~ プロローグ ~ |
「アーブル、この子が今日からお前の妹になるんだよ」 |
~ 解説 ~ |
■場所:教皇国家アークソサエティ首都エルドラド・ペタジット子爵邸 |
~ ゲームマスターより ~ |
GM春川ミナです。今回はほのぼのです。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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目標 喜んでもらえるようなプレゼントを探す …とは言ってもどうしよう お菓子はだめなのよね? ううん…あのくらいの年の子が喜びそうな…ううん… え?私がいいと思ったもの?(戸惑い …その、ぬいぐるみ、とか あまり外に出ないって聞いたから 友達になれるような、ずっと一緒にいれるような ぬいぐるみ… で、でも、本当に私なんかが選んでいいのかな (自信なさげ) ありきたりすぎるとか そもそもあまり興味がないとか… (メルの言葉を聞いて) ……う、わ、わかった 結果 市場でくまのぬいぐるみを購入 白のワンピースを着ており、着脱可能 冬「これ、脱ぎ着できるの」 メ「もう少し時間があればもっと洋服も作れましたが… それはまた、いつかの機会に!」 |
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【目的】 ティージュにお金じゃ買えないものをあげる 【行動】 花を探しに行く その際『植物図鑑』と【植物学】を駆使して探す 集めた花を花冠にする 立地上可能ならアーブルに建物の2階を借りて高いところから花をまくのを手伝う 【心情】 ミカゲちゃんは花をあげたいの? 秋は一杯咲くしいいと思うよ 一緒に探しに行こう! じゃあ集めたら花冠を作ろう 大丈夫、作り方教えてあげるから 今の季節ならダリア、カルーナ、花月、パンジー、ビオラ、ケイトウやガウラ、コスモスなんかも咲いてるよね 楽しみだね さぁ、ミカゲちゃん 花冠あげるんでしょ? 行っておいで 花吹雪は僕がやるから きっとミカゲちゃんも見たかったでしょ? 綺麗な花吹雪になるといいね(微笑み |
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喜んでもらえるもの、頑張って探さなくっちゃ 子爵に挨拶をした後 兄妹の元へ こんにちは アーブルさん、ティージュさん 今日はお招き頂きまして ありがとうございます ぺこりと頭をさげる お二人も 時期がきたら浄化師になられるとか… 僕たちも 浄化師になったばかりなんです いつか 一緒に仕事ができたらいいですね 姉のような少女の軽口に真っ赤 セラ!そんなこと言わなくたって… …あ、そうだった 慌ててオルゴールのついた小物入れを差し出す セラと…姉と一緒に選んだんです 気に入ってもらえるといいんですが 嫌がられなければ ほっとした笑顔に 僕も不安がないと言えば嘘になるけれど セラがいるから平気です ティージュさんも アーブルさんがいればきっと大丈夫 |
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~ リザルトノベル ~ |
「ううん……どうしようかしら」 腕を組み、形の良い顎に片手を当てながら『相楽・冬子』は悩んでいる。 ここは教皇国家アークソサエティ、首都エルドラドにある商店街。色々な物が並び、色々な人で賑わっている。 「喜んでもらえるようなプレゼント……。ううん……あの年頃の子は一体何を欲しがるのかしら」 放っておいたら商店街の端まで行きそうな冬子だが、それに待ったをかける人物が居た。『メルツェル・アイン』だ。 「ちょっとトーコ、お待ちなさい。そちらは紳士服のお店しかありませんわよ。あら……? あれは」 メルツェルの視線を辿る冬子だが、その先に教団の制服を着た男女を視界に収めた。何やら騒がしくしているのでトラブルがあったのかも知れない。冬子とメルツェルはお互い目を合わせて頷くとそちらに向かった。 ◆ 「おかしいなぁ。確かに購買で買ったんだけれど」 「ご主人、もっとよく探してみるにゃ!」 ゴソゴソと荷物を漁っている男の子は『ラシャ・アイオライト』。その周りをクルクルと回っている活発そうな女の子は『ミカゲ・ユウヤ』だ。 花屋の横で騒いでいる為によく目立つ。通行人が何事かと視線を向けては、通り過ぎていく。 「そういえば何を探しているのにゃ?」 はたと気付いたようにミカゲが問いかけるが、ラシャはそれを今更聞くのかと言った様子で苦笑して答えた。 「植物図鑑だよ。ミカゲがたくさんプレゼントをあげたいって言ってただろう? だからそれを一纏めにする方法を思いついたんだ」 「にゃ? にゃ~……? にゃ!」 ラシャの言葉にミカゲはしばらくうんうんと首を捻って考えていたが、思い出したように手の平をポンと叩いた。 「うん。思い出してくれて良かった……」 ホッと安堵するラシャだったが、そこに声がかかる。 「アナタ方、どうなさったんですの?」 メルツェルだ。腕を組み、自信が溢れる表情で仁王立ちしている。 「あ、えっと……?」 いきなり声をかけられて驚いたのか、ミカゲがラシャの背中に隠れてフシューフシューと威嚇する様な声を出し、ラシャはその様子に戸惑い、メルツェルとミカゲの顔を交互にみやった。 「あの……ごめんなさい。驚かせてしまって……。何かお困りのようでしたから……。私は相楽・冬子と申します。こちらはメルツェル・アイン……。もしかしてあなた方もペタジット子爵の……?」 冬子が静かな声で語りかける。それは二人を落ち着かせる効果もあったらしく、ラシャはゆっくりと立ち上がると一礼をした。 「失礼いたしました。僕はラシャ・アイオライト、こっちはミカゲ・ユウヤです。はい、僕達もペタジット子爵のお屋敷に行く予定なんですが……」 「にゃ! 植物図鑑が無いのにゃ!」 ラシャの言葉を遮り、ミカゲがふんぞり返る。メルツェルの真似をして腕を組み、仁王立ちしたパートナーの姿にその場の三人は苦笑する。 「植物図鑑が無い……。もしかして部屋にお忘れじゃあないのかしら」 メルツェルはラシャの広げられた荷物をざっと見て、思いついた事を述べる。 「あ! そういえば……」 その言葉にラシャは何か気付いたようだ。 「そうですわね。恐らくお部屋で着替える途中に荷物に入れ忘れたのでございましょう」 「あー……。忘れた物はしょうがないですね。ありがとうございます、メルツェルさん。幸い僕は植物学の知識が少しありますので、それで花をいくつか見繕ってみます」 「あら? 植物学と言えば冬子も若干かじっていますのよ。ね、トーコ?」 いきなり話を振られ、少しだけ挙動不審になる冬子だったが、ゆっくりと頷いた。 「なにか……困った事があれば、いつでも言って下さい。力になれるかも知れませんから……」 「ありがとうございます。君達もまだプレゼントは購入していないみたいですが、もし僕達の力が……ってミカゲ、それどこから持ってきたの!?」 冬子と話していたラシャだったが、ミカゲが手に持っている物を見てあんぐりと大口を開ける。その手にはクマの顔をデフォルメしたような可愛らしい棒付きキャンディーが握られていた。 「貰った! そこ!」 ミカゲは満面の笑みで駄菓子屋を指差す。人の良さそうなお婆さんがニコニコと手を振っていた。 「……お礼言いに行こうか、ミカゲ。すみません、冬子さん、メルツェルさん、ちょっと行ってきますね」 「構いませんわ。ワタクシ達もプレゼントを選びに行きますから。ではごきけんよう」 ラシャがペコリと頭を下げ、メルツェルも返す。可愛らしい男女が駄菓子屋のお婆さんの下にお礼を言いに行くのを見送るが、冬子の何か考えている様子にふと気付いた。 「どうなさいましたの?」 「え……。ううん……。あのくらいの年の子が喜びそうな物って、やっぱりお菓子……ううん。ダメね。……お友達?」 「冬子が良いと思った物はオトモダチですのね」 「え、と……。ううん、いえ……うん」 メルツェルの質問に曖昧な答えを返し、そのまま再び思案に暮れる冬子。 「あまり外に出られない女の子って聞いているから……ずっと一緒に居られるような、友達になれるようなぬいぐるみ……。あ、でも……私なんかが選んでも……そもそもあまり興味が無かったら……」 ゆっくりと言葉を選んで吐く冬子だったが、語尾は段々小さくなっていく。だが、メルツェルは冬子の手をキュッと握り、声のトーンを落として優しく語りかけた。 「トーコ、しっかりしなさいな。アナタが真剣に悩んで選んだ物ですわ。そこには確かに気持ちが篭っていますの。人を喜ばせたいと思うチカラは何物にも勝る想いとなりますのよ」 冬子はパートナーの真剣な言葉に顔を上げ、その瞳が視界に入る。メルツェルの金色の瞳は自信に満ち溢れてキラキラと輝いていた。 「ありがとう……」 「お気になさらず、ですわ! で、冬子が良いと思った物はなんですの?」 「ぬいぐるみ……ううん……けれど……」 冬子の視線の先にはぬいぐるみや人形が所狭しと並べられているファンシーショップがあった。 「まぁ! 素敵ですわね! ……? 何か不安でも?」 「私が選んだ物で喜んでくれる……かしら」 冬子の自信なさげな声にメルツェルは大きな溜息を吐く。そして人差し指をピシリと冬子の鼻先に突きつけて言い放った。 「適当に選ぶわけでは無いのでしょう? 良いですか? アナタが彼女の気持ちを考えて、それが素敵だと思ったのなら、それは素敵なプレゼントになるのです! 良いですね!? 返事は!」 「は、はい!」 メルツェルの勢いに押され、冬子は咄嗟に是と答えてしまう。だが、その顔はどこか嬉しそうでもあった。 「じゃ、早速探しに行きますわよ」 メルツェルは冬子の手にそっと自分の手を置くとファンシーショップに向かった。 ◆ 「用意にお時間が必要なプレゼントでしたらどうぞこちらの部屋をお使い下さい」 メイドに連れられ、ラシャとミカゲは絨毯の敷かれた廊下を歩く。そして小さめの客間に通された。どうやら普段は使われていない部屋の様だが掃除は行き届いている。 「にゃー! ぼよんぼよんにゃー!」 ミカゲがフカフカのソファに飛び込むと、跳ねて遊んでいる。それを見てラシャは慌てて止めた。 「ミカゲ、駄目だよ。すっごく高そうだし」 そしてチラリとメイドを見ると頬に手を当てて苦笑していた。 「構いませんよ。それはオーク材で出来ていますから少々の事では壊れませんし。何よりペタジット家はお客様に楽しんで貰える事を是としています。それでは何かございましたら声をおかけ下さい。時間になれば御呼びに参ります」 「は、はい。ありがとうございます」 ラシャは頭を下げると、メイドは優雅に一礼をし、静かにドアを開けて出て行った。 「さて、じゃあ買ってきた花で花冠を作ろうか。ティージュさんは白色の髪だって聞いているから色の濃いお花が似合うと思うよ。例えばこれ、ダリア、コスモス、ケイトウ……淡い色のコスモスは印象を柔らかくしてくれるね。カリーナは、旅立ちって花言葉もあるから花冠に使うのは止めて花びらを撒いてあげようか。じゃあミカゲ、教えるから一緒に編んでみよう?」 ラシャは麻袋から花を取り出し、机に並べる。 「分かったにゃ! でもエルドラドには自由に咲いているお花さん達が少ないのにゃ……」 ミカゲがしょんぼりと肩を落とす。 「仕方ないよ。ソレイユ地区に行けば沢山咲いてそうだけれど。でも花屋さんで買えたし、花びらのシャワーにする為って言ったら売り物にならない花も貰えたし、ミカゲが案を出してくれたおかげだよ」 「えへへ、そっかにゃ? じゃあはりきって編むにゃ!」 褒められた事で照れながらニコリと笑顔で返すミカゲ。それを見てラシャも微笑むと花をゆっくりと編み始めた。 ◆ 「エクソシストの皆さん! ようこそお越し下さいました!」 精悍な顔つきをした壮年の男性が穏やかだが腹に響くような力強い声で声をあげる。ペタジット子爵だ。 「今日は妹、ティージュの為にお集まりくださって真にありがとうございます。是非楽しんでいって貰えれば幸いです。また、教団の先輩として御教示頂ければと思います!」 その横に居た少年も父親に負けじと声をあげる。ペタジット子爵の息子、アーブルだ。 そして更に横にはたおやかな少女が儚げな笑顔を浮かべて立っている。今日の主役、ティージュだ。彼女はゆっくりとスカートの端をつまみカーテシーと言われる礼をすると同時にアーブルが椅子を勧めた。 やはりまだ長時間は立っていられない様だが、それでも心配するアーブルに対して小声で大丈夫と言っているのが聞こえた。 「さて、アーブルが何やら君達の手を借りてティージュを喜ばせようとしているみたいだ。最初に挨拶をしてくれるのは誰かな?」 ペタジット子爵が集まったエクソシスト達に声をかける。 「では僕が」 黒髪の少年がスッと手を上げる。 「君は?」 「はい。『リューイ・ウィンダリア』と申します。こちらはパートナーの『セシリア・ブルー』。本日はお招き頂きありがとうございます」 リューイはペタジット子爵の前まで進むと片膝をついて頭を垂れる。 「ハハハ、そんなにかしこまる必要は無いよ。今日は内輪のパーティだ。あまり貴族だとか立場だとか気にしないで楽しんでいってくれ。ああ、勿論敬語も特には必要ない」 気付くとペタジット子爵も片膝をついてリューイの肩に手を置いている。驚いて顔を上げるリューイだったが、子爵の瞳はとても優しい光を湛えていた。 「あり、がとうございます」 「リューイ、いつまでも呆けてちゃ駄目よ。ホラ、立って」 セシリアが声をかけ、ようやくリューイも体を起こす。 「はじめまして、ペタジット子爵。先程リューイに紹介されたセシリアと申します。アーブル様とティージュ様もよろしくお願いします」 そう言うと彼女はスカートの端を摘まみ、お辞儀をする。 (……余程魔力に恵まれた家系なのかしら……。大切な子供を教団に捧げるなんて。子爵もお辛いでしょうに。……リューイも境遇が似ているけれど大丈夫かしら) 内心の声が表情に出ないように気をつけながらセシリアはリューイを見る。だが、当の本人は全く気付いていないようだ。少しだけ安堵したセシリアは教団について話す事にした。 「教団には色々な方々がいらっしゃいますよ。それに遠い異国の話なども沢山聞けます。とても楽しいですよ」 「ええ、お二人も時期が来たら浄化師になられるとか。僕達も浄化師になったばかりなんです。いつか一緒に仕事ができる日を楽しみにしています」 リューイがセシリアの言葉を引き継ぎ、アーブルとティージュを交互に見やる。 「指令も沢山ありますが、全部が戦闘と言うわけではないんですよ。中には迷子を捜したり、落し物を届けたり、変わったものとしてはデートスポットの下見、とか……」 セシリアの話す姿にリューイは興味深そうに聞き入っている。それを見た彼女は話を一旦止めて柔らかく微笑みかけると、彼はハッと何かに気付いたように顔を背けた。だが、耳が赤くなっている所を見ると、照れているのだろう。 「リューイ、デートスポットと聞いて顔が真っ赤よ? 何を想像したのかしら」 「セラ! 別に僕は何も!」 あたふたとするリューイの様子にその場にいた人々が笑みを零す。それは少年よりもっと小さな少女が姉に似た雰囲気を醸し出す事によって作られ、周囲の人達から向けられる感情は好意的であることが見て取れた。 「ホラ、贈り物を渡さなきゃ」 「あ、ああ。そうだった……。これ、セラと……姉と一緒に選んだんです。気に入ってもらえれば良いんですが」 セシリアに促され、リューイは丁寧にラッピングされたプレゼントを座っているティージュに差し出す。 「ありがとうございます! 開封してもよろしいでしょうか?」 瞳をキラキラさせているティージュにリューイとセシリア、隣に居たアーブルも頷く。 「……綺麗……!」 それは両の手の平に収まるくらいの小箱だった。白く塗られた木にレリーフとして雪の結晶が彫られている。ティージュの髪色とよく合っている物だった。 「オルゴールになっていて、底面にゼンマイがあります。回して蓋を開くと音が鳴る仕組みになっています。仕切りで仕切られているのでアクセサリーや小物なども入りますよ」 リューイが小箱の説明をする。その表情は若干不安がある。セシリアと選んだプレゼントが気に入られるかどうか心配なのだろう。 ティージュの白い指がゼンマイを回し、蓋を開けると静かな音楽が流れ始めた。 「……これは、『白い竜の唄』だね。今、歌劇になって首都でも公演しているよ。何でも竜に伝わる子守唄だとか」 アーブルがその音色に聞き惚れるように目を閉じる。だが……。 「……ッ!」 ポタリとティージュの瞳から涙が一粒零れ落ちた。 「ッ!? お気に召しませんでしたか?」 リューイが慌てるが、セシリアがその袖を緩やかな動きで掴む。慌てて振り返るリューイだが彼女はゆるゆると首を振った。 「違うんです……。とても、とても懐かしくて……。私を育ててくれた竜がいつもこの唄で寝かしつけてくれたんです。だから、とても懐かしくて……とても嬉しいんです」 アーブルがティージュの目にそっとハンカチを当てて涙を拭うと、彼女はニコリと笑った。 「素敵な贈り物をありがとうございます。大切にしますね」 「良かった~! 滅茶苦茶ヒヤヒヤしたよ!」 脱力してヘナヘナとそこに座り込むリューイにアーブルが吹き出す。それに釣られてティージュも……。笑い合う三人を見てセシリアは目を眇めた。 (どうか教団が……願わくば彼らを護ってくれる居場所になりますよう……) 小さな祈りを込め終わるとセシリアはそっとその輪の中に入る。 「ティージュ様、アーブル様。焦る必要はありません。いと久しく健やかであるよう……。素敵なお兄様やお父様の元で元気になってくださいね」 「ええ、ええ!」 セシリアの穏やかに語りかける声にティージュも笑顔で返した。 「それでは一旦失礼しますね。次の方も首を長くしてお待ちの御様子ですし。リューイ」 「はい、アーブルさん、ティージュさん。それでは」 二人は礼をすると後ろに用意してあるベンチに座った。メイドの一人がジュースを渡している。リューイが緊張したーとか言葉を漏らしているのはご愛嬌だ。 「ありがとうございます。リューイ、お疲れ様。頑張ったわね」 セシリアがメイドからオレンジジュースが入ったコップを貰い、リューイを労っている。 「うん、ありがとう。セラが落ち着いていたから僕も動揺する事なく話せたよ」 リューイの屈託の無い笑顔がとても眩しくて、セシリアは少し顔を背ける……。が、すぐに向き直ると優しげな瞳で微笑を浮かべた。 「二人で選んだプレゼント、いつまでも大切にしてくれると良いわね」 セシリアはリューイの隣に腰を下ろし、オルゴールを見て穏やかに微笑んでいるアーブルとティージュを見る。 「心配ないよ。セラと僕が選んだ物だから。でも、きっと人生の選択肢に迷った時はあの音色が導いてくれる……。そんな気がするんだ」 リューイもセシリアと同じ方向に視線を向け、言った。 「そう……そうね。リューイも人生に迷った時はいつでも相談してね」 何か少し思案する様子を見せたセシリアだったが、微笑むとリューイに向き直った。 「ははは、セラはすぐにお姉さんぶるんだからなぁ。いつか僕の方が兄代わりになれるように頑張るよ」 二人の座るベンチは陽光とそれを包む暖かい雰囲気でゆっくりと時間が流れていった。 「では続いて、ワタクシ達が」 メルツェルが前に進み出る。後ろにラッピングされた袋を持った冬子も続く。 「はじめまして、アーブルサマ、ティージュサマ。ワタクシはメルツェル・アインと申します」 「私は相楽・冬子と申します」 メルツェルはカーテシーを、冬子はニホンに伝わるお辞儀をしている。 「ああ、宜しく。さて、君達はどんなサプライズを用意してくれたのかな?」 アーブルが悪戯っ子の様な目で二人を見る。 「はい、コチラですわ。冬子」 「は、はい……。どうぞ、ティージュさん」 冬子はティージュの上半身がすっぽり隠れるほどの大きな袋を差し出す。 「ふわっ! お、大きい……」 「ハハハ、僕が支えているから開けてごらん」 ティージュのアタフタした様子にアーブルは苦笑し、袋を支える。 袋を結んでいるリボンを解くと、袋からクマのぬいぐるみが現れた。 「……可愛い……モフモフ……」 ティージュはそのぬいぐるみをギュッと抱きしめる。好感触なようで冬子はホッと、メルツェルは腕を組んでウンウンと頷いている。 「素敵な……お友達になれますように、と願いを込めました。この先……悩む事も、落ち込む事もあると……思います。そんな時は、この子が居ると……」 「ありがとうございます」 冬子はゆっくりとティージュに語りかけ、ぎこちない笑顔を浮かべた。だが、誰もそれを咎める者はいない。 「そういえば名前を付けてあげたら良いと思うんですの。アーブルサマとティージュサマのお名前から取って『アージュ』とかどうかしら。確か一生とかそんな意味だった筈ですわ!」 メルツェルが声をあげると、アーブルもティージュも、冬子もそちらを見る。良い考えだと言わんばかりにメルツェルは腕を組んで仁王立ち、所謂ドヤ顔をしていた。 「……フフッ、そうですね。『アージュ』、良いと思います。一生、ずっと居て下さいね、アージュ」 そう言うとティージュはクマのぬいぐるみの口元に軽くキスをする。……その後ろに居たアーブルは笑顔のまま額に血管を浮かべていたが……。 「あ、あとですね! そのぬいぐるみは今着ている白いワンピースが着脱できるんですの! ……時間があればお洋服も作れましたが……。それはまた次の機会で、いつでも御用があれば仰ってくださいまし!」 珍しくメルツェルが慌てた様子で話す。アーブルが怖かったせいでは無い……と思う。たぶんきっと。 「それでは……私達も失礼しますね」 「はい、ありがとうございました。また後でお話しましょう」 冬子の挨拶にティージュは柔らかな笑顔を浮かべる。その両手にはしっかりクマのぬいぐるみ……いや、アージュが抱かれていた。 「あら、そちらのアナタ様も素敵な贈り物ですわね!」 ミカゲが腕に沢山の贈り物をかけている。すれ違いざまにメルツェルが言葉を発すると楽しくてたまらないと言った様子でミカゲが首を縦にブンブンと振った。 「にゃーとご主人と一緒に作ったのにゃ! 世界に同じ物は二つと無い自慢の品なのにゃ!」 そう言ってティージュの下に駆け出すミカゲ。そして高く飛ぶと宙返りをして見事に着地した。それを見ていた人達が思い思いに拍手をする。 「にゃー、ありがとにゃ! にゃーはミカゲ! そして上に居るのがラシャにゃ! にゃー達からはこれにゃ!」 ミカゲはティージュの頭に花冠をポスンとかぶせる。白い髪に色とりどりの花が編まれた冠はとてもよく似合っていた。 「アーブルにもあげるにゃ!」 「え、僕もかい? ハハハ、嬉しいな。ありがとう……ってもう居ない!?」 ミカゲはアーブルとぬいぐるみのアージュにも花冠をかぶせると、会場に居たほぼ全員の下を回って花冠をかぶせていた。その中にはペタジット子爵や冬子、リューイの姿も。 「にゃはははは! 秘技、ミカゲ分身にゃ!」 若干息はあがっているが楽しそうにティージュの下に戻ってくるミカゲ。分身とは言っていたが、実際は言葉だけでチョコマカと動いていたに過ぎないが……。 「素敵な贈り物ありがとう、ミカゲさん。皆も笑顔になっているわ。お義父様まで」 ティージュは花冠に負けないほど、花の様な笑顔を綻ばせてお礼を言う。 「チッチッチ、まだあるのにゃ! ティージュちゃん、ちょっとくっついても良いにゃ?」 「……え? ええ」 ミカゲはティージュが戸惑いつつも了承の言葉を発すると彼女が座る椅子ごと抱きしめる。 「え? プレゼントは一組一つまでと……おお!」 アーブルが驚いた声をあげる。そこにはヒラヒラと舞う花びらが落ちてきていたのだから。 「にゃははは! 本当はお金じゃ買えない物をあげたかったんだけどにゃ。ちょっとトラブルがあってお花屋さんに行ったのにゃ。この花吹雪は売り物にならないお花や花冠で使った余りだにゃ。ティージュちゃん、抱っこしてあげるから一緒に見るにゃ!」 「綺麗……。素敵な贈り物をありがとう、ミカゲさん」 「うん! ティージュちゃんもいっぱい元気になるにゃ!」 ミカゲとティージュは仲良くヒラヒラと舞い散る花吹雪を見ていた。 「……これ、僕は筋肉痛確定コースだなぁ……」 その陰で苦笑しながらテラスの上で腕を大きく振って花吹雪を撒いていた一人の男の子はポツリと呟いた。 楽しい宴はまだまだ終わらないようだ……。
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*** 活躍者 *** |
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[3] リューイ・ウィンダリア 2018/10/07-20:50
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[2] ミカゲ・ユウヤ 2018/10/05-21:14 |