~ プロローグ ~ |
●二度目の生 |
~ 解説 ~ |
●目的 |
~ ゲームマスターより ~ |
お久しぶりです、三叉槍です。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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理由もないのに ひとを嫌うのは嫌 本当のことを明らかにしたい >調査 依頼人を探し詳しく聞き取り 怪しい人を見た場所 見たこと具体的に なぜサルベルさんだと思うんですか? 本人と話をしたい どこにいるのか 誰か居場所を知っていそうな人はいないか探す サルベルさんに会えたら 森の様子や状況を聞く 異変のきっかけに思い当ることはないか 誤解を解くよう頑張ります それまで 安全な所にいてもらうことはできませんか? 一度集まり わかったことは皆で共有 >戦闘 ランタン用意 敵が現れるまで布を被せ暗く 所定の場所に隠れる ゴール対応 中衛 魔術真名詠唱 仲間に浄化結界付与 怪我をした仲間の回復 それ以外は九字で攻撃 戦闘後 暴れていたのはゴール達だと村人に告げる |
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◆目的 ・村の異変の真相究明 ・ゴール、ゾンビの討伐 ◆昼行動:村を調査 ・唯月はアリシアさん達と村で聞き込み 絵画を活かし、隣人愛情で懸命に ・瞬はクリストフさん達と墓地の調査 演技で少しでも人間っぽく、擬似隣人愛情を試す 瞬「いづも俺の為に頑張ってるんだし、俺も頑張らないとね〜」 唯「もしゴールやゾンビを見た事がありましたら それをメモ帳とペンで絵を描けたら思いまして…!」 (少しでも捜索しやすくなればと…) ◆戦闘:ゾンビ対応へ ・スペル詠唱後別れて行動 ・二人とも通常攻撃を織り交ぜながら 唯月はアリシアさんと同じ位置でMG8、MG3等を駆使してサポートへ 瞬はFN1を使用して、苦戦気味の方々の後衛に周りFN10を駆使 |
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■探 「化物退治に(化物=サルベルの話は鵜呑み 村長、依頼主、村人全員に顔合わせ 普通は安心してリラックス 緊張する人はサルベルの味方、依頼に疑問がある人かと ティ医学知識で筋肉の緊張確認 「んな心配すっ事ねぇって あっちの浄化師と話してみ落ち着くから ■森 ジークリート見かければ駆寄り 村人に案内して貰い 敵の出現位置 戦い易そうな広場 地図に印をつけ 出現位置の法則性も思案 木の傷を確認し敵の寝床に当りを(案内して貰う ティ魔力感知で魔力流れを確認 登山アビリ 嗅覚聴覚で警戒 敵に気付かれる前に撤退 情報は皆と交換相談 ■準 敵出現位置から誘いたい場所迄 村への道等に岩を転がし封鎖 村から肉貰い誘き寄せに置く ランタン1つをロス 他灯り広場 |
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◆調査 日中、村で聞き込み&サルベル捜索 会話術&心理学スキル、隣人愛情も使用 ・化け物はいつ誰が、何処で目撃したか ・サルベルの行方、普段はどんな人物であるか、彼と親しい人物について ・サルベル以外に不審な人物や出来事に心当たりはないか (外部の魔術等が原因の可能性もあると説明) サルベル本人や他に森の地理に詳しい者が見つかれば 敵が身を隠せそうな場所や 戦闘に向く開けた場所はあるか尋ねる 仲間と情報共有 ◆戦闘 夜間を想定し松明を準備 接敵時に魔術真名詠唱 ゾンビの全滅→ゴールの討伐へ リュシアンはDE6、リュネットはFN5で其々遠距離攻撃 灯りの延焼や、仲間との連携、同士討ちにも注意 解決後にアンデッドであると明かし説得 |
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目的 ゴール、ゾンビの討伐。 サルベルさんが村にいられるようにすること。 行動 出発前に教団で簡単に調査 ゾンビ発生の原因にはどんなものがあるか? ゾンビがゴールになるにはどのくらいの時間(?)がかかるか? 到着後村人に聞き込み、その後森で調査 村周辺の森の地理。 化物が目撃された場所、熊が殺されていた場所、その他にもいつもと変わった様子があった場所がないか。 聞き込みした場所を実際に確かめに行く。 主にゴールたちが村へどの位まで近づいて来ているかの確認。村人に被害が出たらいけないので。 痕跡(足跡、草や枝が折れたり?)を辿れるようなら追いかけてみる。周囲に注意。 他のひとたちが戻る時間に合わせて戻り、情報交換。 |
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無知は罪だが…卑怯さはより罪が重いな 好い人でいたいがために遠回しの嫌がらせする…それが平穏を保つことだと信じているのも重罪だろうがな 俺は森に行く コンパスを使って道に迷わんようにしないとな 目的は ゴールの毒で異様な枯れ方をした植物を探すため それと森の動物を撒き餌として狩るためだ シリウス、動物追っかけて来い その後村で聞き込み サルベルに悪意を持つ人間を見つけて質問 通報者を探してゴールの手がかりを探る…多分無いだろうが アンデッド嫌いの人間を装っておく 戦闘時は真名詠唱後ゾンビを対象にチェインショット 撃破後ゴールにターゲット変更 事件解決後はアンデッドだとばらして通報者に泡吹かせてやるさ 孔の箇所は秘密だが |
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○準備 手分けして情報収集 多数に流されるのを避ける為一人or少数ずつ村人に話を聞く 方針決定はキリアンだが会話はセアラ担当 ・報告書にあったアンデッドの若者は何者? ・疑う理由があるの? ・サルベルは今どこ? ・親しかった人はいない? 恋人の父親に接触しサルベルの居場所を訊く (接触時サルベルの無実を信じる旨強調 サルベルに会えたら状況聞きつつゴール出現場所の情報を得る 集合し仲間と情報共有 ○戦闘 ゴール出現場所近辺の広い場所確保 周囲に松明設置 敵誘導後はゾンビ1体を担当 キリアンが前衛で抑えセアラは距離維持し銃撃 スキル積極使用し迅速に 撃破後対ゴール戦加勢 ○事後 黒幕を上げられれば最善 無理でも黒幕の存在の証拠を出せれば |
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サルベルさんがアンデッドだから嫌いで、差別をする… 悲しいです、ね(クリスを見て目を伏せ もしかしたら、サルベルさんが恋人を見捨てて生き残ったとか 他にも誤解があるのかもしれないと… そう言う誤解を全部解いてあげたい、です… 行動】 唯月ちゃんと一緒に村で情報を集めます ・ゾンビが暴れ出した時期 ・ゾンビを目撃した人は誰? ・サルベルさんだと言う証拠はありますか? ・普段のサルベルさんはどんな人? 目撃者がいればその人にも詳しい話を サルベルさんをよく知らないのに嫌ってるようなら 今度話してみて下さいとお願い 戦闘】 ランタンで灯り確保 戦場全体が見える位置から仲間の体力や毒の回復役 回復の必要が無ければ通常攻撃でクリスの援護 |
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~ リザルトノベル ~ |
「さあ、着いたわ! ここが目的の村ね!」 静かな村を切り裂くような張りのある大声が青空に響き渡る。 胸を張り、ズンとお手本のような仁王立ちで堂々と降り立ったのはセアラ・オルコット。 「やめときなさいって」 「いたっ」 そして、コツンとそのこめかみを小突いてぼやくのは彼女の相棒のキリアン・ザジだ。 「なによ。わたしは村の人達に着きましたよっていう挨拶をね……」 「その村人に怖がられてんだよ、お嬢は。行動する前に相手の顔を見る癖を付けなさいって」 「むー」 キリアンに促されて改めて村の入り口に集まってきた数人の村人たちの顔を見る。 「……」 彼女の目に映るのは無言で帽子の隙間からのぞき込むような視線を送ってくる村人たちの姿。お世辞にも歓迎しているという様子ではない。 「えー、なんで? わたし達助けに来たのに……」 口をへの字に曲げて分からんという表情を見せるセアラ。何にせよ感情を隠すのが苦手な娘である。 「……嫌な感じがしやすねぇ。俺も経験あっからなぁ」 「まあ、事前に警告のあった通りの雰囲気、って感じだね」 「化け物を倒しに来たとはいえ、彼らにとって俺達は異物だ」 セアラとは異なりスッと静かな佇まいで降り立ったのはエレメンツのレオノル・ぺリエ。 その後ろに執事のように黒づくめのショーン・ハイドが立つ。 「彼らにとっては化け物も我々も大差ないのさ」 ちらりとショーンが村人に視線を向ける。 「……!」 別ににらんだわけではない。本当にただ視線を向けただけだ。 しかし、まるでそれを恐れたかのように集まってきていた村人たちは足早に去って行った。 ――いや、恐れたのだ。ただ立っているだけの人間を。 普段、村にはいない存在というだけで、彼らは恐れて逃げていったのである。 「……あまりいじめないようにね、ショーン」 「いじめてなんていませんよ。彼らが勝手に私に幻想を重ねただけです、ドクター」 実際ショーンは村人にあまりいい印象を持ってはいないものの、ここで事を荒立てるほど分別のない性格ではない。 むしろ最初は友好的に接しようと考えていたくらいだ。 「いやー、聞いていた以上に閉鎖的な村だね。これは苦労しそうだ」 すこし不穏な流れになりつつあった空気を読んだのか、クリストフ・フォンシラーが努めて明るい声を出す。 「いや、まったく。困ったものだよね~」 それに続いたのは泉世・瞬。 相棒の杜郷・唯月が馬車を降りるのに手を貸しながら朗らかな口調で続ける。同じ明るさでありながらクリスに比べると、逆に空気を読まないような雰囲気を感じるのは性格であろうか? 「孔もちゃんと見えないようにしないとねぇ。どう、いづ? ちゃんと隠れてるかな?」 「は、はい……大丈夫だと思います」 唯月が地面にきちんと降り立ったのを確認してから、彼女にハンカチで隠した左肩を見せる。孔をごまかすための応急処置だった。 「アンデッドさんはこういう時、こういう事があるんですね……」 「ん?」 軽く触って孔の位置を確認しながら言いにくそうに唯月が呟く。 「あの……瞬さんも……ありました、か……?」 勇気を振り絞って瞬にそう問いかける。 聞いていい事かどうか迷ったが、それでも大切なパートナーの事だ。知っておきたかった。 「うーん……どうかな~」 対して瞬の方は相変わらずのん気な口調である。 「周りはアンデッドの知識がある方だったからそんな事なかったかも」 そこまで言ってから僅かに――本当に珍しいことだ――瞬の表情が陰る。 「……もしあったら……寂しいねぇ……なんて。さて、孔の方は大丈夫そうだね」 最後はごまかす様に明るい口調へ切り替えてにっこりといつものように笑う。 「俺は手袋だけだけど。ま、握手とかしない限りは大丈夫だろ。ショーン、君は孔どこ? よかったらチェックしようか?」 「……結構だ」 冗談めかした口調で話しかけてくるクリスに若干眉根を潜めてショーンが返す。 「そうかい? それは残念。まあ、お互いこの村にいる間はバレないように気を付けないとね」 言いながら自身の手袋の甲の部分を指でつつくクリス。するとズズッと不自然に指が甲の中へと埋没していく。 それはクリスがアンデッドである証、孔のある位置である。 「……」 「大丈夫だよ、姉さん。僕の位置は滅多に見えることはないから」 アンデッドの孔の話題に思わず心配そうな視線を向けてきた姉のリュネット・アベールに、弟のリュシアン・アベールが苦笑と共に自らの胸をトントンと叩きながら返す。 「……うん。でも、無理は、しないで……?」 「もちろんだよ。だから、安心して」 「うん……」 コクリと頷く姉だったが、彼女がそれで安心するわけがないというのはリュシアンも分かっている。 「今回は特に気を付けないとな……」 「……?」 姉に聞こえないような小声で呟くリュシアン。この心配性の姉に不安にさせないように立ち回るのは今回なかなか骨が折れそうだと一人頭を抱えた。 「この村には今まさに身を追われているアンデッドの方がいる……。確か……サルベルさん、でしたね」 クリスの自らの孔を触る仕草をじっと見つめながらアリシア・ムーンライトが物憂げに呟く。 「サルベルさんがアンデッドで嫌いだから、差別をする……。悲しいです、ね」 それからふっと視線を伏せ、微かに吐息を漏らす。 「アリシアがそんな顔をすることはないさ」 その微かな表情の変化から彼女が必要以上に心を痛めている様子を感じ取り、クリスはなだめる様に頭にポンと手を乗せる。 「ええ……分かっています……」 目を伏せたまま呟くアリシアに今度はクリスがため息を吐く。 表情の乏しいアリシアであるが、感受性はちゃんと人並み、あるいはそれ以上に持ち合わせている。 特に思考の遅いアリシアは長い時間考え込む事が多い。特に村に着くまでの馬車の移動時間は、今回は彼女にあまり良くは作用しなかったようだ。 「まあ、俺達が彼の無罪を証明してやれば済む話だ」 「そうですね……。本当の事を明らかにしたい……」 シリウス・セイアッドとリチェルカーレ・リモージュが並んで馬車から降り立つ。 「……あまり暗い顔ばかりしていても仕方ない。考えることも大事だが、今は行動だな」 自分の相棒も含めてどうも今回の事情に感情移入をし過ぎていて落ち込んでいる者が多い。それはそれぞれの優しさの発露であり、人として尊敬できる部分でもある。 でもあるがしかし、今は顔を伏せてばかりもいられない。時間は限られているのだ。 「そっだなー! サルベルっちゅう奴も心配だが、単純に暴れてる奴も気がかりだ。なんつったっけか、ええと……」 「ゴール、ですね。ゾンビの発展形」 首をかしげるロス・レッグに付け足す様にシンティラ・ウェルシコロルが口を挟む。 「おお、そうだ、ゴールな。でけぇゾンビっつうのは聞ーてっけど……」 「ゴールに関してはこちらに向かう前に少し調べておきました。ゾンビから発展してなるものですね」 そこへさらに情報を追加したのはジークリート・ノーリッシュ。生成の女性である。 「身長は人間と同じか一回り高い程度。その代りに体内からは毒素を持ったガスが発生しており、お腹が大きく膨らんでいるのが特徴ですね」 何も見ずにすらすらとゴールに関する情報を流していくジークリート。 「毒ガス、ですか。気を付けなければなりませんね」 その情報を聴きながらシンティラが小さく頷く。 「ええ、ただその細かい発生条件に関してはどうも禁忌魔術に触れるらしく、詳しい情報は得られませんでした」 「詳しい情報が知られていない……。だからアンデッドの方と同一視されるような事態になってしまっているのかもしれませんね……」 「……情報がないならそれは不明であって疑う要因とはなりえないと思うのですが、そういった事はよくあるのですか?」 起伏のない淡々とした口調でそう尋ねるのはジークリートの相棒であるフェリックス・ロウである。 「そ、そうね……」 問われてフェリックスの方へ視線を移すジークリート。 普段は話しかけなければ一日中一言も喋らない事すらあるようなこの少年が突然口を開いた事に若干驚いた。もしかしたら彼の中で何か気にかかることがあるのかもしれない。 「残念だけど、あると思うわ……。人は簡単に他人を疑ってしまうものだから……」 「そうですか」 ジークリートの答えにもやはり淡々と返すフェリックス。 「まあ、それを覆すのが人の英知さ。……少し気になる事がある。私はこの村の墓場を少しチェックしてくるよ。聞き込みは任せるよ」 そう言って最初に歩みだしたのはレオノル。 「墓場?」 「ああ、以前の依頼でゾンビと戦った事があってね。少し気になるんだ」 シンティラの問いに半身振り返って意味ありげな笑みを浮かべながら答える。 「ん~、なるほどね。じゃあご一緒しましょうか。以前のよしみでね」 「ああ、俺も行くよ。あまり少数で行動して魔物に襲われたら事だしね」 レオノルの行動にクリスと瞬の二名が乗っかる。 「ああ、ありがたい。さすがに一人は不安だしね」 「俺も行きましょうか、ドクター?」 「いや、いいよ。空振りになる可能性も高い。あまりに人員を割くのは得策じゃない」 「わかりました」 「それじゃあ、いづ。いってくるよ」 「はい……瞬さんも、その、お気を付けて」 「じゃあ、俺も。ひとまずやるべき事をやってしまわないとね」 「……ええ、頑張って」 三者三様の別れを告げて歩きだす三人。 「さて、それじゃあ私達は聞き込みね!」 「だ~から、音量を抑えなさいって」 「あいたっ」 再びセアラのこめかみを小突き、キリアンは微かにため息を吐くのだった。 「あの、すみません……」 「ん? ああ、何だあんたらか」 村の代表者に一度顔通しをした後、村人たちに対しての聞き込みを開始する面々。 一応代表者の者にも聞いてみたのだが、ここに来る前に本部で聞いた以上の情報は得られなかった。 それどころか少し疎まし気に追い返されたほどである。自分たち呼んだにもかかわらずに、だ。 そして、そのような理不尽な態度はその代表者だけにとどまらず、今こうして唯月が話しかけた中年の村人もまた同様だった。 「何の用だ。サルベルの奴はまだ捕まらんのか」 リチェルの声に振り返った瞬間から明らかに変わる態度。いかにもよそ者には心を開かないといった空気である。 「ああ、すみませんね。その辺はこれからやるところでさぁ。そのためにちょいとお聞きしたいことがございましてね」 突然投げつけられた敵意から他の者を守るように、キリアンが一歩前に出て代わりに問いかける。 「そうそう、あなたが今回の件の目撃者なんですよね」 「あ、こら!」 せっかく身を盾にしたキリアンを無視するようにその横からセアラがぐぐいっと村人に迫る。 「ああ、そうじゃ。あいつが森に入っていったのを見たんじゃ」 「……ええと、それから?」 「それからも糞もあるか。そしたら、森から化け物が出てきたんじゃ。決まりじゃろうが」 一同は思わず息を呑みこんだ。 本気で言っているのかを疑うレベルだったが、悲しいかな男の表情を見る限りどうやら大真面目にそう思っているらしい。 「……でも、それだけじゃ証拠としてはまだ薄いですよね」 心の内に芽生える感情を封じ込めアリシアが努めて冷静に尋ねる。 「なんだぁ? 随分疑りぶかいな」 「いえ、一応聞いておきたくて」 どっちがですか、という言葉が喉まで出かかったのを飲み込む。 「あいつはもともと死体だったんだろ。この付近には昔から化け物なんて出たことないんだ。それがあいつが来て1年もしないうちに現れたんだ。どう考えてもあいつが原因だよ」 ――それだけ。たったそれだけか。その程度の根拠で……人を裁こうというのか。 怒りがこみ上げた。叫びそうになった。 「……あの、つまり実際にサルベルさんが姿を変えるところは見てないということですよね?」 それでも揺れる感情を押さえつけて唯月が何とか言葉を絞り出す。 言っていることは正論だ。当然確認するべき事項。 「なんだ、あんたら俺の事を疑ってるのか……?」 だが、その言葉に男は機嫌を損ねたらしい。露骨に不機嫌そうな表情を浮かべると、声音を一段階低くして唯月を睨みつける。 「そ、そういうわけじゃ……」 「……っ! い、いい加減にして!」 あまりの物言いに後ろでメモを取っていたリュネットが大きな声を出す。 「あ、アンデッドになっても……その人は、その人のままなの……ちゃんと、生きてるんだよ……!」 「姉さん!」 「シ、シア……」 泣きながら言葉をこぼす姉を片手で制して、リュシアンが前に出る。 「すみません。姉は知り合いにアンデッドがいまして。その人の事を思い出してしまったのです。お許しを」 嘘は言ってないよな、と考えながら微笑みをたたえて男に軽く頭を下げる。 「ふ、ふん。まあ、俺も言い過ぎたかもしんねぇけど、あんたらは村に金で雇われてるんだからちゃんと仕事してもらわんと困るぜ」 流石に気まずくなったのかそそくさとその場を離れる男性。 「……ごめんなさい」 「謝る事なんて何もありません、リュネットさん。みんな同じ気持ちです」 顔を伏せるリュネットの手をリチェルがギュッと握って笑いかける。 「それに、正直に言って、ちょっとだけスッとしました」 「まあ、そうだね。姉さん……ありがとう」 自分を想って声を上げてくれた姉に、心からの感謝の言葉を返すリュシアン。 「うん……」 素直にそれを受け取り頷くリュネット。 彼らを遠くから眺めていた人影の存在に、彼らはその時は気付いていなかった。 「そら、シリウス。獲物だ。追って来い」 森を探索しながらふと視界に鹿を捉えたショーンが指を差しながら呟く。 「俺は犬じゃない!」 その不躾な言いざまに文句を言いながらも、素早く鹿に接近したシリウスが双剣で首を跳ね息の根を止める。 「まったく。本来狩りは射手が主になる筈だが?」 「矢の無駄遣いはしない主義でね」 シリウスが剣に着いた返り血をぬぐいながら不満げに漏らした言葉に、冗談めかして返す。 「これで3頭目。目標数に到達しました」 鹿をここまで追い立てたフェリックスが淡々とそう告げた。 「よっしゃ! あとは帰りにも一匹くらい捕まえられればいう事ねぇな!」 既に両肩に一頭ずつ獣を担いだロスが急いで駆け寄ってくる。 彼らの目的は二つ。事前に戦場になるであろう森の調査と囮となる肉の調達だ。 「例のゾンビたちがこれに食いついてくれればいいのですが……」 シリウスが担いだ鹿を見ながらジークリートが呟く。 「今さら不安になっても仕方ない。事前の調べではそう書いてあったんだろ?」 「ええ、特に何物にも操られていない限りは、ゾンビは本能のままに動く、と。死肉なども好んで食べるようなので効果はあるはずですが……」 出発前に調べたゾンビたちの生態を記したメモをめくりながらシリウスの問いに答える。 「ま、あとは出たとこ勝負だ。戦いってなーそういうもんだー」 ロスがドンドンとジークリートの背中を叩きながら励ますように笑う。 「戦闘に耐えうる広場は見つかりました。それだけでも森に来た甲斐はあったというもの。ですからあまりお気になさらず」 「ええ、そうね。ありがとう」 続いてシンティラにも励まされ、ジークリートも笑顔を取り戻し会釈をする。 「……ところで、ショーン。聞き込みの方、うまくいってると思うか?」 と、そこで思い出したようにシリウスがショーンに問いかけた。 村に残してきたリチェル達の事が気がかりなのだろう。この声は少し不安げだ。 「……まあ、無理だろうな」 しかし、ショーンは事も無げにあっさりとそう答えた。 「なっ……!」 「村に残った奴らは素直過ぎるし、優しすぎる」 「……」 何かを言い返そうとしてシリウスはそれを飲み込む。 正直言うとそれはシリウスも感じていた。この悪意ある村に対して、リチェル達は果たして向き合えるだろうかと。 「あー、それは確かにわかっかなぁー。あいつらはほんとっ気の良い連中だけども、この村の連中は腐ってっかんなー」 「では、何故班分けの時にそれを指摘しなかったのですか?」 ジークリートは当然の疑問を口にした。 やろうと思えば人員を分けるときに相談して振り分けられたはずだ。特にショーンはそういうときに臆するような性格には見えない。 「別にそれが必要だと思ったからさ」 そうとだけ言ってショーンは森の中を歩き始めた。 「来てみたものの、これは外れ、かな」 墓地の様子を見渡しながらレオノルが小さくため息を吐いた。 以前、ゾンビの供給地として使われた墓地を彼女は見たことがある。地面は荒れ果て、墓標は倒れとそれは酷いものだった。 それに比べこの村の墓地は特に異常はなく、見たところ平穏そのものだった。 この場所から今回のゾンビが作られているのではないかと思ったのだが……。 「んー、平和って素晴らしい」 「ははは、違いないね」 あえて茶化す様にいうクリスに瞬も笑顔で乗っかる。 「魔力の残留もなし。やっぱりここは無関係なようだ。残念」 レオノルもさして残念でもなさそうな口調でそう結論付ける。 「んー、無駄足ってことかな?」 「いや、そうでもないさ」 瞬の言葉にクリスが答える。 「ここが無関係だと分かっただけでも収穫さ」 「そうだね。この村は他の集落からは距離がある。だから、ここで死体を調達したと踏んだわけだけど……」 「そうではなかった」 「うん。でも、ゾンビというのは自然発生はしない。かといって、術者の手を離れたはぐれゾンビがたまたま歩いてきたにしては、この場所は孤立し過ぎている」 「つまり……」 レオノルのその説明に瞬は少しだけ顔色を変えた。 「遠路はるばる、ここに運んできた奴がいる?」 「憶測の域はでないけどね……」 対してレオノルは軽く肩をすくめるだけだった。 「はあ、なかなか上手くいかないですね……」 「っと、ここにいたか。調子はどうだ?」 なかなか情報が得られず途方に暮れた聞き込み班に、駆け寄ってきたシリウスが声を掛ける。 「あ、シリウス。……ごめんなさい。あまり調子は良くない、かも」 「……そうか。この村は余所者に好意的ではないからな」 顔を曇らせるリチェルを励ます様に声を掛ける。 「まあ、そんな落ち込むこともねって。悪いのは嬢ちゃんたちじゃないかんな」 シリウスに続いてロスとショーンもやってくる。ロスはすでに獣は担いでおらず手ぶらだ。 「お疲れ様です。ジークリートさん達は?」 「ああ、狩った獣を持ってドクター達の方に合流してもらった。戦闘予定地の確認と肉の処理をやってもらっている」 リュシアンの問いかけにショーンが答える。 「そっちはどれくらい回ったんだ?」 「午前中いっぱい村は一通り回ってみましたけどね。結果は……さっき聞いた通りです」 「ふむ、話を聞いた中で『一番態度が悪かった奴』はどいつだ」 「まあ、なんだかんだ言って最初のオッサンじゃないすかねぇ」 ショーンの不可解な問いに答えたのはキリアンだった。 「場所はわかるか?」 「へいへい、大体何をするつもりか分かりましたよ」 ショーンの意図を察したらしいキリアンが手招きをして歩き出す。 「どういうことでしょう……?」 「ま、毒を以って毒を制すっちゅう奴な」 キョトンとした顔のアリシアにロスはニヤリと不敵な笑みを浮かべるのだった。 「おい、あんた」 「ん? な、なんだ、またあんたらか」 声を掛けられたその男は振り返って二人の姿を確認するに少しおびえながらもそう答えた。 そこにいたのはロスとショーン。今回のメンバーの中でも比較的大柄で迫力のある方である。そんな二人にいきなり声を掛けられれば警戒をするのは致し方あるまい。 「あんたらにはもう話したろ。まだ何か用があるんかい」 二人と顔を合わせるのは初めてのはずだが、この村の人間でないことは一目で分かるのだろう。 「いやいや、あいつらと俺達は別よ。たまたま一緒の依頼を受けただけで別に仲間じゃねっだ」 しかし、そんな態度にもひるむことなく、ロスが話を続ける。 「あ? どういうこった」 「あんな甘ちゃん達と一緒にしてほしくねってことよ」 「あいつらと話して分かったろう。あいつらはアンデッドの危険性を理解していない」 「お、おお……」 ロスとショーンに続けて言い寄られ、思わず気おされる男。完全に二人のペースである。 「そんで聞きたいのは例のアンデッド――サルベルだったか。そいつと仲良かった奴を知りてぇのよ」 「あんたは夜に暴れるゾンビを見たんだろう? なら奴は昼は潜伏し、夜になってから正体を現し暴れている可能性が高い」 「そそ。だから、昼の内に捕まえてぇのよ。だが、一人で隠れてるとも思えねっから、匿ってる奴が必ずいるはずよ」 「ああ、なるほど、それで」 すっかり二人の言葉を信用したらしく男が得心が言ったと何度も頷く。 「それなら、間違いなくタジルの親父に間違いねぇ。元はあいつの娘が連れてきた男じゃからよ。場所は……」 「ふんふん」 男の言う道順をしっかりと記憶し、ロスが男の肩に手を置く。 「情報あんがとさん」 「……では、せいぜい結果を楽しみにしていろ」 「あ、ああ……」 そう言って立ち去る二人の態度が急によそよそしくなったような気がして、男は漫然と不安を感じたのだった。 「ここですね」 手に持ったメモと目の前の家を見比べながらアリシアが呟く。 このメモは先ほどショーンから手渡されたものだ。 「ここにサルベルさんの縁者さんが?」 「そういう話でしたが……」 肝心のこのメモを持ってきたショーンとロスは準備組の方を手伝うと言って立ち去ってしまった。 そのまま二人で行けばいいのにと疑問に思ったのだが……。 「私達じゃないと駄目だと言っていましたが……どういう事でしょう?」 「まあ、考えても仕方ないことは考えない事にしましょう! たのもー!」 ザっと足音を立ててドアの前に立ったセアラが、一切の躊躇いなく大きな声を張り上げる。 「まったく、相変わらず猪突猛進なこって」 「何よ、文句ある?」 「いいえ? ま、今回ばかりはそれが正解だろうしな」 「?」 呆れ顔のキリアンの煮え切らぬ言葉にセアラが疑問符を浮かべた瞬間、家の扉が軋む音と共に開かれた。 「……誰だ」 顔を出したのは少しくたびれた印象の初老の男。 「すみません。僕たちは村から依頼を受けて……」 「……知っているよ。見ていた」 「えっ?」 名乗ろうとしたリュシアンに先んじて男性が低い声で呟く。 「入りなさい。こんなところに大勢で立っていては目立つ」 「……はい」 男性に促され次々と家の中へ入っていく面々。 家の中は思ったよりも広く、何とか全員が中に入る事が出来た。少々手狭なのは否めないが。 「サルベルの事で来たのだろう? さて……何から話したものか……」 「あの、私達の事を知っているというのは……?」 椅子に深く腰掛けて考え込む男性――確か名前はタジル――にアリシアが問いかける。 今日は数多くの人間に話しかけたが、目の前のこの男性の顔に覚えはない。おそらく初対面の筈だ。 「ああ、朝からいろんなところを回っていたろう? 申し訳ないが、遠くから様子を見させてもらっていた」 「それは、何故?」 「知りたかった。貴方達がサルベルくんを助けに来たのか、それとも……討伐しに来たのか」 「それで、俺達はお眼鏡にかなったってことでいいんですかい?」 家に招き入れたという事はそういう事だろう。 「ああ。貴方達はサルベルくんを助けようとしてくれている。それはとてもよく伝わってきた」 「それでしたら、お声を掛けて頂ければ良かったのに……」 「貴方達は信用したいと思っていたが、それでもこちらから声を掛けるのは躊躇われた。ヤブ蛇だけは踏みたくなかったのだ……」 その気持ちは理解できる。 もしも、サルベルを討伐するつもりの一団にうっかり彼の位置を教えてしまえばお終いだ。一般人たるタジルに浄化師達を止めるすべなどない。なすすべもなくサルベルは討伐されてしまうだろう。 「だが、私ももう腹をくくったよ。貴方達を信じて、サルベルの居場所を……教えよう」 「ありがとう、ございます。必ず助けて見せます……!」 彼の真摯な言葉を受け取って、唯月は心からそう誓い頭を下げた。 タジルから場所を聞いた面々はその場所で改めて集合し、彼との対面を果たした。ここはその潜伏場所のそば――牧草保管用のレンガ作りの塔のすぐ横である。 「よかった……無事だったんですね」 「はい、タジルさんのおかげで何とか……」 唯月が心配そうに声を掛けるが、当のサルベルの方は置かれた状況の割にどこかのんびりした様子だ。 「まずは、無事で何より。早速で申し訳ないけど、君の身に何があったのか、説明してもらえるかな?」 「はい……とはいっても、僕もあんまり詳しいことは分からないのですが……」 瞬に問われて当時の事を思い出そうと口元に手を当て考え込み、そして当時の事を語りだすサルベル。 要約するとこうだ。 仕事を終えた彼は帰り道で1体のゾンビと出くわす。何とか逃げおおせて身を隠すも、辺りを彷徨うゾンビの気配に動けず、そのまま山で夜を明かした。 そして、日が昇ってからゾンビがいない事を確認して下山すると、探しに来たタジルに会い、簡単な事情説明のあと身を隠す事を薦められ、そのままさっきまで隠れていた、ということだった。 「大まかな状況が掴めてきましたね。まだ朧気ですが……」 ジークリートが懐から教団から借り受けた周辺の地図を取り出し地面に置いて広げる。 「おそらく昼間の間はどこかに潜伏しているはず……サルベルさん、どこか心当たりはありませんか?」 「うーん、とはいっても、この辺りの森にそんな場所は……」 「例えば普段と様子が違う場所などありませんでしたか?」 「普段と様子が違う……? そういえば、何か……」 リチェルの言葉が呼び水となって何かを思い出しかけたサルベルが、曖昧な記憶を揺り起こそうと地図に目を落とす。とそこでふと妙なものが目に入った。 「……このバツ印は?」 「それは私の方で調べた、何者かに荒らされた木があった場所ですね」 「……あ」 シンティラの説明を受け、しばし地図を睨んだあと思いついたようにサルベルが声を上げた。 「そうだ、崖……」 「崖?」 「ちょっと前まで山肌が見えていたはずの崖の一画が緑に覆われていたんです」 「それかも……場所は分かりますか?」 「えっと、確か……」 そう言ってサルベルは地図上の一点を指さして見せた。 「どう、順調?」 「はい、指定通りに肉の断片を配置してきました」 ジークリートの確認にフェリックスがいつも通り淡々と抑揚のない声で返答する。 「ランタンや松明も設置できたよ。まあ、視界良好というわけにはいかないけど、ないよりはマシだよね」 瞬や他の面々もそれぞれの準備を済ませ、一同は数名を除き事前に相談した戦いやすい広場へと集合する。 「ま、大体準備完了ってとこだな。あとはロスの奴次第だねぇ」 「でも、本当にいいの? 場所が分かったんだったら奇襲した方がいいんじゃ……」 準備運動も兼ねて体を伸ばすキリアンにセアラが問いかける。 「つっても、もう日が暮れちまいますんでね。いつ連中が目を覚ますか分からん以上、地の利を得た場所で有利に進めることを優先するべきよ、この場合」 と、そこで広場に狼の遠吠えが突如響き渡る。 「……来るぞ! 構えろ!」 シリウスが警告すると同時に広場の中に入ってくる一匹の巨大な狼。ロスだ。 「ロス! 大丈夫か!?」 「俺はかすり傷だ! それより……」 ところどころ傷を負っているロスが人型の形態に姿を戻し叫ぶ。 「飛んでくっぞ! 気を付けろ!」 「……!?」 ロスの警告の意味を悟るよりも早く、生い茂る木々の間を縫うように飛来する黒い影。 「警告。下がってください、リート」 「きゃあっ!?」 突然自分に向かって飛んできたものが何なのかをジークリートが悟る前に、彼女の相棒フェリックスがその首根っこを掴み無理やり引き倒す。 寸前までジークリートが立っていた場所にグシャという気味の悪い音を立てて影が着弾する。 「あ、ありがとう、フェリックス」 「気を抜かないで。敵です」 「え?」 フェリックスがジークリートを守るように前に立ち、落ちてきた『何か』に向かって鎌を構える。 「……っ!」 そこで初めてジークリートは何が飛んできたのかを悟った。薄暗い宵闇の中、地面からゆっくりと立ち上がろうとしている黒い影。 ――ゾンビだ。 飛んできたのは他でもない。今、待ち構えていたはずの敵だった。 「なるほど、そうきたか……」 森の向こうから次々と飛来する黒い影を見上げながら、リュシアンは憎々し気にそう呟いた。 「仲間を力任せに放り投げるだと……?」 痛覚などの存在しないゾンビならではといっていい戦術である。 おおよそ手の届きそうのない頭上を飛び越えていく影を視界に捕らえながらシリウスが武器を握りしめる。 「シリウス、くっぞ! 本命だ!」 ドスドスと大きな地響きを立てて広場へと突撃してくる巨大な影。 「ヴォァァ!!!」 まさに巨体。人の身であれば決して歩くことなどできないような肥満じみた体が冗談のような速度で突撃してくる。 「ちぃ!」 咄嗟に双剣を十字に構え、その巨体を受け止める。 「っぐ!」 質量とはすなわちパワーそのもの。 シリウスはその衝撃を全て受け止めきれず、後ろに大きく跳ね飛ばされた。 「し、シリウス! しっかり! 天恩天賜!」 バランスを崩しながらもしっかりと着地をしたシリウスに、リチェルが天恩天賜を飛ばし回復を図る。 「ヴァアォォ……」 跳ね飛ばされたものの、一先ず突進を止める事には成功したらしく、ゴールはその口から緑色の吐息をまき散らしながら様子を窺うように周囲を見渡している。 「こいつに今後ろに抜かれっちまうんはまずい! ここで止めっど! ティ!」 「分かっています! 浄化結界!」 シンティラを中心として張られた結界がロスとシリウスの二人を包み、彼らの肉体を保護していく。 「リチェさん! 交互に張って常に結界を維持しましょう!」 「はい、お任せください!」 一旦ゴールから距離をとり、シンティラとリチェルが援護体勢を作る。 「やれやれ。足止めはもとより予定通りだが……思ったよりも骨が折れそうだ」 リチェルの回復で傷が治ったことを確かめながら、シリウスは再び双剣を構え立ち上がった。 想定外の事態であったが待ち構えるのもまた歴戦の戦士たる浄化師達である。混乱の時間はそれほど長くはなかった。 「俺が足を止める! お嬢、後は頼むぜ!」 「任せてよ、キリー!」 キリアンが素早くゾンビとの距離を詰め武器を振りかぶる。 「あんたの生前がどんなもんかは知りませんがね。勝手に裁かせてもらいますよっと!」 こちらに寄り掛かるように迫ってくるゾンビの両腕を躱し、すれ違いざまにキリアンの双剣がその腹部を二重に切り裂く。 「もらったよ!」 そこへセアラの構えた狙撃銃から発射された弾丸がゾンビの胸部を打ち抜く。 「よし! 完璧めいちゅ――」 「アァァ!」 「え、ちょ!」 確かに胸を貫通し、ゾンビの体を破壊したはずの弾丸だったが、しかしそれでもまだ痛覚も精神もないゾンビはただ本能のままにセアラに迫る。 「しぶてぇなぁ!」 キリアンが咄嗟に方向を転換し駆け出すが、距離が離れすぎた。この分だとゾンビがセアラのところに到達する方が早い。 「お嬢!」 「くっ!」 セアラがダメージを覚悟し防御態勢を取る。 「ペンタクルシールド! 守って!」 「!?」 と、そこで突然横からセアラをかばう様に飛び出してきた唯月が防壁を展開し、ゾンビの攻撃を受け止める。 「援護いたします」 「アァ!?」 足の止まったゾンビにどこかから飛来した線状の衝撃が叩きつけられる。 「隙ありだ!!」 その一瞬の間にキリアンが追い付き、再びゾンビに切りつけ、今度は完全に胴体を両断する。 「これだけやりゃ動かんでしょ……」 「はぁ~、ビックリしたぁ」 バクバクと脈打つ心臓を抑え、援護の飛んできた方向に視線を移すとそこにはアリシアの姿があった。 「ありがとうございます、助かりました!」 「いえ……」 「間に合って良かった……!」 「っと、あんまり喋ってる余裕はねぇっすよ?」 お互い口早に言葉を交わした後、辺りの状況を確認する。 とりあえず手の届く範囲にはいないし、暗がりで分かりにくいが、少し離れたところにはまだ何体かのゾンビが残っている気配がある。 ゆっくり落ち着いている場合でもあるまい。 「私達は後方の立て直しと援護を」 「それじゃあ、わたし達はボス戦ね! 行くよ、キリー!」 「へいへい……」 少し前のピンチにも全く憶する事なくセアラが武器を構え前方へ駆け出していく。 「元気だなぁ」 唯月のその呟きにアリシアも無言で頷くのだった。 残る後方支援組も状況は立て直しつつはあった。 前衛のフェリックスを中心に敵の注意を引き付け、敵に捕捉された後衛の者は無理をせず構えを解いて距離を取る。 そういった連携がいつの間にか組みあがっていた。 「アアアァ!」 「フェリックス! 後ろ!」 「……!」 しかし、前衛の数不足は否めない。どうしても囲まれる形になり手傷を追う事が多かった。 「……っ!」 背中をゾンビの膂力で思いっきり引っ掻かれ、肌が切り裂かれる。 「迎エ討チ……」 しかし、それに怯むことなく赤い鎌を横薙ぎに振りぬき、攻撃してきたゾンビを逆に吹っ飛ばす。 「姉さん、ここは一気に決めるよ!」 「うん……手加減、しないよ……」 その隙を逃さずアベール姉弟が同時に武器を構え集中力を高める。 「アクアエッジ……」 「打ち抜く……!」 水の刃で両断された体をさらに超高速の弾丸で打ち砕かれゾンビの肉体が完全に動きを止める。 「おみごと。それじゃあ、私も大技行くよ」 それを見ていたレオノルが涼やかな声でそう告げると、彼女の持つ魔導書が煌びやかに光り、同時に彼女の周りにいくつもの岩が生まれる。 「行け、ロックバーン」 彼女が魔導書を掲げてゾンビを指さすと、宙を舞っていた岩が次々と一体のゾンビに降り注ぎ、ついにはその重量で押しつぶす。 「どれだけ、タフだって言っても……潰せば跡形もなくなるよね?」 「はぁ……はぁ……」 残るゾンビは一体。最後のゾンビと相対しながらフェリックスが肩で息をする。さすがに疲労の蓄積が厳しい段階である。 「フェリックス、一回さがって!」 「しかし……」 彼はこの場の唯一の前衛である。ここにとどまり戦うことが彼の使命だ。 「おっと、無理はするもんじゃない。選手交代だ」 「……!?」 ゾンビの後ろから突然声が投げかけられる。 「遅いな」 「ぎゃ……」 振り返る暇すらなく疾風のように駆け抜けてきたクリスのサーベルがゾンビの胸に突き刺さる。 「疾風裂空閃」 「アアァァ!」 断末魔と共にクリスの突きによって巻き上げられた斬撃がゾンビを真っ二つに切り裂く。 「じゃあな。おやすみ」 そう囁くと地に落ちた上半身の首をクリスの剣が断ち切った 「ち、タフだな……」 「多分、向こうも同じっこと思っとるぞ」 ゴールの足止めを担った4人は、流石に疲弊を隠せない域になってきていた。 「リチェ、結界はまだ持ちそうか」 「はい、私は大丈夫です。私も攻撃に参加しますか?」 「いや、今は二人の回復が肝だ。そっちに専念してくれ」 「……はい」 歯を強く噛みしめながらゆっくり頷くリチェル。正直、彼が傷つくまで待つというのは、思った以上に歯がゆい。 できることなら彼を援護したい。しかし、それで回復が遅れてしまっては却って命取りになる。 敵を含めこの場にいる全員が我慢比べのような状況が続いていた。 (何かきっかけがあればなー) ロスが斧を構えもう幾度目かも忘れた防御態勢を取った時、一つの破裂音が響き渡った。 「セアラ・オルコット、参りました!」 高らかに響き渡る大声と共にゴールの胸に弾丸が着弾する。 「待っとった! いい頃合いだ!」 「……!」 その気を逃さずシリウスとロスが一斉に攻勢に出る。 仲間が来ても疲弊していることには代わりはない。やるなら一気に。 熟練の戦士たる二人は言葉を交わさずとも同じことを思考していた。 「先に行くぞ、ロス」 シリウスの体が一気に加速し、閃光の如き速度でゴールの脇をすり抜ける。 「ソードバニッシュ……!」 そのすれ違いざま、ゴールの肉厚の腹を横薙ぎに切り裂く。 「ガァァァ!」 痛覚はないはずだがまるで怒り狂ったようにゴールが背後に拳を振り回し、シリウスの後頭部を狙いに行く。 そこに訪れる風切り音。 風よりも早く打ち出された一本の矢がゴールのこめかみに突き刺さり、その動きを一瞬止めた。 「俺に無駄な矢を撃たせるなよ、シリウス」 撃ったのはショーン。 「隙ありぃ!」 そしてその一瞬の隙間にロスがゴールの懐へ身を滑らす。 「今までのお返しだ! 持ってけ!」 ズン、とロスの踏み込んだ脚が地面を揺らす。 「地烈豪震撃ぃ!」 全力で振り下ろされた斧がゴールの体に深々と突き刺さり、その腹を縦に引き裂き、さらに後方へと大きく後ずさりさせる。 シリウスに横に。ロスに縦に。十字に引き裂かれ、もはや人の体としての形もほとんど保っていない状態。 しかし、未だゴールは動きを止めてはいない。 「流石、凄い生命力」 ボッという音と共に薄暗い山中が煌々と照らされる。後方にて瞬の掲げた杖から生まれた魔方陣により、大きな炎の玉が生み出されていた。 「オゴォォォ……」 「でも、消し炭になったら……さすがに死ぬよね」 瞬の放った炎の玉はゴールが動かなくなるまで、延々とその体を燃やし尽くしたのだった。 「……あ、ありがとうございます」 ゴールの死体を目の前にして顔を引きつらせながら村長と何人かの村人たちが頭を下げる。 その死体の横で所在なさげに立っているのはサルベルだ。村人はサルベルと死体を交互に見比べて目を白黒させていた。 「さて、彼に何か言うことがあるはずだが?」 静かな口調に確かな迫力を乗せてショーンがぼそりと告げる。 彼以外にも周りの浄化師の幾人から無言の圧力が吹きつける。 彼らの中でアンデッドの者たちは既にその経歴を村人たちに明かし、大層な衝撃を与えていた。 「も、申し訳ない、サルベルくん。我々の……誤解だったようだ」 「……はい。二度とこのような事の無いようにお願いします」 一つため息を吐いた後、少し怒りの滲む声でサルベルが言った。 「それだけかい?」 しばらく待った後、レオノルが尋ねる。 「……ええ。一応反省もしているようですし」 「許すと言うと聞こえはいいけど……それは彼らの甘えを呼ぶよ。そしてそれは他の人も傷つける」 「……僕はそこまでこの人たちに責任は持てません」 ふっと微笑みを浮かべてサルベルが答えた。それは嘲笑のようでもあり、自嘲のようでもあった。 「……僕は今まで自分が死んだと思っていました。彼女のいない世界に生き返った時から」 「ううん、あなたは生きているよ。ちゃんと、生きてる……」 「……そうでうね。僕はもう少し、許してあげようと思います。生き返った自分の事を」 リュネットの言葉にそう返すと、彼は小さく誰かの名を呟き、そして静かに……泣いた。
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*** 活躍者 *** |
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[61] リュシアン・アベール 2018/09/02-23:16
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[60] キリアン・ザジ 2018/09/02-23:00
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[59] 杜郷・唯月 2018/09/02-22:25
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[58] クリストフ・フォンシラー 2018/09/02-22:19
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[57] 杜郷・唯月 2018/09/02-22:11
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[56] リチェルカーレ・リモージュ 2018/09/02-21:47
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[55] ロス・レッグ 2018/09/02-21:44
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[54] ジークリート・ノーリッシュ 2018/09/02-21:28
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[53] クリストフ・フォンシラー 2018/09/02-21:12 | ||
[52] ロス・レッグ 2018/09/02-21:07
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[51] ジークリート・ノーリッシュ 2018/09/02-21:03
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[50] ショーン・ハイド 2018/09/02-20:52
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[49] キリアン・ザジ 2018/09/02-20:40
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[48] ロス・レッグ 2018/09/02-18:14
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[47] ジークリート・ノーリッシュ 2018/09/02-17:41
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[46] ロス・レッグ 2018/09/02-13:11 | ||
[45] ロス・レッグ 2018/09/02-12:28 | ||
[44] リチェルカーレ・リモージュ 2018/09/02-12:23
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[43] ロス・レッグ 2018/09/02-11:56
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[42] ロス・レッグ 2018/09/02-11:54
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[41] リチェルカーレ・リモージュ 2018/09/02-11:40
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[40] 杜郷・唯月 2018/09/02-11:20
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[39] リチェルカーレ・リモージュ 2018/09/02-11:12 | ||
[38] ロス・レッグ 2018/09/02-09:39
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[37] 杜郷・唯月 2018/09/02-08:19 | ||
[36] ロス・レッグ 2018/09/02-08:12 | ||
[35] リュシアン・アベール 2018/09/02-06:02 | ||
[34] キリアン・ザジ 2018/09/02-01:06
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[33] キリアン・ザジ 2018/09/02-01:04 | ||
[32] キリアン・ザジ 2018/09/02-01:04 | ||
[31] セアラ・オルコット 2018/09/02-01:04 | ||
[30] リチェルカーレ・リモージュ 2018/09/01-23:21 | ||
[29] ショーン・ハイド 2018/09/01-23:03 | ||
[28] クリストフ・フォンシラー 2018/09/01-22:57
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[27] クリストフ・フォンシラー 2018/09/01-21:49 | ||
[26] アリシア・ムーンライト 2018/09/01-21:49 | ||
[25] リチェルカーレ・リモージュ 2018/09/01-20:27 | ||
[24] リチェルカーレ・リモージュ 2018/09/01-20:26 | ||
[23] ロス・レッグ 2018/09/01-09:44
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[22] ロス・レッグ 2018/09/01-09:02 | ||
[21] キリアン・ザジ 2018/09/01-01:52 | ||
[20] リュシアン・アベール 2018/09/01-00:03 | ||
[19] 杜郷・唯月 2018/08/31-23:32
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[18] クリストフ・フォンシラー 2018/08/31-23:19
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[17] レオノル・ペリエ 2018/08/31-23:03 | ||
[16] クリストフ・フォンシラー 2018/08/31-22:29 | ||
[15] リチェルカーレ・リモージュ 2018/08/31-21:19 | ||
[14] 杜郷・唯月 2018/08/31-14:03 | ||
[13] ジークリート・ノーリッシュ 2018/08/31-01:26 | ||
[12] クリストフ・フォンシラー 2018/08/31-00:25 | ||
[11] ロス・レッグ 2018/08/30-23:44 | ||
[10] リチェルカーレ・リモージュ 2018/08/30-22:41 | ||
[9] リチェルカーレ・リモージュ 2018/08/30-22:33 | ||
[8] レオノル・ペリエ 2018/08/30-20:49 | ||
[7] ジークリート・ノーリッシュ 2018/08/29-23:50
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[6] ロス・レッグ 2018/08/29-20:21
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[5] ロス・レッグ 2018/08/29-19:55 | ||
[4] リュシアン・アベール 2018/08/29-08:18 | ||
[3] 杜郷・唯月 2018/08/29-04:14 | ||
[2] リチェルカーレ・リモージュ 2018/08/28-21:22 |