~ プロローグ ~ |
七夕。 |
~ 解説 ~ |
ヴァン・ブリーズ有数のデートスポット、シェネフラウ灯台の警備という名目のデートです。 |
~ ゲームマスターより ~ |
はじめまして、あるいはお久しぶりです。あいきとうかと申します。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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PC口調です 静か。 世界がここだけみたい。 海岸歩こう。(頷き) 夫婦が作った星。素敵 夫婦は、死後に会えたのかな ん、そうだと、いいな。 ん?(手を見比べ、少々考える) (たぶん、きっとこれ?)(と考えてイダの伸ばされた手に手を重ねる) (大きい手…あったかい) 「ねぇイダ。あたしとイダは今、どういう関係?」 なんとなく気になって聞いて見る 妹、とは聞きたくないけど 「!……うん、ありがと」 「相棒、相棒。意識してなくて名乗ってたけど、イダとあたしはそれが一番似合うかも」 ぐりぐりされて嬉しい 相棒という言葉は、あたしとイダにとって特別な言葉 星空も綺麗で、きっとたぶん、空で会ってるんだろうなって思うと嬉しい |
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一緒に海辺を散歩しながら星空を眺めて なんだか夜空と星に包まれてるようで、いつもよりすんなり言葉が出てきます… 七夕の風習は聞いたことがあります… 亡くなっても会いたい程の思い、って…素敵、ですよね… 夫婦じゃなくても、それ程思う相手がいると言うのは、幸せだなって… クリスには言ってませんでした…? 私、10歳以前の記憶がないんです… 気がついたらもう教団にいて… だから、私、大事な人がいたのかどうかも…分からないんです… 私に感情がないから…捨てられてしまったのかも、しれません、ね… え それは…パートナーだから、ですよね…? ありがとう…元気づけてくれてるんですね そうですね 今は大切な友人が何人かできましたし ふふっ |
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◆目的 お仕事もしながら、パンプティさんと海岸でお喋り ◆行動 仕事前に用意したいものが…星のお菓子も買っておきます その時に星がよく見える場所をリサーチしておく ◆会話 見回りは海岸を2人で散策 パ】キョロキョロしすぎだろ相棒(笑 リ】いえ、モンスター出たら、嫌だなと パ】まぁな。でもこれだけ穏やかなら大丈夫だろうさ リ】えぇ、だといいなぁ。…あの、パンプティさん。折角ですから、あちらにも行ってみませんか?星がよく、見えるそうですよ パ】お?いいねぇ。デートのお誘い? リ】デ…?! パ】…あっはっは、そんなに顔赤くすんなよ。冗談だって。さ、行こうぜ リ(なんて返せばよかったのでしょう…) パ(違ったのか…恥ずいぞアタシ) |
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◆シュリ 海沿いの、星が一番綺麗な場所へ 時間を忘れて見入ってしまう ズラミスとサラミの伝説…死んだ後でも星になって会えるって、素敵よね …わたしとロウハも、死んだら星になるのかしら その時は、わたしが天の川を作って会いに行くわ ロウハと離れ離れなんて…考えたくない …ふふ ありがとう…やっぱりロウハの手は、元気をくれるね ◆ロウハ 警備といっても、人も少ないし平和なもんだな お嬢の行きたい場所へ行く ああ、天の川の伝説か…お嬢はそういうの好きだもんな さあなー、お嬢は星になるかもしれねーが、俺は… どうした、ずいぶん弱気だな 死んだらなんて、まだまだ先の話だろ お嬢はそんなこと考えなくていいんだよ(シュリの頭を軽く撫でる) |
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七夕か~ニホンの七夕は知ってるけどこちらではこんな感じのイベントになってるんだね。 今日は警備の任務だけど…こんな星の綺麗な夜を満喫しないわけにはいかないよね! ふふ、いわゆるデートってやつだね♪ わぁ、星を模した砂糖菓子かぁ。見た目にも可愛らしいし砂糖菓子ってことは甘いんだよね! ねぇ、綾ちゃん買ってもいい? ありがとう!半分こしようね。 それじゃあ、これを食べながらどこかで星でも見ようか。 うん、星空を見ながら星を模した砂糖菓子を食べる。 なんだかとってもロマンチックな感じだね。 天の川もとっても綺麗だ…。 ズラミスとサラミの話は聞いたかい?素敵なお話だよね。 俺達も負けないくらい仲睦ましく過ごせたらいいねぇ? |
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◆灯台の周りを警備しつつ故郷を懐かしむ ・ニホンは二人の故郷、七夕も懐かしい。 唯「七夕…ですか、懐かしいですね…!」 瞬「あれ、いづもニホン生まれだったの?」 唯「え、あ、はい…瞬さんもでし、た?」 瞬「そーだよー。 まぁこの名前もアークソサエティでは珍しい方だしねー」 唯「それもそうでした…でもこんな偶然ってあるんですね」 瞬「そうだねー!ここにはいろんな地方から いろんな人が来てるだろーし、なんだか嬉しいなぁ」 ◆天の川を見る ・ズラミスとサラミを思い 唯「今年はお二人、会えたでしょうか…」 瞬「きっと会えてるよ、星がいつもよりキラキラに見える!」 唯「ふふ、そうですね…!」 (わたしも瞬さんと二人のように…なんて) |
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警備のお仕事だと思っていたけれど… 平和でなによりって所かしら? お仕事と聞いて微妙そうな顔をしていたセシルくんも 少し羽根を伸ばしても大丈夫そうってなれば元気になるかしら? …そうでもなさそうね、眠そうだわ じゃあ眠気覚ましにどこかへ行ってみる? あまり灯台から離れてはまずいでしょうから 屋台に行ってみるとか、海岸を散歩とかになると思うけど 屋台では確か砂糖菓子とかがあるんじゃなかったかしら あら、いい喰いつき。甘いもの好き? 美味しいわね …私も分も少し食べる? いいのよ、幸せは分かち合うものだわ 私もそれなりにいい事があるのよ? お菓子を食べているセシルくん、とても可愛い顔をしているの 私その顔を見るの、結構好きだわ |
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【目的】 警備…と言いつつ、雰囲気を楽しむ。 ●千亞心境 今日は警備だから浮かれないように…とは思いつつも、 この満天の星空は綺麗で、なんだか吸い込まれそうな美しさを感じるよね。 せっかくだからこの季節のお菓子を食べてみたいな ●明智心境 …ふ、ふふ。千亞さんとロマンティックなデート…! 幸せです、ふふ…! ●会話 珠樹「千亞さんご覧ください、満天の星空…! あれは天の川というのですね、あぁ、あの川を裸で泳ぎたい、 バタフライしたいです、ふふ…!」 千亞「警備中だぞ、静かにしろこのド変態」 珠樹「ご安心ください、星々も綺麗ですが千亞さんの瞳の輝きに叶いません…!」 千亞「そーゆーのいいから!(赤面しながら蹴りつけ)」 |
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~ リザルトノベル ~ |
●アラシャ・スタールードとイダ・グッドバーの星夜 海岸は人の気配がほとんどなく、静かだった。波の音が規則正しく響き、シェネフラウ灯台が海に向かって明るい光を投げている。 神秘的だと、『イダ・グッドバー』は潮の匂いがする空気を吸いながら思った。隣に立つ『アラシャ・スタールード』は、世界がここだけになったような気持ちで、パートナーを見上げる。 「歩くか」 イダの提案に、アラシャはそっと頷いた。 夜空に瞬くのは乳白色の天の川だ。そのむかし、深く愛しあった夫婦が死後、異なる場所で星になったことを悲しみ、再び会うために星屑を集めて架けた橋だといわれている。 「夫婦は死後に、会えたのかな」 ゆっくりと歩きながら、アラシャはぽつりと呟く。素敵な伝承を持つ星々の明かりが、波頭を白く染めていた。 「そこまでは分からんなぁ」 東方の人間はロマンチックなことを考えるものだ、と感心じみた漠然とした感情を抱いていたイダは、けど、とつけ加える。 「こうして星の川が流れてるんだから、きっと会ってるんじゃないか?」 夫婦にとって橋である星屑は、人々にとっては川だという不可思議。だが、どちらにしても今夜は雲ひとつないのだから、夫婦はきっとつつがなく逢瀬を楽しんでいるのだろう。 そう考えるとアラシャは嬉しくなって、頬を緩めた。 「暗いな。アラシャ、ほら」 「ん?」 灯台からは少し離れ、明かりは星の瞬きだけになっている。それでも、差し出された手と、イダの左右で色の違う目はしっかりと見えた。 (たぶん、きっとこれ?) 軽く思案した末に、アラシャはイダの手に自分の手を重ね、握る。イダは相棒の手を優しく握り返して、にやけた顔を空に向けた。 (以心伝心したようで、いいな) うんうん、と心の中で首を縦に振るイダに、アラシャは何気なく問いを放る。 「ねぇイダ。あたしとイダは今、どういう関係?」 妹、と答えられるのは嫌だなと、ぼんやり考えた。イダは首をかすかに傾げ、 「ん? んー、そうだなぁ。アラシャが自己紹介するときの『相棒』じゃないか?」 答えてから、アラシャが聞きたいことをなんとなく理解した。 「妹とは、もう見てないぞ」 ぱっとアラシャの表情が明るくなる。 「……うん、ありがと」 「なんでそこで礼を言うんだ、お前は」 あいている手でイダがアラシャの頭をぐりぐりと撫でる。アラシャは嬉しそうに目を細めた。 「相棒、相棒。意識しないで名乗ってたけど、イダとあたしはそれが一番似合うかも」 アラシャにとって、そしてイダにとって、相棒というのは特別な言葉だ。 喜ぶアラシャを見ているとイダは心が温かくなって、笑いながら繋いだ手に少しだけ力をこめた。 ●アリシア・ムーンライトとクリストフ・フォンシラーの星夜 ただぼんやりと警備にあたるだけではもったいないほど、星が綺麗な夜だった。 「散歩でもしようか」 「……はい」 返事が一拍あくことに、『クリストフ・フォンシラー』はおよそ慣れている。隣の女性、『アリシア・ムーンライト』はいつも、ずいぶんゆっくりと話すのだ。 並んで立ち、海岸沿いを歩き出す。二人ともときおり星空を見上げた。乳白色の天の川が、無数の星々の中でひときわ目立っている。 「七夕、は……、ソレイユ地区に伝わっていた風習で……、ニホンにも同じような文化があて……、今は、ニホンの七夕に準じる形をとっているそうです……」 「そうなんだ」 アリシアの黒い長髪が、潮風にもてあそばれる。目を伏せ、ぽつりぽつりと話す彼女を、クリストフは珍しい思いで見た。今夜はアリシアがよくしゃべっている。 一方でアリシアも自身のことながら意外だった。まるで夜空と星に包まれているような心地だからだろうか、いつもよりもすんなりと言葉が出てくる。 「亡くなっても……会いたいほどの、想いって……素敵、ですよね……」 天の川をつくったのは、死後もともにいることを望んだ夫婦だといわれていた。 「夫婦じゃなくても、それほど想う相手がいるというのは……、幸せだな、って……」 「親とか、兄弟とか?」 かすかにアリシアが頷く。ふと、クリストフは思い出した。そういえば、アリシアの家族の話を聞いたことがない。 「アリシアの家族って」 「クリスには、言ってませんでした……?」 足をとめたアリシアが、紫の目でクリストフを見上げた。 「私、十歳以前の記憶がないんです……」 つられるように立ちどまったクリストフは、眼鏡の奥の目をわずかに見開く。 「気がついたら、もう教団にいて……。だから、私、大事な人がいたのかどうかも……、分からないんです……」 「そうか……。自分が何者か分からないっていうのは、つらいね」 クリストフもアンデッドになった際、記憶が少し飛んでいる。それでも両親はそこにいてくれたのだ。 「私に感情がないから……、捨てられたのかも、しれませんね……」 「そんなことはあり得ない」 ほとんど反射的に、クリストフは否定していた。 「きっとなにか、事情があるんだよ。じゃなきゃ、俺がアリシアを大切に思うわけないだろう?」 感情がないから捨てられた、なんて。そんなこと、あるはずがないのだ。 「……え……。それは、パートナーだから、ですよね……?」 肯定も否定もせず、クリストフはただ冗談めかして笑って見せる。 「ありがとう……、元気づけてくれてるんですね……。そうですね、今は大切な友人が……何人かできましたし……」 ふふ、とアリシアはよく見なければ気づかないほどかすかに、笑んだ。ああ、とクリストフは天の川に視線を投じたアリシアを見つめて、思う。 その笑顔を、俺は見たかったんだ。 ●リトル・フェイカーとパンプティ・ブラッディの星夜 海岸を二人で歩く。警備という名目ではあるが、あまりにも平和で、どちらかといえば散策だった。 「きょろきょろしすぎだろ、相棒」 可笑しそうに『パンプティ・ブラッディ』に指摘され、『リトル・フェイカー』は平静を装って返した。 「ベリアルが出るかもしれませんから」 「まぁな。でもこれだけ穏やかなら大丈夫だろうさ」 「えぇ、だといいですね」 本当は。 ベリアル出現を警戒しているのではなかった。いや、任務上それを完全に失念しているわけではないが、リトルが落ち着かないのは別の理由があってのことだ。 「あの、パンプティさん。せっかくですから、あちらにも行ってみませんか? 星がよく見えるそうですよ」 「詳しいな?」 「……お菓子を買ったときに、聞きました」 まだ大丈夫、きっと本命についてはばれていない。そうに違いない。 自分に言い聞かせながら、リトルは仕事前に露店で購入した星の形の焼き菓子をパンプティに見せる。彼女は納得したように頷いてから、少し意地悪く笑った。 「お? いいねぇ、デートのお誘い?」 「デ……っ!?」 「あっはっは。そんなに顔赤くすんなよ。冗談だって。さ、行こうぜ」 快活にパンプティは進んで行く。 (なんて返せばよかったのでしょう……) 後を追いながら、リトルは小さく息をついた。 天の川の下、先を歩くパンプティは密かに口の端を下げる。 (違ったのか。恥ずいぞ、アタシ) 茶化すような言い方をしたが、強めの確信をもって言ったのだ。リトルがなにか隠していることくらい、パンプティは見抜いていた。だが、デートを計画したわけではないらしい。 「おお、ほんとに綺麗に見えるな」 「……はい」 露天商からこっそり教えてもらった場所に到着し、リトルは跳ね上がる心臓を必死でなだめた。パンプティは満天の星空と、星明かりにきらめく海を見て、歓声を上げている。 「で、なーに隠してんだ?」 「……っ、あ、の……っ!」 リトルが意を決するより早く、耐えきれなくなったパンプティが不意に問うた。裏返りそうになった声をどうにか制御して、リトルは隠し持っていた袋を、砂糖菓子ともども突き出す。 「お誕生日の、お祝いです。その、きみに会えたことを、嬉しく思います。……生まれてきてくれて、ありがとう」 「……お、おう……?」 ずっとタイミングを計っていたリトルは、目的を果たせてほっと息をつく。反対に、自分が七月生まれであることも忘れていたパンプティは、驚いたまま反射的に贈り物を受けとった。 「開けても、いいのか?」 「どうぞ」 「……時計だ」 教団で支給される、銀の懐中時計だ。ただし、パンプティの名前や彫細工が施され、いっそう美しい見た目になっている。 「ありがとう。いいな、これ」 はにかむように笑ったパンプティに、リトルは照れくさくなって夜空に視線を逃がした。 眩いくらい、明るい星夜だ。 ●シュリ・スチュアートとロウハ・カデッサの星夜 海岸沿いを歩いていく。 目的が定まっているのか、『シュリ・スチュアート』の後ろを歩む『ロウハ・カデッサ』は知らなかったし、疑問にも思わなかった。 警備といっても祭りの中心地であるソレイユ地区ではないため、人は少なく平和なものだ。ならば、シュリの行きたいところに行けばいい。自分はついていくだけだと、ロウハは華奢な後姿を見ながら思う。 不意にシュリが立ちどまった。細い顎を上げて空を見る彼女に、ロウハもならう。天の川がことさらに綺麗に見えた。 時間を忘れて見入っているようだったシュリが、ふと口を開く。 「わたしとロウハも、死んだら星になるのかしら」 「……ああ、天の川伝説か」 そのむかし、仲のいい夫婦だったズラミスとサラミが死後、離れた位置で星になった。二人はそれを悲しんで、星屑を集めて橋を架けたのだ。それが、天の川なのだという。 読書家のシュリはこの伝説についてもよく知っており、ロウハも概要程度なら知っていた。 (お嬢はそういうの、好きだもんな) 「さぁなー。お嬢は星になるかもしれねーが、俺は」 言いかけたところでロウハは口を閉ざす。自分はきっと、地獄に落ちる。死んだらもう会えないなんて、告げられなかった。 ただでさえ、シュリは近ごろ弱っているのだ。きっと浄化師になって戦いの経験も積んで、命のやり取りや後味の悪い結末を見てきたからだろう。 使命のためと割り切っても、知らず知らずのうちに精神的に疲弊しているのだと、ロウハは薄々ながら察している。 「それにしても、ずいぶんと弱気なことを言うんだな。死んだらなんて、まだまだ先の話だろ」 話題を少しだけ逸らそうとしたロウハをしっかりと見つめて、シュリは凛と声を放った。 「わたしが天の川をつくって会いに行くわ。ロウハと離れ離れなんて……、考えたくない」 伝えられなかった言葉を、シュリは寸分の違いなく汲みとっていたのだ。 素直に嬉しく思うと同時に、ロウハは改めて決意する。 どのようなときでも、シュリを守る。不安があればそれを打ち消す。たとえ彼女が自分に依存していっても、ロウハの役目は決して変わらない。 「お嬢はそんなこと、考えなくていいんだよ」 恩人の忘れ形見である彼女の頭を、ロウハは軽く撫でた。少しでも心の苦痛が和らぐようにと、願いをこめる。 「ふふ。ありがとう。やっぱりロウハの手は、元気をくれるのね」 星明かりだけが光源であるため、シュリの頬が赤みを帯びていることにロウハは気づかない。ただ、久しぶりに見る彼女の笑顔にそっと安堵しただけだ。 今にもこぼれ落ちてきそうな星々が、二人の頭上で瞬いていた。 ●ジエン・ロウと吉備・綾音の星夜 警備の任務だと分かっているものの、『ジエン・ロウ』は浮かれていた。 「ニホンの七夕は知ってるけど、こちらではこんな感じなんだね!」 中心地であるソレイユ地区の話も、少しだけ聞いている。今ではニホンに準じる形をとっている、七夕にまつわる伝承も耳にしていた。 「七夕……」 おぼろげではあるが、知っている気がする、というのがジエンの隣に立つ『吉備・綾音(きび・あやね)』の感想だ。 「こんな星の綺麗な夜、満喫しないわけにはいかないよね! ふふ、いわゆるデートってやつだね」 「デート……、ですか? それは構いませんが……」 (なんだかドキドキする響きです) 綾音はそっと自らの胸に手をあて、小さく笑んだ。 「警備も忘れないでくださいね」 「もちろんだよ」 穏やかな微笑を浮かべたジエンが、ぽつぽつと並ぶ露店のひとつに目をつけ、顔を輝かせる。 「わぁ、星を模した砂糖菓子かぁ!」 七夕の夜、どの地区に行っても見かける星の形の菓子だ。少し大きめで、手で触れてもべたつかないように、表面に工夫が施されている。 「見た目も可愛らしいし、砂糖菓子ってことは甘いんだよね。ねぇ、綾ちゃん、買ってもいい?」 ジエンは甘いものが好きだ。綾音もそれを知っているので、微笑みながら頷いた。任務中ではあるが、これくらいは許されるだろう。 「ふふ、構いませんよ」 「ありがとう! 半分こしようね」 「私にも分けてくださるんですか? ありがとうございます」 代金を払い、星型の砂糖菓子を購入したジエンは名案を思いついたとばかりに朗らかな声を放った。 「それじゃあ、これを食べながら、どこかで星でも見ようか」 少し歩き、灯台や露店が並ぶところから少し離れた海岸で、二人は立ちどまった。ぱきん、とジエンが砂糖菓子を半分に割り、片方を綾音に渡す。 「どうぞ。星空を見ながら星を模した砂糖菓子を食べるのって、なんだかロマンチックだね」 「ありがとうございます。ふふ、そうですね」 天の川が海の上できらきらと瞬いている。見惚れるほどの絶景だった。 「ズラミスとサラミの話は聞いたかい? 素敵なお話だよね」 「ええ。そんなお話があるから、いっそう綺麗に見えるのかもしれませんね」 (私も、ジエンさんと仲睦まじく……) 乳白色の星群の、もととなっている夫婦の話を、綾音は思い浮かべる。 「俺たちも負けないくらい、仲睦まじくすごせたらいいねぇ?」 ぱっと頬を染めて隣と見ると、ジエンがにこにこと笑っていた。 「……はい」 (なんだか、改めて言われると恥ずかしいですね) それでも嬉しさに胸ははずみ、思わず笑顔になってしまう。 (一度目の生はもう失ってしまったけれど、二度目の生は貴方とともに) 星に願いながら、綾音は甘い砂糖菓子をそっと口に含んだ。 ●杜郷・唯月と泉世・瞬の星夜 ヴァン・ブリーズ地区を訪れたのは、二度目のことだった。今回は灯台の中で試運転に協力するのではなく、灯台周辺の警備だ。 「七夕……、懐かしいです……!」 今夜は七夕。東方国家ニホンの影響が強い祭事だ。ニホン出身の『杜郷・唯月(もりさと・いづき)』は天の川を見上げ、故郷を懐かしんだ。 「あれ、いづもニホン生まれだったの?」 「え、あ、はい……、瞬さんもでし、た?」 「そ~だよ~」 にこにこと唯月の隣で『泉世・瞬(みなせ・まどか)』は頷く。 「まぁ、この名前もアークソサエティでは珍しい方だしね~」 「それもそうでした……。でも、こんな偶然ってあるんですね」 「そうだね~! ここにはいろんな地方からいろんな人がきてるだろ~し、なんだか嬉しいなぁ」 一応、警備の任務であるため、二人は海岸に沿って歩いていく。なにも起こらないと確信させるような、穏やかな夜だ。潮風が心地よかった。 「今年はお二人、会えたでしょうか……?」 天の川を見上げた唯月が、ひとりごとのような声でこぼす。 帯のように広がる乳白色の星群は、そのむかし死後に別々の星になってしまった夫婦が、再会を強く願い、星屑を集めてつくったといわれている。 七夕のこの夜、天の川は橋となり、離れた位置で瞬く夫婦を繋ぐのだ。 「きっと会えてるよ、星がいつもよりキラキラに見える!」 「ふふ、そうですね……!」 (わたしも瞬さんと二人のように……、なんて) 明るく肯定してくれた瞬を見て、ふと浮かんだ考えを唯月は慌てて消す。 「いづ? どうしたの~?」 「なんでもないです……っ」 「そう~? あ、ねぇ。いづはどのへんに住んでた?」 追及されなかったことに安堵しながら、唯月は答えた。 「キョウト寄りの田舎です……、瞬さんは?」 「俺はエドの都会~。父親が有名な役者だったからね~。俺が役者になったのも、そんな父親の影響なんだ~」 唯月はかすかに目を見開く。今日は瞬との共通点をたくさん知れる日だと、少し嬉しくなった。 「わたしも……、この占星儀を持とうと決めたのは、母さんがきっかけなんです……。母さんは元浄化師だったんですが、辞めてから田舎の占い師として静かに営んでいました。母さんは……、今でも、憧れです」 「そうだったんだね~」 痛みを伴う過去から逃げまいと、唯月はともすればうつむきかける顔を上げる。そこには柔らかに笑んだ瞬がいて、肩の力がふっと抜けていくような気がした。 「いづ、お菓子食べる~?」 「任務中ですけど……、はい」 「わ~い、露店見よ~」 唯月の手を握り、瞬は露店が集まっている界隈を目指して歩き出す。唯月は導かれるように夜空を見た。 いつもよりずっと、星がきらきらしている。 ●イザベル・デューとセシル・アルバーニの星夜 警備の任務だと聞いたとき、『セシル・アルバーニ』は微妙そうな顔をしていた。彼は面倒ごとが嫌いなのだ。 しかし蓋を開けてみればヴァン・ブリーズ地区シェネフラウ灯台の付近は平和そのもので、セシルのパートナーである『イザベル・デュー』は眉尻を少し下げてかすかに笑んだ。 (平和でなによりってところかしら?) きっとセシルも、羽を伸ばしても大丈夫だと判断すれば、元気をとり戻すことだろう。そう思ってちらりと彼を見ると、大きなあくびをしているのが目に入った。 「眠そうね、セシルくん」 「……仕方ないじゃないですか。暇なんですよ。それに静かで、規則的な波の音が心地よくて……。仕方ないです」 「じゃあ、眠気覚ましにどこかへ行ってみる? あまり灯台から離れてはまずいでしょうから、屋台に行ってみるとか、海岸を散歩するとかになると思うけど」 一応、仕事中だ。持ち場を離れすぎるのはよくないと、イザベルは周囲に目を向ける。どこまでなら移動していいか考える彼女の隣で、セシルは面倒そうに天の川を見上げていた。 「ここって、なにかすることあるんですかね。人も全然いないし、なにもなさそうな感じがあります」 「平和が一番よ。そうだわ、屋台には確か、砂糖菓子とかがあるんじゃなかったかしら?」 「砂糖菓子?」 気だるさをにじませていたセシルが、雰囲気を一変させる。予想外の食いつきにイザベルはぱちぱちと瞬いた。 「甘いもの、好き?」 「はい、大好きです。三食甘いものでも大丈夫だと思います」 「それはだめよ」 真剣な表情で言い切るセシルを、イザベルはたしなめる。 「じゃあ、ちょっと屋台を見て回りましょうか」 「はい」 七夕祭の中心地であるソレイユ地区から離れているため、人が少なければ露店の数も少ない。セシルはそのうちのひとつで立ちどまり、たっぷりと時間をかけて砂糖菓子を選んだ。 イザベルも適当に買い、海岸に並んで座る。 (食べるの、もったいない) 星の形の砂糖菓子を口に入れたセシルは、見た目の可愛らしさと程よい甘さを噛み締めて心からそう思った。それでもやはり、おいしいものは食べ進めてしまう。 「おいしいわね」 幸せそうな表情で頷いたセシルに、イザベルはくすりと笑みをこぼした。 「私の分も少し食べる?」 「……え、いいんですか?」 「いいのよ、幸せは分ちあうものだわ」 理性を総動員して遠慮したセシルは、すでに砂糖菓子を食べ終えている。 「俺ばっかり幸せになりません?」 「私にもそれなりにいいことがあるのよ? お菓子を食べているセシルくん、とても可愛い顔をしているの。私、その顔を見るの、けっこう好きだわ」 「えぇ……、俺どんな顔してるんですか」 恥ずかしさを覚えて顔を隠したセシルを、イザベルは金色の目を細くして見ていた。 ●明智・珠樹と白兎・千亞の星夜 「千亞さんご覧ください、満天の星空……! あれは天の川というのですね、あぁ、あの川を裸で泳ぎたい。バタフライしたいです、ふふ……!」 「警備中だぞ、静かにしろこのド変態」 人はきわめてすくなく、波の音が静かに響くシェネフラウ灯台に温度差のある声が響く。 諫められた『明智・珠樹』は懲りず、かつ気にした様子もなく隣の『白兎・千亞』に満面の笑みを向ける。 「ご安心ください、星々も綺麗ですが、千亞さんの瞳の輝きには叶いません……!」 「そーゆーの、いいから!」 「あふん!」 顔を赤くした千亞はほんの少しだけ加減を加えた蹴りを放つ。攻撃を食らった珠樹は、まんざらでもない表情だった。 騒動なんて起こりそうにもないが、任務内容は警備だ。方々に気を配る千亞の目に、砂糖菓子を売る露店が入った。 (あ、あのお菓子おいしそう。星の形も可愛いし……) 「千亞さん、ちょっと休憩にいたしましょう。あちらでお待ちください」 「え……?」 にこりと珠樹は微笑み、千亞から離れて露店に向かう。見てくれだけは上等な男が指し示した海岸と、彼の後ろ姿を見比べて、千亞は指定された休憩場所に向かった。 (ド変態だけど、僕を気遣ってくれて……) 感謝しながら天の川を見上げていると、珠樹はすぐにやってくる。彼の片手には千亞が先ほど見ていた砂糖菓子があった。 「どうぞ」 「ありがとう、珠樹」 食べるのがもったいなくなるほど可愛らしい造形の菓子を受けとり、千亞は口元を緩める。しかし、次の瞬間に目尻が上がっていた。 「いえ、そして千亞さんがひと舐めしたお菓子を私にくださ……」 「やるわけないだろ、ド変態!」 「あふん!」 鋭い蹴りを珠樹は受ける。今夜二度目のことだったが、やはり男はどこか悦んでいるようだった。いつものことながら、千亞は頭を抱えたくなってくる。 「あ、千亞さん。流れ星ですよ……!」 「どこだ?」 ぱっと顔を上げた千亞も見た。満天の星空に、一筋の光。さらにもう一筋。 天の川を渡るように、星が流れている。 「そういえば、流れ星にお願いごとをすると叶う、というようなことを聞いた気が……」 「そうなのか?」 千亞が願うことは、ひとつだ。 (行方不明の兄さんと、会えますように) どうか叶えてほしいと強く祈る千亞の隣で、珠樹は願望とも欲望ともとれる言葉を口に出した。 「千亞さんの水着姿、見たいです……!」 「黙れド変態」 飛び蹴りを叩き入れようかと思ったが、砂糖菓子に万が一のことがあってはならないので千亞は自制する。 ため息交じりに夜空を見上げれば、吸いこまれそうなほど美しい星々が視界を占めた。綺麗ですねぇ、と言う珠樹に、首肯で同意する。 また、星が流れた。
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*** 活躍者 *** |
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[9] 杜郷・唯月 2018/06/27-09:40
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[8] シュリ・スチュアート 2018/06/27-04:09
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[7] イザベル・デュー 2018/06/27-01:44
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[6] アラシャ・スタールード 2018/06/26-20:04
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[5] ジエン・ロウ 2018/06/26-17:03
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[4] リトル・フェイカー 2018/06/26-10:28
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[3] クリストフ・フォンシラー 2018/06/25-22:21
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[2] 明智・珠樹 2018/06/25-19:59
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