【甘菓】夜の砂漠で、星見をしよう!
簡単 | すべて
6/8名
【甘菓】夜の砂漠で、星見をしよう! 情報
担当 夜月天音 GM
タイプ ショート
ジャンル イベント
条件 すべて
難易度 簡単
報酬 少し
相談期間 5 日
公開日 2020-02-18 00:00:00
出発日 2020-02-26 00:00:00
帰還日 2020-03-05



~ プロローグ ~

 夕方のムスペルヘイム地方、砂漠の街サンディスタム、タビ砂漠の入り口。

「初めまして、僕は『アバサ』! お客さんは星とか好き? 砂漠から見る星は凄く綺麗なんだよ! 特にオーアシスから見る星なんか、空だけでじゃなく水に映り込んでる星も綺麗で贅沢な気分になるよ! 流れ星も見られるはずだから、お願い事をしてもいいよ!」
 15歳の地元の少年が人懐こい笑顔で、通りかかる人達に声を掛けていた。
「しかも! 今夜は『砂蛍(すなぼたる)』が飛ぶんだ。その生き物は、お尻をほのかに光らせながらちらちらと飛び回る虫だよ。小さくて、可愛いくて、危なくないよ。砂漠って凄いよね。色んな生き物がいるんだから」
 アバサは、興奮気味に砂漠の素敵さを語った。
「少し前に会った浄化師さんが言っていたけど、今日はバレンタインだとか、星見にぴったりだよ! 星見を楽しんだり、食べ物とか飲み物を持ち込んでもいいし、騒いだっていいよ!」
 街で仕入れたらしい情報も使ってアバサは、砂漠観光に興味を持って貰おうとする。
「でも、夜の砂漠はすごく寒いから対策してね。一応僕の方でも毛布とか持っては行くけど」
 大事な注意事項で、砂漠観光をおしまいにした。
「興味があるなら案内するよ? どうする?」
 改めて、アバサは訊ねた。
 そして日没後、興味を抱いた者達を連れて、オーアシスへ向かった。
 夜の空とオーアシスの水面に満天の星が輝き、時に流れ星が駆けるだろう。


~ 解説 ~

 夜のオーアシスで、星空や砂蛍と共にバレンタインのひとときを楽しんで下さい。
 日中と日没後の寒暖差が激しいため、アバサが持参する毛布などを利用するなどして、体には気を付けて下さい。

【砂蛍について】
 外見や特徴など普通の蛍と同じです。ただ生息場所が砂漠であるという事だけです。

【活動について】
 流れ星が見られる星見や砂蛍との交流や商売をしたりなど自由に過ごす事が可能です。

【NPCについて】
・アバサ
15歳の陽気で人懐こい地元の少年。砂漠の案内を生業としています。タビ砂漠を面白い所であると気に入ってもいます。
自分も楽しみつつ参加者のために動き回ります。

※交流したい住民や浄化師がいましたら、プランに記載をお願いします。ただし、公式のNPCとの交流は不可能となります。
例)星座をよく知る20歳の地元の女性、観光気分の15歳の男性浄化師


~ ゲームマスターより ~

 プロローグを見て頂き、大変ありがとうございます。
 星見をしたり砂蛍と交流したりと、夜の砂漠でバレンタインのひとときを満喫して下さい。





◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇

鈴理・あおい イザーク・デューラー
女性 / 人間 / 人形遣い 男性 / 生成 / 魔性憑き
(こっそりバレンタインのチョコを持参)
一応プロポーズされたのですから、バレンタインに何もないのも…と思ったのですが
考えてみれば恋人らしい事などしたことないのに、イザークさんはどう思うでしょうか(不安)

上空も綺麗ですね、地上の砂蛍とどちらを見たらいいか悩みますね


バレてる…
い、いえ待ってください!
やはり願い事は「皆が穏やかに暮らせるように」で結構です!

自分が勇気をだせば成し遂げられることを、流れ星に頼むのはもったいないです
(チョコを手渡して)
願っても簡単には果たせない人の為に奇跡は使われるべきです
すみません真面目に答えてしまって…(あぁもう自分のばか)

…どうして嬉しそうに笑うんですか?
リチェルカーレ・リモージュ シリウス・セイアッド
女性 / 人間 / 陰陽師 男性 / ヴァンピール / 断罪者
毛布をありがとうと アバサくんににこり
星が綺麗
砂蛍もとても楽しみにしてきたの 早く見たいわ
ね、シリウス

空と水面の星に歓声
星空に浮いているよう …っくしゅん!
肩にかけられた毛布に笑顔
大丈夫よ
シリウスの手の方が冷たいもの
彼の手を摑まえる
ふたりで入れるわ
どうして?風邪ひいちゃう

えいっと彼に飛びつく
呆然とした翡翠の目に
嫌 どかない
シリウスが わたしを大事に思ってくれているのは知ってる
だから苦しい顔をするのも
でも わたしはシリウスの側にいたいの
あなたが苦しいなら 少しでも力になりたい
…それは迷惑? 
勇気を出して 彼の唇にキスを落とす
…周りにこれだけ 流れ星があるんだもの
願い事もきっと叶うって思わない?
泣き出しそうな顔で笑う
ショーン・ハイド レオノル・ペリエ
男性 / アンデッド / 悪魔祓い 女性 / エレメンツ / 狂信者
何もこんな寒い中無理せずとも…
私に見せたいものとは?
ドクターの、お母様…
ドクターが語る話の内容に開いた口が塞がらない
…何というか…その…
ドクターもご性別のせいで苦労なさったと聞きましたし…酷い話だとしか言えませんが…他に何か言えれば…
突然の提案に思わず唖然
何で星に私の名前を!?
あぁ。そういう理由で…
本当にドクターは寂しがり屋だ
仮に私が死んでも、いつか寂しさは紛れますよ
ドクターはお強い方ですし
私がいなくても…ぐぁっ!?
…また抱き着きますか…
ずっと一緒にいて欲しい、か…
…声が、震えてる…?
泣いているのか…珍しい
当然です
私は貴女のパートナーですから
何があっても必ずお傍におります
…貴女が、望む限り
アリシア・ムーンライト クリストフ・フォンシラー
女性 / 人間 / 陰陽師 男性 / アンデッド / 断罪者
砂漠に、蛍……不思議な光景ですね…
星も蛍も、とてもきれい…
アバサくんには、感謝しなきゃ、ですね
こんなに素敵な場所に、案内してくれて…

はい、空に星が、空中に砂蛍が、水に両方が映ってて
まるで、星の中に浮かんでるような、気分です

アバサくんから借りた毛布にくるまってはいるけれど
少し寒気を感じてぶるっと震える

少しだけ、寒いですけど、大丈夫で…え…?

言い終わらないうちにくるまれて
ど、どうしよう…心臓の音がうるさくて、壊れてしまいそうで
でも、心地よくてそっと寄りかかる

クリスのお家に?
また遊びに行っても、いいんですか?
…違う?
それって…

言われた意味を理解して赤くなりつつも頷く

はい…私、あのお家、大好きですから
ヴォルフラム・マカミ カグヤ・ミツルギ
男性 / ライカンスロープ / 拷問官 女性 / 人間 / 陰陽師
一応、毛布は持ってきたけど…寒い様ならもう一枚毛布借りよう
「カグちゃん、毛布一緒に包まろう」
後ろから僕が抱き着けば僕がトランスしなくても暖かいでしょ?
僕は膝建てるより胡坐掻いた方がくっつくから暖かいかな

「それにしても、此処は昼間との温度差がすごいねぇ」
砂漠は初めて来たけど、温度差がすごいから体調崩しそうだね
あ、うん、飲む。
「カグちゃんが淹れたんじゃないんだ?」
うっわ、甘!でも美味しいね
これもお供は辛くてもいいかもしれない
…室長と言えば、あの人コーヒーや紅茶にミルクと砂糖沢山入れて飲むけど
食事してる所、あまり見ないよね
チョコとかのお菓子はよく食べてるけど…

うん、帰ったら室長の食事改善しないとね!
サク・ニムラサ キョウ・ニムラサ
女性 / ヴァンピール / 悪魔祓い 男性 / ヴァンピール / 陰陽師
サクラ:この間星を見たときは散々だったらしいわね。
キョウ:らしいって何ですが。散々だったの間違いですよ。
サクラ:キョウヤしか見てないから忘れてしまっただけよ。
キョウ:そんな事言ってもダメですー。あーココア美味しい。
サクラ:もう。

【行動】
サクラ
寒い?まだまだお子様ね。
中途半端に暖かいから寒くなるのよ。
私の事もなめているのかしら?(キョウの頬に手をあてる)
そんなにはしゃがないで。
あっココア美味しい

キョウ
にしても夜の砂漠は寒いですね。ちょっとなめてました。
珍しく頭良い事言ってますね。
え?冷たっ!中途半端はだめだからってそっちに(冷たい方に)合わせちゃだめでしょう!
ほらココア飲んで飲んで!


~ リザルトノベル ~

●1章 愛しさを形に
 夜のムスペルヘイム地方、砂漠の街サンディスタム、タビ砂漠のオーアシス。

「上空も綺麗で、地上の砂蛍とどちらを見たらいいか悩みますね」
 アバサから毛布を借りる『鈴理・あおい』は、幻想的な光景に感嘆する。
「ありがとう!」
 アバサは嬉しそうに笑った。
「ところで、砂蛍をよく見える所を教えて貰えないか」
 借りた毛布を羽織ってから『イザーク・デューラー』が訊ねた。
「いいよ! 案内してあげる!」
 と言って、アバサは案内を始めた。

「砂蛍が寄って来る方法はあるのか」
 目的地に向かう道々、イザークは砂蛍について訊ねた。
「あるよ! 星を見るには無い方がいいんだけど、明かりを使うんだよ! そうしたら仲間だと勘違いして沢山集まるよ! 良かったら、貸してあげる!」
 アバサは、嬉々と教えた。
(一応プロポーズされたのですから、バレンタインに何もないのも……と思いましたが、考えてみれば恋人らしい事などしたことないのに、イザークさんはどう思うでしょうか)
 二人の後ろを歩くあおいは、こっそり持って来たチョコを不安げに見る。
「到着! 素敵な夜を楽しんでね!」
 そんな中アバサは立ち止まり、皆を案内する時に使った明かりを差し出した。
「助かる」
 イザークはありがたく明かりを受け取り、毛布を配りに行くアバサを見送った。
「あおい」
 案内の間中喋らぬあおいが気になり、イザークは振り返った。
「ど、どうしました、イザークさん?」
 我に返ったあおいはチョコを慌てて隠し、顔を上げた。
(今、見えたのはもしや……)
 一瞬だけだが、あおいが何かを隠すのが見えた。
「早速、教えられた通り……」
 だが、イザークは追求せず明かりを灯した。
「凄い集まって来ますね!」
 瞬間、周囲の砂蛍が集結し、あおい達の周りをお尻を光らせながら飛び回る。
「そう言えば、流れ星もあるんだっけ、何か願い事もしないとな……バレンタインにあおいからチョ……」
 イザークは砂蛍と戯れるあおいを眺めつつ、願い事を言おうとする。
「イザークさん!」
 瞬間、内容を察したあおいが遮った。
(……バレてる)
 明らかに戸惑いながら。
「その隠し持ってるのはうぬぼれでなければチョコだと思うんだが? 貰えないのなら流れ星にでも願おうかと」
 イザークは、先程見えたチョコの隠し場所を示しながら言った。
「待ってください!」
 あおいは大きい声で止めた。
「願い事は皆が穏やかに暮らせるようにで結構です!」
 真面目な願い事は彼女らしい。
「自分が勇気をだせば成し遂げられることを、流れ星に頼むのはもったいないです」
 と言って、あおいはそろりとチョコを出した。
「……あおいらしいな」
 イザークは口元を優しく歪めつつ、チョコを受け取った。
「らしいですか。真面目に答えてしまってすみません。でも、願っても簡単には果たせない人の為に奇跡は使われるべきです」
 あおいは思わず謝ってしまう。
(あぁ、もう自分のばか)
 折角の素敵な雰囲気を台無しにするかわいげのない自分に呆れてしまう。
「……そうか」
 イザークは頷いた。
(どんな時でも、小さな事でも、誰か幸せを願えるところが……本当にいとおしいと思える)
 あおいの事を心底愛しみ、自然と笑みがこぼれる。
「……どうして嬉しそうに笑うんですか?」
 訳が分からないあおいが、イザークに不審な顔を向けた。
「いや、何でもない。俺も皆が幸せに暮らせるようにと願おう。きっとあおいの願った『皆』には俺もはいっているのだろう?」
 イザークははぐらかし、自身の願い事を言った。
「ならば俺も、あおいも含めた『皆』が幸せになるように祈ろう」
 王族らしく民は守るものという彼の意識とあおいを愛する心が込められていた。
 互いを愛しむ二人の頭上を流れ星が駆けた。

●2章 重なる想い
 夜のムスペルヘイム地方、砂漠の街サンディスタム、タビ砂漠のオーアシス。

「星が綺麗。砂蛍もとても楽しみね。早く見たいわ」
 『リチェルカーレ・リモージュ』は、全力で美しい風景に心をときめかせていた。
「あぁ」
 言葉少なに頷く隣の『シリウス・セイアッド』の双眸に映るのは、リチェルカーレばかり。
「寒さ大丈夫? 良かったら毛布をどうぞ!」
 そこに毛布を配って回るアバサが現れ、毛布を二人に渡した。
「ありがとう」
 リチェルカーレはにこりと礼を言ってから、毛布を羽織った。
「どういたしまして。砂漠の夜を楽しんでね!」
 アバサも笑顔で応じた後、他の参加者に毛布を配りに行った。
「砂蛍よ、小さくて可愛いわね」
 アバサを見送った後、リチェルカーレは砂蛍に大層興奮。
(忙しないな)
 シリウスは毛布を被りながら、賑やかな彼女を愛しく思う。
「シリウス、空も綺麗だけど、水面を見て、星空が映って、まるで星空に浮いているよう……っくしゅん!」
 リチェルカーレは星空を映す水面に歓声を上げるが、寒さからくしゃみ一発。
「……羽織っていろ」
 シリウスは自分の毛布をリチェルカーレの肩に掛けた。
「大丈夫よ」
 リチェルカーレは、掛けられた毛布に触れながら笑顔で言った。
(……この笑顔……失いたくない……俺がそう思えば思うほど……)
 自分に向けられる笑顔にシリウスは愛しさと同時に背筋を這い上がる悪寒を感じ、拳を握り締めた。自分は災厄そのものだから。
「私よりもシリウスの手の方が冷たいわ。ほら、二人で入れるわ」
 リチェルカーレは握り締める拳を掴み、毛布を広げ招く。
「俺はいい」
 だが、シリウスは掴まれた手をほどき拒む。
「どうして? 風邪ひいちゃう」
 リチェルカーレは表情を曇らせ、心配を口にする。
「俺はダメなんだ」
 シリウスは抱く過去から断る事しか出来ない。
「……だったら」
 シリウスの頑固さに堪らずリチェルカーレは、えいっと彼に飛びついた。
「ちょっ、離れていないと……っ!?」
 想定外の行動に対応しきれずシリウスはバランスを崩し、彼女の下敷きに。
「……いきなり、何……」
 呆然とした翡翠の目で見上げるも、あまりな体勢にシリウスの目元が一気に赤くなる。
「いいから、どけ!」
 だが、この状況を何とかしようと頑張る。
「嫌、どかない」
 リチェルカーレは口を尖らせツンと顔を背け、全く動かない。
「リチェ!」
 そんなリチェルカーレに思わず、シリウスは声を荒げた。
「シリウスが私を大事に思ってくれているのは知ってる。だから苦しい顔をするのも」
 リチェルカーレはズイっと、シリウスに顔を近付けた。
「……お前、知って……?」
 まさかの言葉にシリウスは絶句。
「私はシリウスの側にいたいの。あなたが苦しいなら少しでも力になりたい」
 シリウスの反応には構わず、リチェルカーレは自身の思いを精一杯伝える。
「…………それは迷惑?」
 近づけた顔を離し、リチェルカーレは不安げに訊ねた。
「迷惑じゃない……だけど、俺は……」
 シリウスは素直に喜べない。愛しいものを失う事への不安と恐怖からか。
「……シリウス」
 リチェルカーレは勇気を出して、シリウスの唇にキスを落とした。
「!!」
 唇に感じる小さな温もりにシリウスは息が止まり、緑の双眸は一心に目の前の愛しい人を映す。
「……周りにこれだけ流れ星があるんだもの。願い事もきっと叶うって思わない?」
 リチェルカーレは唇を離し、泣き出しそうな顔で笑った。夜空には沢山の星が駆けていた。
「……リチェ」
 シリウスは揺れる二色の瞳と優しい声に体を起こした。
「……願う事なんてひとつしかない。頼むから俺の前から消えないで」
 唯一つの願いを呟き、震える腕を伸ばしてリチェを抱き締めた。

●3章 共に歩む時
 夜のムスペルヘイム地方、砂漠の街サンディスタム、タビ砂漠のオーアシス。

「アバサくんには、感謝しなきゃ、ですね。こんなに素敵な場所に、案内してくれて……」
「アバサが自慢するだけのことはあるね」
 『アリシア・ムーンライト』と『クリストフ・フォンシラー』は幻想的な風景に感嘆する。
「ありがとー、寒くない? 毛布あるよ」
 その時、アバサの元気一杯の声が飛んできた。
「!?」
 驚いたアリシアとクリストフはそろりと振り返った。
「……ありがとうございます」
「ありがとう」
 そして、二人は毛布を貰った。
「うん、楽しんでねっ!」
 毛布を渡し終えたアバサは、他の参加者の様子を見に行った。

 アバサを見送った後。
「砂漠に、蛍……不思議な光景ですね……星も蛍も、とてもきれい……」
 借りた毛布にくるまり風景を楽しむアリシアは、上に下にと視線が忙しい。
(アリシアの瞳がキラキラしてる)
 クリストフが気にするのは、美しい風景にも負けず煌めく紫の瞳だ。
「アリシア、楽しい?」
 そして、おもむろに訊ねた。
「はい、空に星が、空中に砂蛍が、水に両方が映ってて、まるで、星の中に浮かんでるような、気分です」
 アリシアはゆっくりと振り返り、少しずつ見せるようになった笑顔を湛えた。
「そうか。良かったね」
 クリストフは、嬉しそうに返した。
「……はい」
 アリシアは頷いた瞬間、寒気が走りぶるりと身を震わせた。
(……震えてる? 毛布だけでは暖かさが足りないかな)
 クリストフは大切な人の異変を見逃さない。
「アリシア、寒いんじゃない?」
 クリストフが心配げに気遣った。
「少しだけ、寒いですけど、大丈夫で……」
 アリシアは、少しだけ体を震わせながら答えようとするも突然の事に遮られた。
「この方が暖かいだろ?」
 なぜならアリシアの答えを待たず、クリストフは自身の毛布を広げ、彼女を抱き締めるように毛布で包み込んでしまったから。
「え、あの……」
 アリシアの失った言葉は、あまりの事にますますどこかに行ってしまう。
(ど、どうしよう……心臓の音がうるさくて、壊れてしまいそうで)
 馴染みの鼓動がいやにうるさく、胸中は大騒ぎ。
「アリシア、流れ星だ」
 いつもの笑みを湛えるクリストフは、夜空を走る星を指さした。
「……綺麗ですね」
 美しい流れ星を前に、アリシアを慌てさせたドキドキはひとまず大人しくなった。
(……何か、心地よいですね)
 流れ星を目で追うクリストフを上目遣いに盗み見、アリシアはそっと寄りかかった。
「……アリシア、ここの星程じゃないかもだけど故郷の星も綺麗だから、また一緒に見に行こう」
 気付いたクリストフは、寄りかかるアリシアの肩を優しく抱き締めた。
(できれば、一生一緒に見られるといいな)
 今日の星空だけでなく、この先も共に見たいと望む。幼馴染みとは人違いだったけれど、アリシアの一生懸命な姿にいつしか心は彼女を見ていたようだ。
「クリスのお家に? また遊びに行っても、いいんですか?」
 クリストフの気持ちを知らぬアリシアは、単純に遊びの誘いとしか思っていない。
「いや、そうじゃなくて……」
 クリストフは軽く頭を左右に振った。
「違うのですか?」
 アリシアは小首を傾げ、聞き返した。
「アリシア、父と母みたいに、あの家で暮らそう」
 クリストフは真っ直ぐにアリシアを見つめ、彼女の心に自身の思いを刻むように明瞭に伝えた。
「それって……つまり……」
 ここでようやくアリシアは、意味を理解し顔を赤くする。
「一生大事にするから」
 クリストフは、アリシアの肩を抱き締める手に力を込めた。
「はい……私、あのお家、大好きですから」
 アリシアはすっかり赤くなった顔で、頷いた。

●4章 傍らにはあなた
 夜のムスペルヘイム地方、砂漠の街サンディスタム、タビ砂漠のオーアシス。

「うん。ここら辺かな」
 『レオノル・ペリエ』は、夜空に探し物をしているように歩を進める。
「何もこんな寒い中無理せずとも……」
 何も知らぬ『ショーン・ハイド』は、寒さを気にする。
「ショーンに見せたかったものがあるんだ」
 レオノルは探す何かで頭がいっぱいで、寒さを気にする様子は全くない。
「私に見せたいものとは?」
 自分の心配は届かないと知ったショーンは、探し物を訊ねた。
「ああ、あれだ」
 レオノルは突然足を止め、夜空の星を指し示した。
「青白い星が見えるよね?」
 その星は青白く煌めく星。
「はい、見えますが、あの星が何か?」
 隣で星を見るショーンは、意味が分からず聞き返した。
「私の母が見つけた星だ」
 レオノルは星を見つつ答えた。
「ドクターの、お母様……」
 途端、星を見るショーンの脳裏に母娘の再会の時が浮かんだ。
「私の名前を付ける筈だったらしいんだけど……父がその手柄を取ったから今は別の名前らしい」
 レオノルは、先程と変わらぬ調子でさらりと言った。
「……何というか……その……」
 レオノルの調子とは違いショーンは、驚き開いた口が塞がらない。
「ドクターもご性別のせいで苦労なさったと聞きましたし……酷い話だとしか言えませんが……他に何か言えれば……」
 何か言わねばと絞った言葉には、レオノルへの気遣いに溢れていた。
「酷い話、ね……ありがと」
 レオノルは気遣いに口元を優しくした。
「まぁ話したかったのはそこじゃないんだ」
 だが、今回は自身の出自ではなく夜でなければ意味がない話。
「では……」
 ショーンが話の先を促した。
「あのさ、ショーン、まだ名も無き星を見つけたら君の名前を付けていいかな?」
 すると、レオノルは唐突に妙な提案を口にした。
「何で星に私の名前を!?」
 これまた想像外なのか、ショーンは唖然。
「母が何故星に名前を付けようとしたかって、赤子はいつ死ぬか分からないから、らしいんだ。せめて星のように永く、ってね」
 母が娘を思い見ていた星を今度は娘が母親思い星を見る。
「あぁ。そういう理由で……」
 ショーンは得心した。
「そうだ。君は私に比べて短命だから、星にあやかって長く生きて欲しいと思ってさ」
 レオノルは達観した学者の顔で、口元を歪ませた。
「……本当にドクターは寂しがり屋だ」
 素敵な提案に喜ぶでもなくショーンは、レオノルが込めた思いを感じ取った。
「……寂しがり屋、か」
 レオノルは、自嘲気味に呟いた。
「えぇ。仮に私が死んでも、いつか寂しさは紛れますよ。ドクターはお強い方ですし、私がいなくても……」
 ショーンが幼いお嬢様の無茶を宥めるように優しく言った瞬間だった。
「ぐぁっ!?」
 胸が熱くなったレオノルが抱きついてきたのは。
「抱き着きますか……」
 ショーンは少し弱り気味にレオノルの様子を窺った。
「……ずっと」
 レオノルは抱きついたまま、ゆっくりと口を開いた。
(……声が、震えてる……?)
 その声は震え、ショーンは心配から怪訝に思った。
「……一緒にいて欲しい。だから」
 レオノルは声を震わせつつ、星にあやかる云々ではなく思いを伝える。
(泣いているのか……珍しい)
 ショーンは、抱きつき顔が見えぬレオノルを心配と珍しさで見下ろした。
「ずっと一緒にいて欲しい、か……」
 反芻し、込められた思いを知るショーン。
「当然です。私は貴女のパートナーですから何があっても必ずお傍におります」
 伝えるべき思いを伝える。
「……ショーン」
 レオノルは顔を上げ、水分を多く含む目でショーンを見つめた。
「……貴女が、望む限り」
 ショーンは、優しく口の端を上げた。夜を照らす月のように。

●5章 優しい二人
 夜のムスペルヘイム地方、砂漠の街サンディスタム、タビ砂漠のオーアシス。

「カグちゃん、一応、毛布は持ってきたけど……寒い様ならもう一枚毛布借りよう」
 『ヴォルフラム・マカミ』は、持参した毛布を広げながら傍らに訊ねた。
「……寒い、昼間は、痛いくらいだった日差しがなくなって」
 『カグヤ・ミツルギ』は、寒暖差に体を震わせ、凍える両手に息を吹き掛けながら言った。
「カグちゃん、毛布一緒に包まろう」
 ヴォルフラムは急いで借りて戻り、毛布二枚を広げて、自分達を包み込む。
「ほら、後ろから僕が抱き着けば僕がトランスしなくても暖かいでしょ?」
 毛布で足りない分は、ヴォルフラムの体温で補うのみだ。
「……暖かいけど、狼のヴォルフのもふもふが恋しい……でも、一緒にお茶飲んだりしたいから、我慢する」
 ヴォルフラムの胡座の上にちょこんと座るカグヤは、残念そうに見上げた。
「ありがとう」
 可愛らしい気遣いにヴォルフラムは口元を優しく歪めた。
「ヴォルフは? 寒くない?」
 カグヤは、寒さが緩んだ事と同時にヴォルフラムを気遣った。
「僕の事は心配無いよ。膝建てるより胡坐掻いた方がくっつくから暖かいよ」
 ヴォルフラムはにこにこと答えた。その言葉通り、カグヤの体温で寒さは幾分ましになっていた。
「それにしても、此処は昼間との温度差がすごいねぇ」
 改めてヴォルフラムは砂漠の寒暖差に驚いた。
「砂漠は初めて来たけど、温度差がすごいから体調崩しそうだよ。この街に住んでいる人は大変だよね」
 同時に住民達に感心した。
「……この寒暖差でも、体調崩したりしない様に、食事で色々補ってる、みたい」
 カグヤは、見たり聞いたりしただろう事を話した。
「そうなの?」
 興味もあってなのか、ヴォルフラムは聞き返した。
「うん、向こうではあまり見ないハーブや、香辛料が、あった。此方には此方の、体の作り方が、あるんだと、思う」
 するとカグヤは、毛布配布に精を出すアバサを目で追いながら言った。
「へぇ」
 感心するヴォルフラム。
「……温かいお茶、水筒に淹れて貰ったから、飲む?」
 カグヤは、持って来た水筒を見せながら訊ねた。
「あ、うん、飲む」
 ヴォルフラムが答えると、カグヤは水筒のカップを取って茶を注いで渡した。
「と言うか、カグちゃんが淹れたんじゃないんだ?」
 受け取ったヴォルフラムは、首を傾げながら訊ねた。
「宿で淹れてもらった、此方のお茶……ミルクティーに、色々香辛料入った、甘いお茶」
 カグヤは茶の事を話しながら、自分の分を注いだ。
「わぁっ、甘! でも美味しいね」
 ヴォルフラムは何気なく茶を一口した途端、勢いよくカップから口を離した。想定外の甘さだったようだ。
「これだけ甘いと、お供は辛くてもいいかもしれない」
 ヴォルフラムは二口目は落ち着いて、味を楽しんだ。
「このお茶、レシピ、教えてもらったから、戻ったら、室長にも淹れてあげられる……」
 カグヤは茶を飲みながら言った。
「……室長と言えば、あの人コーヒーや紅茶にミルクと砂糖沢山入れて飲むけど、食事してる所、あまり見ないよね。チョコとかのお菓子はよく食べてるけど……」
 カグヤの一言をきっかけに、ヴォルフラムは思いを馳せる。
「うん……さっと食べれる物しか、食べてない……室長が病気になったら、困る……」
 カグヤも頷き、心配を吐露。
「帰ったら室長の食事改善しないとね!」
「うん、帰ったら考えよう」
 ヴォルフラムとカグヤの思いは一つだ。
「……おかしい。私達の話、あまりしてない」
 だが、ここでカグヤはようやく気付く。砂蛍や星どころか自分達の話をあまりしていない事を。
「そう言えばそうだね」
 ヴォルフラムも気付き、笑んだ。

●6章 星空と姉弟
 夜のムスペルヘイム地方、砂漠の街サンディスタム、タビ砂漠のオーアシス。

「見て下さい。星が綺麗ですよ」
 『キョウ・ニムラサ』は、頭上に広がる満天の星空を指さした。
「そうね」
 隣の『サク・ニムラサ』は、示された先の星々を見上げる。
(星って食べれるかしら……食べれたらきっとキョウヤの好きな味だろうな)
 だが、美しさではなく美味しさを想像し堪能するのだった。
「星と言えば……くっしゅん」
 キョウは会話の中で、くしゃみを発した。
「夜の砂漠は寒いですね。ちょっとなめてました」
 そして軽く鼻をこすり、情けない一言。
(……寒いですが……砂蛍も、まだ流れ星も見ていませんし……こういう時は)
 その胸中では、好奇心と寒さが少しばかり葛藤していた。
「……美味しい。ココアが身に染みます」
 結果、持って来たココアで、寒さを乗り切る事を思いついた。
「これが寒い? まだまだお子様ね。そもそも中途半端に暖かいから寒くなるのよ」
 寒さに震えるキョウの様子にサクはニンマリ。
「……」
 途端、キョウは不審な目で姉を見た。
「何、その顔は」
 サクはすかさず言い返した。
「いえ、珍しく頭良い事言ってるなと」
 キョウは大袈裟に感心の声を上げた。
「あら、私の事もなめているのかしら?」
 と言うなり、サクは口元を歪めるとキョウの頬に自分の手を当てた。
「ちょっ、冷たっ! 中途半端はだめだからってそっちに合わせちゃだめでしょう! それにどうしていつもの服なんですか、対策してって言われましたよね?!」
 あまりの冷たさにキョウは驚き説教だ。
「だって、キョウヤが対策してくれるから」
 サクにとってはどこ吹く風だ。
「もー、ほら、ココア飲んで飲んで!」
 たまりかねたキョウは、手にある飲みかけのココアをサクに押しつけた。
「あっ、ココア美味しい」
 受け取ったサクはココアを一口飲んで温まる。これが姉弟ではなくカップルだったら、ドキドキのイベントだっただろう。
「そう言えば、この間星を見たときは散々だったらしいわね」
 サクは思い出したとばかりに口にしたのは、先程キョウがくしゃみに遮られた話題だ。
「らしいって何ですが。散々だったの間違いですよ」
 キョウが吐く言葉には疲れが滲んでいた。何せ、自分達の危険を回避するために必死に挑み、最後はぐっすりだったのだ。
「キョウヤしか見てないから忘れてしまっただけよ」
 サクはカラカラと笑いながら返した。
「そんな事言ってもダメです……砂蛍ですよ、綺麗ですね」
 キョウは表情を不機嫌にあれこれ言おうとするも、ちろちろりと飛び寄ってきた砂蛍に気持ちが持っていかれた。
「……もう、はしゃいじゃって」
 サクは、お姉さんな微笑ましい眼差しでキョウを見た。
「あっ、星、流れ星よ」
 その時、夜空を駆ける一筋の星を発見し、サクは慌てて指さした。
「……流れ星」
 キョウは頭上を仰ぎ、双眸に流れ星をしっかりと映した。
(願う事はないけど……しいて言うなら幸せであれ)
 そして、話し掛けた。心の中で。
「……ずいぶんゆっくりな流れ星なのね。これだと、願い事沢山言えそうね」
 隣ではサクが流れ星を見つつ、のんびりとココアを飲む。
(何をとは言わない。こうして心の中で思うだけ。誰をとは言わない。だってばれてるから)
 キョウは願い事を心の中にとどめた。
「どう? もう言った?」
 キョウの願い事を知るはずもないサクは相変わらずだ。
「……はい、ココアのお代わりはどうですか?」
 願い事を終えたキョウは姉の方に向き直り、ココアのお代わりを訊ねた。
「気が利くわね」
 サクはすかさず、空になったカップをつき出した。
 サクとキョウは、姉弟仲良くココアを飲みながらのんびりと幻想的なひとときを満喫した。



【甘菓】夜の砂漠で、星見をしよう!
(執筆:夜月天音 GM)



*** 活躍者 ***

  • リチェルカーレ・リモージュ
    どんな時でも、側にいる
  • シリウス・セイアッド
    …何が正解なのか、わからない。

リチェルカーレ・リモージュ
女性 / 人間 / 陰陽師
シリウス・セイアッド
男性 / ヴァンピール / 断罪者




作戦掲示板

[1] エノク・アゼル 2020/02/12-00:00

ここは、本指令の作戦会議などを行う場だ。
まずは、参加する仲間へ挨拶し、コミュニケーションを取るのが良いだろう。  
 

[3] 鈴理・あおい 2020/02/25-23:54

 
 

[2] アリシア・ムーンライト 2020/02/25-21:55