~ プロローグ ~ |
「アークソサエティの裏路地に、不思議なキャンドル屋があるっていう噂があるから、それを調べに行って欲しいの」 |
~ 解説 ~ |
キャンドルを作り完成させ、火を灯したあと、お互いに聞きたい質問を聞く。 |
~ ゲームマスターより ~ |
ブロローグ閲覧ありがとうございます。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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PC口調です 目的 聞いてみたかったことがある 強引に聞くみたいでいやだけど、はぐらかされてばかりだから あやしい。けど、惹かれる 手段 2人で決めよう…え、あたしが決めていいの? もちろん嫌じゃないけど (付き添い、と言うイダを横目に選んでいく) オレンジに小さい粒の草が入っている感じがいいな キャンドルの色は白 輪っか切りのオレンジをいれて、これはなんていう草なんだろう …?草じゃだめだった? 香りはオレンジ系がいい キャンドル灯火 お互い一つずつ聞こう なんでも聞いて あたしからは…ねぇイダ あたしは、妹さんの代わり?違うなら、なんなの? …(わかってた)ありがと、イダ ん、にーちゃんの探索は順調 教団にいるって聞いてきた |
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「アーロン、早く材料選んで」 「俺は好みの酒がブレンド出来る店を見つけた、と聞いて来たんだが?」 「調合作業としては大して変わらない」 「材料の時点で別物じゃね!?」 ◇作成中 カラク:時折店主へ助言求めたり アーロン:黙々と ◇質問 ア「あー…『好物は?』」 カ「…口の中で弾ける飲み物」 (適当に聞いたら結構たまげた)「そりゃまたなんで」 「あの刺激が気に入っただけ」 カ「『マドールチェとしての僕をどう思ってる?』」 ア「おめー…目的これか…」 「ねぇ、『本当は』どう思ってる?」 「本当も何もねぇよ。前にも言ったろ。『俺にゃ人形に見えねえ、生きてんなら俺と同じだろ』」 「……本気で言ってたんだ」吃驚 「疑ってやがったな」苦笑 |
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キャンドル…紫、ラベンダー ララエルの…ララエルの本当の両親は生きているのか…!? キャンドル「生きている」 良かった…君の両親は必ず捜しだすからね。 (キャンドルの答えに) そうさ…あの教団のせいで両親は死んだ… (項垂れ拳を作り)僕は教団のトップになる。そして一気に潰してやる。ベリアルも、教団も全て潰す。 それこそが僕の生きる理由。故郷への弔い。両親への償い。 あんな偽善ぶった教団は滅ぶべきだ…! 教団としては僕は異端として消すべき存在なんだろう。 僕は…君と、必死に生きている真面目な人々が笑っていられるならそれで良い。それさえできれば死んでも良い。 (袖口で目を拭い) バカ…泣いてなんかいないよ… |
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【完成品】 色:白 形:太く短めの円柱 香:サンダルウッド 花:ラベンダーのドライフラワー 灯した際の香りを中心に、シンプルに浮かぶラベンダーのシルエットを楽しむようなキャンドル --- 【キャンドル作成】 祓: ふむ、キャンドルデザインか… 俺も聡い訳ではないが、二人で選ぶものだという ならば、二人で持ち寄った物からより良いと思えた方を選ぶというのはどうだ 喰: 特にこだわりがある訳では無い ガルディアが自由に選んだ物で… …? それぞれが持ち寄った案から? ……それならば仕方がない 互いに持ち寄ってきたものから、どちらかより気に入った物を選ぶ 香り、サンダルウッドは…互いに同じ物を選んだのだな 嬉しさから、仄かに笑みが零れた |
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場違いな場所にきてしまったか…? 様子を見に来たが成り行きのまままキャンドルを作っていてる二人 ヨナの顔からは何も読み取れなく、黙々と。雰囲気あるのはお店の空気だけ キャンドルは人気の高いオススメの物を聞く 質問 ヨナ (気は乗らないが渋々)…好きな色は ベルトルド …絶対覚えて帰る気ないだろう。浅葱色。 ふむ、そうだな ヨナは何故単身でこの街へ?家族はサンディスタムにいるんだろう? お互いの経歴は契約時に書類で目を通したでしょう?今更何を 人の己れを知らざるを患えず、人を知らざるを患えよ。だ(にいっ 自分の話をしたいのですか?私の事を知りたいのですか? 答えず掌を上にしヨナに向かって差し出し促す ヨナ、ため息 |
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えーと、内緒にするのは駄目だなって思うので言っておきますね。 ここで作るキャンドルは普通のキャンドルじゃないんです。 キャンドルに火を灯して質問をすると正直に答えてもらえるそうです。 私、ロメオさんに聞きたいことがあるんです。 まずキャンドルにしましょう。 こっちのドライフルーツはロメオさんの瞳の色に似てますね。 その花は私に似てますか?折角だから私達のイメージで作ってみましょうか 「過去の自分が怖いですか?」 でも過去はどうであれ今のロメオさんはいい人だと思うしそんなロメオさんのこと好きですよ。 占い師だからって万能ってわけでもないんですよ。 だから…何をしていたのかっていうのまでは分からないです。すみません。 |
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◆キャンドル 色:桜色 デザイン:桜の花の形 染料:薄い色を付けられる液体染料 香り:桜の香り 入れるもの:桜のドライフラワー ◆アユカ 質問:わたしのことで、かーくんは何か苦しんでいますか? 答え:覚えてない…本当に、何も覚えてないの ただ、頭がひどく痛かっただけ 反応:楓の答えに驚く パートナーとしてしか…でも、かーくんはパートナーだし それ以外って、何かあるの…? ◆楓 質問:アユカさんが教団に保護される前のこと、本当に何も覚えていませんか? 答え:俺は…あなたに、パートナーとしてしか見てもらえないことが、つらい 反応:無自覚だった心の奥底の気持ちを口にして焦る 俺は、今何を口走った…? そんな風に思ったことなどないはずだ |
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Q要約:黙って出かけている理由 A要約:誕生日プレゼント探し 色んなお花入れたいです! 形は…これも可愛いし、これだと中身が透けて見やすいし…迷っちゃいます! あっ、香りはグレンが選んでみませんか、どれがいいですかっ? 完成ーっ!可愛くできましたーっ! そっ、それは駄目です駄目なんですー!その質問だけはどうかーっ! うぅ…今年は秘密にして驚かそうと思ってたのに… どうしましょう、さりげなくプレゼントのことを聞く予定だったのですが… …あの、私いつもグレンに迷惑かけてばっかりな訳なんですけども、 私…嫌われてない、ですよね? グレン、怒った後は何だかんだで優しくしてくれるから、またいつも通りにしちゃうんですけど… |
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~ リザルトノベル ~ |
●アラシャ・スタールード&イダ・グッドバー
「アークソサエティの裏路地に、不思議なキャンドル屋があるっていう噂があるから、それを調べに行って欲しいの」 先日、その指令を受けた、アラシャとイダは、キャンドル屋に入るや否や、その怪しさに表情を固まらせた。 アラシャは、たった今しがた自分たちが入ってきた扉にチラリと視線をやった。この指令を耳にした時、アラシャはシメたと思った。イダに聞きたいことがあったのだ。強引に聞くみたいで嫌だという気持ちも少なからずはあったが、それでもはぐらかされたばかりだから。そう思って、決心してここにきた。 だが、これは怪しい。思わず、イダの表情を盗み見るが、やはりイダも怪しげに思っているようだった。 「そんなに警戒しなくても、取って食べたりしないわよぉ」 そんなアラシャとイダの気持ちを読み取ってか、その店の女主人が可笑しげに笑いながら、二人を手招きする。 「とりあえず、キャンドルになる素材を選んでみたらどうかしらぁ?」 アラシャは、怪しげに思いながらも、やはり聞きたいことが聞けるということに惹かれたのか、しっかり頷くと、キャンドルの素材が並んでいる棚に、イダと共に向かう。 「キャンドルの素材は、2人で決めよう……」 いくつもの種類がある素材に目移りしながらアラシャがそう言うと、 「アラシャが好きなように決めていいぞ」 と、イダの声がして、思わずアラシャが振り向く。 「え、あたしが決めていいの?」 「俺は作るのをメインに手伝うよ。嫌か?」 「もちろん嫌じゃないけど……」 言いかけて、「そう、それなら」と一人で納得したアラシャは、 「俺は、付き添いだ、付き添い」 というイダを横目に真剣にキャンドルの素材と向き合い始めた。 「キャンドルの色は白にして……中に入れるのはどうしようかな……」 真剣に選ぶアラシャの様子に、見守るような暖かな視線を送るイダ。 「あ、そうだ。オレンジに、小さい粒の草が入っている感じがいいな」 ブツブツと一人ごとを言いながら、アラシャが、 「輪っか切りのオレンジを入れて、これはなんていう草なんだろう」 と言ったところで、アラシャの耳に盛大に吹き出す音が聞こえて、思わずビクリと肩を揺らす。 見ると、イダがお腹を抱えて笑っていた。 「な、何!? どしたの!?」 アラシャが疑問に思って聞いても、しばらく笑っているイダ。 「いや、草って……っ、ははっ、せめて花だろそこは」 言葉を紡ぎながらも、尚笑い続けるイダにアラシャがごまかすように、 「イダ、笑いすぎ……」 と、視線をそらす。 「……草じゃダメだった?」 付け加えるように言ったアラシャに、イダは一瞬キョトンとしてから、 「いや、いいんじゃないか? アラシャらしくて」 と、顔を綻ばせた。 「出来た……!」 いつもより目を輝かせて言ったアラシャを見て、ふうとイダが汗を拭う。キャンドル作りと言っても、慣れない工程に真剣になってしまった。と、イダも満足げに、出来たキャンドルを見つめる。 なんともアラシャらしいキャンドルが出来た、とイダが浸るのも束の間。女主人がひょっこりと顔を覗かせ、 「あらぁ、可愛らしいのが出来たのねぇ。それじゃ、点火してみましょうかぁ」 と、何やら楽しげに点火の準備をしていく。 キャンドルに火が灯ると、オレンジのいい香りがあたりに広がり、アラシャとイダの肺を満たしていく。2人の心臓がドクリと脈打ち、その鼓動が全身に響いて、なんとも心地がいい。頭はハッキリとしているはずなのに、足の感覚だけがフワフワして、なんだが自分の体重がなくなったみたいだ。と、2人は思った。 「お互い一つずつ聞こう。なんでも聞いて」 アラシャの声がした。 イダは、頭の隅で、ああ、そうか、ここはそういうところだったな。と思いながらも、 「お互い一つずつな、わかった」 と返事をした。 イダは、視線でアラシャを促すと、アラシャは少し躊躇いながらも、その質問を口にした。 「あたしからは……ねぇ、イダ。あたしは、妹さんの代わり? 違うなら、なんなの?」 それを聞いて、イダは目を伏せる。アラシャの聞きたいことがなんなのか、イダは何となくわかっていた。覚悟はしていたが、と返事をするのを押しとどめようとしてみるが、喉につかえつつも、するりと言葉が口を通っていく。 「そうだ。妹の、アイラの代わりだ。罪悪感からの」 イダ自身の本音が空気を震わした。 「……ありがと、イダ」 アラシャは、分かってたよ。という言葉をグッと飲み込んで、ほんの少しの微笑みに変える。 「それじゃ、俺からの質問だな。にーちゃんの探索はどうなってるんだ? 休みの日に探してるみたいだが」 「ん、にーちゃんの探索は順調。教団にいるって聞いてきた」 「そうか」 お互いの質問が終わり、沈黙が2人の間に落ちると、今までどこかに姿を消していたのか、女主人がどこからか現れてキャンドルの灯を消す。 途端に、さっきよりも意識がハッキリとして、足に感覚が戻ってきたのを感じた2人は、ああ、やはりあのキャンドルは特別だったんだな。と、再確認したのだった。 ●カラク・ミナヅキ&アーロイン・ヴァハム アーロインは目の前に広がるキャンドルと、その数々の材料に困惑していた。 彼を連れてきた相方のカラクに視線をやるが、カラクは何事もなかったかのように、その店の女主人と何やら言葉を交わすと、そそくさとキャンドルの素材が並ぶ棚の方へと寄っていく。 眼前に広がる光景に、アーロインが動けずにいると、 「アーロン、早く材料選んで」 と、カラクの声が棚の方から飛んできて、アーロインは思わずハッとする。 「い、いやいや、ちょっと待て。俺は、好みの酒がブレンド出来る店を見つけた、と聞いて来たんだか?」 そう主張するアーロインに、カラクは一瞬選ぶ手を止めて、アーロインに視線を止めた後、 「調合作業としては大して変わらない」 と、何食わぬ顔でそう答える。 「材料の時点で別物じゃね!?」 アーロインの主張は、「早く」というカラクの視線によって呆気なく打ち砕かれるのだった。 「あー、つまり、キャンドルを作って、火を灯してお互いに質問すれば、聞きたいことの正確な答えが絶対聞けるってわけか」 「そうよぉ。素敵でしょぉ?」 カラクと一緒に材料を見始めてから、女主人に改めて説明を聞いたアーロインは、その説明を聞いて、思わず首を傾げる。 なんで正面から普通に聞かねえんだ……? と、疑問が浮かぶが、真剣にキャンドルを選んでいる相方をチラリと盗み見て、半ば諦めに入った。 「キャンドルはシンプルな方がいいのだろうか?」 カラクが女主人に聞くと、女主人はカラクとアーロイン両方の胸の中心を、トン、と指先で抑え、 「心のままに、よぉ」 と、妖しげな笑みを浮かべる。 カラクが、女主人のアドバイスとは言えないアドバイスを聞き入れ、ジッとキャンドルの材料とにらみ合いながら、自分がピンと来た素材を手に取っていく中、アーロインはどうにもこういうのが苦手なのか、中々進まず、ただ相方が選んでいくのを後ろで見ている時間が多くなっていく。 「キャンドルは肌色で、香りはハーブ系がいいな……」 大人しくなったアーロインを不思議に思い、カラクが振り返りつつ、「どう思う?」と聞くが、アーロインは、 「シンプルな感じでいいんじゃねぇか?」 と、ただ同意を示すだけだった。 「まぁ、こんなもんだろ」 作り上げたキャンドルを見て、ふうとため息をつきながら、アーロインが言う。 「うん。僕もいいと思う」 カラクも満足げにそう呟くと、早速キャンドルに火を灯す用意がなされた。 肌色のシンプルなキャンドルに火が灯ると、ハーブの香りが二人の鼻をくすぐった。そして、香りがやけにスゥと脳まで通ると、今まで色々な思考が巡っていたものが、まるで靄が晴れるようにスッキリしていき、リラックスした心地に陥っていく。 「さぁ、お互いに聞きたい質問を……」 女主人の声が、これまた心地よく脳内に響き渡ると、まず最初にアーロインが口火を切った。 「あー……好物は?」 アーロインは特に聞きたいこともなかったため、なんとなく頭に浮かんだことをそのまま口にした。 「……口の中で弾ける飲み物」 適当に聞いたが、思わず相方の答えに驚くアーロイン。 「そりゃまたなんで」 「あの刺激が気に入っただけ」 一通り答えたカラクは、次は自分の番、というように、息を小さく飲み込むと、自分が聞きたいと思ってあらかじめ用意していた質問を一気に吐き出す。 「マドールチェとしての僕をどう思ってる?」 質問を聞いて、アーロインは目を見開く。と、同時に納得もした。 「おめー……目的これか……」 女主人の話を聞いた時は、なんで正面から聞かないんだ、と思ったが、カラクの質問を聞いてアーロインは至極合点が行った、と内心呟く。 人は平然と嘘をつく。言葉とは裏腹に何を考えてるか分からない人間がいるのはよく分かる。と、自分に質問をした相方に視線を合わせた。 「ねぇ、本当はどう思ってる?」 「本当も何もねぇよ。前にも言ったろ。俺にゃ人形に見えねえ。生きてんなら俺と同じだろ」 キャンドルに誘発されるまま、アーロインはスルリと以前と同じ答えをカラクに伝えた。 「……本気で言ってたんだ」 驚くカラクを見て、アーロインは、 「疑ってやがったな」 と苦笑しながら言った。 カラクはきっと、以前に伝えた自分の言葉を完全に信じることが出来ずに、しかしその確証が欲しかったのだろう。今日、その確証が得られて良かった。と、満足げなカラクの様子に安堵するアーロイン。 一方で、カラクは、前より説得力もって聞けて良かった。と、依然として揺らめいているキャンドルの炎を見て小さく微笑む。そして、視線をアーロインに向けると、今後はもっと観察しがいがありそうだ、と内心違う笑みを浮かべた。 アーロインは、突然襲った悪寒に首を傾げながらカラクを見るも、相変わらずその顔には安堵の笑みが浮かんでいるだけで、その悪寒の原因をカラクの表情から探ることは出来なかった。 ●ラウル・イースト&ララエル・エリーゼ 教団から不思議なキャンドル屋の指令を受けて、ラウルは思いつめた表情で拳を握った。行く前に色々噂を調べると、そのキャンドル屋では、どうやら自分の聞きたいことが聞けるらしい。ラウルは、自分の中に浮かぶ強い疑問に、唇を噛んだ。 ララエルの本当の両親が生きているのか知りたい。もし、生きているなら、自分が必ず見つけ出したい。そのために……ラウルは今一度気を引き締めると、ララエルと一緒にそのキャンドル屋へ向かった。 「わぁ、凄い! 色々な種類があるんですね!」 キャンドルのお店に着くと、本当に様々な種類がある光景に、ララエルが感嘆の声をあげた。ララエルの楽しんでいる姿を見て、なんだか本来の目的を忘れて、純粋にキャンドル作りを楽しんでしまいそうだな、とラウルは内心思った。 「ええ……ここには、様々な種類があるから、あなた達の心のままに選んでちょうだいねぇ」 その店の女主人が妖艶な笑みを浮かべながら、その眼差しでララエルとラウルを捉えた。自分達の心の奥まで見通してしまえそうなその瞳に、ドキリと心臓を鳴らしつつも、早速キャンドルの材料選びに二人は取り掛かる。 「ラウルは、どんなのが良いと思いますか?」 色とりどりのキャンドルの色を眺めながら、悩ましい表情をしながらララエルがラウルに聞く。 「紫……かな」 ラウルは、ララエルに合った色を思い浮かべる。きっと、紫のキャンドルはララエルによく似合う。そう思って、少しだけ笑みが溢れる。 「紫ですか。そうなると、香りは紫に合わせて、ラベンダーとか、どうですか?」 「うん。良いと思う」 こうして、ララエルとラウルはお互いに、スルスルとキャンドルの中身を決めていった。 「出来ました!」 出来たキャンドルを嬉しそうに眺めながら、ララエルがはしゃいだ様子を見せた。 「うん。よく出来てる」 ラウルも、満足げに二人で作り上げたキャンドルを見つめる。 そして、二人がキャンドルを作り上げたタイミングを見計らって、女主人がやってくると、そのキャンドルに火を灯した。 ユラユラと優しげな火がキャンドルに灯ると同時に、華やかなラベンダーの香りが、ララエルとラウルを包み込む。暖かい日差しに当たっているような、そんな優しい感情で心が満たされ、心臓がフワフワするのを感じた。 「さぁ、質問を……」 キャンドルの香りと同じような優しい声色で、女主人がそう言うと、それに導かれるようにラウルが口を開く。 「ララエルの……ララエルの本当の両親は生きているのか……!?」 その瞬間、ララエルが見るからに固まった。何か見えない紐のようなものに縛られているように、関節がピンと伸び、口をパクパクさせているが、そこから音は出ない。 「ラ、ララエル!? これはどういう……!?」 焦るラウルの様子を見て、女主人がそっとキャンドルの灯に手をかざす。 「このキャンドルでは、キャンドルに対してじゃない……彼女に対しての質問をしなければならないのよぉ。このキャンドルは、占いの鏡のようなものではないからぁ。彼女の中にある答えを、嘘偽りなく言葉にするっていうだけなのぉ。ごめんなさいねぇ」 そして、女主人がキャンドルの灯を握ると、途端にララエルの金縛りが解けたように見えた。 「さぁ、今度はあなたの番……」 言いながら、女主人が握った手を開くと、不思議なことに依然として炎が揺らめいていた。 「そう言えば……ラウルはどうして教団の制服を着ないのですか?」 ララエルの質問に、ラウルの心が、かき乱される。自分の中でくすぶっている火の種が、一気に燃え上がるのを感じた。 「僕の屋敷がベリアルに襲われ、教団に救援要請を出した時に無視されたから……そのせいで両親がベリアルに殺されたからだよ」 ラウルの瞳がどこか宙を捉えながら、キャンドルの炎を映して揺れる。 「そうさ……あの教団のせいで両親は死んだ……」 ラウルが俯きながら、拳を握った。 「僕は教団のトップになる。そして、一気に潰してやる。ベリアルも、教団も全て潰す。それこそが、生きる理由。故郷への弔い。両親への償い。あんな偽善ぶった教団は滅ぶべきだ……!」 一度思いが溢れ出してしまえば、もう止まらない。 「教団としては、僕は異端として消すべき存在なんだろう。僕は……君と、必死に生きている真面目な人々が笑っていられるならそれで良い。それさえ出来れば、死んでも良い……!」 ララエルは、怒りと苦しみに溢れているラウルの姿を見て、思わずラウルの腰に抱きついた。 「私がそばにいます。一人にはしません。ラウルのお父様もお母様も私も弔います。ラウルが教団を憎むなら、私が代わりに憎みます。ベリアルを倒すのも、お手伝いします。ラウルが私の笑顔を望んでくれるなら、私、笑います。私がラウルを守ります。だから……独りで泣かないで」 ラウルの深い悲しみを思って、ララエルはどうしようもない気持ちになる。 「バカ……泣いてなんかいないよ……」 ラウルは袖口で目を拭い、キャンドルが映るその目を伏せた。 ●ガルディア・アシュリー&グレール・ラシフォン おかしなキャンドル屋の指令を先日受けてからというものの、ガルディアは悶々としていた。そして、チラリと相方のグレールを盗み見る。 一見、いつもと変わらぬグレールの表情だが、最近どうにも自分に隠し事をしている気がする……と、ガルディアは頭を悩ませているのだ。 そんな時に、不思議なキャンドル屋の指令を受けた。噂によると、どうやら相方に聞きたい質問を一つしたら、相手の意思は関係なく、本当の答えが相手から聞けるらしい。これは、ぜひ行かねば、とガルディアは来たる日を心待ちにするのだった。 「あらぁ、いらっしゃぁい」 扉を開けると、陽気なその店の女主人の声がした。 女主人に、2人は早速キャンドル作りの説明を聞くと、奥の棚に陳列されている数々の材料を前にして、一瞬固まってしまう。 「ふむ、キャンドルデザインか……」 ガルディアが、自分も聡いわけではないが、と思っていると、横から、 「俺は、特にこだわりがある訳ではないから、ガルディアが選んだ物で……」 と、グレールが早々にキャンドル選びから離脱しようとする。 「キャンドルは、2人で選んでくれるとキャンドルも喜ぶわぁ」 女主人がニコニコしながら、言ったのを聞いて、グレールがキャンドルが生きているような女主人の言い方に、内心首をかしげると、 「ならば、2人で持ち寄った物からより良いと思えた方を選ぶというのはどうだ」 と、ガルディアが助け舟を出す。 「……? それぞれが持ち寄った案からということか? ……それならば仕方がない」 グレールがそう言って、ガルディアと同じように棚とにらめっこをし始めたのを見て、ガルディアはホッとため息を漏らす。 暫く、お互いがそれぞれキャンドルの材料を選ぶのに時間を費やし、結局2人が持ち寄った中で決まったのが、太く短めの白い円柱のキャンドルに、ラベンダーのドライフラワーを入れ込み、サンダルウッドの香りを加えた、灯した際の香りを中心に、シンプルに浮かぶラベンダーのシルエットを楽しむようなキャンドルになった。 勿論、お互いが持ち寄ったものはほとんどは違うものだったが、唯一サンダルウッドの香りだけは、同じ物を選んだことに、ガルディアは無意識に嬉しさから、仄かな笑みが溢れていた。 「よし、出来たぞ」 ようやく出来上がったキャンドルを見て、満足げにグレールが呟く。 完成したタイミングを見計らって、女主人がやってくると、手際よくキャンドルを灯す準備がなされ、あっという間にその時がやってきた。 「それじゃあ、灯すわよぉ」 軽快な声と共に、優しい灯がキャンドルに灯される。と、同時に、2人で同じものを選んだ香りが空間を包み、意識を揺らしていく。まるで、いい夢を見ているときのような、居心地の良い感覚。しかし、夢を見ているときより、断然意識はハッキリしている。 不思議な感覚に身を包まれつつも、ガルディアはずっと聞きたいと思っていた事を口にした。 「グレール、お前は俺に隠し事をしているな? それも、ずっとだ」 「……ああ、しているな」 グレールの口から、意思を無視して言葉が紡ぎ出され、なるほど、こういうことか、とグレールは内心妙に納得した。 「何を?」 ガルディアの瞳が微かに揺れる。グレールは、先程とは違い、言葉が自分の口から押し出される感覚を感じないことに、女主人の説明にあった「一つの質問」という言葉を頭の隅で思い出す。 「それは、二つ目の質問になるな」 「……!」 質問の仕方を間違えた! 我ながら愚かだ……! グレールの答えを聞いた直後、ガルディアは激しく後悔した。しかし、時すでに遅く、いくら後悔しても、もう聞けるものではない。仕方ない、というようにガルディアは気づかれないようにため息を漏らした。 一方、グレールはというと、ガルディアが質問の仕方を間違えてくれたおかげで、安堵の気持ちでいっぱいだった。 助かった、というべきか。まだ言えたものではない。……この想いは、伏せ潜めなくてはならない。内心、自分に向かってそう呟くと、グレールは自身から相方にする質問に意識を集中しなおす。 「……俺は、お前の傍にいて良い存在だろうか?」 言って、グレールはギュッと拳を握った。 答えを聞いてしまえば、それが真実なのだから。どんな答えでも……と、覚悟を固めた。 「何を。もうお前がいなければ、俺の生き筋はこの蝋燭よりも暗いものだというのに」 そう言ったガルディアの瞳の中で、頼りないキャンドルの炎が揺れている。 ガルディアの真紅の瞳と、キャンドルの炎の色が重なって、それはなんとも美しい光景を映し出していた。 「むしろ、いなければ困るのだ」 と、混じり気のない言葉と、浮かべた微笑に、グレールは、もう先程の質問に答えてしまえればよかったと、思うほど胸が軋んだ。 ●ヨナ・ミューエ&ベルトルド・レーヴェ 「場違いな場所に来てしまったか……?」 隣にいるヨナに聞こえるか聞こえないかの声で、ベルトルドが呟いた。 先日、不思議なキャンドル屋があるから様子をみに行って欲しいという指令を教団から受けて、来てみたはいいものの、明らかに怪しい雰囲気が漂っている。 「いらっしゃぁい」 ベルトルドが、半ば雰囲気に戸惑っていると、店の奥から女主人が顔を覗かせ、嬉しそうにニコニコしながら2人に近づいてきた。 「あなた達、キャンドルを作りに来たのかしらぁ」 女主人の愛想の良さに流されるようにして、ベルトルドとヨナはキャンドル作りを始めることにした。 暫く成り行きに任せてキャンドルの材料を選んでいたベルトルドは、チラリと横で黙々と選んでいる様子のヨナを見た。彼女の表情からは、何も読み取れず、このキャンドル作りに対してどう思っているのだろう、とベルトルドは不思議に思う。 先程、キャンドル作りの説明を女主人から聞いた時、ベルトルドはヨナに聞いてみたことがある、と頭に一つの質問が浮かんだ。しかし、彼女はどうだろうか。彼女は自分に質問などあるのだろうか。考えだしたら止まらないベルトルドは、とりあえずキャンドルを完成させることに意識を向け直した。 「よし、出来た」 なんとかキャンドルを2人で選び、完成させたのを見て、ベルトルドは満足げな表情を浮かべる。ヨナも、心なしか笑みを浮かべている気がする。 キャンドルは、2人で選んだものというよりは、結局女主人に人気なものを聞いて、出来上がったものになった。 「それじゃあ、火を灯すわよぉ」 女主人が、タイミングを見計らって、テキパキとキャンドルに火を灯すと、お店中にグレープフルーツの爽やかな香りが広がっていった。サッパリとした香りが、ベルトルドとヨナの鼻をくすぐる。それを大きく吸い込むと、脳の奥がしびれるような感覚がして、意識がスッキリと気持ちよくなっていく。 「じゃあ、私から質問しますね」 ヨナが静かに言うと、 「……好きな色は」 気が乗らない様子で渋々ベルトルドに聞く。 ヨナのあまりにもたわいない質問に、適当に質問したのか、と呆れた息を漏らしたベルトルドは、 「……絶対覚えて帰る気ないだろう」 と言いながら、 「浅葱色」 しっかりと答えてやる。 次は俺の番だな、とつぶやいたベルトルドは、小さく息を吸って、 「ふむ、そうだな。ヨナは、何故単身でこの街へ? 家族はサンディスタムにいるんだろう?」 と一気に質問を口から吐き出す。 「お互いの経歴は契約時に書類で目を通したでしょう? 今更何を」 呆れたように言ったヨナに、 「人の己れを知らざるを患えず、人を知らざるを患えよ。だ」 にい、と笑いながらベルトルドが言い返した。 「自分の話をしたいのですか? 私の事を知りたいのですか?」 ヨナの言葉がピリッと鋭さを帯びて、ベルトルドに突き刺さる。 ベルトルドは何も答えずに、ただ手のひらを上にし、ヨナに向かって差し出し促すと、ヨナがため息をついて、質問の答えを紡ぐ。 「サンディスタムで契約者が見つからず、ここにくれば見つかると思って来ました」 ヨナは言いながら、自身の故郷に思いを馳せる。実際は、それだけではなく、家族の圧が辛くて離れたかったこともあるが、それは多分余計な事だと思い、言わないでおこうと心に仕舞う。 キャンドルの効果も、自分が答えを言ったからだろうか。その奥のことまで、ヨナの口から出されることはなかった。 「へぇ、しかしこうやって浄化しになれたなら万々歳はないか。たまには帰らないのか? 顔を見せたら家族はきっと喜ぶぞ」 言ってから、しまった。と、ベルトルドは後悔する。 いつもと変わらず、ヨナの表情は冷たいままだが、いつもよりどこか冷ややかな雰囲気を醸し出している。 「……それは質問ですか?」 と、次の瞬間、ヨナが笑った。 ベルトルドの背筋に冷や汗が走る。 「キャンドル作りはもう終わりましたよね? ありがとうございました。私は、これで失礼します」 ヨナが早口にそう言い終えると、お店を出て行ってしまう。 ベルトルドが呆気に取られて、ポカンとしていると、それを見かねた女主人が、ベルトルドに笑いかけながら、 「女の子の心には、触れちゃいけない部分があるのよぉ」 と、意味ありげな言葉を残した。 ●シャルローザ・マリアージュ&ロメオ・オクタード シャルローザは、先日受けた指令を思い出しながら目の前のキャンドル屋を見て、心を決めた。 これは、言わなければならない……と、そのキャンドル屋の異様な雰囲気を見て思う。 「えーと、内緒にするのはダメだなって思うので言っておきますね」 シャルローザが言うと、ロメオがゆっくりと彼女の方を向いて、彼女の言葉を促すように「ん?」と、軽く聞き返した。 「ここで作るキャンドルは普通のキャンドルじゃないんです」 続く彼女の言葉に、余計に疑問が増え、首を傾げるロメオ。 「キャンドルに火を灯して質問をすると正直に答えてもらえるそうです。私、ロメオさんに聞きたいことがあるんです」 ロメオの目をまっすぐに見て、シャルローザに一気に伝えると、シャルローザは思わず笑みを零した。 「内緒にできないとかお嬢ちゃんらしいんだけど……。 お嬢ちゃんの聞きたい事が……俺も少し聞きたいことがあるし……OKだ」 同意を得て、早速キャンドル屋に入る。 「いらっしゃぁい」 入ると同時に、陽気な女主人の声が店に響く。キャンドルの様々な香りがほのかに香り、それがまた雰囲気を増幅させていた。 シャルローザとロメオは、早速キャンドル作りに取り掛かると、材料をそれぞれ選び始める。 「まず、キャンドルにしましょう。こっちのドライフルーツはロメオさんの瞳の色に似てますね」 シャルローザがにこやかに言うと、 「俺に似てるねぇ……それならこっちの青い花のドライフラワーはお嬢ちゃんに似てると思うよ」 と、ロメオが同じように言い返した。 「その花は私に似てますか? 折角だから私達のイメージで作ってみましょうか」 「俺達二人のイメージか……分かった。やってみよう」 シャルローザとロメオがお互いのイメージに合うようなものを、キャンドルの材料に決定していく。 「俺はセンスはいい方ではないから、ほどほどにお嬢ちゃんのセンスで軌道修正してくれ」 頭を掻きながら言うと、シャルローザが「ふふふ」と嬉しそうに微笑んだ。 「出来ました……!」 「出来たな」 ようやく出来あがったキャンドルを見て、嬉しそうに笑う二人。 そのタイミングを見計らったように、女主人がキャンドルに火を灯しにやってくる。 キャンドルに火が灯ると、ドライフラワーの華やかな香りが辺りに広がる。フワリとした香りが二人を包み、そのまま心まで軽くしていく。 「私から、質問しますね」 シャルローザが遠慮がちに言う。 「過去の自分が怖いですか?」 「過去の自分か……そうだな、はっきり言って怖い」 ロメオの言葉が、意思に関係なく彼の口から押し出される。 「残ってる記憶がロクなもんじゃなくてな……当時の考え方とか場面のイメージとかがな。俺じゃないみたいで怖い。でもこないだお嬢ちゃんの言葉で少し救われたけどな」 ロメオは、自身の欠落している記憶の事を思って心を虚ろわせた。分かってはいたが、やはり自分は自分のことが怖かったのか、と再確認する。 「でも、過去はどうであれ、今のロメオさんはいい人だと思うし、そんなロメオさんのこと、好きですよ」 シャルローザは、今一度自分の気持ちをロメオに伝えた。こうすることで、彼の記憶の欠如の不安からくる暗闇に少しでも光が差せばいいと、彼女は心の内で思う。 「じゃあ、次は俺の番だな」 ロメオがシャルローザの目をじっと見る。 「占いってのは、なんでも分かるのか? 分かるなら俺の過去を知りたい」 シャルローザがその言葉を聞いて、悲しそうに目を伏せたのを、ロメオは見逃さなかった。 「占い師だからって万能ってわけでもないんですよ。だから……何をしていたのかっていうまでは、分からないです。すみません」 「いや……謝らなくていいんだ」 シャルローザは、自身の能力不足を憂いた。もしも、自分が彼の過去を見る事が出来たなら、彼の不安を少しでも取り除けたのだろうか。しかし、実際出来ないのだから仕方がない。今の彼を精一杯受け入れよう、と心に決める。 一方、ロメオは、自身の記憶がもしかしたら分かるかもしれない、と期待しつつも、分からないと言われた時に落胆するほどでもなかったようだ。謝らなくてもいい。という言葉は、彼の本心から出た言葉だった。 それは、以前もらった彼女の言葉のおかげか。過去の自分ではなく、今の自分を受け入れてくれている彼女のおかげか。ロメオは、シャルローザに気づかれないよう、ふ、と口の端で笑った。 「わぁ、綺麗な空ですね!」 入った時は、清々しい青空が広がっていた空も、気づけば褐色の帯が空に浮かび、空は闇を受け入れる準備をしていた。 ロメオはどことなく、来る前より心が軽くなったような、そんな気がした。 ●アユカ・セイロウ&花咲・楓 先日、教団から不思議なキャンドル屋の指令が出てから、アユカは珍しく眉間にシワを寄せていた。以前から気にはなっていたが、ここ最近余計に感じる楓の態度の変化。なんだか、楓が自分と接する時に無理をしているのではないかと、最近思うことが多かった。 それは、なんでなのか自分には分からないが、しかし自分に原因があるならば、それを改善することは可能だろうから。直接聞いても、楓は多分答えないことを、アユカは見越して、今回の指令を楽しみ半分、複雑な気持ちが心の中で漂っていた。 アユカは、聞きたいような聞きたくないようなそんな気持ちを抱えたまま、キャンドル屋に視察にいく当日を迎えることとなった。 「ここだね……」 路地裏の異様な雰囲気のあるキャンドル屋に、アユカが思わず声を漏らす。 本当にここなのだろうか。あまりにも怪しい雰囲気に、アユカも楓も一瞬ためらうが、扉を開けるとすぐに、キャンドルの素材の華やかな香りとともに、 「いらっしゃぁい」 という、明るい声が聞こえ、店の奥から女主人が姿を現した。 「キャンドル作りに来たのかしらぁ」 ニコニコとした女主人の楽しそうな声に、アユカは頷くと、女主人から一通りの説明を受ける。 そして、本当に聞きたいことに答えてもらえるんだ、と改めて再確認することが出来た。 「キャンドル作り、なんだかワクワクするなぁ」 「アユカさんが、楽しそうで良かったです」 ふと、アユカが楓の手元を見ると、桜の花を手にとっている。 「桜……入れてもいいですか? あとは選んでいいですよ」 「かーくん、桜が好きなんだ! じゃあ、せっかくだから全部桜にしよう」 「ぜ、ぜんぶですか?」 「うんっ! ぜんぶ!」 アユカが嬉しそうに、キャンドルの素材を桜に合わせて選んでいく。 「出来た!」 結局出来上がったキャンドルは、桜色のキャンドルに、桜の花の形がデザインされ、桜のドライフラワーが入った、本当に桜尽くしのものになった。 完成されたそれを見て、喜ぶアユカに思わず顔がほころぶ楓。 そのタイミングを見計らったかのように、女店主がテキパキをキャンドルに火を灯す。それと同時に、桜の華やかな香りが店中を充たしていった。楓は懐かしい香りに、思わず目を閉じ、その香りを堪能する。 アユカは、体験したことのない、けれど妙に身にしみる香りに、体を預けるようにして包まれていく。 「それじゃあ、私から質問しますね」 楓が少し考えこむような仕草をすると、 「アユカさんが、教団に保護される前のこと、本当に何も覚えていませんか?」 楓の質問を聞いて、言葉が喉の奥に押し込まれるような感覚に陥るアユカ。 「覚えてない……本当に、何も覚えてないの。ただ、頭がひどく痛かっただけ」 「そうですか……」 この機会を通して、もしかしたら彼女の記憶について無意識から回答を引き出せないかと思ったが、やはりダメだったか、と駄目元で聞いたこともあり、落胆せずに納得する。しかし、頭痛については初めての情報なので、これは知れて良かったと安堵の思いを浮かべた。 アユカは、少しでも自身の記憶に関して、引き出そうとしてくれた楓の優しさに浸りながら、今度は自分の質問を口にする。 「わたしのことで、かーくんは何か苦しんでいますか?」 気になっていたことを聞いた。 楓は、何をどう答えるかという思考をしようとするも、それより先に、言葉が自分の口から押し出されようとされるのを感じる。 「俺は……あなたに、パートナーとしてしか見てもらえないことが……辛い」 言って、驚く。自分は今何を口走った……? そんな風に思ったことなどないはずだ、という気持ちとともに、無自覚だった心の奥底の気持ちを口にして焦る楓。 一方で、アユカも楓の答えを聞いて驚いた表情を浮かべていた。 パートナーとしてしか、と言われても楓はアユカにとってはパートナーで、それ以外何かあるのか、アユカは知らない。それに、普段丁寧な言葉遣いをしている楓が「俺」と口にしたのも初めて聞いた。 いまいち、楓の心の奥底が見えない。いや、楓は答えてくれたのだが、自分の理解が追いつかないのか。アユカは、この質問でスッキリすると思っていたことが、一層モヤモヤする事態に陥ってしまったことに、うーん、と楓に聞こえないように小さく呟く。 楓も、自分が自分のことを「俺」と言ってしまったことに驚いていた。思考よりも先に、無意識が口をついて出た。いや、それは、キャンドルの説明の時に分かっていたことだが……と、先ほど口にした自分の日頃抑えていた思いをもう一度反芻する。 口にして、自分でその言葉を耳にしても、まだ自覚できない気持ちに、楓もアユカと同じようにモヤモヤとした気持ちを抱えることとなった。 「お二人とも、抱えるわねぇ」 意味ありげな女主人の言葉は、二人に聞こえることはなく、桜色のキャンドルの火が相変わらず揺れているだけだった。 ●ニーナ・ルアルディ&グレン・カーヴェル ニーナは、顎に指をあてて悩んでいた。そして、時々ため息を誰にも気づかれないように漏らす。 隣にいるグレンをチラリと見ては、また上の空になるのを繰り返している。 そして、暫くするとグレンに見つからないように、その場をあとにして出かけるのだった。 一方、グレンは自分に黙って出て行くニーナを見て、訝しげに表情を歪める。最近、ニーナが黙って出かけているが、その理由を聞いても、なんでもない、とはぐらかされてしまうだけで、一向に答えを聞くことが出来ない。 一体、ニーナは何をしているのだろう。そんな悶々とした思いが募っていく。 「アークソサエティの裏路地に、不思議なキャンドル屋があるっていう噂があるから、それを調べに行って欲しいの」 ある日、教団から出された指令に、内心ニヤリとグレンは笑みを浮かべた。 そのキャンドル屋は、以前噂になっているのを偶然聞いたことがあったのだ。なんでも、そのお店でキャンドルを作って、火を灯せば、相手に聞きたいことの答えをなんでも聞けるのだとか。これで、ニーナが黙って出かけている本当の理由を聞くことが出来る。グレンは、心に決めた。 「ここだな」 お目当のキャンドル屋について、そのお店を見上げるグレン。噂には聞いていたが、聞いていたよりももっと雰囲気があるお店だ。と、グレンはためらいつつもその扉をノックする。 「あらぁ、いらっしゃぁい」 陽気な女主人が店の奥から顔を覗かせて、嬉しそうにニコニコとキャンドルの説明をする。 ズラリと並べられたキャンドルの材料に、ニーナがワクワクした様子で向き合う。 「色んなお花入れたいです! 形は……これも可愛いし、これだと中身が透けて見やすいし……迷っちゃいます!」 「おい……落ち着けって」 「あっ、香りはグレンが選んでみませんか? どれがいいですかっ?」 「香りって言われても……この手のモンは詳しくねーぞ」 「大丈夫ですよっ。グレンなら!」 「それに、完成したキャンドルはどこに置く気だ?」 「そうですね……ベッドの傍とかですかね」 「ああ、ベッドの傍か……なら、無難にラベンダーあたりか、オレンジなんかもどことなくお前らしいけどな」 そう言いながら、グレンがオレンジの香りを手に取る。 材料を2人で選んだあとに、キャンドル作りはグレンを中心に進めた。 「完成ーっ! 可愛く出来ましたーっ!」 嬉しそうにはしゃぐニーナを見て、グレンも思わず笑みが漏れる。 女主人に完成を伝えて、火をつけると、グレンがニーナらしいと選んだオレンジの香りが、2人の鼻をくすぐる。足元から力が抜けて、だんだんと陽気な気持ちになっていくのを感じた。 「そういえば、ニーナ」 待ちに待った瞬間だ、とグレンは無意識に言葉に力が入る。 「出かける時は必ず俺に言えっつってんのに、最近よく一人で勝手に出かけてくれるよなぁ? 折角だ、どこで何をしているのか教えてもらおうか」 「そっ、それは駄目です駄目なんですー! その質問だけはどうかーっ!」 どれだけ嫌がっても、キャンドルのせいで答えが口から押し出されてしまう。 「グ、グレンの誕生日プレゼント探しです……」 言ってしまった答えに、ああ、バレてしまった……と、思わず項垂れるニーナ。 「うぅ……今年は秘密にして驚かそうと思ってたのに……」 ガックリきているニーナの様子に、グレンは申し訳なさげに頭を掻く。 「あー……何かその、悪かったな。らしくねーことしやがって……」 「どうしましょう、さりげなくプレゼントのことを聞く予定だったのですが……」 「さりげなくどころかド直球だな、それ」 グレンがそう言って、今度はニーナからの質問を待つと、ニーナが遠慮しながら、 「……あの、私いつもグレンに迷惑かけてばっかりな訳なんですけども、私……嫌われてない、ですよね? グレン、怒った後は何だかんだで優しくしてくれるから、またいつも通りにしちゃうんですけど……」 「従者としての人生なんてさぞ退屈だろうと思ってたが、お前のドジのお陰でここ10年退屈はしてねーよ。あくまでその二択ならそうなるってだけだからな!」 恥ずかしげもなく自分の正直な気持ちが口から漏れ出したのを、自分の耳で聞いて、思わず焦ってその後にグレンは付け足した。 ドジのおかげで……という言葉が引っかかるが、それでもグレンが自分と一緒にいるのを楽しんでくれていて良かった。と、ニーナを心底そう思って、思わず顔に笑みが溢れてしまう。 それを見て、グレンも、恥ずかしいと思ったが、その答えをニーナに言えて良かったと、思う。自分は、彼女の従者になれて良かった。彼女と一緒にいる時間を楽しく感じているのだ、と改めて再確認できた、と暖かな気持ちが心の中が満たしていった。 「ふふふ。愛らしいわぁ」 揺れるキャンドルを横目に、女主人がそっと呟いた。
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*** 活躍者 *** |
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該当者なし |
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[7] アユカ・セイロウ 2018/06/17-22:44
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[6] シャルローザ・マリアージュ 2018/06/16-20:30
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[5] カラク・ミナヅキ 2018/06/16-00:44
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[4] ガルディア・アシュリー 2018/06/15-23:19
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[3] アラシャ・スタールード 2018/06/15-21:43
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[2] ラウル・イースト 2018/06/14-11:30
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