鈴理あおいのクリスマス!
普通 | すべて
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鈴理あおいのクリスマス! 情報
担当 柚烏 GM
タイプ シチュエーションノベル
ジャンル 日常
条件 すべて
難易度 普通
報酬 なし
相談期間 2 日
公開日 2018-12-14 00:00:00
出発日 2018-12-14 00:00:00
帰還日 2019-01-14



~ プロローグ ~

1718年12月――教皇国家アークソサエティは、「クリスマス(ユール)」ムードに包まれています。

12月24日の「アレイスター・エリファス」の生誕祭として、教皇国家アークソサエティを中心に普及したイベントでしたが、
今では、恋人や家族が食事や団欒を楽しむ、一大イベントと変化していました。

子ども達にとっては、アレイスター・エリファスよりも知名度の高い「伝説の魔術師:サンタクロース・ニコライ」が、
プレゼントを届けてくれるという、希望溢れる日です。

そんなクリスマスに、エクソシスト達にも息抜きが必要だとして、
ヨセフ・アークライトから、束の間の休息が指令として与えられました。

「シャドウ・ガルテンの事件」から、サクリファイスが動くことは目に見えているため、
エクソシストはそちらの対処をする必要もあります。

しかし、だからこそ。生死を賭ける戦いに望むためには、パートナーとの仲を縮める必要があるでしょう。
あなたのクリスマスは、どのような1日になるのでしょうか!


~ 解説 ~

現代社会とは、起源などが異なっていますが、基本的なイメージは同様のイベント内容になっています。
七面鳥やシャンパン、ケーキといった定番的な料理を楽しんだり、クリスマスツリーやキャンドルなども国内で飾られます。

また、ヨーロッパ圏であるためユール色も強く、料理を並べたテーブルを「ユール・ボード」を呼称したり、
ケーキはブッシュ・ド・ノエル、肉料理はユール・シンカが主流であるなど、現代日本とは多少感覚が異なる部分があります。

サンタクロースが枕元にプレゼントを置いていく、という伝説も存在します。
教団では、まだ年端も行かないエクソシストには、サンタクロースのプレゼントと称して、プレゼントを渡しているようです。

マリン・ネクタールからは、毎年経費を抑えてと申し出があるものの、
ヨセフ・アークライトは毎年なんとかしてプレゼントをやりくりしています。
(※ファンタジー世界ではありますが、世知辛いことに、プレゼントは保護者などが用意しています)

教皇国家アークソサエティ以外の国を出身としている場合は、ユールやクリスマスを知らないという可能性もありますので、
クリスマスという文化はどんなものなのかわからない、ということを前提としても問題ありません。


~ ゲームマスターより ~

※イベントシチュエーションノベル『聖なる夜に祝福を!』の対象エピソードです。





◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇

鈴理・あおい イザーク・デューラー
女性 / 人間 / 人形遣い 男性 / 生成 / 魔性憑き
※特にすることもないので寮内の飾り付け等雑用中
髪もおろして、おとなしめの服装
クリスマスカードですか?はい、私で良ければ
制服姿でしか普段会わないから、私服のイザークさんと歩くのは初めてかも
きっと高級なんだろうな…でも似合ってる
化粧なんてしてないです、唇が荒れたから少しクリームは付けてますが
確かに男の人ってつけてるイメージないですよね
…そうだ!
雑貨のお店でリップ購入
良かったらこれを。男性向けだから大丈夫です
私のはいいんです
今年は色々とお世話になりましたし
クリスマスプレゼントと思って下さい
私にもですか…?
そう言われては受け取るしかない
ありがとうございます
※イザークと分かれた後
本当はお化粧はしないのではなく、大嫌い
着飾る事が怖い
ほとんどのアクセサリーや服は昔捨ててしまった
…だけど、今日のこれだけは。
怖いことは何もなくてただ優しさだけを感じる
今は難しいけれど、いつかつける事ができますように


~ リザルトノベル ~

 教皇国家アークソサエティ――薔薇十字教団本部のあるこの都市は、教団設立者であるアレイスター・エリファス生誕祭の、いわば発祥地でもある。つまり、クリスマスともなれば街中が祝祭ムードに浮き立っており――中枢地区のエトワールでは、クリスマス・マルシェと呼ばれる盛大な市が開かれ、大勢の人々が買い物を楽しむのだ。
(……と言っても私は、特にすることもないんですけど)
 のんびりと教団寮で過ごす鈴理・あおいは、寮内の飾り付けを行うなど雑用をこなし、普段と変わらない休日をおくるつもりだった――のだが。
「あおい? もし良ければ、俺の買い物に付き合って欲しいのだが」
 私服姿で颯爽と現れた、喰人のパートナー――イザーク・デューラーからクリスマス市への誘いを受け、そのまま祝祭で賑わう街へと繰り出すことになったのだった。
「……えっと、クリスマスカードを買うんでしたっけ」
「ああ、家族へ贈るカードが欲しいのだが、俺一人だと色々目移りして、選ぶどころではなさそうなんでな。あおいに選ぶのを手伝って貰いたいのだ」
「はい、私で良ければお手伝いしますよ」
 ――ふたり並んでリュミエールストリートを歩きながら、今日の予定を確認しつつ。あおいに向かって、いたずらっぽく微笑むイザークは、上品な私服姿も相まって普段とはまた違った印象だ。そう言えば、普段は教団の制服姿でしか会っていなかったから、私服で一緒に歩くのは初めてかも――一度そう意識してしまえば、あおいは妙にくすぐったい気持ちになる。
(きっと、高級な服なんだろうな……でも、似合ってる)
 そろそろと上目遣いでイザークの姿を窺えば、どこかの王族だとか自称しているのも、あながち嘘では無いのかもしれないと思ったりもして。
(私は……どうなのかな……)
 ――同時に質素倹約を旨とし、着飾ることを嫌う自分が隣に居るのでは、釣り合いが取れていないんじゃないかとも思ってしまう。結局寮で過ごしていた時の、おとなしめの服装のまま来てしまったけれど、一緒に居て浮いてしまっていないかな、と今更ながら感じたりもして――。
「……三人で一枚でも良いんだが、色々なデザインがあった方が、義母も喜ぶと思うから――あおい、どうした?」
「あ、何でもないです。そうですね……」
 と、物思いに耽っていたところをイザークの声に呼び戻されたあおいは、彼の家族それぞれに合ったクリスマスカードを、一枚ずつ一緒に選んでいった。
 先ず義父へは渋めの、ニホン風の模様があしらわれたものを。そして義母へは、雪の結晶が煌めく綺麗なカードを――最後に、弟へのものはクールでシンプルな、銀と藍の二色でデザインされたカードに決める。
「ふう……結構時間が経ってしまいましたね」
 ――そうして手伝ってくれたお礼に、イザークからマルシェで軽食を奢ってもらっていると、あおいは彼の唇が薄らと赤くなっていることに気が付いた。
「あれ、イザークさん。その口元……」
「……む、乾燥して唇が切れてしまったか」
 微かに唇へ滲んだ血を、無造作に拭おうとするイザークに待ったをかけて、直ぐにあおいは近くの雑貨店でリップクリームを買ってくる。
「はい、男性向けのものなので、良かったらこれを。今年は色々とお世話になりましたし、クリスマスプレゼントだと思って下さい」
「済まない、有難く使わせて貰うとしよう。……あおいは良く気がつくな」
 さらりと述べられた感謝の言葉に、虚を突かれたような顔をするあおいだったが――己を律する気持ちは忘れず、何でもない風を装って背筋を正して。その普段と変わらぬ雰囲気に、イザークはつい苦笑してしまったものの、見れば私服姿の彼女はちょっぴり印象が違うような気がした。
(いつもは髪をきゅっと結んでいるが、今は髪をおろしているようだし……穏やかな表情をした、普通の少女に見えるな)
 彼女が教団所属のエクソシストであると、此処に居るひとびとがどれだけ知っているのだろう。そんなことを考えると、何だか誇らしげな気持ちにもなるイザークであったが――。
「……もしかして、化粧もしてる?」
「!? 化粧なんてしてないですよ。……唇が荒れたから、少しクリームは付けてますが」
 仄かに艶めく、あおいの唇を見たイザークが真面目な顔をして問うが、彼女は慌てた様子で早口で否定をする。ならばお揃いだな――と納得したイザークは、其処で何かを思いついたらしく、あおいに少し待つように告げるとマーケットの中へ飛び込んでいった。
「イザークさん……?」
 ――そうして、彼を待つこと暫し。買い物を終え戻ってきたイザークは、その手に持っていた綺麗な包みを、あおいへと手渡す。クリスマス風のラッピングをされたそれを、そっと開いてみれば――其処から顔を覗かせたのは、可愛らしい色をしたリップだった。
「話を聞いたら、女性向けのクリスマス限定品があると言うから、それを……な」
「え、私にもですか……?」
 恐る恐るリップを取り出しているあおいに頷き、居住まいを正したイザークは、普段の強気な態度とはまた違う――ひどく優しい声で、彼女に感謝を告げる。
「……今年は色々お世話になりましたし、これをクリスマスプレゼントだと思って下さい」
 ああ、そう言われると受け取るしかない――腹を括ることにしたあおいは「ありがとうございます」とイザークに礼をしたが、その手と手が触れ合った瞬間、何故だか泣き笑いのような表情を浮かべたように見えた。
(いや……今はあえて聞くまい)
 ――本当にこのパートナーは、いつも肩に力を入れたまま歩んでいて、此方にも中々心を開いてくれないのだが。その手強さも、最近では好ましく思うようになってきているのだ。
(常にあおいは、己の力で道を切り拓こうとしているが、叶うのであれば――)
 共に在りたいものだ、とイザークは思う。イーザ・イーザ・イーザ――苦難を、安らぎを、運命を共に――魔術真名の文言、そのままに。

 そうして買い物を終えてイザークと別れた後、ひとり広場中央のベンチで休憩をしていたあおいは、先程のやり取りを思い返して溜息を零していた。
(本当は、お化粧はしないようにしているんじゃない……大嫌い)
 白い吐息がふわりと舞う中で、微かに震えている指先は、ただ寒いからだけじゃない――着飾ることが怖かった。教団に入る際に、今まで持っていた殆どのアクセサリーや服は処分してしまったし、自分を装う為にお金を掛けること自体、あおいは嫌なのだ。
(だって、私は自分の力で生きて行かなきゃいけないから。誰にも頼らず、同情されないよう、背筋を伸ばしていかないと――)
 それでも――あおいの手の中にある、イザークから贈られたリップだけは。今日のこれだけは、怖いことは何も無くて、ただ優しさだけを感じることが出来るのだ。
(……まだ、今は難しいけれど)
 ――ふと顔を上げれば、噴水近くに設営されたクリスマスタワーが、あおいの視界に入ってきた。
 今日はクリスマス――恋人や家族と団欒を楽しむ祝日として、すっかりアークソサエティでは馴染み深いものになったけれど。事情があったとは言え自分は、家族の繋がりを断ってしまった身ではあるが、家族のような親しい存在と今日一日を過ごすことが出来た、と思う。
(いつか、これをつける事が出来ますように)
 可愛らしい色のリップを空に翳して、あおいはかけがえのない贈り物をくれた相棒へ、そっと心の中で感謝した。
 ――イザークさん。あなたがパートナーで、本当に良かった。


鈴理あおいのクリスマス!
(執筆:柚烏 GM)



*** 活躍者 ***

  • 鈴理・あおい
    やるべき事を成す、それだけです。
  • イザーク・デューラー
    彼女の行く末に祝福があらんことを

鈴理・あおい
女性 / 人間 / 人形遣い
イザーク・デューラー
男性 / 生成 / 魔性憑き