~ プロローグ ~ |
「お前たち、そろそろ、こういう仕事をまわそうかと思う」 |
~ 解説 ~ |
えらいこっちゃ。えらいこっちゃ。えらいこっちゃ。ぱた(大切なことを口にして倒れたひよこ) |

~ ゲームマスターより ~ |
メディコ・デッラ・ペステというのは、ペスト医者のことです。 |

◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
|
||||||||
![]() |
(お見舞いとしてリリカの家へ。反応がないようなら、 中で異常な事態が起こっていると判断。解錠スキルで開ける) (やっぱりオペをしようとしてた…!) ルイさん! 止めてください! 貴方の大事なリリカさんは、風邪をひいているだけなんですよ! くっ…話を聞いてくれる状態じゃない…! リリカさん! 彼を…ルイさんを抱き締めてあげてください! …ルイさんを抱き締めてあげてください。 このままじゃ、彼はベリアルになってしまう。 私はただの風邪だよって。大丈夫だよって。 貴女の愛を、どうか彼にわけてあげてください。 (スキル会話術) (ルイが暴れるようなら、リリカを庇って自分が刺される) |
|||||||
|
||||||||
![]() |
二人を知る友人をあたり 名前と失踪前の様子を聞き、様子を見に行く旨と二人に伝言があれば聞く お見舞いの形で家へ 反応が無ければラウルに解錠頼み侵入 友人の名前を出し名乗り 緊張を解く 極力穏やかに ヨナ 演技スキル使用 音沙汰が途絶えて教団の皆さんも二人の事心配していたんです ルイさんもお疲れでしょう。台所をお借りしても? 温かいココアを用意してきますね コップを渡しながら こんな手になるまで…皆の為に… ベ リリカの状態を診る 人々の命を救う事は何にも代え難い尊い仕事だ ルイ。君はよく頑張っている。少しだけ休憩をしないか 君が疲れて動けなくなってしまったらリリカはどうなる? パートナーは大丈夫。君が今までしっかり診てきた |
|||||||
|
||||||||
![]() |
■ロス 情報収集については皆についていって聞くだけになっな ∇入口 ラウルについて開いたら入っていく 「あれドア鍵あいてたリリカーいるかー?お邪魔すっな 開いてるって事っよな? 内側から開くなら「リリカ夏風邪ひいたって? ぐは!誰だ、お前!(匂いとマスクに驚き戦闘態勢 ∇ルイ それって医者の衣装なのな?ちと吃驚した けど俺それ匂いキツイかなー (そういやリリカの見舞いだった)思い出し 聴覚嗅覚で彼女の部屋へ ルイと話してないメンバーを誘いつつ ∇リリカ 医学で診たベルドルドの話を聞きティを呼びに ∇現状把握→説得 リリカが怪我多いからこうなったんじゃ 前衛は怪我しやすい分戦力外になり易いし 相方もこうだろ リリカは更に気ィつけねぇと |
|||||||
~ リザルトノベル ~ |
「まず、二人の共通の知人に話を聞いてみましょう」 顎に手をあてて思案する『ヨナ・ミューエ』の傍らに立つ『ベルトルド・レーヴェ』が黒く長い尻尾をふり、さて、どうしたものかと一人愚痴る。 「情報収集については皆についていって聞くだけになっな」 と『ロス・レッグ』が口にする横では『シンティラ・ウェルシコロル』がいつもよりも真剣な顔で頷いている。 「ロスさんの見張りは私に任せてください」 「俺なにもしねぇぜ」 「大切な指令ですよ、ロスさん」 シンティラがロスを嗜める。 二人のおかげで少しばかり明るい雰囲気になるが、思いつめた表情で『ラウル・イースト』は俯き、胸に拳をあてて、力をこめる。 (他人事じゃない。これは僕やララエルにも起こるとなんだ。せっかく僕たちのことを信用して任せてくれたロリクさんのためにもきちんと解決させなきゃ) ラウルは心配そうに自分の腕にしがみついて震える『ララエル・エリーゼ』を見る。顔色がひどく悪い。 「ララ、大丈夫かい?」 黙ったままララエルは小さく頷く。 「無理はしないことです」 「優しいな」 ヨナがラウルたちを気遣うのにベルトルドがぼそりと呟いた。その一言をヨナは聞き逃さず、じろりと視線を向けた。 「お、なんだなんだ」 「ロスさんだめですよ」 「なにかのときは私も以前のようにおすわりとお手を発動します」 「おー」 ロスが若干嬉しそうに尻尾をふった。 ロリクは二人のフルネームとアライブ、そしてよく指令を共にしていた仲のいい浄化師たちとはエントランスで話し合えるように準備をしてくれた。 今回危険と疑われているルイ・シュナイダー、その相棒はリリカ・ルル。 アライブはルイが陰陽師でサポートを、断罪者のリリカが前線で戦うというスタイルだ。 エントランスでリリカたちの友人は快く二人について話をしてくれた。 「リリカはわりと無鉄砲なところがあるわ。ベリアルやヨハネの使徒に向かっていくし」 「ルイは優しすぎるというか、生真面目というか」 「リリカが無理するからねぇ」 「ストレスたまってそーだったぜ」 友人たちの軽口を総合するとどうもリリカはなかなかにじゃじゃ馬でルイはそれに振り回されていたようだ。 ただ二人は仲のいい恋人同士でもあったそうだ。 「やはり、パートナーがじゃじゃ馬だと苦労するんだな」 「そうですね」 ベルトルドがしみじみ言うのにシンティラも同意した。 「どういう意味ですか」 「なぁ」 自覚があるのか、ないのかヨナとロスがパートナーを見つめる。 「あれ、けどあの二人最近見ないけど、なんかあったの?」 「大丈夫?」 「たいしたことじゃない。大丈夫だ」 心配する友人たちにベルトルドはそれとなく言葉を濁した。 「人間が……ベリアルに……私もそうなっちゃうの……?」 「ララ!」 ララエルが小声で呟いたのをラウルが窘める。 幸いラウル以外には聞こえることはなかったが、ララエルは涙をため、口を開こうとして失敗してぎゅっと閉じてしまう。 「あの、ルイさんの様子ですが、おかしなところとかはなかったですか?」 ラウルは思いきって尋ねると友人たちは小首を傾げた。 「あー、ときどき思いつめた顔をしていたかも」 「よく手を洗ったり」 「頭が痛いとも」 ラウルは無意識にもララエルの手をぎゅっと握りしめた。それはララエルが体験したことのある状態に酷似していた。 「わざわざありがとうごさいます」 ラウルが丁重に頭をさげ、気のいい彼らは笑顔で手をふり、指令へと赴いていく。 「お、このままいくっか?」 ロスが尋ねるのにシンティラもみなを見る。 「しかし、俺たちがいきなり訪ねては不審がる可能性があるな」 「抵抗してくることも考えれますね」 慎重にことをすすめるべきと判断してベルトルドとヨナが互いに顔を険しくさせる。 「お見舞いという体でどうですか?」 提案したラウルは少し自信なさそうだが、続けた。 「リリカさんのお見舞いです。僕たちが知り合いの使いで行く。訪ねて応じてくれればよし、だめなら、僕は……鍵開けを教団で習いました。少しくらい難しい鍵でもあけれます」 「それでいくか」 「そうですね。時間を無駄にはできません」 ヨナの言葉にシンティラが。 「ロスさん騒がしいので見舞いには不向きと思いますがいいんですか?」 と口にした。 ラウルはすぐに自分の横にいるララエルに向き直る。細い肩に手を置いて、じっと見つめる。 「ララ……ララエル、もし本当に辛いなら君はここに残って」 ふるふるとララエルは首を横に振る。 「行きますよ」 「なら、ちゃんと向き合おう。僕たちのこと、強いって言ってくれた人たちがいるんだ。僕たちは出来ることをしていかなくちゃ、ララエル」 こくんとララエルは頷いた。 「ううん、ルイさんはそんな事にはさせない! だってリリカさんっていう大切な人がいるもん……!」 リリカの家に向かう道すがらラウルたちは花屋に立ち寄り、出来るだけ明るい花を選んで花束にしてもらう。 花を選ぶラウルたちより少しばかり離れた場所でヨナはその背中をじっと見つめていた。 「どーした」 「ロスさん、いえ……ただ、そうですね」 ヨナは金色の髪をそっとかきあげる。 「あることを信じるとそれは違うと言われても一層元の考えに固執する事があります」 「うん?」 「否定され周りが皆敵に見えてしまうのならば無用な軋轢も生みますし、お互いに辛いです。どうにか自分を取り戻してくれれば良いのですが……ルイさんも今はそうなんだろうと思って」 「だろうなぁ」 ロスが尻尾をふって相槌を打つのにヨナは目を細めた。 味方がいない孤独感はきっとひどく辛い。 だがヨナは優しい嘘が嫌いだ。だから今回、自分自身に不安がある。必要だからつく嘘は本当に許されるのか? 救うための嘘。その人を思う嘘。けど嘘は嘘で。いつかはばれてしまうのに。 「もっと器用ならいいんですけどね」 「ん?」 「なんでもないですよ。そろそろ行きましょうか」 自分らしくないと言いたげにヨナは歩きだした。 リリカの家は教えられたように小さな庭つき一軒家だった。 秋の花のコスモスやハーブやらが無造作に生えてさらさらと秋風に揺れている。 ドアをノックする。 「はい」 低い、穏やかな声がドア越しに返ってきた。 返事はないと思っていたので全員が多少、拍子抜けした顔をした。 「あの、リリカさんの御宅で合っているでしょうか? 私たちはリリカさんの友人、ハリスさんの使いでヨナといいます」 ヨナは出来るだけ穏やかな口調で、警戒されないように二人の友人の名前、そして自分たちの名を告げた。 「……はい。ここはリリカ・ルルの家ですが」 きちんとした返事。 けれどドアは開けられない。 「僕たちは教団の浄化師です。リリカさんがここ最近姿が見えなくて、心配になってやってきました」 ラウルが少しばかり焦りをこめて声をかける。 「……リリカは病にかかっています。まだよくなりません。どうぞ、お引き取りください。みなさんに移してはいけません」 「お花を持ってきたんです。せめて、それだけでも受け取ってもらえませんか?」 なおもラウルは食い下がる。 あまりしつこいと相手――低い声は男性のものだと検討つければ、この声の主こそルイ・シュナイダーだと予想できた。 息をするのも怖いと思うほどの緊張がラウルを襲う。 普通の声での返答なのに、どうしてか、違和感を覚えるのだ。 (なんだろう、この……不安は) どこかでこれに似た気持ちを自分は味わったことがある。 ラウルが焦れるのにベルトルドの手が肩を掴んで制した。 永遠にも等しいほどの時間。たっぷり一分間かけて、がちゃりと鍵が開く音とがしてぎぃとドアが少しだけ開いた。 深淵の底が開くように、ドアの奥は暗い。目を凝らしてもはっきりとなかが見えない。 ただ微かな鼻孔にきついハーブの匂いがしたのをここにいる六人は感じ取った。 「リリカ夏風邪ひいたって?」 とロスが口を開く。 それに返答がないかわりにラウルが差し出している花に、腕が伸びて、それを掴むとドアはすぐに閉ざされる。 「花はリリカに渡しておきます。どうぞ、お帰りください。みなさんに病が移るといけません」 再び鍵がかかり、静寂が広がる。 「鍵を、開けますね」 ラウルが決意した顔で告げる。あまり気は進まないが、あきらかにおかしいと感じた。 あまり音をたてないように慎重に鍵開けを行い、二分ほどかかったがドアが開いた。 「あれドア鍵あいてたリリカーいるかー? お邪魔すっな」 ロスがドアを開けて呑気な声をあげて入っていく。そのあとにロスのたくましい腕に引きずられる形でシンティラが続いた。 「ロスさん! 居たとしても不法侵入!」 「倒れてっかもしんねーだろう」 「確かに寝込んで返事できないのなら大変ですが……」 「ぐは、なんだこの匂い」 とロスが鼻をつまむ。 室内は強烈な香辛料の匂いに満たされていたのにシンティラも思わず眉根を寄せた。 二人の騒がしさに奥から誰かが這いずるようにやってきた。 「誰だ、お前!」 ロスが攻撃の態勢をとる横でシンティラが唖然とする。 現れたのは頭からすっぽりとかぶったフード、顔には死んだ鳥の骨のようなマスクをつけた男性が立っていた。 しかも部屋はむっとする暑さと苦み酸っぱさ甘さがまじりあった匂いがしていた。 「それって医者の衣装なのな? ちと吃驚した。けど俺それ匂いキツイかなー」 「……どうやって入ったんですか」 ロスの攻撃の態勢にルイ――からは警戒の声が漏れ、いつでも攻撃に対応できるように御符を片手にもっている。 その行動は陰陽師のアライブを持つルイだとここにいる全員に確信させた。 「音沙汰が途絶えて教団の皆さんも二人の事心配していたんです。ルイさんもお疲れでしょう。台所をお借りしても? 温かいココアを用意してきますね」 「どうぞ。お帰りください」 頑なな否定を示すルイにヨナがわざらしく不作法さを出してキッチンに向かう。ルイは一瞬迷ったが、あとを追いかけるしかない。 「私だってココアぐらい、淹れれるんですよ」 「……それ、胸を張っていうセリフですか?」 鍋を片手に、あとなにを用意すべきだったのかとココアの淹れ方を必死に頭のなかで考えるヨナにルイは少しばかり呆れた口調で言い返した。 その後ろをシンティラはルイがリリカの元にいかないようにとこっそりと立ちふさがる。 「ヨナさんがココア入れてくれるそうです。甘いモノ私大好きなんです」 と嬉々として告げる。 「? マスク外さないんですか? 正式衣装かもですが、夏風邪ならそこまでしなくても大丈夫かと」 それにルイは答えない。 その隙をついてロスがまず奥の部屋のドアを開けた。 カーテンが閉められて、薄暗い。呼吸一つするのもむせこみそうな香辛料の香り。 ベルトルドがベッドのリリカに近づいてその肉体を見る。 「どうですか?」 「夏風邪だな。といってももうほとんど治りかけているようだが」 すーすーとベッドで眠るリリカの顔色はそこまで悪くは見えない。確かに部屋は異常さがあるのであまり病人にいい環境とはいいがたいところはあるが、水を満たした盥やすりおろした林檎などがベッドサイドに置かれていた。 「ちゃんと看病していた?」 オペをしているのではないかと危惧していたラウルは少しばかりの安堵を持って問いかける。 「ちゃんと、とはかなり異なるが」 「よーし、ティを呼ぶっか」 ロスはドアから手をひらひらとふってシンティラを呼ぶ。 シンティラはロスの手招きにちらちらとルイとヨナのおいしいココアを淹れるレシピの言い合いを――ルイをキッチンにとどめる作戦なのか、本気なのかは不明だが――監視しながら素早く部屋に向かう。 「夏風邪だってよ」 ロスの告げる言葉にシンティラが頷いた。 そのとき、んんと声を漏らしてリリカが目を開ける。 「起きたぜ。リリカが怪我多いからこうなったんじゃ、前衛は怪我しやすい分戦力外になり易いし、相方もこうだろ。リリカは更に気ィつけねぇと」 ロスの言葉にリリカは眉を寄せる。 「なに、してるんですか」 「ルイさん、待ってください」 怒りに満ちた低い声とヨナの焦った続く。 振り返れば、そこに立つのはルイだ。 「薬も過ぎれば毒となると言います。現状の治療はやり過ぎて毒となっていませんでしょうか」 シンティラが冷静に声をかける。必死にやっていたことが忌むべき行為になっていると指摘されてルイはひどく傷ついたように立ち尽くす。 「状況は把握しました。ロスさん、指輪をルイさんに渡してください」 「これかー?」 「はい。私が、みなさんに四神浄光・壱、浄化結界、天恩天賜をかけます」 シンティラのやろうとしていることをルイは、とても冷静に、そして穏やかにしっかりとした口調で止めた。 「そんなことは無意味です」 シンティラが反論する前にルイは付け加えた。どこか悲し気に。 「歴史を見ればわかるように、魔術が万能であればデス・ワルツなんて起こらなかったでしょう。こんなにも、悩む必要もない」 魔術で傷を癒すことは出来るだろう、敵から受けた異常状態を直すことも叶う。けれど万能ではないからこそ教団には医療班が存在し、日夜彼らは命を救おうと努力しているのだ。 命を救うのは祈りに似ている。 命とは本当はどの種族の手にも余るほどの奇跡の産物なのだろう。それと向かい合うとは恐ろしいほどの献身が必要なのだ。 「貴方たちは人の家に勝手にはいり、ごちゃごちゃと!」 追い詰められたようにルイが黒ずんでひび割れた指先でがりりっと仮面をかく。 その片手にメスが輝いている。 「ルイさん! 止めてください! 貴方の大事なリリカさんは、風邪をひいているだけなんですよ!」 ラウルが必死に、真摯の声をかけるも、ルイは無視して、じりじりと近づいてくる。 「くっ……話を聞いてくれる状態じゃない……!」 「ルイさん! リリカさんはただの流行り風邪なんです!」 ララエルが声をあげた。 今までずっと怖がっていて自分からなかなか行動できなかったが、震えながらも言葉を紡ぐ。 「ルイさん、もうやめてください! 愛する人の事で、リリカさんが悲しむのはやだよぉ……」 強くなったはずなのに、涙が溢れてきた。けど、ちゃんと言葉は続ける。それが今すべきことだから。 「私も同じなんです! でも私……ラウルを苦しめたくない! だからお願いします、リリカさんはルイさんを愛してるんです!」 ララエルの必死の声にルイが足を止める隙にラウルがリリカに向き直った。 「リリカさん! 彼を……ルイさんを抱き締めてあげてください!」 説得はリリカに協力を仰ぐべきだと言われたことを思い出したのだ。自分たちの言葉はいくら正しくても、彼には響かないかもしれない、悪意があるように受け止められてしまうかもしれない。 けど、彼が信じている相手の言葉なら届くはずだ。 「ルイさんを抱き締めてあげてください。このままじゃ、彼はベリアルになってしまう。私はただの風邪だよって。大丈夫だよって。貴女の愛を、どうか彼にわけてあげてください」 ラウルの言葉にリリカがロスやシンティラの手を借りてよろよろと立ち上がる。 「だめ」 ルイは言い返す。 「触れたら、病を、病を移す、から」 「いいよ。移しても、そのほうがルイ、はやくなおるでしょ。私は平気だよ、風邪だから、ね」 リリカは苦笑いしてルイを抱きしめる。ルイはその抱擁を受け入れ、震えるまま腕をまわす。 抱き返そうとすることは叶わず、ルイは床に倒れた。 「待て。俺が見る」 ベルトルドが全員を制してルイに近づいた。その黒ずんだ手をとり、じっと見つめると、どこかほっとしたようにひげを震わせる。 は、は、は、と荒い息をルイが繰り返す。 「人々の命を救う事は何にも代え難い尊い仕事だ。ルイ。君はよく頑張っている。少しだけ休憩をしないか。君が疲れて動けなくなってしまったらリリカはどうなる? パートナーは大丈夫。君が今までしっかり診てきた」 「僕に触れたら、あなたが」 「大丈夫。君は病じゃない」 「僕は」 「人を助けてきてばかりで自分が助けを求める事など考える暇など無かっただろう。だから助けに来た。今度は皆で君を助ける番だ。リリカや俺達で」 「……いいのでしょうか」 ルイは震える声で問いかける。 「助けて、といっても」 「ああ。そのためのパートナーだろう。そして仲間だ」 「……たすけて」 そのままルイは意識を失った。 「どういうことだったんですか?」 シンティラが問いかけてきたのにベルトルドは尻尾を振った。 「ルイの指先は黒ずんでいただろう。そのうえ、爪が割れていた。ペストの初期状態に酷似している。……あれを見た瞬間、まさかと思ったが、よく見ればあれは香辛料を潰した汚れで、ろくな食事をとっていなかったせいで栄養失調になっていたようだ」 ルイが狂気にとりこまれたのは自分が病となったと誤解し、リリカの病への責任感、義務感から追いつめられて暴走に至ったのだ。 「教団の病室でリリカともども安静にしているそうだ」 すぐにルイとリリカは教団へと運び、すべてを報告すると急いで病室が用意された。 リリカは元気であるし、ルイも精神の落ち着きが見られると教団員からの報告にロスは笑顔で、シンティラも表情を和らげた。 ラウルの横でずっとルイたちの安否を気にして祈っていたララエルは肩から力を抜いて、安堵の涙を零した。 「よかった……本当に、もし、なにかあってもこうしてパートナーが、ひいては仲間たちがその人を支えて戻していくんですね」 ラウルがほっとするのにヨナはかたい表情で呟いた。 「守るだけが救う事の最善とは限らない。転ばない為ではなく、転んでも一人で立ち上がれるように、そうなれるように進んでいければいいし、そういう関係をパートナーと作るのが最善なんでしょう」 「それってルイさんたちの……」 「ルイさんたち含め、私たち浄化師全体に対する……今回の、私の感想のようなものです。独り言ですから気にしないでください」 ヨナは慣れないことをした、とばかりに小さく咳払いして顔を逸らす。 ただ相手に甘えるのではなくて、支えられるのではなくて、守るのではなくて。互いを支えあうために浄化師は二人でいるのだから。 (ヨナ他人事なら案外普通にこなすな) ベルトルドの視線を受けて、ヨナが眉根を寄せて睨んでくる。 厄介なパートナーの視線にベルトルドはそしらぬ顔をして尻尾を振った。
|
||||||||
![]() |
![]() |
![]() |
*** 活躍者 *** |
|
![]() |
|||||||||||
|
| ||
[15] ヨナ・ミューエ 2018/09/16-23:51
| ||
[14] ロス・レッグ 2018/09/16-22:30
| ||
[13] ララエル・エリーゼ 2018/09/16-22:01
| ||
[12] ロス・レッグ 2018/09/16-20:25 | ||
[11] ロス・レッグ 2018/09/16-14:06 | ||
[10] ヨナ・ミューエ 2018/09/16-14:05
| ||
[9] ラウル・イースト 2018/09/16-09:52 | ||
[8] ヨナ・ミューエ 2018/09/16-08:40 | ||
[7] ロス・レッグ 2018/09/16-01:13 | ||
[6] ラウル・イースト 2018/09/15-22:18 | ||
[5] ヨナ・ミューエ 2018/09/15-21:34 | ||
[4] ラウル・イースト 2018/09/15-16:10 | ||
[3] ヨナ・ミューエ 2018/09/15-13:35 | ||
[2] ラウル・イースト 2018/09/13-02:32 |