~ プロローグ ~ |
夕方、海の見える丘にたつ丸太小屋で貧しい夕食をとった後、丘を下って、人影のない海岸をひとりのんびりと散歩するのが、その老人――ガレインの日課だった。 |
~ 解説 ~ |
●目的:巨大カニ型ベリアルの討伐 |
~ ゲームマスターより ~ |
今回のエピソードでGMを務めさせていただく黒浪 航と申します。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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目的 ベリアルによる被害を出さない 行動 先に町へ向かうベリアルを討伐。その後もう一体を。 移動の際はなるべく走り易いところを最短距離で。波打ち際の湿った所、土の地面等。 ベリアルに近づいたら魔術真名使用。 皆で囲むように配置。 マリオスは前衛、シルシィは中衛。アライブスキルを使って攻撃。 敵の攻撃はなるべく回避。 攻撃優先順位は足>ハサミ>目。間接部を狙う。 魔術攻撃を合わせる場合は協力。 カニ型だから片側の足を使えなくすれば移動できなくなったり…?? ハサミや目は配置等で難しければ、先に傷つけた場所を攻撃するのでもいいかも。 並行で魔法陣を探し、見つかればそちらへ攻撃に切り替え。 倒したら、すぐにもう一体の方へ移動。 |
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■目的 街に向かうカニの撃破 連携重視 ■準備 互いに手の甲を叩き合わせ魔術真名 「大将、各個撃破と遊ぶかねェ」 「やりすぎるなよ」 ■無名 アライブスキル使用で攻撃 注意引き、足止め 当たらなくても足止めできゃあ御の字 狙うは足、目 ■藤谷 接近攻撃を行う他の方が攻撃の隙にカニからの反撃を受ける際剣でガードを引き受ける 常に他の人の背に自分の背を向けて 背中合わせで守る 一撃が重いと予想 アライブスキルで弾ければ御の字 全員での包囲が整わないうちは常に移動しながら攻撃を与えてカニに居場所特定させず、鈍いカニを攪乱させる目的 他との声かけによる連携、視線は常に周囲を見て、状況に応じて動く |
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目的】 カニのベリアルを二体とも倒す 老騎士を助ける 行動】 ショーン組と一緒に老人の方へ駆け付ける 仲間の声掛けに 「頑張りますね…!」 「待ってるよ(にっこり)」 魔術真名を唱えて戦闘開始 ・アリシア クリスの後ろから魔術を使っての通常攻撃 主に目を狙う 老人やクリスに足が向かいそうなら、その足の関節を狙って 仲間や老人が傷ついた時は天恩天賜で回復を 「誰も…死なせたくないです、から……」 ・クリス 疾風裂空閃を使いながら関節を狙って攻撃 これだけ大きいと目は狙いにくいので仲間に任せて 鋏が振り下ろされたら回避 もしくは剣で受け止め流す 老人に攻撃が行った時は飛び込んで庇う 「あまり無理はされないで下さいよ」 冗談めかして笑いながら |
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あれが町に入ってしまったらたいへんなことになる 早く止めないと シアちゃんやレオノル先生に お願いしますと声かけ 町へ向かう敵を止める 速やかに魔術真名詠唱 魔力が届く所まで走り遠距離攻撃 撃ちます!と声をかけた後魔法を放つ これで止まってくれるといいんだけれど 前衛の後ろから 小咒での攻撃と仲間の回復 体力が6割を切った人から 攻撃は 足>ハサミ>目の弱い部分 できれば仲間と連携 攻撃を集中 魔法陣がわかれば優先で 町側の敵を倒せたら もう一体の方へ まず怪我をした人の回復 その後の戦い方は前半と同様に 戦闘終了後 ガレインさんの手当て 騎士様が守ってくださるのは安心ですが 無茶をしないでください 男の人ってすぐに危ないことをするんだから |
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■戦闘 ∇ロス TM4は常時 トランスで狼へ ベルトルド、ロウハと共に町に向かった蟹へ 真っ直ぐ背中を目指し踏んで飛び越すつもりでGO 飛び越えたら尻餅ついてでも急ブレーキ 人間姿へ 盾を構え蟹へぶつかり 蟹が対戦状態になれば TM10使用攻撃 攻撃は盾で受け ∇ティ 敵との距離が遠ければ少し遠回りになっても砂地よりも地面疾走 前衛陣と共に SH8にて敵回避率低下 ・符攻撃 足→鋏→目 医学知識で関節の弱い所へ 他の後衛組と合わせられば一緒の場所を メインは回避低下 負傷激しい人にSH4 ∇ 魔方陣あれば即 戦闘終了後、もう一匹の方へ全力疾走 ロスは狼姿 ■2 ∇ロス 仲間と蟹を囲むように TM4常時 TM10にて関節を狙い攻撃 ∇ティ 1匹目と同じように |
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街へ向かったベリアルの対処の後ガレイン達に合流 あちら側は無策で行くとも思えませんし何とかするでしょう こちらは人数の利を活用して一気に叩きます ベルトルド 移動はトランス状態で走りベリアルの行く手を塞ぐ。追いついたら人間に戻り戦闘体勢 鋏の攻撃に注意しつつ引き付ける 守り重視 片付いたら5人の元へ向かう あちらの5人が心配だ。急ぐぞ ヨナ 走って追いかけ遠くから魔力弾を撃ち引き付け 声を掛け合い協力し弱点を突いていく 最初の戦いで急所等有効な部位や攻撃を把握し2匹目の戦いで生かす 2匹目が疲弊し頭部が下がって来たタイミングで張り付き 胴体の甲羅の隙間(出来れば核を狙いたい)に向けて全力零距離フレイム |
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俺達はガレイン氏の援護に行く 走り去るシリウスに無茶するなよと一言 無茶をするのは俺の方かもしれんが、な 無駄口をたたいてる暇は無いぞとクリスに伝えて敵を一瞥 ガレイン氏が渋るなら言ってやろう 12人もいれば街に行ったカニはすぐ料理されますよ。ですが犠牲者を1人でも出せば教団の沽券に関わる。私はそのためにここで戦うんです それと。ここの若造に少々戦い方のイロハをご教示頂けませんかね? 5人でこのカニを倒して仲間をびっくりさせましょうよ とな 攻撃はドクターがスキルを使った直後チェインショットで カニの隙をついて足関節を狙って攻撃する 複数回威力を上げて攻撃すれば足止めぐらいはできる筈だ 仲間は何があっても庇う |
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◆作戦 町に向かうベリアルの方へ向かいなるべく速やかに撃破 その後ガレイン老人と彼の加勢組に合流、もう一体の撃破を狙う 攻撃部位は脚>鋏>目の順に優先 弱点とされる関節部・目を特に狙う 魔法陣の場所が判明したら最優先で攻撃 皆で声を掛け合い同じ箇所へ集中攻撃、確実に敵を弱らせる 齟齬があれば仲間に合わせる ◆戦闘 ・シュリ 射程の届く範囲に到達したらベリアルにMG8 なるべく多くの仲間を巻き込める位置でMG3 基本的には武器による魔術攻撃 アライブスキルは効果が高いと判断した方を優先使用 ・ロウハ 飛行して先行 いち早くベリアルのもとへ向かい足止め 交戦開始時にJM9 敵の注意を反らし魔術組が攻撃しやすいよう隙を作るのが主な役割 |
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~ リザルトノベル ~ |
●それぞれの選択 町へ向かえ、という老人の言葉についてしばし思案していたシルシィ・アスティリアは、やがて頷き、 「……お言葉に甘えて」 低く呟くと、さっと老人に背を向けて、町へ向かうベリアルの方へ走り出す。 「……もっとわたしたちが強かったら、おじいさんに無理をさせることもないのに……」 シルシィの口惜しげな声を聞いたマリオス・ロゼッティは、彼女を追い抜きつつ、 「ああ。でも今は、今できることをするだけだな」 前方のベリアルを睨んで、強い口調でいう。 シルシィはこっくりと頷き、 「町に被害は出させない……そして、おじいさんもきっと助けてみせる」 己に誓い、パートナーの背中を追いかける。 シュリ・スチュアートは、二体のベリアルを交互に見つめながら、決意の表情で口を開いた。 「町の人とお爺さん……どっちかを見殺しにするなんてできないわ。どっちも助ける……それができるのが浄化師、でしょう? ……わたしは、この力と、みんなの力を信じる」 (もちろん、一番信じてるのはあなた……) マドールチェの少女は、隣をゆくパートナーの横顔をそっと見上げる。 「ああそうだ、お嬢。助けられる命は、全部助ける」 ロウハ・カデッサは頷き、ベリアルと戦う老人に尊敬の眼差しを向ける。 「あの爺さん、ベリアルを一人で足止めするとは、只者じゃないな」 「ええ。あの、町の人を救うために己の命を犠牲にしようとする騎士道精神、わたしも見習いたいわ」 「ああ。ここで死なせるには惜しい、本物の男だ。町を守ったあと、きっと爺さんも救ってみせる」 ロウハはそういうと、翼を大きく打って天空天駆で空へと舞い上がり、一足先に町へ向かうベリアルのもとへと飛んでいく。 アリシア・ムーンライトは、ベリアルと戦う老人の顔にすでに疲労の色が濃く表れているのに気づいて、心配そうに呟く。 「ご老人が身を挺して町を守ろうとしていることはわかるのですが……やっぱり放っておくことはできません」 パートナーのクリストフ・フォンシラーは、優しく微笑み、 「うん、君ならそう言うと思ったよ、アリシア。もちろん、助けよう」 「はい。ありがとう、クリス。私、精一杯頑張ります」 ふたりは老人の命を救うために命を懸ける覚悟を決める。 すると、 「俺達も、お前達と行動を共にしよう。いくらなんでも、あの老人を救うのは二人では荷が重いだろうからな」 「町を救うことを優先すべきだという考えは理に適っているけれど、だからといってここで老人を見捨てる理由は一切ないからね」 そばにいたショーン・ハイドとレオノル・ペリエの二人が、アリシアたちに頷いてみせた。 砂浜を疾走するリチェルカーレ・リモージュは、町へ向かうベリアルを見つめて、表情を険しくした。 「あれが町に入ってしまったら大変なことになる……早く止めないと」 老人と戦うベリアルを見て目を細めるシリウス・セイアッドは、パートナーの呟きに無言で頷く。 リチェルカーレは、老人を救おうとする四人の浄化師たちに向かって、 「シアちゃん、レオノル先生! ここはお願いします! きっと、すぐに戻ってきますから!」 仲間への強い信頼が感じられる澄んだ声音で叫んだ。 「はい。頑張りますね!」 アリシアが頷くと、クリストフもニッコリ笑って、 「待ってるよ」 シリウスは、クリストフとショーンの顔を交互に見つめて、 「気をつけろよ」 冷静にいうと、仲間たちに背を向ける。 「お前も、無茶をするなよ」 ショーンは、シリウスの背中に声をかけた後、 「まあ、無茶をするのは俺の方かもしれんが、な」 皮肉っぽくいって、クリストフとともに自分たちが相手にするベリアルを一瞥する。 四人が老人のもとへと向かったのはみたヨナ・ミューエは、納得したように町へ向かうベリアルの方へと向き直り、 「あの方たちが無策でいったとも思えませんし、なんとかするでしょう。こちらは、人数をかけて一気にあのベリアルを叩きます」 淡々と呟く。 「よし、まずは俺が先行し、あのベリアルの行く手を塞ごう」 ベルトルド・レーヴェはそういうと、黒豹の姿へとトランスし、砂浜を驚異的な速度で駈け出し、先をゆくロウハを追う。 二人を見たロス・レッグも、 「うっしゃー! ベルトルドとロウハと一緒に競争! ぜってぇ敵は追い越す!」 叫んで、狼の姿へとトランス、砂の上を勢いよく疾走していく。 「わたしも、負けていられませんね」 シンティラ・ウェルシコロルは、先をゆくパートナーを見つめて呟くと、多少遠回りになることは承知であえて砂浜を出て、走りやすい固い地面を選んで全力で駈けて行く。 藤谷・弦一は、浄化師たちの動きを見極めた上で、自分たちもまずは町へ向かうベリアルを先に抑えることを選択する。 「ここは各個撃破しかないだろう。一匹をさっさと始末して、もう一匹を抑えているヤツらの応援に回る」 パートナーの無名も異論はないらしく、だまって藤谷のほうに手の甲を差し出す。 ふたりは、手の甲を叩き合せ、 『身代わりなりに』 魔術真名を詠唱、魔力を高めて一心不乱にベリアルを追う。 ●五人の死闘 四人の浄化師が、町へ向かわずに自分のところへ駈けて来るのに気づいたガレインは、 「馬鹿者! こっちはいいといったであろうが!」 怒声を発して、とっさに四人を追い払うような仕草をする。 すると、 「大丈夫ですよ。うちの仲間達は強い。オレ達四人が抜けたくらいじゃビクともしません」 クリストフがニッコリ笑って頷く。 「私達のことを信じてください……みんな、お爺さんのことも助けたいんです!」 アリシアが真摯な表情でいうと、ショーンはベリアルに向かってボウガンを撃ちつつ、 「十二人もいれば町へ向かったベリアルはすぐに料理されます。ですが、ここで一人でも犠牲者を出せば、教団の沽券に関わる。私達は、だからここで戦うんです。……それと、あなたの剣の技量と戦いの経験値が並大抵でないことは一目でわかります。ここで、我々若造に少々戦いのイロハをご教示いただけませんか? この五人でコイツを倒して、仲間達を驚かせてやりましょう」 涼しげな笑みを浮かべていった。レオノルも、マジックブックを構えつつ、深く頷く。 「フン……勝手にしろっ!」 ガレインはぶっきらぼうに言うと、荒い息を吐きながら、カニ型ベリアルの脚に連続して斬りつける。 『月と太陽の合わさる時に』 アリシアとクリストフが魔術真名を唱えて、五人の苛酷な戦いが始まる。 「いくよ」 レオノルが、やや離れた場所からスキル『フレイム』を使用、魔力の火球をベリアルの眼を狙って撃ち出すと、アリシアも魔術書『セイレーンの物語』を開き、やはりベリアルの眼を狙い凄烈な魔術攻撃を放つ。 ふたりの魔力攻撃を受けて、ベリアルの動きが鈍ったところで、ショーンがスキル『チェインショット』を使用、正確無比な射撃で、ベリアルの脚関節を狙う。 しかし、 「くっ……」 ショーンのボウガンは、たしかにベリアルの脚関節に突き刺さったのだが、やはり一発、二発の矢ではこの巨大な敵を止めることはできず、怒ったベリアルはなおも全力で鋏を振り回し続ける。 「これならっ!」 クリストフは前方に跳躍しつつ、スキル『疾風裂空閃』を使用、疾風の如き素早さで矢の刺さったベリアルの脚に剣を突き刺し、そのまま脚を一本見事に両断する。 「シャアアアァァァアアアッ!!!」 突如襲った痛みと驚きのために、耳をつんざくような絶叫をあげたベリアルは、眼前にたつ浄化師たちをはじめて『脅威』と認識したらしく、それまでの緩慢な戦い方を捨て、隙のない連続攻撃を高速で繰り出してきた。 「これからが本番、というわけだね……」 レオノルがそう呟いた直後――、ベリアルは二つの巨大な鋏を使って、近くにいたクリストフとガレインを同時に攻撃する。 ふたりの剣士はさっと跳躍してその攻撃を躱すが、ガレインはそれまでの戦いですでにかなり疲労が蓄積していたらしく、着地の瞬間にバランスを崩して思わず砂の上に片膝をついてしまう。 「ぐっ……」 ガレインにできたその一瞬の隙を、ベリアルは見逃さなかった。 七本の脚を同時に動かして一瞬で距離を詰めると、超重量の鋏で横殴りの一撃を繰り出す。 「しまっ――!」 ガレインが死を覚悟した、その瞬間――、 「やらせないっ!」 老人の眼前にクリストフが飛び出してきて、愛剣『ブラッド・シー』でベリアルの攻撃を受け止める! だが、岩をも粉砕する強烈な一撃をまともに受けたクリストフは、衝撃をすべて受け流すことはできず、背後のガレインとともに思いきり宙に弾き飛ばされる。 「クリス……ッ!」 アリシアは、一瞬戦いを忘れて、悲痛な声をあげながらパートナーのもとへ駆け寄る。 背中から砂の上に激しく叩きつけられて、そのまま動かないクリストフとガレインを見れば、ふたりが深刻なダメージを負っていることは一目瞭然だ。 アリシアはすぐにスキル『天恩天賜』でふたりの治療を始め、戦線離脱。ショーンとレオノルは、三人を庇うような位置に立ち、ベリアルと向かい合うが、二人とも戦況がかなり不利であることは痛いほどよくわかっている。 「いよいよ、無茶をするしかないな……」 「科学者は、本来、無謀とは縁遠い存在のはずなんだけど、ね」 ショーンとレオノルは、それぞれ武器を構え、一歩も退かないという覚悟でベリアルを迎え討つ――。 ●時間との闘い 町へ向かったベリアルに誰よりも早く追いついたのは、ロスだ。 狼の健脚で大きく跳んでベリアルの甲羅を踏みつけると、そのまま相手を追い越して急ブレーキ、振り向いて人間の姿に戻る。 「やっぱり速いな、ロスは」 「まったくだ」 ベルトルドとロウハも追いついて、三人でベリアルの行く手を塞ぐ。 甲羅を踏みつけられて怒ったベリアルに対し、三人は仲間が追いつくまでの足止めを試みる。 「いっくぜぇー!」 ロスは、危険を顧みず盾を構えてベリアルに体当たりすると、敵の注意を惹きつけた段階で、スキル『地烈豪震撃』を使用。大地が振動するほどの強烈な打撃を与える。 「負けてられないぜ」 ロウハは、スキルを使って自身の膂力を底上げし、両手剣でベリアルの脚に連続して斬撃を加える。 ベリアルが二人に鋏による攻撃を繰り出そうとしたところで、 「こっちだ」 背後からベルトルドが迫りジャンプ、上空から体重を乗せた拳を相手の頭部あたりを狙って打ち下ろす。 三人の活躍で完全にベリアルの動きを止めたところで、残りの浄化師たちが追いついてくる。 『黄昏と黎明 明日を紡ぐ光をここに』 『我らの意志の元に』 リチェルカーレとシリウス、シルシィとマリオスはそれぞれの魔術真名を詠唱、能力を最大限に高めて戦闘態勢に入る。 魔力攻撃が届く距離になったところで、 「撃ちます!」 リチェルカーレが叫んで魔力弾を発射。ヨナがそれに続く。遠距離なので二人の攻撃はさしてダメージは与えられないものの、敵の注意を惹くことには成功。 敵にできた隙をついてさらに接近したシュリが、スキル『ルーナープロテクション』を使用、月の女神の祝福によりベリアルの攻撃力を大きく下げる。 「よし、一気に畳みかけるぞ!」 シリウスが叫ぶと、 「やるだけやるさ」 藤谷は、首にかけている指輪にキスをして、ベリアルに剣を向ける。 無名とマリオスもそれぞれベリアルを包囲する位置についたところで、 「いきます」 シルシィはスキル『蠱霧散開』を使用、物理耐久を無視した毒による攻撃で、ベリアルに確実にダメージを与える。 さらに、リチェルカーレはスキル『小咒』を使用、魔力で炎の蛇を生み出し、ベリアルの身体を焼き尽くすと、 「わたしも!」 ヨナはスキル『フレイム』をベリアルの眼に向かって撃ち出す。 火気による攻撃で大きなダメージを受けたベリアルは、二本の鋏を激しく振り回して攻撃するが、浄化師たちはすばやく後退し、相手の攻撃を悉く避ける。 戦いは、浄化師たちが有利に進めていると思われたが――、 「まずいな……」 マリオスは、口を歪めて焦りの呟きを洩らした。 中衛の者がおこなう魔力攻撃は効果的ではあるが、距離があるために動き回る相手の弱点に上手く命中させることは難しく、このままでは相手を倒すのに時間がかかってしまう。 眼の前のベリアルを倒すのに手間取れば、それだけ老人を守って戦っている仲間たちの危険が増すのだ。 「コイツをさっさと仕留めるには、リスクを冒すしかないな」 敵を素早く倒すには、前衛の者たちが覚悟を決め、危険を承知で相手の懐に飛び込むしかないのだ。 「そうだ。いくぞ!」 シリウスは、スキルを使用して自身の膂力を上げたのち、一気に距離を詰め『魂洗い』を使用、ベリアルの脚を一本両断する。 直後、ベリアルの反撃で巨大な鋏が襲い来るが、避ければ背後のリチェルカーレが無防備になることに気づいた彼は、とっさに剣で攻撃を受け――、 「がはっ……!」 ガードの上から与えられた全身の骨が砕かれたかのような重い衝撃に、たまらず呻き声をあげ、その場に膝をつく。 トドメとばかりにベリアルが再度鋏を振りあげると、 「させるかぁっ!」 藤谷がとっさに飛び込んできて、シリウスを庇う盾となる。そして、 ドガッ……! 藤谷もベリアルの強力無比な攻撃になす術もなく弾き飛ばされる。 「チィ……」 無名は舌打ちしつつ、ベリアルの脚を狙ってボウガンを発射、さらに、 「これ以上はやらせない!」 マリオスがスキルで自身の膂力を上げつつ跳躍し、矢が刺さった脚に正確な一撃を加えて切断する。 脚を二本失ったベリアルに、 「わたしがチャンスをつくります!」 シンティラが叫んでスキル『鬼門封印』を使用、相手の機動力をさらに大きく下げる。 「これなら、いけます!」 リチェルカーレが再び『小咒』を使用、さらにヨナが『フレイム』を使い、巨大な魔力の炎が、今度こそベリアルの弱点である眼に命中する。 「シャアアアァァァアアアアッッ!!!」 ベリアルが苦痛の絶叫をあげ、甲羅の背の部分に魔方陣が出現する。 「よし、一気に叩くぜぇ!」 ロスとベルトルド、ロウハが揃って跳躍すると、 「決めます」 シルシィが呪符で、シュリが占星儀で、無名がボウガンで魔方陣を攻撃、さらに、上空でロウハがスキル『ソードバニッシュ』を使用、閃光のような一撃で魔方陣を斬り裂くと、その傷めがけてベルトルドが神速の拳を叩きこむ。 「終わりだぁ!」 ロスが、トドメとばかりに『地烈豪震撃』を使用、強力な一撃を魔方陣に受けたベリアルは完全に沈黙、魂をつなぐ鎖を浄化師たちの魔喰器に食われて、息絶えた。 戦闘終了後、リチェルカーレはすぐにシリウスのもとに駈け寄り、『天恩天賜』で彼のダメージを回復。シンティラも、シリウスを庇って負傷した藤谷のダメージを回復させる。 「オレは先に行くぜ!」 ロスが叫んで、ふたたびトランスして駈け出すと、ベルトルドとロウハもすぐに彼を追い、他の浄化師たちも、疲労した身体を奮い起こして走り出す。 ●救援 ようやくロスたちが駈けつけた時――、そこには痛ましい光景が広がっていた。 ダメージが蓄積したガレインは、地面に片膝をついたまま立ちあがれず、その側にたつクリストフとショーンも立っているのがやっとという状態だ。 ショーンは、おそらく仲間を庇って受けたのだろう、左腕に深手を負っており、しっかりボウガンを構えることもできないようだ。 まともに動けるのは、どうやらアリシアとレオノルの二人だけのようだが、彼らもすでに体力の限界が近いらしく、肩で息をしながら苦しげな表情を浮かべている。 ロスたちが駈けつけるのがあと少し遅ければ、おそらく五人は全員ベリアルに殺されていただろう。 「すまん、手間どった!」 人間の姿に戻ったロスの謝罪を受けて、レオノルが弱々しい笑みを浮かべる。 「遅いよ、まったく……」 「皆さんの回復を頼みます……わたしは、もう魔力が……」 アリシアは口惜し気に呟いて、リチェルカーレとシンティラの姿を探す。 ロスとベルトルド、ロウハがベリアルを囲み、攻撃を開始すると、しばらくして残りの浄化師たちが合流する。 リチェルカーレとシンティラが傷ついた仲間の回復を開始する中、他の仲間たちはベリアルを包囲して、残った体力と魔力をかき集めて猛攻撃を浴びせる。 「蠱霧散開!」 シルシィが魔力の毒でベリアルを包むと、 「ペンタクルシールド!」 シュリは、動きの鈍った仲間達を守るため、魔力の防壁を彼らの周囲に展開させる。 「みんな、体力の限界が近い……だから、わたしが決める」 ヨナは、ふとそう呟くと、突如、前衛の者たちの横を駈け抜け、ベリアルの懐深く潜り込んだ。 「………っ!」 ベルトルドが驚愕の表情を浮かべる中、ヨナはベリアルの甲羅の隙間に手をあて、零距離で全力の『フレイム』を使用、巨大な青紫の火球をベリアルに炸裂させる。 ベリアルは大ダメージを負うものの、ヨナ自身も爆炎に巻き込まれ、後方に吹き飛ばされる。見れば、彼女の両手には酷い火傷までできている。 「お前、馬鹿か、何やってる!」 ベルトルドの叱責に、ヨナは淡々と、 「よそ見しないで、早くトドメを」 「くそ……」 ベルトルドは、ヨナの性格を誰よりもよく知る自分が彼女の無謀な行動を止めることができなかったことに静かな怒りをおぼえ、震える。 「帰ったら、話すことがある」 ベルトルドは厳しい表情でいうが、ヨナはそんな彼を完全に無視する。 内臓を灼かれたベリアルは、激しく苦しみながら鋏を振り回す。レオノルは、残った僅かな魔力を搔き集めて、 「ショーンが受けた借りは、私が返さないと、ね……」 最大級の『フレイム』を放ち、ベリアルの頭部に命中させる。 魔力の炎が消えた後、ベリアルの甲羅に魔方陣が現れたのをみたシリウスは、クリストフの方を振り返り、 「まだやれるか、クリス?」 「もちろんだよ」 シンティラから回復を受けたクリストフは、痩せ我慢の笑みを浮かべつつ、剣を構える。 「よし、決めるぞ」 シリウスとクリストフは、同時に駆け出す。 ベリアルは二人を狙って鋏を振り下ろそうとするが、 「露払いはまかせな」 藤谷が飛び出して、渾身の一撃でベリアルの鋏を弾き、攻撃の軌道を変える。 「じゃ、俺も」 無名はボウガンを放ち、動きが鈍ったベリアルの眼に見事矢を命中させる。 「このままでは、格好がつかないからな」 ダメージから回復したショーンが放ったボウガンで、残った眼も潰され、ベリアルは完全な混乱状態に陥る。 中衛の浄化師たちの魔力攻撃がベリアルの魔方陣に集中するなか、マリオス、ベルトルド、ロス、ロウハの四人が跳躍し、魔方陣に力任せの一撃を叩きこむ。 そして、ひと際高く跳んだシリウスが、渾身の『魂洗い』で魔方陣を斬り裂くと、 「トドメだっ!」 背後から迫るクリストフが、『疾風裂空閃』で甲羅ごと魔方陣を両断する。 この一撃が致命的となり、手強かったベリアルは魂の鎖を魔喰器で食われてようやくこと切れた。 ●戦いの終わりに 「まったく、男の人ってすぐ危ないことするんだから」 ガレインの手当てをするリチェルカーレが不満そうに呟くと、 「……………」 そばに立つシリウスは、決まり悪そうに目を逸らす。 ダメージから回復したガレインは、リチェルカーレに礼を言ったあと、なぜか不機嫌そうな顔でクリストフに近づいていく。 「おい、若造。なぜ、あの時ワシを庇った? ワシは守ってくれなどと頼んではおらん。お前の馬鹿な行動のせいで、仲間全員が危機に陥ったのがわからぬか?」 老人の厳しい叱責を受け、クリストフは俯く。 二人を見たアリシアはとっさに何か言おうとするが、隣にたつレオノルが微笑んでそれを制する。 「……あなたの言うとおりです。返す言葉もありません」 クリストフが謝ると、老人はフン、と鼻を鳴らし、 「まったく、最近の若いモンは、年寄りの言うことなど、これっぽっちも聞こうとせんのだからな……」 「…………」 「……お前のせいで、アイツのもとへゆくのがまた遅れてしまったではないか……」 老人はかすかに震える声でそう呟くと、さっと若い剣士に背を向ける。そして、背を向けたまま、少しだけ優しい声で続けた。 「だが……お前には、やはり礼を言わねばならんな……。お前のおかげで、ワシはもうしばらくアイツの愛したこの海とともに生きていけるのだから……」 それだけ言い残すと、老人は浄化師たちに軽く手を振って別れを告げ、まるで何事も無かったかのように、またひとりぶらぶらと砂浜を歩きだした。 浄化師たちは、老人の痩せた背中に向かって一礼したあと、互いの顔を見合わせて満足気な笑みを浮かべる。 「コイツを煮て、酒の肴にしたら、ンまいかもなぁ」 無名が、ベリアルの死体を見上げて、冗談か本気かわからぬ声でいうと、クリストフも、 「カニ鍋にしたら、何人前できるかなあ」 真面目な顔で思案している。 「カニ鍋かあ、旨いよなあ。一杯やりたくなってきたぜ」 ロウハもニヤリと笑っていうと、 「え、このカニ食べるんですか……?」 アリシアが、若干引き気味にいう。 「いや、ベリアルだし食べないよ……」 クリストフは苦笑いするが、無名は腕組みして、 「オレはいっぺん死んでる身だし、食べても平気だろ、ウン」 すまし顔でいう。 「みんなも喰ってみろよ、案外イケるかもしれねぇぜ?」 無名がそういってベリアルの脚のそばに屈んだのをみて、キケンな雰囲気を感じた浄化師たちはひとり、またひとりと、無言でこの場を後にする。 「……さっ、パーティといこうじゃねぇか!」 ベリアルの『剥き身』を手にして無名が笑顔で後ろを振り返ったとき、すでに砂浜には誰もおらず、小さなヤドカリが不思議そうに彼を見上げているばかり。 同時に、無名が手にしているベリアルの死体も、みるみるうちに砂となって崩れ落ち、彼はひとり夕闇の砂浜で途方に暮れたのであった。
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*** 活躍者 *** |
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[36] クリストフ・フォンシラー 2018/07/21-20:30 | ||
[35] ベルトルド・レーヴェ 2018/07/21-16:15
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[34] ヨナ・ミューエ 2018/07/21-16:13 | ||
[33] シリウス・セイアッド 2018/07/21-09:56 | ||
[32] シルシィ・アスティリア 2018/07/21-08:00 | ||
[31] ロス・レッグ 2018/07/21-07:18 | ||
[30] ロウハ・カデッサ 2018/07/21-04:04 | ||
[29] ヨナ・ミューエ 2018/07/21-03:31 | ||
[28] ロス・レッグ 2018/07/21-00:08 | ||
[27] レオノル・ペリエ 2018/07/20-22:45 | ||
[26] 無・名 2018/07/20-22:21 | ||
[25] クリストフ・フォンシラー 2018/07/20-21:40 | ||
[24] ヨナ・ミューエ 2018/07/20-21:39
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[23] ヨナ・ミューエ 2018/07/20-21:23 | ||
[22] ロス・レッグ 2018/07/20-21:08
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[21] ロス・レッグ 2018/07/20-21:03 | ||
[20] シリウス・セイアッド 2018/07/20-21:02 | ||
[19] 無・名 2018/07/20-20:27 | ||
[18] レオノル・ペリエ 2018/07/20-20:02 | ||
[17] 無・名 2018/07/20-20:01 | ||
[16] ロス・レッグ 2018/07/20-19:33 | ||
[15] ロス・レッグ 2018/07/20-18:56 | ||
[14] 無・名 2018/07/20-06:53 | ||
[13] ヨナ・ミューエ 2018/07/20-01:33 | ||
[12] シンティラ・ウェルシコロル 2018/07/20-00:16 | ||
[11] シルシィ・アスティリア 2018/07/20-00:10 | ||
[10] 無・名 2018/07/19-23:18 | ||
[9] クリストフ・フォンシラー 2018/07/19-22:09 | ||
[8] リチェルカーレ・リモージュ 2018/07/19-21:53 | ||
[7] リチェルカーレ・リモージュ 2018/07/19-20:00 | ||
[6] 無・名 2018/07/19-19:53 | ||
[5] クリストフ・フォンシラー 2018/07/19-13:54
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[4] クリストフ・フォンシラー 2018/07/19-13:53
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[3] シルシィ・アスティリア 2018/07/19-10:59 | ||
[2] 藤谷・弦一 2018/07/19-07:56
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