~ プロローグ ~ |
●ある労働者の話 |
~ 解説 ~ |
■目的 |
~ ゲームマスターより ~ |
まいど、マミアナサトルでございます。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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■目的 幽霊屋敷調査、及び屋敷内の危険排除。 ■行動 2階窓から見られ難い経路で昼に仲間と屋敷に接近し、 手分けして外周部の侵入形跡捜索。 その後勝手口から入り、手近な部屋から足跡や埃の積もり具合の差等、 侵入痕跡確認しつつ、地下室の存在も考慮し捜索する。 三角折りの大判ハンカチを巻き鼻口覆う。 暗所はランタン使用。火の取扱厳重注意。 所持品適時貸出。 昼調査で原因特定できぬ場合、夕刻に集合し情報交換後、 照明消し2階窓から周囲確認しつつ夜を待つ。 昼に脅威排除時も念の為夜に確認。 交戦時は薙鎖が符で牽制、モニカが接近格闘。捕縛を試みる。 可能なら庭に追い立て外の仲間と挟撃。 霊絡みなら事情確認し成仏できるよう取り計らう。 |
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侵入者が外から来たわけじゃないんだとしたら 地下室とか、部屋から出てきたってことになるのかな? そうなると…やっぱり幽霊? ジョシュアは人間だろうって考えてるっぽいけど、そういう可能性も捨てきれないよね。 探索中は私も 獣人変身をして匂いを探ろうかな 土や植物以外の人工物のようなにおいをはっけんしたら報告するね。 夜に潜む場合はあたしたちは庭に隠れて侵入者を待つよ ランタンをともして、その上から上着とかなにか布をかぶせて光が漏れないように。 敵意のある侵入者と対峙した時には詠唱し戦闘態勢に、ジョシュアを守るようにして立つ ステップスマッシュで攻撃を加えつつ、仲間たちに「何と交戦中なのか」大声で伝え応援要請する。 |
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◆行動 日中~夜に調査 最初に、屋敷周辺住人に聞き込み 不法侵入かつ滞在しているなら、物資の調達も必要なはず そのため最近見かけない人物の目撃情報や変わったことがないかを中心に確認 その後屋敷内部・1階をメインに探索 誰か侵入したのなら、床や家具の埃や蜘蛛の巣などに乱れがあるはず 形跡を探しつつ、地下室の入口も探す メモに屋敷内の見取り図を簡単に記入 概要と違っていた箇所など気になった所を確認 探索後は一度集合して情報交換 隠れて夜まで待機 異変が起こったらすぐに確認 敵対するようであれば戦闘に移行 魔術真名を唱え、家屋が傷つかないよう配慮 相手が人間なら、殺さず縄で捕縛 幽霊なら事情を聞き、解決できるよう協力・成仏を祈る |
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◆作戦 時間は昼から夜 皆と協力し手分けして屋敷の内外を調査する 夕刻、情報共有のため一旦入口に集合 昼の調査で解明に至らなかった場合夜まで物陰に潜伏し動きがあれば対応 ◆行動 昼 わたしとロウハは屋敷内の二階を中心に探索 状況に応じて二階以外も ロウハが先導し一部屋ずつ中を確認 わたしはメモ帳に簡単なマッピング+部屋の情報を記入 人の気配や痕跡、危険がないか常に神経を張り巡らせる 隠し部屋・通路の有無も調査 夜 噂の光を目撃したら気配を殺しながら追跡 探索中に第三者を発見、怪我人が出る等緊急事態と判断したら魔術通信で連絡 第三者と対峙したら対話を試みる 相手に敵意がある場合屋敷内での戦闘は避け、屋外に追い立て交戦のち縄で拘束 |
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まず、探索中に敵を発見したら大声で救助を呼ぶようにする。 行く時間帯は昼のほうが良いと思う。 まず、皆で手分けして屋敷外周部を捜索する。 その後屋敷の内部2Fで異変がないか探索。 特に異常がないようだったら、夕刻に一旦皆で集合。 その後夜まで内部に隠れて、異形がやってくるのを待つ。 ランタンがつけば良いんだけど…つかなかった場合、 ララエル、頼んで良いかな? 異形がやってきたらワーニングショットで攻撃。 なるべく屋敷は傷つけないように。 え? …そうだな、僕は怖くないよ。 |
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・目的 屋敷調査し原因解明 ・心情 幽霊はまだ見た事がないので、いるのなら見てみたいですの わくわくします(無表情 ・行動 昼から行動開始 依頼主から鍵受け取り 屋敷の間取りなど概要を確認しておく 担当は前庭 足元に注意しつつ一通り歩いて探索 館の外観や土の色など違和感がないか見ておく 依頼主の話と何か相違がないか注意 夕刻集まり情報共有 昼で解決できなかった場合夜まで待機 昼の間に身を潜められそうな場所に目星をつけておく ランタンは何か起きたらつける 目をつむるなどして暗闇にならしておく 終了後安全確認 ・戦闘 中距離から通常攻撃 家を傷つけないよう注意払う 外なら思いっきり 後衛のため、なるべくランタン掲げ前衛中衛の視界確保 |
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幽霊屋敷かぁ…魂が迷子にでもなってるのかな? 目的は屋敷の調査。人魂の正体が分かれば上々かな? 屋敷内は陽のあるうちに調査を、俺達は内部。主に二階部分を重点に調べる。 埃の積もり方とか家具の配置とか引っかかるものがあれば覚えておこう。 二階部分の調査が終わったら一度他のメンバーと合流して情報交換を。 陽のあるうちの調査で何かわかればいいし。夜を待つ必要があると判断したら。 夜に再度屋敷内へ調査へ。この時はランタンを使用。 戦闘があった場合は粛々と対応。おもに綾音のサポートをする。 さて、噂の人魂とやらが本物なのか。それともそれを利用した何かなのか…。 まぁ、どちらにしても俺達は任務をこなすのみだよ。 |
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●行動方針 ・リーゼ なるべく一日の早くより行動を起こします 現地調査よりまず、この屋敷そのものの情報が不足していると感じました ですので事前に情報収集も行います。 欲しい情報はこの建物の建った由来、現在の持ち主様へと渡った際の経緯など 持ち主様は勿論、近辺の住人様にもお伺いするつもりです 心霊現象の原因、或いはそれを偽装する人物像が浮かび上がるかもしれません 情報収集後は現地にて皆様と合流 手分けして屋敷外周部捜索で進入の痕跡調べ、その後3チームに分かれ調査 (私は人数の足りないチームへ) 万が一戦闘の際は屋内を傷めないよう注意しつつ前線を張ります ・ギル リーゼたんの後をついて回る 出来るなら写真撮影で幽霊の痕跡探し |
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~ リザルトノベル ~ |
●幽霊屋敷の噂 「一週間くらい前から、見慣れない人たちが買い物に来る……それは確かなのデスネ?」 「ああ。その通りさ」 「ローブを着ていて顔は見えず、手袋をしている、ト?」 「そうだ。最近はすっかり暖かくなったのに、変に厚着なんだ」 「ナルホド。とっても参考になりましたのデス。ありがとうございマス!」 魔術師らしいアレンジの教団制服をまとったエリィ・ブロッサムはにこやかに言う。 雑貨店の店主はつられて笑った。 「どういたしまして。何の仕事か知らないけど頑張ってよ、浄化師さんたち」 雑貨店を離れたエリィ。先程までの愛想はどこへやら、がくりと肩を落とす。 彼女のパートナー、エレメンツのレイ・アクトリスが不思議そうに尋ねた。 「どうしたんです、有力な情報じゃないですか」 「生きてる人間の仕業の可能性が高くなってきたのデス……がっかりなのデス……」 レイは物語に出てくる王子様のように微笑んだ。 「そんなに落ち込んだ顔をしないでください、レディ。 幽霊屋敷の正体を見極めることが僕たちの使命です。どんな情報でも意味がありますよ」 「――そうデス!」 レイの話を聞いていたのかいないのか、エリィは突然顔を上げた。 「不法侵入だって大問題デス! せめて家賃を払ってもらわないと!」 「家賃……?」 「凹んでなどいられませン! 頑張って探検しまショー!」 えいえいおーと腕を振り上げ先を行くエリィを、レイはため息混じりに追う。 (まぁ、やる気が出てるなら、良しとしましょう) 問題の空き家へ向かう前に情報収集をする者は他にもいた。 「名義を持っていた人が5年前に亡くなったので、甥が相続した……おかしなことはありませんね」 聞き込みメモを眺め、リーゼ・アインベルクはため息をつく。 「心霊現象の原因や、偽装する動機のある人が見えてくるかと思ったのですが」 そんなリーゼの耳元に、突然荒い息がかかる。 「リーゼたん、憂い顔もたまんねぇ……」 「きゃっ!」 リーゼは飛び上がった。 後ろに忍び寄っていたのは、彼女のパートナー、喰人のギル・マイヤーだ。 「いつからいたのですか?」 「ず、ずっと」 ゲヘヘと笑うギル。リーゼはギルを睨み、嫌悪感を隠そうともせず背を向ける。 ついてきているギルのことは意識の外に追い出した。 (まあ、いいでしょう。世界に住む人々の心の安息を守ることが、世界を護ることにも繋がるはずです) ●幽霊屋敷の疑惑 指令を受けた浄化師たちは、話し合いの結果昼間に屋敷を訪れることにした。 彼らは今、問題の屋敷の門前に集まっていた。 「薔薇十字教団というのは、幽霊屋敷の調査なんてことも請け負うのですね……」 黒髪を揺らし、アンデッドの女性、吉備・綾音が小首をかしげる。 綾音とパートナーの祓魔人ジエン・ロウにとって初めての指令だ。 浄化師は戦ってばかりいるのかと思いきや、こんな指令もあるらしい。 「さて、噂の人魂とやらが本物なのか。それとも別の何かなのか」 ジエンがそう口にする。丸眼鏡をかけた半龍の青年である。 東方風の独特な服を着た綾音とジエンは、浄化師の中でも目立つ部類だ。 「ジエンさん、なんだか楽しそうです」 「そう? せっかくなら指令も楽しんだほうが得だよね」 ジエンは朗らかに笑った。 「まぁ、どちらにせよ俺たちは任務をこなすのみだよ」 「このお屋敷、どんな人が住んでいたのかしら」 シュリ・スチュアートが緑色の瞳で屋敷を見上げる。魔術人形マドールチェの少女である。 「幽霊って、この世への未練とか強い恨みとか、強い意思をもって存在するものよね」 「って話だな。俺は幽霊の知り合いいないからわかんないけどな」 「もう、ふざけないでっ」 パートナーのロウハ・カデッサの軽口にシュリは眉をひそめる。 「でも、ここで大きな事件や事故の記録はない……誰かいるとしたら、やっぱり生きた人間なのかしら?」 「手分けして探すことにしましょう。1階と2階、それに庭」 指令書と屋敷を見比べ、ラウル・イーストが言う。 「庭は前庭と裏手と、2箇所あるようですの。そちらも手分けしたほうが良さそうですの」 そう言ったのはドリス・スノウディア。小柄な銀髪の少女の姿をしたマドールチェだ。 「4グループに分かれるのがいいか?」 ドリスのパートナー、リンミュール・エレドが言う。 銀髪のヴァンピールの青年で、ドリスとは兄妹ということになっている。 庭木の奥に潜む屋敷をぼんやり見ているのは、ラウルのパートナー、ララエル・エリーゼだ。 (お化け屋敷、かぁ……) 「どうしたんだ、ララ。まずは外周を調べる」 「あっ、行きますっ!」 ララエルは小走りにラウルの後を追いかけた。 「何も視えませんね。動物霊はときどきいるけれど」 柵ごしに屋敷を眺めつつ、薙鎖・ラスカリスがつぶやく。 彷徨える魂を視やすい体質を持つ薙鎖だが、彼の目にも特別なものは映らない。 「……ナギサ。お化け、本当にいない?」 薙鎖のパートナー、喰人のモニカ・モニモニカが青ざめた顔で尋ねる。 モニカは今回やけにおとなしかった。どうやら幽霊が苦手らしい。 「今のところ、幽霊はいないみたいです」 「ほ、ほんと? よかったぁ……ナギサは、お化け、怖くない?」 「怖くはありません。どちらかというと心配、というか。なんとかしてあげたいかな」 僕もお化けみたいなものですしと続けようとした薙鎖は、柔らかいものに鼻と口を塞がれた。 「怖くないなんてナギサは偉いわぁ! いい子いい子」 「むぐ、ちょ、モニカさん、離して!」 「何やってんだありゃ」 薙鎖とモニカの様子を眺め、ジョシュア・デッドマンがため息をつく。 外見だけなら今回参加した浄化師の中でジョシュアが最年長である。 「まあいい、引き続き痕跡を探そう。柵の下をよく見てくれ」 彼のパートナーでライカンスロープの祓魔人、ベアトリス・セルヴァルが尋ねる。 「ねぇ、やっぱりジョシュアは人間だと思ってる?」 「私はそう思うね。出入りできるのは玄関と勝手口らしいが、他にも侵入経路があるかもしれん」 「うーん、決めつけるのは早い気がするけど」 屋敷を囲う柵は2メートルほどの高さがあり、乗り越えるには骨が折れそうだ。 (でも、外から来たんじゃないとすると、地下室とか部屋から出てきたってことに……やっぱり幽霊?) 考え込むベアトリスの鼻を、突然の衝撃が襲う。 「ふぎっ!」 ジョシュアが立ち止まっている。ベアトリスはその背中に顔をぶつけたのだった。 「急に止まらないでよー!」 「――見つけたぞ」 振り向いたジョシュアは、ベアトリスの抗議を無視して口角を上げる。 彼の指差した先には――柵の下、かすかに泥のついた靴の跡が残っていた。 ●幽霊屋敷の庭 浄化師が全員敷地に入ったことを確認して、リンミュールが門扉を閉めた。 「中に何かいた場合、逃走防止のためにね」 リンミュールはそう説明する。 「生身の侵入者相手なら確かに合理的ですね」 ラウルが感心したように言う。 それから浄化師たちは屋敷の各所ヘ散っていった。 屋敷の背後の庭は前庭より雑草が多く、庭木も伸び放題で視界が悪い。 リーゼは庭の地面の様子を観察していた。 (何か、見つからないでしょうか) 屈んでいるため短いスカートが持ち上がり、後ろから見ると非常に危ういことになっている。 と、不意に嫌な予感を感じた。 「……っ!」 勢いよく振り向く。 リーゼの背後、至近距離で中腰になったギルがいた。 「そこで何をしているんです?」 「決まってるだろ?」 ギルは下卑た笑いとともに親指を立てる。 「リーゼたんのサービスショットをゲットす」 「――いい加減、真面目に働いていただけませんか?」 かぶせ気味に言って冷え切った目で睨みつけると、ギルはへらへら笑い「ご、ごめん」と言って後ずさる。 リーゼはため息をつき、探索を再開した。 同じ裏庭で、ジョシュアも屈み込んで地面を睨んでいる。ベアトリスが背中に問いかけた。 「何か見つかった?」 「いや……クソ、雑草が多すぎて足跡なんかわからん。子豚も探してくれ」 「う、うん」 ベアトリスは周囲を見渡す。離れたところにリーゼとギルがいるが、こちらは見ていない。 (あんまりやりたくないんだけど……しょうがないよね) ベアトリスの頭上。ぴょこぴょこと動いていた桃色の耳が大きくなる。 鼻が潰れ、顔の形が変化する。 手足が縮み、身体が折れ曲がって四足歩行に適した姿勢になる。 『――ぴぎっ!』 さっきまでベアトリスの立っていた場所に、可愛らしいミニブタがいた。 「よしよし子豚、自分の務めを果たす気になったか」 『ひっ、必要だと思ったからっ!』 ベアトリスはくぐもった声で言い、周囲の匂いを嗅ぎ取るため特徴的な形の鼻をひくひくさせる。 「何か感じるか?」 『うーんと、草と、土と』 「それだけ?」 『待って。これ、何の匂いだろ。絶対知ってる匂いなんだけど……』 ベアトリスのピンクの耳がぴんと立った。 『わかったっ!』 「おい、待て子豚っ」 ベアトリスが短い手足を繰り出して駆け出す。その先には勝手口の扉。 『これ、ランタンの油の匂い!』 ドリスとリンミュールの担当箇所は前庭である。 「やはり幽霊ではない、ということでしょうか」 ドリスは無表情のままだが、どこか落胆したような口ぶりである。 時折敷地外にも目を向けつつ、リンミュールは妹に答える。 「ジョシュアさんが柵の下に足跡を見つけたそうだ。幽霊は足跡は残さないんじゃないかな」 「残念ですの。幽霊はまだ見たことがないので、いるのなら見てみたかったですの」 「見てみたかったって、遊びじゃないんだぞ?」 林のごとく生えている雑草をかきわけながらリンミュールは肩をすくめた。 「……お兄さまも期待してらしたのでは? 指令の説明を聞いてるとき、目が輝いていましたの」 「……」 血の繋がりはなく一緒に過ごした時間も長くない兄妹なのだが、似ているのは外見だけではないらしい。 と、ドリスが顔を上げる。無表情の中にかすかな緊張が見て取れた。 「シュリさまから通信を受信しましたの。お屋敷の中で、何か見つかったようですの」 ●幽霊屋敷の探索 屋敷玄関の扉は、重々しい音を立てて開いた。 古びた匂いが浄化師たちの鼻を刺激する。 玄関ホールの左右に廊下が延び、正面に2階へ続く階段がある。依頼人から聞いていたとおりだ。 「それでは、僕たちは2階を。異変が発見できなければ、一度夕刻に合流しましょう」 「了解デス! 何かあったら皆さんを呼びますデス」 2階へ向かうのはラウルとララエル、シュリ、ロウハ、それにジエンと綾音だ。 ラウルのあとを追うララエルが、持ち込んだランタンを灯す。 カーテンのない窓から陽の光が入ってくるが、屋敷の中は薄暗い。灯りがあったほうがいいだろう。 「気をつけないと転んじゃいそうですね」 不気味な軋みをあげる階段は、屋敷が放置されていた時間を思わせた。 静寂が耳について自然と話し声も小さくなる。 「立派な家だったようだけど……放置されたお屋敷って、寂しいものね」 メモ帳に間取りを書き留めながらシュリがつぶやく。 「お嬢、足元気をつけろよ。あちこちガタが来てるからな」 「そんなことわかって、きゃっ!」 ロウハの警告に唇を尖らせたとたん、シュリがよろけた。ロウハが素早く抱きとめる。 「言わんこっちゃない」 「ちょ、ちょっとつまづいただけよ」 階段のへりの絨毯がめくれている。屋敷を人に貸すには修復が必要だろう。 (万一床が崩れたら……俺がお嬢を抱えて飛べばいいか) 半竜のロウハはそんなことを考えていた。 彼にとってはシュリの安全が第一なのだ。 一行は2階の左右に並ぶ部屋を順に見ていくことにした。 手前の部屋の扉は開けっ放しで、がらんとした空間に日差しが差し込んでいる。 「迷子の魂は……少なくともここにはいないみたいだなぁ」 部屋を見渡してジエンが口にする。彼にも少しだけ霊を視る力があるのだった。 「ずいぶん埃が厚く積もってるね」 「家具を動かした跡もないですし……私たち以外は誰も来ていないみたいです」 ジエンと綾音は特に床に注目していたのだが、異変は見つけられない。 次の部屋には寝具を剥ぎ取られたベッドがあったものの、似たような様子だった。 「2階のこちら側はここまでのようです」 ラウルを先頭に廊下を戻る。 そのラウルの上着の裾が、不意につんつんと引かれた。 「……ララ?」 「む。びっくりしないのですね」 「当たり前だろう。後ろを歩いているのはララなんだから」 ラウルは苦笑交じりに言う。 以前はララエルに冷たくあたったこともあったが、近頃は彼本来の優しさが出るようになっている。 ラウルの裾を握ったまま、ララエルは尋ねた。 「ラウルは、お化けが怖いですか……?」 「え?」 不安を湛えた、すがりつくような目。少し気圧されながらラウルは答えた。 「……そうだな、僕は怖くないよ」 「怖く、ない……」 (じゃあ、私のことも……?) そうして2階組が階段まで戻ってきたとき、階下から声が聞こえた。 「みんな、来てクダサイ!」 ●幽霊屋敷の発見 時は少し遡る。 屋敷の1階の探索を担当するのは、薙鎖とモニカ、それにエリィとレイだ。 「家賃をきっちり取り立ててやるのデス!」 ランタンを灯したレイの後ろで、エリィは鼻息荒く言う。 「家賃はともかく、侵入者がいるなら埃や蜘蛛の巣に乱れがあるはずです。よく探しましょう」 2階ほどではないが、絨毯の残骸が残る床はぎしぎしと不穏な音を立てる。 向かって右手の廊下へ進むと、居間らしき広い部屋に出た。 「あっ……レイさん、あれ!」 部屋に入るなり、エリィが興奮気味に指差す。 そこには彫りの深い顔立ちの立派な紳士が、落ち窪んだ目でこちらを睨んで―― 勝手口に回った薙鎖とモニカは、妙なものを発見していた。といっても幽霊ではない。 「……壊れてるわね」 「壊されてるみたいですよ」 勝手口の取っ手が叩き壊され、鍵がかからない状態になっているのだ。 「やっぱり誰かいるのかしら?」 「あ、モニカさん、待ってください」 薙鎖はハンカチを取り出してモニカに渡し、もう1枚で自分の口と鼻を覆う。 「埃対策です」 「なるほど! ナギサ、偉い~」 「あの、それは後で……」 両腕を広げるモニカをかいくぐり、薙鎖は勝手口から屋敷へ入った。 踏み込むなり、埃がもうもうと巻き上がる。 もとは屋敷の厨房だったはずだが、大きなカウンターだけが壁沿いに残されていた。 「昼間なのに暗いですね」 「ワタシ、ランタン持ってるわよっ」 ランタンを灯したモニカは、それをふと今入ってきた勝手口の方へ向けた。 「……蜘蛛の巣、ドアにはついてないのね」 「え?」 モニカは胸を張る。 「ワタシ、掃除は得意なのよ」 「それ今関係あります?」 つっこみを聞き流し、モニカは床をじっと見た。 厚く積もった埃は部屋の隅に多く、中央は薄くなっている。その一部に、他と違う箇所があった。 「ねえ、ナギサ。あれ……足跡、じゃない?」 一方、居間にて。 「……絵なのデス」 「持ち主のご先祖でしょうか。放置するとは感心しませんね」 薄暗がりの中で訪問者を睨みつけていたのは、大きな肖像画だった。 他にめぼしいものはなく、エリィとレイは玄関ホールへ戻る。 左手の廊下には、使用人部屋とおぼしき部屋や物置があった。 注意深く床や天井を調べていると。 「――誰かいたようです」 「ハイ。足跡がありマス」 ふたりはランタンで足元を照らしながら慎重に進む。 「あ、エリィ、レイ!」 廊下で薙鎖とモニカに行き合った。 「キッチンに足跡があったのよ」 「僕たちはそれを追ってきたんです」 「ワタシたちも見つけましタ!」 4人はやがて、ひろびろとしたバルコニーつきの大広間に突き当たる。 「すごい! 舞踏会とかできそう。ナギサ、踊る?」 「ちょ、モニカさん引っ張らないで」 「あ、待ってクダサイ。レイさん、ここの壁を照らしてくれますカ?」 「仰せのままに、レディ」 レイがランタンを掲げると。 低い位置に取りつけられた木の扉が、そこにあった。 「みんな、来てクダサイ! 大発見デス! 地下室を見つけましタ!」 ●幽霊屋敷の秘密 集合した浄化師たちは石造りの階段を降りていた。ひんやりとして足音がやけに響く。 「本当に地下室があったのね」 「滑るなよ、お嬢」 シュリにロウハが手を貸す。 「ワインや食料の貯蔵庫だったのでしょうね」 周囲を眺めてラウルが言った。ララエルは不安そうに身を縮め、人形のルルを抱きしめる。 階段はほどなくして終わり、朽ちかけた木の扉が現れた。 「さて、何が出てくるのかな?」 ジエンが楽しげに揉み手をする。 「態勢を整えてから開けますの」 「ああ。どうやら侵入者がいるのは間違いな――」 ジョシュアが言いさしたところで。 唐突に、扉が開いた。 ひどく疲れた様子の男が、扉から顔を出していた。 男は目の前に現れた浄化師たちを見て、理解できないといった様子でまばたきを繰り返し。 「……薔薇十字教団!」 即座に蒼白になり扉を閉めようとする。 男のローブの袖がめくれ、左手の甲に十字架が埋め込まれているのが一同の目に入った。 「終焉の夜明け団デス……!」 エリィの緊張した声と同時にロウハが走る。 「逃がさねえぜ!」 閉まりかけた扉に足を挟み、勢いよく開け放つ。 地下室には壊れかけた木箱が重なり、食料の袋などが散らばっている。 「おとなしく降参しなさい! 命まではとりません!」 凛とした声で言うと同時、リーゼは剣を抜き放つ。 終焉の夜明け団――大魔術師アレイスター・エリファスを蘇らせようと企む狂信者たち。 魔術研究のためなら非道もいとわない彼らは基本的に薔薇十字教団の捕縛対象だ。 「どうしてここが!」 「怯むな! 薔薇十字教団などに我々は屈せん!」 信者たちが次々と杖を構える。 飛んできた魔術弾をリーゼは上半身のひねりで躱した。 スカートがふわりと広がり、薄暗がりに彼女のしなやかなラインが浮かび上がる。 「抵抗するなら斬り伏せるまで!」 伝説の騎士姫のごとく銀髪をなびかせ、凛としてリーゼは告げる。 「はっ!」 一気に距離を詰め、正面の信者に袈裟懸けに斬りかかった。信者の悲鳴が上がる。 そして彼女の横で、もうひとつ悲鳴が。 目を向けると、ギルが魔術弾を撃った姿勢で手を前に伸ばしていた。 視線に相変わらず下心がにじみ出ているが。 (仕事をしている分には文句は言えませんね……) リーゼは再び顔を前に向ける。 「人間相手となると面倒ですね」 綾音は大鎌『紅ノ月』を構える。 「残念ながらやむを得ないね。行くよ、綾ちゃん」 仲間を護るように綾音が前へ出て、ジエンが援護の態勢を取る。 飛び込んできた信者を綾音が鎌で受け止めた。 「恨みはありませんが……!」 「九字・急急如律令!」 綾音に弾き返された信者に、ジエンの放った符が襲いかかる。符に切り裂かれ、信者が倒れた。 「貴様!」 倒れた信者の隣にいた男が杖を振り上げる。 しかし魔弾を撃つ前に、逆に飛来した魔弾に腕を撃ち抜かれた。 「このままでは家を傷つけてしまいますの。さっさと終わらせたいですの」 ランタンを掲げ、無表情のままドリスが言う。その前にリンミュールが割り込んだ。 「俺が相手になろう、かかってこい!」 リンミュールが鎌をふるい、ドリスの魔弾が飛ぶ。息の合った連携だ。 綾音とリンミュールの墓守2人が並べばそうそう突破されることはない。 しかしドリスの言う通り、戦闘が長引けば家へのダメージが心配であった。 「お屋敷の外へ誘導できないかしら?」 「難しいだろうなあ。なんせここは地下室だし」 前線に立つロウハを援護しながらシュリが言うが、ロウハは苦い顔をした。 「挟撃しましょう。できるだけ早く捕縛を!」 ララエルを護るようにしてラウルがボウガンを撃つ。 そこへ駆け込んだのはベアトリス。ジョシュアと軽く手を打ち合わせ。 「ハイファイブ!」 ベアトリスは踊るように信者たちの群れに突入する。 拳が華やかな軌跡を宙に描き、正面の信者がもろに顔に受けてのけぞった。 「ワタシも負けてられないわ! ナギサ、見ててね!」 逃げようとする信者の正面ヘモニカが回り込んだ。 舞踊のステップで攻撃を加え、ひるんだ信者を取り押さえる。薙鎖が駆け寄りロープをかけた。 ●幽霊屋敷の顛末 やがて、屋敷にいた終焉の夜明け団信者は捕縛された。 8人の信者たちは隣町のアジトが摘発された際に逃げてきたとのこと。 昼は地下室に潜み、夜に物資補給を行っていたようである。 問題の人魂は、勝手口を出入りするランタンの灯りが目撃されたものらしい。 きちんと分担したため探索に要した時間はごく短かった。 しかし捕縛した信者の引き渡しなどで、屋敷を出るときには日が傾いていた。 「ロープを引っ掛ければこの程度の柵は越えられる。簡単にとは言わないが」 「なるほどー」 ジョシュアの解説をベアトリスがふんふんと聞いている。 「地下室を少し傷つけてしまったけど、家の被害は抑えられたかな……」 ラウルは安心した様子だ。 一方、エリィは不満そうに唇を尖らせる。 「やっぱり人間だったのデス。テンションガタ落ちデス」 「そう言わずに、レディ。指令は完遂したのですから」 「不完全燃焼デス! 帰ったら魔導書を倒れるまで読まないと気が済みまセン!」 年頃の娘のストレス解消がそれでいいのかと言いたくなったレイだが、結局黙っていた。 「幽霊だと思ったら犯罪者でしたの。ロマンがありませんの」 「こんなもんじゃないか? 俺はドリスが怪我しなかったからよかったと思うよ」 妹を慰めるリンミュールはすでに割り切っているようだ。 仲間たちの様子を微笑みを浮かべて見ていた綾音が、ふと視線を上げた。 「そうですね、人間相手の戦闘はあまりやりたいものではないけれど……」 闇を吸い取ったような漆黒の瞳が、たった今出てきたばかりの空き家を映している。 「やっぱり、人間でよかったです。だって幽霊……は、とても哀しいものだと思うから……」 「……綾ちゃん」 ジエンの翡翠の目に湛えられる色は、果たして―― 空き家は幽霊屋敷ではなかったが、今も、その噂にふさわしい不気味な佇まいであった。
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*** 活躍者 *** |
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[25] 薙鎖・ラスカリス 2018/04/17-22:58 | ||
[24] ドリス・スノウディア 2018/04/17-22:51 | ||
[23] シュリ・スチュアート 2018/04/17-20:20
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[22] シュリ・スチュアート 2018/04/17-20:20 | ||
[21] ジョシュア・デッドマン 2018/04/17-17:02 | ||
[20] ドリス・スノウディア 2018/04/16-12:53
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[19] レイ・アクトリス 2018/04/16-11:32
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[18] ジエン・ロウ 2018/04/16-11:31
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[17] ジョシュア・デッドマン 2018/04/15-22:22 | ||
[16] ラウル・イースト 2018/04/15-17:58
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[15] レイ・アクトリス 2018/04/15-17:40 | ||
[14] ラウル・イースト 2018/04/15-08:28 | ||
[13] リーゼ・アインベルク 2018/04/15-00:08
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[12] 薙鎖・ラスカリス 2018/04/14-22:44 | ||
[11] ドリス・スノウディア 2018/04/14-17:20 | ||
[10] ジョシュア・デッドマン 2018/04/14-10:28 | ||
[9] ジエン・ロウ 2018/04/13-19:17 | ||
[8] ラウル・イースト 2018/04/13-08:22
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[7] ジョシュア・デッドマン 2018/04/13-06:59 | ||
[6] ドリス・スノウディア 2018/04/13-02:54
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[5] シュリ・スチュアート 2018/04/13-02:38
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[4] エリィ・ブロッサム 2018/04/13-00:46
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[3] ベアトリス・セルヴァル 2018/04/13-00:44
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[2] 薙鎖・ラスカリス 2018/04/13-00:03
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