~ プロローグ ~ |
教皇国家アークソサエティに本部を置く薔薇十字教団。 |
~ 解説 ~ |
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~ ゲームマスターより ~ |
初めまして、煉界で活動させていただくことになったozと申します。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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かふぇてりあで、紅茶と、何かお菓子的なものをたしなみたいかなぁ。 お菓子は和菓子が良いけど、せっかくだし、洋菓子を楽しみたいかも。 紅茶に合うお菓子を所望するよ。 鎖:食堂ほどじゃないけど、ここのかふぇてりあも結構大きいよね。 ス:みたいだな。にしても、お前、和菓子じゃなくて良いのか? 鎖:まぁ、折角だし紅茶と洋菓子頼んでみようかなって思ってるよ。 ス:はー、いっつも食堂で蕎麦やら、おにぎり?やら、寿司やらばっか食べてるのになぁ。 鎖:たまにはそういう気分もあるって。 良い雰囲気のかふぇてりあだし、お喋りしようよ。 ス:カフェテリアって言いにくそうだな……。まぁ、良いぜ。ちょっと話そうか。 |
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目的 三階でいやいや勉強 手段 あ~~~わからねぇ~~~~ やめてぇーーーーー いて! ひっぱたくなよ… 感覚で魔法使ってる俺と、理詰めで魔法使うルドさんとはとらえ方が違うんですよーーー え?魔法の幅も広がるし、いざというとき役に立つ? はいはい… カフェテリアで休憩しようぜ 酒はないだろうから、甘いものとか食ってさー いて! …わかったよ、やるよ (むしろうるさくして追い出されてやろうかなー) いてっ 悪いこと考えてません、すいません (くそ、こいつなんで俺の考えてることわかるんだよ) しばらく真面目に勉強する はーーー勉強した しんど、疲れた、もうやりたくない お、おう、お疲れさん…… おう、食べる! |
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◆目的 まだ教団に不慣れなレイさんから頼まれたので、今日は一日ガイド役デース! ◆行動 「では、エリィと巡る一日学院散策ツアーを開催しマース! エリィ主体でカフェのオススメメニューから、学院の七不思議や どうでもいい噂情報まで雑談しながら学院の各フロアを散策 が、最後にレイからエリィの行きたい所を聞かれて戸惑う レイ:『パートナー』である貴方の好きな場所を教えてほしいのですよ エリィ:パートナー…(考え込む …なら、特別にあの場所にご招待デス! (長く使われていない空き部屋に案内 何もないけど、静かなので一人になりたい時は最適デース ワタシの秘密の場所デスが、レイさんは『パートナー』なので 特別に教えてあげるデス(どや |
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■行動 1階、カフェテリアで互いに飲み物だけを注文。 二人は、まだ名前しか知らない相手について少しでも理解しようと会話を試みる。 東の質問:「契約した目的」 黒憑の質問:「さっき熱心に読んでいた書物は何か」 ■心情 東: 妖怪みてぇな野郎だなァ、薄気味悪い。 何考えてんのかハッキリさせねぇと安心して背中を預けられないじゃないか。 (反応)アンタ、恰好だけじゃなく頭もイカれてんのかい バカ、そんな大げさな呼び方するんじゃないよ(と、呆れ顔) 黒: さて、この男を手に入れるのは少々難儀しそうだ。どうしたものか。 手は無意識に目の前の東を描く。 (反応)アンタを俺の作品(モノ)にしたい、それだけさ。 ※アドリブ歓迎 |
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ゲイズとルーネ、二人ペアで行動。 午前中は、3階で読書……と言うか、魔術の復習等。 ルーネは適当にゲイズの様子を眺めている感じで…… ゲイズの方は、真剣に色々と漁って読んでいる感じで。 お昼には、読んでいた本を本棚に返却して、1階のカフェテリアに 移動……昼食にする感じで、その他パートナーとして色々と お話したり……とか。 午後からも……多分、3階か2階で、読書して過ごす……んじゃ、 ないかな?多分…… (※アドリヴ大歓迎) |
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アクションプラン提出者:マルタ ◆目的 パートナーと仲良くなりたい!それだけなんです 私達契約したばかりで、どう接すればいいのか悩んでいて… 年齢が離れていることも1つの原因かもしれません まずはお互い理解を深めないとですね ◆行動 彼をカフェテリアへ誘いましょう 欲しいものは私は「紅茶とケーキ」、ルノアールさんは「コーヒー」ですね 理解を深めるといっても、何を話せばいいのか…言葉が思い浮かびません そんな私を見て彼は軽く笑い、話を振ってくれました 距離を縮めるには呼び方を変えるのもいいかもしれませんね 名前呼びは私には難しいですが苗字を呼び続けるのもなんだか距離を感じます 「ルノさん」と呼んでもいいか尋ねてみましょう |
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~ リザルトノベル ~ |
●魔術学院散策ツアーへようこそ! 「では、エリィと巡る一日学院散策ツアーを開催しマース!」 エリィ・ブロッサムは教団に来たばかりで不慣れなレイ・アクトリスから案内してほしいと頼まれ、本日ガイド役をしていた。 「教団はワタシのホームのようなものデスからネ。さあ、行きマスヨ。レイさん」 「よろしくお願いします、エリィ」 張り切るエリィを微笑ましく見守るレイ。 彼にはある目的があった。今後長い付き合いとなるエリィの人柄を見極めるべく、彼女にわざと案内を頼んだのだ。 「まずは1階からデスね、この階には受付とカフェテラスがありマス。ここのカフェのメニューは食堂と同じぐらいおいしいデスよ」 「それは楽しみです。ところで、エリィのおすすめのメニューは何ですか?」 「それはですね――」 内緒話をするように声を潜めるエリィに、レイは身を屈めて顔を寄せる。 「実はカフェには、隠れメニューがあるのデス。彼の有名な料理人『ギヨーム・フエール』。彼が賄いで作ったレシピを元に作られた知る人ぞ知るメニュー!」 「あのギヨームのメニューですか。それは食べてみたいですね」 顔を近づけても全く照れもしないエリィに自身の容姿への自信を粉砕されつつも、年長者の意地で微塵も表情に出さなかった。 「どんなメニューなんですか?」 「それは食べてみてからのお楽しみデース!」 そう楽しげに言われれば、諦めるしかない。本当ならエリィの好みを知りたかったのだが、うまく躱されてしまう。 「次は2階デス! ここの図書館は一般書籍が中心に置いてありマス。次はワタシがおすすめの場所、3階の図書館には魔術関連の書籍がたくさん置いてありマス!」 「エリィは本当に魔術が好きなんですね。そういえば、アレイスターの文献を読んでいることが多いですけど、彼に憧れているんですか?」 レイの脳裏に「終焉の夜明け団」のことが過ぎるが、まさかと思いながらもさり気無く探りを入れる。 「その質問はよく聞かれマース」 終焉の夜明け団は、教団からも危険視されている魔術組織だ。アレイスター・エリファスを重度に信仰した狂信者たちが集まっている。 「彼の文献を愛読書にしていマスが、死人に興味はないデス」 きっぱりと言い切ったエリィに妙な安堵感を感じる。 「自分の手で成し遂げてこそ本当の魔術師というものデス」 「そうですか、立派な志ですね」 その迷いのない瞳に最初から疑いの目で見た自分を恥じ入るレイ。 「2階は案内し終わりましたし、次は3階デスね。ついてきてくだサイ」 その後も噂話やエリィ自身の経験談を交えながら、学院の案内をしていく。 「これで学院の案内は終わりデスが、他に行きたい場所はありマスか?」 「では、エリィの行きたい場所を教えてください」 「ワタシのデスか?」 質問の意図を理解できず、初めて戸惑いの表情を浮かべたエリィ。 「『パートナー』である貴方の好きな場所を教えてほしいのですよ」 「パートナー……」 にこやかに微笑みながらも真摯なレイ言葉に何かを感じたのか、そう言ったきり、エリィは何か考え込む。 「なら、特別にあの場所にご招待デス!」 しばらくの沈黙の後、いつもの天真爛漫な笑みを浮かべ、歩き出す。その後を追うようにレイも後に続く。 案内された場所は、長く使われていない空き部屋だった。 扉に手を掛け、先に部屋に入ったエリィは振り返ると大げさに両手を広げる。 「ココは何もないけど、静かなので一人になりたいときには最適デース! ワタシの秘密の場所デスが、レイさんは『パートナー』なので特別に教えて上げるのデス!」 「教えてくださり、ありがとうございます。エリィ」 エリィのドヤ顔に苦笑いしながら、レイはお礼を告げる。 「秘密の場所なので誰にも内緒デスよ!」 「分かりました。二人だけの秘密ですね」 口元に人差し指を当てて悪戯っ子のように笑うエリィ。 「破ったら、針千本、顔面に叩きつけマス」 「……えっ??!」 ●ヤケクソの勉強会 「げっ、信じらんねー、こんなに読むのかよ」 「いいから黙ってついて来い」 「……へいへい」 おざなりに返答しながらついて行くアシエト・ラヴ。最終的に10冊の本を選び終わるまでつき合わされた。 「荷物持ちにもつき合ったし。もう帰っていいだろ、俺」 「何言ってるんだ、お前を勉強させるためにここに連れてきたんだ。俺はついでだ」 「はあっ!?」 ルドハイド・ラーマの予想外の言葉に勢いよく振り返ると、すぐさま反論する。 「そもそも感覚で魔術を使っている俺と、理詰めで魔術を使うルドさんとは捉え方が違うんですよ」 「感覚で使っているという理解があるなら、勉強も無駄ではない。魔術の幅も広がれば、いざというときに役に立つ」 「えぇ?」 ルドハイドの言葉に胡散臭いと言わんばかりの目で見る。 「理詰めというのは違う。お前が感覚で得ている魔術の発動を、段階を踏んで使用しているだけだ」 (バカなのか天才なのか) 通常魔術の知識を得て魔力の感覚を養い、段階を踏んで簡単な魔術から覚えていく過程をアシエトは見よう見まねで覚えたらしい。 感覚に任せて魔術を成立させてしまえるセンスがアシエトにはあった。 だから、圧倒的に知識が足りない。きちんとした知識を身につければ、今以上に伸びるだろう。 それなのにこのバカときたら、 「カフェテリアで休憩しようぜ。酒はないだろうから、甘いものとか食ってさー……――いて!」 無言で殴るルドハイド。 「休憩? 来たばかりだろう」 極寒まで冷え込んだ視線にアシエトは怯む。 「……わかったよ、やるよ」 (むしろうるさくして追い出されてやろうかなー) 「いて! 悪いこと考えてません、すいません」 (くそ、こいつ何で俺の考えてることが分かるんだよ) 「顔と態度にすぐでるからな、お前は」 何度も殴られた頭をさすり、低姿勢で謝るアシエトに長い溜息をつく。 渋々アシエトは魔術書を選ぶため、本棚の周りを歩いて回る。 (いきなりルドみたいなことできねえからな、基礎的なもの。基礎的なものっと……お! これとかいいんじゃね?) その魔術師は「素人でも簡単に分かる基礎魔術書」と書かれていた。ページをめくってみると、図説や絵が多く載っており、説明もアシエトでも分かるぐらい噛み砕かれていた。 (これなら俺でも読めるぜ。あーでも、本読んだりしねえから眠くなりそ) そんな邪念が過ぎったとき、 「珍しく勉強してるじゃないか」 まるでタイミングを計ったかのようにルドハイドが声を掛けてきて、アシエトの肩がびくりと震える。 「まさかとは思うが、寝ようなどとは考えていないよな」 「……ハイ、ガンバリマス」 珍しく笑みを浮かべているルドハイドだが、目は全く笑っていない。 逃げ場はないと悟り、アシエトは諦めて真面目に勉強を始めた。 頭を掻いたり、呻いたりしながらも本を少しずつ読み込んでいく。どれくらい時間が経っただろう。 ついにアシエトは本一冊を読破した。 「はー……勉強した」 椅子に寄りかかりながら、思いっきり背筋を伸ばした後、机に突っ伏した。 「しんど、疲れた、もうやりたくない」 「お疲れ。じゃあ、行くぞ」 「へ? どこへ?」 疑問符を頭に浮かべるアシエトにため息をつき、 「カフェテリアで甘いものを食べるんだろう」 「お、おう、食べる!」 先ほどまで萎れていたのが急に元気になったアシエトに、心底呆れながらも珍しくルドハイドは小言を言わなかった。 そのまま二人は3階の図書館を後にし、カフェテリアへと向かったのだった。 ●男の駆け引き 「まどろっこしいことは嫌いなんでね、単刀直入に聞くよ。アンタなんでアタシと契約したんだい?」 「そうせかせかすんなよなぁ、どうせならゆっくりとお茶しようぜ」 そうにやにやと薄笑いする男、黒憑・燃(クロツキ・ネン)が自分のパートナーであったとしても、到底お茶をゆっくりする気にはなれない。 そう清十寺・東(セイジュウジ・アズマ)は思った。 なごやかなカフェテラスの一角で、一触即発の緊迫した雰囲気が漂っていた。他の浄化師も只ならぬ空気を察したのか、そのテーブルの周りだけ空いている。 「悪いが、アタシはそういう気分になれなくてね。さっさと理由が知りたいんだ」 「……理由ねぇ」 ネットリとした口調に東をなめ回すような視線。それらを受けながらも嫌悪感を表に出さないよう努力する。 東はこの男と嫌々契約に合意した。この男以外に適合者がいなかったことも大きい。 黒憑が何を思って契約したかは知らないが、東は契約した以上、相手に対して責任と使命感を持っている。 だからこそ、契約動機の真意を絶対に聞き出しておきたい。 「アズマに惚れたからだよ」 予想だにしなかった言葉に東は思わず飲み物を吹き出す。東の左手薬指にはめられている指輪に気づいているのか。 こちらの一挙一動を見逃すまいと観察する男の視線に気づき、動揺を抑え込む。 「一目惚れだって言ったら、アズマ信じるかい?」 「……アンタ、格好だけじゃなく頭もイカレてんのかい。それにアタシは既婚者だ。アンタはお呼びじゃないよ」 「略奪愛か、悪くない」 「人を舐めるのもいい加減にしときな」 ドスの効いた低い声で言い放つ。東の目は全く笑っていなかった。 東にとってそれは最大の侮辱だった。それと同時にこの男は自分には理解できないと悟る。 「つれないところもいいねぇ……だからこそ、やりがいがあるってもんだ」 「テメェに背中預けたら駄目だってのは、よく理解できたよ」 ここまで言っても一向に諦める気配のない黒憑に眉間のしわが深くなる。 愛する妻を守るためととはいえ、早まった選択をしてしまったのかもしれない。できれば、契約前に戻って過去の自分を殴りたい。 「アズマ。アンタの質問にも答えたんだ、俺からも質問していいだろう?」 そう言われれば、否とは言えない。それを分かった上でこの男は聞いているのだから、質が悪い。 「……何だい?」 「アンタがさっき熱心に読んでいた書物はなんだい?」 間があったが律儀に答えようとする東に、にやにやと薄笑いを浮かべる。 ろくでもない問いが来るだろうなと身構えていただけに、まともな質問がきて驚く。 「詩集だよ。詩を読んでたんだ。妻へ送るものをね」 「詩が好きなのかい?」 「美しい言葉の響きには興味があるよ。こっちじゃ、ニホンとはまた違って勉強になる」 「勉強になるってことは、詩でも作るのか? アンタが詩を朗読する姿、是非見てみたいね」 目敏い男だ。隠していてもこの男ならばいつか気づくだろう。仕方なく、東は自身が物書き志望であることを渋々告げる。東の夢を黒憑は笑ったりはしなかった。 むしろ、嬉しそうに、 「未来の大先生の側で働けるたぁ、光栄だ」 「バカ、そんな大げさな呼び方するんじゃないよ」 そう言い放った黒憑に呆れる東。 互いへの質問が終わり、品のある仕草で紅茶を飲む東をじっと観察する。 (さて、この男を手に入れるのは少々難儀しそうだ。どうしたものか) 視線に感づいた東が訝しげにこちらを見る目に背筋にぞくりとしたものが迸る。手は無意識に目の前の男をスケッチ上に描き始める。 「アンタ絵を描くのかい?」 「ああ、しがない絵描きさ。本当にアンタは最高の素材だ」 顔を上げると驚いたような苦虫を噛むような表情を浮かべた東がいて、思わずにやにやとした笑いがこみ上げてくる。 「何か良からぬことを企んじゃいないだろうね」 「何も。ただ――」 極上の餌を前に舌なめずりする獣のように白い歯を見せる。 「アンタを俺の作品(もの)にしたい、それだけさ」 ●呼び名があらわす二人の距離 「あ、あの! ルノアールさん」 マルタ・ブランシュに魔術学院のカフェテラスが目に入る。そこで浮かんだ閃きのまま、勇気を振り絞って隣で歩くアラン・ルノアールに声をかけた。 「どうした、マルタ?」 「そこにカフェがあるんでちょっと寄っていかないですか。ちょうどお昼ですし」 「そういや、もうそんな時間か。いいぜ」 「はい!」 勢いよく返事するマルタに一瞬アランは苦笑いし、二人でカフェテラスに入る。 カフェテラスは一二時を過ぎたところで、昼食を食べに来た教団員で中々賑わっていた。 先に席を取り、二人はメニューを注文しに行く。レジまでは混んでいてしばらく時間がかかりそうだった。 「……えっと、今日は天気がいいですよね」 何を話したらいいか分からず、困り果てたマルタを見てアランは軽く笑い、話を振る。 「俺らパートナーなんだから、そう緊張すんなよ。話す内容なんて何でもいいんだよ――ところで、アンタの好物は何だ?」 「わ、私はですね……甘いものが好きなんです」 少し肩の力が抜けたマルタが照れたように喋る。躊躇いながらも話そうとするマルタを意外なほど辛抱強くアランは待った。 「特にレアチーズタルトが好きでよくお店に食べに行くんです。でも、ここには置いてないみたいですね」 マルタの感情に反応するように狐耳がしゅんと垂れるのを見て、アランは内心笑いを噛み殺す。 「へえ、じゃあ、俺が作ってやろうか」 「へ?」 アランの思わぬ提案にマルタが間抜けな声を上げる。 「俺料理すんの好きなんだよ。甘いもん苦手だが、菓子作んのは楽しいよな……何だよ、そんなに意外か」 「いえ、確かに驚きましたけど、料理ができるなんてすごいです!」 手放しの賞賛にアランが照れたのを隠すように前を向く。 ちょうど支払いの順番がきて二人は会計を済ませ、注文した番号が呼ばれるまで席に着く。 マルタは紅茶とケーキをセットで頼んだため時間がいるが、コーヒーだけを頼んだアランはトレーをテーブルに置いた。 「さっきの話だが、料理と違って菓子は少し作るが食わねえからな、作っても食う奴いなくて困んだよ。お前が食ってくれたら助かる」 「ええ!? でも、ルノアールさんの迷惑じゃ……」 「料理は俺の趣味だ。俺は菓子作りができて楽しい。お前は菓子が食べれる。ギブアンドテイクってやつだ」 「それなら、私ルノアールさんの作るお菓子食べてみたいです」 おずおずとマルタはアランを伺うように見る。アランは頭はがしがしと掻くと、マルタと目をしっかりと合わせる。 「なあ、そのルノアールさんっての止めにしないか? なんつーか、こうむずがゆくなっちまう」 「え、でも、ルノアールさんは年上ですし。年上の方を名前呼びするなんて私にはできません」 「年上だとかそんなのアンタの考え過ぎだ。俺はどう呼ばれようと、気にしねえよ」 戸惑いの表情を浮かべるマルタを横目にアランは彼女の分かりやすく困っている姿を楽しそうに観察する。 (どうにもパートナーができたっつーよりは、新しい妹ができたみたいで、つい構いたくなっちまう) 一方、マルタはアランがここまで言ってくれたのに、このまま名字で呼び続けるのもアランに対して逆に失礼だなと考え直し、しばらく悩んだ末に口を開いた。 「ルノさん、でどうでしょうか?」 「さっきより断然マシだな、それでいいぜ」 ニッと口端を上げて笑うアランに釣られてマルタも笑みを浮かべる。 ぎこちなかった二人は、パートナーとしてようやく歩み出していた。これから二人の関係がどう変わっていくかは、まだお互い知らず。穏やかな時間に身を委ねていた。 ●女のおしゃべりは長い 「食堂ほどじゃないけど、ここのかふぇてりあも結構大きいよね」 周囲を見渡しながら、封魔・鎖璃(フウマ・サリ)が反対側に座っているパートナーの女性に話しかける。 「みたいだな。にしても、お前、和菓子じゃなくて良いのか?」 「まぁ、折角だし紅茶と洋菓子を頼んでみようと思って」 「はー、珍しいな。いっつも食堂で蕎麦やら、おにぎり? やら、寿司やらばっか食べてるのになぁ」 ステフ・レミールは物珍しそうに鎖璃が頼んだキャラメリゼのミルクレープに紅茶を見る。 「たまにはそういう気分もあるって。良い雰囲気のかふぇてりあだし、このままお喋りしようよ」 「カフェテリアって言いにくそうだな……。まぁ、良いぜ。ちょっとここで暇つぶししようか」 鎖璃はカフェテリアを気に入ったようで、楽しげに笑う。 「じゃあ、食べるか」 「そうだね、いただきます」 鎖璃は手を合わせてそう言うと、フォークを持ち、キャラメリゼのミルクレープを一口含む。 すると、しっとりとした食感に濃厚な生クリームの味わいが口の中に広がる。表面に焼きごてされた仄かに苦いキャラメリゼが甘さを引き立てていた。 優しい口当たりのミルクレープは、いつもなら洋菓子を食べない鎖璃でも美味しく食べられる一品だった。 甘くなった口直しに紅茶を飲んで一息をつくと、テーブルを挟んで座ったステフが幸せそうにミートパイに噛り付いているのが目に入った。 ステフは美味しい食事に満足していた。 ミートパイはさくっとした食感のパイ生地に、中のじわっと広がる肉汁と濃厚なデミグラスソースがお肉に絡み合っていくらでも食べられそうだ。脂は旨味だ。それをステフは舌で体感する。 「そんなに食べてよく夕食食べれるよね、今15時だよ」 「あ? これぐらい普通だろ」 「ステフは燃費が悪いもんね」 「まあな、食えるときに食っとかなきゃな」 ステフはミートパイをあっという間に食べ終え、サラダを口にしていた。付け合わせのサラダはちょっとしかないので、すぐにステフなら食べ終わるだろう。 「ここのカフェ、食堂と同じくらいに旨いな!」 「うーん……おいしいんだけど、やっぱり和菓子の方がいいな。生クリームよりも餡子の方が好きなんだよね」 「アタシは美味しければ何でもいいけどね」 ステフが平らげる間にデザートを食べ終わった鎖璃は優雅に紅茶を飲んで、感想をこぼす。 彼女は清々しいぐらいにニホン食が好きだ。ここでのデザートも美味しかったようだが、ニホン食には負けるらしい。 「醤油、味噌、鰹節でもいいよ……だし汁文化万歳」 「だし汁?」 突然テーブルに突っ伏した鎖璃を、モカブレンドコーヒー片手に呆れたような目で見るステフ。 「ああ、日本の食文化はだし汁なんだよね。味付けは素材の風味を生かしたものが多いから、薄味が多いし」 「へえ、それがふうまちゃんにとって、食べ慣れた味ってことか」 「そうそう、濃い味付けが悪いってわけじゃないんだけど、私はあっさりとした味付けの方が好きなんだよ。数十年間食べてきた味だし、こればっかりはねえ」 困ったように頬に手を当ててため息を付く。 「話してたら、余計に食べたくなってきた……もっとニホン食のメニュー増やしてくれたらいいのに。ニホン出身って私だけじゃないよね?」 「何人かいるんじゃねえ?」 「ニホン食が恋しい。恋しさの余りに浄化師止めてニホンに帰りたい……」 「飯で浄化師抜けるなんて本部でも前代未聞だろうよ。きっとお前が初だな」 「ご飯大事!」 互いに軽口をたたき合いながら、話題は別のものに移り変わっていく。二人のお喋りは未だ尽きることなく、後数時間ここに居座るのだった。 ●没頭する君は危なっかしい ゲイズ・トゥルーシークは3階にある本を読み尽くさんばかりの勢いで、本を読み漁っていた。 すぐ側では読書するわけでもなく、ゲイズをぼんやりと観察するルーネ・ニテンスがいる。 放って置かれているルーネもそれを気にした様子もなく、ゲイズの真剣な顔をひたすら眺めている。 ルーネは少女の姿をしたヴァンピールだ。日焼けすることのない色素の薄い肌。光帯びたように輝く金糸の髪から覗く蝙蝠耳は彼女がヴァンピールであることを示している。 彼女の持つ高貴さを写し取ったかのようなアメシストの瞳。その瞳を見れば分かるはずだ。彼女が老練な知性を宿していることを。 同胞の中でも気が遠くなるほど長く生きたヴァンピールのルーネにとって、生は惰性と暇つぶしでできている。 ルーネはゲイズの顔を飽きることなく眺める。 美しいものは好きだ。ルーネが愛でるのにふさわしいから。 銀を溶かした髪の隙間から見える瞳は、生命を司る色だ。翠玉の瞳が真剣な眼差しで文を辿っていく。 優しげな風貌をしているのに、全てを探り出そうとする残酷な知性を宿した深緑の瞳。それがこちらを写すとき、時折恐ろしく感じるときがある。 恐怖は興味を掻き立てる。 見てはいけないと言われれば見たくなるように。そんな心理がルーネにもあった。 あるいは、エレメンツを恐ろしく感じている自分が許せないのかもしれない。ヴァンピールとしての矜持は、ルーネにとって命よりも大事なものだから。 長く生きたルーネは、他の種族と仲が良かった頃もあれば、あっさりと手のひらを返され、迫害されていたこともある。 かつて抱いた煮えたぎる憎悪も怒りも、全て時間の流れが風化させていく。 他種族に対して思うところがないと言えば、嘘になる。だが、忘却という残酷な時を経て、ルーネは他者に関心を抱くことがなくなった。 ゲイズに会うまでは何者にも心動かされずに、流されるように生きてきた。 過去を振り返りながらこう思う。彼はいつまで本に没頭するつもりなのかと。 気が長いと自負しているルーネだが、昼食の時間を過ぎ、すでに午後15時になろうとしている。 このまま昼食を食べないつもりだろうか。 そういえばエレメンツは物事に一旦集中すると、寝食を忘れて倒れることがあることを思いだし、危機感を抱く。 「……ねえ、貴方はお腹空かないのかしら?」 鈴の鳴るような小さな声はゲイズの耳にも届いたのか、本から目を離し、ようやく顔を上げる。 「……ああ、僕空腹みたいです」 ゲイズから腹の鳴る音が聞こえて、ルーネは呆れる。 「貴方集中したら周りが見えなくなるようだし。仕方ないから、あたしが貴方を管理してあげる」 「それはありがとうございます」 ルーネは自分のためにもパートナーの健康管理をしなければと考えている間に、ゲイズはいつの間にかたくさんあった本を返却し終えていた。 「それではカフェテラスに行きませんか?」 ゲイズの言葉にこくりと頷く。 ルーネの歩幅に合わせてゆっくりと歩く優しい男と一緒にルーネは歩き出した。そうしてカフェテラスまで来た二人。食事を頼むと、二人は淡々と会話し始める。 「没頭して読むほど、新しい知識は在った?」 「いえ、既知のものばかりでした。没頭してしまうのは、自身の質みたいなものです」 「そう、難儀な質ね」 「そうですね。でも、自身のもった質はそう簡単に変えられるものではないですから――ルーネさんも、そうでしょう?」 「そうね、あたしたち案外似た者同士かもしれないわね」
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*** 活躍者 *** |
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[5] マルタ・ブランシュ 2018/03/26-20:34
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[4] アシエト・ラヴ 2018/03/23-19:35
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[3] エリィ・ブロッサム 2018/03/23-14:18
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[2] 封魔・鎖璃 2018/03/23-01:08
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