~ プロローグ ~ |
唸るように暑い日差しを受けて、指令をひとつ終えて報告を提出したのは夕方。 |
~ 解説 ~ |
のんべぇシナリオです。 |

~ ゲームマスターより ~ |
ばればれでしょうが、のんべぇです。 |

◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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※ラス視点 そういやお酒飲める年齢だった…! 何か頼むか(わくわく ラニ、お前はまだダメだぞ…そんな目をしてもダメだからな! とはいえ何があるかとかは全然知らない …甘くて飲みやすいカクテルとかあるか? そういうのは全然飲んで来なかったからな ・酔った時はクールさが抜けてふわふわ、スキンシップも激しめ んー?…ふふ、なんかふわふわする(にへら らにー、そんな顔しなくてもいいだろー?(ハグ なぁラニ きっとお前にばっかり背負わせてるんだよな… オレが色々忘れてるから だからお前、あんなに…(4話参照 いつもごめんな ごめんなぁ…(そのまま寝落ち なお帰る頃には起きる模様 ついでにちょっと酔いも覚める …なんかオレ、やらかしたか? |
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ふむ…お酒か。少しよばれて帰ろうか。 そうだな私は何かカクテルを…星空をイメージしたものだと嬉しい。 おつまみはママに任せるよ。 気取ったお酒…になるのだろうか?私はこちらの方が慣れているのでね。 カクテル、ワイン、ブランデー…どれも美味しいよ。 逆にビールは飲んだことがないな…どれ一口もらっても構わないかい? む…これは…苦いな。 折角もらったのに申し訳ないが…。 良いお店に来たのだから良いものを飲んでおくのもいいと思うけどね。 じゃあ、私からヴァン君に「キール」を。 そうだ、カクテル言葉というものがあるのだがヴァン君は知ってるかい? 今回もちょっとした言葉を添えたつもりだが…。 気になるかい?…ふふ、内緒だよ。 |
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◆アユカ ユギルさんの行きつけのお店?へえーへえー、知らなかった…! 美味しいお店を開拓できるのは嬉しいな~ ええと、ママにおまかせしてもいいのかな? じゃあ、彼に合うお酒をお願いします~ この人ね、ニホン出身で、堅物で不器用で無趣味で、桜の花が好きなの それと、お酒に合うお食事も! なんでだろ、今夜は酔い潰れない お酒も優しいものが多いし ママ、わたしが弱いってことも見抜いたのかな…すごいなあ ◆楓 アユカさん、羽目を外し過ぎないでくださいよ 入店直後、店主にそれとなく告げる 彼女下戸なので、酒は弱いものをお願いする では彼女に合う酒も頼む、チョコレートを使ったもので適当に 深酔いしないなら何よりです 運ぶのは私ですからね |
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お酒なんて最近知ったばかり ほんの少しなら飲んだ事はあるけど …今まで安心して酔える生活じゃなかったから 酒場慣れしてないので借りてきた猫状態 ママにも恐れをなし沈黙 世話焼きのハンスがママに飲み物を注文 ママに差し出されたものを口にして あら 随分パンチが利いてる気がするけど美味しいわ ハンスがしどろもどろに酒に込められた意味を説明するが ろくに聞けない程泥酔 もうダメ 視界が歪むわ ぼんやりハンスを見つめぐったり 視界の端でハンスがママに話しかけているのが見える 何を話しているのかしら 私には聞かせられない事? いつも私の傍にいてくれるのに今はママと…何だかモヤモヤするわ 動けないのが恨めしい… この感情が嫉妬だとはまだ無自覚 |
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足を突っ張ったまま引きずられ入店 ママに面食らいつつ色々諦めオレンジジュースを注文 相棒はニホン酒の久保田と牛もつ煮込み、たこわさび カウンター席 ヨ ベルトルドさんそんなにお酒好きなイメージ無かったんですけど べ そりゃ嗜み程度には好きだが、指令外の行動なんてお互い殆ど知らないだろう 最近は飲める指令が多いからつい、な ヨ 言われてみればそうでした。でも悪酔いはやめてくださいね ベ ん。潰れたら介抱でもしてくれるのか ヨ しません、って言ってるんです ママに「パートナーとはどう?」のような話を振られ ヨ どうといわれても、特には。…強いて言えば最近ベルトルドさん説教臭いですね ベ それはお前なあ、自分の言動顧みて考えろ |
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お酒……ですか。飲んだら記憶がなくなるので控えていましたが、仕事なら飲みましょう では、アルコール度数が低くて飲みやすいものを一つ 明日も仕事なので適量で済ませれば問題ないでしょう と思いましたが、ユウさんの提案もあるのでいくつか飲みます その方がレポートにもまとめやすくなるでしょうし (酔ったら) おっと、思った以上に飲んだみたいだ 美味しいとつい飲んじゃうから困ったもんだよ、なぁリッド……あれ、あいつまたステラの所に行ったかな? まーた引っぱたかれなきゃいいけど…… あっ、ユウさんにも皆を紹介……したいけど皆いないなぁ……まあいいや 皆気のいい連中だからきっとユウさんも仲良く……どうして泣いてるんだい? |
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●心情 先輩について行ったら…まさかお酒を飲む事になるとは。 でも僕は飲めるんでしょうか…未成年だと思われそうですね。 その時は大人しくジュースを頂きましょう。 ●お酒 ちゃんと20歳、成人も済ませてるんですが… こんな見た目でお酒を出されるのは滅多にないんで あまり飲んだ事がないんです。 マリアさんのお勧め等ありましたら是非。 ああ、もしお出し出来なければ勿論ジュースでも構いません 慣れてますから…ね。 (それでも切なげに笑み) ●クルトを見て 本職もあって飲み慣れてる感じありますね。 カクテル言葉…へぇ…お酒にも花言葉や石言葉みたいなものが! フォルカーさんが飲んでるそのお酒は…? (覚えてないのになんだか懐かしい…?) |
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指定の店で飲んでギャラが出るとは太っ腹な指令だ。どういう根回ししてるんだか。 て事で請けるぞ。いいだろ?お嬢さん。 酒は勿論アラク(中東の酒)!と言いたい所だが、任務で麻薬の売人をぶん殴って引きずってきたから、強すぎないのがいい。 コロネーション(あなたを知りたい)の水割りで、今日の仕事が危なげなくいった事を乾杯しよう。つまみはお任せで。 「何だ、飲めるのか」 残念ながらそれ以上の会話のネタは見当たらず、お嬢さんは先に帰るようだ。止める理由もないからせめておすすめを聞いて、食後にゆっくり飲もう。 自分の話下手ぶりがもどかしいが、どうせ嫌でも長い付き合いになるんだ、急ぐべきじゃない。 |
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~ リザルトノベル ~ |
足を突っ張ってささやかな抵抗をする『ヨナ・ミューエ』を引きずるようにして店に入ったのは『ベルトルド・レーヴェ』だ。 「いらっしゃあい」 太い声にヨナはびっくりして力が抜けてしまった。その隙をついてベルトルドは素早く、ヨナをカウンター席につかせた。 「エフド、ラス、こっちのテーブル席があいてるぞ」 と一緒に指令を受けた顔見知りたちにテーブル席を勧めることも忘れない。『エフド・ジャーファル』は片手を軽くあげ応じ、バーにそわそわしている『ラス・シェルレイ』も軽く頷いた。 「さて、飲むか。ニホン酒と牛もつ煮込み、たこわさび」 ヨナはいろいろと諦め顔で。 「オレンジジュース」 と口にした。 「指定の店で飲んでギャラが出るとは太っ腹な指令だ。どういう根回ししてるんだか。て事で請けるぞ。いいだろ? お嬢さん」 母親に仕送りしてカツカツ状態のエフドはまんざらでもないが、『ラファエラ・デル・セニオ』はしかめ面だ。 「居酒屋は趣味じゃないんだけど、報酬が出るなら」 こんな仕事で報酬が出るなんて上はどう思っているのか。ユギルあたりが裏工作をしているのではないのか? と勘ぐってしまう。 あまり他とかかわらないテーブル席の端で二人は飲み始めた。 「酒は勿論アラク! と言いたい所だが、任務で麻薬の売人をぶん殴って引きずってきたから、強すぎないのがいい。コロネーションの水割りで、今日の仕事が危なげなくいった事を乾杯しよう。つまみはお任せで」 「オールドファッションド」 「何だ、飲めるのか」 「一応ね」 あなたを知りたいと誘うのに、ほっといてとつんとした二つのグラスがぶつかりあう。 おつまみに出されたのはジャガイモ、青ネギを小麦粉であわせて焼いた一口サイズのムジュベル。ミント入りの酸っぱさとさっぱりとしたソースが食欲をそそる。 視線を向けるエフドに、ラファエラはムジュベルを細い指でつまみ、舌の上にのせて食べた。 「そういやお酒飲める年齢だった……! 何か頼むか」 店につくとラスは拳を握りしめ、いつもはクールに装っている顔からはわくわくとした期待が溢れていた。その横では『ラニ・シェルロワ』は驚いた顔をしてラスを見た。 「あれ、そういやあんた成人してたんだっけ? いーいーなー! あたしもお酒飲みたい! え、ダメ。むー」 「ラニ、お前はまだダメだぞ。そんな目をしてもダメだからな」 子犬のような目で睨むラニを見ないようにしながらラスは慣れない店に楽しそうだ。 「あらぁ、なに飲むのぉ?」 「甘くて飲みやすいカクテルとかあるか?」 「あたしもカクテル飲みたいー!」 「そうねぇ。ノンアル、作ってあげましょうかぁ?」 ママの言葉にラニはとたんに機嫌をなおして目を輝かせた。 「あたしでも飲めるのあるの? それ! 赤くてオシャレなのとかある?」 二人ともママにお任せすると、すぐにラスには甘く酸味のきいたスプモーニ、ラニにはトマト、レモン、タバスコを入れたぴりっと辛い大人のバージンメアリー。 「わぁい」 「いただきます」 大人の辛さはラニの舌を唸らせ、甘く舌の上で踊る味わいはラスの体を静かに満たしていく。 度数は低く、つい進む。 「んー? ふふ、なんかふわふわする。らにー、そんな顔しなくてもいいだろー?」 「え、うそ、もう酔ったの? く、これ記録するものもってこなかったのは一生の不覚じゃない? ぷ、あはははは~」 ふにぁと情けなく笑うラスの甘える抱擁にラニは拳を握って悔やみながら大爆笑してしまった。本当にもったいない。最近室長からいただいたボーナスでカメラを買うべきだった。 「はいはい。ぎゅうぎゅうしていいわよぉ」 「ふふ~。なぁらにぃ。きっとお前にばっかりせおってるんだよなぁ? オレが色々忘れてるからぁ? だからあんなに」 ラスの舌たらずな言葉のなかに隠されたそれにラニは笑いを引っ込めて言い返す。まるで願うように、切実な声で。 かたく結んだ指の間から零れ落ちる互いに見せられない闇。 肉親以上の絆で結ばれているのに、互いに見せられない底がある。 ラスはきっとラニが思う以上に優しくて。 ラニはラスが思うよりもずっと、深い憎悪に蝕まれている。ただそれだけ。 「アンタは何も悪くない。思い出さなくていい! あんなもん、無くたっていい」 「ごめん、ごめんなぁ、いつもごめん」 ラニの胸の中で眠りにつくラスをどうすればいいのかと持て余すように見つめる。楽しかった気持ちが萎み、こんなにも大勢のなかにいるのに独りぼっちの孤独に凍えてしまう。 「嘘って、どんくらい貫けば真実になるかしら」 バージンメアリーの苦みとぴりりっとした辛さが罪悪感を胃の底まで落としてくれた。 「酒が飲める指令か、いいじゃないか。ありがたく飲ませてもらうぜ!」 「ふむ。お酒か。少しよばれて帰ろうか。そうだな。私は何かカクテルを……星空をイメージしたものだと嬉しい。おつまみはママに任せるよ」 無邪気に喜ぶ『ヴァン・グリム』の横で穏やかに目を細めて『アーカシャ・リリエンタール』が注文する。 「カクテルねぇ? 俺は気取った酒じゃなくていい。ビールだ」 「はいはい。お二人さん、どうぞ」 ヴァンには濃厚な味わいの黒ビール、アーカシャにはグラスの底が濃い紺で、上に行くほど淡い色となるように工夫されたバイオレットフィズ。 おつまみは星のイメージで金平糖が添えられた。 濃密な黒ビールの苦みにヴァンが小さく唸る横でアーカシャはジンとレモンの爽やかさにほっと息をついた。 「あんたはいつもいい酒飲んでそうだよな。俺はもっぱら安酒だからな」 「気取ったお酒になるのだろうか? 私はこちらの方が慣れているのでね。カクテル、ワイン、ブランデー……どれも美味しいよ。逆にビールは飲んだことがないな。どれ一口もらっても構わないかい?」 「ビールを飲んだことがないねぇ。飲むんなら飲んでみるか?」 ヴァンが口つけた反対側をアーカシャにまわしすすめる。恐る恐るものは試しと口をついたアーカシャはすぐに濃厚な苦みにむせて慌てて甘い金平糖を口に含んだ。 「む! これは……苦いな。折角もらったのに申し訳ないが」 「ははっ、口に合わねぇみたいだな。まぁ、こいつは苦みが強いからな、それにビールはのど越しを味わうんだ。そんな口のなかでちんたら味わってたら苦いに決まってる」 「今度もう少し苦みの低いものがあれば試してみよう。良いお店に来たのだから良いものを飲んでおくのもいいと思うけどね」 「あ? んーそうだな、良い酒も飲んでおくのはいいかもな?」 「じゃあ、私からヴァン君に「キール」を。そうだ、カクテル言葉というものがあるのだがヴァン君は知ってるかい? 今回もちょっとした言葉を添えたつもりだが、気になるかい? ふふ、内緒だよ」 意味深なアーカシャの言葉にヴァンは眉根を寄せて考えこんでしまう。ビールが終わるとちょうど、やってきたキール。 「あんたからのカクテルねぇ。学のない俺がカクテル言葉なんてわかるわけないだろう? ……まぁ、あんたからもらったもんだし飲むよ」 アーカシャがチョコのお酒にひかれて『アユカ・セイロウ』たちに軽い談笑がてら挨拶に行った隙をついてヴァンはすかさずママを手で呼び、キールについて聞くとこっそり教えてくれた。 「「最高の巡り合い」ねぇ。あんたはそんな風に思っているのか。俺も……悪くはねぇとは思ってるよ」 グラスのふちを指でつついてヴァンはこっそりと言葉を返した。 「ベルトルドさんそんなにお酒好きなイメージ無かったんですけど」 ヨナはオレンジジュースを飲みながら透明な水のような酒をごくごく飲むベルトルドを見つめた。 「そりゃ嗜み程度には好きだが、指令外の行動なんてお互い殆ど知らないだろう。最近は飲める指令が多いからつい、な」 食べるか、とつまみをすすめられてヨナも一口、ぱくり。噛むのに苦労するし、味が濃い。 「言われてみればそうでした。でも悪酔いはやめてくださいね」 「ん。潰れたら介抱でもしてくれるのか」 「しません、って言ってるんです」 辟易するヨナにベルトルドは尻尾を振る。 「ユギルさんの行きつけのお店? へえーへえー、知らなかった……! 美味しいお店を開拓できるのは嬉しいな~」 アユカはお酒が飲めるので上機嫌だ。その横では『花咲・楓』が赤い目を細めた。 「アユカさん、羽目を外し過ぎないでくださいよ」 「はーい。ふふ」 スキップしそうな勢いのアユカは聞いているのかいないのか。 「ええと、ママにおまかせしてもいいのかな? じゃあ、彼に合うお酒をお願いします~!この人ね、ニホン出身で、堅物で不器用で無趣味で、桜の花が好きなの。それと、お酒に合うお食事も!」 「アユカさん……彼女に合う酒も頼む、チョコレートを使ったもので適当に」 「はぁい。あとは?」 「彼女は下戸なのでアルコールは低いものを」 はしゃぐアユカにばれないようにこっそりと楓がママに告げると、ママは頷いた。 「かーくんのわたしのイメージってチョコレートなの?」 「チョコレート店を営んでいたのでしょう? 間違っていないはずですが、あなたから見た私は随分と」 つまらない男だと自分への嘲りはこの場の雰囲気に似合わないと飲み込んだ。アユカから見た自分の像というのは概ね当たっている。そう考えると自分はなんとも色のない。 「まあ、いいですが、あなたの作る菓子は極上ですからね」 「あ、あ、ありがとう」 照れるアユカに楓は目を細めて微笑んだ。 少しするとアユカには見た目はチョコ。そこから梅の甘い匂いがした。ホットにしているのでアルコールがぎりぎりまで飛んでいるので飲みすぎても大丈夫に配慮されている。 「あまい! チョコのなかに梅酒がはいってるやつだ! ホットだからすごく飲みやすいね」 「そうですか」 楓にやってきたのは透明色のニホン酒だ。手にとると、つんとした淡い花の匂いがする。お酒出すときママが「深桜」っていうのよ、と教えてくれた。少しばかり度が強いが主張こそしないが、なめらかな味わいだ。 つまみはお酒が少し甘めということもあり、蒸し鶏に玉ねぎを刻んださっぱりしたもので、これもおいしいとアユカは嬉しげだ。 「なんでだろ、今夜は酔い潰れない。お酒も優しいものが多いし、ママ、わたしが弱いってことも見抜いたのかな? すごいなあ」 アユカは感心しているが、それはこっそりと楓が教えたからだ。 「深酔いしないなら何よりです。運ぶのは私ですからね」 しれっと言い返す楓にアユカはふふっと笑って、おいしそうに鶏肉を食べている。楓はテーブルに少しばかりマナーは悪いが肘をつき、手のひらの上に顎を乗せて穏やかな時間の流れを味わった。 チョコに甘酸っぱさ、透明ななかに甘い味わいは、今の二人の姿のようなお酒だ。 酒に合わせて食事が振る舞われる。バゲットにすりおろした桃とチーズとはちみつ。ほどよい甘さは少しばかり強いお酒に合わせてラファエラの口のなかにさくさくと吸い込まれていく。 一方、エフドはスパイシーなウィンナー、かりっと揚げた季節の魚を頬張る。予想以上に味付けがしっかりしていて噛み応えもある。 「うまいな」 「まぁ……なかなかね」 それで終わり。 会話のネタを探しても、残念なことにエフドには見つからず、もどかしさを酒と料理で飲み干していく。 視線を向ける。合う。絡む。そして突き放される。グラスのなかの液体だけは二人のかわりに多弁にテーブルの上で揺れている。 『サラ・ニードリヒ』はかちんこちんに固まっていた。 「あらぁ~、こういうところははじめてぇ?」 ママが苦笑いするのにサラは恐れおののいて、うまく言葉が返せず沈黙した。サラの今までの人生は安心とは程遠く、お酒も最近知ったばかりだ。 「すいません、ママ」 苦笑いして『ハンス=ゲルト・ネッセルローデ』が助け船を出す。サラはそんなハンスを見上げる。 「いいのよぉ。なににするの?」 「あまり強くないのお願い。俺のはママに任せるよ」 「はいはい」 「あと、ママ」 ハンスが何か告げている傍らでサラは耳を傾ける。周りの穏やかで楽しそうな喧噪。少しだけ慣れなくて、けれど不愉快ではなくて。 ただハンスがママになにかこそこそ告げているのを見ると少し胸がちくちくと痛む。 淡い赤い色のピコン&グレナデンが出てきたのにサラはそっと手を伸ばして嘗めるように飲む。 「あら、随分パンチが利いてる気がするけど美味しいわ」 ハンスはウォッカギブソン。甘さがなく、強いアルコールが喉を過ぎていく。 「パンチが利いてる? そんな強い酒じゃない筈だよな」 サラは甘いその味を口のなかで転がし、ゆっくりと嚥下していく。喉から胃へと落ちるその熱が体中を優しくじんわりと焼いていく。 「あのな、サラ、俺、その酒にこめたのは……あ、愛してるとか、お前だけとか……それって慕う心って意味があって、俺は……サラ! 酒に弱すぎだろうっ」 うとうとしているサラはそのままハンスを見つめる。 白い頬に赤みがさしてじっと見つめられてハンスはどきまぎしてしまった。 「ふふ、きもちいいわ、はんす」 舌たらずに告げてサラがそのままもたれかかるのにハンスは理性を総動員させて優しく受け止める。風邪をひいてはいけないと上着をかけてため息一つ。 「あらぁごめんなさいねぇ」 「え、いや、いいんだ。俺が……もっとうまくできたらなって、ここで相談してもいいかな? 妹だって思ってたサラとはたぶん両想いなんだ。けど、下手なことをしてこの関係を崩したくなくて、不安で」 「それって恋かしら? 愛かしら? いろんなものを経験してから聞いてみたら? サラちゃんも、あなたも」 ママがハンスに差し出したのは琥珀色に甘い香りのポートワイン。 「二人でいっぱいいろんなことを体験したら、これをあなたが彼女に捧げなさい。今日は奢りよ」 「なにか意味があるの?」 「やぁね、まだ内緒よ。おほほほ」 ハンスの横でサラが小さく声をもらした。 「サラ? 寝たのか?」 酔っぱらっていてもまだ意識があるサラは朦朧としたままハンスとママをぼんやりと眺めていた。よくわからないけどこっそりと話すハンス、自分には聞かせられないの? いつも隣にいるのに楽しそうにママと話していて――もやもやとした気持ちにサラはまだ名がつけられず、眠りについた。 で、あんたたちどういう間柄なの。とママは口にした。浄化師にもいろいろとある。 「どうといわれても、特には。強いて言えば最近ベルトルドさん説教臭いですね」 「それはお前なあ、自分の言動顧みて考えろ」 「はいはい。危機意識を持てって話でしょうわかっていますけど良い子にしててもベリアル達は倒せないですし、誰かがやらないといけない役目なればこそです」 「そういう所だぞ」 嘆息を長い耳は聞き逃さなかった。 無言のにらみ合いにあらあらとママが笑う。 『Elly・Schwarz』は興味深そうに店内を眺めた。先輩について行ったら……まさかお酒を飲む事になるとは。 問題は自分の外見で成人していると思われるのかという不安。 『Curt・Volker』は現在修行中のバーテンダー。この手の店には慣れているので落ち着いているが、まさか先輩に連れてこられるとは思わなかった。これも勉強の一つだ。 「二人ともぉなにがのみたい?」 エリーがびっくりしているのにクルトは愛想よく笑った。 「俺はそうだな……『カミカゼ』はあるだろうか……? なかったらライム系で何か出してもらえると有難い」 「いいわよ。カミカゼね。ニホンが好きな人に受けがいいのよ。可愛いあなたはどうする?」 「こんな見た目でお酒を出されるのは滅多にないんで、あまり飲んだ事がないんです。マリアさんのお勧め等ありましたら是非」 そのあと慌ててエリーは付け加える。 「もしお出し出来なければ勿論ジュースでも構いません。慣れてますから……ね」 少しだけ切なそうに笑うエリーをクルトは目を細めて見つめた。彼女がその外見で苦労しているのを彼は良く知っていた。 ママがやぁねぇと元気よく笑った。 「もう可愛いし、キスしたくなっちゃう! 辛いのと甘いのと酸っぱいのはなにがすき?」 「甘いもの、は好きです」 「わかったわ。クルト君はエリーちゃんとどうなの?」 「エリーは……妹みたいでほっておけない」 「そう、わかったわぁ」 ママが鼻歌混じりに行ってしまい、すぐにお酒が用意された。 クルトにはご注文の鋭い切れ味のカミカゼ。 エリーには底が紺色で上に行くと鮮やかな黄色になっているフルーツカクテルだ。 「わぁ、甘い」 お酒がはじめてで甘いものが好きというエリーが、これからいっぱいお酒を知れるようにと配慮した一品。 こくこく飲むエリーにクルトは嘗めるように味わう。 「カクテルにも言葉があるし、一つ一つ意味があって、その人の為にオリジナルで作るなら物語もある。カクテルは案外奥深い酒だと……俺は思う」 「本職もあって飲み慣れてる感じありますね。カクテル言葉……へぇお酒にも花言葉や石言葉みたいなものが! フォルカーさんが飲んでるそのお酒は?」 「これは……まぁプラスの言葉だ」 「そうなんですか」 それ以上は聞かず、エリーはどこか不思議な懐かしさを覚えながら甘いお酒に優しくまどろむ。 貴方を救うと隠された言葉を飲み干すクルトはグラスに残った僅かな液体に問いかける。 (彼女の記憶はあるべきか無いべきか。どちらが救いなんだろうな) 「ご馳走様」 ラファエラは食べつくした皿を重ねて立ち上がる。エフドは止める手立てがないので、問いかけた。 「食後のおすすめは?」 「プレスト」 意味は通じるはずだと言いたげに強気で言い切るラファエラ。 勝気な瞳は試すようにエフドを見つめる。 「生き急ぐ男は好みじゃないの。そんな山師みたいなのは、パパの顧客との会食で見飽きたわ」 じゃあね、と一人先に帰っていく。その背にはこれから長い付き合いになると彼女なりの訴えだ。 前ならわからなかったが、今ならば彼女の言いたいことがエフドにはわかる。それくらいの付き合いを重ねはした。 噛み付くようで、つつましく、駆け引きのような、酔わせるやりとりを今宵は楽しんだ。 それで今は十分だ。 語りすぎず、少なすぎず。 不器用な二人の、それでもささやかなやりとりはエフドを満足させた。 「どうせ嫌でも長い付き合いになるんだ、急ぐべきじゃない」 グラスを指で弾き、呟いた。 酒は舌の上から全身に巡り、酔わせていく。熱くて、痺れる。 「パートナーがじゃじゃ馬だと苦労するな」 エフドやラスたちの様子を遠目に眺めてベルトルドは呟く。 「そんなに気に入らないなら鎖にでも繋いでおけばいいじゃないですか」 「俺が言ってるのはな……いや。まあ、お前が分かってないということは分かった」 「またそういうしたり顔して」 ベルトルドは酒を一気に飲み干すと、ヨナの頭を乱暴に撫でた。 「なんですか。むぅ!」 「まぁ今日は飲むか」 「……オレンジジュース、おかわりで」 「たまに酒を飲め。奢るぞ?」 「いやです」 夜は短いが、二人の先は長い。 「お酒……ですか。飲んだら記憶がなくなるので控えていましたが、仕事なら飲みましょう。では、アルコール度数が低くて飲みやすいものを一つ。明日も仕事なので適量で済ませれば問題ないでしょう」 「わ、私も、カクテルでアルコール度低いやつで」 指令なので真面目に取り組む『セプティム・リライズ』に付き合う『ユウ・ブレイハート』。 二人の注文にママが笑って出してくれたのはセプティムには芳醇なにおいの赤ワイン。ユウにはワインを使った黄金色の甘いアップルロワイヤル。 ユウはちびちびと飲む横でセプティムはゆっくりと飲んでいる。 (どれくらい飲めるのかしら、この人。記憶がなくなるっていうし) それに。 (もし普段と違った姿を見られたら面白そうだし) 甘いお酒がユウを少しだけ大胆にさせた。 「色んなお酒飲んだ方が報告しやすいですよ。ほらもう一杯、これは指令ですし」 「そうですね。そのほうがレポートにまとめやすくなるでしょう」 セプティムは生真面目に返事をし、ママにもう一杯、別のものをと口にする。 「あら、いいの?」 「はい。お願いします。これも指令ですから」 ママが出してくれたのは赤ワイン。どれも生産地が違うもので、飲み比べるといいと言われてセプティムは飲み干していく。真っ赤なワインを。 ユウがようやく一杯飲み終わるころにはセプティムの前にはグラスが三つも並んでいた。 ユウがちらりとセプティムを見ると、彼は珍しく少しだけ頬を赤く染め、椅子に身を預けていた。 「おっと、思った以上に飲んだみたいだ。美味しいとつい飲んじゃうから困ったもんだよ、なぁリッド……あれ、あいつまたステラの所に行ったかな? まーた引っぱたかれなきゃいいけど」 ユウは目を見開く。彼の唇から零れる名前、視線は優しく誰かを探していて。 (これが本当のセプティムさん? て事は今呼んだ人達は……) 頭が意味を理解し、肌が粟立ち、ユウは息を飲む。 「あっ、ユウさんにも皆を紹介……したいけど皆いないなぁ……まあいいや。皆気のいい連中だからきっとユウさんも仲良く」 セプティムの普段と少しだけ違う無邪気な声にユウは胸が締め付けられた。 これが。 これが本当の彼だ。 後悔が胸を冷やし、心が苦しくなる。 だってこれは、他人が気軽に見ちゃいけない、彼の大切な思い出の残滓のはずだから。それくらいユウにだってわかる。 こんなにも自分の行いを後悔したことはない。自分は無断で彼の大切なものを見てしまった。 (……やばい、泣きたくなるぐらい辛い) 「どうして泣いているんだい?」 心配する声に、苦しくて返事が出来ないユウのかわりにママが声をかけた。 「ちょっと酔っただけよ。リッドはステラを茶化してまたひっぱたかられてるわよ。飽きないわねぇ」 「ほらやっぱり、ひっぱたかれた」 「みんな、気のいいひとたちね」 「そうだろう? けど皆いないんだ」 「そう。いつか、貴方のほうが会いにいけばいいわ。さぁ、もう一杯、二人とも飲みなさい」 ホットミルクをユウは涙で濡れた目で見る。 「酔っぱらった彼はユギルに頼んで送ってもらうから、ゆっくり飲みなさい」 ユウは蜂蜜入りのミルクを流し込む。甘いはずなのにすごくしょっぱくて、苦くて、それでも泣きながら飲み干した。
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*** 活躍者 *** |
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[4] サラ・ニードリヒ 2018/09/04-11:53
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[3] アーカシャ・リリエンタール 2018/09/04-05:27
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[2] ベルトルド・レーヴェ 2018/09/02-20:36
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