触れる手のひら、伝わる気持ち
とても簡単 | すべて
8/8名
触れる手のひら、伝わる気持ち 情報
担当 瀬田一稀 GM
タイプ ショート
ジャンル 日常
条件 すべて
難易度 とても簡単
報酬 なし
相談期間 5 日
公開日 2018-05-10 00:00:00
出発日 2018-05-18 00:00:00
帰還日 2018-05-28



~ プロローグ ~

「なんでそんなこと言うの!」
「そっちこそ、なんでわかってくれないんだ!」
 最初は、ちょっとした、意見の行き違いだったはず。
 それがいつのまにやら、声を荒げてのケンカになった。

「ああ、もうっ」
 相手の考えも、わからないではない。
 でも、自分の考えを、覆すことはできなくて。
 八つ当たりなのは重々承知で、あなたは力強く、床を踏む。
 その衝撃で。
「あっ……」
 近くの棚の上から、花瓶が落ちた。

 がしゃん!
 高く響いた音に、慌てて近付いてくるパートナー。
 しかし「大丈夫か」と言いかけて。
 パートナーはすぐに、そっぽを向いた。
 仲直りをしたいけれど、意固地になっているのは、相手も同じなのだ。

「ああ、もう、まどろっこしいわね!」
 そのやり取りを見ていた教団員が、声を上げた。
「ちょっと二人共! こちらに来なさい!」
 普段、世話になっている人の言葉である。
 あなたとパートナーは渋々、彼女の前に足を進め。
「手を出しなさい」
 言われたとおりに従うと、なんと二人の手首を、赤いリボンで結ばれてしまった。

「もういっそ、夜までそうして過ごしなさいよ。そうすれば仲直りせざるを得ないでしょう?」


 さて、手首を結ばれてしまったあなたとパートナーは、この後どう過ごすのでしょうか。
 仲直りはできるでしょうか。
 


~ 解説 ~

 あなたとパートナーは、夜まで、手首を結ばれた状態で過ごさなければなりません。
 並んで手を繋いだところを、リボンで結ばれている感じです。
 つまり、くっついているのは、一人の右手と、一人の左手ですね。

 日常生活の範囲ならば、なにをするにも、何処に行くにも、行動に制限はありません。
 自由に考えてみてくださいね。


~ ゲームマスターより ~

エピソードをご覧いただき、ありがとうございます。

リボンで結んであるだけではありますが、それをほどくのも、ほどけてしまうのもなしで、お願いしますね。





◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇

ラウル・イースト ララエル・エリーゼ
男性 / 人間 / 悪魔祓い 女性 / アンデッド / 人形遣い
…近寄ってるのはそっちだろ。

別に君のトイレなんか興味ないし。早く済ませてきたら?
ララエル!? え、血…?(察した)
誰かー! 誰かいませんか!? 女性の教団員さーん!

(教団ホールの椅子に座り)
(やっぱりララエルを学校に行かせるべきかなぁ)
えぇと…あれは生理と言って、別にケガをしているわけじゃないんだよ。
ララの体が、赤ちゃんを作る準備ができましたよって知らせてくれているんだ。

ちょっ、違っ…! いや、違わなくても良いけど…って何を言っているんだ僕は!

(くすくす笑い)折角だし、このリボン、夜までつけていようか。
それとさっきはごめん。もう死んでも良いだなんて言わないよ。
アユカ・セイロウ 花咲・楓
女性 / エレメンツ / 陰陽師 男性 / 人間 / 悪魔祓い
じっとしていると落ち着かないので街を適当に歩くことに

◆アユカ
酔い潰れちゃったのは悪いと思ってるし
運んでくれたのも申し訳ないなーって思ってるよ?
でも、もうちょっと別の運び方があると思うの
お姫様抱っことか?

だって…一人で飲んだら、寂しいから
でも…確かに、不用心だよね

ごめんね、かーくん
ううん、ありがとう

◆楓
若い女性が正体をなくすまで飲むなど…感心しません
別の運び方?
…それは却下です

こうなると分かっていながら何故外で飲むんですか
不用心にもほどがあります
部屋で飲めばいいでしょう

…そういう時は、私を連れて行けばいいんです
呼び出されるよりはましです

いえ、私も言い過ぎました
でも、あまり心配かけないでくださいよ
アラシャ・スタールード イダ・グッドバー
女性 / 人間 / 拷問官 男性 / 人間 / 墓守
PC口調です

目的
イダと、仲直り…

手段
繋がれたリボンが憎い

喧嘩の内容なんて忘れた
なんかひたすらあたしが怒ってる感じ
なんでこんなに腹が立つんだろ

イダからは視線がちらちら送られてくるけど
あたしはまだ怒ってる

ムスーっとしてると、イダがあたしの前に回り込んだ
オッドアイの目がじっと見つめてくる
腕がびろーんってなる
真っ直ぐな謝罪を聞いてあたしは
「あたしも…ごめん。イダの気持ち考えてなかった」
「ん、あたしも怒り疲れた。甘いものでも食べよう?」

…ふと思い立って、結ばれたリボンの手のひらをひっくり返して、イダの手をぎゅっと握る
「、だめ?」
上目遣いで窺えば、優しいいつのも頭ぽんぽんが返ってきた。嬉しい
朱輝・神南 碧希・生田
女性 / 人間 / 魔性憑き 男性 / ヴァンピール / 占星術師
★回想
簪(第二話で買って貰ったもの)を挿させて欲しいって
そう言うから渡したけど、手を滑らせて落とされて
何とか割れる前に拾ってくれたけど……
もし割れてもまた買うから大丈夫だけどね、って……
(そこから不機嫌、今に至る)

★現在
……機嫌良さそうね(されるがまま)
別に怒ってるわけじゃ……、……
……怒ってるわけじゃないのよ
勝手にもやもやしてるだけ
碧希君に悪気はなかったのもわかってるわ
寧ろ私に気を遣ってくれたんだって
でも、だって、あの簪は、

……貴方が初めて買ってくれたものじゃない

……そうね
あの時間、凄く楽しかったし
初めて、私の為に選んでくれたものだって
それが嬉しかったから
……私こそ、ムキになってごめんなさい
ラシーファ・エルダム アルティス・ディア
男性 / エレメンツ / 断罪者 男性 / ヴァンピール / 占星術師
理由は直ぐに忘れ去られるほど、些細なものだった

祓:うわああああ! 怖気が!怖気が走ります!離してください!離してくださいっ!!
喰:…うん、無理やり解いたりしないのは、結んでくれた人の気持ちも考えて及第点だよ。ただ、しかし、それ以外は0点だ。
知っているかい、感情というのは大体『相互作用』で同じだと。つまり、今の私の感情は
祓:あなたの感情なんか知りません! 離してください!!
喰:(無言で突き刺さった)……私もやはりお前の事が嫌いだよ。好きにわめくといい

数十分、叫び続ける祓。その後の互いに沈黙すること3時間(夜)

祓:…。段々、悲しくなってきました…
喰:…
祓:さっきは、混乱してて、酷いことを、言いました…
ヨナ・ミューエ ベルトルド・レーヴェ
女性 / エレメンツ / 狂信者 男性 / ライカンスロープ / 断罪者
暫らく気まずい沈黙
ロクに目も合わせられない

暖かくなってきたし観光でも行きたいもんだ

呑気に口に出した途端、
気持ちが弛んでいるやら浄化師としての自覚が足りないと
散々攻め立てられた挙句この状況。

(仕事一辺倒とは思っていたがこれ程とは)

「ベルトルドさんだけじゃないです。みなさんちょっと
浮かれすぎです」

皆浮かれているならお前も少しくらい浮かれたって何も思わんだろう

「そうじゃなくて…」

じゃあ何が不満なんだ

(結ばれている手に力が入りつつ)
「そんなの決まってます。この世界に蔓延する脅威を一つでも多く取り除く事です
その為に私たち浄化師は日々(以下抗弁)」

(あぁ。これはマズった…)

結局一日説教を聞く羽目になった。
鈴理・あおい イザーク・デューラー
女性 / 人間 / 人形遣い 男性 / 生成 / 魔性憑き
あおい(左手/オムライス)・イザーク(右手/パスタ)
昼食をとりつつ話合い

あおい:
ですから私の心配はいりません
自分の判断で動いているのですから、自己責任です
前にもいいましたが、私はパートナーとして足手まといになる気はありません


苦手なもの……蛇は苦手ですが、任務に支障がでる程では


そういうイザークさんは何が苦手なんですか
!?冗談ではなくてですか?

(笑ってはいけないけど、少し可愛いかも)
わかりました着ぐるみの集団に追われた時は私が助けます

そういえばイザークさん右手を繋がれてるからパスタ食べづらそう
どうしてこんな時にパスタなんて頼むんですか

フォーク貸して下さい
…困ったときのパートナー、なんですよね?

オデット・フレーベル キール・ヘイングス
女性 / エレメンツ / 占星術師 男性 / 人間 / 断罪者
●喧嘩の原因
一人でいたいオデットと恩人と良好な関係を築きたいキール
何かにつけて話しかけてくるキールに放っておいてほしいオデットが切れた

●会話
オ「なんでこんな事に…。もう、全部キールのせいよ!
キ「ああ、すまなかった
オ「…なんか、笑ってるように見えるんだけど。なに?
キ「これなら君が逃げる事もないと思ってな。普段はすぐにいなくなるから
オ「うわ、最悪!私は貴方と仲良くお喋りするつもりなんてないから。
だいたいいつもいつも私の事を恩人っていってくるけど、人違いだからね?
私は貴方の事なんて知らないわ
キ「忘れられてしまった事は悲しいが、まあ一緒にいればそのうち思い出すんじゃないか?
オ「そういう前向きさいらない


~ リザルトノベル ~

●あなたの、君と、生を望む

 ララエル・エリーゼは怒り顔で、教団ホールを歩いていた。
(ラウルは、死がどんなものか、知らないくせに)
 ララエルも、知っているわけではない。でも寸前までならば、経験したことはある。
 一方ラウルは、ララエルと結ばれている手首を、じろと睨んだ。
 使われているのはただのリボン。それなのに、ほどいてはいけないなんて。
(どんな罰則だ……しかも、今向かっているのは、トイレじゃないのか)

「絶対に扉を開けないでくださいね!」
「別に興味ないし、早く済ませてきたら?」
 まるで吐き捨てるように言われた言葉に、ララエルは目が熱くなった。
(ラウルが悪いのに、なんで私が悲しくならなくちゃいけないんですか)
 あの言葉を取り消してくれれば、すぐにだって許すのに。
 ララエルはため息をつきながら用を足し――。
 立ち上がったところで、悲鳴を上げた。

「きゃあぁっ、ラウル、血が、血が出てますー!」
「え、血……?」
 ラウルはつい、彼女を振り向こうとした。
 が。
(血ってことは、あれじゃないのか……!)
 それならば、自分の出る幕はないというもの。
「誰かー! 女性の教団員さーん!」
 彼は声を張り上げ、仲間に助けを求めたのだった。

 そして今。
 ラウルとララエルは、教団ホールの椅子に、並んで腰かけている。
「さっきはビックリしました……。ケガをしちゃったのかなって……」
「……あれは、ララの体が、赤ちゃんをつくる準備ができましたよって知らせてくれているんだ」
「私とラウルの赤ちゃん、ですか?」
 ララエルは、さっきの喧嘩のことなど忘れてしまったような、無邪気な顔で問いかけた。
 慌てるのは、ラウルの方だ。
「ちょっ、違っ……! いや、違わなくても良いけど……って何を言っているんだ僕は!」
 自分の体が大人に変化していることすら知らないララエルが、赤ん坊がどうやってできるのかなんて、絶対に知っているはずがない。
 それでも、正しい知識を持つラウルは、どうしたってそれを想像してしまう。
 しかし男の気持ちがわからぬララエルは、くすくすと声を立てて笑った。
「ふふふ、もう、どっちですか。おかしいですよ、ラウル」
「おかしい……か」
(ララのこと考えて、こうなってるんだけどな)

「折角だし、このリボン、夜までつけていようか」
 言えばララエルは、一気に頬を、赤く染めた。
「は、はい……。えへへ、何だか運命の赤い糸みたいです」

 赤は血。赤は情熱。生の色。
 少女はいつの間にか、ラウルの隣で、命を育むことができるようになった。

(そんなララを護るためにも、僕は――)
 ラウルが、ララエルの手をぎゅっと握る。
「……さっきはごめん。もう、たとえ復讐のためでも、死んでも良いだなんて言わないよ」
「はい、ラウルには生きていて欲しいですから」
 ララエルはそう言って、ラウルの手を握り返した。


●いつだって、隣に

 結ばれた手はそのままに。街を二人、並んで歩いている。
 じっとしていると落ち着かないし、人の多いところならば、皆、リボンなど気付かないだろうと思ってのことだ。

「酔い潰れちゃったのは悪いと思ってるし、運んでくれたのも申し訳ないなーって思ってるよ? でも、もうちょっと別の運び方があると思うの」
 アユカ・セイロウは、そう言って、傍らの花咲・楓を見上げた。
「別の運び方、とは?」
 怜悧な声に問われ、思わずうっと引きそうになる。
 が、ここで引いては負けも同じ。
 アユカは意を決し、平気なふりをして口を開いた。
「お姫様抱っこ、とか?」

 しかし。
「それは却下です」
 楓は即座に否定する。
 しかも彼は、つらつらとお説教を始めた。

「そもそも、若い女性が正体をなくすまで飲むなど……感心しません。こうなると分かっていながら、何故外で飲むんですか。不用心にもほどがあります。どうしても飲みたいのならば、部屋で飲めばいいでしょう」
 それを聞き、アユカの眉は、みるみる八の字に下がっていく。
「だって……一人で飲んだら、寂しいから。でも……確かに、不用心だよね」
 楓は深く嘆息した。
「……そういう時は、私を連れて行けばいいんです」

 アユカの足が、止まる。
「えっ……? いい、の?」
「ええ」

 ――呼び出されないよりは、呼び出された方がいい。
 でも一番は、目の届くところにいてくれること。

 その想いを隠し短く返すと、アユカは申し訳なさそうに頭を下げた。
「ごめんね、かーくん」
「いえ、私も言いすぎました」
 楓がふるり、と首を振る。
 その後彼は、さらに一言、付け加えた。
「でもあまり、心配かけないでくださいよ」

 もちろん、申し訳ないが一番。
 でも、アユカの心は、安堵にほころび、喜びに打ち震えた。。
(プライベートで飲みにいくのなんて、誘っちゃだめだって思っていたのに、誘ってもいいなんて。しかも、心配してくれたなんて!)

「ありがとう」
 まっすぐ返され、楓は思わず視線をそらした。
 アユカを迎えに行ったとき、本当は、お姫様抱っこも考えた。
 でもどうしても羞恥に勝てなくて、つい、荷物のように肩に抱えてしまった……。
 と、伏せた目に、手首に結ばれた赤いリボンが映る。
 耳に届くは、雑踏の賑やかさ。
 そういえば、ここは外……だったのだ。
 そこに立ち止まり話していたとなれば、当然楓は、周囲の目が気になるわけで。
「と、とりあえずこの場から離れましょう」
 いきなり足早に進み始めた楓を、アユカは不思議そうな顔で追いかけたのだった。


●「ごめんなさい」には続きがあって

(早めに仲直りしないとな。……アラシャ、こう見えて、怒るとめちゃめちゃ頑固だから、こじれたら厄介だ)
 イダ・グッドバーは、隣にいるアラシャ・スタールードに視線を向けた。
 彼女は今、リボンで結ばれた手に力を込めて、腕も指も、真っすぐに伸ばしている。
(俺には触れたくないってことか。ったく、喧嘩の理由なんて覚えてねぇが……)

 そのイダの視線に、アラシャは当然気付いていた。
 だが、彼の顔を見る気にはなれない。
(なんでこんなに腹が立つんだろ)
 イダとアラシャをつなげている、たった1本のリボン。
 それを、今すぐ切ってしまいたいくらい憎く感じているなんて
(喧嘩のきっかけなんて、もう忘れちゃってるのに)。

 もしこのままアラシャと仲直りできなければ、今後の活動にも支障がでてしまう可能性がある。
 イダは、ちらちらとアラシャを見やった。
(そのへん、アラシャはどう思ってるんだ?)
 いつも以上に感情が消えた表情からは、アラシャの考えていることは、わからない。
 ただ、前は立場が逆だったなと思うと、イダの唇には自然と笑みが浮かんだ。
 そもそも、むすっとした表情だって、アラシャは十分かわいいのだ。

 だがその笑みが、アラシャは気に入らない。
(なんでいきなり笑ってるの。あたしはまだ怒っているのに)
 無意識に唇がへの字にゆがみ、手がこぶしをつくる。

 リボンで結ばれた手の形が変わったことは、イダをより困惑させた。
(これ以上放置するのはまずいな……それに、なにより、俺が限界だ)
「アラシャ!」
 イダはつながれていない方の腕を大きく開いて、アラシャの前に立ちふさがった。
 そして、アラシャの青空色の瞳を見つめ――。
「ごめん。俺が悪かった。仲直りしたい」

(そんな、いきなり……)
 アラシャは、イダのオッドアイから目をそらした。
 胸の中がもやもやぐるぐるして、落ち着かない。
 黙っているアラシャに、イダが、さらに言葉を続けてくる。
「俺も言葉が足りなかったからな。本当にすまなかった」

 頭を下げての二度目の謝罪は、怒りに熱くなったアラシャの心を、一気に溶かしていった。
「あたしも……ごめん。イダの気持ち考えてなかった」
 言えば、イダの顔が、ぱっと上がる。
 その表情が、笑顔に変わるのを見たくて。
 アラシャはにこりと微笑んだ。
「あたしも怒り疲れたし、甘いものでも食べよう?」
「甘いものか、いいな」
 ふわり、期待通りにイダが笑う。
 これで、仲直りは終わり。
 ――の、つもりだったのだけれど。

 アラシャは手のひらをひっくり返して、イダの手をぎゅっと握った。

「……だめ?」
 イダに問うのは桃の唇。上目使いの瞳が、不安に揺れている。
「だめなわけないだろ」
 イダはアラシャの小さな手を握り、逆の手で、金の頭をぽんぽん、と撫でたのだった。


●思い出彩る朱色の煌めき

 ゆらゆらと、リボンで結ばれた手が、大きく揺れている。
 揺らしているのは碧希・生田だ。
「……機嫌良さそうね」
 朱輝・神南は、引っ張られる手はそのままに、唇を動かした。
 碧希の目が、ぱちりと瞬く。
「だって朱輝、ずっと怒ってて素っ気なかったから」
「別に怒ってるわけじゃ……」
「えー?」
 碧希は大きな声を出した。
「だってずっと何話しかけてもそっぽ向いてたしー……」
「……怒ってるわけじゃないのよ。勝手にもやもやしてるだけ」
 言って、朱輝は目をふせる
「……碧希君に悪気はなかったのもわかってるわ。寧ろ私に気を遣ってくれたんだって」

 ――そう、わかっている。
 それでもこんな態度をとってしまうには、それなりの理由がある。

 朱輝は、以前、碧希と一緒に出掛けた水上マーケットのことを、思い出していた。
 さんざん歩き回ってお腹がすいて、立ち寄った食堂で。
 驚かせようと思ってこっそり買っておいたのだと言って、碧希は、簪をプレゼントしてくれた。
 キラキラと輝く、朱色の硝子玉。
 トンボダマというらしい、と教えてくれた。
 店員が、ニホンから仕入れたと言っていた、とも。

 その、簪を。
 挿させてほしいといって受け取って、手を滑らせてしまったのは、誰にでもあることだ。
 床に落ちる前に受け止めてくれたから、簪には傷ひとつついていない。
 だから、それについては責めることはない、のだけれど。
(でも……もし割れたら、また買うから大丈夫だけどねって一言が……)
 朱輝には、どうしても、受け入れられなかった。

「だって、あの簪は……貴方が初めて買ってくれたものじゃない」

「……そっか」
 碧希は呟き、微笑んだ。
「朱輝はあれ、ちゃんと大事な想い出にしてくれてたんだ」
 あの簪を見た瞬間、絶対朱輝に似合うと思って、すぐに購入した。
 朱輝が生まれたニホンのものだというのも、ちょうどいいと思った。
(それを、そんなに喜んでくれていたなんて)
 朱輝は、その時を思い出すように、懐かしそうな顔をした。
「あの時間、凄く楽しかったし、初めて、私の為に選んでくれたものだって、それが嬉しかったから」

「ごめん。俺、何だか嬉しいや」
 碧希の言葉に、朱輝は並ぶ彼の顔を見る。
「朱輝がそんな風に思ってくれてるなんて、思ってなくてさ」
 ――ありがとう、と、碧希は言った。そして「改めて、ごめん」と。
「……私こそ、ムキになってごめんなさい」
 朱輝は素直に、頭を下げる。
 トンボ玉と同じ、鮮やな髪がふわりと揺れた。

 まっすぐな気持ちには、まっすぐな想いを。
 それが二人のまっすぐな未来につながることを、素直な二人はすでに、知っているのだ。。


●見えぬ心、広がる波紋

「うわああああ! 怖気が! 怖気が走ります! 離してくださいっ!」
 ラシーファ・エルダムは、アティアス・ディアと結ばれた手首を、ぶんぶんと振り回した。
 その駄々っ子のようなしぐさに、アティアスは呆れた顔をする。
「……うん、無理やり解いたりしないのは、結んでくれた人の気持ちも考えて及第点だよ。ただ、それ以外は0点だ」

 ラシーファは怒っていてなお、アルティスの言葉を聞き逃さず。
 きらりと輝く瞳で、彼を見た。
「知っているかい、感情というのは大体『相互作用』で同じだと。つまり、今の私の感情は」
 説教するではなく、理論で語りかけてくるアルティスが、ラシーファには忌々しい。
 声は聴けても、頭は冷静とはほど遠いのだ。
「あなたの感情なんか知りません! 離してください!!」
 ぐいっと思い切り腕を動かすと、肘が、アルティスの胸にぶち当たった。
 ぐ、と小さく呻き、アルティスはため息をつく。
「……私もやはりお前の事が嫌いだよ。好きにわめくといい」
「なんですか、その言い方は! あなたはいつもそうです!」
 ラシーファは声を張り上げた。
 だが「そう」と言っても、それを具体的に言うではない。
 ただひたすら、ずるい、大嫌いだ、もう嫌だ、と繰り返す。

 数十分もそれが続き、その後は沈黙三時間。
 光が差し込み明るかった室内は、いつの間にか、薄暗闇になっていた。
 その中で、並んで椅子に座って、二人。
 ラシーファが、ぽつりとつぶやく。
「段々、悲しくなってきました……」
 アルティスは、ラシーファを、無言で見やった。
 さんざん暴れていた彼は、今は体からすっかり力を抜いている。
「さっきは、混乱してて、酷いことを、言いました……」
 ゆったりと上がった、ラシーファの顔。
 昔から変わらないまなざしには、もう怒りは映っていない。
 彼は言った。
「すみません、泣きそう、です。……触れている、あなたの手の温かさが、つらいんです」

 その心の底から吐きだしたような言葉、アルティスは瞳を細めた。
 一度上げた視線を、再び下げて、ラシーファは続ける。
「騒いでいたときも……大嫌いだと、喧嘩しているのに、ただ、あなたの手の温かさを感じることが怖くて辛くて……」
 そこで彼は、再びアルティスを見上げた。
「──ゆるして、ください。これ以上は、僕の気が触れそうです」

「……最初から、我慢をせずにそう言うものだよ」
 アルティスは正面から、ラシーファの体を引き寄せた。
(……君には笑っていてほしいが、愛おしい、だけではない)
 だから、アルティスはラシーファに、意地悪をした。
 彼から謝罪をしてくるように、時間を与えたのだ。
 喧嘩の理由なんて、もう覚えていない些細なことだったというのに。

 アルティスは、繋がれた手を握り、逆の手で、ラシーファの背中を抱いた。
 その口角が少しばかり上がったのは、胸に顔を寄せているラシーファには、見えなかった。


●平行線の間柄

「ベルトルドさんだけじゃないです。みなさんちょっと浮かれすぎです」
 ヨナ・ミューエは、愛らしい顔を歪め、呟いた。
「皆浮かれているなら、お前も少しくらい浮かれたって何も思わんだろう」
 ベルトルド・レ―ヴェが、視線をそらしたまま言葉を返す。

 ――暖かくなってきたし、観光でも行きたいものだ。
 先ほど、ついうっかりこんなことを言ってしまったせいで、ヨナを怒らせてしまったから、目を合わせたくないのだ。
「まったく、気持ちがゆるみすぎです! 浄化師としての自覚が足りないのでは?」
 どう見ても少女にしか見えないヨナに厳しい顔と口調で叱責され、正直、辟易もしていた。

(仕事一辺倒と思ってはいたが、これほどとは)
 ベルトルドは、ため息をつく。
 ヨナには若い女性らしく、心が華やぐことはないものか。
 いや、なかったからと言って問題はないが、少しくらいは。
 新人とはいえ、日頃真面目にしているんだ。ちょっとくらい何かしたって、文句を言う者などいない――。

 余計なことは口にせず、黙ったままのベルトルドの隣で、ヨナはふるりと首を振った。
「皆がどう思うとか、そうじゃなくて……」
「じゃあ何が不満なんだ」
 聞けば、ヨナの小さな手に、力が入る。
「そんなの決まってます。この世界に蔓延する脅威を一つでも多く取り除く事です。その為に私たち浄化師は日々……」

 その後、語りは延々と続く。
(あぁ。これはマズった……)
 一刻も早くこの話題を終わらせるにはと考えて、思いついたのは、そろそろ食事の時間だということだ。
(いくら真面目だって腹は減るだろう)
 内心でにいと笑んで、しかし表情は真顔のまま。
「なあ、腹も減ったから食事にしないか」
 ベルトルドは、話の腰を折るつもりで、聞いてみた。
「このリボンも不便だし、別に外してもいいだろう」

 しかしヨナは「ダメですよ」とあっさりきっぱり、一刀両断。
「これは先輩方にご迷惑をおかけした罰なのですから」

(……真面目にも程がある)
 ベルトルドは、結ばれたままの手首を見下ろした。
(こんなの、子供の悪戯みたいなものだ。とったって誰も文句は言わないだろう)
 思うがけして、言葉にはしない。
 言えばヨナが、また十倍以上の単語を費やし、つらつらと語ってくることは明らかだからだ。
(こんなところ、同僚に見られたらたまらんな)

 ヨナはまだ、ベルトルドに、説教を続けている。
 それを右耳から左耳へと聞き流し、手の拘束もほどかぬまま、ベルトルドは周囲を見やり――。
 親しい仲間と目が合って、もう一度深く、ため息をついたのだった。


●一人より、二人

 教団内の食堂。オムライスとパスタを前にして。

「俺を巻き込みたくないというのは予測がつく。しかしそれでは何の為のパートナーだ?」
 鈴理・あおいは、イザーク・デューラーを睨みつけた。
「私の心配はいりません。自分の判断で動いているのですから、自己責任です。前にもいいましたが、私はパートナーとして足手まといになる気はありません」
 しかしイザークは、あおいのきつい視線にも、厳しい言葉にも動じない。
「足手まといの何が悪い? 君も苦手なものの一つや二つあるだろう」

「……蛇は苦手ですが、指令に支障がでる程では」
 眉間にしわ寄せ、あおいは言った。
 きっと言いたくはないことだっただろう。
 それでも答えるあおいの実直さが好ましく、イザークは思わず、笑みをこぼしそうになる。
 だがそうすれば、彼女は自分の苦手を恥じ、新たな誤解を生みかねない。
 イザークは、顔を引き締め、ふむとうなった。
「蛇か……足が鈍ったら私がカバーする。その分、指令が進行しやすくなると思わないか?」
(パートナーとして、でダメなら、指令に関係すると言ってやればいい。まじめな彼女はこれで、少しは気に留めるだろう)

 あおいは一瞬黙り込んだものの、すぐに「そういうイザークさんは何が苦手なんですか」と問い返した。
 彼の言い様ならば、イザークにも不得手なものがあるはずだからだ。
「実は……着ぐるみ人形が苦手なんだ」
「……冗談ではなくて、ですか?」
 イザークは、いつもより幾分小さな声で語った。
「義母が弟と俺を遊園地へ連れていってくれた際に……」
 笑顔で固まった顔で見下ろしてくる巨体に、プレッシャーを感じたのだ、と。
「今でも姿を見ると、当時の記憶がな」

 正直、いつも背を伸ばし、凛と構えているイザークが、着ぐるみを怖がっていると思うと、ギャップと愛らしさに笑ってしまいそうになる。
 だが、あおいの苦手なものを知っても真摯に受け止めてくれた彼に、それはあまりにも失礼だろう。
 あおいは真剣な顔で、イザークを見つめた。
「わかりました。着ぐるみの集団に追われた時は私が助けます」
「ああ、よろしく頼む」

 イザークはそう言って、やっとフォークを手に取った。
 あおいも右手に持ったスプーンで、オムライスをすくう。
 ――が。
 イザークは、フォークの先でパスタを混ぜるだけ。
 利き手の右手を結ばれている今、左手ではうまくフォークが使えないのだ。
「フォーク貸して下さい」
 あおいはイザークの前に右手を差し出した。
「いや、食事は自分で……」
 と、迷うらしい彼に。
「……困ったときのパートナー、なんですよね?」
 言ってやれば、彼が苦笑する。
「……ありがたく頼らせてもらおう」

 あおいの右手がフォークを握り、器用にパスタを巻いていく。
 イザークはそれを、微笑ましく見つめたのだった。


●記憶と想い 対立の末に

 命の恩人だと言われても、覚えていないものは、覚えていない。
 それなのに、毎日毎日「思い出して」と懇願攻撃。
 うるさいにもほどがある。
 しかも、来たくもない教団に連れてこられて、そのまま流れでエクソシストにされて。
 今日は手まで、結ばれてしまった。

「なんでこんな事に……。もう、全部キールのせいよ!」
 オデット・フレーベルは、自分の頭上はるか上にある、キール・ヘイングスの顔を睨みつけた。
「ああ、すまなかった」
 キールはおっとり謝罪する。が。
「……なんか、笑ってるように見えるんだけど」
 言えば、キールの唇に、柔らかな笑みが浮かんだ。
「これなら君が逃げる事もないと思ってな。普段はすぐにいなくなるから」
「うわ、最悪!」
 オデットは大きな声を上げた。
「私は貴方と仲良くお喋りするつもりなんてないから。だいたいいつも私の事を恩人って言ってくるけど、人違いだからね? 私は貴方の事なんて知らないわ」

 投げやりな口調で言われ、キールはふっと息を吐いた。
(まあ……オデットは当時の時点で結構歳だったようだし、仕方ないだろう)
 だが、頭ではそうわかっていたとしても、心の底から納得するというのは難しいものだ。
 だから、キールは希望を口にする。
「忘れられてしまった事は悲しいが、まあ一緒にいればそのうち思い出すんじゃないか?」

(またあんなこと言ってる!)
 オデットは嘆息した。
 まったく、不仲な家族も嫌だったが、かまわれすぎるのも、困りものだ。
 知らないことを思い出せるはずもないのだから、早く諦めてほしい。
(そうすれば私は、気ままな森暮らしに戻れるかもしれないもの)
 誰も邪魔する者のない森は、うるさい人も、面倒くさい人間関係もなくて、ちょうどいい。
 それなのに、キールは微笑み、声をかけてくる。
「気長に行こう」
「そういう前向きさいらない」
 オデットは、彼の言葉をばっさり切り捨て――、はたと気づいた。
(そうよ、キールの恩人が私じゃないって、証明すればいいんだわ)

「私、あなたの本当の恩人探しを手伝ってあげる。その代わり、本物が見つかったら、私のことは放っておいて!」
 キールは樹木のごとき色合いの、両の瞳を見開いた。
 オデットが、本当にすべてを忘れて、思い出す気がないことも、キールを拒絶していることも悲しい。
(……でも)
 これはおそらく、一緒に行動するための好機。彼女なりの、譲歩なのだ。
「わかった。その条件をのもう」
 キールは笑顔で応え、結ばれていない方の手を、金の頭にとんと置いた
「それまで、よろしくな」
 しかし。
「私は子供じゃないわ! 馴れ馴れしくしないでちょうだい!」
 オデットはキールの手を力いっぱい払いのけ、そっぽを向いたのだった。


触れる手のひら、伝わる気持ち
(執筆:瀬田一稀 GM)



*** 活躍者 ***

  • 鈴理・あおい
    やるべき事を成す、それだけです。
  • イザーク・デューラー
    彼女の行く末に祝福があらんことを

鈴理・あおい
女性 / 人間 / 人形遣い
イザーク・デューラー
男性 / 生成 / 魔性憑き




作戦掲示板

[1] エノク・アゼル 2018/05/08-00:00

ここは、本指令の作戦会議などを行う場だ。
まずは、参加する仲間へ挨拶し、コミュニケーションを取るのが良いだろう。  
 

[7] オデット・フレーベル 2018/05/17-23:44

やだ、ぎりぎりになっちゃった。
私はオデット。パートナーはそこのキールって人。
よろしく…っていうのもなんか変だけど、まあお互い頑張りましょうか…。  
 

[6] イザーク・デューラー 2018/05/16-00:11

イザークとパートナーの鈴理あおいだ
リボンで結ばれるとは思わなかったが
一度きちんと話し合っておくのも悪くはないのかもしれない。

あちこちに同じようにリボンで結ばれてる御仁たちがいるようだな。
……お互い頑張ろう  
 

[5] ベルトルド・レーヴェ 2018/05/15-09:57

こりゃ、参ったな…  
 

[4] ララエル・エリーゼ 2018/05/14-11:38

こんにちは、ララエルです。それで、この手にくっついているのがラウルです。
ラウルってばひどいんですよ、いつもベリアルベリアルって!
命は大切にしなきゃいけないのに!
もぉ~、何を頑張れば良いのかわからないですけど、頑張ります!  
 

[3] アラシャ・スタールード 2018/05/13-20:53

 
 

[2] ラシーファ・エルダム 2018/05/13-01:40

おじゃまします。僕がラシーファ、不本意ながらこの手の先にいるのがアルティスです。
顔も合わせず逃げ出したいときに、こんな事が!
ですが、リボンは解くのも解けてしまうのも禁止。…胃がキリキリしそうですが、仲直りできるのでしょうか……頑張りますが、不安です。一応、最大限の努力はしつつ……頑張ります。