~ プロローグ ~ |
教皇国家アークソサエティ「ヴァン・ブリーズ」の西。 |
~ 解説 ~ |
秋の始まりの吉日に、終わりゆく夏の想い出をつくりませんか? |

~ ゲームマスターより ~ |
初めまして、浅倉季音と申します。 |

◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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【3】 ◆縁結びに柑橘の木へ ・唯月は緑の紐を、瞬は水色の紐を 唯(縁結び…祈るくらいなら、良い…ですよね 付き合うとかそう言うのは無くても良いんです ただ瞬さんのパートナーで居られて それで…傍に居れたら…それだけで…わたしは…) 瞬(いづはこう言うのには俺と行ってくれるけど どんな気持ちで一緒に来てくれるんだろ? 確かにお互い好きな気持ちは確かめてる でもどこか…いづは一歩引いてるんだよね…) ・紐は瞬にお願いしてなるべく高い枝に付けたい 唯「あ、えっと…」 瞬「なるべく高い位置につけよ? ちゃんと結び続けられるように、ね」 唯「は、はい…!」 唯(瞬さんも願ってくれるんですか…? わたし、それだけでも胸がいっぱいです!) |
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※アドリブ歓迎します 3 (34話での出来事で、ララエルがおかしいのは自分のせいも あるんじゃないかという焦りがある) (ララエルの手を引いて) ララ、縁結びに行くよ。 名前を書く紐の色…(ララエルの顔を見て) よし、水色にしよう。 何故って? 君の瞳の色だから。 (ララエルの問いに早口でまくしたてるように) さあ、何との縁結びだろうね。僕の世界一大事なものだよ。 (木に結び、祈る) 善き神よ。いるなら…ララエルに…世界一大事なララエルに …近いうちに必ず(君が好きだということを)言うから。 (ララエルを真剣に見つめ)必ず言うから。 だから一人ぼっちだなんて思わないで欲しいんだ(髪を撫でる) |
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だから説明をちゃんと聞けと言っただろ(盛大にため息 …とはいえあまりにも落ち込みっぷりが激しくていたたまれない ちょっとかわいそうになってきたな… 仕方ない、やるぞ縁結び 誰とって俺とアンタのに決まってるだろ 別に恋愛の縁結びじゃなきゃいけないわけじゃないし 俺だって一応、アンタとは仲良くなっておきたいと思ってるんだ 俺達は二人で一つのエクソシスト、いわば運命共同体だ それに探偵には助手が必要だろ? うわ、立ち直り早い…やっぱりやるんじゃなかったかな 赤と青どっちにするかで軽く言い争い、折衷案として紫の紐に名前を書き、枝に結ぶ 誤解されやすいって何だってか誰がツンデレだ!? 照れ隠しにそっぽ向き 腹減ったし、屋台行くぞ |
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ロスはメシ!ティはスイーツ目当てで別行動 ■ロス へぇ蜜柑が名産地か うめぇもの沢山食えっか? ∇屋台 量が多くて腹にたまりそうな料理から 何でも旨ぇ!と食う食う 色々食べ歩きゲテモノ系も好む ビール等も飲み ゆっくり1人でいれる所があれば煙草吸いつつメシとビール 眠くなれば狼姿で日当たり良い場所・公園等でごろっと睡眠 子供がいれば一緒に遊ぶ ■ティ 美味しそうな匂いです (スイーツに目を輝かせ ∇屋台 匂いに釣られて甘いスイーツに 見た目も綺麗なのが好きでカメラに レシピを聞き 作っている所があれば見に行き お持ち帰り分はバックに確保 美味しいスイーツを相方に食われない為に肉系料理系も 蜜柑食材も買い 下手すると帰宅までにロスに食われる |
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目的 勘違い夫婦 新婚旅行 はじめて相手の呼ぶ(主に灰が) 3 屋台の蜜柑飯を食べる灰 灯は柑橘酒を嘗める 灯 今さらなんの縁を結ぶんだ? 灰 そりゃあ、…ようやく結婚してだいぶ夫婦らしくなってきたんですから、そのための縁結びですよ(どきまぎ 灯 ようやく指令の名を借りた新婚旅行にきたもんなぁ 灰 結婚式は契約のあれでいいです(思い出すのも恥ずかしい)…故郷の同胞たちとの縁を僕は切りたくありません。死者のことを思うなんて馬鹿ですね。ちゃんと自覚はあります 縁結びの内容 灰 赤と灰の紐を選んでくっつける 灰と灯 自分の名の横に灯の前妻の名前を書いて塗りつぶす 灯と前妻との縁切れりの願い 灯 灰の瞳のような紅蓮色の紐 灰と未来と書いて縁結び |
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~ リザルトノベル ~ |
● 杜郷・唯月(もりさと・いづき)と泉世・瞬(みなせ・まどか)は、迷いなく倉庫の手前を南へ曲がる。 受付の女性から、それぞれ緑色と水色の紐を受けとった。 (縁結び……祈るくらいなら、いい……ですよね) 自身の名を書きながら、視線だけを瞬の顔へと向ける唯月。 真剣な横顔から、目を離せなくなる。 「はいこれ、交換。ん?」 だから顔を上げた瞬の視線と、唯月のそれがぶつかった。 「あ、ありがとうございます……」 恥ずかしいような気まずいような嬉しいような、複雑な気持ち。 手渡された水色の紐を、両手で握りしめる。 (いづは、どんな気持ちで一緒に来てくれてるんだろ? 確かにお互い、好きな気持ちは確かめてる。 でもどこか……いづは一歩引いてるんだよね……) 唯月も、緑色の紐を渡した。 瞬の心のなかに想像を及ばせるような余裕はないけれども、鼓動が速くなる。 (付き合うとか、そういうのは無くてもいいんです。 ただ瞬さんのパートナーでいられて、それで……傍にいられたら……それだけで……わたしは……) 紐を再度とりかえてから、案内に従って蜜柑畑の門をくぐった。 ふたりで選んだ、いまは誰もいない木へ向かう。 「どの枝にしよっか?」 「あ、えっと……」 訊かれて見上げる唯月も、枝を探して視線を巡らせていた。 「なるべく高い位置につけよ? ちゃんと結び続けられるように、ね」 「は、はい……っ!」 (瞬さんも願ってくれているんですか? わたし、それだけでも胸がいっぱいです!) やっぱりその笑顔から、目が離せなくなる。 「あ! ねぇ、この枝なんかどうかな?」 「いいと思います」 唯月では手が届かないから、瞬にお任せ。 選んでもらった木の枝に、まずは緑色の紐がかけられた。 細くて長い指が、華麗に蝶々を結ぶ。 続いて、水色の紐も。 「いづは俺の気持ち知ってた……よね?」 「え?」 きゅっと引っ張りカタチを整えてから、瞬は問う。 視線を、唯月に戻した。 「ちゃんと伝えたはずだよ?」 「も、勿論……わかってます、よ?」 あくまでも笑顔で、唯月が萎縮してしまわないように。 途切れ途切れでも一所懸命に答えてくれる唯月を、可愛いと思う。 それに。 その内容にはひとまず、安心した。 「ほんとに? でも、その気持ちはその気持ちで終わってない?」 けれども、なかなか行動には移してもらえない現状を、瞬は変えたかった。 唯月の肩を軽く掴んで、緑眼を見詰める。 「えっと……?」 「もー! 俺はいづと付き合いたいんだよー!」 「えっ、ええ?!」 どうやら唯月には、そこまで伝わっていなかったらしい。 「だから、俺はいづと付き合いたいんだ。本気だよ」 「あ、えっと……」 「いづはどう? 俺と付き合うの、イヤ?」 「イヤだなんてそんな……そんなはず、ありません」 「じゃあ、付き合ってくれるよね?」 「ぁ……はい。よろしくお願いしまきゃっ!?」 「嬉しい……」 告白に応えた唯月を、瞬は強く抱き締める。 「いづ、大好き」 「私もです、瞬さん」 晴れて、唯月と瞬は付き合うことになったのだった。 ● 村の入り口で、ララエル・エリーゼは立ち止まる。 隣を歩いていたラウル・イーストも、並んで足を止めた。 「わぁぁ……のどかで素敵な村ですね! それに、オレンジみたいな香りがします!」 ララエルの表情が、ぱぁっと明るくなる。 身体いっぱいに空気を吸い込んで、ラウルを振り向いた。 「ラウル、早速村を歩きまわ……わわっ」 村へ入ろうとした矢先、ラウルがララエルの手を握る。 急に手を引かれて、バランスを崩した。 「ララ、縁結びにいくよ」 己の胸で受けとめたララエルの耳許に、ラウルは呟く。 「え? ど、どこへ行くんですか? ラウル」 「あそこ」 「えん……むすび?」 ラウルの指の示す先には、幟が立っていた。 書かれている文字を読みとり、そのまま声にするララエル。 手を繋いだままで、縁結びの受付へ向かう。 「名前を書く紐の色……よし、水色にしよう」 ララエルの顔を見てにこっと笑い、ラウルは色を決めた。 紐を受けとると、名前を書き始める。 「なんでその色にしたんですか?」 「何故って? 君の瞳の色だから」 「私の瞳の色だから水色? ラウルの瞳の色じゃなく?」 「ララの瞳の色だからだよ」 再度告げて、ラウルは紐をララエルに渡した。 いまいち納得のいっていないような表情のララエルを、静かに見詰める。 隣に記された名前を読み、鼓動が高鳴るのを感じた。 「そう、なんですね。ラウルは、縁を結びたい人がいるんですか?」 ふたりは、紐を結ぶ木を決めるために歩き始める。 「さあ、なにとの縁結びだろうね。僕の世界一大事なものだよ」 首を傾げるララエルに、ラウルは早口でまくしたてるように答えた。 はっきりと口にするのは、まだ躊躇われたから。 「あ! あの木がいいです、ラウル!」 「うん、分かった」 ララエルの指さす木に、ラウルが紐を結ぶ。 絶対に外れないよう、願いが叶うよう。 きつくきつく、力を籠めて。 (善き神よ) (ラウルが真剣に祈ってる……まるであのときみたいに) ララエルの脳裏には、祭壇で祈りを捧げた『あのとき』のことが、蘇っていた。 己の行く末に想いを馳せ、ラウルと初めての口吻をした。 お互いの気持ちを確認しあった、『あのとき』のことを。 (いるなら……ララエルに……世界一大事なララエルに……近いうちに必ず、君が好きだということを言うから) そうしてラウルは、ララエルへと向き直った。 「必ず言うから。だからひとりぼっちだなんて、思わないで欲しいんだ」 ララエルの銀髪を優しく撫でながら、ラウルは告げる。 真剣な眼差しは、ララエルの青い双眸を真っ直ぐに捉えていた。 「ラウル、どうしたんですか? 今日のラウルは、少し変です……」 真意をはかりかねて、ララエルは疑問を投げかける。 それでも思い当たるふしがなくて、困惑してしまった。 「ララ……」 ぎゅーっと、けれども優しく、ラウルはララエルを抱き締める。 なくしたくないと、ともに生きてともに死ぬのだと、心のなかに強く思うのだった。 ● ベルロック・シックザールとリントヴルム・ガラクシアは、屋台をとおり抜けて蜜柑畑へと向かっていた。 同じ方向へ歩く人達には、にこやかに挨拶をしながら。 「皆はパートナーとの縁結びなのかな? 僕はもちろん、想い人のあの子との縁を結びにきたんだけどねー」 るんるんと、まるでステップでも踏むかのように歩くリントヴルム。 受付の村人に、縁結びを申し込む。 「えっ? これって一緒に来てる相手との縁結びなの!?」 そして其処で、真実を知ってしまった。 「そ、そんな……これが目的で来たのに……」 「だから説明をちゃんと聞けと言っただろ」 「全然会えないんだもん、もう神頼みしかないって思ってたのに……」 盛大にショックを受けたリントヴルムは、その場に座り込んでしまう。 体育座りをして、地面に『の』の字を書き始めた。 「はぁ……」 此方も盛大に、溜息を吐くベルロック。 (ちょっとかわいそうになってきたな……) だがリントヴルムの落ち込みっぷりが激しくて、いたたまれなくなってくる。 「仕方ない、やるぞ縁結び」 「え? 誰と?」 「誰とって、俺とアンタのに決まってるだろ? 別に、恋愛の縁結びじゃなきゃいけないわけじゃないし」 ベルロックの提案に、リントヴルムは漆黒の両目をまるくした。 リントヴルムにとっては、とても意外な提案だったから。 「俺だって一応、アンタとは仲良くなっておきたいと思ってるんだ。俺達はふたりでひとつのエクソシスト、いわば運命共同体だ」 「運命、共同体……」 「それに、探偵には助手が必要だろ?」 「……てっきり、僕達は恋のライバルだとばかり思ってた。でも、ベル君がそこまで言うなら仕方ないなあ!」 ぽんっと膝を叩いて、リントヴルムは立ち上がる。 表情も、少しは明るくなったみたい。 「うわ、立ち直り早い……やっぱりやるんじゃなかったかな」 ベルロックも、ちょっとほっとした。 のだが。 「紐の色か……赤にするぞ」 「えー? 青でしょー?」 すんなりとは、いかなかった。 どちらにするか、どちらも折れず。 結局、折衷案として紫の紐を選ぶことになった。 受けとったペンで、順番に名前を書いていく。 「確かに、キミみたいに誤解されやすいツンデレ君には、僕みたいな優秀な助手が必要だよね」 「誤解されやすいってなんだってか誰がツンデレだ!?」 「あはは、照れてる」 本当に見ていて飽きないと、リントヴルムは思う。 ベルロックと行動をともにすることはもはや日常の一部だし、振りまわされる日々も楽しい。 「ったく、なんだよ……」 「まぁまぁ、ベル君。紐はどの木に結ぼっか?」 「ん? あぁ、そうだな」 主導権は、あくまでもベルロックに。 その方が面白いし、なにより居心地がよい。 「あの木にするか」 「はーい♪」 そうしてリントヴルムは、ベルロックが紐を結ぶ姿を眺めていた。 「相棒か……新鮮な感覚だ。でも楽しいね 」 「ふん」 照れ隠しにそっぽを向くベルロックに、リントヴルムは口許を緩める。 「腹減ったし、屋台行くぞ」 「はいはい、腹ごしらえにいこうか!」 リントヴルムは、だから今日もベルロックに着いていくのだった。 ● 村を訪れたロス・レッグは、くんくんと鼻を動かす。 「へぇ蜜柑が名産の地か。うめぇものたくさん食えっか?」 「美味しそうな匂いです」 シンティラ・ウェルシコロルも、店先に並ぶスイーツに目を輝かせた。 「そしたらまた、帰りにな!」 「はい、此処で待ち合わせましょう」 食事をしたいロスと、甘いものを食べたいシンティラ。 別々に、お目当ての店を目指す。 「これなんか腹に溜まりそうだ。おっちゃん!」 ロスにとって重要なのは、料理の量。 すべての店をまわってあらゆる料理を購入し、飲食用の机をひとつ占領した。 「ほんじゃ、いただくぜ!」 大きな肉にかぶりつき、がぁっとビールを流し込む。 なにやら初めて見る料理や、本当に柑橘を入れてよかったのかと疑問を抱く料理もあるのだが。 「旨ぇ!」 と、ロスが叫んでいるので、よいことにしておこう。 煙草タイムも差し挟みながら、もくもくと食べ進めていく。 「わぁ、綺麗ですね」 一方のシンティラは、スイーツをひとつひとつカメラに収めていた。 レシピも訊ねて、丁寧に記録。 「こんにちは! スイーツづくりを見せてはいただけませんでしょうか?」 何軒かは調理中の台所も覗かせてもらい、できたてをほおばった。 「えっと、これとこれと、あとそれも。お持ち帰りでお願いします」 カバンに、自分へのご褒美を詰め込んで。 幸せなひとときを、シンティラも満喫していた。 「ふぅ~、食った食った」 食器やら柑橘の皮やらを片付けてから、ロスは小さな公園へ。 日当たりのよい場所を見付けると狼姿に変身して、ごろんと昼寝を始めた。 (ロスさんのお土産も買っておかないといけませんね。美味しいスイーツ、食べられちゃいます) 更にシンティラは、肉料理や食材の屋台をまわる。 帰宅後は勿論、帰路でさえ手を伸ばされる可能性を否定できない。 ロスの気をスイーツから逸らすためのご馳走が、シンティラには必要なのだ。 カバンが、これ以上ないくらいにぱんぱんになる。 「ロスさーん、何処ですかー?」 約束の時間になっても戻らないロスを探して、シンティラは村を歩いていた。 屋台にも倉庫にも蜜柑畑にもいなくて、なお奥に進んでみる。 ひらけたその場所は公園で、陽だまりで子ども達と遊んでいるロスを見付けた。 「ロスさん、探しましたよ」 「ん? ティも遊びにきたのか?」 いいえと、シンティラは首を横に振る。 「もう帰る時間ですよ」 「おぉそうか、わりぃわりぃ」 言われて時計を見て初めて、ロスは時間を認識したようだ。 えーっと不満を口にする子ども達になんとか許してもらって、シンティラと帰路につく。 蜜柑畑では、まだまだ多くの者達が縁結びのおまじないをしていた。 「縁結び……」 「まさか浄化師になったら相方が半ば恋人になっとは思わねぇかったからなー。ティ、一生縁ねぇな! ははは!」 「ロスさんは?」 「俺は、一生狼の姿でいられる方法を思案中」 「私もロスさんは、狼状態なのがいいですね。恋人はもの凄く遠慮します」 「よく言われる」 「よく? 誰に?」 「よく……ま、いいじゃねぇか」 問われたロスは、言葉を濁す。 とりあえずはいまの関係を続けていければと、想うのだった。 ● 夕方。 屋台に座る、灯・袋野(ふくろや・れっか)と灰・土方(ヒジカタ・ホロビ)。 灰は蜜柑飯をほおばり、灯は柑橘酒を嘗めていた。 「いまさらなんの縁を結ぶんだ?」 「そりゃあ……ようやく結婚して、だいぶ夫婦らしくなってきたんですから、そのための縁結びですよ」 灯の問いに、灰はどきまぎしながら答える。 「ようやく指令の名を借りた新婚旅行にきたもんなぁ」 「結婚式は契約のあれでいいです」 想い出すのも恥ずかしいと、灰は視線を落とした。 「……故郷の同胞たちとの縁を、僕は切りたくありません」 「ん」 「死者のことを思うなんて馬鹿ですね。ちゃんと自覚はあります」 「ん」 灯は頷くだけで、それ以上はなにも言わない。 非難するわけでもなく、否定するわけでもなく。 理解していると、ただ頷いた。 「ごっそさん」 「ご馳走さまでした」 ふたりで柑橘畑へ移動して、縁結びを申し込む。 灯が選んだのは、灰の瞳のような紅蓮色の紐。 ふたりの名に続けて、未来、と書き添えた。 灰は、赤色と灰色の紐を選んで、外れないようにきつく結びつける。 自分と灯、ふたりの名前を書いたうえで、自分の名前の横に書いた灯の前妻の名を塗りつぶした。 灯と前妻の、縁切りの願いを籠めて。 「書けたか?」 「はい、お待たせしました。結びにいきましょう」 灯が先導して、柑橘畑をどんどん奥へと進んでいく。 茜色に染まる空の下、まつり客も少なくなっていた。 柑橘畑には色とりどりのランタンがぶら下がっているが、少々心許ない。 だが愛し合うふたりには、それがむしろロマンティックでもあった。 ほかの誰からも見えない場所を探しあてると、木に紐を結んでいく。 「これでよし。さて、ホロ。祭りは羽目を外すためにある」 「そういうバカを毎回フルボコにしてきた側なんですが?」 灯の言葉に、灰は怪訝な顔をした。 言っていることが、これまでのおこないと真逆である。 「しっぽりするか」 「!?」 「すげべぇしようや」 「!!」 灯の申し出に、言葉を失う灰。 というか、どう答えればよいのか、頭のなかが真っ白になってしまう。 「からかいすぎ……」 「い、いい、ですよ。灯さん、が、ぼ、ぼくは……あなたの番なんですし、こうして新婚旅行に連れてきてもらったし」 灯の台詞を遮って、灰は承諾の意を返した。 勢いで名前を呼んでしまい、耳まで真っ赤になる。 「初夜だな」 恥ずかしすぎて、なにも言い返せない灰。 それでも灯の服の端を離さずにいるもんだから、可愛すぎて壁ドンしちゃう灯。 キスをしようとするも。 「これ以上は無理です……あ、名前は呼べました」 「はははっ、先は長い」 灰がゆでだこになってしまい、口吻には至らなかった。 「んじゃ、宿に戻ろうや」 「あ、ぅ……はい」 なにかを言おうとして、やっぱりやめて。 服の端を離したくなくて、灰は灯を追いかける。 本当はキスだってしたいし、灯とずっと一緒にいたいし。 自分だけのモノにしたい。 けれどもそんな、縛り付けるようなことは、したくないから。 「まぁなんだ……ゆっくり進めていこうや。俺ぁおまえの横にいるからよ」 「はい」 そんな灰の頭を、灯は優しく撫でてやる。 灰の気持ちに寄り添い、すべてを受け入れる覚悟は、既にできているから。 『愛している』と、声にするのだった。
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*** 活躍者 *** |
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該当者なし |
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[8] リントヴルム・ガラクシア 2018/09/12-20:46
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[7] 灰・土方 2018/09/12-00:01
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[6] シンティラ・ウェルシコロル 2018/09/11-00:15
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[5] シンティラ・ウェルシコロル 2018/09/11-00:13
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[4] リントヴルム・ガラクシア 2018/09/10-21:15
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[3] 杜郷・唯月 2018/09/10-11:37
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[2] ララエル・エリーゼ 2018/09/09-19:16
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