~ プロローグ ~ |
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~ 解説 ~ |
●目的 |
~ ゲームマスターより ~ |
またまたの鞠りんです。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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だ、誰が妬くか! いいから行くぞ、セリオを捕らえて情報を引き出すためにも! まず館の外から見える範囲で出入口の場所や数、スケルトンの位置等を確認 スケルトン排除担当として、スケルトンに接近し攻撃 館突入組の方に行かせないよう注意して、そちらに向かう敵がいれば優先して狙う 全部倒したら、突入組を追って中へ 館の内部では、戦闘の音がすればそちらに しなければ突入組の足跡等がないか探してたどる スケルトンがまだ残っていたら倒してから合流を目指す 合流後は前衛に混ざりセリオの無力化に努める リントが何か企んでるようなので、後ろに隠し注意が行かないようにする リントの企みが成功しアストラガルスを落としたら、蹴り飛ばして遠くへ |
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アストラガルスは魔導研究は勿論、外交にも重要だ。確保せねば。 戦闘前に望遠鏡で館の全周を見て回り、出入り口がいくつあるかを確認。 クロード、シックザール組が交戦したら館に突入。出入り口が複数あれば、セリオの逃げ道を塞ぐためにミューエ組とは別の入り口から突入。 セリオと連携されないために、中のスケルトンは見つけ次第撃破。 ノワールバインドに備え、セリオには少なくとも二人以上で当たる事。 エリシャはBD1で回避を重視してセリオに接近。脇を抜けて後ろを取り、ジャブや足払い、又はスライディングで転ばせ、寝技をかけて無力化。 イグナシオはエリシャの接近と同時に魔力弾攻撃。どちらか一方にしか対応させないようにする。 |
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目的 セリオの捕縛 アストラガルスの回収 視覚の他、魔力感知で敵のおおよその位置を調べ伝え 外のスケルトンは任せ自分達は先行して正面玄関から館へ 扉は鍵ごとFN8で飛ばし乗り込む ベ 少し乱暴すぎないか ヨ 注意を引けばあちらの二人が敵の背後を取れるかもしれません それから 一度こういうのやってみたかったんです(真顔 ヨナ 屋内のスケルトンは引き受ける 私もすぐ向かいます 行って 部屋の狭さに注意しながらFN10をぶつける 倒した後は急ぎセリオの元へ ベ セリオの元へ向かう 肉弾戦には弱いという情報から極力行動されないよう体当たりしJM11など 運命を左右するらしいサイコロが悪さをしなければいいのだが… 大人しくなったら捕縛 |
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◆スケルトン ベルロック組と協力して館外のスケルトンを排除 ナツキが拘束を解除して注意を引き、ルーノも加勢し一体ずつ片付ける 攻撃スキル温存 回復は出し惜しみせず体力半分以下でSH11 特に陽気属性はダメージが大きい、早めに回復 外の4体を倒したら館内へ移動 ナツキがトランス、嗅覚や聴覚で先行する仲間を探し合流する ◆セリオ 捕縛する まずアストラガルス奪還を試みる SH8で支援、SH10で攻撃して隙を作りナツキが接近、 急所は外しJM3を叩き込んでアストラガルスから注意を逸らし、奪還 シャインマリッジで属性を陽に変化、弱点を突く ルーノは逃走経路を塞ぐが拘束を受けた仲間は最優先で解除 回復は体力半分以下、陽気属性は早めに |
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~ リザルトノベル ~ |
●深遠なる作戦会議 今回依頼を受けた浄化師たちが、セリオ・アロが潜む小さな洋館の近くに集合した。 「まずは俺から。あの後、スケルトンもセリオも動きはなく、ずっと館に閉じ籠ったまま。なにをしているのかは、完全に把握できなかった。後は浄化師に任せ、俺は後方支援に回る」 エイスの端的な説明の後、『リンドヴルム・ガラクシア』は、館回りのスケルトンの様子と位置を窺う。 「正面に二体、これは入り口を守る為だね。残りの二体は、館の端と端に配置。お手本のような位置だと思わないかい、ベル君?」 リンドヴルムの言葉に『ベルロック・シックザール』は一度だけ頷いた。 「ということは、外は二手に分かれたほうがいいんだろ」 「私もリンドヴルムさんの判断に同意です。正面と両端、それと」 エレメンツの特性である、魔力を関知出来る能力で、『ヨナ・ミューエ』は、エイスでは分からなかった館の奥の奥まで探る。 「……今は一階の手前の部屋に、スケルトンらしき魔力を感じます。そして、二階からは強大な魔力が一つ」 「手前となれば入り口付近。今のうちに入り口から入り、さっさとスケルトンを片付けるか、裏口……もしくは窓から侵入して、背後から狙うかだろう」 冷静に状況を見定めるのは『ベルトルド・レーヴェ』。長い戦闘経験を生かし、一番最善の戦略を立てる。 「じゃ僕たちは、外のスケルトンの担当だね」 「俺たちに任せろ!」 リンドヴルムとベルロックは、外のスケルトンを選んだよう。 「では私たちも君と一緒に外を選ぶよ。いいねナツキ?」 両端のスケルトンを再確認して『ルーノ・クロード』も外を選んだ。 「別に構わねえけど、セリオを捕まえるのには参加したいぜ」 拳を鳴らして、やる気満々の『ナツキ・ヤクト』に、やれやれというジャスチャーをしながらも、ルーノもナツキと同じくセリオは捕まえたいとは思う。 せっかく手に入れたアストラガスルを易々とは諦めるとは思えなく、この中の誰でもいい、誰かの手に渡れば、セリオは逃走より奪還を選ぶはず。 その為にも、外は全て押さえておきたい。 「……貴方がたが外でしたら、私は中でいいですかね?アストラガスルという魔術道具に、私は非常に興味があります」 『イグナシオ・ヴァルデス』は、アストラガスルという物に惹かれ、この指令を受けた。 いや、受けなければならないと、イグナシオらしからぬだが、直感的にそう思った。それがなぜなのかは分からないが。 「お兄様がそうするのであれば、エリーもお兄様について行きますわ」 『エリシャ・ヘス』が、イグナシオの腕を取り、ニコニコと自己アピールを醸し出しているのを、横目でちらりと見ながらも、イグナシオの中は貴重な研究対象になりえる、アストラガスルのことで頭が一杯で、『戦闘なのに』という周りの目にすら気づかない様子。 それをいいことに、エリシャのアピールが更に白熱するのは、いつものことである。 「んっ。それぞれ分担が決まったな。四人が外のスケルトンと対峙した時に、こちらも館内に突入を開始する」 最後にベルトルドが話を纏め、それぞれパートナーを連れ、目的の場所へと移動を開始した。 ●深渕での戦い 「左右一体ずつ片付けよう」 「それだと遅くならないか?」 右側のスケルトンに向かって距離を保ちつつ歩きながら、ルーノは自分の考えをナツキに語る。 「私とナツキが二手に別れてしまうと、不利になるかも知れないよ」 「なにかがあるかも知れん。それはそうだかなあ」 ナツキの方は、別れて倒してしまうほうが早いと思ってはいるのだが。 ルーノもナツキも、そこまで弱いとは思ってはいない。だがアストラガスルスという使用用途が不明な物があるので、下手にスケルトンに手を出すと危ないのでは?そんな考えも存在する。 「安全策でいこうナツキ。もしかしたら正面組が早く片付いて、加勢が来る可能性だってあるんだよ」 杖をしっかりと握り、いつでも回復魔術を発動させる準備を整えてから、ルーノは更にナツキに言う。 「ということで、ナツキがスケルトンの可動範囲に入ってよ」 「はあー!?」 なぜ、どうして、そうなると言いたいナツキに、ルーノの度重なる追い討ち。 「私は回復優先。それはナツキの加勢はするけど、雑魚相手にいちいち怪我なんてしていられないと思うけどね」 「ち、俺は接近戦型だからな。どのみち敵の懐に入らなければ倒せないぜ」 「そういうこと。頼んだよナツキ」 エイスが示した、スケルトンの拘束解放区域まで後一歩という場所でルーノは立ち止まり、ナツキだけが、その先へと進む。 カタ……カタカタと、スケルトンが動き出す音が、ナツキの耳にも聞こえて来る。 (本当ーに、怪我をしたら後は頼むぞルーノ) その手に大剣であるイレイスを出現させ、ナツキを生物と見なしたスケルトンが襲いかかって来るのを見極め、身構える。 「こんな喧嘩は先手必勝なんだぜ?」 ナツキの大剣が空を切り、スケルトンの骨が砕ける音がする。 「ナツキ!その砕けた中心の心臓のような塊が核だよ!」 「ああ、分かってる!」 振り切った大剣の体勢を立て直すために、ナツキは砕けてもなお、攻撃をするスケルトンを飛び引いてかわし、取った距離を利用して、ルーノが言った塊に向かって大剣を一突き! 「……普通のスケルトンだったな」 パラパラと朽果てるスケルトンを見て、ナツキは物足りなささえ感じてしまう。……あまりにも、あっけなさ過ぎると。 「この勢いで、もう一体に行くぞルーノ!」 「楽勝だったね。それとも、外のスケルトンにはなにもしていなかったのか……。あ、置いて行かないでよ」 次へと走るナツキに、ルーノも慌てて追いかけ出した。 ルーノとナツキが両端のスケルトンに向かった頃、ベルロックとリンドヴルムは突入組を背にして、スケルトン二体の前で各々のイレイスを構え、戦闘体勢に入っていた。 「サクリファイスも済んだし、次は彼らの番だよね。あ、元信者か。でもマリーはカルト集団なんかより、僕との愛に生きるべきだし。……おっと、妬いちゃったかな?」 「だ、誰が妬くか!」 敵を前にして、いつもと変わらないリンドヴルムに力が抜けそうになるが、それはそれ、ベルロックだって戦う前のリラックスのための軽口だと知っている。 「いいから行くぞ。セリオを捕まえて情報を引き出すためにも!」 頷き合い、正面の二体のスケルトンを手分けして倒すつもりのベルロックとリンドヴルム。 まずはリンドヴルムがタロットを広げて、防御シールドを展開。そのままの勢いで、残るタロットをスケルトンに向かって放つ。 「ベル君と違って、僕は一撃とはいかないんだよね」 スケルトンを切り刻んだタロットが、カーブを描いてリンドヴルムの手に戻るのを待ちながら、スケルトンが手に持つ骨で殴りかかるのを、シールドを使って完全防御。 その間に舞い戻ったタロットで、再び攻撃の一撃を繰り出す。 「スケルトンって、弱点が丸見えだから、やりやすいよ」 タロットは骨と骨の隙間をぬい、一枚が塊に突き刺されば、核を失ったスケルトンは崩れるように消えていく。 「ベル君は?」 「……こっちも終ってるぞ。そして先発が館の中に入った」 大剣を肩に担ぎ、悠々とした姿でリンドヴルムの元にやって来るベルロックは格好いい。 突入組が扉をぶり破り侵入したのは、リンドヴルムも横目で見てはいた。 「俺は一撃だったぜ?」 「他の仲間に向かうスケルトンを阻止していたよね」 「惚れなおしたか?」 「さあね。それにしても派手に破壊したね」 正面の扉は木端微塵。セリオが二階に居ると分かっているのに、これはやり過ぎではないのか? 「通るのは楽だけどな」 どうやらナツキたちが、もう一体のスケルトンを追ったようなので、ベルロックは粉々になった扉を通り、館の中に入ってみた。 「……跡形もなし」 後を追って来たリンドヴルムともども周りを見回しても、既にスケルトンの姿も気配すらなく、倒してしまったのか、二階に集まってしまったのか、判別がつきにくい。 「足跡とかないか?」 ベルロックの言葉に床を細かく見るも、スケルトンは常時回っていたのだろう、積もった埃の上の足跡は無数で、これだという足跡と言われたら確信は持てず。 「……どうしたの?」 残りの一体を倒した、ルーノとナツキも合流。理由を話せば、ナツキがトランスで嗅覚や聴覚を使い、二階の様子と仲間を探すらしい。 狼犬にトランスしたナツキは探す。なにがあったのか、今どこに居るのかを。 「スケルトンの嫌な臭いが、この場所が一番強いんだ。臭いからして、この辺りで戦闘しているぜ。そして今は……二階に全員集まっている」 上に沢山の臭いを嗅ぎ分けたナツキだが、なん十倍も鋭くなっている聴覚が、二階に異変があることを聞きつけてしまった。 「……ナツキ」 「不味いな……。微かに話し声が聞こえるんだが、俺たちの誰の声でもない」 「ということはセリオの声」 そう言ってリンドヴルムはゾッとする。 先発組がアストラガスルスの回収に失敗し、窮地に陥っていると。 「早く二階に行こう。今は仲間を助けるのが最優先だろ」 それに頷くリンドヴルム、ルーノ、ナツキ。 四人は急いで二階へとかけ上がった。 ●深淵の闇 「ライトブラスト!」 交戦状態に入った四人を確認し、ヨナとベルトルドは正面入り口へと走るが、ヨナが突然の魔術発動! 「お前、少し乱暴過ぎないか」 扉は跡形もなく吹き飛び、扉の近くに居たスケルトンが見える。 「注意を引けば、あちらの二人が敵の背後を取れるかも知れません。それから、一度こういうのを、やってみたかったんです」 真顔でそう言われ、奔放過ぎるとは思うものの、今は丁度よく扉の前に居るスケルトンを倒すほうが先だと、ベルトルドはスケルトンに向かおうとするが、またもやヨナに止められてしまった。 「中のスケルトンは、私が引き受けます。ベルトルドさんは、先にセリオの元に向かって下さい」 「だがな」 魔道書を開き、戦闘体勢を整えてあるヨナは、ベルトルドに向かって、にっこりと笑う。 「私も直ぐに向かいます。行って」 「……分かった。だが、くれぐれも無茶はするな」 「はい」 ベルトルドはスケルトンに斬りかかると見せかけ、その脇を通り抜け奥へと向かう。 残ったヨナは、再び魔術を発動し、予想以上の部屋の狭さに注意しつつも、スケルトンにファイアーボールをぶつけてみることにしてみたが。 「あ、あれ?」 ヨナの魔術はスケルトンだけに当たり、塊を焼かれたスケルトンは、あっけなく瓦解してゆく。 「こんなに簡単でいいんですか?」 もっと強いと思い込んでいたヨナだけに、まさか一撃で倒れてしまうとは思ってもいないと、なんだか拍子抜けした気分。 「倒したのはいいです。問題は二階ですよね」 ベルトルドに、すぐに向かうと言ったのだ。ヨナが瓦解し灰となっていくスケルトンを潜り抜け、階段をかけ登り二階にある唯一の部屋に侵入。 それと共に、魔術の縄に拘束されているベルトルドを発見してしまう。 「ベルトルドさん!」 「ヨナ!あまり近づくな!!」 ベルトルドの制止に、戸口で止まったヨナだが、ベルトルドを助けなければという思いも大きい。そんな中。 「浄化師が何人来ようとも、アストラガルスを手に入れた俺に敵う者は居ない」 最奥で黒いフードを被り、口角を上げて不気味に笑うのがセリオ。 そう判断した瞬間に、風の刃を発動させながら、体当りでもしてアストラガスルスを奪おうと、ベルトルドの代わりにセリオに向かって、ヨナは無意識の内に部屋の中を走っていた。 「無駄、ムダ、むだぁー!」 確かに風はセリオに命中したのに、セリオは顔色一つ変えずアストラガルスを高々と上げ、ノワールバインドをヨナに向かって繰り出す。 「こんなもの!……えっ?きゃああ!?」 本来人間以外の生物を拘束するために使う魔術ノワールバインド。 人間には効果は薄い、そう思ったのに、ヨナははい回る魔術の蛇から逃げ切ることが出来なく、セリオの思惑通りに、その縄に捕まってしまった。 「だから言っただろう」 「すみませんベルトルドさん」 ベルトルドさえ捕らわれてしまったのだ、ヨナが捕まるのは当たり前。 それを見て笑うセリオに、ヨナは苛立ちと哀れみを伴う心が、一緒に混ざり合うのを感じる。 「……運命とやらを手に入れるために、一体どれだけの物を奪い手放して来たのでしょう。それで、あなたの望む運命は手に入りましたか?」 「貴様などになにが分かる。アストラガルスこそ、現在、過去、未来全てを支配出来る物。運命も力も……そう全て」 果敢にセリオに語るヨナだが、セリオはヨナをちらりと見て笑うだけ。 「過去の運命まで変わるなら、大した代物かもしれんな」 「変えたいですか?」 普段はあまり見せない、ヨナの怒りの表情に首をすくめながら、ベルトルドは話を続ける。 「……いいや、サイコロに身を任せるなど、ぞっとしない」 「それを聞いて安心しました」 一方、イグナシオとエリシャは外のスケルトンを迂回し、館の裏側に来ていた。 「見る限り、裏口という物はありません。入り口は正面一つだけですので、私たちは窓から侵入しましょう」 「はい、お兄様」 様子見に使っていた望遠鏡をしまい、イグナシオは一番大きな窓に近づき中を確認。 続くエリシャが器用に鍵を破壊。そっと窓を開けて入ってみれば、そこは階段近くの場所。 「お兄様、向こうの部屋にスケルトンが一体居ますわ」 「正面は別組が当たりますから、私たちは奥の部屋のスケルトンに回りましょう」 「エリーは、お兄様の意見に従います」 なにを言っても、イグナシオのためと言うエリシャ。 それを不思議と思っても、不服は無いと言えば無い。少しばかりの疑問は残るが。 「こちらに近づいて来ますわ!」 エリシャの声に、はっとスケルトンに振り向いたものの、既にスケルトンはイグナシオに向けて、己の骨を振り下ろす直前で、咄嗟に杖で受けてしまう。 「……うっ」 なんとか抑えたが、腕に走る衝撃は大きい。 「エリーのお兄様に、なんてことをしてくれるのよー!」 大声を上げたと思えば、イグナシオの横を素早く抜けたエリシャの短剣が猛威を振るう。 スケルトンの腰を一閃するエリシャの短剣。それを見逃さず、イグナシオも同じ場所を目掛けて魔弾を撃ち込めば、骨が砕ける音がし、再度振り上げていた骨もバランスを崩し、イグナシオの手を掠めるだけに留まった。 「これで終わりですわ」 細い短剣だからこそ、その刃は骨と骨との間を突き抜け、スケルトンの核の塊を貫く。 力ある短剣に負け、崩れゆくスケルトンを冷静に見つめながら、イグナシオは深い溜め息を吐いた。 「時間がかかってしまいました。残るは二階、セリオにアストラガルスですか。非常に興味をそそられるんです」 「どういうことでしょう?」 怪訝そうなエリシャを見ても、イグナシオには明確な答えが出せない。 それは失った記憶のためなのか、はたまた別の理由のためなのか、はっきりしないためである。 「どう答えればいいのか……。あえて言葉にすれば、既視感を覚えるでしょうか?」 「それはアストラガスルスを知っている、ということかしら、お兄様?」 「それは私には分かりません。さ、行きますよエリー」 話を切り上げ二階にかけ上れば、そこには先に向かったヨナとベルトルドが、ノワールバインドに捕まり動けない状態であり、奥のセリオはアストラガスルスを掲げたまま、声高らかに笑っている始末。 「ノワールバインドでしたら、一気に複数とはいかないと思うので、ここは連携して攻撃しましょう」 「分かりましたわ」 その声を聞いて、イグナシオたちに向いたセリオは、『おや』という顔を見せた。 「また浄化師かと思えば……。ヴァルテス、その子がお前の成果か?見事だな」 「???」 まるでイグナシオを知っているようなセリオの口振り。そしてエリシャを見て、皮肉そうに笑うその姿。 だが、イグナシオには全く心当たりがない。 「君たちの研究所での仕事は、いい刺激にはなった。趣味の共有は、出来そうになかったがね」 研究所?仕事?趣味の共有? 分からない単語の羅列に、困惑するのはイグナシオのほうで。 「よく分かりません。セリオ・アロ、貴方は私を知っている、そんな口振りですが、私はただの浄化師です」 セリオはイグナシオの発言に、驚きと面白そうな顔をする。そして最後にはまた声を上げて笑う。 「くくく……。忘れたのか?忘れたふりか?まあ、そのほうがいい」 「そのほうがいいとは、どういう……」 言葉が終わる前に、セリオのダークボールが発動するのと、後続であるベルロックたちが入って来たのは、ほぼ同時。 そしてイグナシオは、数ある闇の玉の一つを受けてしまい、後方に飛ばされてしまった。……全てを聞き出す前に。 ●深怨の果て 「大丈夫……じゃなそうだね」 ルーノの緊迫した言葉に、ナツキも周りを見るが、ヨナとベルトルドは捕まり、イグナシオは攻撃を受けて気絶、それを心配そうに追うエリシャと、情勢はかなり悪い。 「ふふふ……。アストラガルスがある限り、俺に敵など存在しないのだよ」 「じゃ奪ってやるよ。そのアストラガルスやらをな!」 ナツキの挑発に反応し、ルーノは鬼門封印を展開。 これでどうにかなるとは思わないが、少しでもセリオの動きを鈍らせることが出来るのなら、それにこしたことなどない。 その後ろで大剣を構えるベルロックと、タロットを隠し持つリンドヴルム。 「ベル君、分かってるね?」 「ああ、分かっているさ」 アストラガルスはセリオの手の中。それを落とさせるために、ベルロックはリンドヴルムの盾になり、リンドヴルムは陰から攻撃の機会を窺う。 それに気づいたルーノが、炎の蛇を出現させ、セリオにカモフラージュ攻撃。 更にナツキが連携し、セリオに突進し大剣を一突き! 「こんなものか?こんなものか?浄化師など皆こんなものか?」 ルーノの炎の蛇は無効化、ナツキの一撃はノワールバインドに弾き返され、セリオにダメージすら与えられない。 「嘘……だろう?」 イレイスを使った攻撃でノーダメージとは、流石のナツキでも驚きが隠せない。 「俺も同じことをして捕まったな」 ベルトルドがそう言えば、全員納得顔なのだが、セリオをなんとかしなければ、自分たち以上に、世界中に厄災を招くことは確実。 (そう、エイスの報告にあった。このアストラガルスを手に入れた途端に魔力が上がったと。そしてサイコロは転がすもの、必ず転がす時に隙が出来るはず) 「それで?こんなものとか言いながら、僕たちの誰も倒せていないよね。それも運命で決まるというの?」 リンドヴルムが選んだのは、演技という名の挑発。 上手く引っ掛かってくれれば、セリオはアストラガルスを転がす。そう読んだため。 「……そこまで運命が見たいか?お前たちには勿体ないが、まあいいだろう。見よ、これが運命の力だ!」 挑発に乗せられたセリオは、手の中にあったアストラガルスを転がす。 転がるアストラガルスは魅せる、セリオの全ての運命を。 まず出たのは『裏目』、次に『探求』、そして最後に出たのは『猜疑』。 それぞれをアストラガルスは書き換える。セリオの過去、現在、未来を。 そしてセリオの未来は『猜疑』。何事にも疑いの目を向け、誰も信じず信じられず、妬んだり疑ったりする。それがセリオの未来。 「な、なんだ……と!?」 「はん!それが運命ってことだな」 所詮運命などこんなもの。そう言いたげに呟くベルロックに合わせ、動揺するセリオ……いや、アストラガルスに向けてタロットを飛ばせば、アストラガルスは弾かれ宙に浮き、それを上手く捕らえたナツキが、アストラガルスを蹴り飛ばした! 「!!アストラガルスが!」 ナツキの渾身の蹴りに、アストラガルスは壁に強く叩きつけられ、その中心にヒビが入り、みるみると砕け散ってしまった。 「やべぇ、壊しちまった」 「ナツキ、やり過ぎだよ。でも、セリオの魔力が低くなった?」 そう、アストラガルスが破壊されたことにより、セリオの魔力は本来のものに戻ってしまい、エイスの報告通りに、さほど強いとは感じないレベルにまで落ちてしまっている。 「これだったら!頼むぜー、陽気の指輪!」 セリオの弱点である陽気の力を借りて、ナツキがもう一度大剣の突きを放ち。 「捕まった仲間の礼だ!」 追い撃ちのように、ベルロックの大剣の払いがセリオの胸に入る。 「ぐっ……がぁぁー!」 二人の連携攻撃に負け、膝を折るセリオ。 そこに待っていましたと、エリシャがスライディングで突っ込みをかけ、セリオの上に乗り、腕を捻り取り押さえてしまった。 「不本意ですわ。エリーが乗りたいのは、お兄様だけなのに!」 「エリー。いい加減にしよう。いいね」 ルーノに回復魔法をかけて貰っていたイグナシオだが、エリシャの行動と言葉に、いつものように適当に流せず口を挟んだが、流石に開いた口は塞がらない。 いや、この場に居た全員が、エリシャのこの性格に負けた……とも言う。 ●深淵からの脱出 セリオは、ノワールバインドから解放された、ヨナとベルトルドが『ここは年長者がやるべきだろう』と、教団へと連れて行った。 「まさかナツキのあれだけで壊れるとは思わなかったなあ」 「ベル君だって同じことをしたんじゃない?」 「ああ、同じ状況になっていたらな」 素直に感想を述べるベルロックと、それに追い撃ちをかけるリンドヴルム。 「これが運命を変えるサイコロか。……といっても粉々だけど」 壊れたアストラガルスを触ってみたり、欠片を摘まみ眺めたりしているが。 「遊んで楽しい、ナツキ?」 「遊んでねぇよ!あれだ、調査だ調査っ!」 そんなことを言われても、どう見ても遊んでいるとしか思えないルーノだった。 そんな中、イグナシオだけは、その場から動かず、ずっと考える素振りを繰り返している。 「お兄様?」 「エリー。君は私が誰だったのか知っているのか?」 セリオは言った。『その子がお前の成果か』と。となれば、エリシャは生前のイグナシオを知っている可能性が高い。だが。 「誰だったかは知りませんが、誰なのかは知っていますわ。エリーのお兄様ですの!」 そう言って、イグナシオに飛びつくエリシャ。でもイグナシオはただただ黙ってエリシャの好きにさせていた。 そしてセリオ・アロの処遇は、教団内部でも一部の者しか知らない極秘事項になる。 その経緯は、浄化師では分からない。
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*** 活躍者 *** |
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[8] ヨナ・ミューエ 2019/04/14-14:20 | ||
[7] ルーノ・クロード 2019/04/14-11:45
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[6] イグナシオ・ヴァルデス 2019/04/13-16:12
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[5] ベルロック・シックザール 2019/04/13-13:15 | ||
[4] ルーノ・クロード 2019/04/12-22:01 | ||
[3] イグナシオ・ヴァルデス 2019/04/12-18:50 | ||
[2] ヨナ・ミューエ 2019/04/12-18:05 |