ドラゴンと模擬決戦
普通 | すべて
2/8名
ドラゴンと模擬決戦 情報
担当 内山健太 GM
タイプ ショート
ジャンル 戦闘
条件 すべて
難易度 普通
報酬 ほんの少し
相談期間 4 日
公開日 2018-10-11 00:00:00
出発日 2018-10-18 00:00:00
帰還日 2018-10-26



~ プロローグ ~

「なぁ、人間って本当に強いのか?」
 そう言ったのは、竜の渓谷にいるドラゴンである。
 竜の渓谷――。
 「ドラゴンの最期の地」と呼ばれる自然豊かな渓谷で、ドラゴン達が穏やかに生活をしている場所である。
 時刻は午後九時を少し回ったところ。すでに渓谷は静まり返っており、時折吹く風が妙に心地いい。
 ドラゴンの横には、一体の老ドラゴンの姿があるこのドラゴンこそ、竜の渓谷に住まう老ドラゴンである。
 老ドラゴンは少し考え込んだ後、切れ長の瞳を空に向けながら質問に答える。
「人間は強いかか……。それはお主の方が詳しいのではないか?」
 すると、ドラゴンは笑みを浮かべ、
「俺の方が詳しい? なぜそんな風に言う?」
「人間は時としてドラゴンを襲う。それはお主も知っているだろう」
 ドラゴンは魔術の道具として利用できる側面がある。
 基本的に、この竜の渓谷は関係者以外立ち入り禁止されているが、中にはその掟を破り、ドラゴンの密猟を試みる不届き者がいるのも事実である。
 人間の中には、ドラゴンを捕獲し、魔術道具にしようとしている。中には腕の立つ魔術師もいて、ドラゴンを苦しめるのだ。
 その事実を、老ドラゴンは知っている。だからこそ、頭を悩ませているのである。
「確かに人間がドラゴンを捕獲しようとしている事実を知っている」
 と、ドラゴンは告げる。
 その発言には全くうぬぼれが感じられずに、極々自然である。
 「なら」老ドラゴンは言う。
「人間の能力を知っているだろう。人間の存在は確かに脅威だ。しかし、ドラゴンには遠く及ばない。それが人間の限界だろう。
 もちろん、子供のドラゴンが狙われる場合は別だ。子供のドラゴンは戦闘力が低いから、人間に殺される場合もある。
 だが、お主は別だろう。お主は強いドラゴンだ。人間に遅れは取らない」
「もちろん、それはわかっている。俺は人間には負けない。だがな、気になるんだよ。本当に俺よりも強い人間がいないのか? ってな……。
 どこかに俺を負かすような人間がいるのではないか? そんな風に感じるのだ」
 ドラゴンの思惑が、いまいち見えてこない。
 老ドラゴンは眉根を寄せながら、どう答えるべきか迷っていた。
 このドラゴンと付き合いは長い。しかし、すべてを知っていると言えばそうではない。
 このドラゴンは穏やかな性質を持っているものの、戦闘能力は高く、老ドラゴンも一目置いているのである。
「お主は何が言いたいのだ?」
 老ドラゴンは正直に告げる。
 すると、ドラゴンはケラケラと笑い、大きな体を揺り動かした。
「俺の望みは一つ。強い人間と戦いたい」
「強い人間と? なぜ戦う?」
「人間の戦闘力を見てみたいんだ。奴らの中には魔術が使える者もいる。そういった人間の中には、俺よりも強い奴がいるんじゃないのか?
 俺は自分の力を試していたいのだ。本当に強い人間に勝てれば、俺はこの渓谷を守り抜ける。
 管理するのはお前の仕事でもあるが、ドラゴン自身も戦うべき時があるのだ」
 竜の渓谷は基本的にリントヴルム一族と、その協力者であるデモンが中心に守護しているものの、彼(ドラゴン)も、防衛活動に携わっているのである。
「なるほど。私はお主が人間に後れを取るとは思えない。しかし、自分の力を試したいという気持ちは理解できる。よろしい。一つ骨を折ろう」
「相手を探してくれるのか?」
 と、ドラゴンは興味深そうに告げる。
 老ドラゴンは一呼吸を置くと、ゆっくりとドラゴンを見つめた。
「薔薇十字教団。お主も知っているだろう?」
「エクソシストか……。まぁそれなりに知っているが」
「エクソシストは強力な能力を持つ。お主の相手としては不足ないだろう。連絡については、ワインドに相談をして、教団に連絡してほしいと頼んでみよう。
 ドラゴンを手合わせしてみたい人間を募集する。いくらか集まるだろう。戦う場所は草原がいいだろう。広々として模擬決戦にはうってつけだ」
「エクソシストと戦闘か……。それは楽しみだ」
「満足か?」
「うむ、自分の力を試せそうだ。これはお互いにとっていい訓練になるだろう」

 ドラゴンとエクソシストの戦闘。
 模擬決戦という名目であるが、激戦が予想される――。


~ 解説 ~

 竜の渓谷にいるドラゴンとの模擬決戦です。
 強敵であるドラゴンは、エクソシストの可能性を見るために、戦闘を望んでいます。
 ドラゴンとの戦闘を楽しみましょう。

【基本情報】
〇体長:20メートル
〇体重:1トン
〇攻撃方法:羽ばたき、砂嵐、かみつき、尻尾で叩く、火を噴く
〇魔力属性:火

 今回の相手のドラゴンは戦闘経験も豊富であり、かなりの強敵です。一対一では勝ち目は薄いと言えるでしょう。協力し合い攻略を試みてください。
 ドラゴンは巨大であるため、それほど俊敏性はありませんが、その分、力が強力です。また超高温の火を噴くので細心の注意が必要です。
 ドラゴンの攻撃は強力であり、エクソシストが吹き飛ばされて戦闘から離脱してしまうケースもあります。
 そのため、全員が吹き飛ばされてしまわないように味方同士を分散させる必要があります。
 また、回復役の人間も複数用意するとよいでしょう。
 回復役の人間が一人であった場合、その人物が吹き飛ばされると回復を担う人間が一時的にいなくなってしまいます。

【勝負に判定】
 勝負の判定方法はどちらかが「参った」と言うか、気絶し戦闘不能になるまでです。
 模擬決戦という名目なので、命のやり取りは行われません。
 ドラゴンの弱点についてですが、基本的に弱点はありません。
 ただ、今回のドラゴンは物理的な攻撃よりも魔術による攻撃の方が効果的のようです。
 物理的な攻撃も全く効かないわけではないので、魔術と武器による攻撃を上手く織り交ぜながら攻略を試みてください。

【戦闘舞台】
 戦闘の舞台は草原です。広々とした草原であり、周りに遮蔽物はありません。
 そのため、単純にドラゴンとの戦闘を展開できます。広い草原であるため、障害物がないため、
 身を隠すことはできませんが、強い魔術を発動させても、辺りに影響を与えないので、存分に力を発揮できるでしょう。


~ ゲームマスターより ~

 ドラゴンとの戦闘エピソードを企画しました。
 竜の渓谷にいるドラゴンと腕試しができる貴重な機会ですので、奮ってご参加ください。
 今回の敵であるドラゴンは非常に強敵ではあるのですが、エクソシストが力を合わせれば十分攻略は可能です。ドラゴン自身も強い人間を求めているので、戦闘を楽しんでください。
 激戦が予想されますが、皆さまのプランを織り交ぜつつ、読み応えのあるリザルトノベルを心がけますので、宜しくお願い致します。





◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇

ルーノ・クロード ナツキ・ヤクト
男性 / ヴァンピール / 陰陽師 男性 / ライカンスロープ / 断罪者
まとめて攻撃を受けないよう回復時以外は散開
回避や防御が遅れないようドラゴンの動きに注目

1R目に魔術真名を宣言
ナツキ:やるぜ相棒!
ルーノ:ああ、行こうか

■ルーノ
ドラゴンの視界から外れるよう位置取り
体力半分以下で回復

攻撃にも参加
SH10も回復の魔力は残し積極的に使用

ナツキへ合図
隙を見てドラゴンの体により死角になる位置へ潜伏
不意打ちから奇襲効果の混乱を狙う

■ナツキ
前に出てドラゴンの気を引きつつダメージを稼ぐ
味方への被害を防ぎ攻撃の機会を作る

力で敵わないなら速さで勝負
体の下や頭上からの攻撃には対応しにくいと予想
回り込んだりドラゴンを足場にして狙う

合図でJM11使用
注意を逸らし隙を作りルーノの行動を支援
キールアイン・ギルフォード ナニーリカ・ギルフォード
男性 / マドールチェ / 人形遣い 女性 / アンデッド / 悪魔祓い
まともに戦っても勝てないし、そもそも搦め手もきっつそうなレベル差っぽいけど、搦め手を使う感じでいくかな。
基本はナツキさんの補助をする動きで、人形を動かす。
ナニカは、後方から目ん玉と翼の付け根とか、弱そうな部位を狙って攻撃する感じにしようと思うよ。
防御行動はしても抜かれそうだから、まー、回避かな。
回避も厳しければ、潔く受け身がんばるさ、


~ リザルトノベル ~

 竜の渓谷とは、「ドラゴンの最期の地」と呼ばれる自然豊かな渓谷で、ドラゴン達が穏やかに生活をしている場所である。
 ここで今、ドラゴンとエクソシストの模擬決戦が行われようとしている。
 闘いの舞台となる場所は、竜の渓谷に広がる自然豊かな草原地帯である。
 鬱蒼と茂る草木と、時折吹く爽やかな風が気持ちよく、模擬決戦にはうってつけだ。

 ドラゴンは老ドラゴンと共に、エクソシストの到着を待っていた。
「どんな人間が来る?」
 と、ドラゴンは老ドラゴンに向かって尋ねる。
「二組のエクソシストだ、お前の希望通り、強いエクソシストを集めた」
「そうか……それは楽しみだ」

 太陽が高く上った時刻、いよいよエクソシストたちが到着した。
 今回の模擬決戦に参加するエクソシストは二組四名である。
 『ルーノ・クロード』と『ナツキ・ヤクト』のペア。
 そして、『キールアイン・ギルフォード』『ナニーリカ・ギルフォード』のペアの二組だ。

 巨大な体を持つドラゴンは、二組のエクソシストを前にして、興奮で震えていた。
 これから強い人間と戦える……。
 それだけで、魂が震えるのである。自分はどれだけ強いのか? それを確かめられる。

「よく来た。ここが竜の渓谷だ」
 と、ドラゴンはエクソシストたちを迎え入れる。
 それ受け、それぞれのエクソシストたちが挨拶をする。
「私はルーノ・クロード。君が戦いたいというドラゴンか、かなり大きいね」
 と、ルーノが挨拶し、続けてナツキが、
「俺はナツキ・ヤクト。相手がドラゴンだろうと、俺は絶対負けねぇからな」
 興奮した様子でナツキが言うと、隣に佇んでいたキールアインが口を開いた。
「俺はキールアイン・ギルフォード。一応負けないつもりで戦うよ」
 その後、ナニーリカが声を出した。
「私はナニーリカ・ギルフォード。強さに憧れるドラゴンに興味があります」

 ドラゴンとエクソシストたちの挨拶が終わると、戦闘前に老ドラゴンが注意事項を説明した。
「まず、エクソシストたちの礼を言おう。ここに来てくれたことに感謝する。では、戦闘について説明しよう。今回の戦闘は模擬決戦だ。命のやり取りをする場所ではない。殺し合いではなく、単純に戦闘を楽しんでもらいたい。舞台はこの草原がすべてだが、ドラゴンは飛べるため、私から一つ提案がある」
 それを聞いたドラゴンの眉根がぴくっと動く。
「提案? なんだそれ?」
 と、ドラゴン。眉間にしわを寄せ、老ドラゴンを見つめる。
「お主は、空を飛べる、しかし、デモン以外のエクソシストは飛べない。それ故に、空を飛ぶのを禁じる。また、どちらかが参ったといったら戦闘はそれまで。後は私が戦闘を見ていいて、危険であると感じたら止めるかもしれない、後は好きにやりたまえ」
 その話を聞いたキールアインは一人考えた。
(空中から落とされたら……うーん、流石に死にそうだからやってこない気がするけど。飛ばないなら考える必要ないな。それでもドラゴンはでかい。背中から落ちてもかなりの衝撃を受けそうだ。ま、死なないように受け身がんばるよ)

 さて、戦闘が始まろうとしている。
 広々とした草原に、ドラゴンとエクソシストたちが相対して並ぶ。
 そこから少し外れた場所に、老ドラゴンの姿がある。彼はこの戦闘を見届けようとしているのである。
(さて、どうなるか? エクソシストたちの力を見せてもらおう)
 老ドラゴンはそんな風に考え、ドラゴンたちに視線を注いだ。

 戦闘前の緊張したムードを感じながら、ルーノはナツキを横目に見ながら考えていた。
(強い相手を求めるドラゴンか……。どこの世界にも同じような考えを持つ者はいるようだね)
 ドラゴンは強敵である、どこまで自分たちの力が通じるか試してみたい。
 ルーノはさらに考えを進める。
(まぁ自分の実力を知るという意味では悪くない。やる気が有り余っているナツキが空回らないよう気にかけつつ、相手に失礼の無いよう全力を出そう)
 そのように考えをまとめ、彼はナツキに向かって言った。
「模擬戦とはいえ油断は……聞いているかい、ナツキ?」
 問われたナツキであったが、彼もまた自分の世界に入り込んでいた。
 うずうずしながらドラゴンを見つめている。
(強そうだしやっぱデカイなぁ! ドラゴンと腕試しなんて滅多にできないよな。強い相手と戦うのが強くなる一歩だ! 参ったは言わないし絶対退かない、やるからには勝つ!)
 そんな中、ふと聞こえたルーノの声。
 ナツキはハッと我に返る。
「え? おう、聞いてる聞いてる!」
 二人も戦う準備が整っているようである。

 そんな中、キールアインとナニーリカの二人も緊張感ある戦闘前の雰囲気を感じていた。
 模擬決戦とはいえ、相手はドラゴンである。強敵には違いない。自分たちの力がどこまで通じるかはわからないが、全力は尽くすべきだろう。
(まともに戦っても勝てないし、そもそも搦め手もきっつそうなレベル差っぽいけど、搦め手を使う感じでいくかな。基本はナツキさんの補助をする動きで、人形を動かす)
 と、キールアインは考えていた。
 自分の力では恐らくドラゴンに対応できない。
 それならば、補助に回り、味方の援護を進める。それが自分に課せられた役目であると感じていた。
「ナニカ。準備はいいか?」
 と、キールアインはナニーリカに向かって声をかけた。
 ナニーリカは軽く頷くと、彼に言葉を返す。
「大丈夫です。ただ、私の力がどこまで通じるか……」
「ナニカ。お前は後方から攻撃しなよ。後方から目ん玉と翼の付け根とか、弱そうな部位を狙って攻撃する感じにするといいと思うよ」
「キル……。わかりました。但し、キルも気を付けて」
「うん、防御行動はしても抜かれそうだから、まー、回避かな。回避も厳しければ、潔く受け身がんばるさ」

 エクソシストたちの戦闘前のやり取りを確認したドラゴンが高らかに宣言する。
「さて、そろそろ戦闘開始と行くか。こっちは早く戦いたいんでね。行くぞ!」
 その言葉を合図に戦闘開始。
 ドラゴンはまず火を噴いてエクソシストたちを攻撃する。
「やるぜ相棒!」
 と、ナツキが言い、それ受け、ルーノが答える。
「ああ、行こうか」
 二人は魔術真名を宣言し、力を解放。
 完全な臨戦態勢になる。
 ドラゴンの火の一撃がエクソシストたちを襲う。
 しかし、まだ戦闘は序章である。
 ドラゴンの攻撃もあくまでも様子見という程度。
 炎による攻撃を、ナツキとルーノ、そしてキールアインとナニーリカが横っ飛びでかわす。
 攻撃をかわしたルーノが動く。
 彼は、ドラゴンの視界から外れるように位置取りをして、そこから攻撃を組み立てようと考えていた。
 ドラゴンは体が大きいが、目は前方にしかついていない。
 となれば、死角に入れば効果的に攻撃ができるだろう。
 ルーノはドラゴンのやや後方に位置取り、死角に入ったのを確認すると、小咒を放つ。
 小咒は火気の魔術攻撃を加え、魔力攻撃によるダメージを与える。その攻撃が、ドラゴンの背中部分を焼く。
 ドラゴンの体がピクっと反応する。
 しかし、それは微弱であり、それほどダメージを負っているようにはみえない。
「なるほど、ダメージなしか。流石はドラゴンといったところだね。でもまだまだこれからだ」
 ルーノは気落ちせず、積極的に小咒を使用していくと決めた。

 背中に攻撃を受けたドラゴンであったが、硬い皮膚で守られており、ほとんどダメージを受けていなかった。
(死角からの攻撃か、放っておくと厄介だな……)
 ドラゴンはそんな風に考え、まずは火を噴いたり、突進したりして様子を見てみようと考えた。

 一方、キールアインは火の攻撃をかわし、勢いそのままにドラゴンの後方に走っていく。
「人形を使ってかく乱する!」
 キールアインの武器はベーシックドール。つまり人形である。
 この人形を使い、攻撃の作戦を組み立てた。
「まずはドラコンの背中に乗せないとな」
 キールアインは人形をドラゴンの背中に乗せる。
 もちろん、ドラゴンもその存在に気づく。
「人形か? 何をするつもりだ、エクソシスト!」
 ドラゴンは大きな体を揺すって人形を振り落す。
 人形はあっさりと背中から滑り落ちるが、これこそが、キールアインの作戦である。
 彼の作戦は、ドラゴンの背中に視覚から人形を乗せて、注意をそらし、ふるい落としたと勘違いさせたところで、今度は本当に背中に乗ることだ。
 滑り落ちた人形を掴み、ドラゴンの背中に乗ったキールアインは翼の付け根に向かって人形で攻撃を繰り出す。
(どーかんがえても俺じゃ無理ゲーだから、ナツキさんやルーノさんの補助に専念だ)
 キールアインの人形による攻撃がドラゴンの背中に直撃する。
 しかし、ドラゴンの皮膚は硬い、やはり、それほどダメージを負っていない。
「ちょこまかとうざったいエクソシストだな!」
 ドラゴンは劈くように叫ぶと、背中の翼を大きく羽ばたかせた。
 背中が振動し、乗っていたキールアインがバランスを崩す。
「飛ばないって言ったはずじゃ」
「ふん、飛んではいない。羽ばたいただけだ」
「まぁ良いさ、受け身を取れば多分問題ない」
 キールアインは背中から振り落とされたが、しっかり受け身を取ったため、それほど衝撃を感じなかった。
 ここで、ナニーリカが動いた。
 彼女はドラゴンが羽ばたいた時、一瞬後方を向いたのを利用し、ボウガンの一撃を放った。狙うのはドラゴンの目。視界を奪えば戦闘は有利に進むだろう。
 ボウガンの一撃はドラゴンの右目の脇に刺さる。
 チクリする痛みがドラゴンを襲った。
「ボウガンか? なかなかやるな、そこの女!」
「あんまり効いているようには見えませんが……」
 ナニーリカの攻撃を見たキールアインは続けて叫んだ。
「ナニカ攻撃を緩めるな! 攻撃を重ねればダメージは蓄積する」
「わかっています。既に準備は進めています」
 ナニーリカは今度はワーニングショットを放った。
 狙うのは先程と同じ目付近である。
 ナニーリカの攻撃を受け、ドラゴンは一瞬目を閉じる。
 この時、僅かであるが隙ができた。
 ナツキがドラゴンの前に出て、気を引きつつダメージを稼ぐ。
「俺だって負けてねぇぜ」
 ナツキは自慢の武器であるアスカロンを使い、ドラゴンの足を切り裂く。
 アスカロンは老齢の巨大なドラゴンのベリアルを両断した逸話を持つ武器だ。
 物理的な攻撃力も高い。
 ドラゴンは物理的な攻撃に強いが、アスカロンの一撃がドラゴンの硬い皮膚を切り裂いた。
 ドラゴンの脚部から鮮血が迸る。
「俺の皮膚に傷をつけるとは、なかなかいい武器だな! しかしまだ甘い」
 ドラゴンはナツキに向かって突進してくる。
 ナツキは間一髪で突進をかわしていく。
「ちっ。これくらいのダメージじゃあまり意味ねぇか。だがスピードは俺たちの方が上だぜ」
 ドラゴンは体は大きいがその分小回りが利かない。
 そのため、突進も注意を払っていればそれほど脅威にはならない。

 ナツキの攻撃を受け突進したドラゴンは静かに笑う。やはり戦闘は魅力的だ。
(ナツキさんの言うとおり、確かにスピードは俺たちの方に分があるな)
 そう考えたキールアインはナニーリカに指示を出す。
「ナニカ、俺はもう一度ドラゴンの背中に乗る。ワーニングショットで隙を作ってくれ」
「わかりました。前方から攻撃します」
 ナニーリカのワーニングショットが再びドラゴンを襲う。
 今度狙うのは、ナツキが切り裂いた脚部の傷口である。
 ワーニングショットがドラゴンの傷口に刺さり、ドラゴンの表情が曇る。
「傷口を狙うか……。弱点を攻撃するのは基本中の基本というかわけか」
 ドラゴンが言うと、ナニーリカが静かに答える。
「こっちも負けるわけにいきません。少なくとも、あなたが参ったというまでは私は戦います」
 ドラゴンの後方に回ったキールアインは、再び背中に飛び乗った。
 そして翼の付け根向かって人形による攻撃を放つ。
「ルーノさん、ナツキさん、攻撃を!」
 キールアインの役目はあくまでもルーノやナツキの補助である。
 自分の攻撃ではドラゴンにダメージを与えるのは難しい。
 しかし、ルーノやナツキなら可能だろう。
 キールアインの言葉を聞き、ルーノが動く。
 ルーノは死角から一気にドラゴンの前方に出ていく。
「キールアインさん。感謝するよ」
 ルーノはそう言いながら、小咒を放つ。
 積極的に小咒を放つものの、傷ついた仲間の回復を考えて、多用はできない。
 ルーノの一撃がドラゴンの脚部に注がれる。
 傷ついた傷口に小咒が直撃し、ドラゴンは膝を折った。
 ガクッと体勢を崩すドラゴン。
「流石、動きが早いな。しかしまだこれからだぞ」
 ドラゴンは強引に火を噴き、前方にいたルーノを焼こうとした。
「相棒、危ねぇ」
 ナツキが横っ飛びでルーノを突き飛ばし、ドラゴンの火の攻撃を間一髪でかわす。
 ナツキとルーノはギリギリのところで攻撃をかわし、草原に寝そべった。
「相棒、大丈夫か?」
「私は大丈夫。そっちは?」
「俺も大丈夫だ。まだやれるよな相棒!」
「もちろんやれるよ。いい方法を考え付いたんだがやってみよう」
「いい方法? なんだそれ?」
「力で敵わないなら速さで勝負だね。体の下や頭上からの攻撃には対応しにくいと予想している。私が回り込んだりドラゴンを足場にしたりして狙って合図を出すから、ナツキは磔刺の準備をしてほしい」
「わかった。どこを攻撃すればいい?」
「ドラゴンは脚を痛めている、その弱点を突こう」
「了解。任せろ、じゃあそろそろ戦闘に戻ろうぜ!」
 作戦を組み立て、二人は再び戦闘に戻っていく。

 一方、キールアインとナニーリカも依然としてドラゴンと戦っていた。
 二人の力ではどう考えてもドラゴンを攻略できない。
 なんとかナツキやルーノが戻る時間を稼がなければならない。
 相変わらず背中に乗っていたキールアインであったが、彼の攻撃も少しずつドラゴンに効き始めていた。塵も積もれば山となる形である。
 ドラゴンの硬い皮膚の覆われた背中であったが、キールアインのしつこい攻撃を受け、少しだが傷つき始めていた。
「ナニカ、背中に攻撃をするんだ」
「しかし、キルがいては」
「俺は大丈夫だ、気にせずやれ」
 それを聞き、ナニーリカは今度はボウガンによる攻撃を放つ。
「ちょこまかとしたエクソシストめ。これでも食らえ」
 ドラゴンはそう言い、ナニーリカに向かって尻尾をブンと振るった。
 ナニーリカは間一髪で攻撃をかわすが転倒してしまう。
 次の攻撃はかわせないだろう。
「ナニカ!」
 キールアインが叫び、今まさにドラゴンが再び攻撃しようとした時、ルーノとナツキがドラゴンの前に立ちはだかった。
「それまでだぜ、ドラゴン」
 ナツキが言い、ルーノがナニーリカを抱え起こす。
「大丈夫かい? ナニーリカさん」
「は、はい、ありがとうございます」
「後は私たちに任せてください。キールアインさん、ナニーリカさんを頼みます」
 ドラゴンの背中から降りたキールアインがナニーリカの元へ向かい、4人のエクソシストたちが揃う。
 ドラゴンとの戦闘も終盤。
 お互い消耗している。恐らく次の一撃が最後になるだろう。
「行くぜ! 相棒」
「あぁやろうか」
 ルーノとナツキがドラゴンに向かっていく。
 ドラゴンもそれを迎えうつ。
 ルーノはドラゴンの後方に移動し、死角に入る。死角に潜伏し、不意打ちからの奇襲攻撃を狙う。
 ルーノの残りの魔力はまだあるが、あまり魔力を無駄には使えない。
 彼は、小咒でドラゴンの翼部分を攻撃、ドラゴンの注意を引き、ナツキに向かって合図を飛ばす。
「ナツキ! 今だ!」
「おう。任せろ」
 ルーノの合図にナツキが反応。
 彼は、磔刺を使用し、ドラゴンの傷ついた脚部に向かって攻撃を放つ。
「食らえ! ドラゴン」
 ナツキの攻撃がドラゴンの脚部に直撃する。
 ドラゴンは苦痛に顔を歪めながら、それでも反撃する。
 ドラゴンは火を噴き、前方にいたナツキを焼き払おうとする。
「おっと、危ねぇ」
 炎の攻撃をかわしたナツキであったが、その際足を挫いてしまった。
 それをルーノは見ていた。彼はナツキを助けるために、ドラゴンの前に立ちはだかる。
「私が相手だ」
「これでも食らえ! エクソシスト」
 ドラゴンは火の攻撃を緩めない。
 ルーノは、ナツキを支え、火の攻撃をかわすが、体勢を崩してしまう。
 万事休すか……。

 その時だった。
 戦闘を見ていた老ドラゴンが声を出した。
「そこまでだ。そろそろいいだろう」
 それを聞いたドラゴンは不満そうだった。
「なぜ止める? 戦闘はまだまだこれからだぜ」
「お主の足を見てみろ、大分損傷している。これ以上の戦闘は傷口を刺激するだけだ。それにエクソシストたちも大分疲弊している。そこで、私から提案がある。今回の戦闘、どちらも存分に力を発揮したはずだ。なら、引き分けでどうかな?」
 引き分け……。
 その言葉を聞き、ルーノ、ナツキ、キールアイン、ナニーリカの四名が反応する。
 まず声を出したのはナツキであった。
「引き分けか。まぁ負けじゃねぇからいいけどよ」
 その後ナツキが、
「引き分けでも構わないよ。いい腕試しになったしね」
 キールアインも引き分けに了承したようである。
「俺も引き分けで問題ない。もともと俺にとっては無理ゲーだったからな」
 ナニーリカも深く頷き、
「私も引き分けで問題ありません」
「ち! そこまで言うのなら引き分けでもいいけどよ。こっちはまだまだやれるぜ」
 ドラゴンはあくまでも強気であった。
 しかし、傷ついた脚部からは血が流れ出ている。
「では引き分けだ」
 さらに、老ドラゴンが続けて、
「勝負はこれまで。お互いいい模擬決戦になっただろう」
 最後にナツキがドラゴン向かって言った。
「ドラゴン! 次は負けねぇからな!」
「また来い。エクソシストたちよ。俺はいつでも歓迎だ」

 こうして戦闘は終わった――。
 エクソシストたちは大分疲弊していたが、ルーノの天恩天賜Ⅱで体力を回復させた。
 戦闘は引き分けに終わったが、エクソシストとドラゴンの模擬決戦は本番さながらの臨場感があった。
「引き分けか……、まぁいいけどよ、なんか悔しいな」
 ドラゴンが去った竜の渓谷の草原で、ナツキはそんな風に呟いた。
 それを聞いたルーノは彼を励ます。
「それでも負けなかったんだからよしとするべきさ。最後は危なかったしね」
「まぁな。でもいい経験になったな。ドラゴンとはなかなか戦えないぜ」
「そうだね。この経験を活かしていけるといいね」

 キールアインとナニーリカの二人も戦闘を終えて、語り合っていた。
 草原に吹く風が火照った体を冷やしてくれる。
「俺たち役に立てたのかな? なんかやられっぱなしだった感じだけど」
「そんなことありません。キルは立派に戦いました」
「まぁ、ルーノさんやナツキさんのサポートがメインだったからな。それができたし、戦闘も引き分けだったらよかったんだよな?」
「そうです、私たちは無事役目を果たしました。それは誇りましょう」

 引き分けに終わったドラゴンとの模擬決戦。
 ルーノ、ナツキ、キールアイン、ナニーリカの四名にとってもいい経験になっただろう。
 次なる戦闘に向けて、エクソシストたちは竜の渓谷を後にした。


ドラゴンと模擬決戦
(執筆:内山健太 GM)



*** 活躍者 ***

  • ルーノ・クロード
    まぁ、ほどほどに頑張ろうか。
  • ナツキ・ヤクト
    よーし、やるか!

ルーノ・クロード
男性 / ヴァンピール / 陰陽師
ナツキ・ヤクト
男性 / ライカンスロープ / 断罪者




作戦掲示板

[1] エノク・アゼル 2018/10/07-00:00

ここは、本指令の作戦会議などを行う場だ。
まずは、参加する仲間へ挨拶し、コミュニケーションを取るのが良いだろう。  
 

[5] ナツキ・ヤクト 2018/10/17-22:33

おっ、よろしくな!
確かに簡単にはいかない相手だよな、強そうだし!楽しみだな!(尻尾ぶんぶん)

こっちもプランは決まったぜ。
サポートありがとな、頑張ろうぜ!  
 

[4] キールアイン・ギルフォード 2018/10/17-22:22

プラン提出かんりょ〜、どーかんがえても俺じゃ無理ゲーだから、ナツキさんの攻撃通るのを狙う感じにしといたぜ。
 
 

[3] キールアイン・ギルフォード 2018/10/17-22:14

ナツキさん、よろしくね。
うーん、ひさびさに参加してみたけど、これきっつそうだ。
まぁ、模擬戦だし、負けても問題はわけね。
でも、やれることはやるぜ。
 
 

[2] ナツキ・ヤクト 2018/10/16-23:15

ドラゴンとの模擬戦か!よーし、やってやるぜ!

一応効きやすいのは魔術攻撃だけど、物理攻撃も注意引き付けたりとかやり方次第って感じだよな。
せっかくの模擬戦だし、色々試してみるか!