~ プロローグ ~ |
「いらっしゃい! いらっしゃい! 安いよ! 美味いよ!」 |
~ 解説 ~ |
■場所:教皇国家アークソサエティ、ソレイユ地区。小さな村の七夕祭会場。 |
~ ゲームマスターより ~ |
こんにちは! GM春川ミナです。今回は七夕にちなんだ占いです。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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■屋台 ロス:俺はビールと焼鳥!夏はこれ食わねぇと! ティ:林檎飴、綿菓子、カキ氷!今日は女の子達ととショーンさんが一緒です(目輝き (嬉々と屋台へ ロス:おーティのテンションが高ぇ…いってらー ★ティ ∇林檎飴 姫林檎とか真っ赤なのとか可愛いです ∇綿菓子 食べずとも持ち歩くのに風情が ∇カキ氷 青色が好きです ブルーハワイ(あれば)なんて見てるだけで涼しげで大好きです ∇ジュース 青いのと炭酸の刺激が楽しいです ★ロス シリウス・クリスと一緒に女性陣達の後ろ付いてく形になっな 腹はワリと減り気味(大食い)なので 箸巻き・焼きそば・丸々焼き・フランクフルト・焼鳥 「すぐ追いつくんで だっと買って追い掛け「食う?」勧めつつ女子見守り |
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お願いを込めた星を流すって…素敵ですね 『記憶が、戻りますように』と願って船を流す 沈むのに時間が掛かっても、それはそれ 時間が掛かっても、いつか沈むでしょうから… 記憶は戻るって事ですし、それで…… ■その後 友人達と屋台を回る リチェちゃん、ティちゃん、レオ先生…それに、ショーンさんも… 甘い物お好き、なんですね 良かった…クリス、は… 手を振るパートナーに小さく頷いて 皆さん、林檎飴…どうでしょう…… 私、好きなんです ちょっと口に含んだらその甘さにほんの少し表情が緩む クリスの言葉に深く考えずにどうぞ、と差し出してからハッと気付く これ、これ… それ、クリスにあげます…っ 慌てて購入したのは苺のかき氷 ひ、冷やさないと… |
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願い事は シリウスが怪我をしませんように 短冊を握りしめて祈る 彼の呟き首を振る 今のわたしの 一番のお願い事なの 最近 彼が痛みを外に出さないことに気づいた ひとりで耐えて やり過ごす そんなことをして欲しくない 笹船を流し 星の中に還る様を見つめる 願い事 ちゃんと届いたかしら? 折角のお祭だし お友だちと仲良くなりたい シアちゃんやティちゃん、レオノル先生やショーンさんと一緒に見て回る シリウスも たまにはお友だちとのお喋り、楽しみたいでしょう? 何とも言えない顔で沈黙している彼にくすくすと リンゴ飴やかき氷 お祭ならではの物に手を伸ばす 一口ずつシェアしたり 他愛ないおしゃべりをしたり 横目でシリウスを確認 楽しんでいる、よね? |
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◆七夕の占い ・瞬は興味津々 ・唯月も思う事があって心の中では藁にもすがる思い 瞬「占いだってー!楽しそうだねぇ…やってみるー?」 唯「へ?あ…そ、そうです、ね…」 (瞬さんの様子がおかしくなって…どのくらい経つんでしょうか わたし達が戦いから遠くなってしまったのはいつからでしょうか エクソシストとして…こんな姿もまだ否定されないかもしれないけれど …でも…わたしは戦いの中で悲しむ人々も救いたいのに… 今は…日に日に変わる彼が気がかりで…) ◆唯月の悲願 唯(この前も同じような事を願うと言いますか…目標と言いますか… いえ、今回は願いましょう… 守ると言われないくらい…彼に認められますように… それがわたしの強い願い…) |
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願い事、ねえ… 『人が神の手を離れ、自分の力で歩き出せるように』? …七夕でする願い事じゃないわね、こういうのって神頼みみたいなものだもの それよりトールは何をお願いしたの? 珍しく深刻な様子に驚く そういえば、トールの過去ってほとんど聞いたことない… (しばらく聞き)そうだったの…すごく大切な相棒だったのね だからパートナーを守ることに固執したり私に対して過保護なのかしら…なんて聞ける雰囲気じゃない よし、私の願い事、決まったわ 秘密よ秘密 隠すように短冊を折って金平糖と共に流し 近くをぐるぐる回ってかなり時間が経ってから沈む これは…時間はかかるけど叶う、ってことかしら 願い事は…『トールの心の傷が癒えますように』 |
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まずは笹舟へ 「重心がずれていれば沈みやすい筈なんだ」と意気込むレオノルに溜息を吐きつつ願いの舟を託す その後リチェ、アリシア、ロス一行と合流 ショーンは男性陣と酒を飲みに行くつもりだったが、レオノルの親猫を探す子猫のような眼差しに押されて女性陣に同行 「ショーンは甘いもの好きなんでしょ?」 「…まあ、そうですが」 ショーンが同行した直後に喜ぶレオノルを見て、ショーンは首を傾げつつもレオノルを含む女性陣の気配り(かき氷を代わりに買ってきて配ったりetc)をすることに 「ショーン、これも美味しいよ?」 と次から次へとレオノルに勧められ、何故か嬉しそうな彼女に首を傾げつつも食べる 男性陣で酔った人間がいれば介抱する |
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~ リザルトノベル ~ |
「願い事、ねぇ……」
沢山の船が浮かび、また数多の星が池の中に煌いている。 ポツリと呟いた『リコリス・ラディアータ』は池の星と天の星を交互に見比べる。 「人が神の手を離れて巣立つ事……なんて、この場で願う事じゃないわね」 クスリと花の名前を冠した少女は笑い、パートナーを見やる。しかし、その真剣な横顔が珍しく、ついまじまじと見てしまった。 「……どうした、リコ」 池に浮かぶ船から視線を外さず、『トール・フォルクス』は静かな声でリコリスに呼びかける。 「トールが何処かにフラリと行きそうな顔をしていたから。どうしたの? お腹でも痛い? それとも願い事が決まらなくてかしら」 「ひどいな。さっきリコが呟いていた願いよりは至極真っ当な物だと思うけどな」 ゆっくりとリコの目に視線を合わせるトール。瞳の奥まで見抜かれる様な気がしてリコはまた池の船に視線を戻した。対岸に見えるのは他のエクソシスト。船の挙動に一喜一憂しているようだ。 「よし、俺は決まった」 サラサラと願いを短冊に書き、船を折るトール。リコが言葉を発するよりも早く、星の乗った船は夜の星々へと滑り出した。 「何をお願いしたの?」 リコリスはゆっくりと遠ざかっていく船を眺めながら何となく聞いてみると、船の行く末を見守っていたトールが顔をあげて答える。 「ん? ああ、叶わない願いさ。ほら見ろ、あんな遠くにまだ浮かんでる」 「興味あるわ。良ければ聞かせて?」 パートナーの憂いじみた、それでいて懐旧の情を呼び起こしている様な複雑な表情が気になり、リコリスが尋ねた。いつも自分を気にしてくれている明るいパートナーの、ふと見せた胸をキュッと締め付けられるような横顔に少しだけ心が痛んだのもある。それについてどのような感情を当て嵌めて良いか、当人も解らない様子だが。 「相棒にもう一度会いたいってな。……願い事さ。そう、書いた」 それは気をつけていなければ祭りの喧騒に溶けて消えてしまうほど、独白じみた喋り方だった。トールの顔は穏やかな笑顔を浮かべていたが、まるで道化師の泣き笑いを模した仮面を被っている様でリコリスはその表情から目を離せなかった。 「一緒に冒険をしててな。ずんぐりした外見に似合わず手先が器用で、臆病で小心者な奴だったよ。肉屋に吊るしてある兎の姿に涙するような、な。でも、人の痛みが分かる優しい奴だったよ」 トールは未だ浮かぶ自分が折った船を眺めながらゆっくりと回顧する。 「俺にとっては唯一無二と言える相棒だった。今でも考える、どうして俺じゃなくてあいつだったのかって。……こんな事、人に話すのは初めてでなんか照れ臭いな」 ゆっくりと胸の中から押し殺した感情と空気を押し出すような声で語ったトール。その視線の先には、いつまでも星に還らない船があった。 「……そういえばトールの過去ってほとんど聞いたことないわ」 誰にも聞こえないような声で呟くリコリス。 「ねえ、トール」 「ん?」 呼びかけた彼女の声に返事をするトール。そのままリコリスは続ける。 「とても大切な相棒だったのね。……だからパートナーを」 が、途中まで口にした所でその先を飲み込んだ。おそらくこう言いたかったのだろう。だからパートナーを守る事に固執したり私に対して過保護だったのかしら、と。 「……よし、私の願い事決まったわ」 少し不思議そうな顔をしたトールを置いて、リコリスはその体で隠す様に短冊に願いを書くと船を折り、金平糖を乗せて池に浮かべる。 「何よ、進まないわね」 岸の近くをぐるぐると円を書くように回る船にリコリスはひとりごちた。 「ん? リコは何をお願いしたんだ?」 「秘密よ、秘密!」 トールに聞かれ、リコリスが慌てて答える。 「えー! 俺だけ教えるのはずるいだろ!」 「女の子には秘密が多いものなのよ」 クスリと笑うリコリス。それに対してトールは若干不満気だったが、ふと何かに気付いた様子で池に視線を戻した。 「お、リコの方は叶うみたいだ。良かったな」 見るとリコの船はゆっくりと星に混じっていく途中だった。 「これは時間がかかるけど叶うって事かしら。……願い事はね。トールの心の傷が癒えますようにって」 最後に呟いた言葉は誰の耳にも届かないほど小さな声だったが、彼女はそれで良かったらしい。 リコリスは少しだけ微笑むと、トールに手を差し出した。 「ホラ、行きましょう? トール」 「珍しいな。リコから誘ってくれるなんて」 「たまにはね」 トールは戸惑いながらも差し出されたリコの手を取り、その場を後にする。風の悪戯か、それとも星の祝福か、誰も見ていないがトールの船はゆっくりと動き、リコリスが願いを込めた星の隣に落ちるように溶けていった。 *** 「おっしゃー! 祭りだー! 屋台! 肉、酒!」 ライカンスロープと見られる男性のけたたましい声が上がり、辺りに居た人達の注目を浴びる。声の主は全く気にした様子も無く、狼の耳がピコピコと動き今にも走り出しそうだ。 「ちょっ! 待ってください、ロスさん! まずは星詠みの池にお願い事をしてからですよ」 『シンティラ・ウェルシコロル』は『ロス・レッグ』の服の裾を引っ張って止め、占い師の下に連れて来る。 「おっととと。わりぃ、ティ。……星読みの池ってなんだか洒落てっな。んじゃ俺らもやっか!」 「そちらの立て札に書いてありましたから。ロスさん、屋台にしか目が行って無いんですか」 ロスの言葉にシンティラが返すが、その顔は楽しそうに笑っており嫌味は無い。 「いらっしゃいませ、お二人ですね。こちらに短冊と羽ペン、それから星の欠片が御座います。貴方達に幸多からん事を」 二人は占い師に促され、サラサラと願いを短冊に書いて船を折る。 「ティは何を願ったんだ?」 ロスが一足先に船を池に浮かべ、シンティラに聞く。 静かにしゃがみ、そのまま手を合わせ祈るシンティラ。色とりどりの金平糖が乗せられた船と天の星がキラキラと反射している水面の景色を楽しむとゆっくりロスに振り向いた。 「ふふっ、ロスさんが静かな性格になりますようにって」 「無理じゃねぇ?」 ちょっとだけ悪戯心を出したシンティラにロスが呆れつつも返す。だが、二人ともそれが可笑しくてクスリと笑いあった。 「そういうロスさんは何を願ったんですか?」 「んあ、俺はティが小咒を俺にぶつけっ事ねぇようにって」 「気をつけていますので多分ありませんよ。……少しだけ心配ですが」 「今多分って言ったー!?」 二人が浮かべた船はほぼ同時に、対岸まで進んで星の海に混じっていった。 「あちゃー、願いは叶うのが遅くなりそうだな! さて、屋台行こうぜ! お、あれは?」 ロスが誰かを見つけたようだ。祭りはまだまだ終わらない。 *** 「アリシア、何を願うんだい?」 『クリストフ・フォンシラー』は短冊を手に考える様子の『アリシア・ムーンライト』に声をかけた。 「あ、秘密……です。だって、人に言うとお願いって叶わなくなるって」 「それはニホンの言い伝えだね。……ああ、そうか。このお祭りはニホンから来た文化でもあるね。なら秘密にしておくのが良いか」 アリシアに言われて、ふと気付くクリストフ。正確には色々と違う部分があるのだが、彼女がそう信じているのならそれで通すのも悪くないと思ったのだ。 そしてこっそりと耳にイヤリングを着け直す。その先には短剣を模した飾りが付いており、短冊に穴を開けようとしていたのかもしれない。 「こっちに伝わってきてからは星になった二人が出会うって逸話と混じっているみたいだけれどね。さて、浮かべてみようか」 クリストフはアリシアから船を受け取り、金平糖を乗せてそっと池に浮かべる。 「……記憶が戻りますように……」 アリシアは誰にも聞こえない様に口の中で唱え、真摯に祈る。 その聖女の様な姿にクリストフは一瞬見惚れるが、祭りの熱気に当てられたのだと考えて軽く首を振った。 二人の願を乗せた船はゆっくりと進み、岸から少し離れた所で星の中へと混じって行った。 「いつかは叶う。俺も、アリシアの願いもね」 空に浮かぶ星のような金の瞳で見つめられアリシアは少しだけ頬を染めるが、クリストフの目をじっと見つめて言った。 「……ええ、きっと。……あら? あそこに居るのは」 クリストフの後ろに見知った顔を見つけて、アリシアが顔を綻ばせる。……その表情を間近で見たクリストフの心がドクリと跳ねたが、それは星々の内緒話の中に混じって誰にも知られる事は無かった。 *** 願い事が書かれた短冊を胸の前でキュッと握り締めて真剣に祈る少女が居た。 「……シリウスが怪我をしませんように」 「……俺の事ではなく、自分の願い事を書けば良いのに……」 ほんの少し困惑した表情の『シリウス・セイアッド』が呟くと、祈っていた『リチェルカーレ・リモージュ』が首を振った。 「今の私の一番のお願い事なの」 リチェルカーレの細い指が器用に船を折っていき、金平糖を乗せて池にそっと浮かべる。 シリウスはその様を黙って眺めていた。 「最近、気付いた事があるの。ひとりで痛みに耐える人の事。まるで野生の狼みたいに黙って痛みが引くまでやり過ごしているの。……私は彼にそんな事をして欲しくないのに」 「……ソイツは心配されるって事に慣れてないんじゃないかな。心配して貰っても何を返せば良いか、どう反応すれば良いかで困っているんだと思う」 二人とも、誰が、とは言わない。解りきっている事だから。 「ありがとう、ってお礼を言えば良いと思うの」 「そうか」 ゆっくりと円を書くように進む船を見ながら、誰とも無しに二人は話す。 やがて、浮かべた場所に戻ってくると、色とりどりの星の中に混じって行った。 「これは、案外早く叶うかもしれないわね」 リチェルカーレがクスクスと笑う。 「……そうか」 ぶっきらぼうに言い放つシリウスだったが、その視線の先に何かを見つけたようだ。 「何を見ているの? ……あら? あの屋台に居るのは……。ねぇシリウス、行って見ましょう?」 シリウスに向かって手を差し出すリチェルカーレ。 「ああ。……ありがとう」 その手を取り、ポツリと呟いたシリウス。最後の言葉はリチェルカーレに届いただろうか。その答えは星々と彼女だけが知っている。 *** 「重心がずれていれば沈みやすい筈なんだ」 そんな女性の声が辺りに響く。 「ハァ……」 その自信満々の言動に溜息で返したのは『ショーン・ハイド』。 「いい? この辺とこの線を結び、計算式に当て嵌めると沈みやすい船が出来上がる。つまり……」 そこまで一息に言い切った『レオノル・ペリエ』に声がかけられる。 「……申し訳ありません。願いを乗せる物ですので、できれば縁起の悪い言葉は控えていただけますでしょうか」 占い師に注意され、苦笑いするレオノル。 「そうか。確かに夢が詰まった場所で沈むなどとは少々無粋だったな。ハハハ、失敬失敬」 「とりあえずドクターにお任せしますよ。どうぞ」 ショーンは短冊と羽ペンを全く悪びれる様子の無いレオノルに託す。 「教団本部の地下深くにあるとされている禁書の類いを自由に閲覧……ふふふ。冗談だよ。ショーンがこの教団で長く活動できますように」 隣の相棒にジットリとした視線を向けられ、途中で言い換えるとテキパキと凝った形の船を折り、金平糖を乗せると池に浮かべる。 船はあっという間に水を吸い、金平糖は星の仲間入りを果たした。 「……凄いですね」 「でしょ? 願いを込めて沢山折り目を付けたから当然だよ」 ショーンの賞賛に胸を張るレオノル。 確かに折り目が多ければ水を吸いやすい。だが、果たして願いを叶える存在が居たとして、どうなんだとショーンは本日二回目の溜息を吐いた。 「こういう占いはね。楽しんだ者が勝ちなんだよ。ほら、ショーン。あそこにみんながいるよ。仲間に入れてもらおうよ」 「は、はぁ……」 ショーンの背中を押し、屋台に進むレオノル。その表情はまるで問題児を引き連れまわす教師の様に楽しげだった。 空に浮かぶ星々は、まるでクスクスと笑うように瞬いていた。 *** 「うっめぇ! プハー! やっぱ夏と言えばコレだなー!」 ロスが焼き鳥の串を三本纏めて口に入れ、盛んに食べている。もう片方の手には大きめの紙コップに注がれたビール。その様子をクスリと笑いつつ見ているのはクリストフだ。 「ロスのビール美味しそうだね。俺も買うか。……ん?」 何かに気付いたクリストフ。ビールを二つ買い、手に一つずつ持つと少しずつ輪から離れていくシリウスに声をかけた。 「さぁ、一緒に飲もうか」 満面の笑みで紙コップを渡すクリストフ。 「ああ……」 シリウスは戸惑いながらも受け取ると、金色に輝く飲み物を口に運ぶ。少しの苦味と、喉を刺激する爽快感にしばし身を任せた。 「おーう、シリウス! 食ってっかー! これも美味いぞ、食え食え~!」 そこに騒がしく割り込んで来たのはロスだ。何時の間に買ったのか両手いっぱいに食べ物を抱えている。 焼きそば、フランクフルト、たこ焼き、焼き鳥、唐揚げ串にお好み焼きまで。それらを絶妙なバランスで持ちながら、フランクフルトを齧るロス。 「……多いな」 呆れつつも苦笑しながら呟いたシリウス。 「ロス、少し貰っていいかい?」 クリストフがロスに尋ねる。口いっぱいに頬張っているロスが頷くと、その手から焼き鳥を一本貰う。 「ホラ、シリウス。何処へ行こうとしているんだい?」 少しずつ後方に距離をとろうとしているシリウスの退路を塞ぎつつ、焼き鳥を渡した。 「……慣れなくて」 短く答えたシリウスにクリストフが語りかける。 「お姫様を守らなくてどうするんだい?」 その言葉にシリウスはハッとした顔で頷くと、姦しい集団を見やる。その中には女性達に混じって頭一つ高いショーンの姿もあった。 見るとレオノルにあれこれ勧められている。 「……子守に見える」 ポツリと呟いたシリウスの言葉に男二人は楽しげに笑うのだった。 「男性陣も楽しんでいるようですね」 シンティラが綿菓子をつまみ、アリシアにも差し出して語りかける。 「ありがとう。ええ、クリスも楽しそう……」 手を振っているパートナーに小さく頷くと、アリシアは口に綿菓子を運ぶ。花が咲いたように綻ぶ顔を見てシンティラはリチェルカーレにも綿菓子を差し出す。 「リチェもほら」 「ありがとう。……ふふ、美味しい。……シリウスも楽しんでいるかしら」 こちらも屋台でしか食べる事の無い甘味を楽しんでいるようだ。横目でシリウスの様子を確認するのも忘れない。 「はい、レオノルさんも」 「ありがとう。じゃあ頂こうかな。あれ、ショーン? 何処行くの?」 シンティラが綿菓子を差し出し、レオノルが一つまみ千切るが、ショーンが後方に行こうとしている様子を見て、袖をキュッと掴んだ。 「あ、酒を……」 飲みに行こうかな、と言い掛けて振り向くが、レオノルの表情を見た時に体が動かなくなってしまった。 彼女の眼鏡の奥、まるで迷子になって親猫を探す子猫の様な眼差しに。 「……ショーン、キミ甘いもの好きだよね」 「は、はぁ、まぁ……ムグ」 返事をしようとするショーンの口の中に甘いものが詰め込まれる。 レオノルが持っていた綿菓子だと気付くのに数秒かかった。 「甘いですね。……ドクターの近くに居ないと何をするか分からないので側に居ますよ」 「わーい。じゃあ一緒に行こう」 レオノルは上機嫌でシンティラ達と歩みをあわせるが、当のショーンは彼女が嬉しそうにしている理由が解らず首を傾げるのだった。 「林檎飴美味しそうですね。チョコバナナも一口カステラもチュロスもクレープもカキ氷も冷やし果物も! あぁ、どれにしようか迷います!」 シンティラが声をあげると女性陣の誰もが肯定する様に頷いた。 「全部食べたら……太っちゃいます、ね」 アリシアは苦笑しながらも、視線は甘い香りを出す屋台に釘付けになっている。 「皆で色んな物を買って分け合いましょうか」 リチェルカーレが手を合わせながら提案する。 「賛成! 甘いものを食べたからってすぐに体型が変わるわけじゃないしね。ショーン、お願いしてもいい?」 レオノルはさきほど女性達が言った物を幾つかメモに書くとショーンに渡す。彼は頷き、まずは一口カステラの屋台に向かうと大袋サイズを購入して来た。 「わーい。ありがとう。ほら、みんなで食べよ?」 「ありがとうございます。レオノルさん、ショーンさん」 袋の口を向けるレオノルにリチェルカーレ達は礼を言うと次々に手を伸ばす。 「おいしい。自然な甘さですね。これは蜂蜜かしら」 シンティラも感想を述べるとショーンが新しいお菓子を持って、戻ってきた。 「ホラ、ショーン。これも美味しいよ?」 レオノルが手の塞がっているショーンの口元に一口カステラを運ぶ。 「……美味いです」 「でしょー?」 嬉しそうなレオノルにショーンは首を傾げるが、彼女が楽しいならそれで良いと結論付けて次々差し出された甘味を頬張るのだった。 「あ、林檎飴……。ついでに皆さんのも。私、好きなんです」 アリシアが屋台の前で止まり、皆に声をかける。 女性達の人数分購入していると、クリストフ達も側に寄ってきた。 「……美味しい」 アリシアはカリッと音を立てて一欠片を口に含むと、その甘さに目尻が下がる。 「美味しそうだね。俺にもくれる?」 「ええ、どうぞ」 クリストフに林檎飴を渡すアリシアだったが、丁度口を付けた所を舐められ、気付く。 「あ、あの……。クリスにあげますっ」 真っ赤な顔をして慌てて逃げるようにカキ氷の屋台に入っていくアリシアを目で追うクリストフ。 「……俺が酒に酔っているせいじゃあ、ないよなぁ……」 ポツリと呟くが、それは祭りの喧騒に混じり、空に消えていった。 「あ、ヨーヨー釣り」 「お、射的だ!」 シンティラとロスの声が同時にあがる。 「よーし、男性陣と女性陣に分かれてどっちが多く取れるか競争しようよ!」 「女性はヨーヨーですね。面白そうです」 レオノルの提案にリチェルカーレが頷く。 「おっし、じゃあ決まりなー!」 楽しい祭りの夜はこうやって更けていく。 *** 「いづ、占いだってさ! 楽しそうだねぇ……。やってみる~?」 「へ? あ……そ、そうです、ね……」 一際明るい声をあげたのは『泉世・瞬』。物思いに耽っている様な表情で船が浮かぶ池を見ていたのは『杜郷・唯月』である。 「短冊に願いを書いてーって、あ、この羽ペンで書けば良いんだねー」 サラサラと願いを書いて船を折り、ピンク色の金平糖を乗せて池に近づく瞬。 「瞬さん、は……何を願ったんです、か……?」 「えー? 秘密だよ~。人に言うと願いが叶わなくなるかもしれないからね~」 唯月が尋ねるが、瞬は楽しそうに人差し指を口に当ててウィンクしてみせた。そのまま池に船を浮かべるが、その瞬間に星の中に溶けていった。 「え?」 「え……?」 唖然とする二人だったが、しばらくすると笑顔を更に濃くして唯月に話しかける瞬。 「ビックリした。こんな事もあるんだね。でも俺の願いは叶うって事らしいし一安心かな。はい、次はいづの番。願い事を書く時は俺、あっち向いてるから心配しなくて良いよ~」 そう言うと瞬は唯月の左手を取り、短冊をそっと乗せると軽く握る。 「え、えっと……瞬、さん……?」 唯月が手を離してくれない瞬に声をかけると、名残を惜しむように手を離した。 「あははは、ゴメンゴメン。手が塞がっていたらいづが書けないね。じゃあ俺はあっち向いてるから船を折ったら教えてね~」 「は、はい」 軽く笑い声をあげる瞬に返事をすると唯月は短冊に願いを書き、胸に抱いて祈りを込めた。 「……守ると言われないくらい、彼に認められますように……」 その姿はまるで殉教を待つ聖者の様に、見る者全ての心に訴えかける姿だった。 その場に居た者達は誰も気付いていないが、夜空のミルク色に輝く星の河から一筋の光が零れ落ちた。それは彼女の悲願を知った星々の祝福なのかもしれない。 彼女の願いは他にもある。パートナーが最近妙に執着心が強い事、そのせいで戦いから足が遠ざかってしまう事。唯月は戦いの中で悲しむ人達も救いたいのに。 エクソシストとしては優しすぎると批判されるかもしれない。 だが、それでも自分の気持ちに嘘は吐けない。だから彼女は彼を安心させたいが為に認められたいと願った。 祈りを終え、船を折る唯月。緑色の金平糖を一粒貰うと、瞬に声をかけた。 「……瞬さん、も、もう……良いです、よ」 「ん。分かった~。お、緑色の金平糖だね。いづの瞳の色と同じだね~」 奇しくも貰った金平糖が自分の目と同じ色だと瞬に言われ、池に自分の顔を映す唯月。 「おっと、危ない!」 「キャッ!?」 瞬に後ろから抱き寄せられ、驚く唯月。 「……いづが落ちるんじゃないかと思って。驚かせてごめんね」 「あ……えっと。大丈夫、です。少しビックリしました……けど。……ありがとう、ございます」 瞬の表情は見えなかったが、その声が真剣であり、心配する様な感情が見て取れたので唯月は礼を言う。 ゆっくりと自分から離れて行く瞬の体に少しの寂しさと激しく跳ねる心臓の鼓動が彼に聞かれていないかと複雑な感情が入り混じる唯月だったが、気を取り直してその場にしゃがみこむと、船を浮かべた。 「……最近嫌な夢を見るんだ……」 「え……?」 唯月が浮かべた船を見ながら、普段は全く弱い部分を見せない彼の弱々しい声に唯月は聞き返す。 「手と足を潰された俺の前でいづが誰かに連れて行かれる夢。だから俺はいづを守らなきゃって必死に足掻くんだけれど……」 「……大丈夫ですよ、瞬さん。……私は何処にも、行きません、から」 瞬の言葉を途中で切るようにして、唯月が口を開く。 恐らく生前の記憶がフラッシュバックした事が原因で夢に見るのだろう。 迷子の子供の様に、所在なさげに唯月の手に触れる瞬。唯月はピクリと体を震わせたが、それ以上の反応はしなかった。 「湿っぽい話をしてごめんね。もう大丈夫。あ、いづの船が星に届くよ~」 見ると岸から少し離れた所で緑色の金平糖が星の海に願いを届ける様に、瞬きながら消えていった。 「あ、あの……瞬、さん……指……」 「ん? あ~、いづがどっかに行かない様にね。これなら外れないでしょ~」 いつの間にか指を絡ませ、所謂恋人繋ぎになってい二人の手。瞬のとても嬉しそうな声に唯月も赤くなりながら笑顔を返すのだった……。
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*** 活躍者 *** |
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[18] シンティラ・ウェルシコロル 2018/07/12-23:37 | ||
[17] アリシア・ムーンライト 2018/07/12-23:03
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[16] リチェルカーレ・リモージュ 2018/07/12-22:55 | ||
[15] ロス・レッグ 2018/07/12-21:55 | ||
[14] ショーン・ハイド 2018/07/12-21:34
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[13] リチェルカーレ・リモージュ 2018/07/12-21:14
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[12] ショーン・ハイド 2018/07/12-21:03
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[11] クリストフ・フォンシラー 2018/07/12-20:27 | ||
[10] 杜郷・唯月 2018/07/12-08:24
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[9] トール・フォルクス 2018/07/12-06:33
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[8] トール・フォルクス 2018/07/12-06:33
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[7] シンティラ・ウェルシコロル 2018/07/11-22:36 | ||
[6] リチェルカーレ・リモージュ 2018/07/11-21:34
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[5] ロス・レッグ 2018/07/11-05:49 | ||
[4] リチェルカーレ・リモージュ 2018/07/10-23:14
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[3] アリシア・ムーンライト 2018/07/10-22:19
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[2] ロス・レッグ 2018/07/10-21:45
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