~ プロローグ ~ |
「皆さんにはテスターとして参加して欲しく……」 |
~ 解説 ~ |
テスターとして和菓子作りに挑戦、その後、月見台にてお月見をしながら自作した和菓子とお抹茶を味わうシナリオです。 |
~ ゲームマスターより ~ |
季節ものエピソードとしてお月見のお話を書こうかな、と考えまして、どうせならお菓子も堪能して貰おうと考えました。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
|
||||||||
練り切り:うさぎ 月見団子:みたらし団子 【行動】 体験) 「練り切りとはとても繊細な技術を必要とする芸術作品だと聞きました。私達でも作れるでしょうか?」 「うさぎが見れるといいですね。」 「練り切りはうさぎ形に挑戦してみましょう。」 練り切りはどんな形がいいか成と悩みながらうさぎ形に。 月見) 「なんだか食べてしまうのが勿体ないですね。」 自分達で作った練り切りを眺めてそんな感想をこぼして。 「甘味には抹茶の苦味がよく合います。」 練り切りは後回しにみたらし団子を頂きながら抹茶を飲む。 「成にはやはり苦手な味でしょうか。」 「みたらし団子は成の好きな味だと思いますよ。」 抹茶の苦味に顔をしかめる成にみたらし団子を勧める。 |
||||||||
|
||||||||
ヴィオラがやってみたいならやればいい 私はここで見てる 別に甘い物は嫌いではないが……そうだな、たまには一緒にやってみるか ヴィオラが楽しそうに作ってるのを見てついつい手が止まる そこを見咎められたようだ いや、作り方が分からないと言うより、何を作ったらいいのかと思ってな 見つめていたとは言えず適当な言い訳 彼女から出た指令に分かったと頷き、ほんのり黄色に染めた生地で丸い月を作る 出来上がった物は 月と兎とその周りに紅葉 なるほど、この国の伝説の風景か そう言う情緒は私には無いものだ 素直に感心 団子は「ずんだ」と書いてある物を頼んで これは、豆か…こう言う食べ方もあるのだな それにしてもヴィオラ、何がそんなに嬉しいんだ? |
||||||||
|
||||||||
目的 お菓子を作る。 お月見をする。 和菓子作り ジークリート(お菓子作りLv1) 「紅葉」 オレンジと黄色のマーブル模様の練りきりを紅葉の形に。 フェリックス(スキル無し) 「簡単月うさぎ」 黄色の練りきりを丸く作って、うさぎの焼き印を押す。 二人ともお店の人に教えてもらって作成。 お月見 みたらし団子を頂いて、のんびり月を眺める。 (お茶を飲んで) ジークリート …。(控え目だが苦いという顔) (隣を見て)フェリックス、苦くないの…? フェリックス (無表情にお茶を飲んで)…苦い、と思います。 (ウイッシュに続きます) |
||||||||
|
||||||||
ウィル! 和菓子を作れるみたいなんですの! 一緒に作りません? ふふ、どんな形がいいかしら? ………そう、ですわね 桜がいいですわ え?季節が合わない、ですか? で、でも…私、桜がいいんですの だ、だって…お花見、一緒にしたから 思い出の物にしたいじゃないですか ふふ、ありがとうございます、ウィル そう!月を見ながら、苦いお茶を飲みながら 一緒に食べるんですわ! えぇ!上手に出来ましたの! …貴方の為に頑張りましたの さぁ、一緒に食べましょう♪ ふふ、甘くて美味しいですわ♪ …その、ウィル 貴方は…お話はしてくれてるのに 一杯、話してくれるのに… 全然、自分の事は話して下さらないのね 私、それがちょっとだけ悲しいですわ 月?えぇ、綺麗ね |
||||||||
~ リザルトノベル ~ |
「象るだけ……と思っていたけれど、案外難しいですね」 教えてくれているお店の人にそう言う『ジークリート・ノーリッシュ』は、絶賛、練りきりを形成しているところなのだが、どうやら思ったようにはいっていないらしい。 意外と柔らかい練りきりの餡を、木べらや素手で思う形に整える、と言う体験はもちろんのこと初めてであり。 「…………」 それはパートナーである『フェリックス・ロウ』もまた、同じであった。 どうやら、ジークリートは紅葉を。 フェリックスは月とウサギを作り出そうとしているようだ。 が、どちらも想像は出来ても、頭の中では作れても。 目の前の餡をその形に変える、という行動に移すとなると、途端に想像から脱線していく。 そうして、ここはこう。こっちはもうちょっと……。 と手直しにならない手直しをしていくにつれ、段々と元の形からは離れていき……。 どうせパートナーと食べるものならば、と気合いを入れたことが空回りしているかのように。 そんな思いを見透かされ、あざ笑われているかのように。 また一から作り直す事へとなってしまう。 「こっちの木型を使いますか?」 助け船――かは分からないが、看板娘の手には、紅葉の形を模した木型と、小さなウサギをくり抜けるスタンプのような物が。 視線を交差させて何かを確認したジークリートとフェリックスは――。 看板娘の持つ道具を使用することを……静かに決心した。 * 練りきりの形はウサギに、という『大宮・成』の意見を取り入れ、懸命にウサギを作っていくのは、言い出しっぺの成と『神楽坂・仁乃』の二人。 とはいえこちらもご多分に漏れず、初めての練りきり形成と言う事で苦戦している様子。 どうにも完成形を先に見せられてしまうと、自分もあれくらいまで……と思ってもしまうようで。 特に見た目同様に少年の心を持っている成等は、お手本として飾られている看板娘の作った練りきりを細かく観察しては、少しずつ微調整を繰り返す。 遊びに例えるならば、粘土遊びだろうか? 何とも無邪気に。 目を輝かせながら。 新しい遊びでも覚えた子供のように。 そんな成を見ていた仁乃は、釣られて詳細部分を気にしてしまう辺り、あまり成の事を子供っぽいとは言えない、と表情を和らげさせた。 自分でも気付かない、周りの誰も気が付いていない、些細な変化。 想い人が真剣に――例えそれが仕事だろうが、遊びだろうが。 物事に取り組んでいる様は、一様に自分の心を掴んで離さない。 例えそれが、どんなに見慣れた表情であっても。 どんなに親しんだ相手であっても。 身近にいるからこそ気にしていない。 日常の中に溶け込んだ、そんな表情を――。 時に場の雰囲気とは――イベントとは。 印象的に、あるいは再確認させてくれるようなものだろう。 クールを装う仮面など、容易く剥がしてしまえるような。 そんな力が、あるのだった。 * 一見すると不機嫌。 そう言われても仕方が無い表情で、練りきりの餡を少しだけ触っては、何かを見ては手を止める。 何度目か分からないその行動をしている『ニコラ・トロワ』の見つめる先には、パートナーである『ヴィオラ・ペール』がいた。 赤く色を付けた餡を練って切って、繋げて伸ばす。 赤とは言っても、紅ではなく、芯に黄色が見て取れる赤。 季節的に、丁度見ることが出来る、紅葉を彷彿とさせるそんな色の餡。 色の通りに、楽しいのだろうか? 微笑みながら紅葉を形取っていくヴィオラは、ニコラの視線に気が付いたのか、ふと、動かしていた手を止める。 「ニコラさん、手が止まってますけど何か分からないところでも?」 「いや、作り方が分からないと言うより、何を作ったらいいのかと思ってな」 いや、という否定の言葉。 それは果たして、どこに向けた否定なのだろうか……。 言葉だけを取るならば、分からない、という部分を否定したのだろう。 が、実際のニコラの内心がそうかと言えば、その答えは一部分のみイエスだ。 ならば、ニコラの否定の部分はどこかと問われれば、本人は決して口に出さぬだろうが、『何か分からない』という所である。 つまりは――。 手が止まっている理由は自分の作る練りきりとは関係が無い、という事であり。 つまるところ、ヴィオラに見とれていた、という事に他ならなかった。 しかし、 「何を作ったら……ですか?」 どうやらヴィオラは、その事に気が付いていないようで。 ニコラの言葉を素直に受け取り、キョトンとした後。 「ふふ、相変わらず頭が固いというか……あ、貶してるわけでは無いですよ?」 先ほどまでの柔和な笑みに戻り、慌てて与えてもいない誤解を解こうとする。 「そうですねぇ……。ではニコラさんはまんまるの満月を作って下さい」 頭を悩ませるニコラへ、ヴィオラは指示を出した。 共に楽しむ和菓子の形という、指示を。 * 「ウィル! 和菓子を作れるみたいなんですの! 一緒に作りません?」 看板娘の言葉に元気よく食いついた『アリス・スプラウト』に手を引かれ、 「アリスが望むなら」 と返した『ウィリアム・ジャバウォック』。 そんな返答をせずとも引っ張っていかれそうな勢いがあったほどに、アリスの瞳は輝いていて。 そんなアリスは今、練りきり餡を前に、どんな形にしようか……と思案している真っ只中。 「どうやら季節にあった物を出すのが普通みたいですよ」 と、悩めるアリスへ。ウィリアムは助言を行うのだが……。 「……そう、ですわね。桜がいいですわ」 「桜……ですか? 少し季節にそぐわない気もしますが……本当にそれでいいんですか?」 「え?季節が合わない、ですか? で、でも…私、桜がいいんですの!」 主張は強く、決意は固く。 そう決めた彼女の真意は――、 「だ、だって…お花見、一緒にしたから、思い出の物にしたいじゃないですか!」 との事らしく、 「……ま、まぁ、アリスがいいなら、私に異存はありません」 それを受けたウィリアムは、若干の困惑を覚えながらもアリスに従う旨を示した。 と、そこへ。 「お節介かも知れませんけれど……秋にも花を咲かせる『シキザクラ』や『ジュウガツザクラ』もございますので、今の季節でも桜は一般的ですよ」 会話を聞いていたらしい看板娘が入ってきた。 その言葉を聞いたアリスは顔を輝かせ、 「ほら! 何の問題も無いみたいですわ!」 と、満面の笑みを、ウィリアムへと向けるのだった。 * 「うわぁ~~! 凄い綺麗な景色ですよ!!」 月見台へ案内されたニコラとヴィオラは、そこからの景色に心を躍らせた。 ――主にヴィオラが。 月見台に用意された腰掛けには、雨を避けるためかは分からないが番傘が固定されていた。 そこには既に、予め頼んでおいた『ずんだ餅』が置いてあり、腰掛けに引かれた緋毛氈(ひもうせん)の赤と、皿の中にある緑の餡とが遠目からでも調和していた。 その隣には、二人で作り上げた練りきりが静かに佇んでいて。 空に浮かぶ月を持ってきたような、まん丸のお月様を目掛けて跳ぶウサギ。 そして、その周りを舞う、美しい紅葉。 当然ながら初めての練りきり体験。 作った形は多少は歪である――が、むしろそこに味が出ている、とさえ思える。 お互いが、二人が、拙い手つきながらも作ったその練りきりには、いくつもの思いが込められていて。 相手を思う心や作っている最中の楽しいと思う感情。 二人で一緒に何かをやる、という満足感。 体験したからこそ、やってみたからこそ覚えたそんな感情を乗せて、ヴィオラは――。 「……」 微笑みながら、無言でニコラの口元へとずんだ餅を挿した菓子楊枝を持っていく。 もちろん毒味などとは違うその行為。 しかしニコラは勧められるならば、と特に何も気にせずにずんだ餅をパクリ。 「これは……豆か。こういう食べ方もあるんだな……」 正直見た目で何の素材かを特定できていなかったニコラは、ひとしきり口の中で味わった後に感想を漏らす。 ……そうきたか、と。 「美味しいですか?」 「特徴的な風味だが、美味いぞ」 そう言って、何気なく隣に置いてあったお抹茶へと手を伸ばし……。 「む。……」 「どうしたのですか?」 「いや。香りがいいな。苦みもあるが、それが菓子の甘さと調和を生み出している」 驚いた、とでも言いたげに。 「私も、いただいちゃいます」 そう宣言したヴィオラは、月を模した練りきりへと菓子楊枝を当て――。 「あ、美味しい。……そしてこっちは苦いです」 練りきりを味わい、ニコラのようにお抹茶を口に含んで感想をポツリ。 月のみが照らす、二人だけの時間。 伸びる影が絶えず離れずくっついているのを知るのもまた、月だけなのだった。 * 用意された腰掛けには、これまた用意されたお抹茶とみたらし団子と練りきりと。 白いウサギを象った練りきりは、まるで頭上にある月を眺めているようで。 その視線を追うように、月を眺めた仁乃は小さく、小さく吐息を漏らした。 眩しくなく、どこか優しく二人を照らす月に、まるで感謝でもするように。 「何だか、食べてしまうのが勿体ないですね……」 自分らの作った練りきりを月明かりと共に見下ろした。 「そうだね……。けど、食べるために作ったんだし……」 かなり惜しく思いながらも、成は、ウサギの練りきりへと菓子楊枝を入れ――。 意を決して一口含んで咀嚼して。 自然に緩む頬のまま、お抹茶も一口飲んでみて。 緩んだ頬が、次第に引き締まる。 「抹茶って苦いんだね。紅茶みたいに砂糖とかミルク入れたらだめなのかな」 引き締まった表情はしかめっ面へ。 それほどまでに、お抹茶は苦く感じたらしい。 そんな成の表情を見てしまっては、仁乃が最初に手を伸ばす候補から、お抹茶が外れるのは必然。 そして、練りきりへの思いも前述の通りとなれば……。 「いただきます」 必然的に手はみたらし団子の方へと伸びるわけで。 「美味しいです」 甘辛いタレの絡んだ団子は、舌鼓を打つほどで。 「そして、甘味には抹茶の苦味がよく合いますね」 お抹茶との組み合わせを気に入ったのか、成とは違って満足げな表情を見せた。 そして、 「みたらし団子は成の好きな味だと思いますよ」 と、未だに渋い顔を続ける成へとみたらし団子を勧めて……。 成は、勧められるままに、団子を口に。 口に含めば、途端に顔が戻って――どころか戻りすぎてまた緩み。 何とも見ていて飽きないものだ、と仁乃の頬も釣られて緩む。 「この間食べたおはぎも今日の練り切りとみたらし団子もニホンの甘味って美味しいね」 どうやら口直しになったようで、そこから仕切り直し、と二人は作った時の事や、今までの事を話しながら、お抹茶と和菓子を楽しんだ。 最後の最後まで残された、仁乃の分のウサギの練りきりが、その光景を瞳に焼き付けたことだろう。 そんなウサギの練りきりは、最後に仲良く――二人でいただいたのだった。 * 紅葉映える月見台。 そこに咲くのは年に二度開花するシキザクラ――を模した練りきりで。 それを挟むように腰掛けに座るのは当然、その練りきりを作ったアリスとウィリアムだった。 「上手に出来ているでしょう? 貴方の為に頑張りましたの!」 「そうですね。上手に出来ています」 「さぁ、一緒に食べましょう♪」 その機嫌の良さは、練りきりが美味く作れた証明か。 それとも、パートナーと、こうして一緒にお月見が出来る事への満足感からか。 そんなアリスに従って、共に甘味を楽しむウィリアムは、どこか意識は遠くを向いていて。 「月見団子を頼んでみましたが、中に黄身餡が入っていますよ。アリスも食べましたか?」 まるでその事を悟らせないように、いつもより口数が少しだけ多いようにアリスは感じた。 「今からですわ! 私は先に桜の練りきりを味わわせていただきましたわ! 桜の風味が何とも素敵でしたの!」 けれども、その事を口にしてしまえば何かが壊れそうな気がしてしまい、声にするのは憚られた。 「じゃあ私も練りきりをいただきます。そうそう、甘味の後に飲むお茶は趣のある味わいですよ」 それも理解した上で、それでも隠し通すと決めたウィリアムの思い。 悟られては、伝えては、口にしては。 そのどれもをダメと自分で決めた、そんな思い。 九つも下――年齢など……言い訳だ。 立場を利用している分際で――自分から変わろうとしていないだけで。 自分の命と比べるならば、呆気なく殺せる――筈なのに。 これだけの理由を付けなければ、隠すことも出来ない思いを、苦い苦いお抹茶と共に飲み下す。 どれだけ言葉を並べても。 どれだけ会話を続けても。 普段から、お話をしているはずなのに。 一向に話そうとはしてくれない、パートナーの……パートナー自身の話。 それを分かって――理解出来てしまうせいで。 (私は……ちょっとだけ寂しいですわ) 楽しいはずのお月見で、空の月と同じく少しだけ陰りを見せたアリスの表情。 そこへ、 「月が、綺麗ですね」 掛けられたのは、その一言。 思わず月を仰いでみれば――。 言われたとおり、綺麗なまんまるのお月様が、二人を照らしてくれていた。 「えぇ、綺麗ね」 アリスは知らない。 その言葉の意味を。 だからこそ、ウィリアムがこの言葉を使ったという事実を。 伝えたくない、伝わって欲しくない言葉を伝える言葉。 何とも遠回りで、何とももどかしく。 それ故に優しい……わがままな言葉。 その言葉が届いたか……今宵の月は――とてもとても美しかった。 * みたらし団子を挟んで座り、共に見据えるのは正面の月。 たまに団子へと伸びる手は、重なる事も、触れ合うこともしないが、それは相手の邪魔をしたくない、という思いやりの結果であり――。 それだけ、お互いがお互いを確認しているということだった。 「フェリックス……苦くないの?」 月明かりに照らされながら、ゆっくりゆっくりお抹茶を傾けるパートナーへ、ジークリートは尋ねてみた。 控えめだろうが、苦さを物語る表情を見てしまったせいで、つい。 「…………苦いと思います」 今度は無表情のまま、一口飲んで、 「ですが……嫌いではないです」 と。 ここで、ジークリートの懸念が一つ、払拭された。 月見を、和菓子を、お茶を。 楽しんでいないのではないか? 口に合わないのではないか、という懸念を。 僅かに心の中で安堵して――ここで初めて、お互いの手が、同じタイミングで手を伸ばした。 伸ばした先には、紅葉舞う中のウサギの練りきり。 それを、どちらが言い出すわけでも無く、同じタイミングで菓子楊枝で口元に運ぶ。 相手が紅葉を食べれば紅葉を。 ウサギを少し切り取れば、同じくウサギを少しだけ。 甘さと苦さを喉に通しながら、ジークリートは、やっぱり経験させて良かったと、心の中でホッとする。 看板娘に誘われた際に、聞いてはみたが、反応の返ってこなかったフェリックスに対し、半分余計なお世話だったのでは? との不安が拭えないでいた。 が、こうして普段通りの反応を見せ、少なくとも不快感が伝わってこない以上、きっとフェリックスはフェリックスなりに楽しんでくれているのだろう。 そう思えば、自然と笑みが溢れてきた。 「フェリックス……今日は付き合ってくれて、ありがとう」 くすりと笑いながら。 そう伝えはしたものの、返ってきたのはやっぱり無表情。 それが普段通り。 非日常に身を置くのが日常に――当たり前になってしまった生活の中で。 『変わらない』。 その事が、どれだけ安心させてくれるかを。 今日、この一日で、改めて噛み締めることが出来たかも知れない。 そう思えば、やはり普段通りでも、もう一度伝えたくなってしまった。 「今日は、ありがとう」 その言葉は、頬を撫でる秋風へと、溶け込んだ。
|
||||||||
*** 活躍者 *** |
|
|
|||
該当者なし |
|