~ プロローグ ~ |
●燻る炎 |
~ 解説 ~ |
●解説 |
~ ゲームマスターより ~ |
屋敷にはびこるゾンビ狩りとなります。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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■ダニエル対応 彼の事情と目的を聞き こちらの目的を話しても来るなら止めない ルーノは仕方なく ナツキは協力的 ■ゾンビ退治 屋敷突入時、先制攻撃 その後エントランスの敵を殲滅 殲滅後は2階へ 階段を上がり左回りに移動、敵発見次第交戦 2F殲滅後交戦中の味方へ加勢 戦闘後、犯人捜索 ナツキ 先制攻撃時、扉解放 脇に避け射線確保 向かってくる敵>手近な敵の順に攻撃 2階では前に出て敵を足止め 通路中央に立ち塞がり、突破を試みる敵は妨害 2体以上の場合JM2使用 ルーノ 先制攻撃に参加 開いた扉内へ通常攻撃 その後味方と同じ敵を攻撃し数を減らす 2階ではナツキと同じ敵を攻撃 前衛を抜けてきた敵は進路を塞いで足止め、撃破を優先 攻撃にはSH3で対抗 |
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・使用スキル:リンクマーカー 俺が気になることはダニエルのことだ その怒りは本当に正義のものか? 己の誇りがないがしろにされたから怒っただけじゃないのか? 正しさは、苦渋を伴うもんなんだ…今回みたいにな 屋敷のドアが開いたら牽制で射撃 ドクターと一緒に1Fのゾンビを殲滅後左回りの階段を上ってゾンビを倒していく ウォーリアーは鎧の隙間の関節を狙う 別に嫌悪感は無い 止めなきゃ被害が出るんでな…ただ、埋められた遺体は誰かに愛されてた人だ それを傷付けるのが苦しい あいつが復讐を望むならそりゃ結構だ ただ、仇討ちをした人間が幸福になれると思うな どんなクズであれ一人の人生を自分の手で台無しにするんだ 地獄行きは覚悟しろ |
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●目的 敵勢力の撃破。可能なら術者の痕跡を探す ●行動 僕は前衛を担当。突入と同時にそばにいるゾンビに先制攻撃を仕掛けます その後ウォーリアーを足止めするメンバー以外でエントランスのゾンビを撃破 続いて二階へ登り、二手に分かれて残ったゾンビに対応 僕は右回りに廊下を進みながら残りのゾンビを倒します その後、残ったウォーリアーを全員で撃破します ゾンビと戦う際はまず足を切断。動きを鈍らせてから肉体を武器で徹底的に破壊 ウォーリアーも同様の手段を行いますが、武器や防具が邪魔なら【クロス・ジャッジ】による連撃で破壊を試みてから本体を攻撃 戦闘後はユウに術者の痕跡を追えないか頼みます このような敵、生かす価値もないです |
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目的】 ゾンビの壊滅とダニエル少年の保護 行動】 屋敷到着前に少年に気付いて話し掛ける 少年は仲間に預ける クリス 屋敷到着時扉を開ける前衛へ 基本的にウォーリアー担当 開いたらエントランスに鎧を着けたゾンビがいるかを確認 いたらアリシアやハンス達の前に立ち、他の仲間の所へ行かせないよう攻撃を いない時は手近なゾンビから討伐にかかり二階からウォーリアーが来ないか注意を払う アリシア 前衛が扉を開けると同時に見えたゾンビへ通常攻撃 クリスに続いて中へ入り、同じ敵へ通常攻撃 仲間が傷ついた時は天恩天賜で回復を エントランスのゾンビが片付き二階からも降りてこない時に 一階にウォーリアーがいれば抑え継続 いない時は二階へ行く左回り組で |
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目的 まず第一にゾンビ全滅、ダニエルくんの無事 第二に犯人の捜索、確保 尾行中のダニエルくんを保護 一応、引き返すよう一度だけ進言を きっとひどく惨い戦いになる 一緒に来るなら、どうか自分が無事に帰る事を第一に考えて 君の身に何かがあれば、それこそ犯人の思惑通りになってしまう 突入前に魔術真名詠唱 DE2、FN1で其々能力を強化 突入と同時にエントランスのゾンビへ一斉射撃 敵数の減少を優先、一体ずつ各個撃破を狙う 室内の損壊に注意 エントランス制圧後は二階廊下【左回り】グループへ 廊下のゾンビを同様に各個撃破 動きに人の意思が感じられるゾンビと遭遇したら側の部屋を確認 犯人の姿があれば交戦、捕縛 逃がした場合戦闘後に痕跡を捜索 |
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屋敷に侵入前に魔術真名詠唱を済ませる。 私はダニエル君への説得と説明、護衛と見張りをさせていただきます。 ゾンビの方は皆さんにお願いしますね。 まずは自分達の素性ですね。私達は薔薇十字教団のです。 今回報告に合ったゾンビの退治と禁忌魔術を実行したものを探しています。 それゆえここからの侵入は危険ですので…その私と一緒に任務が終わるまでここで待っていてくれませんか? 貴方が墓場の様子をみてきたというのなら…わかりますね。 貴方の思う人もゾンビにされているでしょう…私達は君にゾンビを殲滅する様子は見せたくありません。それでも付いていくというのなら少々荒っぽい対応もしなくてはなりません。 貴方を守りたいんです。 |
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目的 ゾンビ殲滅 突入直前に魔術真名詠唱 仲間がドア開け次第私は中衛、ハンスは後衛から通常攻撃で邸内掃射 エントランスでウォーリアー発見時 他ゾンビとダニエルは仲間に任せウォーリアーの牽制・足止め 通常攻撃でウォーリアーの脚を狙い前衛の仲間を援護 外野からの攻撃はペンタクルシールドで防御 ウォーリアーを他浄化師に向かわせない事が第一 ハンスはチェインショットを機を窺いつつ3回まで発動、ウォーリアーの武装破壊狙い エントランスにウォーリアー不在時 仲間と共にエントランスのゾンビを全滅させた後階段へ 廊下を右回りに移動し戦闘 基本は通常攻撃で前衛の援護 味方危険時は移動しペンタクルシールド ウォーリアー遭遇時はチェインショット |
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~ リザルトノベル ~ |
●追跡者 「さて、と。もう皆気付いてるよな?」 ゾンビたちの痕跡を追って墓地から歩く途中、木々の生い茂る林道の途中で突然足を止めたロメオ・オクタードがそんな事を言い出した。 「……そうですね。そろそろ声を掛けた方がいいかもしれません」 ロメオの言葉にシャルローザ・マリアージュが応え、周りの仲間たちに視線で問いかける。 「そうですね。肝心なところで邪魔されても厄介ですし。僕が今すぐ……」 シエラ・エステスを始め、仲間たちが無言で同意する中、そう言うのはセプティム・リライズ。 「……あの私が、声を掛けてきますね」 ユウ・ブレイハートが彼の動きを片手で制し、後ろを振り返って彼女からすると大きめな声で呼びかける。 「どなたか分かりませんが、いるのはわかっています。悪いようにはしませんから、お話いたしませんか?」 彼女の問いかけに反応し、草むらから勢いよく小さな影が駆けだす。逃げる気だ。 「どこに行く気だ?」 「うわぁ!?」 しかし、いつの間にか回り込んでいたクリストフ・フォンシラーが影の行く手を遮り、その肩を掴んだ。 「子供……?」 「は、放してよ!」 捕らえた人影を見てアリシア・ムーンライトが呟く。 そう、彼らを尾行していたのはまだ幼い少年だった。 「そう簡単に放すわけにはいかないな。俺達を尾けてきてどうするつもりだったのかな?」 「それは……」 少年を抱えたまま仲間たちの元へと歩むクリス。 少年の名はダニエル・ジンガー。 事件の被害者の子供だと浄化師達が知るのは、このほんのわずか後である。 ●義憤 「弱りましたね……」 ダニエルから話を聞き出し、一通り彼の事情を知ったところでサラ・ニードリヒが困り顔で呟いた。 「お父さんを助けるんだ! 絶対! だから、つれてって下さい!」 「少し……いいですか?」 少年の前に跪いて彼と視線の高さを合わせながら、シャルローザが真剣な声音で話しかける。 「貴方が墓場の様子をみてきたというのなら……わかりますね。貴方の想う人もゾンビにされているでしょう」 ゴクリ、と少年が唾を飲み込む。辛い事だが必ず伝えなくてはならない事実である。 「私達は君にゾンビを殲滅する様子は見せたくありません。それでも付いていくというのなら少々荒っぽい対応もしなくてはなりません。貴方を守りたいんです」 「ま、お嬢ちゃんの説明はちょっと堅苦しいが。ようは坊やに怪我をしてほしくない、そして現場をみて心に傷も負ってほしくないってわけさ……」 シャルローザを援護するようにロメオが言葉を加える。 「でも……! それでも、僕が行かなくちゃ……!」 (ん……?) 拳をきつく握りぐしゃぐしゃに泣きじゃくりながら、それでも意見を曲げないダニエル・ジンガー。 その物言いにハンスは一瞬違和感を覚える。 「きっとひどく惨い戦いになる。ただ追いかけるだけが、復讐じゃないよ」 「……」 リュネット・アベールも優しくそう問いかけるが、しかし少年の意思は固そうだった。 「俺は……こいつの気持ちも分かる。許せないよな、実際」 ナツキ・ヤクトがいつもの快活さは身を潜め、少年に共感し悲し気に目を伏せた。 「僕は反対ですね。単純に危険です。下手に動かれると、僕たちにだって塁が及びかねません」 それに対し反対意見を口にしたのはセプティム。隣にいたディルク・ベヘタシオンも無言で頷いて同意する。 「とはいえ、どうする? ロープでグルグル巻きにして放置でもするかい? この森の中で?」 そこへルーノ・クロードが手で周辺の風景を指して指摘する。 そう、ここは人里離れた林道である。野生動物も出没し、安全とは言い難い。 「かといって、今から街に戻っては日が暮れてしまいます……」 一つ静かに息を吐いてサラが呟く。 「足手まといにならないんなら連れて行ってもいいんじゃないかな。ね、大人しく出来るって約束できるかい?」 「……うん」 「いいね。なかなか頼もしい少年じゃないか」 問いかけに力強くうなずくダニエルの姿にクリスは薄く微笑む。 場の雰囲気がその方向で固まりかけたとき、一つの大柄な影が少年に近づく。 浄化師の一人、ショーン・ハイドである。 「……連れて行くしかなさそうだ。だがな、ダニエルといったか」 「な、なに?」 「その怒りは本当に正義のものか? 誇りを蔑ろにされたから怒っただけじゃないのか?」 「ショーン、それは少し意地が悪い問いかけじゃないかい?」 「大事な事です、ドクター。正しさは、苦渋を伴うものですから」 苦笑いを見せるレオノル・ペリエに、ショーンはいつも通りの冷徹な口調で答える。 「わ、むずかしい事は分からないけど……」 長身のショーンから発せられる迫力にも負けずダニエルは呟く。 「でも、お父さんを助けないといけないんだ、僕が……!」 「ふぅん……ま、いいんじゃねぇの?」 絞り出すようにして言葉を吐いたダニエルのおでこをハンス=ゲルト・ネッセルローデがこつんと叩く。 「そうですね……下手に遠ざけるよりは……一緒にいたほうがきっと安全でしょうし……」 ぽつりぽつりと投げかけるように少年に話しかけるアリシア。 「でも……貴方に何かあれば……悲しむ人が、います、よね……? だから……私達の側にいてください……」 彼女の言葉にダニエルはこくりと無言でうなずいた。 その姿を見てリュシアン・アベールが微かに眉根を寄せ拳を強く握る。 「リュシアン?」 ただならぬ彼の様子に声を掛けたのは血を分けた姉、リュネット・アベールである。 「……ごめん、怖がらせたかな、姉さん。ただ、改めて犯人が許せなくってさ……」 姉を不安にさせている事に気付き、心を静めるために一息つくリュネット。 「姉さんは大丈夫? ゾンビは怖くない?」 「僕は、平気。……それより生きている相手の方が、怖い」 「……同感だ」 今度は姉を怖がらせないよう感情は表に出さず、リュネットはそう頷いたのだった。 ●正義の切っ先 「ん、あの建物が目的地、かな? ナツキ、わかるかい?」 「間違いねぇな。ぷんぷんするぜ、腐臭がよ」 獣形態から人型へと戻り、ナツキはそう答える。 「外から見た感じでは異常は感じられない……。罠も考えられるけど」 レオノルが眼鏡越しに魔力探知を試みるも異常なし。 「戦いの基本は先制攻撃。罠があるならそれごと吹き飛ばすのが有効だと思いますけど」 「駄目ですよ? あの別荘は出来るだけ損害を出さないようにって……」 「出来るだけ、でしょう?」 「……っ」 セプティムの極端な行動をいさめようとするが、逆に静かな威圧を受け言葉を飲み込むユウ。 「まあまあ、要はあの扉を開ければいいんでしょ。ここは前衛の俺が担当するよ。それから飛び道具をぶち込めばいい」 「俺もやるぜ。二人いるだろ?」 クリスの提案にすぐさまナツキも乗っかる。両開きの扉を射線を確保しながら開くには確かに二人いる。 浄化師達はお互いに目配せをしてそれぞれの配置へと動き始め、いくつかの組は事前に魔術真名を唱える。 「ダニエルくんはここで私達と一緒に待っていてくださいね」 シャルローザが、睨むようにじっと屋敷の方を見つめていたダニエルの肩に手を置いてそう告げる。 「え、でも……」 「これ以上無理をするというのなら荒っぽい対応もしなくてはなりません」 「俺達にも譲れない一線というものはある。『ここ』がそうだ」 ロメオがダニエルの前で手で線を引くようなジェスチャーをする。 「大人の忠告は素直に聞いとくもんだ。なに、悪いようにゃしないさ」 「うん……分かった」 流石に状況を悟ったらしく大人しく従うダニエル。 「さて、それじゃあ、準備はいいか? 開けるぞ?」 ナツキの言葉に一同は首を縦に振る。 「そらっ!」 掛け声と共にナツキとクリスが勢いよく開け放つ。 浄化師たちの視線の先に現れる屋敷のエントランスと――数体のゾンビたち。 「行きます!」 誰のものとも知れず発せられた声をきっかけにパーティの飛び道具持ちの者達による一斉射撃が行われる。 「見える範囲であと4体だ!」 一番扉に近かったゾンビが集中砲火を受け、跡形もなく吹き飛ぶのを確認しながらショーンが叫ぶ。 その4体の立ち位置は割とバラバラで、比較的扉に近かったものは初撃の余波でバランスを崩したり倒れたりしているが、奥の方にいた者には大したダメージを与えられていない。 「ヴァ~~!!」 ゾンビの内一体が大きな音と突然現れた人間たちに反応して扉の方へ駆け寄ってくる。 戦術も工夫もなく、ただ人影が見えたから近づこうという単純極まりない動き。 (ごめんなさい) その眉間に照準を合わせながらリュシアンが一つ呼吸を吸って引き金を引く。 「ヴォュ!」 その一撃でゾンビの頭が吹き飛ぶ。 「うっ……」 血なまぐさい戦いに慣れているとはいえあまり見てて気持ちのいい風景ではない。 誰かのうめき声が戦場に響いた。 加えてそのゾンビは頭が半壊してもなお、前進を続けていた。一歩一歩と赤子の歩みを思わせるような覚束なさではあったが。 「無理に叩き起こされて不愉快だろう」 残された体にルーノの切った九字の衝撃破が激突し、直撃を受けたゾンビの身体が潰れる。 「安らかに眠っていてくれ」 「あとは残りは……身を隠しましたか……」 サラが掲げていた占星儀を一旦降ろし、扉の方を見やる。 今まで射線上に残っていた3体のゾンビ達が、今の攻防の間に扉からは見えない死角へと移動していた。 これ以上この位置から射撃で制圧するのは難しそうな状況だった。 「なら、こっからは俺達の役目だな!」 扉の横で待機していたクリスが、身を滑らせるように屋敷の中へと入っていく。 (とりあえず、どれも似たような恰好の連中だな……。優先順位は考えなくてもよさそうだ) 中に入って素早く敵の姿を確認して状況を掴む。 「ヴォア!」 「おっと!」 自然に囲まれる形になったクリスに飛びかかってきたゾンビの攻撃を飛びのいて避ける。 「クリス……!」 クリスが中に駆け込むと同時に走り寄ってきていたアリシアが、そのゾンビに呪符から放たれた衝撃波を撃ち込む。 「ヴァ……!」 「ナイス、アリシア!」 衝撃によろけ、バランスを崩したゾンビの胴体を横一文字に切り裂く。 「よし!」 確かな手ごたえを感じ、態勢を整え残りのゾンビたちへと構えなおすクリス。だが―― 「――!? なに!?」 思いがけず足首と掴まれてバランスを崩す。 「ヴァアー!」 彼の足首を掴んだのはゾンビ――の上半身。なんとたった今クリス自身に真っ二つにされたゾンビの半身だった。 「危ねぇ!」 そこへ飛び込んできたナツキの剣の一閃がクリスの足を掴む腕と首とを同時に両断する。 いかにゾンビと言えどもそこまで破壊されてはもう限界らしい。微かにぴくぴくと痙攣するばかりでそのまま動かなくなった。 「こんな方法しかなくて、ごめんな……」 己の腕に感じた手応えに罪悪感を感じながらナツキが呟く。 「気を付けて!」 「大人しくしてて……」 そこへ走ってきたアベール姉弟がそれぞれ矢弾と魔力弾で残った二体をけん制する。 「……?」 一連のやり取りを見ながらユウの脳裏に疑問が浮かぶ。 足を掴んで動きを抑制するようなゾンビがいる割に、残り二体はその隙に襲い掛かるような連携は見せなかった。 (動きに格差があるということ?) いや、そもそも残ったのはわざわざ射線から身を隠した個体だ。戦術的な動きを「する個体」と「しない個体」で別れるのであれば今残っているのは「する個体」のはずである。 しかし、今の動きは連携がうまく行っていない。矛盾している。 もし、考えられるとすれば――、 「気を付けて! 操っている奴が近くにいます!」 「!」 ユウの言葉に場に緊張が走る。 「ヴォア!」 しかし、そんなやり取りなどお構いなしに突っ込んでくるゾンビたち。 「させません……!」 それにいち早く反応したサラが占星儀から魔力のこもったカードを射出し、突き立てる。 「よし、とどめは任せな!」 ハンスが、ボウガンの狙いをゾンビに合わせて自身の魔力を練りこむ。 「まずは一発……チェインショット!」 強力な魔力を帯びた一撃がゾンビの半身を吹き飛ばす。 「悪いな。心苦しいが……止めなきゃ被害が出るんでな」 「……」 もう一体のゾンビに対してもショーンの撃った矢弾とディルクの弾丸が同時に着弾し、その体を大きくぐらつかせた。 「徹底的に行きますよ……」 そこへ一気に距離を詰めたセプティムが、力任せに足を切りつけゾンビを転倒させる。 「この程度じゃまだ動くんでしたよね?」 地面に倒れた胴体、そして四肢を徹底的に叩き動けなくなるまで剣を叩きつける。 「待ちなよ。もう十分だ」 ゾンビの動きがもう完全に停止したところでクリスがセプティムの腕をつかむ。 ちらりと屋外のダニエルの方を見る。彼は顔をゆがめているが、しかし目を逸らさずこちらをじっと見ていた。 「そうですね……。それで、ユウさん? さっきの話は本当ですか?」 「え? ええ、おそらく、になりますけど……」 忠告を素直に受け、セプティムがゆらりと振り返ってユウに問いかける。 「ゾンビたちの動きにはムラがあります。何も考えずにこちらに襲い掛かってくる時と、戦術的に物陰に隠れたり妨害を行ってくる時……『オン』と『オフ』がある様に感じられるのです」 「なるほど、『オン』の時は術者が操っていて、『オフ』の時はゾンビが勝手に動いているというわけか」 「そういうことです」 ユウの仮説にルーノが得心がいったという様子で頷きを返す。 「彼女の意見に私も同意するよ」 続いて声を上げたのはレオノル。 「理にかなった考え方だし、それに今私にも『尻尾』が見えた」 「尻尾?」 「戦闘中なのではっきりとまでは確認できなかったけど、彼らゾンビには今現在リアルタイムで魔力が注がれている。まず間違いない」 自身の目を指して告げる。つまり、彼女の魔力探知に引っかかったということだ。 「いくら禁忌指定されている魔術と言っても遥か彼方から魔力を供給しているとは考えにくいね」 「なるほど。つまり、この屋敷の中に……」 クリスが相槌を打って同意をしようとしたその時、彼の視界の隅に何か動く物が移りこむ。 「――!」 それは二階の廊下部分から、身を乗り出す一体のゾンビ。その手には一抱えはある木製の家具を掲げていた。 そして、その直下にいるのは――リュネット。 「上だ! 危ない!」 「え?」 咄嗟に警告するが、背後――しかも真上からの奇襲にリュネットはまったく気付いていない。 如何に浄化師といえども身構えていないところに死角からあんな物が激突してはただ事では済まないだろう。 「姉さん!!」 クリスの警告に素早く反応した弟のリュシアンが姉を突き飛ばす。 「きゃあ!」 「ぐっ!」 姉に代わって家具を身に受けるリュシアン。しかし、不意に食らったわけではないし、腕で身を守ることもできた。大した怪我ではない。 「二階か!」 ショーンが咄嗟に二階へ照準を向けるが、既にゾンビの姿はない。二階廊下に設置されている腰の高さほどの壁に身を隠されてしまっていた。 「……もぐら叩きになるね」 「させねぇよ! 直接行って叩く!」 「賛成」 いち早く二階へ向かう階段へと駆け始めたナツキに、ルーノもその後を追う。 「二手に分かれよう。こうも狭いと上手く動けない」 同じく階段へ走るクリスの提案に一同は無言で頷く。 細かく話し合ってる時間は無い。右左どちらに行くかは最早阿吽の呼吸で決めるしかない。 「左右に2体ずつ、奥に1体……随分とバランスのいいお出迎えだ」 二階に上がって早々敵の配置を目視で確認しレオノルが呟く。 「まずは俺達が突っ込む! 援護してくれ!」 「このパーティ、前衛少ないよね……まあ、いいけどさ」 ナツキ、そしてクリスの二人が階段を駆け上がった勢いのまま、ノンストップで左側の敵へと駆けていく。 「では、僕はこっちで……」 呟きながらもやはり一切の躊躇いなく前に出るセプティム。その後ろにシエラが続く。 こちらは右側の廊下である。 「おりゃああ! 全力で行くぜ!」 闘気を全開にして、防御を一切考えず全力で敵に向かって突きを繰り出すナツキ。 その一撃は容赦なくゾンビの体を破壊し、その腕を吹き飛ばす。 「ヴァアア!」 しかし、突出した進撃は隙を生む。全力の突きで極端に前方に体重の偏ってしまっていたナツキの腕に、残った方のゾンビが噛みつく。 「――っ! 痛く、ない!」 しかし、最初から隙を晒すのは織り込み済みだ。咄嗟に噛みついてきたゾンビの胴体を蹴り飛ばし、深々と歯の突き刺さった腕を軽くだけはらって再び剣を構えなおす。 「今癒します……天恩天賜」 アリシアが手を掲げナツキに治癒の力を注ぐ。すると見る間にナツキの腕の傷が塞がっていった。 「サンキュ! 助かった!」 腕の痛みが消えたことを自覚すると、ナツキは一言アリシアに礼を言い、そして再び迫ってきていたゾンビの飛びつきを剣で抑えて防ぐ。 「そう何度も食らわねぇよ!」 「リュシアンをイジメた分……返すよ」 ゾンビの足が止まったところでリュネットが魔力弾を放ち、ゾンビを撃ち抜いた。 「今は静かに眠っていてくれ……」 さらに追撃で加えられるショーンの矢弾。 それによって関節を破壊され、そのゾンビは二度と動かなくなった。 「ち、厄介ですね」 ゾンビの攻撃を捌きながらセプティムが珍しく温厚な笑みを消して真顔で呟く。 シエラと二人で何とか前線を維持しているものの、明らかにゾンビたちの動きが先ほどよりも組織だっている。 (なるほど、『オン』と『オフ』。ユウさんの言ったとおりですね) そして、苦戦している理由はもう一つ。 「……確か、親父さんは元衛兵って話だったか?」 「そうね……残酷な話だけど……」 こちらの右回り組には奥に待機していたもう一体のゾンビが救援に駆けつけていた。 どうやら人数が少なくなったこちらを重点的に狙う作戦に出たらしい。 そして、そのゾンビは頑丈に鎧一式を装備し、さらには槍まで掲げている。 おそらく街を守って殉職したダニエル父の栄誉を讃えた弔いだったのだろう。しかし、今やそれがあだになってしまっていた。 狭い廊下に長い槍。相性としては最高である。 ――この場合、最悪と称するべきかもしれないが。 「一気に片を付けます」 言うや否やセプティムが一気に前に突っ込む。 「道を開きます!」 「任せときな!」 ユウとハンスがそれぞれ一体ずつゾンビへけん制の射撃を撃ち、その動きを抑制する。 「一番厄介な奴をまず潰す……!」 二体のゾンビの間をすり抜け、セプティムが鎧を付けたゾンビに迫る。 「ヴェア!」 しかし、ただでさえ狭い廊下。さらに二体もいるゾンビの間をすり抜けるのなれば通るルートはほぼ決まっている。 そこへ待ち構えるように槍を構え、迎撃せんと突き出すゾンビ。 「させませんわ……行きなさい。ペンタクルシールド」 しかし、迫る槍の切っ先にサラの放ったカードが防壁のように展開し、それを阻む。 「ありがたい」 突然の防壁に逸れた槍の横を通り、セプティムがその懐へ入り込む。 「まずは、その邪魔な鎧、脱いでもらいますよ」 セプティムの握るウッドソードが素早く十字に二度、鎧に叩き込まれる。 激しい衝突音。 ゾンビの付けていた鎧が激しい音と共に大きくひしゃげる。 衝撃で派手に後ろに吹っ飛び、廊下の窓際まで弾き飛ばされるゾンビ。 急ぎ立ち上がろうとして――、 「ヴォアッ!?」 背中に走る衝撃。 しかし、後ろは廊下の端。そんなところに敵などいないはず―― 「ま、窓ガラスくらいは必要経費でしょ」 いや、いた。ダニエルの横で構えたロメオの銃口から硝煙が立ち上る。 屋敷の外からでも窓際ならば狙える。 思いがけない衝撃に操作の手が離れたのか、立ち上がることに失敗しフラフラとよろめき、そしてゾンビは二階の廊下から――落ちた。 「……見えました! 天井にいます!」 「!」 落下したゾンビ・ウォーリアーを視界にとらえたユウが上を指さす。 彼女の眼にははっきりと階下から天井まで伸びる魔力の糸が見えていた。そして、その先にある天井に空いた不自然な穴。 「そこか!」 素早くルーノがその穴へ向けて衝撃波を放つ。 「うわぁ!!」 たやすく天井は崩れ、そこから人影が落下した。 「ぐえっ!」 二階の天井という高さから真っ逆さまに落下し、その男はあっさりと気を失う。 「あっけないといえば、あっけない幕切れだな」 「然るべき報いさ」 クリスの言葉に嫌悪感を隠そうともせずリュシアンが吐き捨てる。 そして後に残ったのは――、 「ヴァ……」 禁忌魔術の支配を離れ、肉体を損壊し、ただ立ち尽くす死体が一つ。 「お父さん!」 「駄目!」 駆け寄ろうとしたダニエルの手を掴み、その目を塞ぐシャルローザ。 これから起こることは彼の眼に触れさせたくない。その想いで一杯だった。 「あ~、シャルローザ、だっけ? ちょっと放してやってくれねぇか」 彼女にそんな声を掛けたのはハンスだった。 「でも……」 「なあ、ボウズ。お前、本当はここに何しに来たんだ? 落ち着いて答えてみろよ」 「僕は……」 シャルローザの緩んだ手元の隙間から眼を覗かせ、ハンスの問いに静かに答えるダニエル・ジンガー。 「僕はお父さんを助けに来たんだ。お父さんは街を救ったヒーローだから。きっと悲しんでる。助けてあげなきゃ」 「……つまり、お前は親父さんを倒しに来たんだな?」 ハンスの問いにこくりと頷く。 周りの浄化師達がその答えに息を呑んだ。 「いいぜ、手伝ってやる。ほら、ここに手を置きな」 ハンスはダニエルの手が届く位置でボウガンを構え、その照準をダニエルの父に合わせる。 そして、ダニエルはそっと彼の腕の上に手をのせた。 「合図はお前だ」 「うん……」 ダニエルは一つ大きく深呼吸して、父親を正面から見つめた。 「さよなら、お父さん」 『ダニエルの放った矢』が鎧に空いた穴に吸い込まれ――彼の父は再び静かな眠りについたのだった。
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*** 活躍者 *** |
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[33] ナツキ・ヤクト 2018/05/19-22:56
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[32] クリストフ・フォンシラー 2018/05/19-21:51
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[31] ルーノ・クロード 2018/05/18-22:54
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[30] レオノル・ペリエ 2018/05/18-17:37 | ||
[29] リュシアン・アベール 2018/05/18-08:20 | ||
[28] クリストフ・フォンシラー 2018/05/17-23:33 | ||
[27] レオノル・ペリエ 2018/05/17-23:18
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[26] ルーノ・クロード 2018/05/17-22:13 | ||
[25] ハンス=ゲルト・ネッセルローデ 2018/05/17-11:50
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[24] クリストフ・フォンシラー 2018/05/16-19:19 | ||
[23] ハンス=ゲルト・ネッセルローデ 2018/05/16-18:57 | ||
[22] レオノル・ペリエ 2018/05/16-17:03 | ||
[21] ハンス=ゲルト・ネッセルローデ 2018/05/16-13:35 | ||
[20] ルーノ・クロード 2018/05/15-22:45 | ||
[19] リュシアン・アベール 2018/05/15-21:58 | ||
[18] レオノル・ペリエ 2018/05/15-20:26
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[17] ハンス=ゲルト・ネッセルローデ 2018/05/15-19:54
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[16] クリストフ・フォンシラー 2018/05/15-18:08 | ||
[15] シャルローザ・マリアージュ 2018/05/15-07:02 | ||
[14] ルーノ・クロード 2018/05/15-00:07 | ||
[13] シエラ・エステス 2018/05/14-23:32 | ||
[12] ハンス=ゲルト・ネッセルローデ 2018/05/14-23:23
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[11] ハンス=ゲルト・ネッセルローデ 2018/05/14-22:40 | ||
[10] ハンス=ゲルト・ネッセルローデ 2018/05/14-22:38 | ||
[9] セプティム・リライズ 2018/05/14-21:39 | ||
[8] シャルローザ・マリアージュ 2018/05/14-20:37 | ||
[7] レオノル・ペリエ 2018/05/14-18:38 | ||
[6] レオノル・ペリエ 2018/05/14-18:37 | ||
[5] クリストフ・フォンシラー 2018/05/14-14:22 | ||
[4] リュシアン・アベール 2018/05/14-02:14 | ||
[3] シエラ・エステス 2018/05/14-01:06
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[2] ルーノ・クロード 2018/05/14-00:03 |