~ プロローグ ~ |
穏やかな日差しや心地良い風に秋の訪れを肌で感じる様になってきた、ある日のこと――。 |
~ 解説 ~ |
●ミッション |

~ ゲームマスターより ~ |
こんにちは、茸です。 |

◇◆◇ アクションプラン ◇◆◇ |
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皆で分担して収穫作業 担当部分が終わったら他を手伝う 葡萄→他の果物→畑の順に回る ◆アユカ かーくんの真似して鋏で葡萄を収穫 手際の良さに感心 前から思ってたけど…かーくん、自然とか植物に詳しいよね もしかして家が農家だったとか? 葡萄ってね、少し思い入れがあって わたしのお店の名前に使われてるの どうして付けたのかは、わかんないけどね ◆楓 少々の農業と植物学の知識を活かし収穫作業に従事 アユカさんにも収穫してもらうが、体力を使うのであまり無理はさせない まめに水分補給してもらう 農家というか…村全体が農業で生計を立てていたので、自然は常に身近にありました 作物の収穫など随分と久しいですが、感覚は体が覚えているものですね |
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おばあさんが安心できるよう 収穫頑張ろう 畑を担当 綺麗に整えられた畑に目をきらきら 大切に育てていたのがわかるわ お天気もいいし 収穫日和ね 頑張ろうね とシリウスやお友だちに笑顔 野菜を傷つけないよう気を付けて収穫 お芋を抜こうと力いっぱい引っ張る う もうちょっとで抜けそう…きゃあ! ひっくり返りかけてシリウスに腕の中に 一瞬だけ彼の顔に閃いた笑みに 顔を赤く 畑の方が終わったら山の方に 皆で協力して作業 おばあさん 具合いかがですか? 収穫終了の報告の時に尋ねる 少しだけど医学も齧ってるんです よければ診せてもらえませんか? シアちゃんと協力して診察 了解がもらえれば 収穫したものでスープ等作って 沢山食べて 早く元気になってくださいね |
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あおい: 渋柿の木の場所を依頼者に確認 柿のかごにリボンで目印をつけておく(渋柿はリボンの付いてる方に入れて下さいね) まずは林檎の収穫、私は下・イザークさんは上の二手で行きましょう イザークさん!収穫祭で使うものですから丁寧に扱って下さい 形のいびつな物は別にして置いて下さい。 依頼者へ滋養のあるものを作ろうという話が出ているので 軽やかに飛んでいきますね(感心しつつ) …私は二本の足で歩けるのですから、これ以上は贅沢です え?きゃあああっ! わ、悪くはありませんが今は任務中です!収穫に集中です! 自分達の収穫終は速やかに手伝いへ行きましょう 料理は林檎のすりおろしやスープなど。他の人とメニューが同じ時は協力します |
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せっかくの実り、無駄になったらお野菜達も可愛そうですもの、ね 私、頑張ります……!植物の採取は得意なんです あ…採取じゃなくて収穫でした(少し赤くなって まずはニンジンの畑へ ニンジンは葉っぱを引っ張って引き抜けば… クリス…!見て下さい、抜けました…! 思わず笑顔、土まみれ え、土、ついてます? でも、クリスだって(くすくすと笑って 視線に気がついて思わず目を逸らし友人が倒れる姿を目撃 あ、リチェちゃん…が、がんばってー…! ニンジンが終わったら順番に他の野菜も収穫 終わったら依頼主にいくつか野菜を使っていいか確認 持参した調理道具で野菜スープを作るお手伝い それと、これ…私が育てた薬草から作ったお薬です 良かったら…… |
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◆準備 持参:ワークグローブ(軍手代わり) 借りる:軍手、カゴ、(もし可能であれば)火バサミ 唯「栗を拾う際は…イガがありますから… 注意して拾いましょうね…」 瞬「その為のワークグローブや軍手だよね! あ、一番は火バサミがあればよりやりやすくなるかな?」 ◆割り振り ・山の麓で栗の収穫をメインに終わり次第他の収穫を手伝う ・作業の流れ:山の麓(栗)→山の麓(他)→畑 唯「栗はやはり秋の味覚、ですね 栗ご飯、モンブラン、栗饅頭… ふふ、想像するだけで幸せです!」 瞬「そうだね〜その為にもお仕事頑張ろー!」 唯「はい!」 ◆収穫後、おばあちゃんの様子を見て ・風邪が良くなるように暖かいお料理を。唯月はそのお手伝い ・瞬は配膳など |
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■ロス 登山何度も行ってたら好きになったんだよなー山 しかし登山靴がなー仕様のせいか こう手に持ってっつー(山で靴履替え ∇収穫用アイテム 鋏 クワ ワークグローブ リュック 梯子 カゴ ∇ 林檎は赤いのを 虫に食われたのあれば取った方がいっか? 柿は匂いでとりあえず分けとっか 渋柿甘柿は形違っかー 鋏で根元を切り 葡萄は潰れ易そうだから最後か 栗…はブーツの方がいいなー 落ちてっのを探して割れてる面を見ながらトゲに刺されねぇようゆっくり斜めに踏みつけ両方の足(靴)でイガを割って中身を取り出す ∇見舞い 俺は見舞う系の技術ねぇしなー ちとは日曜大工できっので補修が必要そうなトコとかあっなら直しとくー 日曜大工セット使用 メシは…帰っまで我慢 |
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~ リザルトノベル ~ |
指令が下ってから数日後。 名乗りを上げた浄化師たちは依頼人の住む村を訪れた。 山のすぐ麓に佇む少々年季の入った家には、少し顔色の優れない年配女性が一人……。 「今日はこんな辺鄙な所までわざわざご足労頂いて、有り難うございます」 それでも笑顔を向けてくれる彼女に、事情を把握していた浄化師たちは無理をしないよう促し、早速作業に取り掛かったのだった――。 ●山チーム 「とても美味しそうな葡萄ね」 そう呟きながら見上げるアユカ・セイロウの視線の先には、綺麗な紫色の葡萄が幾房も実っていた。 「ですね。収穫し甲斐があります」 その傍らで、花咲・楓は鋏を持った手を高く上げ、頭上に実る葡萄をパチンと切り取った。 それを見ていたアユカは見よう見まねで収穫を試みる。 実を傷付けないように、慎重に……。 「あっ!」 枝を切った弾みで房を落としてしまいそうになり、慌ててキャッチ。 「ふぅ……危なかった」 「大丈夫ですか?」 「うん、なんとか」 楓に頷き、死守した葡萄をそっとカゴに入れたアユカは、暫し彼の様子を見つめた。 (とても手際がいいのね) 次々と葡萄の房が消えて行く様子に感心する。 「前から思ってたけど……かーくん、自然とか植物に詳しいよね」 普通の人よりも扱いになれているような気がする。 「もしかして、家が農家だったとか?」 「農家というか……村全体が農業で生計を立てていたので、自然は常に身近にありました」 潰れないように丁寧に葡萄をカゴに入れる楓は更に続ける。 「作物の収穫など随分と久しいですが、感覚は身体が覚えているものですね」 なるほど、と納得。 体に染みついた感覚は記憶なんかより確実に覚えているものだ。 「葡萄ってね、少し思い入れがあって……」 アユカは静かに紡ぐ。 「わたしのお店の名前に使われてるの。どうして付けたのかは、分かんないけどね」 『Magique Raisin』――マジーク・レザン。 「――『魔法の葡萄』ってね」 (なるほど、アユカさんの色的にも合っているな) と、納得する楓は小さく口元を緩めた。 「素敵な名前ですね」 他愛のない話をしながら作業を進めて行く。 高い位置にある葡萄は全て楓が任されてくれて、アユカは受け取った葡萄をカゴに収めて行く作業に勤しんだ。 林檎の木の前に集まったのは、鈴理・あおい、イザーク・デューラー、そしてロス・レッグの三人。 「形のいびつな物は別にして置いて下さい。依頼者へ滋養のあるものを作ろうという話が出ているので」 「青い林檎は残しておけばいいんだったな」 「虫に食われたのあれば取った方がいっか?」 ロスの言葉にあおいがコクリと頷く。 「虫食いは青赤問わず取り除いた方がいいですね」 数本立ち並ぶ林檎の木を分担したところで、作業を開始する。 「こちらはとても真っ赤ですね。美味しそうです」 持参した麻袋に、収穫した赤い林檎を詰めて行く。 「おーい! あおい!」 名前を呼ばれ、更に高い空を見上げたあおいはその瞳に大きな竜の翼を映した。 空を飛ぶ事のできるイザークに、高い所に実っている林檎を任せていたのだが……。 「イザークさん……?」 何やら片手で合図を送って寄こす。 束の間、林檎が空から降って来た。 「えっ! 嘘ですよね!?」 下に置いたカゴに投げ入れようと思ったようだが、行動に移す前にイザークの腕に抱えられていた林檎が一つ零れ落ちたのだ。 果敢にキャッチを試みるが、林檎は思いのほか後方へ――。 (あっ、もう駄目……!) と思った瞬間、 ――パシッ! 「ギリギリセーフ!」 隣の林檎を収穫していたロスがナイスキャッチした。 林檎が無事だったことに胸を撫で下ろすあおい。 そこへ、空からイザークが飛来して駆けつけた。 「悪い! 助かったよ」 「いや、吃驚したけど問題無って! 林檎も無事だったしな!」 証拠に、ロスの手にある真っ赤な林檎は無傷だ。 「イザークさん! 収穫祭で使うものですから丁寧に扱って下さい」 投げ入れようなんて以ての外です! と叱るあおいに後ろ頭を掻くイザーク。 そんな二人を笑って見届けたロスは、再び持ち場へ。 「登山何度も行ってたら好きになったんだよなー、山」 しかし、山は山でも今回は登るわけではない。 ロスは悩んだ末、登山仕様の靴を履き替える。 そしてまた時間が経過し――。 「この木は完了。さて、次の木に行っか!」 赤い林檎で埋め尽くされたカゴに満足気に頷き、ロスはあおいとイザークに声を掛けたのだった。 「栗を拾う際は、イガがありますから……注意して拾いましょうね」 「うんうん。火バサミ借りてきて正解だったね」 大きな栗の木の下。 怪我をしないよう注意を払いながら、杜郷・唯月と泉世・瞬は手始めに落ちているイガグリを収穫して行く。 「栗ご飯、モンブラン、栗饅頭……。ふふ、想像するだけで幸せです!」 食欲の秋、万歳! と言わんばかりにはしゃぐ唯月。 「あとで依頼人に作ってあげるって話しだったよね」 と瞬が確認する。 「そうなんです! きっとこの栗を食べさせてあげたら体調も良くなるはずです」 「そうだね~。そのためにもお仕事頑張ろー!」 「はい!」 収穫を開始して、一時間ほどが経過した。 依頼人に借りた火バサミが大活躍を見せ、なんとか落ちている栗は収穫を終えたが……。 「あとは枝についてるイガグリだね」 「ですね……。突いて落とせば良いようですが……」 依頼人に教えてもらったアドバイスに従い、火バサミと共に借りて来た長い竹の棒を瞬が手に取った。 「いづ、少し離れてて~」 「は、はい!」 慌てて栗の木から距離を取る唯月。 それを確認してから瞬はイガグリ目掛け、ガサガサと突き始める。 そしてボトボトと落ちて来るイガグリ。 「凄い! 沢山落ちて来ました!」 拾い始める唯月と、彼女に当たらない様に違う場所を突いて歩く瞬。 見事な連係プレーに、少しずつ着々とカゴに栗が溜まって行ったのだった。 正午過ぎ――。 山チームの浄化師たちは進行報告の為に一旦集合した。 「えーっと、じゃ、後は柿が手付かずってことで……また分担すっか?」 「そうですね。葡萄はもう終わるので、すぐお手伝いに行けるかと……」 改めて確認を取るロスに、頷くアユカ。 「林檎はイザークさんが飛んでくれるので捗りました。あ、ついでに隣にあった西洋梨もあと少しで終わりそうですよ」 「なるほど。林檎は重量があるからな……効率が良さそうだ」 あおいの発言に、納得したように呟く楓。 直接上から収穫できるのは大きいだろう。 「栗はイガに苦戦しそうだな」 イザークの呟きに担当していた唯月が頷く。 「ええ、コツは掴めているのですが、イガの処理が大変で……空のイガをそのまま放置しておくわけにもいきませんし……」 「隅に避けておけば邪魔にはならないんだけどね~。なかなか手間が掛かるよね」 困った様に言う瞬に、想像に難くないと皆が頷いた。 こうして顔を突き合わせて話し合った結果……――。 葡萄の収穫を終え、駆け付けたアユカと楓。 「イガから栗を取り出す作業……慣れないと骨が折れるね」 「ですね。経験に勝るものはない、ということでしょうか」 例え多く経験していたとしても、大変な作業であることに変わりない。 唯月と瞬が頑張ってくれていたお蔭で、栗の木はあと一本。 イガグリを落とす者、栗を拾う者、空のイガを回収する者と、手分けして作業に当たる。 「二人とも、有り難うございます」 「お蔭で思ったより早く終わりそうだよ」 唯月と瞬が感謝を述べつつ、最終段階へ。 「虫に食われてる栗は食べられるのかなぁ?」 瞬の疑問に、お菓子作りの得意なアユカが答えた。 「食べられますよ。保存には適しませんが、直ぐに茹でてしまえば問題ありません」 「寧ろ、虫のついていない実よりついている実の方が美味しいと言われるくらいだ」 麻袋に溜めた栗をカゴにゴロゴロと移しながら楓が補足した。 そこへ、木の周りを綺麗にして合流した唯月が話に加わる。 「虫だって……食べるなら美味しい実の方を、選びたいでしょうしね」 栗の収穫を無事に終え、束の間の休憩に談笑を楽しむ。 水分補給を忘れずに、次の段階へ……。 「それでは、わたし達は……畑の方へ向かいます」 と、唯月。 「分かりました。こっちは柿の方を経由してからだね、かーくん」 と、アユカ。 それぞれ役割を遂行するため、栗の木にて一旦解散となった。 「渋柿の木はこれですね」 あおいは、事前に依頼人に確認していた渋柿の木を見上げた。 「渋柿は形が違っかー?」 ロスが呟いた疑問に答えたのは、空から舞い降りたイザークだった。 「ほら、こっちが甘柿で、こっちが渋柿だ」 イザークの手元を二人が覗き込む。 確かに形が違う。 「けど、色が同じだとうっかりしそーだな」 「……と、思ったのでリボンを持ってきました!」 あおいのアイディアはロスの懸念を払拭させるものだった。 早速、あおいはカゴにリボンを括りつける。 「渋柿はリボンの付いてる方に入れて下さいね」 「なるほどな! これなら間違って入れずに済みそうだ!」 こうして始まった柿の収穫。 着実に柿の木から実が減って行く……。 そんな中、ふと空を見上げるあおい。 (イザークさん、軽やかに飛んでいますね) と、改めて感心しつつ、自分は二本の足で出来る事をやろうと、低い位置にある柿へと再び手を伸ばすが……。 「飛んでみたいかい? ……興味があるなら、よっと」 「え? きゃあああっ!」 突然ふわりと体が浮き、地面がみるみる離れて行く。 あおいを抱えたイザークは、楽しげに笑う。 「どうだい、空を飛んだ感想は?」 「わ、悪くはありませんが今は任務中です! 収穫に集中です!」 空での騒動の中、下ではロスが柿と睨めっこしていた。 「甘柿はやっぱ甘い匂いすっな。美味そうだ!」 渋柿と甘柿の違いを独自に見極めつつ、収穫に励む。 そして、柿の収穫も終盤に差し掛かった頃。 栗の助っ人に行っていたアユカと楓が報告がてら様子を見にやってきたのだった。 ●畑チーム 早速畑へとやって来た五人の浄化師たちは、目の前に広がる光景に思わず目を丸くしたのだった。 依頼人の女性が一人で耕すには広すぎる畑。 しかも、それは綺麗に整えられ、生き生きと作物が実っているではないか。 「とても綺麗な畑……大切に育てていたのが良く分かるわ」 目をキラキラさせながら、リチェルカーレ・リモージュが一番に発言した。 「……ひとりで、これを?」 シリウス・セイアッドが思わず呟いてしまう程の優秀な畑。 「でも、今は五人います。きっと、今日中に終わりますよ」 すかさずシンティラ・ウェルシコロルが励ますように言う。 「折角の実り、無駄になったらお野菜達も可哀想ですもの、ね」 終わらなかったら収穫時期が遅れてしまうと懸念するアリシア・ムーンライト。 「ここは分担して取り掛かった方が効率良さそうだね」 続くクリストフ・フォンシラーの提案に、皆が頷き合い、話をまとめた。 「よし、おばあさんが安心できるように、収穫頑張ろうね!」 集まった面々に楽しそうに笑顔を向けるリチェルカーレに、 「今日中に終わらせないとな」 と、苦笑を滲ませつつ告げるシリウスを最後に、それぞれの持ち場へと散らばったのだった。 リチェルカーレとシリウスは、早速サツマイモの収穫に取りかかった。 シリウスはまず、収穫しやすいようにと芋の蔓をある程度刈って行く。 一方リチェルカーレは……、 「お天気もいいし、収穫日和ね」 綺麗になった傍からせっせと芋掘りをエンジョイ。 植物学の知識を活かし、サイズや重さ、見た目での仕分けも怠らない。 (野菜を傷付けないように気をつけなくちゃ……) と思っていると、なかなかにしぶといサツマイモに遭遇。 茎を掴み、力を込めて引き抜こうと試みる。 「うっ、もうちょっとで抜けそう……!」 ラストスパートと力いっぱい引っ張る。 「手伝うから、無理は――」 顔が赤くなるほど力を込めていると、心配げなシリウスの声が聞こえた気がした。 「――きゃあ!」 「リチェっ!」 ボコボコっと芋が連なって抜けた瞬間、勢い余って土の上に転がりそうになる。――が、シリウスの体が滑り込み、しっかり抱き止めてくれた。 リチェルカーレはきょとん顔で彼を仰ぎ見る。 「……ふっ。気を付けろよ」 目が合った瞬間吹き出すシリウス。 状況を把握したリチェルカーレは、一瞬だけ閃いた彼の笑みにじわりと顔を赤くしたのだった。 その頃、ニンジン畑では――。 「私、頑張ります……! 植物の採取は得意なんです」 畑にしゃがみ込み、自分も頑張ろうとアリシアは土から飛び出たニンジンの葉っぱに視線を落とす。 「アリシア? 採取って……まるで森に薬草摘みに行くみたいだね」 「あ……採取じゃなくて収穫でしたっ」 くすくすと笑いながらクリストフに突っ込まれ、アリシアは少し赤らむ頬を押さえた。 気を取り直し、掴んだ葉っぱを引っこ抜きに掛かる……。 そんなアリシアの様子に、クリストフは感心の眼差しを向けた。 「へえ……ニンジンってクワとか使わなくていいんだ」 倣う様に何も持たず、クリストフも近くに腰を落として葉っぱに手をかける。 「クワを使うと、野菜を傷付けてしまう恐れがありますから、出来るだけ力で抜きます!」 「なるほどね」 「よし、これで、抜けるはず……です!」 意気込むと、スポン! と土にまみれたオレンジ色の物体が飛び出した。 「クリス……! 見て下さいっ、抜けました……!」 しかもなかなかに大きなニンジン。 嬉しさのあまり笑顔で報告すると、何故か彼は大袈裟に笑い出す。 「アリシア、顔……っ」 「え……?」 「土まみれだよ」 一瞬きょとん。 「え、えっ? 土、ついてます?」 慌てて顔に触れると、余計汚れてしまってどうにもならない。 そしてアリシアもふと気付き、くすくすと笑いが零れる。 「……クリスだって」 「え、俺も? ……そりゃそうか。あははっ」 引っこ抜けば土が舞うのでどんなに気を付けていても汚れてしまうのだ。 クリストフは、楽しそうに笑うアリシアを、目を細めて見つめた。 (なんだか、とても視線を感じるのですが……っ) 収穫に集中できなくなり、思わず目を逸らすアリシア。 すると、その視線の先には芋を引っこ抜いた勢いに転がりそうになる友人の姿があった――。 「あ、リチェちゃん……が、がんばってー!」 声援を送ると、気付いた彼女が手を振り返してくれた。 一方、友人の返答に安堵するアリシアの隣で、視線を逸らされてしまったクリストフが「笑顔、可愛かったのになぁ……」と呟いていたのだった。 ラディッシュ畑では――。 季節的に需要のあるサツマイモに比べ、サイズも小ぶりなラディッシュは比較的狭い範囲に植えられていた。 (この程度なら、私一人でもなんとかなりそうです) シンティラは準備を整え、腰を落として早速作業開始。 引き抜く際、茎が千切れてしまわないようにまずは周りの土をゆっくり手で掃う。 すると、赤く可愛らしいラディッシュの頭が覗いた。 少し力を入れて引くと、思いのほかすんなりと全貌を現した。 (土だけ掃って、後でまとめて水洗いしなくては……) 持参した麻袋に収穫したラディッシュを入れる。 周りの草や蔓は紛らわしいのでカマで刈り取り、ついでに硬い土や石も解しては取り除く。 その都度そうしておけば、後で土を均す時に楽だろう。 「あ、ミミズ……」 寝床を荒らしに来たと思ったのか、焦ったように土の上を這い出て逃げて行くそれを、シンティラはぼんやりと見送る。 再び手を動かし、どのくらいの時間が経過しただろうか……。 黙々と作業をしていたら、いつの間にか麻袋が半分以上埋まっていた。 「ふぅ……重たくなる前に、運んでおきましょう」 麻袋を握り、よいしょと腰を上げると……目の前に落ちる影――。 「俺が運ぶよ」 「え……」 驚いて顔を上げると、微笑みながら此方を見下ろすクリストフがいた。 「随分頑張ったんだね。力仕事は男に任せておけばいいんだよ」 返答も待たずにラディッシュの入った麻袋を運んで行く彼を、シンティラは慌てて追いかけた。 「あの、有り難うございます」 お礼を言うと、微笑むだけの返答が返って来る。 そして向かった先には、収穫したニンジンを手洗いしているアリシアの姿があった。 丁度収穫分を洗い終えたところだったようで、洗い場を交代してもらうことに……。 「それでは、残りの収穫を頑張ってきますね」 「はい、私も頑張ります」 ゆったりと手を振って畑へと戻って行くアリシアを見送り、シンティラは腕まくりをしてラディッシュの洗いに掛かった。 二時頃には、残る収穫もセロリのみとなった――。 集合した五人の浄化師たちは目の前のソレに改めて驚く。 「とても大きなセロリね」 リチェルカーレが呟くと、シリウスが「まったくだ」と反応する。 「株から刈り取るって話だったよね」 「ええ、収穫祭に出す物ですから……」 クリストフの言葉にアリシアがコクリと頷き、更に続ける。 「あと、依頼人の様子を見に行きたいと思っているのですが……」 「それは私も賛成よ。帰る前に診ておきたいものね」 アリシアとリチェルカーレは顔を見合わせて頷いた。 そこへ、ずっと思考を巡らせていたのか、シンティラが口を開く。 「ここは、役割を決めた方が良さそうですね。私はカマを持っているので、頑張って収穫します」 と、右手を軽く挙げながら申し出た。 「それなら俺も収穫担当だな」 とシリウスが続き、 「そういうことなら、俺はクワで土を均すよ。収穫した後で、畑が見事に穴だらけだからね」 最後に続いたのはクリストフ。 こうして、畑チームは自分の仕事を遂行する為にラストスパートを掛けたのだった。 ●それぞれの気遣い 日も暮れ始めた頃――。 少し前に山チームも戻り、諸々と依頼人の許可を得て最終段階へと動いていた。 依頼人の診察を終えたリチェルカーレが台所に顔を出す。 「野菜スープ、おばあさんに美味しいと褒めて頂けたわ」 「それは良かったです」 空になった器を受け取りながら、唯月は彼女からの報告に嬉しそうに笑う。 「シアちゃんの作ったお薬も、食後に服用して頂けるそうよ」 「そうですか、とても安心しました」 安堵に頬を緩めるアリシアに笑い掛け、まだ心配だからと台所を後にするリチェルカーレ。 そんな中、収穫した果物でアユカがお菓子作りの真っ最中。一心不乱に何かを作っていた。 「栗ご飯、もうすぐ炊けそうですね」 あおいの言葉通り、栗の香りが鼻腔をくすぐり、皆から吐息が零れる……。 「折角なので、簡単なお味噌汁を……作ってみますね!」 「私も、お手伝いします」 唯月の宣言に、隣に立ったアリシアが微笑む。 「わぁ、ありがとうございます!」 「私も手が空いたので、何か手伝える事はありますか?」 あおいの積極的な言葉には、アユカが「もちろんです」と答えた。 「フルーツを搾って、果汁100%のジュースをお願いしても……?」 「分かりました」 「あ、ついでにその摩り下ろした林檎、コンポートに使わせて貰えたら嬉しいのだけれど……」 「林檎のコンポート! 美味しそうですね。是非使って下さい!」 指示を出すアユカの傍らで、ジッと見つめる視線が……。 「アユカさんのお菓子、とても美味しそうです」 視線の主は、さっきまで箒を持って掃除に励んでいたシンティラだった。 「お疲れ様です。良かったら参加しませんか?」 手は足りているであろうアユカの思わぬ誘いに、僅かに眉を上げるシンティラ。 「みんなで作った方が楽しいですから」 和気藹々といった雰囲気の中、体に優しい彼女達の手料理が着々とテーブルを埋め尽くして行った――。 「ここは相当傷んでんなー」 工具を持ち込んだロスは、家中を見て回り、特に傷みの激しい個所を可能な範囲で補修していく。 「あれ、ロスも修理?」 声を掛けたのはクリストフ。 「俺には見舞いとか向いてねっしな」 「あー、さっき台所が凄く賑やかだったよ」 羽目板が割れて隙間風の気になる戸に、トントンと金槌を当てる。 「手際がいいね」 感心したように眺めるクリストフに、ロスは「そっか?」と笑う。 「何にせよ、こんなんで役に立てっなら、嬉しいよな」 「はは、そんな謙遜しなくても。俺も工具持って来たんだけどさ、凡人並の修理しかできないんだよ」 ロスの手元を覗き込み、なるほど、と何度も頷く。 「修理した分だけ修理の腕前も上がっしな!」 「それ、頑張れって励ましてくれてる?」 「ん? 思った事を言っただけだ」 キョトっとするロスに「そっか」と笑うクリストフ――の視界にふと二人の影が横切った。 「シリウス、瞬、手伝ってくれないか!」 慌てて彼等を呼び止めるクリストフ。 「折角の機会だからね、できるだけ危険な物を片付けておきたいんだ」 「もちろん、俺は構わない」 「俺も賛成だよ」 シリウスと瞬から同意を得て、今一度家の中や外を見て回ることに……。 山が近い分、天候も変わりやすいので、いつ嵐が来ても良いように劣化していたり不安定な物を出来るだけ改善していく。 「瞬、そっちを持ってくれるか?」 「任せて~」 無造作に転がっている板を軒下に滑り込ませる。 「クリス、この扉開かないんだが……」 「立て付けが悪いのかもしれないね」 自分達が直せる範囲の物には手を加え、男達は力仕事に勤しんだ――。 何やら蔵の辺りで作業をする浄化師が二人……。 「果物は潰れないようにカゴに入れたままにしておこうか」 「そうだな……。箱に詰めて積んでしまうと危険だろう」 収穫した果物のカゴは全て右側に寄せてまとめて置いておく。 次いで、水洗いされて綺麗になった野菜を箱詰めしていく作業にかかる。 依頼人の体調が快復してきたとはいえ、この量を一人で箱詰めするのは大変だろう。 (できるだけ、作業は少ない方がいいからな) そう思い、率先してやってきたのはイザークだった。 そんな彼に気付いた楓が助っ人に加わったのだ。 「悪いな、助かった」 「イザークひとりでこれは手間だろうからな。手伝えて良かった」 口元に笑みを滲ませる二人。 ――こうして、無事に依頼人が収穫祭を迎えられる準備が全て整ったのだった……。 ~~~後日談~~~ 数日後。 教団宛てに何やら大きな荷物が届けられた。 そこには、一通の手紙が添えられていた……。 『浄化師の皆様へ。先日は大変お世話になりました。収穫だけでなく、温かな手料理に手厚い看護、所々直された家には驚きを隠し切れません。何より、収穫祭の為に箱詰めまでして下さる心配り、本当に感謝しています。ほんの心ばかりですが、秋の味覚をどうぞご堪能下さい。――山の麓のおばあちゃんより』
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*** 活躍者 *** |
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[14] ロス・レッグ 2018/09/15-23:03 | ||
[13] アユカ・セイロウ 2018/09/15-18:51
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[12] イザーク・デューラー 2018/09/15-09:26
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[11] ロス・レッグ 2018/09/15-08:45 | ||
[10] リチェルカーレ・リモージュ 2018/09/15-08:43
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[9] 杜郷・唯月 2018/09/15-08:08
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[8] アリシア・ムーンライト 2018/09/15-08:06
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[7] 杜郷・唯月 2018/09/15-00:27
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[6] アリシア・ムーンライト 2018/09/15-00:01 | ||
[5] 鈴理・あおい 2018/09/14-23:32 | ||
[4] リチェルカーレ・リモージュ 2018/09/14-22:23 | ||
[3] アユカ・セイロウ 2018/09/14-21:41 | ||
[2] リチェルカーレ・リモージュ 2018/09/13-20:15
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