~ プロローグ ~ |
時計の針が天辺を越えた頃。遥か遠くまで続く藍の空は地上との境界線を隠している。一体化した空間は宇宙のように神秘的だ。 |
~ 解説 ~ |
[目的] |
~ ゲームマスターより ~ |
はじめまして。またはご無沙汰しております。十六夜あやめです。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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星好き 星座は詳しくないけど、あたしの知らない星に意味があるのにロマンを感じるから、知らなくていい ねぇイダ イダの好きなタイプの女性ってどんな人? …ふんふん…。ふぅん…(あたしとは違う人っぽい) あたし? あたしは…王子様みたいな人 目つきが悪くて、口が悪くて、荒っぽいし女の子扱いしてくれないんだけど、たまにずっと優しくなる。そこが好き …そう。孤児院のにーちゃん でもお婿さんにはしたくない。だらしないから 今まで付き合ってたって、何人と付き合ったの? (2,3人…どんな人だろ) あたしは付き合ったことはない 好きな人も今までいなかったから 孤児院で忙しかった お姉さん業(呼び方が好き) うん、恋する余裕、あるといいな |
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寝そべって、手を繋いで、2人で星空を仰ぐ。 彼女の語る思い出を、自分は知らない。 彼女が教えてくれた『クラウス』の情報を頼りに、 『彼』なら何を思うだろうと言葉を選ぶ。 星空はまるで君みたいだね。 君は僕の闇だ、クラル。 僕の視界も存在も覆い隠してくれる。 君の傍に居て初めて僕は安息を得られる。 空に瞬く星々は君の言葉、君の笑顔。 決して辺りを照らさず、だけど優しく心に響く。 考えを巡らせて出した言葉が、彼女を笑顔にする。 それがとても嬉しい。 懺悔する彼女を抱き締める。 泣かないで、クラル。 僕は僕の意思で此処に留まっているんだよ、と。 彼女に嘘を吐かざるを得ない自分を歯痒く思うけど。 それで、彼女が救われるなら良いんだ。 |
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またヴァン君と天体観測ができるなんてね嬉しいよ。 そうだね、やっぱり星を見るのは好きだな…美しいしね。 そうだね…今日は北斗七星の話をしようか。 名前くらい聞いたことはあるだろう? いざという時は方角をしる手掛かりにもなるし知っていて損はないと思うよ。 北斗七星はおおぐま座の一部でまぁいろいろ星座にまつわる話はあるが…ふふ、ヴァン君はあまり興味がないかな。 別にきちんと聞いてもらわなくてもいいんだ…こうやって君と星を見られることが貴重な体験なんだから。 星は美しいが誰かとみるとまた格別に美しい…そう思うよ。 勉強か…ヴァン君が気になるのなら私が教えようか?せっかくパートナーになれたのだからなんでも頼ってくれ。 |
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毛布に包まり座り込む ただ星を見に来たってわけでもないんだろう 話があるなら早くしろ ……は?帰る 仕方なくとどまり 多分な、特徴も一致するし だから何だ?アンタもしかしてあの女に惚れてるのか? まさかの答えに驚き一瞬フリーズ …正気か!? あいつは『終焉の夜明け団』だぞ、俺達の敵だ! ってかそれでコイバナかよ… リントの本気さにヤバいものを感じるが気を取り直し で、結局何が言いたい だ、誰があんな女! 安心しろよ、アンタがそんなことできないように、あの女は俺が捕まえて本部に突き出してやる こっちこそ容赦しない、手加減はなしだ できる相手でもないしな 同じように寝転がり、思う こいつと適合したのは、手綱を取れということなんだろう |
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(ララエルの話を聞き、彼女の手をそっと握る) ララエル、空を見てごらん。 あの白色の星…ララエルはスピカかな。 この前、君の胸の孔を見た時思ったんだ(参照7話) ああ、胸に孔が開いていても、この子は純真さを失ってないって。 どこまでも真っ白な、乙女のようだって。 だから、スピカかな。 (ララエルをぎゅっと抱きしめ意地悪く笑う) お兄様で良いの? ここで君にひどい事だってできるんだよ? …(くすくす笑い)星が見てるから、このへんにしておこうか。 (ララエルは僕の何、だろう。この気持ちを何て伝えたら良いんだろう) |
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あれが北斗七星、向こうがおとめ座 二人で学んできた星座を見上げて ふたご座は…今は難しいかな あれは冬の星座だから また、冬になったら見に来よう 来年でも、再来年でも、その先でもいいんだ 聞いて、と彼女の言葉に耳を傾けて …姉さんは、強いね 何もできないって言うけど、結してそれで終わらせたりはしない いつも真剣に、何ができるかを考えてくれる 前を向いて笑ってくれる そんな姉さんだから、僕も愛してるんだ 額を触れ合わせれば、同じ色の瞳が映る ありがとう、姉さん 同じ日に生まれた、たった二人の姉弟だもんね (これでいいんだ) 姉さんが傍で笑ってくれる 一緒に居られる この手で守れる こんな幸せは奇跡なんだ 僕はこの奇跡を…壊したくない |
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■オデット 星を見るのは好き 一人で見るのならって条件付きだけど なんでこの人と一緒に見なきゃいけないのかしら… まあいないものとして見ればいいわよね、うん なんだか珍しく話しかけてもこないし …ちょっと調子狂うけど、いつもこうならいいのに ちゃんと空を見なさいよ、勿体ない! 今日は折角綺麗に星がでているんだから ほら、あれとかわかる? ■キール 星か 美しいものだとは思うが、特に詳しくはないのだよな オデットも星を見るのに夢中のようだ 普段はしかめっ面ばかり見ているから、目を輝かせている様は何だか新鮮だな その顔を俺にも向けてくれたら嬉しい所ではあるが 誤解されてしまったようだが、もう少し彼女の声を聞いていたいしこのままで |
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二人でゆっくり話して親睦を深めたい ◆アユカ 星、綺麗だねえ いろんな星座が見えるって聞いたけど、わたしよく知らなくて かーくんは知ってる? へえ、物知りだねえ …かーくんの故郷ってどんな所? そっか…大切な場所だったんだね …だからかーくん、たまに寂しそうな目をするんだ うん、してるよ 気づいたのは最近だけどね ◆楓 星座ですか…多少なら 昔、よく故郷の夜空を眺めていたので 私の故郷は…自然ばかりの所で 人は少なかったものの、空気と水の恵みの元、手を取り合って生きていました それでも…文明に取り残された地の宿命か、いつしか誰もいなくなり、消滅してしまいましたが 寂しそう…?私がですか? …いつのまにか、見透かされていたのですね |
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~ リザルトノベル ~ |
●アラシャ・スタールード/イダ・グッドバー 薔薇十字教団の指令でソレイユの街にやってきた浄化師のアラシャとイダ。街の中心部から離れた場所にある小高い丘の上で佇む二人は、静寂に包まれた灯りの消えた街をそっと眺めていた。視線を上げたイダが先に口を開く。 「ほー。凄い満天の星だな。たまにはこういうのもいいな。星座がたくさん探せそうだ」 「星座は詳しくないけど、あたしの知らない星に意味があるのにロマンを感じるから、知らなくていい」 隣に座るアラシャが小さく答えた。 「……知らないことが楽しいから知りたくないか。なんとなくわかるな」 イダは自身を納得させるように頷き「深いなぁ」と呟きながら言葉を噛みしめていた。 アラシャは暗がりに輝くイダの横顔を見つめて言う。 「ねぇイダ。イダの好きなタイプの女性ってどんな人?」 突然の質問に戸惑ったイダだが、すぐ真面目に答える。 「好きなタイプの女性? んー。考えたこともないな。今まで付き合ってきたのは、相手から告白されてだったからなぁ。 まぁ強いて言うなら、料理がうまくて、性格が俺と合って、笑顔が可愛くてよく笑って、あとは楽観的な人がいいかな」 (……あたしとは違う人っぽい) 「そういうアラシャはどんなヤツが好みなんだ?」 「あたし? あたしは……王子様みたいな人。目つきが悪くて、口が悪くて、荒っぽくて、女の子扱いしてくれないんだけど、たまにずっと優しくなる。そこが好き」 「ぐ、具体的だな。もしかして孤児院のにーちゃんか?」 「……そう。孤児院のにーちゃん。でもお婿さんにはしたくない。だらしないから」 「そ、そうなのか……。難しいもんだなぁ」 イダは妹のように感じてきたアラシャの好みのタイプが、想像していた以上に心配になるもので焦っていた。見た目よりもずっと中身が幼いアラシャが星空よりも恋愛関係に興味を持っていることに少し成長を感じていた。 「今まで付き合ってきたって、イダは何人と付き合ったの?」 (……!? そんな大人な質問してくるのか!?) 「に……さ、三人だったかな! アラシャは付き合ったことあるのか?」 「あたしは付き合ったことはない。好きな人も今までいなかった。孤児院ではお姉さん業で忙しかったから」 「あーなるほどな。お姉さん業で忙しかったのか。でも今なら、そういう余裕もあるんじゃないか?」 イダは優しくアラシャの顔を真っすぐ見つめ、口角を薄く上げた。 「うん。恋する余裕、あるといいな」 アラシャは満天の空を眺めて微笑むのだった。 ●クラウス・クラール/クラル・クラール ソレイユの中心部から離れた小高い丘の上。世界全体を覆うような藍の空と幾つもの星が瞬く空間に寝そべり、手を繋いで星空を仰ぐクラウスとクラル。クラルは隣で同じ空を見ているクラウスに幸せそうに囁く。 「満天の星を見上げていると村にいた頃を思い出す。あの頃もよくこうして二人で星を見ていたね」 クラウスは瞬きをすることさえ忘れ、星空を眺めながら考えていた。 (僕は彼女の語る思い出を知らない。彼女が教えてくれた『クラウス』の情報を頼りに、『彼』なら何を思うだろうと言葉を選ぶ) 「星空はまるで君みたいだね。君は僕の闇だ、クラル。僕の視界も存在も覆い隠してくれる。 君の傍に居て初めて僕は安息を得られる。空に瞬く星々は君の言葉、君の笑顔。決して辺りを照らさず、だけど優しく心に響く……」 クラウスからの懐かしい言葉に胸が熱くなるクラル。幸せが涙となって溢れ出しそうになると、優しく柔らかいクラウスの右手がそっと頬に触れた。その手はマドールチェとして誕生してからの『クラウス』とは違う感覚だった。 「貴方のその一途な優しさが嬉しいわ」 クラウスは考えを巡らせて出した言葉が、クラルを笑顔にできてとても嬉しかった。 涙ぐむクラルは今まで言えなかった気持ちを口にする。 「ずっと貴方に謝りたかった事があるの。貴方は誰よりも優しくて、だけど誰よりも弱い人だから、見知らぬ誰かの苦しみを思っては、自分の幸せを呪って苦しむ人。周りの期待を自ら背負っては、窮屈に感じる自分を恥じて憎む人。そんな、生きているだけで傷付く人よ」 黙って何も返さないクラウスに対してクラルが続ける。 「私が貴方を現世に留めた事で、貴方が余計に傷ついている。貴方を苦しめたくない。けど、貴方がいない世界は、私にはどうしても耐えられない……」 そんな身勝手を謝りたい。ずっと思ってきたクラルは堪らず頬を濡らした。 懺悔するクラルを優しく抱き締める。 「泣かないで、クラル。僕は僕の意思で此処に留まっているんだよ」 (クラルに嘘を吐かざるを得ない自分を歯痒く思うけど、それで彼女が救われるなら良い。僕はこれから先も彼女を守り続ける) 「貴方は……」 (貴方はきっと、許す以前に怒ってすらいないのね) クラルは何を犠牲にしてでも守りたい。夫の望みを叶えたいと一層強く想ったのだった。 ●アーカシャ・リリエンター/ヴァン・グリム 「また、天体観測か……本当に好きだな、あんた」 ソレイユ地区の街の中心部から離れた場所にある小高い丘の上、一人寝そべって星空を眺めるアーカシャ。その隣で片膝を立てて座っている狼のライカンロープ、ヴァンは嬉しそうにしているアーカシャを見た。 「そうだね。私はまたヴァン君と天体観測ができて、嬉しいよ」 「そうか……」 隣で静かに座るヴァンを横目に、アーカシャは楽しそうに星と星を指で繋ぐ。 「そうだね。やっぱり星を見るのは好きだな……美しいしね」 ヴァンも顔を上げて見渡す。星に関してほとんど知識はないが、美しいということは理解できた。 「そうだ、今日は北斗七星の話をしようか」 「星の説明か……難しいのはわからんぞ」 「難しくなんかないさ。名前くらい聞いたことはあるだろう?」 「ホクトシチセイ……名前は聞いたことがある。が、詳しくは知らん」 くすっと笑うアーカシャ。そして無数にある星の一点を指差し、ヴァンに指の先を見るよう促した。 「いざという時は方角を知る手掛かりにもなるし、知っていて損はないと思うよ。北斗七星はおおぐま座の一部で、まぁいろいろ星座にまつわる話はあるが……ふふ、ヴァン君はあまり興味がないかな?」 「方角を知る手掛かりになるって言うのは便利そうだがな……」 そうは言うものの、未だにアーカシャの指差す星を見つけられないヴァンが方角を知る手掛かりにするには少し難しいようだった。 「別にきちんと聞いてもらわなくてもいいんだ。こうやって君と星を見られることが貴重な体験なのだから。星は美しいが誰かと見るとまた格別に美しい……そう思うよ」 闇と混ざり合った風が藍の空を通り過ぎる。草木が揺れ、夜の匂いとアーカシャの匂いが合わさり、ヴァンの鼻先を掠めていく。 「俺がちゃんと話を聞いてなくても、あんたは嬉しそうだな。俺と見るだけで格別に美しいね……。まぁ、あんたが楽しそうなのは悪い気はしないよ」 幸せそうに天体を追うアーカシャを眺めながら続ける。 「俺に学があったら、あんたの話をちゃんと聞いてやれるのかもしれないが……俺には学がない。 文字も読めない字の方が多いからな。名前は仕事をするのに必要だったから覚えたが……もっといろいろ知っていた方が便利だし、役に立つとは思うんだが……」 ヴァンが勉学を苦手だとういことは勿論アーカシャは知っている。 「勉強か……。ヴァン君が気になるのなら私が教えようか? せっかくパートナーになれたのだからなんでも頼ってくれ」 「あんたが……? 確かにあんたが教えてくれるなら助かるが……なんか変な感じだな」 それから夜明けまでの時間、まずは未だにアーカシャが指差した星を見つけられないヴァンは星探しをしていた。そして、アーカシャの星にまつわる話を聞かされるのだった。 ●ベルロック・シックザール/リントヴルム・ガラクシア 空が澄み、若干冷え込んでいるソレイユ地区。街の中心部から離れた場所にある小高い丘の上で毛布に包まり座り込むベルロック。 「ただ星を見に来たってわけでもないんだろう。話があるなら早くしろ」 身を震わせているベルロックの反応を見て楽しんでいるリントヴルムは、悪戯気味に言う。 「星空はいいよねえ。隣にいるのがベル君っていうのがちょっと残念だけど。話っていうのはコイバナについてかな?」 「……は? 帰る」 つまらなそうな顔をして立ち上がろうとするベルロックを、まあまあと落ち着かせる。 「聞きたいのは例のキミを浚った魔術師のことだよ。はっきりさせておきたい、彼女はマリー……僕が昔出会った子だよね?」 「多分な、特徴も一致するし。だから何だ? アンタもしかしてあの女に惚れてるのか?」 リントヴルムはベルロックの隣で寝転がり、乙女座を見つけ出して指を差す。 「そうだよ。僕は彼女に恋している」 冷えている空気が一層寒さを増すような、まさかの答えに驚き一瞬フリーズしてしまう。 「……正気か!?」 「勿論だよ。敵とか味方とか、そんなのどうでもいいよ。彼女は僕のスピカなんだ。 僕は冥界の主になって浚って閉じ込めたい。そのためなら浄化師の使命も、世界すらどうなったっていい」 「あいつは『終焉の夜明け団』だぞ、俺達の敵だ!」 (アイツは一体何を考えているんだ。ってか、それでコイバナかよ……) リントヴルムの本気さに危険なものを感じるが、今は感情的にならず気を取り直して問い詰めることを優先させた。 「……で、結局何が言いたいんだ?」 「ベル君が恋敵になるんじゃないかと思ってね」 「だ、誰があんな女! あ、安心しろよ。アンタがそんなことできないように、あの女は俺が捕まえて本部に突き出してやる」 「いやいや、違うなら別にいいんだ。でもね、邪魔したらベル君でも容赦しないよ」 「悪いがこっちこそ容赦しない。手加減はなしだ! できる相手でもないだろうからな」 同じように寝転がり、ベルロックは思う。浄化師としてコイツと適合したのは、手綱を取れということなんだろうと。 「ふふ……せいぜい『終焉の夜明け団』絡みの指令がこないのを祈ることだね?」 指令がもし来たとしても迷ったりしない。そう心に誓うベルロックなのだった。 ●ラウル・イースト/ララエル・エリーゼ 満天の空が果てしなく広がっている。空気も澄んでいて星々の一つひとつがとても綺麗に輝いている。神秘的ともいえる空の下でラウルはララエルの話を聞きながら、彼女の手をそっと握っていた。 「あの、ラウル……私、ラウルに隠している事があるんです。本当はアンデッドなのに、教団には人間ですって言っていて……。私……私……」 「ララエル、空を見てごらん。あの白色の星……ララエルはスピカかな」 夜空にひときわ輝くおとめ座を構成する純白色のスピカを指差した。 「……ふえ? スピカ、ですか?」 きょとんとするララエルに優しく微笑むラウルは真直ぐ瞳を見つめて言う。 「この前、君の胸の孔を見てしまったんだ。それでね、その時思ったんだ。ああ、胸に孔が開いていても、この子は純真さを失ってないって。どこまでも真っ白な、乙女のようだって。だから、スピカかなって」 ララエルは自然と自分の頬が火照っていることに気が付く。照れ隠しに慌てて言葉を見つける。 「だ、だったら……っ! だったら、ラウルはあーくとるす? あ、アークトゥルスです!オレンジ色みたいに心が温かくて、優しくて……お兄様、みたいな……」 オレンジ色に輝く、うしかい座のアルクトゥールスを指差していた。 ラウルは必死になって照れ隠しをするララエルをぎゅっと抱きしめ、意地悪く笑う。 「お兄様で良いの? ここで君にひどい事だってできるんだよ?」 「お、お兄様じゃ、ないです……」 抱き締められて心がおかしくなってしまいそうなララエル。ドキドキして破裂してしまいそうな高揚感に呼吸が早くなって、体が熱い。 そんなララエルの変化を見逃さないラウルはそっと体を離し、またも意地悪く微笑む。 「星が見てるから、このへんにしておこうか」 (ララエルは僕の何だろう。この気持ちを何て伝えたら良いんだろう) ラウルもまたララエルに対して特別な感情を抱いていた。だが、それをどのように表現していいのか、自分でもよく分からないでいた。 (心が……心がおかしいの……。ラウルに抱き締められて、笑顔を向けられて、意地悪されて、考えるだけでドキドキして……心が破裂してしまいそう。ラウルは私の何、でしょう。この気持ちを何て伝えたら……) 体温が伝わる。口にしていない言葉まで掌を伝って届いてしまいそうな感覚に少し怖くなる。それでもラウルはそっと手を握り続けてくれる。このままずっと一緒にいたいと思うのだった。 ●リュシアン・アベール/リュネット・アベール 「あれが北斗七星、向こうがおとめ座――」 周囲に灯りはなく、ソレイユ地区の街も静寂に包まれている。星々と月の灯りだけが辺りを照らしている。その光景は神秘的という他に何もなかった。 双子の弟リュシアンと双子の姉であるリュネットは幾つも存在する星々を眺め、二人で学んできた星座を見上げていた。 「……シア、ふたご座は見えるの?」 「ふたご座は……今は難しいかな。あれは冬の星座みたいだからね」 「僕たちと同じ双子の星……」 「また、冬になったら見に来よう。もし来られなかったら来年でも、再来年でも、その先でもいいんだ」 少しだけ表情が暗くなるリュネット。けれどそれは一瞬だった。 (見られなかったのは残念だけど、シアの言葉を聞いて気付いた。これから、来年、その先……未来) 聞いて、とリュネットの言葉に耳を傾ける。 「あのね……シア、聞いて。僕……ずっと空っぽなんだと思ってた。何もできないんだと思ってた。 シアとだって、ずっと一緒だった筈なのに……僕の中には何にもないの。思い出も、何もない。でも、そうじゃなかったの。 空っぽなんかじゃない。今だって、これからだってずっとシアとの時間を、思い出を沢山、刻んでいけるんだね」 瞳を潤ませながら話すリュネットの言葉には希望と期待、未来が宿っていた。 「……姉さんは、強いね」 リュネットは首を左右に大きく振る。 「違う、強くなんてない。だって僕、シアがいないと何もできない……」 「何もできないって言うけど、決してそれで終わらせたりはしない。いつも真剣に、何ができるかを考えてくれる。前を向いて笑ってくれる。そんな姉さんだから、僕は愛しているんだ」 「僕も、僕だって……シアのこと、愛してる。たった一人の、大事な弟だもん」 続く言葉に顔が熱くて、頭も真っ白になる。そんなリュネットにリュシアンはふわっと髪を掻き上げて額を触れ合わせた。ピジョンブラッドの瞳が互いの瞳に映る。 「ありがとう、姉さん。同じ日に生まれた、たった二人の姉弟だもんね」 姉さんが傍で笑ってくれる。一緒に居られる。この手で守れる。僕はこの奇跡を壊したくないと心の底から願った。 「姉さん、まだまだ星座がいっぱいあるよ。一緒に見つけよう――」 夜明けの境界線が見えるまで、二人は肩を寄せ合いながら星座を探すのだった。 ●オデット・フレーベル/キール・ヘイングス 夜空に輝く無数の星々。白く発光しているものや赤やオレンジ、蛍石のような淡い輝きを放つ星もある。一つひとつの星が呼吸をするように輝いている。見れば見るほど不思議で興味が湧いてくる。満天の星は見る者すべてを虜にする神秘性を持っていた。 時計の針が天辺を過ぎて随分と経った頃。オデットとキールはソレイユ地区の中心部を外れた小高い丘の上に座り、静かに星を眺めていた。 (星を見るのは好きよ。でもそれは一人で見るのならって条件付きだけどね。なんでこの人と一緒に見なきゃいけないのかしら……。まぁ、いないものとして見ればいいわよね。うん。なんだか珍しく話しかけてもこないし。ちょっと調子狂うけど、いつもこうならいいのに) オデットは心の中で独り言を呟いていた。そんなオデットの隣でキールは無言のまま並んで見ている。じっと星を眺めているキールの存在が気まずくなり、オデットはじわじわと移動して距離を少し開けて星を眺め始めた。 (本当に何も話し掛けてこないわね。星に興味ないのかしら。それとも寝ているのかしら? どちらにしても今日のこの人は少し変みたいね) 隣の相方が気になってそわそわしはじめるオデット。気になりつつも星を見るのは好きなので、夜空を見上げて星座を探す。 (オデットは星を見るのに夢中のようだ) キールは何も話し掛けてこないオデットの様子を盗み見していた。 (普段はしかめっ面ばかり見ているから、目を輝かせている様は何だか新鮮だな。その顔を俺にも向けてくれたら嬉しい所ではあるが、そんなことを口にすれば何を言われるか分かったものではないな……) 無言のまま天体観測は続けられる。キールは度々オデットの方を向き、星を眺める様子に微笑んでいた。一方オデットは一度も視線を外さずに星座を探し続けていた。そのとき、満天の星の間を縫うように一筋の星が流れる。刹那を駆ける流星を反射的に追いかけるオデットは体ごとキールの方を向いた。 「…………」 「…………」 偶然にも二人の目が合った瞬間だった。 先ほどよりも重苦しい空気が漂う。ぎこちない空気を遮るように切り出したのはオデットだった。 「ちょ……ちょっと! ちゃんと空を見なさいよ、勿体ない! 今日は折角綺麗に星が出ているんだから! ほら、あれとかわかる?」 空を見ていないと勘違いしたオデットが怒りだし、勿体ないと言いつつ星座に対して解説しはじめた。キールは旅をしていた頃に夜空を見る機会が多かったため、それなりに星には詳しいが、話の腰を折らないよう相槌をうちつつ話を聞く。誤解されてしまったようだが、もう少しオデットの声を聞いていたいキールはそのまま解説を聞き続けた。 「キール! ちゃんと聞いているの? 私が教えてあげてるんだからしっかり覚えなさいよね!」 知識を話せるのが楽しいオデットと構ってもらえて嬉しいキールだった。 ●アユカ・セイロウ/花咲・楓 「星、綺麗だねえ。いろんな星座が見えるって聞いたけど、わたしよく知らなくて。かーくんは知ってる?」 「星座ですか……多少なら。昔、よく故郷の夜空を眺めていたので……」 首都エルドラドより東南に位置するソレイユ地区。その中心部から離れた場所にある小高い丘の上で佇む浄化師のアユカと楓。 今回の指令はアユカが持ってきた。楓とはまだ心を開き合っているとはいえず、会話を重ねて少しずつでも親睦を深めていきたいという彼女なりの狙いがあった。理由は教団に保護される直前より過去の記憶を失っているからだ。そして、アユカにとって頼れる相手は楓しかいなかった。 「そうなんだねえ。ねえ、少しでいいから教えて?」 「私が知っているのは少しですよ。えっと、北の空の高いところに昇りつつあるのは北斗七星です。 おおぐま座の腰と尻尾に当たる一部で、その尻尾のカーブをそのまま伸ばしていくとオレンジ色をした星が見えますよね。 うしかい座のアルクトゥールスです。またそのカーブを伸ばしていくと白色をした、おとめ座のスピカがあります。 さらに伸ばすと、4つの星が台形に並んだ、からす座があり、北斗七星からからす座までのカーブを『春の大曲線』と呼ぶようです」 「すごく詳しいねえ! もっと教えて!」 「『春の大曲線』の円弧の中心あたり、しし座の尾の先にあるデネボラと、先ほどのアルクトゥールスとスピカの3つをつないだものが『春の大三角』と呼ばれています」 淡々と説明した楓は急に静かになった。 「へえ、物知りだねえ。かーくんすごいね!」 「私は別に……」 「ねえ、かーくんの故郷ってどんな所?」 「えっと……私の故郷は自然ばかりの所で、人は少なかったものの、空気と水の恵みの元、手を取り合って生きていました。それでも……文明に取り残された地の宿命か、いつしか誰もいなくなり、消滅してしまいましたが」 「そっか……大切な場所だったんだね」 「まぁ、えぇ」 (……なぜだろう。自分の故郷のことを話すのは初めてだった。アユカと二人でこういう場で過ごすということになり、最初は内心緊張していた。だから故郷のことを話すつもりはなかった。ただ、この夜の静けさと清浄な空気に当てられてしまったみたいだ) 「かーくん、たまに寂しそうな目をするよね」 「寂しそう……? 私がですか?」 「うん、してるよ。気づいたのは最近だけどね」 「……いつのまにか、見透かされていたのですね」 楓が見透かされていたことを素直に認めたのは星が綺麗だったからだ。アユカの前では平常心を保っていられない。冷静でいようと努めているのがやっとな楓だった。
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*** 活躍者 *** |
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該当者なし |
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[9] アユカ・セイロウ 2018/05/27-19:53
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[8] オデット・フレーベル 2018/05/27-13:35
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[7] アーカシャ・リリエンタール 2018/05/26-16:23
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[6] ベルロック・シックザール 2018/05/26-11:19
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[5] リュシアン・アベール 2018/05/25-22:29
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[4] アラシャ・スタールード 2018/05/25-09:27
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[3] ラウル・イースト 2018/05/24-11:55
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[2] クラウス・クラーク 2018/05/24-06:39
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