~ プロローグ ~ |
「ふふっ。ねぇ知ってる?」 |
~ 解説 ~ |
過去に引き裂かれた種族を超えた愛の物語です。 |
~ ゲームマスターより ~ |
GM春川ミナです。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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セイレーンのお話は悲しいものが多いですが…ベーチェさんとアレンさんのお話も悲しいですね。でも悲しいだけで終わらせないように「哀の海を愛の海」にできるよう頑張ります。 といっても地道に探す以外の方法があるわけでもなく…スコップで少しずつ砂を拾ってみていきましょうか。 アレンさんにはベーチェさんのお話を聞いてみようと思います。 何かヒントになるようなことがあるかもしれませんし。 どこで出会ってどんな風に過ごしたのか…彼女がどんな歌を好んだか…。 アレンさんは吟遊詩人さんですし彼女を思って作った歌とかあったりするんでしょうか? …今回の事には役に立たない、ですよね。 でも、アレンさんの心に届くならって思って。 |
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■目的 セイレーンの涙の捜索。 ■行動 エミリア: 分担された担当区域を、スコップで数cm砂浜の表面を削りながら探す。 年月が経っているなら埋もれているかも知れないと考えた為。 最初はルカスにもやり方を教える。 時折、ルカスに水筒の水を飲ませて水分補給をさせる。ついでに自分も水分補給をする。 ルカスが海に近づいたら、波に浚われないように注意する。 ルカス: エミリアの近くで一緒に探す。 教えられたやり方で砂浜の表面を削る。 探し物の色が海みたいな透き通った青と改めて聞き、波打ち際に探しに行く。 海の中に沈んでるのかも知れないと思った。 エミリアはルカスが波打ち際までなら海に入るのを許可。 ルカスはエミリアが言うならと従う。 |
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◆方針 分担し、地道に探す 依頼者を欺く行為はしない 最優先は輝石の捜索だが、 依頼者とベーチェの再会の希望も捨てない ◆調査 聞き込み調査 依頼者に ・彼女が消えた大まかな地点 ・当時の状況 ・ベーチェの外見(絵画スキルで似顔絵を作成) 近隣住民、漁場関係者に ・セイレーンの涙の目撃情報、拾った者がいないか ・近海でのセイレーンの目撃情報 ・過去にセイレーン被害が出た地点 (ベーチェが現在も近海に居る可能性に賭け、似顔絵と照らし合わせて調査) 得た情報を加味し、少しずつ浜辺の捜索箇所を絞っていく ◆捜索 浅めの籠に砂を入れ、波打ち際で振るう 細かい砂を落とし、籠に残った鉱物を調べる 時間の許す限り諦めず捜索 結果はありのまま伝える |
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◆輝石の捜索 ・アレンさんを信じて真面目に皆と手分けして捜索。 ・唯月はアレンさんに輝石について詳しく聞き それを『メモ帳』と『ペン』を用いて絵に起こしてみる。 ・アレンさんに確認し近いものであれば仲間と共有。 ・瞬はスコップを持ってロスさん達のお手伝い。 唯「アレンさんのお話を聞く限りですと一度お見かけしているようですので もし覚えていましたら…わたし、絵に起こせたらって… アレンさんのお力に…なりたいんです…!」 瞬「いづの絵はじょーずだからきっと力になれると思うよー 勿論俺も気合い入れて探すからね!」 ・描いてみて改めて捜索に気合を入れる 唯「えっと…こんな感じでしょうか…? …とても…綺麗…だったんです、ね…」 |
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◆方針 砂浜でセイレーンの涙の捜索 皆と分担して一定の範囲を受け持つ 情報が入ったらそれを加味し準じた捜索を 依頼人には嘘をつかずありのままの調査結果を伝える ◆石捜索 主にロウハ シュリも手伝う 砂浜をスコップで削り砂の中から石を探すという体力に物を言わせた地道な捜索 ◆情報収集 主にシュリ 捜索の手掛かりとするためセイレーンの涙について情報収集 最寄りの漁港へ行き漁師たちに質問 ・この辺りの海にセイレーンがいるって本当?今も? ・昔セイレーンと恋仲だった男の人のこと知ってる? ・この海岸の名前の由来は? ・上記のことについて詳しい人は? 詳しい人がいたら尋ね同じように質問 有益な情報は戻って皆に伝える 緊急の場合は魔術回路使用 |
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◆目的 セイレーンの涙の捜索、発見 ◆心情 ・ローザ 吟遊詩人アレンとセイレーンのベーチェ…彼と彼女の真実の愛の結晶 必ず、見つけ出さねば ◆情報収集 近辺の地図と可能なら事件のあった時代の地図を入手したい(町役場等 見比べ、もし地形が変わってしまっていたりしたら探す場所も変わるかもしれない 知識はあまり無いが、海流の流れ等を知れたら漂着物等が多い場所も分からないだろうか 有用な情報を手に入れたら皆に共有 ◆捜索 皆と協力 二度手間にならない様に捜索場所を分担 砂地ではジャックがスコップで砂をすくい、ローザが砂をざる等を使いふるいに掛け輝石を探す(砂金取りの要領 岩場では見えにくい場所も注意して探す ぎりぎり迄諦めず探したい |
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■基本 ∇ロス 結構深く潜り込んじまったとか流れてったとか? とりあえず掘ってみっか! (アレンが倒れた場所を聞いてスコップで掘る 穴深く暗くて見えなくなれば狼姿の視力で確認 輝くモノを見つければ掘る 岩が邪魔すれば斧+魔術で破壊 バケツは砂落ち防ぎの水 ∇ティ 流されても波打ち際に上がってきますし そこを… えロスさん私も掘るんですか? (担当の波打ち際掘り後はスコップ引いて歩き光物探索 ロスに呼ばれれば手伝い ■聞く 話きいてみっとベーチェってワケ有りで船沈めてっし っつー事は同じ場所で何度も船沈めてんじゃ ここいらで船出航禁止令みてぇなトコねぇ? 多少なら船乗れっし 船あればティと一緒に見に行っけど なければ泳いでいってみっなー |
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*目的 輝石を見つける *行動 まずアレンさんにもう少し当時の状況を詳しく聞く 話の通りなら、輝石は彼の身体の近くに落ちたはず。それをなくすというのは個人的にあまりに不自然です。それが、恋人を失った直後だとしてもです 故に、彼が輝石をなくすまでの状況を知る事ができれば探索する場所を絞れるはずです 話に従って、状況に合致するエリアを捜索 地道にやらねばならない事ですが、少し効率よく動く必要がありますね なので、ユウさんに威力を調整した【エアーズ】を浜辺に放ってもらい邪魔な砂を可能な限り除去。輝石を発見しやすくしてもらいます 話が本当なら輝石は何があっても壊れないようですし、多少無理をしてもいいでしょう |
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~ リザルトノベル ~ |
「……この老人の話を聞きたいのか」 酒場で竪琴を奏でていた吟遊詩人はゆっくりと顔をあげるとエクソシスト達を見回した。 「ええ、ベーチェさんのお話を聞かせてはもらえませんか? 何処で出会ったとか、どんな歌が好きだったかとか」 「シャルルも歌が得意です。彼女が海に向かって歌う事でセイレーンに届くかも知れませんからね」 シャルル・アンデルセンとノグリエ・オルトが依頼者のアレンに問う。荷物の中にはスコップの柄が覗いており、浜辺を掘る用意も万端のようだ。 「僕は……ベーチェさんの容姿をお聞きしたいです。目を描くのはちょっと怖いけれど……」 「姉さんは絵がとても上手いんです。なので僕達はそれを元に他の方々に聞いてみようかと。それからあまり話したくはないかも知れませんが当時の状況を」 リュネット・アベールとリュシアン・アベールはどうやらベーチェの似顔絵を描いて周辺住民に聞き込みをする様子だ。 「僕も当時の状況を聞きたいです。できるだけ詳しく教えて下さい」 「場所が分かれば私の魔術で、ある程度の砂を除去する事ができると思います。お任せ下さい」 セプティム・リライズとユウ・ブレイハートは輝石の捜索に魔術を使うようだ。 「わ、私も絵が得意なので……セイレーンの涙についてお聞きしたいです……」 杜郷・唯月がメモ帳とペンを手に持ち尋ねるが、いつも隣に居るパートナーの姿は無い。どうやら今回は別行動のようだ。 7人の瞳がアレンをじっと見つめて言葉を待っている。 ゆるゆるとした動作で彼は竪琴を置くと話し始めた。 「そうさな、まずは……ベーチェの容姿からじゃな。昼の海の様にエメラルドグリーンの色をした長い髪で風に吹かれると波打つ様になびく姿が印象的じゃった。白いワンピースより尚白い、真珠と見紛う様な白さの肌じゃったな。瞳は青く、凪いだ朝の海を彷彿とさせる色じゃ」 アレンはコップの水を一口飲み、唇を湿らせると続けた。 「出会ったのは……岩場で歌が聞こえて、それに惹かれたんじゃ。子守唄だと言っておったな。周りにはつがいの鳥が集まって、とても幻想的な雰囲気じゃったよ」 「子守唄……ですか。ありがとうございます。海を題材にした物はいくつかありますので、試してみようと思います」 シャルルは顎に指を当て、少し考える仕草をしながら答えた。 「セイレーンの涙についてじゃが、大体儂の親指の先くらいの大きさで青く透き通っていて涙の形をしておる。吟遊詩人に伝わっている話としては、血がついた手で持つと泡となって零れ落ちるそうじゃ。後は……昔話じゃが原初のセイレーンがつがいの鳥達に歌を教えてもらった事に恩を感じて卵のお守りとして渡していたそうじゃの」 「こ、こうでしょうか……」 唯月がアレンに泪型のつるりとした青い宝石を描いたメモ帳を見せると、彼はゆっくりと頷いた。 「僕も描けました。ベーチェさんはこんな感じでしょうか?」 リュネットも手持ちのメモ帳に描いた女性の顔をアレンに見せる。目を描くのが怖いと、人物画は苦手だった彼女だが、依頼人の力になりたいと思う気持ちが勝った様子だ。 「おお……! 確かにベーチェ……グッ……!」 いきなり慟哭するアレンにギョッとするエクソシスト達。 「アレンさん、どうされましたか」 セプティムがアレンの肩にそっと手を置き、まるであやす様に言葉をかける。しかし、誰にも気付かれていないが彼の目は笑っておらず、老人の言葉を続けさせる為だった。 「……ベーチェは死んだ。儂の目の前でな。あの時、体が動けば……! 歪んだ視界の中で儂を庇う様に立ったベーチェの胸に誰かが放った銛が刺さるのが最後に見た姿じゃった。頭に受けた石のせいで気を失ったが、意識が戻った時、血に塗れた砂で悟ったんじゃ……」 その言葉に全員が絶句する。が、アレンは老人には似つかわしくない鋭い目つきで顔を上げた。 「……それでも儂はこの地を離れる事はできなんだ。祖父の遺言でな」 「な、何故かをお聞きしても……?」 唯月がハンカチをアレンに差し出しながら尋ねた。 「儂の家系はこの海岸を守る為の役目を負っているんじゃ。……何かあった時にその命で鎮める為にな。さ、昔話は終わりじゃ」 アレンは差し出されたハンカチを丁重に断り、再び竪琴を手に持つと奏で始めた。エクソシスト達はそれが会話の終わりだと判断して酒場から引き上げた。 *** 「一応過去の地図と現在の地形地図を役場で貰ってきたが、ヘイリーはどう思う?」 「まったく変わってねぇな。こりゃ虱潰しに探す感じだな、やれやれ」 ローザ・スターリナがジャック・ヘイリーに地図を見せる。 ジャックは大げさに肩をすくめるとこれまた大きな溜息を吐いた。 「あはは、まぁまぁ。とりあえず探す場所を分担して決めない?」 毒気を抜かれる様な明るい声を発したのは泉世・瞬。 パートナーの唯月とは別行動中だ。 「おーう、さんせーい! んじゃ俺は早速波打ち際から掘ってみるぜ」 「ちょっ!? ロスさん! 砂! 砂撒き散らさないで! スコップ使って!」 トランスをして狼の姿になったロス・レッグがいきなり砂を掘り始めると、パートナーのシンティラ・ウェルシコロルが慌てた声を出して止めた。見るとすでに人が腰まで埋まるくらいの穴が砂浜に空いている。 「おおかみさん、すごいね。ぼく、あっち。うみのなか、あおいろきらきら」 「待て、ルキ何処へ行く。危ねぇだろうが。あれは太陽の光を海が反射してるだけだ。ってこれは? ……チッ! ガラス玉かよ」 子供っぽい喋り方をし、海の中に入ろうとするルカス・アプフェルの首根っこを掴んで止めたエミリア・リンクだったが、足元にキラリと光る物を見つけて拾い上げた所で気付き、放り投げて悪態をついた。 「俺はこっちを探してみっか。お嬢は周辺の漁師に聞き込みでもしてもらえるか? 陽も高いし危なくはねーだろ」 「ええ、何か分かったら皆に情報を共有するわね。ロウハも無理はしないで」 スコップを持ち、腰を屈めて砂浜を掘り始めるロウハ・カデッサにシュリ・スチュアートはパートナーを気遣う言葉をかけると漁師達が住む集落に向かって行こうとするが、それを呼び止める声があがった。 「待ってくれ、お嬢さん。貴方の様な美しい女性を一人で行かせるのは私の矜持に反する。せめて私が貴方を護る楯になろう」 「え、えっと……わたし? ローザ、さん?」 まるで物語の王子様のような台詞をローザからかけられ、シュリは困惑している。その隙に目の前の男装の麗人はスッと腰を落とすとシュリの手を取り、唇を落とした。 「オイ待てやコラ、お嬢に何してんだ」 シュリのパートナーであるロウハが、その行為を見て腰を上げ詰め寄ろうとしたが、スコーンと小気味良い音が響いてその足を止めた。 「この阿呆ガキ! 何やってんだ!」 「あいたたたたた……」 先ほどの音はジャックがローザの後頭部をはたいた音だった。はたかれた本人は手で頭を抑えながら涙目でしゃがみこむが、すぐに復活し、ジャックをキッと睨む。 「いったいな! このチビおっさん!」 「うるせぇ、真面目にやれ。依頼人の事を考えろ」 ジャックが静かに叱ると不満気にしていたローザだったが、その言葉に態度を改めた。 「すまない。だが護衛をしたいと言ったのは本当だ」 そう言うと姿勢を正し、真剣な瞳でロウハとシュリを見る。 「フン……。どうやらただ軽薄な奴って訳じゃ無さそうだな。お嬢、聞き込みは大事な役目だからな。しっかりやれよ」 ロウハはシュリの背中をトンと軽く押す。どうやら護衛を任せても大丈夫だと判断したようだ。 「えっと……じゃあローザさん、よろしくお願いします」 「ああ、しかと任された。過去の地図があるんだが、もしかしたら潮の流れが過去と今では変わっているかも知れないね。私はどうしても冷たい印象を相手に与えてしまうから聞き込みは貴方のサポートに回ろう」 シュリとローザも連れ立って聞き込みに向かった。 「や~、良かった。皆仲良くが一番だからね。じゃあ頑張って探そう~。……けれど、もし誰かがいづに手を出そうとしたら……やっぱり誰からも見えない所にいづを……」 ニコニコと皆を纏める瞬だったが、笑顔の奥、暗い瞳でポツリと呟くようにつけくわえた言葉は波音に消され、誰の耳に届く事も無かった。それはセイレーンの悪戯だったのかもしれない。 「えっと、ロスさんはもし私が危ない目に遭ったらどうします?」 「んあ? 勿論助けに行くぜー。家族だからな。……それに俺はティの作る料理が好きだしな」 照れ隠しなのかそっぽを向いたロスにシンティラが顔を綻ばせる。やはり料理の腕を褒められるのは嬉しいらしい。特に相手がロスの場合は。 「えみりあ、こう~?」 「ああ、そうだ。ルキ、掘るの上手いぞ。それと暑いから水をこまめに飲め」 「ん、わかった~」 喧騒から離れ、波打ち際を掘っていたルカスはエミリアから水筒を受け取ると、コクコクと可愛らしく喉を鳴らして飲み、彼女に返す。 エミリアは黙ってそれを自分の口に持っていき、一口飲んだ。 「ふぅ。えみりあはみつかったらうれしい?」 ルカスは金色の瞳でエミリアをじっと見つめて言った。 「依頼達成になるから、そりゃあな」 金色の瞳が空に浮かぶ太陽の様に眩しくてエミリアはルカスから視線を外すとぶっきらぼうに答えた。その様子に可愛らしく首をこてんと倒して、しばし考える素振りを見せたルカスだったが、やがて足元を掘り出した。が、何か見つけたようだ。 「やどかり。……つかまえた。あれ、えみりあ? あおいいし、みつけた~」 「ホントか!? やったな! お手柄だ、ルキ! って、こりゃあ……」 エミリアはルカスから青い石を受け取るが、どうやら目的の物では無かった様だ。少しだけ落胆するが、ルカスにそれを悟られまいと明るい声を出す。 「ルキ、こりゃガラスだ。さっきアタシが投げたヤツをヤドカリが拾ったんだな。ルキ、お守りにでもするか?」 角が取れて丸くなった所謂ビーチグラスと呼ばれるガラスの玉をルカスに返す。 「ううん、あれんにわたす。だって、あおくてきれいだから」 「そっか、解った。今度は本物が見つかると良いな。……待てよ? ひょっとして貝や生き物の中にある可能性もあるのか」 何かに気付いたエミリアだったが、確証は無い。他のメンバーが帰って来て相談する時にでも言えば良いと思い、ルカスの隣で砂を掘りはじめた。 *** 「見つからないね~。ロス、そっちはどう?」 「こっちも駄目だ。ボートかなんかありゃ少し遠くまで探せるんだっけどな。……ん? あれは」 砂を掘っていた瞬は腰を手で叩きながら尋ねるが、ロスも成果は無いようだ。しかし遠くから歩いてくるエクソシスト達の一団に気付く。どうやら聞き込みに行ったグループが帰ってきたようだ。 「一旦作戦会議も兼ねて、休憩にしませんか? 瞬さんもお辛そうですし」 シンティラが伸びをしている瞬に声をかける。 「さんせ~。じゃあ皆を集めるよ。お~い、みんな~!」 瞬が手を振り、浜辺に居た全員を集める。 聞き込みに行ったグループも合流して一旦木陰に避難する事になった。 「僕達が得た情報はアレンさんとベーチェさんが出会った時の状況と顔立ち、セイレーンの涙についてです。絵に起こしてあるので見て下さい。それと途中でシュリさんとローザさんに会ったので合流して一緒に聞き込みをしました。いくつか興味深い話を聞く事ができましたよ」 リュシアンが皆にリュネットと唯月が描いた絵を見せる。 「綺麗……」 シンティラが呟く。輝石か、ベーチェの似顔絵を見てかは分からない。もしかすると両方かもしれないが。 「僕はユウさんにエアーズの魔術で砂を吹き飛ばしてもらおうと思っています」 「……ちょっと待ってくれませんか? ボクはそれには反対です」 セプティムが案を出すが、それに異を唱えたのはノグリエだ。 「何故ですか? 効率良く探す為には良い案だと思ったのですが」 自分の意見を否定され、セプティムがノグリエに笑顔のまま食ってかかる。 「アレンさんが言っていましたが、輝石は血のついた手で触ると泡になって消えてしまうそうです。……つまり攻撃に属する魔術や武器などを使って探した場合見つからない可能性があるのではないかと」 ノグリエが持論を展開するが、それを聞いたロスの耳が元気無くへたれている。 「……ロス、良かったね。キミ、岩を斧や魔術で砕いて探すとか言ってなかったかい?」 「あ、ああ。する前で良かった。ほんっとに」 瞬とロスがボソボソと話しているのを横目に、シュリが声をあげた。 「地道に探すしかありませんね。それはそうとわたし達は興味深い話を耳にしました」 「どんな話だ? お嬢」 ロウハが問いかけると、シュリは頷いて話し始めた。 「ここはベレニーチェ海岸という名前なのは皆さん知ってのとおりだと思いますが、アレンさんの曽祖父にあたる方。かなりの富豪だった様ですが……その方の恋人がベレニーチェという名前だそうです」 「アレンは言っていた。この海岸を守護する立場にある家系だと。有事の際にはその命でこの海を鎮めるのだと。つまり……ベーチェは……ッ!」 シュリの言葉を引き継いで語るローザだったが、拳を硬く握り締め、強く噛んだ歯の間から漏れる声音は震えていた。 「お、おい!? スターリナ!?」 パートナーの滅多に見られない姿に動揺したジャックだったが、何かを察したらしい。ローザの背に軽く手を当てると、二人で皆から少し離れた。 「……ベーチェさんは恐らくベレニーチェさんと繋がりがあるセイレーンなのでしょう。漁師の方達に話を聞きましたが、何隻も船を沈めた事で相当な恨みを買っていたようです。それからベレニーチェさんについてですが、セイレーンの涙を目的とした冒険者紛いの夜盗に殺されたと聞いています……」 シャルルが目の端に涙を溜めながら一息で言い切った所で誰もが黙った。誰かの嗚咽を波の音が無慈悲に押し流す。 「ベーチェが船を沈めていたのは……かたき討ち、か……」 ロウハがポツリと呟く。 シャルルはそれに声も出さず下を向きながら頷いた。いや、頷くことしか出来なかったのかもしれない。声を出せばその心も、涙も全てが零れだしていたのだから。 「で、でもベーチェさんは何処かで生きているんでしょう? 幾ら、船を沈めたとは言え……」 シンティラが口を開いて途中まで言いかけた所で止める。その先を聞いてしまって本当に良いのかという考えが、希望と言う名の可能性が黒くドロリとした何かに変わる事に恐怖を感じたのだ。 「ベ……ベーチェさんはッ……。も、もう……っ! うっ、うあああっ……!」 唯月がその質問に答えようとしたが堪え切れず、顔を両手で覆う。その指の間からは海の泡に似た透明な涙がはらはらと落ち、それはすぐに砂に染み込んで、消えた。 「いづ、大丈夫~? いづを悲しませるなんて悪い人達だよね~」 泣きじゃくる唯月を瞬が胸に抱きしめるが、妙に力がこもっている事に違和感を覚えた彼女が身じろぎをする。しかし、全く力が緩められない。 「……オレがいづを悲しませる奴等なんてぜ~んぶ……」 「!? 瞬さんッ!」 微笑みを浮かべた瞬が優しくあやす様に唯月に語りかける。が、その瞳の奥に狂気の光を感じて唯月が叫んだ。 「ん、ああ……。ぼーっとしてた。ゴメンゴメン」 何事も無かったように笑い、頬を掻く瞬。その様子にホッとしたのか力が抜けてしまい、唯月は膝から崩れ落ちた。 「……ロスさん。そこの木の下に毛布を敷いたので唯月さんを休ませてあげて下さい。私が見ていますので。瞬さんも良いですね?」 「おーう。瞬も少し頭冷やせ」 「……ごめん、ロス、シンティラ」 シンティラが指示を出すと、瞬は少しだけ目を伏せて、唯月から離れた。ロスは肩を貸して唯月を起こすとシンティラの元まで戻る。地面に敷いた毛布の上に彼女をそっと横たえると、目と額を覆うように手を当てた。比較的彼女達と仲の良い自分が付いている事で、安心させる意味もある。 「しかし参りましたね。シャルルに海に向けて歌って貰うことでセイレーンに届くかもしれないと思っていたんですよ」 「やっぱり虱潰しに探すしかないですね。僕も海に呼びかけてみようと思っていましたが」 ノグリエの声にリュシアンが反応する。 「ま、手分けして探すしかないだろう。アタシらも勝手にやらせて貰うよ」 エミリアがこれ以上の話は無意味だと言うかの様に、皆に背を向ける。 しかし、それを引き止める存在があった。 「えみりあ~、かに。えみりあのおめめといっしょ」 ルカスだ。邪気も悪意も無い顔で小さな赤いカニを持っている。 「プッ……ハッハッハ! そうか、アタシの目と同じ色か。でもかわいそうだから放してやろうな。……ああ、言い忘れていた。もしかしたら生き物の中にあるんじゃねーかと思ってんだ。貝やヤドカリや鳥なんかのな」 エミリアに言われ、ルカスがカニを地面にそっと下ろすと、カニは横歩きをしながら逃げて行った。 「ふむ、生き物の中ですか。……ただ、捕まえて捌くのは現実的じゃありませんよね」 「ねぇ、セプティムさん。私、考えて居たんですが、逆に砂浜だから見つからないって可能性もあるんじゃないかと。例えばアレとか」 セプティムが呟くとユウがそれに反応して、ある方向を指差す。 「幸福の鐘、ですか。行ってみる価値はありそうですね。僕達は別行動をしても?」 そのまま皆に許可を求めるセプティム。それに答えたのはロウハだ。 「かまわねーよ。砂浜は十分人手が足りてる。埋まっててもそこのライカンの兄さんに掘ってもらえば早ぇだろう」 「うげぇ、俺かよぉ……。腹減った……」 「後でたらふく奢ってやんよ。確か、ロブスターのギョルマニーって料理が滅茶苦茶美味いらしいぜ?」 「まじで!? よっしゃ! んじゃさっさと見つけて飯行くぞ飯!」 ロウハが名指しでロスを指定すると、おどけた調子で返す様子に少しだけ場が和んだ。 *** 「さて、幸福の鐘に着きましたが、何か策でもあるんですか?」 セプティムがユウに尋ねる。 「い、いえ。ただ、ここにあればロマンチックだなって」 「ハァ……。そんな事だと思いました。ですが、依頼主も言っていましたね」 「へ? 何がですか?」 「セイレーンは鳥に何かしらの関連性があると。もしかしたら、あの中にあるかもしれませんね。さ、手伝いますので頑張って下さい」 ニコリと微笑んだセプティムがスッと人差し指で幸福の鐘の上を指す。そこには小さな鳥の巣があった。 「ええええーーーー!?」 ……幸福の鐘がある丘に女性の悲痛な悲鳴が響いたと自警団に報告があがったのはまた次の機会に語ろう。 *** 「アレンさん、こちらでよろしいでしょうか」 セプティムがポケットから青い石を取り出し、アレンが居るテーブルの上に置く。ここは夜の酒場。二階にある一室をアレンとエクソシスト達が借り切っている。 彼の後ろには傷だらけのユウが居る。命に別状は無いが、鳥の巣に近づいた為に親鳥から攻撃を受けたのだ。それでも一切の反撃をしなかったのは彼女の優しさ故か。 「おお……! おお……! これは……! 確かに、セイレーンの涙!」 アレンが感極まったように涙を流す。 「綺麗……」 「ええ、ここまでの宝石は見た事がありません。青い中にも深い哀しみを湛えるほどの藍。まさか昼と夜とでは全く輝きが違うとは」 シュリが感嘆の溜息を漏らし、ノグリエが感想を述べる。 「……ベーチェ、儂の愛もお前の愛も、嘘偽りなど無かったのじゃな。愛している、ベーチェ……」 アレンの涙が輝石に落ちる。と、その時、淡い光が部屋を満たした。 「な、なんだ!?」 慌てるエクソシスト達だったが、光が収まるとそこには長いエメラルドグリーンの髪を持つ美しいセイレーンが居た。 『アレン、久しぶりね』 「ベ、ベーチェか!? 何故……」 鈴の鳴るような、それでいて潮騒の音のような不思議な声が響く。アレンは目の前の状況が信じられないとでもいう風にあっけにとられていた。 『セイレーンの涙に愛を囁いて、そして哀を刻んだでしょう。その石はセイレーンの声、つまり一生分の魔力と引き換えにした物よ。実体は無いけれどね。この説明でどういう事かは理解できるかしら』 ベーチェは静かに微笑んだ。つまり魔力の残滓が一時的に魂を可視化させているのだろうとエクソシスト達は結論付けた。 『また逢えて嬉しかったわ、アレン。でも、もうすぐ私は海に還らなければいけないの。それから直ぐに町の人達を避難させて。ここにはもうすぐ大津波が来るわ』 「……やはりか。ここ最近海が妙に凪いでおると思っておった。じゃが……その為に儂が居る。ベーチェ、共に逝こう」 アレンは杖を持つとゆっくりと立ち上がる。 「アレンさん!? 何処に!?」 シャルルが声をあげるが、猛禽の目をした老人は真っ直ぐにエクソシスト達を見回した。 「お前さん達に会えて良かった。言ったじゃろう、儂はこの海を護る為に居るんじゃ。報酬は甥を通じて教団に支払ってある。最後に……ベーチェに逢わせてくれてありがとう。……魂はベーチェとあの海へ還るだけじゃ」 『ありがとう。貴方達みたいな人が沢山居たら、この海、いいえ。世界はきっと哀では無く愛が溢れるのでしょうね。セイレーンの歌を教えてあげたかったのだけれど、もう現界する魔力も時間も無いわ』 そう言うとベーチェの体は薄くなり、やがて見えなくなった。儚げな、見る者の胸を締め付ける様な笑顔を残して。 「ではな。お主等の航海に幸多からん事を。後悔の波に飲まれる事無く進め」 アレンはゆっくりと言い残すと部屋から出て行った。 その日の夜、ベレニーチェ海岸は青い光に包まれた。原因は夜光虫の大量発生とされ、老人が一人、行方不明になった事のみが伝えられた。 真実はエクソシストの心と二人の愛の言葉を繰り返す潮騒に刻まれるのみ……。 そして誰が何時、何の為にかは解らないが海岸の隅に石碑が建てられている。 『哀を埋める為に愛は生まれ……(この先はかすれて読めない)』
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*** 活躍者 *** |
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[14] シャルル・アンデルセン 2018/07/02-18:02
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[13] 杜郷・唯月 2018/07/02-07:58 | ||
[12] シュリ・スチュアート 2018/07/02-05:05 | ||
[11] エミリア・リンク 2018/06/30-20:42
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[10] セプティム・リライズ 2018/06/30-19:05 | ||
[9] シンティラ・ウェルシコロル 2018/06/30-17:48 | ||
[8] シュリ・スチュアート 2018/06/30-09:24 | ||
[7] シンティラ・ウェルシコロル 2018/06/30-03:40 | ||
[6] ローザ・スターリナ 2018/06/30-01:52
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[5] 杜郷・唯月 2018/06/28-21:51
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[4] シャルル・アンデルセン 2018/06/28-18:42
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[3] リュシアン・アベール 2018/06/28-18:12 | ||
[2] エミリア・リンク 2018/06/28-17:12
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