~ プロローグ ~ |
ある満月の夜、人里離れた森の中にある苔むした廃墟の中に、その女はいた。 |
~ 解説 ~ |
●目的: |
~ ゲームマスターより ~ |
はじめまして、今回のエピソードのGMを務めさせていただく、黒浪 航と申します。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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■目的 キメラの行動妨害 +仲間の回復(ティ ■行動 ・ティはリチェルカーレの傍へ ・ロスはキメラへ ・空中戦ジャックの攻撃支援 →地上戦へ持込む ・戦闘終了後女性へ ・女性対戦終了警戒 ・ロスは狼姿でラウルの元で極楽 ■ティ 魔術使う時はリチェさんに声かけ 戦いを見ながら皆の体力・自分達の魔術効果認識 体力消耗激しい人等情報交換しつつ効率よく 相談できればOK時間なければ声掛けだけでも リチェさんの傍から離れず敵接近時は応戦 序盤 空中戦時にはジャック支援 彼の攻撃が当り易いよう移動する方の肉体攻撃し行手妨害 仲間援護に符で枝落し 信号拳銃でキメラ攻撃 キメラ討伐終了 仲間全員の回復 女性対戦時もリチェさんの傍に 女性に「動物は好きですか? |
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命を無理やり掛け合わせるなんて 眉を下げ 泣きそうな目でキメラと女性を見つめる …うん、大丈夫 皆さん どうかお気を付けて 魔術真名詠唱 まっすぐ前を見て杖を構える キメラ側 中衛位置から回復役 体力が6割を切った仲間に天恩天賜 回復の必要がない場合は通常攻撃 空中にいたら撃ち落とす ジャックさんの邪魔にならないよう シンティラさんと声をかけあって 効率的に 女性側の皆にも注意 回復の必要があれば動く キメラ戦が終われば仲間の怪我確認 酷い人に回復 無茶しないで とシリウスに どうしてこんなこと 生き物は自然のままの姿が一番綺麗だと思うわ 狼は狼 鷹は鷹の姿ではだめなの? こんなこと もうやめて 声をかけながら 全体の回復に努める 重傷の人優先に |
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●目的 キメラの撃破及び女性の確保 ●行動 担当:キメラ撃破 ●キメラ戦 ・セプティム 敵が動き回っているときは無闇に手を出さずに動きを観察 攻撃を仕掛けてきたら【エッジスラスト】でこちらから接近。心臓に武器を突き込む ・ユウ 【プロージョン】を翼に放ち、ダメージを与えて機動力を削ぐ その後、頭部や足を狙って【プロージョン】で攻撃して前衛を支援 可能ならセプティムの元へ向かうよう誘導 撃破後に女性の方へ向かう ●女性 ・セプティム 捕縛のために行動 木々の合間を移動しつつ接近 攻撃時は【エッジスラスト】を使い接近。迎撃されても無理やり近づき魔法を打たせないよう攻撃 ・ユウ 木々に隠れつつ【プロージョン】で攻撃して支援する |
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キメラ討伐 女性への尋問、捕縛 ◆対キメラ ・ローザ 後衛 月明りで出来る陰に隠れつつ、前衛をフォローする様に攻撃 位置を補足されぬ様こまめに移動 空中戦になった場合、ジャックの飛翔に合わせDE5 仲間が信号拳銃を撃つ際にもDE5を合わせる ・ジャック 前衛 他前衛の動きに合わせ、攻撃が当たり易い状況を意識する 最初は翼狙い キメラが飛行した場合天空疾駆を使用。TM1で打ち落としを狙う 飛行能力低下後は脳天や心臓部を狙っていく ◆対女性 ・ローザ 魔法攻撃に細心の注意を払い、詠唱動作等を確認したら味方に警告 前衛が詰める際にDE5でフォロー ・ジャック 木々に隠れつつ魔法に注意 近付く時は思いきり詰める 接近戦に持ち込めたら全力で攻撃 |
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まずはキメラの目を狙い、命中力を下げる事を狙うよ。 次は弱点である頭部をチェインショットで しつこく攻撃。 (ララエルはどうしているだろうか? ロメオさんが一緒とはいえ、女の元へ 行かせるべきじゃなかったのでは?) キメラを倒したら、急いで女を取り囲む。 どうしてこんな事をしたんだ!? ララエルをひどい目に遭わせていたら許さない…! そしたら許さないぞ、殺してやる! (女の捕縛が目的だと思いだし、我にかえり) 女に威嚇射撃をし、抵抗するようなら チェインショットで攻撃。 隙を見て所持品の縄で捕縛を試みる。 できる事なら情報収集もしておきたい。 |
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現場到着後敵を確認したのち魔術真名詠唱。 キメラは他の方に任せ自分とロメオさんは女性の警戒。 向こうが攻撃してこない限りはこちらからは攻撃しない。 キメラとの戦闘の終了を確認後。女性捕縛の為に行動開始。 敵が手練れと予想されるため攻撃を受けた場合に備えMG6使用。 敵による標的の固定をさせないためにできるだけ散開し錯乱させる戦法を取る。 私は中衛位置より攻撃。 キメラとの戦闘は二度目ですね…キメラは死するまで魂の解放はありませんので皆さんによる速やかなる解放を望みます。 女性は高レベルの禁忌魔術を使用できる点からも手練れの可能性が強いため警戒。 捕縛ができるならば…何でこんなことをしたのか聞いてみたいですね。 |
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響:遠距離から全体のサポート。敵の攻撃が一人に集中し過ぎないよう援護。また、敵の攻撃呼び動作や味方の失敗などが有あれば、それも可能な限りカバーしていく。万が一女性が逃げ出そうとするなら、足等を積極的に狙う。 もし女性を捕まえられたなら、水を使った拷も・・もとい尋問の手伝いを行う。 愛華:他の人とある程度協調しながら、女性に対して時間稼ぎ、相手に隙があれば捕縛を。 |
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目的】 キメラの討伐が第一 行動】 戦闘開始前に魔術真名を クリス: 魂洗いを使用 キメラが降りてきた所を狙いスキルを放つ 狙いの優先順位はまず翼 傷や毒等であまり高く飛べなくなったら心臓、頭の狙いやすい方に攻撃を 言葉は通じないかもと思いつつも 「お前なんて恐ろしくも何ともない!自分が強いと思うなら俺を倒してみろ!」 と挑発してみる アリシア: クリスの近くでキメラへ攻撃 蠱霧散開のスキル使用 「クリスや、近接攻撃の方が、少しでも狙いやすくなりますように…毒が、効いてくれるといいのですが…」 弱らせ、こちらへ向かわせる目的なので狙いやすい部分へ攻撃を当てていく 狙えるなら心臓を 2人とも、魔力が足りなくなった時は通常攻撃を行う |
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~ リザルトノベル ~ |
迫り来るキメラを前にして、浄化師たちもそれぞれ武器を手に身構えた。 「やるぜぇっ!」 ロス・レッグが狼の耳をピクピク動かしながら気合の入った声で叫んでキメラに斧を向けると、 「私は、リチェさんとともにみんなをサポートします」 シンティラ・ウェルシコロルは冷静に呟いて、リチェルカーレ・リモージュの側へと急ぐ。 「無理やり命を掛け合わせるなんて……」 リチェルカーレは、眉を下げ、泣きそうな目でキメラと女を見つめつつ呟く。 目を眇めながらキメラと女を見つめていたシリウス・セイアッドは、リチェルカーレの呟きを聞いて、 「……いけるか?」 パートナーを気遣うように声をかけた。 「……うん、大丈夫」 リチェルカーレは、ゆっくりと頷き、 「皆さん、どうかお気をつけて」 仲間たちの姿を見回して、やさしく声をかける。 「いくぞ」 シリウスに軽く背を叩かれると、リチェルカーレは覚悟を込めて、 「はい」 ふたりは、互いの掌を合わせて目を伏せ、魔術真名を詠唱する。 『黄昏と黎明、明日を紡ぐ光をここに』 (あの女は何者だ……? どうもキナ臭ぇ) ジャック・ヘイリーは、キメラの背後にいる女を睨んで、心中で呟く。 彼の隣で、ローザ・スターリナも、 (……先ず、このキメラを倒さないと、か) 迫る敵に険しい視線を向けた。 「チッ、とっととキメラを潰すぞ!」 ジャックが叫ぶと、 「ヘイリー! 援護する!」 ローザは、相棒に力強く声をかける。 「ロメオさん!」 「ああ」 シャルローザ・マリアージュが声をかけると、パートナーのロメオ・オクタードはすぐに応えて、 『嘘とお菓子は甘いもの』 ふたりは互いに触れながら魔術真名を詠唱する。 直後、能力を最大限に解放したふたりは、キメラは仲間たちに任せて、廃墟の前に静かに佇む女の方へと向かう。 「ラウル、私もあの女のひとの元へいきます」 ララエル・エリーゼが覚悟の表情で呟くと、隣にたつラウル・イーストは、心配そうな表情をみせて、 「ララ、くれぐれも無茶だけはしちゃだめだよ?」 少女の瞳を覗き込みながらいった。 「わかってます」 軽くいって、駈け出すアンデッドの少女を、ラウルは不安そうに見送る。 「響、私もあの女の元へいく。キメラの方は任せた」 神宮慈愛華が剣の柄に手をかけながらいうと、神原響は肩をすくめ、 「わかりました、お嬢。でも、無理はなさらずに」 「わかっている」 「皆の緊張をほぐすためにお菓子なども持ってきたのですが、差し上げる暇がありませんでした……」 「問題ない。この戦いが終わったらふたりで……」 「みんなで食べますか」 「そっ、そうだな。そっちも油断するなよ」 互いに頷きあって、ふたりは戦場で一時別れる。 「クリス、私たちはキメラの相手を」 「そうだね、アリシア」 アリシア・ムーンライトとクリストフ・フォンシラーは、互いの体に触れながら魔術真名を詠唱する。 『月と太陽の合わさる時に』 能力を解放したふたりは、キメラに向かって真っすぐに駈けだす。 「お前なんて恐ろしくも何ともない! 自分が強いと思うなら俺を倒してみろ!」 剣を手にしたクリストフが相手を挑発するように叫ぶと、キメラはその言葉の意を解したのか、牙を剥き出して彼の方へと襲いかかってきた――。 「セプティムさん、クリスさんが危険です。援護しましょう!」 ユウ・ブレイハートがキメラを睨みながら叫ぶと、 「そうですね、ユウさん」 セプティム・リライズは落ち着いて応え、剣を手に駈け出す。 「プロ―ジョン!」 ユウが魔力弾を生み出し、敵めがけて勢いよく撃ち出すと、なんと、キメラは驚異的な反射速度でその攻撃をギリギリで躱し、大きく翼をうって上空へと飛び上がった。 「疾いですね……」 セプティムが感心したように呟き、上空を舞うキメラを見上げると、 「狙いは完璧だったのに、まさか躱されるなんて……っ!」 背後から駈けてきたユウが口惜しそうにいう。 「やはり、あの翼をどうにかしないと、まともに攻撃を当てることもままならないね」 「この距離では残念ながら私のスキル『蠱霧散開』も効果がないですし」 クリストフとアリシアがそばにやってきて、ともに険しい視線を夜空に向ける。 キメラは、木々の梢をかすめるように飛翔しながら、地上にいる人間たちの隙を伺っている。 「地上に降りてきた時の、一瞬のチャンスを狙うしかないな」 シリウスが油断なくキメラの動きを追いながらいうと、 「俺がアイツを地面に叩き落とすっ!」 ジャックが叫んで傍を駈けてゆき、 「はあぁっ!」 半鬼特有の超人的脚力で上空へと跳躍した。 「天空天駆(スカイワード)……さすがです」 アリシアが呟きを洩らすと、それを聞いたローザは口元に誇らしげな笑みを浮かべた。 「キメラを倒すのも簡単ではないようですね」 シャルローザが木々の間を移動しながらいうと、ロメオは廃墟の前に立つ女に視線を向けつつ、 「こっちの相手も、きっと簡単じゃあないだろうけどな……」 少しうんざりしたようにいった。すると、 「だいじょうぶです! 私たちのやることは、あの女の人を倒すことじゃないですから」 二人の後をついていくララエルが、笑顔で明るい声を出す。 「そうだ。あの女の力は未知数。この人数でまともに相手をするのは、危険だ。あくまで、私たちは仲間が戦闘を終えるまで、あの女の動きを止めておくことに専念すべきだろう」 最後尾にいる愛華も、大きく頷きながらいう。 「その『止めておく』ってのが、はたして俺たちにできるかどうか……」 ロメオは、森を抜け廃墟の前まで辿り着くと、そこで足を止めた。 女との間には、軽く石を投げたら届くほどの距離しかない。 修道服姿の女は、眼前にたつ浄化師たちを見ても顔色ひとつ変えず、身構えることすらしない。 シャルローザは、全身を緊張させつつも殺気は発せず、一歩前に出て、 「私たちは見ての通り教団のエクソシストです。近隣の村から依頼を受けて、キメラの討伐にやってきました。……あのキメラを生成したのは、貴方ですね?」 穏やかな口調で訊いた。 「ええ、そうよ」 女は、金色の瞳にかすかに笑みを浮かべて頷く。 「キメラを生成することは教団によって禁じられている。貴殿もそれを知らぬわけではあるまい」 愛華が諭すようにいうと、女は小さく肩をすくめた。 「あなたたち教団の人間が勝手につくった法に、どうしてこの私が従わなくてはならないのでしょう?」 「それが、法というものだからです。この国で生きていく以上、あなたもこの国の法に従う義務があります」 シャルローザがいうと、女はふっとため息をついた。 「……やっぱり、あなたたち『羊』の話はつまらない……」 「なんだと……?」 女の人を食ったような態度に、愛華は表情を険しくする。 女がキメラの戦いぶりを気にしているような素振りをしているのに気づいたララエルは、一歩前に出て、 「ねえねえ、お姉ちゃん、遊んで遊んで~」 無邪気な少女のような笑みを浮かべていった。 「私と、遊びたいのですか?」 女は、視線をララエルに向け、笑みを浮かべる。 その時――、ロメオは、その女の瞳の中に危険なモノを感じ取った。 「……っ! 危ない、嬢ちゃんっ!」 咄嗟にララエルの腕をつかみを自身の方へ引き寄せる。 その直後――、 バシュ、バシュッ、バシュッ! たった今ララエルが立っていた場所から無数の太い木の根が飛び出してきて、ウネウネと蠢きはじめた。 おそらく、この木の根は、女が敵を追い払うためにあらかじめ仕掛けておいたトラップ。気づかずに不用意に女に近づいていたら、鞭のような一撃をまともに受けて、後方に思いきり弾き飛ばされていただろう。 「あ、ありがとうございます……」 「気にするな」 驚き、怯えた表情でいるララエルに、ロメオはやさしく微笑んでみせる。 女は、そんなふたりに、ほんの一瞬どこか「羨望」にも似た、熱っぽい視線を向けた。 「……私は、あなた方と戦うつもりはありません。ですが……戦うことが避けられないのなら、一切容赦はしませんよ」 不敵な表情でいう女を前にして、浄化師たちは怒りを覚えつつも、誰ひとり不用意に攻撃を仕掛けようとはしない。 女と、浄化師たちとの間に、重く、冷たい時間が流れる――。 (ララエルは、無事だろうか……?) 頭上をすばやく飛翔するキメラにブロンズボウの狙いを定めつつ、ラウルはパートナーのことを想う。 (ロメオさんと一緒とはいえ、やはり女の元へいかせるべきではなかったのでは? ……もし、ララエルが酷い目にあっていたら、その時は――あの女を絶対に赦さない!) ラウルの心中がにわかに殺意で満たされるが、すぐに女の捕縛が目的であることを思い出し、冷静さを取り戻す。 (そうだった……ともかく、はやくララエルの側にいくためにも、このキメラをさっさと始末しないと……!) 上空では、先ほどから天空天駆で空を舞うジャックが、キメラと激しい接近戦を繰り広げており、ロスは牽制の目的として信号拳銃を撃って彼を援護、ローザは『トリックショット』でキメラの回避力を下げる。 「こっちに来い!」 シリウスが、キメラの注意を惹くために信号拳銃を撃つと、挑発にのったキメラは、さっと翼を畳んで一気にシリウスのもとへと急降下してくる。 キメラが地上へ降りた瞬間を見計らい、シリウスとクリストフが同時に『魂洗い』を使用、キメラの翼に鋭い斬撃を加える。 さらに、 「蠱霧散開!」 アリシアが、スキルで毒の霧を発生させ、それをまともに吸いこんだキメラは、あきらかに動きを鈍らせる。 「今度こそっ!」 ユウが放った『プロ―ジョン』は、回避力の落ちたキメラの翼に直撃、そして、 「もう勝手はさせないよ」 ラウルの放った『チェインショット』がキメラの眼に見事命中する。 浄化師たちの集中攻撃に耐えかねたキメラは、たまらずふたたび空へと舞い上がるが、すでに本来のスピードは失われている。 リチェルカーレのマジックロッドと、シンティラの呪符による攻撃が同時に炸裂し、キメラの体が空中でぐらりと揺れた時、 「さっさと堕ちろっ!」 『クラッシュスイング』を使用したジャックが渾身の一撃をキメラに命中させる。 ザシュッ! ついに片翼を両断されたキメラは、飛翔能力を失い、真っ逆さまに地上へと落ちていった。 「よしっ!」 地上で構えていた浄化師たちが、一斉にキメラの落下地点へと駈けていく――。 「ぐ……う……」 地上に降り立った瞬間、ジャックは空中戦で蓄積していた疲労とダメージのために、思わずその場でガクッと膝をついた。 「ジャックさん……無茶をさせてしまいましたね……」 「よくやってくれました……本当に」 リチェルカーレとシンティラがそばに駈け寄って来て、すぐにスキル『天恩天賜』でジャックの怪我を治療しはじめる。 「今は、ゆっくり休んでください」 「あとは、みんながきっとやってくれます」 ジャックは疲れた笑みを浮かべて、無言で頷く。 「いきます!」 片翼をもがれたことで怒り狂うキメラが、自身の方へ向かってきたとき、セプティムが『エッジスラスト』を使用、瞬時に距離を詰めて、相手の心臓めがけて剣を突き刺す――。が、 「――ッ!?」 オオカミの脚で見事な横跳びをみせ、セプティムの攻撃による致命傷をギリギリで避けたキメラは、突如、キメラが彼に背を向けて、森の奥へと跳躍した。 「……っ! まずいっ!」 キメラが向かう先に、ジャックと、彼を治療するふたりの浄化師がいることに気づいたセプティムは、はじめて焦りの表情を浮かべる。 彼は慌ててキメラを追うが、オオカミの脚に敵うはずもない――。 キメラが、無防備な状態にある三人に迫ろうとした時――、 「はああぁぁっ!」 木の陰から飛び出してきた一人の剣士が、そんな三人を庇うように仁王立ちになり、キメラの突進を正面からガッチリと受け止めた。 みずから仲間を護る盾となることを選んだ剣士は、キメラの爪に左脚を大きく斬り裂かれて、苦悶の表情を浮かべる。 勇敢な男の後ろ姿を見たリチェルカーレは、思わず悲痛な声をあげた。 「シリウス……っ!」 深手を負ったシリウスは、それでもそこから一歩も退こうとはせず、単身キメラを抑え続ける。 苛立つキメラが、トドメとばかりに、前脚を振りあげた時――、 ダァンッッッ! 木々の間からライフルの発射音が響き、正確無比な射撃で胸を撃たれたキメラが後方に仰け反った。 シリウスの窮地を救ったのは――、太いカシの木を背に片手で狙撃銃を構えている響だ。 「よし……」 響はすまし顔で、ほっとしたように呟く。 ふらつきつつも、木々の間に逃げ込もうとするキメラの背に、 「プロージョン!」 ユウが放った魔力弾が、ふたたびまともに直撃した。さらに、 「さっさとお前を倒して、ララエルのもとへ行くんだっ!」 「ヘイリーがやられた借りは、キッチリ返させてもらう!」 ラウルはスキル『チェインショット』で、ローザは『トリックショット』で、ともにキメラの頭部に攻撃を集中させ、相手が逃げることを許さない。 深手を負わされ、怒りにかられたキメラは、逃げることをやめ、そばにいたアリシアにその牙を向ける。が、 「いかせるかっ!」 左脚を裂かれて動けないシリウスが、咄嗟に手にした剣をキメラめがけて投げつけた。 シリウスの剣は、見事にキメラの前脚に突き刺さり、相手をその場に釘付けにする。 さらに、 ドンッ……! 狼の姿に変身して駈けつけたロスが、キメラの胴体に強烈な体当たりを見舞った。ロスはさらに、そのままキメラの首に噛みつき、相手の身体の自由を奪う。 烈しい怒りと痛みのために恐ろしい絶叫をあげるキメラの前で、刹那、暗がりから飛び出してきた二人の剣士が交錯する――。 「アリシアを狙ったのが、君の間違いだよ……」 「これで、終わりです」 めずらしく殺意を漲らせたクリストフと、セプティムが、まったく同時に神速の剣を今度こそキメラの心臓に深々と突き刺した――。 決定的な一撃を受けたキメラは、ぶるっと一度大きく震えた後、ついに絶命し、ドサリとその場に倒れ伏す。 「やっと、終わったな……」 ローザが疲れた声でいった時、 「シリウス!」 リチェルカーレが、地面にうずくまるシリウスのもとへ駈けつけた。 「私たちのために……こんなにひどい怪我……シリウス、お願いだから無茶しないで……」 リチェルカーレは、辛そうに呟いたあと、すぐにシリウスの傷を治療しはじめるが、シリウスは緊張を解かず、廃墟の前にたつ女の方へ眼をやる。 「リチェ、俺のことはいい……それより、まだ戦いは終わってはいないぞ」 「わかっています」 キメラとの戦闘で傷ついた者の回復を終えた浄化師たちは、急いで女を抑えている仲間たちのもとへと向かう。 「私のキメラが、倒されてしまったようですね」 廃墟の前に佇む女は、ほとんど無表情のまま、そう呟いた。 「貴殿を守ってくれるペットはもういない。さあ、どうする?」 愛華が剣の柄に手を置いたまま、低い声でいう。 やがて、眼前に集結した十四人の浄化師たちを見つめて、女はふっと息を吐いた。 「あなた方は、たしかに強い。ですが、いま戦えば、状況はあきらかにあなた方に不利ですよ?」 「なんだと?」 ジャックが苛立たしそうにいうと、女はそんな彼をみて、余裕の笑みを浮かべる。 「あなた方の多くは、私のキメラとの戦いでかなり消耗している……。加えて、あなた方は、キメラとの戦いで、この私にみずからの手の内をほとんど見せてしまっている……。その一方で、この私はというと――、ね? おわかりでしょう?」 響は、冷静な表情を崩さぬまま、内心で歯噛みした。 (この人の言っていることは正しい。そして、この人が見せている余裕は、けしてハッタリじゃない……状況は、たしかにこちらが不利か……) 「君は、何故キメラをつくっている?」 クリストフが訊くと、女は、 「ただ、つくってみたい、と思ったから。そして、この私にはそれを実行できるだけの力があったから――ただ、それだけです」 あくまで穏やかに、あっさりと答えた。 「貴女は、何者? サクリファイス……それとも、終焉の夜明け団の人間なの?」 アリシアの言葉に、女は少し首を傾げてみせる。 「さあ、どうでしょう……? もし、仮に私がどこかの組織に属する人間だとして……それをここで正直に話すと思いますか?」 「なるほど……だが、貴方が何者であろうと、私たちはここで貴方を見逃すわけにはいかない。大人しく投降してはくれないか?」 静かに語りかけるローザを見つめて、女はかぶりを振った。 「それは、できません……。本意ではありませんが、あなた方と戦うことが避けられないのなら、全力でお相手いたします――」 直後、女の体内で魔力が膨れ上がるのを感じた浄化師たちは戦慄し、とっさに武器を構える。 「ララエル、僕の後ろに隠れるんだ!」 ラウルが緊迫した声でいうと、ララエルは、 「いやっ! 私が、ラウルを守るの!」 激しく首を振って、ラウルの隣に寄り添うように立つ。 「やるしかねぇか……」 ロメオがライフルの銃口を女に向けると、 「そのようです」 シャルローザも占星儀を手にして魔力を高める――。 「……っ! くるぞ!」 愛華が叫んだ直後――、低い声で何事かを呟いた女の周囲に、突然数十にも及ぶ大小さまざまな魔力の光弾が生み出され、それが一斉に浄化師たちに向けて放たれた。 浄化師たちの多くが女の攻撃をギリギリで躱すなか、シャルローザは『リバース・フォーチュン』で相手の攻撃を反射、無防備だった女にダメージを与えて、一矢報いる。 「く……っ」 苦痛に顔を歪める女をみて、 「全員集中しろ! 今度は、こちらの番だ!」 シリウスが前に飛び出すと、同じく近接武器を持つ浄化師たちもそれに続き、女の前で蠢く木の根に斬りかかる。 「大人しくしてもらいますよ……」 「やるしかねえか……」 響とロメオはそれぞれ呟くと、ライフルを構え、同時に女の脚を狙い撃つ。 しかし――、 「あれ……?」 女は、外見からは想像できない身軽さで、二人の攻撃を悉く躱してみせる。 「戦い慣れているな……手加減は無用ということか」 ローザが覚悟を決めると、ユウ、アリシア、シンティラとともに、女の急所を狙って一斉攻撃するが、女は、これを避けられないと判断すると、今度は手掌から小さな魔力壁を生み出し、浄化師たちの攻撃を悉く防いでみせた。 「くそっ……」 多くの浄化師たちが攻めあぐねる中――、戦場の中でひとりの少女が立ちあがり、女をキッ睨みつける。 「私にまかせてくださいっ!」 ララエルはそう叫ぶと、突如、女に向かって勢いよく駈け出す。 女を護る木の根が、ララエルに襲いかかろうとするが――、 「やらせないよっ!」 ラウルがすばやくボウガンを放ち、ララエルに迫る木の根を次々に撃ち落とす。 女を射程内に捉えたララエルは、自身が抱えた人形を操り、 「お仕置きですっ!」 スキル『絡縛糸』を使用、魔力の糸で瞬時に女を縛りつける。 「っ! しまっ――」 油断しており、完全に不意をつかれた女が慌てて糸を振りほどこうとするが、時すでに遅し――、 「終わりですっ!」 シンティラをはじめとして、遠距離攻撃の手段をもつ浄化師たちが一斉に攻撃を放つ。 もがきつつも不完全な状態の魔力壁を生み出して自身を護った女だったが、やはり攻撃の威力をすべて相殺することはできなかったらしく、強い衝撃を受けて後方の石壁に背中から激しく叩きつけられる。 「うっ…………」 ぐらり、と揺れて口の端から一筋の鮮血を流した女は、それでも余裕の笑みを消さずに浄化師たちの顔を見回した。 「あなた方は、本当に強いですね……。どうやら、少し甘く見ていたようです」 呟いた直後、女は浄化師たちにさっと背を向けた。 「ここは、退かせてもらいます。……あなた方とは、またどこかで会うかもしれませんね」 それだけいうと、突然女は手負いとは思えぬ素早い身のこなしで、あっという間に廃墟の中へと姿を消した。 「ま、待てっ!」 浄化師たちは慌てて後を追ったが、女はおそらく魔術か何かを使ったのだろう、廃墟の中をくまなく探してもその姿を見つけることはできなかった。 「逃げられた、か……」 最後に廃墟から出てきたロメオが残念そうに呟いて、ふと見ると、草むらの上で狼姿になったロスが、ラウルにモフモフされて極楽状態。 あまりにも能天気な光景に、数人の浄化師たちは少々あきれたように首をふるが、 「ま、キメラは倒したのだから、よしとしましょう。……はい、ご褒美のお菓子です」 響は、さっぱりといって、懐から取り出した菓子を皆に差し出す。 仲間たちはそれぞれ顔を見合わせつつ満更でもない笑みを見せ、その夜の壮絶かつ奇妙な死闘は幕を閉じたのだった――。
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*** 活躍者 *** |
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[39] ロス・レッグ 2018/06/22-23:59 | ||
[38] ローザ・スターリナ 2018/06/22-23:41 | ||
[37] クリストフ・フォンシラー 2018/06/22-23:37
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[36] リチェルカーレ・リモージュ 2018/06/22-23:34
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[35] シンティラ・ウェルシコロル 2018/06/22-23:07
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[34] ロス・レッグ 2018/06/22-22:40 | ||
[33] クリストフ・フォンシラー 2018/06/22-21:23 | ||
[32] リチェルカーレ・リモージュ 2018/06/22-20:51
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[31] ロス・レッグ 2018/06/22-20:47 | ||
[30] セプティム・リライズ 2018/06/22-09:34 | ||
[29] ローザ・スターリナ 2018/06/22-00:46 | ||
[28] シンティラ・ウェルシコロル 2018/06/21-23:31 | ||
[27] リチェルカーレ・リモージュ 2018/06/21-22:20 | ||
[26] ロス・レッグ 2018/06/21-21:48 | ||
[25] リチェルカーレ・リモージュ 2018/06/21-21:05 | ||
[24] シャルローザ・マリアージュ 2018/06/21-12:36 | ||
[23] クリストフ・フォンシラー 2018/06/21-01:07 | ||
[22] 響・神原 2018/06/21-00:51
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[21] リチェルカーレ・リモージュ 2018/06/21-00:12
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[20] ラウル・イースト 2018/06/20-22:11
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[19] シリウス・セイアッド 2018/06/20-21:57 | ||
[18] リチェルカーレ・リモージュ 2018/06/20-21:47
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[17] ラウル・イースト 2018/06/20-21:41
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[16] ロス・レッグ 2018/06/20-21:28
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[15] ロス・レッグ 2018/06/20-21:24 | ||
[14] リチェルカーレ・リモージュ 2018/06/20-20:28 | ||
[13] シリウス・セイアッド 2018/06/20-19:51
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[12] シャルローザ・マリアージュ 2018/06/20-19:15
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[11] ララエル・エリーゼ 2018/06/20-11:51 | ||
[10] ラウル・イースト 2018/06/20-11:38 | ||
[9] セプティム・リライズ 2018/06/20-09:16 | ||
[8] ローザ・スターリナ 2018/06/20-01:48 | ||
[7] リチェルカーレ・リモージュ 2018/06/19-22:34 | ||
[6] ロス・レッグ 2018/06/19-20:07 | ||
[5] ララエル・エリーゼ 2018/06/19-15:17
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[4] シャルローザ・マリアージュ 2018/06/19-13:43 | ||
[3] ラウル・イースト 2018/06/19-11:14 | ||
[2] ロス・レッグ 2018/06/19-05:12 |