~ プロローグ ~ |
樹氷群ノルウェンデイでの指令の帰り道、トナカイに引かれたソリ馬車に乗りながら、『ジャネット・マイヤー』はゴクスタの街を通過している時、見えた店の中の『ある物』が気になった。 |
~ 解説 ~ |
●目的 |
~ ゲームマスターより ~ |
こんにちは鞠りんです。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
|
||||||||
トロール・ブルーだって 綺麗だなぁ、おれも欲しい 魔術真名モチーフだって! …あれ、でもおれ達だと断頭台になるじゃん うぇー、悪趣味じゃないそれ? 大体おれたちにとっての繋がりなんて…あ、あのプリンなんかどうかな? いつかおれたちがハロウィンに食べた魔法のプリン! ニオくんとおれが両思いのやつ、だめ?……ニオくん、だからそういうところ!! (顔真っ赤にしてる) (出来上がったものを見て) …本当にプリンになってる!(笑って) 半分冗談のつもりだったけど、綺麗だなぁ これ飾ってたら食べちゃいそう…冗談だよ? 初心忘るべからず、ねぇー (…おれの初心なんて「死にたくない」ぐらいなんだけど) (でもニオくんの側は居心地いい) |
||||||||
|
||||||||
「叫びよ、天堕とす憎歌となれ」 …いやさ、言い出しっぺはあたしだけどさ 改めて見ると恨み節全開よねー…だめだ素面の時に見るもんじゃないわ (※決めたのは彼女です) そりゃ決意だから仕方ないけど、恨みしかないわね…やばい… (※決めたのは彼女です) 何してるって、トロールブルー作ってもらうのよ ほかの人達は魔術真名をモチーフにしてたから、あたし達もそうしようと思って 斧と剣と…音符?そうしようと思ったんだけど… (とても上手とは言えない絵を差し出し) 笑うなー!!それならあんたがやりなさいよ! ……うっわ(コメントに困った模様) 完成後 職人ってすごいわね… 憎悪でも、綺麗になるのかしら …よーし!絵と一緒に飾りましょ |
||||||||
~ リザルトノベル ~ |
●売り込み大作戦? ゴクスタの店主に言った手前、ジャネットもユリアーンも、出来上がったトロール・ブルーをみんなに見せて、少しでも作ってくれる仲間を大募集。 今日もまたジャネットの部屋に浄化師たちが、物珍しさと自分たちもトロール・ブルーの置物を作りたく沢山集まっている。 「慌てなくても、職人さんは逃げたりしないわ」 「教団全員が注文しても、手分けして作ってくれるよ」 そこに置かれている、ジャネットとユリアーンの魔術真名をモチーフにしたトロール・ブルーの置物。 それを食い入るように魅入る浄化師が、一人、二人、三人と次々と増えて行くのは言うまでもない。 「いいなぁー。置物おれも……」 「あたしも欲しい」 真剣な目で見ているのはだぁれ? ●初心忘れるべからずのプリン 「トロール・ブルーだって。綺麗だなぁ、おれも欲しい」 ジャネットの部屋で、トロール・ブルーの置物を見て来た『カリア・クラルテ』は、自分たちもトロール・ブルーの置物が欲しいと大騒ぎの真っ最中。 「聞いて来たんだけど、魔術真名がモチーフだって!」 「魔術真名に関するものか」 目を輝かせるカリアとは対称的に、椅子に座り早速情報を仕入れて来たなと思いながらも、カリアを冷静に見つめる『ニオ・ハスター』。 ――魔術真名、二人を繋ぐ言葉。 そこまで考えて、『おや?』と、カリアもニオも、この言葉の意味に行き着いてしまった。 「……あれ、でもおれたちだと、断頭台になるじゃん」 ――魔術真名『ルイゼットに赦しを乞え』 ルイゼットとは、断頭台の別名。……と二人が思った途端、どちらともなく渋い顔になってしまう。 「……断頭台のトロール・ブルー」 「うえー。悪趣味じゃないそれ?」 「う、ううん。流石に自分もどうかと思う」 揃って思想や価値観が歪み傾向のカリアとニオでも、断頭台を置物にして飾る趣味までは無いらしい。 ――うん、そこは普通の倫理観だ。 「でも、トロール・ブルーは欲しいんだよね」 「だから断頭台」 「二人を繋ぐ物だったらいいじゃん。だけど大体おれたちの繋がりなんて……」 言って見たはいいが、ニオと繋がる物など、魔術真名以外そう多くはないと悟ってしまうカリアである。 (えーと、繋ぐ……繋ぐ……ニオくんと繋がりがある……あ!) あった。ニオと繋がりがあること、いや物が! 閃いたカリアは、いつものニヤニヤ顔でニオをじっと正面から見つめる。 「あのプリンなんてどうかな?」 (そう、プリンだよ!) 「プリン?お前なにを言っているんだ?」 (プリンでなにかあっただろうか?……あ!) 少し考えたニオも、カリアが言うプリンの意味に漸く行き当たったよう。 「あのいつかの不思議なプリンか?」 魔女が作った、相手を見て食べると甘くなるプリン。 好きなら、好きなほど甘くなる不思議なプリン。 あの時確かに、カリアもニオも互いを見ながら食べたプリンは甘かった。 それが二人を繋ぐ証、好きな証拠。 ――どの好きまでは、カリアもニオも分からないが。 「あれは確かに美味しかったし、お前の側が居心地がいいのが改めて分かった」 座りながらも真面目に話すニオに、ニオの好きという言葉に、カリアのほうがドキッとするが、それはニオには言わない。 ――言ってあげない。 だから、カリアからの少しだけの意趣返し。 「ニオくんとおれが両思いのやつ、だめ?」 そんなことないよと、首を横に振るニオ。そしてまたカリアに爆弾が落ちる。 「そうだな、両思いだ。カリア好きだぞ」 ニオすれば、カリアに対する好意から来る言葉。 でもカリアに取れば、サラッと好きと言うニオに、今度こそ本気でドキドキし顔が真っ赤になってゆく。 「ニオくん、だからそういうところ!」 (なんでこんなところは純粋たなんだよ) ――自分とは違い、真面目なニオくんだから。 言うことはメチャクチャ、でもやっていることは真面目で正当、それがニオ。 そして、好きの意味が愛情ではなく、カリアに対する純粋な好意なことにも気づいている。 それでも……こうして二人で居るのは、カリアに取っても凄く居心地がよく、後のことは気づかないように……したい。いや、していたい。 「じゃあ、プリンの絵を描こう!」 「絵……描くのか?」 「作って欲しい物を絵にして送るんだって。絵はおれよりニオくんのほうが上手そうだよね」 ――と言ってもプリンなんだけど。 すぐにと、ゴソゴソと部屋を探して見つけた紙と鉛筆をニオに渡し、カリアは期待にまた笑みを絶さないあのニヤニヤ笑顔でニオを見つめ出す。 そんなカリアを見て、ニオも鉛筆を取り、手を動かし始めた。 「うわープリンだよ」 「プリンを描くんだろう?」 プルン、プルンと揺れそうなほど上手い、ニオが描いたプリンの絵に、ついつい美味しそうなんて思ってしまう。 思った以上にニオの絵心は目覚ましいと、改めて気づき、カリアはなんだか新鮮な気分なのだろうか? 「凄いねニオくん」 「ただのプリンだ、誰でも描ける」 淡々と語るニオと、ニヤニヤと大はしゃぎのカリア。これが普通……普通になった。 「いやいや、この食べたくなりそうな質感とか、カラメルの溶け具合とか、本物のプリンみたいだよ。本物だったら、おれ食べてる」 「そうか。じゃこれを送ればいい」 差し出された絵に、カリアの瞳はより一層輝く。 「そうするよ!……早く出来上ないかな?」 「慌てなくても来る」 ニオが描いた絵を、ゴクスタの工房に送り、カリアとニオは出来上がりが来るのを楽しみに待つことにした。 後日。 「……本当にプリンになってる」 送って来たトロール・ブルーのプリンを見て、カリアは大笑い。 「……いや、本当にプリンになったな」 ニオは、職人の技術の高さに感心。 出来上がったプリンの置物は、上のカラメル部分は青みが濃くてカラメルが滴り落ちる感じまで表現されおり、カスタードの部分は艶やかにそしてふんわりとした青のグラデーションで彩られ、更に丁寧にも白に近い極薄の青で象られた皿のような物に乗っている。 どこから見てもプリン。 誰が見てもプリン。 客観的に見てもプリン。 思っていた以上の仕上がりに、カリアもニオも、トロール・ブルーのプリンから目を離せられない。 「半分冗談のつもりだったけど……綺麗だなぁ」 アイスブルー色の置物なのに、本物のプリンに見えてくるのだから魔訶不思議感覚。 「まぁいいじゃないか。あのハロウィンのプリンに似てるだろう」 確かに似ている、あのハロウィンで食べた魔女のプリンに。 色はカボチャ色とアイスブルーと違うのに、食べた時の甘い味まで思い出せる。 「これ飾っていたら食べちゃいそう」 「……食べるのかカリア?」 ニオのカリアを見る目が、かなり痛く感じるのは幻覚ではなさそう。 「……冗談だよ」 「……冗談だよな」 本当のところは?それはカリアの心の中にだけ存在するもの。 「初心忘れるべからず、だよな」 ニオの言葉で、カリアは少しだけ……本当に少しだけ渋い顔になってしまう。 (おれの初心なんて『死にたくない』くらいなんだけど) 浄化師になるならば罪を放免すると言い渡され、カリアは即座にその条件に飛びついた。 そしてあれは、カリアとニオが浄化師になって間もない出来事。初めてのハロウィンのプリンの思い出。 そして今、あの魔法のプリンをもう一度食べたら、もっと甘く感じるのだろうか? (でも……。あの頃よりもっと、ニオくんの側は居心地がいい) ハロウィンの時の、甘い甘い魔法のプリン。ニオを見て食べたら、甘くなったプリン。 あれがモチーフなんだから、もしかしたらこれを食べると甘いかも……なんて、真剣に考えるカリアだった。 ●絵心+絵心=上手いでは絶対ではありません? トロール・ブルーの話を見て聞いて来た『ラニ・シェルロワ』は、もう気分がウキウキ! 部屋に戻るなり、早速とくつろいでいたパートナーに詰め寄った。 「叫びよ、天堕とす憎歌となれー!」 「いきなりなんだ?急に魔術真名なんて言い出すとは」 まだ話を聞いていなかった『ラス・シェルレイ』は、ラニの突然の行動に、やや呆れ気味で対応中。いきなりなのだから、この反応は致し方ない。 「叫びよ――」 「おい、まだ言うか?」 それもそうだ、魔術真名は普段は口にすら出さないもの。 なのに、こう高らかに言われては、ラスだとて呆れたくもなる。 「……いやさ、言い出しっぺは、あたしだけどさ」 「まぁな」 「改めて言うと、恨み節全開だよね。……だめだ、素面の時に言うもんじゃないわ」 ――決めたのはラニだろう。 「……それを考えた当の本人が、なにを言ってんだ?」 ――決めたのはラニだろう? 急に言い出したラニに、思わずラスは頭を抱え、『チョイ、チョイ』と片手を出し手招き。 ラニを招くためなのか、なにか言いたいのに言葉が出ないような目で見ている。 ラスのよく分からない仕草に『??』な顔のラニ。 「そりゃ決意だから仕方ないけど、恨みしかないわね。……やばい」 ――だから決めたのはラニだろう! 言葉が出ないというか、今更話にラスは本気で頭を抱えてしまう。 「……お互い納得して決めただろ、文句を言うな」 (なんなんだ、この噛み合わない会話は?) ラスの手招きに、ラニは近くまでは来たけれど。 両手を広げ、天を仰ぎ『叫びよ、天堕とす憎歌となれ!』と、リアクションつきで魔術真名を言われれば、ラスでさえどうラニを扱っていいのか対応に困る。 (なんなんだよこれ?) 「……なにしてるんだ?」 思わず真顔で言ってしまったラス。それに対して、ラニはウキウキモードマックス状態。 「なにしてるって、トロール・ブルーを作ってもらうのよ」 「……トロール・ブルー?って、突然どうした?」 (なぜ今、トロール・ブルーが出て来るんだ?) 事情を全く知らないラスは、最早ラニの話についていけないと、完全に白旗をあげてしまっているのだが。 「ほかの人たちは、魔術真名をモチーフにしていたから、あたしたちもそうしようと思って」 (トロール・ブルーはノルウェンデイの名産品……だったはず) そこで、やっとラスもトロール・ブルーがなにかを、ふと思い出した。 「ああ、確か彫刻だっけか?……なるほど」 漸くラニの謎行動に納得はいったラスだけど、この魔術真名で作れるのかとも思うのは、致し方ないとは思う。 そんなことを思っているうちに、ラニの話は次へと進む。 「で、斧と剣と……音符?そうしようと思ったんだけど」 二人のイレイスのイメージから斧と剣。 憎歌は音符の組み合わせ。 それでラスのところに来る前に、ラニは自分のイメージ通りに絵を描いてみた。 おずおずと隠していた絵をラニに差し出したが、ラニはそれを見て、更に頭を抱えることになる。 「……おい待て、まさかそれを出す気か!?」 (斧と剣……。理屈は合っているんだが、この下手すぎる絵はなんだ!?) 斧らしき長い棒のような物と、剣らしき斧より短い棒。その回りに丸い物がある……だけの絵としか言いようがない。お世辞でもそれしか言えない。 これをあの魔術真名と解釈出来る奴が居れば見てみたいと、ラスは思ってしまう。 そう考えると、笑いが出るのを抑えられないラスは、我慢しきれずに吹き出してしまっていた。 「笑うなー!」 (そりゃ下手は分かってるけど、笑うことはないでしょ) 「いや悪い」 (そこで謝られてもなー。あたしだって困るでしょう?) 絵が下手な自覚はあるけれど、それに笑われたり謝られたりしても、ラニのほうが困ってしまうわけで、次に出た言葉は……ラスに対しての照れ隠しなのだろうか? 「そ……それならあんたがやりなさいよ!」 絵をラスに押し付けて、ちょっと横を向いてしまうラニは、普通の女の子……に見える。 そして受け取ってしまったラスも、絵は上手くはない自覚はある。 とはいえ、この絵をそのまま送るのだけは断固反対! ……ので、最後にはラスも手を出すことになった。 「……それなら、ここをこうして」 ラニの絵にラスなりに書き加えたが、結果は……更に酷くなるという、一番不味いことになってしまった言い訳は? 「……うっわ」 (これ、なにかいわないとダメなやつ?あたしよりも下手じゃんって言ったら不味い?) なにを言っていいのか分からないラニが、目を泳がせるのを見逃すラスでもなく。 「目を逸らすな、こっちを見ろ。なんだその顔は?」 「いやー、すごーい絵だなって」 無造作に描き加えられた、なにを意味してるのかすら分からないギザギザ模様。 これはもう魔術真名の意味を通り越している……とは言えず、なのに。 「お前よりはマシだと思う」 この絵で言うラスに、ラニも思わず反論。 「いーや!絶対あたしのほうがマシ!」 「なんだとぉー!オレのほうがマシだ!」 「あたしのほうだよ!」 待っていましたとイレイス……とはいかないので、訓練用の斧と剣を取り出し、恒例のバトルに突入!? 「絶対にあたしのほうがマシ!」 ガキンと武器が合わさる音が辺りに木霊する。 「オレのだ!」 またガキンと斧と剣がぶつかる音。 周りは『いつものこと』と、全く構いもしない、ラニとラスの友情表現方法。 結局はこの絵を前にして、お互い引くことはなく、騒ぎは暫く続いたとか。 それ以前に、絵を直すことを考えないのだろうか?という疑問だけが辺りに残った。 後日。 出来上がったトロール・ブルーの置物をテーブルに置いて、ラニもラスも暫く呆然。 「……職人ってすごいね」 「アレから、こんな綺麗なのが生まれるのか」 二人が驚くのも無理はない。 斧と剣がクロスし、その回りを細い螺旋状に繋がった音符が絡み合い、最後にラスが描き入れたであろう稲妻のモチーフが台座に添えられているという、あの絵からは想像も出来ないような、見事なアイスブルー色の置物。 「憎悪でも綺麗になれるのかしら」 「そうだな。憎悪もいつかは」 そこには憎悪などなにもなく、二人のイレイスが誇らしげに音を奏でている。……そう見える。 「……よーし!絵と一緒に飾りましょ」 (は?ちょっと待て!?) なにげないラニの一言に、ラスのほうが本気の焦りを見せ出た言葉は。 「いや、絵は燃やそう」 たったこれだけ。 記念だから、せっかく描いたんだからと、ことあるごとに絵を飾ろうとするラニに、最後にはラニの居ない隙を狙い、ラス、絵を燃やしてしまった。 残ったのは、青い憎悪とは真逆の、愛情とも友情とも取れる、トロール・ブルーの置物ただ1つだけだった。 勿論、後にラニが怒り、ラスに向けて武器を持ち出したのは……お約束である。 ●トロール・ブルー 「いっぱい注文してくれてよかったわ」 「ゴクスタの店主も喜んでいるよジャネット」 「そうね。今度は私たちが、みんなのトロール・ブルーを見に行きましょう?」 沢山出来上がり、沢山送られて来たトロール・ブルー。 形は人それぞれ、思いも人それぞれ。 ある数だけ全て違う形のトロール・ブルーたち。 アイスブルー色の儚い置物。でもパートナーとの思いが詰まった置物。 そんな置物たちを見て回り、色々な形のトロール・ブルーを見て、意表を突かれたり感心しながら、最後にはみんなで笑いあっていた。
|
||||||||
*** 活躍者 *** |
|