~ プロローグ ~ |
ローレント・ディーレは夏のある日、森で幸せを探していた。 |
~ 解説 ~ |
森林にて、コカトリス四体との戦闘です。 |
~ ゲームマスターより ~ |
はじめまして、もしくはお久しぶりです。あいきとうかです。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
|
||||||||
現場で見た光景に目を瞠る 人が…襲われてます…早く、助けないと……! 走って行くクリスの後ろから術符による通常攻撃で援護 本当は…話して理解し合えたら良かったのですが…… こちらへ気を向けて、クリスが攻撃をしやすいように コカトリスがクリスの方へ気を向けたら、通常攻撃しつつ 仲間達の状態に気を配り、傷ついた仲間には天恩天賜で回復を 討伐が終わったら、悲しい顔で手を合わせる この子達にしたら…私達の方が侵入者だったんですよね…… ローレントが降りてきたら怪我はないか確認 傷ついてた時は回復 え、私の意見……ですか? 私は…一生懸命任務を全うする方って、素敵だと思います… ローレントさんにもそう言う方がきっといるのではと… |
||||||||
|
||||||||
ケセランパサラン…いるならわたしも見てみたいな え、シリウスは知らない? 白いわたげみたいな…今度絵本で見せてあげる 現場に急行 ローレントさんに声かけ 教団から派遣されてきました 安全が確保されるまで 木の上にいてください 前衛の人の後ろから 回復とサポート 退魔律令も使い魔法攻撃 話を聞いて あなた達と戦いにきたんじゃないの 怪我をした人に 天恩天賜 シアちゃんやティちゃんと声をかけ連携して 戦闘後 ローレントさんの怪我を確認 幸せを見つけたい気持ちはわかります でも 危険区域に入ってはダメ いつも助けが間に合うとは限りませんよ 精一杯怖い顔で言う 反省していたなら笑顔 ケセランパサランは無理だけれど 四つ葉のクローバーなら一緒に探せます |
||||||||
|
||||||||
*目的 コカトリスを撃破する *行動 木の上に逃げたローレントはおそらく大丈夫だろうと判断してコカトリスとの戦いに集中します ともあれ安全のためにまずは木から離しましょう 説得をするという方がいるなら待ちます……無駄だとは思います 戦闘時は木から誘導して戦闘。僕が前衛となりコカトリスを抑え込み、その間にユウさんは後衛から支援してもらいます コカトリスの属性は地属性。つまりは土 なのでユウさんには【アクアエッジ】による攻撃を行ってもらいます 敵がひるんだところで【魂洗い】による斬撃を打ち込みます 敵撃退後、まだ戦ってる方がいるなら近い場所の方を支援に行きます 戦闘後は残党がいないか探索 卵を発見したら持ち帰ります |
||||||||
|
||||||||
■ 「あんま苛めねぇでやってくんねぇ? 「お話出来ると聞いたのですが ■ ローレントがいる樹と1匹の間に入って 盾と献魂で引き剥がす ∇ティ 退魔律令使用 敵と距離を詰め鬼門封印 敵からの攻撃は回避中心 攻撃受けたら退魔律令 少し距離を置き符攻撃 接近戦時にも符攻撃 無理ならナイフ投げて★撤退 ∇ロス ティの★撤退まで様子見 敵との距離は詰めておく ティが撤退したら入れ替りに前衛位置へ 献魂一擲使用 距離を詰め魔術地烈 攻撃は盾で受止め そのまま押し樹と挟めたら動かず ∇ティ★撤退後 鬼門封印かけ ロスの攻撃から逃げられないよう 左右の羽か地面を攻撃し足止め 敵が身動き出来なくなれば 符攻撃で畳み掛ける 「その内短剣扱いたいのですが まだ早いですよね |
||||||||
~ リザルトノベル ~ |
●
教皇国家アークソサエティ、ソレイユ地区。ピストーラ狩猟場の責任者からの依頼は、珍しいものではなかった。 「狩猟場にコカトリスが住み着いた。その区画を立ち入り禁止として閉鎖しているが、いつ被害が出るか分からないので、退治してほしい」 教団はこれを指令として発し、四組の浄化師が参加することになった。 それから間もなく――教団が移動用に用意した、馬車の中。 浄化師たちは外を見ていたり、腕を組んで座っていたり、目を閉じていたりと、思い思いの姿勢で座っていた。八人も乗っているが、大型の馬車なのでそれほど苦でもない。やがて狩猟場が見え、教団の制服をまとった御者が馬車をとめた。 「……ん?」 ぐっと伸びをしたライカンスロープの『ロス・レッグ』が初めに違和感を覚えた。狩猟場は今日もにぎわっているようだ。客たちはコカトリスがすぐ近くにいることなど知らないのだろう。 「どうしました、ロスさ……」 「聞こえた!」 一瞬だけ狼の姿になったロスは、鋭敏な聴覚で確かに声を聞いた。走りながら人の姿に戻ったロスを、パートナーの『シンティラ・ウェルシコロル』が迷いなく追いかける。 「何事ですか」 先に管理者に挨拶する予定でしょう、と眉をひそめながらも『セプティム・リライズ』が一拍遅れて走り出し、『ユウ・ブレイハート』も続いた。 さっと顔を見あわせた『リチェルカーレ・リモージュ』、『シリウス・セイアッド』、『アリシア・ムーンライト』、『クリストフ・フォンシラー』もそれぞれ武器を手にして走り出す。なにか異常な事態が起きていることは確かだ。 森を突っ切るようにしばらく走ったところで、全員が悲鳴のような声を聞いた。恐らくずっと叫んでいるのだろう、声はかすれている。 「助けて、浄化師様ー!」 大樹の上には狩猟場の管理者の制服をまとい、腕章を身につけた男がいた。なにをしたのか、激昂している様子のコカトリス四体が、男がしがみついている木を攻撃している。 先行していたロスが一体と木の間に割って入り、盾を使って引きはがした。 「ここ、立ち入り禁止区域ですよね……!」 片手剣を振るい、セプティムが二体目を退かせる。 「教団から派遣されてきました。安全が確保されるまで、木の上にいてください!」 シリウスが三体目を後退させている間に、リチェルカーレが男に優しく声をかけた。 「そこの人! とりあえずそこでじっとしてて! 今、討伐するから!」 呪符を用いてアリシアが離れた位置から四体目を遠ざける。セプティムと同じ疑問を抱きつつ、クリストフはリチェルカーレと異口同音で言い放った。 怯え切っていた狩猟場の男はそこでようやく、助けがきたと安堵の息をつく。 「コカトリスはお話ができると聞きました」 「話を聞いて。あなたたちと戦いにきたんじゃないの」 ロスの隣で呪符を構えたシンティラが呟き、リチェルカーレは必死に訴えた。 「ゴゲエエエエ!」 「ひええっ」 だが、返ってきたのは四体からの威嚇と男の情けない声だけだ。リチェルカーレはぎゅっと杖を握り締め、アリシアもわずかに目を伏せる。 「聞いてはくれないようですね」 鋭いつり目に戦意を宿し、ユウが杖を構えた。元から期待していなかった様子のセプティムも片手剣を持ち直す。 敵は四体、浄化師は四組。一組一体を相手どる、というのが基本の戦術になることは明白だった。 ● 説得はできないと悟り、リチェルカーレは肩を落とした。 そんな彼女の前に、シリウスが立つ。 「お前は後ろに」 「……うん」 深呼吸をひとつ。リチェルカーレは意を決して、強い意思がこもった瞳でシリウスの向こうにいるコカトリスを見つめた。 「ゴゲエエエ!」 濁った声で咆哮したコカトリスは、自分たちを説得しようとした少女、リチェルカーレを目がけて突進してくる。シリウスは躊躇うことなく、抜き放った片手剣でコカトリスをとめた。 「……っ!」 くちばしで腹や胸元をつつかれるのは防げたが、どうしてもコカトリスの勢いを殺しきれずに踵が下がる。だが、ここを突破されればリチェルカーレや、そのさらに後ろの大樹の上にいる一般人が傷を負うのだ。 「はぁっ!」 裂ぱくの叫びとともに、コカトリスのくちばしを防いでいた剣を振るう。コカトリスは自ら後ろに跳ねることで威力を殺したようだった。 会話が可能になるだけの知能はある、ということらしい。ただし、激昂している今、平静を欠いたことで攻撃も単調なものになっているようだった。そうでなくては、前衛に立つシリウスを無視して、リチェルカーレに狙いは定めない。 「シリウス……!」 「問題ない」 応じると同時に、シリウスは剣をおさめて地を蹴る。間合いを一瞬でつめ、コカトリスの首を刎ねるため抜刀する。鞘から剣が抜かれる音を置き去りにするような速度で、白刃が鶏のような姿形の化け物に迫った。 「ギエエエ!」 コカトリスはさらに後方に逃れようとしたが、そこには木があった。背を幹にぶつけたコカトリスの胸元を、シリウスが一閃する。コカトリスがけたたましく絶叫。 「ち……っ!」 属性の相性はよく、手ごたえも確かにあった。だがコカトリスはまだ存命のようだ。 杖を握り締めてシリウスとコカトリスを見つめていたリチェルカーレは、はっとして左右に視線を走らせる。 (シアちゃん、ティちゃん) どちらも補助の手が追いついていない、ということはなさそうだ。 ユウに至っては敵を惹きつける役を担っているセプティムを、しっかりと援護している。シンティラは策があるらしく、ロスを差し置いてコカトリスに接近戦を挑んでいた。 (大丈夫なのかな) 心配だが、パートナーであるロスが見守っているのだから、問題はないのだろう。 シリウスもまた、近くで戦闘を繰り広げている前衛たちの様子を横目に捕らえていた。素早く、攻撃も重くはあるが決して難敵ではないコカトリスを相手に、苦戦を強いられている者はいないようだ。 コカトリスたちは、狩猟場の男がいる木からしっかりと距離をとらされている。 「こちらもすぐに終わらせよう」 再び剣をおさめ、意識を集中させる。膂力を向上させるイメージ。想像は瞬き一回にも満たない間をおいて、実感に変わる。 「ゴゲエエ!」 追いつめられていたコカトリスが絶叫し、シリウスに突撃してきた。シリウスは細く息を吐き、剣を抜く。斬った、という感覚。 どさりと首を深く斬られたコカトリスが倒れた。剣を鞘にしまい、シリウスはリチェルカーレを振り返る。少女はぱたぱたとシリウスに駆け寄り、杖先を青年に向けた。 「回復するね」 最後に受けてしまったらしい傷が、すっと癒える。小声で礼を言ったシリウスに、リチェルカーレは少し悲しそうに微笑んだ。 「うん。……お話、聞いてほしかったな」 和解できればよかったのに。殺してしまわなくてすんだのに。 しょんぼりとリチェルカーレはコカトリスの亡骸の側で膝を折り、祈るように目を閉じた。シリウスは加勢が必要な組がないことを確認し、リチェルカーレの側に佇む。 わずかにうつむき、黙祷する少女の甘い理想と可憐な姿勢は、日向のように明るく、まばゆく、美しいものに思えた。 ● さて、とセプティムは冷静に状況を分析する。 敵の体長は一メートルほど。決して柔らかそうではない尾と、羽毛に包まれた体。鶏に似た化け物は完全に自分たちを敵とみなしている。情報によれば、属性は土。 相性は最悪ではないが、いいわけでもない。だが、ユウは水気の術を習得していた。苦戦はしないだろう。 背後には大樹、なぜか立ち入り禁止の区画に侵入していた男がひとり。浄化師たちは大樹を囲むように散り散りになり、それぞれコカトリスを一体ずつ相手にしている。 「ユウさん」 「はい」 片手用の杖を強く握り、ユウはコカトリスを見据えた。阿吽の呼吸というほどのものではない、とセプティムは細く息を吐きながら思う。ただ、適宜あわせるという意思確認をしただけだ。 「ゴゲエエエ!」 叫んだコカトリスが突進してくる。セプティムも同時に駆け出し、すれ違いざまに小型盾でコカトリスの横面を殴った。ダメージは恐らく、ほとんどない。 だが、効果はあった。木に向かっていたコカトリスが急停止し、背を向けて走っているセプティムに突っこんでくる。鶏に似た化け物の足は速く、このままでは追いつかれるが――計算の内だ。 数瞬前にコカトリスがそうしたように、セプティムも唐突に立ち止まって体ごと振り返る。ほんの数メートル先に、かばうように樹木を背にしたユウが見えた。彼女の双眸はいっそう鋭さを増し、ぴたりとコカトリスに狙いを定めた杖の先には青い魔方陣が浮かんでいる。 「アクアエッジ!」 疾走していたコカトリスがセプティムにぶつかる寸前、ユウが杖を横薙ぎに振った。魔方陣から飛び出した水の刃は、コカトリスの体に命中する。 「ギエエエエ!」 絶叫したコカトリスが今度はユウの方を向くが、そちらに向かうことはセプティムが許さない。 「はっ!」 一度、剣を鞘におさめてから目にもとまらぬ速度で再び抜き、敵を裂いて再度、おさめる。魂洗い、と呼ばれる剣技だ。 攻撃を受けたコカトリスはよろめきこそしたが、おのれを鼓舞するような声を放ったかと思うと、セプティムをつつこうとしてきた。横に跳んでこれをかわしきるより早く、ユウの杖先で魔方陣が展開されるのが見える。 「行って!」 飛来した水の刃がコカトリスに致命傷を与えた。走行の勢いを殺せず、さらに水刃に背を押される形になったコカトリスは若木に顔から衝突し、どさりと倒れる。 それでもまだ、息があった。 普段通りの歩調でコカトリスに近づいたセプティムは、片手剣でコカトリスの首を断つ。痙攣は間もなくとまり、狩猟場の一角を棲み処としていたコカトリスの一体は完全に沈黙した。 周囲を確認し、セプティムは剣をおさめる。救援が必要そうな組はなかった。 「みなさん、大丈夫でそうですね」 「はい」 小走りでやってきたユウはセプティムをざっと見て、怪我がないことを確認する。もちろん自身も無事だ。魔力の量にもまだ余裕を感じられる。 「そういえば、コカトリスの卵があるって……」 思わずつぶやいてから、あ、とユウは口に片手をあてた。セプティムの様子をうかがうと、彼は左右に視線を向けている。 「いえ、だからどうというわけでは」 「探しますか?」 「さが……、え、いいんですか?」 「みなさんの戦闘が終わるまでなら。僕たちの助けは必要なさそうですし」 どの組も善戦していた。むしろ手を出した方が戦況は面倒になってしまうかもしれない。 断られるものだと思っていたユウは、ぎごちなく顎を引いてコカトリスの卵を探し始めた。セプティムも少し離れたところで草陰をあさっている。 「……卵、見つかるといいですね」 「そうですね」 間もなく戦闘を終えたロスとシンティラも加わり、本格的なコカトリスの卵探しが始まった。 ● 両手に持った剣のうち、右手のひと振りを鞘におさめ、クリストフは隣に立つアリシアに手を伸べる。アリシアはそっと自らの指先を彼の手に重ねた。 「月と太陽の合わさる時に」 声を重ねて魔術真名を唱える。魔力の生産量が解放されたことにより、あらゆる能力値が底上げされる独特の感覚を二人は覚えた。 「ゴゲエエ!」 その心地よさに酔いしれる暇などない。他の三組は戦闘を開始し、アリシアとクリストフが受け持つことになった一体もまた、雄叫びのような濁った声を上げながら突進してきている。 鋭いくちばしによる突きをクリストフが回避し、一歩下がったアリシアが呪符を放った。 「は……っ!」 「ギ……!」 攻撃を食らったコカトリスはよろめき、殺意に満ちた目をアリシアに向ける。その側面に、身を低くしたクリストフが迫っていた。 「よそ見は感心しないな!」 右の剣の柄に手をかけ、引き抜くと同時にコカトリスの体を切り裂く。深手ではないが、浅いとも言い難い傷を負わせた直後、クリストフは後方に飛びのいた。方向転換したコカトリスが、先ほどまでクリストフが立っていた地面にくちばしを突き入れる。 土を舞わせながら顔を上げたコカトリスを、クリストフは悠然と双剣を構えて見返した。 「ガアアア!」 「遅い!」 吼えたコカトリスが突進を繰り出すより早く、クリストフは得物を振るう。疾風のような速度で繰り出された刺突は、コカトリスの両目をそれぞれ機能停止に陥らせた。 異形の生物は羽をばたつかせ、ギャアギャアと声を上げながらでたらめに尻尾を振り回し、地面をつつく。 「……っ!」 痛ましい、と思ったが、アリシアはその光景から目を背けることなく、再び呪符を放った。他の浄化師たちの戦いに乱入しそうになっていたコカトリスが、攻撃された方向にあたりをつけて突進してくる。 すさまじい速度で迫る化け物は恐ろしい。しかし、照準が定まっていないのだから回避はたやすかった。 「はぁっ!」 混戦になる危険性を考慮し、クリストフはコカトリスの足を一閃する。 「ぐ……っ!」 「クリス!」 足に刃が届く寸前に、渾身の力でコカトリスが体を回したことにより、鞭のようにしなった尾がクリストフに命中した。すんでのところで攻撃は届いており、コカトリスは崩れるように倒れたものの、クリストフは地面に転がる。 すぐさま起き上がり、クリストフは息をのんでいるアリシアに片手を上げた。 「大丈夫だよ!」 こわばった表情のまま、アリシアは浅く顎を引いてクリストフに呪符を向ける。クリストフの体が優しい温もりに包まれ、かすり傷が瞬時に癒えた。 長く苦しめる趣味はない。苦痛を背負ったままあらぬ方向に向かって威嚇を続けているコカトリスの前に、クリストフは立つ。彼の半歩後ろには、目の奥に憂いを宿したアリシアがいた。 「これで終わり」 左手一本で振るわれた剣が、コカトリスの首を一直線に刎ねる。コカトリスが完全に沈黙したことに、クリストフは小さく息を吐いた。 周囲を見れば、それぞれ戦いを終えているか、とどめをさしているかだ。事前の情報通り難敵ではなかった。 「この子たちにしたら……」 前に進み出たアリシアが、コカトリスの亡骸の側に屈んで手をあわせる。悲しげな表情を見下ろしながら、クリストフは双剣をおさめた。 「私たちの方が、侵入者だったんですよね……」 「そうだね。でも、見すごすわけにはいかなかった」 このコカトリスたちはいつか人間を襲うと危惧され、現に樹上の男を攻撃しようとしていた。 人々の平穏と安寧を掻き乱す行為を、看過することはできない。個々の信念はどうあれ、浄化師とはそういった役目を担う者たちなのだ。 そのまましばらく、アリシアは祈っていた。 ● 当然のように前に出ようとしたロスを、シンティラが片手を上げて制した。 「ロスさん。私が前に出てもいいですか?」 「……んん?」 疑問の眼差しと声を、シンティラはしっかりと受けとめる。 「鬼門封印を覚えたときに思ったのですが、この技、私を中心に発動するんです。つまり、乱戦時にはなるべく敵中にいた方がいいですよね?」 「あー、なるほどな?」 「というわけで、前衛としての経験を積んでおきたいと思いました」 「りょーかい。じゃ、危ねぇってなったら俺が出っから」 「はい。援護、よろしくお願いします」 一歩下がったロスと入れ違いに、シンティラが前に出た。 コカトリス。それほど大きな敵ではなく、属性の相性はシンティラに分がある。 「ゴゲエエエ!」 叫びながら突進してきたコカトリスを、シンティラはぎりぎりのところでかわす。鶏に似た化け物は、方向を変えてシンティラに向かってきた。 「好都合です……っ!」 「ガアアッ!」 呪符を放ち攻撃する。射程が長いため離れた位置からでも効果を発揮する武器だが、後衛の装備という特性上、本来ならば魔力の増幅や術による攻撃を補助するためのものだ。 それを、至近距離で放った。 「ふむ」 悪くない。属性相性で有利をとれているのも大きな理由だろうが、やはり武器は武器なのだ。 「ティ、効いてっぞ!」 「そうですね。手ごたえがあります」 サバイバルナイフの方がダメージは大きいだろうか。 携帯している装備の柄に触れる。迷っている間にコカトリスが鋭いくちばしでつついてきた。どうにか右に逃れてかわす。 「そのうち短剣も扱いたいですが、まだ早いですよね」 今はひとまず、呪符での攻撃に専念しよう。前衛の立ち回りは、他の浄化師たちや、なによりロスを見ているのである程度、把握している。しかし、実際に自分が動くとなれば話は別だ。 「はっ!」 呪符を放つ。効いている。常に周囲に気を配る後衛の癖で、シンティラはさっと周囲に視線を向けた。ロスは狩猟場の男がいる木を守るように立ち、シンティラのことをしっかりと見てくれている。リチェルカーレと一瞬だけ目があった。驚いているようだ。 他の組も一体ずつ、コカトリスを相手にしている。それほど強くはない、と教団の司令部は判断したが、全くその通りらしい。どの浄化師も余裕を残しつつ、しかし油断することはなく戦っている。 「ロスさん!」 「おう!」 瞬時にそれだけの状況を把握したシンティラは、度重なる攻撃に激昂しているコカトリスから全速力で離れる。コカトリスは当然、シンティラの背を追いかけた。 ロスとすれ違う。ライカンスロープの男が、大盾でコカトリスの突進を受けとめた。跳ね返されるようにわずかに離れたコカトリスの頭めがけて、ロスが斧を振り下ろす。 「っらぁ!」 あたった、が、浅い。 でも、それでいい。 「はぁっ!」 地を滑るように姿勢を低くして、コカトリスの背後に回っていたシンティラの手には、サバイバルナイフがあった。渾身の力で振られた刃が、コカトリスの首の半ばまで入る。 「ギ……ッ」 ばたりと、コカトリスが倒れた。 呼吸を整え、シンティラはナイフをしまう。諦めようかと思った一撃だが、いけると思って行動した。実際に問題なくこなせたことに、胸を撫で下ろす。 「やったな、ティ!」 「はい」 差し出されたロスのこぶしに、シンティラは自身のこぶしを軽くあわせた。 「ティ、コカトリスの肉って、うめぇかな?」 「……どうでしょうね。そういえば卵があるかもしれないという情報が……」 「探そうぜ! んで、コカトリス、捕まえようぜ!」 ばっと縄をとり出し、ロスは目を輝かせる。見れば、セプティムとユウも卵を探しているようだった。 「そうですね。持ち帰りましょう」 頷き、シンティラは小さく笑んだ。 ● 戦闘が終わると、ローレントはするすると木から降りてきて、根元に正座して小さくなった。怪我がないことに浄化師たちは一安心だ。 「それで、どうして貴方はここに?」 「えっと……ですね……。あ、俺、ローレント・ディーレっていいます。狩猟場の監視員です。助けていただき、ありがとうございます」 セプティムの問いかけに、ロートンはひとまず礼を言って頭を下げる。すぐに、逃げることはできないと悟ったように、深く息を吐いてきまりが悪そうに告白した。 「実は、ケセランパセランを探してて……。いなかったんですけど」 「ケセランパセラン?」 「え、シリウス知らない? 白い綿毛みたいな……、今度、絵本で見せてあげる」 無表情で首を傾けたシリウスに、リチェルカーレが柔らかな笑みを浮かべて説明する。 「その綿毛は、立ち入り禁止が言い渡されている危険区域に潜入するほどのものなのか?」 物好きだな、と続けられた言葉に、リチェルカーレが今度は精一杯、怖い顔で頷いた。 「そうです。ケセランパセランを見つけたら、幸せになれるっていうけれど。危険区域に入ってはだめ。幸せを見つけたい気持ちはわかります。でも、いつも助けがくるとは限りませんよ」 「……はい」 反省はしているようだが、ローレントに怯えた様子はない。やる気は買うが怖くはない、とシリウスはため息を吐き出した。 「それに、ケセランパセランは無理だけれど、四つ葉のクローバーなら一緒に探せます」 にっこりと笑みを浮かべたリチェルカーレに、ローレントは頬を緩めかけ、すぐに表情を引き締める。まだ終わっていない。 「くだらない理由で自業自得の危機に陥った男を救うとは……。最近で一番、時間を無駄にしました」 幻滅しきったセプティムの声に、ローレントは再び首を縮めた。ユウは困ったように眉尻を下げてから、労わりをこめた声で諭す。 「幸せになりたいのは同意ですけど、仕事、放りだしちゃだめですよ。ま、まぁ、この状況から生き残れたんですから、運は向いてきてると思うんです。だから、あとはローレントさんが頑張れば、きっと結果は出ますよ!」 「彼女、できると思いますか!?」 「かの……、ええと、たぶん……?」 食いついたローレントを見るセプティムの目から温度が消えるのを感じながら、ユウは曖昧に頷いた。 「彼女、ね。ルールを守らせる立場にある者が、それを破るような真似をするのはモテない原因になるんじゃないかと思うよ。アリシアもそう思わない?」 「え、私の意見……ですか?」 ちらりとアリシアはローレントに目を向ける。無傷の監視員は縋るような眼差しだった。 「私は……、一生懸命、任務を全うする方って、素敵だと思います……。ローレントさんにも、そういう方がきっといるのではと……」 「ケセランパセランに頼らず、仕事をしろってことですね」 がっくりとローレントは肩を落とす。 「あれなぁ。俺も見っけたら確保しようと、食事は天花粉って覚えてっけど。すげぇ幸運がくっから。でも、いねぇくなって探して身を滅ぼしたとか、閉じこめたら端、黒くなって不幸がきたとか」 「怖いですね」 口の端を下げてロスが言い、シンティラがわずかに眉をひそめる。おう、とロスは鷹揚に頷いた。 「探してまで捕まえねぇ方がいいんじゃねぇ?」 どうやらただ幸せを招いてくれる綿毛ではないらしい、と知ったシリウスが、顎を引いて同意を示す。 「うぅ……。ほんと怖いですね……。これからは真面目に働きます……」 すっかり悔い改めた様子のローレントに、ロスは快活な笑みを見せて、四体のコカトリスをまとめて縛っている縄の端と、トマトほどの大きさの卵を二つ、掲げた。 「一件落着! ってぇことで、帰って大量のメシ! うめぇかは置いといて!」 万歳をするように両手を上げたロスの声を号令にして、監視員と浄化師たちは狩猟場の受付に向かって歩き出す。 コカトリスの肉と二十人分の黄身を有する卵の味は、また別の話。
|
||||||||
*** 活躍者 *** |
|
|
|||||
|
| ||
[22] クリストフ・フォンシラー 2018/07/17-23:28
| ||
[21] ロス・レッグ 2018/07/17-22:54
| ||
[20] ロス・レッグ 2018/07/17-22:46 | ||
[19] リチェルカーレ・リモージュ 2018/07/17-22:04
| ||
[18] リチェルカーレ・リモージュ 2018/07/17-22:04
| ||
[17] クリストフ・フォンシラー 2018/07/17-21:16 | ||
[16] ロス・レッグ 2018/07/17-20:07 | ||
[15] ロス・レッグ 2018/07/17-01:35 | ||
[14] リチェルカーレ・リモージュ 2018/07/16-22:41 | ||
[13] ロス・レッグ 2018/07/16-19:08 | ||
[12] クリストフ・フォンシラー 2018/07/15-23:39 | ||
[11] ロス・レッグ 2018/07/15-22:12 | ||
[10] セプティム・リライズ 2018/07/15-14:14 | ||
[9] ロス・レッグ 2018/07/15-09:52 | ||
[8] リチェルカーレ・リモージュ 2018/07/14-18:25 | ||
[7] クリストフ・フォンシラー 2018/07/14-16:55 | ||
[6] ロス・レッグ 2018/07/14-10:00
| ||
[5] ロス・レッグ 2018/07/14-08:06 | ||
[4] セプティム・リライズ 2018/07/13-21:04
| ||
[3] リチェルカーレ・リモージュ 2018/07/13-18:48
| ||
[2] クリストフ・フォンシラー 2018/07/13-00:28
|