~ プロローグ ~ |
私は教団寮2階にある購買部の店員である。 |
~ 解説 ~ |
●目的 |
~ ゲームマスターより ~ |
今回のエピソードは、浄化師のホームである「教団内を知ろう」の一環です。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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◆瞬の見てないところで ・こっそりメイク道具を見てみる 唯(父さんの仕事であり瞬さんにも近付けそうな スタイリストに興味を持ったものの 未だにメイク道具は揃えられていないんですよね… 特殊メイクも勉強したいですが 舞台映えする自然なメイクが可能な道具とかも… 試せるように揃えたいところです…) ◆唯月のいないところで ・瞬は台本『ロメオとギュレッタ』に懐かしみつつ 気ままにウィンドーショッピング ・特に目的もないままブラブラ 瞬(いづの買い物についてきてみたけど ずっと一緒じゃ選びにくいかなぁ〜?なんて、ね …それにしても台本まで売ってるとは思わなかったなぁ…) ◆二人で購買部を出て 瞬「目的のもの、あった〜?」 唯「はいっ」 |
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トランプで遊んでいたけど 姉さんの要望で新しいゲームを買いに 姉さんは、手札の良し悪しがすぐ顔に出るから分かりやすいんだよ あからさまに顔を輝かせたりしかめ面したり …僕としては姉さんの百面相を眺めるのも好きだけど、それは内緒 購買部で扱ってるのは…チェスにオセロ、花札か 姉さんはどれがいい? じゃあ、花札にしようか 僕はチェスやオセロは覚えがあるけど、花札は僕も知らないんだ 一緒にルールを覚える所から始まるし これなら対等だよね? …へ? いや、待って待ってそれは流石に嫌だよ!? あの時は玉砕する気で臨んだけど! 本当にあの格好はもう…! う…わかったよ その代わり、僕が勝ったら 姉さんにも僕が選んだ服を着て貰うからね…! |
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防具の新調と、古い装備やダンジョンで手に入れたアイテムを買い取ってもらいに 店員さんに会うのも久しぶりかも 最初は装備を見たり、指令に持っていくものを探したりでよく来たけど、 今ではダンジョンアイテムの買い取りと日用品を買うくらいしか用事がなくなっちゃったわね もう少し、購買にも実力者用の装備が増えたらいいのに (だんだん要望がヒートアップ) あとついでだから言わせてもらうけど、持ち込んだアイテムの買い取り、これまとめて売れないのかしら? わざわざ一個ずつ売るのすっごくめんどくさいのよね だいたい…むぐっ …ごめんなさい、少々熱が入りすぎちゃったみたい 言われるまま帽子を試着し に、似合う?それならこれにしようかな |
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■買うもの 白に赤と青の花をあしらったレターセットにペン 追加で香水 ■藤谷 これか?妻への手紙のためだ 同じ浄化師だが指令の都合上基本顔を合わせることはないからな 定期的に手紙をやりとりしている 内容?一日なにがあったのかぐらいだな (愛してるは、いつも入れている挨拶みたいなものだ。そこまで語る必要もないな) 寮内に入るなり 家を買うなりもできるが そういうことをしても無意味だからな 香水?すまないが、これも追加で 手紙に、使うことにする エルピス、無茶はするなよ 無意識に指輪を取り出して、キスして 少し購買部から離れた場所で無名がたばこを吸おうと誘う。 ん?ああ悪いな。苦い煙草だ お前の甘ったれた根性みたいにな |
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※アドリブ歓迎します この前の女装コンテストは忘れてくれよ…(項垂れ) ララ、この化粧品一式に興味があるの? やめておいたほうが良いよ、大人の女性ならともかく 君は子供なんだから、まだ早…ちょっ、どこへ行くのさ、ララエル! (通り掛かった同僚に、女心がわかってねぇなとからかわれる) ※ラウルは一応貴族ですが、本人の性格も相まって 普通に接せられる事が多いです。 (化粧品一式を買って、エントランスでララエルを見つける) ララ…さっきはごめん。これ… (化粧品一式を渡す) でもねララ、こんなもの使わなくても君は十分綺麗だよ。 (目が据わり)(本当はメイクして、更に綺麗になったララを誰にも見せたくないだけなんだけどね…) |
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◆アユカ 日用品の補充にきたよ ついでにいろんな商品を眺めてみようかな 道具類もいろいろあるんだね~、見てるだけで面白いね 教団にはいろんな人がいるから、きっと趣味も多種多様なんだね かーくんみたいに無趣味な人もいるだろうけど ねえ、せっかくだから何か始めてみない? はまるかどうかは別にしても、いいきっかけだし、ね? 高級調理器具のことばれてる…! ほら、いいお菓子を作るにはいい道具から!でしょ? ◆楓 アユカさんに荷物持ちを頼まれたので同行 無趣味で悪かったですね まあ、あなたの言うことも一理あります 何か購入しましょうか そういえば、この間黙って高級調理器具セットを買っていましたね 大きな買い物の時は一言言えとあれほど… |
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雲羽 ふんふんふ~ん♪ あ、購買部見ていこうか? ははは、元より財布管理は君担当じゃあないか♪ 笑いながら購買部へ 新しい楽器出てないかな~?(きょろきょろ いやあキャンペーンで貰った和太鼓とかが中々良い音が出るからさぁ こっちにもニホン文化の結晶である太鼓とか木の横笛とかさ、もっと出ないかな~って思ってさ(店員をチラ見 勿論オカリナとかフルートとか?ニホン以外の音楽文化の結晶達も入荷してくれても良いんだけどさ~?(店員チラチラ …ん?ああ、そうさ♪ 以前使っていた物は長旅の影響(主に襲撃から逃げる際に盾にしたせい)ですっかりダメになってしまったからね…仕方ないさ でもこのリュートも良い物だから気に入っているのさ♪ |
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消耗品を補充しに購買部へ 新商品など目新しい物に弱く、あちこち見て回ったり無駄に衝動買いしたがるナツキをルーノが抑えつつ買い物 ナツキ:なぁルーノ、あれ買おうぜ! ルーノ:駄目だよ。それは今必要ないだろう? 簡易カメラを見てナツキが立ち止まる これを買った時の事を思い出して首を傾げ ナツキ:そういや、カメラ買うのは反対しなかったよな ルーノ:きちんと計画した買い物だからね。何日も購買部に通ってカメラに張り付いて、 貯金までされては反対できないよ 物珍しいだけですぐ飽きるかと思ったが、案外気に入っているようだね ナツキ:おう!ルーノも何かやってみろって、ほらあれとか! ルーノ:だから無駄な買い物はしないと何度言えば… |
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~ リザルトノベル ~ |
●『杜郷・唯月(もりさと・いづき)』『泉世・瞬(みなせ・まどか)』 瞬は購買部を見て回っていると本棚にある一冊の本に目が釘付けになった。 『ロメオとギュレッタ』――それは唯月と初めて一緒に演じた舞台。 思いがけなく子供の頃の宝物を発見したような懐かしさを感じ、本棚から取り出した。 (いづの買い物についてきてみたけど、ずっと一緒じゃ選びにくいかなぁ~? なーんて考えてたら、こんな発見があるなんて、ね。……それにしても台本まで売ってるとは思わなかったなぁ) 瞬は口元を綻ばせ、ページをぱらぱらと捲りながら時間を手繰り寄せるように反芻する。随分と濃い時間だったのに、まだ唯月と出会って一年も満たないことに驚く。 瞬が本売場で台本を懐かしんでいる間、唯月はメイク売場をうろうろと歩き回っていた。 「メイク道具は色々あるので悩ましいですね……これとこれならどれが良いんでしょうか……」 唯月はメイク売場の所で化粧品を手にとって見比べたり、試供品を自分の肌に塗って色味を確かめたりしていた。 (これは発色がとてもいいですけど、……瞬さんの肌の色には合わない気が……こちらは艶があって色味もいい感じです……) 父の仕事であり、瞬にも近づけそうなスタイリストに興味を持ったものの、未だにメイク道具を揃えられていなかった。 画材道具もそうであるが、メイク道具を本格的に揃えようと思えばお金もかかる。評判のコスメもいいが、まずは肌の調子を整える為の基礎化粧品も必需品だ。 (特殊メイクも勉強したいんですが、舞台映えするような自然なメイクが可能な道具とかも……試せるように揃えたいところです……) 見ていると欲しい物がたくさん増えていって困るけれど、それはとても幸せな悩みだった。 思えば唯月は幼い頃から息を詰めて父がメイクを施すのを飽きることなくじっと眺めていた。メイクボックスはいつもお洒落でカラフルなメイク道具が一杯詰まっていて、そこから父の手が魔法のように人を美しくしていく姿を見ているとワクワクしたものだった。 瞬から聞いた出会いの話は、父との思い出でもある。 父と同じ仕事を――メイクを学びたい。 (瞬さんのお力に少しでもなれたら……その為にもたくさん勉強したいんです……!) 前はぼんやりと瞬に寄り添って力になりたいと考えていたが、どうすべきかはっきりと分からなかった。今は彼女の中で具体的な形となり新たな目標となって胸の中で色付いている。 迷った末にいくつか購入すると、ブラブラとウィンドウショッピングしていた瞬に声を掛け、二人で購買部を出る。 「目的のものは、あった~?」 「はいっ」 瞬の言葉に笑顔で頷き、唯月は大事そうに紙袋を抱きしめるのだった。 ●『リュシアン・アベール』『リュネット・アベール』 「……僕、そんなに顔に出てる、かな」 リュネットが表情を確かめるように頬に手を当てて尋ねると、リュシアンは困ったように笑っていた。 リュシアンとトランプで遊んでいたが、何度やっても彼に勝つことができず、「……他のゲームなら勝てるもん」とついムキになって言ってしまう程にリュシアンは強かった。 「姉さんは、手札の良し悪しがすぐ顔に出るから分かりやすいんだよ。あからさまに顔を輝かせたり、しかめ面したり」 (……僕としては姉さんの百面相を眺めるのも好きだけど、それは内緒) むぅと考え込んだリュネットを横目で眺めながら薄らと口元に微笑が滲んでいた。 「購買部で扱ってるのは……チェスにオセロ、花札か。姉さんはどれがいい?」 棚に並べられている室内ゲームを一通り見ると、リュシアンは振り返った。 「チェス、オセロ、……花、札?」 リュネットは聞き慣れない言葉を耳にしたとでも言うように繰り返す。 「僕……どれも知らない」 「じゃあ、花札にしようか。僕はチェスやオセロに覚えがあるけど、花札は僕も知らないんだ。一緒にルールを覚える所から始めるし、これなら対等だよね?」 「……ありがとう。頑張る、ね」 リュネットは彼の優しさが嬉しくて、花が綻ぶような笑みを浮かべる。 どのゲームもリュネットにとっては知らないものばかり。どれで遊んでも負けてしまうだろうと思っていたのに気付き、リュシアンは自分も知らないゲームを選んでくれたのだ。 今ならあの時からずっとやってみたいと思っていたことを言えるかもしれない。 「……あのね、シア」 リュネットはおずおずと口を開いた。 「今度はね、罰ゲームっていう程でもない、けど、……お願いがあるの。もし、僕が勝ったら……」 珍しい姉のお願いにリュシアンは何だろうと首を傾げつつ、自分にできることなら叶えてあげたいなとすら思っていた――次の言葉を聞くまでは。 「……また、女の子の服、来て欲しい」 「へ?」 思わぬ姉の言葉にリュシアンは固まる。彼の脳裏に女装コンテストの悪夢が蘇った。 「いや、待って待ってさすがに嫌だよ!? あの時は玉砕する気で臨んだけど! 本当にあの格好はもう……!」 「だ、だって……! この前のシア、凄く可愛かったのに……僕、どうして写真に残さなかったんだろ、って……」 今までの穏やかな態度が崩れ去り、リュシアンは焦ったように口早に話すが、リュネットも負けずに熱心に語る。 「それに、シアなら絶対、何でも似合うよ……!」 「う……」 上目遣いで目を輝かせて話すリュネットにリュシアンはたじたじだ。彼は目を片手で覆いながら天を仰いだ。 「……分かったよ。その代わり、僕が勝ったら姉さんにも僕が選んだ服を着てもらうからね……!」 「うん……シア、僕も、今度は、負けない、から、ね」 果たして勝負の女神はどちらに微笑むだろうか。 ●『リコリス・ラディアータ』『トール・フォルクス』 「店員さんに会うのも久しぶりかも」 「そうだな。色々と指令を受けたけど、少しは強くなってるかな、俺たち?」 リコリスとトールは防具の新調と、古い装備やダンジョンで手に入れたアイテムを買い取ってもらいに購買部へと足を運んでいた。 「今ではダンジョンアイテムの買い取りと日用品を買うくらいしか用事がなくなっちゃったわね。もう少し、購買部に実力者用の装備が増えたらいいのに」 買い取りをしてもらう間、トールと話していたリコリスだが、その矛先は段々店員へと向いていく。 「あとついでだから言わせてもらうけど、持ち込んだアイテムの買い取り、これまとめて売れないのかしら? わざわざ一個ずつ売るのすっごく面倒くさいのよね」 店員はヒートアップしていくリコリスの喋りに耳を傾け相槌を打ち、神妙な顔で丁寧に対応していた。さすがは接客のプロだ。 とはいえ、何時までも感心して見ているわけにもいかず急いでリコリスを止めに入る。 「リコっ! ステイ、ステイ!」 「だいたい……むぐっ」 トールは慌ててリコの口を塞ぐ。 「気持ちは分かるが、ちょっと落ち着け。確かに購買部のシステムについては俺も同意見だけど店員に言っても仕方ないだろう」 リコリスをトールは窘めなんとか落ち着かせた。リコリスもようやく頭が冷えたのか気まずげに謝罪した。 「……ごめんなさい、少々熱が入りすぎちゃったみたい」 「いえ、お客様の言うことももっともです。本日は貴重なご意見をありがとうございました」 店員は慣れているのかにっこりと笑顔を浮かべる。 「ほら、気を取り直して他のものも見てみよう」 気まずい空気を変えるようにトールがリコリスを手招きする。 「この帽子とかいいんじゃないか?」 トールが手に取ったのはフリルの入った可愛らしい帽子だった。 「リコに似合いそうだし、何より回避力が上がりそうなのがリコにぴったりだ!」 トールに言われるがままリコリスは帽子を試着し、 「に、似合う?」 少し照れたように尋ねるリコリスにトールは見惚れながらも頷く。 「……それならこれにしようかな」 照れ隠しのように帽子を深く被り、リコリスは店内に飾られている鏡の前に行くと自分の姿を確かめる。 リコリスは機嫌良く購買部を見て回っている間に、自分も体に合いそうな金属鎧を見繕う。 (店員の手前ああ言ったけど、実は俺もリコの言ってたまとめ売りとかの他にも、購買部にはもっと色々やって欲しいよな……差し当たってはアイテムの自作だな、やっぱり) 一時はどうなるかと思ったが、最終的にはいい買い物ができた二人は満足して購買部を後にするのだった。 ●『藤谷・弦一』『無・名(ウーミン)』 「大将アンタこんなとこで何してんだ?」 無名はパートナーである藤谷が似合わぬ女性向けの雑貨売場にいることに驚き、口元を歪め揶揄うように声を掛けた。 藤谷の無骨な手に持っているのは、優しい風合いを感じさせる白いコットン紙にレトロな赤と青の花をあしらったレターセットだ。 「これか? 妻への手紙のためだ」 「それ奥さんに?」 「そうだ。同じ浄化師だが指令の都合上基本顔を合わせることはないからな。定期的にやりとりをしている」 そう語る藤谷はいつもの無愛想さの中に、どこか穏やかな雰囲気を纏っている。 「大将、アンタ奥さん思いだな。そんなマメだとは思わなかったぜ」 「普通だろう? それに一日何があったかぐらいだしな」 (「愛してる」はいつも入れている挨拶みたいなものだ。……そこまで語る必要はないな) 「お前こそここに何でいるんだ?」 「俺は……煙草を切らしてるからさ」 無名は手持無沙汰な様子で肩を竦めた。 「……奥さんとは会わないままでいいのかい」 人に興味がなさそうな癖して、妙なところでこちらに踏み込んでくる。 「寮内に入るなり、家を買うなりもできるが、そういうことをしても無意味だからな」 無名はそれ以上何も言わなかった。だが、一瞬侮蔑のような冷えた目でこちらを一瞥し、すぐに興味を失ったかのように、煙草を買ってくると言って去ってしまった。 (何を考えているか分からない男だ……) レターセットを持ってカウンターに向かっていると、淡い香水の匂いが蜘蛛の糸のようにひいて足を止める。 ガラス越しに一際目に付いたのは、クリスタルを模した洒脱なデザインボトルだった。ボトルの手前にあったムエットで確かめると先程香ったもので間違いない。 不意に彼女――エルピスのことを想う。 (エルピス、無茶はするなよ) 無意識に胸元から指輪を取り出し、祈るようにキスを落とした。 例え運命ではなくとも君を想っている。 「口寂しいのは良くないね……ネックレスか」 無名の目に飛び込んだのはトルソーに飾られたネックレスだった。ありふれたどこにでもあるネックレス。それなのに、知らない内に自分の片目を覆う布に触れていた。 (あの女は、戦いが嫌いだとぬかした。浄化師になることなく死ねばよかったんだよ) 悪態を吐いても頭から女の面影が消えない。歯がゆさがじりじりと胸の奥に食い込んだ。 無名は荒れる感情とは裏腹にそっとネックレスを取る。 「……渡せもしねぇのに、未練がましい」 (奪い取ってやるよ、テメェがろくでもねぇ相手と契約してるならな) 自嘲するように溜息を吐くと、手にあるものを戻した。無名はそのまま置き去りにし、去っていく。それでも頭の片隅に残る女の影は離れることはなかった。 ●『ラウル・イースト』『ララエル・エリーゼ』 「ララ、この化粧品一式に興味があるの?」 「だってほら、この前の女装コンテストの時のラウルがすごくキレイだったんだもの」 「この前の女装コンテストは忘れてくれよ……」 頬を薔薇色に染めながらララエルはうっとりと溜息をつくと、ラウルは項垂れた。 ララエルにとっては輝かしい思い出であるようだが、ラウルにとっては一刻も早く忘れたい出来事だ。 「あのね、ラウル! メイク道具を使って、私もキレイになりたいなと想ったの!」 ララエルは期待を覗かせた瞳でラウルを見たが、彼は素っ気ない態度のまま口を開いた。 「やめておいた方が良いよ、大人の女性ならともかく君は子供なんだからまだ早……」 「そこまで言うことないじゃないですか……」 ラウルにとって自分は子どもなのだ。その事実が胸に棘が刺さったように痛い。 「そんなこと言うラウルなんて嫌い!」 彼の傷ついた顔が目に入ってララエルはすぐに後悔する。 それでもこれ以上ララエルはこの場にいられなかった。ラウルの顔を見るのが怖くて、もっとひどいこと言ってしまいそうな自分が怖くて逃げるように駆けだした。 時折、ララエルは悪夢を見る――ボロ雑巾のように捨てられ、土に埋まる人影――自分の姿を。 だからこそ、ラウルにはキレイになった自分の姿を見て欲しかった。 「どこへ行くのさ、ララエル!」 慌てて手を伸ばすがその手は振り払われ、ラウルは立ち尽くす。 大切にしたい筈なのに一緒にいたいだけなのに。それだけなのに。いつも自分達は傷つけあってしまう。 ラウルは後悔した表情を浮かべ、すぐさま駆けだした。 包装用紙で包まれた化粧品一式を持ってララエルを探して彼女がいそうな場所を駆けずり回った。その末にエントランスの片隅で人に見られないように泣いている姿を見て胸が痛むと同時に昔のことをラウルは思い出していた。 ――そうだ。いつだって泣いている君を僕が笑顔にしてあげたかった。 「ララ、ようやく見つけた……さっきはごめん。これ……」 「……ラウル、これ……?」 ララエルの元へと駆け寄ると荒い息のまま言葉を紡ぐ。ラウルはそっと手に持っていた物を渡した。 「本当に私が貰っても良いんですか?」 ララエルは渡された物をぎゅっと胸元で抱きしめると、今にも泣きそうな顔で微笑んだ。 「ありがとうございます! えへへ、嬉しい……さっきは嫌いだなんていってごめんなさい……」 ララエルが無邪気な笑顔を浮かべるのを見てラウルも安堵したように口元を緩める。 すぐにラウルは真剣な表情でララエルに言い聞かせる。 「でもねララ、こんなもの使わなくても君は十分綺麗だよ」 突然躊躇もなく言われた言葉にララエルは耳朶までリンゴのように真っ赤になった。 ラウルはこれ以上可愛くなられたら誰にも見せたくないなと思わずにはいられなかった。 ●『アユカ・セイロウ』『花咲・楓(はなさき・かえで)』 「道具類もいろいろあるんだね~、見てるだけでも面白いね」 荷物持ちを頼んだ楓と一緒に日用品の補充のため買い物に来たアユカだが、他の商品にも興味を引かれた様子であちらこちら見て回っていた。 「教団にはいろんな人がいるから、きっと趣味も多種多様なんだね。かーくんみたいに無趣味な人もいるだろうけど」 「無趣味で悪かったですね」 「ねえ、せっかくだから何かを始めてみない? はまるかどうかは別にしても、いいきっかけだし、ね?」 「……まあ、あなたの言うことも一理あります。何か購入しましょうか」 見上げるように話しかけられ、楓は即座に頷きそうになるのを耐える。誤魔化すように別の話題を口にした。 「そういえば、この間黙って高級調理具セットを買っていましたね」 「高級調理器具のことばれてる……! ほら、『いいお菓子を作るにはいい道具から!』でしょ?」 「大きな買い物の時は一言言えとあれほど……」 楓の苦言にアユカは慌てて弁解を始める。 買い物かごには石鹸やペンなどで荷物持ちは必要だったのかと疑問が浮かんだが、アユカと買い物するのが楽しくて、楓はそれ以上気にすることはなかった。 アユカは楓の説教から逃げるように「お会計に行かなくちゃ」と駆けだしてしまい、楓は手持ち無沙汰になる。 折角だしこれを機に何か始めてみるかと、女性店員に声を掛ける。 「すみません、趣味の品で一番売れているものは何ですか?」 「はい、趣味の品ではありませんが、指令でよく使われるピッキングツールが人気ですね。何かお探しですか?」 「そうですか……私も最近何か始めようと思っているのですが、何かおすすめの品はありますか?」 その後、いくつか質問され、店員は一冊の本を楓に勧めた。 「それなら植物図鑑がいいと思いますよ。植物の育て方が載っていますので寮内でも育てられる花や観葉植物について知ることができます。それにこの図鑑はイラストが細かく書かれているので見ているだけでも面白いですよ」 そう言われてパラパラと捲ると、カメラで撮ったような詳細な植物の絵が載っていた。 「かーくん! ごめん、待たせちゃ……っ」 ちょうど会計を終えて戻ってきたアユカが女性店員と楓が楽しそうに話しているのを見て、足を止める。 どうしてだろう、なんだか胸がもやもやする。 アユカは立ち尽くしていると、楓がこちらに気づき駆け寄ってきた。 「買い物終わったんですね、アユカさん。荷物持ちますよ」 「で、でも、店員さんとお話してたんじゃないの?」 「ああ、趣味の一つでも持とうかとおすすめを聞いてたんです」 「そ、そっかあ……そうだったんだね」 アユカはどうして自分がこんなに安心しているのか分からずにいるのだった。 ●『空詩・雲羽』『ライラ・フレイア』 「ふんふんふ~ん♪」 最近の雲羽はエントランスの片隅で吟じるのに一等はまっている。今日は特別に機嫌が良さそうだ。 歩きながら思いついた音階を鼻の先で器用に唄って、音を編み上げていく。 「あ、購買部見ていこうか?」 雲羽は急に立ち止まると、隣を歩くライラの方を見た。 「いいけど……無駄遣いはやめてよ?」 「ははは、もとより財布管理は君担当じゃないか♪」 雲羽はお金に全く頓着した様子もなく、軽い足取りで購買部に向かう。 その後ろ姿を追いながら、ライラは自分がしっかりせねばと溜息を吐くのだった。 「わざわざここに来なくとも新商品が出るなら、広告くらい配られると思うんだけど……」 「何言ってるんだい? 楽器は自分で弾いてみないと良さが分からないじゃないか」 ライラの呟きを受け流し、雲羽は楽器売場を歩いて回り、実際に楽器を弾いて遊んでいた。 見た限り新しい楽器は出ていないようだし、購買部には雲羽が満足する程、楽器の種類は多くない。 「いやあキャンペーンで貰った和太鼓とかが中々良い音が出るからさぁ。こっちにもニホン文化の結晶である太鼓とか木の横笛とかさ、もっと出ないかな~って思って」 雲羽がやけに具体的な例を挙げながら店員の方をチラ見しながら言っているのにライラは気づいていない。 (個人的には情熱的な方のロックギターはうるさくて慣れないけど、和太鼓のあの独特な音の響きは好きな方だった。雲さんじゃないけど、もっと種類を増やせばいいのに……趣味の品だから優先順位が低いのかな) 雲羽が奏でる音を聞きながらそんなことを考え込んでいると、 「勿論オカリナとかフルートとか? ニホン以外の音楽文化の結晶も入荷してくれても良いんだけどさ~?」 雲羽はエントランスで吟じている時のような大きい声にわざとらしい程、店員をチラチラ見ている。 店員はその視線をスルーすることもできず、営業スマイルが引き攣っていた。 慌てて困っている店員から気を逸らす為に、ライラは強引に話題を変える。 「そ、そういえば雲さん! 愛用のリュート、ここで買い直したんだったよね?」 「……ん? ああ、そうさ♪」 上手く興味を引けたようで雲羽は楽しげに話し始めた。 「依然使っていた物は長旅の影響ですっかりダメになったからね……仕方ないさ」 「そっか、じゃあ良い楽器が入るように店員さんにちゃんと伝えないとね」 ライラはなんとか雲羽を言いくるめ、雲羽の代わりに店員に頭を下げる。 この後、店員から「入荷できるかは上との相談になりますが、欲しい楽器があるなら要望書を出しませんか」と勧められたところ、雲羽があれもこれもと欲張ってしまい、要望書は数枚どころではなくなる。再び店員を困らせ、また謝る羽目になることをまだライラは知る由もないのだった。 ●『ルーノ・クロード』『ナツキ・ヤクト』 「なあルーノ、あれ買おうぜ!」 「駄目だよ。それは今必要ないだろう」 ナツキは新商品発売と赤い文字で大きく書かれたPOP広告に尻尾を大きく揺らしながら、指を指した。 (無駄な物は買わないと言っているのに……やはり買い物は任せておけないな) ルーノはナツキが衝動買いしそうになる度に押さえに回っていた。 消耗品を補充しに購買部にやってきた二人だが、ナツキは新商品などの目新しい物に弱く、あちこちへと寄り道しようとする。 不意に簡易カメラのある前でナツキが足を止める。 「そういや、カメラ買うのは反対しなかったよな」 ナツキは不思議そうに首を傾げながらルーノに尋ねた。 「きちんと計画した買い物だからね。何日も購買部に通ってカメラに張り付いて、貯金までされては反対できないよ」 仕方ないといった風にルーノは肩を竦めた。 「物珍しいだけですぐ飽きるかと思ったが、案外気に入っているようだね」 「おう! ルーノも何かやってみろって、ほらあれとか!」 ナツキが指さしたのはダーツボードだった。 「あれが部屋にあったら、カッコいいぜ! 室内でも遊べるし、いいだろ?」 「だから無駄な買い物をしないと何度言えば……」 「新しい物を気にするなって方が無理だって! 新商品とか今話題の商品とか聞いたら気になるだろ!」 ルーノの呆れを滲ませた小言と溜息をスルーし、ナツキは必死で言い訳する。 (それに無駄なものかなんて買ってみないと分かんないしなぁ) 実際ナツキもカメラを買った当初はキレイな景色を残しておけたらなぁという気持ちだったが、今ではもっと上手く撮りたいと思うようになった。撮った写真を何気なくルーノに見せたら意外と反応が良かったのも嬉しかった。それがカメラにはまる切っ掛けだった気がする。 今は写真を撮るのが楽しくて仕方ない。 (ルーノもたまには趣味の物でも買えばいいのに……) 完全に新商品に目を奪われているナツキにそっとルーノは溜息をついた。今の内に買い物を済ませてしまおうと算段する。 カメラを目にした時、ナツキが自分に写真を見せた時のことを思い出していた。 (技術はともかくナツキの見る世界を写し取った彼の写真はなかなか面白い) 自分にはない視点で切り取られた世界。彼にはこう見えているのかと驚かされる事もあって、新鮮だ。 ルーノは会計を済ませている間に店員にアルバムの入荷をリクエストしておいた。ナツキは新商品に見に行ってしまったので気づいていないだろう。 (入荷されたら買いに来よう。……私がこんな物を買ったら、ナツキは驚くだろうか) 購買部にアルバムが入荷されるのを心待ちにしながら、ルーノは穏やかに口元を緩めるのだった。
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*** 活躍者 *** |
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該当者なし |
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[6] 杜郷・唯月 2018/10/05-00:00
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[5] 藤谷・弦一 2018/10/04-22:56
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[4] ルーノ・クロード 2018/10/04-21:36
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[3] 空詩・雲羽 2018/10/04-18:35
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[2] リコリス・ラディアータ 2018/10/04-16:29
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