~ プロローグ ~ |
教皇国家アークソサエティ、アールプリス山脈の東端に黒々とそびえる孤城――ベルハルト城。 |
~ 解説 ~ |
●目的 |
~ ゲームマスターより ~ |
今回マスターを務めさせていただく、黒浪 航と申します。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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響 ロナークに対して信号弾を撃つことでロナークたちへの目くらましを行う。 ロナークへの牽制射撃を続け魔法を使う暇を与えないようにする。 愛華 響がロナークに対して信号弾を撃ったと同時に駆け出し、ロナークを斬りつける。 共通 ロナークを撃破したらルシアへ挑む。 |
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*担当:ロナークの捕縛 あれがエリクサーだとしたら厄介なのは間違いないでしょう とはいえ所詮は素人。隙はいくらでもあります *戦闘時 他の方々がロナークを刺激する行動に出るので、動揺したら挑発 感情的にさせて判断力を鈍らせたり、攻撃の囮になり他の方々が動きやすいように立ち回ります 敵の行動はユウさんの魔法での妨害や回避で対応 念のため装備で魔法防御も高めます ロナークが隙を見せたら接近。【ツイン・アリババ】の斬撃して制圧 *ルシア ユウさんの魔法で視界を封じた後、落ちてる松明を拾い接近 双剣の一つを囮として投擲後に松明を投げて木の葉に着火を試みる 成否問わずそのまま可能な限り近づき、迎撃してきたら【制裁】を加える |
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目的】 ゴーレムの討伐 ロナーク、ルシアの捕縛 行動】 ゴーレム討伐・足止めに動く事によりロナーク捕縛班が動きやすくなるように 戦闘前に手を合わせて魔術真名詠唱 クリス 援護射撃を貰ったらゴーレムの一体に突っ込む 疾風裂空閃を使い、足首・膝の関節を狙って攻撃 仲間と声を掛け合って同士討ちさせれうように誘導 魔力攻撃が当たった場合はそこを率先して狙う ロナーク班の方へゴーレムを行かせないように アリシア 最初は小咒を使い攻撃 狙いは近接攻撃が届く位置、敵の下半身 仲間に怪我人が出たら回復に専念 傷が酷い人から天恩天賜を掛けて回る 魔力少なくなったら攻撃は通常攻撃で リチェちゃんとタイミングを合わせロナークの集中を邪魔するように笛を |
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ロナークさん対応として動く ゴーレム班が戦っている隙に 彼の方へ ロナークさんですね?失踪事件について聞きたいことがあります 武器を置いてください 一応声かけ 無理なら気を取り直し魔術真名詠唱 中衛位置から回復役をメインで動く 体力が6割を切った人を優先で回復 その他は魔法攻撃 退魔律令も使い バランスを崩すよう 多少なりと怯むよう 顔の辺りを狙う ロナークさん捕縛を最優先 ルシアさんには手を出さない 動揺を誘うため シアちゃんと合わせホイッスル お城の外にいる仲間に知らせました 増援がきます ルシアさん 貴女ももうやめて 修道服を着ているということは 神様に使えるー人を助けるお仕事じゃないの? どうしてこんなことを 戦闘後は仲間の手当て |
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現地到着後戦闘開始前に魔術真名詠唱。 前にキメラを作ったシスターですね。再び会うことになるとは…。 前回の経験からしてシスターとの戦闘は楽観視できないのですが…まずはゴーレムの停止と捕縛対象の確保ですね。 私達のペアはゴーレムに対応します。 ゴーレムの動きは鈍いですが用心のために近距離戦で戦う方だけでもMG7をかけさせていただきますね。できればシスター戦用の魔力もとっておきたいです。 ゴーレムの同士討ちを狙いつつゴーレムの破壊もしくは昨日停止を目指します。 捕縛対象捕縛後。 シスターの捕縛を目指します。できる限りの方にMG7を。 後は通常攻撃の支援ですね。 今度こそ捕まえたい。この人を逃がしたらきっとまた…。 |
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相手が終焉の夜明け団でも、いつも通りに指令をこなすだけだ 戦闘開始時に魔術真名詠唱 ゴーレムへの対処を担当 基本は接近してスキルで攻撃 なるべくゴーレムを盾にして、ロナークの魔術の射線の通らない死角に入りながら戦う ゴーレム同士をうまく誘導してぶつからせたいな 同じゴーレム担当班と声を掛け合って、ぶつかりそうな距離まで近づけて せーののタイミングで巻き込まれないよう全力離脱 ぶつかった奴優先して攻撃 ダメージを受けたら、仲間の陰陽師の所へいったん下がる ルシアには自分達からは何かすることはない 他の仲間が接触を試みるようなら、ロナーク捕縛後なら支援する ルシアの周囲に注意して逃がさないよう位置取り、警戒態勢をとる |
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対ゴーレム 物理防御高くともゴーレム同士討ちに持ち込めれば打撃なのでは 遅いなら避けるのは難しい筈 ヨ 土属性と仮定してアクアエッジ使用 攻撃も噛ませつつベルトルドへ誘導の指示。仲間にも声をかけ協力乞う ベ 繰り出された腕の上をつたいゴーレムの頭付近へ飛び乗り攻撃 乗ったゴーレムに自分を攻撃させるよう仕向けゴーレムの自傷行動を誘い そこから別のゴーレムに飛び移り同士討ちも狙う ベ:馬鹿正直にゴーレムと戦うのは試されているようで不本意だが放っておく訳にもいかないな ヨ:ええ。魔術師を無力化できればゴーレムも機能停止の可能性もあります。 が…、確実でない賭けには出られませんし ベ:(鼻で笑い)どの口で言う |
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■目的 ロナークの捕縛 シスターに接触 ■行動 【ゴーレム対応】を担当 ゴーレムを撃破することでロナークに向かう仲間の支援を目指す 同じゴーレム対応の仲間と協力、分担して当たる ゴーレムを誘導し同士討ち狙いを意識する ○セアラ ゴーレムの体そのものを遮蔽に使い 後衛から敵味方位置を把握 ゴーレム誘導に有効な動きになるようキリアンへ声掛け 味方と協力し攻撃集中 ゴーレムを自由に行動させないよう心がけ 前衛危険時は攻撃を割り込ませフォロー ○キリアン 前衛で戦闘 味方前衛と協力し戦線形成 ゴーレムが後衛や対ロナーク担当へ行かないよう抑える ゴーレムの足元を狙い行動制限 2体の間へ入り込んでギリギリで離脱するなど同士討ちを誘発する動き意識 |
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~ リザルトノベル ~ |
●それぞれの誤算 ベルトルド・レーヴェは、向かってくるゴーレムの動きを冷静に観察しながら、眼を細める。 「馬鹿正直にゴーレムと戦うのは試されているようで不本意だが、放っておくわけにもいかないな」 「ええ。魔術師を無力化できればゴーレムの機能を停止させられる可能性はありますが、確実でない賭けにはでられませんし……」 隣でパートナーのヨナ・ミューエが淡々というのを聞いて、 「どの口が言う」 ベルトルドは鼻で笑い、かぶりを振る。ヨナはいつも通り、そんな彼を無視して、 「いきます」 魔力を高めて『アクア・エッジ』を使用、勢いよく放たれた水の刃が、ゴーレム一体の前腕と、戦いの火蓋を切って落とした。 「よし、いける!」 アリシア・ムーンライトとともに魔術真名を唱えて、潜在能力を解放したクリストフ・フォンシラーは、ヨナの攻撃を受けたゴーレムめがけて疾走する。 相手の懐に潜り込むと同時に『疾風裂空閃』を発動、ゴーレムの足首や膝に強烈な斬撃を浴びせる。 岩の肌をやすやすと斬り裂かれ、バランスを崩してよろけるゴーレムに対し、 「畳み掛けます」 アリシアが『小咒』を発動。高密度の炎で形成された蛇を放ち、ゴーレムの下半身を激しく灼き尽くす。 「『嘘とお菓子は甘いもの』」 パートナーとともに魔術真名を唱えて、能力を高めたシャルローザ・マリアージュは、 「私達は、みんなの援護を!」 そう叫んで、『ルーナ―・プロテクション』を発動。月の女神の祝福によってゴーレムの攻撃力を低下させる。 「やたらと硬そうなゴーレムには、同士討ちをさせるのが一番、か」 狙撃銃を構えるロメオ・オクタードは、『ワーニングショット』を使用、絶妙な威嚇射撃で、一体のゴーレムを混乱させつつ、別のゴーレムの方へ誘導することに成功する。 「同士討ちを狙うなら、やはり足元で掻き回すのが一番だな」 魔術真名を唱えて能力を解放したベルロック・シックザールが駆け出すと、 「ベル君、ちょっと待って」 パートナーのリントヴルム・ガラクシアが、すかさず『ペンタクル・シールド』を発動、ベルロックの周囲に物理攻撃を軽減するシールドを発生させる。 「よし!」 ベルロックは、ロメオの射撃で混乱しているゴーレムの前に飛び出すと、 「こっちだ!」 挑発して相手の攻撃を誘い、ゴーレムが大振りのフックを繰り出そうとした時点で、素早く横に身を躱す。 勢い余ったゴーレムは、そのままぐるんと拳を振り回し――、先ほど浄化師たちの攻撃を受けて地面に膝をついていたゴーレムの顔面に、超重量の一撃をまともに喰らわせる。 ガゴオォォオオンッ! 一発で頭部を破壊されたゴーレムは、即座に機能を停止し、ただの岩の塊となってその場に崩れ落ちた。 これで、まずは一体。 「よし、次だ」 ベルトルドは、仲間の頭部を粉砕したまま硬直しているゴーレムの腕に飛び乗ると、そのまま相手の顔面付近に駈けあがり、 「ほら、こっちだ」 ゴーレムの眼や鼻を狙って高速の拳を放ち、これでもかと相手を挑発する。 「グガァァァアアア……」 怒ったゴーレムは、自身にまとわりつくベルトルドを狙って攻撃を繰り出すが、体術に優れた浄化師にそのすべてを見切られて、重い拳はことごとく自身の顔面に命中してしまう。 「足元がお留守だよ」 クリストフが、ふたたびスキルを発動して両脚を斬り裂くと、鈍重なゴーレムは、ズウン……と地面を揺らしながら仰向けに倒れた。 「わたしたちも、負けてられないよねっ!」 セアラ・オルコットは明るくいうと、三体目のゴーレムに連続してボウガンを放つ。『リンクマーカー』の効果で命中率があがった攻撃が足の関節、頭部に命中し、ゴーレムがよろめくと、 「こいよ、デカブツ! 相手にしてやらぁ!」 キリアン・ザジが、剣を構えて跳躍する。 「くらえっ!」 『裁き』の効果で膂力をあがっているキリアンは、豪快な一振りでゴーレムの片脚を斬り裂く。 ゴーレムは、バランスを崩しつつも拳を振り上げるが、直後、ロメオの射撃が両眼付近に直撃し、一瞬視覚を奪われる。 「鬼さんこちらだっ!」 暗闇の中、聞こえてきたキリアンの声めがけて、ゴーレムが振り下ろした拳は――、見事、地面に倒れていたゴーレムの顔面に命中した。 ド、ガァンッ! 一体目同様、哀れにも味方に頭部を粉砕されたゴーレムは、やはり瞬時に機能を停止する。 これで、二体――。 「僕の自慢のゴーレムたちを、いとも簡単に……」 ロナークは、ゴーレムをあっさり片づけていく浄化師たちの強さに戦慄し、口元を歪める。 彼の隣で、ルシアは微笑みを絶やさぬまま、 「彼らは強いわ……たぶん、あなたが思ってるより、ずっとね」 のんびりと、どこか他人事のようにいった。 「くっ………」 ロナークは、仲間にゴーレムの相手をまかせてこちらに向かってきた浄化師たちを睨みつける。 「僕にはこのエリクサーがあるんだ……あんなヤツらに、負けるわけがない……!」 リチェルカーレ・リモージュは、仲間とともにロナークを包囲すると、彼が手にしたエリクサーに視線を向けつつ、口を開いた。 「最近このあたりで多発している失踪事件について、あなたにお尋ねしたいことがあります……どうか武器を置いてください」 ロナークは、皮肉な笑みを浮かべると、 「回りくどいやりとりは止めよう。失踪事件の犯人は、ずばり、この僕だよ。エリクサーを完成させるために、この地方でのさばるクズ共を有効活用してやったのさ。僕のおかげで、ここらの治安もよくなったはずだ。君たちには感謝してほしいくらいだよ」 相手の主張を聞いて、たしかに一理ありますね……、とでも言いたげに頷いて見せるセプティム・リライズと、そんな彼を困った目で見つめるユウ・ブレイハート。 「ふざけるな……お前のやっていることは、私利私欲だけを考えた、ただの身勝手な殺人だ」 愛華・神宮慈が厳しい口調でいうと、ロナークは彼女を馬鹿にしたようにひょいと肩をすくめた。 「まあ、はじめから君たちに僕の崇高な思想が理解できるとは思ってないよ……。だから、これ以上の問答も無用。さあ、愚かな君たちがお得意の、単純明快な方法で決着をつけようじゃないか――」 直後、ロナークが手にした真紅の魔石の輝きが増し、同時に、彼の体内で膨大な魔力が生み出される。 「エリクサーの力……存分に見せてもらうわ……」 ルシアは、ロナークの傍を離れると、彼が手にしたエリクサーを興味深そうに見つめた。 どうやら、彼女にはロナークとともに戦う気は一切無いらしい。 魔術師の凶悪な魔力に危険を感じたシリウス・セイアッドは、 「リチェ!」 すばやくパートナーを呼び、ふたりで魔術真名を詠唱、潜在能力を最大限に解放する。 「やるぞ、響」 「はい、お嬢」 愛華の言葉にこたえて、響・神原がロナークめがけて信号拳銃を撃つと、それが戦闘開始の合図となった。 「くそっ、くだらない小細工を!」 ロナークは、響と、そして彼に続いてシリウスが撃った信号弾を、みずからの手掌から生み出した真紅の魔力障壁で防いだものの、弾が炸裂すると同時に広がった色鮮やかな硝煙で、一瞬視界を閉ざされる。 「今だ!」 機を逃さず、愛華と、セプティム、そしてシリウスが、剣を手に一気に距離を詰める。 三人は同時に間合いに入り、卓越した剣技で敵の手にあるエリクサーを叩き斬るつもりだった。が――、 「舐めるなぁぁああっ!」 敵を見失ったロナークは、魔力をさらに増大させて、瞬時に全方位へと無数の魔力弾を撃ち出す。 「ッ!?」 完全に意表をつかれた三人の剣士は、それでもとっさに魔力弾を剣で防ぐが、攻撃の威力は想像以上で、そのまま後方へと弾き飛ばされる。 「うっ…………」 誰よりも敵に肉薄していた愛華は、受けたダメージも最も大きく、地面に叩きつけられたまま、すぐには起き上がることができない。 「そのままじっとして!」 リチェルカーレがすぐに駈け寄って、『天恩天賜』で愛華の治療をはじめると、シリウスはふたりの前に立ち、盾となってロナークの攻撃から彼らを護る。 「これが、エリクサーの力……」 倒れた愛華を気にしつつ、響は、ロナークの魔石を狙って鋭く矢を放つが、そのことごとくが魔力障壁で防がれる。 「正直、想定外でしたね……」 セプティムが、痛めた脇腹を片手で押さえながら苦しげにつぶやくと、 「なんとかして突破口を見つけないと!」 ユウは、手にした杖から連続して魔力弾を放ちつつ、必死にこの状況を打開する手を考える。 ●思いがけぬ結末 ゴーレムと浄化師たちの戦いは、すでに終焉を迎えつつあった。 ゴーレムたちを同士討ちさせる、という作戦は思った以上に有効で、浄化師たちは魔力も体力も温存したまま、残った二体のゴーレムを確実に追い詰めてゆく。 「そろそろ決着をつけましょう」 ヨナが、ゴーレムの頭部を狙って『アクア・エッジ』を放つと、 「今度こそ、あのひとを止めなくては……」 アリシアも、もう一体のゴーレムに狙いを定めて、『小咒』を撃つ。 「ガアアァァアアッ!」 強力な魔力攻撃を頭部に受けて、二体のゴーレムは仰け反り、たたらを踏んで、互いに激しく衝突する。 「もう一押し、だな」 ロメオが放った銃弾が一体のゴーレムの額に直撃し、バランスを崩した相手が地面に倒れると、 「楽勝だな」 「我ながら、なかなかイイ働きしてるで、しょっ!」 ベルロックとキリアンが同時に跳躍し、まだ立っているゴーレムの両脚を派手に斬り裂く。 二体のゴーレムが折重なるように倒れ、もがいているところに、ベルトルドとクリストフが駆け寄り、 「終わりだ」 「これで決めるよ」 同時に『疾風裂空閃』を発動、ダメージが蓄積し弱った二体のゴーレムの頭部を見事に粉砕した。 これで、すべてのゴーレムが片付いた――皆がほっとしたのも束の間、 「これからが本番、ですよ」 シャルローザは、険しい表情でロナークとルシアを見つめつつ呟く。 浄化師たちは短いやりとりで、ロナークとルシア、それぞれの担当に分かれると、一斉にその場から駈け出した。 「これならいけるかもしれません!」 ロナークの攻撃をギリギリで躱しつつ、ユウは『リーフスラッシュ』を発動、魔力で形成した無数の木の葉を相手にぶつけ、攻撃する。 「おのれ……っ!」 ロナークは魔力障壁で攻撃を打ち払うが、あたりに乱れ飛ぶ木の葉でふたたび視界を閉ざされる。 「ユウさん、お見事」 セプティムは口元に笑みを浮かべると、木の葉の渦の中心目指して疾走する。 (装備で魔力防御を高めているから、多少の無理はできるはず……) 手にした双剣の一本を投擲、足元に突き刺さった剣にロナークが気をとられた、その一瞬の隙をついて、正面から突っ込む。 「く、くるなぁぁああ!」 ロナークは魔力弾をばらまくが、セプティムは、被弾も覚悟で強引にスキル『制裁』を発動、鋭いカウンターを相手に直撃させる! 炸裂した魔力弾の眩い閃光が消えた後には――、少なからぬダメージを負い地面に膝をつくセプティムと、そんな彼に憎悪の眼差しを向けつつ肩から大量の血を流すロナーク。 「教団のイヌごときが……よくも、よくもっ!」 烈しい怒りにかられたロナークは、巨大な魔力弾を撃ち出すが、それがセプティムの身体に直撃するよりわずかに早く、 「無理をさせたな」 駈けつけたシリウスが手負いのセプティムの身体を抱いて、真横に跳躍する。 「くそっ!」 攻撃を避けられたロナークは、さらに怒りと魔力を増大させ、 「くそくそくそくそぉぉおおおおっ!」 狙いもつけずに、周囲に無数の魔力弾を乱れ撃つ。 技も戦術もない、エリクサー頼みの単純極まる力押しだが、攻撃の密度と速度が圧倒的で、浄化師たちは回避に専念するより他にない。 (相手の魔力が無尽蔵であるとすれば、長引けばこちらが不利だ……) 傷ついた仲間たちを気遣うシリウスは、とっさに手にした剣の切先をロナーク、ではなく、その背後にいるルシアへと向けた――。 ルシアは、焦りや恐怖をみせず、ゴーレムを倒し自分のもとへやってきた浄化師たちを静かに見つめる。 クリストフは、相手の一挙手一投足を油断なく観察しながら、 「久しぶり、かな?」 おだやかな声で語りかけた。 「そうですね……あなた方とは、またお会いできるような気がしていました」 ルシアは、美しくも冷たい微笑を浮かべてこたえる。 「その服装から判断して、あなたもかつては聖職者であったのでしょう。一度は神にその身を捧げた者が、なぜこのような悪事に手を染めるのですか?」 ヨナが問うと、女は目を細め、暗い声で答える。 「悪事、ですか……。あなた方はきっと、みずからが正義だと、純粋に信じきっているのですね」 「…………」 ヨナが一瞬言葉に詰まると、かわりにベルトルドが口を開く。 「お前の求めているものは、何だ?」 「残念ながら、それはまだお答えできません」 ルシアは、ゆっくりとかぶりを振る。 「答えたくないというのなら、それでも構わない。いずれにせよ、アンタをここから逃がすつもりはないんでな」 ロメオがそう言いつつ、狙撃銃の引き金に指をかけたのをみて、女は困ったように首を傾げた。 「わたしには、あなた方と戦う理由はないのですけれど……」 「あなたにはなくても、私たちにはあります。あなたには、もう誰も傷つけさせはしません!」 アリシアが真剣な表情で言って、魔導書を構えつつ魔力を高めると、ルシアは、ふっと息を吐き、 「仕方ありませんね……わたしも、ここで捕まるわけにはいきませんから……」 呟いた直後、身に纏う修道服が波打つほどの圧倒的な魔力をその全身から発散させた。 「全力で、お相手いたします――」 ルシアが、掲げた両手の掌を浄化師たちに向けた、その瞬間――、 「隙だらけだ!」 離れた場所でロナークを相手にしていたシリウスが、突然、みずからが手にした剣をルシアめがけて勢いよく投げつけた。 「っ!?」 予想外の攻撃に不意をつかれたルシアの身体に、深々と剣が突き刺さるかと思われた、その時――、 「ルシアッ!」 ロナークが、とっさに女の前にその身を投げ出した――。 その場にいた誰もが――剣を投げたシリウスさえ、驚きのあまり一瞬動きを止める。 「……ぐ、はっ」 腹に突き刺さった剣を見下ろしつつ、口から鮮血を吐くロナークと、そんな彼を呆然と見つめるルシア。 「ロナーク……どうして……?」 「君は、僕が守る……この命に代えても、ね……」 弱々しく笑う青年の顔をみた瞬間、ルシアの瞳の中に、はじめて人間らしい感情――深い哀しみと後悔の色があらわれた。 「どうして……わたしは、あなたを――」 ルシアが震える声でいうと、ロナークはだまって頷く。 「言わなくていい……全部、わかってるんだ……。さあ、ルシア……今のうちに逃げてくれ……こいつらは、僕が引き受ける……」 「…………」 「さあ、はやくいけ!」 ロナークが恐ろしい剣幕で怒鳴ると、ルシアは唇を噛んで彼から顔をそむけた。 「……行かせてもらうわ。わたしには、まだやらなくてはならないことがあるから――」 それだけいうと、ルシアはこの場にいる全員に背を向けて駈け出した。 「ま、待てっ!」 ロメオがあわてて逃げる女の脚に銃口を向けると、 「やらせるかぁっ!」 ロナークが絶叫し、浄化師たち全員に向かって無数の魔力弾を撃ち出す。 「くっ!」 身を躱した浄化師たちの足元で魔力弾が炸裂し、一瞬、あたりは真昼のような眩しい光に包まれた。 「……逃げられた、か」 閃光が消えたあと――、すでに城内にルシアの姿はなく、彼女との因縁をもつ浄化師たちは口惜し気に顔を歪めた。 「お前たちに、ルシアを追わせはしない!」 ロナークは自分の腹からシリウスの剣を引き抜き、放り投げたあと、ふたたび周囲に真紅の魔力弾を生み出す。が、その全身から流れ出す大量の血を見れば、彼の命がそう長くないことはあきらかだ。 魔術師を複雑な表情で見つめるシリウスは、 (あの女を狙えばヤツの動揺を誘えるかと思ったが、まさか、みずからの身を盾にするとはな……) セプティムを治療するリチェルカーレの後姿に視線を移し、口元に笑みを浮かべた。 (俺とヤツは、似た者同士というわけか……) 「彼を死なせたくない、そう思っているんだろう?」 クリストフが、シリウスのそばにやってきて、いたずらっぽく笑う。 「それなら、さっさと決着をつけるしかない。あのエリクサーを破壊して、ね」 「ああ、そうだな」 シリウスは、ロナークが投げた剣を拾い、クリストフとともに駈け出す。 「俺もいくぜ」 ベルロックがふたりを追うと、 「だから、ちょっと待って」 リントヴルムがあわててスキルを発動し、パートナーの身体に魔力防壁を纏わせる。 「死ねえぇっ!」 ロナークが近づいてくる浄化師を狙ってふたたび魔力弾を撃ち出すと、 「やらせませんよ」 響は、すばやく矢を放ち、シリウスたちに向けられた魔力弾を次々に破裂させる。 「くそ、まだだぁっ!」 瀕死の魔術師が、なおも攻撃を続けようと両手を掲げたとき――、 「もう、楽になれ」 「隙あり、っすよ!」 ひそかに相手の死角に回り込んでいた愛華とキリアンが、左右から同時にロナークに斬りかかる。が、 「ぐ、おおおぉぉぉおおおおっ!」 ロナークは、ギリギリのタイミングで魔力障壁を生み出し、ふたりの剣を受け止めると、力任せにそれを弾き返す。 「しぶといな……だが!」 ロナークの眼前に迫ったシリウスとクリストフは、それぞれ『魂洗い』と『疾風裂空閃』を発動、魔術師自身ではなく、彼がもつ魔石めがけて、神速の一撃を繰り出す。 ガ、キイィイイインッ! 強い衝撃とともにみずからの手を離れ、宙に飛んだ魔石を見たロナークは、絶望の表情を浮かべる。 「そら、よっ!」 大きく跳躍したベルロックが、さらに剣でエリクサーに斬りつけると、すでに無数のヒビが入った魔石は激しく地面に叩きつけられた。 「ぼ、僕のエリクサーが……!」 魔術師が、ふらふらになりながらも最後の力を振り絞って魔石に飛びつこうとした時――、 「あきらめろ」 ロメオがすばやく狙撃銃を撃ち、銃弾はエリクサーの中心に命中、すでにダメージが蓄積していた魔石は、それがトドメとなって一瞬のうちに砕け散った。 「ばかな……エリクサーが、砕けるなんて……」 地面に這いつくばったロナークが、魔石のかけらを手で集めつつみじめな声でいうと、 「お前がつくったのは、紛い物だったということだ」 ベルトルドが、青年の前にたち、冷めた口調でいった。 「くそ……」 精も根も尽き果てたロナークは、ついにすべてをあきらめ、みずからがつくりだした血だまりにうずくまった。 禁忌魔術に憑りつかれ、狂気に陥った愚かな魔術師の野望は、ここに潰えたのだ。 やがて、リチェルカーレとアリシアが無言のままやってきて、魔術師の傷の治療をはじめた。 「お前たち、何を……?」 ロナークが驚きの表情でふたりの顔を見上げると、 「あなたをここで死なせるわけにはいきません」 リチェルカーレは、瞳の中に同情の色をみせつつ、諭すようにいった。 「やめろ……僕はすべてを失ったんだ……もう自分の命など、惜しくはない……このまま死なせてくれ……」 「いいえ、だめです」 アリシアが、毅然とした表情で叱責する。 「あなたは生きて、自分の犯した罪を償わなくてはなりません。それに――」 「それに、なんだ?」 「あなたには、まだ人を愛する心が残っている……誰かを心から愛することができる人なら、きっといつか正しき心を取り戻すこともできるはず……わたしは、そう信じています」 「……………」 ロナークは顔を歪め、アリシアの眼差しから逃れるように俯いたが、よく見ると、その眼からは、松明の灯を受けて小さく光るものがこぼれ落ちていた。 ふたりの治療が済むと、愛華は、すっかり大人しくなったロナークを拘束しつつ彼を問い詰めた。 「貴殿に、訊いておきたいことがある」 「なんだい……?」 「あの女のことだ。貴殿がルシアと呼ぶあの女は、一体何を企んでいる?」 ロナークは、自嘲気味に笑いつつかぶりを振った。 「さあね、僕にはわからないよ……。彼女は、自分のことをあまり話したがらなかったし、僕も無理に聞こうとはしなかったからね……。ただ――」 魔術師は、哀しげな声で言葉を続けた。 「ルシアが、禁忌魔術の知識と技を習得しようとしているのは、間違いない。僕が禁忌魔術パラケルススの研究者だと知っていたからこそ、彼女は僕に接近してきたんだ……」 「……自分があの女に利用されていることを知っていたのか」 「それでもいい、と思ったのさ……。彼女だけがこの僕を認めてくれた……僕を必要としてくれた……。こんな僕に優しくしてくれたのは、ルシアだけだったんだ……」 シャルローザがそばにやってきて、 「わたしたちは、あのひとを止めます。絶対に」 決意の表情でいうと、ロナークは彼女に複雑な笑みをみせた。 「禁忌魔術があるところに、ルシアはきっと現れる……僕が君たちに与えられる情報は、これだけだよ」 禁忌魔術を欲する女、か――ルシアの目的が何であれ、このまま彼女を野放しにしておくわけにはいかない。 浄化師たちが暗い気持ちで俯いていると、 「ひとつ、いいかな?」 リントヴルムが、道を訊ねるかのような気楽さで、ロナークに話しかけた。 「終焉の夜明け団に、マリーという名の少女がいるはずなんだけど、知らないかな?」 「マリー……いや、知らないな」 ロナークは、少し考え込むような素振りをしたあと、かぶりを振った。 「教団のアジトはいくつもあるからね……。上層部の人間なら知っているのかもしれないけど、僕はこのとおり、末端の信者のひとりに過ぎないから」 「そうか……ざんねん」 リントヴルムが寂しそうに笑うと、ベルロックがそばにやってきて、だまって相棒の肩にぽんと手を置いた。 ロナークを連行して全員で城を後にしたとき、キリアンは、最後尾にいるセアラが、ひとりしょんぼりと肩を落としていることに気がついた。 「なーに、しょげてんですか」 「わたし……みんなの役に立てなかったから……」 セアラの弱気な言葉に、キリアンは面倒臭そうに頭を掻くと、あさっての方を向いてぶっきらぼうに言う。 「……役に立ってないなんてこたねーっすよ」 パートナーの不器用な優しさに、セアラはそっと微笑む。 「そう、かな……」 「そーっす」 ふたりは、たしかな充実感を胸に、真夜中の街道をのんびり並んで歩きだした――。
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*** 活躍者 *** |
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[35] クリストフ・フォンシラー 2018/08/11-22:02
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[34] ベルロック・シックザール 2018/08/11-21:45
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[33] リチェルカーレ・リモージュ 2018/08/11-21:28
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[32] シリウス・セイアッド 2018/08/11-21:08 | ||
[31] キリアン・ザジ 2018/08/11-18:42 | ||
[30] セプティム・リライズ 2018/08/11-18:39
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[29] シャルローザ・マリアージュ 2018/08/11-17:07 | ||
[28] アリシア・ムーンライト 2018/08/11-15:19
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[27] クリストフ・フォンシラー 2018/08/11-14:06 | ||
[26] リチェルカーレ・リモージュ 2018/08/11-10:41 | ||
[25] リチェルカーレ・リモージュ 2018/08/11-10:19
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[24] クリストフ・フォンシラー 2018/08/11-07:38 | ||
[23] ヨナ・ミューエ 2018/08/11-05:07
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[22] ヨナ・ミューエ 2018/08/11-05:00 | ||
[21] シャルローザ・マリアージュ 2018/08/11-04:57
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[20] キリアン・ザジ 2018/08/11-01:30 | ||
[19] 響・神原 2018/08/11-01:19
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[18] クリストフ・フォンシラー 2018/08/10-21:40 | ||
[17] リチェルカーレ・リモージュ 2018/08/10-00:05 | ||
[16] セプティム・リライズ 2018/08/09-22:09 | ||
[15] ベルロック・シックザール 2018/08/09-21:40 | ||
[14] シャルローザ・マリアージュ 2018/08/09-06:36 | ||
[13] ヨナ・ミューエ 2018/08/09-05:25 | ||
[12] セアラ・オルコット 2018/08/09-02:14 | ||
[11] リチェルカーレ・リモージュ 2018/08/08-22:29 | ||
[10] クリストフ・フォンシラー 2018/08/08-18:22 | ||
[9] 響・神原 2018/08/08-00:13
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[8] リチェルカーレ・リモージュ 2018/08/07-23:05
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[7] ベルロック・シックザール 2018/08/07-21:07
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[6] セプティム・リライズ 2018/08/07-20:03
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[5] ヨナ・ミューエ 2018/08/07-13:59
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[4] シャルローザ・マリアージュ 2018/08/07-09:17
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[3] クリストフ・フォンシラー 2018/08/07-00:03
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[2] 響・神原 2018/08/06-11:18
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