~ プロローグ ~ |
●ジョンソン家の令嬢 |
~ 解説 ~ |
アークソサエティのブリテン地区で事件発生です。 |
~ ゲームマスターより ~ |
指令に興味を持っていただき、ありがとうございます。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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■推理 十年前はサクリファイスの破壊予告をジョンソン家の者が利用し死体遺棄。 今回も同家の者の犯行。 ライリーを外出させ後で犯人も外出、拉致し身柄を隠したか。 ■捜査 教団からメラニー事件の調書拝借。 捜査は10年前の事件現場担当。 メラニーの霊が視えたらライリー拉致の件を伝え反応確認。 施設廃墟等人を隠せる場所を、爆薬・揮発物等による捕縛者毎捜索者を殺す罠を警戒・回避し、犯人痕跡確認し慎重に捜索。 揮発物臭確認時ランタン遠ざける。 発見時及び非常事態時信号拳銃使用。 事後ライリーに事情確認、残留証拠可能な限り集め調査し犯人特定。 交戦時人間は捕縛。 薙鎖は一般人庇護。不要時攻撃。負傷者いればSH4。 モニカは前衛格闘。 |
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■行動 初めに皆で打合せ ティ地図を手に マウロの意見に同意 現場行く時 「戦闘あったら浄化師に任してくれっと嬉しっな CD同行時 居場所を気にし戦闘時には護衛対象 ∇ティ→C 人気の少ない所等行く時は声をかけ 魔知検知で変な魔力の動きをしていれば探る ∇ロス→D 到着したら狼になり嗅覚で確認 ∇探索共通 一緒にいる仲間となるべく一緒に行動 爆弾、揮発性薬品には注意 匂いに敏感に 従業員に聞取 今日ラウリー見てないか? 半年前から屋敷の人の出入りが頻繁になってないか→場所どこ 出入り禁止の場所は? ∇合図 たまに空を見て信号拳銃煙に注意 合図すれば向かう 火薬臭・仲間の声、騒動に注意 犯人発見時、信号拳銃使用 ロスは隙あれば狼姿で聴覚嗅覚敏感に |
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●目的 救助と捜索 ●行動 希望者とライリー家を訪問 情報収集と聞き込み後、合流可能な仲間と情報交換して Bの調査へ向かいます ●聞込 「探偵の助手、リトルです。よろしく」 周囲の話を聞きながら心理学。嘘や不審がないか調査します 「最近ライリーさんとは、何か事件のお話を?」 また、僕ならどこに隠すだろうか、と偽装を応用して部屋の不審点を調査 おかしなところを手短に調べます パンプティさんは外で通行人相手に聞き込み 「相棒、そっちの調査はどうだった?」 ●B 廃墟探索のノリで捜査 どうして使われなくなったのでしょう? 罠に気をつけますね 何か情報だけでもないかなぁ… ライリー発見→信号銃 他の場所から合図→そちらへ向かいます |
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◆共通 マウロの助手という体で調査 彼に各候補地の場所とライリーの特徴を尋ね可能な範囲で把握、その後調査場所へ 暗い所はランタン使用 ライリー発見時は保護、ジョンソン家へ連れ帰る 犯人・エクソシストは捕縛 援軍必要時は屋外で信号拳銃 仲間の信号を見たらライリー保護中でない限り救援 ◆シュリ 出発前にマウロに、ジョンソン家の人物の筆跡と便箋の筆跡の照合・結果の仲間への周知を頼む 候補Cへ 爆発物や罠に注意、その類を発見次第無力化 人がいたら10年前の事件について尋ね、その後避難を促す 情報を得たら魔術通信可能な範囲で仲間に伝える ◆ロウハ 候補Bへ 別荘地をくまなく捜索 隠し部屋も疑う リトル達と合流したら捜索済みの場所を伝える |
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推理小説みたいな事件に巻き込まれたわね ふふふ・・・面白いじゃない ねぇ、バルト。貴方もそう思わない? あら・・・それは残念・・・ね?(くすくす 目的は誘拐されたお嬢様の救出よ おおよそ推理は、探偵君と同じかしら 彼女の家へと皆が聞き込みに行くのに同乗させて貰いましょう 「俺は外で待ってる。外に怪しい人の出入りがないか見ていよう」 会話術が役に立つかしら? 「お嬢様ってどんな方か具体的に教えていただいても?」 「工場の見取り図とかもいただけないかしら」 ジョンソン家が持つ稼働中の工場へ向かうわ 私がサクリフェイスの残党だったら・・・ほら、劇の続きを演じたいじゃない お嬢様を見つけ次第、私は救助に回るわね 無事解決したいわ |
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~ リザルトノベル ~ |
●ジョンソン家食品貯蔵庫 「以上がこれまでに分かっている事件の内容だ」 何故かめかし込んだテオが声を張り上げた。 「うるさいよ、テオ」 教団指令部から集まった10人のエクソシストを前に、テオがやたらと張り切っている。 ここはジョンソン家の食品貯蔵庫。 既に陽が落ち、小さすぎる貯蔵庫の唯一の窓は星明りすら見えない。 ささやかな照明の光で、オレンジ色の髪を輝かせているパンプティ・ブラッディの声が響いた。 「わかった! 犯人は譲ちゃんで事件は自作自演! 父の気を引きたかったに違いない! さて、解決したし晩飯食いに行こうぜ、フェイカー」 ――んなアホな。 そこにいた誰もがそう思った。 いや、約一名を除いてそう思った。 「いいですよ」 何の疑いもない様子でリトル・フェイカーが後に続く。漆黒の髪と眼が、その肌の白さを際立たせている。 ――いいわけあるか。 その場が一つになった瞬間だった。 全員の視線が、シンティラ・ウェルシコロルが作業台に広げた地図に集中していた。 「マウロの言うライリーが居そうな候補地はどこだろ」 細身でありながら鍛え上げられた肉体の美しいロウハ・カデッサの視点が、地図上を徘徊する。 「ここが、現在地」 テオの大きな指が地図上を滑り始めた。 「別荘が、ここ。10年前の事件現場がここ。新しい工場がここ。古い稼働中の工場がここだ」 「どこも、同じような距離感ですね」 そう言って真剣なまなざしを地図に向ける薙鎖・ラスカリスを、甘い視線で見つめるモニカ・モニモニカ。 「それで真相は? 名探偵さんの推理を聞こうかしら」 エリザベート・ニュームーンが紫色の目を、マウロに向けた。 「私は、この家の誰かがサクリファイスと繋がっており、その者が10年前の事件にも関与していると思っている。ただ、それが誰なのかはまだ……」 ロス・レッグ、エリザベートとバルト・クロイツがマウロに同意だと視線を送るが、マウロは見えない敵を見るように空をにらみつける。 「だとすれば、犯人が今そこにいるかもしれない場所で、こんな事していて良いのか?」 テオが不安げに貯蔵庫の唯一の扉を見た。 「逆だ。ここでこうしている事が、内通者の動きを止める事が出来る」 「なるほど」 テオも納得したところで、善は急げとマウロが声を張った。 「薙鎖さんとモニカさんが教団から10年前のメラニー事件の調書を借りてきてくれています。参考にしてライリー捜索にかかっていただきたい。この屋敷内は私とテオで捜査します」 マウロの言葉に、エクソシスト達がこれより捜査へ出向く目的地を決め始めた。 「戦闘あったら浄化師に任してくれっと嬉しっな」 ロスがそう言うと、マウロは勿論だと大きく頷く。 「ジョンソン家全員の筆跡と便箋の筆跡を調べて、結果は他の仲間にもよろしくね」 マウロに筆跡鑑定を思い出させたのは、シュリ・スチュアートだ。 「確かに、殴り書きとは言え文字の癖を易々と隠せはしない。分かりました」 「そうだ、ライリーの特徴を教えてください」 ロウハが申出ると、マウロはぽんと手を叩いた。 「そうでした! 屋敷のエントランスホールにジョンソン家家族の肖像画あります。みなさん、確認をしておいてください。では、行きましょう」 ●新工場 シンティラとシュリは、10年前メラニー事件で破壊された工場の代わりに、場所を変え建てられた新工場へとやって来た。 流石にこの時間に工場で労働をする者はいないかと思われたが、警備と工場責任者はまだいた。 「教団? なんかあったんすか。10年前の事件、いやぁ、知らないっすね」 10年前の事件を機に、工場を守るために雇われたと言う男は、雇い主一家に大事件が起きている事すら伝えられていなかった。 「戦闘がおこるかもしれないので、ここから避難してね」 シュリが微笑みかけると、男は 「じゃぁ、帰るっす。責任者がまだ中にいるんで、そう言っといてください」 と、シュリに鍵の束を渡すとあっさり帰ってしまった。 人の気配を最初に察知したのはシンティラだった。 「あの、すみません」 シンティラの声に振り返ったのは、長身細身で神経質そうな男だ。 「責任者さんですか?」 「なぜ教団の者がここにいるんだ」 男はシンティラの質問に答えず、シンティラとシュリに詰め寄った。 が、そんな事でひるむような二人ではない。 「ジョンソン家から依頼を受けた探偵さんの助手です」 ぐいっとシュリが男との距離を詰め返す。 いつも一緒のロウハとは別行動だったが、シンティラの存在がシュリの気持ちを強くしていた。 「探偵?」 どうやらこの男にもライリーの事は伝わっていないようだ。 「今日ライリーを見てないですか?」 シンティラが更に詰め寄る。 「ら、ライリー様? み、見てません」 もう男はたじたじである。 「ここ半年、屋敷の人間の出入りが激しかったり、出入り禁止の場所があったりしませんか?」 立て続けに質問をぶつけながら、シンティラは魔力検知で魔力の動きを監視している。 「いやぁ、どうだろう。出入り禁止の場所なら、何か所か。でも、灯りの無い場所で……」 シュリがランタンを男の目の前に取り出し 「さぁ、行きましょう」 と微笑んだ。 何かあると危ない。 三人は、と言っても連れてこられた男は不本意そうであるが、固まって歩き始めた。 「この工場は何を作ってるの? 前の事件の時の狙われた理由になりそうな物?」 「さぁ、ここは部品の一部だけだし、詳しい事は」 シュリの質問に、男は首をかしげるばかりだ。 サクリファイスが、爆発物や罠を仕掛けている可能性も否定できず、三人は警戒をしながらゆっくりと歩みを進めた。 ●別荘 もう何年も人がきた形跡の無い別荘。 1階に正面玄関と、裏のキッチンから続く勝手口。 2階には大きなバルコニー。 この別荘に出入りできる場所は、この3箇所。 別荘までライリー捜索に来たのはロウハそしてリトルとパンプティのコンビである。 飛行で一足早く別荘に着いたロウハは一人別荘地をランタン片手にくまなく捜索にあたる。 ライリーの捜索をしながらも、気にかかるのは別行動になったシュリの事である。 ――お嬢は……、シンティラがいるから大丈夫か。なんか懐いてるしな。 気持ちをライリー捜索に集中する。 大きな庭や小さな森、そして無人の別荘。 ――ライリーが誘拐されたのなら、ここは絶好の隠し場所だ。 ジョンソン家の屋敷で、何人かの使用人と話をしたがロウハは全員が怪しいと思った。 ――誰に会っても犯人の可能性アリと思って臨むぜ。 ランタンを握る手に力が入った。 ジョンソン家の別荘前で道行く人への聞き込みをしているのはパンプティだ。 ただ、あまり交流がないのか、ここがジョンソン家の別荘だと言うことすら知らぬ者ばかりで、大した情報は手に入らない。 「あぁ、そうね、ここジョンソンさんの別荘でしたわね。さぁ、長く来られてないんじゃないの?」 知っていてもこの程度である。 一人別荘の中へ正面玄関から入ったのはリトルである。 薄暗い中、人の姿を確認し駆け寄った。 「探偵の助手リトルです。よろしく」 しかし相手は言葉を発するどころか、身動き一つしない。 残念ながらそれは人ではなく、等身大に描かれた美しい女性の絵だった。 「にゃぁん」 声の方を見ると、そこには白い猫が。 「探偵の助手リトルです。よろしく」 猫はリトルを横目で見て、そのまま歩き出したため、何か情報だけでもと慌てて後を追い、気付くと2階まで来ていた。 「相棒、そっちの調査はどうだった?」 パンプティの声が後ろからした。 リトル振り返り、首を横に振る。 「どうして使われなくなったのでしょう?」 リトルが小首をかしげる。 「おい! こっちも調べようぜ」 パンプティが何かを見つけた。先程の猫でも通ったのだろうか、ほんの少し開いた扉から月明りが漏れている。 二人がバタバタと中に駆け込むと、そこはバルコニーへ続く応接間で、家具には埃除けの白い布がかけられているが、テーブルにかけられた布が床にずり落ち、本が一冊置かれたままになっていた。 「この本怪しくないですか?」 リトルが駆け寄り本を手に取ると、バルコニーへ続くガラス戸に人影ある事に気付いた。 「!!!!!!!!!」 二人が声にならない恐怖に陥った瞬間、影が動いた。 影はガラス戸の鍵を指さしている。 ロウハだ。 恐怖と、はしゃいで駆け込んだ姿を見られた羞恥心で、パンプティの目は完全に死んでいた。 ロウハが捜索した別荘地周辺には、ライリーの痕跡はなかった。 「こちらも……」 リトルが報告をしようとして、猫を追って一気に2階まで来たため、1階の捜索が何も出来ていない事に気付いた。 三人は一緒に1階の捜索へと足を向けた。 「罠に気を付けて、手短に調べますね……」 先ほどのはしゃっぎっぷりは消え失せ、リトルとパンプティも本腰を入れて捜索を開始した。 ●稼働中の工場 メラニー事件の際も稼働していた、ジョンソン家の古い方の工場。 長い期間稼働しているのが分かる外観で、歴史と言う重圧を感じさせる。 事件の捜査に来た筈なのに、なにやら楽しそうな二人がエリザベートとバルトである。 「推理小説みたいな事件に巻き込まれたわね」 ふふふ、と笑っているのはエリザベートだ。 「ねぇ、バルト。貴方もそう思わない?」 どうやら豹の姿の相棒バルトの同意は得られなかったようだ。 「あら……、それは残念……ね?」 エリザベートは完全に、この状況を楽しんでいる。 一つしかない工場の出入り口には、警備が二人。 この工場の稼働時間は長いのか、まだ多くの従業員が残って仕事をしているようだ。 ロスが匂いを確認しながら警備に近寄る。 「今日ライリー見てないか?」 「ん?」 突然声をかけられた警備が一瞬警戒をしたが、2人のいでたちで教団の者と分かると態度を軟化させた。ただ豹には腰が引けている様だ。 「ライリーって、お嬢さんの事か。お嬢さんが、ここに来るような事はないぜ。他の奴らにも聞いて見なよ」 そう言って警備は三人を工場の中へと招き入れた。 丁度作業が終わったところなのか、作業員達は片づけを行っている最中だった。 鉄と油のまざった匂いがする割に、小ぎれいな工場である。 精力的に聞き込みをしているのはロスだ。 「今日、ライリー見てないか?」 「ここ半年ほどで、ジャクソン家屋敷の人の出入りが頻繁になってないか?」 「この工場に出入り禁止の場所は?」 誰もが首をひねり、まともな情報を得ることができないと悟ると、狼姿に代わり聴覚嗅覚を敏感にして、辺りを確認している。 一方エリザベートは柔らかい物腰で聞き込みをしている。 「お嬢様ってどんな方か具体的に教えていただいても?」 どうやらライリーが作業員に姿を見せる事はないらしく、こちらも首をかしげるばかりだ。 「工場の見取り図とかもいただけないかしら」 そう声を掛けられた作業員は、ふんふんと大きく首を縦に振り見取図を取りに走った。 「ねぇ、お嬢様の匂いで追跡できないかしら」 「俺は犬じゃねぇよ!!」 エリザベートの横にぴったりと付いていたバルトがつい大きな声をだす。 が、 「また厄介なのに巻き込まれたなー」 とぼそっと呟き 「俺は外で待ってる。外に怪しい人の出入りがないか見ていよう」 そう言って工場の外へと向かった。 ●隠し部屋 マウロはこの屋敷に隠し部屋などない事は最初から分かっていた。 いや、知っていた。 しかし、ジョンソン家の使用人達一人一人をゆっくりと尋問していった。 全員に、尋問調書にサインを書かせ、マウロは自らの手元にさりげなくあの便箋を置いた。 執事フランツは完全に取り乱しており、屋敷で尋問をしているマウロとテオに、さっさと探しに行け、と大騒ぎだ。 料理長のグレンはライリーを心から心配し涙を流す始末だし、妻でキッチンメイドのサラも落ち着かないのか、ジャガイモばかり剥いている。 メイドのアンは無関係を声高に主張し、メグはライリーの身を案じる思いと保身とで揺れ動いていた。 そして、メイド長のジュリア。 頭痛がすると言って、自室のベッドに寝込んでしまっている。 どのくらい時間がたっただろうか。 「行くぞ」 突然マウロが立ち上がった。 「なに、なんだよ!」 慌ててテオも後に続いた。 ●メラニー事件の現場 そこに多くの人が集い労働をしていたのは10年前。 今は立入禁止とはなっているものの、事件で破壊されたままの姿で10年の時間を過ごした廃墟でしかなかった。 ここ数年は、好奇心旺盛な者達によって肝試しのような事も行われていたが、それを咎める者すらいなかった。 薙鎖とモニカが、捜索先をここに選んだのは10年前メラニーが命を落とした場所だからだ。 もし、メラニーの霊がいれば、何かわかるかもしれない。 10年前のメラニー救出失敗の責任も感じていた。 建物は、入口付近に爆破物を置かれたのだろう、原型をとどめては居なかったが、奥へ行けば行くほど当時のままで、中には当時の作業着が椅子に掛けられたまま、すっかり埃にまみれていたりしている。 モニカはランタンの光を出来るだけ小さくし薙鎖の足元を照らし、薙鎖は罠に警戒しつつゆっくりと辺りを捜索し始める。 薙鎖は、今回の事件とメラニー事件に思いを馳せていた。 10年前の犯人である内部の者がライリーを誘い出した、と言うマウロの推理と同じ考えだ。恐らく、ライリーを外出させ、後に犯人も外出、拉致したのではないか。 便箋も、時間的状況的に内部の者が置いたのだろう。 ではなぜライリーを? 母の死因に興味を持つライリーが真相に近付く事をおそれたか。 「ナギサ!」 無言でじわりじわりと歩みを進める薙鎖が突然足を止めたため、後に続いていたモニカがぶつかってしまった。 「しっ……」 薙鎖が、じっと奥を見つめる。 「まさか……」 青ざめるモニカとは対照的に、会いたい人に会えた、そんな雰囲気で頷く薙鎖。 モニカには見えないが、薙鎖には見える……。 「あの人知っています。さっき屋敷で肖像画を見ました」 「凄いナギサ! よく覚えてたわね、偉い偉い」 小さな子供の頭を撫でるように、モニカが薙鎖の頭をなでた。 「ちょっと、あの、いまは……」 と言いつつ、薙鎖もまんざらではない様子。 「で、あの肖像画のどの人?」 確かに屋敷には、メラニー、ライリー、そしてジョンソン氏とその先祖の肖像画があった。 「あの人は……メラニーさんです」 「そ、そう! 凄いよくわかったね!」 モニカはつい本能で薙鎖を褒めたが、その声は若干震えていた。 これに気付いた薙鎖がモニカをつい見る。 「だ、大丈夫……」 「では、メラニーさんからお話を聞きましょう」 「ひぃぃぃぃぃ! ゆ・う・れ・いぃぃ……」 ●発見 静かな夜空に、信号拳銃が打ちあがった。 捜索にあたっていた、エクソシスト達が一斉に空を見上げた。 皆が一斉に信号拳銃の上がった場所を目指す。 シュリが魔力通信で情報交換をしようとするも、仲間にマドールチェがシュリ以外おらず、こちらからの一方的な伝達しか行えない。 もどかしさを振り払うようにシンティラと二人、急ぎ信号の下へと急いだ。 人影を追うマウロとテオも信号弾を見上げた。そして、追っている人影も空を見上げ、信号弾の光にその顔が照らされた。 「え? ジュリアさん?」 思わずテオが声に出してしまう。 テオの声に振り返ったジュリアは、自分が付けられていた事に気付き少し安堵の表情を浮かべると、今度は全力で走り出した。 「信号拳銃、上手に打てたね!」 モニカが薙鎖を抱きしめた。 「あ、ちょっと、本当に今は……」 おかしい、薙鎖は辺りの様子を伺った。メラニーは言葉を発する事は出来ないが、薙鎖の言葉にイエスノーをはっきりと示した。 ライリーはここに居る。 それが分かった瞬間、戦闘覚悟で信号拳銃を空に向けた。それは敵に自分の存在を知らしめることにもなるが、何よりもライリーの保護が先だ。 が、敵は現れない。 メラニーが、嘘をつくわけがない。 どうやらライリーは崩れなかった2階に監禁されているようだ。 このまま2階へと突入するか、仲間の到着を待つか。 信号拳銃の光に導かれ一般人がこの廃墟に近付き始めていた。 ●集合 最初に駆け付けたのは、ジュリアの後を追っていたマウロとテオだった。 ジュリアは迷うことなく廃墟に飛び込み2階へと駆け上がる。その姿を、悲しい目で見つめるメラニーを薙鎖は見た。 「行きましょう」 ジュリアの後を追うマウロとテオに続き、薙鎖とモニカも追った。 2階は幾つもの部屋に分かれており、4人はジュリアの姿を見失った。 息を殺し、気配を探るも聞こえてくるのは廃墟に駆け抜ける風の音だけ。 状況が掴めないまま、じりじりと時間が経つ。 突然1階から戦闘の音と声が響いた。 「バルト、貴方でどうにかできないの?」 到着したエリザベートが突然襲われて応戦しているのだ。 「無茶言うな!!」 バルトの声だ。 どうやら二人は戦いには不慣れなようだ。 その騒ぎに気付いたジュリアが意識の無いライリーを抱きかかえて飛び出してきた。 「ライリー様をお願いします!」 テオにライリーを預けると、ジュリアは再び部屋へと戻り中から鍵を閉めた。 「おい! 姉さん、なにやってんだ!」 部屋の中から声が響く。 同時に1階からは歓喜の声。 リトルとパンプティだ。 敵が現れて喜んでいるのか、声が浮かれている。 「おーい、お嬢さんを頼む!」 テオの声に反応し2階へと駆けあがったのはロスとシンティラの二人だ。 「任せた!」 マウロと、ライリーを抱えたテオの二人を背で挟むようにロスとシンティラが1階へと降りる。 ライリーを奪われたと知った敵が、猛攻撃を仕掛けてくる。 が。 弱い。 魔力を使う必要もない。 「くそぉぉエクソシスト!」 大声で襲い掛かってくるものの、それは全く喧嘩慣れしていない子供のようである。 振り上げた腕を、ロスの大きな手ががっしりと掴む。 「離せ!」 と言われて離すわけにもいかない。 エリザベートとバルトも、なんだか肩透かしのように弱い相手を次々と捕獲している。 おまたせ! とばかりに、シュリとロウハも加勢する。 大方の敵を確保しつつ、じわじわと廃墟の外へと近づいた時、爆発物に警戒をしていたシュリとシンティラの視線が階段へと向いた。 「そこまでだ」 声の方を見ると、じりじりと後退る薙鎖とモニカの後ろ姿。 その向こうに、爆発物を身体に巻かれたジュリアの姿。ジュリアの歩に合わせて、薙鎖とモニカがじりじりと後退っているのだ。 しかし、そのジュリアも自らの意思で歩いている訳ではない。 後ろから一人の男が、ジュリアの背中を押しているのだ。 「もう止めましょう。ジョン」 ジュリアが正面を見たまま、自らの背後に話しかけるが、ジョンと呼ばれた男は表情一つ変えない。 「本当に、役に立たない奴らばかりだなぁ。これだから人間は滅びるべきなのだ」 その声には、笑いさえ含まれている。 「まぁ、良い。ほら人が集まって来た。ここで爆破すれば多くの人間が死ぬ。お前らエクソシストもだ!」 その時、それは全てほんの一瞬で起きた。 ジュリアの身体に巻かれた爆発物に火をつけようとしたジョンの手元に風が吹いた。いや風ではない。シュリを抱えたロウハが、ジュリアとジョンの間に割り込み、二人の起こした風によって点火を免れた爆発物をシュリがジュリアからはぎ取り、ジュリアの身柄は抵抗される事なくロウハが拘束。 廃墟に集まりつつある一般人を薙鎖が庇護し、それを邪魔しようと追ってくるサクリファイスをモニカがいとも容易く確保。 相変わらずリトルとパンプティは、歓喜で応戦し残党を確保。 シンティラが、マウロをテオそしてライリーを薙鎖のいる安全な場所へ誘導、ロスはジョンの目の前に立ちはだかっていた。 「くそ……」 ジョンが膝からがっくりと落ちた。 そして、そんな小説のような体験を楽しむエリザベートの隣には、満足そうなバルトの姿があった。 ●ジョンソン家 サクリファイスに薬で眠らされたライリーは自室へと運ばれた。 穏やかな寝息をたてているが、間もなく目が覚めるだろう。 「ライリー、本当にメラニーによく似ている……」 マウロは、ライリーの頬に触れようとして手を止めた。 「いやぁ、新人メイドが怪しいと思ったんだけどなぁ」 ロスが頭を掻き 「やっぱりナギサは凄いよ!」 とモニカが薙鎖を抱きしめ、応接室は大騒ぎ。 「お疲れ様でございました」 と、使用人達がお茶やお菓子をふるまっている。 ロスに疑われていたと知ったメイドのメグは、少しふくれっつらだが安堵の方が色濃い。 彼ら使用人達が、メイド長ジュリアがここに居ない理由を知るのは、間もなくである。 ●数日後 新聞に10年に渡るジャクソン家の苦悩が掲載された。 主犯であるジョンはジュリアの弟で、もう長くサクリファイスに傾倒していた。ジュリアは弟に騙されメラニー事件に加担。後悔と懺悔の10年を過ごした。そして再びジャクソン家を、更には娘のライリーを標的にする計画を持ち込まれた。弟の計画を止められなかったジュリアは、知り合いのマウロに助けを求めた、と言うのが全貌だ。 「え? マウロ、お前知り合いだったのか?」 テオが新聞から顔を上げた。 「まぁな……」 これ以上聞くな。マウロの顔に、そう書いてある。 「いつからジュリアさんが内通者だって気付いてた?」 「筆跡を見た時」 「お前、筆跡鑑定できるのか?」 「無理だ。ただ他の使用人は迷わず書いたが、あの人は迷いがあった。確信ではなかったけどな」 「お前、本当は何者なんだよ……」 ふー、っとテオが息を吐いた。 「教団の人達が、サクリファイスが弱すぎた事に首を傾げてたけど」 「あぁ、あれはジュリアがあえて弱い奴を集めたんだよ。本当にライリーを助けたかったんだろうな」 二人は、ジュリアが初めてここに来た夕暮れを思い出していた。 「そうだ、マウロ。お前、ジャクソン家が何を作ってるか知ってるか? 「知らずに一緒に動いていたのか?」 マウロが呆れ顔をテオ向けた。 「教えろよ」 「なべ」 「は?」 テオがポカンと間抜けな顔をした。 「まぁ、鍋以外にもその技術で何かの部品を作っているそうだが、元々は鍋だ。お前ん家にもあるだろう。Jマークの鍋」 「あーーっ!」 「うるさい!」 マウロとテオの大声が、裏路地に響き渡った。
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*** 活躍者 *** |
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[39] 薙鎖・ラスカリス 2018/06/11-00:02
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[38] ロス・レッグ 2018/06/10-23:25
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[37] ロウハ・カデッサ 2018/06/10-23:18
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[36] ロス・レッグ 2018/06/10-23:18 | ||
[35] パンプティ・ブラッディ 2018/06/10-22:42 | ||
[34] シンティラ・ウェルシコロル 2018/06/10-22:18
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[33] ロス・レッグ 2018/06/10-22:16 | ||
[32] ロウハ・カデッサ 2018/06/10-22:07 | ||
[31] エリザベート・ニュームーン 2018/06/10-21:53
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[30] パンプティ・ブラッディ 2018/06/10-21:09 | ||
[29] ロウハ・カデッサ 2018/06/10-19:42 | ||
[28] パンプティ・ブラッディ 2018/06/10-17:57
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[27] パンプティ・ブラッディ 2018/06/10-17:44 | ||
[26] ロス・レッグ 2018/06/10-16:52
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[25] ロス・レッグ 2018/06/10-16:49 | ||
[24] 薙鎖・ラスカリス 2018/06/10-15:07 | ||
[23] ロス・レッグ 2018/06/10-09:46
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[22] ロス・レッグ 2018/06/10-08:52 | ||
[21] ロウハ・カデッサ 2018/06/10-06:23 | ||
[20] 薙鎖・ラスカリス 2018/06/10-01:40
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[19] シンティラ・ウェルシコロル 2018/06/09-23:49
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[18] ロス・レッグ 2018/06/09-23:33 | ||
[17] リトル・フェイカー 2018/06/09-22:59 | ||
[16] ロウハ・カデッサ 2018/06/09-21:29 | ||
[15] ロス・レッグ 2018/06/09-19:09 | ||
[14] リトル・フェイカー 2018/06/09-17:55 | ||
[13] ロス・レッグ 2018/06/09-17:01 | ||
[12] ロス・レッグ 2018/06/09-16:59 | ||
[11] モニカ・モニモニカ 2018/06/09-11:17 | ||
[10] 薙鎖・ラスカリス 2018/06/09-11:01 | ||
[9] ロウハ・カデッサ 2018/06/09-07:53 | ||
[8] ロウハ・カデッサ 2018/06/09-07:42 | ||
[7] ロス・レッグ 2018/06/08-21:23 | ||
[6] パンプティ・ブラッディ 2018/06/08-08:47 | ||
[5] 薙鎖・ラスカリス 2018/06/08-07:35 | ||
[4] ロス・レッグ 2018/06/08-07:25
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[3] ロス・レッグ 2018/06/08-01:59 | ||
[2] 薙鎖・ラスカリス 2018/06/07-00:16
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