そっと制服の上から己の腹部に手を当て、せめて当日の仮装の衣装はウエストが苦しくならないデザインにしよう、と密かに決意した。
【魔女】ずっといっしょに
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帰還 2018-10-26

参加人数 4/8人 あいきとうか GM
 おとなたちの声がする。扉に耳をあてる少年に、その会話はほとんど理解できない。  感じとれるのは不穏な空気。おとなたちは話を続けている。少年が悪戯をしたり、勝手に練習途中の魔法を使ったりしたときと同じような、怒りがにじむ声だった。 「世俗派」「裏切り」「始末」「浄化師」「教団」。  暗い部屋の空気を揺らす単語のいくつかを、少年は知っている。  少年はそうっと扉から体を離した。身分の高いおとなたちは、あの部屋で話しあいをしている。  他のおとなたちは、子どもたちが寝ている部屋を回っているだろう。きちんと眠っているか、悪夢を見ている子はいないか、確かめているのだ。  少年は枕や日中に盗んでおいた予備の毛布を使い、ベッドに細工をしてきた。きっと、揺すられない限りバレない。  用心深く外に出る。厚い雲が月を隠してくれていた。おかげで真っ暗だが、好都合だ。 「まってろ、サウィン」  大好きな友だちの名前を口に出すと、勇気が出た。闇で作ったような森も凶悪な野生動物も魔物も、ちっとも怖くない。  少年には魔法がある。遠くに――「教団」に行ってしまったサウィンに、絶対に会うのだという意思がある。  おとなたちが追いかけてくるかもしれない。たくさん叱られるかもしれない。考えただけで震え上がったが、少年は奥歯を噛み締めて堪えた。  だって。  おとなたちの勝手でおれとサウィンは引き離された。引きずられるように連れていかれたサウィンは今、教団にいるはずだ。 「すぐに、あいにいくから」  怨讐派とか世俗派とか、魔女とか浄化師とか、教団とか裏切りとか。  そんなもの、少年とサウィンの友情にまったく関係はなく、二人を遠ざける理由になんてならないのだから。 「ポモナ?」  教皇国家アークソサエティ、エトワール地区リュミエールストリートを、母と手をつないで歩いていた少年は目を見開く。  リュミエールストリートはハロウィンらしい飾りつけが行われ、一歩進むのも大変なほど、仮装した多くの人々で賑わっていた。  森の中で生まれ育ち、ほとんど出歩くことなく、ひたすら室内で魔法の研鑽に励んできた少年は、絢爛たる光景に少し怯えている。 「どうしたの? サウィン」  きょとんと母が問う。目立たない格好の、まだ若い女性だ。  その正体は、教団に助けを求めた世俗派に属する魔女のひとりだった。 「うーん……」  サウィンは目を擦る。人と人の間にポモナの姿を垣間見た気がしたのだが、そんなことあり得ないと、少年はよく知っていた。  母や自分が属する世俗派と、ポモナが属する怨讐派は、現在、喧嘩の最中らしい。ポモナとはもう会えないとサウィンは聞かされていたし、一晩ずっと泣きじゃくって、どうしようもないということを受け入れ始めていた。  しかし。 「あ……っ!」  また見えた。今度は見間違いじゃない。 「こら、サウィン!」  母の手を振り払い、サウィンは走り出す。 「ポモナ! ポモナってば!」  声の限り叫んだ。体力があまりないサウィンの息はすぐに上がる。耳のすぐ近くに心臓が移動したみたいだった。ばくばくとうるさい。 「まってよ!」  苦しさと嬉しさで涙が出た。走るポモナを見失わないよう、何度も袖でしずくを拭う。  聞き分けのいい子の振りをして、諦めたつもりだった。  どうしておとなたちの喧嘩に、ぼくたちが巻きこまれないといけないのかと、本当はずっと怒っていたし、悲しかったし、くやしかった。 「ポモナ!」 「……サウィン?」  光と喧噪あふれるリュミエールストリートの外れ。人気のない夜の街の片隅。  月を覆っていた雲が、見えざる手に引き千切られるように分かれる。秋の月明かりは少し冷ややかだった。  ようやく足をとめたポモナは、森の中を走ってきたのか泥だらけだ。魔法も使ったのだろう、顔色がよくない。  十歳に満たない少年たちはまだ、上手に大気中の魔力を扱えなかった。 「ポモナぁ……っ」 「サウィン。よかった、あえた!」  二人は抱きあい、わぁんわぁんと大声で泣いて再会を喜んだ。  しばらくそうして、涙がとまり始めて、ふとポモナは首を傾ける。 「そういえばここ、どこだ?」 「……え?」  周囲を見回したサウィンは、まったく知らいないところにいると気づいて、青ざめた。
ドラゴンと模擬決戦
普通|すべて

帰還 2018-10-26

参加人数 2/8人 内山健太 GM
「なぁ、人間って本当に強いのか?」  そう言ったのは、竜の渓谷にいるドラゴンである。  竜の渓谷――。  「ドラゴンの最期の地」と呼ばれる自然豊かな渓谷で、ドラゴン達が穏やかに生活をしている場所である。  時刻は午後九時を少し回ったところ。すでに渓谷は静まり返っており、時折吹く風が妙に心地いい。  ドラゴンの横には、一体の老ドラゴンの姿があるこのドラゴンこそ、竜の渓谷に住まう老ドラゴンである。  老ドラゴンは少し考え込んだ後、切れ長の瞳を空に向けながら質問に答える。 「人間は強いかか……。それはお主の方が詳しいのではないか?」  すると、ドラゴンは笑みを浮かべ、 「俺の方が詳しい? なぜそんな風に言う?」 「人間は時としてドラゴンを襲う。それはお主も知っているだろう」  ドラゴンは魔術の道具として利用できる側面がある。  基本的に、この竜の渓谷は関係者以外立ち入り禁止されているが、中にはその掟を破り、ドラゴンの密猟を試みる不届き者がいるのも事実である。  人間の中には、ドラゴンを捕獲し、魔術道具にしようとしている。中には腕の立つ魔術師もいて、ドラゴンを苦しめるのだ。  その事実を、老ドラゴンは知っている。だからこそ、頭を悩ませているのである。 「確かに人間がドラゴンを捕獲しようとしている事実を知っている」  と、ドラゴンは告げる。  その発言には全くうぬぼれが感じられずに、極々自然である。  「なら」老ドラゴンは言う。 「人間の能力を知っているだろう。人間の存在は確かに脅威だ。しかし、ドラゴンには遠く及ばない。それが人間の限界だろう。  もちろん、子供のドラゴンが狙われる場合は別だ。子供のドラゴンは戦闘力が低いから、人間に殺される場合もある。  だが、お主は別だろう。お主は強いドラゴンだ。人間に遅れは取らない」 「もちろん、それはわかっている。俺は人間には負けない。だがな、気になるんだよ。本当に俺よりも強い人間がいないのか? ってな……。  どこかに俺を負かすような人間がいるのではないか? そんな風に感じるのだ」  ドラゴンの思惑が、いまいち見えてこない。  老ドラゴンは眉根を寄せながら、どう答えるべきか迷っていた。  このドラゴンと付き合いは長い。しかし、すべてを知っていると言えばそうではない。  このドラゴンは穏やかな性質を持っているものの、戦闘能力は高く、老ドラゴンも一目置いているのである。 「お主は何が言いたいのだ?」  老ドラゴンは正直に告げる。  すると、ドラゴンはケラケラと笑い、大きな体を揺り動かした。 「俺の望みは一つ。強い人間と戦いたい」 「強い人間と? なぜ戦う?」 「人間の戦闘力を見てみたいんだ。奴らの中には魔術が使える者もいる。そういった人間の中には、俺よりも強い奴がいるんじゃないのか?  俺は自分の力を試していたいのだ。本当に強い人間に勝てれば、俺はこの渓谷を守り抜ける。  管理するのはお前の仕事でもあるが、ドラゴン自身も戦うべき時があるのだ」  竜の渓谷は基本的にリントヴルム一族と、その協力者であるデモンが中心に守護しているものの、彼(ドラゴン)も、防衛活動に携わっているのである。 「なるほど。私はお主が人間に後れを取るとは思えない。しかし、自分の力を試したいという気持ちは理解できる。よろしい。一つ骨を折ろう」 「相手を探してくれるのか?」  と、ドラゴンは興味深そうに告げる。  老ドラゴンは一呼吸を置くと、ゆっくりとドラゴンを見つめた。 「薔薇十字教団。お主も知っているだろう?」 「エクソシストか……。まぁそれなりに知っているが」 「エクソシストは強力な能力を持つ。お主の相手としては不足ないだろう。連絡については、ワインドに相談をして、教団に連絡してほしいと頼んでみよう。  ドラゴンを手合わせしてみたい人間を募集する。いくらか集まるだろう。戦う場所は草原がいいだろう。広々として模擬決戦にはうってつけだ」 「エクソシストと戦闘か……。それは楽しみだ」 「満足か?」 「うむ、自分の力を試せそうだ。これはお互いにとっていい訓練になるだろう」  ドラゴンとエクソシストの戦闘。  模擬決戦という名目であるが、激戦が予想される――。
竜と誼
簡単|すべて

帰還 2018-10-26

参加人数 3/8人 oz GM
「僕はウーベ。君たちに竜の渓谷のことで集まってもらったんだけどー、お願いしたいことがあるんだー」  ウーベと呼んでいいよ、と朗らかに言った男は丸まると太った体型で動く度にお腹がぽよんぽよんと揺れた。  ウーベルト・テルミンはどこもたっぷりと贅肉がついていて、顔も丸く二重顎でたぷたぷしている。天然パーマの金髪はふわふわとしているのと同じように話し口調もゆるふわとしたものだった。 「僕、他の部署だったんだけど、人手不足で引っ張られてきたんだー、これから何度か顔を合わせることもあるかな~? そのはずー、多分? まあいいや、とりあえずよろしくねー」  司令部の人材不足を垣間見た浄化師の無言が深くなったが、ウーベルトは気にした様子もなくマイペースに話す。 「竜の渓谷から依頼があったんだー、君たちも知っての通り、先の終焉の夜明け団の事件があったよね~。今後もそういったことが起こらないとも限らないから警備体制を考え直すそうだよー」  間延びした口調の割には内容はしっかりしたものだった。 「竜の渓谷の住人ではない外部からの視点で意見が欲しいだって~。実際に竜の渓谷に視察に行ってもらって、体感したことを報告書にまとめて欲しいんだよー」  つまり、ウーベルトの話を纏めるとこうだ。  先の事件で侵入経路は調査中だが、まだ不明な点も多い。警備体制を考え直したいが、内からでは気づかない点や見落としもあるだろう。なので、外の住人である教団からの目線で警備に穴がないか意見が欲しいということだった。  ウーベルトは丸まるとしたお腹を揺らしながら説明する。 「竜の渓谷は4つの地区に分かれてるよー、一つ目はね、ニーベルンゲンの草原。海原みたいに広がる草原は初めて見たらびっくりするかもねー。悩みなんて忘れちゃいそうになる光景だよ~。今は秋だから寒くも暑くもないし、お昼寝にはぴったりだよねー。でも、ドラゴンが気づかず踏んじゃうかもしれないからできないかー……」  ウーベルトは指折りに数えながら楽しげに語り出したかと思えば、最後にはがっかりと肩を落としていた。 「二つ目はねー、清澄の渓流。水辺を好むドラゴンや子供のドラゴンがよくいるよー。特に子ドラは好奇心が強いから遊びのつもりで突撃されて病棟送りになった浄化師もいるから気をつけてねー」  のほほんと戦闘職である浄化師が病棟送りにされた事実をさらりと告げられる。 「三つ目ー、遊牧草原。ドラゴン達の餌である牛や鶏、羊や鹿が管理者さん達の手によって大切に育てられているよー。でも、グロいのがダメな人は止めておいた方がいいかもねー、大きいドラゴンなら丸飲みだけど、ちっちゃいドラゴンはまだ食べるのが下手だからねー」  その言葉に勘の良い浄化師は「あっ」と察した者も多い。 「最後は竜の霊廟だよー、ドラゴン達が死した後に眠る墓地だから、とても神聖で大切な場所だよ~。ここで罰が当たるような行為をしたらダメだからねー」  両手で罰印をつくって一生懸命に説明するウーベルト。 「ここまでで分かりにくいことがあったら聞いてねー」  浄化師達に疑問がないことを確認すると、ふくふくとした頬を揺らしながら一度頷く。 「うん。エリアについてのお話はここまでー、竜の渓谷は広いからねー。移動手段について話すよー」  ウーベルトはハンカチで汗を拭いながら二重顎をたぷんと揺らし話を続ける。 「ニーベルンゲンの草原にある転移方舟で移動した君たちには、ドラゴンに乗って移動してもらうよ~、ドラゴンと一緒に空を飛ぶってロマンがあるよねー。さすがに徒歩だとエリアを見て回るのは大変だからねー、こちらから管理者さんたちにお願いしておいたんだー。高いところがダメな人はドラゴンがひく馬車やソリに乗って移動するといいよー」  長いこと話して疲れたのか机に置かれたコップから水を飲み干すと、ウーベルトは口を開く。 「移動に協力してくれるドラゴンは基本的に優しくて友好的だよー。これから竜の渓谷と仲良くする為にもお話ししてみるといいかもねー。浄化師に個性的な人が多いみたいにー、ドラゴンも色々な性格をしているよー、おしゃべりなドラゴンもいればー、長生きしているせいかマイペースだったり、ワンテンポすれたドラゴンもいるから話が噛み合わなくてもイライラしちゃダメだよー」  のんびりと間延びした口調で話されるとどうにも眠たくなってくる。浄化師の中には眠たげに瞼が落ちそうになりそうなのをパートナーからど突かれ叩き起こされている者も中にはいた。 「まあ、そんなに堅く考えずに観光がてらに行ってくればいいよ~、報告書楽しみにしてるねー」  こうして最後まで締まりがつかないまま、指令は発令されたのだった。
ただおいしいものが食べたいだけ!
とても簡単|すべて

帰還 2018-10-26

参加人数 7/8人 GM
 それは偶然だった。  たまたま調査にやってきた浄化師たちがお昼におにぎりを食べていたのだ。  そこに現れたのはまだ若いドラゴン。  若いといっても人間よりもずっと大きく、鋭い爪を持っており、十分脅威になりうる。 「なに、食べてル?」 「えーと、おにぎりだよ?」  おずおずと新人の浄化師の二人はおにぎりを差し出した。  ぱく。  もぐ。  ごっくん。 「おいしいっ!」  その若いドラゴンは目をきらきら輝かせた。  さて、ドラゴンの味覚とはこれいかに。彼らは基本的に牛などの家畜を丸のみ、もぐ、ごっくん。ごちそうさま。である。  その若いドラゴンが特殊だったのか、それとも実はドラゴンの味覚が人に近いのかはわからないが。  おにぎりを大層気に入った若いドラゴンは浄化師たちにおかわりをご所望した。  しかし。 「ごめん。もう終わっちゃった」  なんたる絶望。  なんたる悲しみ。  その若いドラゴンは尻尾をたれさげ、じっと浄化師を見た。 「あんなおいしいものを食べてル、もしかして、おいしい」 「おいしくないですっ!」  おいしい、を知った若いドラゴンは聞いちゃいねぇ。お口をあーん。ぱく。もぐもぐもぐ。  パートナーがもぐもぐされているのに慌てるもう片方。 「なにをしているんだ。吐き出しなさい!」 「ぺっ!」  ぺちょ。と地面に唾液どろどろの浄化師が倒れる。慌てる相棒は「舌のうえでころころされて味あわれた。もうお婿にいけない」などと嘆く相方を抱えて世界の悲しみを叫んだとか叫ばないとか。  そんな横では。 「ちょ、正座! 反省! なんてことを!」 「あたち、ドラゴンだから座るしかできないよ。正座無理。体のつくりからいって無理ー。んとね、おにぎりおいしかったの」 「……」 「人間ずるいー! あんなおいしいの食べるの! けど、人間ぺろぺろしたらなんかおいしかった!」  あ、これ、あかんやつ。 「あたち、もっとおいしいものたべたいの。たべたいのっ」  うーーん。 「食べさせてくれないなら、ぺろぺろしちゃうもん」  これ、あかんやつや。と二回目の悟りにて決断した。 「し、知り合いの浄化師に頼むか」 ● 「えー、今回の指令はおっきい生き物にぺろんぺろんされたくなきゃ、おいしいものを作って提供しろと」  ロリクがはぁとため息をついた。  今までの話を聞いていた浄化師たちは真顔で聞く。  とりあえず、そのぺろぺろされちゃった人はどうなりました? 「あー。ほどよい舌の上でぺろぺろされて、わりと気持ちいいけど、生臭いからやっぱりトラウマになるよ。だそうだ。まぁ、今回おいしいもの食べたらぺろぺろは絶対にしないと約束したそうなので、なんとかこうおいしいものを作って提供してくれ。以上」  ロリクさん、なんか指令の出し方がすごく雑じゃないですか。 「いや、だって」  気持ちわかりますけど! 「ぺろぺろされたら骨は拾ってやれよ」  ふ、不吉……! 「満足したらある程度遊んでやれとさ」  はーい。
ひとりぼっちのゴブリン
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帰還 2018-10-24

参加人数 4/8人 GM
「今回の指令は、ゴブリン退治だ。といっても一匹なんだけどな」  指令を受けにくると、受付口でロリクが説明してくれた。  森に囲まれた村がある。  その村から隣町に行く道は木々に覆われた昼間でも暗い森のなかを進まなくてはいけない。  その道を通ると、ゴブリンが一匹あらわれて村人の荷物を奪っていくそうだ。  村人たちはゴブリンに襲われた、このままでは安心して隣町に行くことが出来ない、由々しき事態だと浄化師たちに退治してくれと依頼を行った。 「ゴブリンが村人を襲った、と報告されているが……現地調査したユギルがよく聞くと、村人はゴブリンが現れると驚いて荷物を置いて逃げた……というのが正しいらしい。  そういうことが三回ほどあって、このままでは危険じゃないかと村人は依頼したそうだ。  気になるのはその荷物のなかから食べ物や布切れをごくわずかにとっていったそうだ。たいした被害じゃないし、ゴブリンっていうのはお前たちも知っていると思うが、基本は群れで行動するんだ。ゴブリンは臆病な性格だからまず、一匹で動くことはない。一匹で動くとしたらよほどなにかあるんだろう。……それに、この森のなかには狩人のマドールチェがいてモンスターを狩って森の安全を図っていたそうだが、ここ数か月、その姿も見ないそうだ。狩人の家は森の奥にあるらしく、正確な位置は村人もわからないというし」  ロリクは説明しながら少し思考するように目を伏せたあと、ふぅと息を吐いた。 「さぁ、村人からはゴブリン退治……とはなっているんだが、俺から少しつけくわえよう。ゴブリンが悪さをしなければどういう方法をとっても構わん。もっといえば村人が納得すれば、この指令は成功となるだろう」  浄化師たちがその言葉にきょとんとする。 「ゴブリンの退治ならお前たちでも十分安全に行える。そのゴブリンが現れる道におびき出して退治してしまえばいい。  この依頼をしてきている村人たちがほしいのは安全だ。それさえこなせば俺はお前たちがどういう方法を使い、解決してもいいと思ってる。ただ重要なことを一ついっておけば、ゴブリンは会話出来ないからな。その点は注意するように」  にっとロリクは微笑んだ。 「浄化師らしい判断と方法をとるように」
探偵マウロの事件簿~劇薬は劇場に
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帰還 2018-10-23

参加人数 2/8人 弥也 GM
 今まさに夕日が沈まんとする時刻。  ブリテンにある屋外劇場エクリヴァン観劇場の舞台が、昨日までの喧噪が嘘のような静けさに包まれ、舞台袖に置かれた椅子にご婦人が一人静けさに溶け込んでいる。  夕日が姿を消すと、その風景もしばし闇に消え、今度は月明りに照らされる。  ブリテンの裏路地にある、マウロの探偵事務所。  探偵と言っても、暇なご婦人の悩み相談であったり、迷子のペットの捜索などが仕事の大半を占めているが、それでも生活すらままならなかった以前に比べれば良い方だ。  そして今もマウロの前には、その裕福さを体現するような豊かな身体をしたご婦人が、事務所の来客用ソファにどっしりと座り、そのふくよかな指でティーカップを優雅に口元に運んでいる。 「お茶菓子をどうぞ」  以前、誘拐事件でエクソシストとマウロに助け出された名家ジョンソン家の一人娘ライリーが、探偵の助手を気取ってご婦人に茶菓子を出す。 「まぁ、かわいらしい助手さんね。ライリー何歳になったの? 随分綺麗になったわね」  どうやらこのご婦人、ライリーの事を知っている様だ。 「16歳になりました。モニカさん」  ライリーにモニカと呼ばれたこのご婦人。  大の芝居好きで、年に一度、仲間と実行員を組織し、実行員主催の演劇をエクリヴァン観劇場で行っている。 「で、去年あんな事があったのに、今年もあの劇団を呼ぶ、と言うのですね」  マウロの言葉に、モニカの指が少しもじもじと動く。 「あら、あれは劇団とは無関係。それに、もう明日には、みなさん到着されますし」  どうやらライリーも、その劇団を気に入っているようで、 「そうよ、無関係よ」  と、心外とばかりにマウロを睨みつける。  モニカがティーカップをソーサーに戻し、テーブルへと置いた。  そのソーサーの隣には、一通の手紙が。  芝居は行うな。  また死人がでるぞ。 「こんな物、到着の前日に送って来るなんて」  モニカが、ため息をつく。 「芝居を中止にする事は、出来ないのですか?」  マウロは手紙を手に取り、透かし裏返し確認するが、特段変わった様子はない。 「だって、もうチケットは売れてしまっているのよ? それに教団にだって劇場使用料とかなんとか、お支払いしてしまったもの」  今にも泣き出しそうなモニカの肩を、そっとライリーが抱く。 「大丈夫よ、モニカさん。この探偵マウロが何とかしてくれるわ! 困難な状況から、私を助け出したんですもの、覚えてないけど」  そうね、そうね、とモニカも大きく頷く。  マウロの思惑とは無関係に、また仕事が一つ決まってしまったようだ。  エクリヴァン観劇場近くのレストランの一室。  到着したばかりのアラン劇団一行と、依頼人であるモニカを含む実行委員のご婦人四名、そしてマウロが集まった。  実行委員の一人は、やけに若い。  ライリーとそれほど変わらないのではないだろうか。 「やぁ、君が名探偵マウロか」  爽やかな笑顔で、マウロに手を差し伸べるアラン。  モニカの目が、アランをうっとりと捉えている。  確かに、良いオトコ、である。 「今年も呼んでいただけて、ありがとうございます」  和やかな雰囲気で始まった打合せではあるが、そこに渦巻く何かをマウロは感じ取っているようだ。  マウロの手帳より      ・フロリアの死    1年前アラン劇団が公演を行った翌日、実行員の一人フロリアが劇場舞台袖にて遺体で発見された。    死因は服毒自殺とされている。    夫ドニスは、相当な富豪。    フロリアは、アランとのキス現場を劇団看板女優リズに見られ、噂になった事を気に病んでいた。    ドニスはフロリアの死後、リズと結婚。    娘ローズは、母の死を「ママはアランへの愛を貫いたのよ」とお気楽に捉えている。    誰よりもフロリアの死にショックを受けたのは親友ナディア。    リズは相当な美女だが、妻の自殺から一年も経たずにリズと結婚をしたドニスの心情が理解できない。    フロリアは本当に自殺なのか?    ・実行員について(4名)    モニカ   最古参の実行員。ただただ芝居好きの気の良いご婦人。    ブリジット 実行員の中では一番庶民に近い家の婦人。少々他のお仲間には気後れしているようだが、家柄のせいか?    ローズ   死んだフロリアの娘。実行委員の中で一番若い20歳。母親が死んだと言うのに、実行員を引き受けるとは理解しがたい。    ナディア  フロリアの幼馴染で親友だった。フロリアと二人で、随分とアランに熱を上げていた。最近はふさぎ込んでいる様子。  ・アラン劇団    アラン 劇団の代表で演出家。ご婦人に対しての態度は不快な程軽率。よってライリーには近づかないようにしなければ。    ニーナ 劇団の看板女優。モニカによると派手なタイプではないが、演技は素晴らしい。    リズ  元劇団の看板女優。ドニスとの結婚を機に引退している。   
秋の夜長に囁いて
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帰還 2018-10-22

参加人数 8/8人 木口アキノ GM
「書籍の貸出促進を図りたいと思います」  ここは薔薇十字教団の魔術学院3階、人気のなくなった深夜である今、教室の1つを会議室として書籍管理に関わる面々が集まっていた。 「教団に集められた膨大な数の書籍。それらが存分に活用されないなんて本が可愛そう」  本会議の議長を務める女性が嘆く。その隣で彼女の同期男性が「あまり利用者が少ないと予算カットされちゃうからね」と本音をずばり。一般書籍ならまだしも、魔術の専門書などは高値なのだ。予算の確保は切実な問題だ。 「折しも季節は秋。読書の秋ということで、書籍の貸出を勧めるにはうってつけ。皆にドーンと本を読んでもらえるような、何かいい案はありませんか?」  一同、フゥむと考えてから。 「はいっ」  ミミリアという名の年若い書籍管理係の女性が手を挙げた。 「読書の秋、ナイトライブラリーなんていかがでしょう!」  彼女は立ち上がると教室前面の黒板の前までつかつかと歩み寄る。  そして、カッカッと文字を書きつつ話す。 「魔術学院の書籍関連エリアを一晩中解放するんです。2階一般書籍、歴史、事件などの書庫、3階魔術関連書籍の書庫がそれに該当しますね。本を読むスペースとして1階カフェテリアも解放しましょう」 「それだけじゃ面白味がないよなぁ」  という声がちらほらと聞こえる。  ミミリアは「その通りです」と深く頷く。 「折角のナイトライブラリーです、雰囲気を作らねば意味がありません。そこで私が考えましたのはーー」  1階から3階にかけて、穏やかな音楽を流す。  読者にぴったりの飲み物、コーヒーや紅茶をカフェテリア以外でも飲むことを許可する。  夜の雰囲気を壊さないように、照明は抑えめにする。  本を読みながら眠れるように、ふかふかソファーコーナーも用意する。 「などなどです! パートナーとお気に入りの本の話をしながら朝まで過ごす……ちょっと素敵じゃないですか?」  ミミリアはうっとりと手を組んだ。 「ああ、私にもそんなパートナーがいれば……朝まで毒草全百科について語り合うのに」  それは果たして素敵なのかな? という疑問は誰もが口に出さずにいてあげた。その代わり、そんなことを語り合えるパートナーが現れると良いね、という生暖かい視線がミミリアに注がれた。 「でも、夜の雰囲気を感じながらの読書はちょっと惹かれるね」 「音楽を流すのも雰囲気作りに良いと思うわ」  他のメンバーからも活発に意見が出てきた。 「灯りが抑えめだと、本を探すとき困らないかな」 「利用者にはカンテラを渡せば良いんじゃない? 本を探す時にも読む時にもそれを使ってもらうんだ」 「いいね、それ」 「ふかふかソファーは魅力的だけど、寝顔を人に見られるのはな~」 「ソファースペースはパーテーションで区切りましょうか」  皆が乗り気になってくれて、ミミリアはちょっと誇らしげな顔である。 「それじゃあ、ナイトライブラリーの開催ということで、皆さん異議はないようですね」  議長が一同の顔を見回して確認する。 「ありませーん」  満場一致で答えが帰ってくる。  こうして、薔薇十字教団魔術学院におけるナイトライブラリー開催が決定した。
雪の妖精に約束を
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帰還 2018-10-17

参加人数 3/8人 春川ミナ GM
「アーブル、この子が今日からお前の妹になるんだよ」  そう父から紹介された女の子の第一印象は、触れれば壊れてしまいそうだと感じた。僕が小さい頃からの宝物、『雪の妖精に約束を』という絵本に描いてある登場人物みたいだと。 「は、はじめまして。今日からここでお世話になります。ティージュと申します……」  頬を朱に染めて、たどたどしく挨拶をした妹となる女の子に、僕の心はわしづかみにされた。  ここは教皇国家アークソサエティ、首都エルドラド。その一画にある貴族街。代々魔力が強い人間を輩出して教団に貢献してきたペタジット子爵の屋敷。  世界に色がある事を知らなかった少年の心に暖かい光が射すお話。  ◆ 「ティージュ、調子はどうだい?」  妹の世話をしていたメイドに取り次いで貰い、入室する。妹は体が弱く、ベッドからあまり離れられない。祓魔人や喰人になろうにも、この状態では難しいと判断して今は様子見と教団のスカウトを先延ばしにしてもらっていると父から聞いた。 「アーブルお兄様、おはようございます。今日はとても調子がいい気がするんです。だからお日様と風を感じたくて、アンヌさんに窓を開けて貰ったんですよ」  ベッドの上で体を起こして少し照れながらも緑の瞳を向け、微笑みかけてくれる義妹。  父が教えてくれた事だが、ティージュは赤ん坊の頃、竜の渓谷に捨てられていたらしい。それを知性の高い竜が拾い、今まで育てていたと。  首をゆっくりと傾ける様子に、腰近くまである白く長い絹糸の様な髪がサラサラと流れた。余談だが、ティージュを育てた竜はどうやら偏った知識しか持っておらず、古い貴族の礼儀と言葉遣いを教えたらしい。その為にどこか頓珍漢な受け答えに戸惑うことがしばしばある。人慣れしていなくて直ぐに赤面するのはご愛嬌だ。 「ティージュ様、使用人にさん付けは要りませんよ」  傍に控えていたメイドのアンヌが苦笑しながら話す。 「ハハ、立場を傘に着て威張り散らすよりはよっぽど良いじゃないか」  僕はそれを諌める。この妹には屋敷の人間、誰もが甘い。 「だけど体の調子が良いからって、この間みたいに庭に出て倒れないでくれよ。流石に肝が冷える」 「ごめんなさい。でも、小鳥がとても綺麗な声で歌っていたの。ついついそこを離れるのが惜しくて」  少しだけ顔を曇らせて、悲しそうな瞳を組みあわせた手に落とすティージュ。 「ああ、ごめんごめん。責めるつもりは無いんだ。調子が良いのは何よりだ。この屋敷に来てから意識を失う頻度も少なくなったと聞いたよ。それでね、父がささやかだけれどティージュの歓迎パーティを僕達と招待した浄化師達とで行うそうだよ。いつか僕も浄化師になるし、ティージュもどんな人達が教団で働いているか知って貰いたいんだ」  僕は妹の顔を曇らせたくなくて直ぐに謝ると、立て続けに本題を話した。 「浄化師様……ですか? わ、私……うまくご挨拶できるでしょうか」  屋敷外の人間を招くのはティージュにとってこれが初めてだ。モジモジと指を絡め合わせる妹の手がどんどん複雑になっていく。……やめなさい、陰陽師が組むような印になってるから。駄目だって、ああ! その印の組み合わせはまずいって!  僕は慌てて妹の手を取り、印だか何だか分からない動作をさせるのを止めた。 「お、お兄様……?」  驚いて僕を見上げるティージュの顔は手と手が触れているせいか真っ赤になっている。うう、やめてくれ。その表情は心臓に来る。 「と、とにかくだ。屋敷の皆がサポートをするから」  心臓の鼓動が部屋中に響くんじゃないかと錯覚するほど僕の鼓膜を打っている。何とか表面上だけ取り繕うと妹に微笑みかける。 「はい、ありがとうございます。お兄様」 「グッ!」  ティージュがはにかみながら僕に返すが、それは僕の仮面なんてボロボロと崩れ落ちる。まるで春の陽射しのように。 「お、お兄様?」 「な、なんでもないよ。じゃ、じゃあ僕は用事があるから!」  戸惑うティージュに僕は自分の熱くなった頬を見られまいと早口で告げて足早に部屋を去る。  扉をゆっくりと閉め、背をもたれて一息つくとドア越しにアンヌのクスクス笑う声が聞こえてきた。おのれアンヌ、クッキーを盗み食いしていた事をメイド長に会ったら告げ口してやる。でも今度だ、今はやる事がある。僕は最近出来た友人に相談する為、妹の部屋を去った。  ◆ 「と、言う事があるんだ。妹が驚いて喜ぶような事をしたい」 「ふぅむ。それは難問だニャ。アーブルじゃ悩んで悩んで日干し魚みたいになってしまうニャ」  庭師が暮らしていた小さな小屋の外、窓の下に僕は座り込んで、この不思議な喋り方をする友人と話をしている。  高齢だった前の庭師が引退して、新しく清掃も剪定も出来る従僕を雇ったので今はこの小屋に誰も住んでいない。が、友人に相談がある時はいつもここだ。いつだったか姿を見たくて窓から中を覗き込んだけれど、暗くて何も見えなかった。その時とても怒られたので、以来僕は壁越しに話をしている。何でも人に姿を見られるとヒゲが生えてくる奇病に罹っているらしい。……冗談だろうけど。  ……初めて出来た友人と言える存在を失いたくないと感じたのもある。人に姿を見られたくない理由があるんだと結論付けて。 「頼むよノーラ。君の考えはいつも僕の上を行く。悔しいけどね」 「ふっふっふ、頼られると悪い気はしないニャ。ふぅむ……」  友人が過去に自分で名乗った名前はノーラ。歳も知らないけど、いつも僕に的確な助言をしてくれるこの存在は妹と同じくかけがえの無い宝物だと思う。調子に乗るから本人には言わないけど。  ノーラはしばらく考え込むと、やがて何かを思いついたようだ。 「そういえば浄化師達が来るニャ? 我輩正直言ってアイツ等苦手だけどニャ。ああ、アーブルは特別ニャ。……話を戻すニャ。やはり人間の知恵に勝るものは無いニャ。だから招待した浄化師達に妹にあげるプレゼントを持ってきて貰えば良いニャ」  浄化師が苦手だと聞いて、ちょっとだけ落ち込む僕を空気で察したのか、僕の事は特別だと言ってくれた。何だか解らないけど胸が温かくなる。そしてノーラの提案に僕はなるほどと思った。 「アーブルは今まで父親の書類整理を手伝ったりしてかなりお小遣いを貯めている事は知っているニャ。恐らく宝石の一つや二つ楽に買えるくらいニャ」 「よく知ってるね。使う事も無かったからさ。うーん、そうだ! 妹はとても綺麗だから高価な宝石を使ったアクセサリーとかどうかな?」 「ハァ~。アーブルは馬鹿ニャ? 幼い妹がバカ高いプレゼントを貰っても困るだけニャ。10歳の女の子が貰って喜ぶ物をもっとよく考えるニャ」  僕の提案にノーラは大きな溜息をつくと馬鹿にバカを繋げる。落ち込んだ僕にノーラはさっきとはうって変わって優しい声で語りかける。 「あくまで一例としてだニャ、妹は体が弱い。激しく運動する物はやめた方が良いニャ。お菓子もゴハンが食べられなくなるから同じ理由ニャ」 「なるほど、ありがとうノーラ。じゃあ早速知り合いの教団の人に相談してくる。ティージュへのプレゼントは父に内緒にしたいんだ」 「父親がライバルなのかニャ? アーブルも男の子だニャ。応援してるニャ」  姿を決して見せてくれない壁越しの友人にまたねと別れを告げて、小屋を後にする。プレゼントを受け取ったティージュの喜ぶ顔を想像して自然に僕の頬は緩むのだった。
契約、君、言ノ葉
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帰還 2018-10-17

参加人数 8/8人 GM
 エントランスに指令をもらいにくると、ロリクが神妙な面持ちで書類と格闘していた。いつものことだが、いつも以上にこう困っている、ぽい。  どうしたんですか?  声をかけると、ロリクは顔をあげて、ああと沈んだ声を漏らした。 「実は……今から浄化師になる人に、どういう流れで契約するかといった簡単な説明や先輩の体験談をまとめているんだ」  うむうむ。 「契約のところで行き詰った」  契約というと……あ、あの!  思い出した浄化師たちは照れ顔である。 「そう、あれだよ。あれ。……まぁやり方はみんなほぼ同じなんだが、こう、気持ちとか心構えとかをな」  ああ~。  ちなみにロリクさんはどうだったんですか? あの契約のとき。 「……俺とユギルな。あの頃、俺はちょっといろいろとあって荒れていて、ユギルは精神的に不安定だったし」  はい? 「契約のとき俺が手首切りすぎて動脈までいったのはいい思い出だ」  え、えええええ! 「契約の際、ユギルがキレて殴り掛かってきたのもいい思い出だ。あのときのクロスカウンター、いまだに忘れん」  ふぁ!  な、なんかすごい殺伐としてますね。 「だってなぁ、ほぼ初対面のあとのはじめての共同作業だぞ。緊張やら不安やらあるだろう? ちゃんと二人で魔術真名唱えたが、そのときも噛んだし!」  え、ええ。まぁ。ちなみにお二人はなんて唱えたんですか? 「メンチカツ」  はい? 「唯一二人が、そのとき共通して好きだって判明したものでな。だから今後二人でわかっていくためにも、ってことで、メンチカツ……あ、いや、今はちゃんとしたものに変えてるんだが、あはははは」  だからって、メンチカツはねーよ。さすがにねーよ。あんたら!  魔術真名をなんだと思ってるんだ! これは「絶対」に何に変えてもそれをやり通すという信念を表すやつですよっ! 「あの頃の俺らはメンチカツにそういういろんな思いをこめてたんだよ! うん。そういうわけで、いい例になれなくて困ってるんだ。お前ら、せっかくだから契約時のことを教えてくれないか?」
雷撃の爪痕
普通|すべて

帰還 2018-10-17

参加人数 8/8人 鳩子 GM
 朝露に湿る緑の海原へ、小さな白い点が散らばっている。空を渡る雲よりもずっとゆるやかに、もぞもぞと動くそれらを視線の果てに捉えて、オットマー・ゲーラーはほっと息を吐いた。 「いたぞ。……おい、アントン?」  同行者であるアントン・ロイッカネンの返事が来ない。すぐ隣を歩いていたはずの姿が後方にあることに気が付き、オットマーはやれやれと首を振る。 「アントン!」 「あ、ああ……」  大声で呼びかけると、漸く気が付いたアントンはのろのろと顔をあげて、ぎこちない足取りでオットマーの横に並んだ。 「あのなぁ、気持ちはわかるけどよ。いったん、忘れておけよ」 「……そうだな」  頷きながらも、アントンは未だ上の空だ。  揃いの黒い額当てをする二人は、此処、竜の渓谷を護るワインド・リントヴルムと志を同じくするデモンの警備隊員だった。  サタンと名乗るホムンクルス率いる終焉の夜明け団が竜の拉致を試み、ワインドおよび救援に訪れた浄化師と苛烈な戦闘を繰り広げた事件は記憶に新しい。人も竜も最善を尽くして難敵を退けたものの、竜のケアに侵入経路の調査にと、忙しい日々が続いていた。  アントンの懊悩も、その事件に端を発する。 「俺ァ、まだ信じられねェんだ。アートスの野郎が裏切っただなんて……」 「口を慎めよ。まだ決まったわけじゃねぇ」  竜の渓谷内部に、終焉の夜明け団を引き入れた者がいるのではないか――慎重なワインドが隊員の前で迂闊な発言をするはずもないが、教団と共に調査を進めていくうちにどうしたってその可能性に勘付かないわけにはいかなかった。  確信に至る証拠は見つかっていない。けれども、事件があったその日から、ひとりの隊員が姿を消していることが後に解った。  アートス・ホーカナ――元はルネサンスのあたりに暮らしていたらしいが、五年ほど前に病で家族を失い、己のルーツに関わる仕事がしたいと言って渓谷に身を寄せたデモンの青年だった。ワインドよりも年若い彼はいささか落ち着きが無く、すれた雰囲気をまとってはいたが、酒と音楽が好きな陽気な一面もあり、ほどなく渓谷での暮らしに馴染んだ。  事件があった日、アートスは非番だった。それだから、襲撃の対応に追われる隊員たちは彼の姿が見えないのに暫く気が付かなかった。  ワインドが発見する以前に終焉の夜明け団と遭遇し、犠牲となったのではないか? 或いは、渓谷内を散歩でもしていて何らかの事故にあい、身動きが取れなくなっているのではないか? はたまた、すでに出奔しているのでは――。  さまざまな憶測が飛び交い、隊員たちは調査の片手間に敷地内の捜索を行ったが、数週間経った今もなお行方知れずのままだ。 「何があろうと、俺達にとって重要なのは竜を護ることだ。そうだろ? で、今やるべきなのは、竜を護るのに力を貸してくれる浄化師のもてなしだ」  アートスのことは忘れろ、と重ねて言う。その声が荒っぽいのはオットマー自身釈然としない思いを抱えている証左であったが、アントンは従順に頷き、二人は黙々と歩を進めた。  竜の渓谷には多くの鳥や野兎などといった野生動物が生息しているが、巨躯を持つ竜の食糧には少々心許ない。不足を補うべく、定期的に牛や羊、山羊などの群れを連れて来て放牧するのもワインドたちの仕事だった。転移に用いる魔方陣が整ったこともあって往来の増えた浄化師を歓迎するため、今日は人もそのおこぼれに預かろうという手筈になったのである。  今頃、ニーベルンゲンの草原にある集落では歓迎会の準備が着々と進んでいるはずだ。薔薇十字教団と渓谷の警備隊員との親睦会であり、人と竜の親睦会でもある。竜の中でも特に好奇心旺盛な個体や、先だって教団の世話になった成竜グラナトと仔竜ヴァージャも同席する予定だ。 「……なぁ、おい」 「なんだよ」  羊の選別を行っていたオットマーは、アントンの強張った声を鬱陶しげに聞き流す。 「アートスだ」 「あ?」  まだその話題を引き摺るつもりか、と顔を顰めながら体を起こしたところで、オットマーは言葉を失った。 「うそだろ」  群れの端で、耳障りな鳴き声があがった。途端、群れ全体が緊張感に包まれ、羊たちはのろまな人を置き去りに駆け始める。  アントンは流れに逆らうように前へ一歩踏み出した。 「アートス……! おい、アートス!」 「いや、待て! あれは……」  異変の発信源にゆらめく人影――暗褐色の翼、額当てをした頭部に生える一対の角。そのシルエットこそよく見知ったものに違いなかったが、何かがおかしい。  喉が引き攣れて、声が出ない。脳裏で警鐘がわんわんと鳴り響き、指先が震える。数秒か、それとも数分か。じれったいほどの時間を掛けて、どうにかこうにか、オットマーは言葉を絞り出した。 「ベリアルだ……!」  その瞬間、遠方の人影は不気味な俊敏さで羊に飛びかかり、その首筋へ喰らいついていた。
泣き止まぬあなたの頬にキスひとつ
普通|すべて

帰還 2018-10-14

参加人数 8/8人 瀬田一稀 GM
 突然の雷雨は、あっという間に山道を、泥の川へと変えてしまった。  馬車の車輪がぬかるみにはまり、動かなくなってしばし後。  御者は申し訳なさそうに、エクソシストたちに言った。 「今日はこれ以上は勧めません。近くに村がありますから、そこで宿をとりましょう」  とはいっても、小さな宿はすでに満杯。  指令の帰り。団服を着たエクソシストたちは、各ペアごとに別れ、村人たちの家に泊まることとなった。  馬車をおき、徒歩で村に来るまでの間に、体は濡れ、冷え切っている。  パートナーは、部屋にある暖炉と薪を見、ほっと安堵の息を吐いた。 「ああ、ありがたいな。これで濡れた体もあたたまる」  だがあなたは、部屋の片隅に座り込み、黙り込んだまま。 「なぜ黙っている? あれが、お前のミスだと思っているのか?」  ――思っている。でも、言えない。 「指令は無事完了したんだ。気に病むな」  パートナーがおこした火が、暖炉の内で、ぼっと燃えた。  彼が、振り返る。 「さあ、こちらへおいで。そこでは、火のぬくもりは届かないだろう」  あなたは、いやいやと首を振った。 (だって、本当ならば、この指令はもっと早くに片がつくはずだった。私が、あんな失敗をしなければ)  ゆっくりと近付いてくるパートナー。  彼はあなたの隣にしゃがみこみ、涙に濡れた顔を覗き込んだ。 「考えるなと言っても、無理なんだろうな。何をしたら、お前は泣き止む? こうして抱きしめればいいのか? あるいは、ひとつきりのベッドで添い寝をして、寝かしつけてしまえばいい? 教えてくれ。俺は、どうしたらいいんだ?」
森の中の仕立て屋さん
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帰還 2018-10-13

参加人数 8/8人 あいきとうか GM
 深い森の奥、かつてどこかの貴族が建てたのだろう、小さな城にも見える屋敷の前庭。  重厚な扉の前に八組十六名の浄化師が集結していた。ひとりが扉に耳をあてる。手振りで他の面々に伝達。「音がする」。  足音どころか呼吸音さえ殺して、浄化師たちは陣形を整える。もうじき標的がくる。あと五分、動きがなければ突入するつもりだった。好都合だ。 「森に魔女が住んでいる」  十月の始まりにそんな情報が薔薇十字教団にもたらされた。森の近くに住む村人たちからの、嘆願に近い要請だ。魔女を討伐してほしい。いつ住み着いたのかは分からない。場所は森の中の古屋敷。  庭は手入れされておらず、壁面には蔦が這う。野生動物や敵性生物の住処になっていないのが不思議なほどだ。いや、魔女が住んでいるから近づかないのか。  教団は直ちに討伐指令を発令。こうしてこの部隊が派遣された。  魔術真名の解放はそれぞれすんでいる。魔女は恐らくひとり。だが、油断はできない。    さん、に、いち。  扉が開く。先手必勝とばかりに前衛の浄化師たちが出てきた人物の心臓を穿とうとする。 「はえええ!?」  悲鳴。お構いなしに攻撃しようとして、ひとりが異常に気づいた。 「待て待て! 魔力が感じとれない!」 「え?」 「おーっと!?」  勢い余りかけた前衛の襟首を、別の浄化師が掴んでとめる。動揺が広がる。杖先の魔方陣が消えた。膨れ上がった殺気が困惑に塗り替えられる。 「……魔女だよな?」 「は? 違うわよ、私は仕立て屋。仕立て屋のチェルよ」 「仕立て屋?」  廃墟同然の建物に似あわない、美しいカボチャ色のドレスに身を包んだ女が薄い胸を張る。 「そーよ。ちょっといろいろあって、ここでお洋服を作っているの。見る? 着る?」 「いや……」 「っていうか見て行きなさい。着なさい。その制服、教団の浄化師でしょ? 浄化師ってなんでもやってくれるんでしょ?」 「なんでも屋ではない」 「いーじゃないの! お洋服って、着られて初めて価値が出るのよ。なのに」  ぐす、とチェルがすすり泣き始めた。突然のことに浄化師たちは慌てる。 「両親に、服なんか作ってないで後を継げって言われて。私、農家じゃなくて仕立て屋になりたいの。素敵なお洋服をたくさん作りたいの。だから、家を飛び出して」 「そ、そうか。大変だな。じゃあ、気をつけて」 「もう魔女に間違われないようにな」 「待ちなさいよ。着て行きなさいよ。全部自信作なのよ!」  一番近くにいた浄化師の腕をしっかりつかみ、チェルは一同に視線で縋りついた。 「私が作ったお洋服、着てよぉ!」 「町で服を売ればいいんじゃないか?」 「自信がないのよぉ! 着て、感想言ってくれたら、私もやれるんじゃない? って気持ちになって町に売りに行けるじゃないのよぉ!」 「そんな覚悟で家出して廃墟に住んで、魔女呼ばわりされていたのか……」 「最後のは私のせいじゃない!」  涙声で叫ぶチェルは、今にも駄々っ子のように暴れ出しそうだった。  浄化師たちは視線で短い意見交換を行う。結論が出た。 「代わりの者を派遣しよう。我々は忙しい」 「え? ほんと? やったー!」  両手を上げてチェルは喜ぶ。  面倒くさいことになったなぁ、と浄化師たちはいっせいにため息をついた。
購買部の一日
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帰還 2018-10-13

参加人数 8/8人 oz GM
 私は教団寮2階にある購買部の店員である。  薔薇十字教団の教団員であるが、接客業に適正があると認められ、購買部の方へと配属された。  主なお客さんは浄化師だが、私たち教団員も利用することが多い。たまに上のお偉いさん方もここに来ることがある。滅多にないことではあるが。  購買部の一日は結構忙しい。  会計業務はもちろん、接客や店内清掃、商品の品出し・陳列、商品の発注など多岐にわたる。一度仕事を覚えてしまえば、後はパターンで作業を行うだけだが、新人が入団する時期になると一気に忙しくなる。新人浄化師が初任務に備えて、武具や防具などを買い求めに来るからだ。  後は教団員から「こんなものを買いたい」という要望が来ることもある。日用品や消耗品、服、アクセサリー、細々とした携帯品などは、上司である「ロードピース・シンデレラ」様に要望書を提出し、イレイスなどの武器や防具は魔術鍛冶職人である「ヴェルンド」さんに注文をお願いすることになっている。  購買部の品揃えとしては、頼もしい浄化師の相棒であるイレイスは全て魔術鍛冶屋で作られている。武器も大事だけれど、敵の攻撃を逸らしたり、弾くだけでなく身を守ってくれる防具もそうだ。  武器や防具は実用品重視だけれど、服や装飾品、鞄などは実用的だけでなく、デザインにこだわりを持ったものも多い。  でも、最近はダンジョンに潜りに入って自前の武器や防具などを手に入れる方も多くなってきた。まあ、事務用品も置いてあるので客足は遠のく心配がない。  それ以外にも、香水などのちょっとしたお洒落や音楽を趣味とする者の為に楽器なども用意されている。  暇をつぶすトランプやチェスセット、指令に役立ちそうな医療品にピッキングツールまである。  尚、ピッキングツールを使っての技術の悪用をした場合、購買部は責任を負いませんのでご了解下さい。こわーい人に怒られたくなかったら、悪用しないで下さいね。お姉さんとの約束だ。  他にも教団員からの要望があれば、これからも商品はどんどん増えていくだろう。  もう購買部と言うより何でも屋さんだと私は思っている。  さあて、今日も一癖も二癖もある浄化師を迎えるために開店しなければ。  私たち購買部一同、お客様の要望に応え、各種の品揃えを用意してお待ちしております。  購買部へいらっしゃいませ!
美しき、ブリテンよ
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帰還 2018-10-13

参加人数 5/8人 GM
「今回は、ブリテンの巡回の仕事がまわってきてるぞー」  ロリクがにこやかに微笑んで浄化師たちに声をかけてきた。  ブリテン……中心部から北西、海を挟んだ先にある島だ。工業技術が発達しており、蒸気機関車、魔人形など様々な技術を生産している特別区に指定されている場所だ。  技術者が多く存在し、貴族と市民階級が混ざるように暮らすここは大変活気がある。 「まぁ、ここはそういう技術職が多いから、一定のベリアルやヨハネの使徒を撃退できる程度には自衛は出来ているんだが、  いかんせん人が多いからな。浄化師が定期的にまわって治安維持に努めてるんだよ。  巡回といってもお前たちはいるだけで十分治安維持になっているから、せっかくだし、観光の一つもしてきていいぞ~。  技術関係のものを見るいいチャンスだ。ここは派手っつーか、豪華なところが多いからなぁ」  ロリクの言葉に思い浮かぶのは豪華なお城である。むろん、それ以外もあれこれと素晴らしいものが多かったはず。 「レポート提出するとき、楽しい思い出、聞かせてくれよ?」
ハロー、運命
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帰還 2018-10-10

参加人数 2/8人 GM
「お前らにしてほしいのは、今回はスカウトだ」  ロリクが口にしたスカウト、という言葉に浄化師たちはきょとんとする。 「ああ、お前ら、自分たちが浄化師になったときのあれだよ、あれ」  あれ、といわれても。  浄化師たちは顔を見合わせる。 「そうか。浄化師になるのは人それぞれだからなぁ」  教団から迎えがきたのを快く受け入れる者、抵抗に抵抗を重ねて観念して連れてこられた者、大切なものを奪われた者、地位や名誉のために自ら門をくぐる者……浄化師になる理由は人それぞれだ。 「今回はヨハネの使徒、ベリアルの周囲への出現率やら考えて、そこに浄化師となる者……つまりは、多くの魔力を抱えている人間を見つけた。  調査結果でわかったのが、こちらの人物だ」  書類が差し出される。  名前はリネリ・サターシャ。  年齢は十六歳。  生まれは農家で、よく働くと評判の娘だ。父と母は健在で、弟をかわいがっている。ごくごく普通の娘。 「この娘を教団にスカウトしたいってことだ。簡単だろう? 出来るだけはやくこの娘を教団に連れてきてほしい」  理由……浄化師となる者はヨハネの使徒やベリアルに狙われる性質を持っている。このままでは、この娘の住む村はベリアルか、ヨハネの使徒の被害を受けるかもしれない。  それに契約をしなければ、魔力パンクで、この子の命はそう長くは持たない。 「ここ最近、この村では先ほどもいったようにベリアルやヨハネの使徒が多く目撃され、被害を広げている。  村近くの森では蜘蛛型のベリアルが目撃された。スケール1だが、十分な脅威だ。さらにヨハネの使徒も三体ほどが、この近辺の山間を走り回っている。  そうした脅威のせいで村は逼迫し、村人はこの子のせいじゃないかと噂が広がり始めている。ただリネリは両親、そして弟のこともあって村を離れたくないようだ……恋人もいるようだ。その恋人は残念なことに適合者じゃない、ただの人間だ」  そこまで口にしたあとロリクはため息をついた。 「まぁ護衛の必要性もあるからこの子の説得をお前たちに頼みたい。自分たちがどうして浄化師になったのかも踏まえて、きちんと説得するんだぞ。あと、脅威についても油断しないように。お前たちが赴けば、否応なく反応して動き出すだろう」  ロリクは浄化師たちを一人ひとり見て口にした。 「ただお前たちがこの村に行くということは、この娘の運命はいやおうなく動き出すということだ。そのことをよく考えてるんだな」 ●  のどかな村は連日のヨハネの使徒に対する警戒やベリアルのため飢えのせいでぴりぴりとした空気に覆われていた。  そんななかでもいつもの毎日をリネリは繰り返す。これが自分の選んだものだから。それでも村のなかを出歩ければ、誰もが視線を逸らしていく。 「リネリのせいだろう」 「災いの子だ」 「あいつのせいで村が狙われてるのかよ」 「はやくいなくなればいいのに」  村の囁きが聞こえる。  けど、優しいパパ、ママ……弟のヨーシャは、ここにいてもいいといってくれる。家族と離れたくない。だって、大切だから。  それに。 「ネリネ」  ヨハン!  優しい微笑みを浮かべてくれる恋人が、リネリを村人の視線から守るように一緒に歩いてくれる。 「私、ここを離れたくない。たとえ、死んでも、教団なんかにいきたくない。だって、私はここで生まれて、ここで育った、ただの村娘なんだもの」  ぎゅっとヨハンの手を握りしめる。 「私は私の運命に抗い続けてやる」
救え、貧乏劇団!
簡単|すべて

帰還 2018-10-07

参加人数 3/8人 海無鈴河 GM
 ここは教皇国家アークソサエティ「芸術の街オートアリス」。 「解散だなんて……そんな!」  その一角に佇む小劇場に、悲痛な男の叫びが響いた。  ヨレヨレのシャツを着て、無精ひげを生やした、見るからに貧乏そうなこの男は、とある劇団の舞台監督だった。 「当たり前だ。ここのところ、お前の作る舞台の評判は最悪。客はこれっぽっちも入りゃしねぇ。お陰で劇団は赤字まみれ……むしろここまで我慢してやったことに感謝してほしいね」  その舞台監督に呆れたように言うのは、この劇団のパトロンだ。  彼は、劇団の解散を告げにやって来たのだった。  舞台監督はパトロンの前に膝をつき、懇願した。 「お願いします! 次の舞台は……絶対に成功させますから! そのための脚本ももう完成しています!」  舞台監督はそう言うと、パトロンに台本を一冊差し出した。  パトロンはそれを受け取ると、さっと中に目を通す。  脚本のタイトルは『鏡の天使』。  歌手を目指すヒロインの前に現れた謎の男、そしてヒロインの幼馴染との三角関係を描いた物語だ。  やがて、パトロンは台本を閉じ、はあ、とため息をつき舞台監督に告げた。 「……分かった。もう一度チャンスをやる」 「ありがとうございます!」 「この舞台で劇団の評判を上げろ。結果次第で、解散を考え直しても良い」  パトロンは舞台監督にそう言うと、劇場を出ていった。  残された舞台監督は考えた。 「といっても……さっさと劇団を見限って、止めてしまったメンバーもいるし人手が足りないな……」  困った舞台監督は、薔薇十字教団に助っ人の依頼をすることにしたのだった。
タランテラの舞踏祭
簡単|すべて

帰還 2018-10-04

参加人数 8/8人 柚烏 GM
 ――そこかしこで焚かれた篝火が、天を焦がすようにあかあかと燃えている。  頭上に重くのしかかる暗夜を祓う為に。或いは闇に乗じて忍び寄る、冷たい死の腕を振り払う為に。 (ああ、どうかこれ以上、大切なひとを連れていかないで)  毒蜘蛛にも例えられた疫病を、ひとびとは踊ることで鎮めようとした。踊って踊って踊り狂って、毒にその身が侵されてもなお、苦しみながら踊り続けた。 (……運命に逆らえぬのなら、せめて最期まで共にいさせて)  切ないまでの激情を抱いて、踊り続けた恋人たち――そんな彼らの想いが奇跡を生んで、病は街から姿を消したと言われている。  タランテラの舞踏と語り継がれるそれは、今は賑やかな舞踏祭となって、ひとびとに希望を与えているのだ。 「場所はルネサンス南部、農業が盛んな街になりますね」  教皇国家アークソサエティにある、薔薇十字教団本部に持ち込まれた依頼のひとつを、ゆっくりと教団員が読み上げる。  ――タランテラの舞踏祭。そう呼ばれる祭りが近々開催されるので、是非エクソシスト達の力を借りたいと言うのが依頼の内容だった。 「篝火を焚き、夜を徹して祭りが行われて。街は音楽に包まれ、ひとびとは踊り、歌い、隣人と語り合う……とても賑やかな雰囲気のようですね」  とは言え、祭りの発祥は哀しいものだ。嘗て流行り病が街を襲い、次々にひとびとが命を落としていった。蜘蛛の毒に例えられたその疫病を鎮める為に、皆で踊り続けたのがそもそもの始まりだと言う。  ――しかし、病の勢いは止まらなかった。そうして病魔に蝕まれた恋人たちが、最期まで共に居たいと夜を徹して踊り続けた。 「その互いを想う気持ちが、奇跡を生んだと言われています。夜が明けた時、ふたりの身体からは病魔が去り、以降『蜘蛛の毒』で倒れる者は出なかった、と」  あくまで伝承に過ぎないが、この逸話を元にして、疫病を鎮める為に祭りが行われるようになり――そして今は、恋人たちの絆を深める意味も込められるようになったのだとか。 「大切なひとと一晩中踊り続ければ、ふたりの絆は確かなものになるとかで。この祭りで意中の相手に告白したりする方も、居るようですね」  ヨハネの使徒にベリアルと、ひとびとを襲う脅威も大きい昨今――世界の救済を遂行する浄化師の皆に、是非とも祭りに参加して希望をもたらして欲しい。要約すると依頼は、そんな感じのもののようだった。 「契約によって結ばれた、喰人と祓魔人……。そこに、運命的なものを感じずにはいられないでしょうし、ね」  舞踏祭に参加するにあたっては、蜘蛛の意匠があしらわれた装束を纏って踊ること。そして、ふたりの絆を現わすような演出を加えて欲しい、とのことだ。 「例えば、ヴァンピールの方でしたら、毒を吸い出すような口づけを。デモンの方なら身体能力を活かして、パートナーを抱えて華麗に跳躍してみたりだとか。色々工夫してみるのも良いと思います」  ――何より一番大切なのは、心から祭りを楽しむこと。最後にそう言って、教団員は依頼の説明を終えたのだった。 (踊る、踊る)  ああ、死がふたりを分かつまで。どうかあなたは、この手を離さないでいて――。
夏の残響、小さな秋
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帰還 2018-10-03

参加人数 5/8人 月村真優 GM
例えば、朝早くに目が覚めた時。寝具の温もりを名残惜しく思うようになっていた、とか。 例えば、家を出ようという時。あれほど大音響で暑苦しく夏を謳っていた蝉の合唱が聴こえなくなっていた、とか。 例えば、ふと青空を見上げた時。うずたかく湧き上がる入道雲の代わりに、柔らかく薄く広がる鱗雲を見つけた、とか。 例えば、窓から道行く人の装いを眺めた時。いつの間にか長袖を多く見かけるようになり、彼らの纏う色合いも移り変わっていた、とか。 例えば、夕餉を何にするか考えながら影長く延びる帰路を急いでいた時。ふと、きのこシチューの匂いが鼻についてメニューが決まった、とか。 例えば、灼けつくような夕陽に胸を衝かれた時。ああこの時間にもう日が暮れるのだ、と時計に告げられた、とか。 例えば、夜空の月を二人で眺めた時。冷えた夜風に身を寄せ合って、ふと静けさが通り過ぎた時、響く虫の唄声が周囲を包んでいた、とか。 色々なきっかけがあるだろう。様々な光景が、音が、味わいが、香りが、肌に触れる涼やかさが、一つの事実をそれぞれのやり方で告げている。 秋の到来だ。 まだ紅葉には早く、夏の名残はまだまだ残っている。それでも日を重ねるごとに、確実に薄れていくだろう。 この夏はあなたたちにとってどんな夏だっただろうか。やり残した事はないだろうか。 この秋はあなたたちにとってどんな秋になるだろうか。やりたいことはなんだろうか。 少し、考えてみるのも悪くない。
お薬飲めるかな?
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帰還 2018-10-03

参加人数 4/8人 あいきとうか GM
 竜の渓谷とは、ドラゴンたちにとっての楽園だ。  管理者たちによって守られるその地では、様々な年齢のドラゴンたちが優雅に暮らしている。  そう。幼体のドラゴンも、数多くいるのだ。 「あれらもどうやら、ヒトの子とさして違わぬらしいのう」  疲れがにじむ声で、浄化師ユギルは言う。 「なにはなくとも知恵熱を出す。幼体と言うても、もうずいぶん生きておるはずじゃが、それはそれ」  明確な理由のひとつもなく、幼いドラゴン数体が一斉に知恵熱を出した。  とはいえ管理者たちもこの程度のことで慌てたりしない。なにせ祖先の代から幾度も発生してきた、よくある幼体ドラゴンの体調不良だ。成体のドラゴンでも、たまに風邪をひいたいりするのである。  慌てず騒がず、改良に改良を重ねた薬を管理者たちは知恵熱を出した幼体ドラゴンらに与えようとして、拒絶された。 「これまではそのようなこと、なかったそうじゃが。ほれ、事情が変わったからのぉ」  幼体ドラゴンは、浄化師を知ったのだ。  例の事件以後、薔薇十字教団と竜の渓谷の結びつきは一層強くなり、要請があれば浄化師が現地に赴くようになっている。  同族と管理者しか知らない幼体のドラゴンたちは、箱庭でもある楽園の外からやってくる人々に、興味津々なのだ。 「そういうわけで、吾らが赴いたのじゃが……。油断しておった。幼体と言えど、竜は竜じゃ」  ユギルのパートナーであるロリクは、幼体ドラゴンの歓喜の突進を食らって全治五日の負傷。  同行していた他の浄化師たちも、それぞれ知恵熱を出している幼体ドラゴンたちの歓待を受けて、即座に病棟送りになった。  かろうじてユギルだけが五体満足で逃げ帰れたのだ。 「よいか、可愛い子らよ。くれぐれも気をつけて、仔竜どもに薬を飲ませるのじゃ。でなければ間抜なロリクの二の舞……ぷ、くすくす。おっといかん、本音が……。あれは、管理者らの手からはどうしても飲まぬと駄々をこねておる。吾らに構うてほしいのじゃろう」
シェガー・ナイト・パーティ
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帰還 2018-10-02

参加人数 8/8人 GM
 おんなのこはなんでできているの?  それはね、甘い、甘い砂糖菓子で出来ているの! ●  今回の指令は女子限定なんだ、とロリクが口にした。  え、俺らいますけど……とパートナーと一緒にきた男性陣は困惑した。 「まぁ聞け。今回お前らに行ってほしいのは、とある屋敷だ。  その屋敷の前の持ち主はさる貴族で、一人娘がいたんだが、病弱な少女は病であっけなくなくなった」  病弱である少女は一度も屋敷の外と出たことがなく、広い世界を自分の部屋の窓から眺めて過ごしていた。  少女が知るのは窓からの変わる季節と本で得た知識、たまに聞こえる外の楽しそうな音ばかり……。 「その貴族は娘がなくなった悲しみに屋敷を手放した。その屋敷は多くの人の手に渡ったが……そこから問題が起こった。  その屋敷には少女の呪いがかかっていたんだ。呪いといっても些細なものだ。  ときどき少女の笑い声や歌声、ものが移動していたりとかわいらしいものだが、このままでは不気味がって屋敷に持ち手がつかなくなる。  で、お前らの出番だ。今回、お前らにしてほしいのは、ずばり! 女子会だ」  はい?  真面目に聞いていた浄化師たちは目をぱちぱちさせる。 「つまりな、この女の子は友達がほしかったのさ。その友達と遊んだり、甘いお菓子を食べたりしてみたかったのさ」  けど、どうして女子会?  もし楽しい経験やそんな雰囲気を出すなら男性がいてもいいんじゃないの? と当然の疑問。  そして男性陣たちもそうだそうだと視線を向けてくるのにロリクはため息をついた。 「それがな、どうもその死んだ少女はシャイらしいんだよ。男がいる、とかそういう気配があると物音も笑い声も一切聞こえないんだ。  そら、まぁ、死ぬまで狭い部屋にいて外を眺めていたんだから知らない男がいたらびっくりしちまうだろう。  つまり、この女の子は同性のお友達と過ごしてみたいっていう気持ちがあったのさ」  ああ、そういうことか。 「今回お前たちはこの屋敷に泊まり込んで、女子会をする。ここに集まったメンツで好きなように遊べばいい。  ときどき笑い声や歌声やいたずらがあっても、それは女の子が一緒に楽しんでいるのだと受け止めてやれ。  楽しい思い出があれば、この子の呪いも消えるだろう。で、ここに集まった男性たちは昼間に女性陣がある女子会の準備の手伝いがメインだな。  あとは邪魔にならないように、端っこで男子会でもするか? うわ、むんむんしてそうだな」  失礼なー。いや、むんむんしたくない。男同士だって楽しいんだぞ。きっと、たぶん。 「はいはい。じゃあ、女性陣はどんなパーティをするのか計画して、買い出しやら準備をしてくれ。で、残った野郎ども、お前たちには別件がある」  なんですか、もう男同士、むんむんした男子会の準備でもしますよっ! 「男子会ってのは方便だ。女性陣に気付かれたらいけないからな。お前たちにはこっそりと屋敷の外で護衛をしてほしい」  護衛? 「実は、この屋敷に目をつけた終焉の夜明け団の魔術師がいる。そいつはこの屋敷の呪いを悪意で染め、利用しようとしているようだ。  たぶん、女子会を邪魔してくるだろう。お前たちはそんな悪党を陰ながら退治してほしいんだよ。  今回、女性陣は女子会……武器なんかは持たずに楽しむことで、浄化することに専念してもらう。だからこの護衛のことは内緒な?  だって、護衛されてるって知ったら、心から楽しむどころじゃないだろう?  それだと、たぶん、女の子の呪いは浄化できない。嘘偽りのない幸せな一夜が必要なんだ」  真剣に言われて男性陣たちは顔を見合わせる。なんか思った以上にこれってすごく重要な立ち位置じゃ? 「パートナーには内緒の任務、まぁ、せいぜい頑張って隠し通して指令を遂行してくれよ?」 ●  埃をかぶった屋敷のなかで女の子の声がする。  おんなのこってなんでできているの?  それはね、すてきなすてきなものでできているの!
君が好きなもの、なぁに?
とても簡単|すべて

帰還 2018-09-30

参加人数 5/8人 GM
 今日も今日とて指令を受けにエントランスへと行くと、いつもは指令発行受付口にいるロリクと、調査員のユギルを見つけた。  この二人は浄化師兼夫婦だ。現在は第一線をひいて仕事がそれぞれ異なるため、一緒にいないことが多い。  そのため、こうして二人で一緒にいるところを見るのは稀だ。珍しい。 「ほら、お前の好物のおにぎりにおかかいれといたからな。腹が減ったら食えよ」 「うむ。うむ。うむ!」  ロリクが差し出す包みをユギルが嬉しそうに受け取っている。  あー、お仕事で遠方に行くユギルさんの見送りかぁ。  お弁当を渡していていいなぁ。  浄化師たちが微笑ましく見ていると。 「む。子らか。……指令を受けにきたか? 精進するとよい。……この弁当は吾のぞ」 「誰もとらねぇよ。お前ら、ちょうど、護衛の指令があるんだ。それをまわしたい。今日中には終わる依頼だから、そこまで張り詰めなくていい。ただ昼までかかるから弁当もっていけよ?  あ、そういえば、お前らってパートナーの食の好みとか知ってるのか?」  ロリクがなにげなく口にした言葉に、それぞれ顔を見合わせる。  食の好み……。 「その顔だとないみたいだな。まぁ、ほとんどの浄化師たちが寮生活だもんなぁ。料理長がいろいろと用意していつもおいしいもの食べられるからなぁ。……今回回す指令、実は出発まで時間の余裕があるし、今日の昼は互いに弁当作って食べさせあいしてみたらどうだ? 相手が普段どんなものを食べているのか、食の好みを知るってのはわりと大切だぞ~」
腐敗したもの
普通|すべて

帰還 2018-09-29

参加人数 8/8人 三叉槍 GM
●二度目の生 「おはようございます」 「ああ、おはよう」  一人の青年が爽やかに挨拶をし、初老の男性が手を上げてそれを返す。どこにでもある日常的で牧歌的な風景。  この青年の名はサルベル=ニルガン。  彼は通常の人間ではない。一度命を失い、そしてそこから帰還した者。いわゆる『アンデッド』である。 「今日も森へ行くのかい?」 「ええ、僕達も日銭は必要ですからね。貧乏暇なし、です」  男性の問いに笑顔で答えるサルベル。  彼はこの村で木こりの仕事をしている。森に一人で赴き、木を切り倒し月に2度来る行商人に買い取ってもらう。その繰り返し。  一人で行動するのは彼の性に合っていたし……正直言うとあまり村人たちと顔を突き合わせて行動するのは気が引けた。  アンデッドがゾンビのような死者ではなく、蘇った生者であるという認識が一般的になったのは比較的近代である。  今では大規模なお祭りが行われるほど受け入れられたその認識であるが、この村のような都会との情報の断絶のある田舎の村では未だに根強い差別が残っていることが少なくない。  サルベルも露骨に石を投げられたりといった直接的な暴力はまだ受けてはいないが、すれ違う際に避けて通られたり、店に入る事を拒否されたりという嫌がらせは度々受けていた。  それでもなお彼がこの村に留まっているのはこの村が恋人の故郷だったからである。  アンデッドは強い怨念や執念により魂が死を拒む事により生まれるという。  彼の場合は恋人の存在がそれであった。  彼女と一緒にいるときに突然ベリアルに襲われ、彼女を逃がすために犠牲になったのが、彼の一度目の死。  その後、彼女への想いから二度目の生を受け起き上がった彼だったが……しかし、間に合わなかった。  彼は生前よく話していた彼女の故郷に彼女を弔い、そしてここで暮らし彼女の墓を守っていくことを決めたのだった。 「なら、気を付けるといい。最近、森に良くないものが出るという噂がある」  その中でもこの男性はほぼ唯一と言っていい、この村でサルベルに友好的な人間である。  彼にはとてもよく助けられている。サルベルは彼には内心とても感謝していた。 「よくないもの?」  男性の忠告に耳を傾ける。日々何もないことが特徴とまで言えるようなこの村ではそういった話は滅多にない。  特に村人との交流のないサルベルには、ほとんどそういう話は入ってこない。故に非常に気になる話題だった。 「熊がね」 「熊が現れたんですか?」 「いいや、熊が――食い殺されていたらしい」 「……なるほど」  この近辺で通常気を付けるべき動物と言えば熊である。  逆にいえば熊にさえ気を付けていれば大した危険はないし、熊以上の脅威も少ない。  その熊が何者かに殺されている。  確かにそれは気を付けるべき事案であろう。 「わかりました。気を付けましょう。貴重なお話をありがとうございます」 「……サルベルくん」  ぺこりと一礼しその場を去ろうとしたサルベルの背中に男性が改めて声を掛ける。  その声音は今までのものとは違い、どこか真剣みを帯びた低いものだった。 「娘の事はもういいんだ。君は第二の生を得た。こんな狭い村など捨てて……もっと自分の生き方をしなさい」 「……僕は、この村のこと好きですよ」  そう言ってにこりと笑顔を見せて去るサルベルに、男性はもう何も声を掛けなかった。 ●疑わしきは 「アンデッドが夜な夜な化け物に化けて暴れている?」  忙しい業務の中、わざわざ至急と注釈をつけて送られてきた報告書を見て教団付きのマドールチェの男は眉をひそめた。 「そうなの~。大変そうネ~」  その内容に能天気に心配する助手の娘に男はため息を吐いた。 「そんなわけがあるか。十中八九勘違いか、何らかの悪意だ」 「え? そーなの? でも一応目撃証言もあるみたいだけど」 「ああ、あるな。人間程度の身長で大きく太った体形。そして、腐った死体のような臭いと外見。これはゴールの特徴だ」 「ゴール?」 「ゾンビの発展形だ。当然アンデッドとは違う。大方、動く死体という外見から勝手に関連性を想像したんだろう」  マドールチェの男が身長に釣り合わない大きな椅子に腰かけ息抜きの為のコーヒーをすする。 「まあ、俺の知らないところでアンデッドをゴールに変質させる大魔術があるという可能性もゼロとは言わんが……あくまでゼロとは言わないというだけの可能性だな」 「ん~、それじゃあ、どうするの? 差し戻す?」 「いや……恐らく実際に被害があるのは本当だろう。今のところまだ人的な犠牲が出ていないから収まっているが、もしこのまま放っておいて誰か犠牲者が出た場合……面倒なことになる」  わざわざ至急とまで付けてアンデッドの青年に対し、大した証拠もなしに名指しで依頼を出してきた連中である。  そこに被害者が出てきたとき、『推定有罪』の青年に対して彼らがとる行動などおおよそ想像がつくというものだ。 「事態は一刻を争う。わざわざ差し戻して書き直させる時間はない。この際、この依頼に乗ってやろう。無論、こちらとしても注釈は付けさせてもらうがな」
旅立つ友にはなむけを
とても簡単|すべて

帰還 2018-09-28

参加人数 8/8人 あいきとうか GM
 枯葉によく似た色の、美しいドラゴンが憂いの息をつく。 「私はね。ヒトになりたかったのだ」  彼はもうじき寿命を迎える。ここで朽ちることも霊廟に向かうこともできたが、彼は多くのドラゴンがそうであるように、薔薇十字教団にその身を捧げることを選んでいた。  ときがくれば、自分もそうするのだろう。自分も彼も、ヒトの子らを嫌ってはいなかった。はかない一生を懸命に生きる、花のように美しい命の糧になることに、疑問はなかった。 「ヒトは魔法を扱えず、空も飛べないというのに? 百年にも満たぬうちに、死ぬというのに?」  そう、ヒトははかない。アンデッドでさえ、ドラゴンから見ればか弱い。  美しいとは思うが、そうなりたいと考えたことはなかった。  彼は笑う。 「構わぬ。ヒトになれるなら、私は魔法を捧げよう。翼を落とそう。牙も爪もくれてやろう」  その代わりに。 「ヒトの喜びを教えてくれ。短き生涯で得る美しきものを、醜きものを、苦しみを、喜びを。私も感じたい」  ニーベルンゲンの草原に風が吹く。咲く花々が舞う。ほんの少し冷たい空気が、秋であることを告げている。 「私も、ヒトのように笑って悲しんで、花のように生きたかった」  足音が聞こえた。ワインドと、彼が連れてきた浄化師たちの足音だ。 「ではな」 「……ああ。さらばだ、グレーテル」  名をねだった彼にその記号を与えたのは、ワインドだった。グレーテル。ヒトが書き記した物語に登場する、少年の名らしい。  グレーテルがいなくなった草原で、私は天を仰ぐ。青く高い空だった。 「――――」  ひとつ、声を。咆哮でも囁きでもない、音を。  ヒトになりたいと言ったドラゴンを想う。誇りを捨てたわけではなく、ただ夢を見た枯葉色のグレーテルを想う。彼はもう、あまりに長い命を全うしたころだろう。 「…………」  私に名はない。ヒトになりたかったわけでも、必要としたわけでもないから。いるか、と聞いたワインドに、いらない、と応えたのだ。 「ワインド」  息を吸う。吐く。ひやりと心地よい空気だった。  旧友が二度と吸うことのない、空気だった。 「ワインド! 浄化師をここに! 頼みがある!」  宙を舞い、私は声を張り上げる。集落の建物から出てきたワインド・リントヴルムは、何事かと驚いていた。 「弔いを。我が友のために、手向けの花を。ヒトがヒトにそうするように。――嗚呼、我が爪では叶わぬことよ」  岩を砕き肉を裂くことはできるのに。  亡き友のための花束ひとつ、私は作れない。
ダンジョンに挑戦しようLv2
普通|すべて

帰還 2018-09-28

参加人数 8/8人 春夏秋冬 GM
 栄光と挫折が入り混じり、熱気と狂騒に浮かれる冒険者達が集まる場所。  それが冒険者ギルド「シエスタ」だ。  酒場を兼ねた情報交流の店だけあって、いたる所で酒盛りに余念がない。  中には、酒をおごる者も。  もっとも、おごる理由が純粋な好意だけとは限らないのが、シエスタという場所ではあったが。 「どうぞどうぞ。今日は私の奢りです」  にこやかな笑顔に含みのある眼差しを混ぜ合わせ、ギルドの紹介業者であるクロアは、テーブルに就いた冒険者達に気前よく言う。 「わぁ、嬉しい。タダってことなんだ、クロさん」  冒険者の1人、20そこそこの見目良い美女といった姿をしたセパルがクロアに返す。 「タダより怖い物は無いって言うけど、その辺どうなの?」 「いやですねぇ」  笑顔でクロアは言った。 「おごるだけでタダじゃないですよ」 「必要経費ってことね。おごるから仕事引き受けろってことでしょ?」  そう言いながら店のウェイトレスを呼んだのは、セパルの仲間である涼やかな美女セレナ。 「セパルはカルアミルクで、私はサザンオレンジで。ウボーは、どうする?」  セレナに訊かれたのは、冒険者仲間の最後の1人であるウボー。  20代半ばの厳ついにぃちゃんといった見た目のウボーは、見た目に反して甘めのお酒を注文する。 「ルシアンを頼む。あとツマミにチーズとサラミと枝豆」  注文を受けたウェイトレスが離れたのを見計らって、セパルはクロアに言った。 「それで、今日は何の依頼? 最近、儲かってるみたいだけど」 「ええ、お蔭さまで。貴女達が手に入れてくれた試練の塔までの地図と内部の情報は、よく売れましたからねぇ」  いまクロアが口にしたのは、以前セパル達が浄化師達の手助けを受けて訪れたダンジョンのことだ。  島ひとつが丸ごとダンジョンとして認定されている虚栄の孤島。  その中にある魔法使いが建てたと言われている試練の塔。  そこに行くまでの安全な道のりと、塔内部の情報を記した物をクロアはセパル達から買い取り、それを写した物を冒険者達に売ったのだ。 「貴女達への情報料が、思いのほか安かったですからねぇ。お蔭で薄利多売が出来ました」 「お礼なら、あの時一緒に行ってくれた浄化師の子たちにも言ってあげて」  セパルは、お酒を持って来てくれたウェイトレスに笑顔で返しながら続けて言った。 「途中までの道のりやダンジョンの様子を一緒になってメモを取ってくれたからね。あの子たちの頑張りを、勝手にこっちがお金に変えて受け取る訳にはいかないもの」 「おや、人が好い」 「そういうクロさんだって、薄利多売にしてくれたんでしょ?」 「その方が、長い目で見ると旨味がありましたからねぇ」 「どういうこと?」  カルアミルクを一口飲んで尋ねるセパルに、クロアは笑みを浮かべ返す。 「薄利多売にすれば、それだけ多くの冒険者が試練の塔に行ってくれますから。あのダンジョンは、2階まで踏破する度に魔結晶が手に入りますからねぇ」 「……なるほど。魔結晶の売買で儲けるってことか」  唐辛子の効いたサラミを摘まみながら、クロアの言葉に返したのはウボーだった。 「直接売買しても良し。取引情報を売り買いしても良し。トーマス・ワットとセレスト・メデュースが関わって蒸気船が出来たらしい、という噂話も聞くしな。その蒸気船の燃料に魔結晶が使われているなら――」 「魔結晶の相場は大きく動くってことですからねぇ」  クロアは、ほど良い塩味の枝豆を摘まんでから続けて言った。 「上がるにしろ下がるにしろ、動きさえあれば儲けられますから。そのためにも、試練の塔で魔結晶を冒険者の皆さんには取って来て欲しいんですがねぇ」 「なにかあったの?」  セパルの問い掛けにクロアは返す。 「少しばかり、試練の塔に出て来るゴーレムに可笑しなのが混ざるようになったらしいんですよ」 「オカシイって?」  セパルの問い掛けにクロアは応える。 「ゴーレムを破壊すると、魔法らしい何かが掛けられるらしいんです」 「それって、何か危ないことでもあったの?」  これにクロアは返した。 「ネコ耳が生えるらしいです」 「ネコ耳」 「あと語尾が、にゃーになったり」 「にゃー」 「バニーガール姿になったりするそうですよ」 「コスプレ?」  クロアの応えを聞いて、セパルは頭痛を堪えているような表情になる。 「ホント、イイ趣味してるよ、あの塔を作った魔法使い」 「愉快な人だったんでしょうねぇ」 「人だったのかどうかは知んないけどね。それで、そういうのが出たからって、何が問題なの?」  セパルの問い掛けに、クロアは変わらぬ笑みを浮かべて返した。 「気味悪がって、試練の塔に行ってくれる冒険者が減ってるんですよ」 「それはしょうがないんじゃない?」  サザンオレンジを飲み干したセレナがクロアに返す。 「浄化師みたいに、怪我とかした時に助けてくれる当てがあるなら良いけど、冒険者は自分の身一つだもの。その分、慎重になるわよ」 「もっともで。だから今回も、浄化師の方達に御足労願っていただこうと思ってるんですよ」 「……試練の塔の魔法のトラップを調べて来て貰うってことね。で、その案内と、その時の情報を仕入れて欲しいってこと?」  セパルの問い掛けにクロアは頷いた。 「ええ、そういうことです」 「手伝ってくれるかな?」 「少しでもやる気を出して貰えるように、依頼料は弾むつもりです。というわけで、よろしくお願いしますよ」  にっこり笑いながら言うクロアに、肩をすくめるようにして頷く冒険者達だった。  そんなやり取りがあった数日後、教団に一つの指令が出されました。  内容は、次の通りです。  試練の塔と呼ばれるダンジョンを調査して欲しい。  試練の塔の概要は次の通り。  魔法使いが作ったとされる塔。  現在は、2階までしか進めない。  各階の広さは、50m×50m。  1階は、訪れた人数×2の小型ゴーレムが出現する。  ゴーレムは対応する人物の不利属性を持つ。  ゴーレム出現時に、落とし穴で地下に落とされる可能性あり。  地下は、落下の瞬間は床がぽよぽよしてるので、落ちても怪我はしない。  1階のゴーレム全てを破壊すると、2階への階段が降りてくる。  2階に移動すると、1階と同じように訪れた人数×2の小型ゴーレムが出現する。  1階と同じく、対応する人物の不利属性を持つ。  一定時間以内に全て倒し切れないと、追加でゴーレムが発生する。  2階に出現したゴーレム全てを倒すと、地下に落ちた者達は解放され、その際に魔結晶を手に入れることが出来る。    なお、ゴーレムを倒すと何らかの魔法的なトラップが発動される可能性あり。  どんなトラップなのか、詳細を求む。  指令書の内容は、こんな感じでした。   魔法のトラップは、どうやら大したことは無いようですし、出て来るゴーレムもそれほど強くはないので、新規に浄化師になった人にもお勧めとの事でした。  この指令に、アナタ達は――?
我が名は汝のイージス
普通|すべて

帰還 2018-09-28

参加人数 2/8人 GM
「今回任せる指令は……ここ最近浄化師としての志しに悩むことも多くなったし、いいチャンスだろう。  お前たち、アムネシア・ベリアルの疑いのある者の対応にあたってほしい」  ロリクの言葉に集まった浄化師たちは緊張の面持ちになる。  浄化師には大抵自分の生きる道があるのだが、あまりにも意識しすぎると精神的におかしくなってしまうことがある。 「今回、俺の同期なんだよなぁ」  え、ロリクさんの知り合い! 「その問題の奴のパートナーが今来てる。ほら挨拶しろ」 「あらあら、あらあら、みなさん、かわいらしい人たちねぇ」  車いすに乗って、点滴している婦人……って、え! 病人ですよ。この人! 「はじめまして。私、アライブは墓守のエマです。今回はよろしくお願いしますね。……ええっと、こんな状態でごめんなさい。私、もともと体が弱いうえ、ごぼっ!」  血、血を吐きました!  ロリクさん、この人、大丈夫ですか。 「エマは昔から病弱、貧弱、貧相、教団では知る者はみな吐血のエマと呼ぶ女だ。  あ、吐血については気にしなくていいぞ。いつものことだ。墓守としては優秀なんだが……いつもよりひどいな、なんで車いすに点滴?」 「それはおいおい話しますけど、今回は私のパートナーを助けるのに協力してほしいんです」  エマのパートナーであり、喰人の名前は陸奥という。  アライブは悪魔祓い。隠密行動を得意とし、スナイパーとして優秀だ。また絶対に前線に出ないことで一部の浄化師たちには知られている。  戦い方も、エマが墓守として注意と防御を引き受け、その隙をついて陸奥が敵を根絶やしにするという息の合ったコンビネーションを発揮する。 「陸奥は自己防衛を信条とし、絶対に自分から敵に近づかないし、見つからないようにしていた。  自分が見つかれば味方全体を危険に陥れることを危惧して……ひどく慎重な奴だったんだが」  ただし。とロリクが付け加えた。 「あのバカ、最近、なぜかその戦い方をせずに前線に出まくっているんだ」 「理由はわかっているんです。私が指令中に倒れてしまってベリアルに襲われそうになったんです。  そのとき、陸奥は私や仲間を守るために前線に出て戦って……。  もともと、ベリアルに生まれた村を滅ぼされて必要以上に失うことを恐れていたんですけど……、  それから陸奥はぼーっとすることが増えて、必要以上に手を洗ったり、眠れてないことがあって」 「典型的なアムネシア・ベリアルの症状だな。といっても、陸奥の場合は幸いにもまだ危険領域に来たに過ぎない。  今回山のなかにベリアルが出たんだが、その退治に陸奥が参加することになっている。  お前たちはベリアルを倒し、さらに彼に自己防衛をとるように促すこと」 「すいません。私も一緒にいきたいのですが、こんな有様で……ごふぅ」 「おい、もともと体が弱かったが、どうしたんだ、本当に」 「前の指令で倒れた原因にもあるんだけど……実は、妊娠しちゃったみたいなの」 「は」  は。  え、あ、あの、えーーー! 「だから、陸奥との赤ちゃんが出来ちゃったのよ。んふふふ、結婚してはや十年、諦めていたんだけど、ようやく!」 「お、おめでとうって、いまいうべきなのか! え、まて、それ、陸奥は」 「……言おうとしても、ぼーっとしていて、それに私が倒れてからますます混乱しちゃって、言うタイミングが」 「……」  ……。えーと。これってさりげなく重要なことに重要なことが増えましたよね。ロリクさん。 「お、おう。ど、どうしよう、これは」  こつん、と足音がしたのに、はっとして全員が振り返る。  黒い外套に身を包んだ、白髪の男がやってくる。整っている顔立ちはどこか陰気ともとれるほどに疲れが滲んでいる。  ぽたり、と何かが落ちた。  血だ。  よく見れば彼の両手は血まみれで、包帯がまかれていた。 「……エマ? 君は安静にしないといけない……と、先生が……っ……病室にはやく……手を、手を洗わないと、きたない……」 「陸奥、お」 「ロリク? ……今回組む浄化師たちだな? ベリアルとの戦闘……せいぜい、気をつけるんだな」  ぼんやりとした視線をさ迷わせ、陸奥はそれだけいうと報告書の提出があると口にして行ってしまう。 「ありゃ、思ったよりも重症だな。お前ら、今回は他人事じゃない。今後のことも含めて、よくパートナーと話し合って、あいつの対応にあたってくれ」 「すいません。よろしくお願いします。私に出来ることはなんでもご協力しますから」
生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ
普通|すべて

帰還 2018-09-28

参加人数 4/8人 oz GM
「ポール・キュヴィリエ」  ヤコブ・フェーンは不機嫌そうに一人の男の名を読み上げる。 「そいつは浄化師の素質を持つ男だ。……ビッシュ孤児院と自警団の両方から通報があった」  ヤコブはいかにも中間管理職といった中年男性だった。 「貴重な浄化師候補だ。どんな手段でも構わん。連れてくるんだ、分かったな」  誰かが説得では駄目ですか、と発言する。ヤコブは鼻で笑って切り捨てた。 「一度接触したようだが、手負いの獣のような有様だったらしい。酒浸りの冒険者一人すら、連れて来られんとは嘆かわしい……浄化師の質も落ちたものだ。我々司令部がこれだけ頑張っているというのに、全く情けないとは思わんかね」  ヤコブは嫌みったらしい言葉を投げかけ、浄化師の反応を楽しむように口の端を上げた。 「教団に入るぐらいなら死んだ方がマシだとまで吠えたらしい。これは教団への冒涜だ! 縄にかけても連れてこい!」  自分の言葉に酔っているのかヤコブは浄化師達に居丈高に命令を下す。  そんなヤコブに反論するように、嫌がる相手を無理矢理連れて来るなんて、と非難の声を上げる者もいる。 「なら、死んでもいいんだな?」 「え?」  その場にいた浄化師達が言葉を失う。すぐにどういう意味なのかと喰ってかかる前に、ヤコブが口を開いた。 「すでに魔力の消費に体が追いつかずパンク寸前だ。お前達が行かなければ、いつ死んでもおかしくないだろうな」  浄化師の素質を持つ者は、常人より多くの魔力を保有する代わりにひどく短命だ。  その理由は、限界を超えて生成される魔力に体が耐えきれないからだ。  魔力パンクでの死亡率は100%だ。浄化師が教団でしか生きていけないのは、その為だ。  魔力パンクする前には、胸の付近が苦しくなったり、動悸・息切れが引き起こったり、自身の意志で魔力をコントロールできなくなる等の症状が現れる。  さらに最悪なのは、コントロールできなくなった膨大な魔力に引き寄せられて、ヨハネの使徒に通常以上に狙われやすくなる。下手すれば、本人だけでなく周辺の者にも危害が及ぶ。  だから、浄化師は生きる為だったり、身の回りの者を巻き込まない為に否応なく教団の門を叩く。  教団に所属すれば、戦闘員として扱われる。魔力を安定させコントロールする術と衣食住の保証が与えられる代わりに、ヨハネの使徒とベリアルの討伐に駆り出されることになる。それを嫌がって浄化師になるのを拒む者も少なくない。 「そいつは樹梢湖に何か用でもあるのか頻繁に潜っているようだ。樹梢湖から帰ってきたところを勧誘したが逃げられている。さらに樹梢湖付近の村でよく目撃情報が挙がっており、樹梢湖内に逃げられないように自警団の者に見張りを立たせている」  ヤコブは面倒くさそうな顔を隠さず、話を続ける。 「幸いにもヨハネの使徒の目撃情報はないが、いつ現れてもおかしくないだろうな。村人を危険に晒したくなければ、早急に連れてくるんだな」  ヤコブがまるで他人事のような言いぐさで書類をめくる。 「逃げ回る馬鹿者を生かしたいなら、教団に連れてくるしかない。浄化師は教団でしか生きられないのだからな」  残酷な事実を何の感慨もなく浄化師に向かって言い放つ。 「すでに他の教団員が出向いたが説得に失敗しているんだ。説得ができるものならしてみるんだな。私はできない方に賭けるが」  意地悪げに眼を細めると、立派に整えられた髭を撫でる。 「そいつの出身の孤児院長も説得したようだが、無理だったようだなしなあ……お前達が説得失敗するのが目に浮かぶようだな」  ヤコブは浄化師達が説得できず、武力行使で連れてくると確信しているようだった。 「殊勝なことに死ぬ前に随分と院長に金を預けていったようだ。説得できないのはお前達のせいだが、必ずそいつを連れて帰ってこい。くれぐれも私の顔に泥を塗る行為はするんじゃないぞ、いいな!」  長身痩躯のヤコブは壇上から見下ろすように命じる。  浄化師達は無言のまま。それに焦れたヤコブは、 「私なら簡単に連れて来ましょう、と上司に言ってしまったんだ。必ずその男を連れてこなければならん!」  ぽろりと自身の事情を暴露したことにも気づかずに感情的に叫ぶ。 「いいか、絶対に失敗するんじゃないぞ! 分かったなら、今すぐ行け! さあ、行くんだ」  そうヤコブは部屋の扉を指さすと、犬でも追い払うかのようにシッシッと追い払った。  後味の悪い任務になりそうな予感に、浄化師達は重いため息をつくのだった。
秋の収穫祭プロデュース!!
とても簡単|すべて

帰還 2018-09-27

参加人数 2/8人 せあら GM
 ある昼下がりの午後。  教団に一人の少女から、依頼が持ち込まれた。  ふわふわとした長い金髪に、頭には白いリボンを付けた可愛らしい少女だった。  その少女は困った顔をしながら、教団員に言った。  少女の話を聞けば何でも、少女が住んでいる村では毎年収穫祭が行われていると言う。  収穫祭は村で収穫される果物を使ってタルトを作り、歌や劇、色んな催し物をして村人たちが楽しむ祭りとなっていた。  だがあまりにも自然豊かな村である為、年々村を出ていく若者達が多かった。  その為今まで収穫祭で執り行われていた歌や劇、催し物は全て廃止になり、収穫祭では村人たちで名物のタルトを食べて雑談するだけのつまらない祭りとなった。  少女……アリスは自分の祖父である村長に収穫祭を変えるように掛け合ってみるが、 「若者がいないから仕方ないじゃろ。それに子供たちも大好きなタルトが食べれれば満足なんじゃよ」  と言って全く聞く耳を持たない。  困り果てたアリスは今回浄化師たちに協力を求めて、依頼をしてきた。 『昔みたいな皆の笑顔で溢れる収穫祭にしたいんです。浄化師さん、どうかお願いします』  教団員から指令内容を聞いた貴方たちは────。
秋の訪れ
簡単|すべて

帰還 2018-09-25

参加人数 6/8人 茸 GM
 穏やかな日差しや心地良い風に秋の訪れを肌で感じる様になってきた、ある日のこと――。 「ゴホ、ゴホゴホっ……」  一室で、苦しそうに咳き込む女性が一人。 「コホッ。ハァ……まさか風邪を引くなんて……」  彼女は白髪の混じった自分の頭を抱え、ぽつりと独り言を零した。  季節の変わり目は体調を崩しやすいというが、本当にその通りだと痛感する。  場所はアークソサエティの中心街から外れたとある小さな村。  その村で行われる秋の収穫祭も間近だというのに、何故自分は風邪など引いてしまったのかと、彼女は部屋から見える裏山を寂しげに見つめた。  畑にはお芋やセロリ、ニンジンなどの野菜が実り、その向こう側に見える山の麓には葡萄や林檎、栗の木なんかが少しずつ植わっている。  農作物を育てるのが好きとはいえ、色々植え過ぎただろうかと僅かに過ぎる後悔に「そんなわけない」と瞳を閉じた。  苗木から育てた作物は可愛い我が子も同然。 「きっと熱があるから、弱気になってしまうのね」  手塩にかけて育てた作物が、負担になるわけがないのだ。  だからこそ、心配は尽きない。  彼女は重い瞼を押し上げて今一度窓の外を眺めた。  夏が暑かった分、実りが早かったり水不足から枯れ始めている作物が多く目に留まる。 「樹木の葉が茶色くなりかけてるわね」  しかし、起き上がるのも困難なこの身体ではどうすることもできない。  なかなか取り除く事のできない倦怠感に、彼女は一人、大きな溜息を零した。 「そろそろ収穫してしまわないと、あっという間に冬が来てしまうわ」  どうしたら良いのだろう……。  それに加えて雲行きが怪しい。  天気の変わりやすい山は晴れていると思ったら急に雨が降り出したり、嵐にでもなろうものなら危なくて山に踏み入る事さえ困難だ。  ――カタカタ……。  吹く風が戸を叩く。 「シートを掛けて保護だけでも……ゴホゴホっ、……ああ、無理そうね……」  無理に起き上がろうとすると頭がズキンと痛み、身体が軋む。  再び布団に倒れ込んだ彼女は、打開策を必死に考えた。 「近隣の人に頼む?」  そう呟いてから溜息を漏らす。 (――駄目よね。みんなだって収穫祭の為に頑張ってるんだから。無理は言えないわ) 「やっぱり自力でなんとか……」  できていたら苦労はしない。  例え治ったとしても、短期間で全てを収穫するのは難しいだろう。  それでも諦めるなんてことはできなくて――。 「そうだわ! あっ……イタタタ……っ」  閃いたと上げた自分の声が頭にズキンズキンと響き、咄嗟に両手で頭を押さえる。 「うっ……。とりあえず、少し寝てからにしましょう……」  そうして、少し起き上がれるようになってから、彼女はペンを取ったのだった。  ――それから二日後。  教団に一通の依頼状が届けられた。  内容は、農作物の収穫のお手伝いをしてもらいたいとのこと……。  秋の収穫祭も間近なので、直ぐに出られる浄化師は依頼人の元へ向かい、手分けして収穫をお願いします。  依頼人が無事に収穫祭を迎えられるよう、精一杯尽力してもらいたい。
夏の終わり 秋の始まり 柑橘まつり
とても簡単|すべて

帰還 2018-09-23

参加人数 5/8人 浅倉季音 GM
 教皇国家アークソサエティ「ヴァン・ブリーズ」の西。  柑橘生産の盛んなこの村では、夏の終わりに「柑橘まつり」が開催される。  夏の終わりは、秋の始まり。  村人達は秋の始まりに、神に無事の収穫を祈るのだ。  過去を辿れば村人達だけでおこなっていた、このまつり。  だが、現在は誰でも参加できる。  しかもだ。  数年前、このまつりで出逢った者達が結ばれ、話が広まっていった。  出逢いを求める者は勿論、愛しい者とともに参加する姿も、見られるようになったのである。  貴方も、そんな参加者のひとりなのですね。  さぁどうぞ。  この通りでは家の前に、各家庭ごとの屋台が並びます。  村人達が柑橘を使ったお菓子やお料理をつくりますので、お楽しみに。  まっすぐ進んでいただくと、村人達が共同で使っている倉庫があります。  壁にどどーんと柑橘の絵を描きますので、よろしければご参加ください。  あぁそうでした。  お連れさまとの縁結びをご希望でしたら、倉庫の手前を南に。  ちょうどいま手を振ってくれている、あの女性のいるところが受付です。  お好きな色の紐におふたりのお名前を書いて、柑橘の木に結んでください。  おふたりの幸せを、お祈りしておりますね。
夜長の閑談
とても簡単|すべて

帰還 2018-09-23

参加人数 8/8人 あいきとうか GM
 焼けるようだった夏が終わり、涼しい秋がやってきた。  長かった日は短くなり、ふと気がつけば夜が訪れている。この日もそんな調子だった。 「眠れない」  教団寮の自室で呟く。もう何度、ベッドの上で寝返りを打ったことだろう。安眠作用があるというハーブティも飲んでみたが、どうやら今夜は効かないらしい。  気が昂っているのだろうか。そうなるようなことがあっただろうか。緊張か、興奮か。  そんなことを他人事のように考えながら、ナイトウェアを脱いで教団の制服に着替える。ふらりと司令部を訪れ、掲示板をぼんやりと眺めた。 「……あ」  夜警募集。日付を確認してみれば、今夜だ。  慌てて受付を見ると、眠そう顔をした司令部教団員と目があった。 「三時間ほど適当に巡回してください~。たぶんなにも起こらないので~」  なんて、適当なことを言ってくる。とはいえ浄化師は二人一組で行動するもの、と思っていたところで。  以心伝心でもしたのか。ぬっと隣に現れた人物が、あまりにも見慣れたいわゆるパートナーが、片手を上げた。 「奇遇?」 「どうだろうねぇ」  肩をすくめ、夜警の依頼を受ける。どうやら教団本部周辺の夜警担当だった警備員が何名か、風邪で休んでいるらしい。代役として浄化師を立てようというわけだ。  白い満月が空に浮かぶ夜。気の抜けた夜警の指令。  さて、なにを話そうか。
メディコ・デッラ・ペステの泡沫の夢
普通|すべて

帰還 2018-09-22

参加人数 3/8人 GM
「お前たち、そろそろ、こういう仕事をまわそうかと思う」  エントランスにやってきた浄化師たちは、いつものように指令を受けようとすると、ロリクに呼ばれた。 「ちょっと精神的に危険なやつがいて、その対応をお願いしたいんだ。もしかしたらそいつは自分の行いに固執しすぎているのかもしれない」  自分の存在意義。  それにあまりにも固執しすぎるとそのことだけしか考えることができず、逆に蔑ろにすることで、どうしてこの世に存在するのかが見失い、精神が不安定となる。 「今回、気になっているのは今年の春に浄化師になったルイ・シュナイダーという男だ。  種族はヒューマン、もともと医者を目指していたそうだが……相棒はリリカ・ルルで、こっちはベリアルに村を滅ぼされたことから浄化師を目指してきた。  相性は悪くないんだが……リリカは無鉄砲でけっこう傷を作ることが多く、ルイはしょちゅう、彼女の治癒にあたっていたらしい。  その上、今年はタチの悪い夏風邪がはやってなぁ」  ああ、ロリクもかかっていたよなぁ。 「そう、それにリリカもかかったらしい。らしいと……曖昧なのは彼女は寮以外のところで暮らしていて、一週間ほど姿を見ていない。そして、ルイ・シュナイダーの姿も」  ふぅとロリクはため息をついた。 「ルイ・シュナイダーは病を治すことを志して浄化師となったんだ」  浄化師のなかでも人々の命を尊み、病を憎むことを行動概念、信念とする者が掲げるのが『病魔根絶』の精神だ。  自分の信念を蔑ろにすれば、その者は人を癒す意味を見出せず、己の命の尊さすら忘れて廃人となってしまう。  逆に人々を癒すことにのみ心を砕き、行動するといずれは正常をなくし、ささいな傷でもオペをはじめてしまうほどの狂気を出してしまう。 「先ほども言ったように、ルイは指令のたびにケガをするリリカや他の仲間たちの治癒に専念していた。  まぁもともと過去に起こったデス・ワルツを話で聞いて、二度と起こしたくないと思って医者志望となったそうだ。  医者志望だと、どうしてもあの事件のことを勉強するからな、人一倍病に対しては敏感になってしまうからなぁ。  しかし、今はペストにしろ、他の病気にもきちんと対処法があるんだが……彼はあまりにも命を守ることに固執しすぎて、常識を忘れ、  手段を択ばなくなっているのではないかと思われる。  ちょっと前から少し気にはなっていたんだが……お前たちにお願いしたいのは、リリカ・ルルの住まいへと訪れ、無事かの確認。  そしてルイがいれば、彼の状態を確認し、彼への説得を試みること。  リリカがいるなら彼女にも事情を説明し、一緒に説得にあたること。精神的に追い詰められて、精神が暴走状態にあるやつはベリアル化の可能性もあるが、  絆を結んだパートナーの声で戻ってこれる。ただリリカも突然のことでびっくりして説得もなにも考えつかない可能性は高いから、  お前たちがあれこれとアドバイスしたり、サポートしてやれ。  これは他人事じゃない。お前らだってある可能性があるんだ。今後のためにもきちんと対応してこい」 ●  光を嫌い、彼はカーテンをしっかりと閉めた。薄暗い部屋のなか。  彼はマスクをかぶる。自分が病にかかってはいけない。病から守らなくては。大切な人たちを。  強い香辛料の匂いが漂う、鳥のようなマスクをつけて彼は助けるべき患者を見る。 「だいじょうぶ、だいじょうぶ、だいじょうぶ、だいじょうぶ、たすける、たすける、たすけてみせる」  メスを握りしめ、彼は告げる。 「いのちをたすけてみせる。きみをすくってみせる。やまいよ、きえろ」  救うための、その指先は、黒く染まり、ひび割れていた。
スリーサイド・デスファイト
難しい|すべて

帰還 2018-09-22

参加人数 8/8人 黒浪 航 GM
 晩夏のある朝、霧深い森の中を、黒い外套に身を包んだ四人の男が音も無く駈け抜けてゆく。  一定の速度で、息も乱さず、木々の間を滑るように疾走していく彼らの姿は、さながら死神か、幽鬼のようだ。  全員が終焉の夜明け団の信者だが、巨大で異様な組織の中でも、彼らはひときわ異彩を放っている。  彼らは、組織の裏切り者や、敵対者の抹殺を主な任務として活動している信者たち――いわゆる処刑人、暗殺専門のスペシャリストなのだ。  当然ながら、その実力は折り紙つきで、彼らに狙われて命を落とさずに済んだ者は、数えるほどしかいないという。 (そろそろ、か……)  四人の先頭をゆくアインは、ターゲットが近いことを察して、後方の部下たち――ツヴァイ、ドライ、フィーアに注意を促すハンドサインを送った。  経験豊富で、普段は常に冷静沈着な三人の部下も、今回ばかりは内心の不安と緊張がはっきりと顔に表れてしまっている。 (まあ、無理もないな)  アインは、五感を研ぎ澄まして前方の気配を探りながら、乾いた唇を舐めた。    組織のアジトのひとつが、ひとりの女によって壊滅させられた――数日前、本部にその情報が届いた時には、アインも思わず自分の耳を疑った。  やられたのは、辺境にある小規模な拠点ではあったが、それでも常に十名以上の魔術師が所属し、防衛にあたっていたはずなのだ。それを、まさかたったひとりの女に潰されるとは――。  敵の正体は不明だが、相当な実力者であることだけは間違いない。  油断すれば、こちらがやられる――アインが額に浮いた汗を無意識に拭いながら、木々の間を抜け、小さな丘の上に出たとき――、 「待っていましたわ」  突然声がして、慌てて見上げると、丘の頂上にたっている若い女が、こちらを見つめて微笑んでいるのに気づいた。 「……っ!!!」  四人の男は驚愕し、不用意にもその場で硬直してしまう。 (ばかな……この俺が、まったく気配を察することができなかったというのか……)  アインは、信じられないような表情で女の柔和な顔を見つめる。  女の周囲には、キメラと思われる異形の怪物が、三体。  大きさは、大人の人間とほぼ同じ。爬虫類の顔と皮膚をもつ、二足歩行のモンスターだ。おそらくは、トカゲとサルを合成して生み出したキメラだろう。  あえて名付けるなら、リザードマン、といったところか――。  なるほど、キメラを引き連れていたのだとすれば、女ひとりにアジトが壊滅させられた、というのも納得がいく。 「……我々のアジトを襲ったのは、お前か」  アインの隣にたつツヴァイが、重たい声で訊くと、 「ええ、そうです」  着古した修道服に身を包んだ女は、金色の眼を細めて余裕たっぷりに答えた。 「なぜだ……なぜ、我々の敵となる?」  四人で一番若いドライが口を開くと、女は小さく肩をすくめた。 「ここで命を落とすあなた方が、それを知る必要はありません」 「なるほど……」  フィーアが殺気を放ちながら不気味な笑みを浮かべると、アインはしずかに腰のナイフに手をかけた。 「女……殺すまえに、お前の名を聞いておきたい」  アインの問いに、女は、軽く笑って、 「ルシア……それが、わたしの名です」  意外にも素直に答えた。 「そうか……。では、覚悟しろ。ルシア」  アインがそういって、ナイフを手に駈け出そうとした、まさにその時――、 「ま、待てっ!」  油断なく周囲に気を配っていたツヴァイが、緊迫した声をあげた。  アインがとっさに振り向くと、部下の視線の先に、今しがた森から出てきたばかりの一団の人間がいるのが目に入る。 「!? ……教団の浄化師が、なんでこんなところに……?」  アインが苛立たしそうにつぶやくと、 「わたしが呼んだのです」  ルシアが、金色の眼を細めて、嬉しそうににいった。 「なに……?」 「終焉の夜明け団のアジトを襲えば、あなたたちが追ってくることは、はじめからわかっていました。ですから、アジトを襲う前に、教団に情報を流しておいたのです」 「…………」 「わたしは、今まであなた方からただ逃げていたわけではありません。彼ら――教団の浄化師たちをずっと探していたのです。わたしに代わって、あなた方を倒してもらうために」 「なんだと……」 「あなたたちと、薔薇十字教団の浄化師……はたして、どちらが強いのでしょうね……」  ルシアは、頬に手をあてながら、不敵な笑みを浮かべる。  浄化師たちは、終焉の夜明け団の信者とおぼしき男たちと、キメラを従えている女を交互に見つめつつ、武器を構える。  数日前、「ソレイユ地区の北部にある廃村に終焉の夜明け団のアジトがある」という未確認の情報が教団の本部に入り、その真偽を確かめるために派遣されてきたのだが――どうやら、今回はあの女に利用され、上手く操られていたらしい。  まったく、不本意で癪に障ることこの上ないが、こうして終焉の夜明け団の信者と、禁忌魔術を使用する者を見つけた以上、浄化師としてやるべきことはひとつしかない――。 「面倒だが、両方やるしかないな……」  アインはナイフを構えつつ、部下たちに頷いて見せる。  ルシアと、教団の浄化師を同時に相手にするのは厳しいが、かといってここで尻尾を巻いて逃げ出すわけにもいかない。  見たところ、女と浄化師たちは、友好関係にあるわけでもなさそうだ。となれば、こちらにも十分つけ入る隙はある――。  朝霧の流れる草原の丘で、今、奇妙な三つ巴の戦いがはじまる――。
汝を守り、支えるもの
普通|すべて

帰還 2018-09-20

参加人数 6/8人 GM
「お前らは、自分の武器って大切にしているか?」  指令受付口でロリクが問うた。  浄化師たちの使う武器――魔喰器は、生け捕りにしたベリアルを武器へと変えたそれは魔術鍛冶職人ヴェルンド・ガロウなどの一部の腕のよい鍛冶職人によってつくられたものだ。 「魔術鍛冶職人はわりといるが、魔喰器を作れるのはとても少ない。それだけ大変難しい技術によってつくられている。  うん、たまに、ハリセーンとかよくわからないものがあるが、本当にたまによくわからないおたまとかあるが、あそこらへんはほんとよくわからないけど、ヴェルンドのおちゃめもたまに理解できないもんだ。疲れていたのか? いや、ほんと」  ロリクはこほんと咳を一つしたあと話を戻した。 「今回はその魔術鍛冶職人からの依頼だ。あ、といっても魔喰器を作れるやつじゃない。将来的にはなりたいとは口にしているが、将来的にどうなることやら」 「どうなることとはなんザマス! 僕は必ず魔喰器を作るザマス!」  いきなり声をあげたのは金髪に青い瞳、とがった耳の――エレメンツの青年だ。ほっそりとした肉体の青年は胸を反らした。 「はじめましてザマス! 僕はウィリ・ウィリカ・レイド・ノルト・ヴァ」 「長い、長い、長い! 気軽にウィリでいいだろう!」 「むぅ。自己紹介くらいはきちんとしようと思ったザマスが、まぁ、本気出してやったら一日かかっちゃうザマスからねぇ」  ウィリはロリクを睨みつつ、笑った。 「将来、世界一の魔術鍛冶職人になる僕のことをきちんと覚えておくザマス!」 「今は見習いだろう」  ロリクが冷たくつっこんだ。 「今回の依頼人はこいつだ。なんでもここから一日ほどかかる距離に森があって、そこを抜けたところにある崖にいい魔結晶があるそうなんだ。  ただこの崖はちょっと危険でな、実はソードラプターの巣があって、二羽ほど目撃されてる。  ちなみに巣はちょうど崖の中央部で、上から紐を吊るして降りるなんかは危険すぎるし、下からのぼるのも険しすぎて困難だ。デモンなんかで飛べるやつがいたらぎりぎり手が届く、ぐらいの高さの場所だ。  ソードラプターを退治しつつ、魔結晶を集めるのを手伝ってほしいというものだ」 「野宿の準備はばっちりするザマス! 調理用発火符なんかは僕が用意しておくザマス。  なんでついてくるかって……道具となる大本の素材はぴちぴちなときがいいザマス! それに素人が乱暴にやって傷がついても困るザマス! といっても僕は戦うなんて野暮なことはしないザマスからしっかりと僕のことを守るのはお願いザマス。  武器や道具を粗末に扱うやつは軽くおしおきしちゃうザマスよ?」
森の蠢き
難しい|すべて

帰還 2018-09-19

参加人数 4/8人 春川ミナ GM
「なぁなぁ! おもしれーもん見つけたんだ!」 「何よ? アンタが言う面白いものってどうせ熊のフンとか変な色のカエルでしょ? 早くお仕事して帰るわよ!」  年の頃は12、3歳くらいだろうか。活発そうな男の子と真面目そうな女の子が山道を歩いている。  背中には柴(しば)が入ったカゴ。恐らくは家の手伝いなのだろう。    ここはミズガルズ地方、ソレイユ地区の端。木々が生い茂る小高い山に隣接するように村があり、村人達はその恩恵を受けて生きている。主にここで採れるのは質の良いナッツで、その実を加工した工芸品や食料品で生計を立てているが、あまり裕福では無い為に成長したらこの村を出て行く若者が多く、過疎化に悩まされているのが実情だろうか。 「ほんとだって! 今度は変なものじゃねーよ! 白くてツヤツヤスベスベな岩なんだ! 姉ちゃんもきっと気に入るし、もしかしたらなんかの宝石かもしれねぇ。そしたら俺達お金持ちかもよ?」 「はぁ……。アンタねぇ。ここの山は土は良いけど鉱石の類いなんて出ないって昔に偉い学者先生が言ってたでしょ? ホラ、そんな事よりこのカゴいっぱいにしなきゃ、またお母さんに叱られるよ?」  姉と呼ばれた少女は溜息を吐いて柴を拾いながらカゴに入れていく。きょうだいの家はナッツの加工を主に請け負っており、ローストする為に大量の質の良い焚き木や柴が必要なのだ。なので他の村人達よりは比較的に山の中を歩くのは得意としている。弟が変な石だか岩だかを見つけたのは山を遊び場にしていた事もあるのだろう。 「姉ちゃん! こっちこっち! ……あれ?」  男の子が得意気に先導するが、次の瞬間、怪訝な表情になった。 「何よ、どうしたの? アラ、本当に綺麗な岩ね。石灰が混じっているのかしら。大理石の材料にはなりそうもないけれど、これはこれで良いわね」 「う、うん。……あんなところにあったっけ? 俺が見た時はあの大きな岩の影にあったんだけど」  首を捻る男の子だったが、少女はゆっくりと岩に近づく。大きさは今少女達が背負っているカゴにかろうじて入るくらいだろうか。 「丸いからちょっとした事で転がっちゃうのかもね。でもここは平坦になっているから大丈夫よ」  手に持った小枝で岩を軽くつついたり、叩いたりする少女。動いたりしないと解ると、直に手で触り始めた。 「わ、本当にツヤツヤしてスベスベ! これって削ったら美白の化粧品にならないかな?  うーん。……石灰だったら無理ね、かぶれちゃうから」 「姉ちゃんってホントに金の事しか興味無いんだな」 「当たり前よ。私はこんな村早く出て都会のお金持ちと結婚するんだから」 「出たよ出たよ。姉ちゃんの妄想が」  岩を撫でさする少女は何とか岩を持ち運べないか試行錯誤しているようだ。 「ねぇ、アンタ。私のカゴに入っている柴を全部そっちに移してくれない?」 「え、まさか」 「まさかよ。持って帰るの。ホラ、キリキリ働いて」 「うぇぇ……。マジかよ」  文句を言いつつも弟は姉のカゴから柴を全部自分のカゴに移した。おかげで姉のカゴは空。 「じゃ、この岩を私のカゴに入れるから手伝ってちょうだい。帰ったらナッツクッキー焼いてあげるから」 「ヘイヘイ、全く人使いの荒い姉ですこと」  そう言いつつも弟の顔は笑顔だ。お菓子に釣られたのかもしれない。 「ありがと。……ッ! 結構、重い、わね!」 「っとと! 姉ちゃん足元!」 「えっ!? うぐっ! カハッ!」  姉が木の根にひっかかり、転ぶのに釣られる形で弟も倒れる。 「ってて……。姉ちゃん、大丈夫か? ……姉ちゃん?」 「……」  しかし姉の顔は目を見開いたまま瞬き一つしない。腹部の上には先程二人で持ち上げようとした岩。 「オ、オイ……。冗談やめろよ、姉ちゃん、こ、これどかさなきゃ……」  弟は慌てて姉の腹の上に乗っている岩をどかそうと押すがびくともしない。 「なんでだよぉ……」  半泣きで岩を押す弟。しかし視界が歪んでいるために岩の変化には気が付かなかった。弟の死角になっている部分がピキリパキリと音を立てて罅割れて行く事に。 「ね、ねぇちゃあん。……ウオッ!?」  弟が岩の変化に気付いた時にはもう遅かった。 「ミイィィイイイイ!」 「ぎゃあああああ!」  緑色の何かが弟の視界を埋め尽くしたのだから……。  *** 「おーい! ったく、アイツラどこまで行ったんだ? 村の皆にまで迷惑かけやがって」 「まぁまぁ、もしかしたら怪我でもして動けないかもしれないし、父親なんだから理由も無く頭ごなしに叱ってやるんじゃねーぞ」 「チッ! 分かってるよ。……すまんな、手を貸してもらって。アイツらが怪我でもしてたら背中に担いで帰ってやるよ。……小さい時のようにな」  山火事防止の為だろう。柄の短い松明を掲げた大人達が総出で森の中を捜索している。  その中にはきょうだい達の父親も居た。  しかし、少し先から男の野太い悲鳴が聞こえて来た。その声に父親は駆け出した。 「見つかったか!?」 「オイッ! 待てッ!」  隣に居た友人であろう男の制止を振り切って。  ……しかし辿り着いた父親は絶句する。 「……なんだよ、これは」  そこにあったのは無残に食い散らかされた子供達の遺体。そして卵の殻のような白い破片。まるで遺体を白い花が飾るように、ばら撒かれていた。 「なんだよ、これはぁあああ!?」  父親は同じ言葉を繰り返すとその場にくずおれた。 「……獣にやられたか。この近くには凶暴な種は居なかったんだがな。巣を追われたクマかもしれん。人の味を覚えた獣は凶暴だぞ。悲しいかもしれんが、一旦村に……ってなんだこりゃ」  父親の肩にそっと手を置く友人だったが、自身の体に纏わり付くナニカを感じ、振り払おうと松明を振る。しかし何かに絡め取られるように、その腕は中空で止まった。  見回すと周りの男達も皆一様に妙な体勢のまま固まっている。複数の操り人形の糸を絡め合わせたらこんな感じに見えるだろうか。  ……糸!? まさか! 「おい! 皆! 気をつけろ! コイツは獣じゃない!」  友人が何かに気付いて警告を発した時にはもう遅かった。すでに全員が罠にかかっていたのだから。 「ミィイイイイ!」 「ぎゃあっ!?」  それは例えるならば大きな緑色の芋虫だった。ただただ巨大である以外は。  捜索に来た男の肩にじゃれつくように乗る姿は愛嬌があるかもしれない。……首筋に噛み付いていなければ。 「ぎゃあっあっッッァッ……!」  芋虫が口から白い糸を出し、男の顔に吹き付ける。悲鳴をあげていたが、頭全体を覆うように糸が巻きつけられ、やがてガクリと力無く首が垂れ下がった。  男から離れた芋虫は地面に落ちた松明を避けるように進み、次のターゲットを物色しにかかる。 「ッ!? オイ! いつまで放心してやがる! コイツは手に負えねえ! 背を低くしてるお前は糸にかかってねぇ! こいつはベリアルだ! そのまま伏せながら逃げて教団に応援を、ギャアッ!」  友人が父親に声をかけるが、生気に満ちたと判断されたのか友人の首に芋虫が噛り付く。そのまま糸を吐き、友人は物言わぬ屍になった。 「スマン……! すまない!」  泣きながら這い蹲り、逃げる父親をその場で縫いとめられた村人達は諦めと縋る様な感情が入り混じった視線で見送るのみだった。  誰も言葉を発しない。何故ならば声を出した瞬間に自分の死が確定するのだから……。
女装コンテストからは逃げられない。
とても簡単|すべて

帰還 2018-09-17

参加人数 5/8人 oz GM
 これは新人浄化師への洗礼という名の悪しき慣習の話だ。  真夏。それは人を開放的な気分にさせる季節。夜更けの寮で男たちは大盛り上がりでゲームに興じていた。  始まりは先輩浄化師の誘いからだった。 「お前ら、今暇か? ちょっとこっちでカードゲームやらねぇ」  いつもお世話になっている先輩達から新人達にゲームを持ちかけられた。  それは徐々に白熱していき、誰かが負けたら罰ゲームをしようと言い出す。 「安心しろ。お前らが勝ったら俺らが何でも奢ってやるよ。その代わり負けたら、……そうだなあ。指令を手伝ってもおうかな」  先輩の一人がそうフォローする  日頃頑張ってるからな、というお言葉と共になんか賭けた方が面白いだろとトランプをシャッフルし出す。 「今は夏だし祭りやイベントが多いからな。浄化師が駆り出されることも多くて人手が足んないんだよ」  人当たりのいい笑みでそう言われ、罰ゲームに身構えた者も肩の力を抜いた。ゲームは口実で人手が欲しいのだろう。  もし負けても指令を手伝ったら先輩が奢ってくれるかもしれないという打算が働いた者もいた。  その場の空気に流されて、賭事は始まったのだ。  10回勝負で新人と先輩に分かれて勝ち数が多い方が、先ほどの条件が叶うということに決まり、最初は新人達が勝っていた。これなら勝てるかもしれないと言う空気が漂う。だが、中盤になると勝ったり負けたり繰り返す。  夏の暑さにも負けずヒートアップしていくゲーム。負けた者は次こそ勝つべく勝負に乗る。そうしてゲームはさらなる泥仕合へと突き進んでいく。  賭事に勝者と敗者はつきものだ。今回のゲームもはっきりと勝者と敗者に分かたれた。 「いやー、負けちゃいましたね……せっかく先輩に奢ってもらえると思ったのに」  負けた新人浄化師が残念そうに頭を掻く。 「それで、何を手伝えばいいんですか、何でもやりますよ」 「なら、女装コンテスト頼むな!」 「え?」  どうにも耳に何か詰まっているらしい。よく聞き取れなかった。 「すみません、よく聞こえなかったんでもう一度言ってもらっていいですか?」 「お前らは女装コンテストに出場するんだ」  先輩は真顔。逃げようにも肩を強く掴まれ逃げられない。 「男に二言はない筈だ。負けたら指令を手伝ってくれると言ったよな」  先ほどの人当たりの良さは彼方に飛んでいき、いつの間にか用意されたエントリー用紙を目の前でひらひらさせる。まるで連帯保証人に借用書を突きつける高利貸しのようだ。 「ひでー、あんたら俺らのことハメたな!?」 「何言ってんだ。賭事に乗ったのはお前らだろ」 「そんな指令だって分かってたら絶対に乗らなかったのに!」 「事前確認が大事だと学べて良かったじゃないか」 「イヤだー、女装はイヤだー!」  それでも往生際悪く新人は足掻く。 「俺らも申し訳なく思ってるんだよ」 「申し訳なく思ってんなら参加しなくていいですよね」 「それは無理な話だ。毎年この指令は来るんだよな。でも、やりたがる者は中々いない」 「そりゃそうでしょうよ」  新人は荒んだ顔で吐き捨てる。そこに先輩への敬意は全くない。 「ってわけで、毎年新人から尊い犠牲、ゴホンッエントリーされるわけだ」 「犠牲!? あんた犠牲って言っただろ!?」  新人は不意にあることに気づく。 「それならあんたらも新人時代にしたってことか!?」  先輩方は無言の笑みを浮かべる。 「自分がされて嫌なことは人にしないで下さいよ!」 「ふざけんなっ! 俺らだけがあんな目に遭うなんて納得いかねー、逆に後輩ができたら絶対に参加させてやると決意したわ!」 「最悪だな! そこで止めろよ、俺らを巻き込むんじゃねえ!」 「だが、断る! さあ、とっととエントリー用紙に名前を書くんだ」  先輩と新人の醜い争いが深夜に響く。それは寮母であるロードピース・シンデレラが駆け付けるまで続けられた。  毎年夏になると、ピットーレ美術館で開催される同人即売会の運営から教団にある依頼が来る。  女装コンテストを盛り上げる為に浄化師に参加して欲しい、と。  市民にもっと親しみを持ってもらう名目で毎年新人は強制参加させられる。  そうこの為に、あらゆる手段を使って新人浄化師の中から生け贄を選出するのだ。いつから始まったかは分からないが、毎年密かに行われている選出の狂乱騒ぎは教団内では夏の風物詩であった。  新人時代に女装コンテストに出場させられた歴代の先輩方が、絶対に他にも道連れをつくってやるという決意の元、負の連鎖が毎年起こっているのだ。  結局、一悶着あって女装コンテストに出場することになったあなた。  ある者はハメられたと頭を抱えたり、未だに放心状態でいる者、パートナーに泣きつく者、嬉々として楽しむ者、自分でなくて良かったと内心安堵する者といった悲喜交々な人間模様が繰り広げられる。  賭事に負けて参加することになった者もいれば、先輩に公衆面前で土下座されて否とは言えず流された者、あるいは借りの清算を求められ嫌々参加することのなった者、パートナーが面白がって勝手に了承された者と参加理由は様々だ。  もちろん女性陣の方にも話は伝わっており、彼女達は彼らが着る服のコーディネート、化粧を施す手筈となっている。  パートナーにばれたくないと隠そうにもエントリーされた――指令を受けた時点でパートナーには知らされており、どこにも逃げ場はない。  夏のバカ騒ぎ。これもあなたたちにとっていろんな意味で忘れられない思い出となることだろう。  さあ、楽しい楽しい女装コンテストの始まりだ。
歌う骨の鯨
とても難しい|すべて

帰還 2018-09-17

参加人数 3/8人 GM
 海洋に住む生物を元にしたベリアルが出現した、と報せが広まったのはつい先日。その情報から海辺の街は警戒を強めた。  むろん、浄化師たちの活躍もあるが、自衛も必要と海辺の街にある自警団たちは、昼間と夜と海辺の警戒を行っていた。  夜。自警団たちは警備のため海岸近くにテントを張り、松明を焚いて夜の海を警戒していた。  光のない暗闇に、めらめらと燃える炎。  何事もないようにと祈る、のだが。  くおおおおおおおおおおおおおおおおおん。  海から不気味な声が轟き、その場にいた者たちは驚いき視線を向け、それを見た。  暗い闇のなかに白くうごめく巨大なそれを。 「山? 違う、あれは……悪魔っ!」  一人が蒼白に顔で叫んだ。  白い骨の山だった。否、骨と骨が組み上げられ、なにかの力によって生き物の形をしている――20メートルほどのそれは炎に照らされるとわかるが、透明に近い。  骨以外はほぼすべて透明で、ぶよぶよとした水の塊。 骨と透明なぷよぷよとした塊の中心――人でいうところのあばら骨に守られた、心臓部分には青い石がきらきらと輝いていた。まるで魂のように。  それは目もなく、鼻もない。ただ口らしいものは存在し、そこから不協和音を漏らす。  くおおおおおおおおおおおおおおおおおん。  ただの大声なのだろうが、一定の音を越えたものは鼓膜にダメージを与える。たいした装備もしていなかったなら余計に。  音のせいで動きをとめた人間を殺すのに、それは動くだけでよかった。体をくねらせるだけで穏やかだった波は嵐のごとく大きくうねりあげ、その場にいた人間を、ものを無造作に襲う。  塩辛い大きな波の一撃は人々の体力をそぎ落とし、歌うように紡がれるその声は疲弊した肉体に恐怖という精神的ダメージを与えるには十分だった。  サミシイ。  サミシイ。  トテモ、  サミシイ。  何度も押し寄せる波によって蹂躙される人々には絶望が広がった。 「だめだ、一時撤退! おい、確か、調査にきている浄化師がいるって聞いたぞ! そいつに助けを求めてこい」 「はい!」  足の速いものが急いで街へと走り出す。その間も波は荒れ、一人、また一人と倒れて、ランプを持つ者が仲間を抱えて逃げようとしたとき、それが歌をやめた。  透明なそれは闇に溶け、姿が見え難い。  海は波打つ。  静寂。  ざばん、と海から顔を出したのは大きな穴だった。  穴が、迫る、迫る、迫る――。 「ひぃ!」  もうだめだ、と仲間を抱えて目を閉じた。  炎が飛び――ぐしゃりと血肉が砕けた。  ● ● ●  浄化師たちへ指令発行を行うロリクは少しばかり憂鬱そうな顔をして告げた。 「海辺の街がベリアルに襲われている。  今回、たまたま他の調査にこの街に立ち寄った浄化師のユギルが、自警団たちは守り切ったそうだが……」 「守り切ったとは優しい言い方じゃのぉ。ストレートに根負けして逃げかえってきたと言ってもいいぞ?」  ロリクが説明していると、奥から狐の面をつけたユギルが出てきた。その片腕は折れたのか、肩から吊るされている。 「ユギル! お前、安静にしろって」 「仕方なかろうが、あれを見たのは吾なのじゃから、かわいい子らへ説明せねばなるまいよ。  今回の討伐対象はただの鯨を元にしたベリアルではない、白い……骨の鯨を元にしているようじゃ。元は骨鯨という生き物じゃろう。  大きさとしては20メートル程度で、骨はむきだしじゃが、その骨を白い膜のようなもので覆われ、ぶよぶよしたクラゲのような見た目をしておる。  その中心部……人でいうところの心臓があるところじゃ、あばら骨に囲まれるようにして青く輝く石が存在した。  骨鯨は大きな声で、人の動きを止め、暴れまわり、疲労して疲れたところに大口を開けて、その場におった自警団らを食べようとしておった。  ふふ、片腕は犠牲となったが、その場にいた人間はみな無事じゃ。  しかし、いつ、あれが命を貪るために街へと入らんとも限らん。  あのベリアルはカタコトとはいえ言葉を語るゆえ、スケール2よ。お前たち、スケール2と戦ったことは?  あいつらは子供並みとはいえ知識を持っているから、きちんと討伐方法を考えて挑まねば、食い殺されるゆえ注意しておいき。  腹が立つことに鯨が出るのは、夜よ。今回、自警団が松明を灯した海岸へとやってきよったわ。  目も鼻もないが、皮膚でそうした温度を感じているようじゃな」  ユギルの説明を受けている浄化師たちに、ロリクが続けた。 「一応、こちらの用意している討伐方法としては、海岸際で焚火をして鯨を寄せての待ち伏せだ。  昼間のうちに罠や鯨の動きを止めるか考えるといいだろう。  鯨のでかさと強さは半端ないが、骨鯨を元にしているからには、水気の少ない海から遠く離れることはほぼないだろう。  なんとか海から引っ張りだして一斉攻撃できるようにもっていくんだな」 「かわいい子らよ、真正面からいけばみな無事ではすまんことになる。よぉく策を練っておいき。この周囲についてはすでに調べておるので、地図を持っておいき。  海じゃが、すでに時期なのかクラゲが多くての、こやつらは透明で照らせば輝く性質を持つが、毒を待つ。長居すれば刺されて動きが鈍くなるじゃろうから、気を付けるんじゃ。  岬には灯台がある。照らすことで攻撃をしやすくすることは出来るじゃろう。  この海岸の端には洞窟があっての、普通の人間なら四人くらいなら入れる。入り口は奥へと進めば進むほどに狭くなり、さらに海水がなくなる作りじゃ」
夏風邪にご用心
とても簡単|すべて

帰還 2018-09-15

参加人数 7/8人 蛯沢真尋 GM
 教皇国家アークソサエティ。薔薇十字教団。司令部。 「おー、お前ら、今回は大活躍だったな」  与えられた指令を完遂し、パートナーとともに報告を済ませたあなたは、先輩の浄化師の男性からそんな労いの言葉をかけられていた。 「さすがに疲れただろ。今日はゆっくりと休んどけよ。最近は、気温が下がったり上がったりで、体調を崩し易い。浄化師といえども、人の子だからな。健康管理には充分に……」  と、まさにそのとき、あなたの隣でパートナーがゴホゴホと咳き込む音が聞こえた。  大丈夫?  あなたが訊ねると、パートナーは大丈夫と頷く。  しかし、その辛そうな顔や、さっきの苦しそうな咳のことを思うと、あまり大丈夫そうには見えない。 「あー、噂をすれば何とやら、だな……。とにかく今日は寮に帰ってゆっくり休んどけ」  くしゃくしゃと髪をかきまぜながら、先輩の浄化師が早く寮に戻って休むように促した。  あなたとパートナーは、一礼し、その場を辞そうとする。  と、そのとき。 「え……?」  あなたの隣で、ガクリとパートナーがその場に膝をついた。 「……って、おいおい。全然大丈夫じゃないじゃねーか……。自分やパートナーの体調の変化を察するのも浄化師の実力の内だぜ?」  少し呆れたように、どうしてもっと早く気づいてやらなかったと咎めるように、先輩の浄化師がぽつりと呟く。 (……私のせい?)  あなたはその言葉に、ズキリと胸の奥が痛むのを感じる。  パートナーは、そんなあなたを気遣うように、大丈夫ですからと立ち上がる。  けれども、その様子はやはりどう見ても大丈夫そうではない。  パートナーは、自分に余計な気を遣わせまいと必死で体調不良を押し隠しているのが見え見えだ。 「あー……。まあ、本人が大丈夫って言うなら野暮は言わねぇけどな。でも、一応、検査だけでもしてもらっとけ。  あと寮の部屋まではちゃんと連れていってやれよ? パートナーの看病ってことなら、許可も下りるだろ」  その先輩の言葉に、あなたは一も二もなく頷いた。  言われなくても、たとえロードピース・シンデレラにぶん殴られて部屋から追い出されそうになっても、徹夜で看病でも何でもするつもりだった。  かくして、あなたとパートナーの長い一夜が始まる。
毒花の森のコブリン
普通|すべて

帰還 2018-09-15

参加人数 4/8人 内山健太 GM
 教皇国家アークソサエティのブリテンで薬屋を営んでいるアルフは、傷口によく効くという薬を作り評判である。今回、彼は新しい薬を作るために、薬草や薬樹などを探していた。  調査してみると、ブリテンの奥地にある『毒花の森』に、新しい薬に使えそうな、薬草や薬樹などがあると判明する。ただし、毒花の森は危険地帯であるため、一般の人間は立ち入りが禁止されている。  新しい薬を作れば、今よりもたくさんの人々を救えるかもしれない。そのように考えたアルフは、薔薇十字教団の門を叩く。彼は、エクソシストたちを護衛として、毒花の森に立ち入ろうと考えたのである。  当初、毒花の森への立ち入りは、危険であるので門前払いされてしまった。しかし、アルフは熱心に薬の重要性を説いた。新薬の開発は、戦闘に赴くエクソシストたちにも有効に働くはずである。その結果、ようやく毒花の森への通行許可が下りたのだ。  毒花の森は、至る所に毒花が咲き、危険な地区として認知されている。基本的には、毒花が危険とされているが、それ以外にも問題がある。この森には、ゴブリンが棲みついているのだ。  ゴブリンは単体ではそれほど危険にはならないが、毒花の森のゴブリンは集団で冒険者を襲うと言われているのである。それを知ったアルフは、毒花の森へ行くために、教団のエクソシストたちに護衛を頼んだ。  エクソシストたちに護衛を頼み、いよいよ毒花の森に入る。  その日は、天気の良い日で、燦々とした陽射しが降り注いでいた。ここが毒花の森でなければ、気分良く散策ができるだろう。毒花の森の奥まで入っていき、アルフは長年の知識を基に、草花を採集する。毒の危険があるため、手袋をして細心の注意を払っている。毒花が咲き乱れる森であるが、治療に有効となる草花や樹木も多いのである。アルフはエクソシストたちの護衛をバックに、速やかに草花を採集していく。  途中まで、何の異常もなく事は進んだ。しかし、魔の手はすぐそこまで迫っていたのである。草花を採集し始めて数十分。突如、森の奥から足音が聞こえていた。  なんと、五体のゴブリンが襲い掛かってきたのである。  通常、ゴブリンは気が小さく、人を襲うことは滅多にない。しかし、毒花の森のコブリンは、敵を倒す行為に慣れており、それを快楽として楽しんでいた。手斧を持ち、集団で襲い掛かってくるゴブリンたち。  それを見たアルフは腰を抜かしてしまった。  ここで登場するのが、歴戦のエクソシストである。  アルフを守り、ゴブリンを倒し毒花の森から薬草を持ち帰れるのか? すべてはエクソシストたちにかかっている。辺りは騒然としたムードに包まれ、戦闘が始まろうとしている――。
二人の記念日
とても簡単|すべて

帰還 2018-09-15

参加人数 3/8人 GM
 指令を受け取るためにエントランスホールを歩いていると。 「子ら、今から仕事か? 精進しているな」  声をかけてきたのは現在、メインが調査員であるユギルだ。  指令発行をメインに行っているロリクとは浄化師としてパートナーかつ、夫婦という二人だ。  狐面に口元だけ見えている、多少個性的な先輩はふふふと楽しそうに笑っている。 「ん? ようやく仕事を終えたところだ。今回はある結婚式やら誕生日をお祝いされなくて恨んでいる呪いがあっての」  あー。そういえば、お二人は結婚式とかしたんですか? 「……は?」  いや、だから、結婚式とか、確か、二人は結婚して一年くらいたってるって聞きましたよ? 「ん?」  お? 「……しもたぁ! 吾、プロポーズすら妻にしとらん!」  ふぁ! それでどうやって結婚したんですか! 「そ、それはノリと勢いとタイミングが合って……わ、吾が妻を押し切って勝手に結婚手続きやらその他いろいろを」  おっと! なんかわりとてきとーだった、この人たち! 「……誕生日……祝ったことないなぁ。出会ってからすでに六年目であるが」  やらかしてますよっ! それ! 「おー、お前たち、指令をよういって、ユ、ユギル、どうした!」 「ロリク、吾、やらかしたかぁ!」  飛びつく勢いで迫るユギルにロリクが驚き、浄化師たちに視線を向ける。  かくかくしかじか。 「あー……そんな今さらなぁ」  ロリクが呆れてため息をつく。 「浄化師として契約を交わしてからはや六年……今年で七年かぁ。誕生日やら結婚式やら結婚記念日やら……いっぺんもねぇなぁ」 「……ろ、ロリク」 「ふつーに愛想つかすレベルだよなぁ。はははは」  ああ! ユギルさんが倒れてる。倒れてます。ロリクさん! そ、そこまでショックを! いや、気持ちわかります。パートナーに、実は内心嫌われていたらとか、記念日を忘れていたとかなにげにやらかしたって結構ダメージに 「ユギル、おーい、ユギルって、はぁ、反応でかすぎだろう。俺はそんなの気にしないっての……ん? お前たちも仕事に忙しくて大切なパートナーの誕生日やら二人の記念やらお祝いしてないってことはないよなぁ? 運命としてつながっていても、そういうささいなことをしないと愛想つかされて捨てられるぞぉ」
青の音色
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帰還 2018-09-14

参加人数 8/8人 あいきとうか GM
 ソレイユ地区の一角。樹梢湖を囲う森林の、すぐ近く。 「なんだこれ?」 「洞窟?」  この付近のジェルモンスター相手に戦闘訓練を行おうとしていた浄化師が、それを見つけた。  一言で表すなら空洞だ。ちょっとした丘のように盛り上がった土地の脇腹に、ぽっかりと穴が開いている。浄化師はまだ見たことがなかったが、洞窟はこれに近い形をしているのだろうな、と思った。 「こんなところにあるって、報告されてたっけ?」 「いや、聞いてない」  周囲を見回す。このあたりはジェルモンスターやフシギノコの生息地から外れており、魔物の気配はない。だが、内部までそうなのだろうか。  そもそも、十歩も歩めば暗闇になりそうな洞窟は、どこまで続いているのか。 「ランタンあるけど……、調査……」 「もっと人数、集めた方がいいんじゃない? 魔物がいたら手に負えないかも」 「だよな」  うん、と頷きあった浄化師は踵を返そうとして。  ――きん。  と高い音を聞いた。 「なに!? 洞窟から聞こえた!?」 「待って待って怖い。逃げよう」  手をとりあって二人は逃げる。ぽっかりあいた洞窟の口からなにかが出てきそうで、ひたすらに怖かった。  とめていた薔薇十字教団の浄化師用の馬車に飛び乗り、本部に戻って。 「変な洞窟見つけた!」 「調査隊を派遣してください!」  半泣きでエントランスホールの司令部教団員に叫んだのだった。
嘆き
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帰還 2018-09-14

参加人数 5/8人 shui GM
●ある男の悲劇  自分の才能というものを、後悔した事があるだろうか。  古い埃を被った小屋の中、男は自分の両手を眺めていた。  黒ずんだ火薬の染み付いた掌。昔はそれが誇りに思えて、彼の自慢だった。  なのに、今は。  笑顔を作る為にあったはずの腕によって、悲劇が作られている。  それは男にとって、耐え難い苦痛に他ならなかった。  涙の代わりに止まらない震えを眺めながら、どうか惨劇が終わって欲しいと願っていた。 「おい、何時までボケっとしていやがる」 「ひっ」  野太い声をかけられて、男の肩が跳ねた。  振り向けば、細身の彼より2回りは筋肉がついた、図体の大きな男が苛立ちを隠さずに見下ろしている。 「よぉレガート。話が違うじゃねーか。今回の爆弾は不発だったって? 俺はお前に玩具を作れといっているんじゃねぇんだぜ?」  大男――特徴的な耳や尻尾からして、犬系のライカンロープだろう――は持っていた新聞を汚い机に叩きつける。  新聞の見出しは『サクリフェイスによる連続爆弾テロ』の文字が躍っていた。  今回は爆発する前に爆弾を回収できたとも。 「す、すまない。こんな予定では」 「謝罪なんかいらねぇんだよ! 俺は確かに『人を殺す為の爆弾を作れ』って言ったはずだぜ! それともお前の娘がどうなっても良いってのか?」  怒鳴り散らされて、細身のレガートはすくみあがる。  舌打ちをする大男。  大男が斧を片手に隣の部屋へ行こうとすれば、レガートが驚いたように縋りついた。 「やめてくれ! 娘には、娘にだけは手を出さない約束じゃないか!!」 「それはお前が俺の言う事を聞いたらの話だ!」 「お願いだ、本当に娘だけは……! 娘だけは! も、もう4つ目の爆弾も完成したんだ。今までよりも広範囲を吹き飛ばせる、とっておきのやつが……」  言葉を聞くなり、ニタリと口端をあげる大男。  同時にレガートの顔はどんどん青ざめていく。 「……ば、爆発すれば10人……いや、20人は吹き飛ばせる威力を持っている、んだ。だから……、だから娘にはこれ以上」 「ほう、そいつはいい。だったら早速、派手に使わせてもらおうじゃねぇの。明日の朝までに次の場所へセットしておけよ」 「わ、わかった」  斧を下ろす姿を見て、レガートはへたり込む。  もう、こんな日常は終わって欲しいと願いながらも、その糸口が見つからない。 「俺が人助けをしようなんて、コイツを助けちまったばっかりに――」  悔しさを嘆いても、彼の力では現状を打開する案が浮かばない。  呟きながら小屋から見上げた三日月は、何とも不気味な色で鈍く輝き始めていた。 ●薔薇十字教団  時間は少し巻き戻り、教団には1つの依頼が舞い込んでいた。 「至急、連続爆弾魔を捕まえて欲しく思います」  依頼の説明をする教団員は、険しい顔をして話す。  ここ数日で3件、エトワールのとある都市、リファンで爆弾が発見されていた。  うち2件は爆発し、建物などに被害が及んでいる。  昨日は幸いにも、爆弾が起爆するまえに発見され回収されたところだ。  そしてどの事件にも同じように、爆弾の傍にメッセージが添えられていたという。 『世界を救済するための生贄を』 「敵はサクリフェイスと思われます。幸い、今のところ被害者は出ておりませんが、事件が続けば時間の問題かと」  サクリフェイス――有名で狂信的な宗教組織だ。  ロスト・アモールの戦禍の中で発生したラグナロク。  その被害は、神が人間達に与えた罪であり、滅びることに抵抗することは神に背く行為だと考えている集団。  要するに、人の命を奪うことが善だと心酔する、危険な輩だ。  今までの爆弾は人の少ない場所や、人のいない時間帯で爆発していたが、次はどうなるかはわからない。  サクリフェイスに心当たりがないか、浄化師が問えば。教団員は頷いて見せた。 「実は数ヶ月ほど前に、この街に隠れていたサクリフェイスの集団を逮捕しているんです」  そのときに逃げた残党が恐らく主犯だろう、というのが教団の考えだ。 「取り逃がした残党の名前は、ザック。サクリフェイスのメンバーの1人で、大変逃げ足の速いことが判っています」  ザックが何らかの手を使って、爆弾を入手し、復讐とばかりに起爆させているのか。  それとも協力者が爆弾を爆発させているのだろうか。 「また、もう1つ。関係者と思われる人物がおります」  提示された資料写真に目を通せば、其処にはやせ男の顔。  花火師のレガート――娘のレティと一緒に行方不明になっていた人物だ。 「彼を爆発現場付近で見かけた、という目撃情報が寄せられています。もしかしたらサクリフェイスと関係あるかもしれません」  レガートが爆弾を提供している、と考えるなら可能性は高い。  幸いにも、レガートの居場所は大まかに見当が付けられている、とも団員は話す。 「皆さんには至急、レガートが隠れていると思われる現場へ向かっていただき、爆弾事件と関係するようであれば捕まえて欲しいのです」  最悪、生死は問わないそうだ。  教団を後にする浄化師達。  たどり着く頃には、既に日は傾きかけていた。  目的の現場は、リファンの街から離れた森の中にあった。  元は伐採などの森仕事で使われていた古い道具小屋だ。今は破棄され無人のはずだが、なぜか窓から光が漏れている。  野良犬とは思えない、番犬らしき犬の姿も見える。  浄化師達は目を合わせた。  さて、この依頼。どうやって乗り切ろうか――。
紅白輪舞
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帰還 2018-09-13

参加人数 6/8人 ぽた GM
 最近、教団内である噂が目立つようになってきていた。  教皇国家アークソサエティは郊外にある誰も近寄らない山奧に、廃れた小さな屋敷があって、何でもそこにヴァンピールと思しき肌の白い少女が目撃されたのだとか。  ただ確認された、というだけの話であれば、別段気にする必要もないのだが。  噂には、続きがあった。 『そこに行った奴の話じゃあよ、ちょっと奇妙なもんを目にしたらしいんだ』 『奇妙?』 『あぁ。全く同じ姿をしたもう一人の女の子が、同じ屋敷の敷地内にいたんだってよ』  双子か、あるいは、教団に所属する者であれば、それが恐らく”人形遣い”なのだろうと予想も出来るが、情報にあるその少女は、教団には所属していない。  加えて、まったく同じ姿であるということが問題でもある。  同じ背丈に同じ顔——全て、まるでその少女のコピーや分身であるかのように、その屋敷にいるのだ。  故に、その事象を表す為に皆が用い始めた言葉は。  —―—幽霊屋敷——―。 『逃げなさい、ミオ。逃げるのです。逃げて、せめて何も近付かない場所で生き長らえるのです』 『で、でも、それじゃあ先生が……』 『私なら大丈夫。きっと追い付いて、また貴女を護ると約束しますから。あるいは、別のエクソシストの誰かが——』    本当に人形遣いなのであれば、可能性とは言え、それには魔術的要因が絡んでいそうである為に、教団がそれをただの噂と放る筈もなく。  調査や保護目的で、正式な仕事として考えられていた。  そんな折。  時を同じくして、その屋敷付近で”ヨハネの使徒”が目撃されたという報告も入って来ていた。  今はまだ被害こそ出てはいないが、情報の少女が人間である以上、ヨハネの使徒と相対してしまえば状況は最悪だ。  魔術の才ある可能性の少女。そして、ヨハネの使徒。  教団は、任務の内容を《少女の保護・必要時教団への引き入れ、及びヨハネの使徒討伐》と決定し、エクソシストの作戦参加を募った。
スナック『マリアの夜』
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帰還 2018-09-12

参加人数 8/8人 GM
 唸るように暑い日差しを受けて、指令をひとつ終えて報告を提出したのは夕方。  キャバレーにくりだすぞーとどこぞの浄化師が叫び、経費で落ちないとか叫んでいる人がいる。本部も大変だなぁ。  ようやく帰れる……と思った矢先のことだ。 「おや、かわいい子ら。日々鍛錬しておるか?」  声をかけてきたのは狐面で顔の半分を隠している調査員のユギルだ。  指令発行前の事前の調査などを行う彼は基本的に本部にいることはないのだが、本日は珍しくいたらしい。 「うむうむ。良い子、良い子。そうじゃ。よければこれからもう一つ指令に付き合ってくれぬか?」  え、これから指令ですか!  スナック『マリアの夜』。  リュミエールストリートの一角にちょこんと存在する、その小さな店のドアを開けると、むきむきのフリルエプロンの男……ママが出迎えてくれた。  おっと! 「あらぁん、ユギルちゃん、それに後輩まで連れてきてくれたのぉ? やぁん、かわいい人たちねぇ」  とっても濃ゆいが可愛らしい化粧をしたママが手をふってくる。二の腕もむきむきだ。 「うむ。マリアママ、人は多いほうがよいじゃろう? ああ、指令の内容は、この店を楽しむ、ことじゃ。  ここは好い酒場じゃが、いかんせん、マンネリ化しておってのぉ。  今宵楽しんだあと、レポートを提出しておくれ。  マリアママ、吾はニホン酒「大魔王」を一つ。あと、つまみは適当に頼む。  吾は店の端におるゆえ、すきに飲んで、食べよ、子らよ」 「やぁねぇ、ユギルちゃんたらほんとぉ酒豪なんだからぁ。あ、ほかの子たちは楽しんでねぇ。ママがなんでも用意してあげるわぁ~。いいのよ、日々の愚痴やらなんやらママが聞いてあ、げ、る」
忘却の森
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帰還 2018-09-11

参加人数 6/8人 GM
 指令を受けにエントランスへと訪れると、薔薇十字教団本部にて司令部受付を行っている教団員ロリクが、いつもの微笑みを浮かべて浄化師たちを出迎えてくれた。 「今回の依頼はちょっと精神的にタフなやつ向きかなぁだが、お前たち大切な相手はいるか?」  いきなりそんな問いかけのあと、指令の内容が口にされた。  ソレイユ地方の西の果てに存在する森には湖があるのだが、そこでその現状は起こっているそうだ。  見た目はただの森とかわらない。しかし、そこに足を踏み入れた者は必ず、【大切なもの】のことを忘れてしまう。  本人は必死になって思い出そうとしてもどうしても思い出せない。自分にとても大切なものが存在したことはわかるし、覚えている。だが、それがなんなのかがわからなくなってしまう。 「恐れることはない、この現象はニムファのせいだ」  ニムファは湖や泉に存在する睡蓮の見た目をし、近づかなくては害のないモンスターだ。しかし、水を汚す者や攻撃してくるものには容赦なく、根を鞭にして攻撃してくる。  ニムファは古来より薬にしたり、香水の原料として使われる。  またニムファは香りをかいだものに幻覚を見せる効果がある。 「この泉を調査してもらったところ、かなりの数のニムファが存在していてな。  その匂いに騙されて混乱した奴らが泉にはいって死にかけるといった事故が多発している。  このままじゃあ、死人が出ちまうかもしれない。  全部を討伐するのはさすがに難しい。数が多いせいで幻覚作用が強く出ているから、お前たちの手の届く範囲にあるニムファを刈り取ってほしいんだ」  それでな、とロリクはさらに注意してきた。 「今回出現しているニムファの匂い、恐らく生息域の影響なんだろうが、喰人と祓魔人で影響力が異なる。  どうやら喰人側がかかりやすく、祓魔人には効果が薄くかかりづらいようだ。  喰人は注意し、祓魔人はパートナーをいかに正気に戻すか、よく考えるんだな。  まぁ匂いでの軽い混乱だから多少乱暴でも殴ったり、小さな衝動があれば戻るだろうが注意しておくにこしたことはない」
轟雷、竜を穿つ
普通|すべて

帰還 2018-09-09

参加人数 8/8人 鳩子 GM
 果て無い蒼穹を純白の雲が千切れながら飛んで行く。茫漠たる草原は大海原の如く波打ち、木々は倒れんばかりにしなっている。 「嵐でもやってきそうだな……」  今はまだ雨の予感すら感じさせない空を見上げ、ワインド・リントヴルムは呟く。  不意に、その視界を黒点が横切った。  鳥の陰――否。それは前触れなく進行方向を転じたかと思うと、ワインド目掛けて急降下してくる。次第に見えてくる大きさは、鳥の比ではない。  両足を踏ん張り、その突風の塊とも言うべき存在を受け止める。 「ひとりで散歩か、幼き竜よ」  全身を覆う鱗に一対の翼、鋭い爪――太古より天に君臨する神聖なる生き物、竜である。  ロスト・アモールによって世界が混迷するよりも遥か昔、人と竜とは相争う関係だった。  強力な魔法を行使する竜は、魔術の貴重な材料となる。死後、その体は時間を掛け個々の魔力属性に応じて自然へと還るが、そうして変じた土や水、竜の遺骸を苗床とした植物にすら利用価値があった。  人間は竜を魔術の道具とみなし、竜は人間を害悪とみなし、多くの血が流れた。  だが、現代においては違う。  此処は、竜の渓谷。騒乱の時を越え安寧を望んだ彼らが選んだ、終の棲家。  そしてワインドは額に角を、背に翼を持つデモン――ドラゴンとヒューマンが愛を育んだことで生まれた種族であり、この渓谷の守護者たるリントヴルム家の当主だった。 「アソブ、イッショ」  成長すれば体長二十メートルほどの堂々たる体躯となるが、ワインドに擦り寄るのは未だ三メートルにも満たない仔竜だ。発話も幼子めいてたどたどしい。鱗と同じ深緑の瞳が瞬く。  ドラゴンは名づけの文化を持たないが、ワインドはこの仔竜をヴァージャと呼んでいた。草木の緑を意味する名だ。  ヴァージャはしきりに自身の角とワインドの角とを合わせて、コツコツと音を立てる。これが彼の親愛表現なのだった。 「すまんが、私は仕事中だ。だが、そうさな……共に見回ってくれるか」  ワインドの役割はいくつかあるが、もっとも重要なのは渓谷の警備である。暗黒の時代が過ぎ去ってなお、私欲から竜を害そうとする不埒者はいる。広大な土地を隈なく見回るため、ワインドの一日はほとんど移動に費やされるのだ。 「イッショ、イク!」  ヴァージャは喉を鳴らして翼を広げ、再び空へ舞いあがった。  至近距離で羽ばたきの衝撃を受けたワインドは、苦笑して乱れた赤毛を掻く。  これが大人の竜であれば羽ばたきは人間にとって攻撃に等しい。竜のいう『アソビ』が大抵の場合人間にとってみれば命懸けになってしまうことも、仔竜が理解するには時間がかかりそうだった。  仔竜の影を追い、ワインドは力強く地を蹴った。無論、ヴァージャの飛行速度の方が勝るため、あっという間に仔竜の姿は遠くなってしまう。 「しようのない……」  口ではぼやいても、幼い竜の無邪気な奔放さは微笑ましいものでしかない。ワインドは頬を緩めたが、次の瞬間、その笑みは凍りついた。 ――ドカンッ!  激烈な雷光が、小さな影を貫くように直撃する。 「ヴァージャ!」  仔竜の幼い翼は力なく風に煽られ、そうして、この土地の名の由来となった大地の裂け目、深い深い谷底へと落ちていく。 ――キィァァァァ!  悲痛な叫びが、渓谷に響き渡る。  全力疾走の勢いそのままに崖から身を躍らせる。黝い翼を広げて滑空するワインドの目に映ったのは、川辺に倒れ伏すヴァージャ、そして黒い帯状の魔力に拘束された深紅の竜と彼らを取り囲む黒衣の集団だった。  囚われの竜――ワインドがグラナトと呼んでいる成竜は、巨体を揺らし咆哮と共に火を吐くものの杖を掲げた複数の侵略者によっていなされてしまう。 「何者だ!」  着地と同時に一喝したワインドに、悪辣な女の笑い声が応じた。 「あっは、なんだなんだぁ? 丁度良い獲物を落としたと思ったら、余計な奴までついてきちまった」 「貴様らっ……終焉の夜明け団か!」  フード付きの黒衣、そして左手に埋め込まれた銀の十字架。魔術の開祖アレイスター・エリファスを狂信し、その蘇生を目的とする異常者集団だ。  痛みの記憶が蘇り、かっと血が頭に上る。 「水よ、穿て!」  ワインドの詠唱に応じ、無数の鋭い水の杭が女を襲う。だが閃光がその全てを撃ち落とした。  殺意を楽しむように、女は甲高く笑う。 「なに、お前! 遠慮の無ぇ攻撃! シビれる予感がするんですけど~!」  衝撃波でフードが外れ、その顔が露わになる。胸元までイエローの髪がうねり、同色の双眸が爛々と輝く。左の頬には稲妻型の刺青。  顔を見られることを、女はどうとも思っていないようだ。 「やけに上手くいっちまって、時間までまだあるなって退屈してたんだ。暇潰しに、アタシの愛、受け止めてくれよなぁ!」  雷光が降り注ぐ。  ワインドは咄嗟に跳躍して回避しながら、周囲を見廻した。  女が主犯格なのか、他の黒衣の者らは口出しせずに黙している。その多くが杖や魔導書を携える魔術師だ。川岸には舟が二艘。しかし、アークソサエティの国土を囲む隔壁の外にある竜の住処は、独自にバリケードを持っている。単純に上流から川を下れば侵入できるというわけではない。それに、竜を拉致する腹積もりらしいが舟では到底運搬できない。  須臾の間に思考を巡らせ、ワインドは息を呑んだ。 「口寄魔方陣か!」  特殊な魔方陣を用いて物質を転移させる禁忌魔術だ。教団が所有する転移方舟に似たものだが、方舟とは異なり人を移動させることはできない。しかし、人間以外の生き物や物質であれば使用可能だ。  刻限になればバリケードの外で奴らの仲間が魔方陣を発動させ、竜を転移させる算段なのだろう。 「ご名答~! お前、頭良いなぁ」 「させるかッ!」  無数に出現させた水の杭を炸裂させる。今度は女のみならず周囲の者も武器を構えたが、その半分は即座に薙ぎ倒された。幾重もの拘束を受けながら、グラナトがその長大な尾で打ち払ったのだ。戒めに抗った鱗から血が流れている。 「我らが同胞よ、こやつらを許してはならぬ」  重々しい竜の声が告げる。  その怒り、悲しみを、ワインドは余さず理解することが出来た。  痛み――悼みの記憶を抱えてきたのは、ワインドだけではないのだと思い知りながら、詠唱を繰り返す。  幼い頃、ワインドには特別仲の良い竜がいた。親愛を込めディアと呼んだその竜は、ある時、渓谷に侵入した終焉の夜明け団によって意図的にベリアル化された。幼かったワインドは、親しい竜の姿をした化け物に襲われて尚、救うことができると信じた。その結果、両親は自身を庇って目の前で死に、ベリアルは他の竜をも食い散らかして成長してしまった。  最終的にベリアルは駆けつけた浄化師によって拘束され、後に処分されたが、ワインドは多くを喪い、暗く重い悔恨を抱えることとなったのだった。 「天空に告ぐ!」  信号用の呪文を唱え、頭上へ魔力弾を打ち上げる。蒼い魔力は崖を超え、更に高く昇りつめると派手に爆ぜた。  いまやリントヴルム家はワインドただ一人だが、渓谷には志を同じくするデモンの仲間が複数おり、随所に設置された見張り台に待機している。有事の際は固定魔信を用いて教団本部に連絡する手はずだった。転移方舟であれば本部から渓谷までは一瞬だ。 「閉じよ、綴じよ、鎖じよ!」  水の杭を渓谷の四方に打ち込み、詠唱と同時に魔力を込める。 「へぇ、結界か。でも、お前を殺せば問題ないよなぁ?」  女は動揺するどころか愉快そうに言って、凶悪な笑みと共に雷光を迸らせた。
弔花
とても簡単|すべて

帰還 2018-09-08

参加人数 8/8人 久木 士 GM
 久方ぶりの雨が降った翌日。白い造花を手にした教団員が一人、エントランスホールを歩いていた。彼はゆっくりとした足取りでホールの奥へ向かう。その先には、いつの間にか設置されていた小さな祭壇があった。首都内での任務を終えて本部へ戻ってきたあなたたちはそれを不思議に思い、その教団員の後を追う。彼は祭壇の前で足を止め、そして振り向く。どうやらあなたたちに気づいたらしい。軽く会釈をする彼に、あなたたちは造花や祭壇について尋ねる。彼は口を開いて、低く落ち着いた声で話し始めた。  彼は教団本部の病棟地下にある大聖堂で勤めている教団員で、普段は教団のために命を捧げた死者に祈りを捧げているのだという。そんな彼がエントランスホールまで赴いてきた理由は、どうやらこの祭壇にあるらしかった。  毎年8月頃になると、アークソサエティ各地では慰霊祭などが多く営まれる。それは『ロスト・アモール』に始まる一連の大災厄や、その後の混乱によって失われた人命を弔うためのもので、華々しい復興を遂げたここ首都エルドラドとてそれは例外ではない。首都では主に貴族階級・支配階級の者が、大戦で散った祖先や親族・友人などのため、合同で慰霊祭を開くケースが多い。薔薇十字教団に所属する軍事階級の者たちもそうした慰霊祭を執り行ってはいるが、彼らは長期の任務や緊急の出動などで本部に居ないこともままあり、数日ある慰霊祭に参加できない者も少なくない。そんな彼らのために設けられたのが、この小さな祭壇だという。 「これは本来ならば、病棟に設置すべきものであるかもしれません。ですが病院にお越しになる方々――特に入院中の方々は、『死』というものについて非常にデリケートになっておられます。それを強く想起させるものを置くべきではない