【海蝕】釣り場の怪
普通 | すべて
5/8名
【海蝕】釣り場の怪 情報
担当 あさやま GM
タイプ ショート
ジャンル イベント
条件 すべて
難易度 普通
報酬 通常
相談期間 8 日
公開日 2018-07-03 00:00:00
出発日 2018-07-14 00:00:00
帰還日 2018-07-23



~ プロローグ ~

 良く晴れた日のことだった。
 波も穏やかで、風も弱い。深くまで見通せる澄んだ海の輝く地中海。ベレニーチェ海岸の岩場で、男は釣りを楽しんでいた。海水浴場と呼ばれる範囲からは若干外れた、浄化師の目が届きにくい場所で1人海に近づくというのは褒められたことではないだろうが、真昼間、地中海という場所、海水浴場のすぐ近くであれば大丈夫だろうと軽い気持ちで糸を垂らす。釣果が良いとは言えなかったが、男は久しぶりの趣味に興じた。

 そして、太陽も傾きそろそろ空は赤くなるかといった時刻。暗くなる前に切り上げようと、男は片付けを始めた。投げていた竿を回収しようとした時。何かに引っかかったように、竿が引かれる。どこかに引っかかったのとも違うようだったが、どうにも回収できない。何とかならないものかと、男は海を覗き込みながら色々と試し、それから諦めて渋々糸を切ろうとした。

 その時だ。深い海水の濁りの奥に、糸を掴む白が見えたのは。男によれば、それは「手」に見えたという。青白い、また黒く変色したような手。海の底からいくつか伸びた「手」は縋るように、招くように釣り糸を掴み、ゆらゆらと揺らぎ、ゆっくりと近づくようにも見えた。水底からは何か囁くようにこぽこぽと大小の気泡がのぼって来る。
 ぐい、と強く糸が引かれ、竿がしなる。それを持つ男を手繰り寄せるように。彼は釣竿を放り出して逃げ、その足で浄化師へ依頼を持って来た。幸いにも、被害は持参していた釣り具だけだったようだが。

 依頼に来た男は動揺しつつ「幽霊を見た」と述べた。良くある怪談話だ。美しいマリンブルーの底へ沈んだ誰かが、まだ「此方」にいる誰かを手招く話。浄化師諸君には、その白い「手」の正体を確かめ、ベリアルかそれに準ずる何かなら討伐してもらいたい。
 健闘を祈る。


~ 解説 ~

目的:依頼主の目撃した「手」の正体を確かめ、ベリアルであるならば討伐してください。

対象:その後の調査で、「手」は海洋生物型、おそらくはイカ、もしくはタコに類するベリアルではないかと判明しています。垂らされた釣り具に反応したのか、単にその衝動に従って陸地に寄って来たのかは不明です。なお、以下に推定されるベリアルの特徴を添付しておきますので是非活用してください。
・敵の数 1体
・魔力属性 水気
・体長 およそ5メートル
・攻撃 触腕による薙ぎ払い(範囲)・墨吐き(範囲・暗闇のバッドステータス付与)
・弱点 イカに類するのであれば、急所は目と目の間です

場所:目撃報告があるのは岩場ですが、可能であれば平坦で戦闘しやすい浜辺へ誘導することも考えましょう。敵が海中にいることを鑑み、海に入る、また戦闘で引き込まれるのは避けるべきです。


~ ゲームマスターより ~

 読んでくださりありがとうございます。
 不用意な釣り人の、怪談じみた指令ですが、どうやら正体は巨大なイカのベリアルのようです。目撃場所は足場の安定しない岩場になりますので、そのままそこで戦闘される場合は足元に十分お気を付けくださいませ。
戦闘エピソードは初めてなので至らない点もありますが、精一杯やらせていただきますので、しっかり作戦を練ってご参加いただければと思います。よろしくお願いいたします。
 それでは、ご武運を。





◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇

リームス・カプセラ カロル・アンゼリカ
男性 / マドールチェ / 墓守 女性 / マドールチェ / 拷問官
◆目的
「手」の正体であるベリアルの討伐

◆行動
調査結果と、青白い手に見えたとの証言から
イカ型のベリアルと推測し対策
使用:ゴーグル、釣り竿、ルアー、ランタン

夕刻前から釣り始めベリアル誘き出し。
ベリアルにこちらの存在を印象付け
自ら陸へ上がるよう仕向ける。
岩場から浜辺まで誘導しつつ後退。
海から離れ足場の安定した場所で戦闘。魔術真名宣言

・リームス
釣り中は即戦闘に移れるよう待機。異変あれば口寄
戦闘では迎エ討チのスキルセット
向かってくる触腕を鎌で引っ掛けるよう攻撃

・カロル
釣り担当。ベリアル来れば釣り竿を強く動かし
姿確認でき次第、海面から離れる
戦闘では鎌に掛かった触腕へクラッシュスイング
他の腕も同様切断目指す
ローザ・スターリナ ジャック・ヘイリー
女性 / ヴァンピール / 悪魔祓い 男性 / 生成 / 拷問官
「手」を釣り、調査、討伐
◆岩場
依頼人との状況に近づける為に夕方頃に行動
ジャックが釣りを行い、ローザは後方で待機
墨吐き対策でゴーグル着用しておく
回収できない程の引きに当たったら情報共有し戦闘警戒態勢に入る

◆HIT
・ローザ
敵との距離を取りつつ
敵を刺激し逃さない様に威嚇射撃の通常攻撃をしつつ浜辺へ誘導

・ジャック
ランタンを利用し
自分から攻撃はせず自身及び味方に危険が迫れば庇いTM4で触手を薙ぎ払う
海に引き摺り込まれない様注意

◆浜辺
・ローザ
中衛
目と目の間を狙いDE5
味方の位置情報を把握しておく

・ジャック
前衛
基本触手狙い
触手への攻撃が難しそうな場合は本体を狙う
薙ぎ払いに対しTM4使用
墨吐き中は敵により接近
ヨナ・ミューエ ベルトルド・レーヴェ
女性 / エレメンツ / 狂信者 男性 / ライカンスロープ / 断罪者
目標
ベリアルの発見、討伐

目撃現場である岩場で釣りをして敵を見つける&見つかる

ヨ:ひとまず何か掛かるまでは動くに動けませんね
ベ:見てるだけでいいのか。ヨナもやってみるか?
ヨ:いえ。相手がベリアルなら岸辺に私たちがいるだけでそもそも「餌」になるのでは
べ:(苦笑)相変わらず遊び心がないな

ヨナ
釣りは近くで見学するだけ
敵の存在が確認できたら砂浜の方へ
誘導メンバーの到着を待ち迎撃し攻撃開始
急所を攻撃するのに邪魔な触腕を中距離からフレイムで攻撃
邪魔がなくなれば急所への攻撃に集中

ベルトルド
誘導メンバーに危険が迫らないよう援護
急所や触腕に攻撃するが狙われている仲間がいればフォロー
たいまつを投げつける
エフド・ジャーファル ラファエラ・デル・セニオ
男性 / 人間 / 墓守 女性 / ヴァンピール / 悪魔祓い
【目的】
イカベリアル(であろうもの)の討伐

【作戦】
依頼者に倣って何人かが夕刻に目撃地で釣りを試みる。敵が現れたらランタンの灯りをつける。イカは光に寄ってくると思われるからだ。
そして砂浜まで逃げて誘い込む。岩場で戦うのは危険だ。ラファエラは灯りを持たずボウガンを撃って敵を挑発しながら逃げてもらう。俺は彼女の先を行かず、もし触腕が来たら命削りで跳ね飛ばす。
砂浜への誘導に成功したら、俺は真っ先に触腕の間合いに入り、攻めてくる触腕を命削りで跳ね飛ばしながら味方が攻撃するチャンスを作る。
ラファエラには、敵の間合いの外からひたすら弱点を撃ってもらう。

ゴーグルをかけているのは、イカ墨で目をやられないためだ。
ロス・レッグ シンティラ・ウェルシコロル
男性 / ライカンスロープ / 拷問官 女性 / エレメンツ / 陰陽師
■目的
幽霊の正体を突き止める→ベリアル退治

■行動
∇ロス
狼姿で仲間が釣りをしている様子を見
敵が誘導に引っ掛かったら
気付かれないよう距離を置いて海側から仲間と挟み込む位置確保
戦闘開始で人状態へ
距離を詰め
敵の攻撃は回避に務め
献魂のレスポンス使用
地烈魔術による一撃で触手切り落とし
再生するならダメージ覚悟で本体に攻撃を

∇ティ
浜辺側で初めは灯りをつけず
仲間の釣りを距離置いて見守り
釣りに敵が引っ掛かれば
松明ランタン火を灯し符攻撃しながら浜辺へ誘導
ベルトルドの傍に
様子を見ながら回復魔術をメインに
バットステータス掛かるなら浄化結界を
余裕あれば仲間が攻撃し辛い触手から狙って援護攻撃
仲間が拘束されたら某足を集中攻撃


~ リザルトノベル ~

●幽霊退治の準備
 ベリアルと思われる「手」の調査と討伐のため、浄化師たちは集まって打ち合わせをしていた。依頼を受けた者の中には知り合いだったのか親し気な様子で手を振り、挨拶する者もあり、自己紹介と情報共有はスムーズに進む。
「ベリアルを誘き出して陸へ上がるよう仕向け、浜辺まで誘導しつつ後退。できるだけ海から離れて足場の安定した場所で戦闘。……という感じでしょうか」
 カロル・アンゼリカが広げた海岸付近の地図を指しながら、リームス・カプセラが大雑把な作戦を口にした。足場が悪いと報告されている目撃場所から、仮に近くの砂浜へ地図に線を引いてみる。
「異論ないよ。より状況を近づけるのならば、夕暮れ時を狙った方が良さそうかな……? 戦闘が長引けば暗くなると思われるから、光源の用意もしないといけなくなってしまうがね」
 そこへローザ・スターリナは指令と一緒に渡されたベリアルの情報を眺めて付け足す。
「問題ない。夕刻の間にケリをつけられるのが望ましいな。……夕陽を背に戦うの、格好よくないか?」
「何ですかそれは」
「……冗談はともかく」
 ベルトルド・レーヴェが真面目な言葉の間にぽつりと零した声は拾われ、パートナーのヨナ・ミューエは微妙な顔をしていた。こほん、と1つ咳をして、彼は話を戻そうとする。
「え、冗談か? 普通にカッコイイと思っけど! こう荒野で夕日に向かって去るとか!
夕日とか月とかは、絵になっよなー」
 快活に言うロス・レッグは、にぃ、と楽しそうに笑った。その隣で、シンティラ・ウェルシコロルは微妙な顔をしていたけれど。

 ともあれ今回の指令では、できるだけランタン・ゴーグルを装備した上で夕刻に釣りでベリアルをおびき出し、その後足場の良い海岸へ移動して戦闘、という流れを全員で確認した。


●夕釣り
「幽霊退治たぁ、いかにも“エクソシスト”らしい仕事だな」
 夕暮れ時、目撃情報のあった岩場にて、釣りをするものと待機するものに分かれて準備をする際中、ラファエラ・デル・セニオは何気なくパートナーのエフド・ジャーファルへ声をかけた。いわゆる「寄せ」のための灯りを灯しながら、彼も配置について軽く応える。「手の正体はベリアルということだが、依頼主がそれっぽいものを見た事に変わりはない。
 教団が人払いしたおかげで、見える範囲に一般人はいなかった。ベリアルが移動していなければ浄化師たちの所へ寄ってくるはずである。釣竿に余分な灯り、目を守るゴーグル。この指令のために調達した装備を付け、沈む太陽を気にしながら、それぞれ釣りにいそしんだり、海中を覗き込み警戒を続けたり、少し離れた場所からベリアルが現れた後の誘導や戦闘に向けて待機したり、打ち合わせ通りに作業を進める。

「幽霊かっつーか、これ幽霊じゃねぇくっても白いのがゆら~ゆら~っつーのが怖ぇような」
 狼の姿で岩場に伏せたロスと、岩に背を預けたシンティラは「幽霊」について考察というか、話をしていた。
「ミミズの水にふやけたのとか」
「それ幽霊じゃねぇ……っつーか怖ぇのと違うんじゃ?」
 釣り場から少し離れた所で、ベリアルが出現しても見つからないようにしながら、待機組の2人はのんびりと会話している。もちろん、使う予定のゴーグルやたいまつなんかを確認しながら。
「まぁ幽霊っつー言葉だけで悲鳴上げた女の子知ってっけどなーあれは可愛い! 気が強ぇ人だったからギャップが!」
「それ相手の人にも言いました?」
 少々いぶかし気な顔をしながら、シンティラは楽しそうに尻尾を振るパートナーを見下ろしながら問う。
「怒ってた」
 あまり悪びれてもいないように、ロスはふすりと鼻を鳴らした。

「ひとまず何か掛かるまでは動くに動けませんね」
 赤くなった空と染まった海を見ながら、ヨナは岩場の端で待機していた。決して良いとは言えない足場。実際彼女は何度か躓きかけている。が、目撃情報があったベリアルの他に障害になりそうなモノが周囲にないか確認しに行っていたベルトルドは、特に苦労した様子もなく歩いて一旦彼女の所へ戻って来た。
「見てるだけでいいのか。ヨナもやってみるか?」
「いえ。相手がベリアルなら岸辺に私たちがいるだけでそもそも「餌」になるのでは」
「相変わらず遊び心がないな」
 いつも通りのヨナに苦笑して、ベルトルドは彼女の隣へ腰を下ろした。

「ふふ、巨大イカの一本釣りなんて初めてだわ」
 カロルは岩場にちょんと腰掛け、浮きの浮いた水面を見つめながら楽しそうに笑った。リームスは至って冷静に、装備の確認をしながら釣竿の反応を横から見ている。
「釣らないし、釣れないと思う」
「こういうのは心意気が大切なのよ。……幽霊怖いって言ってる女子ってかわいく見えるかしら」
「?」
「何でもないわよう」
 垂らした糸をゆらゆらと揺らしながら、カロルはちらりと横で待機するリームスを見やる。小さく呟いた声は、どうやらちゃんと届いていなかったようで。何か、と言うように首を傾げた彼へにっこり笑って、また糸の先のルアーを揺らした。リームスの方でも、釣りに戻ってしまったカロルに発言内容を追求する気はないようだった。

 目撃者が慌てて逃げ出したというのだから、さぞ恐ろしい思いをしたのだろう。そんなことを考えながら、ローザは釣り糸を垂らすパートナーを後方から眺める。
「そのベリアルは恐怖を煽る造形をしているのだろうか?」
「不用心な一般人がそれで逃げ帰れたんだから良いんじゃねぇの」
 相方ジャック・ヘイリーの方は敵の細かな形に興味などないらしく、水面を見つめたまま返した。落とされた浮きが動く様子はない。
「釣りをした事が無いんだが……これで釣れるのか?」
「俺もやった事ねぇよ」
「……おっさんというものは、釣りを好むイメージだった」
「ンな訳あるかよ……海なんざ、故郷に無かったしな」
 慣れない道具の扱いはぎこちないが、2人して糸の先を眺めた。

 ざぁざぁと揺れる波の奥で、ゆらりと「手」が招いたのは、そろそろ日も落ちようかというころ、皆が引寄せ目的以外のランタンやたいまつにも火を入れた時だった。垂らされた糸が、ほとんど同時に引かれて竿が大きくしなる。
 白く水膨れたように太い「手」は呼ぶように揺れ、見慣れたベリアルの触手らしい黒色はぐいと糸を引いて獲物を引きずり込もうとしていた。ゆっくりと近づくソレの動きは早くない。だがその代わりのように、釣竿を引く力は強い。引きずり込まれそうなほどだ。
「竿離すぞ、釣るのは無理だ」
 持っていた釣竿は、声を上げたジャックがそれを離した途端、勢いよく水中へ引きずり込まれていった。依頼主が釣竿を離さなかったら、その場に留まっていたら……浄化師でもそのまま釣り上げるのは不可能と思われた。一般人がどうなるかは言うまでもない。のろのろと水面へ上がって来たソレは、事前の報告通り水生のベリアル。だが、いくつか変色した触腕と巨大な体躯はとてもイカには見えない。触腕に捕まらないよう下がった浄化師たちを追いかけてずるずると陸へ乗り上げたソレは、ぎょろりと対の目を動かして浄化師たちを睨みつけた。


●戦闘
 こちらをターゲッティングしたのを確認し、浄化師たちは足場の安定した砂浜の方へベリアルを誘導しにかかる。特別挑発などの行動を取る必要もないようで、ベリアルは獲物を求めて後を追ってきた。それぞれに遠距離で威嚇射撃を飛ばしつつ、敵の比較的鈍い動きに合わせて移動する。
「こういうのって幽霊に入るのか?」
「神秘性の欠片もないわね。がっかりな真実がまた一つ増えたわ。ほらこっち見なさいよ。こんな憂き世から一抜けさせたげるから。そして私にお金と実績が入れば、win-winの成立よ」
 まだ軽口と挑発を口にしながら、ラファエラとエフドは一定距離を保って後退した。ほとんどは触腕で防がれていたが、牽制のボウガンは十分に相手を苛立たせているようだった。移動の鈍いことのように、ベリアルはそこまで器用な動きができる個体ではないらしい。誘導する攻撃役を狙う触腕の動きはどれも重く単調だ。
「援護する」
 するりと岩場を抜けて近づいて来たベルトルドが短く告げる。彼のパートナーは一足先に戦闘予定地に向かい、間合いに入り次第攻撃を続けるようだ。
「あら、ライカンスロープの紳士に会ったのは初めてよ。細マッチョなブラックパンサーのエスコート付きの、好待遇な仕事になりそうだわ」
 エフドはしっかりと彼女の後で武器を構えていたけれど、ラファエラは笑って軽口を叩いた。

 海岸ぎりぎりを這うように移動するベリアルは、やがて誘い出されて平坦な砂浜まで移動した。完全に陸へ上がったわけではなく半身だけ乗り上げた状態だ。戦いやすい所を、と事前に打ち合わせた地点で、それぞれが改めて魔術真名を唱え、ベリアルを迎え討つ。

「ティ、向こうに!」
「回復魔術かけるから、怪我したら呼んでくださいね」
 ベリアルが岩場や海中に戻るのを防ぐため、後ろから挟み込む位置を確保したロスは、ベリアルの射程の外へとシンティラを促した。全員の怪我や状態を気にかけながら、彼女は人状態になって構えたパートナーから離れてベリアルの射程外、護衛を務めると言ってくれていたベルトルドの方へ移動する。

『トゥー・フィー・エゴ・エリス』
 声を揃えて唱え、リームスとカロルはそれぞれの武器を触腕へ向ける。巨大なそれが横薙ぎに繰り出す攻撃範囲は広い。風切り音と共に振り抜かれた触腕は、しかしそれを引っ掛けた鎌と、斧によって綺麗に切断された。断面からは黒く濁った体液が溢れ、切り落とされた触腕は激しくのたうっている。幸運なことに、落ちた触腕が即座に再生することはないようだった。
「再生速度はそんなに早くないのね」
「そうみたいだね、良かった」
 情報共有として声に出し、それでも、武器を振る手は休めなかった。

 当たれば痛い、が、動きは遅い。このベリアルはそういう類のモノであるようだ。幸いにも前衛は皆直撃を免れている。何本かの触腕は切断され、魔術や符、投げられたたいまつで焼き切られていた。そんな状況に焦りを覚えたのだろう、ベリアルは一度動きを止め、前方へ墨を吹き掛けた。いくらゴーグルで防御しているとはいえ、拭き取るまでの数秒は周囲が見えない状態となる。雨のように大量の墨を全て避けるのは難しい。黒い墨を被った浄化師たちは、大なり小なり味方への誤爆を警戒して攻撃の手を緩めた。
「奴はその場から動いてねぇ! 俺は左前に居る! 気にせず撃て!」
 数歩ベリアルの方へ踏み込んだジャックが叫ぶ。回復魔術を使える者もいるのだから少し経てば視界も晴れるだろうが、ベリアル相手に、その少しが惜しかったのだろう。
「じゃあ避けろおっさん!」
「おい無茶言うな阿保!」
 1番に反応したのはローザだった。戦闘中だからか少々乱暴に告げて攻撃を再開する。元々仲間の位置は把握済みだったのか、その攻撃は危なげなくベリアルだけに命中していたが。

 事前準備や回復魔術のおかげか、墨による視界妨害はいくらもしないうちになくなった。急所への攻撃は相変わらず触腕が防いでしまっていたが、落とされた触腕の数も増えていた。人の腕ほどもある太さの触手が砂浜の上でどす黒い体液を吹きながらびたびた跳ねているというのもなかなかに不気味な光景ではあるが。
 灯り取りに使われていたたいまつがまた1本投げられる。触腕の付け根に当たったその炎を助長するように、ヨナのフレイムが続けて命中した。連続して展開された魔方陣から青紫の炎が触腕へ飛び、やがて焼き切って落ちる。

 不利を悟ったベリアルは後退しようとしていたが、後ろはロスによって押さえられている。結局、背後からも攻撃をくらって慌てたように根元部分しかなくなった触腕を振り回すだけだった。
 再生能力がないわけでもないようで、最初に落とした触腕はじわじわ新しく再生されかけていた。しかしそれでも、急所を守るほど丈夫なわけではない。急所……目と目の間に攻撃が集中し、触腕の庇いきれなかったものが命中した。ベリアルは濁った悲鳴をあげる。が、そのころには暴れて振り回す触腕はほとんど残されていなかった。水中に浮かんだ鎖と魔方陣は迅速に破壊され、好き勝手暴れていた巨大なイカ型ベリアルはあっさりと海水に沈んだ。


●後始末
「でかくても最後は灰か。片付けに手間取らないのはいい事だ」
 打ち寄せる波に、ベリアルだったものが洗われて崩れていく。しばらく経ってから警戒を解いたエフドが小さく呟いた。幸運だったのは、誰も触腕の直撃による大きな怪我をしなかったこと、最初に引きずり込まれていた釣竿が、波に崩される灰の中から見つかったことだろうか。
 それぞれが携帯していた灯りを掲げなければ後始末に手間取るほど、周りは暗くなっている。すっかり夕焼けの赤から夜の色に変わった空には星が瞬いていた。ベリアルとの戦闘跡が残る砂浜の後始末ももちろん大事だが、今回の作戦で使われた通り、海に近い灯りは生き物を寄せる。早急に片づけを終わらせて帰還するのが良い選択だろう。

 夜も更け始めた暗い海岸。浄化師たちは急いで周囲の片づけを終わらせ、それから報告のため帰路に着いた。海岸はすでに、ベリアルが出たとは思えないほど静かに波の音だけが聞こえていた。



【海蝕】釣り場の怪
(執筆:あさやま GM)



*** 活躍者 ***


該当者なし




作戦掲示板

[1] エノク・アゼル 2018/07/03-00:00

ここは、本指令の作戦会議などを行う場だ。
まずは、参加する仲間へ挨拶し、コミュニケーションを取るのが良いだろう。  
 

[15] リームス・カプセラ 2018/07/13-23:43

購買部で装備を買い足していたらまた懐事情が……。

プランは提出しました。
行動内容は先の発言の通りです。

新たに参加された二組の方々もよろしくお願いします。心強いです。
では。頑張りましょう。  
 

[14] ラファエラ・デル・セニオ 2018/07/13-22:00

細マッチョなブラックパンサーのエスコート付きの、好待遇な仕事になりそうだわ。
セニョール・レーヴェ(ベルトルド)、あなたみたいなナイスガイの見てる所で、奴の目の間を針山にするよう努めましょう。  
 

[13] ローザ・スターリナ 2018/07/13-21:47

再度顔を出すのが遅れてしまって申し訳ない…。
エフドさん達、ロスさん達、よろしくお願いする。

一応、ジャックも釣りに参加しようと思う。
技術は全く持ち合わせていないのだが…魚を狙う訳ではないからな。

そして私達二人共誘導に参加しよう。
私は距離を取って通常攻撃で逃げない様に少し刺激、ジャックはランタンを持ちこちらから攻撃はせず緊急時に献魂一擲で触手を処理しつつ誘導、といった形だな。

足場を確保できたら海へ逃さない様気を付けながら処理だな。
ジャックも前線で立ち回る様だ。

そろそろ出発時刻になってしまうな。無事に作戦が成功する様尽力しよう。  
 

[12] シンティラ・ウェルシコロル 2018/07/13-21:32

>シンティラやラファエラに危険が迫った時の
ありがとうございます(照)あまりそういうの体験ないので、こういう時、嬉しいです。
お言葉に甘えて、ベルトルドさんの後ろで頑張ります。回復魔術ならお任せ下さい。  
 

[11] ロス・レッグ 2018/07/13-21:20

へへー!(ベルトルドに手を振りつつ)
>…冗談はともかく
え、冗談か!? 普通にカッコイイと思っけど! こう荒野で夕日に向かって去るとか!
夕日とか月とかは、絵になっよなー

はは、大丈夫大丈夫、書きかけ(仮プラン)で寝て、締め切り直前で作戦掲示板読む暇なく書き書きすっ事が数回な俺がここに!!
ティ「ロスさん、それはバレたら…いえ、読み返すと明らかに寝ぼけて掲示板書き込み何度かしてるので、周知なのかもしれませんが(顔覆い)」

とりあえず、現状で充分がーっといけそうなんで、作戦とか、マジ感謝! んじゃ、プランがーっと行って来っな!  
 

[10] ベルトルド・レーヴェ 2018/07/13-08:35

(エフド達とロス達に手を振って軽く挨拶しつつ)
リームスのいう流れで問題ない。夕刻の間にケリをつけられるのが望ましいな。
夕陽を背に戦うの、格好よくないか?

ヨナ「何ですかそれは」

…冗談はともかく、俺も誘導で動く予定だ。挑発するというよりは万が一シンティラやラファエラに危険が迫った時の対応だ。

十分おびき寄せたら移動手段から奪うのは当然だな。
そこらは行動表明している者が多いので俺たちは触腕ないし急所への攻撃をプランに盛り込んでおく。
ヨナは「一つのスキルを突き詰めてみたい」やらで弱点属性ではないがフレイムを使うらしい。

エモノが引っかかるまでは手持無沙汰だし釣りも参加するか。

っと、出発直前は顔だせなさそうなんでひとまずプランは提出しておく。
夕方くらいにチェック位はできると思うが…、あまり融通が利かなくてすまない。  
 

[9] ロス・レッグ 2018/07/13-00:12

当日の参加になっな、拷問官のロスと、陰陽師のティ(シンティラ)な、ヨロシク。

んじゃ、ティが灯り持って符で攻撃しながら砂浜へ。
俺は、ちと距離置いて様子見て、砂浜へと進む敵の後ろをなるべく気付かれねぇようについて、戦闘開始にははさむように攻撃予定。
狼姿だと夜目効くと思っし、後をつけてっ時は狼姿予定。んな感じ?  
 

[8] エフド・ジャーファル 2018/07/12-22:23

期限近くで済みませんが、参加させていただきます。
墓守のエフド・ジャーファルと、悪魔祓いのラファエラ・デル・セニオです。

既に方針はほぼ固まってるようで、時間もさしてないので、自分たちも今出ている作戦に従います。

敵の釣り出しに成功したら、俺は明かりをつけ、ラファエラはボウガンで攻撃しながら砂浜まで逃げて誘い出します。
砂浜に出たら、俺はすぐに触腕の間合いに入って、命削りで触腕の攻撃を跳ね飛ばしながら皆さんの攻撃の時間を稼ぐ。
ラファエラにはひたすら弱点を撃たせます。

以上が、大まかな行動予定です。  
 

[7] リームス・カプセラ 2018/07/12-22:00

では、夕刻前から釣りを始め、ベリアルが掛かればあえてこちらの姿を認識させ
陸(岩場)まで上がらせる。その後、砂浜へ誘導し戦闘、と。
……僕とカロルは近接攻撃がメインとなりますので、
誘導時に引き付けるための攻撃を行うのでしたら他の方に依頼したいところです。

僕の方の動きとしては。
カロルが釣り。僕は傍らですぐ戦闘行動に移れるよう待機。
ベリアルが現れ岩場まで這い出てきたら、こちらの姿を見せつつ後退(岩場→浜辺)。
すぐに海に戻れず、且つ足場も安定した場所まで誘導できたら戦闘開始。
触腕狙いで行こうかなと考えています。
鎌と斧で切断目指し、早期に範囲攻撃の幅を狭めたいです。

触腕の再生が見られても、仲間が急所を打つまで対応を続ける方針です。
切断後もしばらく動いているようなら僕の方で引き受けます。
魔術属性の相性が悪いので支援的な動きがいいかなと。
逆にカロルは有利なので存分に斧を振るって貰います。

出発まであまり時間もなくなってきたので軽く行動表明しましたが
皆さんの動きや意見によっては変更します。
プランは出発時刻まで見直していることが多いので諸々対応可能です。  
 

[6] ヨナ・ミューエ 2018/07/12-07:35

依頼者の話だと手のようなものを目撃したあと一目散に逃げてますから
そのまま釣りを続行していれば確かにおびき寄せられそうですね。

夜の利点といえば光で誘導できる位なので、その部分がクリアできるなら
敢えて選択する必要もなさそうですね。
やはり目撃時間と合致した夕刻で行きましょうか。
念のためランタン等の明かりも持参していきます。

目撃地点は岩場ですが足場が悪いと一方的に不利になりそうなのでうまく砂浜まで誘導できれば。
ベリアルの習性を利用してこちらの存在に気付かせれば誘導は容易と考えていいでしょうか。
以前試して上手くいったのは魔力弾を空打ちしての挑発です。

別の軟体動物ベリアルの情報では触腕に再生機能があったんですが今回の個体はどうでしょうね。
こちらの人員も十分とは言えないので再生されると少しやっかいです。
OP情報になければ「ない」方向で考えて行きたいと思いますが、一応。

暗闇対策はゴーグルを持っていきますね。
購買部にあるのはつい最近知りました…。  
 

[5] リームス・カプセラ 2018/07/11-22:44

ヨナさん、ベルトルドさんもよろしくお願いします。

5mの体長なので、釣り上げるのは難しそうですが……、
釣り糸に反応し、その先に生物(僕達)の姿を認めれば
自ら陸へ這い上がってくるようなイメージでいました。

時間帯。
夜ですと、周囲は海、岩場、砂浜。で光源があるとすれば
僕達が持ち込んだランタン等の光と、出ていれば月明かりぐらいでしょうか。
正直フィールド全体を見渡せず、不利な状況かなと思いますが……。
光で敵の誘導がしやすくなるのも確かですね。悩ましいところです。

日が暮れる前から釣りを始めて、
敵が掛かったタイミング次第というのもありかなとは思いました。
どちらにしろ戦闘が夜間になる場合の備えは必要ですね。

成程。ゴーグル。
バッドステータスが付与されるにしても、物理的に目を防護するのも大切ですね。
購買部で販売されているものだと、
・ゴーグル
・釣り竿
・ルアー
・ランタンやたいまつ
辺りが使えますでしょうか。
海洋図鑑はイカタコの性質を確認等、予習できるかもしれません。  
 

[4] ヨナ・ミューエ 2018/07/11-12:04

遅れての参加で失礼します。狂信者ヨナ・ミューエおよびベルトルド・レーヴェ。

最近急に海でのベリアル目撃情報が増えましたし今回も幽霊ではなくその類でしょうか。
この世界では幽霊は実際「いる」ものですし、いると確信できる存在と考えると
ローザさんと同じく私もそれほど怖いという感じはしませんね。

ま、それはともかくとして。
おびき寄せることに関してはおリームスさんの言う通り釣りを試してみましょう。
岩場なので完全に引き上げるのは体力を減らす等してからじゃないと厳しそうですか。
逆に私たちが海へ引き込まれないように十分注意しなければと思います。

イカ…かどうかは見てからじゃないとわからなそうですが海洋生物の多くは光に寄ってくる習性があるみたいですので、
日暮れ前に決するか、それとも夜を待って光源でおびき寄せ(ただしこちらも視界が悪くなる)をするかどちらが良いでしょうね。  
 

[3] ローザ・スターリナ 2018/07/11-01:16

ヴァンピールの悪魔祓い、ローザ・スターリナだ。
契約相手はデモンの拷問官、ジャック・ヘイリー。
どうぞ、よろしくお願いする。

ああ「海洋生物型のベリアル」という認識で備えて大丈夫だろう。
とはいえ、依頼人の様子は中々に真に迫るものだったな。私は幽霊を怖いとは思わないが…。
人の恐怖を刺激する見た目をしているかもしれないな。

リームスさんの言う流れで異論無いよ。
より状況を近づけるのならば、夕暮れ時を狙った方が良さそうかな…?
その場合戦闘が長引けば完全に日が沈み暗くなると思われるから、光源の用意もしないといけなくなってしまうがね。

それと、「墨吐き」攻撃の対策としてゴーグルを持っていくのはどうだろう?
完全な対策にはならないだろうが…無いよりはマシだろう。  
 

[2] リームス・カプセラ 2018/07/10-23:03

リームス・カプセラ。及びカロル・アンゼリカ。
共にマドールチェの、墓守と拷問官です。よろしくお願いします。

依頼主は幽霊だと言っていたようですが、
僕達はその後の調査報告を聞いているということで
「海洋生物型のベリアル」へ備える方向でよさそうですね。

ベリアルは常時姿を見せているわけではないようなので
まずは依頼主が釣りをしていた岩場にて誘き出し、
その後浜辺へ誘導、戦闘の流れでしょうか。
……誘き出し。同じように釣り、ですかね?