~ プロローグ ~ |
白い砂浜が広がるビーチ。7月の海がエメラルドグリーンに輝いている。 |
~ 解説 ~ |
●目的 |
~ ゲームマスターより ~ |
ここまでプロローグを読んで下さり、ありがとうございます。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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クロ「おわぁー、予測はしてたけど目の前に現れると流石にショックね。」 ロゼ「…大きい、…どうやって倒すの?」 クロ「それは…皆と協力してかな。」 基本的に援護、打たれ弱い中衛と後衛なので間合いに注意しながら。 まずは皆と協力して陸へ誘導、正面左寄りに位置取って触腕を1本集中攻撃して破壊。 あとは前衛が戦闘し易い様に動きのある切断触腕を破壊したり必要に応じて本体を攻撃したり、ただしクロエは命中が低いので慎重に、ロゼッタはそれなりに。 墨対策としてクロエはゴーグル(ダイビング用)、ロゼッタは盾。 触手対策は間合いを取って近づかない。 戦闘終了後 クロ「確かにこれは手強いわね」 ロゼ「タコの次はイカだったりして、ふう」 |
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■ルーノ 敵が砂浜に上がったらナツキと敵右前方から接近するよ 触腕切断の合図でナツキと同じものを攻撃 傷のある場所があればそこへ攻撃を重ねよう 弱点攻撃に合わせて敵の顔に攻撃 目くらましになれば上々だ 味方が拘束されたら救助、体力半分以下でSH4で回復だ 右目は隙をみて攻撃、破壊して死角を増やしたい ■ナツキ 触腕は合図で切断するぜ 敵の前で急に動きを止めてみせて、触腕の攻撃を誘って迎え撃つ! それまでは範囲攻撃に注意、JM3込みですぐ接近できる範囲で散開だな 後は死角側からJM3で目の間、弱点を攻撃! 触手に気を付けて接近、邪魔されないようにジャンプして上から狙うぜ 攻撃後は味方の攻撃の為に、前に出て気を引いてみるかな |
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目的 ベリアルの討伐 ベリアルの鎖に拘束された魂を解放する 行動 口寄魔術陣で装備品に着替える。 ベリアルの側面、左側担当。 フェリックスは前衛で攻撃。 ジークリートは後衛から、相手の動きを観察と援護。 触腕を攻撃する際に魔術真名使用。なるべく一カ所を攻撃して切る。 流れ 攻撃等で陸に誘き寄せた後、一組一本ずつ手分けして触腕を潰す。その後急所を狙って攻撃。 対策 墨はゴーグルで避ける。ゴーグルが使えなくなったら捨てる。 薙払いは敵の動きを観察、できれば後退して回避。 だれかが触腕に捕まったら救出優先。 |
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●目的 ベリアルの撃破 ●行動 まず口寄魔術陣で二人共着替えてから行動開始 敵を陸へおびき寄せるために正面で迎撃 僕は敵の攻撃の対応をするため前衛を担当 触腕は回避や斬り払って迎撃し、墨は【マナ・シールド】で防御 ユウさんは後方から【プロージョン】で急所を攻撃 ユウさんの属性は木。方陣相生で考えればある程度有効打を与えられるはず 仲間の指示が出たら自分が担当する触腕を切り飛ばしていきます さらに指示があれば、ユウさんに【プロージョン】で敵の右目を攻撃させます その後はユウさんには頭の触手の塊を攻撃してもらい、僕は引き続き触腕を攻撃 ある程度接近できたら【エッジスラスト】で敵の身体を駆け上がり、急所への攻撃を仕掛けます |
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目的 ベリアルの討伐 ヨ:行楽に託けて海岸を張っていた甲斐がありました ベ:(溜息)理由もなく遊びにくる訳がなかったか…(だよなあ。という顔 ヨ:当たり前です 借りてきたゴーグル着用。墨をくらったら使い捨てる 自分達の存在に気付かせ岸までおびき寄せ程よい場所まで引き込んだら後ろを取り退路を塞ぐ 各自散開。タイミングの指示。自分達はベリアルの背後に配置。号令と共に触腕への攻撃を開始 苦戦している組がいれば援護 再生スピードを遅らせるため触腕を切り落とした所へ重点的にフレイムで焼く ヨナ 正面は任せ視野を広くとる 余力があれば頭部の触手へも攻撃 ベ 片手剣とJM6使用 触腕の健を断ち切る 戦闘の流れは文字数厳しいので掲示板参照 |
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エ「あのタコは、たこ焼きにすると何人分になるのでショウ…(ごくり」 レ「…まずアレを食べようと思わないでください」 ◆行動 敵が陸地に上がるまで遠距離攻撃等で誘導後、右側面に回り込む 合図でレイのスキルで近くの触腕から切り落とし、フレイムで断面を焼く 切り落とした触腕は障害物として放置 片目潰しで死角が増えたら、触腕を攻めつつ本体にも攻撃 正面チームが急所を狙いやすいよう、敵の攻撃を引き付ける 墨はゴーグルで対策(一度限りですが、ないよりはマシでしょう) 触手や触腕の攻撃はお互い声をかけつつ避ける 仲間が拘束された場合、近くならば優先的に助けにいく 遠くならその場で攻撃を強め、拘束を緩めるよう敵の気を引き付けておく |
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◆目標 ベリアルの撃破 ◆心情 まさか本当に出るとは…と、言っている場合ではありませんね パンプティさんも暴れたいといっておりましたし、出会えたのは幸運でしょうか 街へは行かせませんよ ◆行動 敵を陸へと十分へ引き寄せるのを待ってから、左側面より攻撃 腕は最低一本、再生毎に潰しておく 戦闘後、掃除と治療 リトル 中衛(状況を見て移動 戦闘開始前に仲間へ浄化結界 切れる度に周囲の仲間を可能な限り巻き込んで結界を張りなおす パンプティを支援するよう通常攻撃 パンプティ 前衛 蛸足つぶし優先→本体攻撃 リトルと同じ足を狙い確実に仕留める 本体を叩く際に削岩撃 敵の動きを鈍らせて攻撃を当たりやすくする 可能なら正面の弱点狙いにも行きたい |
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■目的 大蛸ベリアル討伐。 ■行動 蛸墨対策にゴーグル着用。 敵の上陸接近までは一団として敵を引き付けてから、急ぎ右側面に回り、号令に合わせて魔術真名使用し、触腕の根本に攻撃を集中し切断。 仲間拘束時はその触腕の根本に攻撃集中。 担当触腕切断後は即後退し、切断後の触腕も動くので注意・回避しつつ、右目→眉間の急所の順に攻撃し潰す。 薙鎖は中衛で他の触手や触腕の警戒・警告及び符で牽制攻撃。負傷者が出たら天恩天賜使用。 敵攻撃は全て防御、敵の攻撃を正面から受けず大盾で逸らす。 モニカは前衛で触腕切断時は攻撃集中。高所の目・急所への飛翔斬で跳躍し攻撃。敵攻撃は全て回避。 墨の予備動作確認時は、急ぎ薙鎖の大盾の陰に隠れる。 |
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~ リザルトノベル ~ |
「アレが『海の悪魔』と言われるタコですか……本で見まシタ!」 おぞましいオクトパス型ベリアルを見た『エリィ・ブロッサム』の第一声だった。 「なるほど、確かに『海の悪魔』と呼ばれるだけありますネ!」 「あれはベリアルです! あれが一般的なタコだと思わないで下さい!」 『レイ・アクトリス』はパートナーが間違った知識を得ようとするのを慌てて阻止する。むしろあんなタコがいてたまるか、という思いが透けて見える必死さだ。 当の本人はレイの言葉に「……え。違ウ?」と不思議そうに首を傾げていた。 ベリアルと遭遇しなければ、海水浴を楽しむ予定だったエリィは目映いばかりの白いオフショルダーの水着を着ている。 珍しく露出したパートナーの姿を最初見た時、意外と着やせするタイプなのだなと密かに思っていたレイは爽やかに「レディよく似合いますよ」と誉めていた。 レイ本人も女性の目を惹き付ける鍛えられた体を惜しげもなく晒している。 せっかく息抜きになるだろうと思って受けた指令だったが、それが裏目に出るとは。 「相手がベリアルとなれば無視するわけにもいかないじゃないですか……」 物憂げに溜息をつきながら、口寄魔方陣で武器を呼び出す。 「行楽に託けて海岸を張っていた甲斐がありました」 「理由もなく遊びに来る訳がなかったか……」 「当たり前です」 『ヨナ・ミューエ』の返答に溜息を吐いたのは、パートナーである『ベルトルド・レーヴェ』だった。彼はこの指令を持ってきた時からおかしいと思っていた。言葉にされると納得すると同時に頭が痛くなる。 ヨナはそんなパートナーに構うことなく、素早く指示を出す。 「各員、戦闘準備をお願いします」 今回の警備のまとめ役をお願いされたヨナは他の浄化師にも聞こえるように声を張り上げる。 「残念ですね」 言葉と裏腹に『セプティム・リライズ』は「これで本来の仕事ができる」と思っていた。警備を名目に遊ぶ気はなれなかったセプティムだが、パートナーである『ユウ・ブレイハート』や他の浄化師達が楽しそうにしている姿を眺めているのは悪くなかった。だが、ベリアル襲撃となれば話は別である。 柔和な笑みを浮かべる瞳はより昏さを増すのだった。 「……ッ、ベリアル……浜辺にほとんど人がいない時で良かった……」 ベリアルの姿を見て『ジークリート・ノーリッシュは』身構えると、すぐさま周辺を確認する。 「フェッリクス、気をつけて、ね。無理はしなくていいから……」 「はい、リート」 気遣わしげに声を掛けるパートナーの言葉に『フェリックス・ロウ』はこくりとただ頷いた。 「おわぁー、予測はしてたけど目の前に現れると流石にショックね」 「……グロいし、大きい。……どうやって倒すの?」 衝撃的なベリアルの姿に思わず変な声が出る『クロエ・ガットフェレス』と反対に、『ロゼッタ・ラクローン』は肩を落としていた。 クロエは最近の教団の動きや指令の傾向から、ここら辺りにベリアルが出現する可能性が高いことを予測していたからかショックは少ない。 「それは……皆と協力してからかな」 「でも、私アレに近寄りたくはないんだけど」 「それは同感」 二人は同時に頷くのだった。 「パンプティさん! 戦うときは装備を……!」 『リトル・フェイカー』は『パンプティ・ブラッディ』が水着のまま武器を構えたことにぎょっとする。 前衛として鍛え上げられた肢体に赤いビキニはよく似合っており、エキゾチックな褐色な肌と合わさって健康的な色気を醸し出していた。 「はぁ? 着替えなんて面倒くさ……ほーう?」 パンプティはリトルの顔が真っ赤になっていることに気づき、どこか嬉しそうに口を緩める。 「もしかして生着替えをご所望と?」 「へ? ……ち、違います、そうじゃなくて」 そう否定しながらもリトルはパンプティを直視できずにいる。 「照れるなよ。そーゆーのは2人の時にな」 笑いながら口寄魔方陣を展開し、自身の体に通すことで瞬時に戦闘装備へと変わる。 浄化師達はベリアルに対抗できる唯一の武器であるイレイスを呼び出す為に口寄魔方陣を空中に発動させる。 万が一海の中に引き込まれたことを考えて水着姿のままの者もいるが、殆どの者が口寄魔方陣によって瞬時に着替えていく。 魔術真名を唱えた者から各自配置についてヨナからの指示を待つ。 「遠距離攻撃始め。誘導開始」 ヨナの短くも的確な指示が飛ぶ。 ベリアルが浜辺に近づき、2本の触腕が獲物を求めるように地面を這いだしたのを確認すると攻撃を開始した。 前衛の者はパートナーを庇える位置に立ち、いつ攻撃を受けても対処できるように備えている。 「ぎゃあぁぁ無理デス! フレイム!」 真っ先に攻撃をぶち込んだのはエリィだった。 「気持ち悪いでデス! こっちに来ないで下サイ!」 エリィはぬめりのある太い触腕が迫ってくるのを見て、反射的に魔導書を向け火球で焼き尽くした。 それでも尚にじり寄ってくるベリアルの触腕にセプティムが立ちはだかる。エッジスラストを発動し、触腕を両断する。 まるで演舞のような動作で剣をくるくる回転させるとベルトルドは、パートナーに向かって伸びていく触腕から、庇うように前に出る。 白刃一閃、触腕を斬り捨てようとするが切断するには至らない。 「フレイム」 背後から聞こえた声に毛が逆立つ。ベルトルドは火球の熱を頬に感じながら間一髪で避けた。 即座に振り返ると怒気を孕みながらヨナを睨みつける。 「おい!」 「攻撃が甘いんですよ。次が来ます」 我関せずな態度のヨナにベルトルドはこれ以上文句を言うのを諦め、険しい顔で唾を吐き捨てる。 2人かがりの攻撃で鈍った触腕に止めを刺すべく、ロゼッタがアルカナソードを発動させる。 焼き払われても尚しぶとくうねる触腕はようやく本体から切り落とされ、ぴくぴくと地面をのたうち回る。 浄化師達の猛攻は止まらない。 「エアーズ」 クロエが即座に切り落とした箇所の再生速度を遅らせる為、風の斬撃でずたずたに切り刻む。 『薙鎖・ラスカリス』もまたカース・オブ・カードを放ち、動きを阻害する。そのすぐ傍にはいつでも薙鎖を庇える位置で『モニカ・モニモニカ』が武器を構えていた。 リトルは自分の周辺にいる者を巻き込んで邪気を祓う浄化結界を張ることで仲間達を支援する。 「あんなのがいたんじゃせっかくの海が台無しだな」 「……そうだな」 (なんだあれは、気持ち悪い) 張り切る『ナツキ・ヤクト』に『ルーノ・クロード』は言葉少なげに答える。ルーノはなんとか嫌悪感を押し隠し、若干ナツキの後ろから攻撃を加える。 当の相棒は誘導するまでの間、待機を指示されていなければ今にも飛び出して行きそうな雰囲気だった。 「町には行かせねぇ、ここで止めるぜ!」 本人は隠しているもりだろうが、大物との戦いにワクワクしているのが見て取れて、その図太さを初めてルーノは羨ましく思うのだった。 「プロージョン!」 ユウは正面の触腕がなくなった隙を見計らって魔力弾を炸裂させる。するとベリアルは苦悶にもがくように暴れ出す。近くにいた浄化師達は一斉にベリアルから距離をとる。 ジークリートもリンクマーカーを発揮し、急所にで狙いを定め狙撃するが、すぐさま再生した赤い触手によって邪魔されてしまう。 「やっぱり眉間の部分の赤い触手だけ異様に回復速度が速い。なのに、こちらに攻撃してこない。まるで何かを守っているみたい」 「あそこにベリアルの魔方陣があるってことですか……厄介な」 敵を分析するクロエの言葉にヨナが考え込む。 頭部に見える丸い部位が実は頭ではなく胴体に当たる部分であることを知っているだろうか。 実際のタコの頭は触腕の基部にあり、目や口があるところである。すなわち、頭から足が生えているのであり、「頭足類」と呼ばれる理由でもある。 その眉間の周辺からスケール1特有の赤い触手が絡み合うように生え、巨大な触手の固まりとなっている。頭部の触手はこちらに一切攻撃してこず、貝のように沈黙している。 想定していた以上に触腕のリーチは長く。隠れる場所も何もないこの場所はベリアルにとって思う存分に暴れることができる分、浄化師にとっては不利だった。 ベリアルは攻撃を受けても尚、逃げるそぶりはなく、むしろ怒り狂っているように見える。 「タコの活け締めも眉間にピックを突き刺して、締めるからな。あそこが弱点ってのも納得といや納得だ」 「え? パンプティさん、そういう話でしたっけ?」 「海鮮料理は鮮度が命だ。ちゃんと活け締めしてやんないと、旨味が半減する」 パンプティが饒舌に語るのをリトルが要領を得ないように頷く。 「気持ち悪いデスが、食材に罪はありまセン。あのタコはたこ焼きにすると何人分になるのでショウ……」 「……まずアレを食べるようと思わないで下さい」 ごくりと唾を飲み込んだエリィにレイがしょっぱい顔で突っ込む。 「えーと、つまり、眉間が弱点ってことでいいか?」 「その可能性が高いということです」 周囲の空気に付いていけず困惑したルーノの代わりにナツキがそう尋ねると、ヨナが頷く。 全てが順調にいっているように見えた。 その瞬間、ベリアルの報復が始まる。 攻撃されたことで怒り狂ったベリアルは、その巨体で自分の切り落とされた触腕すら踏み潰して突進してくる。 特に急所を攻撃したユウを中心に狙いを定めたようだった。 その巨体を捻るように一回転させると暴風のごとく触腕が全てを薙払う。 凄まじい薙払いは浜辺の白砂を巻き上げ、ほぼ全ての浄化師が巻き込まれた。 ユウは回避する暇など与えられず、薙払いに巻き込まれるかと思われた。ユウは思わず顔の前に腕を組み、目を瞑る。 数秒経っても衝撃は襲ってこない。恐る恐る目を開けると、目の前に見慣れた背中があった。 「セプティムさん?」 「大丈夫ですか、ユウさん」 「は、はい、大丈夫です。ありがとうございます」 「お礼はいいですから、行動で示して下さい」 セプティムは油断することなく敵を見据えているのを見て、ユウも我に返る。 各自、自力で回避するか盾や武器で防御するかのどちらかだったが、薙払いをまともに受けた者もいる。 「モニカさん、無事ですか」 「うん、ナギサが守ってくれたからね」 薙鎖は大型盾を構えたまま振り返る。大型盾に隠れていたモニカは「ナギサはすごいね」と言わんばかりに褒めると、彼は照れたように、 「それに正直息抜きするより戦う方が気が楽ですしね」 その発言を聞いたモニカは、まだまだ甘やかしが足りていなかったことを痛感し、この指令が終わったら三倍増しで甘やかそうと決意するのだった。 その一方で、 「フェッリクス!」 倒れたままのフェッリクスにジークリートは駆け寄る。 「大丈夫、怪我は……!?」 「……大丈夫です。戦闘には問題ありません」 ジークリートに支えられながら起きあがった彼は淡々と答える。しっかりと答えたフェッリクスにジークリートは安堵の溜息を漏らした。 「ってぇな、ちくしょー! ……おい、リトル大丈夫だったか?」 リトルに覆い被さるように庇ったパンプティが横腹を押さえて叫ぶ。 「はい! それよりもパンプティさんが……」 「これぐらいどうってことねえよ……何より一筋縄じゃいかに相手みたいだぜ」 起きあがったパンプティは顎でベリアルを指し示す。リトルはこくりと真剣な表情で頷いた。 ベリアルと浄化師、どちらが狩るか狩られるか。戦いはまだ始まったばかりだ。 「誘導完了、散開!」 ヨナの合図と共に触腕を完全に潰すべく浄化師達が走り出す。残った者はベリアルの気を引きつける為、攻撃を再開する。 「アルカナソード」 ロゼッタが占星儀に魔力を込めると、面積の多い胴の部分にソードのタロットカードが刃の雨となり降り注ぐ。すぐにクロエの発動したエアーズが眉間に放たれると、完全に気を引くことに成功する。 いつの間にか懐に飛び込んでいたセプティムが容赦なく急所にエッジスラストを放つ。ユウがセプティム諸共、眉間を狙ってプロージョンを炸裂する。 (セプティムさんの指示通りに攻撃したけど、本当に大丈夫なの!?) ユウの心配を余所にセプティムは背中に目がついているように魔力弾を避ける。その姿を見て安堵するユウ。 決定打でこそないものの頭部の触手は消え失せ、好機が巡ってくる。 絶好の機会を嗅ぎ付けたナツキがエッジスラストを放とうとした瞬間、触腕が邪魔しようとする。 一撃貰う覚悟のナツキを援護するように、ルーノが触腕に向かって魔力弾をぶつける。 動きが鈍る触腕。ナツキはその隙を見逃さなかった。 「エッジスラストォ!」 喉笛に噛みつくように放った一撃に手応えはあった。しかし、僅かに眉間から外れて突き刺さり、ベリアルの右目から黒いタールが流れ落ちた。 長い触腕がうねる中を走り抜けるのは並大抵の事ではなかった。頭部と触腕はまるで別の個体のように動いているのが、また厄介さに拍車をかけた。 触腕ごとに別々の意識を持っているかのように連携して動いてくる。ある時は鞭のごとくしなりをきかせた攻撃してき、避けたと思ったら忍び寄るようにこちらを捕らえようとしてくる。距離を取ろうにも近くにある流木を投げつけ、妨害してくる。 ヨナは汗を流しながら、走り抜ける。ベルトルドの方が足は速く、徐々に引き離されていく。 後ろを振り返るベルトルドに、 「私に構わず退路を塞ぐことを優先して下さい」 側面や背後に回ろうとする者は、通り抜けるだけでも気が抜けない。想定していた以上に移動に時間がかかり、当然正面で今も戦っている者達の負担は増す。 ベリアルは前方に向かって鉄砲水のように墨を吐き出した。周辺に闇が広がる。 そんな中でリトルが事前に張っていた浄化結界に阻まれ、セプティムとロゼッタは事なきを得る。 他の者も吐き出した墨の範囲から外れていたり、回避したことで被害を受けなかったが、ただ一人だけ真正面から受けた者がいる。 「ナツキ!」 彼は運悪く浄化結界に入っておらず、口元のすぐ側にいた為、回避する暇もなかった。 視界を潰されたナツキは何も見えずふらつく。 ナツキの足がセプティムが両断した触腕にぶつかる。 それはあっという間の出来事だった。触腕はぴくぴくと痙攣していたのが嘘のようにナツキに絡みつく。 「ぐっ、何だよこれ!?」 ナツキが拘束を解こうと暴れるが、四肢を絡め捕られ、地面に転がり落ちる。ルーノが拘束を解くため攻撃しようとするが、下手すればナツキ自身も攻撃してしまうことに躊躇する。 「切り落とされた触腕に気をつけて下さい! 反射的に触れたものを掴んでるんだと思います! 接触しないで下さい!」 予想外のことにクロエが慌てて警告を促す。 ひときわ冷静だったセプティムがクロエに対処法について尋ねる。 「どうすればいいんですか?」 「細かく切り刻んでしまうか、あるいは完全に燃やし尽くしてしまえば……さすがに動かなくなると思います」 クロエの見立てでは、トカゲの尻尾切りのように切断されても暫くの間は神経が生きているのだろう、との事だった。 だが、ベリアルの脅威はまだ終わっていなかった。 どこからかじゅくじゅくと傷口をかき混ぜるような嫌な音が響く。 最初に切断された場所から早送りでもしているかのように再び新しい触腕が二本生えてくる。 「さ、最悪すぎない……?」 ロゼッタが呆然と呟く。 真っ先に我に返ったクロエが動きを止める為、エアーズを放つ。ロゼッタも相方の行動に冷静さを取り戻し、アルカナソードで触腕を地面に叩き落とした。ルーノが確実に止めを刺し、相棒を助ける為の時間を稼ぐ。 もう片方もユウが放ったプロージョンで吹き飛ばされていた。 その間、セプティムはナツキを拘束している触腕だけを斬る。外部から刺激を受け、緩んだ隙にナツキはなんとか拘束から逃れようとするが、 「くそっ、離れろ!」 足に絡みついた触腕は手元にあった剣で突き立てても離れない。 「……しつこいですね」 セプティムは虫けらを見るような目で触腕を見ると、足で踏み潰し、念入りに触腕を細切れにしてしまった。 それと同時進行で、ヨナは焦りを感じていた。 まだ退路を断つこともできていない。これ以上、前線で戦っている者達に負担をかける訳にもいかない。どうすべきか迷ったのは一瞬だった。 「各員触腕に攻撃開始。敵をその場に留めます!」 ヨナが声を張り上げ指示を飛ばす。その合図と同時にぎりぎりでベルトルドが退路を断つ位置に滑り込んだ。 次の瞬間、待っていましたと言わんばかりに、エリィがフレイムを盛大にぶっ放す。さらにレイが燃やし尽くせなかった部位をタロットカードで切り刻んだ。 「行くよ、飛翔斬!」 モニカは踊るように上空に跳ね、触腕だけではなく地面にすら衝撃を迸らせた。 「これで終わりです」 地面に縫いつけられたように動きを止める触腕に薙鎖が止めを刺す。 「削岩撃!」 文字通り岩をも削る一撃。パンプティの攻撃は頑丈な触腕に深い傷を負わせたものの決定打とはならなかった。 その近くでジークリートが触腕を撃ち抜くと、フェッリクスもまた大鎌を振りかぶる。だが、逆に暴れるように動く触腕に吹き飛ばされてしまう。すぐに立ち上がったもののどこかぎこちない動きのフェリックスにジークリートは青ざめた。 フェリックスに駆け寄る暇もなく、再びベリアルの薙払いが猛威を振るい始めた。 ジークリートは咄嗟に避け、フェッリクスの方を見ると彼は大鎌で攻撃を受け流していた。 だが、安堵する暇はない。 駆け抜けながら全体を把握しようとするヨナは薙払い気づくのが遅れてしまう。 触腕に吹き飛ばされるより先に、誰かがヨナを突き飛ばした。倒れた先で顔を上げると、遠くにリトルが倒れていた。 呻き声が聞こえる。すぐに駆け寄ろうとするヨナを制止したのは、リトルの相棒であるパンプティだった。 「アンタはやることがあるだろう、行け」 「り、リトルさんは……」 無事ですかと尋ねようとしたが、パンプティが先に口を開いた。 「相棒がアンタを庇ったんだ。アンタはアンタがやるべき仕事をしろ」 ヨナは唇を噛みしめると、すぐさま顔を上げる。周囲を確認すれば、リトル以外にも負傷者が出ている。レイとモニカはまだ動けそうだが、ロゼッタは遠目から見ても重傷だった。 負傷者が半数近く出た以上、全ての触手を切り離すのを待てない。 早急にベリアルを倒さなければ、死者が出るかもしれない。ヨナは自分の考えにゾッとした。その小さな肩にずっしりと重責がのしかかる。 これは命の重みだ。重くて当然だった。 刻一刻と戦況は移り変わる。迷っている時間などない。後悔するのも指示を出した者として責任をとるのもベリアルを打破してからだ。 ヨナは早期決着をつけることを決意する。 「負傷者は離脱。残った者で急所に総攻撃を仕掛けます!」 自身の迷いを振り払うように声を張り上げる。 ヨナの指示に真っ先に反応したのはベルトルドだった。 魂洗い。一瞬の戦技で後方の触腕を両断する。 「相棒、後は任せたよ」 「おう! さっきみてぇな失態はもうしねえよ。任せとけ」 ルーノはそう言い残すと重傷であるロゼッタに回復魔術をかけるべくその場を離脱する。クロエと共に安全な場所までロゼッタを運び出すのを横目で確認するとナツキは目の前の敵に集中する。 「ナギサ、私は大丈夫だから。他の人を回復してあげて」 「モニカさんだって怪我してるでしょ!」 「大丈夫だって。それにさ、ナギサはすぐに来てくれるでしょ」 「絶対に無理しちゃダメですよ、モニカさん。約束ですからね!」 にっこりと笑うモニカにそれ以上何も言うことができなかった。負傷者の元に駆け出す薙鎖を見送ると、モニカは拳を叩き、触腕と相対する。 「ナギサにこれ以上心配かける前に片づけないとね」 好戦的な笑みを浮かべると、鋭く足を踏み込んだ。 「もう許しまセン! 燃やし尽くしマス!」 レイに庇われたエリィはパートナーを傷つけられた怒りのまま敵にフレイムを放つ。 焔が飛び散る中、セプティムは敵の懐に飛び込み、エッジスラストで急所を頭部の触手諸共斬り捨てる。追撃をかけるようにユウもプロージョンを放つと、悲鳴を上げるようにベリアルはその巨体を揺らす。 ついに魂を拘束する鎖が魔方陣と共に空中に浮かび上がる。 ナツキは胴体を踏みつけ、高く飛び上がると、 「これで終わりだ! エッジスラストォ!」 落下の勢いを味方に付け鎖を破壊する。あれほど暴れていたベリアルは急速に力を失い、砂となって消えていく。 こうしてベリアルとのぎりぎりの攻防は浄化師の勝利で終わった。 だが、今回の戦いでの負傷者は多く、戦いが終わった後も慌ただしさは変わらない。 ルーノが天恩天賜をかけると、気を失っていたロゼッタが薄らと目を開ける。 「……クロエ、ごめん。油断しちゃった」 「もう懲り懲りだから、止めてよね……良かった。ロゼッタ、本当に良かった……」 クロエは強ばった表情で笑みを浮かべ、掠れたような声を出す。それはロゼッタも初めて聞くような声だった。 安心させるようにロゼッタは笑おうとするが、体に迸る激痛に顔をひきつらせる。 「っう……暫くはゆっくりしたい、な」 「同感ね」 クロエはそのままロゼッタの横に疲れたように倒れ込んだ。 「フェッリクス」 周辺を片づけながら歩哨するフェッリクスをジークリートは呼び止めた。 「どうしてあのとき大丈夫だなんて言ったの、無理しないでって言ったのに……」 「大丈夫だと答えたのは、十分戦闘可能だったからです」 悲しげに問いかけるジークリートにフェッリクスは表情を変えず、淡々と質問に答える。 「お願い。怪我しているなら、わたしに言ってほしいの、約束してフェッリクス」 「分かりました」 真剣な表情で目を合わせるジークリートにフェッリクスは従順に頷いた。 「あの、セプティムさん、さっきはありがとうございました」 「気にしなくていいですよ、今回勝てたのは方陣相生を持つユウさんのおかげでもありますからね」 (え? セプティムさんが誉めた? 私を?) 「ですが、今後の為にも後衛とはいえど鍛えた方がいいでしょうね」 最後の一言で内心喜んでいたユウはがっくり肩を落とした。 「どうしたんですか、ユウさん。警備の仕事はまだ終わってないですよ」 「は、はい、そうですよね! 負傷者の介抱もありますしね!」 ユウは慌ててセプティムの後を追いかけるのだった。 浄化師達が懸命に守った海の平和。束の間ではあれど地中海の平穏は取り戻されたのだった。
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*** 活躍者 *** |
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該当者なし |
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[24] 薙鎖・ラスカリス 2018/07/10-23:46
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[23] リトル・フェイカー 2018/07/10-22:53
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[22] ナツキ・ヤクト 2018/07/10-19:18
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[21] ヨナ・ミューエ 2018/07/10-06:29 | ||
[20] ヨナ・ミューエ 2018/07/09-11:41 | ||
[19] ジークリート・ノーリッシュ 2018/07/09-01:23 | ||
[18] ロゼッタ・ラクローン 2018/07/09-01:05
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[17] エリィ・ブロッサム 2018/07/08-15:14
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[16] ヨナ・ミューエ 2018/07/08-04:41 | ||
[15] セプティム・リライズ 2018/07/07-20:34 | ||
[14] リトル・フェイカー 2018/07/07-11:12 | ||
[13] ナツキ・ヤクト 2018/07/06-23:45 | ||
[12] ヨナ・ミューエ 2018/07/06-09:00 | ||
[11] セプティム・リライズ 2018/07/05-17:04
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[10] ロゼッタ・ラクローン 2018/07/05-09:33 | ||
[9] 薙鎖・ラスカリス 2018/07/05-07:01 | ||
[8] ジークリート・ノーリッシュ 2018/07/05-01:02
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[7] ルーノ・クロード 2018/07/04-22:23 | ||
[6] エリィ・ブロッサム 2018/07/04-21:34 | ||
[5] ジークリート・ノーリッシュ 2018/07/04-07:02 | ||
[4] ヨナ・ミューエ 2018/07/04-00:43 | ||
[3] リトル・フェイカー 2018/07/03-23:14 | ||
[2] ルーノ・クロード 2018/07/03-21:11 |