くっついちゃったの!
とても簡単 | すべて
8/8名
くっついちゃったの! 情報
担当 GM
タイプ ショート
ジャンル コメディ
条件 すべて
難易度 とても簡単
報酬 ほんの少し
相談期間 3 日
公開日 2018-10-18 00:00:00
出発日 2018-10-24 00:00:00
帰還日 2018-10-30



~ プロローグ ~

 これは、どういうことなんですか。ウィリさん!
「えーと」
 ちゃんとした説明求めますよ? 
「五徹キメて作業するのはよくないと思うザマスよ」
 ごもっとも! あんたなぁ! これどうするんだ!


 現在、浄化師たちの手と手はがっつりとくっついていた。
 指が絡み合い、しっかりとつながっている状態。恋人繋ぎである。

 ことの発端は、さまざまな道具を作ることを生業としている魔術鍛冶職人ウィリが「ちょっとめんどくさい液体作ったザマス、悪いザマスが、瓶にいれるの手伝うザマス」といったので、彼の作業室に訪れて仕方なく手伝った。手伝ったはいいのだが……。
「あっ」
 ウィリがそう呟いた瞬間、思いっきりこけた。それを助けようとしたのが運のツキ。
 ウィリの手にもっていた液体がかかったのだ。
 そうして、現在に至る。

「怒らないでほしいザマス。一時間もしたら自然と外れるザマス」
 え、まって。一時間はこのまま?
「そうザマス」
 きりっとした顔で言い切られた。
「ちなみに、そのくっついちゃーうの液にはいろいろなものがはいっているザマス」
 ネーミングセンスないなぁ。ウィリ。
「うるさいザマス! 聞くザマス。それには惚れ薬の成分もはいってるザマス! 惚れ薬の成分っていうのは、つまりは脳の誤作動を起こすもの。手を繋いでいるだけでどきどきしてしまう、相手を意識してしまうそういう成分ザマスっ」
 お、おう。
「一時間も手を繋いでいたら、もうキスしたくなるほどに相手が愛しくなるザマスよ」
 ……ちょっとぉおおお!
「えへザマス」
 こ、こいつ、悪いと思ってない。絶対に悪いと思ってない!
「実際、キスしたくなるかとか思わず告白しちゃうのかは個人差があるザマス。
 薬の効果が本当にきくのかもぶっちゃけ試作品なのでわからないザマス。全然作用しない可能性もあるザマスし、効果抜群の場合もあるザマス」
 え、えー。
「まぁ、これ、最近嫁に構われないから強制的にくっつきたいとか泣きついてきた狐面の浄化師の依頼ザマスが」
 なんだろう、誰が依頼者か、すげー想像ができる。え、薬の効果っていうのは。
「今回、薬をつくるのに使用したニムファの幻覚作用を持つ成分が惚れ薬的なアレとして使用できるかの実験も兼ねているザマス。
 ようは、幻覚作用でくっついている相手がすごく素敵に見えるザマス。相手に一ミリ単位も関心がなければ、まぁかっこよく見えてどきどきするなぁ程度ザマスが、実は好意を無意識にも持っていたらもう世界はきらきらするし、一つ一つの動作にときめいて胸が苦しくなるザマス。だから恋愛要素なんてないと本人同士が思えばたいした効果はないザマス」
 は、はぁ。
「一時間後にはなんでときめいていたのかと思う程度ザマス」
 もし、好意を持っていたら?
「どきどきし続けるザマスね。無意識でも持っていたならもう大変かもしれないザマス、きっと」
 ひぇ。
「なーんて、嘘ザマス。手が離れたあと、じわじわと薬の成分が抜けて落ち着くザマスよ。そんなわけでたいして害はないから安心するザマス。僕は眠いので寝るザマス。おやすみザマス」
 え、えええ!
「一時間、どう過ごすかは好きにするザマス。あ、結果はレポートをまとめておくザマス。研究の足しにするざま……すやぁ」
 言うだけ言って毛布にくるまって寝やがったよ、こいつ!


~ 解説 ~

 徹夜で仕事するからそういうことになるのよ。
 働きすぎだめ、絶対だめ。

 今回はタイトルまんまです。 
 くっついちゃった。
 一時間したら外れるので、その間、手を繋ぎあいます。その間どうするかは自由です。
 場所は教団本部です。
 教団内なら、ある程度好きに出歩けるでしょう。

●プランにほしいもの
・手をくっついたままどう過ごすのか。
 指を絡めた恋人繋ぎです。(強制) 教団内をほっつき歩くもいいし、言い合いをするのもいい、人に見られるの恥ずかしくて隠れるのもいいです。ご自由にどうぞ。

・惚れ薬成分にいかに楽しく翻弄されるのか(任意)
 これは個人差がありますので必ずしも作用するわけではありません。まったく作用しない人たちはなんの影響もないでしょう。
作用した場合、「なんだ、今日はかっこいいな」とか。無意識に好意があるとどきどきどきとします。好意を自覚しているとさらに世界はきれいに見えるかもしれない。多分。
 この胸のときめきがニムファの幻覚作用なのか、手を繋いでいるせいなのか、それとも自分の気持ちなのかはご想像にお任せします。




~ ゲームマスターより ~

 ウィリは寝ています。私もその横ですやぁと寝ています。
 みなさん、その間にどんな風に過ごすか楽しみにしてます。ふふふふ。





◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇

ユーベル・シュテアネ 灯火・鴇色
女性 / アンデッド / 墓守 男性 / ライカンスロープ / 断罪者
【目的】
手を早く離さないと

【行動】
なんとか早めに離そうとする
とりあえず人目につかない所に移動する
なんとか取れないか苦心する
名前を呼べば取れると聞いて名前呼び合う

【心情】
ふぁ??
な、なんで私の手がお狐様と繋がってるの?
い、嫌な訳じゃないけど、恥ずかしいし…
私なんかと手を繋いだらお狐様穢れちゃうし(思い込み)
早く取らないと駄目だよね
あ、でもとりあえず早く人目につかないとこにいかないと
それにしても、全然外れない
こんな指と指を絡ませるような握り方…
契約の時しかしたことないのに
え、な、名前で呼ぴ合えば取れるの?
で、でも…お狐様を名前で呼ぶなんて…
取りたいけど…でも
と…鴇色、様(下の名前では呼ばず)
ニーナ・ルアルディ グレン・カーヴェル
女性 / 人間 / 占星術師 男性 / 人間 / 拷問官
いつも一緒にいる訳ですし、一時間ぐらい大丈夫ですよ!

あっ!カフェテリアに新しいケーキが出てたんでしたっ!
早速食べに行…ひゃん!
あ、そっか、手を繋いだままでしたね…
もう!グレンが動いてくれないと食べに行けないじゃないですかー!
それは、確かにそうですけど…うぅ、ならお買い物にでも…きゃん!

ここに座ってからグレン、全然こっち見てくれませんしお話もしてくれません…
何だか胸の奥がきゅってなって寂しいです…
よーし、ならばどっきりです!ほっぺにちゅーです!
…あれっ、私ってば何でよりによってそれを?まあいいですよね。

びっくりしましたー?
あぁぁごめんなさいほっぺたのびちゃいますぅぅ!
ショーン・ハイド レオノル・ペリエ
男性 / アンデッド / 悪魔祓い 女性 / エレメンツ / 狂信者
俺のドクターがこんなに可愛い筈が…可愛い
これが薬の効果か…2倍近く年上の俺がドクターに手を出したら倫理的にアウ…
ああああ可愛い生き物が首傾げてる!

へっ?
ええ。呼吸も相応に増えるので…んんんんんん!?
駄目です無闇な身体的接触は!(※抱き着かれただけ)
やめてくださいそれいじょうのばくろはしんでしまいます
お、大人をからかわないでください!
貴女は子供でしょう?それを超えるのは人として許されません!

…み、耳に囁かれたけど…とっくに成人してる年齢だぞ…!!
でも抱きしめるのは無理です!ドクターが折れそうです!
可愛い…可愛い…つらい
(※後日年端も行かない少女に手を出したと同僚に勘違いされ白い目でみられた模様)
杜郷・唯月 泉世・瞬
女性 / 人間 / 占星術師 男性 / アンデッド / 狂信者
◆手を繋ぐこと自体は二人にとっても元々特別なこと
・主理由:スペル詠唱時に両手を繋ぐ
・が、戦い前にしても二人で外出するにしても
恋人繋ぎは初めて
・緊張する唯月を前にシュンとする瞬。唯月は気持ちは伝えなきゃと
唯「ううぅ…」
(恋人にはなりましたが…なんだか最近距離感が…お、おかしいような…)
瞬「いづ大丈夫?」
…いつもはただ繋ぐだけだからなんだか新鮮だね~
俺、いづとまた近づけたような気がして嬉しんだけどなぁ?
やっぱり…まだ緊張、しちゃう?」
唯「あっ…その、あの…」
瞬「ふふ、困らせちゃってごめん…とりあえず一時間人目を避けて…」
唯「わ、わたしも…瞬さんとその…う、嬉しい、ですから!」
瞬「えへへ良かった~」
リチェルカーレ・リモージュ シリウス・セイアッド
女性 / 人間 / 陰陽師 男性 / ヴァンピール / 断罪者
わあ…本当にくっついちゃってる…
もう片方の手で くっついた手をつついたり引っ張ったりして不思議そうに
どうしたのシリウス
どこか体の具合でも悪い?
そう ならいいんだけれど…

中庭まで散歩
知り合いに揶揄されたら 
ウィリさんの薬で 一時間このままなんです
何の薬?ええとね 惚れ
口を塞がれて瞬きひとつ
(あ、手のひら大きい。男のひとの手だ)
どきりと跳ね上がる 心臓の音が聞こえた

どうしようシリウス 何かどきどきしてきた
顔も熱くなってきたし…
薬の?じゃあシリウスも?
ふいと逸らされた顔に不思議そうに首を傾げる

何となく話しにくくなり 近くの花を摘む
痛っ… あ、ううん 大丈夫
ちょっと葉っぱで切っただ…!?
近づいた彼の顔と唇の感触に真っ赤
アユカ・セイロウ 花咲・楓
女性 / エレメンツ / 陰陽師 男性 / 人間 / 悪魔祓い
どうしようどうしよう、なんかすごくドキドキするよ…!
何か別のことをして気を紛らわせないと!

かーくん、図書館へ行って本でも読まない?

なるべく堅苦しくて難しそうな内容の本にしよう
難しいこと考えてれば、手を繋いでること、あまり意識しなくて済む…かも

ドキドキするのは、無意識にでも好意があるからだって、ウィリさんは言ってた
わたしはかーくんのこと、信頼してるって思ってる
でも恋愛感情は…
…これはきっと、信頼感さえ恋だと勘違いさせてしまう薬なんだよ、きっとそう

こんな薬とか、不意のアクシデントとか…そういうのでドキドキするのが恋だなんて、思いたくない

自分のことに精一杯で、かーくんの様子を見てる余裕なんてなかった

ラウル・イースト ララエル・エリーゼ
男性 / 人間 / 悪魔祓い 女性 / アンデッド / 人形遣い
※アドリブ歓迎します

…何だか以前(9話)にも同じような事があった気がするね。
しかしどうするか…(どうしようか悩んでいると、周りには
沢山のギャラリーが。恋人繋ぎをしている二人を冷やかす)

なっ…! 違、別に恋人ってわけじゃ…

(ギャラリーにチューゥ、チューゥと手拍子される)

(なっ…でも今日のララエルはいつもより可愛く見える…
いや、いつも可愛いけど…確かに愛してるけど…でも僕は臆病だから
こうしてキスする事しかできない)

(ララエルを抱き締めてキスをすると、周りからヒュー! という歓声やロリコンーといった声が)

う…別にいいだろ、散れ、散れっ(恥ずかしがりながら)
アリシア・ムーンライト クリストフ・フォンシラー
女性 / 人間 / 陰陽師 男性 / アンデッド / 断罪者
ど、どうして、この手…取れないんですか…
時間が経てば、取れるんですか……あ、良かった…
でも、これ、人に見られたら、恥ずかしい、ですし…

羞恥心と緊張からいつもより更にどもりがち
顔が真っ赤に

どうしよう、手が繋がってるから、ずっと距離が近くて…
すごくドキドキします……
何でしょう、この、気持ち……

顔を上げれば目が合って、思わずパッと顔を伏せる

(心の声)
私…私っ、もしかして……!?
え、でも
大切なパートナーとは思ってましたけど
そこまでの気持ちは……でも、現に

クリスの声にビクッと反応

ななな、何でもっ!
え、熱があるわけじゃ……

惚れ薬…そう、なんですか?
じゃあ、この気持ちは…薬の?

本当に薬の効果なんでしょうか…


~ リザルトノベル ~

「ふぁ?? な、なんで私の手がお狐様と繋がってるの?」
 『ユーベル・シュテアネ』が繋がった手を見つめて困惑した声をあげる。その様子を面白がるように『灯火・鴇色』が目を細めて見つめる。
 早く手を離さないと、とユーベルは焦った。
(私なんかと手を繋いだらお狐様穢れちゃうし)
 それはただの思い込みで、灯火はちっともいやがってないが、それを察するだけの余裕なんてユーベルにはない。
 はやく手を離さないと、と一心に思っていてウィリの一時間後には薬の効き目が切れるというのは聞こえていなかった。
「早く取らないと駄目だよね。あ、でもとりあえず早く人目につかないとこにいかないと」
 教団で人のいないところってどこだろう? 
 おろおろするユーベルは灯火が指に力をいれたのに、ひゃいと声をあげた。
 見上げると灯火がにやりと唇を吊り上げる。
「外れないな。どうした」
 ふるふるとユーベルは首を横に振って、薬のせい、薬のせいと呟く。
(中々に面白いが、惚れ薬はいただけんな。本心から俺のところに来てもらわないと)
 プライドの高い灯火は薬のせいで、というのが実に気に食わないのだ。それでもおろおろほわほわするユーベルは見ていて面白いものだ。
 それに。
(まだ俺の事を異性として意識していないのは問題だ。今回はうってつけだ)
 指先に僅かな力をいれるたびに、ユーベルがびくりと跳ねては見つめてくる。それに灯火は蕩けるほどの甘い笑みを浮かべるのだ。

 人目を避けて八階の時計台までやってきた。
 街を一望できるここは見張り台として使われるのだが、なかなかに階段がハードでめったに人がいない。
 吹き抜ける風に晴天の、優しい街の風景を見て二人きりの空間で過ごす。
(それにしても、全然外れない。こんな指と指を絡ませるような握り方……契約の時しかしたことないのに)
「どうやら全然外れないようだ。困ったなシュテアネ?」
「は、はい」
「まぁ、俺としてはずっとこのままでも構わないがな? あぁ、言い忘れてたが、どうやらこの薬はお互いが名前で呼び合わないと外れないらしい。どうする?」
 甘い飴玉を転がす様に意地悪く告げるとユーベルの頬は真っ赤になる。
「え、な、名前で呼び合えば取れるの? で、でも……お狐様を名前で呼ぶなんて……取りたいけど……でも、と……鴇色、様」
「聞こえんシュテアネ」
「と、鴇色様」
 指に力がはいる。
「鴇色様、鴇色様、ま、まだでしょうか?」
「シュテアネ、もう一回」
「鴇色様」
 ようやく手が離れても心臓がどきどきしているのにシュテアネは赤い瞳で灯火を見上げた。
 少しだけ寂しい、と思うのは薬のせい?


(考えようによっちゃこれ、ニーナの動きを大分制限出来て楽なのか?)
 『グレン・カーヴェル』はつながった手を見つめてそう結論づけることにした。そうしないとやっていられない。
「いつも一緒にいる訳ですし、一時間ぐらい大丈夫ですよ!」
 笑顔で『ニーナ・ルアルディ』がこの危機的状況に対してちっとも自覚のない発言をする。
 繋がっているうえに惚れ薬効果があるかもしれないのだ。グレンはニーナから視線を逸らし、出来るだけ意識の外に置いておこうと決めた。
(第一惚れ薬効果で手を出しましたなんて知られたら親父達に何を言われるか……)
 考えただけで頭痛がする。
 と。
 ぐいっと引っ張られる。
「あっ! カフェテリアに新しいケーキが出てたんでしたっ! 早速食べに行……ひゃん!」
「おい引っ張るな!」
 グレンが足に力をこめれば、小柄なニーナは動きようがない。まるで首輪をつけられたチワワよろしく状態。
「あ、そっか、手を繋いだままでしたね……もう! グレンが動いてくれないと食べに行けないじゃないですかー!」
「忘れてたのかよ。お前はついさっき食事を取ったばかりなはずだが? 散歩に出してやった犬か何かかお前は!」
「それは、確かにそうですけど……うぅ、ならお買い物にでも……きゃん!」
 歩き出そうとするニーナはまたしてもグレンにひっぱられて動けない。
「こんな状態で外に行けるか、外出も禁止だ!」
「そんなぁ~」

 とにかく目立たず一時間過ごすため、グレンはニーナを連れて魔術学院のカフェコーナーにやってきた。ここなら本があって時間も潰せるし、座っていれば手を繋いでいても目立たない。はず。
 グレンは文庫本を、ニーナはアクセサリーの本を読む。
 ちら、ちらとニーナはグレンを盗み見る。
(グレン、全然こっち見てくれませんしお話もしてくれません。何だか胸の奥がきゅってなって寂しいです……よーし、ならばどっきりです! ほっぺにちゅーです! ……あれっ、私ってば何でよりによってそれを? まあいいですよね)
 とニーナが決意する横で本にちっとも集中できないグレンは内心嘆息していた。
(今の関係は嫌ではないが、正直煩わしいと思う時はある。俺がどこがで線引きをしてやらないと、こいつのためにならない)
 むにゅ。
 柔らかな頬への衝撃にグレンが瞠目する。
「びっくりしましたー?」
 笑顔のニーナが顔を覗き込む。
 グレンは本を手から落とし、拳を握る。そして手をおもむろに伸ばすとニーナの頬に触れ、撫でた――ニーナの心臓がどきりと高鳴った次の瞬間、思いっきり引っ張られた。
「あぁぁごめんなさいほっぺたのびちゃいますぅぅ!」
「人の気も知らんでお前はぁぁ!」


 『レオノル・ペリエ』は困惑していた。目の前には非常に微妙に追い詰められた『ショーン・ハイド』がいるからだ。
「? どうしたの? ショーン」
「俺のドクターがこんなに可愛い筈が……可愛い! これが薬の効果か……2倍近く年上の俺がドクターに手を出したら倫理的にアウ……ああああ可愛い生き物が首傾げてる!」
 この状態である。
「参ったな。ショーンが惚れ薬にやられてる。好意を持たれるのはいいけど……本人の情緒が心配だ」
 周りから見ている教団職員も大変心配である。何してるんだ。
「あのさ、医学や薬学に詳しいから聞くけど、代謝が良くなると薬物の分解は進むよね?」
「へっ? 可愛い生き物が聞いてくる可愛い。ええ。呼吸も相応に増えるので?」
「んじゃ極端に心拍数上げればいいんだ」
 レオノルはとってもいい思いつきをした、と笑顔を作る。
 細い片腕を伸ばしてショーンに抱きついた。
 かたく、逞しい胸板が額にあたる。鍛えているので贅肉がついておらず、必要なところに必要な筋肉がついた腰は細く、しっかりしている。それに微かな渋いコロンの匂い。
「んんんんんん!?」
 ショーンは目を閉じて唸った。
 やばい、柔らかくて、いい匂いが鼻孔を襲う!
「駄目です無闇な身体的接触は!」
 抱きついているだけである。
「無闇に触れるなって言うけど、今は手をがっちりつないでるし、こないだなんて裸で私のこと抱きし」
「やめてくださいそれいじょうのばくろはしんでしまいます。お、大人をからかわないでください!」
「……撫でていいんだよ? ほら、ぎゅーって抱きしめてもいいんだよ?」
「っっ! 貴女は子供でしょう? それを超えるのは人として許されません!」
 しつこいが、まだ抱きついているだけである。
「へ? ショーン、そう思ってたんだ? ふふふ。教えてあげるよ。私はね」
 内緒話をするとばかりにレオノルがショーンの上着をひっぱる。それにショーンは力なく屈みこむしかない。
 間近にあるレオノルの顔はいたずらっ子みたいに輝いて耳元にピンクの唇が近づいて、甘い声が流れ込む。
(み、耳に囁かれたけど……とっくに成人してる年齢だぞ……!)
 それだけは理解したショーンである。
「という訳で抱き着いても大丈夫だよ! ちぇすとー!!」
 首にぎゅうと抱きしめられてショーンは硬直する。
「でも抱きしめるのは無理です! ドクターが折れそうです!」
「えー、抱きしめるのは駄目なの? んじゃ頭撫でて撫でてー……へへ。撫でてくれる人なんてそういないから幸せだよね」
「可愛い、可愛い……つらい」
 さらさらの髪を撫で、尖った可愛らしい耳を指先で味わいショーンは呟いた。
 後日、この光景を見て勘違いした同僚から冷たい目で見られる羽目になるが今は知らぬ話。

「ううぅ……」
 緊張に固まる『杜郷・唯月』の横では、そんな唯月を見つめて叱られた大型犬のようにしゅんとする『泉世・瞬』がいる。
(恋人にはなりましたが……なんだか最近距離感が……お、おかしいような)
 ようやく想いを繋ぎあって恋人になったが、そうなると今まで我慢していたぶんを埋める様に二人は距離を縮め始めた。
 膝枕をしたり、抱擁があったり、キスも。
 今回は薬のせいで手を繋いでしまっている。
 唯月の心臓はもうばくばくしすぎて壊れてしまいそうだ。
 手を繋ぐのは魔術真名のために行う特別な行為だ。それに今まで手をとることはあっても、指まで絡めたのははじめてだ。
「いづ大丈夫? ……いつもはただ繋ぐだけだからなんだか新鮮だね~」
「はっ、ひゃい!」
 思わず舌を噛んでしまった。
「やっぱり、まだ緊張、しちゃう? ……俺、いづとまた近づけたような気がして嬉しんだけどなぁ?」
 自分に向けられる瞬の甘い言葉に胸が早鐘のように脈打つ。
「あっ……その、あの……」
「ふふ、困らせちゃってごめん……とりあえず一時間人目を避けて」
 少しだけ笑顔に陰りが出来るのに唯月は気が付いた。そんな顔をさせたいわけじゃない。
 違う。
 嬉しいのに、うまくそれを示せない。こんな自分が少しいやになる。けど、そんな自分のことを瞬は好きだと口にしてくれた。
(別に瞬さんと手を繋ぐのが嫌な訳ではありません。ただ……最近目まぐるしい事ばかりで……精一杯、で……膝枕だって瞬さんが必要ならまた出来ますし、抱きしめられるのだって正直ホッとして……キッ……キス……だって、その……嫌というわけでは……ああ、でもこれは瞬さん忘れて……そう?)
 心のなかではいっぱい、いっぱい言いたいことを考えるのに、ちっとも出てこない。それだけで目の奥がツンと痛くて、泣きそうになる。
 強くなるって決めたから。だから。ちゃんと、伝えなきゃ。
 唯月は指先に力をこめた。
 引き留める様に。すると瞬も察してくれて不思議そうに足を止めて屈みこんでくれる。
「いづ?」
「わ、わたしも……瞬さんとその……う、嬉しい、ですから!」
「えへへ良かった~」
 嬉しくて、本当に幸せそうな笑顔。
 この笑顔をわたしが作ったんだ。
「あ、あの、きらきら、しますか?」
「う~ん。ぜんぜん変わらないんだぁ~。いづと出会ったときから世界がきらきらしてるから、今さら薬じゃ変わらないんじゃないかな?」
「そうで、え!」
 瞬の言葉の意味を理解して唯月は真っ赤になった。


「わあ。本当にくっついちゃってる……ねぇシリウス」
 無邪気に『リチェルカーレ・リモージュ』は繋いでいる手をあいている手でつかんだり、細い指先でつついたりしている。
 いつもなら何か返事があるはずなのに、ない。
 リチェルカーレが顔をあげた。
 『シリウス・セイアッド』の鋭い目がいつも以上の険を孕んで繋いだ手を見ている。
「どうしたのシリウス、どこか体の具合でも悪い?」
「いや……くだらない薬を……馬鹿じゃないのか」
「そう? ならいいんだけれど……え、なにか言った? 最後のところ、聞こえなかったの」
 シリウスはひどく疲れたように、頭痛を覚えたように目を伏せて首を横に振るのにリチェルカーレは小首を傾げた。
 リチェルカーレは何も悪くない。ただ、その細い指先に、柔らかな肌が、繋いだ手からいやでも感じてしまうから。
(惚れ薬なんて知らないだろうな)
 はぁとため息が漏れた。

 部屋にいても仕方ないので二人は中庭に移動した。あたたかな日向のぬくもりにリチェルカーレの口元が自然と緩む。
 シリウスはそんな彼女とは異なり、緊張していた。
 戦いでも庇う以外では自分から彼女に触れないようにしていた。
 ――大切にした人を、自分は不幸にするから。
 家族がそうだったように。
 それがただの思い込みなのか、実際そうなのかはシリウスにはわからない。ただ彼女はパートナーなのだから、それに今まで不幸なことなんて訪れなかった。だったら。
(触れても、平気、なのか……?)
 ぼんやりとシリウスが見つめると時々指令で一緒になる浄化師たちが無邪気に近づき、視線が繋いだ手に向かっている。
「あ、これはウィリさんの薬で一時間このままなんです。何の薬? ええとね 惚れ」 
 シリウスの手がリチェルカーレの無邪気な口を塞いだ。
 その手の大きさにリチェルカーレの心臓が高鳴る。
 知り合いたちはシリウスに睨まれて肩を竦めて笑いながら去っていく。
「……どうしようシリウス 何かどきどきしてきた。顔も熱くなってきたし」
「薬のせいだ。気にするな」
「薬の? じゃあシリウスも?」
「知らない」
 意識しないようにしていたのに、たった一言で頬に熱が集まるのをシリウスは感じて顔を逸らした。

「痛っ!」
「どうした?」
 つい話しづらくて沈黙が流れたのにリチェルカーレは近くにあった花に触れていた。
「あ、ううん 大丈夫。ちょっと葉っぱで切っただけ」
 白い指先に、赤い血が浮かぶ。
「消毒しないと」
 シリウスが、柔らかな手をとってゆっくりと口づける。
 顔が近い、熱が指先から全身に広がる。
 視線が合う。
 甘い、とシリウスは甘美に酔ったとき、我に返り、慌てて身を離す。リチェルカーレも真っ赤になって俯いた。
 薬のせいなのか、そうでないのかも今の二人にはわからない。


 『アユカ・セイロウ』と『花咲・楓』は非常に困っていた。
(どうしようどうしよう、なんかすごくドキドキするよ……! 何か別のことをして気を紛らわせないと!)
 アユカは一生懸命考えていた。
 一方、楓も。
(まずい。薬が効いていることを彼女に悟られるわけにはいかない)
 二人とも、心臓が早鐘のように脈打ち、頬が火照るのを感じて、自分の状態を相手に気がつかれないようにと必死になる。

「かーくん、図書館へ行って本でも読まない?」
「アユカさん、図書館へ行って本でも読みませんか?」
 言葉が重なった。
「行こう! 二人で勉強しよう!」
「ええ。行きましょう!」
 必死に言いながらアユカは自分の言葉に照れて真っ赤になった。楓と二人きりで一時間も過ごせると意識すると頭が真っ白になる。
 楓もアユカの言葉に二人きりを意識して喉を鳴らし、繋いだ指先に力をこめていた。

(なるべく堅苦しくて難しそうな内容の本にしよう! 難しいこと考えてれば、手を繋いでること、あまり意識しなくて済む……かも)
 分厚い本を探していると、頭一つ上のところにあったのにアユカは手を伸ばす。それを察した楓が腕を伸ばして、本をとった。
「かーくん、お、おっきいね」
「そ、そんなことはないです……私は、こ、こっちを」

 分厚い本を二人とも選んでカフェコーナーで並んで本を開く。
 難しい文字の羅列を目で追っても繋いだ手のぬくもりに心が向かってしまう。
(ドキドキするのは、無意識にでも好意があるからだって、ウィリさんは言ってた。わたしはかーくんのこと、信頼してるって思ってる。でも恋愛感情は)
 アユカは必死に本心を覆う言い訳を探した。
(これはきっと信頼感さえ恋だと勘違いさせてしまう薬なんだよ、きっとそう)
 それに。
(こんな薬とか、不意のアクシデントとか、そういうのでドキドキするのが恋だなんて、思いたくない)
 自分のことに必死なアユカは隣にいる楓の状態が自分と同じなことにちっとも気が付かなかった。

 それは楓も同じだ。
(正直、やはりこうなったか……と思う。この気持ちはきっと彼女に出会った時から抱いていた……だが私には過ぎた感情だと無意識に蓋をしていた)
 本の文字はただ過ぎていくばかりで、頭にちっともはいらない。アユカの甘い匂い、ぬくもりが頭のなかをしめていく。
(これからも表向きは蓋をするだろう。彼女に迷惑はかけたくない)
 ただ薬が切れるまでは、傍らにいるぬくもりを味わうことが楓には許された。
 互いのことを見ることのできない二人は、ひたすらに本を目で追いかけて悶々と過ごした。

 がっちりと繋いだ手を見て『ラウル・イースト』と『ララエル・エリーゼ』は苦笑いを零した。
「何だか以前にも同じような事があった気がするね」
「何だか以前にも同じような事があった気がします」
 あのときは赤いリボンで結ばれていろいろと大変だったとラウルが思い出していると。
「えへへ、あの時は私、大人の階段を昇ったんですよね!」
「ララ、誤解を招くから!」
「誤解を招く?」
 きょとんとララエルが小首を傾げるのにラウルはどう説明すべきか迷っているとララエルのかわいらしい唇に目がいって慌てて逸らした。
「でも、ずっとこのままじゃ困っちゃいますね」
(それにしても…今日のラウルは何だかカッコいいです……凄く胸がドキドキします……)

 とにかく、目立たないところへと思ったらちょうどエントランスの端で「突撃きみたち恋人」などとよくわからない企画をして、恋人の浄化師たちにいちゃつき度に合わせて粗品をあげるということをしていた。
「あれ、二人とも恋人ですかー?」「手を繋いじゃって、見せつけてるぅ~!」
「なっ……! 違、別に恋人ってわけじゃ」
 ラウルが慌てて訂正しようとするが、そんなことを企画担当者は聞いてはいない。
「ささ、これだけもういちゃついてるならなんか別のこととかしなきゃねぇ」
「ちゅーとか?」
「そうね、熱いちゅーを一つ!」
 コントじみたやりとりにラウルは言葉に詰まる。
 キス? ララエルと?
「ほらほらどうぞ」
「どうぞどうぞ」
 周りの野次馬たちも興味津々と見ている。
「う」
「ラウル」
 ララエルに視線を向けると、ラウルは息を飲んだ。
(なっ、でも今日のララエルはいつもより可愛く見える……いや、いつも可愛い、確かに愛してるけど……でも僕は臆病だからこうしてキスする事しかできない)
 薬のせいじゃなくて、自分の気持ちに従ってラウルはララエルを抱き寄せてその唇を奪い取る。
「ん、ふぅ」
 甘い声がララエルから漏れた。
 周りからヒュー! という歓声やロリコンーといった声が聞こえてきたのにラウルはきっと睨みつける。
「うう、別にいいだろ、散れ、散れっ! 粗品もいらない!」
「そうです! 冷やかしなんて怖くないですよ! ラウルとキスしたのは私の意思ですから! ものなんてなくてもいいんです!」
 ララエルが宣言したのに沈黙が流れ、野次馬たちはごちそうさま、と口にして去っていった。
「あ、あれ? どうしたんでしょう」
 きょとんとするララエルに真っ赤になったラウルは言葉を失った。


「ど、どうして、この手……取れないんですか……時間が経てば、取れるんですか……あ、良かった……でも、これ、人に見られたら、恥ずかしい、ですし」
 『アリシア・ムーンライト』は緊張にいつも以上にどもってしまいながらウィリに詰め寄り、一時間後に解ける、と聞いて安堵した次には視線のやり場に困ってしまい、真っ赤になって俯いた。
 意識しないようにしてもつながった手の大きさが、ぬくもりが意識してしまう。
「参ったな、これじゃあアリシアに内緒で出掛けることもできないよね」
 茶化して穏やかに笑う『クリストフ・フォンシラー』に、アリシアはどきまぎしてしまう。
「は、は、はい」
「時間が経てば取れるんだし少しの辛抱だよ。ま、恥ずかしいなら教団の休憩室でも借りてお茶してようか?」
 こくんと、俯いたままアリシアは頷いた。

 クリストフはちらちらと隣を歩くアリシアを気にしながら休憩室へと向かった。
 先ほどからアリシアが異常なくらいに緊張している。なかなか顔をあげないし、視線も合わない。
「アリシア、大丈夫かい?」
「あ、は、はい……へ、へいき、です」
「なら、いいんだけど」
 女の子が男とくっついた状態とはなかなかに困り事が多いだろうと気を遣うのだが、それだけではない気がして、クリストフはじっとアリシアを見つめた。

(どうしよう、手が繋がってるから、ずっと距離が近くて……すごくドキドキします……何でしょう、この、気持ち……)
 先ほどから柔らかな気遣う視線を感じてアリシアが思い切って顔をあげる。
 美しい、太陽の瞳と目があった。
「あ……っ!」
 ばっとアリシアは顔を下げた。
(私……私っ、もしかして……!? え、でも、大切なパートナーとは思ってましたけど、そこまでの気持ちは……でも、現に)
 自分の反応にアリシアは大混乱だ。
「アリシア? もしかして熱があるんじゃ?」
 伸ばされたクリストフの手が大きくて、アリシアは慌てて縮こまった。
「ななな、何でもっ! え、熱があるわけじゃ……」
 怖いわけじゃない、ただ触れられたら火傷してしまいそうに思えた。触れたところから全身に広がる熱に侵されてしまう。
「……ひょっとして惚れ薬の効果に中っちゃった? 聞いてなかった? そう言う効果があるって」
「惚れ薬……そう、なんですか? じゃあ、この気持ちは……薬の?」
「たぶんね」
 その言葉にアリシアは、ほっと安堵したが同時に。
(本当に薬の効果なんでしょうか……?)
 アリシアが考えに没頭するのをクリストフは目を細めて眺めていた。
(教えたらちょっと落ち着いた、かな? にしてもこの薬、俺には効いてないのか。まあ薬なんていらないんだけどね)



くっついちゃったの!
(執筆: GM)



*** 活躍者 ***

  • ショーン・ハイド
    …素知らぬ顔は都合がいいのです
  • レオノル・ペリエ
    君が誰であっても関係ないけどね?

ショーン・ハイド
男性 / アンデッド / 悪魔祓い
レオノル・ペリエ
女性 / エレメンツ / 狂信者




作戦掲示板

[1] エノク・アゼル 2018/10/06-00:00

ここは、本指令の作戦会議などを行う場だ。
まずは、参加する仲間へ挨拶し、コミュニケーションを取るのが良いだろう。  
 

[3] 灯火・鴇色 2018/10/23-00:54

皆、初めましてだな。
鴇色 灯火だ。
パートナーはシュテアネと言う。

手が離せなくなる、か。
どんな反応をするか、今から楽しみにしている。
…見られるのが恥ずかしい?
教団の奴等に、見せつけてやればいいだろう?

まぁ、よしなに頼もうか。  
 

[2] リチェルカーレ・リモージュ 2018/10/21-21:39

リチェルカーレです。パートナーはシリウス。
どうぞよろしくお願いします。
ええと…

シリウス:…(頭痛を堪えるような顔をしてくっついた手を見ている)

1時間で取れるみたいだし、がんばろう、ね?