~ プロローグ ~ |
「今までお世話になりました」 |
~ 解説 ~ |
今回の目的はシュレディンガーキメラを討伐する事です。 |
~ ゲームマスターより ~ |
執筆させていただくのはこれで二回目となります。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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目的 キメラの討伐 ヨナ:嫌悪感 「己の弱さから他者の命を弄ぶなど。許しがたい行為です」 「後悔したとて無かったことには出来ません」 ベルトルド:静かな怒り 「嫌な仕事だ」 「決めるのは我々の範疇ではない」 戦闘 前半は体力温存しつつキメラに張り付くが仲間が術者を殺しかねないなら阻止 キメラ術者双方対話可能なら対話させたい 無理と判断したら術者を昏倒させておく(自分じゃなくてもよい) 後半は敵の魔法に備えて相殺させるようなFN2を撃つとともにキメラ本体へも攻撃 誰か集中攻撃されたら注意を自分に向ける。ヨナはダメージを受けたら引く 同時行動に憂慮し頭を1つずつ確実に落としていく 顔や襟首を重点的にJM2で攻める |
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■目的 キメラの討伐と術者の捕縛 ■ルーノ 術者の無力化後、キメラへ 捕縛の為、死なない程度に攻撃し無力化 キメラへの攻撃は味方と同じ部位狙いダメージ蓄積させる 魔法使用時のキメラを観察 予備動作や前兆、効果範囲を味方へ伝達 相殺等の魔法対策や回避を支援 ■ナツキ 術者の無力化後、キメラへ 術者は捕縛に繋げる為、剣の柄や腹で殴打 キメラの妨害で術者に届かない場合、キメラを先に倒す キメラに接近し攻撃、足止めし行動妨害 標的を絞らせないよう味方と取り囲む 敵との会話等で標的が前衛から外れたら進路妨害やJM3で注意を引く キメラの脚を狙い体勢を崩させ味方の部位狙いを支援 敵が魔法を使用したら魔術真名詠唱、JM3を惜しまず畳み掛ける |
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■目的 シュレディンガーキメラ討伐。 ルードルフ捕縛か殺害。 本件全容究明及び余波拡大阻止。 ■行動 指令の情報基に道中痕跡辿り現地急行。 必要時ランタン使用。 交戦時はキメラ対応。 序盤の足止めの為に初手魔術真名。 薙鎖は中衛。 HP半分以下の味方に近付きSH4で回復。 いなければ範囲魔法に備え散開しキメラ攻撃。 常時防御。 モニカは前衛。 仲間とキメラを囲み攻撃。 集中的に狙われてる仲間がいれば他方から殴り注意を引く。 常時回避。 可能なら猫の首は仲間と呼応し1つずつ集中的に狙い潰す。 ■事後 残留品の禁忌魔術資料等は教団に提出。 敵発言等の情報を基に背景・関連を徹底調査し、 (ルードルフの所から更に禁忌魔術流出等)余波拡大阻止。 |
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◆目標 キメラ討伐、魔術師の捕縛 ◆戦闘 ランタン持参 突入前に魔術真名詠唱 まずは魔術師の捕縛へ 足や腕を狙い攻撃 殺害はせず、行動不能に留める 魔術師の戦闘不能後、キメラ戦へ 撃破回数、使用してきた魔法の系統等 状況を仲間に声掛けし共有するように キメラと会話を試みる仲間がいるなら そちらに攻撃が向かないよう、都度攻撃し引き付ける 但し状況が危険なら会話の補助よりも撃破を優先 リュシアン 魔力が尽きるまではDE3、その後は通常攻撃 長期戦を想定し、ダメージが一人に重なり過ぎないよう、 負傷した仲間にキメラが向かった際は攻撃し注意を剃らす リュネット FN1で能力を強化し攻撃 キメラの魔法が攻撃系統の場合、魔術をぶつけ相殺を図る |
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◆目的 キメラ討伐、術者捕縛 ◆戦闘 ・中後衛(唯月:中衛、瞬:後衛)散開 ・スペル詠唱は戦闘始めに ・キメラとネコの様子をよく伺いつつ、術者優先で攻撃 ・唯月はMG4を、瞬はFN3を主に攻撃 ・仲間との連携も大事に、同士討ち等も注視 ・自身の危機的状況の際は戦闘から離れ、サポートを ・仲間と認識違いがあった場合は仲間に従う 唯「…キメラを生み出すのは… 終焉の夜明け団だけじゃないなんて…悲しい、です…」 瞬「うん…」 唯「死を持って…救いましょう!」 瞬「うん!」 ・キメラと術者との対話は仲間が可能と判断したタイミング 且つ出来る範囲で協力 仲間に被害が出る場合は即攻撃へ ◆任務完了後 唯(わたし、まだ…強くなれてない…の…?) |
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藤) 絶対防御ノ誓イを使用。キメラ対応。 立ち位置は前衛。基本は接近で軽く盾を鳴らし気を引きつけ防御。前衛が4人以上で敵の目標が別の目標に行く、もしくはHPを確認し30%以下になるようならば鎌の攻撃範囲ぎりぎり(2マス)から攻撃も交える。 術者無力化後には盾構えキメラの様子に注視。攻撃の事前動作に気を配る。 他が戦闘中に会話をする際は盾での防御を基本として動く。 ア) 墓地に入ったら接敵前に死体からナイフを回収しておく (万が一術者に使われるのを防ぐ為) 接敵後は即アブソリュートスペルを唱える 戦闘中の立ち位置は中衛 直接的な攻撃でなく敵の行動(前衛への死角からの攻撃等)の阻害に動く 自分に攻撃がきそうなら身代使用 |
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◆目的 キメラの討伐 ルードルフ(以下術者)の処遇は教団に任せる ◆行動 アユカは中衛・楓は後衛からの攻撃 まずは術者を戦闘不能にし捕縛 殺害はしない キメラとの対話はさせて良いが、こちらの不利に繋がる異変が生じたらすぐ止めさせる 術者の捕縛後、魔術真名を使用 キメラの討伐に加わる 敵の狙いをばらけさせるために散開するような位置取り 頭を集中的に狙い一体ずつ潰す ◆アユカ 初手アライブスキル使用、常にかかっている状態に 術者対処中、キメラへの対処の必要があればそちらへ 魔法攻撃の属性によっては相殺を試みる ◆楓 術者への対処の必要がある時はそちら優先 術者を戦闘不能にした後は持参した縄で彼を捕縛 キメラ討伐時アライブスキル使用 |
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現場到着・キメラ視認をしだい魔術真名詠唱。その後戦闘開始。 キメラを作成したと思われる術者の捕縛とキメラ討伐を同時進行。 他メンバーが捕縛用の縄をもっているのでそれを使用。 もしもの時の為に縄を装備します。 猫のキメラであるため複数の魂を持っている可能性あり。 中衛位置散開。私達はまずはキメラへのダメージを与えることに集中します。 ワンダリングワンドを使用。 猫と人間のキメラですか…あまり気分のいいものではありませんね。 どちらの魂も死する時まで魂が還ることができません…ので必ずしとめます。 術者とキメラの人間に関わりがあり会話が可能ならさせてみて情報を得るののもいいと思われますが。 戦闘メンバーの安全は重視で。 |
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~ リザルトノベル ~ |
「エルヴィン? おーいどこに行ったのエルヴィン?」
分厚い雲に覆われた空の下、薄暗いカタコンベに無邪気な声が響く。 その声の主であるルードルフの思いはシュレディンガーキメラには届かない。 「死が僕らを別つまで、二人は一つと誓います」 ルードルフの意識の外から声が聞こえた。 それはルードルフの真後ろに音も無く現れたリュシアン・アベールとリュネット・アベールによる魔術真名詠唱。 それを皮切りに周囲の墓の裏から四つの影が飛び出る。 「私は君を拘束しなくてはいけない」 ルーノ・クロードが冷たくそう言いながらマジックロッドを揺らす。 「寝てろ!」 ナツキ・ヤクトは自身の不安をかき消すように声を荒げながら剣を振りかぶる。 「……んっ」 アユカ・セイロウが苦い表情を浮かべながら呪符を投擲する。 「御用改めだ。諦めるんだな」 花咲・楓が縄を構えながら飛び掛る。 「貴方の行為には吐き気すら覚えます」 リュシアンがそう言いながらルードルフの膝めがけてボウガンの矢を突き刺した。 ルードルフは未だ何が起こったのか理解できていない様子だ。 続いて起こった事象は、ルーノの魔術。 攻撃はルードルフの顔面を襲い、視界を奪う。 急に視界を奪われ、慌てふためくルードルフの肩にアユカの呪符が突き刺さり、地面と彼を繋ぎ止める。 身動きを完全に封じられたルードルフの脳天を目掛けてナツキの片手剣の柄が叩き込まれ、ガンッと鈍い音を立てながら意識を奪う。 結局、ルードルフは気を失うその時まで何が起きているのか理解できなかった。 リュネットはぐったりとしたルードルフに近づくと、杖を大きく振りかぶる。 その動きの先にある結果を見据える事ができたのは、彼女の弟であるリュシアンだけであった。 「姉さん!」 リュシアンはリュネットの振りかぶった杖を強く握り動きを止めて、自分に言い聞かすように話す。 「姉さん。気持ちは分かるけどそれはいけない。それをしてしまったら彼は自分の罪を知らずに自己満足だけで終わってしまう。それに……姉さんの手を汚させたくない」 「シア……そうだね。僕、どうかしてたよね。止めてくれてありがとう」 リュネットはリュシアンの瞳を見つめながら無意識に自分がしようとした事を咎めた。 それでも、この指令が始まる前からしていた彼女の頭を掻き毟りたくなる程の心のざわめきは収まりそうに無かった。 「罪人の捕獲終了。次だ」 楓は淡々とルードルフを縄で縛り上げると、粗雑に背中に担ぎ上げて歩き出した。 「かーくん……」 未だ術者の行動により起こった悲劇を受け止めきれないアユカが呟く。 「どうかいたしましたか、アユカさん」 そう言ってアユカのほうを見る楓はついさっきまでの彼とは別人のように思えた。 そんな彼を見ながらアユカは自身のスカートの先を強く握り締めながら言う。 「あの術者の人……道を踏み外したのは良くないことかもしれないけど元々はお友達思いの人だったのにどうしてこんなことになっちゃったんだろう……悲しいよね」 アユカは分かっていた。この思考は楓には理解できないものだと。 正義の遂行を考え、生きている楓にとって罪が発生するまでの出来事はあってないようなもの、悪は何があっても悪なのだ。 それでも、アユカは自分の中で整理しきれなかった感情を無様にぶちまける事しか出来なかった。 楓は分かっていた。自身の行動が理解されないものだと。 禁忌に手を染めたのは彼の意思、この結末も彼自らが招いたことだ。 だから彼は裁かれなくてはいけない。悪は許してはいけないのだ。 アユカさんのような考えは甘い……と思う。 だが、それがアユカさんの優しさなのだろう。 「アユカさんは優しいですね。その一面を見るたびに貴女と契約してよかったと思えます」 楓はそう言ってアユカに背を向けて歩き出した。 アユカは静かにその背中を追う。その表情は先程よりも少し明るくなっていた。 「束縛の鎖を断ち、我と我らが腕にて抱こう」 「ペリドットアイリス」 「回路起動《スイッチ》」 「嘘とお菓子は甘いもの」 四つの魔術真名が響き重なる。 対するは三つ首の異形、キメラ。 「嫌な仕事だ」 先陣を切ってそう呟いたのは黒豹の獣人ベルトルド・レーヴェだった。 彼はそのままキメラの死角に入り、拳を襟首に打ち込んだ。 「ちっ、無駄に力んだ」 目の前でのた打ち回る人間に飼われ、人間に弄ばれ、人間に殺される、悲しい運命を辿ったキメラに憐憫の情を抱き、そんな愚行を行った術者に対しての静かな怒りに、ベルトルドは包まれていた。 「邪魔です」 そんな彼とは対照的にどこまでも冷たいパートナー、ヨナ・ミューエはそう言いながら魔力を込めた魔球を飛ばす。 ヨナの放った魔球はしゃがんだベルトルドの真上を通って起き上がったキメラの右の頭部に当たる。 立ち上がりを潰されたキメラは再度地べたを這いずり、周囲の墓を壊していく。 しかし、その破壊活動は長くは続かず急に横になったままの状態で動きが止まる。 「わり、少し遅くなった」 キメラの体の後ろから藤森・卓也が顔を覗かせながら言う。 墓守の彼にとって墓地を荒らされる以上の屈辱は無い。 倒れて狙いが定めやすくなったキメラは最早、唯の的と言っても過言ではない。 「良い仕事だ」 ロメオ・オクタードがそう言い、ブロンズライフルの引き金を引いた。 放たれた弾丸は一直線にキメラの先、卓也に向かって飛んでいく。 「えっちょまっ」 これには卓也も困惑の反応を隠せない。 しかしもう回避するだけの猶予は残されていない。 そのまま弾丸は卓也の盾に命中した後、反射によってキメラの傷ついた右の顔面を貫いた。 キメラはどす黒い血を撒き散らしながらその場に力なく倒れこんだ。 「悪い悪い、顔面を破壊できそうな角度がそこしか無くてな」 飄々とした態度でそう告げるロメオ。 「ロメオさん!? 危ない事するのやめてくださいよ! ああああ、卓也さん本当にごめんなさい」 ロメオの真横でパートナーのシャルローザ・マリアージュがぺこぺこと平謝りを繰り返す。 「あの角度で当てて安全だって占ったのはお譲ちゃんじゃないか」 「実際やるとは聞いてません!」 「いや、なんともないから全然いいっすよ。それに弾丸で墓石カチ割られるよりマシっスから」 二人の会話を聞いて砂煙を上げながら卓也が立ち上がった。 「そうそう、タクヤはあんな扱いがちょうど良い」 付け加えるように卓也のパートナー、アースィム・マウドゥードが言う。 「皆さん。キメラが動き始めます」 薙鎖・ラスカリスが場の空気を引き締めるようにそう呟いた。 それを合図にその場にいた全員が配置に付く。 前衛はベルトルド、卓也、モニカ・モニモニカの三人。 中衛はアースィム、杜郷・唯月、薙鎖の三人。 後衛はヨナ、泉世・瞬、シャルローザ、ロメオの四人。 前衛は円状にキメラを囲い、中衛と後衛はその円を更に大きく囲うようにフォーメーションを整えた。 円の中央でキメラがのっそりと立ち上がった。 弾丸で貫かれた右の顔面が痛々しく赤黒い肉を覗かせ、粘着質の液体を地面に落としている。 見ているだけで苦痛を覚えるキメラが呟く。 「ドウスレバイイ?」 「ひっ」 正面にいたモニカはその首と目が合い小さく悲鳴を上げる。 キメラはその隙を突くように八つの脚を高速回転させてモニカに突っ込む。 「ショクリョウ!」 しかし、その攻撃はモニカに当たる事は無い。 背後から放たれた薙鎖の攻撃によりキメラはモニカの目前で倒れる。 そして、モニカの隣にはアースィムの人形が肩に手を置いていた。 アースィムとしては『そんなんでやっていけるの?』といった意味のこもった若干の煽りであったがモニカはその行動を激励と捉えた。 「ありがとう」 そう言うと同時に眼前のキメラが立ち上がった。 モニカは思いだす、今回の指令を受けたときの薙鎖を。 一度死んでいるアンデッドの薙鎖にとって死者をいたぶった相手と戦うなんて辛いに決まっている。 それなのに、ナギサはそれを一言も言わずに『教団の管理による失態です』って自分の事をほったらかしにして全てを抱え込もうとしている。 だから、その分ワタシがナギサを守らなくちゃいけないんだ。 モニカは瞬時に決意を固めて短剣を再び強く握りしめた。 「守護はまかせな」 モニカの左斜め前に盾を構えた卓也が現れた。 「ええ、よろしく頼むわよ。その分、私はナギサを守るから!」 そう宣言しモニカはキメラに突っ込んだ。 後ろから薙鎖の照れるような声と、近くから卓也の口笛が聞こえたような気がした。 「エイキュウ、ズット」 キメラがそう言いながら前の腕を振り上げる。 卓也がそれを盾で受けようと構えるが、それより先にキメラの巨体は地面に崩れ落ちた。 「後ろがお留守だ。脚一本頂いたぞ」 キメラの背後からベルトルドが、拳を前に突き出した状態のままそう言う。 地面に突っ伏したキメラの右頭の根元が、モニカの前に無防備に転がり込んだ。 「てりゃぁぁあ!」 その隙を見逃すことなく、モニカは剣を振るい首と体を切り離した。 「スクイ……」 キメラは力なくそう呟くと、右の頭があった場所から噴水のように血を垂れ流しながら動かなくなった。 「後でしっかり埋葬してやるからな」 卓也がそっと呟いた。 「ワカラナイ」 そう言いながら毛を赤銅色に染めたキメラが立ち上がった。 前衛の三人は身を少し引いて攻撃に備える。 「きっとこいつは今、前衛に気を取られてるから後衛から攻めてくれ」 ベルトルドがそう言ってキメラの周りをぐるぐると回り始めた。 「それでは遠慮なく行かせて貰います」 ヨナはそう言うと一切ためらうことなく、開いたマジックブックの上に魔力を溜め始めた。 「じゃあ俺も~」 瞬もそう言うと杖を空に向けて魔力を集め始める。 「僕は怪我人が出たときの為に温存しておきます」 薙鎖はそう言いつつも杖を下げることなく攻撃に備える。 「俺の弾丸も味方に当たると悪いから今は待機させてもらうよ」 ロメオはそう言って銃を下ろして少し後ろへ下がった。 「二人の魔力が溜まるまでは私たちでダメージを与えましょう」 シャルローザは中衛の二人にそう呼びかけながら、タロットカードを構えた。 「わ、分かりました」 唯月も少し手を震わせながら、ディスクからタロットカードをはがして構える。 アースィムは目まぐるしく陽動されているキメラの死角にそっと人形を忍び込ませる。 そして、キメラの左の頭部の真下まで来ると声を上げて叫んだ。 「ばぁか、そっちは囮だよ。本命は……こっち!」 人形のアッパーカットパンチでキメラの巨体が左の顎を中心に宙へと浮いた。 「ワ、ワンダリングワンド」 「ワンダリングワンド!」 唯月の自信なさげな投擲とシャルローザの鋭い投擲が交差しながらキメラへと向かう。 唯月のタロットカードはキメラの腹部にめり込み、シャルローザのは尻尾に一番近い位置にある左足を肉体から切り離した。 そのままキメラは受身を取ることもできないまま地面に叩きつけられた。 「魔力が溜まりました。いきます」 唯月の隣からヨナが冷静に呟く。 「俺もいくよ~」 瞬が陽気に叫ぶ。 「プロージョン」 ヨナの開いた本の上に溜まった魔力が、大きな球体になってキメラに飛んでいく。 「エアーズ!」 瞬の杖の先に集まった魔力が周囲の風を巻き込みながら進む。 ヨナの魔球はキメラの右前足をに着弾し、動きを止めた。 瞬の放った攻撃はキメラの左の顔面に当たり、その首を根元から切り落とした。 「モウ、オレニハ、ワカラナイ」 キメラは再度意味のわからない事をいって倒れた。 「次が六回目ね。魔法使ってくるかもしれないのよね」 モニカがそう呟く。 赤黒く染まった地面の上、キメラはのっそりと立ち上がった。 「キメラダ……」 立っているのもやっとのようなキメラに残った人間の首が空を見上げる。 声を発してはいるが、その顔に未だ生気は感じられない。 「ソレシカナイソレシカナイソレシカナイ……」 狂ったように呟くキメラの足元が急に盛り上がった。 「こ、これは」 戸惑いの声を上げるベルトルド。 「恐らく土気の魔法だ! 気をつけろ!」 あさっての方向から声が聞こえた。 そこには縄できつく縛られたルードルフを抱えた楓とアユカの姿があった。 「雨のち、希望咲く」 そして二人はその場で魔術真名を使用した。 しかし、そうしたときには既にキメラの魔術は完成していた。 キメラの足元だけでなく周囲十メートルほどの地面全てが凸凹に湾曲し弾け飛んだ。 土の弾丸、直撃しては軽症ではすまないだろう。 だが、その心配は杞憂であった。 土の弾丸はその場にいた人物に当たる事は無かった。 全てが寸前のところで魔術もしくは、薔薇十字教団の団章が刻まれた剣で叩き落されていたからだ。 「ふう、間一髪といったところだね」 「間に合ったから良しとしてくれよな」 そこには、ルーノとナツキがいた。 「姉さん、怪我はない?」 「ええ、ありがとう。シア」 そして、その背後からリュシアンとリュネットが現れた。 「皆、遅くなってしまい申し訳ない。だがここからは一緒に戦わせてもらう」 楓が盛り上がった土に脚を掛けて宣言した。 ナツキは前衛にアユカ、リュシアンは中衛にルーノ、楓、リュネットは後衛に加わった。 「ひとつ質問があるのですが」 ルーノが周囲に呼びかける。 キメラは先程からずっと空を見上げてぶつぶつと何かを呟いている。 「あのキメラは回復はしないのですか? そうなのだとしたら、最後の首を落とした時点であの生物はもう蘇れないのでは?」 誰にも答えがわからない疑問に周囲が硬直する中、ナツキが叫ぶ。 「そんなのやる事は一つだろ? 何度復活しようが倒れるまでたたっ斬る!」 「全く君は……でも、そうだな。永遠の命なんて無い、尽きるまで刈り取るまでだ」 「おう、やってやろうぜ相棒!」 前衛のナツキは後衛のルーノに向けて親指を立てた拳を突き出した。 「戦闘方針も決まりましたし、いきましょうか」 薙鎖がそう言うのを合図に止まっていた戦場は再度動き始めた。 「オラァ!」 ナツキが剣を振りかぶりエルヴィンの首元目掛けて振り下ろす。 しかし、その攻撃が首に届くより先に突如隆起した地面に受け止められた。 「これならどうだ!」 ナツキの剣がめり込んだ土塊にベルトルドが拳を叩き込む。 拳は土を正確に捉えるが、いくら攻撃を加えても崩れる様子は見られない。 それと同時にキメラは未だ無傷の左前足を勢い良く振り上げた。 すると、左腕の延長線上の地面の土がまるで噴火のような勢いで弾ける。 「え、あ……」 そして、その先には唯月が立っていた。 一度目の攻撃で踏ん張りの利かない地面へと変化した為、即座に動く事ができない。 「いづ!」 そう叫んで唯月の前に現れたのは瞬であった。 瞬は身を挺して攻撃を受け、唯月に覆いかぶさる。 数秒後、土煙のあがったそこには傷ついた瞬と唯月の姿があった。 「いづは……俺が守らなくちゃ……」 ボロボロになりながらも唯月を守ろうとする瞬。 それを見た唯月は瞬の両手に自身の掌を重ね合わせた。 「わ、わたしもうそんなに弱くないです瞬さんが居なくても……戦えますよ! だから……だから守らなくて良いんです……っ!」 「……っ」 面と向かって告げられた言葉に瞬は驚きを隠せずにいた。 「天恩天賜」 薙鎖がそう言って杖を振ると瞬の傷は見る見ると癒えていった。 「すみません。僕ももっと早く動けていればよかったのですが……不足の至るところです」 この時、偶然にも唯月とアユカの考えている事は同じであった。 (もっと、わたしに力があれば……!) 唯月は自分の身すら守れない危機管理能力の低さを呪い、アユカは傷ついた仲間を回復させる事が出来ない自身を呪った。 「ふむ、生半可な攻撃は効かないみたいだな。こうなれば一斉に仕掛けるしかなさそうだが、それで良いかな」 状況を冷静に判断した楓が全員に呼びかける。 そして、その問いにNOと答える者はいなかった。 前衛の四人は中衛、後衛の攻撃準備が整うまで、再度先程のような攻撃を警戒し防御態勢でキメラを囲う。 魔術を使用する者たちは、各々の思いを魔術に編みこむ。 そして、直接的に魔術を使わない者たちも次の一撃に必殺の思いを込める。 銃を持つロメオ、リュシアン、楓の三人は少し前に出て更に命中率を高める。 アースィムは人知れず人形を操り、キメラの近辺に配置する。 唯月とシャルローザは一瞬目を合わせ、タロットカードを構える。 実際の時間にして、三十秒ほどのその時はどこまでも長く感じられた。 そしてついに、押さえ込んだ思いをキメラにぶつける時間がやってきた。 号令は最早必要なく、全員がそのタイミングを肌で感じ取る事ができていた。 同時に前衛の四人と待機してあった人形が、キメラの首を目掛けて飛び掛る。 キメラの周囲には、まるで城壁のように分厚くて大きな土の壁が立ちふさがった。 だがそんなことは最早関係無いことであった。 何故なら全員がその壁を貫けると信じていたから。 ベルトルドの拳が、ナツキの片手剣が、タクヤの大鎌が、モニカの短剣が、アースィムの人形が、同じくして放たれた三つの魔球が、交差する二つのタロットカードが、六つの魔力の球体が、その全てが勝利へと突き進む。 土の壁に突き刺さる十六の思い、対するは友を願うが余り禁忌に手を出した狂気。 地面に横たわったルードルフは対峙する二つの攻撃を視認し、嗤った。 周囲は激しい音とともに炸裂する光に包まれた。 ルードルフの前にエルヴィンの首が差し出される。 その首は幾多の傷や土で汚れ、見るも無残な姿へと変貌していた。 「これが貴方のエゴの結果です」 リュシアンが冷たく言い放つ。 ルードルフは正気を取り戻してか、ニヤリと口角をあげると小さく話しはじめた。 「そんなことくらいわかっていたさ。あいつが俺を思って一人で研究していた事も、最後まで世界の安寧を願っていた事も」 「それなら何故!」 「決まってるだろ。あいつと同じ場所に行くにはあいつと同じ死に方をしなくてはいけない。だから俺はこうしてお前達に拘束されているんだ。ほらさっさと殺せよ」 リュシアンは自分の意思とは無関係にボウガンの矢を振りかぶっていた。 「シア、だめだよ」 しかし、その矢が降ろされることは無く、横に立っていたリュネット腕をつかまれた。 後ろに立っていた楓はその様子を一瞥すると、ルーノに指示をハンドサインで出しながら言った。 「お前がどれだけ救えないかは分かった。もう寝てろ」 ルードルフは何も言わないままルーノの攻撃を受けた。 抵抗する気配すら感じられないその姿は、不気味と言うしか無かった。 「キメラも倒したってのに全然すっきりしねぇ……」 ナツキがルーノに話しかける。 「まぁこういう時はオトナになって割り切るのが一番だよ」 ルーノはナツキの発言を軽くすかした。 「……どーせ俺はガキだよ」 未だ気持ちの整理がつかないナツキはそう言ってそっぽを向く。 それを見たルーノはやれやれと肩を竦めた。 「あのキメラの発言はエルヴィンの意思とは無関係のようですね。そもそもキメラになった時点で冷静な思考は完全に失われるみたいです」 禁忌魔術に関するレポートを眺めながら薙鎖が言う。 「じゃああれはなんだったの?」 モニカが残された物品をあさりながら聞く。 「きっとエルヴィンが何度もネコに話しかけていたことを、ネコが呟いただけの事なんじゃないかと思います」 「なんだか、悲しいね」 モニカはそう言って空を見上げた。 薙鎖は何も答えなかった。 卓也は持参したスコップで荒れ果てた墓地の手入れと修復作業に励んでいた。 「埋葬されてる死者の眠りを守るのが墓守。死者を材料として扱うのは許せない」 誰にも聞こえないほどの小さな声で卓也は呟いた。 「なんで生かそうとするんだか。どうせしぬのはかわんないのに」 それが聞こえてかどうかはわからないが墓地の手入れを手伝うアースィムは小さくそう言った。 これより話が広がる事も無く、二人は黙々と作業を続けた。 墓地の手入れが出来る道具も無ければ、罪人と話したいとも思わない唯月と瞬はする事を見つけられなかった。 瞬は先程の戦闘で唯月を身を挺して守ったが、今となってはその行動が少し格好をつけすぎたのではないかと恥ずかしく思えてきてしまっていた。 瞬は意識して唯月から視線を逸らす。 唯月は自身が原因となって引き起こした瞬の怪我を重く受け止めていた。 (わたし、まだ……強くなれてない……の……?) 唯月もまた瞬から視線を逸らす。 交錯する思い、二人のギクシャクした関係はしばらくは直りそうに無かった。 「ほう、これは少々興味がわくな」 ロメオがキメラの魔法によって掘り返された地面を触りながら呟いた。 「どうかしました? ロメオさん」 近くにいたシャルローザが話しかける。 「奴が乱暴に掘り返したはずの地面の感触が、まるで農園の土壌のようだと思ってな」 シャルローザはそれを聞き、足元の土を手に取った。 それは植物が繁栄するには、とても適したものであろうと思える。 「それに奴の流した血液も言ってみれば肥料のようなものだ、まさか……いや、全て偶然ってことにしておくのがよさそうだ」 「ええ、そうしておきましょう」 二人は顔を見合わせると少し笑って、地面を固めないようにそっとその場から立ち去った。 「はぁ嫌な話聞いちまったな」 ロメオ達が立ち去った近くにいたベルトルドがヨナに話しかける。 「あら、そうですか? 偶然なのでしょう? そんな事まで考えては毛が抜け落ちますよ」 肩を落とすベルトルドとは対照的に冷たく地面を見つめるヨナ。 ベルトルドは「全くお前は……」と声を尻すぼみさせながら言う。 「後悔したとて無かったことには出来ません。さあ、帰りましょうベルトルドさん」 ヨナはそう言ってカタコンベの出口へとすたすたと歩を進める。 その場を離れる直前、ベルトルドは振り返り小さな声で呟いた。 「ほんと……嫌な仕事だ……」
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*** 活躍者 *** |
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該当者なし |
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[26] ルーノ・クロード 2018/06/02-00:00
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[25] 薙鎖・ラスカリス 2018/06/01-23:53
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[24] 花咲・楓 2018/06/01-23:43 | ||
[23] 泉世・瞬 2018/06/01-18:51 | ||
[22] ヨナ・ミューエ 2018/06/01-18:19 | ||
[21] シャルローザ・マリアージュ 2018/06/01-03:29 | ||
[20] ナツキ・ヤクト 2018/06/01-00:26 | ||
[19] 花咲・楓 2018/06/01-00:22 | ||
[18] ヨナ・ミューエ 2018/05/31-16:40 | ||
[17] 泉世・瞬 2018/05/31-07:38
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[16] モニカ・モニモニカ 2018/05/31-01:00 | ||
[15] 薙鎖・ラスカリス 2018/05/31-00:14 | ||
[14] ヨナ・ミューエ 2018/05/30-23:54 | ||
[13] リュシアン・アベール 2018/05/30-23:16 | ||
[12] アースィム・マウドゥード 2018/05/30-22:54 | ||
[11] ルーノ・クロード 2018/05/30-20:52 | ||
[10] シャルローザ・マリアージュ 2018/05/30-20:22 | ||
[9] アースィム・マウドゥード 2018/05/30-17:10 | ||
[8] ヨナ・ミューエ 2018/05/30-14:26 | ||
[7] シャルローザ・マリアージュ 2018/05/30-06:43 | ||
[6] 泉世・瞬 2018/05/30-02:35 | ||
[5] リュシアン・アベール 2018/05/30-01:06 | ||
[4] ヨナ・ミューエ 2018/05/30-00:56 | ||
[3] ルーノ・クロード 2018/05/30-00:36 | ||
[2] 薙鎖・ラスカリス 2018/05/30-00:03
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