~ プロローグ ~ |
桜も散り、気温もだんだんと高くなってきたころ。 |
~ 解説 ~ |
指令内容は【ベレニーチェ海岸とその周辺の安全確認】となっています。 |
~ ゲームマスターより ~ |
どうも、お久しぶりです。Narviです。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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【祓:目的】 喰から『シーグラス』の話を聞き探索 …後は。あの丘から、広大な海の景色を一望してみたい。鐘は…どうしたものか 【祓:行動】 「シーグラス?」 「珍しい…か …男二人でただ波打ち際を歩くのも物足りないものだ。せっかくだ、探してみよう」 些事かも知れない。それでも、親友といる間は、その些事に拘っていられる。それはとても幸福だという自覚はあったから シーグラスは思うまま手に取って、拾わずに元の位置へと戻した きっといつか、もっと良い拾い手が現れることだろう 思わず心に浮かんだ裏の無い微笑は、我ながら心地良いものだった 「グレール。あの丘から海が見たい」 ……己の気まぐれに付き合ってくれる親友は、本当に心地良い |
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【目的】 ・ここ最近、司令続きだった為、ほんの息抜き 【会話】 テ:レミネ、足つけてみないか? 気持ちがいいぞ レ:え……あ、足……? っわ、 大きめの波がきて驚く テ:大丈夫か、レミネ? レ:平気、これくらい…… ……気持ちいいね、ほんとに テ:……司令続きだったからか、顔が強ばることが多かったが、ようやく笑ってくれたな レ:え。顔、強ばってた……? テ:緊張に弱いからな、レミネは レ:(知ってたんだ。なんか、恥ずかしい……) あの。よく見てるんだ、私のこと…… テ:パートナーだからな、当然だ |
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目的 戦闘後の見回り 手段 イダとぶらぶらする ブーツ脱いで裸足になって、水辺を歩こう うん、イダはそのままでもいいから 水、少し冷たい。でも気持ちいい イダは、どうして教団にきたの? (じっと耳を傾ける) それじゃああたしは妹さんの代わり?(小さな声で) ううん、なんでもない あたし?あたしは、安定した給料と情報が得られるから にーちゃんを探したいのもあったし、孤児院に仕送りもしたかったから む。…あたしが会いたいだけなのかも。 でも、ここにきて、イダに会って、別にいいかなと思うようになってきた にーちゃんは、今でも好き でもそれは、にーちゃんとして。ひとりの男の人とは見てない ん、あたしもイダのことわかった気がする |
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普段はあまりやる気のないクロエの意向で参加。 海周辺の安全確認後、海ではあまり遊ばず観光。 観光と同時に思案も(鐘の丘あたりで)巡らせます。 クロエ「そういえば、海のベリアルって凶悪凶暴だそうだね、水気には木気だけど海戦だとどうだろう。現状の武器だと不利な場合もあるかな。」 ロゼ「海の武器といえば、トライデントとか?」 クロエ「槍が得意なアライブはいないね。」 という感じ。 後、海周辺の安全確認+観光案内(もっとお金稼ぐのに本気出して的な)+対海戦装備要望のレポートを提出。 |
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■行動 ロスはトランスして狼姿 2人浮き輪を借りてぷかぷか浮かぶ ティは飲み物も買ってきておいて手元 浮き輪の上に寝転がる体勢 ロスはま浮き輪に手を乗せてまどろみ 波に流されそうならティの元へ ティは寝て浮き輪から落ちるかもだが ロスは心配せず放置(ワリと毎度 「ぶは吃驚しました 「わんわんっ 「ライカンスロープと知った今では何やら違和感が 「ははは!いやー大丈夫そうで何より! ■ 「バーベキュー出来そうならやりましょう ティは食材を持調理道具(持参や借用)で調理 ご飯食べ日が落ちる景色を眺め 最後にテントで睡眠 「へくしっ ロス抱上げつつ 「ロスさん毛皮あったかいですが少し寒いです 「まーテントの中ならまだマシだから! 可能なら花火も |
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■目的 海岸とその周辺の安全確認。(建前) 海で遊ぶ。(本音) ■行動 任務完了後水着に着替え、まずモニカが薙鎖に(文字通り)手取り足取り教えつつ準備体操。 「準備運動は大事だよ、ナギサ。指令の事前準備と一緒」 「それは理解してますけどね」 近いです、五感の毒。 陰陽師らしく真言唱え心頭滅却を。 その後は浮き輪借りて泳いだり、持ってきたゴーグル使って潜り、海中を見てみたり。 海から上がった後、薙鎖はモニカに言われるがままに身体を拭かれ……ていたら、気が付けば膝枕ポジション。 「いつの間に!?」 「疲れたでしょ? しばらく横になったほうがいいよ」 眠気と疲労と心地よさにあっさり敗北。 可能なら夜、皆に声掛け花火。 後片付けも。 |
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~ リザルトノベル ~ |
●【友情のベルが鳴る】 「シーグラスか」 『ガルディア・アシュリー』は『グレール・ラシフォン』の方を見て、そう呟いた。 「海が壊滅的なこの世界で、シーグラスは極めて希少だろう。ガルディアは見たことはあるか?」 「見たことはないな。グレールは?」 「俺もない」 まあ当然かと二人は納得する。 そもそも探せる海がここくらいしかないのだ。ほとんどの人はその存在をお目にかかることなく死んでしまうだろう。 「珍しい、か。まあ男二人でただ波打ち際を歩くのも物足りないというものだ。せっかくだし探してみよう」 ガルディアがそう言って、二人並んで歩き始めた。 「シーグラス、見つかればいいのだがな……」 太陽の光で輝くシーグラスを見つけるために、二人はゆっくりと波打ち際を歩く。 それは些細な事かもしれない。 ただ、なんのしがらみもなく、のんびりと歩き、時に語らう。そんな当たり障りのない日常が、とても幸福なのだから。 全てはこの相棒――グレールのおかげである。 グレールといる時は、いろんなしがらみや憎しみを忘れさせてくれる。 直接言うのは少し照れくさくて、ガルディアは心の中で感謝した。 見つけたシーグラスは思うままに手に取って、そのまま元の位置に戻した。 きっといつかもっといい拾い手が来るだろう。太陽の光を反射して美しく輝くシーグラスを見て、ガルディアはそう思った。 「グレール。あの丘から海が見たい」 あの丘から、広大な海の景色を一望してみたい。そんな気まぐれな我儘。 「そうだな、異論はない。行こうか」 グレールはガルディアの顔を見て、頷いた。 自分の気まぐれに付き合ってくれる親友は、本当に心地良い。 ガルディアは上機嫌で、グレールの前を歩いた。 相棒が自分だけに見せてくれるその仕草、その思考。 グレールは嬉しさともう一つ湧き出てくる感情に蓋をしつつ、グレールはガルディアの後ろを追いかけた。 そして、歩くこと数分。 「おお、これは……」 「なかなかに清々しいな……」 目の前の光景を見てガルディアの口から驚きが零れ、それに続きグレールが呟いた。 それなりに時間が経っていたのか辺りは夕焼けに染まり、そのオレンジが青の海に更なる色を与えている。 その光景はまさに幻想的で、あまりの絶景に二人は並んでじっとその光景を目に焼き付けた。 しばらく眺めていて、ふとグレールがあるものに気付き、その看板を見る。 「幸福の鐘……?」 どうやらここは恋人たちに人気のスポットで、一緒にならすとその二人に幸せが訪れるといわれているらしい。 グレールが看板を見ていると、それに気づいてガルディアが隣に並んだ。 「どうしたんだ、グレール?」 「ここはどうやら恋人同士で来るところらしいぞ」 そういってグレールが看板に指をさす。 ガルディアはその看板を読み終えて、呟いた。 「男二人で鐘を鳴らせ、と?」 「その場合、友情を深めあうことが出来るのだとか」 「なるほどな。確かに鐘を鳴らすことを試されているという意味であれば、この状況で鐘を鳴らせるのならすでに親密以上のものがある、が……」 そう言ってガルディアは小さく笑みを浮かべる。 「まあ、鳴らすだけなら減りはしないな」 「……そうだな」 ガルディアの言葉に、グレールも小さく笑みを浮かべる。 そして二人は鐘の前に立ち、一つの紐を一緒に持って軽やかに鳴らした。 鐘の音がこの丘に響く。とても心地よい音色だった。 グレールは共に鐘を鳴らしている相棒を見る。 ガルディアはくすぐったそうに、少し顔を俯かせていた。 そんな姿も、蓋をしていたこの思いに触れて。 鐘の音に包まれて、ガルディアに隠しているこの心が、少しだけ赦されたような気がした。 ●【分かり合う】 「イダ、あたし水辺を歩きたい」 『アラシャ・スタールード』は目の前に広がる海を見て、そう言った。 海周辺の見回りも大体終えたところだ。『イダ・グッドバー』はそんなアラシャを見て頷いた。 「いいぜ、行こうか」 イダの肯定を聞くやいなや、アラシャは履いているブーツを脱いで裸足になった。 そしてそのまま水辺の方へと進んでいく。そんなアラシャについていくイダ。 「イダは水に入らないの?」 「ああ、入らないぞ」 「ん、そっか」 アラシャには悪いが、イダには海に入る気なんてなかった。 そもそもイダは泳ぐことができない。当然、それを知らないアラシャは気にも留めずに無邪気に遊んでいた。 イダはそんなアラシャをぼーっと眺めている。 「イダは、どうして教団に来たの?」 ふいに、アラシャがイダに問いかけた。 「お、おう、急だな……」 ついさっきまで海で遊んでいたアラシャからの急な問いかけにイダは驚く。 しかしアラシャはすでに動きを止めていて、イダからの言葉を待っていた。 「教団に来た理由か……。きっかけは妹の死だ」 アラシャはじっと耳を傾ける。それを確認してイダは話し始める。 「オレは妹を守れなかった、そばにいてやれなかった……。そんな思いから、教団に逃げてきたんだ」 イダの口から言葉が重たく零れていく。 更にイダが言葉を続ける。 「だからたまに、妹とアラシャを重ねる時はある。年も近いしな」 年の離れた妹だった。別に誰かに殺されたというわけではない。 死因は病死。しかし、もっと構うことができたはずだと。 後悔の念がイダの中を駆け巡る。 「それじゃあ、あたしは妹さんの代わり……?」 アラシャの口から疑問が小さく零れた。 「だいぶ湿っぽくなったな、こういうのは性に合わないぞ! んで、なんか言ったか?」 「……ううん、なんでもない」 聞き返すイダにアラシャは何事もなかったかのように首を振った。 「それで、アラシャは?」 「あたし?」 「おう、アラシャのことだよ。なんでアラシャは教団に来たんだ?」 イダからの質問にアラシャは少し思案顔を浮かべる。そして、アラシャは話し始めた。 「あたしは、安定した給料と情報が得られるから」 「それは、まあ何とも現実的だな」 「あとは、にーちゃんを探したいのもあったし、孤児院に仕送りもしたかったから、かな」 小さいころから苦労してきたのだろう。イダは少し複雑な表情を浮かべる。 「それで、そのにーちゃんを探してアラシャはどうするつもりなんだ? 孤児院に帰ってもらうのか?」 「む、どうなんだろう。あたしがただ会いたいだけなのかも……」 アラシャはそこまでは考えていなかったのか、曖昧な言葉を述べた。 そして、アラシャが呟く。 「ここにきて、イダに会って、別にいいかなって思うようになってきた」 イダは少し悩みつつ、聞いた。 「あー、まぁその……好きなのか? 好きだったのか?」 「にーちゃんは今でも好きだけど、でもそれはにーちゃんとして。ひとりの男の人とは見てない」 この内容には今までとは違い、はっきりとした口調で答えた。 「そうか……なんか俺ばかり質問しちまったな……」 イダが少し申し訳なさそうに顔を掻いた。 「けど、アラシャのことがよくわかった気がする」 教団に入った理由。孤児院のことや行方不明の兄のこと。 今まで苦労してきたこと。そして、今は前へと進んでいるということ。 「ん、あたしもイダのこと、わかった気がする」 そしてそれはアラシャもだった。 イダの過去。妹のこと。 案外二人とも、似ているのかもしれない。 お互いに今はいない存在と自分のパートナーを重ねていて、しかし二人は前を向いていた。 「ありがとな」 「ん、こちらこそ」 これからも二人はどんな困難があろうと、協力しながら進んでいくだろう。 だから、ありがとう。二人はまた、前へと進んでいく。 ●【温かな二人】 「後はゆっくりと言われましてもね……」 そう言って『シンティラ・ウェルシコロル』が思案顔を浮かべた。 指令も終わり何をしようか悩んでいるシンティラに、隣から『ロス・レッグ』が大きな口でにぃ、と笑いながら言った。 「まあいいんじゃねぇの? 恋人がいれば二人きりでいてぇと思うのも常套」 「確かにそうですね。私は主にロスさんが狼姿なら和みます」 ロスはシンリンオオカミのライカンスロープである。 昔はずっと狼の姿だったのもあり、そっちの方が落ち着くのだ。 「そりゃまあ俺もトランスした方が楽だけどなぁ~」 そう言ってロスが大きく口を開けてあくびをした。 「せっかくの海だし入んねぇっつー手もねぇから入るか」 「ですね、浮き輪借りましょうか」 「おー」 二人は見回りをしていた時に見つけていた無人販売機に向かう。 「あ、花火もありますね。買っていきましょう」 シンティラはそう言って花火と、二人分の飲み物と浮き輪を揃えた。 それらを持って二人は海に戻る。浮き輪を膨らませて、早速シンティラは海に入っていった。 それを見てロスも狼の姿にトランスした後、海の中に入る。 「これは……気持ちいいですね……」 シンティラは浮き輪の上に寝転がり、満足げに呟いた。 海は少し冷たいが気持ちよく、潮風も心地よい。 「そうだなぁ~」 そう言うロスも、浮き輪に手を乗せながらまったりと海を楽しんでいた。 真上には太陽が出ていて、そんな絶好のお昼寝日和。 眠くなるのは、もはや当然のことだろう。 海の上でゆらゆらと揺れながら、うとうとしているシンティラ。 指令もしがらみも何もない、平和な時間。 それがとにかく幸せで。 少し大きな波が来て、それがシンティラの乗っている浮き輪を襲う。 「わわっ!」 気づいた時にはもう遅い。 浮き輪から落とされるシンティラと、それでも傍観を続けるロス。 「ぷはっ! はぁ……吃驚しました……」 「わんわんっ!」 「ライカンスロープと知った今では少し違和感がありますね……」 「ははは! いやー、大丈夫そうで何より!」 なんとか体勢を整えるシンティラ。そんな姿を見ても、ロスは相変わらず楽しそうに笑った。 こんなことも、二人にとって幸せなことだった。 それからも二人は海をたっぷりと満喫し、空はやがて夕焼けに染まった。 「お腹も空いてきましたし、バーベキューを始めましょうか」 そう言ってシンティラは持参していた調理道具やテント、食材を取り出した。 オオカミの姿のロスもそんなシンティラに協力する。 「……待て、ですよ?」 「いや、勝手に食べねぇからな!?」 「ふふっ、冗談です」 そんな軽口を挟みつつ、バーベキューの準備を進めていく。 食べ始めるころには夕日が海に沈み始めていた。 「凄い美しい景色ですね……」 「そうだな……」 燃えるようなオレンジ色が、澄んだ青色の海に姿を映している。一つの宝石のような美しい光景が、目前に広がっていた。 そんな光景を眺めながらの食事は、いつもよりも美味しく感じた。 「たまにはこういうのもいいですね」 「わんっ!」 「……やっぱり違和感ありますよ、それ」 シンティラの辛辣なセリフに、ロスは豪快に笑う。 「へくしっ」 海の夜は、まだ夏になりきっていないということも相まって結構寒い。 なのでシンティラは傍で伏せているロスを抱き上げた。 「ロスさんの毛皮、温かいですが少し寒いです」 「まーテントの中ならまだマシだから!」 「それもそうですね。でも……」 シンティラはそう言って先ほど立てたテントに置いていた花火を手に取る。 「花火しませんか?」 「辺りもかなり暗くなってきたしな、やるかー」 夜も更けていく中、二人は最後まで先取りの夏を楽しんだ。 線香花火を持って、火をつける。 それはバチバチと音を立てながら、鮮やかな火花を散らしている。 次第に花火はその輝きを失い、儚げに砂浜へと落ちていった。 しかし二人の心はいつまでも、いつまでも温かいままだった。 ●【海での戦闘は】 今回の指令は、普段はあまりやる気のない『クロエ・ガッドフェレス』の意向によるものだった。 指令を終えて、今は『ロゼッタ・ラクローン』の提案で海の近くの丘へと向かっていた。 二人は観光がてら海付近を歩いていく。 例え海に入らなくても、この辺りは景色がいい。絶好の観光スポットだった。 「そういえば、海のベリアルって凶悪凶暴だそうだね」 途中でクロエがそう呟いた。 この海はほぼ安全といっていいが他の海はそうではない。 クロエの言う通り、凶悪凶暴。それでいてあまり詳しい実態は知られておらず、見たことのないような未知の存在である。 「水気には木気だけど、海戦だったらどうだろう。現状の武器だと不利な場合もあるのかな」 水の中で武器を振るうのと陸の上で武器を振るうのとは訳が違う。 陸の上よりも抵抗があるだろうし、魔法も何かしらの影響を受けるかもしれない。 「海の武器といえば……トライデントとか?」 「でも、その槍を扱うのが得意なアライブはないね」 クロエの発言に、ロゼッタが苦笑いを浮かべる。 槍を使うアライブがいないことに何か理由があるのか、ないのか。 真相は謎である。 それからも二人は海での戦闘のことを思案していく。 しばらくして、考えていたクロエがうなり声をあげた。 「うーん……」 「どうしたの、クロエ?」 「そもそも海での戦闘って、海の中でやってたのかなって思って」 「どういうこと?」 「考えても見てよ。長い期間を海の中で生きてきて、当然海が主戦場のベリアルを相手に、真っ向から立ち向かっていって勝てるのかな」 確かに、とロゼッタは思った。 海の中で生きてきたベリアルは当然すいすいと泳ぎ回るわけで。 そんな相手に海の中で勝負を挑むのは自殺行為である、明らかに分が悪いだろう。 「現状だと情報が足りないしあくまで推測にはなってしまうけど、何かしらの方法でベリアルを陸に引き上げる、それか蒸気船の上から攻撃するとかして戦ったんじゃないかなって」 「なるほどね」 何分情報が少ないのだ。断言することはできない。 そもそも戦闘回数こそ公開されてはいないが教団自体、海での戦闘回数は多いとは言えない。その少ない戦闘事例も、開示されているものはほとんどなかった。 意図的に隠しているのか、単純に試行回数が少なく公開するまでに至ってないのか。 そこまでは一介の教団員ではわからない。 でもこれは、必ず向き合わなければならない問題だった。 いつかはこの凶悪な海のベリアルにも立ち向かうことになる。 そしてその時は、少しずつ迫ってきていた。 「まあいろいろと気になるけど、わからないものは仕方ないよね」 「そうね。試しに海に魔術を打ち込んでみれば、どうなるかはわかるんだけど……」 「それをやると教団に怒られちゃうからね……」 二人はそのことを考えて苦笑いを浮かべた。 この海は教団が管理しているので、ここで何かしでかせば当然怒られる。 もしその魔術で海のベリアルを怒らせてしまい、襲い掛かってこられてもこちらには対抗する手段がないから。 そうなってしまえばもう終わりである。 二人は大人しく、ベンチに座りながらいつか起こるであろう海での戦闘のことを話し合った。 後日。彼女らから提出された指令のレポートにはびっちりと文字が敷き詰められていて。 海周辺の安全確認の報告書はもちろん、観光スポットについての提案や海での戦闘を想定した装備の要望についてなど、教団側にとっても目から鱗な内容が綴られていた。 二人のレポートはこれからも大切に保管され、利用されていくことだろう。 ●【少しずつ前へ】 海とその周辺の安全確認では、幸いにもベリアルと遭遇することはなかった。 ここ最近は指令続きで気の休まる時間もなかった。『ティーノ・ジラルディ』は何事もなく指令を終えることができたことに、少しだけ安堵の表情を浮かべる。 しかし、今回はそれだけが目的ではない。 ティーノはすぐ近くにいるパートナー、『レミネ・ビアズリー』を見た。 レミネはじっと海を見ていた。その腕にはしっかりと自身が操る人形『マリネッタ』が抱かれている。 薄茶色の髪を風になびかせるその姿はとても綺麗だった。 そんなレミネに、ティーノが言う。 「レミネ、足付けてみないか?」 「え……あ、足……?」 少しぼーっとしていたレミネはティーノの唐突な発言に驚きながら答える。 「少し近づいてみよう。まだ冷たいかもしれないが、気持ちがいいと思うぞ?」 「う、うん……」 レミネが海の方へとゆっくり歩いていく。それを見守るように、ティーノは数歩後ろからついていく。 だんだんと海の音が近づいていく。そしてあと数メートルというところで―― 「わっ!」 大きな音と共に、波がレミネの足を飲み込むように流れてきた。 急なことにレミネは驚きの声を上げる。 「大丈夫か、レミネ?」 「平気、これくらい……」 ティーノの問いかけにレミネは振り向かず答えた。その目線は水に浸された足元に注がれていた。 押し寄せてきた波は音と共に元の位置に帰っていく。触れた水はひんやりと冷たい。 更に少し奥に進む。足元がしっかりと浸かるほどのところまで行くと、顔を上げたレミネが呟いた。 「気持ちいいね、ほんとに……」 「……ようやく笑ってくれたな」 「え……?」 なにが、とレミネはティーノの方を見た。 こちらを見るティーノは微笑んでいて、その表情には安堵が伺えた。 「最近は指令続きで、顔が強張ることが多かったからな」 「顔、強張ってた……?」 「まあ緊張に弱いからな、レミネは」 全部知られていたことに驚き半分、恥ずかしさ半分と言ったところだろうか。 レミネは顔を俯かせて、小さく呟いた。 「あの、よく見てるんだ、私のこと……」 「パートナーだからな、当然だ」 それに、思い人だから。その言葉をティーノは飲み込んだ。 言うつもりは、今はない。 片割れとのお揃いにこだわるレミネに、今この気持ちを伝えるべきではないから。 だからティーノはパートナーとしてレミネを守り続ける。 そのために入団し、喰人となったのだから。 「そう、なんだ……」 やっぱり不思議な人だと、レミネは思った。 とても優しいということは昔から知っている。でも、どうしてこの人は自分に構うのか。 それがレミネにはわからなかった。 ――いつもは素直に言えないけれど……。 でも、今日こそは素直に言葉を返したい。 「あ、あの……」 「どうしたんだ、レミネ?」 意を決して、レミネが口を開いた。 首を傾げるティーノに、レミネは人形をぎゅっと抱く。その表情はティーノからは伺えない。 波の音が辺りを包む。 一呼吸置いて、レミネが小さく呟いた。 「あり、がとう……」 その言葉は風をつたって、ティーノに届く。 ティーノは少し驚いた表情を浮かべたあと、優しく微笑み、言った。 「どういたしまして」 教団に戻るまで、二人の間に会話はなかった。 レミネがティーノに心を開くのはいつになるのだろうか。 でも今はこれくらいでいいだろう。 ほんの少しだけ、前進することができた。 もしかしたらいつかは――そんな未来を想像しながら、二人はのんびりと海を満喫した。 ●【新たな体験と決意】 「へぇ~これが海かぁ~!」 目の前に広がる一面の海に『モニカ・モニモニカ』は感動した様子で呟いた。 「すごく綺麗だね、ナギサ! ……ナギサ?」 モニカはすぐ隣にいる、無反応のパートナー『薙鎖・ラスカリス』を見る。 「こんな感じなんですね……すごいです……」 薙鎖も同じように海を見て感動していた。その瞳は少しだけ見開かれている。 少しの違いだが、それを見逃すモニカではない。 ニコニコしながら、モニカは薙鎖に近づいた。 「じゃあ早速、水着に着替えるよ!」 モニカの発言に薙鎖は頷き、少し離れたところに移動し始める。 「……大丈夫? 一人で着替えれる?」 「着替えれますからね」 今回、モニカは薙鎖を全力で甘やかせる気満々だった。 その内容は置いといて、モニカはいつもの指令と同じくらい意気込んでいた。 着替えを終えて、モニカが薙鎖の手を握る。 「準備運動は大事だよ、ナギサ。指令の準備運動と一緒」 最初に言っておくが、モニカも水場で遊んだことがある程度で、海で遊ぶのは初めてである。 ナギサを甘やかせるための事前予習は完ぺきだった。 「それは理解してますけどね」 薙鎖の準備運動を、それはもう念入りに行うモニカ。 その行動はまさに手取り足取りである。 理解しているとはいえ、とにかく近いのだ。五感に毒である。 「よし、終わりね」 その言葉が聞こえるまで、薙鎖はひたすらに己の五感と戦い続けた。 「そろそろ海に入ろっか」 「ですね、行きましょう」 モニカに手を繋がれたまま、二人は海へと入っていく。 薙鎖は浮き輪を使って、海でまったりとしている。 その様子を見て、モニカは満足そうに笑顔を浮かべた。 薙鎖が楽しんでくれている。 それがモニカにとって一番大切で、幸せなことだから。 「せっかくゴーグルも持ってきたし、潜ろうよ」 「い、いいですけど危ないですって!」 ぐらぐら揺れる浮き輪と薙鎖。それを支えるように、モニカが薙鎖に抱き着いた。 水着姿で抱き着くということはもちろん肌と肌が直接触れるというわけで。 薙鎖はただ真言を唱えて心頭滅却することしかできなかった。 しばらく海で遊んだ後、薙鎖はモニカに体を拭かれていた。 「ほら、風邪を引いたら大変だからね」 モニカはそう言いながら、丁寧に薙鎖の体を拭いていく。 海でいっぱい遊んだからか、薙鎖に抵抗する気力はなかった。 だからだろう。 気づいたときには、薙鎖の目の前には上から覗き込むモニカの顔があった。 「いつの間に!?」 「疲れたでしょ? しばらく横になったほうがいいよ」 モニカはそう言って、優しく薙鎖の頭を撫でた。 抵抗しなければ。しかし眠気と疲労と、モニカの温かさに抗えるはずがなかった。 海でたくさん遊んで身体を疲れさせ、その後ゆっくりと休ませる。 完全にモニカの作戦通りだった。 薙鎖が起きた時には、もうすでに辺りは暗くなっていた。 最後はモニカの提案で、二人並んで花火をした。 バチバチと音を鳴らしながら火花が散る。 「綺麗だね……」 「ですね……」 薙鎖にとって今日の出来事は何もかもが新鮮で、それはモニカがいなければ体験できなかったものだろう。 海はとても気持ちよくて。 その底にはたくさんの魚が泳いでいて。 花火はとても光り輝いていて。 でも、そんな海は今、この海以外には存在しない。 どの海も危険で、海の景色を見ることも、魚と一緒に泳ぐことも、またモニカと一緒に花火をすることもできない。 海をまた人の手に、取り戻したい。 そんな考えが、薙鎖の頭の中に残った。 でも今は―― 「あ、落ちちゃったね……」 線香花火の先がぽとりと落ちる。 それを見て薙鎖が呟いた。 「もう一回、やりましょうか」 今はこの時間を楽しんでいたい。 二人は最後まで寄り添いながら、花火を楽しんだ。
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*** 活躍者 *** |
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該当者なし |
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[7] モニカ・モニモニカ 2018/06/03-22:53
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[6] ロス・レッグ 2018/06/03-07:03
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[5] ロゼッタ・ラクローン 2018/06/02-22:52
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[4] レミネ・ビアズリー 2018/06/02-21:57
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[3] ガルディア・アシュリー 2018/06/01-00:24
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[2] アラシャ・スタールード 2018/06/01-00:13
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