~ プロローグ ~ |
教皇国家アークソサエティのブリテン。技術革新の為の特区で、その技術力で栄え得た富は文化を育て、観光客も多く訪れる街。 |
~ 解説 ~ |
探偵マウロを通じて、あのJ印の鍋で有名なブリテンのジョンソン家からの依頼です。 |
~ ゲームマスターより ~ |
別荘に住み着いてしまった猫の捜索捕獲をよろしくお願いします。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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目撃された猫たちは親子でしょうか? 居心地は良いのでしょうが、別荘の持ち主からの依頼ですしね 調度品も高価なものが多いようですし 悪い人達に家ごと荒らされる前に猫たちを見つけましょう 間取り図があれば預かり 1階を皆一通り捜索したあと分かれて地下へ 壁や扉に猫が通れそうな空間または通り道が無いか調べる 住み着いてるという事はどこか出入りできる場所がある? 見つけたら怯えさせないよう優しく呼びかけて捕まえ 大人猫を見つければここでの生活は危ないと話し仔猫達の保護の協力仰ぐ ヨ 使用人部屋まであるんですね 流石ジョンソン家の別荘と言いますか ベ J印のあの鍋はどこでも見かけるしな 流石に隠し部屋なんてのはない、か?(壁叩く |
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仲間と協力して猫を捕獲 1階を手分けして確認後、2階を探す 喋る猫発見時は仲間に知らせる 猫が好きな陽当たりが良い場所や狭い場所を中心に、高所や物陰も確認 ナツキはトランスして犬の聴覚も頼りに探す ナツキ:いねぇなぁ…おーい猫ちゃーん ルーノ:(猫ちゃんはどうなんだ、という顔) 猫を見つけたら捕獲 ルーノは猫の退路で待ち構え逃走を防ぎ、ナツキが人型に戻って猫を抱き上げる ナツキが近づく時は姿勢を低くゆっくり、警戒するなら止まって声をかけたり食べ物で釣る 喋る大人の猫には仔猫が逃げないように声をかけてもらえるよう頼む ここに留まれば良くない事を考える連中に利用される危険があると伝え、 安全な住処を探す手伝いをすると提案 |
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~ リザルトノベル ~ |
●ジョンソン家別荘一階エントランス 広々としたエントランス。そこに、どーんと置かれた大きな箱。中には、猫じゃらし、最近猫界で噂の猫用おやつ、ふかふかの毛布、柔らかそうな生地で出来た大きなリボンのついた首輪等、いわゆる猫グッズ。 ――エクソシストの皆さま お世話になります。 この度は猫ちゃんの保護にご協力いただき、ありがとうございます。 必要そうな物は、揃えておきましたのでご自由にお使い下さい。 それでは、よろしくお願いいたします。 ライリー・ジョンソン―― 丁寧な字で書かれた手紙に、この別荘の間取り図が添えられていた。 「使用人部屋まであるんですね。流石ジョンソン家の別荘と言いますか」 幼さを残す小さな顔に金色の豊かで長い髪、その青い目でしげしげと間取り図を見つめるのは『ヨナ・ミューエ』。 「J印のあの鍋はどこでもみかけるしな」 ヨナの頭上から声がした。頭越しに間取り図を覗き込んでいるのは、ヨナのパートナー『ベルトルド・レーヴェ』だ。 嬉々としてライリーの用意した物を一つ一つ手に取り吟味しているのは『ナツキ・ヤクト』。 「使えそうモノはあるか?」 ナツキを横目に、涼し気な表情でしかしその目は真剣にヨナが広げている見取図見ているのは『ルーノ・クロード』。 「そうだな、これと、これと……」 ヨナはベルトルドの手に間取り図を押し付けると、ナツキと一緒に物色を始めた。 「目撃された猫たちは親子でしょうか?」 ヨナの問いかけに、猫のおやつの匂いをくんくんと嗅いでいたナツキが顔を上げた。 「そうかもしれないな」 「居心地は良いのでしょうが、別荘の持ち主からの依頼ですしね」 ヨナがふとため息を漏らした。 「はじめようか」 ベルトルドの言葉に、かがみこんで箱の中を物色していたヨナとナツキが立ち上がった。 エントランスの正面には二階へと上がる階段、右手には食堂、左手には娯楽室兼応接室、階段の奥にはキッチンと地下へと続く階段がある。 「手分けをしよう」 ルーノの意見に全員が目で同意した。 相手に気配を悟られないように、驚かせないように、それが猫捜索の鉄則。 ヨナは浮き立つ気持ちを抑え、静かに静かに歩みを進めた。つい暴走してしまう自分に倒れるまで付き合ってくれたベルトルドを思い、パートナーとして在り方を考え直していたところだったのだが、猫、と聞いてつい受けてしまった。 ――きっと、ベルトルドさんも猫ちゃんに癒されますよね―― ふわふわボディバッグに何かをしまい込み、辺りをくまなく探りながら歩みを進めるベルトルドと捜索を始めた。 エントランスの左側にヨナとベルトルトが、ルーノとナツキは右側へ。 よく見るとエントランスの床には、小さな肉球の跡と、それよりも小さな肉球の跡がある。 肉球の跡に気が付いたナツキが、無言で床を指さす。 ヨナ、ベルトルド、ルーノも足跡に気付いた。どうやら足跡は無限にあるが食堂の扉は固く閉ざされており、足跡の数も極端に少ない。どうやら食堂へは立ち入っていないようだ。 ベルトルドが娯楽室兼応接室の扉がほんの少し猫が通れる程度開いている事の気付いた。そこには、他とか比べものにならない数の肉球跡。 ――住み着いてるという事はどこか出入りできる場所がある? ベルトルドは見取り図を見て確認した。扉の開いているこの部屋には庭へと続く大きな掃き出し窓があるのだ。 ベルトルドが、そっと扉を押す。 扉は少し音を立てそしてゆっくりと開いた。 音に気付いた他の三人もベルトルドの後に続く。 そっと中へ入ると、誰かの悪戯なのか掃き出し窓の下のガラス一部が割れてしまっている。 猫はこの割れた掃き出し窓から出入りしているようで、汚れた足で出入りしたのであろう跡がある。 「しっ!」 そう言うとナツキがトランスし黒い毛色の大型の犬へと姿を変えた。 「来るぞ」 猫のにおいがが近付いている。 ナツキが三人を制止した。四人は慌てて物陰に隠れる。 その瞬間、割れた窓から白い猫が姿を現し、その後に黒い仔猫、三毛の仔猫、ハチワレの仔猫と続いて入って来た。 猫達は四人に気が付くことなく、扉へと歩いて行く。 猫の後ろ姿を見つつ、ヨナが割れた窓へと静かに移動した。 これで猫達の退路は一応断った。 が ちりん ヨナのふわふわボディバッグから、かすかに鈴の音が鳴った。 猫達が一斉にヨナの方を見た。 四人の侵入者の姿にパニックになった猫達は閉め忘れられた扉から一斉に走り抜け、白い大人猫と黒い仔猫は地下へ降りる階段へ、三毛の仔猫とハチワレの仔猫は二階へと駆け上がった。 その後を追って、ルーノとナツキは二階へ、ヨナとベルトルドは地下へと向かった。 ●地下 猫の後を追って地下まで来たものの、足元が薄暗く猫の姿も肉球も確認できない。 階段を降りると目の前は、使用人用のリビングダイニングになっている。扉はないため、猫も自由に出入りできる。 ヨナが明かりをつけ、中を見渡すと埃の中に肉球の跡は無数にあるが、猫の姿はなく、隠れられそうな場所もなかった。 ベルトルドは地下の薄暗い廊下を進み、階段の隣の食品貯蔵庫へと足を踏み入れた。 そこは食品を保存しておく棚と箱が無数にあり、ベルトルドはそれを一つ一つ確認し始めた。 ヨナはリビングダイニングを出て廊下を進み、使用人居室を一部屋一部屋見て回る。 居室にはそれぞれベッドと棚そして机と椅子があり、全てを確認をするが見つからない。 そして、一番大きな使用人居室。 「後はここだけですね」 ヨナが扉を開いた。 その部屋は他の部屋に比べると少し広く他の部屋には無かった小さいながらもクローゼットまである。 「見つからないな」 ベルトルドもこの部屋にたどり着いた。 「上の階には調度品も高価なものが多いようですし、悪い人達に家ごと荒らされる前に猫たちを見つけましょう」 確かにこの地下へ二匹の猫が駆け込むのを見た。しかし、これだけ探して見当たらないと言うのは、もうこの部屋しか可能性はない。 「流石に隠し部屋なんてのはない、か?」 ドンっとベルトルドが壁を叩いた。 「あっ!」 まだ確認をしていなかったベッドの下から黒い仔猫が飛び出した。 「あ、こら待て!」 慌ててベルトルドが仔猫の後を追った。 ここに居たのですね。 ヨナが少しかがんで仔猫が飛び出してきたベッドの下を覗くと、一番奥に白い猫が目を大きく見開いてヨナを見つめていた。 慌てて追いかけたが再び仔猫を見失ったベルトルドは、ゆっくりと壁や扉に仔猫が通り抜けられそうな空間や通り道がないか、一歩一歩姿勢を下げて確認していた。 「おじちゃん!」 子供の声に顔を上げて正面を見ると、廊下の突き当りに黒い仔猫がちょこんと座っている。 どうやら逃げ切れないと悟って、自ら声を掛けてきたようだ。 「喋る猫はお前だったのか」 「あたちだけじゃないよ」 そう言って、ぽてぽてとベルトルドへと向かって歩き始めた。 ヨナは白い猫から目を離さないようにしながら、ふわふわボディバッグから小さな鈴のついた猫じゃらしを取り出した。一階で猫に気付かれた音は、この猫じゃらしについて鈴だった。 「怖くないですよー。猫ちゃん」 ヨナは猫じゃらしをふりふりさせ猫を気をそらしながら、今度こそ逃げられないように部屋の扉を閉めた。 ベルトルドは、どっかりと廊下に座り込んでいた。 仔猫との距離は後少し。 「おじちゃんこわいしと?」 「いや、こわくない」 「ほんと?」 仔猫が一歩ベルトルドへ近付く。 「ですから、ここに居るのは危険なのです。ライリーさん、あ、このお屋敷のお嬢様ですけれど、安全な場所で保護してくださる方を紹介してくれるそうですし……」 と言いつつ、ヨナの手は猫じゃらしを振るのに余念がない。 猫はヨナの言葉を理解しているのか、にゃぁん、と小さく鳴いて猫じゃらしにペシっと肉球をぶつけた。 そっと猫の頭を撫でてみる。 逃げる気配はない。 すっと猫じゃらしを動かしてみると、猫の肉球が追ってくる。もう一度動かしてみる。更に肉球が追ってくる。 「にゃーん にゃにゃーん にゃーん」 自分の声にあわせて、猫じゃらしを振る。すると肉球も追ってくる。 ヨナは夢中になってしまった。しかし、仕事を忘れていない。 「ですからね、猫ちゃん。にゃん。仔猫ちゃん達と、にゃん、一緒にここを出て、にゃにゃん、安全な場所へ、にゃん」 にゃん、のところで猫じゃらしを振っている。 ヨナの声がする。 ベルトルドの肩には、身体をよじ登ってきた黒い仔猫がしがみついている。 そっと声のする部屋の扉を開けると、ヨナがにゃんにゃん言いながら、甘い声で猫を説得している、のか、遊んでいるのか。 その姿に思わず口元を押さえ、笑い声が漏れそうになるのを耐えた。 「ままぁ」 ふいにベルトルドの肩の仔猫が声を上げた。 猫じゃらしを振るヨナの手と、それを追う白い猫の手がピタっと同時にとまった。 「あ、あの、いえ、これは、あの」 ヨナが慌てて立ち上がり、白い猫を抱き上げると、猫じゃらしと一緒にベルトルドの腕に押し付けた。 白い猫も抵抗する事なく、されるがままだ。 「ままぁ、このおじちゃんこわくないよ」 仔猫はそう言うと、ベルトルドの頬に顔を擦りつけた。 ●二階 二匹の仔猫は、慣れた足取りで一気に二階へと駆け上がってしまった。 ルーノとナツキが二階へ駆け上がる途中、回廊を駆け抜ける二匹の仔猫の後ろ姿を確認した。 二階は階段を中心に回廊となっており、階段を上った正面には書斎兼居室。書斎からバルコニーへ出る事が可能だ。 回廊沿いのその他の部屋はジョンソン家の人々の部屋だった。 ナツキが人型に戻った。 ぐるりと回廊と見渡すと、全ての部屋の扉が少し開いているようだ。 これではどこにでも好きに仔猫達は逃げ込めてしまう。 ルーノは先ず目の前の書斎の扉を閉めた。 こうすれば書斎に逃げ込んだ仔猫は書斎から逃げる事が出来ない。 回廊をぐるりと歩き、全ての部屋の扉を閉めて回った。 これで仔猫を二階に閉じ込められた。もし書斎からバルコニーへ出たとしても、仔猫が二階から飛び降りるような事はないだろう。 「さて」 仔猫に刺激を与えないように、静かにしていたナツキは大きく息を吸った。 「行こうか!」 ナツキが一つ目の扉を開けた。 そこは子供部屋だったらしく、壁紙は淡い桜色をしており、小さなベッドには埃が掛からないように白い布がかかっている。幼かったライリーの部屋だ。 全てが小さい。そして、全てに白い布が掛けられている。 ナツキは白い布を乱暴に捲っては、覗きこみ仔猫を探す。 「いねぇなぁ……おーい猫ちゃーん」 ルーノが思わず「猫ちゃんはどうなんだ」と言う顔でナツキを見る。 「ん?」 ナツキは気に掛ける様子もない。 次々と居室に入り、白い布を捲っては覗き込むナツキ。 どの部屋も大きな窓があるにはあるが、厚いカーテンで光は遮られ、全く人の気配のない部屋独特の空気がそこにとどまっている。 「おーい、猫ちゃーん」 そんな空気をも、吹き飛ばす勢いで厚いカーテンを明け、猫を探すナツキ。 いつ以来か、明るく照らされた部屋で念のため猫が好きな家具の隙間や上も確認すると、どの部屋にも肉球跡がしっかりと残っている。 中には掛けられている筈の白い布が、床に落ちてしまっている部屋もあった。風が吹き込んだ様子ので、恐らく猫が布にじゃれて落としてしまったのだろう。どうやら猫達は、ここで自由に暮らしているようだ。 しかし、全く仔猫の姿はない。 書斎以外の全ての部屋の確認が済んだ。 「ここだね」 ルーノが書斎の扉をそっと開けた。 その後ろから 「猫ちゃーん」 ナツキが元気よく続く。 ルーノがそっと扉を開けた意味が全くなくなってしまっているが、ナツキは気にしていない。 バタン! ナツキが後ろ手に扉を閉めた。 と同時に。 ガチャン。 部屋のどこかで何かが割れる音。そして部屋を走り回る小さな影が二つ。仔猫たちが居たらしき場所の床には、何かの破片が飛び散っている。 「いた!」 ルーノが影を追い、部屋の隅にまで追い詰めた。 「ここにいたら、危ないからね。ほらおいで」 一歩ルーノが近付いた瞬間、三毛がルーノの足元を駆け抜け、直ぐにハチワレが後に続いた。 「お?」 ルーノが再び仔猫を追うが、仔猫も必死に逃げるのでその距離は近付くようで近付かない。 しかし、やはり仔猫。体力が続かない。 部屋の隅で二匹でぴったりと身体を寄せ合った。 「あんたたちだれ!」 三毛が声を上げた。 「お前喋れるのか、すげーな!」 ナツキが嬉しそうに三毛に話しかける。 「べちゅにしゅごくない!」 三毛が小さな口でシャーっと威嚇をし、それに驚いたハチワレはルーノとナツキの間に走り込んでしまった。 「あち!」 三毛が呼んだ時には手遅れで、ルーノに退路を断たれたハチワレは、ナツキに手によってふわりと抱き上げられてしまった。 「あちにこわいことちないで!」 三毛の声は悲鳴に近かった。 「大丈夫だ。何も怖い事はしない」 そう言って、ナツキがハチワレの身体を優しくなでてやり、ライリーの用意していた猫用おやつを少量ハチワレの口へ少し押し込む。 「あち!」 三毛の心配をよそに、ハチワレは一瞬驚いた様子を見せたが、口をもぐもぐさせて飲み込み、ナツキの指を舐め次を催促し始めた。 その可愛い姿にルーノとナツキの表情は緩みっぱなしだ。 「おい、あち。お前は喋れないのか?」 「あちじゃない! あち!」 三毛が鼻をくんくんさせている。どうやらおやつの匂いを確認しようとしている様子だ。 「だから、あちだろ?」 「ちがう! あち!」 ナツキは三毛の言っている事が分からず、三毛を余計に怒らせてしまっている。 ルーノが何か気付いた。 「はち、だろ」 「しょう、あち」 「あぁ、ハチワレのはちか」 ナツキにもやっと分かった。 当のはちはナツキからおやつを次々と貰い満足したのか今度はナツキの指をおもちゃにじゃれ始めている。 「しゃべれるのは、あたちとくりょとママだけ。あちはまだしゃべれないの」 「そっか、でも人の前で喋っちゃいけないって言われなかったか?」 ルーノが三毛に語り掛けながら距離を縮める。 「こにゃいで!」 三毛が反対の隅へと走り抜けた。 はちはすっかりナツキに懐いてしまい、抱いていなくてもナツキの側を離れない。 そんなはちの様子に三毛も少し心を開き始めてはいるが、恐怖と言う本能が邪魔をして勝手に身体が逃げてしまう。 ナツキは姿勢を低くし、三毛に少し近付く。 「ほら、あれだけ逃げ回ったらお腹空いただろう。このオヤツ美味しんだぞ」 ナツキの手にははちが食べていたオヤツ。 食べたい衝動と本能で、三毛がもじもじしているその姿も、また可愛い。 「こっちへおいで、ここにいると怖い痛い事をする人達が来るかもしれない」 にゃぁん ナツキの説得に、三毛が情けない声を上げた。 ルーノとナツキで三毛を囲んだ。 ナツキがそっと手を差し出すと、三毛は身体を固くしたが逃げるような事はなく、ナツキの手の中に納まった。 「イテ……」 ただ、爪を立てる事は忘れなかったようだ。 仔猫の細い小さな爪は針のようで思いの外痛いのである。 ●合流 仕事を終えた四人が一階エントランスに集まった。 いや、まだ最後の仕事「引き渡し」が残っている。 ライリーの用意したふかふか毛布に座る白い母猫は、まだ完全には納得していない。 「皆一緒がいいですよね」 ヨナが言った。 「それはそうですが……」 今までここで自由に暮らしていただけに、その生活を手放すのは口惜しい、そんなところだろう。 しかし、 「安全な住処を探す手伝いもするよ」 「それでしたら……」 ルーノの言葉に渋々といったところではあるが納得はしたようだ。 仔猫達は母の不安をよそに好き勝手に遊んでいる。特にはちは直ぐに離れた場所へ走って行こうとする。その度に、ルーノがひょいと抱き上げ、少し撫でては降ろし、また走り出そうとしては抱き上げて、を繰り返している。 「ちょっと、この子に遠くへ行かない様にいってくれないか」 と母猫に言ってはいるが、ルーノに別に困っている様子は見受けられない。はちを抱き上げた時に伝わってくる、軽さと柔らかさと暖かさが、何とも表現しがたい。 ベルトルドにはクロがべったりとしがみついて、ゴロゴロと喉を鳴らしている。 特にベルトルドは何もしていないのに、である。 ヨナが猫じゃらしをクロに見せてみたが、全く興味を示さない。 そんな様子を見たベルトルドは、しがみついているクロをひょいとヨナの腕の中へと移動させた。 クロは喉をゴロゴロとならしたまま、ヨナの腕の中でコロンとお腹を見せた。ヨナがクロのお腹をこちょこちょとすると、クロはヨナの指を四本の足で抱え込み、ヨナが手をぱっと広げると、クロは一緒に四本の足をぱっと広げる。再びお腹をこちょこちょとするとクロは足を縮め、手をぱっと広げるとクロも足を広げる。 こちょこちょぱ、を何度も繰り返しながらクロを見つめるヨナの頬はゆるゆるになってしまっている。 「よし、ほら、こい!」 あれほど警戒していた三毛は、ナツキの尻尾で遊ぶのに夢中だ。その首は大きなリボンのついた首輪。ナツキにつけてもらったようだ。 三毛がナツキの尻尾を捉えると、今度はナツキが三毛を捕まえて身体中を撫でまわし、三毛がナツキの手から逃れると、ナツキがエントランスをぐるぐると歩く。すると三毛が全力でナツキの尻尾に飛び掛かる。 ――ナツキさんはモフられ好きと思っていたけどもふる方も好き? ヨナは自らの手を止める事無く、こちらも終わりそうにないナツキと三毛の応酬を見ている。 勢いあまって三毛がジョンソン家の肖像画に肉球を向けた。 「おっと」 ルーノが三毛を抱き止め、すりすりと撫で「今は仕事中だからね」と床へ下ろした。 「……わかってるかい、ナツキ?」 とは言うものの、そもそもナツキは聞いていないし、ルーノ自身も暴走するはちを抱き上げては軽く撫でて下ろしを繰り返している。 ――ルーノさんも? ヨナがルーノをチラっと見た。 と、その視界の端に母猫を猫じゃらしで遊ばせているベルトルドの姿が。 「保護先で家族が離れ離れにならないように、お願いしましょうね」 クロに話しかけると、クロはヨナの指に頬を擦りつけた。 ライリーの頼んだ保護団体が猫を引き取りにくるまでには、あともう少し時間があるようだ。
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*** 活躍者 *** |
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[6] ヨナ・ミューエ 2019/02/11-20:27
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[5] ナツキ・ヤクト 2019/02/11-17:57
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[4] ヨナ・ミューエ 2019/02/11-16:07 | ||
[3] ナツキ・ヤクト 2019/02/11-10:38
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[2] ヨナ・ミューエ 2019/02/08-11:54
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