~ プロローグ ~ |
とある昼下がり。教団本部の廊下をずんずんと足音を立てて歩く女性職員がいた。 |
~ 解説 ~ |
身の回りをきれいにしましょう。 |
~ ゲームマスターより ~ |
はじめまして、北乃わかめと申します。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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あおい:突然の依頼だけれど、綺麗にするのは悪くないと思います なので私は掃除に行ってきます(すたすたと去って行く) …勝手に依頼を受けたのは私ですから、 それに制服も。デザインは同じだけど所々良さそうな素材を使ってるのは分かります 掃除で汚れるのは申し訳ないです。 茶の誘い: お断りします(きっぱり)おごられる必要を感じません。 …掃除を頑張ったのはお互いにです。 イザーク:高い所は引き受けよう 掃除は嫌ではないし、手伝う事に不満はないんだが こちらが言う前に行ってしまってはね(苦笑) もしかして彼女、ものすごく損な性格をしていないか? 頑張ったご褒美にお茶でもおごろう …なかなか強情なお嬢さんだね。では割り勘で |
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【目的】 ・割り当てられた教団内寮室にて、引っ越しの荷解きを ・荷物を詰めた箱を片付けられないで途方に暮れている祓魔人の部屋を、とっくに自分の荷解きを終えて様子を見に来た喰人とできちんと片付ける。 【キャラアクションと口調】 グレール …なるほど これは「薔薇十字教団クリーン週間」が涙するな あの話を聞いてから5時間。まさか、荷解きの一箱目が封を切って開かれただけだとは そちらの物に触れてもよければ、手伝うが… 本の類は、デスクの上で構わないな 茶器の類はサイドテーブルの上へ置かせてもらおうか ──ああ、分からない事があれば訊ねるから自由に寛… …忘れる所だった 俺は手を貸しているだけだ、自力での片付ける事も必要だろう |
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【目的】 片付けや掃除が得意でない千亞。 「ぜひ私が千亞さんの専属ハウスメイドになりましょう…!」と 意気揚々なド変態だが家庭的な明智。 対照さと明智の手際の良さが見たい 【会話】 「さぁ、千亞さん、クリーン週間です、ふふ…!」 『楽しそうだな、珠樹』 「えぇ、私こう見えて家事やお掃除はとても好きです。 ぜひ千亞さんのお部屋のお掃除を…!」 『断る』 (部屋が散らかっている) 「…ふふ、ご安心ください、部屋に侵入したからといって 千亞さんのお気に入りのぬいぐるみや愛らしいうさちゃんグッズに触れませんから…!」 『そうか、ならば…って、ちょっと待て!珠樹なんでそれを知ってる!?』 結局、公共の場所を二人でお掃除することに。 |
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薔薇十字教団クリーン週間だって、すっごく良い響き! あたし頑張るからね! 自分たちの寮室は勿論だけど、できるなら教団内の掃除の手が回ってないところも掃除しちゃいたいなあ…職員さんに聞いて、掃除しても良いところ聞こうっと。 ジョシュアは掃除面倒くさいの? 大丈夫、そんなあなたの為にあたしセレクションのお掃除便利グッズ持ってきたよ 電解水スプレーと、押すと洗剤が出るブラシと…これとそれも 豚小屋って…失礼だなあ 言っておくけどあたしの家族全員綺麗好きだし 実家なんか埃一つだって落ちてる日は無いんだから ねえ見てこの整理整頓された空間 あるべき場所に物が収まってるのは気分が良いよ ジョシュアも同じ気持ちならうれしいな。 |
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【シャルローザ】 『クリーン週間』ということでまずはロメオさんのお部屋を訪ねてみようかと。 正直ロメオさんの部屋がどうなってるのか予想が付かないんですよね。 …占い師なんてしてると人のことなんとなくですが分かるんですが…こうロメオさんははっきりしないんですよ…。 「ロメオさーん、こんにちはー」 …ロメオさんの部屋片付いてますね。 むしろ殺風景といいますか。それはそれでなんだか寂しいですね。 これじゃあ片付けのしようがないですね。 あ、そう言えば私の部屋にあれがあったはず。 あったこれです一輪挿しです。 部屋が少し殺風景だと思ったのでこれを。 おじさんがお花とか…って関係ないです。お花は誰が愛でてもいいんですよ? |
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あたしの部屋を片付ける 身の回りということで、お互いの部屋を見たイダの一言は「お前、生活力ないな」だった それは失礼 部屋の現状を説明すると、とりあえず本が積まれている、10段以上あるかもしれない あと着た服をそのままベッドに放り投げてる。山になってる あと、細々した日用品がその辺に沢山転がってる 棚もいっぱい 「いらないものと」「いるもの」と書いた段ボールをイダが持ち出してきた これに分別するらしい いる いる いる い…… だめ? モノが多いから減らす努力をしろ? わ、わかった 努力する 選別した後は、ベッドに溜まった服の洗濯 下着も構わずカゴに集めるイダを止める あたしがやる!! 綺麗になった部屋をみて、一息 「お疲れさん」 |
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寮暮らし えっ、なに? いきなり……? 部屋の片隅にオブジェ代わりに置いてあるクワを見る あっこれ? これはクワだよ? ミハエルのどこか含みのある笑みにそっと目を逸らす ええと……クワ、です、畑仕事に使う…… いやいや、さすがにそれはないよっ うん、本物。長い間使ってたし、もうこれ持って畑に立つことも少なくなるんだって思うとなんか寂しくて 持ってきたの、一応カバーもしてあるし、大丈夫かなあ、なんて う……そ、そうですね(思わず敬語 クワの置き場だけじゃなくダンボールも一緒に片付けてくれるなんて……! ミハエルは救世主だねっ ええっ!? あ……うそ? もうっすぐからかう! ……うん、気をつけるね |
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■目的 黒憑の汚部屋を綺麗にすること ■汚部屋 とってもゴミ屋敷、真ん中に一人分の作業スペース ■行動 黒憑: 渋々手伝う。掘り出し物を見つけては東に見せるので、作業は進まない。 終わったら茶でも淹れてやろう。 報酬に掃除中、彼が熱心に眺めていた絵をプレゼント 東: 要るもの・要らないもの で袋を別け、一先ず独自の判断で袋に突っ込んでいく 迷ったら黒憑に相談。 物が片付いたら、家具を一旦外へ出して床掃除。 古紙(新聞紙)を千切り、水で濡らして床へ撒いてから掃き掃除 貰えるもんは貰っとく主義なので報酬は素直に受け取る |
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~ リザルトノベル ~ |
● 「薔薇十字教団クリーン週間?」 「突然の依頼だけれど、綺麗にするのは悪くないと思います」 『鈴理・あおい』が受けた指令内容を確認しながら、『イザーク・デューラー』が僅かに首を傾げる。 ただ『身の回りをきれいにする』という指令をうまく呑み込めなかったようだ。 「不思議な指令もあるんだね……」 「そうですね。――なので私は掃除に行ってきます」 「え、あおい!?」 言うが早いか、あおいは踵を返しすたすたと教団内の廊下を歩き始める。 その行動の早さに一瞬呆けたものの、イザークはすぐにあおいを追いかけた。 あおいは、掃除道具を持って司令部の指令会議室に来ていた。 普段はエクソシストたちが指令を遂行する上で事前の相談などをしているが、空いている時間を調べて掃除しに来たのだ。 「あおい、ここを掃除するのかい?」 「そうですが……」 後から入って来たイザークを見て、あおいが目を丸くする。 なぜ、と問う前に、イザークは掃除道具の一式から雑巾を手に取った。 「高い所は引き受けよう」 「でも……」 「掃除は嫌ではないし、手伝う事に不満はないんだが。こちらが言う前に行ってしまってはね」 ぶっきらぼうなあおいの言葉に、イザークは困ったように笑った。 あまり掃除をしたことがないため、指令内容を見たときは確かに困惑した。だが、イザークは掃除が嫌なわけではなかった。 「……勝手に依頼を受けたのは私ですから、……それに制服も」 言いながら、あおいはイザークの着ている制服を見る。 「デザインは同じだけど、所々良さそうな素材を使っているのは分かります。掃除で汚れるのは申し訳ないです」 例えば、胸部のボタン。色は同じだが、高価なボタンを用いていることはすぐにわかった。 だからこそ、あおいは一人で指令を行おうと思ったのだ。 (もしかして彼女、ものすごく損な性格をしていないか?) 掃除を一人で行おうとしたのも、イザークを気遣ってのことだった。ただ、それを素直に伝えられないだけで。 そんな不器用な彼女を、イザークは少し微笑ましく感じた。 「あおい、掃除の仕方を教えてくれないか? 二人でやった方が、効率もいいだろうし」 「……わかりました」 そうして二人は、部屋の掃除を始めた。掃除に慣れていないイザークにやり方を教えながら、着々と掃除を進めていくあおい。 一時間後、そこには机も床もピカピカになった部屋が広がっていた。 「とても綺麗になったね。頑張ったご褒美にお茶でもおごろう」 「お断りします。おごられる必要を感じません……掃除を頑張ったのはお互いにです」 「……なかなか強情なお嬢さんだね。では割り勘で」 にこやかにそう言うイザークに、あおいはやや躊躇いながらも頷いたのだった。 ● 指令内容を確認した『ガルディア・アシュリー』と『グレール・ラシフォン』は、それぞれ割り当てられた寮室にて荷解きをすることにした。 寮に住むようになってからまだ日が浅いため、まだ開けていない荷物があったのだ。 それぞれ部屋に戻り、早々に片付けを終える――はずだった。 今、ガルディアの目の前には封を開けただけの箱が鎮座している。 (自分では、散らかる未来しか見えない……) ガルディアは、綺麗な部屋を綺麗なまま維持することは得意だ。適当に物を置くなど、汚くすることはない。 (言えるわけがない……一人で、片付けなどろくに行った事が無いなど) だが、新しい部屋に一気に物を置くことは不得手だった。維持することはできても、何をどう置けばいいのか、置くべきなのかがわからないのだ。 そんな状態で、封を開けたはいいがそれをただ見つめるだけに留まってしまった。 ――コンコン。 ふと、ノックの音がガルディアの耳に届く。 「……ああ、空いている」 その人物に心当たりがあるガルディアは、箱を一瞥した後声をかけた。次いで、徐にドアが開く。 「……なるほど。これは『薔薇十字教団クリーン週間』が涙するな」 部屋に足を踏み入れたグレールが、ガルディア越しに詰まれた箱を見ながらそう言った。 「あの話を聞いてから5時間。まさか、荷解きの一箱目が封を切って開かれただけだとは」 「そんな顔をするな。……自分に失望しているのはこちらなんだ」 困ったようなグレールの言葉に、ガルディアがバツの悪そうな表情になる。 だが、グレールはガルディアのこういった性質を嫌っているわけではない。むしろ、意外な一面が見られて少し微笑ましくも感じていた。 「そちらの物に触れてもよければ、手伝うが……どうだろう?」 「……頼む」 グレールの申し出に、若干の情けなさを感じながらも頷く。このまま自分だけで頑張っても、上手くいく算段も無かったからだ。 荷物の大半は私物であるから、他人に触られたくないという気持ちはある。だが、ひとつひとつ箱を丁寧に空けていくグレールならば嫌悪感もなく安心できた。 「本の類は、デスクの上で構わないな。茶器の類はサイドテーブルの上へ置かせてもらおうか。――ああ、分からない事があれば尋ねるから自由に寛いで……――」 てきぱきと箱の中身を取り出しては整理していくグレール。 しかし、はたとガルディアに視線を向けて手を止めた。 「……忘れる所だった。俺は手を貸しているだけだったな」 「勿論、そちらの手だけ煩わせる訳にはいかない。手伝おう」 うっかりした表情のグレールにこっそりと口元を緩ませながら、ガルディアはようやく荷解きを終えることができたのだった。 ● とある昼下がり、清々しい風が吹く。 はためく白いフリルエプロン、それを着るのはウサ耳の美少女――ではなく。 「さぁ、千亞さん、クリーン週間です、ふふ……!」 ハタキと雑巾を両手に持つ妖しい青年『明智・珠樹』だった。 「楽しそうだな、珠樹」 「えぇ、私こう見えて家事やお掃除はとても好きです。ぜひ千亞さんのお部屋のお掃除を……!」 「断る」 『白兎・千亞』は自身の散らかった部屋の様子を思い出し、きっぱりと断った。 つっけんどんな千亞の物言いにも、珠樹はその顔に湛えた笑みを崩さない。 「……ふふ、ご安心ください、千亞さんのお気に入りのぬいぐるみや愛らしいうさちゃんグッズに触れませんから……!」 「そうか、ならば……って、ちょっと待て! 珠樹なんでそれを知ってる!?」 「ふ、ふふ……!」 がくがくと胸倉を揺さぶられながらも、珠樹は意味深に笑うだけでそれ以上答えなかった。 仕方なく……いや、部屋の内装を知られているのは看過できないが、問い詰めてものらりくらりと躱されることはわかっている。千亞はじとりと珠樹を睨みつつ、当初の目的である掃除を始めることにした。 「~♪」 (やっぱり楽しそうだな) 鼻歌混じりに窓ガラスを拭く珠樹。横目でそんなパートナーを見ながら、千亞も窓を乾拭きする。 ここは教団寮二階の廊下の一角だ。購買部やアトリエがある関係で、普段から人通りのあるこのフロアを中心に掃除をすることにした。 (……確かに、一人で掃除するよりは気が進むかもしれないな) 窓拭きを終えた珠樹が、今度は床を丁寧に磨いていく。相変わらず鼻歌は続いているが、それも悪くない気がした。 きっと一人ではつまらないだろうし、ここまで素直に手を動かしていなかったかもしれない。真剣な目で床の汚れを手際良く綺麗にしていく様を見つめていると、ふと珠樹が顔を上げた。 「おや、専属メイドにしたくなりましたか?」 「――まさか」 ゆるりと珠樹の唇が弧を描く。思わず、千亞は言いながらそっぽを向いた。 艶めかしく笑んだ珠樹に見とれていただなんて、思いたくない。思うわけがない。意外と掃除が得意なんだなと感心しただけで――。 「千亞さんのためだったらどんな恥ずかしいメイド服でも着用いたします……!」 「望まないし!」 「あぁっ、愛が痛気持ち良いです……!」 悶々とした考えを吹き飛ばすが如く、千亞のグーパンチが珠樹の頬にクリーンヒットする。珠樹はなぜか恍惚の表情を浮かべていた。 「ふふ、とても良いパンチですよ、千亞さん……! もっとしていただいても良いんですよ……!」 「するかド変態!」 それからしばらく、珠樹の変態発言と千亞の罵声は掃除が終わるまで続いたのだった。 ● 「薔薇十字教団クリーン週間だって、すっごく良い響き!」 「ええー……厄介だな」 「あたし頑張るからね!」 掃除道具片手に意欲的な『ベアトリス・セルヴァル』とは対照に、『ジョシュア・デッドマン』はげんなりとした表情だった。 自分で物の置き場所はわかっているから、掃除するまでもない、と否定的だ。 「できるなら教団内の掃除の手が回ってないところも掃除しちゃいたいなあ……職員さんに、掃除しても良いところ聞こうっと」 (……と、言っても子豚は張り切りすぎている。これは付き合わないといけない空気だ) やれやれ、と肩を竦めながら、スキップでもしそうなベアトリスの後ろをついて行った。 「ジョシュアは掃除面倒くさいの?」 普段は異性の寮室に入ることはできないが、今回はクリーン週間ということで、特別に寮母の許可を得られた。 寮室へ向かう途中、ベアトリスが振り向いて問う。あまり乗り気ではない、というのは感じていたのだ。 「面倒ではないけど……でも床にかがんで地道にゴシゴシ洗うのは勘弁願いたい。オッサンの体にそれはきつすぎる」 「大丈夫、そんなあなたの為にあたしセレクションのお掃除便利グッズ持ってきたよ!」 言いながら、ベアトリスは持っている掃除道具からいくつか差し出した。少々濁った液体の入ったボトルや、柄の長いブラシなどがある。 「重曹で作った特製スプレーとか、このブラシだとかがまなくても床を磨けるよ。あと……」 掃除グッズの話題が尽きないまま、二人はベアトリスの部屋に到着した。 部屋に入ってすぐ、唖然とするジョシュア。 「……子豚。掃除好きとは知っていたけど、これ程だったとは」 掃除する必要なんてないくらいピカピカに磨かれた床。棚や机、その他の家具も整理整頓が行き届いている。 「汚い部屋をうさぎ小屋とか、豚小屋とか言うじゃないか。その認識を改めないといけないらしい」 「豚小屋って……失礼だなあ。言っておくけど、あたしの家族全員綺麗好きだし。実家なんか埃ひとつだって無いんだから」 胸を張る彼女に、ジョシュアは疑いなく納得した。 その後は二人でジョシュアの寮室の掃除を行った。案外掃除グッズの使い心地が良かったのも、思わぬ発見と言えるだろう。 「ねえ見てこの整理整頓された空間。あるべき場所に物が収まってるのは気分が良いよ」 「……まあ、汚れている部屋を使うよりかは綺麗な方が良いか。そんなに楽しそうに言うなら、私も掃除を研究してみようかな」 掃除に対して前向きな発言をするジョシュアに、ベアトリスは相好を崩した。 「じゃあ、教団の空いてる寮室も掃除しちゃおう!」 「え、自分達の寮室以外も掃除するの!?」 「勿論!」 元気に返事をするベアトリス。ジョシュアは観念して、雑巾を握りしめるのだった。 ● 薔薇十字教団クリーン週間として、特別に異性の寮室への入室を寮母から許可された『シャルローザ・マリアージュ』はパートナーの寮室に続く廊下を歩いていた。 (正直、ロメオさんの部屋がどうなってるのか予想が付かないんですよね) パートナーの『ロメオ・オクタード』を思い浮かべながら考える。 (占い師なんてしてると、人のことなんとなく分かるんですが……こう、ロメオさんははっきりしないんですよ……) 今回を機に、どういった人物なのかわかればいいのだが。そんなことを考えながらロメオの寮室の前まで辿り着いた。 そのドアを、躊躇なくノックする。 「ロメオさーん、こんにちはー」 声をかけると、すぐにドアを開いた。やや怪訝そうな金色の瞳が、シャルローザを視界に捉える。 「クリーン週間ですよ、ロメオさん」 「そういえばそんなこと言ってたね……」 お邪魔します、と部屋に入るシャルローザ。しかし、部屋は存外片付いていた。 いや、必要最低限の物以外置かれていないのだ。 「……ロメオさんの部屋片付いてますね。むしろ殺風景といいますか」 「期待に沿えず悪いがもともと荷物が少ないものでね。散らかりようがないというか」 「これじゃあ片付けのしようがないですね」 ふむ、と部屋の中を見渡しながら思案する。人となりを判断できる物もなく、人物像は掴めないままだ。 「ていうかお嬢ちゃん、軽々男の部屋に入ってくるのはどうかと思うんだが……いや、まぁ一応一般論の話だがな」 エクソシストとしてのパートナーとは言え、年頃の女の子であるため心配するロメオ。 「俺の部屋は見られて困るものはないし、お嬢ちゃんにやましい気持ちもないが……」 「あ、そう言えば私の部屋にあれがあったはず」 「って全然聞いちゃいない……」 ロメオの言葉は耳に届いていなかったらしいシャルローザが、何かを思いつき足早に部屋から出て行った。 突然の行動に呆気にとられたが、とりあえず自身の日記だけデスクの引き出しの中にしまう。これだけは見られたくない物なのだ。 「ロメオさーん」 「部屋に戻るとかまた来るとか。ほんとせわしないお嬢さんだねぇ」 「部屋が少し殺風景だと思ったので、これを。一輪挿しですよ」 はい、とロメオに細身の花瓶を差し出すシャルローザ。 一輪の黄色い花が、かわいらしく揺れる。 「おじさんにこれを? こんなおじさんが花を飾るってのも変だろ?」 「そんなの関係ないです。お花は誰が愛でてもいいんですよ?」 シンプルなデザインの花瓶は、ロメオの部屋に置いても全く違和感がない。 まっすぐ素直な気持ちを伝えるシャルローザに、ロメオはその一輪挿しを受け取った。そしてそれを、デスク横の棚に飾る。 「まったく、お嬢ちゃんには敵わんね」 色味の増えた部屋も悪くないなと、ロメオは微笑んだ。 ● 「お前、生活力ないな」 そう言い放った『イダ・グッドバー』に、『アラシャ・スタールード』は思わず抗議の視線を向けた。 今回特別に寮母の許可を得られたため、お互いの部屋を見た二人。イダの部屋は、多少雑然とした部分はあったものの、生活感のある部屋だった。 しかし、アラシャの部屋は生活感という一言では言い表せない。十段以上積まれた本、ベッドの上に投げっぱなしの服の山。それに、文房具や日用品に至るまで床に転がっていた。 「さすがに片づけないとな。ほら、やるぞ」 アラシャにとって、住めば都と言った部屋。自分が住みやすくした結果、こうなってしまったのだ。 だが、イダの反応を見て少し反省する部分もあった。当たり前のように掃除を手伝ってくれる優しさを感じつつ、散らばっているペンやノートを拾う。 「アラシャ、これを使え」 「いるものと、いらないもの?」 「少しは分別しやすいだろ?」 即興で作ったふたつの箱には、「いるもの」「いらないもの」と走り書きされている。 さっそく、手近な物から分別を始めた。 「いる、……いる、いる、い……」 「待て待て、それじゃあ一向に減らないだろ。ちゃんと使う物かどうか考えて分別するんだ」 「わ、わかった。努力する」 イダのアドバイスを受けながら、着実に分別を進めるアラシャ。床やテーブルの上の整理を終えると、今度はめいっぱいに詰まった棚に取りかかる。 読まなくなった本、使わないノート、メモ帳……。 ふと、一冊の古びた本を手に取ったアラシャが動きを止めた。その表紙をイダも覗き込む。 「何の本だ?」 「これは孤児院のにーちゃんから貰った。昔は読めなかったけど、今は読める。……冒険をする勇者一行のお話だった。たぶん、にーちゃんが好きだったやつだと思う」 「それは、『いる』だな」 「……うん」 あやすように、優しくアラシャの頭をぽんぽんと撫でるイダ。思い出を大切に思ってくれるその気持ちに、アラシャは心があたたかくなるのを感じた。 棚や本の整理も終わり、後はベッドの上に積まれた服の洗濯だけとなった。イダが手際よく洗濯カゴに服を入れていくが――アラシャの視界の端に、見慣れた布地が飛び込んだ。 ――下着だ。 「あ、な、なにしてるの……!」 「洗濯するんだろ? ほら、この辺も」 「だめ、だ、め……!!!!」 顔を真っ赤にしながら、イダから洗濯カゴをひったくる。カゴに慌てて他の服もぎゅうぎゅうに詰め込んだ。 「洗濯くらい俺が――」 「あたしがやる!! わかってない、イダ、のばか!」 言いながら、アラシャは洗濯機の方へダッシュした。穴があったら入りたい、とはこのことだろう。 洗濯も終わり、綺麗になった部屋で一息つく。すっかりくたびれた様子のアラシャの頭を、イダが優しく撫でる。頑張ったアラシャへの労いだ。 「お疲れさん」 「うん、イダも……ありがとう」 ● クリーン週間ということで、寮母の許可を特別に得られた『ミハエル・ルビィ』は、パートナーである『アニ・リカリエ』の部屋を訪れていた。 「アニも片付け、苦手だよね?」 「えっ、なに? いきなり……?」 「引っ越しの箱はそのまんまだし。……片隅にある『あれ』、なに?」 ミハエルの言う通り、確かに部屋には引っ越しのときに運んだ荷物がほとんど放置されていた。 だが、その中にひとつ。異彩を放つ存在があった。 「あっこれ? これはクワだよ?」 違う、そうじゃない――そう口走りそうになるのを抑えながら、ミハエルは微笑みを崩さない。 「……ごめんね、アニ。どうやら僕の耳には届かなかったみたい」 「ええと……クワ、です、畑仕事に使う……」 「君、畑作る気か?」 「いやいや、さすがにそれはないよっ」 優しく――しかしどこか含みのある笑みにそっと目を逸らすアニ。 畑、という発言にはさすがに否定したが、ミハエルの視線はクワに向けられている。 「僕が言いたいのはさ、あそこに置かなきゃダメなのかってこと。あんなとこにそのまま置いといたら危ないだろう。……本物なんでしょ? このクワ」 言いながら、少し厳しい口調になるミハエル。 クワは農具ではあるが、刃物であることには変わりない。心配する彼の言葉に、アニは僅かに安堵した。 「うん、本物。長い間使ってたし、もうこれ持って畑に立つことも少なくなるんだって思うとなんか寂しくて持ってきたの」 両親が農業を営んでいたため、アニはよく畑仕事を手伝っていた。 馴染みのあるクワを使う機会はあまり望めないが、思い出として持ってきたのだった。 「一応カバーもしてあるし、大丈夫かなあ、なんて」 「そういうことなら構わないけど。置き方はせめて考えようか、アニ?」 「う……そ、そうですね」 「ねえさんの部屋の方が綺麗だよ、全くもう……」 再び圧のある笑顔を向けられ、思わず敬語になってしまうアニ。『ねえさん』という言葉に首を傾げつつも、二人でクワ含め片付けを始めた。 クワは、邪魔にならず且つ目に入る場所に置くことにした。それに伴い、積まれたままの箱もある程度よけていく。 「クワだけじゃなく、荷物も一緒に片づけてくれるなんて……! ミハエルは救世主だねっ」 「……もうアニなんて知らないから」 「ええっ!?」 箱を動かしていたミハエルが、ふいとそっぽを向く。ビックリして大声を出してしまったアニだが、すぐに彼の肩が震えているのに気づいた。 「嘘なんだけどね」 「あ……うそ? もうっ、すぐからかう!」 「あははっ、アニがかわいくて、つい」 先ほどとは違ういたずらっ子な雰囲気に、頬を膨らませるアニ。 そんな反応を見て、ミハエルはさらに楽しげに笑うのだった。 「だけど、お願いだから引っ越しの箱をそのままにしないで? ね、アニ?」 「……うん、気をつけるね」 ● 「クリーン週間? ふは、くだらん行事だな」 指令内容を見た『黒憑・燃』は、それを一笑に付した。 次いで、指令だからと部屋を訪ねてきた『清十寺・東』をじっと見つめる。その視線に、東は眉間に皺を寄せた。 「ま、理由が何であれ先生が来てくれるんなら歓迎するさ。ようこそ俺の城へ!」 ばーん! とドアを開け放つ燃。その奥に広がる部屋の様子を見て、東は眉間の皺をさらに深く刻んだ。 「これは……随分とお粗末な有様だねぇ。全く、だらしねぇ野郎だ」 ドアを開けた際に舞い上がった紙を拾い上げる。どうやら古新聞のようだ。 入口から奥に至るまで、古新聞や未開封の箱、それからゴミの詰まった袋がいくつも積まれていた。足の踏み場もない。 「茶の一杯でも淹れてやりたいところだが、茶器が行方知れずなんだ」 「その前に掃除が必要だろう。茶は二の次だよ」 足場が悪いにも関わらず、慣れた様子で先に部屋の中へ入っていく燃。 東は慎重に、燃の城――もとい汚部屋に足を踏み入れた。 「さて、茶器はどこに置いたかな」 「茶の前に掃除だって言わなかったかねぇ? こういう汚い部屋には悪いモンが溜まりやすいって言うだろ。さっさと片付けて、部屋の空気を入れ替えるよ」 「お、この壺は茶器の代わりになりそうだ」 部屋の中心、一人がギリギリ座れるスペースで手当たり次第にゴミの山を漁る。燃は掃除に興味がないらしく、置きっぱなしの物を拾っては東に見せた。 反対に、東は「要るもの」と「要らないもの」のゴミ袋を用意し、その中にきびきびと物を詰め込んだ。判断に迷う物は燃に確認しつつ、掃除を進めていく。 「ほら、そっち持ちな」 「おっと思わず手が触れ――」 「遊んでる場合かい!」 ハプニングを装い近づいてきた燃の手をぴしゃりと叩き落とす。けらけらと笑いながら、燃は東と共に棚や机を部屋の外に運び出した。 「ん、これは……」 ふと、荷物を運んでいた東が手を止める。それは、美しい女性が描かれた油絵だった。透明感のある涙を流す女性の絵画、その裏には『愛の行方』と書かれている。 暫し目を奪われていたが、東ははっとして掃除を再開した。古紙を千切り、水で濡らして床に撒いてから掃き掃除を行う。 「はあ、やっと綺麗になったね」 「まるで俺の城ではないみたいだな! あ、茶を淹れたから飲むといい」 綺麗になった部屋に家具を置き直したが、茶器は見当たらなかったようだ。 小さな壺に入ったお茶を見て、東は首を横に振った。 「遠慮するよ」 「ほう、それならこっちはどうだ?」 「……それは」 「俺には必要ないモノだからな。掃除の礼として貰ってくれ」 言われて、東は差し出された絵画を素直に受け取る。 「中々上手いじゃないか」 「先生に褒められるとは光栄だな!」 上機嫌な燃の声を聞きながら、東はその絵をまじまじと見つめる。それはどことなく、自分の妻に似ていた。
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*** 活躍者 *** |
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該当者なし |
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[7] シャルローザ・マリアージュ 2018/03/27-04:00
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[6] アラシャ・スタールード 2018/03/27-01:01
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[5] 明智・珠樹 2018/03/26-21:42
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[4] ベアトリス・セルヴァル 2018/03/26-00:02
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[3] 鈴理・あおい 2018/03/24-23:00
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[2] ガルディア・アシュリー 2018/03/24-00:33
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