~ プロローグ ~ |
「そ、それが……伝説にまで謳われた媚薬、マリスメアなのですねっ!?」 |
~ 解説 ~ |
●目的 |
~ ゲームマスターより ~ |
とても暑い日が続きますね。今回、マスターを務めさせていただく、黒浪 航と申します。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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媚薬を口にするのはロウハ ◆シュリ ロウハを助けなきゃ…! 迷わず彼に近づく ロウハ、あなたはいつもそうだった わたしのことを気遣って、一人で無理をして でも今のわたしは、お嬢じゃなくてあなたのパートナーなの だから、今度はあなたがわたしを助ける…! ロウハの背に腕を回して抱きしめる 彼の苦しみよ、消えて…そう祈りながら ◆ロウハ 自分の身に何が起こったのか理解した時、瞬時に思ったのは 絶対にお嬢を近づけちゃいけねーってこと お嬢、来るな…! 内から戦う衝動と必死で抗う お嬢を傷つけたら、俺が今までしてきたことの意味が…! 抱きしめられた時、心が洗われるような感覚を覚えた パートナー…そうか いつの間にか、頼もしくなったな…お嬢 |
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花弁を口にしたのはアリシア 花びらを、口に含むくらいなら、構いませんけれど… お花、好きですし… 口にしたら…なんでしょう、これ… 胸がドキドキして…苦しい… クリスの腕にぎゅっと捕まって ああ、なんだか、こうしてると安心… もっと、ぎゅっとして欲しい… クリス…お願い… 潤んだ瞳で見上げて 思考にモヤがかかって何を言われても上の空 何だかクリスが色々触ってくれるので幸せな気持ちに… 気付いたら、口が、塞がれてて え、え、え…!? 動けない、息ができな…っ そこで頭のモヤが晴れて 何をされてるのか理解 思わず突き飛ばして涙目 事情を聞いてお礼を言った物の 私の…ファーストキス…… ドキドキ言ってるのは媚薬がまだ残ってるのでしょうか… |
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飲む方 媚薬… ね、シリウス これって要はどういうお薬なの? 歯切れの悪い返事に ふうんと ええと。つまり、飲んでみせればいいんですか? なんの躊躇もなく花弁を口に え、ううん なんともな…っ! 急に胸が苦しくなり 喘ぐような呼吸 頭がぼうっとする シリウス こっち見て 他のひとの方 見ちゃ嫌 彼の首に手を伸ばして抱きつく きれいなめ すいこまれそう ね わたしだけをみて? わたしだけを ずうっと 抑揚の少ない シリウスの声が聴こえる 苦しそうな彼の声に段々視界がクリアに 間近に見える翡翠の双眸 ーそんなこと、ない シリウスはいつも わたしを助けてくれるわ もう一度抱きつく 心配かけてごめんなさい 気のせいだろうか 何かに怯えたような色が 彼の目に見えた気がした |
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◆飲むのは唯月 ・いつもよりも瞬の事を考えると胸がおかしい ・そんな唯月を見て瞬は焦る 唯「あ、れ…」 瞬「いづ?」 唯「ま、どか…さ…」 瞬「いづ?ねぇ、大丈夫??」 唯「大丈夫…です、から…」 唯(彼に好きと言いたい…触れたい…抱きしめて欲しい… でも…でも…それは…薬なんかで言う事じゃない…!) 瞬「いづを苦しめるのは…」 唯「ダメダメ!わたしは…っ あなたがただ笑ってくれたらそれで良いんです! それだけで…わたしは…この気持ちを…」 瞬「え?」 ・彼の言葉に涙がボロボロと 唯「本当…?ほん、と…に…?」 唯(前の誰かに言わされたような言葉じゃなくて ちゃんと彼の本心が聞きたくて あなたの言葉…また信じてもいい…です…か?) |
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こういう薬はまず匂いを嗅ぐ程度で…ってドクター!? 脈拍の上昇、顔の紅潮、呼吸の荒さ…尋常じゃない…横になって下さい! 格好いいとかそんな悠長なこと…まさかこれが効果…? 無理をなさらないで下さい…このままでは死んでしまいます ドクターのお望みとあらば抱きしめる程度…まずい…心音が…焦る…このままじゃ死ぬぞ 貴女はこれで幸せなのかもしれません…ですが私の気持ちも考えて下さい! 貴女を傍で守れることは私の誇りです 常に正しさを求める貴女の姿勢が羨ましいんです ドクターは私のたった一人の先生だ! だから…もっと学びたいことが…あれ? 治った…? 本当に良かった… 大好き、か… さらっと言ってくれるよな… 大好き、なんて… |
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(ハグされつつ明後日の方向を見ながら) あらー何これ、割とここ最近の通常営業じゃないの…… なんかこういう心臓に悪いの多くていっそ慣れてきてるのよね…… とは言えこのままだと動けないし 何より、死なれるのは嫌だわ ……死なれるの、だけは (背中に手を回してぽふぽふと軽く叩き) ねえ、碧希君 私も、あなたの事大好きよ だけどね、私はあなたと手を繋いで歩く方が好きだわ いつもみたいにね あなたの隣を歩いていきたいの あなたのいる景色を沢山見たいの ……あなたが生きている幸せを、これからも感じたいの (碧希の頬を包み) だから、いつもみたいに手を繋ぎましょう? そんなあなたが、私は好きなのよ ……っ!? 碧希君ここ人前!!(今更) |
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媚薬⇒明智 ・前提 千亞「媚薬…?」 本当に効果あるのか、と思いつつ 珠樹「ふふ、どんな気持ちになるか興味はありますね、ふふ…!」 千亞「あっそ。じゃあおまえ試してみろよ」 ・行動 珠樹「千亞さん大好きです今日も愛らしいです私のものになってください、さぁ…!」 千亞「ちょっ、ちょっと待て珠樹、おまえ利き過ぎだろ、落ち着け」 頬は紅潮し恍惚の表情…はいつもと変わらぬド変態かもしれないが ブツブツと独り言のよう&千亞の話しっかり聞けてない& 何より目が別の世界へおイきになられたド変態。 千亞「え?何?死…!?ちょっと珠樹、落ち着けっ、おいっ!」 上半身を脱ぎだす珠樹、千亞に迫る ・正気に戻り後 千亞「ぼ、僕は何も言ってない!」 |
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二人とも嫌ーな顔。 黙ってベルトルドに促すが付き合ってられないというような表情で首を振る 本当に効果がある訳でもあるまいしと仕方なくヨナが媚薬を口に ヨナ 徐々に来る動悸に自分でも信じられない ああ、嘘…どうしよう… しどろもどろでパートナーに何か話そうとするがうまくいかない ベルトルドさん、あの、私…ちょっと… 自分でもどうかしてると思うのですけど…薬が… 動揺と感情の高まりでフラフラしつつパートナーの体に触れようとする 「しっかりしろ」 いきがくるしい 胸を抑えて蹲る 「ヨナ」 低い声に何とか顔を上げると額に強い衝撃 痛みで声にならないが正気を取り戻す |
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~ リザルトノベル ~ |
●のぞまぬ指先 口にした媚薬の抗いがたい効果を理解した瞬間、ロウハ・カデッサは混乱する頭の中で必死に考えた。 (お嬢を……近づけるわけにはいかない……!) ほとばしる衝動と必死に闘いながら、苦しげな声を出す。 「お嬢……来るな……!」 (ここでお嬢を傷つけてしまったら、これまで俺のしてきたことの意味が……っ!) (お嬢は、俺が、絶対に守る……ぜったいに……ゼッタイ、ニ……) ロウハは、悪夢を追い払おうとするかのように激しく頭を振るが、その切実な想いとは裏腹に、彼の体は徐々にパートナーを壁際に追い詰めていく。 (くそ……だめだ……からだが、いうことをきかねえ………) 気がつくと――ロウハは、シュリ・スチュアートの肩をつかみ、彼女の体を部屋の壁に押しつけていた。 ふたりの、乱れた息が混ざり合う。 そして、次の瞬間――。 アリシア・ムーンライトも、そして、クリストフ・フォンシラーも、はじめから媚薬の効果を甘く見ていた。 だから、アリシアは、ただ花が好きだから、という理由だけで、何の躊躇もなくマリスメアの花弁を二、三枚ぽいぽいと口に含んでしまった。 そして数秒後――、 (なんでしょう……急に、胸がドキドキして……苦しい……) 媚薬の効果に完全に囚われてしまったアリシアは、気がつくと、パートナーの筋肉質の腕にぎゅっとしがみついていた。 (ああ……こうしてると……なんだかとても安心……でも……) アリシアは、潤んだ瞳でクリストフの顔を切なげに見つめる。 (でも……やっぱり足りない………ねえ、もっと、ぎゅっとして……おねがい………) 「クリス……お願い……」 アリシアは、男の硬い胸板に身体を預けると、クリストフの頬にそっと手を伸ばす――。 「媚薬? ねえ、これって、どんな効果がある薬なの?」 リチェルカーレ・リモージュの無邪気な問いに、シリウス・セイアッドは無表情に固まる。 「……惚れ薬、みたいな……」 めずらしく歯切れの悪いパートナーを不思議そうに見つめていたリチェルカーレは、ふうん、と呟くと、次の瞬間、迷わずマリスメアの花弁を口に入れる。 「なっ……!」 驚愕したシリウスは、パートナーの顔を心配そうに覗きこむ。 「リ、リチェ、大丈夫か? 身体に異常は?」 「え、ううん、なんともな――」 そう言いかけた瞬間、ドクン、と熱い何かがリチェルカーレの細い体を貫いた。 にわかに呼吸が荒くなり、胸が苦しくなる。 視界がかすみ、意識が弛緩していく。 ぼんやりとした頭で考えられるのは、ただ、シリウスのことだけ――。 「……シリウス、ねえ、こっちみて……」 気がつくと、リチェルカーレは、シリウスの首に腕を回して、彼に抱きついていた――。 泉世・瞬の「飲んでみて」という軽い言葉にこたえて、杜郷・唯月は、素直に媚薬を口にした。 そして――、 「あ、あれ……?」 唯月は、自身の身体を襲った異常をすぐに自覚する。が、時すでに遅し。 「い、いづ……?」 不安そうな表情でこちらを見つめる瞬をみて、唯月は突然胸が苦しくなる。 「ま、どか……さん……」(なんだろう……胸があつい……) 「ねえ? いづ、大丈夫?」 「大丈夫、です……」 唯月は、無理して微笑んでみせるが、「瞬を今すぐ自分のものにしたい」という衝動は強まるばかりだ。 (瞬さんの体に触れたい……ここで抱きしめてほしい………今すぐ、好きだと言いたい――けど、だけど、この言葉は、この気持ちは、媚薬の力を借りて口にするようなことじゃない!) 「だめ……! わたしは、この気持ちを……わたしは、ただ、あなたが笑っていてくれたら……それでいいんです……だから………」 媚薬の力に必死に抗い、苦しむ唯月をみて、瞬は、己の胸に激しい痛みを覚える――。 媚薬なんて都合のいいもの、そうそうあるはずがない――そう高をくくってレオノル・ペリエは、マリスメアの花弁を口にした。そしてすぐに、そんな自分の愚かさを後悔することになる。 (あ、あれ……胸が苦しい……ま、参ったなあ……) いち早く媚薬の効果を自覚したレオノルは、とっさに対策を講じようと思考を巡らせるが、それも長くは続かなかった。 媚薬を口にした時点で、彼女の『負け』は決まっていたのだ。 レオノルは、甘く切なげな息を吐きながら、パートナーのショーン・ハイドにゆっくりと近づいていく。 「ショーン……なんだか、いつもよりカッコイイね」 「ど、ドクター……?」 戸惑うショーンを壁際に追い詰めたレオノルは、そのまま彼の胸に身体を預けてうっとりと微笑む。 「ショーン……どうして、そんなに焦った顔をしているの? 私は、こうしているのが幸せなんだけど、君はちがうのかな?」 「!?…………」 「ねえ、ショーン、大好きだよ……。抱きしめてほしい……ずっと傍にいてほしいんだ……ぜったいに、はなれないで……」 指で男の胸板をやさしくさすりながら呟くレオノルを見下ろして、ショーンは、意を決したように彼女の体に腕を伸ばす――。 媚薬を口にした碧希・生田が迫ってきても、朱輝・神南は逃げることなく真直ぐ相手と対峙する。 「朱輝ーッ!」 碧希は、そのまま遠慮なくガバッと朱輝のカラダに抱きつき、 「……へへ、朱輝あったかいし、柔らかいしいい匂いがする……幸せだなあ、ずっとこうしていたいなあ……」 にへーっと笑いながら、無垢な子どものような口調で喋る。 パートナーの腕の力強さに思わず頬を染めつつ、朱輝は明後日の方を見つめる。 「あらー何これ、割と最近の通常営業じゃないの……」 碧希は、朱輝の耳元に口を寄せ、柔らかく、少し湿った声を出す。 「……何だか、ドキドキする……ちょっと苦しい、けど、ふわふわして、いい気分……。ねえ、朱輝、大好き……だから、ずっと……」 朱輝は、少し困ったように碧希のブルーの瞳を見つめる。 「なんか、最近こういう心臓に悪いの増えてて、むしろ慣れてきちゃってるのよね……」 (とはいえ、このままじゃ動けないし……何より、碧希君に死なれるのは嫌……死なれるのだけは、絶対に……) 朱輝は、ふうっと息を吐くと、おもむろにパートナーの背中に腕を回す――。 マリスメアの力に、身も心もアッサリと支配されたらしき明智・珠樹をみて、白兎・千亞は思わずじりじりと後退りをはじめる。 「千亞さん大好きです今日も愛らしいですわたしのものになってください、さあっ!」 「ちょ、ちょっと待て、珠樹、おまえ効き過ぎだろ。落ち着け」 もちろん珠樹は普段からド変態だが、今日はいつもと何かが違う。恍惚とした表情で何やら意味不明なことをブツブツ呟いてるし、こちらの言葉も耳に入っていない。 確実に、アッチの世界へおイキになられてしまっている……。 「ッ!? お、おい、珠樹、落ち着け!」 いつの間にか上半身の服を脱ぎだしている珠樹をみて、千亞はいよいよ焦る。 「千亞さん愛してます……さあ名実ともに、私だけのものに……!」 狂気的な笑みをみせて腕を伸ばしてくる珠樹に身の危険を感じた千亞は、 「おい、やめろっ!!」 とっさに、渾身の蹴りを繰り出す。 が、いつもならヒットする一撃も、今日の珠樹は片手でぽすっと軽く受け止めてみせた。 「千亞さん……!」 そうして、ついに、千亞は壁ドンで部屋の隅に追い詰められる――。 媚薬などくだらない、とはじめから馬鹿にしていたヨナ・ミューエであったが、マリスメアの花弁を口にしてすぐ、自分の浅はかさを思い知らされた。 「ああ、嘘……どうしよう……。ベルトルドさん、あの……私、ちょっと……自分でもどうかしてると思うんですけど、薬が……」 しどろもどろに話すうちにも、動悸はどんどん激しくなってゆく。 やがて、ベルトルドの鍛え上げられた腕や胸の筋肉がどうしようもなく魅力的に見えてきて、それに触れたい、抱きしめたい、という衝動を抑えきれなくなる。 「ベルトルドさん……おねがい………抱きしめて……ねえ………」 胸をおさえ、切なげな呟きを洩らしつつ、フラフラとパートナーに近づいていくヨナ。 そんな彼女を若干冷めた眼で見つめていたベルトルドは、小さくため息をついたあと、おもむろにパートナーの腕をつかみ、その動きを抑える。 「しっかりしろ」 厳しい声をかけられたヨナは、それでもなおもベルトルドのカラダに抱きつこうと身をよじらせるが――、 「……いきが、くるしい」 動悸のさらなる高まりで、ついに呼吸が困難になり、その場にうずくまってしまう。 「おい、ヨナ……………」 この時――、はじめて「ヨナの死」をリアルにイメージしたベルトルドは、さすがに悠長にかまえることができなくなり、とっさにパートナーの額に手を伸ばした――。 ●そして、近づく シュリは、媚薬の力に抗い、苦しむロウハの背中に腕を回した。 「ロウハ、あなたはいつもそうだった……わたしのことを気遣って、ひとりで無理をして……でも、今のわたしは、お嬢じゃなくてあなたのパートナーなの。だから、今度は、わたしがあなたを助ける!」 強い覚悟でいって、シュリは涙を流しつつ、ロウハの身体を強く、強く抱き締めた。 苦しみよ、消えて――そう祈りながら。 「もう、苦しまないで……」 シュリは、優しく呟いた。 ロウハを救えるなら、自分は何をされても構わない――。 シュリは、彼のすべてを受け入れる覚悟を決めていた。が――、 「お……嬢……」 気がつくと、シュリの腕の中で、ロウハは正気を取り戻していた。 シュリが必死に伝えた想いが、力強い風となってロウハの心にかかっていた邪な霧を吹き払い、さらに、これまで彼が抱えていた美しくも悲壮な覚悟から彼自身を解放したのだ。 「そうか……パートナー、か……」 ロウハは微笑んで、シュリの瞳を覗きこむ。 「そう。わたしたちは、対等なパートナーよ」 「いつのまにか、頼もしくなったな……お嬢」 ロウハは、シュリの頬をつたう涙をやさしく指で拭いながらいった。 ふいに、シュリは、自分がロウハを抱き締めたままでいることに気づいて恥かしさを覚えたが、他の仲間たちに気づかれていないことを知ると安心し、あとちょっとだけ、このままでいることにした。 「あ、アリシア……!」 自分の胸に身体を預けて甘い吐息を洩らしているパートナーをみて、クリストフは、思わずゴクリ、と唾を呑みこむ。 (アリシア……いつもより、色っぽいな……こんな表情もできるのか……) 一瞬、このまま彼女の衝動に身を委ねてみたいという欲望にかられるが、すぐに思い直して、どうにかパートナーを正気に戻そうとあれこれ手を尽くす。 「おい、しっかり!」 アリシアの頬をぺちぺちと叩いてみたり、肩を掴んでゆすってみたり、頭をなでたり髪を引っ張ってみたりしてみるものの、いずれも効果なし。 「ねえ、クリス……ぎゅっと、して……」 「くそ……」 このままでは、アリシアが……死ぬ――。 次第に苦しそうに顔を歪めていくパートナーをみて、クリストフは、ついに覚悟を決める。 最後の手段だ……ごめんっ! クリストフは、アリシアの身体を強く抱き締めると、迷わず彼女の唇にキスをした。 「…………え。………えっ!?」 口を塞がれ息が苦しくなったアリシアは、やがて自分がされていることに気がつき、直後、ぱっと正気を取り戻す。 「きゃあっ!」 涙目でクリストフを突き飛ばし、恥かしさのあまり両手で顔を覆う。 「ご、ごめん、アリシア」 クリストフが事情を説明するとアリシアは納得して礼を言うものの、 (わ、わたしの、ファーストキス……) 複雑な表情を浮かべて俯く。それをみたクリストフは、 「大丈夫、責任はちゃんととるよ」 からかいではない、優しい笑顔を向ける。 「…………」 アリシアは、治まらぬ胸の高鳴りを媚薬のせいにして、ぷいとパートナーの顔から視線を逸らした。 シリウスは、抱きついてきたリチェルカーレの鼓動がどんどん激しさを増していることに気がつき、背筋が凍るほどの恐怖を覚える。 (俺は、「また」失うのか……何もできずに、かけがえのないものを、また……) 冷静さを失ったシリウスは、素早く腕を伸ばしてリチェルカーレの肩を掴むと、そのまま彼女の体を部屋の壁に押しつけた。 「俺は、お前を見てる。だから、お前も俺を見ろ」 「シ、リウス……?」 リチェルカーレは、焦点の定まらぬ瞳でぼんやりとパートナーを見つめる。シリウスは、彼女の肩を掴む手にさらに力を込める。 「いつも言っているだろう、危ないことをするな、と……。俺には、誰かを……お前を救う力なんて、ないんだ……ないんだよ……。だから、頼む……たのむから、いつものお前に戻ってくれ……」 いつものシリウスならけして出さない、とても哀しげで頼りない声と、その翡翠の双眸の奥に垣間見えた耐え難い苦しみの記憶が、リチェルカーレの心を激しく揺さぶり――、 「……シリウス!」 彼女はやっと正気を取り戻した。 「リチェ……よかった……」 心底ほっとしたように大きく息を吐くシリウスに向かって、リチェルカーレは首を横に振ってみせる。 「力が無い、なんて言わないで、シリウス。あなたは、いつもわたしを助けてくれるわ……」 「リチェ……」 「心配かけて、ごめんなさい……」 リチェルカーレは、俯きがちにそういうと、もう一度、シリウスの身体をぎゅっと抱きしめる。 「お前を失わずにすんで、よかった……」 シリウスは優しくいったが、その声はかすかに震えていた。 リチェルカーレは、幸福感に包まれつつも、パートナーが一瞬みせた怯えた少年のような表情を、けして忘れることはできなかった。 瞬は、唯月に媚薬を「飲んでみて」などといったことを、激しく後悔していた。 (いづが、俺のことをもっと好きになってくれたら、なんて軽い気持ちで言ってしまった……俺があんな馬鹿なこといったせいで、いづが……いづが……!) たまらなくなった瞬は、もどかしそうに腕を伸ばし、苦しむ唯月の細い身体を力いっぱい抱き締める。 「まどか……さん……?」 ぼんやりという唯月に、瞬は迷わず本心を打ち明ける。 「いづ……やっぱり、俺はいづが好き。キラキラの目も、少しずつ見せてくれるようになった笑顔も、全部好きだよ。だから……ねぇ、お願い……死んじゃヤダよ……一緒にたたかおう……」 瞬の言葉を聞いているうちに、唯月の瞳からぽろぽろと涙がこぼれだす。 その涙は、不思議な力で媚薬の効果を洗い流し、唯月に正気を取り戻させた。 「いまの言葉……ねえ、ほんと? 本当に……?」 唯月は、流れる涙もそのままに、瞬の瞳を覗き込む。 (あなたの言葉、また信じても、いいですか……?) 「もちろん」 瞬は笑って頷く。 「前に、いづは、ずっと俺のそばにいるから、ゆっくりでいいから、わたしのことをちゃんと見て、ちゃんと好きになってほしい、っていったよね?」 「はい……」 「俺、たぶん自分の気持ちをちゃんと言葉で伝えられてないんだね――」 瞬は、そういうともう一度、唯月の身体を強く抱き締め、彼女の髪をやさしく撫でた。 「だから、こうしたら、少しでも俺の気持ちが伝わるかな? うまく言葉にできない、俺の気持ちが」 唯月は、瞬の腕のなかで、こくり、と頷いた。 「ゆっくりでいいんだよね、俺といづは」 瞬が微笑んでいうと、唯月はもう一度頷いたあと、男の背中に腕を回し、彼をぎゅっと抱き締めた。 ショーンは、その力強い腕で、レオノルの細い体を多少ぎこちなく抱き締めた。そしてすぐに焦りを覚える。 (まずい……この心音は尋常ではない……このままでは本当に死ぬぞ……) ショーンは、レオノルを抱く腕にさらに力を込めると、彼女の瞳を真直ぐ見つめて、ゆっくりと語りかける。 「ドクター、貴女を傍で守れることは私の誇りです。常に正しさを求める貴女の姿勢が、私には羨ましい……。ドクターは、私のたった一人の先生だ。だから、そう、私には、貴女から学びたいことがもっとたくさんある。貴女がいなくなってしまっては、私は……」 いつもクールで滅多なことでは余裕を失わないショーンの瞳のなかに、思わぬ弱さと孤独をみたレオノルは、 「……ショーン?」 男の腕の中で、すうっと憑き物が落ちたかのように我に返った。 「私が、たった一人の先生か……。そっか、教え子を放ったまま一人でいくわけにはいかないよね……」 レオノルの無事を確認したショーンは、 「よかった……本当に」 緊張を解いて、そのままその場に崩れ落ちる。 「どうやら大変な思いをさせたみたいだね……。さっきの言葉、私の胸に響いたよ。ショーンのそういう真直ぐなところ、私は、大好きだよ」 屈託なく笑うレオノルから、ショーンはあわてて目を逸らす。 (大好き、か……まったく、さらっと言ってくれるな……大好き、なんて……) レオノルの「大好き」に深い意味など無いことがわかっている、わかってはいるが――、ショーンは理性に反して高まる鼓動に、気まずさを覚えずにはいられなかった。 朱輝は、碧希の背に手を回すと、幼子をあやす母親のような手つきで、彼の背中をぽふぽふと叩く。 「ねえ、碧希君……私も、あなたのこと大好きよ。だけどね、私はあなたと手を繋いで歩く方が好きだわ。いつもみたいにね」 朱輝は、パートナーの瞳を覗き込み、微笑む。 「私は、あなたの隣を歩いていきたいの。あなたのいる景色をたくさん見たいの。あなたが生きている幸せを、これからも感じたいのよ」 碧希の頬を両手でやさしく包み込み、さらに言葉を続ける。 「ねえ……だから、いつもみたいに手を繋ぎましょう? いつものあなたが、私は好きなのよ」 朱輝のやわらかい声を聞くうちに、少しずつ正気を取り戻した碧希は、ふいに、ぱあっと明るく笑うと、 「うわあ、何だろ、朱輝。俺、今すっごく嬉しい」 朱輝の手をとり、彼女の瞳を見つめ返す。 「でもね、朱輝、俺、嘘はいってないんだよ。朱輝のいう幸せは、俺にとってもそうだけど、手を繋ぐよりもっと近くで朱輝を感じたい時もあるんだよ。んー、とにかく上手く言えないけど、大好き、って気持ちは本当!」 そういうと、碧希はちょっといたずらっぽく笑い、 「へへ、だからもうちょっとだけ……」 朱輝の背中から腰へそろそろと手を伸ばしていく。 「っ!? ちょ、ちょっと、碧希君、ここ人前!」 朱輝はとっさに抗議したが、その表情をみれば、仲間達が本気で彼女を助けようとしないのも無理からぬことだった。 「千亞さん……!」 「……ん、やめ……ろ……!」 壁際に追い詰められた千亞は、珠樹に首筋や兎耳を容赦なく触られて、思わず切なげな声をあげてしまう。 「とても可愛いです、千亞さん、愛してます……!」 すっかり無防備にさせられた千亞の口に、ついに珠樹の唇が迫ってきた時――、 「珠樹、やめて! 珠樹との初めてが、こんな状況なんて、嫌なの!」 千亞は、普段絶対に使わない女性口調になって、涙目で懇願する。 その、彼女のとても愛らしく、いじらしい姿を目にした瞬間――、珠樹はあっさりと正気を取り戻し、感動の呟きを洩らした。 「……つまり、こんな状況じゃなければ、OK、ということ……。ふ、ふふ……!」 上半身裸のまま、上機嫌で怪しい含み笑いをもらすパートナーをみて、千亞は自分の失態を自覚し、頬を真赤に染める。 「ぼ、僕は何も言ってない! 言ってないぞ!」 「千亞さん……、どんな状況が好みですか? 人気のない夜の浜辺ですか? それとも、安宿のギシギシいう壊れかけのベッドの上ですか……ふ、ふふ、ふふふふ」 「う、うわー、やめろやめろやめろー!」 両手で顔を覆いつつ千亞が繰り出した豪快な蹴りは、今度こそ珠樹の淫らな笑顔を直撃し、彼の身体を思いきり部屋の壁に叩きつけたのだった。 「ヨナ」 ベルトルドの何かを決意したような低い声に、ヨナが顔をあげた瞬間、 バチンッ! 額ではじける強い衝撃と、それに続く、灼けるような痛み。 「で、デコピン……」 激痛で無理やり正気に戻されたヨナは、すぐに先ほどまでの自身の無様な姿を思い出し、恥かしさのあまり、思わず両手で顔を覆う。 そしてさらに、他の仲間たちがそれぞれパートナーからの愛ある行為や言葉で正気を取り戻したのに対し、自分ひとりがデコピン、という色気一切なしのショック療法を与えられたという事実に、なにやら言い知れぬ敗北感を覚える。 「ベルトルドさん……」 もちろん、彼に悪気などないことはよくわかっている。だからこそ、だからこそ余計に口惜しい。 この口惜しさは、一体、何……? ついに、いたたまれなくなったヨナは、ソファに腰かけたアリスを涙目でキッと睨むと、くるりと彼女に背を向けて、一目散に部屋を飛び出していく。 ヨナの後ろ姿を見送ったベルトルドは、ふうっとため息をつくと、アリスの方に向き直り、 「今回は、そちらの頼みを気安く受けた俺達にも非があるから強くは言えない。だが、今後は、金を積めば何でも思い通りになるという考えは捨ててくれ。俺たちは、お前たちの道楽の実験台じゃあないんだ」 静かな怒りを込めた口調でそういうと、ヨナを追って急いで部屋を出て行った。 叱られて、しょんぼり落ち込むアリスは、 「皆さん、ごめんなさい……わたくし、ちょっと反省しています……」 殊勝らしく頭を下げてみせる。 浄化師たちはあきれつつも、まあみんな無事だったわけだし、よしとするか、と互いに顔を見合わせる。 「ところで……その媚薬、どうやって使うつもりだったんだ?」 ロウハが興味本位に聞くと、アリスは、ニッコリ笑って、 「はい! じつは、わたくし、前から子犬が欲しかったんですけど、うちのジョン君とベスちゃんは適齢なのになかなかつがわなくて、ちっとも妊娠してくれなくて……」 「え……い、イヌ?」 「はい! それで、ジョン君に媚薬を使って、はやくベスちゃんと子作りしてもらおうと……」 オイオイオイ。 もしかして、自分たちはペットのカップリングのために命の危険にさらされたのか……。 それまで、穏やかだった浄化師たちの顔が、あきらかに引き攣る。 「……ショーン、どうやらあの子には、私の『教育』が必要なようだよ」 レオノルが絶対零度の微笑みをみせると、媚薬の実験台にされた浄化師たちが次々に頷く。 「ど、ドクター、落ちついてください!」 「アリシア! その魔導書で何するつもり!?」 その後、バーランド邸で巻き起こった騒動についての報告は、諸事情によりここでは割愛させていただく。
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*** 活躍者 *** |
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[5] クリストフ・フォンシラー 2018/08/06-23:15
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[4] 碧希・生田 2018/08/06-22:42
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[3] リチェルカーレ・リモージュ 2018/08/05-20:55
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[2] 明智・珠樹 2018/08/04-15:58
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