~ プロローグ ~ |
「汝らに依頼じゃ。くくく、このように指令を言い渡す仕事は久々よ。 |
~ 解説 ~ |
今回はキラービー退治と魔結晶です。 |

~ ゲームマスターより ~ |
今回は戦闘訓練です。 |

◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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∇毒針対策 ワークグローブ ゴーグル 外套 兜 ∇序 煙草ライター ランタン松明オイル 祓:日が照ってる場所へ枯れ枝探索 喰:空から燃え易そうな細い枝を折って収集 大きな葉を団扇に洞窟入口から奥へ煙を ∇戦 祓:敵が出てきたら対応できるよう視界内に洞窟入口収め 煙から黒い影が見えた時点で占星儀の攻撃 沢山の時は通常攻撃タロット・ドロー&魔術使用し確実に1体ずつ仕留め 喰:空から煙と反対方向に 上へと逃げてきた敵へ接近し地に落とすつもりで攻撃 倒し辛い時は舞踏攻撃&魔術使用し羽や毒針を狙う ∇洞窟 ランタン持ち喰は羽をせばめ姿勢を低くし走る 岩落下も気にしながら端にぶつからないよう 落ちてきたら喰はバトルグローブで払い落とし 祓は回避 |
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キラービー退治と魔結晶の回収 準備 対蜂用完全防備 ゴーグル 長袖 手袋 帽子 タオル 暑すぎ 洞窟前で火をおこし煙を団扇や大きな葉で扇ぎ蜂を誘い出す 言い出しておいて何ですけどこの陽気で焚火はハードですね… これはベリアルと戦うよりきついな(自分に向けて団扇ぱたぱた さぼらないでください 飛び出てきた蜂と戦闘のち洞窟へ 攻撃的な蜂は外で倒しておきたい 毒攻撃はホント気を付ける ヨナ FN4で羽を焼き地面に落とす 洞窟はセンター 前に注視 洞窟内明かりチャレンジ FN8を最小威力 指で前方へ弾いて放出 洞窟でたら水筒の水配り暑さ対策 ベ 通常攻撃や落ちた蜂にとどめ 洞窟内 殿で追ってくる蜂にJM5やJM8で対処 負傷者へ応急手当 魔晶石を袋に詰め帰還 |
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世界地図に場所を書き止め 記憶力がいいヒューイは周りを見ながら 風は上着を脱いで扇いでみようか 煙が奥に入ったのを見たら服を着込みゴーグルとワークグローブでの保護も ヒューイは大丈夫か?(ヒュドラ確認ヒューイ頷く) 光明真言を唱えるヒュドラ ヒューイは銃の腕前に自信がない為、人がいない方向に銃口を向けキラービーを狙う ヒュドラは呪符を 確実に狙いたい時に通常攻撃「デス・バレット」「九字・急急如律令」を 空に飛んでしまうのが多ければ空に 叩き落せば下に入るメンバーが倒してくれるだろうからヒューイは銃を逆に持ちキラービーを落とす もしくはワーニングショットで威嚇攻撃を 笑みを絶やさず穏やかにヒュドラは「九字・急急如律令」 |
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~ リザルトノベル ~ |
「言い出しておいて何ですけどこの陽気で焚火はハードですね……」 汗をだらだらかきながら『ヨナ・ミューエ』がぽつりと告げる。 今回の指令でキラービーと対峙すると聞いて、万全の態勢――ゴーグルで目をガード、長袖にて手足、体を守り、手袋をしっかりつけて、長い髪の毛をひとつにくくって帽子のなかへ――だいぶ涼しくなってきたが、昼間はまだまだ残暑が続くなかではなかなかに苦行なその姿になることをヨナは己に課した。 口には出さないがキラービーに絶対に刺されたくないために! 「大丈夫か、ヨナ」 「本当だ、平気か? 冷たいものとったほうがいいんじゃないのか?」 心配するのは『ベルトルド・レーヴェ』と『エルマン・ベーク』だ。 「ご心配なく、大丈夫です」 ヨナは真顔で心配する二人をやんわりとはね付けた。 ベルトルドはこの態度に慣れているし、少し前に同じ指令でかかわっているエルマンにしてもヨナの普段の態度をしっているので、気分を害した風はなく、二人の男は視線を合わせる。 アイコンタクトで大丈夫だろうと告げ、作戦のため動くことにした。 「……暑い」 ぼそっとヨナは愚痴る。 今回、キラービーが洞窟のなかにいるので外で火を焚いて煙で煽り、出できたところを倒し、残ると予想される女王蜂を洞窟のなかで退治するという作戦だ。 それは事前にヨナが虫について調べて、考えた作戦だ。 キラービーは魔力でモンスター化したのですべてが元の虫と同じではないが、特性は完全に失われないならば有効な手となるはずだ。 「こんなものでいいか?」 「よっこいしょっと」 『コーネリアス・ニコリッチ 』が拾った枝を抱え、エルマンは空中から拾ってきた枝と一緒に大きな葉っぱを携えていた。 「近くの池で、蓮の葉っぱがあったから、これであおげないか?」 「いいと思いますよ」 にこやかに微笑みをたたえる『ヒュドラ・コロレフ』が、手に持つ地図に場所をしっかりと書き込んで告げる。 「今回は一緒に参加させていただいて、ありがとうございます」 「いや、こっちも人手が心許なかったから助かった」 とベルトルドが尻尾を小さくふって応える。 「そう言ってもらえると、助かります。まだまだ不慣れなのでいろいろとお願いしますね」 「ああ。しかし、お前の相棒は」 ちらりとベルドルドが視線を向けると、ずっとヒュドラの後ろできょろきょろと周囲に視線を向けていた『ヒューイ・ターク』が目を少しばかり見開いて、ベルトルドを見つめる。 話し合うメンバーに一緒に指令に参加したいと声をかけてきたのはヒュドラだ。彼の後ろにただただひたすらにヒューイはついて歩いてきた。じっと黙って従うのは影のようにも見えるが、今の今まで一言も発していない。 「ああ彼は」 ヒュドラが口を開く前に。 「お、なにか面白いことでもあるのか? なんだなんだ?」 「コーネリアス、サボるな! ……ん、ヒューイ、どうかしたんですか?」 「……みんな集まって、さぼりですか?」 皆が手をとめたのにぷりぷりしたヨナが腰に手をあててやってきた。 全員がヒューイに注目した。 「……っ! ……っ、……!」 ヒューイは全員の視線を受けて、ぼっ! と音がするほどに顔を赤くし、視線を逸らすと手で顔を覆った。頬が若干、ぴくぴくしている。 「こういう子なんです」 にこりとヒュドラが笑って告げる。それが全員にヒューイという人物についてすごくわかりやすい説明となった。 「なんとなくわかった。ヨナと似たタイプだな」 「私と似たタイプ……どういう意味ですか」 「いいな、楽しいな、このメンツ! なぁ、エル!」 「……からかうな。ほら、仕事、仕事!」 終始、ヒューイは両手で顔を覆っていた。表情筋が落ち着くまでしばらくかかった。 集めた木や枝を重ねあわせ、エルマンたちが用意したライターをベルトルドが借り受け、オイルで湿らせた小さな布に火をつけた。火種を集めた木々のなかにいれ、ふぅと息を吹く。 「本格的に燃えはじめるのは少しかかる。待っていろ」 ベルトルドの言葉にエルマンたちは用意した葉っぱ、それにゴーグルなどを装備する。たいして外でキラービーを迎え撃つことをメインとするヒューイ、ヒュドラは武器の準備に余念がない。 ヨナは、はぁと深い息を吐いた。 森に入るときからこの姿で、そろそろ活動限界は近い。 「脱いだほうがいいんじゃないのか?」 「いえ、平気です」 「けど、汗、かなりかいてるし。火が勢いを出すまでだけでも脱いでおけば……」 「そうしたら煙が出て、キラービーが一気に出る可能性があるじゃないですか」 「うん、まぁ、そこらへんは俺らがフォローをするから」 「……たくない……」 「?」 「絶対に刺されたくありませんっ!」 「素直さを発揮したな。お前、押しに弱いからな」 ベルトルドの言葉にヨナはぎくりとする。エルマンはぽんと掌を拳でたたいて納得した顔をした。 「……わかった。とってもシャイなんだな」 「っ! べ、べつに蜂が怖いわけでは」 「へー。本当にかわいいな。ヨナ」 「そ、そういうことを気軽に言わないでくださいっ!」 「ほぉ。俺が苦労してマスターしたヨナの対応方法、すでにマスターしたとはやるな」 「っっっ!」 「あははは! こういうの見るといたずらしたくなる俺がいるんだよなぁ。だめだ、最近、コーネリアスの影響のせいか、意地が悪いな、俺も」 「――っ!」 ベルドルトとエルマンのやりとりにヨナは無言で悶えた。恥ずかしいやら怒りやら暑いやらもう頭がいっぱい、いっぱいだ。 先ほどのヒューイの気持ちが少しだけ、いや、痛いほどにわかった。 小さな火種が大きくなりはじめ、全員で炎を煽る。灰色の煙は、六人で仰げば容易く洞窟のなかへと流れ込んでいく。 「これはベリアルと戦うよりきついな」 ベルトルドがこっそりとエルマンたちが調達した葉っぱで火ではなく、自分を仰ぐ。それをヨナは見逃さなかった。 「さぼらないでください」 「……そういうな、俺は毛があるんだぞ」 「そういえば全身、毛ですね」 「そうだ、しかも黒い」 「……見ただけですごく暑いです」 「だろう」 しみじみとベルトルドは口にした。その耳がぴくりと先が動いた。 「……来たぞ!」 その声にヒュドラは上着で仰いでいたので、すぐに着こみ、相棒に視線を向ける。 ヒューイはヒュドラに頷き、自分も上着、さらにゴーグルをつけて安全を確保し、武器を構える。 「よし、運試しといきますかっ!」 入口に注目し、いつでも戦えるように備えていたコーネリアスは煙から見えた黒い影に目掛けて魔力弾をぶつける。 「やったか?」 コーネリアスが呟いた瞬間。 ざ、わっ。 洞窟からそれは黒い雨のようにして現れた。 無数のキラービー、キラービー、キラービー……荒れ狂う波のようにして現れ、攻撃してきたコーネリアスに向かってくる。 「っ! やばっ!」 常備していたタロットを片手に、もう片方には魔力をためて撃つ態勢でコーネリアスが構える。 「フレイムっ!」 タイミングを合わせ、ヨナが声をあげる。 炎の波が黒い波を襲い、飲み込む。 しかし、それでもまだ残るキラービーは止まらない。止まれない。 キラービーは煙と攻撃に混乱しながらも複数の敵を感知したのか、群れが別れた。まずは攻撃を与えてきたコーネリアスとヨナに殺意を向けて襲い掛かった。 鋭い針にヨナが目を見開く。その前に出たのはベルトルドだ。 「はっ!」 気合のはいった声とともに掌打をキラービーの腹へと叩き込み、落す。さらに優れた耳で無数のキラービーの動きを読み、流れるような足さばきで横へとステップを踏むと穿つような一撃で右手からヨナを狙うキラービーをしなやかな蹴りの一撃で仕留めた。 「上にもいったぞ!」 翼を広げ、空へと逃げるキラービーを追い、エルマンが拳を振るう。 地上よりも逃げやすい空中でキラービーはちょこまかと動くのにたいして、針と毒の対策のため着込んでいるエルマンは劣勢といってもいい。ゆえに力を温存するよりも確実に倒すことを選んだ。 「行くぞっ!」 空中で翼を大きく揺らし、エルマンが舞う。 それは舞っている、というのに近い。自分のスピードを最大限に、キラービーに近づき、一撃、一撃、確実にキラービーの羽を狙い潰し、地面へと落としていく。 ヒューイは膝撃ちの態勢をとった。 動く的を射抜き、移動しやすさに優れた、中距離の射的においては一般的な姿勢だ。ただ腕前にはあまり自信がないので、味方が誰もいない洞窟の入り口に狙いを定めた。 煙を吸ったばかりのキラービーの動きはそこまではやくない。 一撃で確実に仕留める。 ヒューイが狙いを定めている間はヒュドラが呪符を投げ、キラービーが向かってくるのを阻止してくれる。 「……っ」 眉間に皺を寄せて、ヒューイが息を吐く。動いている的を撃つのは技術がいるうえ、集中し続けるのはなかなかに気力のいる作業だ。さらに暑さがじりじりと体力を奪う。 「大丈夫かい?」 ヒュドラの言葉にヒューイは黙って頷く。荒い息を意識して落ち着ける。 「もう少しだから、がんばろう」 答えるようにヒューイは再び狙い、引き金をひいた。 燃えるものがなくなり、焚火の火が小さくなりはじめたころ、洞窟のなかから湧いていたキラービーの姿が、ぱたりとなくなった。 「だいたい、倒したってこと、でしょうか」 ヒュドラが汗を拭いながら問うのにベルトルドは地面に耳をあて、洞窟から音がしないのを確かめると頷いた。その瞬間、この場に集まったメンバーは疲労から地面に崩れそうになった。 「暑い」 コーネリアスが額から顎に伝う汗を拭い、呟く。 キラービー対策と戦闘、さらに炎を使ったせいで余計に汗をかき、全員がくたくただ。刺されないように注意をしたため、余計に気力を消耗した。 「休みたいが、ここで一気にたたみかけるぞ。先に全員、水分をとっておけ」 ベルトルドが促す。ヨナはみなに水筒をあけると、みなに水分を配ろうとした。 「ヨナ、お前が一番はじめだ。一番汗をかいてるぞ」 「へ、平気です」 「今は平気でも、脱水になるぞ。倒れたら俺がかついで帰るが……エントランスで噂になってもいいのか」 ヨナは黙って水筒を受け取ってごくごくと水を飲む。 そんな二人のやりとりを見ながら微笑ましくも、面白げに眺めながらエルマン、コーネリアス、ヒュドラ、ヒューイはヨナたちのもってきた水筒の飲み物をわけてもらい、喉を潤し、態勢を立て直した。 「ここからなら松明でも平気かな」 洞窟のなかに入ることを考えて松明をエルマンたちは持ってきていた。 「それだと攻撃がしづらいです。明りは私が担当します」 とヨナ。 「後ろについては」 「そこは私たちが引き受けるよ」 エルマンが振り返るとヒュドラが微笑んで、片手におなべの蓋を持つ。 「お、そっちも持ってきたか。オレらも」 「これな……」 とコーネリアスとエルマンも差し出すなべの蓋。 「なべのふたが盾になるんですね」 「まぁきちんと防ぐからな」 胡乱な視線を向けるヨナにベルトルドはしみじみと言う。 おなべのふた。一応、これも浄化師の武器なのである。 某作成者は一体なぜこういう武器を作成したかは不明であるが、これがポピュラーな盾として浄化師の間では使用されている。本当にどうしてこのデザインにしたのか一万回問い詰めたいが、今はそのときではない。 エルマンが先頭を務め、後ろにヨナ、ベルトルド、ヒュドラ、ヒューイ。 入口にはコーネリアスが陣取り、ランタンを手に携え、なかを照らす。 なかにはいるとむき出しの岩肌のおかげか外と比べてずっと涼しい。ばてていた体にはほっとするくらいの温度だ。 しかし。 「水音?」 「上からきたぞ!」 ベルドルドの声とコーネリアスの声が重なった。 ヨナがはっと顔をあげると、鋭い針を落としてくるキラービーの姿が目の前に迫り、回避する暇もなくすり抜けてきた。 「いっ!」 「くそ、前からもきた! ヨナを頼むぞ、コーネリアスっ」 残党が前からも現れ、ヨナを庇おうとしたエルマンは舌打ちし、そちらと向き合う。 ヨナを針で攻撃したキラービーが空中に飛びさらに攻撃を与えようとしたのをコーネリアスの魔力弾が叩きつけ、ベルトルドが殴り倒す。 「平気か!」 「はい。少し、掠めただけです」 キラービーの鋭い針はヨナの左腕を掠め、服が破け、血が滲んでいる。ベルトルドはすぐに包帯をとりだし、きつく巻き付ける。 「きちんとした手当は全てが終わったらな。毒はどうだ」 「毒は大丈夫みたいです……ありがとうございます」 ヨナは小さく頷いた。 その後ろではヒュドラがコーネリアスの攻撃に驚いてまだ天井に貼り付いたキラービーが落ちてきたのに袋をかけ、ヒューイが銃の柄で叩き潰して、確実に数を減らしていた。 「これで終わりでしょうか」 「……? ……っ!」 ヒュドラの服を掴んで、ヒューイが驚愕に目を開ける。その視線に気が付いてヒュドラは視線を向け、はっとした。 「これは……」 「なんだよ、これ、これが巣だっていうのかよ」 エルマンが嫌悪に満ちた声を漏らした。 天井から地上へと吊るされた、それはぐっちょりと濡れていた。 むっとする甘い蜜の匂いに、むせかえるほどの生き物の血の匂い。 土や虫、植物といったものを潰して作られた壁に十匹ほどのキラービーたちが重なり合っていた。さらに滴り落ちる汁のようなものは、キラービーたちの毒針から零れ落ちているようであった。 その上でもぞもぞと動くのはひときわ大きな女王蜂が君臨していた。 女王蜂はかりかりかと威嚇するように歯を鳴らし、大きな卵を抱えていた。その卵を魔結晶とともに作ったばかりの巣の部屋のなかにいれようとしている。 蜂は己の子に栄養のあるものを食べさせるという。 キラービーにとって魔結晶が餌となるかは不明だが、その子が影響を受けて新たなキラービーとなることは明白だ。 「やるしかないよな」 嫌悪感を押し殺してエルマンは攻撃の態勢をとる。 「キラービーの山からたれているのは毒の可能性がある、注意しろ! 俺が斬りこむ。援護を頼むぞ」 ベルトルドが身を低く、その醜い山の濡れていない箇所を見つけ、地面を蹴って駆け出す。さらに加速。 「ソードバニッシュ」 剣のように拳を叩き込み、横に流す。山の一部が崩れ、女王の足元が揺らいで地面へと落とした。 女王がかちかちかちかちと歯を鳴らす。怒りに冷静を欠けているのは明白なのにエルマンは踏み込んだ。 鍋のふたで女王蜂の太い針を防ぎながら、拳に力をこめて羽を狙う。薄い羽は容易く拳に貫かれるが、女王蜂は怒り狂って手足をばたつかせ、エルマンの腕にかみつき、薄皮を食い破る。 「っ!」 「今援護にっ……! こいつら動いてるぞ」 ベルトルドが叫んだ。 死体と思っていたキラービーたちが、もぞ、もぞと動き始める。 思えば煙を浴びたはずなのに女王蜂の動きは驚くほどに俊敏であった。 なかに残ったキラービーたちが己を盾にして女王蜂を煙から守ったのだ。女王蜂の盾になったキラービーたちは本来の力こそほぼなくなったが、もぞもぞと動いて這うように外敵である浄化師たちへと迫ってくる。 ベルトルドが一匹は蹴り飛ばすと、その隙をついてもう一匹が襲い掛かろうとする。 「危ないっ」 ヒュドラが鍋のふたでキラービーの噛み付きを防ぎ、ヒューイが銃の柄で殴りつけ、叩きつける。さらに這うキラービーの軍勢が足元から迫り、歯を剥きだしに噛み付いてくる。 「ヨナ! お前はエルマンを! こっちは任せろっ」 「わかりました!」 かちかちかちかちかち。 不調和音。 かちかちかちかち。 すべてを噛み潰すような音。 かちかちかちかち。 ヨナは息を整え、エルマンと女王蜂の戦いに意識を集中する。 エルマンは横目でヨナの動きを見ると、バックステップを踏む。暗闇にもだいぶ目が慣れてきた。 「ヨナっ!」 「みんな、目をしっかり閉じてください。ライトブラスト!」 光を放つその玉を掲げ、ヨナは声をあげる。 闇に慣れた目にその光は強烈だった。 光の一撃を受けて女王蜂の前足が消し飛ぶのにエルマンは素早く近づき、その腹を叩き潰した。 地面に配する残党たちは光で目をやられ、方向感覚を失くしてうろうろとするのをヒューイとヒュドラ、ベルトルドが一匹、一匹を確実に仕留めていった。 浄化師たちが息を乱しながら止まると静寂が流れ始める。残るのはただ鼻につくむっとする匂い。 「やったのか?」 「……たぶん」 エルマンとヒュドラの会話にヒューイは視線を忙しく動かす。 「ここからもまったく音はしないぞ」 見張りをしているコーネリアスが入口から言う。 「巣は燃さないと」 エルマンが持っていた松明に火を灯し、そのまがまがしい巣を燃やし始める。その横でみんなは手分けして魔結晶を回収した。 「巣が燃えるには時間がかかるだろう。一度外に出よう」 ベルトルドが燃える巣を横目に全員を促した。 火はつけたが巣が完全に燃つきるまで見届ける間に、ベルトルドによって洞窟にはいったメンバーは手当を受けた。洞窟のなかでの戦闘は想像以上に狭かったため、キラービーに接近され手足を噛まれてしまった。毒を受けたものがいないのは不幸中の幸いともいえた。 「燃えたみたいだから中にはいって軽く確認するか?」 「今はやめておけよ。酸素不足で倒れるぞ」 コーネリアスが洞窟のなかをまじまじとのぞくのにエルマンが窘めた。 「火は完全に消えているみたいですね」 一緒になかを覗き込んだヒュドラが告げる。 「報告後、改めて教団の調査員に念のため確認をお願いしたらいいでしょう」 「蜂にしてみればただ巣を作っていただけだ。自然の摂理としてな。だがその蜂は人に害を与えた。それならば退治しないといけない……こんな場所に巣を作るなんて運が悪かったな」 「運、でしょうか」 「運だろうな。子を残すのに適していた場所に魔結晶があっただけだ。それが自然というものだ」 その言葉がなにを言いたいのか、わからないほど、ヨナは子供ではない。 以前、言われた言葉が頭をもたげた。 教団に従い、全うすることはとても容易い。考えなくてもいい。 浄化師のヨナは迷わないし、進むだけ。 ヨナはきっとヨナ・ミューエという人物が、あまり、好きではないのだろう。否、好きとか嫌いとか以上に考えようとしてこなかっただけだ。それを今さら、思い知らされる。 すでに空が茜色だったのにヒューイは視線をあげて、息を吐く。目に痛いほどの赤色だ。 キラービーたちに噛まれた足は手当されたが、いまだにじんじんと痛む。 「大丈夫かい?」 声をかけてくるヒュドラを見てこくりと頷く。 「はじめての指令だったけど、うまくいって、本当によかったね」 またこくんと頷くヒューイは視線をヒュドラの足に向けた。包帯がまかれている。 「私は平気だよ。手当も受けた」 ヒューイは何か言おうとして口を閉ざしたまま、赤い空が沈んで、紺色になるのに息を吐く。昼間はあんなにも暑かったのに、今では涼しいくらいだ。静かな森のなかに生き物の息遣いが広がり、ほっとする。 ヒューイの口元は緩まないが、目じりはつい、安堵に緩む。 「いやー、いいギャンブルだったー。やっぱり死ぬか生きるか、どうなるかっていうスリルがいいよな、エル」 「コーネリアスっ」 エルマンが苦い顔をする。 「ちゃんと指令はこなしたんだ。いいだろう?」 コーネリアスの微笑みにエルマンははぁと息を吐く。 ようやくキラービーの脅威も去り、防具服も不要になったので脱ぐと開放感にほっとする。 「さてと、帰ったらもっと楽しいギャンブルが待ってるぜ」 「お前は」 エルマンがコーネリアスにお小言を向けようとするが、晴れ晴れと笑う顔を見ると少しくらいはいいかとお小言をひっこめた。
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*** 活躍者 *** |
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該当者なし |
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[25] エルマン・ベーク 2018/08/22-23:41
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[24] ベルトルド・レーヴェ 2018/08/22-23:10
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[23] ヒュドラ・コロレフ 2018/08/22-21:52
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[22] ベルトルド・レーヴェ 2018/08/22-21:18
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[21] エルマン・ベーク 2018/08/22-21:06
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[20] エルマン・ベーク 2018/08/22-19:48 | ||
[19] ベルトルド・レーヴェ 2018/08/22-18:29
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[18] ベルトルド・レーヴェ 2018/08/22-17:45 | ||
[17] エルマン・ベーク 2018/08/22-01:22 | ||
[16] エルマン・ベーク 2018/08/22-01:22 | ||
[15] ベルトルド・レーヴェ 2018/08/22-00:07 | ||
[14] エルマン・ベーク 2018/08/21-19:25 | ||
[13] ヨナ・ミューエ 2018/08/21-12:49 | ||
[12] エルマン・ベーク 2018/08/21-02:31 | ||
[11] ヨナ・ミューエ 2018/08/21-00:37 | ||
[10] エルマン・ベーク 2018/08/20-20:45
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[9] エルマン・ベーク 2018/08/20-19:13
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[8] エルマン・ベーク 2018/08/20-19:12 | ||
[7] エルマン・ベーク 2018/08/20-19:12 | ||
[6] ヨナ・ミューエ 2018/08/19-20:39 | ||
[5] エルマン・ベーク 2018/08/19-13:46
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[4] エルマン・ベーク 2018/08/18-23:21 | ||
[3] ヨナ・ミューエ 2018/08/18-20:34 | ||
[2] エルマン・ベーク 2018/08/18-14:11 |