~ プロローグ ~ |
「ポール・キュヴィリエ」 |
~ 解説 ~ |
●目的 |
~ ゲームマスターより ~ |
ここまでプロローグを読んで下さり、ありがとうございます。 |
◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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目的 ポールさんを説得。教団に連れて帰る。 行動 目撃情報を辿って探索。 シエスタで見た冒険者を参考に、新人冒険者を装う。 設定は、樹梢湖で経験を積もうと思っていたらジェルモンスター大量発生。このまま行くかやめるかで意見が分かれている。 樹梢湖に詳しいなら話を聞かせてくれないか、という感じ。 情報料はお酒でどう?と誘う。 村の酒場へか、装備品のラム酒を渡すのでも。 酒場なら自分たちはお茶。 わたしたちは慎重派。数が多すぎるしジェルモンスターではあまり稼げないと。 樹梢湖の様子を聞いた後。 ルーノさんの話に便乗、軽い感じで。 樹梢湖のことなら冒険者の方が詳しいから、教団員になれば調査に起用されるかも、とか。 |
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■接触 ポールの居場所は村人に聞く 冒険者装い近付く ナツキが樹梢湖に行くと譲らない為、湖に潜っていると噂を聞きポールに現状確認したい という体で接触 ■対話 対話はルーノ主体 以下がポールのメリットと予想 教団の調査の件と絡め会話に混ぜてみる ・教団の調査中でも教団員であれば樹梢湖への立ち入りとある程度の自由行動が可能 最終的にナツキとポールへ教団行きを提案 祓:湖に拘るなら、ポールさんも君もいっそ教団に入ってはどうだい? 喰:嫌だね、あんな所! 祓:なら諦めろ。嫌悪の対象すら利用するくらいでなければ意志は通せない、目的達成など不可能だ 逃走抵抗あればナツキはJM8で峰打ち ルーノはSH8で機動力を削ぎ 拘束後SH4で治療 |
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●方針 説得メイン 拘束は最後の手段 ●事前 祓と喰は別行動 両者教団制服は未着用 喰は冒険者に扮し(演技Lv3使用) 祓は自警団側にて待機 ●喰 ・接触 仲間と合わせ、加えてこの村に慣れないもの同士手を組んでみてはと提案 ・説得 ここに来る際樹梢湖へ教団の一団が入っていくのを見たとの情報を提供 (教団の話題への誘導と単独の樹梢湖への侵入を牽制する目的も兼ね) 代わりにポールさんの事を引き出して親身に聞き話し易い雰囲気を作り 後はナツキさんに合わせ樹梢湖へ早めに行こうと主張 教団との連携は賛成派 ナツキさんとポールさんに教団との協力のメリット(安全性や戦力や情報)を話し、 入団までは行かずとも協力関係には持って行きたい |
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■ロス 冒険装備はナイフのみ手に後は魔方陣 ∇誘 樹梢湖に行き慣れてるって?そりゃ是非話聞きてぇな! あそこ話聞くだけでもすげぇ惹かれっもんあっよな! ∇酒 酒は好き ビールは気分愉快になっし 冷酒は染み渡る感覚が好き ∇発言 教団行くの容易いだろっけど、敵さんザクザクでるならさっさと倒さねぇと不味くねぇ? 教団から樹梢湖の仕事回って来っとも限らねぇんじゃねぇ?っつーのもあって、行ける今行きてぇよなー 樹梢湖行けっか?なら一度教団に聞いてみっか ∇浄化師? へ俺浄化師に見えっのか? ∇捕縛 短剣叩き落とし足払い 回避活かし背後 腕取りテーピングでポールの手首巻きつけ 後はグルグル回る ∇逃走 口寄魔方陣で装備 ライフルで足元狙い足止め |
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~ リザルトノベル ~ |
●樹梢湖にて 「随分と霧が出ていますね……前からこんな感じだったんですか?」 「ううん、こんなに、霧、出て、なかった……今は、えっと……」 『ユン・グラニト』は上手い言葉が中々出てこず口籠ってしまう。そんなユンを急かすこともせず、『シンティラ・ウェルシコロル』はゆっくりと待った。 「……嵐の、前触れ?」 「嵐の前触れですか。ジェルモンスターが多いと聞いたのに、生物の気配がしません。そもそも鳥や動物の気配が全くしないのは……異常です」 「前は、ぴょんぴょん、たくさん、いた。……どこに、行ったんだろう?」 ユンは不安げな表情を隠せないように樹梢湖の森を見た。 シンティラもまた森を眺める。 「……なんだか、前より、森の、魔力が、濁ってる」 「やっぱりユンさんもそう思いますか? ここに来たの私は初めてなのではっきりとした確信が持てなかったんですが、淀み停滞している感じがして……あまり長居したくない場所ですね……」 エレメンツである二人は魔力探知によって森の異変をより肌で感じていた。万が一の場合に備えて二人は樹梢湖の近くで待機していたが、説明しづらい不気味な感覚が付き纏う。 森の周辺を見回っていた自警団の隊長が二人に気づくと敬礼をする。シンティラは事前に用意していた非常食を取り出し、 「お疲れさまです。あの、これ差し入れです。良かったらどうぞ。……ところでお聞きしたいことがあるんですが、最近何か変わったことはありませんでしたか?」 「ああ、これはありがとうございます。最近ですか……」 自警団の隊長は言って良いのか迷った表情を浮かべ、何か決心したように浄化師に打ち明けた。 「あの浄化師候補の話なんですが……」 「ポールさんのことですね。何かあったんですか?」 シンティラが首を傾げながら尋ねると、自警団の隊長は歯切れ悪く話し出した。 「ポールと言う青年ですが、どうにも聞くところによると随分強引な勧誘をされたそうです」 話を詳しく聞くと、ヤコブの命令で説得どころかポールの話も聞かず武力行使しようとして逃げられたらしい。 「それは……」 「怒るし、怖い、よね、……逃げちゃう、のも、仕方ない、よ」 シンティラが絶句していると、ユンがポールに同情した言葉を漏らす。 「そんな目にあったなら、尚更強引な手段は取りたくないですね」 ユンもこくりと頷く。 隊長はまだ浮かない表情で、二人に先程とは別の相談を持ちかける。 「それから他にもお耳に入れておきたいことが、樹梢湖の森周辺を警備に当たっていた者が頻繁に不気味な声がすると訴えてきて困ってるんです」 「不気味な声とは?」 「大半の者は『殺セ』という声が何度もぶつぶつと聞こえてきたと言っています」 「あの、どんな、声、だった?」 ユンが確認すべく尋ねると、 「男性の声です。自分は『助ケテ』と言う声を耳にしました。周囲を見渡しても自分達以外誰もおらず、皆気味悪がっています」 「他にどんなことを言っていましたか?」 「確か……『来ないでくれ』と懇願する声を聞いた者もいます」 意図せず幽霊の噂を聞き出すことができ、ユンとシンティラはお互いの顔を見合わす。隊長は苦い表情をしたまま、 「正直なところ私もここから離れたいぐらいですよ」 「こちらでも教団にこのことを報告し、早急に解決できるように動きます」 シンティラがそう言うと隊長は少しだけ安心したように相好を崩した。浄化師に相談したことで気が晴れたのか歩哨の仕事が残っているので、と礼をして去って行った。 森は待つ。樹梢湖は一つの生き物であるかのように脈動し、静かにさざめいていた。 ●思いがけぬ接触 猫背の男が小間物屋から出て行く。あれがポールだろうと仲間内で確認していると、突如ポールは痙攣し、胸の辺りを掻き毟る。そのまま崩れ落ちると硬直したように動かない。 突然の事態に動揺する中、真っ先に駆け寄った者がいた。 「おい、アンタ大丈夫か!?」 『ナツキ・ヤクト』は蹲ったままのポールを案じて声をかける。暫く俯いていたポールだが、顔面蒼白のまま振り返ると、荒い呼気を吐きながらへらりと笑った。 「あー……単なる二日酔いだから気にしなくていいぜェ」 「でも、顔真っ青だぞ。本当に大丈夫か?」 「そうです! どこかで休んだ方がいいですよ!」 『ロス・レッグ』が心配そうに声を掛け、『フィノ・ドンゾイロ』も同意するように頷く。それにも構わず震える手を隠すようにポケットを漁り、酒を取り出す。 「お酒飲まない方がいいと思うの」 「お嬢ちゃん知らないのか? 二日酔いには迎え酒がいいんだってェ」 愁眉の『シルシィ・アスティリア』の指摘にポールは誤魔化すようにへらへらと笑って酒を飲もうとするが、 「あー、何すんだよぉ?」 「体調が悪そうな奴がそんなに酒飲んじゃダメだろ!」 見かねたナツキがスキットルを取り上げる。取り上げられた酒を名残惜しそうにポールは見る。 「おいおい、酒は百薬の長って言葉知んねェの?」 『ルーノ・クロード』は相棒の予定外の行動に内心頭を抱えていた。 友好的に声を掛ける筈が、どうしてこうなった。 実際にポールに対面すると、ナツキの反応も無理はない。 20代中頃なのに死相がはっきりと出た顔を見れば、即刻教団へ保護したくもなる。 だが、目だけは命の灯火を燃やし尽くすようにぎらぎらとこちらの様子を観察していた。 厄介そうな男だ。面倒な指令がさらに面倒になったことをルーノは確信する。 「貴方が樹梢湖によく潜ってる冒険者ですか?」 「それェ、どっから聞いた話ィ?」 「宿屋の主人から聞きました。珍しくこの村に冒険者が滞在していると仰っていましたから」 『マリオス・ロゼッティ』が穏やかに尋ねると、訝しげな表情でポールが聞き返した。 実際に宿屋の主人から聞いたのだから嘘ではない。 一年くらい前にはお偉い学者もこの宿屋に泊まったんだとか樹梢湖にかかる橋が壊れなけりゃ今でも繁盛してたのにだとか。 長々とした話は止まらず、ルーノが上手く切り上げなければ今でも付き合わされていただろう。 「あのおっさんか……この村に滞在するのも潮時だなァ」 ポールは舌打ちし、ぼそりと呟いた。 「でェ、ところでお前等さァ、俺に何の用?」 「僕たち樹梢湖で経験を積もうと思って来たんです。でも、ジェルモンスターが大量発生したでしょう。このまま行くか止めるかで仲間内でもめてたんですよ。だから、樹梢湖内に詳しい人からお話を聞きたかったんです」 冒険者を装いながらマリオスが事情を話す。フィノは不満げな顔をし、 「俺らも実力がついたし、樹梢湖だって大丈夫ですよ! ね、ナツキさん」 「そ、そうだ! あんなにたくさんの敵を一度に相手にできる機会なんて滅多にないだろ!」 一瞬どもったが、すぐに尻尾を振り、ナツキは好戦的な笑みを浮かべる。 「お前、マゾなの?」 「違えよ! 思いっきり戦いたいだけだ!」 ポールの言葉にナツキが反射的に噛みついた。隣でルーノは頭が痛そうに額を押さえている。 「アンタ樹梢湖に行き慣れてるって話だろ? そりゃ是非話を聞きてぇよな! あそこ話を聞くだけでもすげぇ惹かれっもんあっからな!」 「……この三人を諦めさせる為に樹梢湖の詳しい状況を聞かせて欲しい」 好奇心を抑えきれないロスとは反対にルーノは渋い顔をしている。話を聞いたポールは暫く考え込んだように黙る。 「……もちろんタダで話せとは言わねえよなァ?」 「それ相応のお礼をしますよ」 マリオスがにっこりと微笑むと、ポールもにやりと口をゆるく弧に描く。 「酒を奢ってくれるんなら、話してもいいぜェ?」 「アンタその顔でまだ飲む気か!?」 「じゃあ、話さねェ」 ナツキが怒るとポールはあっさりと手のひらを返した。 酒を飲ませてくれなければ話さないと態度で示すポールに真っ先に折れたのはマリオスだった。 「……仕方ありません」 シルシィが困ったように周囲を見渡すが、仕方なしといった表情で皆が頷いた――ナツキを除いて。 「飲み過ぎだろ! 酒臭えし、飯奢るのはいいけど、酒飲むのはなしだからな!」 「うわァー、お前アイツみたいな事言うねェ……」 (……ナツキ頼むから、目的を忘れないでくれよ) ナツキは完全に素で行動している。逆に演技させるよりこの方が疑われにくいかとルーノは考え直した。うっかり余計なことを口走らないとは限らないから自分が注意しておかなければ。 話は纏まり、一行はポールを連れて村で唯一の酒場へと向かう。 ●愉しい化かし合い 「……今、樹梢湖に入るのはどうだろう。数が多すぎるし、ジェルモンスターだとあんまり稼げなさそう」 「シルシィさん、大丈夫ですって。なんとかなりますよ。いざとなったら浄化師も近くにいるみたいだし、逆に安心じゃないですか」 慎重な意見を出すシルシィとは反対にフィノは楽観的だ。笑顔を浮かべている裏でフィノはポールの事を抜け目なく観察していた。 (うーん、浄化師が近くにいるって言っても全く動揺しないな、この人。それどころかロスさんと一緒にビールを乾杯してるし……なら、これならどうだ!) 「そういえば、ここに来る途中で教団の一団を見ましたよ。教団が調査している間、樹梢湖には立ち入り禁止なんですかね」 「教団が調査してるなら封鎖されているかも」 さっき思い出したという態でフィノが揺さぶりをかける。シルシィも困ったような表情を浮かべながらアシストする。 「大規模調査が始まると耳にしましたし、今やってきているのは先行隊の方達かもしれないですね」 「そんなら無理矢理入ろうとしたら不審者扱いされっかもな」 マリオスがにこやかに虚偽情報を流し、ロスが笑いながら冗談めいた口調で応じる。 肝心のポールと言えば、ビールをもう一杯頼もうとして止めようとするナツキを口八丁手八丁で誤魔化そうとしていた。二人は先程の話をちゃんと聞いていたのだろうか。 視線が二人に集まる中、 「ナツキ、話はちゃんと聞こうか」 「お、おう……」 ルーノがにっこりと笑みを浮かべる。その目が笑っていないことに気づいたナツキは顔を引き攣らせる。その隙を突いてポールがビールを頼んでいた。 脱線し掛けていた話をルーノが戻す。 「それで話の続きだけど、教団の調査中でも協力者であれば樹梢湖への立ち入りとある程度の自由行動が可能だそうだ」 「もしかして案内役として樹梢湖に入れるかもって事ですか!?」 フィノが大げさに驚くと、マリオスも納得したように頷いた。 「樹梢湖のことには冒険者の方が詳しいですし、調査の為に冒険者が起用されても不思議ではないですね」 「でもさ、教団から樹梢湖の仕事が回って来っとも限らねぇんじゃねぇ? つーのもあって、行けるなら今行きたいよなー」 ロスは旨そうにビールをごくりと飲み干した後、ぼやいた。 「樹梢湖行けっか、教団に尋ねてみる方が早くねぇ? 上手くいきゃあ協力者にはなれっかもしれねぇし。それに敵さんザクザク出るならさっさと倒さねぇと不味くねえ?」 「今はそんな心配しなくともいいぜェ。それに今の樹梢湖はおすすめできねェしなあ」 今まで黙って酒を楽しんでいたポールが口を開いた。 「それよりジェルモンスターと戦いたいんなら、何で西の村なんかにいるんだよォ。普通泊まるなら南の村だろーが」 ポールの鋭い指摘が飛ぶ。確かに樹梢湖の被害は南の村からしか出ていない。 ルーノが沈んだ面もちで口を開いた。 「……私達の中には重度の方向音痴がいてね。それなのに地図を読めると豪語して止まないんだ。今回も止めたのに大丈夫、任せとけと言って聞かなかったんだよ。……ね、ナツキ」 「え? ちょっ……ルーノお前っ!?」 勝手に方向音痴認定されたナツキが抗議の声を挙げるが、素知らぬ振りで聞き流すルーノ。 「あー……いるよなァ。そういうのに限って変な自信を持ってるんだよ。特に味音痴の飯マズとかな!」 最後は特に共感と怨嗟の籠もった同意だった。どうやらナツキを犠牲に上手く切り抜けることができたようだ。 「それよりも樹梢湖がおすすめできないってどういうことですか?」 「それよりもって……」 フィノの言葉にナツキは耳をぺたんと伏せる。 「大量のジェルモンスターと戦いたいって言ってたけど、無理だぜ」 「え、何でだ?」 不思議そうな顔でロスが尋ねる。 「一週間前を境にジェルモンスターが姿を消したんだよ。少なくとも入り口付近では見かけない。それに今の樹梢湖は全く別物だ。お前等が知ってる樹梢湖と同じと思わない方がいいぜェ」 「姿を消したって、そんなどこに……」 「さあな、俺も霧に邪魔されて中央に辿り着けねェから何が起こってるかさっぱりだ」 ポールは肩を竦め、ビールを飲み干す。 ジェルモンスターの被害がこれ以上出ることはないことは喜ばしいことなのに、不穏な予感が募るのは何故なのか。 「でもさ、奥の方にはいるかもしれないってことだろ!」 ナツキが今思い出したかのように湖に拘る演技をし出す。 「封鎖されてるかもって聞いてなかったのかよぉ、お前サンは……」 「うっ……それならアンタも困るだろ?」 苦し紛れにナツキがポールに水を向けると、ポールも「まーねェ」とへらりと笑いながら頷く。 「湖に拘るなら、君もポールさんもいっそ教団に入ってはどうだい?」 「嫌だね、あんな所!」 「なら諦めろ。嫌悪の対象すら利用するくらいでなければ意志は通せない、目的達成など不可能だ」 ルーノはきつい口調でナツキを諫める。 「おぉ厳しいねェ、愛の鞭ってやつ? 全くもって正論ってやつは耳が痛いよなァ」 ポールは茶化すように口を挟む。何を考えているのか分からない道化の笑みを張り付けたまま。 「嫌いなら嫌いで済まされないのが現実って奴だぁ」 「アンタも教団と何かあったのか?」 ロスが大らかに笑いながら、切り込むように質問する。 「俺の両親は教団に見捨てられたんだァ」 「見捨てられたって?」 思わぬ言葉にロスが聞き返すが、ポールは問いに答えず話し続ける。 「実際に両親を殺したのはベリアルだけどなァ」 誰かの息を飲む音が聞こえる。 「その日は何もかも最悪だった。せめて貴族サマが居合わせてなければ何か違ってたかもしれねェな。貴族サマは言ったよ。『下民のことより、私を守れって』ね」 ポールは淡々と過去を語る。 「浄化師サマは俺達家族よりも貴族サマの護衛を優先したよ。その間に両親は死に俺だけが生き残った。結局身分制度の前には浄化師も形無しだなァ」 皮肉げな口調とは反対に顔には諦観が浮かんでいた。 浄化師として身につまされる話だ。 「何だよ、それ! おかしいだろ!」 ナツキが怒りと悲しみが混じった顔に、ポールが苦笑した。 「あんただけは仕方ないとか言っちゃダメだろうが! そうじゃなきゃ誰がアンタの家族の為に怒ってくれるって言うんだよ!」 「真っ直ぐだねェ……アイツもこの話をした時怒ってたなァ」 ポールは苦笑し、ナツキを通して他の誰かを見ていた。 「アンタの為に怒ってくれる奴がいたのか。そいつ良い奴だな」 「俺の相棒だ。随分待たせちまっているから怒ってるだろうなァ」 (相棒? 他に冒険者仲間でもいるのか。それとも他の待ち合わせしているのだろうか) ルーノは思考に沈む。彼はナツキのように強く共感することもなければ同情することもなかった。 だが、ここでポールを死なせるには惜しいとは思っていた。だからこそ、結果的に騙すことになっても、自分がやるべきことをやるだけだ。 ロスが首を傾げ、尋ねる。 「アンタの相棒ってのは見かねぇけど、どこにいんだ?」 「樹梢湖だ」 点と点は結び付き、核心へと近づきつつあった。 ●真意 「さあてっと。茶番はそろそろお仕舞いにしようやァ、浄化師サン」 口火を切ったのはポールの方からだった。 「お互い本音で話し合おうぜェ。おおっとォ、浄化師ともあろうお方が酒場で暴れて、一般市民に迷惑をかけるってこたァねえよな?」 ポールは大仰に両手を広げる。拘束に動こうとした者もポールの言葉に動きを止める。少なくともポールに逃げるつもりはないようだ。 何を考えているのか分からないが、何時までも相手に主導権を握らせておいてはマズい。ルーノがポールの動きを用心深く注意しながら、鋭い声で追求する。 「参考までに聞かせてもらおう。いつから浄化師だって気づいていたんだい?」 「割と最初からァ。浄化師かどうかなんてエレメンツなら内包する魔力量を見りゃ分かるだろぉ」 笑いながらされた指摘にルーノは相手に見えないようぐっと両手を握りしめる。 「俺が魔力パンクで動けなけりゃァ、逃げてたとこだぜェ。心配して声を掛けてきたのも演技かと思ったら、ダラダラ話すばっかだし。すぐさま拘束するわけでもでねェから――……もうイイかっなって」 最後の呟きは聞こえないぐらいの声だった。 「お前等さァ、俺を教団に連れて行こうとすんのも上からの命令に逆らえねェからァ?」 「死にそうな奴を放っておけるか!」 ナツキが怒鳴りつける。ポールは凪いだ目でナツキをじっと見る。ふっと息を抜くと、 「あー参ったねェ……教団の奴らが全員ロクデナシって思えれば楽だったのに、先生の言った通りになっちまった」 ポールは両手を挙げて降参を示す。 「協力する気があんならどうして逃げたりしたんだ?」 真っ先に立ち直ったロスが不思議そうに尋ねる。 「気にくわなかった」 あっさりと子供じみたことを言う。 「最初に来た奴はロクでもなかったのがなァ……自棄になっていっそのこと樹梢湖で心中してやろォかと思ったぜェ」 「お前を心配してくれる奴がいるのに簡単に死ぬって言うな!」 「そうですよ! 院長先生も子供達も、本当にポールさんの事、心配してたんですから」 ナツキが怒鳴り、フィノが訴えると、さすがにポールも罰の悪そうな表情を浮かべた。 「樹梢湖にいる幽霊が君の相棒でいいのかい」 確信を込めてルーノが尋ねると、ポールは頷いた。 「そうだ、俺の相棒ジュールはベリアルに殺され、呪いとなって樹梢湖に留まっている」 「……ベリアルに囚われ解放された魂が幽霊になった記録は教団に存在しません。全くその可能性がないとは言い切れないけれど、僕は樹梢湖の幽霊がポールさんと知り合いだという可能性は低いと考えていました」 マリオスが唸るように自身の見解を話す。 「天国にも地獄にも行くことができなかった魂は人や地域に悪影響を及ぼすことがあるの。そういった魂の事を『呪い』あるいは『幽霊』というわ」 シルシィが詳しくない仲間達に説明する。マリオスは確認の意を込めて尋ねる。 「本当にその方は貴方の相棒だったんですか?」 「あァ、間違いねェ。俺がアイツの魔力を見間違える筈がねェ」 「なあ、他の冒険者には頼ろうと思わなかったのか?」 ボッチだったのかと雄弁に語るナツキの瞳にポールの額に青筋が立つ。 「他に冒険者の知り合いぐらいいるわ、ボケェ……幽霊は浄化師みてェな魔力が高い人間ならまだ対処できるがな、冒険者には荷が重いんだよぉ」 「呪いは、呪いの元凶を祓うか、留まる理由を解決しない限り、消えることはありません」 「そんならジュールに会ったんだろ? 何度も潜ってたって言うし、成仏できない理由も知ってんじゃねぇか?」 マリオスの説明にロスが腕を組んだままポールに尋ねる。 「会えてねェ。何度もアイツに会う為に潜ったさ。でもなァ、後一歩のところでまるで邪魔するように霧が出てきて見失っちまう」 俺にも何でアイツが留まっているか分からねェんだ。 ポールは自嘲するように呟く。 「俺ァどんどんあいつの魔力が濁っていくのを、ただ見ていることしかできなかった」 「それなら尚更教団に入るべきじゃなかったんですか?」 マリオスが厳しい顔で指摘する。 調査に入れてもらえるとも限らねェだろうが。 そうポールは言う。 「入ってきたばっかりの奴に指令をいきなり任せるか? 樹梢湖の情報を聞くだけ聞いて、蚊帳の外にされやしれねェか?」 実際に正攻法ではポールの言った通り、その可能性が高い。なまじ関係者だからこそ指令に参加できない可能性はあるだろう。 「やれやれ、私達は君に利用されてたわけか」 ルーノが疲れたように椅子にもたれかかる。 「浄化師になるんなら、俺をジュールに会わせる事が条件だ」 「俺らの一存じゃ決めらんねぇぞ」 ロスが腕を組んだまま難しい表情を浮かべる。 「そりゃ分かってる。お前等が説得できなきゃ、俺も勝手にする。それだけの話だろぉ?」 後はお前等が頑張って説得するんだなァと挑発的な笑みを浮かべる男は冒険者らしくどこまでも強かだった。 「とりあえず仲間になってくれるって事だよな!」 ナツキが嬉しそうに尾を振る。穏便に済みそうなことに安堵しているのは他の仲間達も同じだった。 ●報告 「良くやった、お前達! 他の役に立たない奴らとは違うようだな」 ヤコブは報告を聞き、上機嫌そうに褒める。 「それでどうやって説得したんだ? あの酒浸り随分頑固だと聞いていたんだが」 ポールを貶めるような物言いにナツキが噛みつこうとするが、それをルーノが手で制す。 「話をしたらちゃんと分かってくれましたよ。ポールは魔力制御が出来次第、樹梢湖の指令に参加することになりました」 「何? そんな話聞いてないぞ、私は」 ルーノの言葉にヤコブは訝しげな表情を浮かべる。 「報告書は既に受理されています。樹梢湖の異変の原因であるジュールを助ける協力者として既にポールは認められています」 ルーノはにっこりと笑って書類を見せる。その書類を強引に奪い取ったヤコブは目を剥き、 「こ、こんな……私に許可なしにこんな真似して許されると思うのか!?」 「貴方がポールにした勧誘方法についても報告してあります。上の方とのお話し合いが楽しみでしょうね」 「き、貴様……っ!」 「俺らに必要な情報を伝えなかったことも含めてね」 フィノが悪戯に成功したような顔で笑う。ロスが呆れた表情を浮かべ追撃する。 「そもそも普通に接すりゃこんなことになんなかったのに、ややこしくしたのはアンタの指示が原因じゃねぇ?」 「私が悪いとでも言いたいのか!?」 「それで私達なんかと話している暇はあるんですか?」 ヤコブはぶるぶると震え、鬼の形相で睨みつける。 「覚えておけよ、貴様らの顔は忘れんからな!」 捨て台詞を吐き捨て、泡を食ったように部屋から出ていく。 ロスとフィノがハイタッチし、ナツキが嬉しそうにルーノの肩を叩く。 未だ問題は解決していないが、新たな仲間を迎え、核心まで後少しの所まで来ていた。
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*** 活躍者 *** |
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該当者なし |
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[25] ルーノ・クロード 2018/09/18-00:01
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[24] フィノ・ドンゾイロ 2018/09/17-23:56
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[23] ロス・レッグ 2018/09/17-23:53
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[22] シルシィ・アスティリア 2018/09/17-23:38
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[21] フィノ・ドンゾイロ 2018/09/17-22:49 | ||
[20] ルーノ・クロード 2018/09/17-22:15
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[19] ロス・レッグ 2018/09/17-21:56 | ||
[18] ルーノ・クロード 2018/09/17-21:30 | ||
[17] シルシィ・アスティリア 2018/09/17-20:41 | ||
[16] ナツキ・ヤクト 2018/09/17-20:08 | ||
[15] ロス・レッグ 2018/09/17-19:50 | ||
[14] フィノ・ドンゾイロ 2018/09/17-18:27 | ||
[13] ロス・レッグ 2018/09/17-13:23 | ||
[12] シルシィ・アスティリア 2018/09/17-00:27 | ||
[11] ルーノ・クロード 2018/09/16-21:53 | ||
[10] フィノ・ドンゾイロ 2018/09/16-21:29 | ||
[9] シルシィ・アスティリア 2018/09/16-19:31 | ||
[8] ルーノ・クロード 2018/09/15-20:05 | ||
[7] ナツキ・ヤクト 2018/09/15-19:53
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[6] シルシィ・アスティリア 2018/09/15-00:30 | ||
[5] ルーノ・クロード 2018/09/14-22:00 | ||
[4] シルシィ・アスティリア 2018/09/13-22:28 | ||
[3] ルーノ・クロード 2018/09/12-23:25 | ||
[2] シルシィ・アスティリア 2018/09/12-23:04
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