~ プロローグ ~ |
流れ出る血は止まらない。 |
~ 解説 ~ |
魔女メイカの呪いの魔法によって、パートナーは浄化師に対して不信感を抱いてしまいました。 |
~ ゲームマスターより ~ |
こんにちは、留菜マナです。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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Bルート 呪いにかかるのはラニ 「なんで浄化師なんか…」 部屋に篭ってたのをラスに無理やり引きずられる 膝を抱えながら終始ブツブツ文句を呟き 魔女を殺した浄化師なんて…なんでそんなものになってるのよ… ラスもラスよ 呪いって何、あたしは普通よ …どうしてそこまでするの そう思わない?どうしてって 他の人の話を聞く内に少しずつ冷静に ラス 調査担当 「絶対に突き止めてやる」 当時捕縛に行った浄化師達から話を聞く 主に魔女についての他、何か持ち帰ったか等 他の参加者と情報を共有しながら原因を探る また捕縛した浄化師達も呪いにかかっていないか確認 呪いのせいだとわかっていてもラニの発言に腹が立ってるので意地でも解決する意気込み |
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なんでしょう…あの報告書を読んでから気持ちが変です。 闇の深い内容でしたがその影響を受けているんでしょうか…。 …というか…私なんでエクソシストになんてなったんでしょう? あ、ロメオさん…。 何で私エクソシストになったんでしょうか? 憧れて?そんなこともあったのかもしれませんが。 でも…エクソシストになんかにならなければよかったって思んです。 私が貴方の光になれた? 自分に不安を抱いていたロメオさんを私が導くことができていたのなら…それはとても嬉しいです。 そう、それだけでエクソシストになってよかったって思えるから。 こういう時だけ名前で呼ぶの止めてくださいよ。 なんていうか普段呼ばれ慣れてないので恥ずかしいです。 |
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プランA希望 引きこもった灰 説得するのは灯 灰 …浄化師にならなきゃよかった 灯 それは俺に死ねといっているのか。ついでにお前も。まぁ俺がお前を生かしたいりは義務みたいなもんだからな。求婚も全部嘘だったのかい そうかい だった今すぐに俺が死んで浄化師をやめさせてやろう おもむろに灯が小刀を取り出して、首を切ろうとする 薄い傷がついて血が出た瞬間 灰が耐え切れず発狂 灰 なに、してるんですか! 僕がどれだけ、どんな気持ちで…なんで浄化師をやめたいなんて 魔女のせいで? 殺す。絶対にこの魔女殺す! 僕も死ぬ 怒りと愛でヤンデレ発動する灰を止めることになる灯 灯 落ち着け、このバカ 灰 止めないでください。撃ち殺す! 灯 灰! 名前を呼ばれて停止 |
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B解 雲羽 相方が浄化師の活動について勉強したいととある報告書を読んでから様子がおかしい ん~…? 敬語に戻る位の取り乱し 僕の可愛いお人形さん?どうし… 手を伸ばそうとし弾かれ …。ふーん… 真っ直ぐ目を見る 嘗て(9話)の様に闇に沈みゆく太陽の瞳に戻っていた …うん。これは良くない事さ 待ってて、すぐ君の心に巣食った影を追い払って見せるから♪ 同じ境遇な人と一緒に元凶捜索 魔力探知使用し元凶特定の後解呪 解決後 使用 楽器 歌 さあ皆様の落ち込む空気を吹き飛ばす為楽器を奏で歌を歌おう♪ …僕の可愛いお人形さん♪ そっと人差し指で制止 過去は振り返るもので、縛られるものじゃない それに、君がならともかく僕が君を棄てる訳ないじゃないか♪ |
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【A】 ■喰人行動 本当は調査に回りたかったが、一先ず部屋へ。 アイツの場合、一瞬でも目を離したらマズい気がする。 浄化師になったのは不本意だったし、良かったことなんて一つもない。 出会って1年未満、奴とはただの知人関係だ。 そんな相手に何を語れってんだか。 大体コイツは普段から人の話をロクに聞きやしないじゃないか。 汚い部屋にあぐら座り、タバコをふかしながら正気に戻す方法を暫し考える。 敵意を剥き出しにする黒憑を抱きしめてやり 子供をあやすように背を摩る。 黒憑を弱らせてから、やっぱり子供をあやすように言葉をかけてやる。 ■祓魔人行動 部屋に引き蘢って、妄想の中の魔女を描く 東に不快感を示し、出ていけと忠告 |
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帰れと言われて帰れる訳ないじゃないですか しかし困りました… こんな様子のベルトルドさん見たことありません とにかく話をしなければと思い部屋へ 呪いの効果らしいとはいえ 向けられたことのない野性的な敵意 緊張で汗ばむが目は逸らさない 何か言わないと と焦る 正直この場から逃げ出したい どんな言葉をかけるべきか咄嗟に思いつかない ここには来ないで呪いを解く方法を探す方が性に合っていたのかも 今からでもそうする?彼を置いて? 軽く首を振る 朦朧とした様子の喰人の前に跪き 手を重ねゆっくり言葉をかける 正気に戻っているのに気付き さっと手を引く 気が付いたなら早く言ってくだ…、や、今のはあの、パートナーとして、という意味ですから… |
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B 呪いにかかるのはシュリ ◆ロウハ お嬢の様子に、魔女リアンとかいうのが関係してるのは明白だ リアンについて調査することで、解決への糸口が掴めるかもしれねー 同じような状態になった仲間と協力し、情報共有する 図書館の事件データ室で魔女リアンについて調べる 捕縛指令が出ていたが、何故命を落とすことになったのか リアンの使う魔法、持ち物、身の上等データとして残っている情報全てに目を通す その友人にあたる魔女メイカについても同様に調べる 深い憎しみを呪いに変える…そんな方法があるのかどうか …こういう作業は苦手だ、文字列をずっと見てると頭痛がしてくる お嬢なら得意なんだろうがな でもまあ、呪いを解くためだ…やるしかねーだろ |
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~ リザルトノベル ~ |
月はただ、皓々と村を照らす。 魔女によって焼かれ、砕かれ、無惨極まる姿に成り果ててしまった村のなれの果てを。 それらは、どんなものにも必ず訪れる終焉の兆しかもしれない。 しかし、どれだけの間違いを繰り返してきても、積み重ねられてきた想いだけは消えない。 たとえ、それが指令に背く結果になったとしても――。 ● (なんでしょう……あの報告書を読んでから気持ちが変です) 司令部で、パートナーの『ロメオ・オクタード』とともに魔女に関する報告書を読んだ後――。 自分の部屋に戻った『シャルローザ・マリアージュ』は一人思い悩んでいた。 (闇の深い内容でしたが、その影響を受けているんでしょうか……) 想像するだけで、シャルローザは胸が締め付けられるような気がした。 (……というか……私なんでエクソシストになんてなったんでしょう?) 何もかも現実味が欠けた世界で、その疑問だけが確かだった。 「報告書を読んでから、お嬢ちゃんの様子がおかしいんだが……。少し様子を見てくるか」 ロメオが部屋のドアを開けると、部屋の隅で膝を抱えているシャルローザの姿を見つけた。 (なんていうか分かりやすいって言ったら悪いけど、分かりやすいな) 彼女らしい行動に、ロメオは笑みを浮かべる。 「お嬢ちゃん、どうしたんだ?」 「あ、ロメオさん……。何で私、エクソシストになったんでしょうか?」 部屋に入ってきたロメオから言葉を投げかけられて、シャルローザは困惑したように問いかけた。 「何で私はエクソシストになったのか、って? そりゃあ、お嬢ちゃんは憧れてたって言ってたし」 「憧れて? そんなこともあったのかもしれませんが。でも……エクソシストになんかにならなければよかったって思うんです」 シャルローザの口からそんな言葉が飛び出したことに、ロメオは大きく目を見開いた。 「エクソシストになんかなるんじゃなかった。なぁ、そんな事を言ってくれるなよ。俺はエクソシストになって……『シャルローザ』に出会えてよかったって思ってるんだ。自分への不信感に苛まれてた俺に光をくれたのは……お嬢ちゃんだったんだから」 その瞬間、ロメオには時間が止まったように感じられた。 視界に映る、驚きに染まるシャルローザの表情だけが全てだった。 (目を逸らすな。いつもの自分を思い出せ。俺の好きなシャルローザに戻ってくれ) ロメオは自分に言い聞かせるように願う。 「私が貴方の光になれた? 自分に不安を抱いていたロメオさんを私が導くことができていたのなら……それはとても嬉しいです。そう、それだけでエクソシストになってよかったって思えるから」 不意討ちのように告げられたロメオの言葉に、シャルローザは初めて花が綻ぶように無垢な笑顔を浮かべる。 「こういう時だけ名前で呼ぶの止めてくださいよ。なんていうか、普段呼ばれ慣れてないので恥ずかしいです」 照れくさそうに頬を染めるシャルローザは、ロメオの知っている――いつもと変わらない彼女の姿だった。 ● 「浄化師にならなきゃよかった」 『灰・土方』は自分に言い聞かせるようにつぶやいた。 「それは俺に死ねといっているのか。ついでにお前も」 弱音を吐くように告げられた言葉に、部屋を訪れていた『灯・袋野』はきつく言い放つ。 浄化師としての契約を破棄するということは、二人の関係そのものが破綻することでもあった。 灯は手段。 灰は生存理由。 結婚という勘違いがあったとはいえ、浄化師の契約は既に二人を繋ぐための呪いのようなものである。 それはもはや、切っても切れない関係だった。 「まぁ、俺が生かしたい理は義務みたいなもんだからな。求婚も全部、嘘だったのかい。そうかい。だったら、今すぐに俺が死んで浄化師をやめさせてやろう」 灯はおもむろに小刀を取り出すと、自身の首を切ろうとする。 灯の首に薄く刀傷がついて血が出た瞬間、灰は目の前で起きている出来事に耐え切れず、発狂した。 「なに、してるんですか! 僕がどれだけ、どんな気持ちで……なんで浄化師をやめたいなんて、魔女のせいで?」 灰はそこでハッとする。 「殺す。絶対にこの魔女、殺す! 僕も死ぬ」 憎しみと愛情の二律背反の感情に苛まれ、灰は徐々に理性を欠いた発言をし始める。 そんな灰を、咄嗟に灯が止めた。 「落ち着け、このバカ」 「止めないでください。撃ち殺す!」 「灰!」 一触即発の空気は、灯に名前を呼ばれたことで一瞬にして霧散した。 灰は驚きのあまり、ぴたりと停止する。 「ほろび」 「……はい」 「お前はどうしてそう……極端なんだ」 「気質のせいです」 あくまでも真剣な表情で答えてから、灰は狼狽えるように続けた。 「それより、名前、え、あ」 「お前が夫婦になったら、名前呼びがいいったろ。俺はホロって呼ぶのが好きなんだがねぇ」 「あなたに飼われた犬みたいなの、嫌ではないんですが……やっぱり夫婦だから、名前を」 顔を真っ赤に染めた灰は戸惑うような、恥じらうような眼差しを灯に向ける。 「先は長い。……いっぺんしかいわねぇぞ。耳かっぽじって聞け」 そう前置きして、灯は率直に言った。 「灰、お前は俺の伴侶だ。愛してるかはわからんが夫婦なんだろう? まだ、なにもしてねぇ。浄化師を辞めるなんていうな。それだったら死んでやる」 はっきりと告げられた言葉に、灰の心は強く強く揺れ動かされた。 灯からの求婚に、灰にかけられていた呪いの魔法は完全に解ける。 しかし、正気に戻ったはずなのに、灰は何故か、灯の首の疵を嘗め始めた。 「なにしてる」 「呪いのせいです」 「お前、正気だろう!」 灯は一喝すると、感情の赴くままに行動する灰を殴ったのだった。 ● 熱い熱い。 紅蓮の炎を纏った赤き魔女。 いや、それは炎なんていう言葉も言い足りなくて、業火そのものだ。 『黒憑・燃』は部屋に引き籠って、妄想の中の魔女を描いていた。 本当は調査に回りたかったが、アイツの場合、一瞬でも目を離したらマズい気がする――。 「出ていけ」 そう判断して部屋を訪れた『清十寺・東』に対して、黒憑は不快感を示しながら追い払った。 (浄化師になったのは不本意だったし、良かったことなんて一つもない。出会って1年未満、奴とはただの知人関係だ) 魔女の絵を描き続ける黒憑を見つめながら、東はふと座りの悪さを覚える。 (そんな相手に何を語れってんだか。大体、コイツは普段から人の話をロクに聞きやしないじゃないか) 汚い部屋にあぐら座り、東はタバコをふかしながら黒憑を正気に戻す方法を暫し考える。 (そういえば――) 不意の閃きが、東の脳髄を突き抜けた。 (コイツは人生の半分を奴隷として過ごしたらしい。愛情と礼儀を知らないクソガキだ。今回はそこを利用する) 東はお化けヒマワリに足を踏み入れた時のことを思い返しながら、黒憑に近づいていった。 「黒憑」 東が、黒憑に声をかける。 しかし、その声が誰よりも気になる相手――東だと分かってもなお、黒憑は反射的に鬱陶しいと思った。 「邪魔を――っ」 東は、敵意を剥き出しにする黒憑をそっと抱きしめた。 そして、子供をあやすように彼の背中を摩る。 「せ、先生……」 思考も感情も文脈も残らず吹き飛ばす行動に、毒気を抜かれた黒憑は呆気に取られてしまう。 激しい動揺が、黒憑の心と身体を包み込んでいた。 今まで抱きしめたことはあっても、『抱きしめられた』経験はない。 蕁麻疹が出ているのは掃除をしていない部屋のせいなのか、それとも……。 黒憑が突っぱねようとしても、何故か身体に力が入らなかった。 (アズマは何だか暖かいし、妙に落ち着くような気がする) 東のぬくもりがじわじわと広がり、黒憑の胸の奥がほのかに暖かくなる。 東に抱きしめられたことで、黒憑の心の中に巣くっていた闇は溶けてしまったのかもしれない。 されるがままになっていた黒憑に、東はさらに意外な言葉を投げかけた。 「大丈夫だよ、もう誰も黒憑を傷つけたりしない。何があっても護ってやるから安心して良いんだよ」 黒憑の背中を摩りながら、東はどこまでも優しい声で何度も何度も言い聞かせる。 「ぎゃあああああああ!! やめろやめろ!! アズマがそんな台詞を言うわけないだろ!!?」 普段の東なら、絶対に口にしない言葉と行動を前にして、完全に正気に戻った黒憑は声を張り上げたのだった。 ● 「帰れ」 『ヨナ・ミューエ』の訪問に、『ベルトルド・レーヴェ』は冷たい眼差しでそう凄むと即座にドアを閉めた。 拒絶の証のように目の前に立ち塞がるそのドアを、ヨナは呆然と見つめる。 (帰れと言われて帰れる訳ないじゃないですか。しかし、困りました……。こんな様子のベルトルドさん、見たことありません) とにかく話をしなければと思い、ヨナは再び、部屋のドアを開けた。 しかし、ヨナが部屋に入った瞬間、その場に流れる空気の質が一変した。 怒りの表情のベルトルドの周りから、昏く歪な魔力を視認する。 呪いの効果らしいとはいえ、向けられたことのない野性的な敵意に、ヨナは緊張で汗ばむが視線だけは一切逸らさなかった。 「……っ」 「――くっ!」 ベルトルドが引かない相手の首に手をかけ、力を入れる。 だが、苦しそうに咳き込むヨナの姿が、苦悶の表情を浮かべるリアンの姿と一瞬、重なり、ベルトルドは驚愕とともに手を離す。 ベルトルドは酷く混乱したまま、後退り、ベットの端に腰掛け項垂れた。 (何か言わないと) 息苦しさに耐えながらも、ヨナは焦った。 (正直、この場から逃げ出したい。どんな言葉をかけるべきか、咄嗟に思いつかない。ここには来ないで呪いを解く方法を探す方が性に合っていたかも。今からでもそうする? 彼を置いて?) いくつもの選択肢を列挙していたヨナが軽く首を振る。 (あり得ないですね) 朦朧とした様子のベルトルドの前に跪くと、ヨナは手を重ね、ゆっくりと言葉をかける。 「今度、いろんな話聞かせてくれると約束してたじゃないですか」 ヨナの説得にも、ベルトルドは何の反応も示さなかったが構わず、先を続けた。 「その事を楽しみにする位には私――」 ヨナは意を決したように小声で告げる。 「ベルトルドさんの事、好きですよ。……だから、戻ってきてください」 それはまるで、祈りを捧げるような懇願だった。 ヨナのその言葉は、今までのどの言葉よりもベルトルドの心に突き刺さった。 「そんな約束していたな」 若干の間、添えられた小さな掌にもう片方の手を重ねると、ベルトルドはぽつりとつぶやいた。 「――っ」 正気に戻っていることに気付いたヨナは、さっと手を引く。 「気が付いたなら、早く言ってくだ……、や、今のはあの、パートナーとして、という意味ですから……」 びっくりするほど赤く染めた顔を逸らしたヨナは即座に立ち上がる。 「他の様子を見てきます」 いてもたってもいられなくなったのか、ヨナはベルトルドの制止を振り切るようにそのまま部屋を出て行ってしまった。 平静を取り戻しつつも、ベルトルドは己を支配していたメイカの感情を反芻する。 (パートナーを失う事があれば、自分もそんな感情が沸くのだろうか) 答えの出ない問答の中、胸を締め付けられるような不安だけが、ベルトルドを襲っていた。 ● 「なんで浄化師なんか……」 部屋に引き籠っていた『ラニ・シェルロワ』は、苦しげに顔を歪めた。 ふつふつと身体の奥底から沸き上がる真っ赤な感情に、『ラス・シェルレイ』は強く強く拳を握りしめる。 「……お前が、お前がなりたいって言ったんじゃないか。あいつら、全部ぶっ殺してやる。絶対に復讐してやるって。そう言ったお前が、それを言うのか」 ラスがそう告げた瞬間、ラニの怒りの拳がラスに叩き込まれた。 「魔女は――リアンは、あいつらとは違う! それなのに、浄化師は魔女を殺したんだよ!」 違う。 ただそれだけの言葉で片付けようとしたラニに、容赦なくラスの拳が打ち込まれる。 「お前、本気で言っているのか!」 「魔女は悪くない!」 激しくぶつかり合った大喧嘩は、ラスがラニを無理やり部屋から引きずり出したことで、ようやく終息した。 ● 「なんで……なんで死んじゃったんですか……? 何で、誰かの大切な人が死ぬのに、殺すのに手を貸さなきゃいけないんですか?!」 報告書を読んで勉学に励んでいた『ライラ・フレイア』が悲鳴を上げる。 「ん~……?」 「嫌……浄化師なんて……嫌い……」 弱音のように吐かれた言葉が、『空詩・雲羽』の頭を上げさせた。 「僕の可愛いお人形さん? どうし……」 「そんな風に呼ばないで下さい!!」 雲羽が震えるライラに手を伸ばそうとして弾かれる。 「どうせ、貴方も私を置いていくんでしょう?!」 「……。ふーん……」 強い言葉で遮られて、雲羽は真っ直ぐにライラの目を見た。 それは嘗てのように、闇に沈みゆく夕暮れの太陽の瞳に戻っていた。 傷だらけの美しい小鳥が嘆き悲しんでいる。 それは、まるであの日の再来のようで――。 「……あ」 ライラは己がやってしまった事に気付き、蒼褪める。 「……うん。これは良くない事さ。待ってて、すぐに君の心に巣食った影を追い払ってみせるから♪」 違和感が現実に異様な形を作り始めていることに気づいた雲羽は、彼女を救うために原因究明の調査へと赴いた。 ● 「わたし、何で浄化師になったのかしら?」 「お嬢?」 『シュリ・スチュアート』が発したあまりにも衝撃的な言葉に、『ロウハ・カデッサ』は目を見開いた。 「魔女を――リアンを死なせた浄化師のままでいたくない」 泣き出しそうに歪んだシュリの顔には、はっきりと非難の色が浮かんでいる。 「おいおい、お嬢。急にどうしたんだ?」 ロウハは焦ったように訊いた。 しかし、シュリはロウハの疑問に答えることのないまま、思い詰めた表情でこう切り出してきた。 「ねえ、ロウハ。わたし、浄化師をやめようと思っているの」 「――っ?!」 衝撃的な言葉は、その場の空気ごと全てをさらっていった。 ● 「お嬢の様子に、魔女リアンとかいうのが関係してるのは明白だ。リアンについて調査することで、解決への糸口が掴めるかもしれねー」 ロウハは先程のシュリの様子を思い返しながら、真剣な表情で思案し始める。 「絶対に突き止めてやる」 その隣で、ラスは怒り狂っていた。 ラニと大喧嘩をした後、同じ現象が発生していたロウハ達と合流して原因を探っている。 「以前、俺が呪いの類いにかかった時、お嬢に解いてもらったことがある。今度は、俺が……あの時の恩に報いねーとな」 シュリに救われた時のことを思い出して、ロウハは苦笑した。 「……でも、それだけじゃねー。お嬢に完全に突き放されたらって思うと、今までにないくらい焦った」 ロウハが胸の内を吐露する。 「お嬢といる日々が当たり前になってから、随分経つ。命令だからとか、義務感でって気持ちがなかったわけじゃねー。だけど、そんな気持ちは……いつの間にか忘れてしまってた」 「うんうん、そうだね」 不意に聞こえてきた声に、ロウハは沈みかけていた思考から顔を上げた。 「この件にも、呪いが関わっていると僕は思うのさ」 雲羽が核心に迫る言葉を口にする。 捕縛の指令が出ていたはずなのに、魔女は何故、命を落とすことになったのか。 ロウハが真相を探るために図書館へと向かい、ラスは雲羽とともに捕縛に向かった浄化師達に会うことにした。 「魔女を殺した浄化師なんて……なんでそんなものになってるのよ……」 部屋から引きずり出された後、当てられた部屋でラニ達は思い悩んでいた。 「ラスもラスよ。呪いって何、あたしは普通よ」 ラニは膝を抱えながら、文句をつぶやき続ける。 「……どうしてそこまでするの。そう思わない?」 「ロウハ、どうして頑張ってくれてるのかしら?」 「どうしてって……」 勢いを失したラニを見て、シュリはさらに言葉を紡ぐ。 「ロウハはお父様の命令で、わたしのパートナーとして一緒にいてくれてる。わたしが浄化師であることを放棄したら……ロウハがわたしに付き合う理由はないのに」 シュリはその事実を思うと胸が苦しくなる。 「ライラさんはどうなの?」 困惑したラニが話題を変えるように、ライラに話を振った。 「……私、初めて雲さんに反抗的な態度を……」 ライラは残る手の感覚に自己嫌悪する。 「棄てられたくない……独りになりたくない……のに……!」 悲しみのこもった涙が溢れる中、ライラはふと思い出した。 「……何で、待っててって、言ったのでしょうか……? 酷い事、したのに……」 「ラスも同じようなことを言ってた」 ライラと同様に、ラニも戸惑った仕草を見せる。 (もし見限られたら、ううん、違う。分かってる。見限られて当然のことをしてる。だって、あたしはあいつがあの時のことを覚えてないのをいいことに――) ラニは決定的な言葉を口にした。 「嘘、ついたんだから」 ラニのつぶやきは消える。 だけど、声とは違い、罪は消えない。 図書館の事件データ室で魔女リアンについて調べていたロウハは頭を抱える。 「こういう作業は苦手だ。文字列をずっと見てると頭痛がしてくる。お嬢なら、得意なんだろうがな」 ロウハは魔女リアンに関する情報全てを的確に確認しながら言う。 リアンとともに、今回の指令の捕縛の対象にされていた魔女メイカに関しても同様に目を通す。 「でもまあ、呪いを解くためだ……。やるしかねーだろ」 深い憎しみを呪いに変える。 そんな方法があるのかどうか。 ある情報を目にして、ロウハは自分の予測を確信に変える。 それは、ロウハの想像を絶する内容だった。 「アンタ達が捕縛の指令に向かった浄化師達だな?」 ラスの疑問に、司令部で報告書を見ていた彼らは答えない。 人数が足りなかったが、恐らくラニ達と同様に呪いの魔法にかかっているのだろう。 「アンタ達に聞きたいことがある。指令の後、何か持ち帰ったりしなかったか?」 「――っ?!」 ラスの指摘に、息を呑んだ浄化師達は一斉に動いた。 「雲羽!」 その場から逃げ出そうとした浄化師達に対して、ラスはすぐにその決断を下す。 その言葉が合図だったように、雲羽が浄化師達の行く手を遮った。 ● 「さあ、皆様の落ち込む空気を吹き飛ばす為、楽器を奏で歌を歌おう♪」 雲羽がリュートを奏でて歌い始める。 ラス達が見守る中、ラニ達や他の浄化師達も訪れていた。 ラス達に阻まれた浄化師達は、ようやく全てを打ち明けた。 自分達が『業火の魔女リアン』と『断罪の魔女メイカ』に拾われて育てられた孤児であったことを。 本来は喰われる運命だったのだが、メイカがリアンを止めて事なきを得る。 だが、彼らは浄化師の素質を持っていたため、リアン達とは別れることになってしまった。 しかし、リアンはその後、数多くの人々を喰らい、あまたの村を焼き払った。 そのため、浄化師に捕縛の指令が下されたのだった。 討伐ではなく、捕縛になったのは、彼らのように彼女達によって救われた者達がいたからだ。 その事実を知った彼らは、自分達が捕縛の指令を受けることでリアン達を逃がそうとする。 だが、討伐をしに来たと勘違いしたリアン達との交戦により、彼女達は命を落とすことになってしまった。 そして、リアンとメイカが死んだことで発生した魔結晶を持ち帰って教団に渡したということを。 しかし、この情報で、ラス達の疑問はようやく氷解していた。 持ち帰った魔結晶が、呪いの元凶だと判別できたのだ。 ロウハが調べた情報を頼りに、雲羽が持ち帰った魔結晶を特定したことで、教団の中で渦巻いていたメイカの呪詛の魔法(ネヘル・フィア)の効果は跡形もなく消え去った。 しかし、ライラは上の空だった。 あるのは、棄てられたらどうしようという不安だけだ。 「……僕の可愛いお人形さん♪」 「……雲、さん……。私……昔、大切な人が死んで……それで……」 言い訳じみた言葉を、雲羽が人差し指で止める。 「過去は振り返るもので、縛られるものじゃない」 「……!」 雲羽の強い言葉に、ライラは目を見開く。 「それに君がならともかく、僕が君を棄てる訳ないじゃないか♪」 「っ……うん……!」 不意をつかれた後、ライラは微笑んだ。 「ロウハ、わたし、浄化師をやめないわ。浄化師の素質があった人間と魔女が一緒に暮らすことができたように、いつか救えるって信じてるから」 「ああ」 シュリの決意に、ロウハは笑みを浮かべる。 「……ラス、ごめん」 「ま、これに懲りたら、浄化師をやめるなんて二度と言うなよな」 「はいはい。分かってますよーだ」 いつものラニとのやり取りに、ラスはひそかに口元を緩めた。 浄化師達だけではなく、世俗派の魔女達も奏でられる演奏に耳を傾け、空を仰ぐ。 頭上に広がるのは、幻想的な夕闇の空。 浄化師と魔女。 いつか夢から醒めてしまうのなら、せめて現実では幸せな結末を――。
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*** 活躍者 *** |
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[9] ロウハ・カデッサ 2018/10/22-07:27
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[8] ラス・シェルレイ 2018/10/21-18:24
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[7] ヨナ・ミューエ 2018/10/21-00:14
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[6] 黒憑・燃 2018/10/20-15:45
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[5] 空詩・雲羽 2018/10/20-10:01 | ||
[4] ロメオ・オクタード 2018/10/19-19:15
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[3] 灯・袋野 2018/10/19-16:29
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[2] ラス・シェルレイ 2018/10/18-12:21
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