背後にご用心
簡単 | すべて
4/8名
背後にご用心 情報
担当 茸 GM
タイプ ショート
ジャンル 恐怖
条件 すべて
難易度 簡単
報酬 なし
相談期間 4 日
公開日 2018-07-27 00:00:00
出発日 2018-08-03 00:00:00
帰還日 2018-08-13



~ プロローグ ~

 ソレイユに流れる綺麗な小川。その源泉となる滝が、この深く生い茂る緑の先にある。
「さすがに夜は暗くて不気味ね……」
「普段は観光地として賑わっている分、余計そう感じるのかもしれないな」
 男女のペアがぴったり寄り添い、ランプ一つの灯りだけを頼りに徐々に深くなる森の中をゆっくり進む……。
「――キャっ!」
「っ……大丈夫?」
「え、ええ……滑っただけみたい」
「そ、そうか……。この辺りは滑りやすくなっているから気をつけて」
 不安げに腕を絡めて来る彼女の体をしっかり支えて歩くが、正直この状況は怖い。
 辺りは真っ暗、自分達以外人っ子一人居ない所為か異様に静かで……。
「ねぇ……今、何か聞こえなかった?」
「!? な、何かって……?」
 言葉を切れば、ザワザワと風に揺れる木の葉の音さえやたらと耳につき、要らぬ恐怖心を煽られる。
「………た、ただの風だろ……」
「そう、かなぁ? 後ろから何か聞こえた気がしたんだけど……」
「っ! 多分、次のペアが追いついてきたんだろ」
 後ろを振り返ろうとする彼女の手を強引に掴み、少しペースを上げて先へ進む。
「もしかして、怖がってる?」
「俺が!?……まさかっ、肝試しなんて子供のお遊びだぞ」
「その割には……――ひゃ!」
「うわっ!? 今度は何だっ?」
「そこに白い影が……っ」
「はあ!? ――ど、どこだよ……ッ?」
「ほら! あそこに!」
「――ヒっ!」
「………あ、なぁんだ……ただの布切れじゃない」
 ランプを近付けて確認すると、長く伸びた木の枝に、ゆらゆらと夜風に揺れる白い布。
 仕掛け人がわざと括りつけたドッキリだ。
「こういう単純なのがやたら怖かったりするのよね。さっきの青白い火の玉だって、仕掛け人のおじさんが棒と紐で操っていただけだったし」
「…………」
「ちょっと、大丈夫?」
 彼女に顔を覗き込まれ、漸く自分が尻餅をついていたことに気付いた。
「ハァ……恥ずかしいところを見られたな」
 今更格好付けても仕方がない。
 立ち上がってズボンについた土をぽんぽんと掃い苦笑いを零す。
「怖い事が恥ずかしいなんて思わないわよ。男でも女でも、怖いものは怖いもの」
 気にしていないどころか受け入れてくれる彼女に安堵する。
「……そうだな。ありがとう」
「それじゃあ急ぎましょう? 滝の水を汲んだらゴールは直ぐよ!」

 途中、幾度となく悲鳴を上げては「吃驚した~」と笑い合う二人。
 そして漸く、高所から落ちる水の音が聞こえてきた。
 ルール通りに水筒に滝の水を汲み、帰りは別の道を通って戻る――。
「っ!」
 不意に彼女がピタッと立ち止まった。
「どうした?」
「今、何か聞こえたのよ。何かを引きずるような音が……」
「ま、まさかだろ……?」
 恐る恐る振り返るが、視線の先は闇に閉ざされていて何も見えない。
「気のせいじゃないのか?」
「そんなことないわ。だって、来る時に聞こえた音と似てるもの」
「きっと仕掛け人が俺たちを怖がらせようとしてるだけだよ。ゴールは直ぐそこだ。急ごう」
 また歩き出して数メートル進んだ時。
 ――ザザ……ザザ……。
「な、何の音だっ?」
「ね! 聞こえたでしょう? この音よ、私が聞いたのは!」
 兎に角急ごうと彼女の手を引いて走り出すが……。
 ――ザザ……ザザザザ……。
 明らかに背後の音も速度を上げたようだった。
 そして、何かに肩をガシッと掴まれ、―――。
「っ!!!!??」
「きゃぁぁああああ!!」

 ――翌日。
 怖すぎる肝試しだという噂が村中に知れ渡り、それは教団にまで届けられたのだった――……。


~ 解説 ~

●ミッション
三日間限定で開かれた村人主催の肝試し大会です。存分に怖がって一時でも涼しい夏を満喫して下さい♪
その際、必ず『背後に何かがいる』とにおわせるシチュエーション(プラン)を入れて下さい。
その『何か』は村人だったり動物だったり、或いは本当に幽霊かもしれませんね。
あなたの背後にいる『何か』は一体何なのでしょうか……。

●肝試し大会のルール
・二人一組。
・一組に一つずつ水筒が配られます。徒歩で十五分ほど進んだ先にある滝の水を汲み、違う道を折り返して戻ります。
・ランプも一組に一つずつ。(魔術で辺りを照らすなど禁止です)

●開催地『力の滝』
滝の水を飲むと、不思議と力が湧いてくると言い伝えられており、パワースポットとして観光地となっています。
エクソシストも、願掛けのために水を飲みに来たり、身を清めたりすることがあるようです。
自然が濃く、木々の緑が深くなり、水の透明度も増していくものの、行くまでは道が滑りやすく、また少々大変な道のりです。
少々疲れるハイキングコースですが、今回は肝試しの為に決められた短いコースを歩くことになります。

●仕掛け
火の玉、白い布、コンニャク、お化けに扮した村人、血に見立ててすり潰した赤い木の実の汁がポタポタと上から降って来る(舐めると甘い)、人形、白いお面、お経や呪文のような声、ひたひたと不気味な音、お線香など恐怖心を煽るニオイ。――など。白い物は暗闇に浮き上がって見えるので効果的です。

●他
・アドリブ拒否の方は併せてお知らせください。
・カップリングごとにお話を進めて行きます。


~ ゲームマスターより ~

こんにちは、茸です。
今回は肝試しに参加して頂きます!
私の中では夏の風物詩トップ3に入る行事だと思ってます。(笑)
ここで相手の意外な一面が見られるかもしれませんし、相手とグッと距離が縮まるかもしれません!
肝試し大会を盛り上げるためにも、是非、気軽にご参加下さいね。





◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇

ヨナ・ミューエ ベルトルド・レーヴェ
女性 / エレメンツ / 狂信者 男性 / ライカンスロープ / 断罪者
帰るなら今のうちだぞ 
ここで帰ったらまるで怖いみたいじゃないですか
だよなあ。そうこなくては ニコ

行き
おい尻尾
えっ?あ…(離す
怖いなら握っていても別に構わないが
いーえ。問題ないです

驚かされて声出ず
練られる魔術の気配
おいおいおい何魔術使おうとしてるんだ


ここは昔首洗いの滝と呼ばれててな
そんな話聞いたことないです
こんな蒸し暑い夜は滝壺の水が赤く染まり首だけの亡霊が

後ろから脅かすお化けに息が止まる
やめろやめろだからなんで魔術使おうとするんだ見境なしか
…つい…
ついじゃない

帰り
ヨナ
けたたましい笑い声に追いかけられて一目散に下山
やだ…やだやだやだ…

肝試後
あの声はなかなか臨場感がありましたね…
声?何の話だ?
ヴォルフラム・マカミ カグヤ・ミツルギ
男性 / ライカンスロープ / 拷問官 女性 / 人間 / 陰陽師
どうして、こうなったの!?
肝試しなんて聞いてない!!

いや、うん。この歳になってまで幽霊怖いとかかっこ悪いのは解ってるんだけど
怖いものは、怖いんだよ!?
つーか、慣れさせる為って何?!
カグちゃんんちの書斎の幽霊?がよく僕の事怖がらせてくるから、条件反射が抜けなくなったよね!

「カ、カグちゃん!幽霊居る?ねぇ、居る?!」
がっちり腕をホールド状態
怖くて後ろ振り向けないんだけど、どうしよう!
何か後ろに居る様な音とか匂いとかするんだけど、幽霊だったら怖い!
早く、目的地、着かないかな!
「カグちゃん、より怖くする指摘とかいらない!」

幽霊見たらカグちゃん抱えて逃げる



※アドリブはご自由にどうぞ
シュリ・スチュアート ロウハ・カデッサ
女性 / マドールチェ / 占星術師 男性 / 生成 / 断罪者
◆シュリ
ロウハから離れないようについていく
苦手かはわからない…こういうの初めてだもの
でも、村の人が脅かしてくるんでしょう?
少し不安…

そして不安は的中

ひぃああぁ…!
何か出るたび驚いて、ロウハの腕にしがみつく
そこに怖い顔が…あ、ロウハだったわ

…ねえ、後ろで気配がしない?
うん、怖くないわ
でももし襲ってきたら…反撃してやりましょう


◆ロウハ
ランプを持って先導
お嬢、こういうの苦手か?
大丈夫だって、遊びだし怖くねーよ

お嬢がすげービビリなのが一番驚くんだが
…おい、今俺の顔にびびっただろ
いいけどなー、どうせ悪人顔だし(軽くいじける)

気配…してるな
本物の幽霊かもしれねーぜ
それは怖くねーのか?
お嬢も変な所で勇敢だな
ロス・レッグ シンティラ・ウェルシコロル
男性 / ライカンスロープ / 拷問官 女性 / エレメンツ / 陰陽師
「肝試しって楽しみな!力の滝に行くって?こないだも行ったけどイイトコな!
「肝試し苦手って言ってませんでしたか
「正直怖いっつーのとは違っ気がすっけど
昔みてぇな事にはなんねぇ事を祈りつつ!

1.水
ロス「やっぱここの水うめぇ!
ティは滝の幻想的な風景に感嘆

2.離
「迷子になったら拳銃鳴らして下さい
くれぐれもそこから動かないように
「匂い辿ってくから大丈夫じゃねぇ?
(ペット時迷子

■怖
∇ティ
医学等の読書でグロイもの怖いものは基本的に平気
ぼやっとした性格の為
反応は遅れ
遅れている内に正体解ってのほほん

・後
背後に気付いてもとりあえず前に進み
しつこいなで振り返る
暫く硬直しつつも正体見て頷き
幽霊・人間なら「こんばんは(礼


~ リザルトノベル ~

 ●ロス・レッグ&シンティラ・ウェルシコロル

「肝試しって楽しみな!」
 大きな狼の耳をピンと立て、ニィっと嬉しそうに笑みを浮かべながら暗い森を突き進む『ロス・レッグ』。
「肝試し、苦手って言ってませんでしたか?」
 ランプを手に直ぐ後ろを歩く『シンティラ・ウェルシコロル』に問い掛けられ、ロスは「うーん」と軽く首を捻った。
「正直怖いっつーのとは違っ気がすっけど……」
(まあ、昔みてぇな事にはなんねぇ事を祈る……!)
「……ロスさん?」
「あっ、それより! 力の滝に行くって?」
 元気良くクルッとシンティラを振り返る。
 少し驚いたのか一瞬眉を上げたシンティラがコクリと頷いた。
「……はい。力の滝で水筒に水を入れて持ち帰るのがルールですから」
「そうだったな! こないだも行ったけど、イイトコな!」
「そうですね。パワースポットでもありますし。――それより、前」
「前……?」
 シンティラの呟きと視線に促され、顔を前に戻すと……。
「――うおっ!?」
 突然、青白い火の玉らしき物体が三つも飛んできた。
 ロスは条件反射で遠くに飛び退く。
「ビビった! 何だあれ!?」
「火の玉、だったかと」
「だよなっ! しかもすげー豪速球な!」
 ワハハと愉快そうに笑いながらシンティラの佇む場所に戻ると、彼女は「本当に」と小さく頷いた。
「それにしても、良く一歩も動かねぇでいられたなっ」
「……気がついたら通り過ぎていたので」
「やっぱりか! 大袈裟に避けた俺すげー恥ずかしいな!」
「そんなことはないかと……。反射神経が良い証拠です」
 再びロスが先頭に、着々と力の滝へと近付いて行く――。

「やっぱここの水うめぇ!」
 到着して早々、ザバザバと落ちて来る滝の水を掬って飲むロス。
 そんな彼の横で、星空の映り込む滝の幻想的な風景にシンティラは感嘆な息を零していた。
「凄く綺麗です……」
「だな! 来て良かった!」
 ロスは顎へと伝う水を手の甲で拭い、滝の水を水筒へと注ぐ。
 ふと、ロスの耳が何かにピクリと反応した。
「……何か居んな」
 と、小さく呟く。
「え? ……何かって……」
「わかんねーけど、何か後ろに居んのは確かだ」
 脅かし役の村人か、動物か、それとも――。
「のんびりしていたから、次の人が来てしまったんでしょうか」
「よし、ここはいっちょ見て来っか!」
「えっ」
 サッと立ち上がったロスを驚いて見上げるシンティラ。
「ティは先に行っててくれ。すぐ追いつくからよ!」
「……では、迷子になったら拳銃鳴らして下さい」
 懸念するシンティラの言葉に、
「匂い辿ってくから大丈夫じゃねえ?」
 と、あっけらかんと答えるロスだったが……。

 ――離れて数分後のこと……。
「ヤベェな。奥まで来すぎたか」
 これ以上離れたら本当に迷子になりかねないと足を止めた。
「うわっ、何か転がって来た! まさか、ドクロか!?」
 丸い何かが足にコツンとぶつかり、ロスは恐る恐る確認する。
「……なんだよ、ただのスイカじゃねーかっ。しかも顔掘ってあるし!」
 ビビらせやがって、とスイカお化けを持ち上げたロスはそのまま歩き出す。
 取り敢えずこの辺りは特に怪しい気配は感じないが……。
「冷てぇ! 何だ!? ……あ? コンニャク?」
 顔面にペタリと張り付いたそれを引っぺがす。
 ――『観自在菩薩行深般若波羅~』
「今度はお経!? おいおいおいおい! しかも段々近付いて来てっし!」
 じわじわと迫りくるモノにはさすがに恐怖を覚え、急ぎシンティラの元へと駆け出した。

 その頃、シンティラはというと――。
(何か後ろに気配が……)
 力の滝からずっとつけてくる何か。
 取り敢えずここまで進んで来たものの、あまりのしつこさにシンティラは立ち止まり、後方へランプを掲げた。
「……あ、こんばんは」
 そのままペコリと頭を下げる。
 気配の正体は、お化けに扮した村人だった。
 脅かすつもりが、一人になったシンティラを心配してここまでついてきたのだと言う。
 普通ならば余計怖いことこの上ないのだが、
「もう一人は直ぐ来るはずなので心配いりません」
 とシンティラは丁寧に対応したのだった。

 ――数分後。
「これは、スイカですか?」
「おう! 面白そうだったからティにも見せてやりたくてよ!」
 ランプの灯りと匂いを辿って合流して早々、手渡したスイカお化けをシンティラはジッと見つめる。
「持ってきてしまったんですか?」
「まだ転がってたし、一個くれぇ平気じゃねえ?」
「そうですか? ……どなたかお迎えに来られたようですが」
「へっ?」
 乱れた呼吸が漸く落ち着いた矢先に意味深な問い掛け。ロスの身体が一瞬凍りつく。
 ――『返セェェ!!』
「ひっ!」
 森の奥から響く低音ボイスに、ロスは脱兎の如く逃げ出した。
「こえぇ! やっぱチョー怖ぇ! 鳥肌収まんねぇから!」
 目と鼻の先にあるゴールへと駆け抜けて行くロス。
 一方シンティラは、
「これ、お返しします」
 と、姿を現した低音ボイスの仕掛け人にスイカお化けを丁重に手渡したのだった……――。


 ●ヴォルフラム・マカミ&カグヤ・ミツルギ

「どうして、こうなったの!?」
「………」
「肝試しなんて聞いてない!! つーか、慣れさせる為って何!?」
「……ヴォル、ちょっと静かに」
 スタートして数分。
 まだ何も起きていないというのに雰囲気だけでビビりまくる『ヴォルフラム・マカミ』は、表情一つ変えずに前を歩く『カグヤ・ミツルギ』に制されて一瞬口を噤んだ。
「……いや、うん。この歳になってまで幽霊が怖いとかカッコ悪いのは解ってるんだけど」
 恐怖が限界を達した彼が何をするか分からないと思い、カグヤがランプを持って先導する。
「だから、この機会に克服すれば――」
「どうやって!? 怖いものは怖いんだよ!?」
「………」
「カグちゃんに誘われて楽しみに来てみたら、まさかの肝試し」
「ヴォル……」
「幽霊にどうやって慣れればいいの!?」
 カグヤの細い腕をがっちりホールドして、極力余計な物を視界に入れないようにして歩く。
「カグちゃんちの書斎の幽霊? ……が、よく僕のこと怖がらせてくるから、条件反射が抜けなくなったよね!」
「……いつの話を持ち出すの」
 幼い頃にしていた幽霊の話。それ以来、ヴォルフラムは幽霊を怖がるようになってしまったのだ。
 ニホン出身のカグヤ。魔術を学ぶ為に訪れた陰陽師(霊媒師)を定住させていたことから、心霊的な能力が高いとされ、ヴォルフラムほど幽霊に対して恐怖を感じることはない。
「カグちゃんみたいに耐性があるわけじゃないんだよ、僕は!」
「ヴォル、幽霊は賑やかなところに寄って来る」
「――っ!!? それを早く言ってよっ」
 ビクリと縮こまったヴォルフラムが小声で非難した。

「カ、カグちゃん! 幽霊居る? ねぇ、居る?!」
「幽霊はいない。……今のところは」
「今のところは!? 怖くて後ろ振り向けないんだけど、どうしよう!」
 ――ザリ、ザリザリ……。
「っ! な、何か後ろに居る様な音がするんだけどっ、しかも変なニオイまで!」
「そうね」
「幽霊ってこんなニオイするの!?」
「……ヴォル、幽霊はニオイしない」
 恐らく、お線香か何かだろう。
 嗅いだ事のあるニオイだが、恐怖している彼には気付く余裕さえないようだ。
「森でお線香のニオイって、不自然だと思う」
「お線香……! 確かにこれはお線香だね!」
 そうと解って胸を撫で下ろすのも束の間、
「腐敗臭とか骨とか置けばいいのに」
「カグちゃん、より怖くする指摘とかいらない!」
 想像してしまったイメージを追い出すようにぶんぶんと頭を振るヴォルフラム。
 怯えながらも、カグヤの安定した歩調で進んでいた為いつの間にか力の滝に辿り着いていた。

 無事に水を汲んで下山する二人。
「何か、あそこの枝揺れてない? 幽霊!?」
 前方にあるのは長く伸びた枝。
 暗くて良く見えないが、確かにざわざわと音を立て、不自然に揺れている。
「幽霊の気配は感じない、大丈夫。きっと何かの仕掛け……多分」
「『今のところは』とか『多分』とか余計な一言要らないよ!」
 ビクリと怖がる度にヴォルフラムの長い尻尾がブワッと逆立つ。
「慣れれば大丈夫。頑張って」
「うっ」
 怖いものは怖い。しかし彼女に励まされては頷く他に選択肢などない。
 コクリと生唾を飲み込みながら進む。
 ――ザリ……ザリ、……。
「また後ろに何か居るよっ!」
 言いながらもやはり後ろを振り向けないままカグヤの横にぴったりと張り付く。
「きっと仕掛け人の村人が私達を脅かそうと――……」
「え、何っ?……途中で切られるのも怖いんだけど!?」
 押し黙ってしまったカグヤに焦ったヴォルフラムは壊れた機械のように恐る恐る首を後方へ……。
「呪文」
「呪文!?」
 突然呟いたカグヤにヴォルフラムの頭が途中でグリンと前に戻った。
「そんなような声が聞こえた気がしたんだけど……」
「気のせいじゃ、なくて?」
「少し待ってみれば分かるかも」
「ここで待つの!?」
 ピタリと足を止めたカグヤに倣う他なく……。
 ――……、~~、~~、♪~~~……。
「ハッ。僕にも聞こえた!」
「うん」
 男の低い声が後方から迫って来る。
 ――~~♪……~~♪。
「な、何言ってるか分かんないけどっ、楽しそうに呪文を唱えてる気がする!!」
 楽しそうと認識しながらも、ヴォルフラムの声は震えている。
「呪文よりも、恨み辛みとか『出口ハドコダ~』とかおどろおどろしく分かる様に喋ってくれればいいのに」
「どうしてカグちゃんは恐怖心を煽るような指摘ばかりするの!?」
 そういうの要らない! と、カグヤの腕を揺さぶるが、彼女が呟いた一言でヴォルフラムの整った顔が一気に青ざめた。
「何か、白い顔のようなモノが――」
「出たああっ!!?」
 視界が僅かに後方を捉え、何かが浮かび上がった瞬間、ヴォルフラムはカグヤを抱えて走り出していた。
(幽霊に慣れるなんて無理だよ!!)
 遠ざかって行く二人を、顔に白塗りをした村人が手を振って見送っていたことなど知る由もない……――。


 ●シュリ・スチュアート&ロウハ・カデッサ

 ランプを手に堂々と頼もしく前を歩くのは『ロウハ・カデッサ』。
「お嬢、こういうの苦手か?」
「苦手か分からない……こういうの初めてだもの」
 彼から離れないようについていく『シュリ・スチュアート』は少し眉を寄せた。
「でも、村の人が脅かしてくるんでしょう? ……少し不安ね」
「大丈夫だって、遊びだし怖くねーよ」
 少し笑いながら返事をするロウハに、一瞬気が緩む。
「だと良いのだけれど……」
 しかし、不安は的中した。
 突然暗がりからひらひらと宙を舞う白い物体が猛スピードで此方に迫って来たのだ。
「ひぃああぁ……!」
 シュリは悲鳴を上げながらロウハの背中に身を隠す。
「……ありゃ糸で吊ってんな。一瞬だが布に顔が描いてあった」
 通り過ぎた物体をロウハが可笑しそうに説明してくる。
「観察していたの?……わたしはそれどころじゃ無かったわ」
「ランプ持ってたからたまたま見えたんだ」
「普通は見たくないと思うものじゃないかしら……」
 そう呟くと、「怖いもの見たさだ」と笑うロウハらしい発言にシュリは苦笑を滲ませた。
 そして再び、仕掛けに驚いては身を震わせながら山中を進むこと数分――。
「あれは、滝の音かしら?」
「そうみたいだな」
 滝の水を汲んだらゴールまであと半分。
 相変わらずの暗闇に急く気持ちをなんとか抑え、慎重に滝へと向かう。
 ――ポタ……。
「ひゃっ! な、何!?」
 咄嗟にロウハの腕にギュッとしがみつく。
 微かだが、聞こえたのは水滴のような物が落ちる音。
 もちろん滝の音ではなく、もっと……そう、体の直ぐ傍を通過して足下に落ちたような……。
 暗い足下は良く分からず、ソロソロっと視線を上げると――。
「キャ! そこに怖い顔がっ………あ、ロウハだったわ」
「おい、今俺の顔にビビったのか?」
 此方を振り向いたロウハは驚き半分と、少々傷付いたような声で問うてきた。
「ええっと……」
「いいけどなー。どうせ悪人面だしー」
 彼のいじけたような口調に、シュリは小さくクスリと笑う。
「人の顔を見てビビったり笑ったり、失礼だなー」
「ふふ、ごめんなさい。そんなんじゃないのよ」
 わざとらしく口を尖らせる彼も、シュリの楽しげな反応には笑みを零す。
 ――ポタ、ポタ……。
「ひゃっ!」
「な、何だ!?」
「ロウハっ……顔……血!」
「ち? ……ああ、何か上から落ちてきたんだ」
 言いながら手の甲で頬を拭うロウハを心配げに見つめる。
「こいつは果汁だな」
「か、果汁?」
「ああ。甘ったるい匂いがするぜ。どうやら血に見立てた物らしいな」
「そうなのね、驚いたわ……」
「流石に俺もビビった。つーより、お嬢がすげービビリなのが一番驚くんだが」
「だって本当に怖かったんだもの」
「俺の顔込みでビビったんだろ、どうせ」
 また冗談にいじけ出そうとするロウハを、シュリは「血に驚いたのよ」とクスクス笑いながら大きな背中を押して先へと促した。
 力の滝で水筒に水を汲み、ついでにロウハは顔についた真っ赤な果汁を洗い流した。

 ――肝試し後半の下山途中。
「……ねえ、後ろで気配がしない?」
「気配……するな」
 ここからでは良く分からないが、一定の距離を保って何かがついて来ている。
「本物の幽霊かもしれねーぜ。それは怖くないのか?」
「うん、怖くないわ」
「お嬢も変なところで勇敢だな」
 即答するシュリに、怖い物に対しての態度の落差が激しいことに内心面白いと頷くロウハ。
「もし幽霊が襲ってきたら……反撃してやりましょう」
「反撃って、もし村の奴だったらどうするんだ?」
「そのくらいの見分けはつくわ。わたしが恐怖を感じたら村人ってことね」
「ははっ。ドッキリに耐性無さ過ぎるだろ」
 そんなお喋りをしながらもロウハの傍を離れず歩く。
 後ろの気配がまだ何なのか分からない為、警戒は怠らない。
 ――パキ……パキ……。
「何の音だ?」
「後ろからよね」
 立ち止まり、臆することなくシュリは後ろを振り返る。
「……お嬢が怖がらないってことは、まさか、幽霊かっ?」
 珍しくロウハが少し焦ったような声を漏らした。
 これまではシュリのビビり様に気を取られ、あまり驚く事は無かったが、今回はそうではないので逆に恐怖心が芽生えたのだ。
「まだ分からないわ。少し遠いし、突然出て来なければ平気なの」
「それは村人だったとしてもじわじわ来られたら判断つかねーな」
「そうね……」
 パキ、……パキッ――。
 音と共に数メートル先で気配も動きを止めた。
 二人でジーッと目を凝らす。
「あれは何かしら……動物?」
「――の、毛皮を被った人間」
「――の、幽霊かもしれないわよ」
「いや、良く見ろ。足があるぜ」
「あら本当ね。危うく反撃に出るところだったわ」
「お嬢、反撃して幽霊になっちまったらシャレにならん」
「そうね。正体も解ったことだし、早くゴールを目指しましょう?」
「だな」
 冗談か本気か、淡々と会話を交わす二人に、青ざめたのは脅かし役の村人の方だったとか……――。


 ●ヨナ・ミューエ&ベルトルド・レーヴェ

「帰るなら今のうちだぞ」
「ここで帰ったらまるで怖いみたいじゃないですかっ」
 ランプを持つ『ベルトルド・レーヴェ』の直ぐ後ろを『ヨナ・ミューエ』は虚勢を張りつつも内心おっかなびっくり歩く。
「だよなあ。そうこなくては」
 どこか笑いの含んだベルトルドの声。
「と……当然です」
 と答えながらも彼の背後に手を伸ばす――。
(今、青白い物が横切ったような……。動物か何かです、きっと!)
「おい、尻尾」
「え?……あ、……」
 何かに縋りたくて無意識に掴んでいた彼の尻尾を慌てて離す。
(っ、私とした事が……思わず……)
 行き場を失った手を胸の前でギュッと握り、ゆらりと揺れる黒い尻尾から目を逸らす。
「怖いなら握っていても別に構わないが」
 ランプに照らされて緑色に輝くベルトルドの瞳が此方を振り返った。
 それが少しの勇気に変わる。
「いーえ。問題ないです」
「本当だな?」
 どこか面白がるように瞳を細めるベルトルド。
「………あれ、今何か光ったぞ?」
「っ!!!??」
 あまりの恐怖に声が出ず、身体が勝手に魔術を練る体勢を取った。
「おいおいおいっ。何魔術使おうとしてるんだ」
「……今、魔物が出たって言いましたよね?」
「いや、言ってないが。何か光っ――」
「魔物を逃がしては大変ですっ。先を急ぎますよ」
 ビビっているのだと思われるのが嫌で聞き間違いを装い虚勢を張ってはみたけれど……。
「………クッ」
 彼にはバレバレのようで、我慢しているつもりなのか、口元を押さえて喉の奥で笑うベルトルドに目を眇める。
「今、笑いましたね?」
「いや、全く」
 スッと背筋を伸ばして首を振るベルトルドをジトっと見据えた。
「……お、滝の音が聞こえてきたぞ」
 話を逸らす彼だが、本当に森の奥の方から聞こえて来る音にヨナはホッと息を吐いた。

 漸く辿り着いた力の滝。
「ここは昔、首洗いの滝と呼ばれていてな」
「そんな話聞いたことないです」
 と言いつつも滝に向かうヨナの手が一瞬止まる。
 ランプで辺りを照らしてもらいながら、なんとか水筒に滝の水をたっぷり入れることができた。
「こんな蒸し暑い夜は滝壺の水が赤く染まり、首だけの亡霊が……」
「――っ!!!??」
 水に映り込むランプの光が血の様に見え、背後から迫る首だけお化け(村人の手作り)に、ヨナの息が一瞬ヒュッと止まり、反射的に両手を持ち上げ――。
「やめろやめろ。だから何で魔術使おうとするんだ見境なしかっ」
 虫を掃うかのような手つきで魔術を散らすベルトルドにハッと我に返る。
 また咄嗟に魔術を発動させようとしてしまったようだ。
「……つい、……」
「ついじゃない」
「ベルトルドさんが怖い話をするからいけないんです」
「肝試しなんだから怖い話はつき物だろう」
(納得いかない……)
 そう思いながらも彼と共に力の滝を後にする。

 ――帰り道こそ落ち着いて、慎重に……。
 と、気を付けていたのだが。
(やだ、やだやだやだやだ――!!!!)
 そう上手くはいかず、ヨナは一目散に山を駆け下りていた。
『ヒャハハハハハハハハハ!!』
 追い掛けて来るのは何とも形容しがたいけたたましい笑い声。
(どこまで追い掛けて来るの!!?)
 兎に角必死に逃げて、気がつけばゴールに辿り着いていた――。

 肩で息をしながらベルトルドを振り返る。
「はぁ……。あの声はなかなか臨場感がありましたね……」
「声? 何の話だ?」
「え……」
 そこへ、脅かし役である村人が首を傾げながら言った。
「あんたらで最後だったが、そんな役の奴いたっけなぁ」
「っ?」
「何かわりぃもん連れて帰ってきたのかもなぁ……あ~あ」
 ちらりとベルトルドを見遣る。
「――これも演出……ですよねッ?」
「さてな」
 ニヤリと笑んであからさまにすっとぼけるベルトルドだが、あの笑い声が頭から離れず身震いするヨナであった。

 肝試しを終えて、暗いだけの夜道を二人で歩く。
「……あの」
「ん?」
「尻尾、いいですか……?」
 こんなことを頼まなければならない状況下に屈辱的な表情を浮かべるヨナ。
 そんな彼女に、ベルトルドは噴き出すのを堪えて尻尾を差し出す。
「強く握るなよ」
 こくりと頷き、そっと握ると、彼の温もりが手の平に伝わってきて自然と安堵の息が零れた。
「しかし、ヨナのあの猛ダッシュには驚いたな」
「あれはっ、仕方ないです」
「俺的には一番驚いたぞ」
「………」
「参加した甲斐があったってもん――痛っ!」
 手中にある尻尾をキュッと握る。
「強く握るなって言わなかったか?」
 ――ギュっ。
「痛い痛い。分かった! もう言わないから緩めてくれ」
「分かれば良いんです」
 緩めると、緊張していた尻尾が垂れ下がる。
「けど、たまには良いよな。こういう催しに参加するのも」
 言いながら彼の尻尾がゆらゆらと楽しそうに揺れるのを、ヨナは手の平でもう暫く感じていたいと思うのだった……――。





背後にご用心
(執筆:茸 GM)



*** 活躍者 ***


該当者なし




作戦掲示板

[1] エノク・アゼル 2018/07/27-00:00

ここは、本指令の作戦会議などを行う場だ。
まずは、参加する仲間へ挨拶し、コミュニケーションを取るのが良いだろう。  
 

[5] カグヤ・ミツルギ 2018/08/02-19:17

カグヤと、パートナーのヴォルフラム。

……ベリアルは平気なのに、幽霊はてんでダメなパートナーをどうにかすべく、参加。
とりあえず、慣れさせてみることに、した。
よろしく、お願いします。

ヴォル「僕は!全然、よくないよ!!!」  
 

[4] ロス・レッグ 2018/08/02-05:33

肝試しときいて! 精神修行に!! ロスとティ参加なー、ヨロシク!
普通の幽霊とかスプラッタ系は怖くねぇけど、おばけ屋敷系統はちと事情違っしなー
ま、楽しそうだし、楽しめれば! 怖かったら怖かったで精神修行!!  
 

[3] シュリ・スチュアート 2018/08/01-01:47

シュリとパートナーのロウハ。
よろしくね。

肝試しなんてたいしたことねーだろ、ってロウハは言うけど……。
いろいろ脅かしてくるみたいだし、少し不安、かも。  
 

[2] ヨナ・ミューエ 2018/07/31-02:22

参加するつもりはなかったのですがベルトルドさんが
「まさか怖いから行かないなんて事は無いよなぁ?」
なんて言うものですから、ね。

村の催しを盛り上げるのも指令の一環として、しっかりやってこようと思います。