~ プロローグ ~ |
イースターはアンデットが新たな種族として認められた記念日として花冷えする季節から、5月終わりまである復活祭だ。 |
~ 解説 ~ |
●目的 |
~ ゲームマスターより ~ |
GMのozです。ここまで読んで下さりありがとうございます。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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※デザインセンス・絵の心得共になし 卵が『復活する命』の象徴なら、ララエルの顔を描こうかな。 えーと…目は大きくて、青くて…髪はツインテールにしてて… うん、こんな感じかな(かろうじて人間と判別できる出来栄え) 最後はメッセージを書いて入れるそうだけど…そうだな… 『君を一生守らせてください』 好きだ、なんて今はとても言えない。 大切すぎて、ララエルの純真な心に触れられない。 でも…このくらいなら許してもらえるよね。 (ララエルに「見せあいっこしましょ」と言われ) そ、そんなに笑わなくたっていいだろっ。 君の卵だって、それは僕? 僕っていうかひよこっていうか(くすくす笑う) えっ、これ学校で使うの!? |
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目的 イースターエッグを作る手伝いをする。 メインは飾り付けのつもりだけど、実行委員に申し出て準備から参加。 飾り付けは、シルシィはうさぎとかひよことかの動物の絵を描いて、リボンを貼付ける。 マリオスは色付けした卵に、ビーズやスパンコールでEASTERの文字を貼付けたり。 会話 シルシィ (講座のポスターを眺めつつ) …これ、学校のイベントで使うイースターエッグを作るのを、手伝って欲しいってこと? マリオス そうかもな。 講座に参加する人は手軽にイースターエッグ作りを楽しめるし、実行委員は飾り付けをする手が増える、いいアイデアというべきか。 シィも行きたいのか? シルシィ ん、行く。 シルシィ 曲面に絵を描くの、難しい…。 |
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2人でイースターエッグ作り。 作成はベルクリスが主体。 顔や服を汚しながら、不器用なりに熱心にのめり込んで絵付け。 カティスは筆洗い等の手伝いをしながら微笑ましげに見守り。 【作品】 白地に銀と金で細かな模様。 (ホワイトによる修正を駆使) 良く見ると小さなハートが沢山。 【会話】 「おじ様?」 「はは…いや、君はやっぱりゴードンの娘だなぁってね」 「!?…わ、わたくしをあの業突く張りで下品な成金趣味のお父様と一緒にしないで下さいまし!」 「とは言うがね…」 (集めに集めた煌びやかなジュエルパーツの山。真っ赤になって返品) 「別に良いのに」 「良くありませんわ!」 「これは愛…わたくしの愛…これも愛…おじ様への愛…」 「……」 |
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~ リザルトノベル ~ |
●『シルシィ・アスティリア』『マリオス・ロゼッティ』 「シィ、どうした?」 シルシィは司令部の掲示板に張られてある指令書の中でも異色のポスターをじっと見つめていた。 「……これ、学校のイベントで使うイースターエッグを作るのを、手伝って欲しいってこと?」 「そうかもな。講座に参加する人は手軽にイースターエッグ作りを楽しめるし、実行委員は飾り付けする手が増える。いいアイデアというべきか……シィも行きたいのか?」 「ん、行く」 講座に関する紹介文を読みながら感心する。マリオスはシルシィの方へと向き尋ねると、シルシィは軽く頷く。 イースターエッグの作り方に興味を持ったシルシィの意向で準備から参加することを決めた。二人は実行委員に準備から参加したいと申し出ると、快く迎えられた。参加するのに都合のいい日付を確認し、開催日から一足早い3日前に参加することになった。 当日、アトリエに来ると実行委員の女性から、「これ学校で配ろうと思ってる冊子なんだけど、イースターエッグの作り方が詳しく書かれてるから良かったら、どうぞ」と手渡される。 渡された冊子をめくると、手書きのイラストが描かれてあって子どもにも分かりやすくイースターエッグの作り方が説明されている。シルシィは興味深そうに冊子に目を通す。 「二人には卵に上下に穴を開けて欲しいんだ」 実行委員の女性はダース単位で置かれたケースに入っている卵を指差す。 「道具はちゃんと二人分机の上に用意してあるから安心してね。穴を開けた卵は空のボールに入れておいてね」 「卵から中身を取り出さなくていいんですか?」 「実というとねー、卵に穴を開けるよりも中身を取り出す方が難しいんだよね。やってみたら分かると思うんだけどさ。三個ぐらい卵に穴を開けたら、私を呼んでくれる? コツを教えるからさ」 マリオスが先輩に質問すると、腕を組んだ先輩が暫く考え込み、そう提案する。その後すぐに、他の実行委員に呼ばれて慌ただしく去ってしまった。 「……実行委員も大変そうだな」 「この冊子、分かりやすく書かれてるから、この通りにやれば大丈夫」 シルシィは冊子を掲げながら、どこか自信ありげにマリオスに話しかける。 「まあ、とにかくやってみるか」 「上下に鉛筆で、印を付けておくと中心からずれにくくなるって」 冊子から得た知識を披露する。マリオスは卵の中心に、薄く印を付けていく。シルシィも印を付けた後、ピンで穴を開けようとする。 初めてやるせいか、シルシィの手つきはぎこちない。卵を丁寧に持つと、ピンで少しずつ開けていく。 マリオスはシルシィが自分でやりたがっているのを分かっているので、取り上げたりはしないものの、なんだか落ち着かない。 「……できた」 ある程度いくと、卵にぷすっとピンが刺さった。無表情ながら、どこか満足げな様子で卵を見ている。一度やってコツを掴んだのか、最初のぎこちない手つきが嘘のようにスムーズに進めていく。 「三個とも、終わった」 「じゃあ、先輩呼んでくるか。ちょっと待ってろ」 マリオスが席を立っている間、シルシィは卵に穴を開ける作業に集中した。 「シィ、シィ……先輩が来たぞ」 マリオスの声に集中しきっていたシルシィが顔を上げる。 「作業が早いねえ、助かるよ。じゃあ、卵の中身の取り出し方を教えるね」 シルシィの手際の良さを誉めると、先輩は上下に穴を開けた卵を手に取る。 「卵の太くて丸い方を上にして、穴に息を吹き込むんだけど……――」 「冊子に、書いてあった」 先輩の言葉にシルシィが頷く。 「一般家庭ならそれでいいんだけど、これ後で皆で食べるからさ。さすがに他人の息がかかった卵を食べるの抵抗があるでしょ?」 二人は力強く頷く。まだ自分のならともかく、見知らぬ人の息がかかった卵を食べるのは抵抗がある。 「だから、裏技を使ってちょっとした魔術を使うのさ。ちょっと見てて」 先輩が卵に開いた小さな穴に人差し指を翳すと、短く詠唱した。すると、圧をかけられた卵は穴からとろりとボールに落ちた。 「おおっ……!」 二人が目を輝かせながら見ているのに、先輩も気を良くしたのか詳しく説明してくれる。 「魔術を使って息を吹きかけるぐらいの強さで風を送り込んでるんだよ。実行委員伝統の技だよ」 「これ簡単そうに見えて難しいですよね。卵が割れないぐらいの緻密な魔力操作が必要ですよね!?」 魔術に関心があるマリオスが真っ先に食いついた。 「分かる? これができるようになると魔力操作が大分マシになるんだよね。実を言うと、実行委員の連中の中には魔術の訓練になるからって参加する奴もいるんだよ」 「……来年も参加しようかな」 「毎年やってるから、もし参加するなら歓迎するよ」 マリオスが真剣に考え込んだように呟く。 二人は先輩にその魔術の手ほどきを受け、チャレンジする。魔術自体は初心者でも使える簡単なものだが、 「……難しい」 「あっ、あ~! 割れた、これ意外と難易度高いな……」 風が弱すぎると中身が中々出てこない。逆に強すぎると卵が割れてしまう。二人は苦戦しながらも時間を忘れて夢中でやっていた。 「二人ともそろそろ疲れただろう。今日は一旦この作業を中断して飾り付けでもしたらどう?」 「でも、まだ4、5個しか、成功してない」 「僕もまだ続けたいです」 様子を見に来た先輩が二人に声をかける。納得していない二人に先輩は苦笑いすると、ある提案をしてきた。 「もし君達の都合が合うなら、明日もやってるから参加してみない?」 シルシィとマリオスは顔を見合わせる。 「明日は予定、ない」 「なら、明日も準備に参加させてもらってもいいですか?」 先輩は二人の返事に笑みを浮かべて、頷く。 「こちらこそ大歓迎さ。とりあえず今日はイースターエッグを一通り作ってみたらどうかな?」 先輩の好意に甘えることにして、二人は飾り付けをやり始める。 ボールの中に入れた染色液の中に卵をつける。シルシィは黄色の色水に、マリオスは青色にした。 「僕の方はそろそろ取りだそうと思うんだ、シィは?」 「ひよこを描こうと思うから、もう少しつけてみる」 マリオスはまるで実験でもしているように時間を計りながら、卵を取り出す。 「綺麗、空みたい」 シルシィはマリオスが取り出した卵を見てそう言う。マリオスは卵を乾かす為にピンボードに刺しておく。 待っている間、シルシィは冊子を読んでいく。マリオスはEASTERの文字を張り付けるスパンコールを選んでいた。 乾いた卵にシルシィはひよこの顔を描き、首元に金のリボンを巻く。マリオスは白いスパンコールを張り付けていく。 「黄色に金だと色が重ならないか?」 「このひよこ、なんだかマリオスに似たから」 シルシィが愛嬌のあるひよこを見ながら、そんなことを言うものだからマリオスは反応に困った。マリオスは口には出さないものの、そのひよこと自分は似てないと思う。 マリオスが作ったイースターエッグは無難なものだ。メッセージも『ハッピーなイースターを!』という定番なものを書いた。そういえば、シルシィはどんなメッセージを書いたのか尋ねてみると、 「『ひよこが先か卵が先か』って書いた」 「随分と哲学的なメッセージだな、シィ」 その言葉に首を傾げるシルシィにマリオスは苦笑いする。 お互いにイースターという行事は知識としてはあるものの、自ら参加することはなかった。 浄化師として指令の合間に参加したイースター講座は、思っていたよりも悪くはないものだった。講座が終わるまでの間、イースターを二人なりに満喫するのだった。 ●『ラウル・イースト』『ララエル・エリーゼ』 講座初日、ラウルとララエルはイースターエッグ作りの為にアトリエへやってきた。 見本用のイースターエッグは初心者ができるシンプルな色付けから上級者向けの美しい装飾が施されたものまである。 「いっぱいあります! 見ているだけでワクワクするの!」 ララエルはアトリエに入った瞬間、沢山のイースターエッグを見て興奮したように駆け出す。そんなララエルを見守りながらラウルは優しく微笑んでいた。 (指令書の中に妙なポスターがあるから何事かと思ったけど、誘ってみて良かった) こんな平穏で幸せな時間が続いてくれたら。ララエルの無邪気な笑顔を見ながら、ラウルはそう思わずにいられなかった。 ララエルは数ある見本の中で雪の結晶のような、お花のような模様が入った青色のエッグが気に入ったようだ。 目を輝かせながら「きれーです……」とまじまじと見つめている。 その横のテーブルには、飾り付け用の材料が置かれている。色付け用の食紅から絵の具一式、綺麗な布地からリボンまで何でもある。 ララエルの興味はイースターエッグから飾り付けの材料に向けられた。 「うわぁ! ラウル、見て下さい! きらきらがいっぱい!」 ララエルが指さした先には、ラインストーンやスパンコール、ジュエルパーツが置かれていた。確かにこれらを使って飾り付けすれば、華やかなものができそうだ。 「これで飾り付けするのかい?」 「うーん、きらきらして私にはもったいないです」 私には、の部分で思わず反論しそうになるが、ララエルが満面の笑みを浮かべて言った言葉にすぐに掻き消されてしまった。 「それに何を描くのかもう決めてるの!」 ラウルが講座に誘ってくれたときから、ずっと考えていたと言われれば何も言えなくなってしまう。 元々手芸が好きなララエルは材料のあるテーブルを一周するように、一つ一つ興味深そうに見て回る。布地のところで足を止めると、 「この布、とってもルルに似合いそうです!」 ララエルが手に取ったのはライトブルーの涼しげな無地の布と、キラキラとしたパールが光る可愛らしいチュールの生地だ。どちらも薄手の布で、人形の夏服を作りたいとララエルが言っていたことをラウルは思いだしていた。 「ララ、今日は何しに来たんだっけ?」 「えっと、イースターエッグ作りです。えへへ、見てるだけでも楽しくて忘れてました」 ラウルが茶目っ気たっぷりに問いかけると、ララエルも本来の目的を思い出したようで、はにかむように笑う。 「後で、この生地がどこに売ってあるのか実行委員に聞いてみるよ」 「ありがとうございます!」 ララエルの笑顔に花を見る。爛漫と咲く花ではない。小さな白い蕾が綻ぶような笑顔がラウルの心を鷲掴みにする。こんなに無垢に笑う人を他に知らない。この笑顔を見る度に、ラウルの心のどこかが温かくなる。 「ラウル? どうかしたんですか?」 「……ううん、何でもないよ。僕も何を描こうか考えてたんだ」 顔を覗き込むララエルに安心させるよう微笑むと、ララエルはまた花のように笑った。 二人は数種類のペンと卵の殻を持って制作机に着く。 ララエルにはああ言ったものの何を書くか全く考えていなかったラウルは卵を前に考え込む。 (卵が『復活する命』の象徴なら、ララエルを描こうかな。えーと……目が大きくて、青くて……髪はツインテールにしてて……) ララエルの姿を思い浮かべながら迷いなく卵にペイントしていく。ラウルが夢中で描いている間、ララエルは一個目の卵を割ってしまい、もう一個もらいにいっていた。 「うん、こんな感じかな」 出来映えはというと、幼子が落書きした絵のようだった。辛うじてツインテールの人間だと判別できる絵をラウルは満足げに眺める。 (最後にメッセージを入れるはずだけど、そうだな……) 『君を一生守らせて下さい』 言葉にできない思いをメッセージに込める。 好きだ、なんて今はとても言えない。大切すぎて、ララエルの純真な心に触れることすらできない。 (でも、……これくらいなら許してもらえるよね) * ラウルに誘われてきたイースターエッグ講座。その日が早く来ないかとララエルは心待ちにしていた。前日は眠れないかもしれないと思ったけど、ぐっすりと眠ってしまってラウルに起こされてしまった。 ララエルは卵を睨みつけるように意気込んでペイントする。何を描くかは、誘われたときから決めていた。ただ張り切るあまり、思わず力加減を誤って卵を割ってしまう。 「うう……たまごさん、ごめんなさい。今後はもっとやさしく触りますね」 割れた卵に謝りながら、2個目の卵を優しく手に包み込む。 (ラウルは、卵は『復活する命』のしょーちょだって言ってた。しょーちょーって何かしら?) ララエルは数種類あるペンの中からラウルの瞳である赤色を迷わず選ぶ。ラウルから誘われたときから、イースターエッグにラウルの顔を描こうと、ずっと決めていたのだ。 (ラウルはベリアルが相手だと、すぐあいうちで死のうとするんだもの。そんなの絶対嫌だもの。私、ラウルに生きていてほしい……) ララエルは願いを込めながら描いていく。復讐の炎を胸に抱く彼の苦しみが少しでも軽くなるように。 心を込めてラウルの顔を描いたイースターエッグ。その予想以上の出来映えに思わずラウルに見て欲しくなる。 「最後にはメッセージを書いて入れるんですよね。えーと……」 ララエルは考え込んだ末に書いたメッセージは奇しくもラウルと同じものだった。 『あなたを一生守らせてください』 言葉にできない思いがあるのはララエルも同じだった。パートナーになってから、ずっと一緒にいるから言えない思い。 (だって、私はラウルの事が――) ずっと一緒にいたいから、この思いは胸に秘めたままにしておくのだ。無邪気な笑顔の下に隠した宝石箱。何重にも鎖をかけて飛び出てしまわないように大切に閉まっておく。 ララエルは蕾のまま笑う。 「ラウル、できた? なら、できた卵を見せ合いっこしましょ」 ララエルの笑みにつられたようにラウルも笑う。 ラウルに渡された卵を見て、ララエルはびっくりする。さらに描かれた絵が自分だと聞いて思わず声を上げてしまう。 「ええーっ!? これが私ですか!?」 何でもスマートにこなして見せるラウルの意外な姿にララエルは笑いが止まらなくなる。 「もうっ、ラウルったらおもしろいです!」 「そ、そんなに笑わなくたっていいだろっ」 ラウルは顔を赤くして拗ねたようにそっぽ向く。 「君の卵だって、それは僕なのか? 僕っていうかひよこっていうか」 ララエルの明るい笑い声にラウルもまたくすくすと楽しげに笑い出した。二人が楽しげに笑い合っていると、後ろから実行委員の声をかける。 「あの、出来上がったものは学校のイベントで使いますので、こちらに提出してくださいね」 「えっ、これ学校で使うの!?」 「はい、ポスターにもその旨を書かれていたんですが……」 ラウルの上げた驚愕の声に実行委員は申し訳なさそうに答える。てっきりイースターエッグを作るだけかと思っていたラウルは頭を抱える。 (持ち帰っていいものだとばかり思ったから、あんなメッセージを入れたのに……!) 赤の他人に読まれたら軽く羞恥で死ねる。 その後、ラウルとララエルが作ったイースターエッグが学校のイベントで使われるかどうかは、これからのラウルの交渉にかかっているのだった。 ●『ベルクリス・テジボワ』『カティス・ロウ』 イースターはベルクリスにとって特別な日。 カティスはアンデッドである。ベルクリスがカティスを祝おうと思っても、「もうイースターを祝う年でもないから」と言って困った顔で断れるのが目に見えている。 そこでベルクリスは一計を案じた。 ベルクリスはカティスと一緒にイースターを祝いたい。なので、イースターエッグ作り講座は丁度いい口実だったのだ。 「おじ様、見てくださいまし。どのイースターエッグも可愛らしいと思いませんか」 「そうだね、器用なものだ」 カティスは見本として並べられたイースターエッグを感心したように見る。 「おじ様、私達もイースターエッグを作りましょう!」 「ああ、向こうの方に材料があるみたいだね」 カティスは頷くと、ベルクリスと一緒に材料が置かれたテーブルに向かう。 ベルクリスはきらめくようなラインストーンやジュエルパーツに目が惹かれる。ラインストーンは様々な色があり、ルビーやエメラルド、サファイア等を連想させるものもあって選ぶのに悩んでしまう。 ジュエルパーツの方も可愛らしいデザインも多く、ハートやリボンの形をしたものはベルクリスの心を捕らえて離さない。特にパール付きの薔薇はアクセサリーとして使っても違和感がなかった。 ベルクリスはいつの間にか夢中になって自分好みのものを集めていた。 ふっとカティスがこちらを微笑ましそうに眺めているのに気づく。 「おじ様?」 「はは……いや、君はやっぱりゴードンの娘だなぁってね」 首を傾げたベルクリスにカティスは思い出すように小さく笑みをこぼした。 「!? わ、わたくしをあの業突く張りで下品な成金趣味のお父様と一緒にしないで下さいまし!」 「とは言うがね……」 カティスが視線を向けた先には、ベルクリスが集めに集めた煌びやかなラインストーンやジュエルパーツの山がある。ベルクリスは真っ赤になって一つ一つ元の場所へと戻していく。 (私ったらなんて失敗を……! おじ様を放置して私は何をしていたのかしら、もう! せっかく二人っきりなのに!) 「別によいのに」 「良くありませんわ!」 くすくすと笑い続けるカティス。彼にベルクリスの姿はどう映っただろう。まるでキラキラしたものを集める子どものように見られていたのではないか。そう考えると恥ずかしくて堪らない。 沢山あったパーツはカティスの手を借りて、ようやく返し終えた。 「おじ様、私……」 「これからイースターエッグを作るんだろう? ベルは明るく笑っている方が可愛いよ」 落ち込むベルクリスにカティスが優しく声をかける。カティスに「可愛い」と言われ、落ち込んだ気持ちはどこかに吹っ飛んでしまう。 「おじ様、私のこと可愛いって思う?」 「ああ、ベルは素敵なレディだよ」 頬を紅潮させたままもう一度尋ねてみると、カティスの言葉にベルクリスは天にも昇る気持ちになった。 「おじ様、私このイースターエッグにおじ様への愛を詰め込みますわ!」 「……そのイースターエッグは学校のイベントで使うものだと私は聞いていたのだが?」 「おじ様と作ったという思い出が大事なのです!」 カティスの言葉は新たな決意を胸に意気込むベルクリスに届かなかった。 張り切ったベルクリスは絵の具一式を借りて、制作机に向き合う。 「これは愛……わたくしの愛……これも愛……おじ様への愛……」 卵に愛を詰め込めるように呟きながら金の絵の具をパレットに出し、筆の先につける。余分な絵の具をペッパーにふき取って模様を書き込んでいく。 そんなベルクリスにカティスは困った表情を浮かべる。同時に手に掛かる子ほど可愛いという感情が入り交じった複雑な表情をしていた。 ベルクリスは顔や服を汚しながらも夢中で絵付けする。自分が器用な方ではないと分かっているが、頭の中に描いたイースターエッグを実現すべく熱心に筆を動かしていく。いつの間にか無言で作業を続けていた。 (あっ! 失敗してしまいましたわ……乾いてからホワイトで修正しましょう) ベルクリスがイースターに拘るのは理由がある。 (だって、おじ様が復活して下さったお陰で、わたくしはおじ様と出会えた……それって奇跡みたいに素敵なことでしょう) カティスが何不自由なく生活できるのは、彼の方のおかげだ。その事に関しては心から感謝している。 でも、カティスを幸せにするのは自分だ。 ベルクリスはカティスがつらい思いをするのは嫌だ。それよりあの穏やかな笑みをずっと眺めていたい。 これはベルクリスの我が儘なのだ。 カティス・ロウが誰にはばかることもなく、沢山の幸福の中で人生を謳歌することを願っている。この我が儘もカティスの隣も誰にも譲る気なんてない。 (おじ様が席を外している隙にメッセージも書き込んでおきましたし、準備万端ですわ) メッセージには『イースターの季節にあなたに愛を送ります』とシンプルにそれだけを書いておいた。 このイースターエッグはカティスに贈ることはできないけれど、ベルクリスとの思い出は残り続ける。 * ベルクリスがイースターエッグ作りに奮闘している間に、カティスは使い終わった筆やパレットを洗っていた。 (色々アレな所はあるけれど、根は純粋な良い子だからね。私にとっても娘同様、目に入れても痛くないくらい可愛い。……君が楽しそうにしている姿を見るのが、今の私の幸せだよ) 暫くして、ホワイト修正をしていたベルクリスが声を上げた。 「ようやく完成しましたわ!」 顔に絵の具をつけながら嬉しそうにはしゃぐベルクリスに目を細める。 「おじ様、見て下さい! 完成しましたの、……おじ様?」 カティスがベルクリスの頬についた金の絵の具を手で拭う。子どもにするような手付きだったが、ベルクリスはボッと顔を真っ赤にした。 「お、おおおじ様!?」 「ベルの可愛い顔に絵の具がついてたからね。あ、嫌だったかい!?」 「嫌ではありませんわ!」 子ども扱いされて嫌だったのかと慌てるカティスにベルクリスは即答で否定した。先程の行為も単にカティスに子ども扱いされただけだと分かっているが、好きな人に触れられて嬉しくないわけがない。 「完成させたんだね。女の子らしくてベルらしいね」 カティスはまるで我が事のように完成したイースターエッグを見て喜ぶ。 卵の白地を生かした銀と金の模様は華やかではあるが、上品さを感じさせる。よく見ると小さなハートが散りばめられていて可愛らしい作品が出来上がっていた。 「おじ様も作ったら良かったのに」 「私が作ってもベルみたいにはならないよ。味気のないイースターエッグになるだけさ」 「私、おじ様が作ったものなら大事にしますわ!」 「ありがとう、ベル。これにメッセージは入れたかい?」 「ふふ、内緒ですわ」 人差し指を当てて笑みを浮かべるベルクリス。その姿を見て、カティスは一抹の不安を感じる。 「……ベル、子どもたちに渡しても大丈夫なメッセージだろうね?」 「もちろん問題ないですわ!」 自信満々な様子のベルクリスにこれ以上追求するのを止め、彼女を信じることにした。彼女に甘いという自覚はある。時には彼女の父であるゴードンからも苦言を申されたこともある。 幼い頃からベルクリスを一番近くで見てきたカティスにとっては、彼女が健やかに成長する姿を見ることが、今の自分にとっての生き甲斐だ。 カティスは最高のイースターを過ごすのだった。
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*** 活躍者 *** |
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[7] ベルクリス・テジボワ 2018/05/30-23:21
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[6] ラウル・イースト 2018/05/29-23:23
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[5] シルシィ・アスティリア 2018/05/29-21:09
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[4] ラウル・イースト 2018/05/29-11:23
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[3] シルシィ・アスティリア 2018/05/28-23:40
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[2] ララエル・エリーゼ 2018/05/28-03:55
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