~ プロローグ ~ |
「戦闘がさぁ……。なーんかよく分かんないっていうか、うまくいかないっていうか」 |
~ 解説 ~ |
戦闘よく分からない! という方から、戦闘はよく分かるけどクラゲ型のベリアルを倒したい! という方、果てはなんとなく戦闘に参加したい方まで、お気軽に幅広くご参加ください。 |

~ ゲームマスターより ~ |
はじめまして、あるいはお久しぶりです。あいきとうかと申します。 |

◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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あおい: 制服をきっちり着て肌の露出をできるだけ抑える(しびれ防止) 武器とスキルと…魔術真名も忘れてませんよ(そっと指先に触れて魔術真名発動) 属性の相性の上に足元の砂があるので、足をとられないよう クラゲの移動にあわせて距離をおくように気をつけます まずは攻撃でもあり弱点でもある触手ですね 再生してしまうので、スキルで攻撃の手数を増やし 触手を弱点の触手を見つけにいきます 焦らない焦らない…周りを見る。自分の得意なもの 触手が誰かを狙ったときはマヤ(人形)の糸を絡ませて 動きを止めに入ります 倒した数に漏れが無いか(8体)数を数えておく |
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oz GMの「ジェルモンスター大量発生の原因を調査せよ」にて水気のジェルモンスターの弱点が「乾燥に弱い」そうなので、水気モンスターにどの程度火気が有効なのかをチェックするため参加 魔術真名は手の甲を合わせて詠唱 ベリアルを遠距離攻撃(クロエ)で陸へ引き寄せて逃げられないよう触手を破壊してから倒すプラン 出来る限り1体づつ、複数引き寄せた場合は皆で分散して個別対応 ベリアルを引き寄せまずクロエの火気魔法フレイムで触手を纏めて攻撃、潰しきれなければロゼッタも加勢して攻撃 鎖がでれば素で魔法攻撃力の高いクロエが攻撃、外すか火力不足なら次にロゼッタ、と試行錯誤しながら戦闘 1体倒したら今度は逆で、という感じ |
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目的 クラゲ型ベリアルの討伐 行動 ・複数個体に囲まれないように気をつける。囲まれそうになったら分散して対処。 ・できれば一体づつ陸へ引き上げ。攻撃して引き寄せる。 ・なるべく攻撃は同一個体に集中。 現場に着いたら、まずは8体の位置を確認。 できれば他の個体から離れているのから攻撃? ベリアルが近づいてきたら、遠距離攻撃しながら後退して引き寄せ。 敵が完全に陸に上がったら魔術真名使用、本格的に攻撃。 マリオスは前衛、アライブスキルも使い触手を狙う。 シルシィは中衛から同じく触手を狙って通常攻撃。HPが半分位になった人が出たら天恩天賜。 周囲に注意し、囲まれそうになったら無理せず移動。 |
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◆心情 海月のベリアルかぁ。海にはもっと色々なベリアルが居るんだろうねぇ 先日ついに回復の術を習得したからね!皆の支援をしっかり出来る様頑張るよ …まだ回復量は低いけれどね。その分数でカバーしたいな ◆釣り出し時 敵を余計に刺激しない様に距離を取り待機 ◆戦闘 中衛 味方の体力の状況に細心の注意を払いSH4で回復 優先は前衛>他 同じ陰陽師のシルシィさんと回復が被らない様に声を掛け合って連携を取りたいな 回復が要らない状況では通常攻撃 一体ずつ、着実に倒していこうね 魔術真名は敵が2体以上釣れてしまった時に使用 ◆戦闘後 ベリアルが居たから危険だったけれど…綺麗な浜辺だね ねぇ真昼くん。ちょっと浜辺を散歩してから帰らない? |
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【目的】 クラゲ型ベリアルを撃破していくよ。 【行動】 方針:囲まれる事をさけつつ、一体づつ陸にひっぱりだし、確実に撃破していきましょう! ルーシア:クラゲ一体を狙い中衛の距離にちかづき通常攻撃をおこない、バールの接近具合いを支援します。攻撃することですこしづつ陸に上げていく。 バール:天空天駆で接近、鎖をたちきる。飛んで回避、また攻撃。 囲まれているものあれば、緊急回避的に担いで飛ぶ。 トドメは魔術真名で。手を携え社交ダンスやるような感じで。 余裕があるときは二体目をひっぱりだします。 すでに仲間が攻撃をくわえているときは義によって助太刀いたします。 おわったら泳ぐ(ルーシア)砂浜を走るのが青春(バール) |
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~ リザルトノベル ~ |
●砂浜にて クラゲ型ベリアルが上陸するまで待機するか、戦闘の場となる砂浜までもう進み出るか。 馬車から降りた浄化師たちは、波間にクラゲの傘部分らしきものが揺らいでいる光景を離れた位置から見て、選択を迫られる。 逡巡する一堂に、『クロエ・ガットフェレス』が軽く手を上げて発言した。 「クラゲの感覚器官は大して役に立ちません。せいぜい明暗をやや判別できる程度です。敵の数が確認できる位置まで近づいても、問題ないんじゃないかな、と思います」 「いつ砂浜に上がってくるか、分かんないしねー。スケールから考えても、感覚器はクラゲのままだろうし。待ってても暑いだけじゃないかな」 ぱたぱたと手で顔を仰ぎつつ、『ロゼッタ・ラクローン』が賛同する。それぞれがパートナーと視線を交えたり、思案したりして、間もなく進行が決定した。 「油断すると、砂に足をとられそうだな」 指令を確認したときから予想はしていたが、歩道や大地とは異なる感触に『籠崎・真昼(かごさき・まひる)』は眉をひそめる。彼と同じく砂浜に足をつけて戦うことになる『マリオス・ロゼッティ』が、苦みを帯びた表情で頷く。 間もなく、見え隠れする傘をしっかりと視認できる位置に到達した。晩夏の太陽の下、半透明の半月形のものがたゆたっている。 隠しきれない緊張に、『鈴理・あおい』は胸元にそっと片手をあてる。クラゲ型ベリアルの触手に、低確率ながらしびれの効果があると知り、制服は隙なく着こんで肌の露出を抑えていた。暑いが安全性には代えられない。 「あ、うわー。ウヨウヨいるね」 初めてカティンカの近くから海を見たロゼッタが、好奇心と怖気が入り混じった声を出す。 「いち、二、三……。八。報告通りね」 数を確認した『シルシィ・アスティリア』が数える。 報告よりも少なければ、どこかに潜伏されている可能性がある。多ければこの十人では持て余すかもしれない。数と、傘の位置を把握するのも重要な行動だ。 「一番近いのは、あの個体かな?」 きらめく波頭に目を細めた『降矢・朝日(ふるや・あさひ)』が、傘のひとつを指す。 「そうみたいですね」 首を縦に振った『ルーシア・ホジスン』の隣で、準備運動をするように体を小刻みに動かしている『バール・ガナフ』も首肯した。 「では、作戦通りに」 二本一対の短剣を抜いた『イザーク・デューラー』が半歩、右にずれる。 深く息を吸い、細く吐いたクロエが杖を構えた。まずは彼女が、砂浜から最も近い位置で孤立している一体をおびき寄せる。明るいか暗いかをぼんやり理解している程度の生物でも、攻撃を受ければさすがに反応するだろう。 まして、クラゲはベリアル化しているのだ。本能的に、自分を狙った敵の命を獲りにくる。 「行け!」 構えた杖の先に火気の魔術であることを示す、赤い魔方陣が浮かんだ。そこから膨れるように生じた火球は、クロエが得物を振るうと同時に飛んでいく。 中空を走ったフレイムは、揺らいでいた傘に見事、命中した。 ぶるん、と傘を震わせたクラゲ型ベリアルが上陸する。背丈は一メートルほど。ジェル状の傘は直径二メートルといったところか。触手が足の代わりを果たしている。移動速度は遅い。 「クラゲって……歩くのね……」 微妙に嫌そうな顔で、シルシィが呟く。マリオスも不気味に思いながら、つとめて冷静に返した。 「ベリアルだからだと思うけど……。普通は水の中にしか生息しないだろう。シィ、嫌なら後ろで回復……」 「平気」 ふるふるとシルシィは首を左右に振る。 「無理はしないでくれ」 案じたマリオスの声に被せるように、 「――――!」 発声器官をもたないクラゲ型ベリアルが、触手を二本振り上げて威嚇する。 「いくよ、クロエ」 「もちろん」 手の甲を触れあわせ、ロゼッタとクロエが魔術真名を唱える。 「巡りて共に」 「得意なことは人それぞれだ、あおい。だから、無茶をする必要はない」 「はい。イザークさんも、お気をつけて」 しっかりと敵を見据えたあおいと、強気に笑んだイザークは、そっと指先を触れさせた。 「イーザ・イーザ・イーザ」 「マリオス」 「全員無事で、勝とう」 差し出されたシルシィの手を、マリオスは決意とともにとる。 「我らの意志の元に」 安定させていた魔力の生産量が、静かに、確固たる実感を伴って解放された。 ●戦闘開始 美しい翼を広げ、イザークが飛翔する。 「はぁっ!」 天を向いていた触手が、イザークの攻撃で切り落とされた。 「――!」 即座にクラゲ型ベリアルがイザークを二本の触手で捕らえようとする。 「おっと」 「マヤ、お願い!」 「はいそこー! それはだめだね!」 触手が届く寸前でイザークは高度を上げ、あおいが人形のマヤを動かした。彼女と人形を繋ぐ糸が触手の一本を拘束する。 もう一本はルーシアが放った魔術弾が直撃し、ぶるりと震える。 「はっ!」 「っらぁ!」 糸に絡めとられた触手をマリオスが、ルーシアに矛先を変えた触手を真昼が、それぞれ叩き切った。 足を数本失った、半透明の海洋生物の体が傾く。 「おおおお!」 硬めのゼリーのような傘をバールが斧で殴り、直立に戻りかけていた敵を横倒しにする。 「弱点は触手のうちの一本、だっけ?」 ベリアル特有の触手とクラゲ本来の触手が入り混じっているが、司令部が推測した弱点は後者だろう。ロゼッタは占星儀から引き抜いたタロットカードを投擲した。 ブーメランのように戻ってきたタロットカードは、切り飛ばされた触手をさらに真っ二つにする。 「――――!」 音にならない悲鳴を上げたクラゲ型ベリアルから、どす黒い靄とともに鎖が出現した。 「きゃぁっ!」 唐突にがっしりと手を握られたルーシアが、反射的に悲鳴を上げる。 「遠慮は無用! 二人で力をあわせれば! どんな敵も倒せる!」 バールが高らかに宣言した。意図は把握したが、ルーシアは半泣きの表情になる。 「そりゃ前世からの因縁があるかもだけど! おっさんが無理に近づいてくんなぁ!」 叫びながらも、自棄気味にバールの手を握り返して、ルーシアは社交ダンスでも踊るように優雅に足をさばいた。 「レッツ究極♪ あるてぃめっと~!!」 魔術真名の詠唱と、魔力の生産量の解放。 「はああああ!」 身を反転させて高く跳んだバールが鎖を断ち切った。得意げに振り返ってくる彼に、ルーシアは顔を覆う。 「加齢臭……加齢臭が臭うのです」 他の浄化師たちからの、憐みとも愉快ともとれる眼差しが生温い。 「……あの、みなさん?」 どうやらひとまず回復は不要らしい、とひとまず安堵した朝日が、海を指さして頬を引きつらせる。 「まずいな」 「いっぱいきてるー!?」 とっさにシルシィをかばうように、マリオスが前に出る。ルーシアは魔導書を片腕で抱きしめて絶叫した。 接近していた三体のクラゲ型ベリアルが、ついにその全貌を表す。ぞろぞろと足代わりの触手がうごめいていた。 「一体、こちらで引き受けてもいいかな?」 言うが早いか、クロエが海水を滴らせているクラゲ型ベリアルの一体にフレイムを放つ。掠っただけだが、その個体はクロエに狙いを定めた。 「あー、あれ試すんだね? 分かった」 「二人では危険だろう。俺も力を貸す」 「其方では実験前にとどめをさしてしまいそうだから」 イザークの提案を、クロエは遠慮する。 「残りの二体は任せたからね」 タロットカードを放ち、クロエとともにじわじわと後退しながら、ロゼッタは絶えず一個体を引きつけていた。シルシィが呪符を持つ手を肩の高さに上げる。 「私が援護する、から」 「分かった。だが助けが必要ならすぐに呼んでくれ」 マリオスの言葉にクロエとロゼッタ、シルシィが頷いた。 そもそも、二人はこの実験のために今回の指令を受けたのだ。 「ジェルモンスターは乾燥に弱かった。じゃあ、クラゲ型ベリアルは?」 クロエがフレイムを撃つ。傘を掠めたが、とても乾燥しているようには見えない。 「うーん。もっと空気が乾燥するような状況じゃないとだめかな?」 「――!」 触手を一本、ロゼッタはタロットカードで切った。ある程度は手傷を負わせないと、実験が終わる前に追いつめられる。 「太陽の光に、さらし続ける……?」 他の組の様子も見つつ、詳細が分からないなりにシルシィが案を出した。 「時間切れになっちゃう、ね!」 襲来した触手をロゼッタが切ろうとする。しかし、皮一枚で繋がっていたそれは勢いを殺すことなく、彼女の体を叩こうとした。 そこに、シルシィが放った衝撃波が直撃する。 「平気?」 「うん、助かったよ」 「それにしても、もうクラゲが出る季節か。気のせいか、今年の夏は短く感じるよ」 言いつつ、クロエが火球を発生させ、解き放った。今度は触手に命中したが、まだ健在だ。 「忙しかったもんね」 「本当に……。夏も終わりね」 こんなときではあるが、去り行く季節をシルシィは惜しんだ。 「さて」 分かったことがいくつかある。 まず、フレイムに使用できる魔力には限界があり、火球も一定の大きさまでしか育たない。また、複数の火球を作り出すこともできないらしい。 「なるほど」 「あとでいろいろと聞かせてよね、クロエ」 魔術への探求心が、二人を結びつける要素のひとつだ。ロゼッタはクロエが体感したことは聞きたいし、考察も披露しあいたい。 「とりあえず、水分が体の約九十五パーセントを占めるはずのクラゲは、ベリアルになると超高温の火の玉をぶつけても、蒸発しない」 「クラゲって、ほぼ水、なのね……」 「今回の実験は終わりにしよう」 「はーい」 ロゼッタが攻撃を行う。クラゲ型ベリアルはまた一本、触手を失い、しかし。 「い……っ」 それに構わず、ずるりとロゼッタに接近して、触手の一本で彼女の足首に巻きついた。切られる痛みはないが、怪力で握られる鈍痛と骨がきしむ音に眉が寄る。 「ロゼッタ!」 「ロゼッタさん……!」 「離れなさいっ」 クロエがフレイムをクラゲ型ベリアルの傘にあてた。敵の動きが一瞬だけとまる。 足首を粉砕するか、傘に引き摺りこもうとしている触手に、ロゼッタはタロットカードを放つ。あたりだった。 「クロエ!」 呼ばれるより早く、クロエは杖を握り締めて砂浜を駆けている。シルシィが治療を始めた。 「はぁぁっ!」 噴出した鎖にクロエが魔喰器を振り下ろす。確かな手ごたえ。 最初の一体と同じく、クラゲ型ベリアルは液体になって砂にしみを作り、消えた。 一匹ずつおびき寄せるという当初の作戦の崩壊を悟り、朝日と真昼は手を握りあう。 「陽は昇り、夜は明ける」 声を揃えて唱えるのは、魔術真名。真昼はすぐにクラゲ型ベリアルの一体に突き進んで行った。 「大丈夫、大丈夫!」 朝日は今回、回復役に回りたい、と作戦会議で申し出て、承諾されている。同じ役目を負う先達、シルシィに教授してもらうつもりだったが、この状況だ。あちらが片づけば合流してくれるだろうし、ちらちらとこちらを気にしてくれているのも分かる。 それでも、緊張してしまう。すくみかける心を叱咤して、朝日は戦況を正確に把握する。 真昼、イザーク、ルーシアが一体。 マリオス、あおい、バールがもう一体。 混戦にならないよう、両組ともにうまく敵を引き離した。真昼がいるのは、ちょうど中間あたりの後方だ。残りの四体はまだ戦いに気づいていない。 「呑気に泳いじゃって!」 一度、砂浜に降り立ったイザークは再び羽ばたいた。 「こっちだ!」 短剣で触手を切断して気を引く。その間に真昼がクラゲ型ベリアルに肉薄した。 「はぁっ!」 「えいっ!」 属性相性が悪いためか、一撃で両断できなかった触手にルーシアが追撃を加えることで、落とす。かろうじて触手が届かない位置に立つルーシアは、胸を張って親指を立てた。 「援護は任せて!」 「頼もしいな!」 「避けろ!」 ふっと笑った真昼に三本の触手が殺到する。一本は剣を振ることで払い、二本目はルーシアが魔力弾をあてることで軌道をそらした。だが、三本目が真昼の胴を打ち据える。 「ぐ……っ」 鋭利な痛みではなく、鈍い痛み。 それだけではない。 体が急に動かなくなり、真昼は膝をつく。ひとり無力化したことを察知した触手が真昼を襲撃する寸前、イザークが彼の体を引きずり出した。 「させない!」 追いすがろうとした触手に、ルーシアが魔力弾を撃つ。クラゲ型ベリアル本体から触手を離せたわけではないので、当然、標的はルーシアに変わった。 「真昼君!」 「す、すまん、し、しびれが」 「治療を!」 引きずるように朝日の元まで真昼を運んだイザークは、すぐさま踵を返し全速力で飛ぶ。その勢いのまま、ルーシアに迫っていた触手の一本に突撃して、斬った。 「しびれ、大丈夫そうです!?」 「深刻なものではないさ」 殴打された部分の治療を受けている真昼を横目で確認して、イザークはクラゲ型ベリアルを翻弄する。ルーシアも再び距離をとって攻撃を重ねた。 触手の数が順調に減り、ついに自立できなくなった危険な海洋生物が倒れかける。 「イザークさん!」 触手が飛翔時間の限界を迎えたイザークの手首を狙う。回避は間にあわない。ルーシアの悲鳴じみた声。 「待たせた!」 復帰した真昼が、イザークを狙った触手を半ばまで斬った。中空で跳ねた触手が今度は憤然と真昼を襲う。だが体勢を立て直したイザークがそれを許さない。 「終わりだ!」 修復が始まっていた触手をイザークが両断すると、禍々しい鎖が出現する。 「その鎖、解放する!」 「――!」 片手剣を半回転させ、真昼が魂の拘束を断ち切った。 大きく振り上げた斧を、鬼人は裂ぱくの叫びとともに振り下ろす。 「―――!」 反撃するように伸びた触手は、高々と跳躍したバールの靴底を掠めた。 「はぁっ!」 マリオスは狙いを定めて魂洗いを放った。接近している彼に触手が襲来する。 「行こう、マヤ」 あおいの指先が人形を操る。すまし顔の美しい人形、マヤがマリオスに迫った触手を殴打して払いのけ、それをさらにあおいが蹴った。 (できることを、する) 焦らない、恐れない、油断をしない。周りを見て、できるだけ被害が少ない方法を速やかに選択する。 浄化師としての使命感で恐怖に蓋をしたあおいの体は、考えるよりも先に動く。右に大きく避けた彼女の体側で、鞭のように敵の手足である部位がしなった。 「う……っ」 「させるかぁぁっ!」 そのまま横薙ぎに動いてあおいを絡めとろうとする触手に、バールが上から切りかかった。噴き出すように砂が舞い、落ちる。 「マヤ!」 「は……っ!」 斧で触手を縫いとめているバールに、別の一本が迫る。魔力の糸がそれを捕まえて固定、マリオスがクラゲ型ベリアルの懐に迫って、根元から仲間に危機をもたらす触手を斬る。 「だめか……!」 一撃では足りない。その間に、クラゲ型ベリアルはマリオスも葬ろうと迫ってきた。 「えっ」 あおいの耳に、イザークを呼ぶ切羽詰まった声が届く。反射的にそちらに目を向けてから、すぐに眼前の危機に立ち向かうと決めた。 「……っ、マヤ!」 人形の糸が触手を一本、捕らえる。だがもう一本、マリオスを狙う触手があった。 「はっ!」 バールが跳躍する。体をひねるようにして傘を思い切り蹴った。刹那だけ、敵の動きが鈍る。その隙をマリオスが見逃すはずがない。 「はぁぁっ!」 切れかけていた触手を断ち切り、マリオスが後方に飛び退く。 「おおおおお!」 同時に、クラゲ型ベリアルから黒い靄とともに出現した鎖を、バールが振りかぶった斧で両断した。 どうにか三体を倒したものの、休む時間などない。 「一体ずつにしてほしいな!」 朝日の叫びもむなしく、気づけば残りの四体が一斉に砂浜に上がろうとしていた。 「がんばろう……」 駆け足で合流したシルシィの声に、朝日は強く頷く。三組に分かれていた浄化師たちは、再び一か所に集まっていた。 勝利まで、もう一息だ。 ●この十人で、祝杯を 「計八体。クラゲ型ベリアルの殲滅を確認しまし……た……」 ぐったりとあおいが砂浜に膝をつく。両腕でしっかりとマヤを抱きしめる彼女は、息が上がっていた。 「お疲れさま」 深く息をつき、イザークはあおいの隣に座る。あおいは無言で首を縦に振った。 「はぁぁ」 「疲れたね……」 真昼が深く息をつきながら砂浜に尻をつけ、彼に寄り添うように朝日も座りこんだ。 「大変だったね」 「全員、無事でよかった」 魔力減少によるかすかな頭痛を覚えながらシルシィも腰を下ろし、少女に倣ったマリオスがしみじみと呟く。 「水気に対して相生の属性ではない火気じゃ、やっぱり限界があるのかなー」 「フレイムをあてるだけじゃ、乾燥はさせられなかった。ダメージ与えてたみたいだけど。命中は……それなり?」 実験結果をおさらいしつつ、ロゼッタとクロエも座った。 二人とも口調こそ研究者然としていて気力がにじんでいるが、顔には疲れが浮かんでいた。 後方支援に奔走していたシルシィと朝日を除き、全員が一度はクラゲ型ベリアルの鎖を断ち切るほどの戦いだったのだ。一時的なしびれは一同で経験した。 激戦の余韻は、疲労の重さと勝利の爽快感を各々に与えている。 「勝ててよかった、ということで、みんなに提案なんだが……、おや、二人足りない?」 「待って待って!」 話し声が届く範囲内に固まっている面々を見回したイザークが言い終えるより早く、視界の端に異変を捕らえた朝日が走り出した。 波打ち際で朝日に捕まったルーシアは、きょとんとする。赤目の彼女はいつの間にか服をすべて脱ぎ、水着姿になっていた。 「はい?」 「ルーシアちゃん、なにしようとしてるのかな?」 「泳ごうかと! 海ですよ!」 「この海は、ベリアル出現の危険があるから、遊泳禁止よ」 歩み寄ったシルシィが打ち寄せる波に指先を触れさせる。戦闘直後でまだ熱を持っている体に、ひんやりとした海水が心地よかった。 「えー! せっかくベリアルを倒したのに!?」 衝撃を受けたのはルーシアだけではない。青春を謳歌するように砂浜を走り回っていたバールも、固まってしまった。 「……まぁでも、ここまでならいいんじゃないかな?」 ようやく朝日から解放されたルーシアに、屈んだロゼッタが悪戯っぽい笑みを向ける。 「ここで戦闘をしていたんだから、近くにベリアルがいたなら今ごろ上陸してると思うんだよね。それがないっていうことは、少なくとも今、このあたりは安全ってことじゃないかな?」 「危険なことに変わりないけど」 小声でクロエがつけたす。彼女は、少し心配そうに海の果てに視線を向けていた。 「もう少し離れるべきじゃないか?」 海と海水に触れている面々を見比べるマリオスの表情にも、安否を気遣う色が見え隠れしている。シルシィはパートナーを見上げ、気持ちいいわよ、と濡れた手を見せた。 「ここで軽く打ち上げでもしないか?」 先ほど言いかけていた言葉を少し改変して、イザークは提案する。真っ先に賛同したのはロゼッタだ。 「いいね。ジュースで祝杯かな?」 「そうだ」 得意げに頷いたイザークに、あおいが眉尻を上げて異を唱える。 「休憩が終わったらすぐに帰って、教団に報告を……」 「スイカ割もやりたいでーす!」 「いけません」 「まぁ、ちょっとくらいなら時間、あるよ」 両手を上げて主張した水着姿のルーシアと、無言で首肯することで賛意を示したバールをたしなめたあおいに、クロエが懐中時計を見せる。 真っ直ぐ帰るに越したことはないだろうが、まだ遅いと怒られるような時刻でもない。終わってみれば、クラゲ型ベリアルの討伐は予定より早く完了していた。 「かき氷も食べたい!」 「晩飯が入る程度になら、買い食いもしていいんじゃないか?」 「おなか、空いたしね」 快活に言ったルーシアに、真昼が提案して朝日は苦笑しながら自身の腹部を撫でる。 「私だけでも帰るなんて、言ってくるなよ? このメンバーで戦い、勝てた記念なんだ」 片目をつむったイザークにそう言われ、あおいは一同の顔を見回した。 全員、どうやら祝杯をあげることに賛成らしい。しばらく悩んだあおいは、小さく息をついて折れた。教団には時間内に帰る、ということだけ決める。 「……分かりました。私も参加させてください」 ついにあおいが折れる。ロゼッタが小さく笑って立ち上がった。 「決まりだね。買いに行こう」 「ここにくるまでの道に、食料品店があったわ」 「やったー! 残り少ない夏をエンジョイしましょう。かき氷にスイカ割。鉄板ですね!」 シルシィがもたらした情報に、ルーシアの表情がいっそう明るくなる。バールは彼女が砂浜に脱ぎ捨てた服を集め、片腕で持った。 「打ち上げはいいけど、できるだけ海には近づかないようにしてくれ」 特にシィ、とマリオスが釘を刺したが、果たしてどれほどの効果を持つのか。 「夕飯、なににしようかなぁ」 「シェフの気まぐれ大盛りセット」 「私には多すぎるかな」 ぞろぞろと砂浜から出て食料品店を目指す浄化師たちの最後尾で、朝日と真昼は和やかに話す。 ふと、波の音に朝日は振り返った。立ち入り禁止区画であるためか、人が入ることが基本的にない浜辺は綺麗なものだ。ぽつぽつと見える漂流物がまたいい雰囲気を出している。 戦闘により踏み荒らされてなお、感嘆の息が出そうなほどなのだから、普段はさらに絶景なのだろう。 「真昼くん、あとでちょっと散歩しない?」 「いいぞ」 こっそりと耳打ちした朝日に、真昼は頷く。 「スイカはオレが割ってもいいのか?」 「じゃんけんで決めるのよ」 最前列で問うバールに、真横のルーシアがやる気に満ちた笑みを口元に浮かべて答えた。彼女も、スイカを割る気満々だ。 「あおいはなにが飲みたい?」 「ついてから決めます……、けど、自分で払いますからね?」 断固としたあおいの発言に、イザークは意味深長に微笑んで頷いた。 「いい成果を得られたんじゃないかな?」 「そうだね。次はもう少し作戦を変えてみたいかな」 後ろで緩く手を結んだロゼッタが、上機嫌に歩く。今回の戦闘で得られた結果と改善点について思案しつつ、クロエが首を縦に振った。 「こういうのも、楽しいね」 「それには同意するが、食べすぎと飲みすぎと、海には気をつけてくれ」 真剣な表情で案じてくるマリオスに、分かってるもん、とシルシィは口の中で返した。 「あったー!」 食料品店を発見したルーシアが駆け出す。つられるようにバールも走った。 戦っていた時間に比べれば、短いひとときではあるが。 楽しい打ち上げは、ジュースと軽食を選ぶこの瞬間からすでに始まっていた。
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*** 活躍者 *** |
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[10] 降矢・朝日 2018/08/23-23:35
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[9] シルシィ・アスティリア 2018/08/23-01:44
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[8] イザーク・デューラー 2018/08/22-21:45 | ||
[7] ルーシア・ホジスン 2018/08/22-00:43
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[6] 降矢・朝日 2018/08/21-22:31 | ||
[5] ロゼッタ・ラクローン 2018/08/21-07:36
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[4] シルシィ・アスティリア 2018/08/21-01:08
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[3] 鈴理・あおい 2018/08/20-23:35
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[2] 鈴理・あおい 2018/08/20-23:33 |