~ プロローグ ~ |
地面から天に向かって伸びる背の高い木々の合間から、陽光が降り注ぎ地面にまばらに揺らめく影を描く。木の葉は朝露に濡れて雫が光っている。 |
~ 解説 ~ |
●目的 |
~ ゲームマスターより ~ |
ここまでプロローグをお読み下さり、ありがとうございます。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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【目的】 大量発生したジェルモンスターの討伐 【フェイズの行動】 得意配置は後衛だがスキル、所持してる武器の関係上、中衛の位置に配置 中衛という距離を生かして戦闘フィールドを視野に入れ、敵の配置、動き等を観察 その情報を仲間に知らせつつ、前衛にいる仲間の援護射撃を行う 攻撃はボウガンによる通常攻撃とスキル「ワーニングショット」を使用 【リリィの行動】 前衛の位置、彼女としてはフェイズの前に立ち文字通り盾になる所存 盾で敵の攻撃を防ぎつつ大鎌、紅ノ月にて通常攻撃 敵が多く押し寄せた場合はシールドバッシュで敵を後退させる 【撤退条件】 すべて掃討するのが望ましいが負傷者が半数出た際には撤退 負傷してない半数が負傷者を抱える |
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◆朝日 いやあ、個体で見るとなんだか微笑ましくもある存在だけれど… こんなに沢山居ると迫力があるね? 出来る限り討伐しよーう! ◆戦闘 後衛 真昼くんと同じ敵を狙う様に戦うよ ジュエルモンスターに囲まれそうな人が居たらそちらを優先するね 皆の体力に気を配りつつ、もし同じ後衛で近くに居る味方がピンチになったら庇いたいな まだ回復の術も覚えていないけれど、SH1のお陰でちょっと頑丈だからね 毒を持った個体の識別が出来ないか意識したいな 色の違い等で識別が出来そうならその情報を皆に共有するよ ◆撤退 負傷者半数以上で撤退 撤退時こそ重要! 魔術真名をして追撃等の対策をするよ 可能なら重傷の人の撤退を手伝う 皆で無事に帰ってこないとね |
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今回の指令が浄化師としては始めての仕事、初陣です。 ルーキーとしてまずはしっかりと皆さんに挨拶をします。 戦闘 基本的に中衛からの支援で。 最初からガッツリ行かず序盤は周りの様子見しつつ軽く、ポジショニングを確認しつつ立ち回りを考えながら連携行動を。 「スライム相手なら演習通りで大丈夫みたいね♪」という感じかな? ボス戦については余裕がありそうなら(残りMPとか)支援として加勢できるかも。 |
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・ツバキ 見た目が見た目だからちょっと気が抜けそうねぇ でも油断するとケガするから気を付けないと 味方から離れないようにしながら、サザーと協力して1体ずつ倒すわ サザーとスライムの距離が開いたとこに割り込んで、 こっちからは仕掛けずにカウンターで攻めるわ それまでは他のスライムの動きを警戒かしら ・サザーキア きらきらのぷよぷよニャー! え、これ敵?ニャー……(しょぼん) 攻撃は1回か2回やって、その後はツバキの後ろに隠れるの繰り返しニャ 運良く回避できたらさらにもう一回攻撃ニャ! スキルは一回もダメージを与えていない敵に当てていっぱい削るニャ! みんなが撤退していくのを見たら、まだ体力が大丈夫でも撤退するニャ! |
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(戦闘前、ララエルに) いい? 魔力(MP)が尽きたら、すぐに後方へ下がるんだよ? もう一度言う。絶対に後方へ下がって隠れているんだ。 (アブソリュートスペル詠唱) ベリアル以外に恨みはないけど――! (そんなモンスターまで狩れだなんて、教団は何を考えているんだ) (戦闘に関してはド素人なので、以下ララエルと同文) (通常攻撃で通常サイズのスライムを撃ち抜く。 大きいサイズが出てきたら、魔力が尽きるまでチェインショットでダメージを 加算させる) ララエル、もういい、戻れー!! (戦闘後、ララエルに) どうして下がらなかった!? 死ぬ可能性だってあるのに、なんで…! 頼むから無茶な事はしないでくれよ…! 君が大事なんだ…! |
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ぽよぽよして可愛らしく見えるけど 沢山で襲い掛かられたら潰れちゃうものね 毒もあるのだったら余計にたいへん 気をつけないと 数も多いし 自分たちだけが突出することのないように 湖が近づいてきたら 音や気配に注意する 敵と遭遇したら魔術真名使用 前衛に出るシリウスに 気を付けてねと声をかけて 中衛位置に布陣 前衛の不意を撃とうとするジェルモンスターを優先して狙う 個体の色や形に注意 毒のある敵がわかれば 仲間に周知します 仲間が毒を受けたら 下がってください 今回復します と 四神浄光・壱で回復 大きなジェルモンスターが出てきたらそちらを優先 接近されないよう 魔法攻撃 拘束された人がいたら 救出を優先します 仲間全体の半数が負傷したら撤退 |
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【目的】 思う存分スライム討伐! 【行動】 敵を発見次第、魔術真名を詠唱 珠樹&千亞、共に前衛へ なるべく足場の良い場所を見つけ、そちらに誘導するように動く 狙いはより大きな個体 珠樹「私達はこちらを狙います!」等、声がけして仲間に状況を共有 特に毒を持つ個体に関しては 他スライムとの違いなどを確認し、仲間に伝える ●千亞 機動力と回避を活かしてヒット&アウェイ スライムに取り込まれないよう留意 ●珠樹 MP尽きるまでスキル「乱打暴擲」多用。 例えスライムに取り込まれても、可能ならば体内で暴れる ・仲間との連携を意識、突出せぬよう留意 ・毒に侵されたらリチェルカーレさんに解毒願い ・負傷者が半数で撤退。自身が無事なら抱えて撤退。 |
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毒持ちの敵を警戒、撃破優先 外見が異なる個体を見つけたら味方に伝達、警戒を促す 毒を受けたら個体を確認、毒持ちの情報として味方と共有 撤退は味方と同時 ■ルーノ 後衛と同じラインで行動 退路を意識し、退路を塞ぐ敵は排除 後衛に向かう敵を攻撃、接近前に倒したい 特に解毒可能なリチェルカーレへの攻撃は妨害 次点で劣勢な味方を援護 攻撃されたらSH3で対抗 ■ナツキ 最前線で行動 小型を攻撃、後衛から注意を逸らす 味方が拘束されたら解除へ向かう 大型多数で味方が対応しきれない場合、大型の足止めに回る 味方劣勢時は加勢 突出には注意するが、味方劣勢時は考慮しない 特に大型に取り込まれた仲間は迅速に救出 大型対応時、劣勢時の加勢はJM2使用 |
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~ リザルトノベル ~ |
薔薇十字教団から「可能な限りジェルモンスターを討伐せよ」と指令を受け、樹梢湖のある森の入り口付近に浄化師達は集まっていた。 森の入り口にはジェルモンスターの姿形もない。木々のざわめきが森の静謐さを際立てていた。 「さて、教団の一員としては初陣となる訳だ」 どう見ても17歳ぐらいにしか見えない柔和な青年。フェイズ・リンがのんびりと自身パートナーであるリリィ・ドールに話しかける。 「どうぞ気を抜かぬよう……お気をつけなさいませ」 品よくメイド服を着こなしたリリィが主人を窘める。 少々過保護ぎみなリリィに相変わらずだなぁと内心思いながら、フェイズ・リンは頷く。 「はいはい、了解してますよ」 人懐っこく微笑むとフェイズは茶化すように返事した。 「はい、は一回で結構です。フェイズ様」 「は、はい……」 礼儀作法に厳しいリリィが咎めると、怒られた子犬ようにしゅんとする。そんなフェイズにリリィは目元を和らげると、 「それでは皆様に挨拶をなさいませんと」 「分かった。どうやらあちらで顔合わせしているみたいだし、俺達も行こうか」 「はい、フェイズ様」 存外マイペースなフェイズの後を三歩下がってついて行く。 「先輩方、初めまして。私はクロエ・ガットフェレスと申します。こちらは私のパートナーであるロゼッタ・ラクローンです」 「私達これが初陣なのでよろしくお願いしますね」 二人が美しい所作で他の仲間達に挨拶する。気取ったところはないのに気品ある二人に呆気にとられていた仲間達も続々と互いに自己紹介を始める。 「私はツバキ・アカツキ。こっちはサザーキア・スティラ……あら、どこ行ったのかしら?」 ツバキが相方を捜すように見渡すと、サザーキアが森の中へと入って行くのが見えた。 「サザー、あーもう本当に大人しくしてないんだから……」 頭を抱えたツバキが後を追う。それに続くように全員がなし崩しに森へと突入した。 鬱蒼とした苔の小道を進んで行くと、弾むような柔らかな苔の感触に楽しげに足を踏みしめているサザーキアの姿を発見する。ツバキはその首根っこを捕まえ振り向かせる。 「サザー、勝手に行っちゃダメじゃない」 「ツバキー見てニャ、きらきらのぷよぷよニャー」 サザーキアが指差した方を見る。小道の曲がり角に差し掛かったところに、ジェルモンスターの群れが飛び跳ねていた。 「……サザー、残念だけど。あれは敵よ」 「え、これ敵? ニャー……」 サザーキアの尻尾がしょぼんと下がる。 ジェルモンスターは透明な水の塊だ。光を反射して水晶のような水は透き通ってきらきらとしている。 その中で一匹だけ場違いなまでに毒々しい紫色の奴がいる。瘴気出ていても不思議ではない禍々しい色に否が応にも視線が集中する。 あ、これ毒持ちだ。 「一目で分かったな……」 その言葉に誰もが頷いた。 「とにかく倒すよ、珠樹!」 「ええ、行きましょうか。千亞さん」 真っ先に動いたのは明智・珠樹と白兎・千亞だった。魔術真名を唱えると同時に駆けだした。 「『乱打暴擲』」 珠樹が手に持ったピコルンハンマーでジェルモンスターを乱れ打ちする。殴打されたジェルモンスターは、ただの水となって地面に溶けてしまった。 「そのピコピコする武器、気が抜けるんだけどね!」 千亞は上着を翻しながら、ジェルモンスターに攻撃する。 「うわー、どいつもこいつも1メートルぐらいあるぜ。大型だったら、どれぐらいあるんだ?」 ナツキ・ヤクトがジェルモンスターを見て感心したように声を上げる。 「ジェルモンスターは中型生物に属します。通常個体でもこれぐらいの大きさのものが普通だそうです」 クロエの丁寧な質問に感心したようにルーノ・クロードが呟く。 「随分と詳しいね」 「私たち演習でジェルモンスターと戦ったので、その時に調べてみたんです」 そう話しながら、クロエは器用にプロージョンを発動させる。 「よっしゃ! 俺らも行くか!」 機嫌良さそうに尻尾を振りながらナツキが飛び出して行くのを、ルーノは苦笑いして見守る。 「やれやれ、私も給料分は働こうかな」 そう言うやいなや、仲間に飛びつこうとしたジェルモンスターにロッドから魔力弾を放つ。 「そりゃっ!」 ナツキが剣で切り裂くが、ぷるんと震えると元に戻ってしまう。 「魔力でできている生物ですから、魔力の核に直接ダメージを与えるか、生命活動に使っている魔力を消耗させないと消滅しませんよ」 クロエが補足すると、 「とにかく斬って斬りまくればいいんだな」 「はい、それで間違ってはいませんね」 ナツキは軽く頷き、勝手に納得してしまった。倒し損ねたジェルモンスターはロゼッタが放ったアルカナソードにより止めが刺された。 「ニャんだこれ、楽しいニャー!」 「サザー、あの紫色では遊んじゃダメよ」 「ツバキ、ツバキ! ぷよぷよしてたニャ! 弾むのニャ!」 興奮気味にジェルモンスターにちょっかいを出して遊んでいるサザーキアを見てツバキはため息をつく。 「聞いてないわね……とにかく、紫のやつとは遊んじゃダメよ」 ジェルモンスターをボールのように弾ませていたサザーキアは、勢い余って水風船のように破裂させてしまう。 「ニャ!」 驚きで尻尾と耳をぴんと立てたまま、ジェルモンスターだった水溜まりを見ていた。 「……気の抜ける生物だな」 跳ねながら近づいてきたジェルモンスターを視界に入れると、シリウス・セイアッドが僅かに呆れたように呟く。 「『黄昏と黎明 明日を紡ぐ光をここに』」 二人は手を重ね、静かに魔術真名を唱えた。 「シリウス、気をつけてね」 「リチェ、お前も不用意に前に出るなよ」 リチェルカーレ・リモージュの言葉に無言で頷くと、シリウスはそう小さく返した。 元より油断する気はない。毒があり、大量に出現するなら尚更だ。 「『魂洗い』」 閃光が奔る。剣を帯刀状態に戻したときには、ジェルモンスターは水となって消えていた。斬られたことすら認識できなかっただろう。 リチェルカーレも毒持ちを足止めする為、杖を振るって魔力弾を放つ。すると、まともに魔力弾を受けた毒持ちが転がる。 「ベリアル以外に恨みはないけど――!」 その隙を突きラウル・イーストがチェインショットで毒持ちを撃ち抜く。毒持ちは弾け飛ぶようにして消滅した。唯一の毒持ちが消滅し、安堵すると同時に教団への怒りが沸き起こる。 (こんな生物まで狩れだなんて、教団は何を考えているんだ) そんなラウルを彼のパートナーであるララエル・エリーゼが何か決意をした目で見ていることに気づいていなかった。 「フェイズ様、魔術真名を」 「ああ、リリィも俺を庇おうとして無茶はするなよ」 「私はフェイズ様の盾ですから」 頑として聞き入れないリリィにため息をつくと互いの両手を合わせる。 「俺はリリィに無茶してほしくないんだけどな……」 「申し訳ありません。それは聞くことはできません。……フェイズ様よろしいですか?」 話題を逸らされたことに気づいていたが、フェイズは今のところ追求するのは止めた。 「『我は破魔の弾丸なり』」 二人がそう唱えると全身の魔力が激しく鳴動するのを感じた。 「聞いてたより少ないねー」 「奥の方にいるのかもな。こいつらは、はぐれかもしれないぞ、真昼ちゃん」 攻撃している仲間の分まで周囲を注意深く観察していた降矢・朝日が首を傾げる。籠崎・真昼はパートナーに注意を促す 実際に攻撃されたジェルモンスターは怒ったのかそれとも構ってくれると思ったのか分からないが、動きが激しさを増す。 千亞が攻撃したジェルモンスターがじゃれるように飛びつくのを、辛うじて避ける。体勢を崩してしまうが、 「さっきのお返しだよ!」 すぐにパーフェクトステップによって立ち直ると、剣舞を踊るように短刀で切り裂いた。 「あぁ、千亞さん! 額に浮かぶ汗すら美しい!」 「真面目にやれド変態」 戦闘中でなければ蹴り一つでも入れるのに、と思いながら千亞は敵の動向に集中する。 珠樹は恍惚とした表情を浮かべながらハンマーで殴ろうとするが、ジェルモンスターの方が後退りするように飛び去る。 「おや、避けられてしまいましたね」 「……ジェルモンスターにまで気持ち悪がられてるぞ」 千亞は周囲を窺いつつもパートナーの変態っぷりに呆れていた。 「見た目の割にすばしっこいな……」 奥の個体を狙い、ワーニングショットを撃つが、決定的な致命傷を与えられない。フェイズの盾となっているリリィも同様で鎌を振るうが避けられている。 他の仲間達も元気に跳ねまくるジェルモンスターに手を焼いていた。 「そらよっ!」 ルーノが放った魔力弾に当たり硬直した一瞬を狙って、ナツキが両断する。 「こいつら、活きが良すぎねえ、これが普通なのか?」 「いいえ、演習ではここまではなかったです。樹梢湖は水気の魔力が強いので同じ属性を持つジェルモンスターも活性化しているのかもしれませんね」 ナツキの疑問にクロエが答える。エレメンツであるクロエは「魔力探知」によって全体の魔力の流れを感じとっていた。 ロゼッタも占星儀から攻撃を繰り出すが、自分の力量に余る武器は力こそ強いもののコントロールが利かないでいた。 「やっぱり実戦と演習じゃ違うものね、ふふ」 それすらもロゼッタは楽しんで微笑む。 「ララ、後ろ!」 ララエルに忍び寄るように近づいてきたジェルモンスターに気づいたラウルが叫ぶ。ララエルは咄嗟に人形を囮にして避ける。 ラウルがすぐさまララエルを狙った敵にチェインショットを撃つが回避されてしまう。 「くそっ、ララエル!」 別の個体がララエルに向かって飛びかかるのを、シリウスが庇う。 「ご、ごめんなさい! わ、私のせいで……」 「気にするな」 ララエルが今にも泣きそうな顔で謝るのに、シリウスは顔を僅かに顰める。それを見てララエルはさらに委縮してしまう。何か言おうと口を開いたシリウスだが、突如襲ってきた個体に気づき、返す刀で斬りかかる。そのままジェルモンスターの対処に追われてしまう。 ラウルもパートナーを害した敵に照準を定め、今度こそチェインショットで沈める。 ララエルは唇をぎゅっと噛みしめると、俯いていた顔を上げて動き出す。そんなララエルを複雑な面持ちでラウルは見ていた。 他の仲間達もジェルモンスターの掃討が終わったようで、他に敵がいないか周囲を見渡していた。 ぽよぽよ。跳ねるような音がどこからともなく聞こえてくる。それも絶え間なく響いてくる。 音のする方角は奇しくも樹梢湖の方角と一致していた。どうやら戦いの音を聞きつけてジェルモンスターの大群がやって来たようだ。 みっしり。そうとしか言いようのない、足場も見えない程、埋め尽くしたジェルモンスターが姿を現した。 「……やべぇ」 人は本当にやばいものを見ると、それしかいえなくなるのだとナツキは初めて知った。 「やべえよ、マジで。これ全部ジェルモンスターか、すっげなー!」 「全く……今からあれを相手にするっていうのに暢気だね」 ナツキは初めてみた光景に興奮していると、ルーノがそんな相方に呆れた表情を浮かべる。 「いやあ、個体で見るとなんだか微笑ましくもある存在だけど……こんなに沢山居ると迫力があるね?」 「うーん、ここまで多いと恐怖も感じるな。皆を安心させる為に可能な限り討伐しないとな」 朝日の言葉に同意するように真昼も相槌を打つ。 「できる限り討伐しよーう!」 気合いを入れるように声を上げた朝日の隣で、真昼は頭に思い浮かんだ疑問に首を傾げていた。 「しかしこの異常発生は何が原因だったんだろうな?」 ツバキはジェルモンスターを迎え撃つ為に前に出ようとすると、サザーキアが後ろから抱きついてきた。 「ちょっと、サザー?」 「ツバキは最近頑張りすぎニャ、もっと自分を大事にするニャ」 「……え、そうかしら」 顔を腰に擦り付けながら話すサザーキアの思わぬ言葉にツバキは困惑した表情を浮かべる。 「ニャ! どーせならボクの事は後回しでもいいニャ」 「ええ、少し……考えてみるわ」 腰に回した手を離し、ツバキの顔を見ながらサザーキアは笑いかける。相方の提案にツバキは戸惑いながらも頷く。 「ボクはあいつらと遊んでくるニャ!」 「サザー、無茶しちゃダメよ!」 ジェルモンスターの大群に駆けだして行くサザーキアの背中に声をかける。 「いい? 魔力が尽きたら、すぐに後方へ下がるんだよ?」 ララエルの腕を掴むと、ラウルはそう言い含める。 「……私も皆さんの役に立ちたいの」 「もう一度言う。絶対に後方へ下がって隠れているんだ」 ララエルは最後までラウルの言葉に頷かなかった。そうしている間も敵が待ってくれるわけもなく、魔術真名を詠唱する。 「『あるべき所へ還れ』」 (ラウル、ごめんなさい……弱い私は捨てたの。だから、戦います) ララエルは言葉にしなかった思いを魔術真名に込める。 小道から外れた開けた場所にでると、浄化師達は円上に陣形を組む。 幸か不幸かジェルモンスターの数が多すぎて密集している。その為、互いの動きが邪魔して素早く動けないでいる。 どうやら本番はこれからのようだ。 「く、ふふ、ふははは!」 狂気を孕んだ笑みと共に珠樹は乱打暴擲で何度もハンマーを振り上げる。 「あんなのに捕まりたくないよ……!」 千亞の目の前にいるのは毒々しい紫の個体だ。 「ちょ、そんなぽよぽよと可愛くじゃれかかって来ても駄目だからね!」 毒持ちの飛びかかりを華麗な足捌きで避けながら、攻撃する。 ルーノとリチェルカーレは千亞を狙い続ける厄介な毒持ちに魔力弾を飛ばす。 「ありがとう、助かったよ」 飛び散る毒液から避けながら、千亞は二人に礼を言う。 「『暴虎馮河斬』」 ナツキは毒持ちだろうが、臆せず闘志を剥き出しにした獣のように敵に鋭い突きを繰り出す。 「思っていたより毒持ちは厄介だな。上手く倒せたとしても毒が仲間にかかりかねないか……リリィも気をつけるんだよ」 「私は盾を持っていますので、フェイズ様こそ前に出ませぬように」 至近距離で戦っているナツキが距離を取ったのを見計らって、ワーニングショットを撃ち込む。 リリィもフェイズの盾となるべく鎌を振るうが、目の前にいたジェルモンスターは、ぽよーんと高く跳ねると別の個体の上に乗って逃げられてしまった。 「『かいらいりょうらん』」 ララエルは前線に出て、敵の周りを踊る人形によって咲き乱れる花のように美しい人形劇を繰り広げる。それは敵すら引きつける傀儡技術だった。 ラウルは約束した言葉を守らず、駆けだして行ってしまったララエルの為にひたすらチェインショットを撃っていた。ジェルモンスターは彼の八つ当たりによって消滅していく。 「貴重な光景だわ。やっぱりフィールドワークしないと分からないものも多いわね」 ロゼッタが面白がるように笑うとアルカナソードを発動させ、仲間が取りこぼした敵に止めを刺す。 「『クロス・ジャッジ』」 目にも留まらぬ速さで真昼は十字を刻み込むと、背後を見ることなく横にずれる。その直後、朝日の魔力弾が炸裂し、毒持ちは消滅した。 「ニャ!?」 サザーキアがジェルモンスターで遊んでいると別の個体にのしかかられる。それはまるで子供が思いっきり飛びついてきたような重さだった。すぐさま全身に力を入れて払いのける。 その横でツバキにもジェルモンスターが飛びかかろうとするが、 「『迎エ討チ』」 懐に飛び込んできた敵を鎌で両断する。相方であるサザーキアの事は気にかかっていたが、戦う前にかけられた言葉を思い出し、今は目の前の敵に集中する。 「珠樹っ!?」 珠樹が不意を突いて飛びかかってくる個体から千亞を庇う。さらに追い打ちをかけるように千亞の方を狙っていた個体が、珠樹に飛びつく。 倒れ込んだ珠樹に千亞が大丈夫かと駆け寄ろうとした時、 「あぁ、心地よいです、ふふ……!」 地面に這い蹲っていた珠樹が悦に浸った声が聞こえ、足を止める。 「心配して損した気分だ……」 感謝の気持ちも変態によって一瞬にして霧散した。 ララエルと真昼もまたジェルモンスターに囲まれていた。注意した毒持ちに気を取られ、通常個体に飛びかかられる。 数の暴力によって徐々に均衡が崩れていく。 「密集している分当てやすいんだけどね……」 木々に隠れながら、ルーノは魔力弾を放つ。倒しても倒しても次から次へと押し寄せてくるジェルモンスターにうんざりとしていた。 「魔術の的にはちょうどいいわ」 「確かにね」 ロゼッタがアルカナソードで奥にいる毒持ち個体に魔力弾を炸裂し、クロエもプロージョンで毒持ちに止めを刺す。 「ここから先は通しません!」 (私がここで逃げたら、ラウルの方に行っちゃう……っそれだけはダメなの!……ルル、私に力を貸して下さい) ララエルが祈るように魔力をルルに注ぎ込むと傀儡繚乱が始まる。ルルもララエルの思いに応えるようにジェルモンスターに攻撃する。 ララエルは魔力切れにより軽い脱力感を感じていた。それ以上にジェルモンスターを倒すことができ、達成感を感じる。無意識に満足げな笑みを浮かべたララエルの背後から毒持ちが忍び寄る。 先に気づいたのはラウルの方だった。すぐにチェインショットを撃つが、焦りの為か狙いが外れる。 「ララ、逃げろ!」 ラウルの声を聞いて、振り向いたときには遅かった。 「あ、れ……?」 ララエルの小さな身体を吹き飛ばされる。立ち上がろうにも毒を浴びてしまったせいか、身体が上手く動かない。 倒れたまま動かないララエルを近づくジェルモンスター。 「リチェルカーレ、来てくれ! ララエルが毒にやられた!」 ラウルが形振り構わず叫ぶ。その必死な叫びはリチェルカーレの耳にも届く。 「ララエルさん、今そちらに向かいます!」 シリウスが魂洗いで道を斬り開いていく。近くにいた真昼と朝日も見事なコンビネーションを発揮し、シリウスが抜けた穴を埋めるようにジェルモンスターを倒していく。 「ここは俺達に任せろ」 「大丈夫、私達に任せて」 二人の声を受けてリチェルカーレはララエルの元に駆け寄る。ララエルは自由の利かない身体で何かを掴もうと手を必死で伸ばす。 その手をリチェルカーレが取った。 ジェルモンスターは、ただただ無邪気に飛びかかる。複数の個体を相手取っていたシリウスは、時に切り払い、受け流していた。 ジェルモンスターが意外な行動に出た。 背後にいた個体が前の個体を踏みつけて、シリウスに飛びかかってきたのだ。 虚を突かれたシリウス。咄嗟に避けようとするが、シリウスの背後にはリチェルカーレがいる。 避けるのを止め、剣で払いのけようとしたが、遅かった。無邪気に飛びかかるジェルモンスター全身の体重をかけるようにシリウスにぶつかる。シリウスはよろけたものの、すぐに態勢を整える。 「シリウス!」 「大丈夫だ。お前はお前にしかできない仕事をしろ」 リチェルカーレの心配そうな声に、素っ気なく答える。 リチェルカーレはララエルの小さな手を包み込むように握ると、 「もう大丈夫ですよ、一人で頑張らないで」 ララエルを安心させるように優しく微笑む。それはララエルに向けた言葉でもあり、シリウスに向けた言葉でもあった。 「『四神浄光・壱』」 リチェルカーレの慈愛に応えるように四神が力を貸す。リチェルカーレの身体が淡い光を放つと、その光を浴びたララエルの青ざめていた顔色が良くなっていく。 「ぜんぜん減らないねえー」 朝日の言葉も尤もだ。 事態は好転するどころか、悪化の一途をたどっている。 北西からもジェルモンスターの大群が「遊んで!」と言わんばかりに押し寄せてきている。 「そろそろ引き時かもしれないな」 真昼はまだ体力が残っているが、そろそろしんどそうな者もいる。 真昼と同じようにルーノも撤退を視野に入れ始めていた。 自身の相方は元気に暴れまくっている。だが、これだけいるジェルモンスターを討伐しきるのは無理だろうとルーノは判断していた。 ジェルモンスターの大量発生の原因が分からない限り、根本的な解決にはならない。ルーノとしてもこれ以上の無駄な労働は避けたかった。 それに原因を探ろうにもジェルモンスターに囲まれている状況では、それもままならない。どう考えても詰みだ。 「一旦撤退して、態勢を立て直すべきだ。教団の方もこんな状況になっているとは思ってないだろうしね」 「そうですね、司令部に報告してから判断を仰いだ方がいいと思います」 疲労の色が濃いクロエもルーノの提案に同意する。 「撤退? 逃げるのかニャ?」 ルーノ達の会話を耳にしたサザーキアがジェルモンスターを殴りながら声を上げる。 「いいところだったんだけどなー、まあ、しゃあねえか。じゃあ、逃げようぜ!」 楽しげに交戦していたナツキも戦いを名残惜しみながら、撤退に賛成する。それを皮切りに、誰もがルーノが確保しておいた退路から撤退に向けて動き出す。 「『シールドタックル』」 リリィが盾を構えてジェルモンスターの大群に突進する。その勢いでジェルモンスターは弾き飛ばされる。 「今です、皆様。撤退なさって下さい!」 「リリィ、君も逃げるんだ!」 フェイズが叫ぶが、リリィは首を振る。 「私にはまだやるべきことがありますので、フェイズ様こそ早く撤退なさって下さい」 フェイズは納得できず、リリィと一緒じゃないと撤退しないと言わんばかりに、ボウガンを構えた。 「どうして下がらなかった!? 死ぬ可能性もだってあるのに、何で……!」 ラウルはララエルを抱き抱えながら逃げる。心配したからこそ、怒鳴ってしまう。 「皆さんが命を懸けて戦っているのに、私だけ逃げるなんてできません……!」 「頼むから無茶な事しないでくれよ……君が大事なんだ!」 ララエルの小柄な身体を大事に抱えながら逃げる最中、そう懇願するがララエルは黙ったまま首を横に振るばかり。 どうして自分たちはこうなのか。自分への不甲斐なさと怒りを噛みしめる中、背後から声がかかる。 「今は逃げなきゃ、追いつかれちゃうよ」 「うむ、今は逃げることが先決だ」 殿を引き受けている朝日と真昼に促されて走るスピードを上げる。 飛びかかってくるジェルモンスターを回避あるいは撃退しながら、全力で走る。 全員が森の入り口にたどり着いたときには、ジェルモンスターの姿はなかった。振り切ったのか諦めたのか分からないが、全員無事に森から撤退できた。 不穏の種は残ったものの、指令を果たした。 こうしてジェルモンスター討伐は幕を下ろしたのだった。
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*** 活躍者 *** |
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該当者なし |
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[35] リチェルカーレ・リモージュ 2018/05/23-23:55
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[34] ナツキ・ヤクト 2018/05/23-23:24
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[33] サザーキア・スティラ 2018/05/23-23:16
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[32] ラウル・イースト 2018/05/23-22:59
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[31] 降矢・朝日 2018/05/23-22:28
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[30] ララエル・エリーゼ 2018/05/23-21:47
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[29] ルーノ・クロード 2018/05/23-21:10
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[28] 白兎・千亞 2018/05/23-20:25
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[27] リチェルカーレ・リモージュ 2018/05/23-19:55
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[26] フェイズ・リン 2018/05/23-19:41
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[25] ラウル・イースト 2018/05/23-02:42
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[24] ナツキ・ヤクト 2018/05/22-23:41 | ||
[23] リチェルカーレ・リモージュ 2018/05/22-21:29
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[22] リチェルカーレ・リモージュ 2018/05/21-22:34 | ||
[21] ラウル・イースト 2018/05/21-17:11 | ||
[20] ツバキ・アカツキ 2018/05/21-00:48
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[19] 明智・珠樹 2018/05/20-22:47 | ||
[18] ララエル・エリーゼ 2018/05/20-22:23
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[17] ナツキ・ヤクト 2018/05/20-21:34 | ||
[16] 降矢・朝日 2018/05/20-16:09 | ||
[15] リチェルカーレ・リモージュ 2018/05/20-11:15 | ||
[14] ロゼッタ・ラクローン 2018/05/20-09:14
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[13] ラウル・イースト 2018/05/20-09:09 | ||
[12] ナツキ・ヤクト 2018/05/20-00:03
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[11] リチェルカーレ・リモージュ 2018/05/19-23:18 | ||
[10] フェイズ・リン 2018/05/19-16:04 | ||
[9] ラウル・イースト 2018/05/19-15:00 | ||
[8] リチェルカーレ・リモージュ 2018/05/18-22:58 | ||
[7] 白兎・千亞 2018/05/18-21:55 | ||
[6] ラウル・イースト 2018/05/18-15:58
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[5] ラウル・イースト 2018/05/18-00:19
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[4] ツバキ・アカツキ 2018/05/17-21:19
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[3] フェイズ・リン 2018/05/16-20:39
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[2] 降矢・朝日 2018/05/16-20:16
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