【魔女】かぼちゃづくし!
とても簡単 | すべて
3/8名
【魔女】かぼちゃづくし! 情報
担当 茉莉 GM
タイプ ショート
ジャンル イベント
条件 すべて
難易度 とても簡単
報酬 なし
相談期間 4 日
公開日 2018-10-20 00:00:00
出発日 2018-10-27 00:00:00
帰還日 2018-11-04



~ プロローグ ~

「えーと、何だったけ、トリックオアトリート、って言うんだったかな」
 扉の向こうで、浄化師達を出迎えたのは、南瓜人間でした。

「今月より司令部配属となったトウヤだ、よろしくお願いするよ」
 突然の南瓜人間の出現に、怪訝な表情を浮かべる浄化師達。
 そんな浄化師達の鈍い反応に、トウヤと名乗った青年は渋々といった様子で頭に被った南瓜を外した。
「貴様、まさかその被り物気に入っておったのか……」
 トウヤの後ろで顔を引きつらせるデモンの男に「可愛いだろう?」と、トウヤは笑顔を返す。

「ハロウィンといえば南瓜だそうだね、何でも南瓜をくり抜いて祭事用の灯篭を作るそうじゃないか」
 トウヤの目は輝いている。
 よく見ればトウヤの抱えている本には「わくわくはじめてのハロウィンパーティ」なる題名が見えたような気がする。
「こやつ、つい先日ハロウィンなるものの存在を知ったらしくてな」
 エンジュ、と短く名乗った鬼人はどこか疲れた表情を浮かべた。
「そやつが浮かれ気分のまま、その場の勢いだけでハロウィンの用意した結果があの様よ」

 エンジュが顎で指した先を見ると、そこには南瓜があった。
 そしてその南瓜の横には南瓜。
 上には更に南瓜が積まれており、すぐ隣の机の上には大小様々な南瓜が所狭しと並べられ──
「これ、目を逸らすでない」
 司令部の一角を占拠している南瓜達の姿に、浄化師達は思わず踵を返そうとする。

「いやー、気合い入れすぎちゃって」
 参ったねと、然程困った様子もなく笑みを浮かべるトウヤに、エンジュは深い溜息をつきながらこめかみを押さえる。
 何となくエンジュの日頃の苦労が垣間見えたような気がして、浄化師達はほんのちょっとだけ同情した。

「ハロウィンに南瓜は欠かせん、それは分かる。しかしいくら何でもこの量はまずい」
 エンジュの言葉に浄化師達は頷く。
 現に司令部の皆さんも、司令部の一角を占拠する南瓜達に行く手を阻まれ些か居心地が悪そうにしている。

「……という訳でだ、この南瓜をお前達の手でらんたんとやらに加工するなり、調理するなりして減らして貰いたい」
 浄化師達は互いに顔を見合わせる。
 そして南瓜の山に視線を向ける。
 この南瓜達、結構な数ありますけど本当に減らせるんですかね?
 南瓜の山を前に、浄化師達の顔には不安が浮かぶ。
 これでも頑張って減らした方だとエンジュは言うのだから驚きだ。

「作業場として食堂の一部の使用許可は取っておいた、加工や調理したものは我々が責任を持って近隣の祭り会場に届けよう」
「まあせっかく用意したんだ、好きなだけくり抜いて行ってくれ」

 トウヤは再び南瓜を頭に被り、微笑んだ。
 南瓜で全く顔は見えないが、微笑んだ。


~ 解説 ~

ハロウィンに浮かれて用意しすぎてしまった南瓜を好きなだけ減らしてください。
作業場として食堂の一画を確保しております。
購買部に存在せず、必要になりそうな道具はエンジュがあらかた揃えておいてくれたようです。
加工した南瓜の味見やつまみ食いなどは問題ありませんが、お持ち帰りはご遠慮下さい。

●できること
(1)かぼちゃランタンを作る
(2)かぼちゃ料理を作る

●トウヤとエンジュ
今回の司令部かぼちゃ占拠事件の元凶、反省の色は薄い。
加工の済んだ南瓜を責任を持って回収してくれます。


~ ゲームマスターより ~

はじめまして、茉莉と申します。

好きなだけ南瓜ランタンを作ったり、南瓜料理を作ってお楽しみ下さい。
ちなみに茉莉は南瓜の天ぷらが好きです。





◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇

雄逸・霧崎 エルピス・パンドラ
男性 / 人間 / 断罪者 女性 / 生成 / 拷問官
目的
2
他の方とも交流! 南瓜料理食べる

エルピスからの羽を広げて大興奮のリクエスト
あとかぼちゃに占領されている場所を見て 見るに見かねて

上着をとってネクタイを胸ポケットにおさめてエプロンを

「わかりました料理をしましょう」
腹ペコを待たせるために南瓜の甘煮 醤油・味醂・砂糖が味付け


その間にパイ
甘煮とともにふかしたかぼちゃをほぐして牛乳・バター・砂糖をいれて煮込んでとろっとしたら火からおろしてバニラエッセンスをたらして生地の上におく
生地はハロウィン使用 にやーと笑うかぼちゃのおばけのかお
焼いた完成

「ねぇパンドラさん、一杯食べてお化けを退治してくださいね」

トウヤとエンジュさんもどうぞ、とパイを食べてほしいです
リロード・カーマイン スコア・オラトリオ
女性 / 人間 / 悪魔祓い 男性 / エレメンツ / 狂信者
【目的】
味が飽きない料理を作る

【料理】
・カボチャのポタージュ
玉葱、牛乳、バター、黒胡椒であっさり

・カボチャグラタン
玉葱、チーズ、牛乳、しめじ・ベーコン、を入れたこってり系に

・カボチャサラダ
ハム、カシューナッツをペーストに合わせマヨネーズと塩胡椒で整える

【心情】
…貴方ねぇ
ハロウィンは収穫祭でもあるのよ?
ちゃんと食べられるの?
作るけど、残しちゃ駄目よ!
いいわね?

…じゃあ、味に飽きが来ないように工夫しなきゃね

まずは大量に消費する為にカボチャのポタージュを
あっさり目に味を整えて

カボチャ一つ使ってカボチャグラタンを
器もカボチャにしてハロウィン仕様に

カボチャのサラダはカシューナッツを入れて他とは違う食感を

シルシィ・アスティリア マリオス・ロゼッティ
女性 / 人間 / 陰陽師 男性 / 人間 / 断罪者
(1)かぼちゃランタンを作る

目的
ランタンを作って南瓜を減らす。

会話
マリオス
…まあ、たくさんの南瓜料理やランタンが届いたら、祭りの関係者や参加者の人たちは喜ぶかもなあ…。(南瓜の数にちょっと遠い目)

シルシィ
ん、たくさんランタンが並んでいたら、楽しそう。(微妙に嬉しそう)

マリオス
?そう言えば、シィはランタンとか作ったことがあるのか?

シルシィ
ううん。(ふるふると首を振る)

マリオス
そうか…。
じゃあ、シィは下書きと仕上げをやってくれるか?
僕は途中の大まかな細工をするから。手分けしたほうが早いだろう?

シルシィ
そうかも?
ん、わかった。

小さい物はともかく大きな南瓜は協力して作成。


~ リザルトノベル ~

●立ちはだかるカボチャの山
 司令部を訪れた浄化師達の前に立ちはだかるカボチャの山。
 感心、呆れ、食欲。
 様々な感情が浄化師達の中に渦巻いていた。

「よくもまあここまでカボチャが集まりましたね……」
 このままでは場所を取るからと、司令部一角に高く積み上げられたカボチャ達。
 カボチャに占領された司令部を見るに見かねて、思わずその場に留まった『雄逸・霧崎』だった。
 しかし、間近で見たこのカボチャの量には流石に圧倒され気味だ。

 雄逸がカボチャの山に圧倒される一方。
「ゆーいち、かぼちゃですー、料理をしてほしいのです。おなかもすきました!」
 ひとーつ、ふたーつ。
 カボチャを一つ一つ指差しながら数える『エルピス・パンドラ』。
 一体どれだけのカボチャ料理を堪能できるだろうか。
 エルピスは羽をばさばさと広げて大興奮、そんなエルピスの様子に目を細める雄逸。
「わかりました、料理をしましょう」
 雄逸が申し出ると、エルピスはとても満足げに微笑んだ。

「……でも、まずはこのカボチャをどうにか運び出さないといけませんね」
 どこかから荷車でも借りてきた方がいいだろうか。
 運び出すのにはなかなかに骨が折れそうだと、雄逸が考えを巡らせるや否や。
「これを運べばいいのですか? ワタクシサマにまかせるのです!」
 エルピスは事も無げに、大き目のカボチャを五つほど片手で持ち上げてみせた。
 カボチャの重たさをものともせず。
 やがて自らのお腹を満たすであろう雄逸のカボチャ料理に思いを馳せながら。
 軽い足取りで食堂へと向かっていくのであった。

「わー、カボチャ一杯だねぇ……」
 隈の浮かんだ目で、『スコア・オラトリオ』は自分の背丈よりも高く積み上げられたカボチャの山を見上げる。
「……貴方ねぇハロウィンは収穫祭でもあるのよ?」
「ははは、ごめんねー」

 腕を組む『リロード・カーマイン』の前に正座で座らされているトウヤは変わらず笑顔のままだ。
 司令室占拠などという実害が出ている以上、カボチャをどうにか調理するなりして処理しなければならないのは事実だ。
 しかしこれだけの量を調理したとして、果たして無駄にすることなく食べきることは出来るのか。
 リロードは厳しい顔のままトウヤに問い正した。
「……届け先は働き盛りの男達や子供達、それなりに若い者の集まる場所だ、問題はなかろうよ」
 自業自得だと、説教を食らうトウヤを傍らで見ているだけだったエンジュだった。
 しかし、流石に見ていられなくなったのかそっとフォローを入れる。
 皆には迷惑をかけるがよろしく頼むと頭を下げるエンジュ。
 そしてエンジュに頭を押さえつけられ、床に額をぶつける勢いで強引に頭を下げさせられているトウヤ。
 その姿に、仕方ないとばかりにリロードは深い溜息をついた。

「作るけど、残しちゃ駄目よ! いいわね?」
「ああ、調理した物は我々が……主にこやつが責任を持って祭り会場に届けよう」
 エンジュの言葉に気持ちを切り替えたのか、ニッと笑ってみせるリロード。
「……じゃあ、味に飽きが来ないように工夫しなきゃね」
 手っ取り早くカボチャの数を減らすのならばポタージュがいいだろう。
 この時期ならば暖かいグラタンも美味しく食べられる時期だ。
 くり抜いたカボチャを器として使うのも、ハロウィンらしく見た目が華やいでいいだろう。
 味や見た目だけではない、食感にも拘りたい。
「……やることが、このカボチャみたいに山積みね、スコア?」
「あー、いい、なんとなく判ってるから。手伝えっていうんでしょ?」
 カボチャの山を見上げるスコアに視線を送るリロード。
 程なく、スコアはリロードの視線に気がついたのか、諦め気味な表情を浮かべながら両手を上げた。
「カボチャくりぬいたりカボチャの器作ったり、あとは……カボチャを食べやすいように切ったりかな? それくらいなら手伝うよ」

「……まあ、たくさんの南瓜料理やランタンが届いたら、祭りの関係者や参加者の人たちは喜ぶかもなあ……」
「ん、たくさんランタンが並んでいたら、楽しそう」
 南瓜の数に思わず『マリオス・ロゼッティ』は遠い目を浮かべる。
 そしてその傍らに立つ『シルシィ・アスティリア』
 自分達の作った料理やランタンを並べながら祭りを楽しむ人達の様子を思い浮かべ、やわらかく微笑んだ。
「ふふ……ランタン作り、楽しそう」
 なんとなく、近くにあった一際小さいカボチャを手に取るシルシィ。
 高く持ち上げてみたり、くるくると回してみたり、感触を撫でて確かめてみたり。
 どのようなランタンにするべきかと悩むことすらも、シルシィにとってはとても楽しいことなのだ。
 そんなシルシィの様子を微笑ましく眺めていたマリオスだったが、ふと疑問が浮かぶ。

「そう言えば、シィはランタンとか作ったことがあるのか?」
「ううん」
「そうか……」
 ふるふると、首を振るシルシィにマリオスはどうしたものかと考えを巡らせる。
 シルシィに怪我をさせたくはない。
 しかし危険だからといって、シルシィが進んでやりたがっていることを止めるようなことをしたくはない。
 では、どうすれば――。

「……じゃあ、シィは下書きと仕上げをやってくれるか?」
 きょとんとした様子のシルシィに、マリオスは言葉を続ける。
「僕は途中の大まかな細工をするから。手分けしたほうが早いだろう?」
「そうかも? ん、わかった」
 マリオスの提案にこくりと頷くシルシィ。
 確かにこれだけの数を一人で加工するのは難しい、しかも初めての作業とあれば尚のことだ。
 それでも手分けして作業すれば、きっとより多くのランタンを人々に届けることができるだろう。
 色々なランタンを作るにはアイディアも必要だ。
 作業を始める前に、図書館でハロウィンに関する本を探してみてはどうだろう。
 そんなマリオスの提案で、二人はまず図書館に向かうことにしたようだ。

「マリオス、わたし、これ作ってみたい」
「うーん、中々装飾が細かいけれど……頑張ってみようか」
 シルシィが指さすのは、ハロウィンをテーマにした絵本だ。
 挿絵に描かれたカボチャ達はいずれも装飾が細かいものだが、暗い場所で火を灯せばきっと映えるだろう。
 他にも何冊かハロウィンランタンの資料を選び出した後、二人は図書室を後にした。

●あなたのために
「さて、始めましょうか」
 上着は脱いで少し離れた椅子に。
 ネクタイは胸ポケットに押し込んで。
 エプロンを付けて。
 雄逸の準備は万端だ。
「カボチャはこれと……あとはこれも使わせてもらいましょうか」
 いくつか並ぶカボチャの傍には、哀れ木っ端微塵となったカボチャの姿もあった。
 エルピスの手によるものだ。
 まずは小さく切らなくてはという雄逸の独り言を聞いたのか。
 カボチャを次から次へと叩き割っていく彼女の仮面の奥の瞳はどこか輝いて見えていた……ような気がした。

「ほくほくなのですー」
 パンドラさんはそこでランタンを作っていて下さいと雄逸に頼まれ、パンドラはランタン作りに勤しんでいた。
 出来立てのカボチャの甘煮をぽいぽいと口に放り込みながら、エルピスは黙々とカボチャを削っていく。
 カボチャの甘煮はエルピスの腹ペコが少しでも治まるようにと、真っ先に雄逸が作ったものだ。
 かつん、かつんと、エルピスは工具を使ってカボチャの皮に穴を開けていく。
 途中、力余ってやけに大きく口を開けたカボチャランタンが出来てしまったのはご愛嬌。
 遠目にエルピスの様子を眺めながら、雄逸も黙々と手を動かす。
 先程の甘煮と共にふかしておいたカボチャをほぐして、牛乳、バター、砂糖と共に鍋の中へ。
 火をかけ続けて程よくとろりとしたところで、用意しておいた生地の上にカボチャを流し込んでいく。
 あとは暖めておいたオーブンでパイ焼いて、完成だ。

「ゆーいち、できましたかー?」
 暫くして、ランタン作りに満足したのか、完成したランタンを片手に抱えて駆け寄ってくるエルピスに、雄逸は笑みを返した。
 机の上には完成したばかりのパイが並べられていた。
 ほのかにバニラの香るパイに浮ぶのはカボチャのお化けの顔。
 雄逸は、そのうち一皿を手に取るとエルピスに差し出した。
「ねぇパンドラさん、一杯食べてお化けを退治してくださいね」
「まかせるのですー!」
 雄逸の切り分けたパイの大きな一切れを口に頬張り、あつあつなのですーと笑みを浮かべるエルピス。
 エルピスがパイに夢中になっている間、雄逸はその横顔をずっと見つめていた。

「おや、美味しそうなものを作っているね」
「貴様につまみ食いの暇は与えんぞ、さっさと運べ」
 甘い香りに釣られてか、ひょっこりと顔をだすトウヤ。
 そんなトウヤをエンジュが苦い顔を浮かべて引っ張っていこうとするが、雄逸はそれを制した。
「いえ、せっかくですから。トウヤとエンジュさんもどうぞ」
「ワタクシサマからも、これあげまーす!」
 雄逸からはパイが、ご機嫌なエルピスからはランタンがずずいっと差し出される。
 パイとランタンにトウヤは目を輝かせ、またエンジュも戸惑いつつも気遣い感謝すると頭を下げたのだった。

「……あ!」
 パイを心行くまで堪能したエルピスは、ごそごそと床に置いたままのランタンに手を伸ばした。
「ゆーいちにはこっちのきれいにできたのあげますー!」
 エルピスはカボチャランタンを一つ、雄逸にぐいと押し付ける。
 思い人からの唐突のプレゼントに戸惑う雄逸だったが、エルピスが隣の椅子の上に一つだけ。
 大事そうにランタンを置いていることに気がつく。
「パンドラさん、そっちのランタンは?」
「へっぴなのは…旦那様にあげるのです。聞いてください、今夜は会うのですよ!」
 エルピスの言葉に、雄逸の顔色が曇る。
「そう、ですか……」
「パイももっていくのです。たべませーん」
 パイを一つ、箱に入れるとエルピスは口元に弧を描く。
 きっと、喜びますよと。
 平静を装いながら紡いだ言葉は、果たしていつも通りだっただろうか。
 
 一方、少し離れたテーブルにて。

「……経費で落としたカボチャだから、持ち帰りはさせないって言ってなかったっけ?」
 もう一切れパイを口に放り込みながら、トウヤはエンジュの顔を覗き込む。
 パイの入った箱を大事そうに抱えるエルピスに暫く視線を向けた後、エンジュはそっと目を伏せた。
「……あのような様子を見て、野暮なことを言うほど我も鬼ではない」
 エンジュちょろーい、と茶化すトウヤに拳骨が落ちるのはもう間もなくのこと。

●やるからには妥協は許さない
「さあ、誰よりも多くカボチャを減らしてやろうじゃないの」
 エプロンを締め、袖も捲って、リロードは目の前のカボチャの山を不敵な笑みで睨みつける。
 準備も気合も万端だ。
 カボチャ以外の材料も掻き集めてきた。
 これならきっと味にも食感にも、飽きの来ない料理が作れるだろう。

「スコア! これ、よろしくね!」
「何、これ……ああ、クッキーの型?」
 リロードから渡された袋を開けてみるスコア。
 そこには如何にもハロウィンらしいお化け型や、ポップな星型。
 様々なクッキーの型が詰め込まれていた。
「それ、カボチャのグラタンに使いたいのよね」
 出来るだけ沢山頼んだわよ、と念を押すリロードは既にカボチャのポタージュ作りに入っている。
 大量にカボチャを消費する要となる一品だ。

 スコアは袋からお化け型を取り出す。
 目や口も一緒にくり抜けるようになっているらしく、中々愛嬌のある顔立ちに仕上がるようだ。
 スコアは適度な厚さに切り分けたカボチャにお化け型を押し当てていく。
 すぽん、すぽん。
 一つ一つ丁寧に、崩れないように、カボチャをくり抜いていく。
 少しずつ、まな板の上にお化けの行列が出来上がっていく。
 あまりの単調作業に、思わずスコアからは欠伸が漏れる。
 瞼が重たい、とても重たい。
 重みに耐え切れず、徐々に瞼が下りてくる。
 そのままスコアは心地よいまどろみの中へと落ち――。

「あ、でも同じ形ばっかりだと見た目に飽きちゃうから、バランスよく数を用意して頂戴ね!」
 ――なんてことはなかった。
 リロードの指示に、スコアの意識は一気に現実に引き戻される。
「人使い荒いんだから……」
「あと袖もちゃんと捲りなさい!」
「……はい」

 大仕事を終えたリロードの顔には、達成感が浮かんでいた。
「……よし、これだけの種類があれば問題ないでしょ」

 まずは黒胡椒であっさりめに味をととのえたカボチャのポタージュ。
 カボチャグラタンはカボチャの皮を器にして。
 とろりととろけるチーズに加え、しめじやベーコンも入れてこってり系に仕上がった。
 スコアの頑張りのお陰で、こんがりと色のついたカボチャのお化けや星があちこちから顔を覗かせおり、見た目も大変華やかだ。
 カボチャサラダはマヨネーズと塩胡椒で味付けを、ハムの塩気とカシューナッツの食感がたまらない。
 揚げたてのカボチャコロッケは枝豆入り、牛乳で甘めのカレー味。
 カボチャのそぼろ煮は生姜で和風に、ニホン出身の者にはたまらないだろう。
 ふわふわカボチャオムレツからは、おろしニンニクにオリーブオイル、醤油が香り非常に食欲をそそる。

「色々と作業手伝って貰えて助かったわ、ありがとうねスコア……って、ちょっと! 大丈夫なの?」
「……うん、大丈夫」
 こっくりこっくり。
 スコアは半分夢の中、声にも殆ど覇気がない。
「眠いんじゃないの?」
「……大丈夫、眠くないよ」
「ちゃんと寝たわよね?」
「ちゃんと寝たよ、うん」

 舟を漕ぎながら答える全く説得力のない姿に、リロードは苦笑いを浮かべる。
「……ここの片付けはアタシがやっておくから、皆の作業が終わるまであっちで休んでなさいな」
「うん、休む……」
 分かっているのか分かっていないのかよく分からない返事をして。
 ずるずると体を引きずるようにして、スコアは近くの椅子に腰掛けるとそのまま目を閉じた。

●はじめてのランタン
 図書館でハロウィンの本を借りて。
 ああでもない、こうでもないと、ランタンのデザインを二人で沢山話し合って。
 最初こそは緊張しているのか、作業中はきゅっと口を結んでいたシルシィだったが、次第にコツを掴んできたのか、時折楽しそうに微笑みながら次々とカボチャをくり抜いていく。

 ランタン作りが初めてだというシルシィを、最初のころはマリオスは内心ハラハラしながら見ていた。
 しかし、いざ始めてみれば不慣れな頃にシルシィが指先を少し切った程度で、その後は大きな怪我もなくマリオスはほっと安堵していた。
 力仕事と仕上げ、二手に分かれたのが功を奏したのか、気がつけば積み上げていたカボチャも予定よりも大分その数を減らしていた。

「これで、よし」
 ことんと、出来上がったランタンを机の上に置くシルシィの顔には達成感が見えた。
 出来上がったランタンを順番に並べてみると、その上達振りが伺えた。
「凄いじゃないか、よく頑張ったなシィ」
 頭を撫でるマリオスに、シルシィは困ったような、複雑そうな表情を浮かべて眉を下げた。
「特にこの小さいのなんかはよく出来てると思うな」
「これね、このランタンはね、わたしすごく頑張ったの」

 マリオスは、三番目に並んだ小さいカボチャランタンを指差した。
 とにかく色々な大きさの物を作ってみようということで、用意してある中で一番小さなカボチャを選んで作ったものだ。
 シルシィが作ったものの中でも、それは会心の出来だった。
 このランタンを作り上げてからは、シルシィが自信をもって作業を進められるようになっていった。
 ずっとシルシィを見守っていたマリオスには、そう思えた。

 シルシィがランタン作りの片付けをしている間、マリオスは完成したランタンをエンジュに引き渡していた。
「……ふむ、これだけあれば皆も喜ぶだろう」
 机に並べられたランタンを数え終わり、それを一つ一つ確認しては丁寧に回収していくエンジュ。
 籠の中に詰め込まれたり、荷車に乗せられていく手作りのランタン達。
 その様子を感慨深そうに見ていたマリオスだったが、途中思わずエンジュに口を開いた。
「……なあ、ちょっといいか?」
「どうした、何か気になることでもあったか?」

 マリオスはエンジュが手に持っているランタンを指差す。
「その一番小さいランタンなんだが――」
 持ち帰らせてもらっては駄目だろうかと問うマリオスに、エンジュの動きが止まる。
 マリオスは、真剣な表情でランタンを仕上げていくシルシィの姿を思い出す。
 出来ることならば、このランタンを思い出として彼女の手元に残してやりたい。
 そう思っての言葉だった。

「そうは言ってもな、このカボチャも元々経費で落としているものでなぁ……」
「……いや、断られても仕方がないとは思っていたから」
 少し残念に思いつつも、片付けを手伝いに行こうとマリオスは踵を返そうとする。
「……あー、いや待て」
 肩を叩かれ振り返ると、マリオスの手にぽんとランタンが一つ乗せられる。
「あの娘の私物が、納品するカボチャの中に混ざっておったぞ。危うく回収してしまうところだったではないか」
 あー危なかった、いやー本当に危なかった私物なら持っていく訳にはいかないなと、わざとらしく繰り返すエンジュ。
 目を瞬かせるマリオスの掌の上では、小さな手作りのカボチャランタンが笑っていた。

●浄化師達のハロウィンパーティ
「皆お疲れ様、せっかくだしお茶でも淹れようか」
 全て作業を終えた後。
 マリオスの提案で、せっかくこうして集まったのだからと浄化師一同は慰労も兼ねてハロウィンパーティを開くことになった。
 作った料理のうちの一部を机の上に並べて、浄化師達は互いの健闘を称えあった。

「雄逸さん、お茶のおかわりはいるかい?」
「ああ、ありがとうございます、頂きます」
 なるべく雄逸の作ったパイに合いそうな茶を選んだつもりだと、マリオスは笑う。
 暖かいお茶に、雄逸のもやもやとしていた気持ちも徐々に落ち着いていく。
「ゆーいち見てください、こっちにもお化けがいます、いっしょに成敗ですー!」
「これ、同じお化けでも色んな形してるのね、すごく可愛い」
 グラタンのお化けをスプーンでつついては口に放り込み、次々と成敗していくエルピス。
 シルシィもスプーンに乗せたニコニコ笑顔のお化けをじっと見つめる。
 シルシィも一緒にお化け退治しようとエルピスに勧められ、躊躇しつつシルシィもぱくんっ、とお化けを口の中へご招待。
「やっぱ色や形の豊富さも楽しみの一つよね……ちょっと、スコア! 食べながら寝ない!」
「大丈夫、起きてる、起きてるったら……お祭りの会場でもきっとこんな風に食べたり飲んだりしながら、初めて会った人同士でも楽しく過ごすんだろうねぇ……祭りで楽しく、楽しく……! ペン! ペンどこ! 紙は……ああもうこのカボチャでいいや!」
「やめなさいったら!」

 カボチャとカボチャ料理に囲まれて。
 大変だったかもしれないけれど、これはこれで楽しかったかもしれない。
 ふとそんなことを思いながら。
 浄化師達は各々、束の間の息抜きを目一杯楽しんだ。

●届かぬ言葉
 雄逸は、駆けていくエルピスの姿を見送る。
 廊下の端へ、どんどん遠ざかっていく彼女の姿に、雄逸の胸の奥が軋んだ音を立てる。
 エルピスがずっと大事に傍に置いていたランタンとパイの入った箱を差し出す相手は彼女の夫。
 遠くから雄逸に向かって大きく手を振るエルピスと軽く手を挙げる親友に、雄逸も手を挙げて応える。

 ――僕はあなたのために作ったんですよ、ねぇパンドラさん。
 その言葉は誰に届くこともなく。
 雄逸の胸の奥で反響して、じわりとした痛みを残すばかりだった。


【魔女】かぼちゃづくし!
(執筆:茉莉 GM)



*** 活躍者 ***

  • リロード・カーマイン
    作戦に綺麗も汚いもある?
  • スコア・オラトリオ
    フレーズが沸いてきたー!

リロード・カーマイン
女性 / 人間 / 悪魔祓い
スコア・オラトリオ
男性 / エレメンツ / 狂信者




作戦掲示板

[1] エノク・アゼル 2018/10/20-00:00

ここは、本指令の作戦会議などを行う場だ。
まずは、参加する仲間へ挨拶し、コミュニケーションを取るのが良いだろう。  
 

[4] シルシィ・アスティリア 2018/10/26-00:45

シルシィ・アスティリア。
パートナーは、マリオス・ロゼッティ。
どうぞ、よろしく。

ええと、わたしたちは、ランタンを作るつもり。

そうね。作業が終わったら、慰労を兼ねてお茶とか…?  
 

[3] 雄逸・霧崎 2018/10/25-21:24

こんにちは。
私は霧崎、パートナーはエルピスさんです。
今回、私は南瓜のパイにしようと思います。量が多いので、こう…ハロウィンらしい形のパイの予定です。エルピスさんは、ランタン作りをがんばりたいそうです。
そうですね、みなさんと食べれたらと思ってます。いかがでしょうか?
よろしくお願いしますね。

ねぇパンドラさん、南瓜、おいしいですよ?

パンドラ「がんばるのでーす! 力仕事はまかせろー!」
 
 

[2] リロード・カーマイン 2018/10/24-22:14

初めましてね。
私はリロード。
こっちは相棒のスコアよ。

私達は、というか私はカボチャ料理を作ろうと思ってるわ。

ただ、一杯あるらしいけどどれくらいの人数で食べるのかしらね。

まぁ、責任は、取らせましょう(にこっ