~ プロローグ ~ |
「ふはははは! ついに、ついにできたぞ! ポルテ君!」 |
~ 解説 ~ |
■場所:教皇国家アークソサエティ、首都エルドラド。薔薇十字教団本部病棟地下2階第一研究室。 |
~ ゲームマスターより ~ |
はじめましての方ははじめまして。お久しぶりの方はこんにちは! GM春川ミナです。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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「ティティ 「ぎゃあああ!なんで人間姿で擦り寄って来るんですか! 「ちゃんと話しようと思ったら人間姿の方が良くねぇ? 「ちゃんと!?いやそれと擦り寄ってくるのは違いますよね!?いつもなら狼姿でどーんって来るじゃないですか!? 「薬の効果だろ 「うわああ!ロスさんが冷静ぃー! 「ティは悲鳴が多いなって逃げた 「だから人間姿で擦り寄ってきたら吃驚するじゃないですか!というかホント距離置いて!ロスさん大きいんですから! 「俺のスキンシップ好きは良く知ってるだろ 「ちょっと病的です! 「だろ? 「肯定しないで!? 「とにかくティ煩いドア閉めないとってカーテンか 「ロスさんに煩いって言われる日が来るとは! 「ともかく落ち着けって |
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◆2人で薬を服用 「姉さん、少しでもおかしな感じがしたらすぐ言うんだよ」 「えへへ…僕、シアがびっくりする位、変われるかも」 「(大丈夫かな…) …僕も沈静効果にはお世話になるかもしれないな アンデッドへの効果が分かって、開発の助けになると良いけど」 ◆結果待ち 効能を待つ間はモルモット達と触れ合い おやつをあげられるなら野菜をあげてみる 「よしよし。君達も重大な役目を担ったんだよね」 「ね、シア…この子達を、あんまり、離さないであげて」 「そうだね、実験じゃ彼らも随分大変だったみたいだし…」 「それもある、けど…この子達の時間は、人よりも短いから ほんの少しの間でも、愛する人と触れ合えないのは…かわいそうだもの…」 |
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~ リザルトノベル ~ |
「さて、では被験者の方々にはこちらの薬を飲んでいただきます。色は悪いですが問題はありませんのでご心配なく」 ここは教皇国家アークソサエティ、首都エルドラド。薔薇十字教団本部病棟地下2階第二診療室。 研究員のフォルテ・スロウリッドが試験管に入れられた緑色の液体を参加者の4人に渡す。 「うぇ、結構臭いがキツイな」 試験管に嵌められたコルク栓を抜いて開口一番に言って顔をしかめたのは『ロス・レッグ』。 「そうですか? 割と爽やかな香りですが……。あ、ロスさんライカンスロープだから人間形態でも嗅覚が鋭いんでした」 パートナーの鼻を摘まむ仕草に苦笑しながら、こちらもクンクンと試験管の液体を嗅ぐ女性は『シンティラ・ウェルシコロル』だ。 「本当に安全なんですよね? 姉さんに何かあれば僕は……」 「勿論です。それに此処には一流の医療スタッフも待機しています。ご安心下さい」 姉の身体を気にかけているのか、フォルテに再三安全を確認するのは『リュシアン・アベール』。 「もう、大げさだよ、シア。それに、僕はこの香り好きかも……?」 試験管に口を付け、一番初めに飲み始めたのは『リュネット・アベール』。白い喉がコクリと動くさまを見て、リュシアンは姉の顔から目を伏せた。頬が少し赤くなっているのは気のせいだろうか。 「さ、残りの方も飲んでください」 フォルテに促され、リュネット以外の三人も薬を飲み込む。 *** 「とりあえずロスさんこっちに。薬の効果で飛び跳ねでもしたら迷惑ですから」 「そんな事しねーって。うぐ、水が欲しい」 「駄目ですよ、ロスさん。薬の効果が薄まっちゃいますから。後、吐いちゃ駄目ですよ、任務失敗になりますから。私には結構美味しかったんですけど……少し体が熱いですね。もしかしたら気分を高揚させるハーブが入っているのかも? ふふ……」 薬の妙な苦味と甘みが早く抜けるようにとロスが自分の喉から胸を擦るが、少し楽しそうな声の聞こえた方を見ると、シンティラは何やら上機嫌で鼻歌を口ずさんでいるようだ。 「ティ」 「何ですか? ロスさ……きゃあああ!?」 自分の名前を呼ばれ、シンティラが振り返る。と、ロスの顔が視界を覆い尽くすほど近かった。 人間形態のロスの顎が彼女の肩に乗せられたのだと気付く間も無く、飛び上がらんばかりに驚くシンティラ。いや、実際に飛び上がってしまい、肩にあったロスの顎がガチンと鳴ったのだが……。 「そんな驚かなくてもいい」 先程音が鳴るほど噛み合わせてしまった自分の顎が痛いのか、手でさすりながらゆっくりとシンティラに近づくロス。ただ、その大きな体がのっそりと近づいてくる様は気心の知れたシンティラで無くともある種の恐怖感を抱くかもしれない。 「いいいいい、いや、だってロスさんちか、近い!」 「嫌?」 「いやってそういう意味の嫌って訳じゃなくて! あーもう! ロスさん近い近い近い! にじりよってこないでください!」 ロスの肩に手を当ててふんばるシンティラ。いつもと少し違う彼の態度にシンティラの心臓がバクバクと跳ねる。淡々と喋るロス。甘えたいのかいつものように鼻先をシンティラの身体に寄せて来るが、一つ重要なのはロスが人間形態である事だ。もう一度言うといつも擦り寄ってくる時は狼形態であるのに、今は人間の姿である。 「ティ。うるさい。他の人に迷惑」 「ロスさんにうるさいって言われたー!? なんかちょっとショックです……」 両手の人差し指をツンツンと合わせ、少し子供っぽくいじけるシンティラ。その様子にロスはふっと一瞬柔らかい笑みを漏らすと息を吐いた。 「あー、ごめんな。とりあえずティを落ち着かせなきゃな……。よいしょっと」 「あ、わ、きゃあ!? な、何を!?」 わたわたと慌てている様子のシンティラをロスが抱き上げる。所謂お姫様抱っこの形に。 「ちょっ!? ロスさん、ななななにを!? いやー! 攫われるー! 助けてー!」 「ティ、しー。モルモットも怯えるから」 バタバタと手足を振り、ポコポコと力が入らない両手でロスを叩く。何とかその拘束から逃げようとするが、ロスの腕はびくともしない。逆に暴れないようにだろうか、ぎゅうと抱き上げる力を強められて身動きが取れなくなってしまった。 普段からは想像も付かない冷静なロスにシンティラの頭は更に混乱する。この時点でシンティラにも薬の効果が効いているのだが、自身がおかしいと気付いていないのはロスの突飛な行動で落ち着けないせいもあるのかもしれない。 「あ、そうだ。こんな状態のティは人前に出せねーな……。カーテン閉めなきゃなぁ、よっと」 シンティラを抱きかかえながら器用にカーテンを閉めるロス。 そのままゆっくりとベッドに彼女を降ろし、自分は隣のベッドに座る。 「あ、ありがとうございます?」 ベッドに座り、少しだけ落ち着いて物事を考えられるようになった様子のシンティラ。ところが、再びロスが爆弾を落とす。 「ん、別に問題無い。ティ、やっぱそっちに行って良い? いつのもように撫でて欲しい」 「……」 「……」 暫く無言の時間が二人の間に流れ、ハッと意識を取り戻したように口を開いたのはシンティラだった。 「いやいやいや、ロスさん今人間形態でしょうが! ここ、ベッドの上! 絵的に、常識的に、倫理的に考えて問題がありすぎるので駄目です! ……というかロスさん目先の欲望に対して割と忠実になっているような? 妙な冷静さがありますが……」 シンティラが落ち着かない頭で何とか物事を整理しようとするが、その思考も上手く纏まらない。そして次の一言でそれは完全に吹き飛んだ。 「俺、ティに撫でられるの好き。落ち着く。多分、誰よりも、ティにされるの好き」 「……! あーうー……。ちょっと落ち着いてくださいロスさん。私も深呼吸しますので。ちょっと、にじりよって来ないでください。ストップ、ストップ、ステイ! 良いですか? どうどう」 ロスの飾らない気持ちを正面からぶつけられてシンティラもゆっくり考える事ができない。ベッドに戻るようにロスに向けて人差し指で指し示すと下を向き、深呼吸を一つ、二つ、三つほど数えてロスに向き直る。 「良いですか、ロスさん。一度しか言いませんよ。私はロスさんの事、とても大切です。そう、とても大切な……――です」 「? ごめん、ティ。よく聞こえなかった。大切な、何?」 「ふふふー、一度しか言わないって言ったでしょう! 狼の姿だったら聴覚も鋭くなるので聞こえていたかもしれませんね!」 悪戯が成功したような子供の顔をしてシンティラがロスにべーっと舌を出す。 「そうだなー。ティは俺にとっても大切な家族だもんな」 頭をポリポリと掻くロス。 「あら……? 妙な高揚感が無くなった様な……」 「薬の効果が切れたんじゃねー? あー、なんだかつっかれた。わりぃ、ティ。俺少し横になる」 ロスはゴロンと自分のベッドに横になり、そのまま目を閉じると微かな寝息をたて始めた。 「……いつものロスさんですね。私もどうかしていましたね。この薬、使いどころを誤ると大変な事になりそうです。ただ、少しスッキリしたように思えるのは気のせいではないでしょう。恐らくですが、ハーブの効用でしょうか。けれど本音が言えた事に対する事もあるのかも?」 シンティラは隣のベッドに目をやると、そこには狼の姿になったロスが早速スピースピーと可愛らしいイビキをかいているところだった。 「ロスさんは大切な家族ですよ。多分ね……ふふ」 手を伸ばしてゆっくりと、ロスのモフモフの毛並みを楽しむシンティラ。ロスの耳が夢うつつの中でもピコピコと嬉しそうに動く。背中を撫でる手の持ち主の瞳は慈愛に満ちていた……。 *** 「姉さん、大丈夫?」 「ええ、シア。何だかとても気分が良いの。シアこそ大丈夫? 気分が悪く無い? 何かあったらお姉ちゃんに言うんだよ?」 「え……」 姉を心配するリュシアンだったが、逆に心配される言葉をかけられて絶句してしまう。 隣に居た被験者達は割りと大騒ぎしていた様子だったが、今は落ち着いているようだ。 「ふむ、これは興味深いな。薬の効果が発動するまでに個人で差があるようだ」 部屋の隅に居た研究員のフォルテが何やらカルテを書いている。 「つまるところ僕にはまだ効果が無いと?」 「ああ、そうかもしれない。気分に何か変化は無いかな?」 「ありませんね。どちらかと言うと気分が平坦な感じです。怒りも焦りも無くなったような」 リュシアンの言葉にフォルテが質問を投げかけると、彼は自分の手のひらを見ながら答えた。 「ああ、なるほど。ならすでに薬の効果は発動している筈だ。君が元々あった、何かを護ろうとする感情に作用しているんだろう。もしかして君は独占欲が少し高いのかな? 何、問題は無い筈だ。薬が切れるまで妙な感覚があるかもしれないが、一過性の物で心配する事は無い」 「……分かりました」 フォルテの言葉に若干の不満を覚えたリュシアンだったが頷くと、少し心配そうな姉の隣に行く。 「どうしたのシア? お腹痛い?」 そう言ってリュシアンの額に手を当てるリュネット。 「……プッ。姉さん、腹痛の時にどうして額に手を当てるのさ」 ふきだしたリュシアンにリュネットがしてやったりといった表情で舌を出す。 「えへへ、ばれちゃった? シアが眉間に皺を寄せているからほぐしてあげようと思って。ホラ、そんなんじゃ直ぐに老けるよ?」 コロコロと表情を変えるリュネットにリュシアンは眩しそうな視線を向ける。 「姉さんには敵わないね。そういえばモルモットに触っても良いって話だったね。どうする? 姉さん」 「うん、行こっ。はい、シア」 「えーっと?」 ニコニコと笑顔になったリュネットに手を差し出され、戸惑うリュシアン。 その様子に焦れたのか、キュッと手を握られてゆっくりとモルモットが居るケージまで連れてこられた。 「……随分積極的になっているね」 「ん? シア何か言った?」 「ううん、何も。姉さん、この箱の中に野菜が入っているよ。食べさせてあげるかい?」 「勿論! えっと、これはブロッコリーの茎とニンジンをスティック状にしたものだね」 リュネットはニンジンスティックを一本持つとモルモットの鼻先に近づけた。 「プ、プ、プ」 モルモットは鼻で匂いをクンクンと嗅ぐと、うれしそうな鳴き声を出しながら齧り始めた。 「その子はセサミだね。じゃあこっちがサラミか。おいでおいで」 リュシアンがブロッコリーの茎を輪切りにした物をサラミに差し出すと、こちらも可愛らしい鳴き声を上げながら食べた。 「あの、撫でても大丈夫ですか?」 「え……」 リュネットが発した言葉に驚きの声をあげるリュシアン。何故なら彼女は面識の無い男性に声をかける事は滅多に無いからだ。 「ええ、どうぞ。比較的大人しい子達なので抱き上げても大丈夫ですよ」 フォルテの答えに、リュネットは顔に喜色を浮かべるとモルモットの背中を撫で始めた。 「わ、柔らかい。ふわふわしてる。ね、シアも撫でてごらんよ」 リュシアンの手を取って、モルモットの背中に当てるリュネット。 その動作にリュシアンは苦笑する。 「どうしたの? シア、変な顔して」 「いや、いつもと逆だなって思って」 怪訝な顔をするリュネットに返すリュシアン。その手はゆっくりとモルモットの背を撫でている。 「あはは、言われてみればそうかも? あ、シア凄い。サラミちゃんの目がとても気持ちよさそうにトロンってなってる」 「そりゃ姉さんの髪を梳かしたりもしているし。結構楽しいかも」 「えー、僕の髪って動物と一緒?」 「えっ!? いや、そんな訳じゃ」 少しだけむくれた様子のリュネットの横顔にリュシアンは慌てて弁解をする。が、しどろもどろになる弟の様子が楽しいのかクスリと笑みをこぼした。 「なんて、うそ。シアが慌てているのが面白くて」 「……ビックリさせないでよ。ほら、おいで」 リュシアンはゆっくりとサラミを抱き上げて撫でる。 「よしよし。君達も重大な役目を担ったんだよね」 自分達が飲んだ薬はこのモルモット達が体で実験してくれたのだ。それを考えるなら先輩というべきかもしれないが。 「ね、シア。……この子達をあんまり、離さないであげて」 しゃがんでいるリュネットがリュシアンを下から見上げるような体勢でおずおずと話す。 見るとモルモットの片方、セサミがケージの檻に前足をかけてキュウキュウと寂しそうな声をあげている。 「そうだね。実験じゃこの子達も随分大変だったみたいだし……」 リュシアンはそっとサラミをケージの中に下ろす。二匹は互いの存在を確かめ合うように体をくっつけて擦り合わせていた。 「それもある、けど……この子達の時間は、人よりも短いから、ほんの少しの間でも、愛する人と触れ合えないのは……かわいそうだもの……」 リュネットの赤い瞳はモルモットを通してどこか遠くを見ているような、それでいて自身の失った記憶を辿る様な、複雑な表情だった。 「姉さん……」 「ね、シア。もし……ううん。なんでもない」 何かを言いかけて言葉を飲み込むリュネット。そのルビー色の瞳はリュシアンの心を捉えて離さなかった。まるでルビーの檻の中に閉じ込められた様な、そんな光景を幻視するほどに。 リュネットは再びモルモットに視線を落として、背中をゆっくりと撫でている。 「姉さん……あの」 「どうやら薬の効果が切れたようですね。お二方ともこちらへ。冷たい飲み物もご用意してありますので」 リュシアンの言葉はタイミング悪くフォルテの声にかき消された。自分でも何を言おうとしたのかは解らず、頭をゆっくりと左右に振っていつもの笑顔に戻した。 「多分……これも薬の効果かな……」 自分の中にわだかまる妙な気持ちを押し殺すように小さく呟くリュシアン。 「さあ、行こうか。姉さん」 「う、うん。……フフ」 リュネットに手を差し出すリュシアンだったが、クスリと含み笑いをされて怪訝な顔をする。 「どうしたの? 姉さん」 「ううん。さっきと、逆だねって思って」 「そういえばそうだね、ハハ」 今はこれで良い。この笑顔がいつまでも護れますように。リュシアンはそんな事を想いながらおずおずと差し出された姉の手を取るのだった。 *** 「さて、薬の効果のほどはいかがでしたでしょうか? よろしければ所見などお聞きしたいのですが」 研究員のフォルテが被験者達によく冷えたフルーツジュースを差し出しながら聞いてきた。 「うーん。なんっというか、いつもはドカーンと向かうのがジワジワって感じになったよーな?」 首を捻りながら自分に起きた薬の効果を思い起こすロス。 「ロスさん、それだとあまり通じませんよ。そうですね、彼の場合、普段からは考えられないほど冷静に落ち着いていましたが、欲望に忠実となる部分が散見されました。恐らく薬の効果が性格に作用したのだと思われます。続いて私自身に起きた効果としては妙な高揚感がありました。そのせいで若干思考が纏まらない部分があり、困りました。戦闘に行く前などに、戦意の低い方に服用させるといいかもしれません。後は……薬の効果が切れた時に妙にスッキリしますね。頭の中が冴えている様な、そんな感じです」 シンティラの言葉にフォルテがカルテを書いている。 「ありがとうございます。シンティラさんは薬学、医学知識がおありの様でとても参考になる意見です。ではアベールさん達はいかがでしたでしょうか」 フォルテはリュシアンとリュネットに同じ質問を投げかける。 「僕は、あまり効果が無かったような。先程言われた通り、何かしらの感情に作用しているのかもしれません」 リュシアンが薬の効果を思い出しながら話す。 「そうだね。この薬の狙うところはそこなんだ。エクソシストが持っている潜在的な感情を平均値に引き下げる、または引き上げる。これは平均値に近いほど効果が少なくなるんだ。性格に作用するのは副次的な効果だね」 何時の間に入ってきたのだろうか、そこにはこの薬の開発者、クラレット・オリンズが立って説明をしている。 「ぼ、僕は……成りたい自分になれた、かも……しれません」 リュネットがおずおずと自分の意見を述べる。 「ああ、見ていたよ。ただ弟君は気が気では無かったようだ。積極的すぎるのも考え物だけど、たまには良いかもしれないね」 クラレットはクククとシニカルな笑いをこぼすと、全員の顔を見渡して言った。 「さて、今日はありがとう。ちなみにそのジュースは戯れに作った新薬が入っていてね。一時的に性別を反転させるものだ」 「ちょっ!?」 フォルテが慌てたように瓶に入ったジュースを確かめようと手を伸ばす。 「うげ、普通に飲んじまったよ!?」 「ロスさんが女性に……? 想像ができません……。でもそうなると新しい名前を考えてあげなくてはいけませんね。ロッコとかロールとか」 「待て待て待て、ティ! 何だか背中がむずむずするから俺が女になった名前を考えるのはやめてくれ!」 シンティラの言葉にロスがあたふたと慌てている。女性になってしまった場合随分と可愛らしい名前やリボンを付けられそうで気が気ではないようだ。 「僕が女の子になっても姉さんみたいになるんじゃないかな……」 「ぼ、僕が男の子に……? シアに壁ドンとかできるのかな……」 「待って待って姉さん! 僕に何するつもり!?」 珍しくリュシアンが動揺しているが、それはリュネットが見せた積極性にだろうか……。 途端に大混乱に陥る診療室。だが……。 「冗談だ。流石に研究費と研究期間が足りないからね」 クラレットが楽しそうに話すと被験者達とフォルテは膝から崩れた。 「ふー、ビックリした。あ、でもティが男になった姿も見てみたいかも……ちょ、あいたたたた!」 ロスの台詞にジットリとした視線を向けるシンティラ。その指は彼の背中をぎゅうと抓り上げている。 「冗談で良かったよ……」 「ちょっと……残念かも……」 「姉さん!?」 少し残念そうなリュネットと、脱力したり仰天したりと忙しいリュシアン。 「はははは、これは性別反転薬を作るのも候補に入れておかないといけないな!」 楽しそうなクラレットと裏腹にフォルテは胃の辺りを押さえていた……。
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*** 活躍者 *** |
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[3] リュシアン・アベール 2018/08/05-22:25 | ||
[2] ロス・レッグ 2018/08/05-00:08 |