~ プロローグ ~ |
「母さん……」 |
~ 解説 ~ |
・目的 |
~ ゲームマスターより ~ |
初めまして、リリベルと申します。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
|
||||||||
10年以上も過去の傷を抱えて生きるなんて どれほどの悲しみと苦しみかしら 少しでも ちょっとでも わたしたちに彼らのためにできることがあるのなら …?シリウス、顔色悪くない? 首を振られるのにほんの少し眉を下げて そう?と 戦闘 ランタン所持 ベリアル出現時に魔術真名詠唱 前衛の後ろから通常攻撃 コウモリが出れば 前衛の邪魔になるものを優先して狙う 体力が5割を切った人に天恩天賜で回復 ベス、あなたの家族を覚えている? ずっとずっと あなたのことを心配していたの 迎えにきたよ …一緒に お家に帰ろう? 戦闘後 ベスの消えた場所で祈りを 首輪等遺品とか 持って帰れたら依頼主に届けたい 助けられなくて ごめんなさい… 涙をこらえて頭を下げる |
||||||||
|
||||||||
藤】 【目的】 ベリアルの討伐。 【行動】 前衛として行動するZE! コウモリが邪魔するのはまあしゃーなしとしてベリアルがランタンを目標に狙ってくるのは阻止したいとこ。囲む人数がいないなら囲んで、囲む人数が充分ならそこらへん見ときますか。『シールドタックル』で距離とれりゃいいんだけどね。 ア】 |
||||||||
|
||||||||
ベスちゃん…10年以上もの間どうしてたのでしょう… 現場周辺でベリアルの被害があったかどうか、出かける前に調べてみたいです… もしベスちゃんによる被害が、最初のお母様以外ないのなら… ベスちゃんが頑張ったんじゃ、ないのかな、と…そうならいいなと… 行動 ランタンを使って灯りを確保 洞窟に入る直前に魔術真名を唱えて ベリアルへと向かうクリスの援護射撃 なるべく出入口に近い位置でベリアルを外に逃がさないように出口確保 蝙蝠が前衛の人達の邪魔になるようなら蝙蝠優先で攻撃を 数が多いときはスキルを使って後退させられないか試す 蝙蝠さん達、ごめんなさい…… 終わったら出て行きますので、少しだけ我慢して下さい…お願い、します…… |
||||||||
|
||||||||
◆目標 依頼主の家族達の魂の解放 ◆洞窟突入前 ランタンをベルト等を利用し腰からぶら下げ、両手が空く様にしておく 灯りで照らされない暗闇を警戒しつつ皆と歩調を合わせ突入 ◆戦闘 ・ローザ 中後衛で集まり前衛を支援 前衛の邪魔になりそうな蝙蝠を優先して排除(なるべく倒しすぎない様にする ベリアルの動きを警戒し包囲を突破して来るのに気付けたら皆に警告 ベリアルが接近した場合後退しつつ応戦 ・ジャック 前衛 前衛の皆でベリアルを包囲して戦う 触手の動きと、包囲網を突破されぬ様注意 自身が攻撃の対象になった場合避けずに盾で受け止め、TM4を使用 傷つき体力の低い味方が居れば庇う ◆戦闘終了後 ベリアルを倒したら洞窟の自然を破壊せぬ様退却 |
||||||||
|
||||||||
◆目的 ベリアルの討伐 ◆行動 森や洞窟では仲間と一緒に行動。 別行動で離れる人がいれば、 魔術通信でこちらの現在地を伝え合流できるようにする。 洞窟に入る前に口寄魔方陣を展開して装備を整え、 暗闇からの急襲にも対応できるようにしておく。 洞窟内は道が分かれるなら小石積む等して目印を。 自分達は主にベリアルの対処を担当。 仲間と連携してベリアルを取り囲む。 戦闘開始時に魔術真名を宣言。 ・リームス 守備に専念。 ベリアルが囲んだ輪から出ないよう鎌と盾で牽制する。 ・カロル ランタンで光源の確保。 背が低いこともあり移動中は足元を重点的に照らし、 戦闘中は常に仲間の目にベリアルの姿が見えるようにする。 向かってくるなら応戦。TM2。 |
||||||||
|
||||||||
◆作戦 ベリアルとの戦闘に専念する者と洞窟の蝙蝠を追い払う者、二手に分かれる ロウハは前者、シュリは後者 視界確保のためランタン持参 ロウハは戦闘の邪魔にならないよう腰に括り付ける ベリアル打倒後は速やかに退避 ◆戦闘 ・ロウハ 最初に「裁き」使用 仲間と共にベリアルを囲むように布陣、敵の攻撃に備えつつ逃がさぬよう攻撃 魔方陣を発見したらそこを重点的に攻撃、仲間にも伝える ・シュリ ベリアルとの戦闘の邪魔をする蝙蝠を追い払う 無闇な殺生はなるべく避ける 方法は主に中距離からの攻撃、接近した蝙蝠には香水を含ませたハンカチを近づけ追い払えないか試みる もし蝙蝠が手薄になり前衛への援護が可能なら「ペンタクルシールド」使用 |
||||||||
|
||||||||
悲しい話だね。心の傷は癒えにくいからね…彼の随分苦しんだだろう。 今回の依頼は彼にとってはとても大事なものだろうから。きちんとこなしたいね。 洞窟侵入前に魔術真名詠唱を済ませる。 前衛はベリアル。中衛後衛がコウモリ襲ってくるコウモリへの対処。 綾ちゃんは前衛の墓守だけど俺達の護衛についてもらうね。 他のメンバーが光源にランタンを持ってきてくれるから。 俺達のランタンは使う予定はないけど一応予備に持っていくよ。 コウモリにとっては自分達の根城を荒らされるようなものだからねベリアルとの戦闘が済み次第できるだけ早く撤退。コウモリへの被害をできるだけ減らせれば。 ベリアルとの戦闘だけど…綾ちゃん無理しないといいけど。 |
||||||||
|
||||||||
●目的 ベリアルを撃破する ●行動 洞窟内ではユウに頼んでランタンを灯してもらい光源を確保してもらったら移動 移動中は周囲を見渡してベリアルがいないか、コウモリの動向に注意 コウモリが襲って来ても迎撃を後衛に任せ、ベリアルの襲撃に備えます ベリアルと遭遇後は前衛で敵を囲むような陣形を作り、逃げられないようにします 戦闘時は魔法陣のある場所を確認。他の前衛が攻撃した後にそこを追撃してベリアルが反撃の機会を与えないように立ち回ります ユウには戦ってる間も灯りを確保してもらい、魔法陣の場所を見られるようにしたり暗闇でベリアルを見失わないようにしてもらいます ベリアルから魂を捕らえた鎖が出現したら即座に破壊します |
||||||||
~ リザルトノベル ~ |
●洞窟前 鬱蒼とする森の中、太陽の光は木々に遮られ、地上まで中々届かず、住み着いたカラス達の鳴き声が鳴り響く。その中で、急に森が途切れて辺りが背の低い雑草が生い茂る空間に、洞窟がポッカリと口を開けていた。 外からだと、中は真っ暗で何も見えず、任務以外では肝試しくらいにしか来ないような、まるで、洞窟そのものが一種の化け物で、口を開けて獲物を待っているかのような、なんとも言い難い雰囲気を醸し出している。 そんな光景を目にして、洞窟の前に到着した教団員によって集められた8組の浄化師達が、皆おのずと気を引き締める。 「こんな所に10年以上も……」 リチェルカーレ・リモージュが無意識に切な気な声を揺らした。手にしたランタンを握る手が心なしか震えていることに、相方のシリウス・セイアッドが気づいて、ポンと彼女の頭に手を乗せる。 「シリウス……」 「早く、解放してやらないとな」 読めない表情で、しかし相方を気遣うようにそう言ったその表情の裏に、何か揺らぐものを感じて、リチェルカーレはシリウスの顔を覗き込んだ。 「シリウス、顔色悪くない?」 「……そう?」 リチェルカーレの言葉に小さく首を振りながら、シリウスが答える。彼の表情はなんとも心が読み取りずらい。しかし、それをめげずに読み取ろうとじっと見る彼女に、「俺は元々こんな顔だ」と言わんばかりに、シリウスは少し眉を下げた。 「雰囲気あんなあ、全く!」 その隣で、藤森・卓也が軽快な声を飛ばす。相方のアースィム・マウドゥードは「うるさい」と、言いながら彼の手持ちの人形をカチャカチャと片手で扱いを確かめるように動かしている。と、 『月と太陽の合わさる時に』 アリシア・ムーンライトとクリストフ・フォンシラーの声が辺りに響く。どうやら魔術真名詠唱を行ったようだ。それを終えると、詠唱のために握った手をどちらからともなく離し、 「そういえばアリシア、今回ベスが他に危害を加えていたかどうかを、調査したんだよね?」 クリストフがアリシアに聞いた。アリシアは、ベスがベリアルとなって10年以上もの間、今回の指令以外の被害を出さなかったのか、疑問に思って事前に調査していたのだ。もし、依頼人の母以外に被害がないのなら、ベスが頑張ったのでは、そうならいい。と静かに思っていた。 「はい。どうやら、他に被害は無かったみたいです」 アリシアが、切ないような嬉しいような声で呟く。それを見て、クリストフは目を少し伏し目がちに、 「そうか。良かった」 と答えた。 その隣では、ローザ・スターリナがランタンをベルトにつけながら、ジャック・ヘイリーにボソリと話かけていた。 「……支援はする。苦しませずに、解放してやれよ。ヘイリー」 アリシアの話を聞いていたのか、はたまた依頼人の話に共感したのか、ローザがジャックにそう言うと、 「ベリアルになってしまった以上、倒すだけだ」 ヘイリーから淡々と答えが返ってくる。しかし、その言葉の後に聞こえるか聞こえないかの声で、 「でも、その犬が罪を重ねていなくて良かったな」 と呟いたのを、ローザは聞き逃さなかった。 また、リームス・カプセラは口寄魔方陣を展開し、装備を整え、その相方のカロル・アンゼリカはランタンをチェックしている。 リームスは特に今回の指令には何も思っていないようで、ただ淡々と自分の武器である鉄の鎌を見つめている。その横で、カロルが様子を伺うように相方の表情を読み取ろうとするが、何とも読み取れずにいた。 「わたしもお父様を亡くしたけれど…彼の方がずっと辛い状況だわ。家族をあんな形で突然失って、愛犬まで……」 シュリ・スチュアートが悲し気にしかし強くそう言うと、相方のロウハ・カデッサが自身の武器であるウッドソードをチェックしていたところから目を離し、 「確かに、浄化師の力があっても、こういう事態を防ぐことができねーってのは、歯痒いもんだな。俺達はこういった連中の無念を晴らすために戦う……だよな。でもな……お嬢、家族を亡くしたつらさに大小なんてないぜ」 と、穏やかに声をかける。シュリは、そんな彼を一瞥すると、目を伏せ、少し寂し気な笑みを零しながら、 「そうね。わたしたちにできることを頑張りましょう」 と答えた。 『花は咲き、花は散る』 魔術真名詠唱が再び行われたのは、ジエン・ロウと吉備・綾音の二人だ。 魔術真名詠唱を終えると、ジエンは心配そうに綾音の顔を覗き込む。 「綾ちゃん、無理はしないでね」 心配そうな彼の様子を見て、綾音は柔らかく微笑んだ。 「ジエンさん、大丈夫ですよ。皆さんの事は私が守りますから」 そういうことではない。彼が心配しているのは、彼女の能力的なことではなく、心情的なことなのだが、どうやら伝わっていないようだ。ジエンは、仕方がないというように、綾音に聞こえない程度に軽く息を吐いて、空を仰いだ。 その隣では、セプティム・リライズ、ユウ・ブレイハートが戦闘の準備を整えていた。淡々としたその様子に、相方のユウ・ブレイハートはもう少し何かあってもいいのにな、と思いながらそれを口にはしない。 指令内容を聞いた時も、「過去はどうあれ今は討つべき敵」というセプティムの言葉を聞いて、ユウは若干引いていたが、いつものことなので仕方がない。 「ユウさんは、光源の確保をお願いします」 まるで、業務連絡のようだ。いや、実際そうなのだが。思いながら、 「わかりました」 と、ユウはセプティムに返事をした。 各々、準備を終え、事前に話し合って決めた戦闘の陣形を確認すると、いよいよ洞窟の中へと侵入していった。 ●洞窟内 洞窟に入ると、それぞれランタンや松明を灯し、足元や先を照らした。とはいっても、完全に視界が開けるわけではなく、自分たちの足元と本当に数メートル先までしか照らせないため、歩幅も慎重になる。どこからか水が滴る音が聞こえ、おそらくコウモリであろう羽音が聞こえるが、一向にその姿は見えない。 洞窟は、入り口に比べて中が広くなっていて、陣形を保ちながら進むには充分な広さだった。しかし、それは同時に敵にとっても様子を伺う機会や、暗闇から襲いやすい状況を作り出しているため、油断は出来ない。 涼しくありつつも、どことなく湿り気がある洞窟の中で、皆、声が響く事を恐れて、あまり言葉を発せず、緊張感だけが漂っていた。 暫くは、事前に、教団員から話を聞いた時に、皆で話し合った作戦通りに陣形を組んで移動する。 まずは、ベリアルを討伐するための前衛組に、シリウス、藤森、クリストフ、ジャック、ロウハ、セプティムが。 事前の情報にあったコウモリが攻撃してきた場合に、積極的にコウモリを対処するための、中後衛に、リチェルカーレ、ローザ、リームス、カロル、シュリ、ジエン、綾音、ユウが。 そして、出入り口確保のため、一番後ろにアリシアが位置していた。 一同が進む中、いよいよ振り返っても入り口の光が見えなくなるまでになり、手元の灯だけが唯一の頼りとなる。 このまま何事もなくベリアル討伐が行えればいいのだが。皆がそう思うも、ある程度まで行ったところで途端に羽音が激しくなった。 「な……この激しい音はコウモリですか!」 たまらずにリチェルカーレが声を出すと、今まで我慢していたのか他のもの達も言葉を発し始める。 「でも、姿は見えない。灯を怖がって、奥へと隠れているのかもしれない……」 ローザがそう言うと、前衛にいたクリストフが松明を前方にかざす。 「まだ、奥がありそうですよ。しかし、このまま行くと、出口が不安だ。アリシア。予定通り、アリシアは出口を確保していてくれないかな?」 「わかりました」 まだ辛うじて、少し戻れば出口が分かるこの場所にアリシアを残そうとするクリストフに、アリシアは同意する。そして、皆がそれを確認して、進もうとした時に、無数の羽音が尋常ではない激しさを伴って、一同へと近づいてきた。 「コウモリは任せて!」 ジエンがそう言うのと同時に、暗闇の奥の方から唸り声が小さく聞こえて、皆に一気に緊張が走った。 「今の声は……」 ジャックがどことなく言うと、前衛陣が顔を見合わせて声無く頷く。 「今、灯が無くなったらマズイ。カロル、ユウさん光の確保お願いしますね」 リームスが念を押すと、カロルとユウは、ランタンを持ち直した。 「とりあえず、慎重に進むっしょ!」 皆の緊張をほぐすように、藤森がわざと明るい声を出してみる。一同が、同意しつつも警戒を怠らず足を再び進めると、唸り声が先ほどよりも大きくなり、そしてついにベリアルがその姿を表した。と、同時に潜んでいたコウモリ達が一斉にこちらへ向かってきた。 ベリアルは、ベスの形を残したまま、しかしやはりその姿は元の姿とは言えないほど変形していた。体からは触手が生え、禍々しい目つきになり、犬とはよほどかけ離れた低く不気味な唸り声を発している。 コウモリとベリアルの突然の出現に、一同が混乱に陥りそうになるも、 「背中は任せた!」 と、クリストフの相方のアリシアに対する信頼の言葉によって、皆ふと我に帰る。役目を果たさなければ。 前衛陣は、すぐさまベリアルを囲い込み、中後衛陣は向かってくるコウモリに攻撃の照準を合わせた。 「シリウス! 真名詠唱です!」 前衛のすぐ後ろにいたリチェルカーレが急いで、シリウスと手を合わせ叫ぶと、シリウスは頷き、 『黄昏と黎明 明日を紡ぐ光をここに』 と二人で叫んだ。 「僕らも魔術真名詠唱だよ」 リームスが落ち着いて言うと、 『トゥー・フィー・エゴ・エリス』 とカロルとリームスがお互いに軽く触れながら、言葉を重ねる。 はじめにベリアルに対して突っ込んだクリストフが、自身のスチールソードで、ベリアルと応戦するも、触手が邪魔でいまいち決定打が打ち込めずにいる。 「離れていてください!」 「裁き」の効果が発揮されて、威力が向上しているロウハがおもむろにそう叫ぶと、積極的に攻撃していたクリストフが少し下がり、陣営の中へと入り、ベリアルに突っ込むと、そのまま大きく自身のウッドソードをベリアルに向かって降り下ろした。 剣は、ベリアルの表皮をかすり、パックリと傷口を開ける。が、それと同時に大きくうねった触手が、ロウハの腹に入り、吹っ飛ばされる。 「ゲホッゲホッ。くそっ」 思わず剣を地面について、咳き込むロウハ。 「ロウハ!」 その様子を目にして、思わずシュリは叫んだ。 「お嬢はコウモリの方を頼んだ! 俺は大丈夫だ!」 安心させるように言うと、またロウハは前衛の方に戻る。 シュリは頷くと、迫り来るコウモリ達に視点を合わせた。こちらも余裕ではない。ベリアルには及ばないが、しかし、厄介なのには変わりはない。むやみな殺生を行いたくないシュリは、どうにか香水を含ませたハンカチで追い返せないか、試みる。 コウモリ達は、一瞬ひるんだが、暫くしてまたこちらへ向かってきた。 「前衛の邪魔をされたら困る。仕方がないが、攻撃させてもらう」 コウモリ達に向かって、ローザが言うと、手持ちのブロンズボウでなるべく前衛陣に近いコウモリから対処していく。 一方、ジエンは先ほど「任せて」と言ったもののコウモリに対して動けずにいた。というのも、ジエン達中後衛の護衛のはずの綾音が、普段とは違う様子で体を震わしていたのだ。 「綾ちゃん!? 綾ちゃん、大丈夫!?」 ベリアルとの戦闘が始まった瞬間、綾音は自身の中でどうしようもなく燃え上がるものを感じて、抑えが効かなくなりそうなことに驚いていた。まさか、自分の中にこんなに激しい怒りがあったなんて。そう思いつつ、それに飲まれないように必死に自分を保とうとする。 「だい、じょうぶです。ジエンさん。ジエンさんは……コウモリの対処にまわってください」 「でも、綾ちゃん……顔色が……」 「私は、本当に大丈夫ですから。お願いします」 「……分かった。綾ちゃん、無理しないで」 綾音を心配そうにするジエンに、綾音は苦しそうに、けれど強く言い返す。彼女は確かに、自身の中に溢れる怒りに驚いたが、それが原因でジエンがコウモリの対処が出来ず、ベリアルと戦っている前衛陣に迷惑をかけるのはもっと嫌だった。 相変わらず体は震えたままだったが、しっかりとその場に立っている綾音を見て、ジエンが確かにコウモリが優先だというように首を降り、意識を整え、コウモリに向かい武器であるまじない呪符を使って、コウモリに攻撃をしかけた。 それに伴って、リチェルカーレが、マジックロッドを使い、さらにコウモリを牽制していく。 その彼女の耳に、 「……今、解放してやる」 と相方のシリウスの低い声が聞こえた。 シリウスは一気に敵の間合いに踏み込み、スチールソードでベリアルを攻撃する。その間も触手がシリウスを襲うが、自分の怪我は気にせず、ベリアルへの攻撃の手を緩めない。 「僕も手伝います」 セプティムが落ち着いて呟くと、特攻隊のような動きをしているシリウスの邪魔をしないように、自分のウッドソードで、応戦した。 それに合わせるように、藤森も鉄の鎌を持って向かい、クリストフや、ロウハも加わる。 やがて触手だけでは戦えなくなったのか、ベリアルはその牙や爪を立てようと、その体を大きく跳ねあがらせ、ロウハへ飛びつこうとした。が、ロウハがすんでの所で、ウッドソードでガードしたところを、クリストフとシリウスがスチールソードで本体を、大きく切り裂き、リームスがその三人をベリアルのカウンターから鎌と盾で守るのと同時に、陣形から相手が出ないように牽制した。 「皆、避けろ!」 ジャックが大きく声を荒げて、切り裂いた時に生まれた一瞬の隙を見て、大きく飛び上がり、ベリアルの頭上からスチールアックスで、大きく振り被り強烈な一撃を食らわせた。 一旦体勢を立て直すために、各々が陣形に戻る。皆、息が切れて、汗が地面に垂れた。 触手を傷つけられ、さらに本体に大きな攻撃を食らったベリアルは、今までの唸り声とは違う弱々しい声を出し、よろめく。その次の瞬間に、今まで見えていなかった鎖がベリアルの本体から巻きついて現れ、縛られている魂が浮かび上がる。 ようやく、ここまできたか。前衛陣が、言葉を発することなく意思を共有すると、最後のラストスパートというように、藤森、クリストフ、ロウハが残った触手を抑え、シリウスとジャックで本体を相手にする。 その隙に、セプティムが、鎖に近づくと、ウッドソードを大きく持ち上げ、鎖に向かって振り下げた。 キンッと重々しい音がひびき、鎖がベリアルから千切れる。と同時に、ベリアルの動きが止まった。皆の目に、鎖から解放された魂が、昇っていくのが見える。そして、ベリアルの体はたちまちの間に、砂になって消えていった。 あれほど禍々しい空気も、細かい粒がそこに残るだけで、ベリアルがそこにいたという感覚が無くなる。 前衛陣はふぅと肩の力を抜くと、コウモリを対応している中後衛陣を振り返る。 リームスが、先ほどから光源を確保してくれていたカロルに「終わったよ」と呟くと、カロルは安心したように長く息を吐いた。 ベリアルの瘴気に当てられていたのか、ベリアルがいなくなると、コウモリ達も大人しくなり、暫くすると洞窟の奥の方へと戻っていく。 「よ、ようやく、終わったのですね」 リチェルカーレのところに戻ったシリウスに、彼女が聞くと、シリウスが静かに頷く。リチェルカーレは、ベリアルがいたところを見て、瞳を切なく揺らした。分かってはいたが、本当に元に戻れないのだ。そこには、ただ砂が広がるだけだった。 「助けられなくて、ごめんなさい……」 ベリアルがいたところで、リチェルカーレが膝をつき、涙をこらえながら頭を下げ、祈りを捧げる。その彼女の頭を、シリウスがそっと撫でた。 「何か、残っていないだろうか」 祈りを捧げるリチェルカーレの横で、ローザが言うと、リチェルカーレが顔をあげた。 「そうですよね。何か残っているかも……」 二人で探し始めた足元を、ローザの相方のジャックがランタンを手に持ち照らしてやる。 砂の中を手探りで探すリチェルカーレの手に、何か硬いものがあたって、彼女はそれを拾い上げた。 赤い、首輪だった。 「持って帰ってやろう」 ローザが言うと、リチェルカーレは、 「はい」 と、静かに言って、その首輪を胸に大切そうに抱いた。 リチェルカーレとローザのその姿を見て、ユウも祈りを捧げてから、砂を麻袋に集める。 後ろに立つ相方のセプティムに、 「こんな形になったけど、ここに置くより飼い主の元に帰した方がベスだって喜ぶはずよ」 ユウが、聞かれることもなく呟くと、 「僕は、ベリアルになった者に捧げる祈りは持ち合わせてないですよ」 と、セプティムが冷たく言い放ったのに、彼女は眉を潜めた。 また、砂になったベスを悲しげな目で見下ろしながら、アリシアとクリストフも追悼の意を心に潜めていた。 「ベスちゃん……頑張りました、ね……偉かったですよ……」 アリシアが言うと、クリストフも、 「後のことは心配しないでゆっくりおやすみ」 静かにつぶやいた。 ●洞窟前 ひと段落すると、一同はコウモリ達を刺激しないように、足早く洞窟を出た。 暗闇にずっといたため、洞窟を出た時の外の光が目にしみて、皆目を細め、ふぅ、と誰からともなくため息を吐いて、教団に戻る道へとついた。 皆がゾロゾロと並んで帰る中、リームスとカロルは少し距離を取って一番後ろを歩き、 「皆、悲しいと言っていたね」 と、リームスがカロルに言う。 「あら。『悲しい』がわかるの?」 カロルが驚いたように、リームスに返す。 「……理解はする。実感はどうだろう」 「ねえリームス。今回の指令の説明を聞いた時、何か身体に異常を感じた?」 「特に……ああ、でも。少し息が詰まるような、心臓部へ負荷が掛かったような」 「覚えておいてねその感覚」 「ベリアルは消えた。魂も解放された。仇を取るってこれでいいの?」 「ええ。彼らの帰り道を示したのだもの。10年前に残された人達は……置いてけぼりは、きっともういないわ」 寂しげな会話を交わした二人の間を、さあ、と風が走った。 ●その後 指令達成の報告を依頼人にした時、依頼人は涙を流し、嬉しそうな。でも、悲しみに暮れたそんな表情をしていた。せめてもの思い出をと、リチェルカーレは首輪を、ユウは遺灰を依頼人に渡す。 ベスを討つまではお墓は作らないと決めていた依頼人は、ベスの遺灰と、依頼人の母の遺灰を一緒のお墓に入れてもらうように、藤森にお願いしてお墓を作ってもらった。 そのお墓の前に、シュリは花束を置いて、手を組み祈りを捧げ、その様子をロウハは暖かい目で見守っていた。 彼らの魂が安らかであることを願って。
|
||||||||
*** 活躍者 *** |
|
|
|||
該当者なし |
| ||
[31] シュリ・スチュアート 2018/05/08-23:57
| ||
[30] ローザ・スターリナ 2018/05/08-23:28
| ||
[29] アリシア・ムーンライト 2018/05/08-23:23
| ||
[28] セプティム・リライズ 2018/05/08-10:34
| ||
[27] リームス・カプセラ 2018/05/07-23:58
| ||
[26] クリストフ・フォンシラー 2018/05/07-23:21 | ||
[25] リチェルカーレ・リモージュ 2018/05/07-20:51
| ||
[24] シュリ・スチュアート 2018/05/07-17:35 | ||
[23] セプティム・リライズ 2018/05/07-13:31 | ||
[22] ジエン・ロウ 2018/05/07-12:32
| ||
[21] 藤森・卓也 2018/05/07-09:44
| ||
[20] 藤森・卓也 2018/05/07-09:28 | ||
[19] クリストフ・フォンシラー 2018/05/06-23:53
| ||
[18] クリストフ・フォンシラー 2018/05/06-23:20 | ||
[17] リチェルカーレ・リモージュ 2018/05/06-22:58
| ||
[16] ローザ・スターリナ 2018/05/06-22:31 | ||
[15] ジエン・ロウ 2018/05/06-17:40
| ||
[14] リームス・カプセラ 2018/05/06-16:41
| ||
[13] リチェルカーレ・リモージュ 2018/05/06-11:00 | ||
[12] 藤森・卓也 2018/05/06-05:01 | ||
[11] セプティム・リライズ 2018/05/05-22:10
| ||
[10] クリストフ・フォンシラー 2018/05/05-21:20 | ||
[9] ローザ・スターリナ 2018/05/05-20:56
| ||
[8] セプティム・リライズ 2018/05/05-14:46
| ||
[7] リチェルカーレ・リモージュ 2018/05/05-11:33
| ||
[6] ジエン・ロウ 2018/05/05-05:22
| ||
[5] シュリ・スチュアート 2018/05/05-03:17
| ||
[4] リームス・カプセラ 2018/05/05-02:22
| ||
[3] 藤森・卓也 2018/05/05-00:22
| ||
[2] アリシア・ムーンライト 2018/05/05-00:17
|