~ プロローグ ~ |
「…………」 |
~ 解説 ~ |
●目的 |
~ ゲームマスターより ~ |
どうも、GMの虚像一心です。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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性別が変わる不思議な薬 面白そうだし、使ってみたけど…使ってみたはいいけど うわぁ…ニオくん殆ど変わらない 反応もいつも通りとか、寧ろこれ違和感が全くないっていうか 別にニオの性転換が見たいというわけでなく ただ驚くニオが見たかっただけである その後、特に何事もなく一日を過ごし… 「いやこれいつも通りだよね!?なんで!?」 思わずニオにツッコミ いつも通りすぎるんだよ! おれは色んなニオくんが見たいの!折角のパートナーなんだし ニオ君らしいといえばらしいけど! 普段と特に変わらない相方にちょこっとすね気味 うー、分かってるよ いつもと変わらないニオくんが一番だってことは! そーいうニオくんがすきだし? …ニーオーくーん!? |
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イザークさん、何か体の不調はないですか!? 子供じゃないんですから怪しい物は口にしないで下さい! 私の制服を持っ(自分の胸元とイザークのそれを確認しながら)……借りてきます 女性の姿でも華やかで綺麗なんですけど、仕草が男性じみているのでくすくす笑う 髪の毛からまるから雑に扱わないで下さい 髪を解いてあげながら、せっかくだから編み込みにしてしまいましょう くやしいけど似合うと思いますよ(苦笑) これでも昔はあの人と……! 大丈夫、何でもないです。 「自分が」着飾る事はまだ嫌いだけど、過去の思い出に少しづつイザークさんとの思い出が積み重なって薄れていく 今回もいい思い出になるように丁寧に編み込んで飾りも付けてみる |
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逃げられないと悟ったナツキがヤケクソで薬を飲む ルーノ:本当に性転換するとは面白い薬だな ナツキ:くっそぉ、他人事だと思って…! 落ち着きなく狼狽えたるナツキをルーノが面白がり眺める ナツキ:…これ、ちゃんと元に戻るんだろうな ルーノ:戻るはずだが…例外が無いとは言い切れないな(からかうように笑み) ナツキ:戻らないと困る!この体で普段通り戦えるかわかんねぇし…それでルーノの足引っ張る事になったら、困る こんな時まで他人の事ばかり考えるナツキに毒気を抜かれたルーノがからかうのをやめ、 ナツキが気にする体を隠せるよう丈の長い外套を羽織らせる ルーノ:…君は、少しは自分の心配をしたらどうだい? ナツキ:なんだよ急に? |
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~ リザルトノベル ~ |
性別が変わる不思議な薬――『性別変換薬』を笑みを浮かべながら『ニオ・ハスター』に渡した『カリア・クラルテ』。 もはや逃げることが出来ない現実を前に、ニオは諦めて一息でその薬を口に含み、呑んだ。 これでニオは男に変わる……そう思っていたカリアだが。 「……うわぁ」 「どうだ? 自分ではイマイチわからないんだが……」 ――面白そうだし、使ってみたけど……使ってみたはいいんだけど。 「ニオくん……殆ど変わらないんだけど」 薬を呑む前とほぼ変わらないニオに、むしろそっちの方が驚きを隠せなかった。 変わっているところと言えば、それは髪の毛がちょこっと短くなっただけだ。 ……いや、女から男に変わったのだから、筋肉とか体の柔らかさとかは変わっているはずだ。 だがそれでも違和感がないのは――ニオの外見が、元々ボーイッシュなものだから。 元々女っ気のない服ばかり着ているために、少年と間違われるのだ。 ――反応もいつも通りというか、寧ろこれ、違和感が全くないっていうか。 違和感が職務放棄した今、これでは薬を呑んで変わった意味がないのでは? と。 カリアは――さて、どうしたものかと考える。 「これからどうする? 今日一日は何もなかったはずだが」 「あー、うん。……いつも通りに過ごそうか」 性別が変わっていても平常運転のニオに、カリアは若干落ち込んだ。 ――別にニオくんの性転換が見たかったわけじゃない。 ニオくんはニオくんだし、女から男に変わっても、それはニオくんだ。 でもおれは、ただニオくんが驚くところを見たかったんだけど……いや。 まだ可能性はある――ッ! せっかくの薬が無駄に終わったが、まだこれからだと。 だが男になったニオはカリアと共に、いつも通りに過ごそうとしている。 元々少年のような外見の少女が、一時だけ少年に変わっているが。 しかしそれに、全く違和感を感じていないニオと……カリア。 いつも通りに過ごす二人は、ほんの少し時が経っただけで『男になったニオ』のことを忘れてしまった。 違和感なく過ごす二人はそのまま一日を過ごし―― 「いや、これいつも通りだよね!? なんで!?」 違和感なく、冗談抜きでいつも通りに一日を過ごしてしまったカリアは思わずニオにツッコミを入れた。 まさか性転換したパートナーに、全くの違和感を感じないまま一日を過ごしたなど、普通あり得ないだろう! 例えばこう……いつもと違う感覚とか! 女から男に変わったんだから、力が違うとか! もっと色々あったでしょうにッ! 「なんでニオくん、いつも通りに過ごしてんの!? なんでなの!?」 「そもそもどうしてお前に怒られなければいけないんだ!?」 「いつも通り過ぎるからだよッ!」 「いつも通りで何が悪いッ!」 ツッコミから苦情文句に変わったカリアに、ニオは叫んで言い返す。 いや、ニオは別段カリアに怒っているわけではない。 ただ単に、大声で叫んだカリアに驚いて、思わず叫んだだけだ。 既に薬の効果が切れたニオの体は元のボーイッシュな見た目の少女に戻っている。 たった一時間という短い間では、ニオが自分の体に驚く場面などなかったのだろう。 自身もまた薬が切れて元に戻ったことに気付いていなかったようだ。 ……だが、それでいいわけがないだろう。 せっかく手に入れた面白そうな薬が無駄に終わってしまったのだ。 いつもと違うパートナーの一面が見たかった――その想いは、 「そもそも自分がいつも通りで良かったじゃないか。それのどこに不満がある?」 「おれは色んなニオくんが見たいの! 折角のパートナーなんだしッ!」 理不尽に、ニオにぶつけられることになった。 理不尽極まりないその言い分は、だが加速を増す。 「もっとこう……驚くとか、男になった自分の体に興味津々なところを見せてよ! せっかく男になってたんだよ!?」 「自分は元から男っぽいんだから、違和感がないのにどうやって驚けと!? それに自分の体に興味津々とか、まるで変態じゃないか! 自分は嫌だぞそんなの!」 「あー、そうだね! ニオくんは元々男みたいだもんね! そういうのはニオくんらしいと言えばニオくんらしいけどッ!」 性別が変わっても外見も中身も特に変わらなかったパートナー。 せっかく貴重な一面が見られると思ったのに、それは儚い夢となって消えてしまった。 それは非常に残念で仕方なく、それでもパートナーは普段と特に変わらない。 そのことに、カリアは拗ね気味になってしまう。 ――せっかくの体験だったのに、と。 ――ニオくんはつまらない、と。 「……これなら、お前が呑んだ方が良かったんじゃ――」 「それじゃあ面白くないの! ニオくんを見たいの!」 「ううむ……自分はどうなろうと自分でしかないし……」 小さな子供のように拗ねたカリアに、ニオは戸惑いを隠せない。 薬で性転換しても尚何も変わらなかった――それが不満なのだろう。 だが、性別が変わろうが自分は自分――『ニオ・ハスター』なのだ。 外見が変わろうが、体が変わろうが、その中身は変わらない――それが自分だ……しかし。 「お前もお前でしかない……だが、その、うん……ごめんなさい」 予想以上のカリアの拗ね様に、ニオは思わず謝ってしまった。 それは、まさか自分のパートナーがここまで期待していたとは思っていなかったから。 期待に応えられなかった――そのことを、ニオは謝ったのだ。 謝罪の言葉を聞いたカリアはその場に座り込んで、地面を見つめる。 「うー……わかってるよ。いつもと変わらないニオくんが一番だってことは……ッ!」 そう、ニオはニオだ。例え男になろうが、彼女は自分のパートナーなのだ。 ニオがいつも通りのニオが好きなように、 「おれだって、そーいうニオくんが好きだし?」 自分もまた、いつも通りの――パートナーのニオが好きなのだ。 ……全く、小さい子供みたいにムキになって、一体何してんだろ。 ニオくんは何も悪くないんだから……と。 己の言動を反省するカリア……そこに。 「――ありがとう、私もお前が好きだぞ」 ニオはカリアの正面に座って、カリアの顔を掴んで自分の顔の方に向けた。 直球なその言葉は――いや、ちょっと待って。 今のこの光景は、まるで……まるで―― 「……ニーオークーン!?」 まるで甘酸っぱい告白劇ではないだろうか? 不意を突かれた告白まがいの展開に、カリアは思わず赤面状態になってしまう。 しかしそこに、ニオの言葉が追い打ちをかけた。 「しかし、そうとなればもう一度あの薬を呑んでみようか……」 「ニオくん!? 一体何を考えているのニオくんッ!?」 ■■■ 「イザークさん、何か体の不調はないですか!?」 性別変換薬を呑んだ『イザーク・デューラー』に『鈴理・あおい』が心配そうに声をかける。 薬の効果で男から女に変わってしまったイザーク。 彼の髪は薬によって伸びて長髪になってしまい。 スタイルも女らしく、普段よりも一回りサイズがダウンしてしまった。 自身の急激な体の変化にイザークは動揺する――が。 それ以上にあおいの動揺が激しいために、それどころではない。 むしろ逆にイザークがあおいを心配するほどの動揺ぶりだ。 ――さて、どうしたものかと。 とりあえず、まずは不調はない、とイザークはあおいに告げて安心させようとする……のだが。 「子供じゃないんですから、怪しい物は口にしないでください!」 「いや、そもそも君が俺に薬を呑ませたんだが……」 イザークの記憶が正しければ、薬を手にしたあおいが「面白そうだから」と言って呑ませたはず。 なのに自分が拾い食い、もとい拾い飲みをしたかのような発言は、恐らくだが。 予想以上の展開に驚いたあおい――記憶がどこかに行ってしまったのだろう。 先ほどの出来事を詳しく説明して間違いを正す……のは別にしなくてもいいだろう、と。 そこまで大した問題ではないために、イザークは説明を諦めた。 「それにしても、薬の効果は確かなようだ。女になったことで体型も変わってしまったようだ。――あぁ、制服が……」 サイズダウンしたことで制服がぶかぶかになってしまったので。 男物の制服は、腰回りが細くなったイザークでは着こなせないようだ。 今履いているズボンがずり落ちそうになっているのを、イザークは必死に抑えている。 それを見ていたあおいは、 「全く……私の予備の制服がありますから、それを持っ――」 「あと胸の辺りが……苦しいな」 その言葉で、イザークの胸元を見てしまった。 女になったイザークは自分よりもメリハリがある体だ。 それをゆっくりと、自分の胸元とイザークのそれを確認するあおいは。 何度も何度も確認し、だがようやく。 「……借りてきます」 自分の体とイザークの体では絶対に越えられない壁があることに気付いた。 どうやっても覆せないその現実に、あおいは悲しそうに今のイザークに合うサイズの女物の制服を借りに行った。 「――ふむ、あおいが借りてきた制服はぴったりみたいだ。ありがとう」 「ええ……どういたしまして。でもなんでしょう……私とっても悲しい気持ちでいっぱいです」 借りてきた制服を見事に着こなすイザークに、あおいは更なる悲しみを背負ってしまった。 が、ふとイザークの方を見ると。 「……ふふ」 男から女に変わったイザーク――傍から見れば、彼は間違いなく女性だ。 しかし、イザークは元々男だ。中身までは変わっていない。 故に、彼の仕草が男性じみているのは当然なのだが。 そのおかしな光景に、あおいは背負った悲しみを忘れてしまうほどに、面白そうとくすくと笑う。 「? 何かおかしいかい?」 「女性の姿でも華やかで綺麗なんですけど、仕草が男性じみているので、つい」 「そうか。――それにしても髪が長いのは慣れないな」 薬の効果で長く伸びてしまった髪。 今まで長髪とは無縁だったイザークにとってそれは、鬱陶しいことこの上無いのだろう。 近くにあった紐を用いて、彼は自身の髪をまとめている。 「ああ、もう……髪の毛がからまるから雑に扱わないでください」 「しかし……」 「そういうのは私に任せてください」 女として、命とも言える髪を雑に扱われるのは見るに堪えないものだったようで。 呆れたあおいはイザークを椅子に座らせて、雑にまとめられた髪の毛を解いていく。 「――そうだ。せっかくだから編み込みにしてしまいましょう。どうです、イザークさん? ちょっとやってみませんか?」 「俺が髪を編み込んだところで似合うか?」 「……くやしいけど、似合うと思いますよ」 女として生まれてきたあおいよりも、薬によって女になったイザークの方が似合いそうだと。 その未来を想像すると、あおいは苦笑するしかなかった。 だがまあ、似合うか似合わないか――それはどうでも良いことだ。 どうせこの薬はたったの一時間で切れるもの。ほんの一時の体験だ。 ならばここはせっかくだから、と。 「じゃあ、あおい――お願いしよう」 「はい、お願いされました」 せっかくの提案に、イザークは素直にあおいに頼んだ。 「だが、あおい――ちゃんと出来るのか?」 「出来ますよ。これでも昔はあの人と……!」 何かを言おうとしたあおいだが、しかし……どこか辛そうに口を閉ざした。 あの人――恐らくだが『母親』の事だろうな、と髪を編み込まれているイザークはあおいに気付かれないように、心の中で呟く。 ――イザークはあおいの過去に何があったのかは知らない。 それはあおいが強く拒絶しているのを察しているからだ。 訊かれたくない、思い出したくない記憶を自分が知っていいわけがない、と。 だが、今までのあおいとの会話の中で、あおいの『あの人』が『母親』あることは何となくわかっている。 なので、そのことを思い出したであろうあおいに、イザークは心配して声を掛ける。 「……大丈夫か?」 「大丈夫、何でもないです」 ――そう、何でもない。 これはイザークさんには関係のないこと。私自身の問題だ……でも。 イザークさんが傍にいてくれるお蔭で、本当に何でもなくなりそうな気がする。 『自分が』着飾ることはまだ嫌い……だけど。 過去の思い出に少しずつ、イザークさんとの思い出が積み重なっていく。 こうしてイザークさんの髪に触れている今も、積み重なって。 過去が……薄れていく。 だから――うん。 今回もいい思い出になるように、なりますように、と。 あおいはそう思い、願いながら。 イザークの髪を丁寧に、丁寧に編み込んでいく。 この時間が、思い出が愛おしいかのように。 「――――」 あおいのその雰囲気を察したイザーク――大丈夫そうだな、と。 心配する必要はなかったんだな、と。 そう思い、出来上がりつつある自分の姿を楽しみにし。 「あ、そうだ。せっかくですし、飾りも付けてみましょう!」 元の調子に戻ったあおいは、気合を入れて最後の仕上げを終えた。 出来上がったその姿――鏡で確認したイザークは、 「――かなり力を入れたな、あおい?」 「ええ、せっかくですし」 もはや別人ではないかと思えるほどの変わりように驚いた。 まるで道端の石ころが宝石に昇華したように、イザークの姿はまさにそれだった。 鏡で見ても、それが本当に自分なのかまだ信じられない様子だ。 「似合ってますよ、イザークさん」 「……こんなことをしても、もう少しで元に戻るんだがな」 「ええ。でも女性になったイザークさんは私だけのモノです」 「そういうとただの変態にしか聞こえないな」 「ふふ……そうですね」 互いの顔を見合わせるイザークとあおい。 真っ直ぐに見つめた二人は、だがくすくすと笑い出す。 ああ、これは本当に面白い。 だからこれは――いい思い出になるだろう、と。 そう……思いたい。 ■■■ 「ま、待てルーノ! 話せばわかるッ!」 「話す? 一体何のことかな? そんなことより、ナツキがこの薬を呑めば話は早い。だから、さあ――呑むんだ!」 性別が変わる薬を手にした『ルーノ・クロード』。 彼はパートナーである『ナツキ・ヤクト』にその薬を呑ませようと迫っていた。 しかしナツキがそれを素直に呑むはずもなく、彼は必死に逃げていた、が。 ナツキは、逃げた場所が悪かった。非常に悪かった。 今現在二人がいる場所は、ルーノの部屋だ。 逃げ場をそこに選んだのは、恐らくは無意識だろう。 無意識のままに逃げたは良いが、袋のネズミになってしまった。 唯一の出入り口はルーノが立ち塞がっている。 まさに絶体絶命ッ! なので。 ……仕方ない。 逃げられないと悟ったナツキは逆に、ルーノに近づき。 それに反応することが出来なかったルーノの手にあった薬を強奪して、ヤケクソでその薬を呑んだ。 「…………」 「…………」 しばしの間、二人は無言になる。 薬の効果は本当にあるのかどうか、それはわからない。 固まったままの二人は、だがようやく口を開く。 「――ナツキ、体に変化はあるか?」 「……いや、そんなに変わった様子はねぇな」 ……どうやらあの薬は偽物だったらしい。 薬を呑んだナツキ――だが彼の体には一切の変化がないのだから。 「なぁんだ。焦って損したぜ」 薬が偽物だとわかったナツキは薬が入っていた小瓶をルーノのベッドの上に放り投げて、彼に笑みを向ける。 そもそも、薬ごときで性別が変わることがおかしいのだ。 それを信じ込んで追いかけまわしたルーノ――今こそ復讐の時だッ! と。 さあ、どうやって調理してやろうか……そう微笑むナツキは。 「なあ、ナツキ。自分の体を見た方が良いぞ」 「あ? ルーノォ……そんな嘘はもう効か――」 心のどこかで不安だったのだろう。自分の体を確認するために見て……そして。 「ぎゃーッ!? ホントに体が変わってんじゃねーか!?」 自分の体が『女』に変わっていることに気付き、尾の毛を逆立てて動転し始めた。 「何だあの薬! 時間差で効果が出るとか反則だろッ!」 「ま、まあ薬とは本来そういうものだしな……」 「服がブカブカだし……あちこち柔らかくて落ちつかねぇし……ッ!」 それにまさか、その……足元を見ようとすれば、その途中で見慣れない膨らみが二つあるとは。 信じられないその体は、だが自分のもので。 恥ずかしさと悲しさで赤面になったナツキは耳が伏せて尾が下がった。 が、それは彼一人の問題で。 もう一人の方は彼の心情に気付くはずもなく。 「おい、ルーノ! 面白がってんじゃねぇっ!」 「……面白がるなという方が無理な話だ……くくくっ」 ナツキの思った以上の反応に、ナツキは口元を抑えて必死に笑いを堪えている。 「本当に性転換するとは……面白い薬だな。機会があれば是非もう一つ手に入れておこう」 「くっそぉ、他人事だと思って……!」 まあ、ルーノにとっては完全に他人事であろう。 他人事であるからこそ、面白いのだ。 だがナツキにとっては死活問題――落ちつきなく狼狽えている。 そのナツキをルーノは面白そうに眺め、 「そうだ、知り合いの女性浄化師に化粧でも――」 「ぜってぇ嫌だっ!」 「そうか、それは残念だ」 非常にイイ笑顔でそう言ったルーノは、まさに悪魔のような姿に見えただろう。 心の底から面白い、と。 もっと狼狽えてくれ、と――そう聞こえるほどに。 「……これ、ちゃんと元に戻るんだろうな……」 変化した体に狼狽えて頭を抱えるナツキ。 もし一生このままだとしたら、それは男の自分にさよならを言わなければいけない。 しかしながら、薬の効果は一時間ほどだ。そこは大丈夫……なのだが。 「戻るはずだが……例外がないとは言い切れないな」 からかうことに快感を覚えたルーノはナツキをからかうようにそう言って笑みを浮かべた。 「というか、別に戻らなくても良いんじゃないのか? 私は別に――」 「戻らないと困る! この体で普段通りに戦えるかわかんねぇし……それでルーノの足引っ張る事になったら、困る」 …………、 …………ちょっと待て。 「もし仮に、体が戻らなければ、私の負担ではなく自分の体を心配するべきだろう?」 ナツキの言葉を聞いたルーノは笑みを止めて真剣な表情でナツキを見る。 それは、その一言でからかう気が完全に失せたからだ。 ――体が男から女に変わったナツキ。 ナツキは今、自分のことを一番に考えなければいけない。それ以外のことは考えてはいけない……そうでなければいけないはず、なのに。 ――私は、笑っている場合かッッッ! こんな時まで他人の事を考えるナツキに、ルーノは毒気を抜かれてしまったので。 視線の先で未だに頭を抱えているナツキに、ルーノは無言で近づく。 その間に、自分が着ていた丈の長い外套を脱いで、 「……君は、少しは自分の心配をしたらどうだい?」 ナツキに、その外套を羽織らせた。 自分の体を気にしているナツキに、その体を隠せるように、だ。 「これで恥ずかしくないだろう?」 「……なんだよ急に?」 「いやなに、君をからかって楽しんでいた自分自身が急に恥ずかしくなってね。ちょっとは反省すべきだと……」 「ちょっとどころじゃねぇけどな」 薬を持って追いかけられた時は生きた心地がしなかった。 捉えた獲物を絶対に逃すものかと――そう思わせる視線で追いかけまわしたルーノ。 その時の楽しさはわからなくもないが、しかしどうか、と。 そう訴えたナツキは、ルーノに羽織らせてもらった外套の前を合わせる。 着々と自分の体が隠れつつある……だがふと。 ナツキはルーノが今どのような表情をしているのかが気になった。 ルーノの顔を見るべく、ナツキは顔を見上げて。 「――そういや、今はルーノの方が背が高いのか」 「ん? ……ああ、君は今女性になっているから、その分身長も縮んだんだろう。それがどうかしたのかい?」 「……へへ、なんか新鮮だなって」 「そうだな、確かに新鮮だ。――では」 外套の前を合わせ終えたナツキを、ルーノは傍に引き寄せて。 「こういうのはどうかな、『ナツキお嬢様』?」 腰に手を回し、片手を奪うように握ったそれは、まさしく女性を口説き落そうとする紳士そのものだ。 身長差がある分、それは女性には効果抜群のもの……しかし。 「ル~ノ~ぉ? お前まだからかってんのか?」 「さて、何のことやら」 「とぼけんなぁ! ぜってぇ許さねぇ、覚悟しやがれッ!」 元々男として生まれて、思考も性格も精神も『男』であるナツキに効くはずがない。 全くときめきはしないし、言ってしまえば喧嘩を売っているようなものだ。 怒りを爆発させたナツキに、だがそれを即座に察したルーノは逃げた。 疾風の如き逃げ足で逃げたルーノを、ナツキは全力で追いかけまわす。 絶対に逃がすかッ! と。 しかしそれは、傍から見れば口の中が甘くなるほどの仲の良い『男女』にしか見えない。 それを知ったのは――今から実に三時間後のことだった。 ■■■ 件の薬――『性別変換薬』を呑み終えて、貴重な体験をした喰人。 だがふと、そもそもの問題を訊くのを忘れていたために、パートナーの祓魔人に訊く。 あの薬は一体どこで手に入れたものなのか――と。 あんな馬鹿げた薬、そこら辺で売っているわけがない。 だとしたら、それは買ったのではなく『渡された』か『貰った』のどちらかだ。 そう追求する喰人に、だが祓魔人は素直に答える。 「目が覚めたら部屋の机に置いてあった」――と。 …………、 ……………………。 「説明書もしっかり置いてあったし、別に自分で使うわけじゃないから」 ――なるほど。 つまりは不法侵入したどこの輩かわからないモノが置いた薬を何の疑問もなく使った、と。 そのことに怒りを覚えた喰人は即座に――パートナーの説教に入った。
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*** 活躍者 *** |
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[3] ルーノ・クロード 2019/03/14-22:26
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[2] 鈴理・あおい 2019/03/14-00:48
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