【森国】守護天使の試練
普通 | すべて
8/8名
【森国】守護天使の試練 情報
担当 春夏秋冬 GM
タイプ EX
ジャンル シリアス
条件 すべて
難易度 普通
報酬 通常
相談期間 5 日
公開日 2020-01-05 00:00:00
出発日 2020-01-13 00:00:00
帰還日 2020-01-22



~ プロローグ ~

 アルフ聖樹森。
 国土の多くを広大な樹林に覆われた、エレメンツとピクシーを中心とした人種や生物が生活を営む場所だ。
 アークソサエティの分類では国とされているが、実際の所は、小さな集落が無数に点在する共同体に近い。
 それぞれが自由な暮らしを日々謳歌している。
 アークソサエティのように、べリアルやヨハネの使徒による脅威が少なく、牧歌的な場所だ。
 何故この場所が、こうまで穏やかなのか?
 それを知る者は、多くは無い。
 理由としてはふたつ。
 守護天使と八百万の神だ。
 アルフ聖樹森全体を守護天使が護り、各地域を八百万の神が護る。
 これによりアシッドがアルフ聖樹森に降りそそぐことを防ぎ、べリアルの発生は抑えられている。
 また、ヨハネの使徒や、他の地域からやってきたべリアルなどは、守護天使と八百万の神による2重の結界により大きく力を削がれるのだ。
 本来は、世界中がこうなっている筈だった。
 創造神がアレイスターと交わした、全生物の絶滅を懸けたゲーム。
 1999年7の月まで猶予がある筈の、このゲームは、人の悪辣さにより終わりの時を速めていた。
 それを知る、アルフ聖樹森を担当する守護天使『毒の王』カチーナは、頭を垂れ魔女メフィストを迎えていた。

◆  ◆  ◆

「そういうのマジ勘弁して欲しいのですよー」
 心底つまらなそうに、メフィストは頭を垂れるカチーナに言った。
 これにカチーナは、顔を上げることなく返す。
「いえ、参りませぬ。偉大なる御方と同格たる貴方様を前に、私如きが平伏せず、この場に拝するなど――」
「別に私も含めて大したもんじゃないのですよー」
 カチーナの言葉を遮り、メフィストは言った。
「そもそも私達が、世界や生物を創ったのは、崇められたいからじゃないのですよー。
 いずれ私達と同格に辿り着く、それを望んで創ったのでーす。
 これは私だけでなく、ネームレス・ワンだってそうですよー。
 まぁ、アレは過保護ですから、今みたいなことになってますがー」
「それは――」 
 メフィストの言葉にカチーナが何か返そうとするより速く、この場に同席している2人の八百万の神の1人、テスカトリポカが声を掛ける。
「お茶が出来ましたよ。カチーナもおじさまも、飲んで下さいな」
「おおー、好いですねー。そうしまーす」
 メフィストは応えると、テスカトリポカと、彼女の妹であるケツァコアトルの居るテーブルに向かう。
 それでもカチーナは、その場を動こうとしなかったが、ケツァコアトルが近付き言った。
「折角入れたお茶が、冷めちゃうわ。貴方が好きだった、花茶を淹れたから、一緒に飲みましょう」
 そう言うとカチーナの手を取り席に連れて行く。
 カチーナは最初、席に座ろうとしなかったが、ケツァコアトルとテスカトリポカの2人がにこにこ笑顔を浮かべながら、カチーナが座るまで立ち続けていたので、止む無く座る。
「美味しいでーす」
「ありがとうございます、おじさま」
「嬉しいですわ」
 和やかに歓談するメフィスト達に、カチーナは表情を硬くしながら、お茶を飲んだ。

 しばしお茶を楽しみ、メフィストはここに来た理由を話す。

「浄化師の子達に会って欲しいのでーす」
 メフィストは説明を続ける。
「これから先、ネームレス・ワンと戦うためにも、情報は必要でしょうからー。
 貴方の口から、守護天使と各国の状況について説明して欲しいのでーす」
「お断りします」
 キッパリとカチーナは言った。
「あの御方に刃向うような不遜な輩に、話すことなど何もありません。幾ら貴方様の申し出とはいえ、お断りいたします」
「そんなことを言わずにー」
 メフィストは懇願するように言った。
「ネームレス・ワンと戦う時に、貴方たち守護天使の力は必要なのですよー。
 そもそも貴方達は、人類を含めた生物を護るために創られたのですしー。いいじゃないですかー」
 メフィストの言葉に、カチーナは更に表情を硬くした。
 カチーナを含め、世界に7人いる守護天使は、創造神により創られている。
 英雄、あるいは聖人と呼ばれた人間の魂を核に、創造神の権能の幾らかを分け与えられ生まれたのだ。
 創られた目的は、守護と審判。
 創造神から分け与えられた全知の権能により、人々の所業を見詰め、護る価値があると思えば護り、そうでなければ、創造神から分け与えられた全能の権能を駆使し、好きに行動しても良いことになっている。
「私はヒトが悍ましいのです」
 カチーナは言った。
「あの御方から全知の権能を分け与え得られ、世界を観て、そう思わずにはおられないのです。
 アルフ聖樹森は私が生まれ死んだ場所です。そしてこの地に住まう者達は善良です。
 だから、辛うじて守ろうという気持ちになれる。だが、他の場所は――。
 特に、アークソサエティは吐き気がする。全知の幾ばくかを分け与えられた今なら、あの御方の気持ちが分かります。
 一度全て滅べば良い。その後にあの御方が――」
「それは悲しいわ」
 ケツァコアトルの言葉に、カチーナは息を飲む。
 そんな彼に、ケツァコアトルは言った。
「私は覚えているわ。貴方が人として生き、そして死んでいったことを。
 貴方がかつてそうであったように、皆もそうであって欲しいの。
 それに、お父さまは――」
 少し言葉を迷うような間を空けて続ける。
「そこまで深く考えてないと思うの」
「……え?」
 唖然とするカチーナに、ケツァコアトル達は言った。
「お父さま、基本的に子供だから」
「堪え性がないのですよねー」
「気が短いのよね」
 創造神を直接知る3人は賛同するように言い合った。
 そんな3人に言葉を返せないでいるカチーナに、テスカトリポカは言った。
「貴方の気持ちも分かるわ。だからこそ、会ってみるのは良いと思うの。
 全知で見るだけじゃ、分からないこともあると思うから」
「それは――」
 悩むカチーナに、ケツァコアトルは頼む。
「お願い。これはアルフ聖樹森を護ることにも繋がるの。
 貴方も全知で知っているでしょうけれど、今ここでは、八百万の神を狩り獲ろうとする子達が居るわ」
「……知っております。終焉の夜明け団とかいう、あの愚かな男の信奉者共ですね。あのような者共、私が――」
「ダメよ。貴方が直接人に手を出せば、それだけアルフ聖樹森を護る結界は弱くなる。
 人を傷つけないでいるから、貴方は人を護ることが出来ているの。
 人を傷つければ傷付けるほど、貴方は死天使に近付いてしまうわ。
 だから、頼りましょう。浄化師の子達に」
「…………」
 悩むような間を空け、カチーナは言った。
「分かりました、会いましょう。ですが同時に、試させて貰います。
 過去、この世界で行われた人の悪行。それを観て、どうしたいかを、問いましょう」

 などというやり取りがあった数日後、ひとつの指令が出されました。
 メフィストの伝手で、アルフ聖樹森に居る守護天使に会うことが出来るので、情報を聞き出す指令です。
 その際には、何か試練を与えられるとの事です。
 この指令に、アナタ達は――?


~ 解説 ~

○目的

守護天使に会い試練を受けた後、情報を聞き出しましょう。


○試練

過去に人が行った悪逆非道を見せられます。
守護天使が見た全てではなく、ごく一部です。

この部分に、PCの過去の出来事などを絡める事が可能です。(実験された過去等)

試練が終わった後に、「過去の人による悪行を見て、これからどうするのか?」を問い掛けてきますので、それに対して答えて下さい。

答えの内容によって、守護天使の好感度が変わります。


○指令の流れ

以下の流れで進んでいきます。

1 八百万の神と共に守護天使に会う。

2 守護天使による試練を受ける。

3 試練に対する各々の答え。

4 質問タイム。

プランにて、どう対応するかお書きください。


○場所

八百万の神の結界の中で会うことになります。
草原の中に、複数のテーブルが置かれ、お茶が出されます。


○守護天使

英雄や聖人が死んだ後、その魂を核に創造神が創り出した。
創造神の権能を分け与えられており、過去の人間の行いを知ることが出来ます。


○NPC

カチーナ

アルフ聖樹森を担当している守護天使。創造神に対して畏敬の念を抱いている。
人の悪行を見続けたせいで、微妙に闇落ちしそうになっている。

嘘などを見抜ける。

テスカトリポカ&ケツァコアトル

双樹の女神と呼ばれる八百万の神。
原初の巨木と呼ばれる、創世記に創られた最初の生物。
自らの細胞を変化させ、世界中に植物を広げ、全ての生物が住める環境を整えました。
原初の巨木は、各国に2本ずつ居り、八百万の神のまとめ役に就いています。


○情報

好感度によって以下の情報が得られます。

守護天使について。
機械都市マーデナクキスで、アークソサエティとの戦争準備をしている勢力が居ることについて。

成功度によって、得られる情報が変わってきます。

それ以外の情報は、質問内容によって変わります。
内容によっては、喋れないことがあります。


○その他

プロローグの会話パートはPL情報です。PCは知りません。

以上です。


~ ゲームマスターより ~

おはようございます。もしくは、こんばんは。春夏秋冬と申します。

今回は、アルフ聖樹森編の始まりです。平和な地域なので、今回でサクッと終わり、この地域を自由に動けるようになります。

ただ、終焉の夜明け団が八百万の神を狩り獲ろうとしているので、それに関するエピソードが出て来る場合もあります。

そして今回は成功度が高いと、隣国の機械都市マーデナクキスの騒動に関する有力情報が得られます。アルフ聖樹森よりも、あっちの方がヤバい状況です。

その原因は、昔の教団のやらかしです。ヨセフ胃痛案件です。

それでは、少しでも楽しんでいただけるよう、判定にリザルトに頑張ります。





◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇

タオ・リンファ ステラ・ノーチェイン
女性 / 人間 / 断罪者 女性 / ヴァンピール / 拷問官
あの方が守護天使……ですか?
肌で判ります、触れる空気が明らかに違う……

試練は私と出会う以前のステラ、彼女に何が行われていたのか……
他でもない教団の非道をエクソシストの私がどう受け取るか、それが試練のようです
話には聞いていました。ですが正直……目の当たりにすると怒りを覚えます
けれど……(凍えるステラを優しく抱き寄せて)私はそれでも人々のために剣を握ります
たとえその中に罪ある者達がいたとしても 私の力は糾弾の為には非ず、己の正義を貫くために在るからです


質問
他にいる八百万の神と天使達の各々の情報を訊いてみます
その中に人類と敵対する者もいるのか
それに、もしや彼らもアシッドに汚染される事があるのかどうかも
リチェルカーレ・リモージュ シリウス・セイアッド
女性 / 人間 / 陰陽師 男性 / ヴァンピール / 断罪者
アルフ聖樹森を守る神さま
始めましてと深々頭をさげてご挨拶
…試す…?

小さなシリウスの様子に声もなく悲鳴
どこに帰る?だれが助けると?
生きているだけで お前は人を殺す

こんな風に 言われてきたの?
だから彼は今でも 触れることが怖いのだと
どうしてー
名前を呼ばれ 我に返る

魔女への迫害の真相を知りました 古竜の慟哭を聞きました 
…シリウスだって…
沢山 たくさん 酷いことを
だけどわたしは 
苦しくても悲しくても 誰かのために走れるひとを知っているから
わたしも そうありたいと思います
誰もが支え合える そんな未来を作るために

守護天使と八百万の神が国を守る
では アークソサエティは?
天使様は何故 アレイスターさんといたんでしょう
女神ダヌは何処に
サク・ニムラサ キョウ・ニムラサ
女性 / ヴァンピール / 悪魔祓い 男性 / ヴァンピール / 陰陽師
サクラ:こういう偉い方々と喋るのは苦手なのよねぇ。
キョウ:変な事しないで下さいよ。
サクラ:トランプしません?
キョウ:は?
サクラ:何よ。クッキー持ってきてるくせに。
キョウ:……皆さん食べます?

試練の答え
サクラ

どうするかって、不思議な事を言うのね
今までとやる事は変わらないわよ
殺しあったり捕まえたり。たまに私情が入って好きにしたり
まだ続いているそれ(悪行)があれば対処するわぁ

キョウ
サクラの考えと大差ないです。
それにですね、恥ずかしながら自分達も悪い事をした事がありますので、
例えばここで”悪い者は全員殺す”なんて言えば自分達は死ななければなりませんし。
答えが気に入らないのでしたら申し訳ありません。
ショーン・ハイド レオノル・ペリエ
男性 / アンデッド / 悪魔祓い 女性 / エレメンツ / 狂信者
殺戮や蹂躙は別にどうってこ…
シリウス!?
実験体にされていたのはよく知っていた…
ここまで酷い目に遭っていたとは…
…なるほど。そうやって揺さぶる訳か

・答え
人の本質は変わらない
たが人の常識は変えられる
その為に歴史があり、倫理がある
今の常識も180度変わるだろう
だが常識を変えることも、歴史を紡ぐことも時間が掛かる
俺に出来るのはその時間稼ぎをすることだけだ
正しき道を紡ぐ人間を守り、その人達が教訓を残せるようにな…

ドクターには内密で人探しをしてくれ
彼女のお母様だ
恐らく天文学等に精通している人物だ
なに。余計なお節介だ
ドクターからお母様の話を聞いた時、妙に寂しそうだったんでな
会わせたいんだ
アリシア・ムーンライト クリストフ・フォンシラー
女性 / 人間 / 陰陽師 男性 / アンデッド / 断罪者
アルフ聖樹森…初めて来たはず、なのに、どこか懐かしいのは…
何故でしょう
初めまして、守護天使様…(緊張の面持ちで)

見せられたのは業火に焼かれる人々
魔女狩り…?
呼び覚まされる自身の記憶
怖い、辛い、どうして?みんなあの時までは優しかった、のに…

私、は……
確かに怖かった
辛かった…
でも村の人達を、憎めないんです
人は、弱いから…でもそれ以上に、強く優しい…
弱いだけで終わってしまう人も、います、けど
そうではない人も、たくさんいるのを、今の私は知って、います
だから、みんなの心が、強くなれるように
お手伝いが、できたらいいなって…そう、思います

質問
ベリアルになってしまった人を…
元に戻す方法は、ないのでしょうか……
ヨナ・ミューエ ベルトルド・レーヴェ
女性 / エレメンツ / 狂信者 男性 / ライカンスロープ / 断罪者
天使との面会に緊張
カチーナにあまり歓迎されていない空気を感じながら試練へ

アースガルズの歴史で行われてきた差別迫害 ロスト・アモール 魔女狩り 八百万の神や竜族への侵害etc
知識のみであったもの 更には知りえなかった史実まで様々な行いを忠実に見せられる
これが人のしてきたことだと
目を背けたくなる光景に暗澹とした感情
喰人が肩に手を置き そのまま体を寄せ合うように耐える
ベルトルドさんも震えてる…

重く長い沈黙 ゆっくり息を吐き

人間が愚かだった間違えていたと
これから善き人間だけの世界にする約束は…残念ながらできません
独善から生まれた独裁はまた別の悲劇を生みます

わ 私は…
人々を救い かの神との戦いから世界を解放する大義を 続
エフド・ジャーファル ラファエラ・デル・セニオ
男性 / 人間 / 墓守 女性 / ヴァンピール / 悪魔祓い
・試練の内容
権威の肥大化と暴走。
無法を抑えるための権威が善悪を思いのままに決めて人を苦しめる。
それに怒り革命家が勝利しても、その勢力が新たな権威として独善に陥る。

・答え
エフド:俺はただ生きてるだけさ。そんなのにせめてできるのは、味方に良くしてやって、できる分野で戦うぐらいだ。それがマズけりゃ、蜥蜴の尻尾にされるだけだろ。

ラファエラ:力があれば何してもいいと思ってる奴らを許さない。中庸ぶってのらくらした態度で、ゴロツキどもを利することはしたくない。

・質問
1.神々の為の散髪等美容サービスはどうです?(黒炎魔喰器の為に)
2.「最強」のトールが機械都市で面白い事が起こると言っていた。何事だ。
クォンタム・クワトロシリカ メルキオス・ディーツ
女性 / エレメンツ / 断罪者 男性 / 人間 / 魔性憑き
周囲がよく見えない
人の顔がはっきりしない…

「声出さないでね…見つかったら殺されてしまう」

顔が判らない男の子が小声で注意する
口を押えたが、本当は耳を押えたかった

火が燃えて、家が壊れる音
何かの怒声
何かが嘲笑う声
怒声と共に何かへ向かって行く者の声
べしゃりと水が土にぶち撒けられる音

「××、これを持って逃げるんだ…此処が見つかるのも時間の問題みたい」
隠れている地下室の奥をその子が指差す
「この奥から地上に出れる。さぁ、お行き。僕の愛しい子、君の道行きに幸あれ」



私は

沢山の屍を踏み台にして生きている

あぁ
あぁ

「……屍の山を築く私の様な者は、生きている事が罪なのか?」

持って逃げろと渡された物は養父殿に預けた筈


~ リザルトノベル ~

 アルフ聖樹森に渡り、八百万の神の結界に訪れた浄化師達は、守護天使カチーナと対面した。

(あの方が守護天使……ですか?)
 同行する浄化師達と共に、守護天使を前にした『タオ・リンファ』は目の前の存在の大きさを感じ取る。
(肌で判ります、触れる空気が明らかに違う……)
 警戒するように体が強張る。
 その気配を感じ取ったのか、『ステラ・ノーチェイン』が声を掛けてきた。
「マー、どうしたのだ?」
 心配そうな声。そこには純粋な親愛があった。
「なにか、こわいのか? だったら、オレがまもるのだ」
 素直な想いを口にする。
 そんなステラに、リンファは強張りをほぐすように息をつくと、安心させるように笑顔を向ける。
「心配してくれてありがとう。私は大丈夫です」
「そうか。よかったのだ」
 嬉しそうに笑顔を浮かべるステラ。
 そんな2人をカチーナは静かに見つめたあと、浄化師達に言った。
「よく来た。私が守護天使だ」
 これに皆は言葉を返していく。
「始めまして」
 深々と『リチェルカーレ・リモージュ』はカチーナと、彼の傍に佇む2人の八百万の神、テスカトリポカとケツァコアトルに頭を下げる。
 同じように『シリウス・セイアッド』も会釈した。
 2人と同じように『アリシア・ムーンライト』と『クリストフ・フォンシラー』も挨拶をする。
「初めまして、守護天使様……」
 緊張した面持ちでアリシアは挨拶する。
 けれど居心地の悪さは感じない。
(アルフ聖樹森……初めて来たはず、なのに、どこか懐かしいのは……何故でしょう)
 不思議に思う彼女の隣で、クリストフは笑顔でカチーナに挨拶した。
「お目にかかれて光栄です、守護天使殿」
 皆が挨拶をしていく中で、居心地の悪さを感じているのは『サク・ニムラサ』。
「こういう偉い方々と喋るのは苦手なのよねぇ」
「変な事しないで下さいよ」
 釘を刺すのは『キョウ・ニムラサ』。
 姉を止めるのが自分の役目というように、自然と口にする。
 そんなキョウを面白そうに見つめながらサクラは、はぐらかすように返した。
「さぁ、どうしようかしらぁ?」
「なにか、考えでもあるんですか?」
「そうねぇ――」
 応えを返そうとした、その時。
「あら、面白そうねぇ」
「なにかするの?」
 テスカトリポカとケツァコアトルの2人が、いつの間にか傍に来て楽しそうな声で言った。
 これにサクラは応える。
「トランプしません?」
「は?」
 声をあげたのはキョウ。
 そんな彼に、悪戯を誘うようにサクラは言った。
「何よ。クッキー持ってきてるくせに」
「……皆さん食べます?」
 これにテスカトリポカとケツァコアトルの2人は笑みを返す。
「ふふっ。貴女達、なんじゃもんじゃの所に行った子ね」
「楽しい勝負が出来たって聞いてるわ。あとで、みんなをお茶に誘いたいから、そこでみんなで楽しみましょう」
 そう言うと一端離れる。それを見計らいカチーナは言った。
「これより試練を受けて貰う」
「……試す……?」
 緊張した面持ちで聞き返すリチェルカーレに、カチーナは言った。
「人の悪行を見て貰う。見た後に、どうしたいかを応えて貰う」
「……人の悪行」
 カチーナの言葉に、シリウスは彼らをやや冷めた目で見る。
 皆がカチーナの言葉に身構える中、クリストフは自然体で言った。
「できれば試練はお手柔らかに」
「どう捉えるかは、汝ら次第だ」
 静かに返すカチーナに『ヨナ・ミューエ』は身体を強張らせる。
(歓迎されては、居ないようですね)
 緊張する彼女に『ベルトルド・レーヴェ』は言った。
「心配するな。いつものようにしていれば良い」
「むっ、いつものようにって、どういうことですか」
「今みたいにしていれば良い」
 あえて軽い口調でベルトルドは言うと、やわらかな声で続ける。
「それに、独りじゃないんだ。何かあれば、頼れば良いさ」
「……頼っちゃいますよ」
「そのためのパートナーだ」
 ベルトルドの言葉にヨナは苦笑する。
「なら、ベルトルドさんも頼って下さいね。パートナーなんですから」
「ああ、そのつもりだ」
 戯れ合うように言葉を交わす。
 そうして余計な力が抜けた所でカチーナは宣言した。
「これより試練を開始する」
 その言葉と共に、過去の再演が行われた。


(人の悪行ですか)
 カチーナの宣言と共に暗闇に落ちたリンファは、自らの過去が反射的に心に浮かぶ。
(悪行が、罪だとしたら、これから見せられるのは私の――)
 血の気が引くような想いと共に、断罪を待つ咎人のような心境で、その時を待つ。
 けれど暗闇が晴れた後に見せられたのは、己ではなく教団の闇だった。
(ここは――)
 ふと気付けば、どこか見なれた場所に居るのにリンファは気付いた。
 薬品の匂いが薄らと漂うそこには、自分と同じ服装をした者達と、小さな子供達が居た。
「こっちだ、来い!」
 乱暴な声で、制服を着た大人達が子供達を先導する。
 子供達は泣きながらも抵抗は無駄だと思っているのか、大人達の言葉に従っている。
(……そうか、ここは――)
 リンファは直感する。
 ここは教団の闇。その一端だと。
(他でもない教団の非道をエクソシストの私がどう受け取るか、それが試練という訳ですか)
 理解と共に怒声が耳に響いた。
「こいつ噛みやがった!」
「黙らせろ!」
 声に視線を向ければ、そこに居たのは小さな女の子を殴りつける大人達の姿。
「ステラ……!」
 今よりも小さく幼いが間違えるはずもない。
 隣に居るはずのステラに視線を向ける。
 ステラは身体を強張らせ涙をこらえ、目の前の光景から目を逸らせないでいた。
 カウベルのような音が響く。
「ぁ……」
 ステラは怯え、か細く声を漏らす。
 それはかつての恐怖。
「覚えておけ。これが合図だ」
 カウベルのような音と共に、誰とも知れない大人の1人が言った。
「この音が聞こえれば、仕置きをされると覚えていろ。お前のような獣には、言葉よりもこういう躾が必要だ」
「やだ……やだ! 痛いのはもうやだ!!」
 体と心を凍らせようとするステラ。
 けれどそれは、温かなぬくもりが溶かしてくれる。
「大丈夫」
「……マー」
 抱きしめてくれるリンファにステラは、しがみつくように抱き着く。
 そこで問い掛けの声が響いた。

 ――汝は過去を知り、何を想い、何を成す?

「いま見せて頂いた光景は、話には聞いていました。ですが正直……目の当たりにすると怒りを覚えます。けれど……」
 優しくステラを抱きしめながら、リンファは誓うように言った。
「私はそれでも人々のために剣を握ります。たとえその中に罪ある者達がいたとしても、私の力は糾弾の為には非ず。己の正義を貫くために在るからです」
 答えを口にした途端、過去の光景は消え失せる。
 代わりに現れたのは、無数の花々が広がる草原。
「ありがとう。答えてくれて」
 声に視線を向ければ、そこに居たのはテスカトリポカとケツァコアトル。
「皆もすぐに戻って来るわ。先にお茶でも飲みましょう」
 優しい声で2人を誘う。
「……マー?」
「折角のご厚意です。行きましょう」
 リンファはステラの手を繋ぎ、お茶会のテーブルに向かった。


 カチーナの宣言と共に暗闇に落ちたリチェルカーレとシリウスは、ふと気付けば、漂泊するような場所に居た。
 浮かび上がる白い部屋。
 沢山の機械と薬と刃物が凶器のように広がって、手術台のような所に小さな男の子が張り付けにされている。
(ここは……――)
 シリウスは知らず息を飲む。
 忘れようもないこの場所は、かつて自分が処置を受けた場所。
 いま目の前に曝されるはシリウスの過去。
 それを直感したリチェルカーレは、小さなシリウスの様子に声もなく悲鳴を上げる。
 彼女の前で拷問のような光景が続いた。
「痛みは感じているのか」
「壊れても代えはある」
「次は限界までショックを与えて……」
 シリウスにとって聞き覚えの有り過ぎる声と共に実験が繰り返される。
(ここは……今は……)
 かつての光景に、シリウスは一瞬現在がわからなくなる。
 過去こそが真実であり、現在が幸せな夢であるかのように、今の自分を否定しそうになる。
 ぐらりと視線が揺れる。
 悪夢に落ちるような感覚に囚われる寸前、リチェルカーレの涙が現在へと引き戻す。
(こんな風に、言われてきたの?)
 リチェルカーレは、幼いシリウスに大人達が投げつける言葉を聞き、涙を流す。
「どこに帰る?」
「だれが助けると?」
「生きているだけで、お前は人を殺す」
 心無い言葉をぶつけられる幼いシリウスの姿に、リチェルカーレは理解した。
 シリウスが味わった凄惨な過去。
 だから彼は今でも、触れることが怖いのだと。
 それを理解し、涙を流さずにはおられない。
「どうして――」
「――泣くな、リチェ」
 それは気遣う優しい声。
 過去からの苦しみよりも、今のリチェルカーレの悲しみを拭うことを求めるシリウスの声。
 視線を向ける。
 そこには過去に苦しむシリウスの蒼白な顔。
 リチェルカーレの肩を掴み、心配する彼の眼差しが見えた。
「シリウス」
 我に返ったリチェルカーレは、シリウスに縋りつく。
 温かなぬくもりに癒されるように、シリウスは自分を取り戻す。
 そして問い掛けの声が響いた。

 ――汝は過去を知り、何を想い、何を成す?

「今まで浄化師として、魔女への迫害の真相を知りました。古竜の慟哭を聞きました」
 リチェルカーレは答えを口にする。
「……シリウスだって……沢山、たくさん、酷いことを……だけど私は――」
 願うように言った。
「苦しくても悲しくても、誰かのために走れるひとを知っているから。私も、そうありたいと思います。
 誰もが支え合える。そんな未来を作るために」
 リチェルカーレの願いを繋ぐようにシリウスも答える。
「……人の生きる価値なんて、わかるはずもない」
 自分には分からない。けれど――
「だけど彼女が、世界は優しいと言うのなら。俺はそれを信じてみたい」
 答えと共に2人は元の場所に戻る。
 そこでお茶会に誘われた2人は仲間が戻るまで待ち続けた。


 過去の悪行がサクラとキョウの前に、次々に曝け出された。
 それは目を覆いたくなる凄惨と、吐き気を催す醜悪。
 だがそれは過去でしかない。
(まぁ、そういう事もあったでしょうね)
 静かに、キョウは目の前で行われている悪行の再演を見詰めている。
 いま目の前で行われているのなら、止めようとしただろう。
 犠牲となるのが子供であれば、熱くなっていたかもしれない。
 けれど目の前のこれは意味がない。
 現在を、そして未来を変えるなら、それは意味のあること。
 けれど変えられない過去に思うことは無い。
 それはサクラも同じ思いだ。
(ふーんっ)
 平然とサクラは目の前の光景を観賞する。
 特に思う所は無い。
 別に。それが?
 その程度。
 だって、知っている顔が1人もいないのだ。
 サクラにとって、他人はどうでもいい。
 けれど他人以外の誰かが困っているなら助ける。それだけだ。
 ある種の達観を抱く2人に問い掛けの声が響いた。

 ――汝は過去を知り、何を想い、何を成す?

「? どうするかって、不思議な事を言うのね」
 サクラは答える。
「今までとやる事は変わらないわよ。殺しあったり捕まえたり。たまに私情が入って好きにしたり。まだ続いているそれがあれば対処するわぁ。
 私達を使ってしたい事があるなら命令とかすれば良いじゃない。使われる方が楽」
「自分もサクラの考えと大差ないです」
 キョウも続いて答える。
「それにですね、恥ずかしながら自分達も悪い事をした事がありますので、例えばここで”悪い者は全員殺す”なんて言えば自分達は死ななければなりませんし。
 答えが気に入らないのでしたら申し訳ありません」
 2人が答えを口にすると、カチーナが現れ言った。
「汝らは、獄卒に向いているな」
 幼子を心配するような眼差しで続ける。
「心せよ。地獄は落ちるだけではない。巻き込んで引きずり込むこともある。それが近しい者であれば特に」
「……どういうこと?」
「謎かけですか?」
 2人の応えに、カチーナは苦笑しながら返す。
「お前達が地獄に落ちる時、共に落ちようとする者も居るかもしれんということだ。巻き込む気がなくとも、な」
「……そんな物好きいるかしら?」
「それは汝らのこれから次第よ」
 カチーナの言葉と共に、2人は元居た場所に戻る。
 するとテスカトリポカとケツァコアトルの2人がお茶会に誘う。
「皆が戻るまで、カードゲームでもしながらお茶会しましょう」
 2人に誘われ仲間が戻るまでカードゲームに興じる2人だった。


 殺戮と蹂躙の歴史が『ショーン・ハイド』と『レオノル・ペリエ』の前で再演される。
 それをショーンは静かに見つめていた。
(過去も現在も、人間の本質は変わらんな)
 ショーンにとって目の前で再演されている悪行は想像の範囲内。
 意外性など何もなく、事実の羅列を見ているだけに過ぎない。
 だから気になるのはレオノルのこと。
 気付かれないよう視線を移す。
 彼女は向き合うように、目の前の再演を見ていた。
 人の悪意に流されることなく自分を保ち、答えを導き出そうとしているように見える。
 ショーンは安堵する。
 それと共に、悪行の再演に視線を戻す。
(殺戮や蹂躙は別にどうってこ――)
 一歩引いた視点で見ていたショーンは、新たな再演に思考が止まる。
 繰り広げられるのは見知った人物の過去だった。
「シリウス!?」
 思わず声を上げる。
(実験体にされていたのはよく知っていた……)
 それは彼がアンデッドになる前の話。
 かつての教団でエージェントとして、そして二重スパイとして動いていた頃、教団の暗部を探り出会ったシリウス。
 断片でしか知らなかったシリウスが受けた所業に、ショーンは怒りを感じながらも努めて冷静であろうとする。
(ここまで酷い目に遭っていたとは……)
 目の前の光景を見せられ気付く。
「……なるほど。そうやって揺さぶる訳か」
 その理解は、レオノルとほぼ同じだった。
「なるほど」
 過去の再演にレオノルは思いを告げる。
「……すごいもんだね。歴史に伝わらない過去まで見られるなんて。
 でも私だったら……過去に絶望しても、正しくなるまで繰り返す」
 決意を告げるようなレオノルの言葉と共に、問い掛けの声が響いた。

 ――汝は過去を知り、何を想い、何を成す?

「人の本質は変わらない」
 ショーンは答える。
「だが人の常識は変えられる。その為に歴史があり、倫理がある。今の常識も180度変わるだろう」
 可能性と共に成しうることを語る。
「だが常識を変えることも、歴史を紡ぐことも時間が掛かる。俺に出来るのはその時間稼ぎをすることだけだ。
 正しき道を紡ぐ人間を守り、その人達が教訓を残せるようにな……」
 ショーンの答えを継ぐようにレオノルも答える。
「人って印象に左右される馬鹿な生き物なんだ。印象は偏見を生み、差別を齎す。魔女狩りに似たことも形を変えて繰り返されるだろうね」
 人の本質を語り、可能性を口にする。
「でも、人は捨てたものじゃない。愚鈍な人間でも時間を掛ければ蒙を啓くこともある。赤子がいつか立って歩き、大人となって育つようにね」
 最後に望みを告げる。
「私は彼等の教師となりたい。その為に常に正しいことを考え続けるだけだよ」
 答えと共に、2人は元居た場所に戻ってきた。
 戻ると2人は、お茶会に誘われる。
 レオノルが先にテーブルに向かい、ショーンが追いかけようとした時、カチーナが小さく言った。
「何か、気になることがあるのではないか?」
 これにショーンは一瞬、迷うような間を空けるが、頼みを告げた。
「ドクターには内密で人探しをしてくれ。彼女のお母様だ。恐らく天文学等に精通している人物だ」
「何故だ?」
 疑問を質すのではなく、ショーンに自分の気持ちを気づかせるようにカチーナは聞き返す。
 これにショーンは応えた。
「なに。余計なお節介だ」
 目元を優しくして続ける。
「ドクターからお母様の話を聞いた時、妙に寂しそうだったんでな。会わせたいんだ」
「えんどう豆の娘のことか」
「……えんどう……なんだ?」
 ショーンが聞き返すと、傍に来ていたテスカトリポカとケツァコアトルの2人が応えた。
「あら、あの子に会いたいの?」
「年に一度は、色々な種を貰いに来るの。今年は、まだだから、良ければ届けてあげて」
「それは、どういう……?」
 詳細を聞こうとすると、先にテーブルについていたレオノルに呼ばれ、テーブルに向かうショーンだった。


 炎が広がっていた。
 火を放つは人。
 燃えるのも人だった。
 業火に焼かれる人々の惨劇を、アリシアとクリストフの2人は見せられていた。
「魔女狩り……?」
 青ざめ呟くアリシアの言葉通り、いま再演される過去は魔女狩り。
 狂乱し、踊るように誰かを責め立て、生贄を求める炎を撒き散らす人々の様に、アリシアは封じていた自身の記憶を呼び覚ましていた。
 怖い、辛い――
 浮かび上がる記憶は苦痛しかなかった。
(どうして?)
 それは穏やかで幸せな日常があったからこその苦しみ。
(みんなあの時までは優しかった、のに……)
 苦しさに言葉さえ出てくれず。
 涙を零すことも出来ずに、身体を強張らせるしかなかった。けれど――
「アリシア」
 クリストフが苦しみを掬い取るように言葉を掛ける。
「大丈夫。今は、違う。俺も、みんなも居るんだ。だから、独りで苦しまないで」
「……クリス」
 涙が溢れる。
 クリストフの言葉と、繋いでくれた手の温かさに、心から安堵する。
「大丈夫、です……ありがとう、ございます」
 力なく、けれど精一杯の笑顔で、クリストフを安心させるようにアリシアは応えた。
 2人が見詰めあった、その時。問い掛けの声が響いた。

 ――汝は過去を知り、何を想い、何を成す?

 これにアリシアは答えた。
「私、は……」
 想いの全てを口にする。
「確かに怖かった。辛かった……」
 それは事実。けれど、それだけじゃない。
「でも村の人達を、憎めないんです」
 自らも人であると自覚し、それゆえの想いを語る。
「人は、弱いから……でもそれ以上に、強く優しい……。
 弱いだけで終わってしまう人も、います、けど――
 そうではない人も、たくさんいるのを、今の私は知って、います」
 アリシアは、クリストフを。そして多くの人々を思い浮かべ言った。
「だから、みんなの心が、強くなれるように、お手伝いが、できたらいいなって……そう、思います」
 アリシアの言葉を繋ぐようにクリストフも答えを口にする。
「最初から醜悪だった奴なんていない」
 信じるように続ける。
「陳腐なこと言うけど、赤ん坊って無垢だろ。両親が取り上げた赤ん坊を何人も見てる。平和な所で育った子供達はみんないい顔をしてる。きっと何もなければあんな醜悪にはならないだろう」
 クリストフは世の中が綺麗事ばかりじゃ無いのは知っている。
 いま見せられたような狂気に満ちた光景も話には聞いている。
 それでも実際に目の当たりにすれば、吐き気を催す程の醜悪さで、人の愚かさを思わずにはいられない。
 けれど望む。
「人はきっと過去を反省して次の世代に良い世の中を引き継いでいける。そういう能力を持ってると、俺は思ってますよ」
 2人が答えを口にすると同時に元居た場所に戻る。
 そこでお茶会に誘われた2人は仲間が戻るまで待ち続けた。


 史実を、ヨナとベルトルドは見せ続けられた。
 それはアースガルズの歴史で行われてきた様々な差別と迫害。
 ロスト・アモール。魔女狩り。八百万の神や竜族への侵害。
 幾つもの惨劇を目の当たりにさせられる。
 知識として、それらは知っていた。
 けれどあくまでも知識でしかない。
 目の前で繰り広げられる過去の再演は、否応なしに血肉を伴って実感させた。
 これが人の成して来たこと。
 積悪の群れこそが人であると言わんばかりに、過去の再演は続いていた。
 目を背けたくなる光景に、暗澹とした感情が湧きあがり身体は震える。
 ヨナは言葉もなく震え続けるしかなかった。
 独りであれば。
 けれど彼女は、独りじゃない。
「……ベルトルドさん」
 肩に手を置き、そのまま体を寄せ合う。
(ベルトルドさんも震えている……)
 それでもベルトルドは、ヨナを安心させるように耐えている。
(ああ、そうですね……私は……私達は、独りじゃない)
 その想いと共に問い掛けの声が響いた。

 ――汝は過去を知り、何を想い、何を成す?

 すぐには答えられなかった。
 重く長い沈黙を経て、ゆっくり息を吐き想いを告げる。
「人間が愚かだった、間違えていた。だから、これから善き人間だけの世界にするという約束は……残念ながらできません。独善から生まれた独裁はまた別の悲劇を生みます」
 今まで生きてきた中で得た実感を伴いヨナは続ける。
「わ、私は……――」
 浄化師としてでなくヨナ・ミューエという1人の人間として答える。
「人々を救い、かの神との戦いから世界を解放する大義を掲げるならば――
 たとえ本意ではなくとも、どんな人間であれ手を差し伸べようと思っています。いえ、人だけではなく、竜や八百万の神や魔女でも……アレイスター・エリファスでも」
 自分が出来ることは、目の前の現実に全力を尽くすこと。
 自らの在り様を意識し、答えを口にした。
「どんな結果になるかは分かりません。しかし今は、それが私にできる事です」
 不安と共に想いを口にする。
 正しさなんて分からない。自分の出来ることをするだけ。
 そんな彼女の言葉を認めるようにベルトルドも答えを口にする。
「俺も忘れるなよ」
 言葉を重ね、続ける。
「過去を変えられはしないが、現状への後始末は何としてもつけて行く。今はこれぐらいしか言えないが、どうか頼む」
 いつの間にか震えは止まっていた。
 それに気付くと同時に2人は元居た場所に戻る。
 するとテスカトリポカとケツァコアトルの2人がいつの間にか傍に居て、お茶会に誘う。
「お茶にしましょう」
 穏やかな2人の言葉に、ヨナとベルトルドは力を抜くように息をつく。
「折角ですから、ご相伴にあずかりましょうか」
「ああ、そうしよう」
 2人で伴い、しばしお茶会を楽しむのだった。


 繰り返される独善と独裁の歴史を『エフド・ジャーファル』と『ラファエラ・デル・セニオ』は見せられていた。
 始まりに無法があった。
 それは弱肉強食の理であり、無邪気な悪意。
 虐げられ食い物にされる人々。
 嘆きは積み重なり、正すべきだという声は大きくなっていく。
 ゆえに最初の想いは善であったのだろう。
 無法を律し、善を成すための象徴を、権威を人々は求め、突出した誰かがそれを担う。
 英雄。あるいは王。無法を律する確かな物はあるのだという保障を掲げ、人に法を敷く。
 それは善である。それは正しい。
 その理に、人は溺れていった。
 無法を抑えるための権威が善悪を思いのままに決めて人を苦しめる。
 それに怒り革命家が勝利しても、その勢力が新たな権威として独善に陥る。
 無限の螺旋。途切れぬ善悪の裏返り。
 その積み重ねである歴史を目の当たりにし、エフドとラファエラは黙していた。
 言葉はなく待つように黙する。
 そこに問い掛けの声が響いた。

 ――汝は過去を知り、何を想い、何を成す?

「やっと本題か。悲観的な話だけ集めて賢くなった気になってる、ガキのカウンセリングかと思ったぜ」
 皮肉げなエフドの言葉。
 けれど先を促すように応えは返ってこない。
 エフドは肩を竦めるようにして己が答えを口にした。
「俺はただ生きてるだけさ。そんなのにせめてできるのは、味方に良くしてやって、できる分野で戦うぐらいだ。
 それがマズけりゃ、蜥蜴の尻尾にされるだけだろ」
 独善と独裁の王さまになろうとは思わない。
 自分は自分。王ならざる誰かとして、1人の人間として誰かと関わり生きていく。
 その時その時で自分が出来ることを。
 正しいこともあるだろう。間違える時もあるだろう。
 間違えたなら、報いを受けるはず。
 応報の理をエフドは口にする。
「やれる奴がやれる事をやってりゃいい。俺にそれ以上のことはできんし、できもしないことを求められたくもないからだ。
 その程度の事もわからん奴にはできる抵抗はする。人間の力に期待しすぎちゃいかん」
 人としてエフドは答えを口にした。
 同じようにラファエラも答えを語る。
「力があれば何してもいいと思ってる奴らを許さない。中庸ぶってのらくらした態度で、ゴロツキどもを利することはしたくない」
 抗う意志をラファエラは口にする。
 何もしないことを中立だと嘯く事もなく、自らの意思で動くことこそ望むところだと示した。
 それはひとつ間違えれば独善に行き着く可能性を内包している。
 だからこそラファエラは言った。
「天使様、私、外道どもを殺すのが好きなんだけど、それは私が外道じゃないって事にならないわ。大事なのは堕ちた時に責任取る事よね」
 他人と世界だけでなく、自分自身にすら抗う意志を望んだ。
「私に呪いを掛けれる? 私を監視して、堕ちたら処刑できるような」
 この言葉にカチーナが現れ言った。
「娘よ。その必要はない」
 カチーナは2人に視線を合わせ告げる。
「汝らの業の報いは、死すれば訪れる。善なる者は天の国へ。悪なる者は地の獄に。堕ちれば必ず報いは受ける」
「……それって、地獄に落ちるってこと?」
「そうだ」
 カチーナの応えに、エフドは皮肉げに言った。
「宗教家の戯言かと思ったが、本当にあるんだな」
「然り。これは最初に創られた人々に伝えられたこと。だが、忘れ去られたがな」
 そこまで言うと、カチーナは皮肉げな笑みを浮かべ言った。
「処刑台に昇っても、自分が殺されるその時まで、自分だけは助かると思うのが人間だ」
 そしてラファエラに視線を合わせ続ける。
「娘よ、汝は死後、地獄があることを知った。私が汝に与えられる呪いはこれだけだ。
 死のその時、誇りを持って逝くか。それとも無様に嘆くか。堕ちた先にも下はある。願わくば、誇りを掴まんことを」
 カチーナの言葉と共に2人は元居た場所に戻る。
 そこでお茶会に誘われた2人は仲間が戻るまで待ち続けた。


 過去の再演。
 その只中に『クォンタム・クワトロシリカ』と『メルキオス・ディーツ』は居た。
 2人が見せられているのは他人の過去ではない。
 自らの過去を見せられていた。
(ここは……)
 周囲の全てがおぼろげな中、クォンタムは立ち尽くす。
 まるで悪夢の中にあるように、奇妙な予感と確信がある。
「声出さないでね……見つかったら殺されてしまう」
 抑えた小さな声が聞こえる。
(今の、声……)
 鼓動が脈打つ。
 気付けば、いつの間にか何人もの中に居る。けれど――
(人の顔がはっきりしない……)
 誰も彼も顔が分からない。
 おぼろげなまま、先ほどの声の主に視線を向ける。
 それは男の子だった。
 声を掛けようとして、叶わない。
 いつの間にか自分の口を手で押さえていた。
(違う)
 本当に手で覆いたかったのは口ではなく耳。
 その自覚が音を再現する。
 火が燃えて、家が壊れる音。
 何かの怒声。
 何かが嘲笑う声。
 怒声と共に何かへ向かって行く者の声。
 べしゃりと水が土にぶち撒けられる音。
 聞きたくないと耳を塞ごうとし、先程の男の子の声が先に聞こえてくる。
「――、これを持って逃げるんだ……此処が見つかるのも時間の問題みたい」
 指さしながら男の子は言う。
 それは隠れている地下室の奥。
 願うように言葉は続いた。
「この奥から地上に出れる。さぁ、お行き。僕の愛しい子、君の道行きに幸あれ」
 それが封じた記憶の扉を開ける。
(私……私は――
 沢山の屍を踏み台にして生きている)
 それはどうしようもない、罪の自覚。
(あぁ……あぁ――)
 懺悔するように言葉は溢れた。
「……屍の山を築く私の様な者は、生きている事が罪なのか?」
 呟きながら、託された物を思い出す。
(持って逃げろと渡された物は養父殿に預けた筈)
 使命を抱くように思い続けた。
 彼女と同じようにメルキオスも過去を見せられる。
(小さい頃の僕だ)
 過去の自分をメルキオスは見詰める。
 小さな緑地で子山羊と戯れ、武器や楽器の扱い方、歌を習い、いずれ一族の誇りを背負う輝かしい未来を純粋に見てた……その世界が一変する。
 渇きと飢え。
 簒奪者たる、人を人と思わない醜悪な者達が、メルキオスだけでなく同じ境遇の者達から奪っていく。
(この世は結局、弱肉強食だ)
 奪われて得たのは、そんな達観。けれど――
「……クォン?」
 パートナーの姿が目に留まり、冷めた達観は消し飛ぶ。
 代わりに浮かぶのは怒り。
 嘆きに囚われたクォンタムを見て浮かぶ怒りだった。
 それを自覚すると同時に問い掛けの声が響いた。

 ――汝は過去を知り、何を想い、何を成す?

 これにメルキオスは嘲笑で応えた。
「えー……つまり? 過去の人間が悪い奴ばっかだから、今を生きてる僕らも同じだろうから死ねってこと?」
 嘲り堕とすように、挑むような声で言った。
「なぁんだ、守護天使っていうからどんなのかと思ったら、従順じゃない商品は死ねって言った奴隷商人共と同じかー。がっかりだなー」
 メルキオスの言葉と共にカチーナは現れ、静かに言った。
「再び問おう。汝のそれは、誰のための怒りか?」
「……なに言ってんの?」
 韜晦するように聞き返すメルキオスにカチーナは続ける。
「怒りも嘲りも、試練の答えだというなら構わない。だが、その根源を見よ。お前の願いはそこにしかない」
 迂遠な応えを口にするカチーナに、メルキオスは一瞬クォンタムを見詰め、いつもの漂々とした口調で言った。
「人のトラウマ抉るのは試練とは言わないでしょ。忘却はある種人間の防衛機構だってのに」
「忘れたままでは届かぬ想いもある。なにより、それをあの娘は望むのか?」
「……アンタ、お節介って言われない?」
「元は人間なのでな。それより――」
 カチーナはクォンタムを見詰めたあと続ける。
「スレイマンという名を覚えておけ。何かあれば、私からテスカトリポカ様とケツァコアトル様に口添えしておく」
「……どういうこと?」
「それは私が口にするべき事ではない。あの娘次第だ。その時どうするかは、汝が決めろ」
 カチーナの言葉と共に2人は元居た場所に戻る。
 そこでお茶会に誘われた2人は仲間の居るテーブルに。

 そうして皆は、お茶会で休み、今度は逆に問い掛けをしていった。


「貴方達以外の、天使や八百万についてお聞きしても良いですか?」
「構わん」
 カチーナ達の許可を得てリンファは問う。
「貴方達以外には、どこにどれほど居られるのですか?」
 これにカチーナ達は応える。
「守護天使は各国ごとに1人居る。八百万の神々は、それぞれの国に数多く居られたが、アークソサエティ周辺では隠れられている」
「それはアシッドに汚染される事があるからですか?」
「守護天使や植物系の八百万の神はともかく、動物系の八百万の神は感染してしまうわね」
 テスカトリポカが応える。
「だから守護天使の力が弱い地域だと、結界に籠っている子達が多いわ」
「そうなのですか……では、続けてお聞きしますが、そうした中で、人類に敵対する者も居るのでしょうか?」
「人次第だ」
 カチーナは静かに言った。
「悪行を成せば成すほど、その可能性は近付くと知れ。守護天使は、今はまだそのようなことは無い。
 だがかつて、八百万の神の中には、憎悪で人を殺してしまわれた方もおられる。
 ニホンのキョウトの、玉藻様のようにな」
「それは……」
 アリシアが驚いたように声を上げる。
 少し前の指令で、ニホンのキョウトの初詣に参加し、言葉を交わした者達は同じように驚く。
「どういうことなんでしょうか?」
 ヨナの問い掛けにケツァコアトルが返す。
「あの子を崇めていた人々を皆殺しにされたの。愛していた子達を殺されたあの子は、復讐で殺し尽くそうとして、逆に殺され祟り神になったの。
 それが600年ほど前の話よ。今は私達の妹の、なんじゃもんじゃ達が慰撫し、記憶を封じ、守護神として祭っているわ」
 言葉を無くす浄化師達にケツァコアトルは続ける。
「そうした例があるから、人と絶対に敵対しないとは言えないわ。
 でも私達は、人に崇められて神となった者。
 だから人が愛しいの。余程のことがなければ敵対することは無いわ」
 応えを聞いた後、少し間を空けて質問は続いた。
「守護天使と八百万の神が国を守ると聞きました。では、アークソサエティは?」
 リチェルカーレの問い掛けに、カチーナは応える。
「アークソサエティを担当していた『彼女』は、自由を奪われ支配されている。
 それが原因で、アークソサエティは世界で最も危険な場所になっているのだ」
 カチーナの応えに皆は口々に問い掛けた。
「気になることがひとつあってさ」
 レオノルが問い掛ける。
「アレイスターが天使を使役してたんだけど、ガッチガチに拘束されてた。
 その天使、神方術使ってたのも見たんだけど……君達の知り合いで行方不明者いない?」
「その天使が、アークソサエティを担当している『彼女』だ」
 この応えを受けリチェルカーレは尋ねる。
「天使様が支配されているというのは、アレイスターさんが原因なんでしょうか?」
「そうだ。アレイスターは、自らが造り出した魔導書である『法の書』。そのひとつ『アルマンダル』を使い支配している」
「それは、他の守護天使の方達にも効果があるのですか?」
 魔術師としての興味もあり尋ねるヨナにカチーナは返す。
「私達とて、アークソサエティに踏み込めば支配されかねん。それゆえ天使では助けることが出来ぬのだ」
 これを聞きベルトルドが尋ねる。
「……つまりアークソサエティの天使は、アレイスターに捕まっているのか?」
「そうだ。それにより守護天使の力の幾らかをアレイスターは使える」
「守護天使の力を、ですか?」
 少し考え込んだ後、ヨナは尋ねる。
「もしかすると守護天使の加護がないからアークソサエティの王族や教団は、おかしくなっているのですか?
 あるいは、アレイスターが守護天使の力を使うことで、そうしている、とか?」
「逆だ。元々おかしいから、今のような状況になっている」
 頭痛を堪えるような口調でカチーナは返す。
「アレイスターは今まで生まれてきた人間の中で最高の天才だ。
 だが、それだけだ。奴1人の力だけで、今の状況ができたわけではない。
 奴を利用して肥え太ろうとした者達の協力がなければ無理だ。
 それをしたのが、アークソサエティの王族や貴族。そして教団中枢だ」
「そいつらに痛い目見せればいいわけだ。なら――」
 メルキオスは言った。
「アレイスターが操ってるミズカルズ地方の守護天使は、どうしたら助けられる?」
「女神ダヌ様に協力する必要がある」
 カチーナは応える。
「『彼女』の解放に向け、力を溜めるため眠りについておられる。あの御方と接触し、協力を仰げ」
 これにリチェルカーレが尋ねる。
「女神ダヌは何処に?」
「虚栄の孤島にある試練の塔を制覇せよ。そうすれば分かる」
 カチーナの応えに考え込むリチェルカーレの隣で、シリウスが問い掛けた。
「守護天使は、創造神の配下だろう。神が世界を見捨てたというのに、何故お前たちは国を守る。自分の意思か、それとも何か制約が?」
「あの御方は世界を見捨てておられぬ。逆だ」
 カチーナは応える。
「今のまま進めば、数百年で人が世界を食い潰す。人を絶滅させる決定を下されたのは、それが理由のひとつだ。
 そして私達は、力を与えられたが、ひとつの制約を除き自由を認めて頂いている」
「ひとつの制約?」
 シリウスの問い掛けに、カチーナは眉を寄せ返した。
「アークソサエティの守護天使である『彼女』の名を口にしないことだ。アレイスター、あの愚か者には、特にな」
 問答は続いていく。
「ベリアルになってしまった人を……元に戻す方法は、ないのでしょうか……」
 アリシアの問い掛けに、カチーナは悼むような眼差しを向け返す。
「基本的には、ない。完全にべリアルになる前なら、どうにかなるかもしれん。だが一度なれば、魂を取り出し他の肉体に移しでもしないと、無理であろう」
 カチーナの応えに悲しむアリシアをクリストフは慰めると、カチーナに質問する。
「ヨハネの使徒って一体何者? もしかしたら、機械都市で作られてたりする?」
「今は作れぬが、未来では作れるだろう」
「どういうこと?」
 クリストフの問い掛けにカチーナは返す。
「あれらは人が未来で作る殺戮兵器。それを予知された創造神が創られたものだ。
 ゆえに機械都市で今は作れぬが、いずれ作り得る。
 だが今は、それよりも悍ましい物を作ろうとしているがな」
 これを聞きエフドが問い掛ける。
「『最強』のトールが機械都市で面白い事が起こると言っていた。何事だ」
「アークソサエティと戦争をしようとする者達が居る。そこでは、八百万の神を生贄にする『神格爆弾』の計画もある。それにトールというべリアルは関わっているのだ」
「……大事だな。対抗できる戦力が欲しい所だが……神々の為の散髪等美容サービスはどうです?」
 エフドの提案にケツァコアトルが返した。
「あら嬉しい。でもごめんなさい。私達の枝とかは、それぞれが守る者達の結界を維持するのに使われているから、分けてあげられないの。
 でもニホンに居る妹の、なんじゃもんじゃが造った富士樹海迷宮になら、余分があると思うわ。そこに行けば、手に入るかもしれないわね」
「なるほど……では、最後にひとつ」
 エフドは居住まいを正し尋ねた。
「教皇国家と教団の根本的な問題について意見を伺いたい。一浄化師はその中でどうあるべきか」
「見て見ぬふりをせず、誰かと協力し立ち向かうべきだ」
 カチーナは浄化師達を見詰め応える。
「お前達に見せてきたことは、かつて誰かが見た事実だ。
 だが、全てはそこで終わった。
 世界とはそういう物だという諦めと、世界は変わらぬという安堵が、未来へと歩む意志を消したのだ。
 それが教皇国家と教団の根本的な問題、すなわち停滞だ。
 予言しよう。創造神の御方に殺されずとも、いずれ人は自ら滅ぶ。
 そうならないためにも、自分以外の誰かと共に、未来を目指せ」
 カチーナの言葉に、皆は静かになる。
 そしてキョウとサクラの2人は言った。
「自分たちに何かさせたいことはありませんか? させたい事があるならしてみたいです」
「その方が教団の指令より面白そう」
 これにテスカトリポカとケツァコアトルが応えた。
「お友達になって欲しいわ」
「そうすれば、助けて欲しい時に頼めるし」
「助けてあげたい時に、助けてあげられるから」
「だから、お友達になって欲しいの。私達八百万だけでなく、カチーナのような守護天使も、他の誰かとも」
 これを聞いたふたりは、お互い見合わせると、苦笑するように応えた。
「なら、また遊びしょう」
「そうねぇ。さっきカードゲームで負けちゃったし、今度は勝ちたいわぁ」
「カチーナさんも、どうですか?」
「……私は」
 困ったように眉を寄せるカチーナ。
 そんなカチーナも引き込んで、しばし穏やかな時を過ごす浄化師だった。

 こうしてカチーナからの試練を終わらせ教団へと戻る。
 その帰り際、カチーナはリンファにのみ聞こえる声で言った。
「汝は、己が罪と向き合いたいのか?」
 これにリンファは振り返ることが出来ず、息を飲む。
「……っ」
 過去が浮かび上がってくる。

『お姉ちゃん……どうして……?』

「……次に機会があれば、その悪に私を向き合わせていただけますか?」
「汝が望むならば」
 リンファの願いに、カチーナは応えた。

 それぞれに思う所がある中、指令を終わらせる浄化師達だった。


【森国】守護天使の試練
(執筆:春夏秋冬 GM)



*** 活躍者 ***


該当者なし




作戦掲示板

[1] エノク・アゼル 2020/01/04-00:00

ここは、本指令の作戦会議などを行う場だ。
まずは、参加する仲間へ挨拶し、コミュニケーションを取るのが良いだろう。  
 

[9] サク・ニムラサ 2020/01/12-23:50

悪魔祓いのサクラと陰陽師のキョウよ。
試練ねぇ。こういう場をもらえたこと自体に感謝した方が良いのかしら。
皆さんよろしく。  
 

[8] タオ・リンファ 2020/01/11-14:13

断罪者のタオ・リンファ、喰人は拷問官のステラ・ノーチェインです。
アークソサエティでは初めての指令となりますが、よろしくお願いします。

試練……いえ、例えどのようなものであったとしても……
質問は……そうですね、他の天使や神達のことを訊いてみようかと。
その中に人類と敵対する存在がいるのかなども気になりますからね。  
 

[7] エフド・ジャーファル 2020/01/11-01:51

墓守のエフドと、悪魔祓いのラファエラだ。

何を聞くかねぇ。機械都市の事か?“最強”のトールが何か言ってやがったな。
あとは、散髪・剪定サービスはどうですか?とか。黒炎魔喰器のためにな。  
 

[6] リチェルカーレ・リモージュ 2020/01/11-00:43

リチェルカーレです。パートナーはシリウス。
どうぞよろしくお願いします。

メフィストさん、八百万の神様や守護天使様ともお知り合いだったなんて、すごいですね。
試練は少し怖いですが、頑張ります。  
 

[5] ショーン・ハイド 2020/01/11-00:38

悪魔祓いのショーンと狂信者のドクター•ペリエだ。
よろしく頼む。
試練についてはともかくとして……アルフ聖樹森……ドクターが言っていたのが間違いなければ……(ぶつぶつ
んん(咳  
 

[4] クリストフ・フォンシラー 2020/01/11-00:30

陰陽師のアリシアと断罪者のクリストフだよ。よろしくどうぞ。

試練の内容がアリシアのトラウマになりそうで心配ではあるんだけど、
まあ、頑張るしか無い、か。

一つでも多く情報が得られるよう頑張るよ。  
 

[3] クォンタム・クワトロシリカ 2020/01/09-22:01

断罪者のクォンタムと魔性憑きのメルキオスだ。よろしく頼む。

……記憶はないのだが、ここで生まれ、育った、のだと思う。
何故、わすれてしまったのだろうか…

まぁ、兎に角。
守護天使に会って、試練の答えが守護天使に副うものなら、色々情報提供や質問できる、と。

各自、どのような質問をするか、宣言しておいた方がよいだろうか。  
 

[2] ヨナ・ミューエ 2020/01/09-20:54

狂信者ヨナ・ミューエおよび断罪者ベルトルド・レーヴェ。よろしくお願いします。

私はここの生まれではありませんが、私の祖母がこの地で暮らしていたと聞いています。
それでもどこか懐かしいと感じてしまうのは気のせいでしょうか。

…と、私の話はともかくとして。
まずは守護天使からの試練を受けないといけないのですね。
天使と呼ばれる方に思いのほか簡単にお会いできて驚きましたが、これもメフィストさんのお陰なのでしょうね。
試練は緊張しますが、うまく回答できるよう努力します。