~ プロローグ ~ |
冒険者ギルド「シエスタ」は鑑定士や情報屋、酒場の店主が同業者組合として組織化されたことが始まりだ。今では冒険者が集う酒場兼情報交換の場として、冒険者に依頼書を出したり、発見した財宝の換金をしたりしている。 |
~ 解説 ~ |
●目的 |
~ ゲームマスターより ~ |
最後までプロローグを読んでいただきありがとうございます。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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■情報収集 ギルドで地図を購入 その足で第一発見者、ランスロットに会い以下を質問 ・現地に行った際、湖の魔力以外に気になった事はあるか ・今回のように湖に魔力が集まるのは初めてか、また自然な事なのか ・異変が起きる前後、湖に近付く者やその痕跡がなかったか ・現地の地理について 普段敵が少ない道や見つかりにくいルート、敵をやり過ごす隠れ場所等を聞く ・凍結魔術について 凍結魔術は浄化師でも習得可能か、無理なら同じ効果の発火符のような物は入手可能か ■シエスタ 一度集合し情報共有 特に現地調査を行う者に現地の地理についての情報を地図と共に提供 現地調査はしないが湖付近の安全な場所まで同行し待機 戻った味方の怪我をSH4で治療 |
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冒険者ギルド『シエスタ』に行って、できるだけ多くの冒険者から情報を聞いてみよう(スキル会話術3) 異変の前に予兆はあったか、魔力が集まる事に心当たりはあるか等。 できればランスロットさんに接触できれば良いんだけど… 情報を集めたら、シエスタで他の皆と情報交換をしよう。 魔力が集まっている事が自然現象なら良いんだけど、何か嫌な予感がするんだよね… まさか夜明けの終焉団なんかが関わったりしてないだろうな…? (確認の為に湖に行く) 毒持ちジェルモンスターがいるから、深入りはしないでおこう。 魔力の発生が自然現象なのか人為的なものなのか確認できればそれで良い。 もしジェルモンスターに遭ってしまったら撤退しよう。 |
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考察する上で土台となる情報はあったほうが良いと思い基礎的な調査を 1.魔力が魔結晶化する所要時間 2.樹梢湖の底に蓄積されている魔結晶の量 3.魔結晶がモンスター化する所用時間 4.モンスターの種類 これらの関連性 1~4を教団内で調査、文献調査するけど研究者に聞くのが一番良いかな? 更に2と4は「シエスタ」にて魔結晶掘りをして稼いでいた冒険者から聞き取り調査 これらは、どの要素で問題が起こっているのかと、どう解決すればよいのか、を事態の解決への材料とする為の調査です、最後に情報を現地調査で確認すれば調査完了です 流れは、教団で調査 → 「シエスタ」で調査&教団員間情報交換 → 現地調査 最後にレポートを書いて教団に提出 |
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目的 ジェルモンスター大量発生の原因調査 全体の流れ それぞれの組で調査→冒険者ギルド「シエスタ」に集まって情報交換→一部は現場調査 行動 「いつもより湖に魔力が集まってた」という発見者の証言が、大量発生の原因に関わりがあるのではないかと予測。 魔力が増大する理由にはどんなものがありそうか、過去の樹梢湖や魔力の集まる他の場所で、この異常現象と似た事例が起こっていないかを調べる。 魔術学院の図書館や教団の指令報告書等で文献調査。 被害や討伐の報告、回数、時期、原因と思われる事等。 自然現象なら周期的に討伐以来や被害報告があるかも? 現地調査の際は補助を。 別方向でスライムの注意を引くとか、撤退時の援護等、必要なら。 |
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●調査1 本件が人為的なものである可能性を考え、 リュミエールst周辺の住民から情報収集 ・聞き込み内容 怪しい人物の目撃情報や、最近変わった事や新しい噂等 無関係そうな事でも些細な事でも正確に記録し纏める 念の為最近の宿屋等の宿泊記録も参照させて貰う ・役割 喰:会話術にて聞き込みとメモ(副) 祓:記憶と物書きにてメモ(メイン)と纏め ・方法 犯人の潜伏の可能性を考え、調査を悟られないよう教団制服は未着用 聞き込みの際はこっそり口寄魔方陣を見せ浄化師の証明をして安心させる 協力を貰えない場合は深追いしない ●調査2 犯人がリュミエールst周辺を拠点にしていた可能性があるので、 その痕跡を期待して調査 (ウィッシュへ続きます) |
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~ リザルトノベル ~ |
待ち合わせ場所である冒険者ギルド「シエスタ」は、二階建ての建物だった。 中に入ってみると意外と広く、年季の入った建物を何度か改築して使われているようだった。 全体的に酒場の形になっているが、一番奥に受付があり、その左右に依頼書が貼られている 1階は大衆酒場のような雰囲気で賑わっているのに反して、2階は個室となっている。重要案件を話す際や相手との交渉時に使われているようだ。 浄化師達は各自調査内容を話し合うべく、ここに集まった。 冒険者ギルドの好意で個室を貸しきらせてもらい、それぞれが調べてきた内容について話し出した。 ● 「じゃあ、俺達から話しますね」 『フィノ・ドンゾイロ』は説明する為に、記憶を手繰り寄せる。 「樹梢湖? 樹梢湖って『ソレイユ』地区にあるダンジョンよね?」 不思議そうな顔で聞き返す婦人は、 「ごめんなさい、名前は知ってるけど……ここから離れた場所だし、ダンジョンのことは私よく分からないわ」 やはり別の地区にあるダンジョンの名前を知っていればいい方で、詳しいことを知っている『エトワール』の住民は殆どいなかった。 怪しい人物の目撃情報もなく、酔っぱらいが路上に倒れていて困ったという話だけ。 最近変わった事や新しい噂など聞いてみても「最近人気の占い師がいるのよね」とか「新しいお店ができたの」と、リュミエールストリートは平和そのものだ。 「――というわけでして、聞き込みの方は殆ど空振りに終わりました」 フィノががっくりと肩を落としながら説明を続ける。 「念のため、ユンに最近の宿屋の宿泊記録も記録してもらいました。なので、人為的なものだった時に役に立つと思います」 フィノの説明に『ラウル・イースト』が感心した声を上げる。 「そこまで僕らは考えてなかったな。大変だったんじゃないかい?」 「大丈夫、です」 リュミエールストリートにある宿屋がどれだけあるかは分からないが、二人で全部回るのは労力がいったことだろう。 ラウルが労うように声をかけると、『ユン・グラニト』は照れたようにはにかんだ。 「一般人に偽装している可能性も考えて、潜伏しそうな場所を中心に探したんですが……」 フィノが一瞬顔を歪めた。 「廃屋を調べていたら、そこが近所の子供達の遊び場だったらしくて……」 「フィノくんが、危ないよって、注意したんだけど、逆に、怪しまれて」 (あのガキ、あれだけ嘘つき呼ばわりしたくせに……) フィノは話していると腹ただしさと一緒に思い出してくる。 中々子供達に浄化師だと信じてもらえなかった為、最終手段として口寄魔方陣を使ったのだ。それを見せた途端、あれだけ頑なだった子供達はあっさりと手のひらを返した。面白い玩具でも見つけたように目を輝かせて「武器見せてよ」と強請る子供を宥めながら話を聞き出したのだ。 「まぁ、なんとか浄化師だって信じてもらえたんですけど、頼み事をされまして……」 これは今回の調査とは関係ないですが、とフィノが前置きする。 「その子達、の中に、孤児院の、子がいて」 「俺達そのまま孤児院まで引っ張られて、そこの院長に会ったんです。それで頼み事とやらが、そこ出身の冒険者に浄化師の素質を持った子がいるから探してほしいって。頭を下げられちゃって」 「教団、嫌い、だから、自分からは、行かないだろうって……頑なな子で、心配だから、お願いしますって、頼まれて、断れなくて……」 心底困り果てた様子で話す二人に耳を傾けながら、ラウルは思うところがあるのか一人なんとも言い難い表情を浮かべていた。そんなラウルを気遣うようにパートナーである『ララエル・エリーゼ』がちらちらと気にかけていた。 「だから、何の、成果も、得られなかった、です」 ユンが小動物のように身を縮ませて申し訳なさそうにしている。 落ち込む二人をララエルが明るく励ます。 「そんなことはないです! 二人は頑張りました! ね、ラウル」 「そうだね、僕らだって失敗したことは何度もあるし」 ララエルの明るさにラウルは穏やかな表情を浮かべる。ラウルは苦笑いしながら話した後、気にすることはないと二人に笑みを向けた。 ● 「はーい! 次は私達が話すわね!」 『ロゼッタ・ラクローン』が場の空気を吹き飛ばすように明るく手を挙げる。 「じゃ、クロエ。ちゃちゃっと説明しちゃって」 「以前、話しました。ジェルモンスターは魔結晶を核に持つ生物なので、ある程度魔結晶が存在しないと大量発生できないのでは、という推測を元に調査を進めました」 丸投げしてくるロゼッタに一瞬呆れた表情を浮かべると、『クロエ・ガットフェレス』が流れるように説明する。 「文献調査の結果、魔結晶ができるまで通常は一週間から一ヶ月、大きなものになるにつれて数年から数十年と年月がかかることが分かりました」 「ものによっては数百年かかったものもあるそうですよ、ロマンがありますよね♪」 「そういったものは高値がつきそうだ」 「ですよねー」 ロゼッタが楽しげに同意する。『ルーノ・クロード』も興味深そうに聞いていた。 「周辺の環境によりますけど、魔結晶からジェルモンスターが発生するまで一時間から数日とスパンが想定よりも速いんです。もしかしたら数時間単位で発生してるのかも」 クロエは淀みなく説明を続ける。 「そりゃ大量発生するわ」 「予想よりもどちらも速いな。これだと自然現象の可能性も捨てきれない、か」 『ナツキ・ヤクト』が納得と驚きが入り混じった声を上げる横で、相棒のルーノは静かに考え込む。 「でも、それなら定期的に討伐指令が出てそうですよね」 「教団の方で大量発生が問題となってるのは今回だけです。冒険者ギルドの方でも新人に依頼を出すだけでこれまでどうにかなっていたと言ってましたよ」 ロゼッタの疑問に『マリオス・ロゼッティ』が答える。だが、疑問は振り出しに戻ってしまった。 「湖に蓄積している魔結晶に関しては、文献にも詳しいものはなく、冒険者の間でも情報がバラバラなんですよね」 クロエが冒険者から聞いた話では、正確な量こそ分かっていないが、湖の底を埋め尽くすほどあるらしい。湖はかなり深く、底の方に行く前にこちらの息が続かなくなる。それでも諦めきれずに魔結晶を求めて潜った者は大抵帰ってこないそうだ。 「でも、何か隠してそうだよね」 ふふ、と面白げに口元を上げてロゼッタが囁く。 「利益を求めて湖に冒険者が殺到しない理由は、取りに行く方法が限られてるからか、もしくは一部の人間にしか知られていないのかもしれませんね」 「もし、私が知ってても他の人に内緒にするかも」 「冒険者だったら、尚更だな」 クロエの推測に『シルシィ・アスティリア』が頷く。マリオスもパートナーと同意見のようだった。 「モンスターに関しては文献で調べたものと、冒険者の聞き取りが概ね一致してました」 樹梢湖に生息しているのは、確認されている内、ジェルモンスターとフシギノコ。滅多に姿を現さないが、シーズエレメントも含まれる。 「……ですが、ここから先は地図を見てから説明した方が分かりやすいと思います」 クロエが言葉を一端区切ると、ルーノ達の方を見た。 ● 「思ってたより樹梢湖の森って広いんだよな」 ナツキは持っていた地図を広げると、仲間達が一斉に覗き込む。 樹梢湖を中心に広大な森が広がっている。右の方には川が流れているのが読みとれた。 「俺らが前の指令で行ったのはここからだな」 ナツキが地図の真下――南にある入り口を指さす。 「この曲がりくねった一本道、記憶通りです。でも、他にも樹梢湖への道があるんですね」 クロエが前回行った道と重なることを確認すると、南以外に二つの入り口があることを指摘する。 「そうなんだよな、北の方からの入り口は地図見りゃ分かるだろうけど、かなり入り組んでるんだよな」 「ナツキが言った通り、慣れた者でないと地図を持っていても迷うそうだ。新人冒険者でも倒せる生物しかいないそうだが、霧が出ていることもあるから中堅辺りじゃないと危ないそうだよ」 「でしたら、西の入り口はどうなんですか?」 地図をじっくりと見ていたマリオスが質問する。地図を見る限り西からの道は最短距離で行けるように見えた。 あー、と頭をかきながらナツキが告げる。 「西かあ……そもそもこの地図って不完全なんだよな」 「あ! 俺らもこの地図を買った時に言われましたよ」 どういう意味かと尋ねる前にフィノが声を上げる。耳を横にぺたりと倒したナツキの言葉に何度も頷くフィノに仲間たちは疑問符を浮かべる。 ナツキは地図売買を生業とする男との会話を語り出した。 「一応注意しとくが、その地図には冒険者しか知らない抜け道は載ってないぜ。……おっと、文句は言うなよ。どこまで情報を売るかも冒険者次第って事だ。あんたらだって仕事上黙っとく事があるだろ。そういうことさ」 それでも買うかいとこちらを試すように言う男にルーノは金を渡す。 「毎度あり。樹梢湖に行くんなら、案内人を雇って連れて行った方がいいだろうよ。慣れた奴なら、ジェルモンスターが寄りつかない場所や時間帯を把握しているだろうからよ」 考えておくよ、と言ってルーノは地図を受け取る。 「ルーノ、良かったのか?」 「詳細な地図ほど軍事上機密扱いされるものさ。見た限り、前行ったルートとも一致している。それにこれ以上粘ったところで伝手のない私達には売ってくれないだろう」 納得のいかない表情を浮かべていたナツキもルーノの言葉に渋々頷いた。 「ってことでさ、後でランスのおっさんにも聞いたんだけど、西のルートは最新のもんじゃねえんだとよ。それに随分と前に橋が壊れちまって、冒険者も行かなくなったもんだから、今は廃れてるみたいだぜ」 「そうだね、やはりおすすめできないそうだ。途中で渓谷があるようでね、橋を使わず行こうとすれば、遠回りになる上に足場が悪いらしい」 ナツキとルーノの言葉にようやく納得したようにマリオスが頷く。 「先ほどの話の続きですが、西にはどんな生物がいるか現在確認できていないんです。橋が壊れる以前の文献や報告書しか見つかりませんでした」 クロエがさらに問題点を指摘する。悩ましい空気が漂う中、ロゼッタの明るい声が響いた。 「それよりも、ルーノさん! 凍結魔術について教えてもらいましたか?」 ロゼッタは目を輝かせながら尋ねる。 「教えてくれなかったよ」 「ええ~、そんなぁ……」 ルーノが肩をすくめて答えると、ロゼッタががっくりとテーブルに項垂れる。 「『そう簡単に他者に教えてちゃ、飯のタネがなくなるんでね』ってさ。ルーノも結構食い下がったんだけど、のらりくらりと交わされちまったんだよな」 「……冒険者なだけあって交渉慣れしてたよ」 さらりと暴露していくナツキにルーノが額を押さえる。話題を変えるようにルーノが別の話を持ち出した。 「その代りジェルモンスターの弱点について教えてもらったよ。乾燥に弱いそうだ。ほとんどが水分だからね、砂漠のような場所では生きてられないと聞いたよ」 「それなら、フレイムが有効かもしれませんね。うーん、でも水分の多い樹梢湖だと効き目はどうかなあ……」 クロエの興味が対処法へと移り、予測を立て始めた。 ルーノ達によってジェルモンスターへの対処法が分かり、少し弛緩したような空気が漂い始める。 「異変が起きる前、不審な人物は見かけなかったそうだ。樹梢湖には大抵冒険者が探索しているから、何らかの痕跡が残っていたら例え小さなことでも噂になっている筈だ。今までの話を聞いていると、何らかの条件が重なったことで起きた自然現象の可能性が高い」 「悪意のある者の仕業よりも、自然現象の方がいいですよ」 「そうだな、自然現象の方が面倒も少なくて良いのだけど……」 ラウルが苦笑すると、ルーノもまたコーヒーを飲みながら頷いた。 「……ただ、彼が言っていたんだが、湖に集まる魔力の色が濃くなっているような気がした、と。湖から糸のように細いものが伸びていた、ともね。エレメンツ特有の感覚で上手く説明ができなかったようだが、……そこが気になる。実際に湖に行って『魔力探知』してみないことには分からないか……」 悩ましげにルーノがため息をついた。 ● 「今回みたいに、湖に魔力が集まるの、不思議なことじゃないの」 「魔力は大気中に存在するものですし。自然現象の一部として増減すること自体、おかしなことではないんですよ」 シルシィはタイミングを見計らって口を挟んだ。マリオスもテーブルの紅茶を置き、シルシィの後を引き継ぐように説明する。 「元々樹梢湖のようなダンジョンがある場所は、魔力溜まりが発生しやすい場所なんです。いや、魔力溜まりがある場所にダンジョンがあるって言った方が正しいのか……」 「マリオス……まだ、説明終わってない」 シルシィが思考に沈み始めるマリオスの服を引っ張る。 「あ、すみません。つい考え込んじゃって……教団で調べた結果、過去の樹梢湖や他のダンジョンでは似た事例は見つかってないんだ」 「……魔力が増大する原因、分からなかった」 シルシィの言葉に、誰もが考え込むような静けさが過ぎる。 「それに樹梢湖について調べてみると、妙なお伽話が見つかったんです」 「お伽話、というより、伝承?」 「あるところに森に愛された乙女あるいは精霊がいました。その乙女を気味悪がった村人がある日殺してしまった。その遺体から湖が生まれた。または乙女が亡くなってしまったことを嘆き悲しんだ森が流した涙から湖ができた。ここの記述はバラバラなんですけど、大筋は同じなんだ」 「『哭泣の湖』」 シルシィが淡々と呟く。 「樹梢湖の別名、なの」 「……随分と曰くありげな名前だ」 「今では殆ど呼ばれることがなくなった名前ですよ」 ルーノが眉根を寄せていると、マリオスが地図の東の方を指さす。 「東にある『鎮守の森』も、おそらくその伝承と関わりがあるんじゃないかな。今回の件に関係はあるか分からないけど、知識はあって損はしないからね」 「なんだか妙なことになっちまったな……」 ナツキが夏野菜のキッシュを食べながら、ぼやいた。 「救いのないお話だけど、何かの教訓なのかな」 クロエが冷静に分析する。その横でララエルが「……可哀想です」と沈んでいるのをラウルが元気づけていた。 奇妙な沈黙が部屋を覆う中、ララエルが突然声を上げる。 「あの、私達冒険者さんたちからお話を聞いたら、シーズエレメントがたくさんあらわれたって」 ララエルは懸命に話すほど、薄らと緊張感に満ちた空気が穏やかなものへと変わっていく。 「すみません、言いそびれていたんですが……樹梢湖では一度だけ生物の大量発生があったそうです。けれど、それはジェルモンスターとは違ってすぐ治まったんだ。というより、狩り尽くされたようです……」 ララエルの要領を得ない説明にラウルが代わりに話し始める。 「ジェルモンスターが大量発生する前に、シーズエレメントがジェルモンスターほどではないけど大量に現れたそうなんです。一時期、魔結晶が取れるシーズエレメントを目当てに冒険者が大挙したとか」 「そういや、ランスのおっさんも言ってたっけ。……シーズエレメントの取り合いに嫌気が差してここに来たって」 ナツキはチーズの盛り合わせに手を出しながら話す。そのままパンに生ハムとチーズを挟んでかぶりつく。 「いいな~、私もシーズエレメント生け捕りにしたい……話は変わるんですけど、シーズエレメントって精霊種ではないんですって。それでも水気の魔力を帯びた不思議生物に変わりはないんですけどね」 ロゼッタから突っ込みどころがある言葉が聞こえた気がしたが、シーズエレメントの説明に気を取られて突っ込むタイミングを失ってしまう。 「……『魔結晶』は高い魔力が放出・蓄積されている場所や、魔力を多量に有している生物が絶滅した際に出現することがあるという、か……」 思考に耽るマリオスが以前読んだ本の記述を思い出す。 「シーズエレメントも魔結晶を核にしているせいか、同じ性質を持ってるみたいですよ」 マリオスの呟きに反応して、クロエが補足を入れる。 「冒険者さんたちも新人さんがシーズエレメントの魔結晶の核をうっかり壊したから、欠片が散らばってジェルモンスターがいっぱい出たんじゃないかって話してました」 「あのとき集まったのは熟練の冒険者だけでなくて、新人の方も多かったそうです。上手く倒さないと核である魔結晶が傷ついて売り物にならなくなるのにってぼやいてましたよ」 ララエルが「はい!」と手を挙げて、一生懸命に話すのをラウルがフォローする。 「それが原因なら、まあ間抜けな話ではあるけどなあ……」 「いや、それなら今も尚ジェルモンスターが増え続けているのはおかしい」 「そうですね、それなら討伐してしまえば数が減る筈ですから」 ルーノはナツキのぼやきを否定し、クロエも軽く頷くと、考える仕草を見せる。 ● 「関係あるかは分からないんですが、冒険者の間で変な噂が流れてたんです。なんでも幽霊が出るとか」 ラウルが遠慮がちに発言する。 「シーズエレメントが現れた同時期に、ベリアルに殺された男性の姿を見た冒険者が何人もいるみたいなんだ」 「それ、大量発生する三ヶ月前の指令の話?」 シルシィが呟くとマリオスも何かを思い出すような素振りを見せる。 「そういえば報告書の中にそんな指令があったような……」 「樹梢湖を探索していた冒険者が、狼型ベリアルに襲撃された……すぐに浄化師に討伐されたけど、間に合わず犠牲になった人もたくさんいた」 シルシィは沈んだ声で淡々と説明する。 「……そういえば、ベリアルに殺された男性の姿を見た、声を聞いた、と口を揃えたように言っていたけど、誰だったという話はありませんでしたね」 「どいつかは特定できないわけだな」 ラウルが思い出したことを話すと、ナツキが耳をぴんと立てながら腕を組む。 「確か一人だけ生き残った人がいるの。名前は、……ポール――」 「ポール!? ポール・キュヴィリエですか!?」 がたりと席を揺らし、フィノが声を張り上げる。シルシィは驚きのあまり固まっていたが、暫くすると首を振った。 「う、うん、……知ってるの?」 「探してほしいと頼まれた浄化師候補ですよ、その人!」 フィノの言葉に仲間達は驚く者、考え込む者とそれぞれ反応が分かれる。 「あの、ポールさんは樹梢湖の件に関係があるんですか、ラウル?」 「いや、現時点では分からないかな……」 ララエルの問いかけにラウルは困ったように首を振る。 「直接的に関係はなくとも間接的になら、その可能性もあるんじゃないか……」 マリオスが腕を組み考え込んだ様子で人知れず呟いた。 ● 「現場に行って見ようぜ。考え込んでても分かんねえなら、自分の目で確かめるのが一番だろ」 謎は増すばかりで答えが出ない中、ナツキが声を上げた。相方のルーノもふむと顎に手を当てると、 「そうだな、実際に見てみないと分からないこともあるか」 「私もナツキさんに賛成でーす!」 ロゼッタが真っ先に手を挙げると、他のメンバーも異論はないようで席を立ち始める。 「あ! ここでの食事代って経費で落ちないかな?」 「もう、フィノくん! まだ、諦めて、なかったの?」 フィノが勘定を見てそう声を上げると、ユンが窘めるように片頬をつまむ。すると、ムッとしたフィノがユンの頬を摘み返した。 互いにむぐむぐ言い合っている二人を周囲は微笑ましく見守る。 こうして現地調査に向かうことになったのだが―― ● 「前より増えてます!?」 遠目から樹梢湖の森を隠れて観察していたララエルが驚きの声を上げる。 入り口付近から見えるだけでも、ジェルモンスターが今日も陽気に跳ねまくっている。それも数匹どころではない。溢れすぎてお互いに弾き飛ばし合っている。これでは隠密行動どころの話ではなかった。 南からの進入は無理だと判断し、北を確認しに行くと、こちらは少なくとも入り口付近にジェルモンスターを見かけなかった。 「ここまで魔力が伝わってくるなんて……前はこんな感じはしなかったのに……」 「うん、少し、怖いぐらい……」 クロエの言葉に同意するようにユンが頷いた。クロエは森からびりびりと肌に濁流を思わせる魔力を感じていた。 森が拒絶している。そう勘違いするような水気の魔力の高まりに呆然とする。荒々しい魔力の奔流の中にいると、『魔力探知』するのに、そうとう集中しなければ行けない。 別の属性ならまだしも水気の生物だと森に流れる魔力に紛れて見にくかった。 今の装備では心許なく、魔力が飽和した森の奥へと進めば何が起きるか分からない。 「湖まで後一歩のところで撤退したからな……今回は前にもましてヤバそうだぜ」 ナツキが耳をぴんと逆立てて、警戒するように気配を探る。森には霧が出始めていた。 仲間達が今回は引き返すべきでは、と話し合っていると、 「声が――」 不意にロゼッタが何か気づいたように声を上げる。 「声が、聞こえなかった?」 ロゼッタが笑顔を引っ込めて真剣な表情で問いかけると、クロエは首を振る。 「ううん、何も聞こえなかった。皆さんは何か聞こえましたか?」 クロエが他の仲間たちに聞いてみるが、誰もが首を振る。どうやら聞こえたのはロゼッタだけのようだった。 「確かに聞こえたんだけど……私の勘違い? でも、あれは……誰かを呼んでるみたいな――」 真剣な表情のままロゼッタは考えをまとめるように呟きだす。何かを捉えたように顔を上げる。 「……また、聞こえる」 「ロゼ、どの方向から聞こえた?」 ロゼッタが無言で指を指した方向にクロエとユンの二人がかりで「魔力探知」する。 「同じ属性で分かりづらいけど、森の魔力とは違う魔力がある」 「はい、切れそうで、細い、魔力、です」 クロエの言葉にユンがどもりながらもはっきりと頷く。 「なんて言っているかよく聞こえない。……でも、男性の声だわ」 ロゼッタは耳に手を当て集中するが、声は途絶えてしまった。それと同時に森の奥から生物の蠢く気配を感じ、これ以上の調査は危険だと判断する。そのまま撤退することに全員一致で決定した。 ロゼッタは声の主のことが気にかかっていたが、彼女も霧の中を進むのは無謀だと分かっていた。 一旦教団に戻り、各自調査結果と考察を交えたレポートを提出した。 浄化師達は司令部の判断を待つ。刻一刻と樹梢湖の謎に迫る時が近づいていた。
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*** 活躍者 *** |
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該当者なし |
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[23] フィノ・ドンゾイロ 2018/08/04-23:20 | ||
[22] ラウル・イースト 2018/08/04-21:44
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[21] シルシィ・アスティリア 2018/08/04-20:11
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[20] ナツキ・ヤクト 2018/08/04-17:42
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[19] ユン・グラニト 2018/08/04-16:05
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[18] フィノ・ドンゾイロ 2018/08/04-14:44 | ||
[17] ナツキ・ヤクト 2018/08/04-13:02
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[16] フィノ・ドンゾイロ 2018/08/04-01:14 | ||
[15] ラウル・イースト 2018/08/02-09:57
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[14] ルーノ・クロード 2018/07/31-21:25 | ||
[13] クロエ・ガットフェレス 2018/07/31-07:35 | ||
[12] ララエル・エリーゼ 2018/07/31-05:59 | ||
[11] シルシィ・アスティリア 2018/07/31-00:21 | ||
[10] ラウル・イースト 2018/07/30-04:32 | ||
[9] ロゼッタ・ラクローン 2018/07/30-02:18
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[8] ルーノ・クロード 2018/07/29-22:55 | ||
[7] ロゼッタ・ラクローン 2018/07/29-00:42 | ||
[6] ラウル・イースト 2018/07/29-00:10 | ||
[5] シルシィ・アスティリア 2018/07/28-23:36 | ||
[4] ラウル・イースト 2018/07/28-22:52 | ||
[3] ナツキ・ヤクト 2018/07/28-20:33 | ||
[2] ラウル・イースト 2018/07/28-12:49
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