ゆるてん
とても簡単 | すべて
8/8名
ゆるてん 情報
担当 星色銀 GM
タイプ ショート
ジャンル 日常
条件 すべて
難易度 とても簡単
報酬 なし
相談期間 4 日
公開日 2018-05-08 00:00:00
出発日 2018-05-15 00:00:00
帰還日 2018-05-26



~ プロローグ ~

「天に輝くスピカがきれいね」
「うん、ただし、君にはかなわないけど」
「ぷー。なに、それ?」
 パートナーのわざとらしいキザなセリフに思わず笑ってしまった。
「あたしたち、ゆるく天体を見るはずよね?」
「冗談だし。楽しければなんでもありということで」
 目に見えるのは、満天の星空と、白い雪に覆われたアールプリス山脈。
 ここは、「教皇国家アークソサエティ」内、農業に栄えるソレイユ地区。
 山脈の麓にて。浄化師たちは芝生に寝っ転がり、春の夜空を楽しんでいる。
 眼下の町では、祭りが行われていた。人々の声は届かないが、夜店の明かりや広場で燃える薪から熱狂が伝わってくる。
 浄化師たちは観光客として休日を満喫していた。
 きっかけは、初春のある日。山脈の麓にある町の観光協会が薔薇十字教団に連絡を取ってきたことだった。
「浄化師さんには日頃からお世話になってます。そこで、我が町で開かれる春の祭りにご招待したいのですが。ゆるゆるに天体観測でもお楽しみいただければ」
 薔薇十字教団が参加希望者を募り、今に至る。
 天に輝く星を見ながら、パートナーと語らう浄化師たち。のどかな休日を送っていた。


~ 解説 ~

 浄化師ごとに会話を楽しむ個別イベントになります。
 基本は、ゆるゆるなものですが、少し真面目なものでもOKです。
 プランに、ゆるゆる系か、少し真面目系か記載ください。

・ソレイユ地区
 農業や畜産で知られています。
 舞台は、アールプリス山脈の麓にある町。
 牧畜が盛んで、牛乳やチーズ、ソーセージが名産です。
 小高い丘があり、夕焼けの時間には絶景スポットとして恋人たちに人気があります。


~ ゲームマスターより ~

 ゴールデンウィークに書いているのですが、温泉にでも入ってまったりしたいですね。
 ゴールデンウィーク進行でバタバタしていたもので、身体が癒しを欲してます。

 のどかな郊外で、時間が流れるのも忘れて、大切な人とゆるゆるな会話を楽しみたいです。





◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇

リチェルカーレ・リモージュ シリウス・セイアッド
女性 / 人間 / 陰陽師 男性 / ヴァンピール / 断罪者
>少し真面目系

あなたの星は見えるかしら?
夜空で一番明るい導きの星 同じ名を持つ彼の瞳を仰ぎ見る
怖いくらいに澄んだ双眸   
そこに ほんの少し戸惑ったような柔らかな色を見つけて
(あ ちょっと表情が変わった)
それが無性に嬉しくて笑う
ふいと背けられた顔に小さく首をかしげるも 促されて空を見て「わぁ」と歓声

街よりもずっとずっと 近くに見える星の光に目を輝かせ
とっても綺麗
これだけ星が見えると 願いを叶える星も見えそうね
…知らない?
絵本にあるの 「右から二番目に輝く星は あなたの願いを叶える星」って
歌のフレーズを口ずさむ(歌唱スキル使用)
目を見開く彼に呆れられたのかと顔を赤くして口を閉じる
続けられた言葉に ぱっと笑顔で大きく頷く
シュリ・スチュアート ロウハ・カデッサ
女性 / マドールチェ / 占星術師 男性 / 生成 / 断罪者
◆シュリ
高い所に行きたい…ここで一番高い場所に
高原の一番高い所へロウハを引っ張っていって、寝転ぶ

あたし、ずっと前から星を見るのが好きで
お父様と一緒に暮らしていた時は、こうしてたくさん星を眺めていたのに

浄化師のパートナーになったけど
夜とか…いつでもロウハに会えるわけじゃなくなって、ちょっと寂しかったから
だから今日は、なんだか前に戻れたみたいで嬉しい


◆ロウハ
お嬢に引っ張られるままに付いていき、並んで寝転ぶ(必要そうなら敷物を敷く)

ユベール様の家にいた頃は、お嬢と庭の高い木の上でよく景色を見て、話をした
星を見るようになったのはお嬢の影響だが

今日のお嬢はいつになく楽しそうだ
俺も、ひと時心が穏やかになる
藤森・卓也 アースィム・マウドゥード
男性 / ライカンスロープ / 墓守 男性 / アンデッド / 人形遣い
藤】
連れていくときは俵担ぎするZE! だって祭って聞いた瞬間逃げようとするからな!
偶には親交深めんのも大事っしょ?
ソレイユ地区ってことだから出店でちょこっと食べれるもん買うか。口に捻じ込む用に、ニホンの「しおにぎり」ってやつは作って持ってくつもり。いずれはもっと美味いの作りてぇけどな。
あとは一緒に星をみるのが目的。寒くないように抱え込む感じで見る。星座とか知りたい

ア】
担がれた時は手足を振り回して抵抗する
それでもダメだった場合は後頭部の髪を毟る勢いで引っ張って抗議する
抱え込まれた場合も同様
食べ物は基本拒否
押し付けられた時のみ仕方がないから食べる
星に関して何か聞かれた時のみドヤ顔しながら話す
アーカシャ・リリエンタール ヴァン・グリム
女性 / ヴァンピール / 人形遣い 男性 / ライカンスロープ / 拷問官
ヴァン君!天体観測だ…!
…すまない少しテンションが上がりすぎた。
私は天体観測が好きでね。でもこんな風にどこかに訪れて観るということはなかったから。ついはしゃいでしまった。

空気が澄んでいるからか星が一段と綺麗にみれるな。
美しいな…。
この小さな光はそれこそ光年という長い時間をかけて届いた光だ。
あぁ、つまりとてつもなく長い時間をかけて届いた光という事だ。
今見てる光が私やヴァン君が生まれる前のものだったりするわけだよ。

星座に関する話も面白い。
そして星の光を魂の光とするのも好きだな。
今まで生きてきた人の魂が今も輝いてると思うとなんだか満たされるし。
私もいつか星になるのだと思うと安心して逝ける気がするんだ
マリウス・シュバルツ Leon・Barthel
男性 / アンデッド / 断罪者 男性 / ヴァンピール / 悪魔祓い
【目的】
天体観測で相方との仲を深める

【会話】
マ:見事なものだな。レオン、座り込まず見てみたらどうだ?
レ:見てるよ。アンタ、ガキかよ。無邪気だな
マ:……そうだな(レオンを見て、どこか寂しげに夜空に視線を向ける)
レ:どーした?
マ:……いや。俺は、アンデッドだが生前のことを覚えている。だが、大切なはずだったことだけはどうも思い出せない
レ:ふーん、アンタでも感傷的になることあんだな
マ:どうにか思い出す術があれば、良いのだが
レ:なら、オレがその術とやらになってやる
マ:それは?(伸ばされた手に疑問)
レ:手を取れ。オレがアンタと欠落した記憶、取り戻してやんよ
マ:(笑みを浮かべ)頼もしいな
  (相方の手をとる)
アシエト・ラヴ ルドハイド・ラーマ
男性 / 人間 / 断罪者 男性 / エレメンツ / 狂信者
目的
ゆるゆる

手段?
お互いちょっと離れて座る

しばらくぼーっと天を見上げて
会話はなく。それがいい
「おっ流れ星」
願い事なんてないけど
「ルドはなんか願い事した?」
相変わらずつめてー返答に、思わず笑みが零れる
願い事ないって言ったけど取り消し

「ルドが少しでも優しくなりますように」

拳の代わりに、鋭い視線だけ飛んできた
予想通り
「へへへ、お前って結構、俺とおんなじでわかりやすいよな」
「こう、叩けば響くところとか、口が悪いから、ある程度何言われるか予想できるところとか。あとデレるのもなんとなくわかる」

頭抱えたルドに笑う
「俺のせいって。まぁ一緒にいると合うだろうしな」

「って。今日だけかよ!」
「願い事のほうは?」
ローザ・スターリナ ジャック・ヘイリー
女性 / ヴァンピール / 悪魔祓い 男性 / 生成 / 拷問官
◆心情
・ローザ
まさかヘイリーが素直に誘いに応じるとは思わなかった
…彼と何を話せばいいのだろうか

◆道中は特に会話も無く、喧騒から離れた芝生へ
無言のまま芝生に転がる

沈黙に耐え切れず最近の気掛りについて話してしまう
この間の依頼でも、無駄に怪我を負っていただろう
いくら頑丈な半鬼とは言えそのままだと身は持たないぞ、おっさん

少しバツが悪くなり彼に従い星空を見る
…喧嘩がしたい訳じゃないのにな

…貴方が星に詳しいとは思ってもみなかった
星とは、美しいな
故郷では夜は寒く、星空を見上げる事もなかったから

…私はまだ、何の為に戦えばいいのか決めかねている
でも、貴方が酷く傷つくのは胸がざわつく
だから……もっと私を使え、ばか
ベアトリス・セルヴァル ジョシュア・デッドマン
女性 / ライカンスロープ / 魔性憑き 男性 / アンデッド / 陰陽師
(少し真面目系)
ジョシュアが飲み物と毛布をとってくるから
あたしは場所をとるために芝生の上に座りながら
星を眺めてたんだ。

凄くきれいでいっぱい見えたから
故郷の星空と同じだなって
そしたら家族の顔を思い出して
柄にもなくメソメソしちゃった。

ジョシュアは、からかうだろうから誤魔化そうとしたんだけど
多分、あたし嘘がうまくないから正直に言うことにした
ホームシックなのかな、家に帰りたいってわけじゃないんだけど
ただ家族とまた話がしたいって思って。

ジョシュアの話は
ホットミルクを飲んだ以上に心が暖かくなったよ
ありがとうね…もう少ししたら元気になるから
あたしもジョシュアの助けになれますようにって
流れ星にお願いしといた。


~ リザルトノベル ~

●アシエト・ラヴ/ルドハイド・ラーマ

 夜空に三日月が輝いていた。春のそよ風が葉音を鳴らす。
 今夜は特別に星が綺麗なこともあり、ほとんどの人々が景色を楽しんでいた。
 特に、恋人たちは愛を深めようと、手を組んだり、暗いと思ってもっと大胆なことをしたり。
 そんな中、微妙な距離感の二人がいた。
 芝生に寝そべる青年たち。アシエトとルドハイドである。
 二人は手を伸ばしてもギリギリ触れ合わないほど離れていた。
 アシエトたちは会話もせず、ただぼんやりと天を見上げている。
 日頃の任務から解放された二人は、リラックスした表情をしていた。ルドハイドは時々瞑想をしている。
 しばらくなにもしなかった祓魔人たち。
 ふとアシエトがびっくりしたように言う。
「おっ流れ星」
「……そうだな」
 淡々と答えるルドハイドに向かって、
「ルドはなんか願い事した?」
「ない」
 尋ねるも、例によって冷たい言葉が返ってくる。
 アシエトは思わず笑みをこぼす。
(まあ、俺も願い事なんてないけど……いや、あるか)
 アシエトはニヤニヤして、
「ルドが少しでも優しくなりますように」
 空に向かって言い放った。
 すると――。
 赤髪の喰人は祓魔人を睨めつけ。
 ヘラヘラした笑みを浮かべたアシエトは、予想通りだとでも言わんばかりだった。
「へへへ、お前って結構、俺とおんなじでわかりやすいよな」
「ん?」
 ルドハイドは右手を横に倒し、手の甲でアシエトを殴ろうとするが、芝生の感触に受け止められてしまう。
(拳が届く距離であればな)
 ルドハイドの行動に目もくれず、祓魔人は言葉を続ける。
「こう、叩けば響くところとか、口が悪いから、ある程度なに言われるか予想できるところとか。あとデレるのもなんとなくわかる」
「うっ」
 ルドハイドは頭を抱えた。
(……指摘されてみたら、思い当たる節がいくつもある)
 アシエトが笑い声を立て、ルドハイドは肩をすくめた。
「確かに、俺もわかりやすいところがある。それはお前の知能レベルに合ってしまったということだ。つまり、お前のせいでもある」
 指をさされたアシエトは、
「俺のせいって。まぁいっしょにいると合うだろうしな」
 さらりと受け流した。
 ルドハイドは抑揚のない声で言う。
「認めよう。今日のお前は冴えてる」
「って、今日だけかよ!」
 実年齢が見た目の倍近い青年は無言で首を縦に振る。
 ルドハイドは再び右手を伸ばす。今度は、アシエトの肩に軽く触れた。
 会話が終わり、二人は無言で星を眺めた。
 流れ星の群れが弱まり始めた頃。アシエトは思い出したように言う。
「願い事のほうは?」
「……検討しよう」
 ルドハイドは目を閉じて答えるのだった。


●リチェルカーレ・リモージュ/シリウス・セイアッド

「あなたの星は見えるかしら?」
 青髪の少女はぽつりとつぶやくリチェルカーレ。彼女の繊細な声は、優しい音色に彩られていた。
 夜空で一番明るい導きの星。彼と同じ名前を持つ星。
 隣で一緒に星を鑑賞している青年。
 怖いくらいに澄んだ双眸を、少女は仰ぎ見る。
 ほんの少し戸惑ったような柔らかな色を見つけて。
(あっ、ちょっと表情が変わった)
 リチェルカーレは無償にうれしくて微笑を浮かべる。
 一方、喰人の青年シリウスは……。
 『あなたの星』というパートナーが発した言葉に、軽く瞬いていた。
(……名前が同じだけだ)
 そう言い聞かせ。
 見上げてくる、青と碧の二色の瞳を見つめ返す。
 表情がない、気味が悪いと。
 散々言われてきた自分の顔。
 なのに、彼女はいつもまっすぐに見てくる。
 春の陽だまりを思わせる暖かな眼差しだった。
 無邪気な彼女の笑顔がいたたまれず、シリウスは目を逸らす。
 好意を向けられるのに慣れていないから。
 ふいと背けられた顔にリチェルカーレは小首をかしげる。
「リチェ、星を見るんだろう?」
 シリウスがつぶやくと、リチェルカーレは自然が生み出した夜空を見て、「わぁ」と歓声を漏らす。
 わずかにシリウスの表情が緩んだ。
 街よりもずっとずっと、近くに見える星の光にリチェルカーレは目を輝かせ。
「とっても綺麗。これだけ星が見えると、願いを叶える星も見えそうね」
 シリウスは祓魔人の言葉を受け、星を見上げる。
 それでも、彼女が発した言葉の意味がわからず、首を傾け。
「……知らない?」
 リチェルカーレが発した言葉に青年は首を振る。
「絵本にあるの。『右から二番目に輝く星は、あなたの願いを叶える星』って」
 リチェルカーレは歌を口ずさむ。澄んだ歌声だった。
 シリウスは聞きながら、目を丸くする。
 子守歌を連想させる旋律。
(綺麗だ)
 シリウスは素直に感じていた。瞳を閉じる。歌の魅力がいっそう強まる。
 なのに、急に静寂が訪れた。
 リチェルカーレが顔を赤くして、口を閉じてしまったのだ。
「ごめんなさい、呆れたよね?」
「……続けてくれ。最後まで聴いてみたい」
 止まった歌声がなぜか惜しくて、シリウスは答えていた。
 二人の目が合った。
 リチェルカーレは、ぱっと笑顔で大きくうなずく。青髪がそよ風になびいた。
 歌が再び始まる。
 シリウスは星ではなく、そっと歌う彼女の横顔を見つめていた。


●シュリ・スチュアート/ロウハ・カデッサ

「高いところに行きたい。ここで一番高い場所に」
 十代半ばぐらいの少女が黒い髪をなびかせ、天を指さして言う。
 少女シュリの声は抑揚が少ないが、彼女の隣にいる青年だけは彼女の好奇心を感じ取っていた。
 半竜の青年は、ロウハ。シュリと契約した喰人である。
「いいぜ、お嬢に付き合うぞ」
 ロウハは妹に向けるような眼差しをシュリへ送った。
 こくりとうなずいたシュリは歩き始める。少しだけステップを踏むような足取りで。
 二人はなだらかな丘を登った。昼間は初夏に近い気温だが、日が暮れると涼しい。風が木々を揺らし、葉音を奏でる。
 数分後。丘のてっぺんに到着した。
「わぁぁっ、町が綺麗」
「お嬢、本当に高いところが好きだな」
 眼下の景色に目を輝かせるシュリ。
「うん、だって……」
 祓魔人の少女が草の上に腰をおろそうとすると、パートナーの青年が敷物を敷く。
 寝そべったシュリは星空を見上げ、
「少しでも近くで……星を眺めていたいから」
 切なさと願望が入り混じったような声でつぶやく。
 ロウハは修羅場をくぐってきた肉体にそぐわない、優しい目でシュリの言葉に耳を傾ける。
「あたし、ずっと前から星を見るのが好きで」
「……ああ」
「お父様と一緒に暮らしていた時は、こうしてたくさん星を眺めていたのに」
「覚えてるよ。ユベール様の家にいた頃のこと」
 ロウハは目を細める。
「庭の高い木にお嬢と登って、よく景色を見た」
「いっぱいお話もしたね」
「ああ、星のことをたくさん話してくれたな」
「うん」
「星を見るようになったのは、お嬢の影響だぜ」
 シュリはくすりと微笑んだ。
(今日のお嬢はいつになく楽しそうだ。俺も心が穏やかになったぜ)
 ロウハが妹のような少女を見守っていると、シュリは口を開いた。
「ロウハとは浄化師のパートナーになったけど」
「……」
「夜とか……いつでもロウハに会えるわけじゃなくなって、ちょっと寂しかったから」
「俺も寂しいぞ」
 家族同然の青年の言葉は短くても、シュリの心に響いて。
 黒髪の少女は頬を緩ませる。
「だから、今日は……なんだか前に戻れたみたいで嬉しい」
 ロウハが家族だった頃のことを思い出し、心が穏やかになる。
 一方、ロウハは、
「俺もな」
 シュリのことを今も昔も守りたい。大切な妹のようなものだから。
 想いを深くしたロウハは、シュリの頭を撫でた。
 少女は青年の方に頭を寄せる。
 二つの流れ星が隣り合って落下する。まるで兄妹のようだった。


●アーカシャ・リリエンタール/ヴァン・グリム

「ヴァン君! 天体観測だ……!」
「うおっ! アーカシャ。いつにもましてテンション高いな」
「……すまない少しテンションが上がりすぎた」
 大はしゃぎしたかと思えば、その女性はバツが悪そうに頭を掻いた。美しい銀髪がそよ風になびく。
 アーカシャ。芸術を愛するヴァンピールだ。
 そんな彼女を不思議な目で見るのは、喰人のヴァン。
 鮮やかな赤茶色の髪と、満月のような金色の瞳が特徴的な狼のライカンスロープである。
「天体観測がすきねぇ……。それはそれは優雅なことで」
 ヴァンは言葉にこそ出さないが。
(……こんな小さな星を見るのの、どこが楽しいんだか)
 首を上に向け、そう思っていた。
 彼の気も知らずに、パートナーは言う。
「私は天体観測が好きでね。でも、こんな風にどこか訪れて観るということはなかったから、ついはしゃいでしまった」
 素直に謝られると、文句も言えない。
「別に、いいって」
 すると、アーカシャは許可が出たと思ったのか。
「空気が澄んでいるからか、星が一段と綺麗に見れるな」
 夜空のような藍色の瞳で天を仰ぐ。
「……美しいな」
「……」
 ヴァンは黙り込む。肯定でも否定でもないという意味を込めて。
「この小さな光は、それこそ光年という長い時間をかけて届いた光だ。ああ、つまり、とてつもなく長い時間をかけて届いた光ということだ」
「どういうことだ?」
 意味がわからずにヴァンが尋ねると、芸術を愛する祓魔人は詩人を思わせる目で言う。
「今見てる光が、私やヴァン君が生まれる前のものだったりするわけだよ」
「……」
(遠くからきた光に過去の光ねぇ……やっぱり興味はわかんな)
 ヴァンは心の中でぼやく。
(それに難しい話をされてもわからん)
 つい肩をすくめてしまうが、彼女は自分の話に夢中で気づかない。
「星座に関する話も面白い」
 アーカシャはまたしても上機嫌になる。
「そして、星の光を魂の光とするのも好きだな。今まで生きてきた人の魂が、今も輝いてると思うと、なんだか満たされるし」
「星が死んだ人間の魂だってのは聞いたことがあるな」
 つい、ヴァンはつぶやいていた。
(あれ、どうしたんだ、オレ?)
 楽しそうに話すアーカシャの影響かもしれない。
 喰人の青年は祓魔人の瞳を見る。藍色の瞳はどこまでも澄み渡っていた。
「私もいつか星になるのだと思うと、安心して逝ける気がするんだ」
 アーカシャは胸に手を当て、切なげに言う。心の底からは信じているようだった。
「私が星になって見守っている。だから、安心しろ」
 彼女はパートナーに優しい顔を見せる。
(そんなこと言われたことないし、そんな相手もいなかったが)
 ヴァンは鼻をかいた後、言う。
「あんたの知り合いに誰か星になったやつがいるのか?」
「……この目で確認してはいないが、いてもおかしくないだろう?」
「?」
「だから、私も星になれる可能性はある」
「……死人は見守ってくれないし、死んだら……それで終わりだ。安心して逝けるなんて言うもんじゃねぇよ」
 ぶっきらぼうな言い方は、彼なりの照れ隠しだったのかもしれない。
 二人の周りに少しだけ温かい空気が流れた。
 そんな彼らの雰囲気を読み取ったかのように、その時、流れ星が通りすぎた。


●ローザ・スターリナ/ジャック・ヘイリー

 聞こえる音は風と木々がこすれる音。二人の男女が立てる足音だけだった。
 月が空に昇り始めた頃。祓魔人と喰人は無言で坂を歩いていた。
 祓魔人のローザ。アイスブルーの髪と瞳を持つ男装の麗人。
 彼女はクールな顔の下に。
(まさかヘイリーが素直に誘いに応じるとは思わなかった。……彼と何を話せばいいのだろうか)
 戸惑いを隠していた。
 一方、ジャックはというと……。
 人相が悪い、頭に角を生やした半鬼の容貌をしていた。彼は気難しい顔をして、舌打ちをして。
(天体観測……たまにはガキに付き合って星を見るのも悪くねぇか)
 鈍く光る赤い瞳に深い隈を浮かべて、心の中でつぶやいていた。
 十数分後。二人は結局、なにも話さないまま丘の上へ。カップルや他の浄化師たちが夜空を楽しんでいた。
 近くに誰もいない場所を見つけ、芝生に寝そべる。静かに星空を眺めた。
 自然が生み出す景色が退屈を紛らわせてくれたが……。
 やがて、ローザは沈黙に耐えきれなくなり、つい気がかりだったことを漏らしてしまう。
「この間の依頼でも……」
「ん、どうした?」
「無駄に怪我を負っていただろう。いくら頑丈な半鬼とはいえ、そのままだと身が持たないぞ、おっさん」
 パートナーが心配だったのに。
「引き際が分からねえような馬鹿じゃねえ」
「なっ、だったら、なんで怪我したんだ?」
 ジャックに突っかかられて、つい声が尖った。
「うるせえ。星を見に来たんだろうが、黙って星を見ろ」
「ごめん」
 バツが悪くなったローザは素直に従う。
(……喧嘩がしたい訳じゃないのにな)
 ローザの想いも知らずに、星は暗い空に彩りを与えていた。
 しばらく静寂の時間が流れ……。
「なあ、スピカって知ってるか?」
 今度はジャックの方から口を開く。
「いや、詳しいことは知らない」
「そうか」
 ジャックはやや頬を緩めて言う。
「スピカって、今見える星では、一番明るい星なんだが」
「う、うん」
「特別な力があるんだ。昔の占星術師はスピカで天変地異を占っていたらしいぜ」
「へぇ。……貴方が星に詳しいとは思ってもみなかった」
「悪いかよ」
「いや」
 咳払いをしたローザは、しみじみとつぶやいた。
「星とは美しいな」
「……」
「故郷では夜は寒く、星空を見上げることもなかったから」
「……俺の故郷は星がよく見えた」
 ジャックは目を細める。
「だから、星に詳しいのか?」
 ローザの質問には答えず。
「星は夜道に迷った時に役に立つ、覚えておけ」
 ぶっきらぼうな口調には少しだけ優しさが含まれていた。
「わかった」と、ローザはぽつりと漏らし。しばし、沈黙を挟み。
「……私はまだ、何のために戦えばいいのか決めかねている。でも、貴方が酷く傷つくのは胸がざわつく」
 ローザは胸に手を当て、深くため息を吐き、ぽつりと漏らす。
「だから……もっと私を使え、ばか」
 ジャックのいかつい顔がふっと柔らかになる。
 二人は目が合った。同時に、はにかんだ。
「大きく出たな……考えておく、スターリナ」
 スピカには本当に特別な力があるのかもしれない。そうローザは思った。


●マリウス・シュバルツ/レオン・バルテル

 丘の上に涼やかな夜風が吹いていた。
 他の浄化師や観光客からやや離れた場所に、一組の浄化師がいた。
 マリウス。アンデッドである青年は、艶やかな金髪の持ち主だ。長い髪を高い位置で結い上げている。青と藍色のオッドアイが目を惹く。
 マリウスはベンチに座るパートナーに話しかける。
「見事なものだな。レオン、座り込まず見てみたらどうだ?」
「見てるよ。アンタ、ガキかよ。無邪気だな」
 反応したのは、レオン。ヴァンピールの青年だ。腰あたりまで伸びた銀髪を三つ編みにしている。黒ずんだ赤い瞳は脱力しきっていた。
 面倒くさがりなレオンの性格が出ただけだったのに。
「……そうだな」
 マリウスはレオンを一瞥したあと、どこか寂しげに夜空を見上げる。
 さすがにバツが悪い。レオンは尋ねる。
「どーした?」
「……いや。俺はアンデッドだが生前のことを覚えている。だが、大切なはずだったことだけはどうも思い出せない」
「ふーん、アンタでも感傷的になることあんだな」
「どうにか思い出す術があれば良いのだが……」
 マリウスはため息を吐き、天を仰ぐ。
 星に祈っているようにレオンには見えて――。
「なら、オレがその術とやらになってやる」
 パートナーに向けて、レオンは手を差し伸べていた。
 少々向こうみずなマリウスに手を焼くこともある。けれど、許容範囲だ。
 それに、大切な相方である。少しは仲良くなってもいいと思って、今回のイベントに参加したのだが……。
 似合わなかったな。時間とともに恥ずかしくなっていく。
 なのに、マリウスはレオンの手を見て、
「それは?」
 首をひねっている。
 マリウスはレオンの行動に戸惑いながらも思っていた。
(この天体観測を通じて、レオンと仲を深めることができれば嬉しいんだが)
 レオンの意図はわからない。けれど、きっかけになるのなら。そう思っていたら。
「手を取れ。オレがアンタの欠落した記憶を取り戻してやんよ」
 レオンは手をさらに近づけてくる。
 普段の気だるげな態度は鳴りを潜め、熱い想いが伝わってくる。
 うれしくて、マリウスは笑みを浮かべて。
「頼もしいな」
 レオンの手を取った。思った以上に熱かった。
「オレ、やる時はやるんだぜ」
 レオンが握り返してくる。
 流れ星が落ちてきた。二人は夜空を見上げ。
(レオンのために俺は力を使おう)
(マリウスに記憶を返してやってくれ)
 言葉に出さないで、そう願った。


●藤森・卓也/アースィム・マウドゥード

「ちょっと、なにすんの!」
「見てわかんね、俵担ぎだZE」
「なんで?」
「だって、アースィム。祭りって聞いた瞬間、逃げようとするからな!」
 ライカンスロープの青年が十歳ぐらいの男の子を担いでいる。子どもは喚いているが、ガタイの良い卓也には敵わない。
 子どもを抱えたまま、祭りの会場を歩く。ジャッカルの耳と尾は漆黒で、歩くたびにぴょこぴょこ揺れている。
「なら、こうしてやるぅ」
 卓也の肩に乗せられた少年が、後ろから髪を引っ張る。
 さすがに痛かったのか、卓也は足を止め、少年を抱えていた手が緩む。
 その隙に喰人アースィムは卓也の肩から飛び降りる。金色の髪がぱさりとなびいた。褐色肌の少年は青目で卓也を睨んだ。
 というのも、わずかの間に卓也が屋台に向かったからだ。
(ちっ、またか……)
 アースィムは舌打ちを鳴らす。基本的にお断りなんだけど……。
 ため息を吐いていたら、案の定、卓也はソーセージの串焼きを二本持ってこっちに来る。
「ニホンのしおにぎりは作ってきたけど、とりあえずまあ肉でも食え。ソレイユ地区に来たんだから、ソーセージを食おうぜ」
「……いらない」
 ぽつりと言ったアースィムが後ろを向こうとすると。
「にげんなわめくな口閉じんな」
 卓也は肩を掴む。
 アースィムは頬を膨らましながらも、わずかに口を開ける。
「ほら、あーん」
「だからやめろって言ってるだ……もがもがっ!」
 抵抗も虚しく、口の中に肉を突っ込まれる。
 串の先が尖っていることもあり、逆らうことを諦めた。
 十数分後。
「ちょっと、どこまで行くの?」
「決まってんだろ、男は一番上を目指すもんだZE!」
「おれ、疲れた……もう歩きたくない」
 丘の中腹でアースィムは駄々をこねる。ちょうど平らな場所があった。低い草が芝生がわりになりそう。
「ちっ、今日は休暇だ。特別だかんな」
 卓也が豪快に寝そべった。
「一緒に星を見るのが目的だからな」
 アースィムが聞こえないような声でつぶやく。
「……あとが怖いんだけど」
 とりあえず、アースィムはパートナーの隣に腰を下ろした。
「なあ、寒くねえか?」
「いや、大丈夫だから」
「震えてんじゃん。これでも、着とけよ」
 そう言った卓也は上着を脱ぎ、少年の肩にかける。
「ありがと」
「いや、それよりさ。星座のこと知りたいんだが……」
 卓也は一番目立つ星を指して言う。
「あれはスピカ。おとめ座だよ」
 アースィムの声がうわずる。
 卓也が優しい目をした。つい気分が良くなって、アースィムは語り出す。
「おとめ座にまつわる神話なんだけど、冥界の王が……」
 気づけば、ドヤ顔で知識を披露していた。
「へー、物知りなんだな」
 卓也の尻尾がぴょこぴょこ揺れた。
「おれだって、やるときはやるんだよ」
「なら、今度から俺の手料理を残すなよ」
 卓也が快活に笑うと、アースィムは渋い顔をした。


●ベアトリス・セルヴァル/ジョシュア・デッドマン

 小高い丘に一人の少女がいた。ライカンスロープのベアトリスは、パートナーが戻ってくるのを待っていた。
 彼女はさわやかな笑みを浮かべて、ひとりごちる。
「ジョシュア、飲み物と毛布を取りにいってくれて、ありがとう。あたしは場所をとっておくね」
(それにしても、星を眺めるって久しぶりかも。芝生も気持ちいいし)
 少女が昇り始めた星を見ていた頃。
 少年は観光客向けの店に向かっていた。
 宵の風が少年の黒髪をなびかせる。喰人ジョシュアは軽く震えた。
(夏に差し掛かる頃とはいえ、夜はまだ肌寒いようだね)
「毛布はもちろんだけど、ホットミルクもほしいかな。ブランデー売ってくれる所は……無いかねぇ。ホットミルクに入ると美味いんだけど」
 ジョシュアは足を速めた。
 その頃、ベアトリスの方は、すっかり星に夢中になり。
(故郷の星空と同じで……凄くきれいな星がいっぱい。みんな、どうしてるかな)
 家族の顔が脳をよぎり、少女の青い瞳にうっすらと涙が浮かんだ。
 感傷に浸っていたら。
「ど、どうしたの?」
 ジョシュアが目の前に立っていて、心配そうに覗き込んでくる。
「なんでもない」
 ジョシュアにからかわれる。首を横に振って、誤魔化そうとしたんだけど。
(あたし、嘘がうまくないから)
 思い切ってベアトリスはパートナーを見上げた。背後でスピカが輝いている。
「ホームシックなのかな、家に帰りたいってわけじゃないんだけど……ただ、家族とまた話がしたいって思って」
「ホームシックか」
 ジョシュアはベアトリスの隣に腰を下ろす。
 なびいた銀色の髪が彼の頬をくすぐるが、考え込んでいた彼は気にも留めない。
(まだ子どもなんだから仕方がないとか、家に帰らせてもらえば良いとか、そういう慰めは適切じゃない気がする)
 ジョシュアは毛布を彼女の膝にかけ、ホットミルクを渡す。
 彼女と指が触れる。思っていたよりも繊細な感触だった。
 慌てて離れたベアトリスは照れ隠しでホットミルクをゴクリと飲む。目を見開く。熱かったらしい。
 ジョシュアは微笑を浮かべたあと、ベアトリスの青い瞳を見つめて、言葉を紡ぐ。
「寂しさを感じながら、いつも元気で、笑顔でいたのは偉いじゃないか。子豚は強いな。たださ、頑張りすぎるなよ、気を抜いていこう。不安なことがあれば、私が聞くから」
 二人の頭上を流れ星が通過する。
 すると、ベアトリスは両手を組み、瞳を閉じた。
 ジョシュアも彼女につられて、目を閉じてうなだれる。
 十数えるほどの静寂ののち。
 ベアトリスは頬を緩め、胸に手を当てて、パートナーに語りかける。
「ジョシュアの話は、ホットミルク以上に心が暖かくなったよ。ありがとね……もう少ししたら、元気になるから。あたしもジョシュアの助けになれますようにって。流れ星にお願いしといた」
 ベアトリスの話を聞いていたジョシュアは、軽く目を見開き。
「私もだよ。私も子豚のことを祈っていたんだ」
 二人は顔を見合わせ、笑い合う。
 また、流れ星が光った。


ゆるてん
(執筆:星色銀 GM)



*** 活躍者 ***


該当者なし




作戦掲示板

[1] エノク・アゼル 2018/05/02-00:00

ここは、本指令の作戦会議などを行う場だ。
まずは、参加する仲間へ挨拶し、コミュニケーションを取るのが良いだろう。  
 

[7] ローザ・スターリナ 2018/05/13-18:57

ローザ・スターリナとジャック・ヘイリーだ。
よろしくお願いするよ。

天体観測、か…私も初めてだな。
皆が良い時間を過ごせる様願っているよ。  
 

[6] ベアトリス・セルヴァル 2018/05/13-10:08

こんにちは、ベアトリスとバディのジョシュアだよ!よろしくね  
 

[5] リチェルカーレ・リモージュ 2018/05/12-23:12

リチェルカーレです。パートナーはシリウスです。
どうぞよろしくお願いします。

満天の星空、どんなにか綺麗なんでしょう。
実際に見るのが楽しみです。
皆さん、素敵な時間を過ごされますように。  
 

[4] マリウス・シュバルツ 2018/05/12-22:16

マリウス・シュバルツに相方のレオン・バルテルだ。よろしくお願いする。

夜空はよく見上げる。が、天体観測として見るのは初めてだ。
わくわくするな……!  
 

[3] アーカシャ・リリエンタール 2018/05/12-20:03

アーカシャ・リリエンタールとパートナーのヴァン・グリム君だ。
よろしく頼むよ。

天体観測たのしみだ…!きっと美しいのだろうね。  
 

[2] アシエト・ラヴ 2018/05/12-00:17